特許拒絶査定不服審判
2020-013849
プロセス侵入が低減された渦流量計
- 審判番号
- 2020-013849
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-502595
- 請求日
- 2020年10月02日
- 審決日
- 2021年07月19日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】マイクロ・モーション・インコーポレーテッド
- 【請求人代理人】特許業務法人 津国
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 清水 靖記
- 審判官 濱野 隆
- 分類
- P18 .113-Z (G01F) / P18 .121-Z (G01F) / P18 .57 -Z (G01F) / P18 .572-Z (G01F) / P18 .574-Z (G01F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-502595「プロセス侵入が低減された渦流量計」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 1月25日国際公開、WO2018/016984、令和 1年 7月25日国内公表、特表2019-521350〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)7月21日を国際出願日とする外国語特許出願であって、その手続の経緯は、次のとおりである。
平成31年 3月18日 :翻訳文の提出
令和 2年 1月27日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 4月30日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 5月25日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(原査定の謄本の送達日:同年6月2日)
令和 2年10月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和2年10月2日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年10月2日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正後の特許請求の範囲
令和2年10月2日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についての補正であり、本件補正により特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所を示す。)
(1) 本件補正後
「 【請求項1】
渦流量計であって、
第1の端部と第2の端部とを有する流管と、
前記第1の端部と前記第2の端部との間の前記流管内に配置されたシェダーバーであって、前記流管を流れる流体に渦を発生させるように構成されている、シェダーバーと、
前記流管の外面に動作可能に結合されており、流管内の渦に起因する流管の個々の変形を検出するように構成された少なくとも1つのセンサと、
を含み、
前記少なくとも一つのセンサが、複数の圧電フィルムセンサを含み、各々が、前記流管の前記外面に取り付けられ、渦周波数の検出に基づくプロセス流体の流量の出力を生成するように構成された流量計電子回路に結合され、前記複数の圧電フィルムセンサが、前記流管に影響を及ぼす渦に起因する前記流管の変形を検出するように構成され、及び、
前記流量計電子回路が、フローノイズを検出するために前記シェダーバーの上流側の前記流管の前記外面に取り付けられた前記少なくとも一つのセンサ、及び、渦周波数を検出するために前記シェダーバーの下流側の前記流管の前記外面に取り付けられた前記少なくとも一つのセンサ、からの信号の解析を行うように構成される、
渦流量計。
【請求項2】
前記シェダーバーの上流で、前記流管の前記外面に結合される少なくとも1つの追加のセンサをさらに含む、請求項1記載の渦流量計。
【請求項3】
前記測定回路に結合され、渦周波数検出に基づいてプロセス流体流出力を生成するように構成されたコントローラをさらに含む、請求項2記載の渦流量計。
【請求項4】
前記コントローラが、渦周波数を検出するために前記第1及び第2のセンサの少なくとも1つのセンサからの信号の周波数解析を行うように構成されている、請求項3記載の渦流量計。
【請求項5】
前記周波数解析が高速フーリエ変換(FFT)である、請求項4記載の渦流量計。
【請求項6】
流体の流量を検出する方法であって、
前記流体流を受け取る流管を設けるステップと、
前記流体が固定式構造体を通って流れる際に渦を発生させる固定式構造体を設けるステップと、
前記渦と前記流管との間の物理的相互作用に基づいて前記流管の外面の変形を検出するステップと、
前記渦流量計のコントローラで、前記検出された変形を使用して渦周波数を決定するステップと、
前記渦周波数に基づいて渦流量計の流量出力を提供するステップと
を含み、
