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特許拒絶査定不服審判

2023-014244

循環型排水処理ユニット、および循環型排水処理システム

審判番号
2023-014244
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-193885
請求日
2023年08月24日
審決日
2024年10月22日
公報発行日
2025年01月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】WOTA株式会社
  • 【請求人代理人】IPTech弁理士法人
審判長/審判官
  • 審判長 深草 祐一
  • 審判官 原 賢一
  • 審判官 金 公彦
分類
P18 .121-Z (C02F) / P18 .575-Z (C02F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法49条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

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特願2021-193885「循環型排水処理ユニット、および循環型排水処理システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 6月 9日出願公開、特開2023- 80503〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和3年11月30日を出願日とするものであり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 令和5年 1月24日付け 拒絶理由通知 同年 3月27日 手続補正書及び意見書の提出 同年 5月24日付け 拒絶査定 同年 8月24日 手続補正書(以下、同手続補正書によりなされた補正を、「本件補正」という。)及び審判請求書の提出 同年11月27日付け 前置報告書 令和6年 1月10日 上申書(前置報告書への反論)の提出 第2 本件補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正後の請求項1の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおり補正された。 「【請求項1】 供給される排水を、微生物を利用して処理する生物処理槽であって、一つの槽に無酸素部と好気部とを備える生物処理槽と、 前記無酸素部に、エタノールを、センシング値に関わらず複数の間隔で継続して供給する供給部と、を備える循環型排水処理ユニット。」(下線は補正箇所である。) (2)本件補正前の請求項1の記載 本件補正前の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 供給される排水を、微生物を利用して処理する生物処理槽であって、一つの槽に無酸素部と好気部とを備える生物処理槽と、 前記無酸素部に、流動体状の有機物を、センシング値に関わらず複数の間隔で継続して供給する供給部と、を備える循環型排水処理ユニット。」 2 補正の適否 (1)補正の目的について 本件補正は、請求項1において、本件補正前には、「流動体状の有機物」とあったものを、「エタノール」と補正するものである。 この補正は、「流動体状の有機物」を、その下位概念の「エタノール」に限定するもので、いわゆる限定的減縮にあたるものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。 そこで、上記1(1)で記載した本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (2)独立特許要件について ア 引用文献に記載された事項 本願出願日前に頒布され、下記第3の2で述べる原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1(特開2005-60981号公報)、さらに、技術常識もしくは周知技術として引用する、前置報告において引用された引用文献5(特開2011-218345号公報)、引用文献6(特開2001-314892号公報)、及び当審で引用する社団法人化学工学協会編、水質汚濁防止技術と装置4.生物学的水処理技術と装置、株式会社培風館、昭和53年10月20日、205~217頁)には、以下の事項が記載されている。 なお、下線は当審において付したものである。 (ア)引用文献1に記載された事項 a 「【0005】 本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、汚泥中の有機物不足により、微生物活性が低下した場合でも、速やかに有機物を添加して微生物の活性を回復することができる循環式水洗トイレシステムを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 上記目的を達成するために、請求項1に記載の循環式水洗トイレシステムでは、水洗便器からの汚水を受け入れ、汚水中の有機物を分解するとともに硝化及び脱窒処理する生物処理槽と、当該生物処理槽で処理された生物処理水を固液分離するろ過槽と、当該ろ過槽で固液分離されたろ過水を脱色処理する脱色槽とを有し、当該脱色槽で脱色された処理水を洗浄水として前記水洗便器に循環するようにした循環式水洗トイレシステムにおいて、前記生物処理槽内で、微生物により分解される生分解性プラスチックと、当該生分解性プラスチックを前記生物処理槽に固定する固定手段と、前記生物処理槽に微生物が分解可能な易分解性有機物を投入する易分解性有機物投入手段とを備えている。」 b 「【発明の効果】 【0010】 本発明の請求項1に記載の循環式水洗トイレシステムでは、水洗便器から受け入れた汚水中の有機物及びアンモニアを生物処理槽で有機物分解及び硝化・脱窒処理を行い、生物処理水としてろ過槽に送出される。次いで、生物処理水はろ過槽で固液分離される。固液分離されたろ過水は、脱色槽に送られて脱色槽にてオゾンガスが吹き込まれて脱色処理される。生物処理槽内の微生物は、汚水の非流入時に微生物の餌となる汚水中の有機物が入ってこなくても、生分解性プラスチックを餌として分解するため、生物処理槽内での微生物活性を常時保持できるが、生分解性プラスチックだけでは、有機物の不足分を補いきれず、微生物活性が低下する場合がある。そこで、易分解性有機物投入手段によって、微生物が資化源として利用可能な易分解性有機物が、生物処理槽内に投入されるので、微生物は易分解性有機物を餌とすることにより、微生物活性を速やかに回復させることができる。また、微生物活性の低下を速やかに回復させることができるので、微生物活性の回復の遅い時に必要であった汚泥交換をする手間がいらない。」 c 「【0014】 以下、本発明を循環式水洗トイレシステム1に適用した第1の実施の形態について、図面に基づいて説明する。まず、第1の実施の形態の循環式水洗トイレシステム1の構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、第1の実施の形態である循環式水洗トイレシステム1の概念図であり、図2は、第1の実施の形態である循環式水洗トイレシステム1の構成図である。図1に示すように、循環式水洗トイレシステム1は、水洗便器5と、水洗便器5からの汚水を受け入れ、汚水に含まれる有機物を分解すると共に硝化及び脱窒処理する生物処理槽6と、生物処理槽6で生物処理され、汚泥が混在する生物処理水を固液分離するろ過槽7と、ろ過水をオゾンによって酸化・脱色処理するオゾン脱色槽8と、ろ過槽7に設けられ、生物処理水のpHを測定するpHセンサ27と、pHセンサ27で測定されたpH値に基づいてポンプ12を制御するコントローラ11と、コントローラ11の制御信号に基づいて易分解性有機物タンク13に貯蔵されている易分解性有機物を生物処理槽6の後述する脱窒槽6aに供給するポンプ12とから構成されている。 【0015】 次に、生物処理槽6について説明する。図1及び図2に示すように、生物処理槽6は、汚水中のアンモニアを硝化処理して、硝酸に変換する硝化槽6bと、硝化槽6bで硝化処理された硝酸を脱窒処理して窒素ガスに変換して大気中に放出する脱窒槽6aとから構成されている。そして、脱窒槽6aの内壁面25c(図2及び図3参照)には、後述する生分解性プラスチック板30が収納されたケース35が固設されている。さらに、脱窒槽6aと硝化槽6bとを仕切る内壁の下部近傍には、汚泥及び生物処理水が挿通可能な挿通口26が設けられている。 【0016】 そして、図2に示すように、脱窒槽6aの底部略中央近傍には、撹拌機23が設けられ、硝化槽6bの底部略中央近傍には、撹拌機24が設けられており、各槽内の汚泥中の微生物と汚水中の有機物との接触が促進される。また、脱窒槽6aの撹拌機23の下方には、間欠式のブロワー17に接続された散気管17aが設けられており、ブロワー17から空気が散気管17aを通じて脱窒槽6aに送り込まれる。