特許拒絶査定不服審判
2024-018641
温度影響についてコリオリ流量計測定値を補正する方法、システム及び電子機器
- 審判番号
- 2024-018641
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-580232
- 請求日
- 2024年11月22日
- 審決日
- 2026年03月30日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】マイクロ モーション インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人有古特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 濱野 隆
- 審判官 谷垣 圭二
- 審判官 柳 重幸
- 分類
- P18 .121-Z (G01F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-580232「温度影響についてコリオリ流量計測定値を補正する方法、システム及び電子機器」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年12月30日国際公開、WO2021/262158、令和 5年 7月26日国内公表、特表2023-532039〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)6月24日を国際出願日とする外国語特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 2月15日 :翻訳文の提出
令和6年 3月27日付け:拒絶理由通知書
同年 6月28日 :意見書、手続補正書の提出
同年 7月29日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 8月 6日 :原査定の謄本の送達)
同年11月22日 :審判請求書の提出
2 本願発明について
(1) 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年6月28日に提出された手続補正書により補正された請求項1に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
コリオリ流量計(100)を用いて測定された質量流量値m'を、0℃未満の既知の流体温度tempでの温度影響について補正する方法であって、
既知の流体密度ρrefを受け取ること、
前記既知の流体温度tempを受け取ること、
時間周期Tpを受け取ること、
前記既知の流体密度ρref、前記既知の流体温度temp及び前記時間周期Tpに基づいて密度のヤング率温度補正TFyDを決定すること、
温度補正定数k及び前記密度のヤング率温度補正TFyDに基づいて質量流量のヤング率温度補正TFyMを決定すること、
並びに
前記質量流量のヤング率温度補正TFyMを用いて前記質量流量値m'を補正すること
を含む方法。」
(2) 本願発明の分説
検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Fまでに分説する。また、参考図として、本願の【図1】を掲載する。
<本願発明の分説>
X’コリオリ流量計(100)を用いて測定された質量流量値m'を、0℃未満の既知の流体温度tempでの温度影響について補正する方法であって、
A 既知の流体密度ρrefを受け取ること、
B 前記既知の流体温度tempを受け取ること、
C 時間周期Tpを受け取ること、
D 前記既知の流体密度ρref、前記既知の流体温度temp及び前記時間周期Tpに基づいて密度のヤング率温度補正TFyDを決定すること、
E 温度補正定数k及び前記密度のヤング率温度補正TFyDに基づいて質量流量のヤング率温度補正TFyMを決定すること、
F 並びに
前記質量流量のヤング率温度補正TFyMを用いて前記質量流量値m'を補正すること
X を含む方法。
<参考図>
【図1】
[図:0001438798000001.jpg]
(3) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本出願は、コリオリ流量計に関し、より詳細には、温度影響についてのコリオリ流量計測定値の補正に関する。
【背景技術】
…(中略)…
【0010】
補正は、典型的には、顧客サイトと工場環境条件との間の差異を考慮して、顧客サイトに設置された後のコリオリ流量計100の質量流量測定値に対して行われる。例えば、温度及び流体圧力の変化は、流管130、130’の剛性を変化させる可能性があり、これは、流量計の質量流量及び密度の測定に誤差を生じさせる可能性がある。
【0011】
温度0℃より高い質量流量及び密度の測定に必要な温度補正は、温度0℃未満で必要な温度補正とは異なる。温度0℃以上のヤング率による剛性変化について、測定された質量流量値m'に対して行われる補正は、ほぼ線形である。温度0℃未満の場合、質量流量測定値m'に対する補正は、通常多項式でより適切に表される。
【0012】
密度測定の温度補正は、0から50℃の間の温度での質量流量測定に基づく温度補正と同じではないことが経験的に観察されている。しかし、極低温較正施設で利用可能な流量の制限のため、0℃未満でのヤング率に基づいて流管剛性の変化を特徴付けることは困難であった。これまでのところ、小型の流量計、又は4インチ以下の流管を有する流量計について、温度に基づいて流管の剛性の変化を特徴付けるための経験的データを得ることしかできなかった。
【0013】
氷点下及び極低温でのより精密な質量流量測定が求められている。考えられる一つの用途は、-160℃の温度での大量の液化天然ガスの流れである。
【0014】
氷点下及び極低温でコリオリ流量計により、より正確な流体測定を提供することが非常に望まれている。」
「【0085】
重量計を使用した極低温校正設備での液化窒素の試験により、本出願の方法及びシステムが、0.10%未満の誤差の補正質量流量値m'を提供すると判定された。本出願人によって実施された試験のいくつかは、直径が4インチ以下の流管を有する流量計について、0.07%及び0.01%という低い質量流量誤差を提供した。本出願に記載された方法及びシステムは、より大きな流量計サイズ、又は4インチを超える流管径を有する流量計に外挿することができ、より高い流体流量に対して非常に正確な質量流量値m'を提供することができる。
【0086】
本出願によって説明される方法及びシステムは、氷点下及び極低温においてコリオリ流量計で生成される質量流量測定の精度を向上する温度補正を提供する。温度補正は経時的に安定しており、極低温校正設備でのコリオリ流量計の校正は必要ない。」
3 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由3(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由3(進歩性の欠如) 本願発明は、出願前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.国際公開第2019/195074号
4 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
(1) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である国際公開第2019/195074号(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。
なお、日本語訳は、引用文献1の日本語ファミリー文献である特表2021-517252号公報の該当記載をそのまま採用して、原文の次に摘記した(その際、原文に対応する記載のない「【数1】」等の数式に対応して付された記載は削除しつつ、参照の便宜に供するため、段落番号の記載は残している。)。
また、日本語訳における下線は当合議体において付したもので、後記(3)の引用発明の認定に直接用いる記載に付した。
ア 1ページ4行~7行
「TECHNICAL FIELD
The embodiments described below relate to compensation methods and, more particularly, to a method of compensating the mass flow measurement of a Coriolis sensor, for temperature, using a known fluid density and the drive frequency.」