前記外面の変形を検出することが、前記流管の前記外面に取り付けられた少なくとも二つのセンサからの信号の監視を含み、前記少なくとも二つのセンサが圧電フィルムセンサであり、
前記流管の外面の変形を検出することが、前記流管上の2つの異なる位置で行われ、
前記2つの異なる位置が、前記固定式構造体から上流側と下流側である、
方法。
【請求項7】
前記固定式構造体を設けるステップが、前記流管内にシェダーバーを取り付けるステップを含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
渦流量計であって、
コントローラを含む流量計電子回路であり、渦周波数を決定し、流体流量出力を提供し、前記流量計電子回路が前記コントローラに結合する測定回路も含む、ように構成された流量計電子回路と、
第1の端部と第2の端部とを有する流管と、
前記流管を流れる流体に渦を発生させるために前記流管内に配置されたシェダーバーと、
各々が前記流量計電子回路の前記測定回路に結合され、前記流管の外面に取り付けられた複数の圧電フィルムセンサであって、前記流管に衝突する渦に起因する前記流管の変形を検出するように構成されている、前記複数の圧電フィルムセンサと
を含み、
前記流量計電子回路が、フローノイズを検出するために前記シェダーバーの上流側の前記流管の前記外面に取り付けられた少なくとも一つの前記センサからの信号、及び、渦周波数を検出するために前記シェダーバーの下流側の前記流管の前記外面に取り付けられた少なくとも一つの前記センサからの信号、の解析を行うように構成される、
渦流量計。」
(2) 本件補正前
本件補正前の、令和2年4月30日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
「 【請求項1】
渦流量計であって、
第1の端部と第2の端部とを有する流管と、
前記第1の端部と前記第2の端部との間の前記流管内に配置されたシェダーバーであって、前記流管を流れる流体に渦を発生させるように構成されている、シェダーバーと、
前記シェダーバーの下流で、前記流管の外面に取り付けられた第1のセンサであり、第1のセンサ信号を供給するために前記渦流量計の測定回路に結合された前記第1のセンサと、
前記シェダーバーの下流で、前記流管の外面に取り付けられた第2のセンサであり、第2のセンサ信号を供給するために前記渦流量計の前記測定回路に結合された前記第2のセンサと、
を含み、
前記第1のセンサ信号及び前記第2のセンサ信号が、前記流管内の渦に起因する前記流管の個々の変形を検出するように構成される、
渦流量計。
【請求項2】
前記第1のセンサが圧電フィルムセンサである、請求項1記載の渦流量計。
【請求項3】
前記第2のセンサが圧電フィルムセンサである、請求項2記載の渦流量計。
【請求項4】
前記シェダーバーの上流で、前記流管の前記外面に結合される少なくとも1つの追加のセンサをさらに含む、請求項1記載の渦流量計。
【請求項5】
前記第1のセンサが、前記第2のセンサと対向する、請求項1記載の渦流量計。
【請求項6】
前記測定回路に結合され、渦周波数検出に基づいてプロセス流体流出力を生成するように構成されたコントローラをさらに含む、請求項4記載の渦流量計。
【請求項7】
前記コントローラが、渦周波数を検出するために前記第1及び第2のセンサの少なくとも1つのセンサからの信号の周波数解析を行うように構成されている、請求項6記載の渦流量計。
【請求項8】
前記周波数解析が高速フーリエ変換(FFT)である、請求項7記載の渦流量計。
【請求項9】
前記コントローラが、フローノイズを検出するために前記シェダーバーの上流の前記流管の前記外面に取り付けられた少なくとも1つのセンサと、渦周波数を検出するための第1及び第2のセンサの少なくとも1つのセンサとからの信号の解析を行うように構成されている、請求項6記載の渦流量計。
【請求項10】
流体の流量を検出する方法であって、
前記流体流を受け取る流管を設けるステップと、
前記流体が固定式構造体を通って流れる際に渦を発生させる前記固定式構造体を設けるステップと、
前記流管の前記外面に取り付けられた複数のセンサにより検出され、前記複数のセンサが渦電流計の測定回路に電気的に結合し、前記渦と前記流管との間の物理的相互作用に基づいて前記流管の外面の変形を検出するステップと、
前記渦流量計のコントローラで、前記検出された変形を使用して渦周波数を決定するステップと、
前記渦周波数に基づいて渦流量計の流量出力を提供するステップと
を含む方法。
【請求項11】
前記固定式構造体を設けるステップが、前記流管内にシェダーバーを取り付けるステップを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記複数のセンサの少なくとも1つのセンサが圧電フィルムセンサである、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記流管の外面の変形を検出するステップが、前記流管上の2つの異なる位置で行われる、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記2つの異なる位置が前記流管の向かい合う側にある、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記2つの異なる位置が前記固定式構造体の下流にある、請求項13記載の方法。
