特許拒絶査定不服審判
2023-021682
補正測定流量の決定
- 審判番号
- 2023-021682
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-079447
- 請求日
- 2023年12月21日
- 審決日
- 2025年03月28日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】マイクロ モーション インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人有古特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 中塚 直樹
- 審判官 濱野 隆
- 分類
- P18 .571-Z (G01F) / P18 .572-Z (G01F) / P18 .573-Z (G01F) / P18 .574-Z (G01F) / P18 .537-Z (G01F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022- 79447「補正測定流量の決定」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 7月20日出願公開、特開2022-107006〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)2月26日を国際出願日とする外国語特許出願である特願2018-544872号の一部を令和2年6月5日に新たな特許出願とした特願2020-98176号の一部を、令和4年5月13日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和4年 6月 7日 :上申書及び手続補正書の提出
令和5年 4月17日付け :拒絶理由通知書
同年 7月14日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 8月29日付け :補正の却下の決定
同日付け :拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 9月 5日 :原査定の謄本の送達)
同年12月21日 :審判請求書及び手続補正書の提出
第2 令和5年12月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年12月21にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和5年12月21日にされた補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を補正するものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和4年6月7日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は、それぞれ、補正前の対応箇所と補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「【請求項1】
補正測定流量を決定する方法であって、
第1の流量計で第1の流量を測定するステップと、
第2の流量計で第2の流量を測定するステップであって、前記第2の流量計は、エンジンが前記第1及び第2の流量計の間にするように前記第1の流量計に直列に流体結合され、前記エンジンは、前記第1及び第2の流量を測定中に測定中の流体を消費する、ステップと、
前記第1の流量を第1の流量計の推定ゼロ流動不安定性を用いて補正するステップであって、前記推定ゼロ流動不安定性は、前記エンジンが前記流体を消費していなかった以前において行われた第1流量計測定と第2流量計測定に基づいて決定される、ステップと、
を含み、
第1の流量計のゼロ流動不安定性は、第2の流量計のゼロ流動不安定性よりも大きい、方法。」
(2) 本件補正後
「【請求項1】
補正測定流量を決定する方法であって、
第1の流量計で第1の流量を測定するステップと、
第2の流量計で第2の流量を測定するステップであって、前記第2の流量計は、エンジンが前記第1及び第2の流量計の間に位置するように前記第1の流量計に直列に流体結合する、ステップと、
前記第1の流量を第1の流量計の推定ゼロ流動不安定性を用いて補正するステップであって、前記推定ゼロ流動不安定性は、前記エンジンが前記流体を消費していなかった以前において行われた第1流量計測定と第2流量計測定に基づいて決定される、ステップと、
を含み、
第1の流量計のゼロ流動不安定性は、第2の流量計のゼロ流動不安定性よりも大きい、方法。」
2 本件補正の目的について
(1) 本件補正後の請求項1についての補正の内容
ア 本件補正後の請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項1における次の技術事項(以下「本件補正前の第2ステップ」という。)の記載についてするものである。
<本件補正前の第2ステップ>
「第2の流量計で第2の流量を測定するステップであって、前記第2の流量計は、エンジンが前記第1及び第2の流量計の間にするように前記第1の流量計に直列に流体結合され、前記エンジンは、前記第1及び第2の流量を測定中に測定中の流体を消費する、ステップ」
イ そして、本件補正により請求項1についてする補正は、次の(ア)及び(イ)の補正事項からなる。
(ア) 補正事項1
本件補正前の「エンジンが前記第1及び第2の流量計の間にするように」という記載を「エンジンが前記第1及び第2の流量計の間に位置するように」と補正すること。
(イ) 補正事項2
本件補正前の「前記エンジンは、前記第1及び第2の流量を測定中に測定中の流体を消費する」という限定を削除すること。
(2) 補正の目的要件の充足性についての当審の判断
ア 補正事項2が明瞭でない記載の釈明に該当しないことについて
(ア) 前記補正事項2の目的について、請求人は、審判請求書において、不明瞭な記載を削除するものであって、明瞭でない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当すると主張している。