(【技術分野】
【0001】
以下に記載する実施形態は補償する方法、特に既知の流体密度と駆動周波数を用いて温度についてコリオリセンサの質量流量を補償する方法に関する。)
イ 1ページ9行~26行
「BACKGROUND
Coriolis meters are designed to provide accurate measurements of both mass flow rate and density of fluids flowing through a pipeline under a wide range of process fluid and environmental conditions. There are many applications where Coriolis meters are used as a reference for the calibration of other flow measurement devices. Naturally, this requires a high degree of accuracy.
One such application is for rocket engine testing, for example. In this application, there is a need to calibrate Venturi flow meters used to measure the flow of liquid Hydrogen and Oxygen into rocket test stands. Accuracy requirements for a reference sensor, at process conditions, for such an application are high, with a need of 0.35% in some applications.
Currently, sensors in cryogenic applications, including LNG, liquid Argon, Nitrogen and Oxygen, have shown mass measurement accuracy, using traditional temperature correction, to be 1 % at best.
It is understood that the relationship between mass flow rate and the flow measurement signal of a Coriolis sensor is highly dependent upon the stiffness of the vibrating tube or tubes. It is also understood temperature can affect the stiffness of the tube or tubes of a Coriolis flow sensor by three different mechanisms.」
(【背景技術】
【0002】
コリオリメータは、幅広いプロセス流体及び環境条件下でパイプラインを流れる流体の質量流量と密度の両方を正確に測定できるように構成されている。コリオリメータが他の流量測定装置の較正の基準として使用される多くの用途がある。当然、これには高度な精度が必要である。
【0003】
このような用途の1つは、例えばロケットエンジンのテストである。この用途において、ロケットのテストスタンドへの液体水素と酸素の流れを測定するために使用されるベンチュリ流量計を較正する必要がある。プロセス条件でのこのような用途の基準センサの精度要件は高く、一部の用途では0.35%のニーズがある。
【0004】
現在、LNG、液体アルゴン、液体窒素、液体酸素を含む極低温用途のセンサは、従来の温度補正を使用した質量測定精度が最高1%であることを示している。
質量流量とコリオリセンサの流量測定信号との関係は、振動している1または複数の管の剛性に大きく依存することが理解されている。温度は、3つの異なるメカニズムによってコリオリ流量センサの1または複数の管の剛性に影響を与えることも理解されている。)
ウ 1ページ27行~2ページ20行
「The first mechanism is the change in the Modulus of Elasticity with temperature. This effect was recognized many years ago and a linear temperature compensation was developed, as given in Equation 1 :
[図:0001438798000002.jpg]
where:
[図:0001438798000003.jpg]
Over the range of applications for most Coriolis sensors, the change in the Modulus of Elasticity with temperature is near linear, so this correction works well in most applications. When Coriolis sensors were first applied to Cryogenic applications, it was recognized that the modulus was non-linear below 0°C; as shown in FIG 2. A correction was developed for low temperature and Cryogenic applications, down to -233 °C, as given in Equation 2:
[図:0001438798000004.jpg]
where each φ term is a polynomial coefficient that characterizes the non-linear modulus behavior, especially at low temperatures. This is illustrated in FIG. 3. It should be noted that Equation 2 collapses to Equation 1 when φ2 and φ3 each have a value of 0.」
(【0005】
第1のメカニズムは、温度による弾性率の変化である。この影響は何年も前に認識されており、式1に示すように、線形温度補償が開発された。
[図:0001438798000005.jpg]
ここで、
[図:0001438798000006.jpg]
=質量流量
FCF=流量較正係数(単位:μs 当たりg/s)
Δt=基本的なコリオリ時間測定
Zero=流れが無い状態でのΔt
Φ=弾性率を変更するための温度係数
ΔT=温度差(℃)である。
【0006】
殆どのコリオリセンサの用途の範囲では、温度による弾性率の変化は線形に近いため、この補正は殆どの用途で良好に機能する。コリオリセンサが最初に極低温用途に用いられたとき、図2に示すように、係数は0℃以下では非線形であることが認識された。-233℃までの低温及び極低温用途用の補正が式2で与えられるように開発された。
[図:0001438798000007.jpg]
ここで、各Φ項は特に低温での非線形弾性率の動作を特徴付ける多項式係数である。これは図3に示される。Φ2とΦ3の値が夫々0のとき、式2は式1になる(collapse)ことに注意すべきである。)
エ 2ページ21行~3ページ10行
「The second mechanism influencing tube stiffness is the dilatation of the material with changes in temperature. If the tube is unconstrained, its length, cross section and the internal volume all change, effectively changing the stiffness.
