特許拒絶査定不服審判
2023-018863
濃縮システム
- 審判番号
- 2023-018863
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-008825外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年11月07日
- 審決日
- 2025年01月31日
- 公報発行日
- 2025年04月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】東洋紡エムシー株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人深見特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (C02F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020- 8825「濃縮システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 8月10日出願公開、特開2021-115496〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年1月23日を出願日とするものであり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和5年 6月 9日付け:拒絶理由通知
同年 8月 8日 :手続補正書及び意見書の提出
同年 9月 4日付け:拒絶査定
同年11月 7日 :手続補正書及び審判請求書の提出
同年11月29日付け:前置報告書
令和6年 9月24日付け:拒絶理由通知
同年10月28日 :手続補正書及び意見書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~2に係る発明は、令和6年10月28日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、次に特定されるとおりである。
「【請求項1】
半透膜と、前記半透膜で仕切られた第1室および第2室と、を有し、第1対象液を所定の圧力で前記第1室に流し、第2対象液を前記所定の圧力よりも低い圧力で前記第2室に流すことで、前記第1室内の前記第1対象液に含まれる水を前記半透膜を介して前記第2室内の前記第2対象液に移行させ、前記第1室から濃縮液を排出し、前記第2室から希釈液を排出する、半透膜モジュールと、
前記第1室に供給される前記第1対象液と、前記第1室から排出される濃縮液および前記第2室から排出される前記希釈液の少なくともいずれかと、の間で、熱交換を行うことにより、前記第1対象液および前記第2対象液の少なくとも1つの温度を上昇させる、温度制御装置と、
を備え、
前記第1対象液は、濃縮により濃度が上がるにつれて粘度が増加する液であり、且つ、温度を上げることにより粘性が下がる液体であり、
前記第1対象液から排出される濃縮液の少なくとも一部が、前記第2対象液として前記第2室に流され、
前記半透膜は中空糸膜であり、
前記中空糸膜の外側が第1室であり、前記中空糸膜の内側が第2室である、
濃縮システム。」
第3 当審における拒絶の理由
当審において通知した拒絶の理由は、次のとおりのものである。
理由1(進歩性)
本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献8 特開昭48-13278号公報
引用文献9 特開2003-145150号公報(周知技術を示す文献)
引用文献10 特開平11-138160号公報(周知技術を示す文献)
引用文献11 特開平7-196705号公報(周知技術を示す文献)
引用文献12 特開2013-43153号公報(周知技術を示す文献)
第4 引用文献に記載された事項
本願出願日前に頒布された特開昭48-13278号公報(前記当審の拒絶理由における引用文献8。以下「引用文献1」という。)、及び、技術常識もしくは周知技術として引用する次の文献には、以下のア~ケの事項が記載されている。
引用文献2:国際公開第2014/156984号明細書
引用文献3:特開2016-68006号公報
引用文献4:特開2013-43153号公報(前記当審の拒絶理由における引用文献12)
引用文献5:特開平7-196705号公報(前記当審の拒絶理由における引用文献11)
引用文献6:特開2003-145150号公報(前記当審の拒絶理由における引用文献9)
引用文献7:特開平11-138160号公報(前記当審の拒絶理由における引用文献10)
なお、下線は当審において付したものである。
1 引用文献1(特開昭48-13278号公報)に記載された事項
(1)「(2)高圧側および低圧側を有する少なくとも1枚の半透膜を保持するケーシング、前記高圧側へ圧力によって溶液を送液する送液手段、前記高圧側に生じる濃縮された溶液の一部をわきにそらしてそれを前記低圧側に沿って高圧側の流れと逆方向に流すための圧力調整器およびバルブの手段、ならびに前記高圧側に生じる濃縮された溶液のわきにそらされなかった部分および低圧側に生じる希釈された溶液の取出手段からなることを特徴とする可逆滲透の手段による供給溶液の濃縮装置。」(特許請求の範囲)