(イ) ここで、「明瞭でない記載の釈明」とは、補正前の明細書、特許請求の範囲又は図面中のそれ自体意味の不明瞭な記載、又は、補正前の明細書、特許請求の範囲又は図面中の他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている記載等、明細書、特許請求の範囲又は図面に生じている記載上の不備を正し、その本来の意を明らかにすることをいう(以下「判断基準」という。)。
(ウ) 前記判断基準に従って、前記補正事項2について検討する。
a 「前記エンジンは、前記第1及び第2の流量を測定中に測定中の流体を消費する」という記載は、それ自体は明確なものであるから、「補正前の明細書、特許請求の範囲又は図面中のそれ自体意味の不明瞭な記載」には、該当しない。
b もっとも、後記の第3において検討するように、本件補正前の請求項1においては、「前記エンジンは、前記第1及び第2の流量を測定中に測定中の流体を消費する」という技術事項が、補正測定流量を決定することに対してどのように関わるのか不明であって、その技術的な意義を理解することができず、まとまった技術思想を把握することができないから、この意味において、当該記載は、特許請求の範囲の他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている記載であるといえなくもない。
c しかしながら、当該記載を丸ごと削除することは、「前記エンジンは、前記第1及び第2の流量を測定中に測定中の流体を消費することがある」という特徴的であり、重要な技術事項を削除するものであるから、「特許請求の範囲又は図面に生じている記載上の不備を正し、その本来の意を明らかにすること」に該当するとはえいない。
d(a) さらに、本件補正前の第2ステップに係る記載を「第2の流量計で第2の流量を測定するステップであって、前記第2の流量計は、エンジンが前記第1及び第2の流量計の間に位置するように前記第1の流量計に直列に流体結合する、ステップ」との記載に補正した結果、「第2の流量計で第2の流量を測定するステップ」においてエンジンが燃料を消費するのかしないのか分からなくなっており、「第2の流量計で第2の流量を測定するステップ」と、その後段の「前記第1の流量を第1の流量計の推定ゼロ流動不安定性を用いて補正するステップであって、前記推定ゼロ流動不安定性は、前記エンジンが前記流体を消費していなかった以前において行われた第1流量計測定と第2流量計測定に基づいて決定される、ステップ」(「前記エンジンが前記流体を消費していなかった以前」との記載があり、本件補正後の請求項1は、依然として、エンジンが流体を消費することがあることが観念される。)との技術的関係が不明瞭となっている。
(b) そうすると、本件補正後の請求項1の記載に基づいては、技術事項の有機的な結合として認識される発明思想を明確に認識することができないから、本件補正後の請求項1の記載は、依然として不明瞭な記載である。
(c) したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、明細書、特許請求の範囲又は図面に生じている記載上の不備を正したものであるとはいえない。
e 以上のとおりであるから、補正事項2は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものには該当しない。
イ 補正事項2の目的がそのほかの目的にも該当しないことについて
そして、前記のとおり補正事項2は「前記エンジンは、前記第1及び第2の流量を測定中に測定中の流体を消費する」ことを削除するものであるから、補正事項2が特許請求の範囲の減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)を目的とするものに該当しないことは明らかである。
また、補正事項2が請求項の削除及び誤記の訂正のいずれを目的とするものにも該当しないことも明らかである。
ウ 目的要件についての検討のまとめ
前記ア及びイに検討のとおり、本件補正後の請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項各号において列挙するいずれを目的とするものに該当せず、同項の規定に適合しない。
3 本件補正の適否のまとめ
前記2において検討したとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項の規定に適合しないから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本件補正前の請求項1について
1 本件補正前の請求項1の記載
本件補正は、上記第2において示したとおり却下したので、以後の検討の対象となる請求項1は、令和4年6月7日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1であり、その記載は、前記第2の1(1)に摘記したとおりである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の本願発明についての拒絶の理由の理由1(明確性要件違反)の要旨は、次のとおりである。
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
記
本願発明は「補正測定流量を決定する方法」であるが、当該方法には、
「前記エンジンは、前記第1及び第2の流量を測定中に測定中の流体を消費する、ステップ」と、
「前記第1の流量を第1の流量計の推定ゼロ流動不安定性を用いて補正するステップであって、前記推定ゼロ流動不安定性は、前記エンジンが前記流体を消費していなかった以前において行われた第1流量計測定と第2流量計測定に基づいて決定される、ステップ」が存在する。
前記「流体を消費する、ステップ」が、「前記エンジンが前記流体を消費していなかった以前」の測定に基づく補正に関与するとは全く考えられないから、前記「流体を消費する、ステップ」が、「補正測定流量を決定する方法」の一部を担う意義を全く理解することができない。
よって、本願発明は、明確でない。
3 判断
(1) 推定ゼロ流動不安定性の決定に関する記載について