It was empirically observed that the temperature correction on tube period squared, used in density measurement, was not the same as that for Flow Calibration Factor, FCF. It was determined that this was due to thermal expansion. General forms of the mass flow and density equations were developed, idealizing a U-tube Coriolis sensor as a cantilevered beam. The relationships for flow and density measurement, accounting for this mechanism are given in Equations 3 and 4; respectively.
[図:0001438798000008.jpg]
where:
[図:0001438798000009.jpg]
[図:0001438798000010.jpg]
where:
[図:0001438798000011.jpg]
」
(【0007】
管の剛性に影響を与える第2のメカニズムは、温度変化に伴う材料の膨張である。管が拘束されていない場合、管の長さ、断面及び内部体積が全て変化し、剛性が効果的に変化する。
【0008】
密度測定に使用される管周期の二乗に基づく温度補正は、流量較正係数、FCFの温度補正と同じではないことが経験的に観察された。これは熱膨張によるものと判断された。質量流量及び密度方程式の一般的な形式が開発され、U字管コリオリセンサを片持ち梁として理想化した。このメカニズムを説明する流れと密度測定の関係は、夫々式3と4に示されている。
[図:0001438798000012.jpg]
ここで、
α=熱膨張係数
f(Φ)=式2で表される多項式
[図:0001438798000013.jpg]
ここで、
K2=期間の二乗
C1&C2=較正定数
f(Φ)=式2で表される多項式)
オ 3ページ12行~16行
「The third mechanism affecting tube stiffness is thermally induced stress. If the tube or tubes are not free to move with changing temperature the thermal strain will be counteracted by a mechanically restoring strain. This effect is significant with straight tube or low-profile Coriolis sensors. For other sensor geometries this mechanism is essentially negligible.」
(【0009】
管の剛性に影響を与える第3のメカニズムは、熱的に誘発された応力である。温度が変化しても1または複数の管が自由に動かない場合、機械的な復元ひずみによって熱ひずみが打ち消される。この効果は、直管式又は薄型のコリオリセンサでは重要である。他のセンサ形状の場合、このメカニズムは基本的に無視できる。)
カ 3ページ18行~4ページ19行
「SUMMARY
A method for determining a mass flow measurement is provided according to an embodiment. A flowmeter sensor is calibrated at a first temperature. A fluid having a second temperature that is different from the first temperature is flowed through the flowmeter sensor. A density of the fluid is input into a flowmeter electronics. A compensated mass flow value of the fluid is determined with the meter electronics, wherein the Modulus of Elasticity of the flowmeter sensor is unknown.
A flowmeter comprising meter electronics configured to receive a process fluid having a second temperature, the meter electronics configured to communicate with a sensor assembly of the flowmeter is provided. At least one flow conduit is configured to receive the process fluid. At least one driver is configured to vibrate the at least one flow conduit. At least one pickoff for detecting vibrations of the at least one flow conduit is provided, wherein the flowmeter is calibrated at a first temperature. A density of the fluid is input into meter electronics, and the meter electronics is configured to determine a compensated mass flow value of the fluid wherein the Modulus of Elasticity of the at least one flow conduit is unknown.
ASPECTS
According to an aspect a method for determining a mass flow measurement comprises a flowmeter sensor is calibrated at a first temperature. A fluid having a second temperature that is different from the first temperature is flowed through the flowmeter sensor. A density of the fluid is input into a flowmeter electronics. A compensated mass flow value of the fluid is determined with the meter electronics, wherein the Modulus of Elasticity of the flowmeter sensor is unknown.
Preferably, the density is a known reference value.