(2)「本発明は半透膜(permselective membrane)、すなわち良好な溶質除去性を有する膜の滲透手段による溶液からの溶媒の選択的除去によって溶液を濃縮する改善された方法に関する。このような方法は一般に可逆滲透といわれている。
可逆滲透において、溶媒およびおそらくは若干の溶質は、濃縮されつつある加圧された溶液(以下滲透付与溶液という)から膜をとおして加圧されていない溶液(以下滲透された溶液という)に滲透する。」(第1頁右下欄第8~17行)
(3)「本発明の目的は、濃縮された溶液、とくに高い滲透圧を有する濃縮された溶液が生成物としてえられる改良された可逆滲透圧方法を提供するにある。このような方法は、たとえば塩水の脱塩装置から排出するブラインの高濃縮溶液の生成、ジュースの濃縮、感熱物質などの工業溶液の濃縮に適用される。
本発明はとくにこのような方法における要求される水圧の減少および従来の膜の溶質除去能力の改良を目的とする。」(第3頁右上欄第5~14行)
(4)「第4図においては、本発明の目的に用いられる可逆滲透圧ユニットの一具体例を示す。・・・
ボディ40内に毛細管状の自己保持性膜列46がおかれる。
運転中、口43を経て導入される供給ブラインは第4図の左から右へボディ40内を管状膜の列46のおのおののまわりを流れる。全ブライン濃縮液は口44を経て取出され、その一部は口45を経て返還され、管状膜の列46のおのおのの内側の空間に導入される。したがってこれらの膜の外側は高圧側であり、内側は低圧側である。循環されるブラインは管状膜列46内を第4図の右から左へ流れ、次第に膜を滲透する滲透液によって希釈される。」(第5頁右下欄第4行~第6頁左上欄第6行)
2 引用文献2(国際公開第2014/156984号明細書)に記載された事項
「[0009] ・・・海水の濃縮については、以下のような問題点がある。
(1)除塵部Bにおいて海水が濃縮するほど液の粘度と比重が高くなるので、液比重の上昇によって、循環ポンプに負荷がかかり、動力が増大し、除塵スプレノズルへ供給される液量が低下することによりスプレ圧力が低下し、液滴速度が減少する。」
3 引用文献3(特開2016-68006号公報)に記載された事項
「【背景技術】
【0002】
食品や飲料などの製造では例えば、果汁、液糖、蜂蜜など糖分その他特定の成分を含有する溶液(懸濁液)の濃縮工程が必要となることがある。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
・・・上述したような逆浸透膜装置において、被処理液はこの極薄いスペーサの隙間を流れ、ろ液は膜裏側へ透過し、溶液成分は膜面へ濃縮される。膜面へ被処理液の成分が濃縮されると浸透圧が高くなるため、この浸透圧を超えるろ過圧力を付加できる高圧ポンプを用いる必要がある。また、溶液成分が膜面に濃縮して、ろ過を妨げるのをできるだけ抑制するため、被処理液の膜面流速を高くする必要がある。すなわち、高出力の高価な送液ポンプと高いエネルギーコストが必要となる。さらに、果汁、糖液あるいは蜂蜜などの溶液は、成分の濃縮により溶液の粘度が高くなり、逆浸透膜モジュールへの極薄い被処理液の流路への通液が容易でなくなる。このため濃縮率に限界があり、最高でも40~50%程度しか濃縮できないという問題があった。」
4 引用文献4(特開2013-43153号公報)に記載された事項
(1)「【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、従来の海水淡水化システムS100、S200においては、以下の問題がある。
第1に、UF膜やRO膜の透過度は透過液体の温度依存性が高い。
海水淡水化システムS100、S200は海水を淡水化するが、国や地域によっては海水が低温である場合がある。この場合、海水淡水化システムS100において、低温の海水により、UF膜103や中圧RO膜105の海水の透過度が粘度の上昇などにより低下する。そのため、低温の海水をUF膜103や中圧RO膜105に透過させるのに、ポンプp103、p104の動力が余計に必要になり、動力が大きくなるという問題がある。」
(2)「【0029】
・・・ 前記したように、海水を淡水化するために使用するUF膜3、高圧RO膜5は、透過液体の温度依存性が高く、低温の場合には透過度が低い一方、高温の場合には透過度が高い傾向にある。
【0030】
そこで、海水淡水化システムSでは、下水のもつ熱を海水に与える熱交換を行う熱交換器6を備えている。具体的には、熱交換器6は下水を淡水化する経路のMBR1の上流の流路r11を流れる下水と、海水を淡水化する経路のUF膜3の上流の流路r2を流れる海水とを熱交換させ、下水の熱を熱交換により海水に付与する。」
5 引用文献5(特開平7-196705号公報)に記載された事項