さらに、硝化槽6bの撹拌機24の下方には、間欠式のブロワー18に接続された散気管18aが設けられており、散気管18aを通じて空気が硝化槽6bに送り込まれる。そして、硝化槽6bには、水中ポンプ22が設けられており、この水中ポンプ22は、硝化槽6bで微生物処理された生物処理水をろ過槽7に送出する。 ・・・ 【0021】 次に、脱窒槽6aに投入される生分解性プラスチック板30について、図3及び図4を参照して説明する。図3は、生分解性プラスチック板30がケース35に収納されて脱窒槽6aの内壁面25cに固設された状態を示す斜視図であり、図4は、生分解性プラスチック板30の斜視図である。・・・ 【0023】 次に、生物処理槽6の微生物処理について説明する。図2に示す生物処理槽6では、微生物の働きにより、水洗便器5から流入する汚水の有機物分解及び硝化・脱窒処理が行われている。この生物処理槽6に常在する微生物は、汚水中のアンモニアを硝酸に変換する硝化処理を行う好気性の硝化菌と、硝化処理された硝酸を脱窒処理して大気中に窒素を放出する嫌気性の脱窒菌とに大別される。そして、脱窒槽6aでは、ブロワー17の空気送出量を少な目に調節することにより、硝化菌より脱窒菌の活性が優勢となり、脱窒処理が優先して行われる。また、硝化槽6bでは、ブロワー18の空気流入量はブロワー17より多めに調節されているので、脱窒菌より硝化菌の活性が優勢となり、硝化処理が優先して行われる。したがって、各槽で別々の処理が行われることにより、硝化・脱窒処理が効率的に行われることになる。また、硝化菌及び脱窒菌の活性は、汚泥(又は生物処理水)のpHに大きく依存しており、活性が最も高くなる硝化菌の至適pHは一般的に6.5~8.0、脱窒菌の至適pHは7.0~8.5と言われているため、例えば、汚泥がpH7~8の範囲内にあれば、生物処理(硝化・脱窒処理)は安定して行われる。 【0024】 次に、脱窒槽6aに供給される易分解性有機物について説明する。図1及び図2に示すように、易分解性有機物タンク13に貯蔵されている易分解性有機物は、脱窒槽6aの脱窒菌が利用する脱窒用の有機物が不足している場合、脱窒槽6aに直接供給される。そして、易分解性有機物は水に所定量溶解され、液体の状態で易分解性有機物タンク13に貯蔵されている。したがって、易分解性有機物は液体の状態で脱窒槽6aに供給されるので、脱窒槽6aの汚泥に速やかに溶け込み、脱窒菌に利用されやすくなっている。尚、脱窒槽6aに投入される易分解性有機物は、脱窒菌により分解可能であって、脱窒作用が発揮できるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、TCA回路に代表される酢酸、クエン酸、ケトグルタル酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、オキサロ酢酸、ピルビン酸等の有機酸及びこれらのナトリウム塩、カリウム塩が挙げられ、グルコース及びシュークロース等の糖類等も挙げられる。尚、第1の実施の形態である循環式水洗トイレシステム1では、酢酸ナトリウムを水に一定量溶解させて、液状にして供給しているが、一定量供給できる形態であれば液状に限られず、例えばタブレットや粉末等の固形物を一定量計量して落下させるように構成してもよい。 【0025】 次に、以上のように構成された循環式水洗トイレシステム1の動作について、図1及び図2を参照して説明する。まず、循環式水洗トイレシステム1の稼働中において、CPU11aは、pHセンサ27が測定したろ過槽7の生物処理水のpH値の信号を受信する。そして、CPU11aは、ろ過槽7のpH値が7未満であるか否かを判断する。ろ過槽7のpH値が7未満である場合、生物処理槽6の汚泥中の有機物濃度が低下し、脱窒槽6aでの脱窒処理が十分に行われず、脱窒処理されなかった硝酸が汚泥中に蓄積してpHが低下していることが考えられる。さらに、脱窒槽6aに固定された生分解性プラスチック板30から供給される有機物量だけでは、脱窒菌が資化源として必要とする有機物量に足りず、脱窒処理が十分行われていないことが考えられる。また、脱窒菌の至適pHは7~8.5であり、その範囲から外れてしまうと、さらに脱窒菌の活性は低下し、十分な脱窒処理が得られない。そこで、CPU11aは、受信したpH値の信号が7未満を示す場合には、ポンプ12に運転信号を送信する。 【0026】 そして、ポンプ12は、CPU11aより運転信号を受信して、所定量の易分解性有機物(例えば、酢酸ナトリウム水溶液)を易分解性有機物タンク13から脱窒槽6aに供給するよう動作を開始する。尚、第1の実施の形態の循環式水洗トイレシステム1では、ポンプ12に運転信号が送信されると、1時間毎に約28g/L濃度の酢酸ナトリウム水溶液を、脱窒槽6aに750ml滴下するように動作を行う。尚、750mlの酢酸ナトリウム水溶液は、2分間かけて脱窒槽6aに滴下するようになっている。 【0027】 次いで、易分解性有機物が脱窒槽6aに供給されると、脱窒槽6aの脱窒菌は、供給された易分解性有機物を脱窒用の有機物として速やかに利用できるので、脱窒処理が促進され、汚泥中に蓄積していた硝酸が窒素に変換されて大気中に放出される。そして、脱窒槽6aで脱窒処理が進行すると、汚泥中の硝酸が減少し、汚泥のpHが上昇する。次いで、pHセンサ27が測定したろ過槽7の生物処理水のpHが7以上であることを示す信号をCPU11aが受信した場合は、CPU11aはポンプ12に停止信号を送信し、停止信号を受信したポンプ12は運転を停止し、脱窒槽6aへの易分解性有機物の供給を停止させる。尚、ろ過槽7の生物処理水のpHが7以上の場合は、脱窒菌が資化源として利用可能な脱窒用の有機物が汚泥中に十分存在しており、脱窒菌による脱窒処理が十分進行していると判断できる。 【0028】 次に、循環式水洗トイレシステム1のシステム立ち上げ時の易分解性有機物の供給について、図2を参照して説明する。図2に示すように、循環式水洗トイレシステム1のシステムの立ち上げ時には、生物処理槽6、ろ過槽7、オゾン脱色槽8に所定量の水が投入され、生物処理槽6(脱窒槽6a及び硝化槽6b)には微生物を含む汚泥が投入される。循環式水洗トイレシステム1のシステム立ち上げ時は、水洗便器5からの汚水量が少ないため、生物処理槽6の汚泥中の有機物濃度は低い。そして、生分解性プラスチック板30も脱窒槽6aに投入されたばかりであるので、脱窒菌により分解されにくく、脱窒菌が必要とする脱窒用の有機物量を生分解性プラスチック板30だけでは補うことができない。したがって、不足分の有機物を脱窒槽6aに供給するために、例えば、循環式水洗トイレシステム1の立ち上げ時から所定期間(例えば、1週間)は、pHセンサ27の測定するpH値に関係なく、ポンプ12を運転させて易分解性有機物を供給するように制御する。 【0029】 そして、コントローラ44は、ポンプ12を1日置きに、約28g/L濃度の酢酸ナトリウム水溶液を、1日24回、1時間置きに750ml滴下する。尚、ポンプ12は、2分間かけて酢酸ナトリウム水溶液を750ml滴下するようになっている。以上の処理を行うと、循環式水洗トイレシステム1の生物処理槽6の生物処理が短期間(例えば、約1週間)で安定する。生物処理槽6での生物処理が安定したか否かの判断基準は、例えば、オゾン脱色槽8より処理水をサンプリングし、サンプリング水の色度又はpHを測定して、色度が100度未満、又はpHが7から8までの範囲になったら、生物処理が安定したと判断し、上記に説明した通常のコントローラ11のポンプ12の制御を開始させる。尚、汚水中の窒素分が有機物に比べて過剰(C/N比が小さい)であると、有機物不足による脱窒菌の活性低下が引き起こされるので、脱窒槽6aに易分解性有機物を供給することにより、脱窒菌の活性は回復し、脱窒処理が進行される。 【0030】 以上説明したように、第1の実施の形態の循環式水洗トイレシステム1によれば、水洗便器5から流れ出た汚水は、生物処理槽6で生物処理される。そして、生物処理槽6からろ過槽7に送出された生物処理水のpHは、pHセンサ27によって連続的又は間欠的に監視される。脱窒槽6aの脱窒菌は、水洗便器5から流入する汚水量が少なくても、脱窒槽6aに設けられた生分解性プラスチック板30を脱窒用の有機物として利用することができる。しかし、生分解性プラスチック板30は、脱窒菌によって緩やかに分解されるため、生分解性プラスチック板30だけでは、脱窒菌が必要とする有機物量全てを補いきれず、脱窒処理が安定して行われないので、汚泥中に大量の硝酸が蓄積してpHが低下する。そこで、コントローラ11のCPU11aは、ろ過槽7のpHを測定するpHセンサ27の測定値が7未満になった場合には、ポンプ12を運転させて、易分解性有機物タンク13から易分解性有機物を脱窒槽6aに供給し、脱窒菌による脱窒処理を促進させる。この易分解性有機物は水溶性であり、供給する形態は液体状でも固体(粉末)状でもよい。したがって、脱窒槽6aの脱窒菌は、供給された易分解性有機物を資化源として速やかに利用できるので、低下していた微生物活性を速やかに回復させることができる。」 