特許拒絶査定不服審判
2023-006712
配筋検査システムおよび配筋検査方法
- 審判番号
- 2023-006712
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-030515
- 請求日
- 2023年04月24日
- 審決日
- 2024年02月28日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社フジタ
- 【請求人代理人】弁理士法人筒井国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 濱野 隆
- 審判官 九鬼 一慶
- 審判官 田邉 英治
- 分類
- P18 .121-Z (G01B) / P18 .575-Z (G01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019- 30515「配筋検査システムおよび配筋検査方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月31日出願公開、特開2020-134393〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成31年(2019年)2月22日を出願日とする特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和4年 9月15日付け:拒絶理由通知書
同年11月17日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 1月24日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 2月 7日 :原査定の謄本の送達)
同年 4月24日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年4月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年4月24日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和5年4月24日にされた補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についての補正であって、次の(1)に示す本件補正前(令和4年11月17日にされた手続補正後をいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載を、後記の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は、補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
「【請求項1】
第1方向に延在し、前記第1方向と交差する第2方向に配列された複数の円柱状の鉄筋を検査する配筋検査システムであって、
前記鉄筋から離間して配置され、前記第2方向に移動しながら、前記鉄筋の側面を計測するレーザースキャナーと、
前記レーザースキャナーの移動によって計測された前記鉄筋の側面における曲面形状から、前記鉄筋の中心点および半径を算出する処理部と、
を備える、配筋検査システム。」
(2) 本件補正後の請求項1
「【請求項1】
第1方向に延在し、前記第1方向と交差する第2方向に配列された複数の円柱状の鉄筋を検査する配筋検査システムであって、
前記鉄筋から離間して配置され、前記第2方向に移動しながら、前記鉄筋の側面の一部分を計測するレーザースキャナーと、
前記レーザースキャナーの移動によって計測された前記鉄筋の側面の前記一部分における曲面形状から、前記鉄筋の中心点および半径を算出する処理部と、
を備える、配筋検査システム。」
2 本件補正の目的
本件補正による請求項1についての補正は、
本件補正前の「前記第2方向に移動しながら、前記鉄筋の側面を計測するレーザースキャナー」を、本件補正後には、「前記第2方向に移動しながら、前記鉄筋の側面の一部分を計測するレーザースキャナー」とし、本件補正前の「前記レーザースキャナーの移動によって計測された前記鉄筋の側面における曲面形状」を、本件補正後には、「前記レーザースキャナーの移動によって計測された前記鉄筋の側面の前記一部分における曲面形状」としたものであるから、要するに、「レーザースキャナー」が計測する「前記鉄筋の側面」を、「前記鉄筋の側面の一部分」と限定し、「処理部」が「前記鉄筋の中心点および半径を算出する」もととなる「前記鉄筋の側面における曲面形状」を、「前記鉄筋の側面の前記一部分における曲面形状」と限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正による請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3 独立特許要件についての当審の判断
本件補正による請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討を行う。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定されるとおりのものである。
(2) 引用文献の記載事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された特開2017-9546号公報(以下「引用文献1」という。)には、次に摘記する事項が記載されている(下線は合議体が付した。以下同様である。)。
a 【0022】-【0027】、【図1】
「【発明を実施するための形態】
【0022】
はじめに、本実施形態の移動式3次元レーザスキャナを用いた配筋検査方法で用いられる、移動式3次元レーザスキャナのシステムの構成の一例について説明する。
【0023】
図1に示す、移動式3次元レーザスキャナのシステムは、移動式3次元レーザスキャナ10及び、画像処理装置100を備える。
【0024】
移動式3次元レーザスキャナ10は、ハンドヘルドスキャナとも称される片手で把持可能な3次元レーザスキャナである。移動式3次元レーザスキャナ10はスキャン部10aと本体部10bとを有する。スキャン部10aは計測者の操作により所定の走査角の範囲でレーザービームを発する発光部10cと、対象物から反射されたレーザービームを受光する受光部10dとを備える。また、本体部10bは反射されたレーザービームの反射点の集合である3次元点群を相対座標として取得して記憶する図略のデータ記憶部と、データ記憶部に記憶された点座標を点群データとしてデータ処理する図略のデータ処理部を備える。また、本体部10bの内部または本体部10bに接続されるように図略のバッテリを備える。なお、本実施形態で用いられる移動式3次元レーザスキャナ10は、本体部10bに対してスキャン部10aが自由な角度で可動する可動性を有する。可動性を有するスキャン部を有する移動式3次元レーザスキャナの場合、特定の場所から所望の場所にスキャン部を曲げてスキャンすることができるために、一度により広範囲の場所をスキャンすることができる点から好ましい。このような移動式3次元レーザスキャナの例としては、市販品として、3D laser mapping社製の移動体ハンドヘルドスキャナZEB1等が例示できる。また、可動型のスキャン部の代わりに、本体部に対してスキャン部が固定されている固定型であってもよい。