【請求項16】
渦流量計であって、
コントローラを含む流量計電子回路であり、渦周波数を決定し、流体流量出力を提供し、前記流量計電子回路が前記コントローラに結合する測定回路も含む、ように構成された流量計電子回路と、
第1の端部と第2の端部とを有する流管と、
前記流管を流れる流体に渦を発生させるために前記流管内に配置されたシェダーバーと、
各々が前記流量計電子回路の前記測定回路に結合され、前記流管の外面に取り付けられた複数の圧電フィルムセンサであって、前記流管に衝突する渦に起因する前記流管の変形を検出するように構成されている、前記複数の圧電フィルムセンサと
を含む、渦流量計。」
2 本件補正の目的
(1) 特許請求の範囲の限定的減縮の該当性について
補正後の請求項1は、補正前の請求項1を補正したものであるところ、本件補正の目的について検討する。なお、補正後の請求項2と8には、補正前の請求項4と16が対応することも考慮すると、補正後の請求項1に係る発明は補正前の請求項4又は請求項16を基に補正されたものとすることはできない。
ア 発明特定事項の限定の該当性
(ア) 「第1センサ」及び「第2のセンサ」について
本件補正は、補正前の請求項1に記載された事項である「前記シェダーバーの下流で、前記流管の外面に取り付け」られた「第1のセンサ」と「第2のセンサ」について、「前記流管の外面に動作可能に結合されており、流管内の渦に起因する流管の個々の変形を検出するように構成された少なくとも1つのセンサ」及び「渦周波数を検出するために前記シェダーバーの下流側の前記流管の前記外面に取り付けられた前記少なくとも一つのセンサ」と補正することを含むところ、このような補正は、次のa及びbに示したとおり、補正前の請求項1に記載した「発明を特定するために必要な事項」を限定するものであるとはいえない。
a センサの個数に関し、補正前は、「第1のセンサ」及び「第2のセンサ」として2つであることが特定されていたが、補正後は、「少なくとも1つのセンサ」とされており、センサの個数が1つの場合も含むことになり、むしろ拡張している。
b センサの取り付け位置に関し、補正前は、「第1のセンサ」及び「第2のセンサ」がいずれも「シェダーバーの下流」に「取り付けられた」と特定されていたが、補正後は、1つが「シェダーバーの下流」に「取り付けられた」ものでないものを含むこととなり、むしろ拡張している。
(イ) 「測定回路」について
本件補正は、補正前の請求項1に記載された事項である、「第1のセンサ」及び「第2のセンサ」が「結合」された「渦流量計の測定回路」について、「前記少なくとも一つのセンサ」の「各々が」「結合」された「渦周波数の検出に基づくプロセス流体の流量の出力を生成するように構成された流量計電子回路」と補正することを含むところ、このような補正は、次のa及びbに示したとおり、補正前の請求項1に記載した「発明を特定するために必要な事項」を限定するものであるとはいえない。
a 測定回路160は、流量計電子回路130の内部構成要素であるところ(本願の段落【0018】~【0022】、図7A及び7B参照)、補正により「測定回路」という発明特定事項が削除され、それを含む「流量計電子回路」の構成を付加している。
b 補正前は、「第1のセンサ」及び「第2のセンサ」が「測定回路」に「結合された」と特定されていたが、補正後は、「少なくとも一つのセンサ」の「各々」が「流量計電子回路」に「結合され」たとしており、「センサ」と「測定回路」の「結合」に係る特定事項が削除され、「測定回路」を含む「流量計電子回路」との「結合」に係る特定事項を付加しており、センサの結合先の概念範囲を拡張している。
(ウ) 以上検討のとおり、本件補正は、特許請求の範囲の減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものに限る。)を目的とするものではない。
イ 発明解決課題の同一性について
本件補正前の請求項1に係る発明の解決しようとする課題は、明細書の段落【0003】に「渦流量計内の渦を感知するために現在使用されている渦センサは一般的に、比較的複雑であり、高価な設計を必要とし得る。さらに、センサ又は他の何らかの適切な構造体が渦と相互作用して検出するために流管に挿入されなければならないので、そのようなセンサは追加的な締結具及び強固なシールを必要とする。したがって、プロセス流体はそのような構造体と直接接触し、プロセス流体が漏れないようにするためにプロセス侵入自体が注意深くシールされなければならない。」と記載されていているように、従来の渦センサが「追加的な締結具及び強固なシールを必要」としていたことであると認められる。
他方、本件補正により請求項1には、「フローノイズを検出するために前記シェダーバーの上流側の前記流管の前記外面に取り付けられた少なくとも一つのセンサ」が新たに特定されており、かかる発明特定事項に対応する明細書の記載(段落【0011】、【0015】、【0016】、【0021】、【0026】)を参照すると、補正後の請求項1に係る発明の解決しようとする課題は、上流側ポンプがプロセス流体に圧力変動を与える場合に、流管を流れるプロセス流体がフローノイズを発生させるため、検出信号からこのフローノイズに対応する変動成分を除去することであると認められる。