d 「【図2】 [図:0001418040000001.jpg] 【図3】 [図:0001418040000002.jpg] 」 (イ)引用文献5に記載された事項 a 「【請求項1】 脱窒槽において窒素含有排水中に含まれる窒素酸化物を還元する脱窒ステップと、 前記脱窒槽の最下流位置近傍における酸化還元電位を計測する計測ステップと、 前記計測ステップによって計測された酸化還元電位が所定値以上である場合、前記脱窒槽内に有機物を添加する有機物添加ステップと、 を含むことを特徴とする排水処理方法。」 b 「【0005】 ・・・一方、脱窒工程は、有機物を利用して以下に示す化学反応式(8)に従って進行する。化学反応式(8)中の(H)はエタノール及びその他の有機物を示している。 【0006】 ・・・ NO3-+H++5(H) → 0.5N2+3H2O …(8) ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 しかしながら、上述の脱窒工程において、有機物量が少ない、溶存酸素量が多い等、反応環境が良好でないと、還元反応が不十分になり、窒素への完全な分解が進まなくなる。この結果、以下に示す化学反応式(9)~(12)のうち、化学反応式(11)までで反応が終了してしまい、亜酸化窒素の発生量が増加することがある。 【0009】 NO3-+H++5(H) → NO2-+H2O …(9) NO2-+H++(H) → NO+H2O …(10) NO+(H) → 0.5N2O+0.5H2O …(11) N2O+2(H) → N2+H2O …(12) 【0010】 ・・・活性汚泥の内部は、無酸素状態又はそれに近い状態にあるために、硝化反応によって生じた硝酸又は亜硝酸の還元反応が生じ易い環境条件にある。 【0011】 しかしながら、活性汚泥は既に好気的に処理されているため、還元反応に必要な有機物が不足している等の原因によって、還元反応が窒素になるまで十分に進行せず、亜酸化窒素が生成されることがある。そして、亜酸化窒素を含む活性汚泥が返送経路を介して硝化槽へと返送されると、硝化槽における散気の影響によって、亜酸化窒素が揮散され、溶存状態の亜酸化窒素が大気中に放出される。 ・・・ 【課題を解決するための手段】 【0014】 上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る排水処理方法は、脱窒槽において窒素含有排水中に含まれる窒素酸化物を還元する脱窒ステップと、前記脱窒槽の最下流位置近傍における酸化還元電位を計測する計測ステップと、前記計測ステップによって計測された酸化還元電位が所定値以上である場合、前記脱窒槽内に有機物を添加する有機物添加ステップと、を含む。」 c 「【0023】 脱窒槽4は、嫌気槽2の下流側に配置され、嫌気槽2から流出した処理水が流入する槽である。脱窒槽4は、無酸素環境下で脱窒菌の作用によって処理水に対し脱窒処理を施すためのものである。脱窒槽4内の処理水には、循環経路8を介して好気槽6内の硝化液が循環されることによって硝酸が含まれている。この硝酸は、既に述べた化学反応式(9)~(12)に従った化学反応によって窒素へと分解される。循環経路8を介して脱窒槽4に硝化液を循環させることによって、脱窒槽4における脱窒効率を向上させることができる。 【0024】 脱窒槽4の槽終端位置(最下流近傍位置)4a、すなわち好気槽6に至る直前部分の位置には、窒素含有排水の酸化還元電位(ORP値)を計測するORP計24が設けられている。脱窒槽4の上流側には、図示しない貯留タンク内に貯留された有機物を脱窒槽4の上流側に添加する有機物添加手段26が設けられている。有機物添加手段26が添加する有機物としては、メタノールやエタノール等のアルコール類、酢酸等の揮発性脂肪酸、グルコース等の易分解性の炭水化物を例示することができる。 ・・・ 【0030】 以上のことから、本実施形態では、メモリ内の臨界ORP値Dcを-220mVに設定し、コンピュータ28は、ORP値D1が-220mVを超えた場合に有機物の添加量を増大させる制御指令D2を送出する。脱窒槽4への有機物の添加量が増大すると、脱窒槽4内の脱窒菌(硝酸還元菌)の活動が活発となり、脱窒反応が促進されて、亜酸化窒素の発生量が低減されると共にORP値D1が低下する。これにより、亜酸化窒素の発生量や揮散量を低減することができる。なお、臨界ORP値Dcの値は、有機物濃度等の原水の水質に応じて変化する値であり、-220mVに限定されるものではない。」 (ウ)引用文献6に記載された事項 a 「【0006】 【発明が解決しようとする課題】生物学的硝化脱窒法による廃水処理装置を用いた廃水からの窒素除去においては、廃水処理装置に流入する廃水の水質の時間変動に対応して、廃水処理装置の処理性能を良好に維持管理することが必要である。このためには、廃水の水質に対応した適切な値となるように、廃水処理装置の運転条件を制御しなければならない。特に、生物学的窒素除去反応を構成する硝化反応および脱窒反応のうち、脱窒反応では、硝酸態窒素または亜硝酸態窒素を窒素にまで還元(脱窒)する際に、廃水中の有機物が還元反応の水素供与体として消費される。したがって、廃水の有機物濃度が窒素濃度に比して小である場合には、水素供与体濃度の不足により所望の脱窒反応量を得ることができないという問題がある。 ・・・ 【0008】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明は、生物学的窒素除去処理装置による廃水の窒素除去の制御方法において、前記生物学的窒素除去処理装置は、第1の固液分離装置と、脱窒槽と、硝化槽と、第2の固液分離装置と、前記第1の固液分離装置の出口水の全窒素濃度、アンモニア態窒素および化学的酸素要求量を測定するための自動分析装置とを具備するとともに、(1)前記第1の固液分離装置は少なくとも2つの最初沈澱池を含むこと、および(2)前記脱窒槽への有機物の注入が行われること、の少なくとも一方の条件を満たす装置であり、前記自動分析装置により前記第1の固液分離装置の出口水の全窒素濃度、アンモニア態窒素および化学的酸素要求量を測定して測定値を得、前記測定値をもとに、数値モデルにより構成されたシミュレーションによる処理予測計算を短時間で行い、窒素除去率が悪化することが予測された場合には、前記第1の固液分離装置を構成する前記最初沈澱池の運転池数および前記有機物注入量の少なくとも一方を、前記シミュレーション結果に基づいて制御することを特徴とする廃水の窒素除去の制御方法を提供する。 ・・・ 【0010】本発明の制御方法においては、最初沈澱池出口水の水質を分析し、この分析値に基づいて生物学的動力学モデル等の数値モデルにより構成されたシミュレーションモデルによる処理予測計算を短時間で行う。その結果、脱窒槽内にNO2-もしくはNO3-が残留する場合には、脱窒槽もしくは嫌気槽へのメタノール等の有機物の注入量を大とする。もしくは最初沈澱池の運転池数を削減することにより、本廃水処理装置に流入する有機物の量を大とする。これによって、脱窒槽での脱窒反応速度を高めて、脱窒反応量を増加させることができる。 ・・・ 【0016】脱窒槽においては、活性汚泥が最初沈澱池出口水16および有機物注入装置10から供給されるメタノール等の有機物を利用して、最初沈澱池出口水16、返送汚泥8および硝化循環液6に含まれる硝酸性窒素または亜硝酸性窒素を窒素ガスにまで還元(=脱窒反応)し、脱窒処理する。脱窒槽3aに注入される有機物としては、例えば、メタノール、エタノール、酢酸およびギ酸等を挙げることができるが、費用面を考慮するとメタノールを用いることが好ましい。」 b 「【0025】本発明において用いる廃水処理装置には、脱窒工程および硝化工程に加えて、さらに別に工程が含まれていてもよい。例えば、嫌気工程、脱窒工程(無酸素工程)および硝化工程(好気工程)からなる廃水処理装置においても、本発明に基づく窒素除去方法を適用することができる。また、処理対象の廃水の性状および水量の変動が著しいものでない場合には、自動分析装置による分析が間欠的であっても、実際上の反応制御には支障を来さない。」 (エ)引用文献7に記載された事項 a 「6・1 脱窒素活性汚泥法の原理 脱窒素活性汚泥法は,活性汚泥(散水ろ(当審注:原文は、さんずいに戸、他の1箇所も同じ)床法などではろ床表面のスライム)に野生的に生息している硝化菌と脱窒素菌の生理作用を合理的に組み合わせることによって,排水中に溶存している各種の窒素化合物を最終的に不活性な窒素ガス,ないし酸化窒素ガスに変換して大気中に放散させる方法である。そのプロセスの構成は,図6・1に示すように,基本的には硝化工程と脱窒素工程の2つの工程に分けられる。 [図:0001418040000003.jpg] 」(205、206頁) b 「6・1・2 脱窒素工程 脱窒素菌は,その生活(生育)環境が好気的であっても嫌気的であっても増殖できる通性嫌気性菌であり,嫌気性状態では,分子状の遊離酸素の代わりにNO2ないしNO3を水素受容体として呼吸する。脱窒素工程では,脱窒素菌のこの性質を利用して,硝化工程で硝化された排水を溶存酸素のない嫌気的な条件下において導入し,脱窒素菌の硝酸呼吸,あるいは亜硝酸呼吸によってNO2-N,NO3-Nを図6・51)に示すような還元経路に従ってN2ガス(一部はN2Oガス)にまで還元する。