Preferably, the density is calculated from an equation of state.
Preferably, the equation of state comprises a pressure term and a temperature term.
[図:0001438798000014.jpg]
[図:0001438798000015.jpg]
Preferably, the accuracy of the compensated mass flow value is ±0.5%.
Preferably, the first temperature is a non-cryogenic temperature, and the second temperature is a cryogenic temperature.」
(【発明の概要】
【0010】
実施形態に従って、質量流量の測定を決定する方法が提供される。流量計センサは第1の温度で較正される。第1の温度とは異なる第2の温度を有する流体が流量計センサを通って流れる。流体密度がメータ電子機器に入力される。流体の補償された質量流量値がメータ電子機器を用いて決定され、ここで、流量計センサの弾性率は不明である。
【0011】
第2の温度を有するプロセス流体を受け入れるように構成されたメータ電子機器を備える流量計が提供され、メータ電子機器は流量計のセンサアセンブリと通信するように構成される。少なくとも1つの流れ導管はプロセス流体を受け入れるように構成される。少なくとも1つのドライバは少なくとも1つの流れ導管を振動させるように構成される。少なくとも1つの流れ導管の振動を検出する少なくとも1つのピックオフが提供され、流量計は第1の温度にて較正される。流体密度がメータ電子機器に入力され、メータ電子機器は、流体の補償された質量流量値を決定するように構成され、少なくとも1つの流れ導管の弾性率は未知である。
【0012】
態様
質量流量の測定を決定する方法の一態様に従って、第1の温度で較正される流量計センサを備える。第1の温度とは異なる第2の温度を有する流体が流量計センサを通って流れる。流体密度がメータ電子機器に入力される。流体の補償された質量流量値がメータ電子機器を用いて決定され、ここで、流量計センサの弾性率は不明である。
【0013】
好ましくは、密度は既知の基準値である。
好ましくは、密度は状態方程式から計算される。
好ましくは、状態方程式は、圧力項および温度項を含む。
好ましくは、補償された質量流量は、以下の数5として計算される。
[図:0001438798000016.jpg]
【0014】
好ましくは、補償された質量流量値の正確さは、±0.5%である。
好ましくは、第1の温度は非極低温であり、第2の温度は極低温である。)
キ 8ページ21行~9ページ17行
「Unlike prior compensation methods, this method eliminates the dependency of the mass flow equation on the change in Modulus of Elasticity as a function of temperature. In an embodiment, an equation for Mass Flow Rate measurement, independent of the change in modulus with temperature, is provided; as given in Equation 5.
[図:0001438798000017.jpg]
The fluid densityρf could either be input as a known quantity or, in the case of a known fluid like commercially pure Hydrogen, calculated from an equation of state using pressure and temperature inputs. Temperature and pressure may simply be input into a meter or may be measured by at least one of a temperature and pressure sensor.
For a dual-tube U-tube Coriolis sensor operating in this manner, it is reasonable to expect a flow accuracy of ±0.5% while measuring a pure cryogenic fluid like liquid Hydrogen.
Turning to FIG. 5, a flow chart is provided outlining the steps of an embodiment of determining a mass flow measurement. In step 500, a flowmeter is calibrated at a first temperature. Despite being calibrated specifically at a first temperature, in step 502, a fluid having a second, different, temperature is flowed through the flowmeter sensor 10. In step 504, the density of the fluid is provided to the flowmeter electronics 20. In step 506, a