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は例えばデンプンを酵素分解して得られる糖類の混合溶液から目的とする3分子以上の単糖類分子がグリコシド結合してなる糖類を高濃度に濃縮された状態で得ることのできる、3分子以上の単糖類分子がグリコシド結合してなる糖類の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】・・・
【0007】しかしながらその一方で、糖類溶液を取り扱うことによる特有の問題点が発生した。その第1点はクロマト分離工程及び逆浸透膜装置による濃縮工程における通液抵抗の問題である。即ち糖類溶液は粘度が高いため、クロマト分離及び逆浸透膜による分離の際の圧力損失が大きく、その結果それらの分離速度の低下が避けられないという問題がある。
・・・
【0009】本発明者等は上記の問題点を解決すべく更に研究を重ねた結果、クロマト分離及び逆浸透膜による分離の際の処理温度を50℃以上に温度設定することによりそれらの分離速度を向上でき、しかも細菌の発生を抑止して、糖類溶液の腐敗を防止できるという知見を得た。」
6 引用文献6(特開2003-145150号公報)に記載された事項
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 被処理水を第1段の膜モジュールにポンプにて加圧供給し、第1段の膜モジュールの透過水出口より透過水を得ると共に第1段の膜モジュールの中間濃縮水出口より中間濃縮水を得て、順次、上流の膜モジュールで得られた中間濃縮水を下流の膜モジュールに供給し、透過水と濃縮水を得る2段以上の膜モジュールを用いる水処理方法において、前記中間濃縮水を、加温用熱交換器により所望の温度に加温してから、該加温用熱交換器の下流に位置する膜モジュールへ供給することを特徴とする2段以上の膜モジュールを用いる水処理方法。
・・・
【請求項3】 前記被処理水または中間濃縮水と、前記濃縮水又は前記透過水とを、熱回収用熱交換器において熱交換させることを特徴とする請求項1又は2記載の2段以上の膜モジュールを用いる水処理方法。」
(2)「【0002】
【従来の技術】精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜、又は逆浸透膜、などの透過膜を有する1段以上の膜モジュールを用いる水処理装置は、工業用水、水道水、回収水等を被処理水として、膜を透過した透過水を得ることを目的として利用されてきた。透過膜が、逆浸透膜、又はナノ濾過膜の場合には脱塩水が、精密濾過膜や限外濾過膜の場合には除濁水が透過水として得られる。
【0003】
このような水処理装置から得られる透過水の総量は、処理する被処理水の粘度が高くなると少なくなってしまうため、冬期のように被処理水の水温が低下した場合には、水温が低下した被処理水を、膜モジュールに供給する前に、水蒸気などを熱媒体とする加温用熱交換器を用いて、所望の温度、例えば25℃~40℃の範囲内の特定温度に昇温し、次いで膜モジュールに供給することにより水処理することが行われてきた。さらに、逆浸透膜やナノ濾過膜を用いる水処理においては、シリカ等は、各水温における飽和濃度を超えると膜表面に析出して、膜の流路が閉塞されてしまうため、透過水量が低下してしまう。そのような理由からも、水処理装置の被処理水を、膜モジュールに供給する前に、加温用の熱交換器により加温してシリカなどの飽和溶解濃度を高めた後、透過膜を用いた水処理を行う方法が採用されてきた。
・・・
【0006】図7に示す水処理装置においては、被処理水が加温用熱交換器1aにより予め加温されるため、冬期などの被処理水の水温が低い場合においても、被処理水の粘度を低下させて、所定の圧力における透過水量を高めることができる。しかし、加温用熱交換器1aにおいて用いる水蒸気など加温用の熱媒体の温度調整にエネルギーを要するため、消費エネルギー及び運転コストが上昇するという問題点がある。
【0007】そこで、加温用の熱媒体の温度調整に必要なエネルギーを節約するために、1段以上の膜モジュールから得られる濃縮水の熱を利用して、被処理水を加温することができる水処理装置及び水処理方法が知られている。
【0008】このような水処理装置30bのフロー図を図8に示す。図8の水処理装置30bにおいて、図7の水処理装置30aと主に異なる点は、膜モジュール3b1より流出する濃縮水を、配管106より熱回収用熱交換器1bに供給し、該熱回収用熱交換器1bにおいて被処理水と濃縮水を熱交換させて、被処理水を加温させる点である。このような水処理装置30bを用いて、被処理水を予め加温することにより、加温用の熱媒体の温度調整に必要なエネルギーを節約することができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、水処理装置30bを用いた水処理方法においても、加温用の熱媒体の温度調整に必要なエネルギーの節約が不充分であるという問題点があった。・・・
【0011】
【課題を解決するための手段】かかる実情において、本発明らは鋭意検討を行った結果、下記(1)~(4)の知見を得て本発明を完成するに至った。