この呼吸反応は,化学量論的に次式で示される。 (1)亜硝酸呼吸 2NO2-+3(H2)→N2+2OH-+2H2O (2)硝酸呼吸 2NO3-+5(H2)→N2+2OH-+4H2O これらの式の(H2)は,微生物内の呼吸酵素系を経由して水素供与体から与えられる。・・・通常,自然界に広く分布している脱窒素菌は,ほとんどが有機物を水素供与体とする他栄養性細菌に属するものである。 有機物が供与できる水素の理論量は,表6・2に示すように,その有機物が加水分解するものとして求めることができる。・・・脱窒素菌は有機物を単に呼吸基質としてばかりでなく,細胞合成の炭素源としても利用するので,実際には計算値よりも30~40%余分に有機物を与えなければならない。 脱窒素菌の水素供与体として利用できる有機物を系統的に調べたデータは少 ・・・ [図:0001418040000004.jpg] ないが,McCartyとAmant1)はグルコース,酢酸,エタノール,アセトン,メタノールの5物質について,水素供与体としての適性を検討し,資化性,扱いやすさ,経済性の点からメタノールが最も優れていると報告している。しかしながら,メタノールは一炭素化合物であり,これを資化できる脱窒素菌の菌種は限られいてるので,あらゆる場合にメタノールを水素供与体とすることはできない。 嫌気的条件下で,脱窒素菌に対して水素供与体(基質)が十分に供給される場合には,いわゆる体外呼吸により活発な増殖が行なわれるので,呼吸速度は速く,脱窒素機能はきわめて旺盛である。・・・ 脱窒素工程において,脱窒素反応が遅滞なく進行するための必須条件は次のとおりである。 (1) 混合培養液に溶存酸素が存在しないこと。 (2) 適当な水素供与体が適量存在すること。 (3) 排水中に毒性物質が含まれていないこと。」(210頁~212頁末行) c 「6・2・3 汚泥数による分類 脱窒素活性汚泥法がプロセスとしての機能を発揮するためには,BOD酸化菌,硝化菌および脱窒素菌の3者がプロセス内で十分に増殖できるように,特定の生理的環境条件を与えなければならない。この分類法はこれらの細菌を培養する型式によって同プロセスを分類する方法である。これには図6・11に示すように,(1)(当審注:原文は丸数字、この項目では続く(2)(3)についても同じ)BOD酸化菌,硝化菌,脱窒素菌の3者を含めた汚泥でプロセスを構成する単相汚泥方式,(2)3者のうち1種を別個の汚泥として切り離した2相汚泥方式,(3)3者をそれぞれ別個の汚泥とした3相汚泥方式 とがある。・・・ [図:0001418040000005.jpg] 」(216頁、217頁) イ 引用文献1に記載された発明及び引用文献5~7から認定できる技術常識もしくは周知技術 (ア)引用文献1に記載された発明 引用文献1の上記ア(ア)cの【0014】には、同dの【図2】及び【図3】に記載される「循環式水洗トイレシステム1」として、「水洗便器5と、水洗便器5からの汚水を受け入れ、汚水に含まれる有機物を分解すると共に硝化及び脱窒処理する生物処理槽6と、生物処理槽6で生物処理され、汚泥が混在する生物処理水を固液分離するろ過槽7と、ろ過水をオゾンによって酸化・脱色処理するオゾン脱色槽8と、ろ過槽7に設けられ、生物処理水のpHを測定するpHセンサ27と、pHセンサ27で測定されたpH値に基づいてポンプ12を制御するコントローラ11と、コントローラ11の制御信号に基づいて易分解性有機物タンク13に貯蔵されている易分解性有機物を生物処理槽6の後述する脱窒槽6aに供給するポンプ12とから構成されている。」ものが記載されている。 そして、ここでの「生物処理槽6」について、同cの【0015】には、「汚水中のアンモニアを硝化処理して、硝酸に変換する硝化槽6bと、硝化槽6bで硝化処理された硝酸を脱窒処理して窒素ガスに変換して大気中に放出する脱窒槽6aとから構成されている」こと、同【0016】には、「ブロワー17から空気が散気管17aを通じて脱窒槽6aに送り込まれ」、「ブロワー18に接続された散気管18a」「を通じて空気が硝化槽6bに送り込まれ」ること、同【0023】には、「脱窒槽6aでは、ブロワー17の空気送出量を少な目に調節することにより、硝化菌より脱窒菌の活性が優勢となり、脱窒処理が優先して行われ」、「硝化槽6bでは、ブロワー18の空気流入量はブロワー17(脱膣槽へのブロワー)より多めに調節されているので、脱窒菌より硝化菌の活性が優勢となり、硝化処理が優先して行われる」こと、同【0021】には、「生分解性プラスチック板30がケース35に収納されて脱窒槽6aの内壁面25cに固設され」ることが記載されている。 また、「易分解性有機物」について、同【0030】には、「脱窒槽6aの脱窒菌」が、「供給された易分解性有機物を資化源として速やかに利用できる」もので、「低下していた微生物活性を速やかに回復させる」ものであることが記載されている。 さらに、循環式水洗トイレシステム1の動作について、同【0025】には、「循環式水洗トイレシステム1の稼働中において、CPU11aは、pHセンサ27が測定したろ過槽7の生物処理水のpH値の信号を受信」し、「受信したpH値の信号が7未満を示す場合には、ポンプ12に運転信号を送信し」、同【0026】には、「ポンプ12は、CPU11aより運転信号を受信して、所定量の易分解性有機物」「を易分解性有機物タンク13から脱窒槽6aに供給するよう動作を開始」し、「1時間毎に約28g/L濃度の酢酸ナトリウム水溶液を、脱窒槽6aに750ml滴下する」こと、同【0028】には、「循環式水洗トイレシステム1のシステム立ち上げ時は、」「不足分の有機物を脱窒槽6aに供給するために、例えば、循環式水洗トイレシステム1の立ち上げ時から所定期間(例えば、1週間)は、pHセンサ27の測定するpH値に関係なく、ポンプ12を運転させて易分解性有機物を供給」すること、同【0029】には、「コントローラ44は、ポンプ12を1日置きに、約28g/L濃度の酢酸ナトリウム水溶液を、1日24回、1時間置きに750ml滴下する」ことが記載されている。 以上の事項をまとめると、引用文献1には、同dの【図1】及び【図2】に記載される「循環式水洗トイレシステム1」として、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「水洗便器と、水洗便器からの汚水を受け入れ、汚水に含まれる有機物を分解すると共に硝化及び脱窒処理する生物処理槽と、生物処理槽で生物処理され、汚泥が混在する生物処理水を固液分離するろ過槽と、ろ過水をオゾンによって酸化・脱色処理するオゾン脱色槽と、ろ過槽に設けられ、生物処理水のpHを測定するpHセンサと、pHセンサで測定されたpH値に基づいてポンプを制御するコントローラと、コントローラの制御信号に基づいて易分解性有機物タンクに貯蔵されている易分解性有機物を生物処理槽の後述する脱窒槽に供給するポンプとから構成されている、循環式水洗トイレシステムであって、 生物処理槽は、汚水中のアンモニアを硝化処理して、硝酸に変換する硝化槽と、硝化槽で硝化処理された硝酸を脱窒処理して窒素ガスに変換して大気中に放出する脱窒槽とから構成され、ブロワーから空気が散気管を通じて脱窒槽に送り込まれ、ブロワーに接続された散気管を通じて空気が硝化槽に送り込まれ、脱窒槽では、ブロワーの空気送出量を少な目に調節することにより、硝化菌より脱窒菌の活性が優勢となり、脱窒処理が優先して行われ、硝化槽では、ブロワーの空気流入量は脱窒槽へのブロワーより多めに調節されているので、脱窒菌より硝化菌の活性が優勢となり、硝化処理が優先して行われ、 生分解性プラスチック板がケースに収納されて脱窒槽の内壁面に固設され、 易分解性有機物は、脱窒槽の脱窒菌が、供給された易分解性有機物を資化源として速やかに利用できるもので、低下していた微生物活性を速やかに回復させるものであり、 循環式水洗トイレシステムの稼働中において、CPUは、pHセンサが測定したろ過槽の生物処理水のpH値の信号を受信し、受信したpH値の信号が7未満を示す場合には、ポンプに運転信号を送信し、ポンプは、CPUより運転信号を受信して、所定量の易分解性有機物を易分解性有機物タンクから脱窒槽に供給するよう動作を開始し、1時間毎に約28g/L濃度の酢酸ナトリウム水溶液を、脱窒槽に750ml滴下し、 循環式水洗トイレシステムのシステム立ち上げ時は、不足分の有機物を脱窒槽に供給するために、例えば、循環式水洗トイレシステムの立ち上げ時から所定期間(例えば、1週間)は、pHセンサの測定するpH値に関係なく、ポンプを運転させて易分解性有機物を供給し、コントローラは、ポンプを1日置きに、約28g/L濃度の酢酸ナトリウム水溶液を、1日24回、1時間置きに750ml滴下する、循環式水洗トイレシステム。」 (イ)引用文献5~7から認定できる技術常識もしくは周知技術 a 脱窒槽に対するエタノールの添加について (a)引用文献5には、エタノール及びその他の有機物を利用して進行する脱窒工程において(上記ア(イ)bの【0005】、【0006】)、還元反応に必要な有機物が不足している等の原因によって、還元反応が窒素になるまで十分に進行しない(同bの【0008】、【0011】)場合、脱窒槽の最下流位置近傍における酸化還元電位を計測することにより(同aの【請求項1】、同bの【0014】)、脱窒槽の上流側に、エタノール等のアルコール類等を添加することにより(同cの【0024】)、脱窒槽内の脱窒菌(硝酸還元菌)の活動が活発となり、脱窒反応が促進されること(同cの【0030】)が記載されている。 (b)引用文献6には、生物学的硝化脱窒法による廃水処理装置を用いた廃水からの窒素除去では、廃水中の有機物が還元反応の水素供与体として消費されるが、廃水の有機物濃度が窒素濃度に比して小である場合には、水素供与体濃度の不足により所望の脱窒反応量を得ることができないという問題がある(上記ア(ウ)aの【0006】)のに対し、第1の固液分離装置の出口水の全窒素濃度、アンモニア態窒素および化学的酸素要求量を測定して測定値を得、前記測定値をもとに、数値モデルにより構成されたシミュレーションによる処理予測計算を短時間で行い、窒素除去率が悪化することが予測された場合(同aの【0008】)、脱窒槽へのメタノール、エタノール等の有機物の注入量を大とし(同aの【0010】、【0016】)、脱窒槽での脱窒反応速度を高めて、脱窒反応量を増加させること(同aの【0010】)が記載されている。 (c)上記引用文献7には、硝化工程で硝化された排水を、溶存酸素のない嫌気的な条件下において導入し、脱窒素菌の硝酸呼吸、あるいは亜硝酸呼吸によってN2ガスにまで還元するのに必要な水素供与体には、エタノール等があり(上記ア(エ)b)、この水素供与体を脱窒素槽に加えることにより(同cの図6・11)、脱窒素菌に対して水素供与体(基質)が十分に供給される場合には、いわゆる体外呼吸により活発な増殖が行なわれるので、呼吸速度は速く、脱窒素機能はきわめて旺盛となる(同b)ことが記載されている。 (d)上記(a)~(c)によれば、脱窒菌による脱窒工程において、脱窒菌の活動を活発にし、脱窒反応を促進するのに、脱窒槽に水素供与体(基質)であるエタノール等の有機物を供給することは、技術常識もしくは周知技術であるといえる。 b 脱窒工程について (a)引用文献5には、脱窒処理は、無酸素環境下で脱窒菌の作用によって行われることが記載されている(上記ア(イ)cの【0023】)。 (b)引用文献6には、脱窒工程は、無酸素工程であることが記載されている(上記ア(ウ)bの【0025】)。 (c)引用文献7には、脱窒素工程では、脱窒素菌を利用して、硝化工程で硝化された排水を溶存酸素のない嫌気的な条件下において処理することが記載されている(上記ア(エ)b)。 (d)上記(a)~(c)によれば、脱窒菌による脱窒工程を、無酸素の状態で行うことは、技術常識もしくは周知技術であるといえる。 ウ 対比・判断 (ア)補正発明と引用発明との対比 補正発明と引用発明とを対比する。 a 引用発明の「生物処理槽」が「受け入れ」る「水洗便器からの汚水」は、補正発明の「生物処理槽」に「供給される排水」に相当し、引用発明において、「硝化菌」及び「脱窒菌」で「水洗便器からの汚水を受け入れ、汚水に含まれる有機物を分解すると共に硝化及び脱窒処理する」ことは、補正発明において、「微生物を利用して処理する」ことに相当する。 補正発明の「生物処理槽」は、「一つの槽に無酸素部と好気部とを備える」ものであるところ、引用発明の「生物処理槽」は、「ブロワーの空気流入量は脱窒槽へのブロワーより多めに調節されているので、脱窒菌より硝化菌の活性が優勢となり、硝化処理が優先して行われ」る「汚水中のアンモニアを硝化処理して、硝酸に変換する硝化槽」と「ブロワーの空気送出量を少な目に調節することにより、硝化菌より脱窒菌の活性が優勢となり、脱窒処理が優先して行われ」る「硝化槽で硝化処理された硝酸を脱窒処理して窒素ガスに変換して大気中に放出する脱窒槽」とから構成されている。 そして、引用文献1の上記ア(ア)cの【0015】の「脱窒槽6aと硝化槽6bとを仕切る内壁の下部近傍には、汚泥及び生物処理水が挿通可能な挿通口26が設けられている。」との記載、及び同dの【図2】及び【図3】に示される生物処理槽6の構造によれば、生物処理槽6という一つの槽の中に、下部近傍が汚泥及び生物処理水が挿通可能とされた内壁で仕切られた状態で、脱窒槽6aと硝化槽6bが備えられているものである。 また、引用文献1の同cの【0023】の「この生物処理槽6に常在する微生物は、汚水中のアンモニアを硝酸に変換する硝化処理を行う好気性の硝化菌と、硝化処理された硝酸を脱窒処理して大気中に窒素を放出する嫌気性の脱窒菌とに大別される。」との記載によれば、引用発明の「硝化菌」は「好気性」とされるものであり、実際、「硝化槽」への「ブロワーの空気流入量は脱窒槽へのブロワーより多めに調節されている」のであるから、引用発明の「硝化槽」は、補正発明の「好気部」に相当する。 さらに、引用発明の「脱窒菌」は「嫌気性」とされるものであるから、引用発明の「硝化菌より脱窒菌の活性が優勢となり、脱窒処理が優先して行われ」る「脱窒槽」は、「嫌気部」といえるものである。 一方、補正発明の「無酸素部」は、本願明細書の【0015】、【0016】の「脱窒工程は亜硝酸、硝酸を窒素ガス(N2)に還元する反応である。すなわち、溶存酸素の代わりに亜硝酸や硝酸分子の酸素を使って、有機物を炭酸ガスと水に酸化分解し、その結果、亜硝酸や硝酸が窒素ガスに転換される。この工程には脱窒細菌と呼ばれる通性嫌気性細菌が関与し、溶存酸素のない無酸素状態で脱窒活性を発揮する。・・・無酸素槽21内の混合液には通性嫌気性細菌が存在している。無酸素槽21では前述の脱窒工程が主に行われる。」との記載によれば、通性嫌気性細菌である脱窒細菌が脱窒工程を行うところであり、「嫌気部」といえるものである。 以上を踏まえると、引用発明の「水洗便器からの汚水を受け入れ、汚水に含まれる有機物を分解すると共に硝化及び脱窒処理」し、「汚水中のアンモニアを硝化処理して、硝酸に変換する硝化槽と、硝化槽で硝化処理された硝酸を脱窒処理して窒素ガスに変換して大気中に放出する脱窒槽とから構成され、ブロワーから空気が散気管を通じて脱窒槽に送り込まれ、ブロワーに接続された散気管を通じて空気が硝化槽に送り込まれ、脱窒槽では、ブロワーの空気送出量を少な目に調節することにより、硝化菌より脱窒菌の活性が優勢となり、脱窒処理が優先して行われ、硝化槽では、ブロワーの空気流入量は脱窒槽へのブロワーより多めに調節されているので、脱窒菌より硝化菌の活性が優勢となり、硝化処理が優先して行われ」る「生物処理槽」は、補正発明の「供給される排水を、微生物を利用して処理する生物処理槽であって、一つの槽に無酸素部と好気部とを備える生物処理槽」と、「供給される排水を、微生物を利用して処理する生物処理槽であって、一つの槽に嫌気部と好気部とを備える生物処理槽」の点で共通している。 b 引用発明の「循環式水洗トイレシステム」は、「循環式水洗トイレシステムのシステム立ち上げ時は、不足分の有機物を脱窒槽に供給するために、例えば、循環式水洗トイレシステムの立ち上げ時から所定期間(例えば、1週間)は、pHセンサの測定するpH値に関係なく、ポンプを運転させて易分解性有機物を供給し、コントローラは、ポンプを1日置きに、約28g/L濃度の酢酸ナトリウム水溶液を、1日24回、1時間置きに750ml滴下する」ものであるが、上記「pHセンサの測定するpH値」は、補正発明の「センシング値」に相当し、上記「pHセンサの測定するpH値に関係なく」は、補正発明の「センシング値に関わらず」に相当する。そして、上記「1日置きに、」「1日24回、1時間置きに750ml滴下する」「ポンプ」は、補正発明の「複数の間隔で継続して供給する供給部」に相当する。 また、補正発明における「エタノール」は、本願明細書の【0019】、【0020】の「有機物とは、生物処理槽20内の微生物の基質として供給される化合物である。・・・有機物は取扱性の観点から、流動体が望ましい。・・・流動体としては低分子構造が好ましく、例えば炭素数が3以下の有機化合物がより好ましい。炭素数が3以下の低分子構造を有する化合物の方が、生物分解性が高いためである。」「また、有機物は水素供与体であってもよい。水素供与体とは、生物処理槽20内の他物質に水素を与え還元させ、それ自体は脱水素されて酸化される物質である。 例えば、使用頻度が高い状態において、無酸素槽21における通性嫌気性細菌による脱窒反応を十分に進行させるためには、溶存酸素のない無酸素雰囲気と、亜硝酸、硝酸の酸素分子を還元させるのに必要な水素供与体の存在とが不可欠である。・・・このように水素供与体としても振る舞う流動体である有機物としては、例えばエタノールが挙げられる。」との記載によれば、「脱窒反応を」「進行させる」「通性嫌気性細菌」にとり、「生物分解性が高い」「有機物」であるといえる。ここで、「脱窒反応を」「進行させる」「通性嫌気性細菌」は、本願明細書の【0015】によれば「脱窒細菌」とされている。一方、引用発明の「易分解性有機物」は、「脱窒槽の脱窒菌」が、「資化源として速やかに利用できる」ものであるから、引用発明の「脱窒槽の脱窒菌」が、「資化源として速やかに利用できる」「易分解性有機物」は、補正発明の「エタノール」と、「脱窒細菌にとり生物分解性が高い有機物」である点で共通している。 