compensated mass flow value of the fluid is determined with the meter electronics 20. In this case, the Modulus of Elasticity of the flowmeter sensor remains unknown and unutilized by meter electronics, which is a severe departure from the prior art. This is illustrated by Equation 5. It will thus be clear to those skilled in the art that temperature measurements are also not critical for accurate flow rate measurement. In fact, the flow error contribution of temperature may be as low as 0.0006%, and thus be negligible compared to factors such as fluid density, pressure, calibrations constants, and other uncertainty-related factors.」
(【0032】
従来の補償方法とは異なり、この方法は温度の関数としての弾性率の変化に対する質量流量方程式の依存性を排除する。実施形態にて、温度による弾性率の変化に関係なく、質量流量測定の式が式5のように提供される。
[図:0001438798000018.jpg]
【0033】
流体密度ρfは、既知の量として入力するか、または商業的に純粋な水素のような既知の流体の場合は、圧力と温度の入力を使用して状態方程式から計算できる。温度と圧力は、単にメータ電子機器に入力するか、温度と圧力センー(当審注:「センサー」の誤記であると認められる。)の少なくとも1つによって測定され得る。この方法で動作する二重チューブU字型チューブのコリオリセンサの場合、液体水素などの純粋な極低温流体を測定するときに、±0.5%の流れ精度を期待するのが妥当である。
【0034】
図5を参照して、質量流量測定を決定する実施形態のステップを概説するフローチャートが提供される。ステップ500では、第1の温度で流量計が較正される。特に第1の温度で較正されているにもかかわらず、ステップ502では、異なる第2の温度を有する流体が流量計センサ10を通って流される。ステップ504では、流体の密度がメータ電子機器20に提供される。ステップ506では、流体の補償された質量流量値がメータ電子機器20で決定される。この場合、流量計センサの弾性率は未知のままであり、メータ電子機器によって利用されない。これは、従来技術からの大きな逸脱である。これは式5に示される。従って、温度測定も正確な流量測定にとって重要ではないことは、当業者には明らかであろう。実際、温度の流量誤差への寄与は0.0006%と低い場合があるため、流体密度、圧力、校正定数、およびその他の不確実性関連の要因などの要素と比較すると無視することができる。)
(2) 引用文献1の記載から読み取れる事項の認定
ア 認定事項1
前記(1)アにおいて摘記した事項から、引用文献1には「温度についてコリオリセンサの質量流量を補償する方法」についての発明が記載されているといえ、そして、前記(1)イ~オにおいて摘記した事項が、当該発明の前提となる背景技術を示す事項として記載されていることを踏まえると、前記(1)エにおいて摘記した式3を含む記載に接した当業者であれば、「式3を用いて、温度についてコリオリセンサの質量流量を補償する方法」の発明を観念できると認められる。
イ 認定事項2
前記(1)エにおいて摘記した式3におけるFCF、Δt、Zero、Φ、ΔT等の記号が、前記(1)ウにおいて摘記した式1における同一表記の記号と同じ意味で用いられていることは明らかである。
(3) 引用発明の認定
前記(2)において認定した事項及び前記(1)に摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、背景技術に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
なお、式3における「zero」の注釈について、前記日本語ファミリー文献においては「z」が大文字で表記されているが、引用発明の認定にあたり、式3の記載に合わせて小文字とした。また、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「次の式3を用いて、温度についてコリオリセンサの質量流量を補償する方法であって、(認定事項1、前記(1)エ)
[図:0001438798000019.jpg]
ここで、式3において、
[図:0001438798000020.jpg]
FCF=流量較正係数(単位:μs 当たりg/s)
Δt=基本的なコリオリ時間測定
zero=流れが無い状態でのΔt
Φ=弾性率を変更するための温度係数
ΔT=温度差(℃)
α=熱膨張係数
f(Φ)=次の式2で表される多項式
[図:0001438798000021.jpg]
である、(認定事項2、前記(1)ウ、エ)
方法。」
5 引用文献1、2の記載事項及び技術常識1の認定
(1) 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、前記4(1)イ~エにおいて摘記した記載がある。
(2) 引用文献2に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2015-111142号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。下線は当合議体が付したものである。