【0025】
移動式3次元レーザスキャナ10により取得された3次元点群データは、本体部10bに内蔵されたデータ記憶部に記憶される。なお、3次元点群データは、本体部10bに内蔵されたデータ記憶部に記憶される代わりに、または一旦記憶されたデータを外付けのデータ記憶部等に記憶、または、適宜転送して記憶させてもよい。
【0026】
画像処理装置100は、移動式3次元レーザスキャナ10により取得された3次元点群データを用いて3次元画像を構成して表示する処理を行う。画像処理装置100は、例えば汎用のコンピュータに3次元画像の画像処理を行うための画像処理プログラム71のソフトウェアをインストールすることにより実現される。コンピュータは、標準的な構成として、CPU等のプロセッサである演算制御部60と、ROM及びRAM等の主記憶部85と、HDDやSSD等の補助記憶部70と、移動式3次元レーザスキャナ10とのデータの出入口となる通信ボード75と、ユーザーが実空間から必要な指示や入力を与えるための、キーボードやマウス等の入力部80と、例えばCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等のディスプレイデバイスである画像表示部90とを備える。補助記憶部70には画像処理プログラム71のソフトウェアがインストールされている。演算制御部60は主記憶部85、補助記憶部70、および通信ボード75と接続され、これらを制御する。通信ボード75は、有線LANまたは無線LANやインターネットなどのネットワークを介して移動式3次元レーザスキャナ10と3次元点群データ等のデータを出入力する。また、ネットワークを介する代わりに、USB等の端子からデータを出入力したり、リムーバブルメディアを介してデータを出入力したりしてもよい。
【0027】
画像処理装置100は、汎用のコンピュータに従来から知られた一般的な3次元画像の画像処理を実行する画像処理プログラム71のソフトウェアがインストールされて構成されている。このような画像処理装置は、3次元点群データを用いて3次元画像を構成して表示する処理のほか、ノイズ除去、輪郭修正、平滑化、2値化、任意の断面の切断、拡大、計測、その他、種々の補正処理、加工処理、また、それらに基づき、所望の鉄筋間の間隔の計測や、鉄筋径の計測等も行うことができる。また、3次元画像を任意の断面でスライスしたり、任意の方向から表示したりすること等の画像処理を実行することもできる。」
「【図1】
[図:0001409939000001.jpg]
」
b 【0028】、【0029】、【図2】
「【0028】
次に、上述したような移動式3次元レーザスキャナのシステムを用いて、鉄筋構造物を含む計測対象領域の3次元点群データ(形状データ)を取得する方法について説明する。図2は、移動式3次元レーザスキャナを用いた配筋検査方法における形状データを取得するための各工程を説明するためのフローチャート、図3は建設工事現場において、移動式3次元レーザスキャナを保持する計測者の移動により移動式3次元レーザスキャナを空間で移動させながら、計測対象領域の形状データの取得作業を行っているときの様子を図示する模式説明図である。
【0029】
図2に示すように、本実施形態の移動式3次元レーザスキャナを用いた計測対象領域の3次元点群データの取得においては、はじめに鉄筋構造物を含む計測対象領域の特定が行われる(ステップS101)。すなわち、検査対象である鉄筋構造物を含む計測領域を特定する。」
「【図2】
[図:0001409939000002.jpg]
」
c 【0030】-【0033】、【図3】
「【0030】
図3を参照して説明する。図3中、10は移動式3次元レーザスキャナ、20は計測者、30は計測者が歩行する足場、40は既設の構造物であり、50が鉄筋構造物である。また、図3(a)は測定対象である鉄筋構造物50をスキャニングしている様子、図3(b)は既設の構造物40をスキャニングしている様子を示す。ステップS101においては、測定対象である鉄筋構造物50を含む計測対象領域を決定し、鉄筋構造物50及び後述するような絶対座標系の座標を特定しうる既設の構造物40を含む領域を計測対象領域として特定する。
【0031】
そして、移動式3次元レーザスキャナ10を用いて、鉄筋構造物50を含む計測対象領域のスキャニングの開始点となる任意の点にレーザービームを照射し、3次元点群データの取得を開始する(ステップS102)。3次元点群データは、図3に示すように、移動式3次元レーザスキャナ10から出射されて対象物の表面で反射したレーザービーム11の反射光を取得することにより得られる。詳しくは、移動式3次元レーザスキャナの発光部10cから出射されたレーザービームは対象物の表面に到達して反射される。表面の各点から反射された反射光を受光部10dで受光し、各点の座標を3次元の相対座標系の座標として認識し、各点の集合を3次元点群データとして取得し、記憶部に記憶させる。なお、取得される3次元点群データは、移動式3次元レーザスキャナの機械座標系や測定物を基準とする測定物座標系のような相対座標系であり、世界座標系のような地理座標系に基づく絶対座標系ではない。そのために、移動式3次元レーザスキャナは、固定式3次元レーザスキャナのようにGPSで特定した設置場所に安定させて固定させる必要がなく、自由に移動させることができる。
【0032】
そして、スキャン開始点から計測対象領域の全領域を走査するように、移動式3次元レーザスキャナを移動させながら、計測対象領域の3次元点群データの取得を継続する(ステップS103)。
【0033】
移動式3次元レーザスキャナによる3次元点群データの取得は、例えば、図3(a)及び図3(b)に示すように、移動式3次元レーザスキャナ10を片手で把持する計測者20を足場30上で歩行させながら鉄筋構造物50を含む計測対象領域にレーザービーム11を照射してスキャニングするような方法で行われる。このとき、移動の経路は特に限定されず、例えば、計測対象領域の周囲からだけではなく、必要に応じて、計測対象領域の内側から計測してもよい。また、近接したり、遠く離れた位置から計測したりしてもよい。このとき、3次元点群データの中に、絶対座標系の座標を特定可能な既知部位の座標データを併せて取得することが好ましい。絶対座標系の座標を特定可能な既知部位とは、計測対象である鉄筋構造物の周囲に存在する既設の構造物の部分等、絶対座標上で特定できる部位を意味する。」
「【図3】
[図:0001409939000003.jpg]
[図:0001409939000004.jpg]
」
d 【0037】-【0048】、【図5】
「【0037】
なお、3次元点群データの取得は移動しながら行われるために、一度のスキャニングで計測対象領域の全領域の3次元点群データを取得することが困難な場合がある。そのために、通常、複数回、複数の領域に分けてスキャニングが行われる。具体的には、各部分の任意の領域ごとに3次元点群データD1,D2,D3・・・Dnのように複数に分割して取得される。そして、最終的に計測対象領域の全領域をスキャニングする。そして、計測対象領域の各部分領域で取得された3次元点群データ(D1~Dn)を統合することにより、配筋モデルを構成するための計測対象領域の全領域の3次元点群データDALLが作成される(ステップS104)。なお、3次元点群データ(D1~Dn)の統合は、例えば、各領域の3次元点群データ(D1~Dn)の重複する点を重ねるような方法により行う。
