審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2023-021637

単色性及び隠蔽性を向上させる反射式インナーレッドドットサイト光学系

審判番号
2023-021637
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-540414外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年12月20日
審決日
2025年10月27日
公報発行日
2026年04月24日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (F41G) / P18 .537-WZ (F41G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-540414号「単色性及び隠蔽性を向上させる反射式インナーレッドドットサイト光学系」拒絶査定不服審判事件〔令和2年7月16日国際公開、WO2020/143504号、令和4年3月11日国内公表、特表2022-518006号〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 12項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、2019年(令和元年)12月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2019年1月12日、中国(CN))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和3年 8月27日 :手続補正書の提出
令和4年 7月12日付け:拒絶理由通知書

同年12月 5日 :意見書、手続補正書の提出

同月28日付け:拒絶理由通知書
令和5年 6月 9日 :意見書の提出

同年 8月15日付け:拒絶査定

同年12月20日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和6年10月24日付け:当審における拒絶理由通知書
令和7年 1月29日 :意見書、手続補正書の提出

同年 4月17日付け:当審における拒絶理由通知書(最後)

同年 8月20日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明(本願発明の認定)

本願の請求項1~3に係る発明は、令和7年8月20日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
LEDチップ(1)及びLEDチップ(1)の出射光を反射するためのレンズ(3)を含む単色性及び隠蔽性を向上させる反射式インナーレッドドットサイト光学系であって、前記LEDチップ(1)の近傍には、前記LEDチップ(1)とレンズ(3)との間に配置されるとともに狭帯域干渉フィルターフィルムがめっきされたフィルターシート(2)が設けられ、このフィルターシート(2)は、前記LEDチップ(1)が発する中心波長以外の広い波長帯域の光線をフィルタリングして、人の眼に入る光の単色性を向上させ、フィルターシート(2)から出射される中心波長以外の光線の光エネルギーが減衰又はカットされ、フィルターシート(2)を透過した中心波長の光エネルギーが、フィルターシート(2)からレンズ(3)の反射面に照射され、反射面には中心波長をカットするカットフィルムがメッキされ、
前記LEDチップ(1)とフィルターシート(2)との間の距離が0~10mmであることで前記フィルターシート(2)のフィルタリング効果を向上させる
ことを特徴とする反射式インナーレッドドットサイト光学系。」

第3 当審における拒絶の理由の概要

当審において通知した令和6年10月24日付けの拒絶理由のうちの理由2は、次のとおりのものである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記

<引用文献一覧>

1.米国特許出願公開第2012/0110887号明細書

2,特開2013-252413号公報(周知技術を示す文献)

3.中国実用新案第202928950号明細書(周知技術を示す文献)

4.中国特許出願公開第108873135号明細書(周知技術を示す文

献)

5.特開2007-187397号公報(周知技術を示す文献)

6.韓国公開特許第10-2014-0050396号公報(周知技術を示

す文献)

<請求項と引用文献の関係>

・請求項 1~3

・引用文献等 1~6

第4 当審の判断

1 引用文献1について

(1)記載事項

折りたたみ中(クリックで表示)

引用文献1には、以下の事項が記載されている。なお、括弧内は、当審における日本語翻訳文であり、下線は、当審で付記したものである。

ア「[0019] The sight 10 also includes a light source 18 which may include, for example, an LED, a laser, or a liquid crystal display (LCD), powered by a power supply 20, such as a battery. Line 22 represents visible light radiation which embodies an image of a marker. The image may be a colored dot, a set of cross-hairs, alpha/numeric text, or any other figure that may be used as a position marker or to provide information that may be helpful to a user. In this embodiment, the radiation 22 may be a relatively narrowband or monochromatic color light. In other embodiments, as will be described, the light source or multiple light sources may emit multiple narrowband or monochromatic light radiations.」

([0019] また、照準器10は、例えば、LED、レーザー、液晶ディスプレイ(LCD)などを含む光源18を含み、バッテリーなどの電源20によって給電される。ライン22は、マーカの画像を具現化する可視光放射を表す。画像は、着色されたドット、一組の十字線、アルファ/数字テキスト、または位置マーカとして使用され得るか、またはユーザに役立ち得る情報を提供し得る他の任意の図形であってよい。この実施形態では、放射線22は、比較的狭帯域または単色の色光であってもよい。他の実施形態では、これから説明するように、光源又は複数の光源は、複数の狭帯域光又は単色光放射を放射してもよい。)