以上を踏まえると、引用発明の「脱窒槽に」、「脱窒槽の脱窒菌」が、「資化源として速やかに利用できる」「易分解性有機物」を、「供給」するものであり、「循環式水洗トイレシステムのシステム立ち上げ時は、不足分の有機物を脱窒槽に供給するために、例えば、循環式水洗トイレシステムの立ち上げ時から所定期間(例えば、1週間)は、pHセンサの測定するpH値に関係なく、ポンプを運転させて易分解性有機物を供給し、コントローラは、ポンプを1日置きに、約28g/L濃度の酢酸ナトリウム水溶液を、1日24回、1時間置きに750ml滴下する」「ポンプ」は、補正発明の「前記無酸素部に、エタノールを、センシング値に関わらず複数の間隔で継続して供給する供給部」と、「前記嫌気部に、脱窒細菌にとり生物分解性が高い有機物を、センシング値に関わらず複数の間隔で継続して供給する供給部」の点で共通している。 c 引用発明の「循環式水洗トイレシステム」は、「水洗便器からの汚水を受け入れ、汚水に含まれる有機物を分解すると共に硝化及び脱窒処理する」等するものであるから、「排水処理」をするものであると共に、「生物処理槽」及び「易分解性有機物を生物処理槽の脱窒槽に供給するポンプ」等の複数の要素からなるものであるから「ユニット」であるといえる。 そうすると、引用発明の「循環式水洗トイレシステム」は、補正発明の「循環型排水処理ユニット」に相当する。 d 上記a~cによれば、補正発明と引用発明は、「供給される排水を、微生物を利用して処理する生物処理槽であって、一つの槽に嫌気部と好気部とを備える生物処理槽と、 前記嫌気部に、脱窒細菌にとり生物分解性が高い有機物を、センシング値に関わらず複数の間隔で継続して供給する供給部と、を備える循環型排水処理ユニット。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点1> 生物処理槽の嫌気部が、補正発明では、「無酸素部」とされているのに対し、引用発明では、無酸素部であるのか明らかでない点。 <相違点2> 脱窒細菌にとり生物分解性が高い有機物が、補正発明では、「エタノール」であるのに対し、引用発明では、エタノールであるのか明らかでない点。 (イ)相違点に対する判断 a 相違点1について まず、引用発明は、引用文献1の上記ア(ア)cの【0023】の「各槽で別々の処理が行われることにより、硝化・脱窒処理が効率的に行われることになる。」等で記載されるように、嫌気性の条件で行われる脱窒処理を効率的に行うことを意図するものであるから、引用発明において、脱窒槽に、少なめの空気がブロワーから送出されているとしても、脱窒菌による効率的な脱窒処理に必要な嫌気性の条件を損なわない程度のものであるといえる。 一方、補正発明における「無酸素部」(無酸素槽)について、本願明細書の【0016】には、「生物処理槽20は、無酸素槽21と好気槽22とを備えている。・・・ 無酸素槽21内の混合液には通性嫌気性細菌が存在している。無酸素槽21では前述の脱窒工程が主に行われる。 無酸素槽21の内部には、攪拌機23が配置される。・・・なお、無酸素槽21内での攪拌は、攪拌機23によるものに限定されない。ポンプ、曝気等により攪拌してもよい。」と記載されているところ、「曝気」とは、空気にさらすことを意味している(「マグローヒル科学技術用語大辞典編集委員会編、マグローヒル科学技術用語大辞典改訂第3版、株式会社日刊工業新聞社、2000年3月15日改訂第3版1刷発行、1413頁」では、「曝気処理した」が「所要の性質を与えるため,空気にさらして処理した.」を意味するものとされている。)といえるから、補正発明における「無酸素部」も、通性嫌気性細菌による脱窒反応を阻害しない状況では、酸素の存在を完全に排除するものではないといといえる。 そうすると、引用発明の脱窒槽と補正発明の無酸素部が共に嫌気部といえるかぎり、無酸素であるか否かは、本質的な相違となるものではないといえる。 そして、上記イ(イ)b(d)で述べたように、脱窒菌による脱窒工程を、無酸素の状態で行うことは、技術常識もしくは周知技術であるといえるし、用語の意味からして、嫌気部の状態として、当業者はまず無酸素の状態が最も当てはまることを想起することを考慮すると、引用発明において、生物処理槽の嫌気部における脱窒菌による脱窒工程を、無酸素の状態で行うこと、すなわち、脱窒槽を無酸素部とすることは、当業者ならば容易に想到し得るといえる。 b 相違点2について 本願明細書の【0019】の「供給部90は、生物処理槽20の無酸素槽21へ有機物を供給する。有機物とは、生物処理槽20内の微生物の基質として供給される化合物である。循環式トイレ100が長期間不使用となった場合には、有機物が含まれる排水の生物処理槽20への供給が滞るため、生物処理槽20内の微生物は基質不足となり死滅するおそれがある。これを防ぐために、有機物を生物処理槽20内に供給する必要がある。」との記載、同【0020】の「また、有機物は水素供与体であってもよい。水素供与体とは、生物処理槽20内の他物質に水素を与え還元させ、それ自体は脱水素されて酸化される物質である。 例えば、使用頻度が高い状態において、無酸素槽21における通性嫌気性細菌による脱窒反応を十分に進行させるためには、溶存酸素のない無酸素雰囲気と、亜硝酸、硝酸の酸素分子を還元させるのに必要な水素供与体の存在とが不可欠である。・・・このように水素供与体としても振る舞う流動体である有機物としては、例えばエタノールが挙げられる。」との記載、及び同【0039】の「供給部90が生物処理槽20に連続して有機物を供給するので、使用頻度が不定期であったり、長期間において不使用であったりする場合であっても、生物処理槽内の生物活性を維持することができる。」との記載によれば、補正発明の「エタノール」は、「脱窒反応を十分に進行させ」「生物活性を維持する」「通性嫌気性細菌」の「基質」となる有機物であると共に、脱窒反応における「水素供与体」となるものである。 一方、引用発明の「易分解性有機物」も、補正発明の「エタノール」と同様に、生物処理槽内の脱窒菌に、「有機物を資化源として速やかに利用できるので、低下していた微生物活性を速やかに回復させるもの」である。 ここで、技術常識を示すものであるといえる引用文献7の上記ア(エ)bの「嫌気的条件下で,脱窒素菌に対して水素供与体(基質)が十分に供給される場合には,いわゆる体外呼吸により活発な増殖が行なわれるので,呼吸速度は速く,脱窒素機能はきわめて旺盛である。」との記載によれば、嫌気的条件下で、脱窒素菌に活発な増殖を行わせ、呼吸速度を速くし、脱窒素機能をきわめて旺盛とするもの、すなわち、脱窒菌の活性を高めるものが、「水素供与体(基質)」とされていることや、同bの「脱窒素工程において,脱窒素反応が遅滞なく進行するための必須条件は次のとおりである。 ・・・ (2)適当な水素供与体が適量存在すること。」の記載によれば、脱窒素反応には、水素供与体の存在が必須であるといえるから、引用発明の「易分解性有機物」も、補正発明の「エタノール」と同様に、基質となり水素供与体になるものであるといえる。 そうすると、引用発明の「易分解性有機物」は、補正発明の「エタノール」と機能が共通するものである。 そして、上記イ(イ)a(d)で述べたように、脱窒菌による脱窒工程において、脱窒菌の活動を活発にし、脱窒反応を促進するのに、脱窒槽に水素供与体(基質)であるエタノール等の有機物を供給することは、技術常識もしくは周知技術であるといえるから、引用発明において、「易分解性有機物」を「エタノール」とすることは、当業者ならば容易に想到し得るといえる。 c 補正発明の効果について 本願は、本願明細書で、溶液中で徐々に溶解する板状の生分解プラスティックを生物処理槽に投入することで、微生物が生息している状態を維持する構成が開示されている先行技術文献である特開2005-060981号公報、すなわち、引用文献1を例示し(【0002】、【0003】)、この技術では、板状の生分解プラスティックを、生物処理槽へ定期的に投入するようにしているが、投入するタイミング、又は投入する枚数などを調整する必要があり、定期的なメンテナンスが必要であり、例えば別荘などの使用頻度が著しく偏る循環式トイレでは、このようなメンテナンスを適切に行う作業が問題とし(【0004】)、循環型排水処理ユニットが、供給される排水を、微生物を利用して処理する生物処理槽と、生物処理槽に複数の間隔で継続して有機物を供給する供給部と、を備えるものとすることにより、この問題を解決し(【0006】)、「循環型排水処理ユニットのメンテナンス性を確保することができる」ことを発明の効果とするものである(【0007】)。 しかしながら、補正発明は、生物処理槽における生分解プラスティックの有無を特定しておらず、生物処理槽に生分解プラスティックが存在する場合も含み、この点が、補正発明と引用発明との間で相違点となるものではないから、上記の発明の効果は、補正発明の効果といえるものではない。 また、「板状の生分解プラスティックを、生物処理槽へ定期的に投入する」場合について、「投入するタイミング、又は投入する枚数などを調整する必要があり、定期的なメンテナンスが必要であり、例えば別荘などの使用頻度が著しく偏る循環式トイレでは、このようなメンテナンスを適切に行う作業が問題となっていた」としているが、補正発明のように、生物処理槽に複数の間隔で継続して有機物を供給する供給部を備える場合であっても、有機物は、供給し続けなければならないのであるから、定期的なメンテナンスは必要であるといえる。