(中略)
【0044】
このようにして得られた計測対象領域の全領域の3次元点群データDALLを用いて3次元画像を構成して表示するための画像処理を行うことにより、相対座標系に基づいて構成された鉄筋構造物の配筋モデルを含む計測対象領域の全領域に関する3次元画像が得られる。このような計測対象領域の全領域に関する3次元画像は、絶対座標系の座標に基づくものではないために位置情報は含まないが、配筋モデルが可視化されるために、配置された鉄筋の太さ,本数,ピッチ(鉄筋と鉄筋の間隔)等を確認することができる。また、3次元画像の画像処理を行うための画像処理プログラムのソフトウェアをインストールしたノートパソコンを工事現場に携帯することにより、工事現場においても速やかに配置された鉄筋の太さ,本数,ピッチ(鉄筋と鉄筋の間隔)等の3次元画像の配筋モデルを確認することもできる。また、鉄筋構造物の周囲に存在する既設の構造物や躯体のモデルを参照することにより、相対的な位置関係も確認することができる。従って、建設工事現場で鉄筋構造物の配筋モデルを含む計測対象領域の全領域に関する3次元画像を得た場合には、施工中に、既設の構造物に対する鉄筋の相対的なずれ等を容易に把握すること等もできる。
【0045】
上述したような移動式3次元レーザスキャナで取得された相対座標に基づく3次元点群データは、位置情報を有しない形状データである。位置情報を有しない形状データのみでも多くの情報が得られるが、このような形状データを絶対座標系に関連付けることにより、さらに、有用なデータとして扱うことができるようになる。このような方法を次に説明する。
【0046】
計測対象領域の全領域の形状データの3次元点群データDALL中の絶対座標を特定可能な既知部位の座標値に基づき、計測対象領域全体の形状データを絶対座標に変換する(ステップS105)。
【0047】
ステップS105においては、計測対象領域の全領域の形状データの3次元点群データDALLを、絶対座標系の座標を特定可能な既知部位の相対座標系の座標を用いて変換する。具体的には、例えば、図5(a)に示したように、鉄筋構造物52の周囲の既設の構造物42の角C1,C2,C3を3点の既知部位とした場合、3点の相対座標C1(C1x,C1y,C1Z),C2(C2x,C2y,C2Z)C3(C3x,C3y,C3Z)のそれぞれを、図5(b)に示したように、予め既設の構造物42の既知の角C1,C2,C3に対応する絶対座標系の座標A1(A1x,A1y,A1Z),A2(A2x,A2y,A2Z)A3(A3x,A3y,A3Z)のそれぞれに変換して変換式を求める。そして、その変換式を用いて、3次元画像全体の相対座標系の3次元点群データの座標を絶対座標系の3次元点群データの座標に変換することにより、図5(c)に示したように、移動式3次元レーザスキャナにより取得された相対座標系の3次元点群データDALLの座標が、位置情報を含んだ絶対座標系の3次元点群データDfinalの座標に変換される。なお、既知の絶対座標系の座標は、データーベース化された地図データ等から容易に入手できる。また、予め、GPSにより実測することにより入手してもよい。周囲に構造物等がない平坦な建設工事現場の場合においては、少なくとも3点の目印を設置し、この3点の絶対座標をGPSにより特定してもよい。
【0048】
このようにして得られた位置情報を含んだ絶対座標系の3次元点群データDfinalを用いて画像表示することにより、絶対座標系の計測対象領域全体の3次元画像を得ることができる。そして、このような3次元画像を画像表示部に表示することにより、絶対座標系で表示された鉄筋構造物の配筋モデルを得ることができる(ステップS106)。」
「【図5】
[図:0001409939000005.jpg]
」
e 【0049】-【0054】、【図6】、【図7】
「【0049】
このようにして得られた配筋モデルは、さらに使用目的に応じて所望の補正処理や加工処理等の画像処理が施されてもよい。補正処理や加工処理を施すことにより、3次元の配筋モデルをより有効に役立てることができる。
【0050】
このような画像処理の一例を、図6及び図7を参照しながら説明する。
【0051】
移動式3次元レーザスキャナのデータ集積性能や計測レンジ等の精度、または意図しないノイズが発生することにより、物体の輪郭がぼやけて正確な形状が特定できない部分を含むような3次元画像の鉄筋構造物の配筋モデルが得られることもある。このような場合、鉄筋構造物の配筋モデルから、鉄筋の芯部を抽出する処理を行い、この芯部を中心として施工に用いた予め把握している鉄筋の実直径分を膨張させる処理をする、または、芯部を中心として鉄筋の実直径分の径に置き換えることにより、配筋モデルの鉄筋を現物の鉄筋の形状に置き換えてより正確に表示するように再現させるような補正を行うことができる。
【0052】
図6に示すように、本実施形態の画像処理においては、はじめに配筋モデルを形成する鉄筋要素の芯部の特定が行われる。鉄筋要素の芯部の特定は種々の処理で行うことができるが、一例として、図7を参照して断面画像を用いて芯部を特定する方法を説明する。
【0053】
はじめに、図7(a)に示すように、得られた配筋モデルの画像から、配筋モデルの任意の断面の画像を抽出する。このとき、配筋モデルの任意の断面の各鉄筋(55a,55b,・・・55i)は、輪郭がぼやけて正確に表現されておらず、不鮮明なことがある。このような任意の断面の各鉄筋の画像において、図7(b)に示すように、各鉄筋の断面のそれぞれに近似円(56a,・・・56i)を生成させ、また、各近似円の中心(57a,・・・57i)を求める(ステップS201)。
【0054】
そして、各近似円の中心(57a,・・・57i)を芯として、図7(c)に示すように、各近似円の中心から施工に用いた鉄筋の実直径の半径だけ膨張させることにより、現実の鉄筋構造物の直径をより正確に反映させた配筋モデルに補正される(ステップS202)。そして、補正された配筋モデルの断面の画像を画像表示する(ステップS203)。また、このような画像を複数枚取得し、接続することにより、3次元的に修正することもできる。」
「【図6】
[図:0001409939000006.jpg]
」
「【図7】
[図:0001409939000007.jpg]
」
f 【0055】
「【産業上の利用可能性】
【0055】
以上説明した配筋検査方法によれば、移動式3次元レーザスキャナを用いて計測対象の鉄筋構造物の周囲を移動しながら鉄筋構造物を含む計測対象領域の形状データを取得することにより、鉄筋構造物の配筋モデルを簡便に構成することができる。このようにして得られた配筋モデルの3次元画像は、仕上がった配筋構造が、設計図通りの位置、ピッチであるか、使用されている鉄筋の径(直径)が設計図通りであるか等を画像により確認できる。このような画像は、工事中にも確認できるほか、工事完了後に構造物がコンクリートの打設等により建物に隠れた後にも保存しておいた画像を確認することにより、確実に配筋構造が設計図通りであることを示すことができる。そのために、配筋構造の検証にも役立つ。」