(1)2段以上の膜モジュールを用いる水処理方法において、中間濃縮水を、加温用熱交換器により所望の温度に加温することにより、従来の加温用熱交換器を用いて該所望の温度に加温された被処理水を第1段の膜モジュールに供給する方法と比べて、得られる透過水の単位重量を得るために必要とされる加温用のエネルギーを節約することができること、(2)1段以上の膜モジュールを用いる水処理方法において、得られた透過水と、被処理水又は中間濃縮水とを熱交換することにより、得られる透過水の単位重量を得るために必要とされる加温用のエネルギーをさらに節約することができること、(3)1段以上の膜モジュールを用いる水処理装置において、膜モジュールの圧力容器内の入口部又は出口部に、被処理水または中間濃縮水と、濃縮水または透過水とを熱交換するための熱回収用熱交換器を設置してなる膜モジュールを、いずれかの段の膜モジュールとして用いる水処理装置とすることにより省スペース化が可能であること。(4)1段以上の膜モジュールを用いる水処理装置において、膜モジュールの圧力容器内の入口部又は出口部に、被処理水または中間濃縮水を、所望の温度に加温するための加温用熱交換器を設置してなる膜モジュールを、いずれかの段の膜モジュールとして用いる水処理装置とすることにより省スペース化が可能であること。」
7 引用文献7(特開平11-138160号公報)に記載された事項
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 透過性膜で仕切られた膜分離装置の一方側に加圧状態の処理対象水を供給し、その透過性膜を振動させつつ透過成分を他方側に透過させ、一方側から非透過成分を取り出し、他方側から透過水を取り出す水の濾過方法において、処理対象水を透過性膜に供給する前にあらかじめ処理対象水を加温することを特徴とする水の濾過方法。
【請求項2】 透過性膜で仕切られた膜分離装置の一方側に加圧状態の処理対象水を供給し、その透過性膜を振動させつつ透過成分を他方側に透過させ、一方側から非透過成分を取り出し、他方側から透過水を取り出す水の濾過装置において、処理対象水の供給タンクと透過性膜を有する膜分離装置とを結ぶ供給管路に熱交換器を配し、上記膜分離装置から取り出される透過水を排出する第一管路が上記供給管路と交差する箇所に熱交換器を配したことを特徴とする水の濾過装置。」
(2)「【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】河川水等には有機物が含まれているので、河川水を膜濾過法で濾過しようとすると、この有機物により膜が汚染され、膜を透過する流束が低下し、濾過能力が大幅に低下してしまうことがある。さらに、河川水等の水質は年間を通じて一定ではないため、その水質の変化に応じて膜の汚染度合いも変化し、水質が悪くなる夏期には濾過流束の低下は顕著になる。・・・
【0003】また、膜分離装置を用いて濾過を行う際、原水の温度が低いと、濾過流束をあまり大きくすることができない。そこで、濾過の前に低温の原水を加熱設備により一定温度まで加熱すると、熱媒体のランニングコストが大きくなるという問題がある。また、膜分離装置から排出される透過水と非透過成分(濃縮水)の冷却が必要な場合、冷却器の冷媒コストが大きくなるという問題がある。
・・・
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明の水の濾過方法は、処理対象水をあらかじめ加温することによってその粘度を低下させ、粘度の低下した処理対象水を透過性膜の一方側に供給し、・・・されるので、濾過流束は低下することなく、高い濾過流束を得ることができる。
【0007】そして、このような水の濾過装置としては、膜分離装置から排出される透過成分(透過水)と非透過成分(濃縮水)を、熱交換器を用いてそれぞれ原水(処理対象水)と熱交換させることにより、処理対象水を一定温度まで昇温させると同時に透過水と濃縮水を冷却することもできる。・・・
【0008】
【発明の実施の形態】・・・
【0009】第一の発明によれば、透過性膜の振動効果によって膜表面の汚染は防止され、しかも処理対象水はあらかじめ加温されているので、低粘度であり、スムーズに透過成分(透過水)が膜を透過し、高い濾過流束を得ることができる。
【0010】第二、第三の発明によれば、膜分離装置から排出される透過成分(透過水)と非透過成分(濃縮水)を、熱交換器を用いてそれぞれ原水(処理対象水)と熱交換させることにより、透過水と濃縮水の冷却および処理対象水の昇温を同時に行うことができる。そのため、透過水と濃縮水を冷却するための冷媒コストを低減することができる。このようにして処理対象水は一定温度まで昇温されているので、続く熱交換器における処理対象水の昇温幅は小さく、昇温コストを抑制することができる。・・・」
第5 引用文献1に記載された発明
1 引用文献1には、上記第4の1(1)のとおり、「高圧側および低圧側を有する少なくとも1枚の半透膜を保持するケーシング、前記高圧側へ圧力によって溶液を送液する送液手段、前記高圧側に生じる濃縮された溶液の一部をわきにそらしてそれを前記低圧側に沿って高圧側の流れと逆方向に流すための圧力調整器およびバルブの手段、ならびに前記高圧側に生じる濃縮された溶液のわきにそらされなかった部分および低圧側に生じる希釈された溶液の取出手段からなることを特徴とする可逆滲透の手段による供給溶液の濃縮装置」が記載されている。