「【0057】
実施の形態によっては、幾何学的熱補償係数(TFe)45は、例えば、(1+α・ΔT)項として表される一次補償係数を含むことができる。(TFe)の一次補償は幾何学的熱膨張の一次近似を含むことができる。実施の形態によっては、一次補償係数(TFe)は十分な精度を提供する。しかし、幾何学的な熱膨張又は熱収縮は厳密には線形ではなく、或る実施の形態においては、一次近似は所望の精度を達成しない。したがって、実施の形態によっては、幾何学的熱補償係数(TFe)45は、ヤング率(E)について行い得たように多項式を含む(式(3)を参照のこと)。多項補償係数は、例えば(1+α1・ΔT+α2・ΔT2+α3・ΔT3)項として表される。」
「【0067】
【数12】
[図:0001438798000022.jpg]
【0068】
は温度の関数としての弾性率を表している。これは線形であるように示されているが、高次多項式で表すことができる。(E0)項は基準温度(T0)での弾性率である。先に検討したとおり、(TFy)項はヤング率であり、一次近似(1-φ・(T-T0))又は多項式(1-φ・ΔT-φ2・ΔT2-φ3・ΔT3-φ4・ΔT4)として表される。」
「【0079】
によって与えられるように、固有周波数(ωn)に反比例する。
式6~式14を用いると、流体密度(ρf)は、下記の式15、即ち
【0080】
【数18】
[図:0001438798000023.jpg]
【0081】
によって与えられるように、管周期(K)、温度(T)、温度に対する弾性率の変化(φ)及び幾何学的熱補償係数(TFe)を用いて書き表される。C1項及びC2項は、温度から独立した定数であって、基準温度における流れ管路の形状及び材料特性に関係する定数である。(TFy)項と(TFe)項は、温度(T)と基準温度(T0)との間の差を含む(ΔT)項を含む。更に、(TFe)項は一次熱膨張係数(α)を含む。」
(3) 技術常識1の認定
前記(1)及び(2)に摘記した引用文献1及び2の記載事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識(以下「技術常識1」という。)であったと認められる。
<技術常識1>
「密度ρfの流体で満たされて時間周期Kで振動する導管について、次の式で表される関係があると見なせること。
(式)
[図:0001438798000024.jpg]
(ここで、C1、C2は、較正定数で、ΔT、Φ、f(Φ)、αは、引用発明における記号と同様である。)」
6 本願発明と引用発明の対比
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
なお、事案に鑑みて、まず構成Fの検討から行い、次に構成X’(X)の観点での検討を行うこととする。
ア 構成Fの観点
(ア) 構成Fは、「前記質量流量のヤング率温度補正TFyMを用いて前記質量流量値m'を補正すること」を含むことである。
(イ) 引用発明における式3の各項の解釈等について
a 温度補正項を含まないコリオリ流量計の関係式について
コリオリ流量計に関する技術分野において、コリオリ流量計の導管を流れる流体の質量流量と導管に設置されたピックオフセンサ間の遅延時間測定との関係について、温度補正項を含まない場合、次の式(式中の記号の説明については引用発明と同様である。)で表せることは、当業者にとって技術常識である(必要なら、引用文献2の段落【0004】~【0006】参照。)。
<温度補正項を設けない式>
[図:0001438798000025.jpg]
b 引用発明における式3の各項について
引用発明における式3の各項の解釈について、前記aに示す技術常識や本願明細書の発明の詳細な説明における記載を踏まえて検討する。
<式3(再掲)>
[図:0001438798000026.jpg]
(a) FCF・(Δt-zero)項について
前記aにおいて示した技術常識を踏まえると、「FCF・(Δt-zero)」項は、「コリオリ流量センサにより計測される、コリオリ流量センサの管を流れる流体の温度補正されていない質量流量値」を示す項であると認められる。
(b) (1-f(φ)・ΔT)項について
i 当該項における「f(φ)」は、「式2で表される多項式」(日本語訳の段落【0008】参照)である。
<式2(再掲)>
[図:0001438798000027.jpg]
ii ここで、式2における「φ」についての多項式の部分
[図:0001438798000028.jpg]
については、
「質量流量とコリオリセンサの流量測定信号との関係は、振動している1または複数の管の剛性に大きく依存すること」を前提とし、
「温度」が「コリオリ流量センサの1または複数の管の剛性に影響を与える」ことを考慮して(日本語訳の段落【0004】参照)、
「温度による弾性率の変化」(日本語訳の段落【0005】、【0006】参照)について、「-233℃までの低温及び極低温用途用の補正」を行うために「開発された」ものであり(日本語訳の【0006】参照)、
前記(a)の項に追加して設けられた項である。
iii 以上から、「f(φ)」を用いて規定された「(1-f(φ)・ΔT)」項は、「コリオリ流量センサの管の温度による弾性率の変化に対する補正」に関する項であると解するのが相当である。
(c) (1+α・ΔT)項について
「管の剛性に影響を与える第2のメカニズムは、温度変化に伴う材料の膨張である」(日本語訳の段落【0007】参照)ところ、当該項は「断熱膨張係数」である「α」を用いて規定された項である。
したがって、「(1+α・ΔT)」項は、「コリオリ流量センサの管の温度による膨張変化に対する補正」に関する項であると解するのが相当である。
(ウ) 前記(イ)の解釈を踏まえた対比分析について