(イ) 引用文献1の記載から読み取れる事項の認定
a 前記(ア)において摘記した段落【0030】、【0033】及び【図3】の記載を踏まえると、次の事項(以下「引用文献1認定事項A」という。)が引用文献1から見て取れる。
[引用文献1認定事項A]
「測定対象である鉄筋構造物50は、鉛直方向及び水平方向に延びる複数の鉄筋から構成され、このうち鉛直方向に延びる鉄筋は、水平方向に敷かれた計測者20が歩行する足場30に沿って、複数配置されること。」
b 前記(ア)において摘記した段落【0046】-【0048】の記載は【図2】で示される「ステップS105」及び「ステップS106」について言及するものであり、段落【0030】-【0032】の記載は【図2】で示される「ステップS103」について言及するものであるところ、「ステップS103」、「ステップS105」及び「ステップS106」は何れも【図2】で示される一連の処理に含まれるから、次の事項(以下「引用文献1認定事項B」という。)が引用文献1から読み取れる。
[引用文献1認定事項B]
段落【0030】-【0032】の記載中に現れる「鉄筋構造物50」と、段落【0046】-【0048】の記載中に現れる「鉄筋構造物52」は、同一の鉄筋構造物を含むこと。
(ウ) 引用発明の認定
前記(ア)で示した摘記事項及び前記(イ)で示した読み取れる事項を総合すると、引用文献1には、次に示す発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「配筋検査方法で用いられる、移動式3次元レーザスキャナのシステムであって、(【0022】)
移動式3次元レーザスキャナのシステムは、移動式3次元レーザスキャナ10及び、画像処理装置100を備え、(【0023】)
測定対象である鉄筋構造物50は、鉛直方向及び水平方向に延びる複数の鉄筋から構成され、このうち鉛直方向に延びる鉄筋は、水平方向に敷かれた計測者20が歩行する足場30に沿って、複数配置され、([引用文献1認定事項A])
鉄筋構造物50及び絶対座標系の座標を特定しうる既設の構造物40を含む領域を計測対象領域として特定し、(【0030】)
移動式3次元レーザスキャナ10により取得される3次元点群データは、対象物の表面で反射したレーザービーム11の反射光を取得することにより得られるものであり、(【0031】)
移動式3次元レーザスキャナ10による3次元点群データの取得は、移動式3次元レーザスキャナ10を片手で把持する計測者20を足場30上で歩行させながら鉄筋構造物50を含む計測対象領域にレーザービーム11を照射してスキャニングするような方法で行われ、(【0033】、【0031】)
画像処理装置100は、3次元点群データを用いて3次元画像を構成して表示する処理のほか、ノイズ除去、輪郭修正、平滑化、2値化、任意の断面の切断、拡大、計測、その他、種々の補正処理、加工処理、また、それらに基づき、所望の鉄筋間の間隔の計測や、鉄筋径の計測等も行うことができ、また、3次元画像を任意の断面でスライスしたり、任意の方向から表示したりすること等の画像処理を実行することもでき、(【0027】)
移動式3次元レーザスキャナで取得された相対座標に基づく3次元点群データは、形状データであり、(【0045】)
計測対象領域の各部分領域で取得された3次元点群データ(D1~Dn)を統合することにより、配筋モデルを構成するための計測対象領域の全領域の3次元点群データDALLが作成され、(【0030】)
計測対象領域の全領域の形状データの3次元点群データDALL中の絶対座標を特定可能な既知部位の座標値に基づき、計測対象領域全体の形状データを絶対座標に変換し、相対座標系の3次元点群データDALLの座標が、絶対座標系の3次元点群データDfinalの座標に変換され、(【0046】、【0047】、[引用文献1認定事項B])
このようにして得られた絶対座標系の3次元点群データDfinalを用いて画像表示することにより、絶対座標系の計測対象領域全体の3次元画像を得ることができ、このような3次元画像を画像表示部に表示することにより、絶対座標系で表示された鉄筋構造物の配筋モデルを得ることができ、(【0048】、[引用文献1認定事項B])
配筋モデルは、3次元の配筋モデルであり、(【0049】)
得られた配筋モデルの画像から、配筋モデルの任意の断面の画像を抽出し、このような任意の断面の各鉄筋の画像において、各鉄筋の断面のそれぞれに近似円(56a,・・・56i)を生成させ、各近似円の中心(57a,・・・57i)を求め、(【0053】)
各近似円の中心(57a,・・・57i)を芯として、各近似円の中心から施工に用いた鉄筋の実直径の半径だけ膨張させることにより、現実の鉄筋構造物の直径をより正確に反映させた配筋モデルに補正され、補正された配筋モデルの断面の画像を画像表示し、このような画像を複数枚取得し、接続することにより、3次元的に修正し、(【0054】)
配筋モデルの3次元画像は、仕上がった配筋構造が、設計図通りの位置、ピッチであるか、使用されている鉄筋の径(直径)が設計図通りであるか等を画像により確認できる、(【0055】)
移動式3次元レーザスキャナのシステム」
イ 引用文献2の記載事項及び引用文献2技術事項等の認定
(ア) 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された特開2019-28595号公報(以下「引用文献2」という。)には、次に摘記する事項が記載されている。
「【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1~図7に従って、検査処理システム、検査処理方法及び検査処理プログラムを具体化した一実施形態を説明する。本実施形態では、建築工事の工事現場において構造物(例えば、配筋)の検査を支援するための検査処理システムとして説明する。この場合、BIM(Building Information Modeling)により生成された2次元画像(仮想画像)と、現場での撮影画像(構造物画像)とを用いることにより検査を支援し、検査結果を関係者間で情報共有する。」
「【0014】
カメラ28は、被写体を撮影する撮影部として機能する。本実施形態では、対象物を複数の異なる方向から同時に撮影することにより、その奥行き方向の情報を取得できるステレオカメラを用いる。このカメラ28により、被写体までの距離や、3次元形状の点群データを取得することができる。なお、撮影部は、被写体を撮影できるハードウェアであれば、ステレオカメラに限定されるものではない。」
「【0069】
(ピッチ、鉄筋径の計測支援処理)
次に、図7を用いて、ピッチ、鉄筋径の計測支援処理を説明する。
図7(a)に示すように、ユーザ端末20の制御部21は、配筋の特定処理を実行する(ステップS4-1)。具体的には、制御部21の計測支援部215は、柱鉄筋の撮影画像(点群データ)を用いて、配筋を特定する。
この場合、図7(b)に示す点群データ560を取得する。
【0070】