2 そして、上記第4の1(4)の記載から、上記1に記載された「ケーシング」に保持された「半透膜」として、「ボディ40内に毛細管状の自己保持性膜列46がおかれる」態様が記載されている。さらに、上記第4の1(4)には、上記1における「高圧側に生じる濃縮された溶液」の全量にあたる「全ブライン濃縮液」について、「全ブライン濃縮液は口44を経て取出され、その一部は口45を経て返還され、管状膜の列46のおのおのの内側の空間に導入される。したがってこれらの膜の外側は高圧側であり、内側は低圧側である」ことも記載されている。
3 また、上記第4の1(2)の記載から、上記1に記載された可逆滲透の手段では、上記1に記載された「溶液」の「溶媒・・・は、濃縮されつつある加圧された溶液(・・・)から膜をとおして加圧されていない溶液(・・・)に滲透する」といえる。
4 そうすると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
<引用発明>
「高圧側および低圧側を有する少なくとも1枚の半透膜を保持するケーシング、前記高圧側へ圧力によって溶液を送液する送液手段、前記高圧側に生じる濃縮された溶液の一部をわきにそらしてそれを前記低圧側に沿って高圧側の流れと逆方向に流すための圧力調整器およびバルブの手段、ならびに前記高圧側に生じる濃縮された溶液のわきにそらされなかった部分および低圧側に生じる希釈された溶液の取出手段からなり、前記溶液の溶媒は濃縮されつつある加圧された溶液から膜をとおして加圧されていない溶液に滲透し、前記半透膜は毛細管状の自己保持性膜列であり、全ブライン濃縮液は口44を経て取出され、その一部は口45を経て返還され、管状膜の列46のおのおのの内側の空間に導入され、膜の外側は高圧側であり、内側は低圧側である、可逆滲透の手段による供給溶液の濃縮装置」
第6 当審の判断
1 対比
(1)引用発明と本願発明とを対比すると、引用発明の「高圧側」、「低圧側」、「半透膜」は、本願発明の「第1室」、「第2室」、「半透膜」に相当し、引用発明の「高圧側および低圧側を有する少なくとも1枚の半透膜を保持するケーシング」は、本願発明の「半透膜と、前記半透膜で仕切られた第1室および第2室と、を有」するものに相当する。
(2)また、引用発明の「高圧側へ圧力によって溶液を送液する送液手段」を有することは、本願発明の「第1対象液を所定の圧力で前記第1室に流」すことに相当し、引用発明の「前記高圧側に生じる濃縮された溶液の一部を・・・前記低圧側に沿って・・・流すための圧力調整器・・・の手段」を有することは、本願発明の「第2対象液を前記所定の圧力よりも低い圧力で前記第2室に流す」ことに相当する。
(3)そして、引用発明の「前記溶液の溶媒は濃縮されつつある加圧された溶液から膜をとおして加圧されていない溶液に滲透」することは、本願発明の「前記第1室内の前記第1対象液に含まれる水を前記半透膜を介して前記第2室内の前記第2対象液に移行させ」ることに相当する。
(4)さらに、引用発明の「全ブライン濃縮液は口44を経て取出され」る点と、「低圧側に生じる希釈された溶液の取出手段」を有する点は、本願発明の「前記第1室から濃縮液を排出し、前記第2室から希釈液を排出する」点に相当する。
(5)また、引用発明の「前記高圧側に生じる濃縮された溶液の一部をわきにそらしてそれを前記低圧側に沿って高圧側の流れと逆方向に流すための圧力調整器およびバルブの手段」を有する点は、本願発明の「前記第1対象液から排出される濃縮液の少なくとも一部が、前記第2対象液として前記第2室に流され」る点に相当する。
(6)そして、引用発明の「毛細管状の自己保持性膜列」は本願発明の「中空糸膜」に相当し、引用発明の「膜の外側は高圧側であり、内側は低圧側である」点は、本願発明の「前記中空糸膜の外側が第1室であり、前記中空糸膜の内側が第2室である」点と一致している。
(7)また、以上のことからみて、引用発明の「可逆滲透の手段による供給溶液の濃縮装置」は、本願発明の「半透膜モジュール」を備えた「濃縮システム」に相当するといえる。
(8)そうすると、引用発明と本願発明とは、
「半透膜と、前記半透膜で仕切られた第1室および第2室と、を有し、第1対象液を所定の圧力で前記第1室に流し、第2対象液を前記所定の圧力よりも低い圧力で前記第2室に流すことで、前記第1室内の前記第1対象液に含まれる水を前記半透膜を介して前記第2室内の前記第2対象液に移行させ、前記第1室から濃縮液を排出し、前記第2室から希釈液を排出する、半透膜モジュールと、
前記第1対象液から排出される濃縮液の少なくとも一部が、前記第2対象液として前記第2室に流され、
前記半透膜は中空糸膜であり、
前記中空糸膜の外側が第1室であり、前記中空糸膜の内側が第2室である、
濃縮システム」
の点で一致し、以下の点で相違している。
(相違点)