a 引用発明における式3の「FCF・(Δt-zero)」は、前記(イ)b(a)の解釈を踏まえると、本願発明における「コリオリ流量計(100)を用いて測定された質量流量値m'」に相当する。
b 引用発明における式3の「(1-f(φ)・ΔT)」は、前記(イ)b(b)の解釈に加えて、ヤング率が弾性率の一つの側面であるとみることができるから、本願発明における「質量流量のヤング率温度補正TFyM」に相当する。
c そのため、引用発明の式3において、質量流量を算出するにあたり、「FCF・(Δt-zero)」項に「(1-f(φ)・ΔT)」項を乗じることは、本願発明において、「質量流量のヤング率温度補正TFyMを用いて前記質量流量値m'を補正すること」に相当する。
(エ) 以上の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明は、構成Fの観点に関し、次の点において一致する。
「質量流量のヤング率温度補正を用いて前記質量流量値を補正すること」を含む点。
イ 構成X’(X)の観点
(ア) 構成X’は、「コリオリ流量計(100)を用いて測定された質量流量値m'を、0℃未満の既知の流体温度tempでの温度影響について補正する方法」の発明であることである。
(イ) 引用発明の「(3)の式を用いて、温度についてコリオリセンサの質量流量を補償する方法」は、前記ア(ウ)の対比分析の結果に加え、前記ア(イ)b(b)iiにおいて検討した事項(式2が「-233℃までの低温及び極低温用途用の補正」を行うものであること等。)を踏まえると、本願発明の「方法」と、「コリオリ流量計を用いて測定された質量流量値を、0℃未満の流体温度での温度影響について補正する」点で共通する。
(ウ) 以上の検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明の構成X’(X)の観点における一致点及び相違点は、次のa及びbに示すとおりである。
a 構成X’(X)の観点における一致点
「コリオリ流量計を用いて測定された質量流量値を、0℃未満の流体温度での温度影響について補正する方法」の発明である点。
b 構成X’(X)の観点における相違点
「流体温度」について、
本願発明においては、「既知の」ものであるのに対して、
引用発明においては、既知のものであるかどうかが不明な点。
ウ 構成A~構成Eの観点
引用発明は、本願発明の構成A~Eに相当する構成を備えていないから、本願発明と引用発明は、構成A~Eの観点に関し、次の点において相違する。
本願発明においては、
「既知の流体密度ρrefを受け取ること」(構成A)
「前記既知の流体温度tempを受け取ること」(構成B)
「時間周期Tpを受け取ること」(構成C)
「前記既知の流体密度ρref、前記既知の流体温度temp及び前記時間周期Tpに基づいて密度のヤング率温度補正TFyDを決定すること」(構成D)
「温度補正定数k及び前記密度のヤング率温度補正TFyDに基づいて質量流量のヤング率温度補正TFyMを決定すること」(構成E)
を含むのに対して、
引用発明においては、そのような工程を含むことの特定がない点。
(2) 一致点及び相違点
前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明は、次のアに示す一致点において一致し、後記イに示す相違点において相違すると認められる。
ア 一致点
「コリオリ流量計を用いて測定された質量流量値を、0℃未満の流体温度での温度影響について補正する方法であって、
質量流量のヤング率温度補正を用いて前記質量流量値を補正すること含む方法。」の発明である点。
イ 相違点
本願発明においては、温度影響が、「既知の」流体温度でのものであって、
「既知の流体密度ρrefを受け取ること」(構成A)
「前記既知の流体温度tempを受け取ること」(構成B)
「時間周期Tpを受け取ること」(構成C)
「前記既知の流体密度ρref、前記既知の流体温度temp及び前記時間周期Tpに基づいて密度のヤング率温度補正TFyDを決定すること」(構成D)
「温度補正定数k及び前記密度のヤング率温度補正TFyDに基づいて質量流量のヤング率温度補正TFyMを決定すること」(構成E)
を含むのに対して、
引用発明においては、温度影響が、「既知の」流体温度でのものであるかどうかが明らかでなく、本願発明の上記工程に相当する工程を含むことの特定がない点。
7 判断
(1) 相違点の検討
ア 技術常識1について
前記5(3)において技術常識1として認定したとおり、次の事項は技術常識である。
「密度ρfの流体で満たされて時間周期Kで振動する導管について、次の式で表される関係があると見なせること。
(式)
[図:0001438798000029.jpg]
(ここで、C1、C2は、較正定数で、ΔT、Φ、f(Φ)、αは、引用発明における記号と同様である。)」
イ 式3と式5の関係について
(ア) 引用発明は、次の式3を用いて、温度についてコリオリセンサの質量流量を補償する方法である。
[図:0001438798000030.jpg]
ここで、前記6(1)ア(イ)b(b)において検討したとおり、式3の「(1-f(φ)・ΔT)」項は、「コリオリ流量センサの管の温度による弾性率の変化に対する補正」に関する項である。
(イ) 他方で、引用文献1には、温度について補償された質量流量を次の式5でも計算できることが記載されている(前記4(1)キの日本語訳の【0032】参照。)。
[図:0001438798000031.jpg]
(ウ) 前記(イ)の式5は、前記4(1)ウにおいて摘記した式4(技術常識1における式に相当する。)から「(1-f(φ)・ΔT)」を示す関係式が導出されるように式変形して、当該導出された関係式を前記式3における「(1-f(φ)・ΔT)」項に代入して整理することによって得られる式にほかならない。