イ「[0020] The sight 10 also includes an optical device 23 which includes a lens 24 and a filter 26. The lens 24 is located within the optical path of both the broadband radiation 14 and the narrowband radiation 22. The lens 24 may carry the filter 26. In this embodiment, the filter may be applied to a single surface of the lens, but in alternative embodiments of optical devices, the filter may be spaced apart from the lens, applied to multiple surfaces of the lens or embedded on or in a layered optical device. In this embodiment, filter 26 is a dichroic combining filter. The filter 26 may be implemented as a bandpass or edge filter.」

([0020] 照準器10はまた、レンズ24およびフィルタ26を含む光学装置23を備えている。レンズ24は広帯域放射14と狭帯域放射22の両方の光路内に配置されている。レンズ24は、フィルタ26を有していてもよい。この実施形態では、フィルタは、レンズの1つの表面に適用されてもよいが、光学装置の他の実施形態では、フィルタは、レンズから間隔を置いて、レンズの複数の面に適用されたまたは層状光学素子の上又は中に埋め込むことができる。この実施形態では、フィルタ26はダイクロイックフィルタである。フィルタ26は、帯域フィルタまたはエッジ・フィルタとして実装されてもよい。)

ウ「[0021] In this embodiment, the filter 26 reflects a portion of the narrowband radiation 22, creating reflected radiation 30 and transmits a portion of the broadband radiation 14, creating transmitted radiation 28. Conveyed radiations 28 and 30 are combined and travel through the sight 10 to an eye (or a sensor) 32. A portion of the radiation 14 shown as radiation 34 is reflected and is not combined with the radiation 30.」

([0021] この実施形態では、フィルタ26は、狭帯域放射22の一部を反射し、反射した放射線30を生成し、また、広帯域放射14の一部分を透過させ、透過した放射線28を生成する。放射線28及び放射線30は結合されて、照準器10を通過して眼(又はセンサ)32まで進む。放射線34として示される放射線14の一部は、反射され、反射放射線30と結合されない。)

エ「[0022] For example, if the light source 18 emits a generally monochromatic red light radiation 22 and the filter 26 is selected or tuned to reflect red light, it will convey red light radiation 30 toward the eye 32. However, it will also reflect red light radiation 34 from the broadband radiation 14 so that the transmitted radiation 28 does not include red light radiation. Consequently, the transmitted radiation 28 may appear dim and overly saturated with green light.」

([0022] 例えば、光源18は、一般に、単色の赤色光放射22を放出し、フィルタ26は、赤色光を反射するように選択または調整されるならば、それは、赤色光の放射線30を眼32に向けて搬送する。しかしながら、透過した放射線28は赤色光の放射を含むことがないように、広帯域放射14から赤色光の放射線34は反射されることになる。その結果、透過した放射線28は、薄暗く見え、緑色光が過度に飽和しているように見えることがある。)

オ「[0024] FIG. 2 is a graph that explains the operation of a filter, such as a filter that may be used for filter 26. The horizontal axis represents wavelength, increasing from left to right. The solid line 40 represents the spectrum of a narrow band light source, such as light source 18, and the broken line 42 represents the reflection characteristic of a nominal filter. In this embodiment, the nominal filter is selected to reflect the majority of the spectrum from the light source. Even if the spectrum shifts to longer or shorter wavelengths by 10 nm due to changes in a physical property of the light source such as temperature, changes in drive current, part variability, deviation of the peak wavelength from a nominal peak wavelength, or other causes, the nominal filter conveys the majority of the narrow band spectrum toward the eye 32. Additionally, the nominal filter reflects (as radiation 34) the portion of the broadband spectrum 14 that falls within the reflection characteristic 42 of the nominal filter.」

([0024] 図2は、フィルタ26に使用され得るフィルタなどのフィルタの動作を説明するグラフである。横軸は波長を表し、左から右に向かって増加する。実線40は光源18などの狭帯域光源のスペクトルを表し、破線42は公称フィルタの反射特性を表す。この実施形態では、公称フィルタは、光源からのスペクトルの大部分を反射するように選択される。温度、駆動電流の変化、部品のばらつき、ピーク波長の公称ピーク波長からのずれ等の光源の物理的特性の変化によってスペクトルが10nmずつ長波長または短波長にシフトしても、公称フィルタは狭帯域スペクトルの大部分を眼32に向けて伝達する。さらに、公称フィルタは、広帯域スペクトル14のうち公称フィルタの反射特性42内に入る部分を(放射34として)反射する。)