ア 請求項1には、次のステップ(以下「第3ステップ」という。)が記載されている(下線は当合議体による。以下同様である。)。
<第3ステップ>
「前記第1の流量を第1の流量計の推定ゼロ流動不安定性を用いて補正するステップであって、前記推定ゼロ流動不安定性は、前記エンジンが前記流体を消費していなかった以前において行われた第1流量計測定と第2流量計測定に基づいて決定される、ステップ」
イ 前記アで摘記した記載において、「前記エンジンが前記流体を消費していなかった以前において行われた第1流量計測定と第2流量計測定」という部分の記載(以下「流量測定に係る記載」という。)は、次の(ア)及び(イ)の二つの意味が考えられる。
(ア) 「前記エンジンが前記流体を消費していなかった」状態より「以前」の状態、すなわち「前記エンジンが前記流体を消費している」状態を指す。
(イ) 「前記エンジンが前記流体を消費していなかった」状態である「以前」の状態
ウ(ア) 「流量測定に係る記載」に関連して、請求人は、令和5年7月14日に提出した意見書において、次のように主張している。
「本出願人は、請求項1に、…(中略)…この追加の根拠は、段落[0044]-[0046]にあります。第1の流量計の流量と第2の流量計の流量とが等しい状態で事前に測定したそれぞれの測定流量の差を用いて、第1の流量計の測定流量を補正することが、記載されています。」
(イ) そこで、本願明細書の段落【0044】~【0045】を参照すると、次のように記載されている。
「【0044】
第1および第2の流量計5a、5bが直列に流体が行き来可能に結合された流体制御システム400においては、第1および第2の流量計5a、5bによって測定される流量は等しくなる可能性がある。例えば、第1、第3、および第5のバルブ420a、420c、420eが閉鎖され、かつ第2および第4のバルブ420b、420dが開放されている場合、第1および第2の流量計5a、5bの測定流量は以下の関係式(3)をもたらすように等しくてもよい。
【数3】
[図:0001426381000001.jpg]
【0045】
上記関係式(3)は、第1の流量計5aの測定流量
【数3A】
[図:0001426381000002.jpg]
を以下の方程式(4)を用いて補正できることを示している。
【数4】
[図:0001426381000003.jpg]
方程式中、
【数4A】
[図:0001426381000004.jpg]
は第1の流量計5aの推定ゼロ流動不安定性であり、
【数4B】
[図:0001426381000005.jpg]
は第1の流量計5aの測定流量であり、かつ
【数4C】
[図:0001426381000006.jpg]
は第2の流量計5bの測定流量である。」
エ 前記ウ(イ)の記載やこれに続く【0046】から【0049】の記載、【0055】から【0058】等を踏まえると、本願明細書においては、第1の流量計の流量と第2の流量計の流量とが等しい状態での測定流量を用いて補正を行っていることは明らかといえる。
オ そうすると、前記第3ステップにおける「補正」は、第1の流量計と第2の流量計の間において流体の消費がないことを前提として行われることになるから、流量測定に係る記載である「前記エンジンが前記流体を消費していなかった以前」という記載の意味は、前記イ(ア)に示した「「前記エンジンが前記流体を消費していなかった」状態より「以前」の状態、すなわち「前記エンジンが前記流体を消費している」状態」の意味ではなく、前記イ(イ)に示した「前記エンジンが前記流体を消費していなかった」状態である「以前」の状態の意味であると理解できる。
(2) 明確性要件違反について
ア 前記(1)の検討を踏まえ、本願の請求項1の記載を次のように善解して以下検討する。
「補正測定流量を決定する方法であって、
第1の流量計で第1の流量を測定するステップと、
第2の流量計で第2の流量を測定するステップであって、前記第2の流量計は、エンジンが前記第1及び第2の流量計の間にするように前記第1の流量計に直列に流体結合され、前記エンジンは、前記第1及び第2の流量を測定中に測定中の流体を消費する、ステップと、
前記第1の流量を第1の流量計の推定ゼロ流動不安定性を用いて補正するステップであって、前記推定ゼロ流動不安定性は、前記エンジンが前記流体を消費していなかった状態である以前の状態において行われた第1流量計測定と第2流量計測定に基づいて決定される、ステップと、
を含み、
第1の流量計のゼロ流動不安定性は、第2の流量計のゼロ流動不安定性よりも大きい、方法。」
イ 請求項1は、「補正測定流量を決定する方法」の発明であるところ、次の(ア)の第2ステップ及び(イ)の第3ステップを含む
(ア) 第2ステップ
「第2の流量計で第2の流量を測定するステップであって、前記第2の流量計は、エンジンが前記第1及び第2の流量計の間にするように前記第1の流量計に直列に流体結合され、前記エンジンは、前記第1及び第2の流量を測定中に測定中の流体を消費する、ステップ」
(イ) 第3ステップ
「前記第1の流量を第1の流量計の推定ゼロ流動不安定性を用いて補正するステップであって、前記推定ゼロ流動不安定性は、前記エンジンが前記流体を消費していなかった状態である以前の状態において行われた第1流量計測定と第2流量計測定に基づいて決定される、ステップ」
ウ 前記イのとおり、請求項1に係る「補正測定流量を決定する方法」においては、エンジンが流体を消費している状態(第2ステップに関する記載で特定される。)及び消費していない状態(第3ステップに関する記載で特定される。)のそれぞれにおいて流量の測定が行われるところ、前記推定ゼロ流動不安定性を用いてする補正は、エンジンが前記流体を消費していない状態での測定にのみ基づいて決定される方法である。
エ そうすると、「前記エンジンは、前記第1及び第2の流量を測定中に測定中の流体を消費する」という技術事項が、補正測定流量を決定することに対してどのように関わるのか不明であって、その技術的な意義を理解することができず、まとまった技術思想を把握することができない。
したがって、請求項1に係る発明は、明確でない。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-021682