そして、本願明細書で従来の技術ととされる引用文献1に記載される技術は、生物処理槽に生分解プラスティックを存在させることというよりは、むしろ、生物処理槽へのトイレ等からの有機物の供給が不足する際に、生物処理槽に易分解性有機物を投入して、脱窒菌の活性を維持することを主眼としており、この点では、補正発明と同様の作用、効果を奏するものであるし、本願明細書に記載されるような、生分解プラスティックを投入するタイミング、又は投入する枚数などを調整することは、引用文献1には記載されておらず、メンテナンスにおける問題があるといった事情は読み取れない。 そうすると、本願明細書に記載される補正発明の効果は、格別なものとはいえない。 (ウ)審判請求人の審判請求書及び令和6年1月10日提出の上申書における主な主張について a 審判請求人の主張 (a)脱窒促進においては、溶存酸素の無い方がより好ましい状態であり、引用文献1に記載されるようにブロワー17による空気の供給がなされれば、通性嫌気性細菌は、供給された空気中の酸素の方を消費し、亜硝酸、硝酸の酸素分子を利用しなくなり、反応効率が低下してしまうおそれがある。 これに対し、本願では、通性嫌気性細菌による脱窒反応をより効果的に進行させるために、溶存酸素のない無酸素雰囲気を形成し、亜硝酸、硝酸の酸素分子を還元させるのに必要な水素供与体としてのエタノールを供給するようにしている。これにより、脱窒反応の効率性は脱窒反応速度の進行面において全く異なるものになる。このように、無酸素部に水素供与体であるエタノールを供給することは、引用文献では、記載も示唆もされていない。 また、無酸素部に水素供与体であるエタノールを供給することで、脱窒反応の効率性が向上するという顕著な効果が期待できることで、本願請求項1に係る発明では、引用文献1で取り付けられている「易分解性プラスチック」が不要となる。本願請求項1に係る発明によれば、「前記無酸素部に、エタノールを、センシング値に関わらず複数の間隔で継続して供給する」ことで、使用頻度が不定期であったり、長期間において不使用であったりする場合であっても、トイレの使用が開始された際には、生物処理が効率的に実施される。 さらに、引用文献1では、引用文献1の【0025】、【0026】で記載されるように、ポンプ12が制御され、7未満となったpHを7~8.5に収めるために易分解性有機物を供給しているが、エタノールを供給してもpHがアルカリ性方向へ変化することはないため、引用文献1における易分解性有機物を、エタノールに置換すると、引用文献1が機能しなくなることを意味する。 したがって、補正後の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいたとしても、当業者が容易に想到できたものではない(審判請求書3.(2))。 (b)引用文献5及び引用文献6は、周知技術を示す文献として適切でない。引用文献5では、ORP値に基づいて有機物が添加され、引用文献6では、COD濃度、全窒素濃度、及びアンモニア態窒素濃度に基づいて有機物の添加量が制御されている。このような処理は、本願請求項1における「前記無酸素部に、エタノールを、センシング値に関わらず複数の間隔で継続して供給する」処理とは異なるものである。したがって、本願請求項1に係る発明は、引用文献1と引用文献5~6とに対し、進歩性を有している。 また、本願では、有機物を供給するタイミングは、立ち上げ時に関わらず、このことが明確になるように、例えば、以下のように本願請求項1の記載を補正する準備がある。 「【請求項1】 供給される排水を、微生物を利用して処理する生物処理槽であって、一つの槽に無酸素部と好気部とを備える生物処理槽と、 前記無酸素部に、エタノールを、自ユニットの立ち上がり時に関わらず、水の長期不使用時に、センシング値に関わらず複数の間隔で継続して供給する供給部と、を備える循環型排水処理ユニット。」 b 上記aの主張に対する当審の判断 (a)上記a(a)の主張に対して 上記(イ)aで述べたように、引用発明の脱窒槽が嫌気部といえるかぎり、無酸素であるか否かは、本質的な問題であるとはいえない。しかも、脱窒菌による脱窒工程を、無酸素の状態で行うことは、技術常識もしくは周知技術であるといえるのであるから、引用発明において、脱窒槽を無酸素部とすることは、当業者ならば容易に想到し得るといえる。 また、上記(イ)bで述べたように、引用発明の易分解性有機物も、水素供与体といえるものであるから、この点で、補正発明との間で機能上の相違があるとはいえないし、通性嫌気性細菌による脱窒反応にいて、水素供与体として、エタノールを供給することは、技術常識もしくは周知技術である。そして、水素供与体の中で、特にエタノールを用いたことによる効果といったものは、本願明細書の記載からは認めることができない。 さらに、引用文献1で取り付けられている「易分解性プラスチック」が不要となる効果が格別のものでないことは、上記(イ)cで述べた通りであるし、引用発明の「循環式水洗トイレシステムのシステム立ち上げ時」は、トイレを「長期間において不使用であったりする場合」と、排水中の有機物が少ない場合という点で軌を一にするものであり、引用発明のものでも、補正発明と同様に、トイレの使用が開始された際には、生物処理が効率的に実施されることが理解できる。 また、補正発明との対比では、引用発明の「循環式水洗トイレシステムのシステム立ち上げ時」を対比の対象としているため、システム立ち上げ時の事項ではない、「ポンプ12が制御され、7未満となったpHを7~8.5に収めるために易分解性有機物を供給している」ことは、補正発明の進歩性の判断に影響するものではないが、引用文献1の上記ア(ア)cの【0025】の「ろ過槽7のpH値が7未満である場合、生物処理槽6の汚泥中の有機物濃度が低下し、脱窒槽6aでの脱窒処理が十分に行われず、脱窒処理されなかった硝酸が汚泥中に蓄積してpHが低下していることが考えられる。」との記載、同cの【0026】の「次いで、易分解性有機物が脱窒槽6aに供給されると、脱窒槽6aの脱窒菌は、供給された易分解性有機物を脱窒用の有機物として速やかに利用できるので、脱窒処理が促進され、汚泥中に蓄積していた硝酸が窒素に変換されて大気中に放出される。そして、脱窒槽6aで脱窒処理が進行すると、汚泥中の硝酸が減少し、汚泥のpHが上昇する。」との記載によれば、補正発明では、脱窒槽で有機物濃度が低下すると、脱窒処理されなかった硝酸が汚泥中に蓄積するためpHが低下し、脱窒槽に易分解性有機物を供給すると、脱窒処理が進行し、汚泥中の硝酸が減少し、pHが上昇するとされているのであり、供給する有機物のpHによって、脱窒槽のpHを7~8.5に収めるものではないから、特に、引用発明において、易分解性有機物をエタノールに置換することに、阻害要因があるとはいえない。 (b)上記a(b)の主張に対して 引用文献5及び引用文献6は、上記イ(イ)aで述べたように、脱窒菌による脱窒工程において、脱窒菌の活動を活発にし、脱窒反応を促進するのに、脱窒槽に水素供与体(基質)であるエタノール等の有機物を供給することは、技術常識もしくは周知技術であることを認定するために引用したものであり、この認定を行うのに、引用文献5では、ORP値に基づいて有機物が添加され、引用文献6では、COD濃度、全窒素濃度、及びアンモニア態窒素濃度に基づいて有機物の添加量が制御されていたとしても、これらの事項は、上記技術常識もしくは周知技術を認定する際の妨げとなるものではない。 上申書等で提示された補正案は、実際、補正書として提出されたものではないから、当審の判断の対象となるものではないが、念のため検討すると、補正案は、補正発明の「前記無酸素部に、エタノールを、センシング値に関わらず複数の間隔で継続して供給する供給部」を、「前記無酸素部に、エタノールを、自ユニットの立ち上がり時に関わらず、水の長期不使用時に、センシング値に関わらず複数の間隔で継続して供給する供給部」としているものである。 引用発明の「循環式水洗トイレシステムのシステム立ち上げ時」は、トイレを「長期間において不使用であったりする場合」と、排水中の有機物が少ない場合という点で軌を一にするものである。そして、このような場合には、相当量の易分解性有機物をある程度の期間にわたって供給しなければならないことは明らかであるから、前もって易分解性有機物の供給スケジュールを決めてしまいこれに従って、脱窒槽への易分解性有機物の供給を行うことは、当業者であれば容易に想到し得るといえる。 そうすると、「循環式水洗トイレシステムのシステム立ち上げ時」と同様に、排水中の有機物が少ないことが明らかである、トイレ(水)の「長期不使用時」にも、「循環式水洗トイレシステムのシステム立ち上げ時」と同様に易分解性有機物を供給すること、すなわち、センシング値に関わらず複数の間隔で継続して供給することは、当業者ならば容易に想到し得るといえる。 c 上記bで述べたとおり、審判請求人の主張は、採用することができない。 (エ)小括 以上のとおり、補正発明は、引用発明及び技術常識もしくは周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 3 本件補正についてのむすび よって、補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和5年3月27日に提出された補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、令和5年5月24日付け拒絶査定に記載された理由1及び2であって、その理由2は、本願発明は、本願出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 記 引用文献1:特開2005-60981号公報 なお、本審決では、技術常識もしくは周知技術として、上記第2の2(2)アに記載の引用文献5~7も、引用している。 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、上記第2の[理由]2(2)ア(ア)に記載したとおりである。また、技術常識もしくは周知技術として引用する前置報告で引用された引用文献5、引用文献6、及び当審で引用する引用文献7の記載事項は、同(イ)~(エ)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2(1)で検討したように、補正発明に対して、「エタノール」を「流動体状の有機物」に拡張したものにあたる。 (1)対比 本願発明と引用発明とを対比する。 ア 上記第2の2(2)ウ(ア)aで述べたように、引用発明の「水洗便器からの汚水を受け入れ、汚水に含まれる有機物を分解すると共に硝化及び脱窒処理」し、「汚水中のアンモニアを硝化処理して、硝酸に変換する硝化槽と、硝化槽で硝化処理された硝酸を脱窒処理して窒素ガスに変換して大気中に放出する脱窒槽とから構成され、ブロワーから空気が散気管を通じて脱窒槽に送り込まれ、ブロワーに接続された散気管を通じて空気が硝化槽に送り込まれ、脱窒槽では、ブロワーの空気送出量を少な目に調節することにより、硝化菌より脱窒菌の活性が優勢となり、脱窒処理が優先して行われ、硝化槽では、ブロワーの空気流入量は脱窒槽へのブロワーより多めに調節されているので、脱窒菌より硝化菌の活性が優勢となり、硝化処理が優先して行われ」る「生物処理槽」は、本願発明の「供給される排水を、微生物を利用して処理する生物処理槽であって、一つの槽に無酸素部と好気部とを備える生物処理槽」と、「供給される排水を、微生物を利用して処理する生物処理槽であって、一つの槽に嫌気部と好気部とを備える生物処理槽」の点で共通している。 イ 上述のように、本願発明は、補正発明に対して、「エタノール」を「流動体状の有機物」に拡張したものにあたるところ、「流動体状の有機物」も、「エタノール」と同様に、「脱窒反応を」「進行させる」「通性嫌気性細菌」にとり、「生物分解性が高い」「有機物」であるといえる。 そうすると、上記第2の2(2)ウ(ア)bで述べたのと同様に、引用発明の「脱窒槽に」、「脱窒槽の脱窒菌」が、「資化源として速やかに利用できる」「易分解性有機物」を、「供給」するものであり、「循環式水洗トイレシステムのシステム立ち上げ時は、不足分の有機物を脱窒槽に供給するために、例えば、循環式水洗トイレシステムの立ち上げ時から所定期間(例えば、1週間)は、pHセンサの測定するpH値に関係なく、ポンプを運転させて易分解性有機物を供給し、コントローラは、ポンプを1日置きに、約28g/L濃度の酢酸ナトリウム水溶液を、1日24回、1時間置きに750ml滴下する」「ポンプ」は、本願発明の「前記無酸素部に、流動体状の有機物を、センシング値に関わらず複数の間隔で継続して供給する供給部」と、「前記嫌気部に、脱窒細菌にとり生物分解性が高い有機物を、センシング値に関わらず複数の間隔で継続して供給する供給部」の点で共通している。 ウ 上記第2の2(2)ウ(ア)cで述べたように、引用発明の「循環式水洗トイレシステム」は、本願発明の「循環型排水処理ユニット」に相当する。 エ 上記ア~ウによれば、本願発明と引用発明は、「供給される排水を、微生物を利用して処理する生物処理槽であって、一つの槽に嫌気部と好気部とを備える生物処理槽と、 前記嫌気部に、脱窒細菌にとり生物分解性が高い有機物を、センシング値に関わらず複数の間隔で継続して供給する供給部と、を備える循環型排水処理ユニット。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点3> 生物処理槽の嫌気部が、本願発明では、「無酸素部」とされているのに対し、引用発明では、無酸素部であるのか明らかでない点。 <相違点4> 脱窒細菌にとり生物分解性が高い有機物が、本願発明では、「流動体状の有機物」であるのに対し、引用発明では、流動体状の有機物であるのか明らかでない点。 (2)相違点に対する判断 ア 相違点3について 上記相違点3は、上記第2の2(2)ウ(ア)dで述べた相違点1と同じであるところ、上記第2の2(2)ウ(イ)aで述べたのと同様に、引用発明の脱窒槽と本願発明の無酸素部が共に嫌気部といえるかぎり、無酸素であるか否かは、本質的な相違となるものではない。また、脱窒菌による脱窒工程を、無酸素の状態で行うことは、技術常識もしくは周知技術であるといえるし、用語の意味からして、嫌気部の状態として、当業者はまず無酸素の状態が最も当てはまることを想起することを考慮すると、引用発明において、生物処理槽の嫌気部における脱窒菌による脱窒工程を、無酸素の状態で行うこと、すなわち、脱窒槽を無酸素部とすることは、当業者ならば容易に想到し得るといえる。 イ 相違点4について 引用文献1の上記第2の2(2)ア(ア)cの【0024】の「脱窒槽6aに投入される易分解性有機物は、脱窒菌により分解可能であって、脱窒作用が発揮できるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、TCA回路に代表される酢酸、クエン酸、ケトグルタル酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、オキサロ酢酸、ピルビン酸等の有機酸及びこれらのナトリウム塩、カリウム塩が挙げられ、グルコース及びシュークロース等の糖類等も挙げられる。」との記載によれば、引用発明における「易分解性有機物」には、流動体状の有機物である酢酸等が含まれているから、上記相違点4は、実質的な相違点となるものではないし、当業者であれば、引用発明の「易分解性有機物」として、流動体状の有機物である酢酸等を使用することは、容易に想到し得るともいえる。 また、上記第2の2(2)ウ(イ)bで述べたように、「流動体状の有機物」における具体的な態様である「エタノール」について、上記第2の2(2)イ(イ)aで、引用文献5~7から認定した、脱窒菌による脱窒工程において、脱窒菌の活動を活発にし、脱窒反応が促進するのに、脱窒槽に水素供与体(基質)であるエタノール等の有機物を供給するという、技術常識もしくは周知技術に基づけば、引用発明において、「易分解性有機物」を「エタノール」とすることは、当業者ならば容易に想到し得るといえるのであるから、「エタノール」を具体的な態様として含む「流動体状の有機物」についても、同じく、「易分解性有機物」を「流動体状の有機物」とすることは、当業者ならば容易に想到し得るといえる。 ウ 本願発明の効果について 本願明細書に記載される本願発明の効果は、特に、補正発明の効果と異なるものではないから、上記第2の2(2)ウ(イ)cで述べたように、本願明細書に記載される本願発明の効果は、格別なものとはいえない。 (3)小括 本願発明は、引用発明及び引用文献5~7に記載された技術常識もしくは周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、同法第49条第2号に該当するから、その他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり、審決する。

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2023-014244

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  • 2024-012593拒絶査定不服審判 / 2025-12-23 / 原査定取消(特許/登録すべき)超純水製造装置、超純水の製造方法、及び超純水の製造プログラム
    共通の審決分類: 121・C02F、575・C02F
  • 2023-005687拒絶査定不服審判 / 2024-04-26 / 請求不成立イオン除去装置
    共通の審決分類: 121・C02F、575・C02F
  • 2022-008040拒絶査定不服審判 / 2023-07-18 / 請求不成立紫外線光処理水分配システム及び方法
    共通の審決分類: 121・C02F、575・C02F
  • 2021-008078拒絶査定不服審判 / 2022-12-20 / 請求不成立水処理用添加剤および水処理システム
    共通の審決分類: 121・C02F、575・C02F

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