カ Fig.1は、以下のとおりである。

「
[図:0001433454000001.jpg]
」

キ Fig.2は、以下のとおりである。

「
[図:0001433454000002.jpg]
」

(2)認定事項

前記(1)から、以下の事項が認められる。

ア 段落[0019]、[0022]、及びFig.2から、光源18から放射される狭帯域放射22は、単色性を向上させた赤色光放射である。

イ 段落[0020]及びFig.1から、フィルタ26は、レンズ24の反射面に設けられ、光源18から放射された狭帯域放射22は、反射面に照射される。

ウ 段落[0021]、[0022]、[0024]、Fig.2、及び前記イから、光源18から放射される狭帯域放射22の中心波長が反射面に照射され、当該中心波長を反射する。

エ 段落[0019]、[0021]、[0022]、及び前記ウから、フィルタ26は、狭帯域放射22の中心波長を反射して赤色光のドットである放射線30を生成し、放射線30は、眼32まで進む。

(3)引用文献1に記載された発明

前記(1)、(2)から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。なお、括弧内に主な参照箇所を示した。

「LEDを含む光源18とレンズ24およびフィルタ26を含む光学装置23を備えている照準器10であって([0019]、[0020])、
前記光源18は、単色性を向上させた赤色光放射である狭帯域放射22を放出し(前記(2)ア)、
前記レンズ24の反射面に前記フィルタ26が設けられ(前記(2)イ)、
前記狭帯域放射22の中心波長が前記反射面に照射され(前記(2)ウ)、
前記フィルタ26は、前記狭帯域放射22の前記中心波長を反射して赤色光のドットである放射線30を生成し、前記放射線30は、眼32まで進む(前記(2)エ)、
照準器10。」

2 本願発明1について

(1)対比

ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、後者の「LED」が前者の「LEDチップ(1)」に相当し、以下同様に、後者の「レンズ24」は前者の「レンズ(3)」に、後者の「反射面」が前者の「反射面」に、後者の「放射」が前者の「光エネルギー」に、後者の「反射」することが前者の「反射する」ことに、後者の「照準器10」が前者の「サイト光学系」に、それぞれ相当する。

そして、以上の相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。

イ 後者の「LEDを含む光源18」が「放出」する「単色性を向上させた赤色光放射である狭帯域放射22」は、「狭帯域放射22」が「光源18」が「含む」「LED」の出射光であるのは明らかなので、前者の「LEDチップの出射光」に相当する。

ウ 前記イから、後者の「前記狭帯域放射22の前記中心波長を反射」する「フィルター26」が「反射面」に「設けられ」た「前記レンズ24」は、前者の「LEDチップ(1)の出射光を反射するためのレンズ(3)」に相当する。

エ 後者の「前記光源18は、単色性を向上させた赤色光放射である狭帯域放射22を放出し、」「前記フィルタ26は、前記狭帯域放射22の前記中心波長を反射して赤色光のドットである放射線30を生成」する「照準器10」は、「フィルタ26」が「狭帯域放射22の中心波長を反射して」「生成」するものが「赤色光のドットである放射線30」であるので、前者の「反射式インナーレッドドットサイト光学系」に相当し、また、前者の「単色性及び隠蔽性を向上させる反射式インナーレッドドットサイト光学系」とは、「単色性を向上させる反射式インナーレッドドットサイト光学系」において共通する。

オ 後者の「前記光源18は、単色性を向上させた赤色光放射である狭帯域放射22を放出し、」「前記フィルタ26は、前記狭帯域放射22の前記中心波長を反射して赤色光のドットである放射線30を生成し、前記放射線30は、眼32まで進む」ことにおいて、「単色性を向上させた赤色光放射である狭帯域放射22」は、「眼32」に入る光の単色性を向上させているといえる。

そうすると、後者の「LEDを含む光源18」が「放出」する「単色性を向上させた赤色光放射である狭帯域放射22」と、前者の「前記LEDチップ(1)が発する中心波長以外の広い波長帯域の光線をフィルタリングして、人の眼に入る光の単色性を向上させ、フィルターシート(2)から出射される中心波長以外の光線の光エネルギーが減衰又はカットされ、フィルターシート(2)を透過した中心波長の光エネルギー」は、「LEDチップを有する光源から発し、人の眼に入る光の単色性を向上させた、中心波長を中心とした狭帯域の光エネルギー」である点で共通する。