次に、ユーザ端末20の制御部21は、ピッチの算出処理を実行する(ステップS4-2)。具体的には、制御部21の計測支援部215は、点群データ560の所定領域を切り出し、柱鉄筋の検査面を特定する。そして、計測支援部215は、この検査面において、柱主筋、フープ筋を特定する。
【0071】
図7(c)に示すように、検査面570において、基準単位長さで、水平方向に主筋枠571、鉛直方向にフープ筋枠572を設定する。主筋枠571、フープ筋枠572は、それぞれ、検査対象の鉄筋の延在方向に対して、垂直方向に交差するように配置される。次に、計測支援部215は、各枠(571,572)に含まれる点群データの集合体により、鉄筋数を算出する。そして、計測支援部215は、基準単位長さを鉄筋数で除算することによりピッチを算出する。
図7(d)に示すように、主筋枠571においては、6本の鉄筋(主筋)を検出している。
【0072】
次に、ユーザ端末20の制御部21は、鉄筋径の算出処理を実行する(ステップS4-3)。具体的には、制御部21の計測支援部215は、点群データにおいて、各鉄筋の外縁に接する円を算出する。そして、計測支援部215は、この円の直径により鉄筋径を算出する。
図7(e)に示すように、点群データ581を、D29、D32、D35の鉄筋の円582によりフィッティングして、それぞれの鉄筋径を予測する。
【0073】
次に、ユーザ端末20の制御部21は、結果の照合処理を実行する(ステップS4-4)。具体的には、制御部21の計測支援部215は、算出したピッチ、鉄筋径の計測値と、検査情報記憶部25の検査管理レコード250に記録されている検査項目(ピッチ、鉄筋径)の正解とを比較する。この場合も、正解に対して予め定められた許容範囲内に計測値がある場合には、計測支援部215は、検査結果としてOKを記録する。一方、計測値が許容範囲を超えている場合には、計測支援部215は、検査結果としてNGを記録する。」
「【図7】
[図:0001409939000008.jpg]
」
(イ) 引用文献2の記載から読み取れる事項の認定
前記(ア)において摘記した段落【0072】及び【図7】(e)の記載を踏まえると、次の事項(以下「引用文献2認定事項A」という。)が引用文献2から見て取れる。
[引用文献2認定事項A]
「鉄筋の点群データ581は、鉄筋の側面の一部分を表わすこと。」
(ウ) 引用文献2技術事項の認定
前記(ア)で示した摘記事項及び前記(イ)で示した読み取れる事項を総合すると、引用文献2には、次に示す技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。
[引用文献2技術事項]
「配筋検査に際して、鉄筋の側面の一部分を表わす点群データを、互いに径が異なる複数の円によりフィッティングして、鉄筋径を算出すること。」
ウ 引用文献3の記載事項及び技術常識1の認定
(ア) 引用文献3の記載事項
当審において新たに引用する特開2010-151577号公報(以下「引用文献3」という。)には、次に摘記する事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、建設工事における鉄筋の検査(配筋検査)を正確に、しかも高速に行なえる構成とした、配筋検査装置および配筋検査方法に関する。」
「【0041】
本発明の実施形態においては、一般的な鉄筋配置が水平方向と垂直方向に行われることを利用する。例として、柱の場合を考える。鉛直の柱に対して、同じ鉛直方向を2軸として3次元の計測を行う。計測データは、前記したような点群データ(距離画像)といわれる3次元座標を有する連続した位置情報である。これらのデータから鉄筋(円筒状の形状)を探索する場合、探索対象の円筒の形を回転移動、平行移動させながら、最も点群の情報と整合する部分を探索する。しかしながら、この作業は非常に多くの選択肢を想定して位置合わせを行う必要があり、計算機にかかる負荷が極めて大きくなる。
【0042】
図2は、本発明の実施形態を示す説明図である。図2のような点群情報があるものとして、円筒形状の探索対象(鉄筋1)を探索し、固定金具2は探索しないものとする。このような探索を行う場合には、どの位置にどのような傾きで探索対象1が存在するのか、すべての可能性を検証しなければならない。1Xは傾いて存在する鉄筋である。このため、計算機の計算量が増大する。本発明の実施形態においては、このようなデータを処理する際に、円筒形状の探索対象を水平面で切断した場合の切り口の形状を評価することにより、計算機にかかる計算量を減少させるようにしている。Ha~Hcは、レーザビームの照射方向である。」
「【図2】
[図:0001409939000009.jpg]
」
「【0043】
図1は、本発明の実施形態を示す説明図である。探索対象が建築施工における鉄筋の場合、鉄筋は規則的に配置されることが多い。したがって、鉄筋の水平方向切断面は一定の規則性を持っていると想定できる。さらに、探索対象の鉄筋の水平方向切断面は、二次元画像として評価できるため、計算機処理が高速になされる二次元画像処理のアルゴリズムを適用できる。図1の例では、鉄筋の水平方向切断面である円形状の探索という画像処理を適用することで、鉄筋のモデルが存在する可能性のある位置を特定できる。図1の50は、水平切断方向を模式的に示している。
【0044】
このような、水平方向切断面の探索を鉄筋モデルの鉛直方向各断面(例えば1mmビッチでの断面)において処理することで、信頼性の高い鉄筋位置特定を行うことができる。図1に示すような鉄筋の計測情報(距離画像:点群情報)の処理において、鉄筋を探索した点群情報がある場合に、ある水平面で点群情報を切断すると、その断面は、半円形上に並んだ点群を含む2次元画像として得られることが期待できる。」
「【図1】
[図:0001409939000010.jpg]
」
「【0045】
図12(a)は、図1のように、探索対象を水平方向で切断した場合の断面画像43を示す説明図である。図12(b)は、探索を行う円形状の探索対象の参照画像44の例を示す説明図である。目視の場合には、かまぼこ状断面のような半円形の部分に鉄筋があるという推測が容易であるが、計算機にこの位置を認識させるには、画像処理の手段が有効である。つまり、2次元画像のパターンマッチング手法によって円に近い形状を探索する。パターンマッチングは、例えば、図12(b)のような円形の参照画像44を用意し、この参照画像44との類似性が近い画像を探索する技術である。類似性の評価としては、正規化相関などが一般に用いられる。」
「【図12】
[図:0001409939000011.jpg]
」
「【0048】
図13は、図12の探索結果を示す説明図である。点群情報から得られる円の中心42を矢印で示している。
【0049】
図14は、図12の探索結果を示す説明図である。図12(a)で示したように、探索対象の水平方向切断面で円形状を探索した場合に、図14のような位置に円形状の類似性がある探索対象の断面画像43が認められるものとする。この際の円形状の候補位置に点線で円41を描いている。このような計測結果は、最初に得られている鉄筋の点群情報のある一断面によって得られるものである。」
「【図13】
[図:0001409939000012.jpg]
」
「【図14】
[図:0001409939000013.jpg]
」
「【0050】