本願発明では、「前記第1室に供給される前記第1対象液と、前記第1室から排出される濃縮液および前記第2室から排出される前記希釈液の少なくともいずれかと、の間で、熱交換を行うことにより、前記第1対象液および前記第2対象液の少なくとも1つの温度を上昇させる、温度制御装置と、を備え、前記第1対象液は、濃縮により濃度が上がるにつれて粘度が増加する液であり、且つ、温度を上げることにより粘性が下がる液体であ」るのに対し、引用発明では、そのような温度制御装置を備えておらず、上記のような溶液の特性も特定されていない点
2 相違点に対する判断
(1)まず、前記相違点の、「前記第1対象液は、濃縮により濃度が上がるにつれて粘度が増加する液であ」る点に関し、引用発明の、半透膜を保持するケーシングの高圧側へ圧力によって送液される「溶液」(本願発明の第1対象液に相当)について、引用文献1には、前記第4の1(3)に「このような方法は、たとえば塩水の脱塩装置から排出するブラインの高濃縮溶液の生成、ジュースの濃縮、感熱物質などの工業溶液の濃縮に適用される」と記載されているとおり、「海水」、「ジュース」、「工業溶液」が例示されている。
(2)こうした溶液の性質に関する技術常識として、例えば、引用文献2に「海水の濃縮については、以下のような問題点がある。・・・海水が濃縮するほど液の粘度と比重が高くなる」(前記第4の2)と記載され、また、引用文献3に「膜面へ被処理液の成分が濃縮されると浸透圧が高くなるため、この浸透圧を超えるろ過圧力を付加できる高圧ポンプを用いる必要がある。また、溶液成分が膜面に濃縮して、ろ過を妨げるのをできるだけ抑制するため、被処理液の膜面流速を高くする必要がある。すなわち、高出力の高価な送液ポンプと高いエネルギーコストが必要となる。さらに、果汁、糖液あるいは蜂蜜などの溶液は、成分の濃縮により溶液の粘度が高くなり、逆浸透膜モジュールへの極薄い被処理液の流路への通液が容易でなくなる。・・・濃縮できないという問題があった。」(前記第4の3)と記載されているように、海水や果汁(引用文献1に記載されたジュースの一種)等は、濃度が上がるにつれて粘度が高くなることが知られており、濃縮による粘度上昇のために様々な問題が生じ得ることも当業者においてよく知られていた。特に引用文献3等の記載からすれば、溶液の粘度上昇により流路への通液が容易でなくなることから、それでもなお流路への通液を図ろうとする場合、溶液の供給圧力の高圧化などが当然に認識されるものである。
(3)また、上記相違点の「前記第1対象液は、・・・温度を上げることにより粘性が下がる液体であ」る点についても、例えば、技術常識として引用する引用文献4~7に、それぞれ以下の記載がある。
ア 引用文献4(特開2013-43153号公報)の記載
「国や地域によっては海水が低温である場合がある。この場合、海水淡水化システムS100において、低温の海水により、UF膜103や中圧RO膜105の海水の透過度が粘度の上昇などにより低下する」(前記第4の4(1))
「前記したように、海水を淡水化するために使用するUF膜3、高圧RO膜5は、透過液体の温度依存性が高く、低温の場合には透過度が低い一方、高温の場合には透過度が高い傾向にある。
【0030】
そこで、海水淡水化システムSでは、下水のもつ熱を海水に与える熱交換を行う熱交換器6を備えている。」(前記第4の4(2))
イ 引用文献5(特開平7-196705号公報)の記載
「糖類溶液は粘度が高いため、クロマト分離及び逆浸透膜による分離の際の圧力損失が大きく、その結果それらの分離速度の低下が避けられないという問題がある。・・・クロマト分離及び逆浸透膜による分離の際の処理温度を50℃以上に温度設定することによりそれらの分離速度を向上でき」(前記第4の5)
ウ 引用文献6(特開2003-145150号公報)の記載
「透過膜を有する1段以上の膜モジュールを用いる水処理装置は、工業用水、水道水、回収水等を被処理水として、膜を透過した透過水を得ることを目的として利用されてきた。・・・被処理水が・・・予め加温されるため、冬期などの被処理水の水温が低い場合においても、被処理水の粘度を低下させて、所定の圧力における透過水量を高めることができる」(前記第4の6(2))
エ 引用文献7(特開平11-138160号公報)の記載
「処理対象水をあらかじめ加温することによってその粘度を低下させ、粘度の低下した処理対象水を透過性膜の一方側に供給し、・・・されるので、濾過流束は低下することなく、高い濾過流束を得ることができる。」(前記第4の7(2))
(4)上記引用文献4~7の記載に見られるように、当業者において、前記引用発明の「溶液」を含む従来から半透膜を用いた膜分離(濃縮・希釈)に供されてきた、海水、糖類溶液(引用文献1に記載されたジュースも糖類溶液の一種といえる。)、工業用水等の溶液の多くは、低温だと粘度が高くなる、言い換えれば温度を上げることにより粘性が下がる溶液であることがよく知られていた。そして、そのような溶液を膜分離装置に供給するにあたり、溶液が適当な温度になるように加温する温度制御を行って粘度を下げることで、例えば圧力損失の増大や透過流速の低下といった問題を解決しようとすることも、当該技術分野における周知技術であったといえる。