カ 後者の「レンズ24の反射面に前記フィルタ26が設けられ、」「前記フィルタ26は、前記狭帯域放射22の前記中心波長を反射」することにおいて、「前記フィルタ26」は、「前記狭帯域放射22の前記中心波長を反射」することによって、「前記狭帯域放射22の前記中心波長」が「レンズ24」を透過しないようにしているので、「前記フィルタ26」は、「前記狭帯域放射22の前記中心波長」をカットするものであるといえる。

そうすると、後者の「フィルタ26」と前者の「カットフィルム」は、「カット部材」で共通するので、後者の「レンズ24の反射面に前記フィルタ26が設けられ」ることと、前者の「レンズ(3)の」「反射面には」「カットフィルムがメッキされ」ることは、「レンズの」「反射面には」「カット部材が設けられ」る点で共通する。

キ 後者の「前記反射面に照射され」ることは、前者の「レンズ(3)の反射面に照射され」ることに相当する。

ク 前記オ~キから、後者の「前記光源18は、単色性を向上させた赤色光放射である狭帯域放射22を放出し、前記レンズ24の反射面に前記フィルタ26が設けられ、前記狭帯域放射22の中心波長が前記反射面に照射され、前記フィルタ26は、前記狭帯域放射22の前記中心波長を反射して赤色光のドットである放射線30を生成し、前記放射線30は、眼まで進む」ことと、前者の「前記LEDチップ(1)が発する中心波長以外の広い波長帯域の光線をフィルタリングして、人の眼に入る光の単色性を向上させ、フィルターシート(2)から出射される中心波長以外の光線の光エネルギーが減衰又はカットされ、フィルターシート(2)を透過した中心波長の光エネルギーが、フィルターシート(2)からレンズ(3)の反射面に照射され、反射面には中心波長をカットするカットフィルムがメッキされ」ることは、「LEDチップを有する光源から発し、人の眼に入る光の単色性を向上させた、中心波長を中心とした狭帯域の光エネルギーが、前記レンズの反射面に照射され、前記反射面には前記中心波長をカットするカット部材が設けられる」点で共通する。

そうすると、本願発明1と引用発明とは、

「LEDチップ及び当該LEDチップの出射光を反射するためのレンズを含む単色性を向上させる反射式インナーレッドドットサイト光学系であって、前記LEDチップを有する光源から発し、人の眼に入る光の単色性を向上させた、中心波長を中心とした狭帯域の光エネルギーが、前記レンズの反射面に照射され、前記反射面には前記中心波長をカットするカット部材が設けられる
反射式インナーレッドドットサイト光学系。」

である点で一致し、以下の点で、相違する。

(相違点1)

単色性を向上させる反射式インナーレッドドットサイト光学系に関して、本願発明1は、単色性「及び隠蔽性」を向上させる反射式インナーレッドドットサイト光学系であるのに対して、引用発明は、照準器10の隠蔽性については特定されていない点。

(相違点2)

LEDチップを有する光源から発し、人の眼に入る光の単色性を向上させた、中心波長を中心とした狭帯域の光エネルギーに関して、本願発明1は、「前記LEDチップ(1)の近傍には、前記LEDチップ(1)とレンズ(3)との間に配置されるとともに狭帯域干渉フィルターフィルムがめっきされたフィルターシート(2)が設けられ、このフィルターシート(2)は、前記LEDチップ(1)が発する中心波長以外の広い波長帯域の光線をフィルタリングして、」人の眼に入る光の単色性を向上させ、「フィルターシート(2)から出射される中心波長以外の光線の光エネルギーが減衰又はカットされ、フィルターシート(2)を透過した中心波長の光エネルギー」であり、「フィルターシート(2)から」レンズ(3)の反射面に照射されて、「中心波長」がカットされ、「前記LEDチップ(1)とフィルターシート(2)との間の距離が0~10mmであることで前記フィルターシート(2)のフィルタリング効果を向上させる」のに対して、引用発明では、「LEDを含む光源18」は「単色性を向上させた赤色光放射である狭帯域放射22を放出し、前記狭帯域放射22の中心波長が」反射面に照射され、反射されるもののであり、前記「LEDを含む光源18」がかかる「フィルターシート」を有していることが特定されていない点。

(相違点3)