図15は、抽出情報の累積を示す説明図である。図14で説明した探索結果は、探索対象の一断面での分析結果であるが、このような分析は、当然他の鉛直方向における水平方向切断面おいても同様の処理を行うことができる。例えば、探索対象のある水平方向切断面では図15に示すような鉄筋の中心候補が得られる。鉄筋の中心候補42を黒点で示している。」
「【図15】
[図:0001409939000014.jpg]
」
(イ) 技術常識1の認定
前記(ア)で示した引用文献3の記載に例示されるように、次に示す技術事項は技術常識であると認められる(以下「技術常識1」という。)。
[技術常識1]
「配筋検査に際して、鉄筋を含む点群データをある水平面で切断した画像としてみると、その断面には、半円形上に並んだ点群として鉄筋の側面の一部分が2次元画像として表れること。」
(3) 対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 「配筋検査システム」の発明である本件補正発明と「配筋検査方法で用いられる、移動式3次元レーザスキャナのシステム」である引用発明は、「配筋検査システム」の発明である点において一致する。
(イ)a 引用発明において、「各鉄筋の断面」の画像を円で近似させているから(「近似円」の生成)、「鉄筋構造物50」の施工に用いた「鉄筋」の断面は、円形状であることを想定しており、「鉄筋」の立体形状は、円柱状であることは明らかである。そうすると、本件補正発明の「円柱状の鉄筋」と引用発明の「鉄筋」は、共に「円柱状の」ものである点で一致する。
b 引用発明の「鉄筋構造物50」における「鉛直方向」は、本件補正発明の「第1方向」に相当するから、引用発明において「鉄筋構造物50」の「複数の鉄筋」が「鉛直方向に延びる」ことは、本件補正発明の「複数の」「鉄筋」が「第1方向に延在[する]」ことに相当する。
c 引用発明の「鉄筋構造物50」における「水平方向」は、「鉛直方向」と直交することが明らかであるから、前記bを踏まえると、引用発明の「水平方向」は、本件補正発明の「第1方向と交差する第2方向」に相当する。
d 前記b、cを踏まえると、引用発明において「鉛直方向に延びる鉄筋」が、「水平方向に敷かれた」「足場30に沿って、複数配置され[る]」ことは、本件補正発明における「複数の」「鉄筋」が「前記第1方向と交差する第2方向に配列された」ことに相当する。
e 前記(ア)を踏まえつつ前記a~dをまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「第1方向に延在し、前記第1方向と交差する第2方向に配列された複数の円柱状の鉄筋を検査する配筋検査システム」である点。
(ウ)a 引用発明の「移動式3次元レーザスキャナ10」は本件補正発明の「レーザースキャナー」に相当し、また引用発明の「3次元点群データの取得」は本件補正発明の「計測」に相当するから、引用発明における「移動式3次元レーザスキャナ10による3次元点群データの取得」は、本件補正発明における「レーザースキャナー」で「計測する」ことに相当する。
b 引用発明は、「移動式3次元レーザスキャナ10による3次元点群データの取得」において、「鉄筋構造物50」「を含む領域を計測対象領域として特定」するものであるから、本件補正発明と引用発明は、「前記鉄筋」を含んで「計測する」点で共通する。
また、引用発明では、「移動式3次元レーザスキャナ10により取得される3次元点群データは、対象物の表面で反射したレーザービーム11の反射光を取得することにより得られるものであり」、前記(イ)aを踏まえると、「対象物」である「鉄筋」の「表面」は、即ち「鉄筋」の側面に他ならないから、本件補正発明と引用発明は、「前記鉄筋の側面」を含んで「計測する」点で共通する。
c ここで、引用発明において「移動式3次元レーザスキャナによる3次元点群データの取得は、移動式3次元レーザスキャナ10を片手で把持する計測者20を足場30上で歩行させながら鉄筋構造物50を含む計測対象領域にレーザービーム11を照射してスキャニングするような方法で行われ[る]」ものである。
すなわち、引用発明の「移動式3次元レーザスキャナ10」は、「鉄筋構造物50」の「鉄筋」から離れた位置に在り、また「歩行」する「計測者20」が「片手で把持する」ことで「鉄筋」から離れた位置に配されることが明らかである。
してみると、本件補正発明の「レーザースキャナー」と引用発明の「移動式3次元レーザスキャナ10」は、共に「前記鉄筋から離間して配置され[た]」ものである点において一致する。
したがって、前記aを踏まえると、本件補正発明の「レーザースキャナー」と引用発明の「移動式3次元レーザスキャナ10」は、共に「前記第2方向に移動しながら、」「計測する」ものである点においても一致する。
d 以上をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の点において共通する。
「前記鉄筋から離間して配置され、前記第2方向に移動しながら、前記鉄筋の側面を計測するレーザースキャナー」を備える点。
(エ)a 引用発明における「3次元点群データを用いて3次元画像を構成して表示する処理のほか、ノイズ除去、輪郭修正、平滑化、2値化、任意の断面の切断、拡大、計測、その他、種々の補正処理、加工処理、また、それらに基づき、所望の鉄筋間の間隔の計測や、鉄筋径の計測等も行うことができ[る]」「画像処理装置100」は、本件補正発明の「処理部」に相当する。
b(a) 引用発明の「絶対座標系で表示された鉄筋構造物の配筋モデル」に表れる「配筋モデル」について検討する。
(b) 引用発明の「絶対座標系の3次元点群データDfinal」は、「計測対象領域の各部分領域で取得された3次元点群データ(D1~Dn)を統合する」ことにより作成された「計測対象領域の全領域の3次元点群データDALL」を「絶対座標に変換し[た]」ものであるところ、「相対座標系の3次元点群データDALLの座標が、絶対座標系の3次元点群データDfinalの座標に変換され」たとしても、当該座標変換により「3次元点群データ」が「形状データ」を表すという性質が変更されることはないから、「3次元点群データDfinal」も「形状データ」であることに変わりはない。
(c) そして、「3次元点群データDfinal」を用いて「画像処理」を行うことにより、「配筋モデルの3次元画像」が得られ、そのことによって「仕上がった配筋構造が、設計図通りの位置、ピッチであるか、使用されている鉄筋の径(直径)が設計図通りであるか等を画像により確認できる」のであるから、「形状データ」としての「3次元点群データDfinal」に由来する「配筋モデルの3次元画像」の「確認」を通じて、「鉄筋」の形状から、「鉄筋」の外形的特徴を求めようとしていることは明らかである。
(d) さらに、前記(イ)a(鉄筋が円柱状である点)及び(ウ)b(鉄筋の側面を計測する点)を踏まえつつ、更に円柱の側面が曲面形状を有することは幾何学的に自明であることも考慮すると、引用発明においては、「配筋モデルの3次元画像」の「確認」を通じて、「鉄筋」の側面における曲面形状から、「鉄筋」の外形的特徴を求めようとしているといえる。