(5)さらに、前記引用文献6、7には、それぞれ以下の記載もある。
ア 引用文献6(特開2003-145150号公報)の記載
(ア)「上流の膜モジュールで得られた中間濃縮水を下流の膜モジュールに供給し、透過水と濃縮水を得る2段以上の膜モジュールを用いる水処理方法において、前記中間濃縮水を、加温用熱交換器により所望の温度に加温してから、該加温用熱交換器の下流に位置する膜モジュールへ供給する」、「前記被処理水または中間濃縮水と、前記濃縮水又は前記透過水とを、熱回収用熱交換器において熱交換させる」(前記第4の6(1))
(イ)「【従来の技術】・・・膜モジュールから得られる濃縮水の熱を利用して、被処理水を加温することができる水処理装置及び水処理方法が知られている。・・・膜モジュール3b1より流出する濃縮水を、配管106より熱回収用熱交換器1bに供給し、該熱回収用熱交換器1bにおいて被処理水と濃縮水を熱交換させて、被処理水を加温させる・・・エネルギーを節約することができる。・・・
【課題を解決するための手段】・・・得られた透過水と、被処理水又は中間濃縮水とを熱交換することにより・・・加温用のエネルギーをさらに節約することができる」(前記第4の6(2))
イ 引用文献7(特開平11-138160号公報)の記載
(ア)「処理対象水を透過性膜に供給する前にあらかじめ処理対象水を加温する」、「処理対象水の供給タンクと透過性膜を有する膜分離装置とを結ぶ供給管路に熱交換器を配し、上記膜分離装置から取り出される透過水を排出する第一管路が上記供給管路と交差する箇所に熱交換器を配した」(前記第4の7(1))
(イ)「膜分離装置から排出される透過成分(透過水)と非透過成分(濃縮水)を、熱交換器を用いてそれぞれ原水(処理対象水)と熱交換させることにより、処理対象水を一定温度まで昇温させる・・・昇温コストを抑制することができる」(前記第4の7(2))
(6)このように、半透膜モジュール等の膜分離装置へ供給する溶液を予め加温して所望の温度に調整する温度制御を行う場合に、膜分離装置から取り出される温度の高い濃縮液又は希釈液と、膜分離装置へ供給する温度の低い溶液との間で熱交換を行うことで、エネルギーを節約し、昇温コストを抑制する技術も、当該技術分野における周知技術であったことが理解できる。
(7)まず、上記(2)及び(4)によれば、引用発明の「溶液」は、濃度が上がるにつれて粘度が高くなる溶液であり、温度を上げることにより粘度が下がる溶液であるから、上記相違点のうち、「前記第1対象液は、濃縮により濃度が上がるにつれて粘度が増加する液であり、且つ、温度を上げることにより粘性が下がる液体である」との点は、本願発明と引用発明との間で、実質的な相違点となるものではない。
(8)ここで、前記(1)で摘示したとおり、本願発明の第1対象液に相当する「溶液」について、「海水」、「ジュース」、「工業溶液」が例示された濃縮装置に係る引用発明において、前記(2)で述べたように濃縮により溶液の粘度が高くなることにより、様々な問題、例えば「溶液」の供給圧力の高圧化の問題が生じることは、当業者であれば、普通に認識することである。そして、引用発明は、引用文献1の上記第4の1(3)に「本発明はとくにこのような方法における要求される水圧の減少および従来の膜の溶質除去能力の改良を目的とする。」と記載されているように、「溶液」の供給圧力が高くなることを問題としているのであるから、「溶液」の供給圧力の高圧化といった、様々な問題を引き起こす「溶液」の濃度上昇による粘度の上昇を防ぐ動機付けが引用発明にあるといえる。
(9)さらに、上記(4)で述べたように、温度を上げることにより粘性が下がる溶液を膜分離装置に供給するにあたり、溶液が適当な温度になるように加温する温度制御を行って粘度を下げることで、例えば圧力損失の増大や透過流速の低下といった問題を解決しようとすること、そして、上記(6)で述べたように、半透膜モジュール等の膜分離装置へ供給する溶液を予め加温して所望の温度に調整する温度制御を行う場合に、膜分離装置から取り出される温度の高い濃縮液又は希釈液と、膜分離装置へ供給する温度の低い溶液との間で熱交換を行うことで、エネルギーを節約し、昇温コストを抑制する技術は、いずれも周知技術であるから、引用発明において、「溶液」の濃度上昇による粘度の上昇を防ぐために、上記周知技術を採用して、半透膜を保持するケーシングの高圧側へ送液される溶液(本願発明の「第1溶液」に相当)と、高圧側に生じる濃縮された溶液(本願発明の「濃縮液」に相当)との間で熱交換を行うことにより、少なくとも前記高圧側へ送液される溶液の温度を上昇させる温度制御装置を備えるようにすることは、当業者ならば容易に想到し得たことというべきである。
(10)なお、本願発明では、「前記第1対象液および前記第2対象液の少なくとも1つの温度を上昇させる」と特定されるものであるところ、上述のように、少なくとも第1対象液の温度を上昇させることは、当業者が容易に想到できるのであるから、「第2対象液の温度を上昇させる」場合については検討する必要がないが、念のために検討すると、前記高圧側へ送液される溶液の温度を上昇させれば、その溶液が半透膜を保持するケーシングを通って高圧側に生じる濃縮された溶液の一部(本願発明の「第2対象液」に相当)の温度も上昇することになるのは当業者にとって自明である。