そうすると、補正の前後で発明の解決しようとする課題は異なることになるから、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一ではない。
よって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮(その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)を目的とするものではない。
(2) 本件補正の目的について
以上検討のとおり、本件補正は、特許請求の範囲の減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)を目的とするものではない。
また、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正又は明瞭でない記載の釈明を目的とするものではないことは明らかである。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでもない。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1から16に係る発明は、令和2年4月30日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1から16に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1の記載は、前記第2の1(2)に示したとおりである。以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。
第4 原査定の拒絶の理由
原査定における本願発明についての拒絶の理由は、次のとおりである。
1 理由1
本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった次の引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
2 理由2
本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった次の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:実願昭52―086181号(実開昭54―14565号)のマイクロフィルム
第5 引用文献の記載事項及び引用発明の認定
1 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
(1) 引用文献1に記載された事項
上記引用文献1には、次の事項が記載されている。
なお、下線は、当審が付したものであり、後述の引用発明の認定に直接用いるところに付してある。
(明細書1頁13~17行)
「 本考案はカルマン渦を利用した流速又は流量の測定装置に関するものである。
本考案の目的は測定流体中の異物の衝突等による破壊を受けない堅牢な渦検出手段を具備する流速流量測定手段を提供するにある。」
(明細書1頁19行~3頁10行)
「 第1図は本考案の一実施例の構成説明図である。図において、1は管、2は管1に直角に挿入された断面等脚台形の柱状の渦発生体、3は渦発生体より下流の管1の管壁に設けられた鍔部31を有し断面凹状の受圧ホルダで、凹状部の底部32はカルマン渦発生による圧力変化を充分感知できるように薄くなっている。
4は受圧ホルダの底部32に設けられた圧電素子である。5は管1と受圧ホルダ3とをシールするパッキングである。Dは管1の内径、dは渦発生体の流れに対向する前縁の長さで、この場合はd/D≧0.2になるように選ばれている。
以上の構成において、その動作を説明する。
測定流体が管1内を図1の矢印に示すように左から右に流れると、渦発生体2によりカルマン渦が発生する。発生したカルマン渦は、例えば管1の内径Dと渦発生体2の前縁の長さdがd/D≧0.2の関係があれば、管1の管壁に接しながら下流に移動する。渦発生体2より下流の管壁には受圧ホルダ3を介して圧電素子4が設けられているので、圧電素子4にはカルマン渦の通過ごとに電圧が誘起される。この周波数を検出すれば渦発生周波数が検出できる。
この場合、圧電素子は流路外の管壁に設置されているので堅牢な構造にすることができる。
また、検出部分が管壁から流路内に突出していないので、測定流体の異物の衝突による検出部分の破壊の恐れはきわめて少ない。
また、圧力の変化を検出するようにしているので、測定流体に面しているホルダ3の面等にゴミが付着しても、電極等を用いた場合のように、感度の低下をきたす恐れはない。」
(明細書3頁20行~5頁8行)
「 第3図は本考案の他の実施例の構成説明図である。
本実施例においては、管1の管壁に管1の軸心をはさんで対向して2個の圧電素子を設けたものである。本実施例においては両圧電素子の誘起電圧を差動的に検出し、ノイズを除去するようにしたものである。カルマン渦による誘起電圧は各圧電素子では逆相であり、管路振動等による誘起電圧は同相である。したがって、両圧電素子の誘起電圧の差を取れば管路振動等によるノイズはキャンセルすることができる。