c そして、引用発明は、「3次元の配筋モデル」「の任意の断面の画像を抽出し、このような任意の断面の各鉄筋の画像において、各鉄筋の断面のそれぞれに近似円(56a,・・・56i)を生成させ、各近似円の中心(57a,・・・57i)を求める」ものであるところ、これは、「鉄筋」の側面における曲面の断面形状が円に近似できることを前提として、その曲面形状から、円の中心を「鉄筋」の外形的特徴を表すものとして求めていることを意味する。
また、「近似円」の中心を求めることが、「画像処理装置100」における算出処理であることは明らかであり、「近似円」の中心が絶対座標系における点の座標として表わされることも自明であるから、引用発明において、「鉄筋」の断面の「近似円の中心を求める」ことは、本件補正発明の「鉄筋の中心点を算出する」ことに相当する。
d 前記(ウ)を踏まえつつ、以上をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の点において共通する。
「前記レーザースキャナーの移動によって計測された前記鉄筋の側面における曲面形状から、前記鉄筋の中心点を算出する処理部」を備える点。
イ 一致点及び相違点の認定
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記の(イ)に示す相違点において相違すると認められる。
(ア) 一致点
「第1方向に延在し、前記第1方向と交差する第2方向に配列された複数の円柱状の鉄筋を検査する配筋検査システムであって、
前記鉄筋から離間して配置され、前記第2方向に移動しながら、前記鉄筋の側面を計測するレーザースキャナーと、
前記レーザースキャナーの移動によって計測された前記鉄筋の側面における曲面形状から、前記鉄筋の中心点を算出する処理部と、
を備える、配筋検査システム」である点。
(イ) 相違点
「レーザースキャナー」で「鉄筋の側面を計測する」こと、及び、「計測された前記鉄筋の側面における曲面形状」を用いた「処理部」の「算出」処理について、
本件補正発明は、鉄筋の側面の「一部分」が計測され、また、「処理部」が「前記鉄筋の側面の前記一部分における曲面形状から、前記鉄筋の中心点および半径を算出する」ものであるのに対して、
引用発明は、「鉄筋構造物50を含む計測対象領域にレーザービーム11を照射してスキャニングする」ものであるが、鉄筋の側面の「一部分」を計測するかは明らかでなく、また、引用発明は、「得られた配筋モデルの画像から、」「各近似円の中心(57a,・・・57i)を求め[る]」ものであるが、鉄筋の半径までも算出するものでない点。
(4) 相違点についての判断
前記相違点について検討する。
ア 鉄筋の側面の「一部分」を計測することについて
(ア) 引用発明において、「移動式3次元レーザスキャナ10による3次元点群データの取得は、移動式3次元レーザスキャナ10を片手で把持する計測者20を足場30上で歩行させながら鉄筋構造物50を含む計測対象領域にレーザービーム11を照射してスキャニングするような方法で行われ[る]」ものであり、このような場合には、「鉄筋構造物50」の各「鉄筋」において「スキャニングする」際に、スキャニングされない部分が発生することが、当業者にとって自明である。
このことは、引用文献1の段落【0033】の「このとき、移動の経路は特に限定されず、例えば、計測対象領域の周囲からだけではなく、必要に応じて、計測対象領域の内側から計測してもよい。」という記載からも自明な事項として導くことができる。すなわち、この記載は、「計測対象領域の周囲からだけ」のレーザービーム11の照射では、計測者20が足場30上を歩行してスキャンしたとしても、レーザービーム11が照射されずにスキャニングされない部分が生じるため、「計測対象領域の内側から」のレーザービーム11の照射が必要となる場合があることを述べたものであると解される。
(イ) そうすると、引用発明の「形状データ」としての「3次元点群データDfinal」においても、スキャニングされずに3次元点群データが欠落している部分が発生していること、言いかえると「形状データ」としての「3次元点群データDfinal」は鉄筋の側面における「一部分」を表わすものとなっていることは明らかである。
そして、このことは、「配筋検査に際して、鉄筋を含む点群データをある水平面で切断した画像としてみると、その断面には、半円形上に並んだ点群として鉄筋の側面の一部分が2次元画像として表れる」という技術常識からみても、その明白性を裏付けることができる(前記技術常識1を参照)。
(ウ) してみると、前記相違点のうち鉄筋の側面の「一部分」を計測することは、実質的な相違点ではない。
イ 「鉄筋の中心点および半径を算出する」ことについて
(ア) 引用発明は、「配筋モデルの3次元画像」から「仕上がった配筋構造が、設計図通りの位置、ピッチであるか、使用されている鉄筋の径(直径)が設計図通りであるか等を画像により確認できる」ものであり、また「所望の鉄筋間の間隔の計測や、鉄筋径の計測等も行うことができ[る]」ものでもある。
(イ) ここで、引用文献2には、「配筋検査に際して、鉄筋の側面の一部分を表わす点群データを、互いに径が異なる複数の円によりフィッティングして、鉄筋径を算出すること」が記載されている(前記引用文献2技術事項を参照)。
(ウ) そして、引用発明と引用文献2技術事項は、共に鉄筋の点群データを用いた鉄筋検査に関する技術であるところ、前記アの検討結果も踏まえると、引用発明において「所望の鉄筋間の間隔の計測や、鉄筋径の計測」を行う際に、引用文献2技術事項を採用することにより、「鉄筋」の断面を円形近似してその中心点のみならず鉄筋径としての半径も算出するようにすること(本件補正発明の「前記鉄筋の側面の前記一部分における曲面形状から、」「鉄筋の中心点および半径を算出する」ことに相当する。)は、当業者にとって極めて自然な発想にすぎない。
ウ 総合検討
以上検討のとおりであるから、前記相違点は、格別のものではなく、引用発明において、相違点に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明、技術常識1及び引用文献2技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本件補正発明の奏する作用効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、技術常識1及び引用文献2技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5) 審判請求書における請求人の主張について
ア 請求人の主張の概要
本件補正発明は、鉄筋の側面の一部分を計測し、鉄筋の中心点及び半径が算出されるものであり、鉄筋の側面の一部分を計測するだけで、簡便に鉄筋を検査することが可能となる。また、レーザースキャナーを第2方向に移動させながら、鉄筋の側面の一部分を計測することで、計測する一部分を拡大することができ、鉄筋の中心点及び半径の算出に係る精度を向上させることが可能となる。そのため、例えば、上空から鉄筋を計測しなくても、精度の向上を図りながら、簡便に鉄筋を検査することが可能となるものである。