レンズの反射面にカット部材が設けられることに関して、本願発明1は、レンズ(3)の反射面に「カットフィルムがメッキされ」るのに対して、引用発明は、レンズ24の反射面にフィルタ26が設けられるものの、その設けるための手段が特定されていない点。

(2)相違点についての検討

ア 相違点1について

前記1(1)ウ~キから、引用発明において、光源18から放出されたる狭帯域放射22は、フィルタ26によって、そのほぼ全てが反射されて使用者の眼32に向かい、レンズ24を透過するものはほとんどないといえる。

そうすると、照準器10は、隠蔽性も向上しているといえるものであるので、相違点1は、実質的な相違点ではない。

イ 相違点2について

例えば、引用文献2(段落【0011】、【0015】、【0019】、【0022】、【0037】、図1、及び3)、引用文献3([0007]~[0009]、[0011]、[0012]、図1)などに示されるように、LEDを含む単色光を出力する光源において、単色光のLEDと当該LEDの出射方向の近傍に配置した狭帯域のバンドパスフィルターを含む光源であって、前記LEDからの単色光の中心波長を中心とした所定帯域以外の光エネルギーを狭帯域のバンドパスフィルターでフィルタリングすることで、単色光の単色性を向上させた光源は、様々な技術分野で用いられる従来周知のもの(以下「周知技術1」という。)であるといえる。そして、引用文献2の段落【0022】には、単色光として赤色光を出力する光源が例示され、また、段落【0019】の記載から、引用文献2には、狭帯域のバンドパスフィルターとして、干渉フィルターが示唆されているといえる。

また、例えば、引用文献4([0053]、[0058]、及び図1)などに示されるように、バンドパスフィルターである干渉フィルターをバンドパスフィルター層がメッキされたフイルムからなるフィルターシートとして構成することも従来周知の技術(以下「周知技術2」という。)にすぎない。

更に、引用文献2(段落【0015】)及び引用文献6([0037]及び図2)などに示されるように、LEDの近傍にバンドパスフィルターを設けるに際して、両者の間の距離を小さくすることも従来周知の技術(以下「周知技術3」という。)にすぎないといえる(引用文献2の段落【0015】には、両者の間の距離を0.01~3mmとすることが例示され、引用文献6の図2には、半導体発光素子パッケージの出射面にバンドパスフィルター層160を設けること、すなわち、両者の間の距離を0とすることが例示されている。)。

ここで、引用発明における光源18と周知技術1における光源は、ともに、LEDを含み、かつ単色性を向上させた単色光を放出する光源である点で、共通するものである。

そうすると、引用発明において、周知技術1及び2を踏まえ、光源18を、単色光のLEDと該LEDの出射方向近傍に設けられた干渉フィルターである狭帯域のバンドパスフィルターを含む光源とし、単色光のLEDの中心波長を中心とした所定帯域幅以外の光エネルギーをフィルタリングして、単色性を向上させた赤色光放射である狭帯域放射22を放出させて、狭帯域放射22をレンズ24の反射面に照射させ、反射させるように構成すること、及び狭帯域のバンドパスフィルターとして、バンドパスフィルター層がメッキされた周知の干渉フィルターであるフィルターシートを用いることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

また、LEDの近傍にバンドパスフィルターを設けるに際して、両者の間の距離をなるべく小さくした方が、より多くのLEDの出射光がバンドパスフィルターに取り込まれてフィルタリング効果が向上することは技術常識であるので、当該技術常識及び周知技術3を踏まえれば、引用発明において、前述のように、光源18をLEDと狭帯域のバンドパスフィルターを含む光源とするに際し、LEDと狭帯域のバンドパスフィルターとの間の距離をどの程度近づけるかは、狭帯域のバンドパスフィルターに取り込まれるLEDの出射光の量が所望のものとなるように、当業者が適宜に決定し得る事項であって、設計的事項の範ちゅうにすぎないといえる。

そして、本願明細書及び図面の記載をみても、相違点2に係る本願発明1の構成における「LEDチップ(1)とフィルターシート(2)との間の距離」の値に臨界的意義も認められず、また、引用文献2に記載されたLEDとバンドパスフィルターパネルの間隙の具体的な値(段落【0015】)や引用文献6の図2の記載に照らしてみて、引用発明において、相違点2に係る本願発明1の構成における「LEDチップ(1)とフィルターシート(2)との間の距離」の値を採ることが特段のことであるともいえない。