第4図は本考案の他の実施例の構成説明図である。
本実施例においては、受圧ホルダ3、鍔部31と底部32にそれぞれ圧電素子41、42を設けたもので、第3図例と同様に両圧電素子の誘起電圧を差動的に検出し、ノイズを除去しようとするものである。但し、カルマン渦による信号は圧電素子42のみしか得られないので、第3図例に比し信号電圧は1/2になる。しかし、受圧ホルダ3及び管1の管壁の取付け穴が1個で済む利点を有する。
第5図は本考案の別の実施例の構成説明図である。
本実施例においては、圧電素子4を受圧ホルダ3を用いず管1に直接接着したもので、この場合、圧電素子4の接着されている管1の部分はカルマン渦による圧力変化が充分に圧電素子4に伝わるように管壁の厚さを薄くする必要がある。しかしながら、受圧ホルダ3、パッキング5の部品を必要としない利点を有する。」
第1図
「
[図:0001380501000001.jpg]
」
第3図
「
[図:0001380501000002.jpg]
」
第4図
「
[図:0001380501000003.jpg]
」
第5図
「
[図:0001380501000004.jpg]
」
(2) 引用文献1の第5図から読み取れる事項の認定
引用文献1の第5図においては、「圧電素子4を受圧ホルダ3を用いず管1に直接接着したもの」(4頁20行~5頁2行)であることを踏まえると、当該第5図から次の事項が読み取れる。
<図面から読み取れる事項>
「2個の圧電素子4が設けられ、当該2個の圧電素子4は、渦発生体2の下流側の管1の外壁に直接接着されること。」
(3) 引用発明の認定
前記(1)及び(2)に記載した事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「 カルマン渦を利用した流速又は流量の測定装置であって(1頁13、14行)、
管1と、当該管1に直角に挿入された断面等脚台形の柱状の渦発生体2と(1頁20行~2頁1行)、を有し、
圧電素子4が管1に直接接着され、圧電素子4の接着されている管1の部分はカルマン渦による圧力変化が充分に圧力素子4に伝わるように管壁の厚さを薄くされ(5頁2~6行)、
2個の圧電素子4が設けられ、当該2個の圧電素子4は、渦発生体2の下流側の管1の外壁に直接接着され(図面から読み取れる事項)、
測定流体が管1内を流れると、渦発生体2によりカルマン渦が発生し、発生したカルマン渦は管1の管壁に接しながら下流に移動し(2頁13~18行)、
圧電素子4には、カルマン渦の通過ごとに電圧が誘起され、この周波数を検出すれば渦発生周波数が検出できる(2頁19行~3頁1行)、
流速流量測定装置」
第6 本願発明と引用発明の対比
1 本願発明と引用発明の構成ごとの対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1) 引用発明は、「カルマン渦を利用した流速又は流量の測定装置」であるから、本願発明と引用発明は、「渦流量計」の発明である点で一致する。
(2) 内部に測定流体を流すための空間を備える管について、当該測定流体の流入側と排出側のそれぞれに端部を備えることは明らかであるから、引用発明の「管1」においても流入側と排出側のそれぞれに端部を有することは当業者にとって自明なことである。そして、当該管1の流入側の端部と排出側の端部は、本願発明の「流管」の「第1の端部」と「第2の端部」に相当する。
したがって、引用発明の「管1」は、本願発明の「第1の端部と第2の端部とを有する流管」に相当する。
(3) 引用発明の「渦発生体2」は、「断面等脚台形の柱状」をなしているから、「バー」の形状を備えているといえる。また、引用発明の「渦発生体2」が「測定流体が管1内を流れると、渦発生体2によりカルマン渦が発生」することは、本願発明の「シェダーバー」が「前記流管を流れる流体に渦を発生させるように構成されている」ことに相当する。よって、引用発明の「渦発生体2」は、本願発明の「シェダーバー」に相当する。
前記(2)の検討結果の、引用発明の「管1」が本願発明の「第1の端部と第2の端部とを有する流管」に相当することを踏まえると、引用発明の「渦発生体2」が「管1に直角に挿入」されることは、本願発明の「シェダーバー」が「前記第1の端部と前記第2の端部との間の前記流管内に配置」されることに相当する。
以上を総合すると、本願発明と引用発明は、「前記第1の端部と前記第2の端部との間の前記流管内に配置されたシェダーバーであって、前記流管を流れる流体に渦を発生させるように構成されている、シェダーバー」を含む点で一致する。
(4) 引用発明の「2個の圧電素子4」は、本願発明の「第1のセンサ」と「第2のセンサ」に相当し、引用発明において、「2個の圧電素子4が設けられ、当該2個の圧電素子4は、渦発生体2の下流側の管1の外壁に直接接着」されることは、本願発明の「第1のセンサ」と「第2のセンサ」が、「前記シェダーバーの下流で、前記流管の外面に取り付」けられることに相当する。
引用発明の圧電素子4には、カルマン渦の通過ごとに電圧が誘起されるところ、カルマン渦の通過により引用発明の「2個の圧電素子4」に「誘起」される「電圧」は、本願発明の「第1のセンサ信号」と「第2のセンサ信号」に相当する。