引用文献1では、移動式3次元レーザースキャナー10及び画像処理装置100を備える移動式3次元レーザースキャナーのシステムが図1に示されているところ、移動式3次元レーザースキャナー10によって、計測対象領域に含まれている鉄筋構造物をスキャンニングすることで、鉄筋の断面の全体に係る画像を取得し、図7に示されているように、取得した断面の全体に係る画像に近似した近似円を生成し、近似円の中心を求めるものである。
本件補正発明では、レーザースキャナーによって鉄筋の側面の一部分が計測されるのに対して、引用文献1に記載の発明では、レーザースキャナーによって鉄筋の断面の全体が計測されるという点で相違している。また、引用文献2に記載の発明は、ステレオカメラにより撮影された画像を処理するものであり、レーザースキャナーにより鉄筋を計測することを示していない。
イ 請求人の主張に対する当審の判断
(ア) 鉄筋の側面の「一部分」の計測について
請求人の主張は、前記相違点に係る構成についてのものであるところ、前記(4)において説示したとおり、鉄筋の側面の「一部分」を計測することは、実質的な相違点ではなく、前記引用文献2技術事項を踏まえると、引用発明において、「前記鉄筋の側面の前記一部分における曲面形状から、前記鉄筋の中心点および半径を算出する」ようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(イ) 鉄筋の断面の全体の計測について
請求人は、本件補正発明は、レーザースキャナーによって鉄筋の側面の一部分が計測されるのに対して、引用文献1に記載の発明は、レーザースキャナーによって鉄筋の断面の全体が計測されるという点で相違する旨主張している。
しかしながら、引用発明は「配筋モデルを構成するための計測対象領域の全領域の3次元点群データDALLが作成され[る]」ものであるものの、「計測対象領域の全領域」は、個々の鉄筋の断面の全体(全周)を意味するものではないから、引用発明において「鉄筋の断面の全体が計測される」との主張は失当である。
(ウ) 引用文献1の図7について
請求人は、引用文献1は、鉄筋の断面の全体に係る画像を取得し、図7に示されているように、取得した断面の全体に係る画像に近似した近似円を生成し、近似円の中心を求めるものであるから、引用発明における近似円の中心検出は、鉄筋の断面の全体に係る画像の取得が前提であり、鉄筋の断面の一部分の点群データに基づいて近似円の中心の検出を行っていないため、前記相違点に係る「前記鉄筋の側面の前記一部分における曲面形状から、前記鉄筋の中心点および半径を算出する」という本件補正発明の構成に想到することは困難である旨の主張をしていると思われる。
しかしながら、例えば、引用文献3において、鉄筋の断面の一部分の点群データに基づいて近似円の中心を検出することが開示されているように(前記(2)ウを参照)、鉄筋の断面の一部分の点群データであっても、それが鉄筋の断面の全体形状(円形状)を再現できる程度の情報量を備えているものであれば、かかる一部分の点群データに基づいて近似円の中心を検出することが可能である。
そうすると、引用発明における近似円の中心検出のために、鉄筋の断面の全体に係る画像を取得することは必須ではなく、図7のような鉄筋の断面の全体に係る画像がなくても、鉄筋の断面の一部分の形状データ(「3次元点群データDALL」ないし「3次元点群データDfinal」)に基づいて近似円の中心の検出を行うことは可能であるというべきである。
したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。
(エ) 本件補正発明の効果について
請求人は、本件補正発明の効果として、次のa及びbの主張をしている。
a レーザースキャナーを第2方向に移動させながら、鉄筋の側面の一部分を計測することで、計測する一部分を拡大することができ、鉄筋の中心点及び半径の算出に係る精度を向上させることが可能となる。
b 上空から鉄筋を計測しなくても、精度の向上を図りながら、簡便に鉄筋を検査することが可能となる。
前記aの主張について検討すると、引用発明においても、「移動式3次元レーザスキャナによる3次元点群データの取得は、移動式3次元レーザスキャナ10を片手で把持する計測者20を足場30上で歩行させながら鉄筋構造物50を含む計測対象領域にレーザービーム11を照射してスキャニングするような方法で行われ[る]」ものであるから、「計測する一部分を拡大することができ[る]」という効果は、引用発明から予測し得る程度のものにすぎず、格別のものではない。
前記bの主張について検討すると、引用発明は、移動式3次元レーザスキャナ10を片手で把持する計測者20を足場30上で歩行させながらスキャニングが行われるものであって、「上空から鉄筋を計測」するものでないから、請求人の主張は失当である。
(オ) まとめ
以上のとおりであるから、請求人の主張を検討しても、前記(4)の結論は左右されない。
(6) 本件補正についてのむすび
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1-5に係る発明は、令和4年11月17日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の1(1)に摘記した請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての進歩性欠如の理由1は、次のとおりである。
理由1(進歩性欠如)
本願発明は、下記の引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特開2017-009546号公報
引用文献2:特開2019-028595号公報
3 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
引用文献1には、前記第2の3(2)ア(ア)で示したとおりの摘記事項が記載されており、また、前記第2の3(2)ア(ウ)で認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。
引用文献2には、前記第2の3(2)イ(ア)で示したとおりの摘記事項が記載されており、また、前記第2の3(2)イ(ウ)で認定したとおりの引用文献2技術事項が記載されていると認められる。
引用文献3には、前記第2の3(2)ウ(ア)で示したとおりの摘記事項が記載されており、また、前記第2の3(2)ウ(イ)で認定したとおりの技術常識1が記載されていると認められる。
4 対比・判断
本願発明は、「計測する」「鉄筋の側面」について、本件補正後の(鉄筋の側面)「の一部分」とする限定を省き、また「鉄筋の側面における曲面形状」について、本件補正後の(鉄筋の側面)「の一部分」とする限定を省いたものである(前記第2の2「本件補正の目的」参照)。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、当該構成の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3において検討したとおり、引用発明、技術常識1及び引用文献2技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、技術常識1及び引用文献2技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-006712