そうすると、引用発明において、周知技術1~3及び技術常識を踏まえ、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

ウ 相違点3について

例えば、引用文献5(段落【0010】及び図3)などに示されるように、レンズの表面に対して反射部材を設ける際に、反射部材として反射メッキ膜を形成することは、従来周知の技術(以下「周知技術4」という。)にすぎない。

そして、引用文献5には、反射メッキ膜11として、赤色光だけを反射可能である反射メッキ膜が例示されている。

ここで、引用発明におけるフィルタ26と周知技術4の反射メッキ膜とは、レンズの反射面に設けられる反射部材であって、赤色光だけを反射する反射部材である点で共通する。

そうすると、引用発明において、周知技術4を踏まえ、フィルタ26を反射メッキ膜として形成し、相違点3に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

そして、本願発明1を全体として検討しても、引用発明、周知技術1~4、及び技術常識から予測される以上の格別の効果を奏するものでもない。

よって、本願発明1は、引用発明、周知技術1~4、及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)意見書における請求人の主張について

令和7年8月20日に提出された意見書において、請求人は、「LEDチップ(1)とフィルターシート(2)との間の距離を小さくすることで、光線をできるだけフィルターシート(2)に入射させることができることにより、フィルターシート(2)のフィルタリング効果を向上させることができ」る点、「引用文献1は、少なくとも、本願の請求項1に係る発明1の「フィルターシート」に対応する構成を開示してい」ない点、引用文献2~4及び6は、「LEDチップ(1)とフィルターシート(2)との間の距離を0~10mmにすることによって、フィルターシート(2)のフィルタリング効果を向上させる」という本願請求項1に係る発明の技術的思想を全く教示してい」ない点、「引用文献5は、本願請求項1に係る発明の「フィルターシート」に対応する構成を開示してい」ない点から、「「前記LEDチップ(1)とフィルターシート(2)との間の距離が0~10mmであることで前記フィルターシート(2)のフィルタリング効果を向上させる」という本願請求項1に係る発明の特徴は、引用文献1~6から容易に想到することはできない」旨を主張する。

しかしながら、令和6年10月24日付け拒絶理由通知書における理由2、及び前記第4の2(2)イで説示したように、LEDの近傍にバンドパスフィルターを設けるに際して、両者の間の距離をなるべく小さくした方が、より多くのLEDの出射光がバンドパスフィルターに取り込まれてフィルタリング効果が向上することとなるのは技術常識にすぎない。そして、このような技術常識に基づけば、LEDの近傍にバンドパスフィルターを設けるに際して、両者の間の距離をどの程度近づけるかは、バンドパスフィルターに取り込まれるLEDの出射光の量が所望のものとなるように、当業者が適宜に決定し得る事項であって、設計的事項の範ちゅうにすぎないことである。

したがって、請求人の主張を採用することはできない。

第5 むすび

以上のとおり、本願発明1は、引用文献1に記載された発明、周知技術1~4、及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2023-021637

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ根拠条文の審決7,656件(特許法29条2項)
  • 2026-007075拒絶査定不服審判 / 2026-07-28 / 原査定取消(特許/登録すべき)遊技機
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-017993拒絶査定不服審判 / 2026-07-17 / 請求不成立ガスバリア性積層体、包装材料用積層体および包装材料
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-013752拒絶査定不服審判 / 2026-07-15 / 請求不成立ヒートポンプ
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2025-006471拒絶査定不服審判 / 2026-07-14 / 請求不成立物品
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-017241拒絶査定不服審判 / 2026-07-08 / 請求不成立ろ過方法およびろ過装置
    共通の条文: 特許法29条2項
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)3件(121・F41G、537・F41G)
  • 2022-002902拒絶査定不服審判 / 2023-12-04 / 原査定取消(特許/登録すべき)コンパクトな反射型照準器のための軸外れ非球面鏡を内蔵した平坦光学コンバイナ
    共通の審決分類: 121・F41G、537・F41G
  • 2022-007304拒絶査定不服審判 / 2023-10-26 / 原査定取消(特許/登録すべき)ターゲットのリアルタイムな飛行中シミュレーション
    共通の審決分類: 121・F41G、537・F41G
  • 2021-002218拒絶査定不服審判 / 2021-10-26 / 原査定取消(特許/登録すべき)検知された物体の情報項目を少なくとも2つの通信相手の間で伝送するための通信システ…
    共通の審決分類: 121・F41G、537・F41G

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存