ここで、引用発明は、圧電素子に誘起される電圧の周波数を検出すれば、渦発生周波数が検出できるものであるところ、カルマン渦を利用する流量計が渦発生周波数と流量が比例することを利用し、渦発生周波数から流量を求めるものであることは、技術常識であって自明なことであるから、引用発明の流速流量測定装置は、圧電素子4に誘起された電圧から渦発生周波数を検出し、検出された渦発生周波数から流量を導出していることは明らかである。
そして、この流量導出のために、引用発明の流速流量測定装置は、2個の圧電素子4から誘起電圧の供給を受け、渦発生周波数を検出し、渦発生周波数から流量を導出するための構成を備えているところ、当該構成は、電圧の供給を受けて、周波数及び流量の導出をしているから、電気的な回路であるといえる。よって、引用発明における2個の圧電素子4からの誘起電圧を受け、流量導出するための構成は、本願発明の「第1のセンサ信号」及び「第2のセンサ信号」を「供給するために」「第1のセンサ」及び「第2のセンサ」に「結合」される「測定回路」に相当する。
以上の検討結果を総合すると、本願発明と引用発明は、「前記シェダーバーの下流で、前記流管の外面に取り付けられた第1のセンサであり、第1のセンサ信号を供給するために前記渦流量計の測定回路に結合された前記第1のセンサと、前記シェダーバーの下流で、前記流管の外面に取り付けられた第2のセンサであり、第2のセンサ信号を供給するために前記渦流量計の前記測定回路に結合された前記第2のセンサ」を含む点で一致する。
(5) 引用発明では、カルマン渦による圧力変化が充分に圧力素子4に伝わるように管壁の厚さを薄くしているところ、圧電素子4は圧力による歪みや変位を電圧に変換する素子であるから、引用発明の圧電素子4は、管壁の薄い部分を介して伝えられたカルマン渦による圧力変化、すなわち、管壁の薄い部分のカルマン渦による圧力変化に伴う変形を検出していることは明らかである。したがって、引用発明の2個の圧電素子4に誘起される電圧は、カルマン渦の発生による圧力変化に伴う管壁の薄い部分の変形が検出されるように構成されているといえる。
前記(4)のカルマン渦の通過により引用発明の2個の圧電素子4に誘起される電圧が本願発明の「第1のセンサ信号」と「第2のセンサ信号」に相当することも踏まえると、本願発明と引用発明は、「前記第1のセンサ信号及び前記第2のセンサ信号が、前記流管内の渦に起因する前記流管の個々の変形を検出するように構成される」点で一致する。
以上の検討の点を総合すると、本願発明と引用発明には相違点はないから、本願発明は、引用発明と同一である。
2 請求人の主張について
(1) 請求人の主張
ア 審判請求書における主張
請求人は、審判請求書において次の主張をしている。
<請求人の主張>
引用文献1、3~6は、本件補正後の請求項1に係る発明のように「渦発生体の上流側と下流側にセンサを設けて、渦発生体の上流側の流管の外面に取り付けられたセンサからの信号を解析してプロセス流体のフローノイズを検出し、渦発生体の下流側の流管の外面に取り付けられたセンサからの信号を解析して渦周波数を検出する」ように、換言すれば、本願発明のように渦発生体の上流側と下流側にセンサが設けられた 構成及び作用が得られておらず、本願発明の「コモン・モード・ノイズ低減を可能にしながら、変形検出合計信号に対する周波数解析を行うことによって渦周波数を計算し、計算された渦周波数を使用して流量速度出力信号を得る」という効果を得ることができないため、本件補正後の請求項1に係る発明は、引用文献1、3~6に対して進歩性を有する。
イ 意見書における主張
請求人は、令和2年4月30日付けで提出した意見書において次の主張をしている。
<請求人の主張>
引用文献1には、本願発明の(請求項1)に記載された「第1のセンサ信号及び第2のセンサ信号が、流管内の渦に起因する流管の個々の変形を検出する構成」については何も記載されていないため、引用文献1が本願発明と同一であるか、あるいは引用文献1から当業者が容易に本願発明を想起できたとは考えられない。
(2) 請求人の主張についての検討
ア 審判請求書における主張について
審判請求書における主張は、補正後の請求項1に基づく主張であるところ、前記第2で説示したとおり、本件補正は却下されたから、当該主張は、採用できない。
イ 意見書における主張について
前記1(5)で検討したとおり、本願発明において「前記第1のセンサ信号及び前記第2のセンサ信号が、前記流管内の渦に起因する前記流管の個々の変形を検出するように構成」されることは、引用文献1の記載から読み取れる事項であるから、請求人の主張は採用できない。
3 本願発明と引用発明の対比のむすび
以上検討のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であり、また、本願発明は、引用文献1に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるともいえる。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し、また、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-013849