3 本願発明の効果について
(1)本願発明による効果は、本願明細書の【0004】に「例えば、飲料等の対象液を濃縮する場合、濃縮により対象液の濃度が上がるにつれて対象液の粘度は増加する。このような粘度が高い対象液に対してブラインコンセントレーション(BC)による膜処理を実施する場合、半透膜モジュール内の圧力損失が非常に高くなる可能性がある。圧力損失が高くなるとBCによる処理効率が大幅に低下する。このような問題は、BCを用いることで、対象液を従来よりも高濃度に濃縮することが可能になったことに起因して、特に課題として重視する必要性が生じている」と記載されているような課題に対し、【0012】に記載されたとおり、「ブラインコンセントレーション(BC)を用いた濃縮システムにおいて、BCに用いられる半透膜モジュールにおける圧力損失の上昇を抑制することができる」というものである。
(2)しかしながら、「ブラインコンセントレーション(BC)」とは、本願明細書の【0002】に記載されるように「半透膜モジュールの第1室に高圧の対象液を流し、第2室に低圧の対象液を流して、第1室内の対象液に含まれる水を半透膜を介して第2室内の対象液に移行させることで、第1室から濃縮された対象液を排出し、第2室から希釈された対象液を排出する膜分離方法」であり、引用発明も、その装置構成からみて、ブラインコンセントレーションを用いた濃縮システムに相当するといえるところ、溶液の濃縮において粘度の上昇が問題となることは、前記2(2)で述べたとおり当業者が普通に認識する技術的事項であるから、ブラインコンセントレーションにおいても、溶液の濃縮による粘度の上昇に対して注意を払うべきことは、当業者が容易に認識できたことである。加えて、溶液の加温により粘度を低下させて圧力損失等の問題を解決できることも、前記2(3)~(4)で述べたとおりの当該技術分野における周知技術における効果として、当業者が予測し得るものである。
(3)また、請求人は、令和6年10月28日に提出された意見書において、「請求項1において、温度制御装置について、「前記第1室に供給される前記第1対象液と、前記第1室から排出される濃縮液および前記第2室から排出される前記希釈液の少なくともいずれかと、の間で、熱交換を行うことにより、前記第1対象液および前記第2対象液の少なくとも1つの温度を上昇させる、温度制御装置」とする補正をしております。これにより、消費エネルギーを削減することができます(本願の明細書の段落[0045])。また、熱交換で溶液の加温を行うだけでなく、熱交換の程度を制御して第1対象液の温度制御を行うようにすることができます。一方、引用文献8(当審注:本審決における引用文献1)等には、このような技術的効果は記載も示唆もされておりません。」と主張する。
(4)しかし、熱交換器の利用による消費エネルギー削減の効果は、引用文献6に「膜モジュール3b1より流出する濃縮水を、配管106より熱回収用熱交換器1bに供給し、該熱回収用熱交換器1bにおいて被処理水と濃縮水を熱交換させて、被処理水を加温させる・・・エネルギーを節約することができる。・・・得られた透過水と、被処理水又は中間濃縮水とを熱交換することにより・・・加温用のエネルギーをさらに節約することができる」(第4の6(2))と記載されるとおり、前記2(6)で述べた周知技術の効果に過ぎない。また、「熱交換で溶液の加温を行うだけでなく、熱交換の程度を制御して第1対象液の温度制御を行うようにすることができ」るという効果については、本願明細書の熱交換器に関する【0045】等の記載を参照しても、本願明細書に、「熱交換の程度を制御して第1対象液の温度制御を行うようにすることができ」ることは記載されていない。仮に本願発明にこの効果があるとしても、引用文献6の上記第4の6(1)には、「中間濃縮水を、加温用熱交換器により所望の温度に加温」することが、引用文献7の上記第4の7(2)には、「膜分離装置から排出される透過成分(透過水)と非透過成分(濃縮水)を、熱交換器を用いてそれぞれ原水(処理対象水)と熱交換させることにより、処理対象水を一定温度まで昇温させる」ことが記載されているところ、加熱の対象である液の温度を「所望」の温度まで上昇させるには、熱交換の程度を制御することが必要であるといえるから、上記効果は、引用文献6、7に記載される、熱交換器を利用して溶液を所望の温度に加熱する周知技術から、当業者が普通に予測し得る効果であり、格別顕著な効果であるとはいえない。
4 小括
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された前記引用発明及び当該技術分野における技術常識並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、同法第49条第2号に該当するから、その他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-018863