(エ) すなわち、技術常識1の式を介してみると、式3と式5は等価なものであって、式3において、「(1-f(φ)・ΔT)」の値を直接用いて質量流量を補正する代わりに、式5において、流体の密度ρf、時間周期Kを用いて質量流量を補正しても、同じ補正結果を導くことは、当業者にとって自明である。
(オ) この点に関し、引用文献1には、式5についての説明として、「温度の関数としての弾性率の変化に対する質量流量方程式の依存性を排除」して「温度による弾性率の変化に関係なく」、質量流量を補正するためのものであることが示されており(前記4(1)キの日本語訳の【0032】参照。)、流体の密度ρf、時間周期Kに着目した質量流量の補正が示唆されているといえる。
ウ 容易想到性の判断
(ア) 技術常識1における関係式の利用
a 前記イを踏まえると、引用発明において、式3に基づいて温度について補償された質量流量を算出する際に、式3そのものを直接用いる代わりに、式3と式5の等価性を裏付ける技術常識1における関係式に着目した補正を試してみることは当業者が有する通常の創作能力の発揮にすぎない。
b その場合には、技術常識1における関係式を用いて、必要なパラメータに基づいて「(1-f(φ)・ΔT)」の値を決定し、決定した「(1-f(φ)・ΔT)」の値を引用発明における式3の「(1-f(φ)・ΔT)」に入力して補正された質量流量を算出することになる。
c そして、前記bの際に、「(1-f(φ)・ΔT)」の値を決定するのに必要なパラメータとしては、前記技術常識1における関係式における、流体の密度「ρf」、温度差「ΔT」、時間周期「K」等が想定される。
(イ) 各パラメータの属性
a ここで、引用文献1においては、測定対象の流体として、「LNG」等の、輸送時における「密度」や「温度」を既知の値として入手可能な流体が想定されていること(前記4(1)イの日本語訳の【0004】参照。)、及び、「時間周期」は測定等により入手可能であることを踏まえると、流体の密度「ρf」、温度差「ΔT」は既知のものとして取り扱い、時間周期「K」は測定等により入手されるものと考えるのが自然である。
b そうすると、引用発明において、技術常識1を考慮して、前記相違点に係る構成のうち、
温度影響を「既知の」流体温度でのものとし(構成X’)、
「既知の流体密度ρrefを受け取ること」(構成A)、
「前記既知の流体温度tempを受け取ること」(構成B)、
「時間周期Tpを受け取ること」(構成C)
に相当する工程を備えるようにすることは、技術の具体的適用に際して適宜選択できる設計事項というべきものであり、格別のものでない。
(ウ) 構成Dについて
a 前記技術常識1における関係式の「(1-f(φ)・ΔT)」項は、前記6(1)ア(イ)b(b)において検討した事項を踏まえると、密度ρfについての、導管の温度による弾性率の変化に対する補正に関する項であるといえる。
b そして、ヤング率が弾性率の一つの側面とみることができることも踏まえると、前記技術常識1における関係式の「(1-f(φ)・ΔT)」項は、本願発明における「密度のヤング率温度補正TFyD」に相当する。
c したがって、引用発明において、前記技術常識1における関係式により、流体の密度「ρf」、温度差「ΔT」、時間周期「K」等の必要なパラメータに基づいて「(1-f(φ)・ΔT)」の値を決定することは、本願発明の構成Dの「前記既知の流体密度ρref、前記既知の流体温度temp及び前記時間周期Tpに基づいて密度のヤング率温度補正TFyDを決定すること」に相当する。
(エ) 構成Eについて
a 前記(ウ)の技術常識1における関係式の「(1-f(φ)・ΔT)」項は、密度のヤング率温度補正項であるのに対して、引用発明における式3の「(1-f(φ)・ΔT)」項は、質量流量のヤング率温度補正項であるから、両者の間には、所定の定数kを介した次の関係が成り立つと考えられる。
「質量流量のヤング率温度補正項」=k×「密度のヤング率温度補正項」
b すなわち、上記所定の定数kは、本願発明の構成Eにおける「温度補正定数k」に相当することになる。
(2) 総合評価
前記(1)において検討したとおり、引用発明において、前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明及び技術常識1に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び技術常識1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
8 請求人の主張について
(1) 請求人の主張内容
請求人は、審判請求書において、次の主張を行っている。
引用文献1では、「ρf」との用語が具体的に定義されていないところ、温度差項を含む式4の右側の項に基づいて決定される、流体の密度であると考えられ、「ρf」の項は「既知の流体密度」ではないから、式4中には、「既知の流体密度」に対応する項は存在しない。実際、式4は、温度差および管周期の二乗項の較正係数を使用しており、これは、「既知の流体密度」に対応する、基準密度の使用を排除していると考えられる。
(2) 請求人の主張についての検討
前記7(1)イ及びウにおいて説示した事項に加え、引用文献1の前記4(1)キにける日本語訳の「流体密度ρfは、既知の量として入力する」(段落【0033】参照)との記載を踏まえると、引用発明において、式3を用いてコリオリセンサの質量流量を補償するに際し、技術常識1における関係式を利用する場合に、流体密度ρfを既知の値として用いようとすることは、当業者にとって自然なことといえる。
したがって、引用文献1では「既知の流体密度」の使用が排除されているとする請求人の主張は採用できない。
9 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-018641