特許異議申立
2025-700218
接合方法、接合システム、照射装置および活性化処理装置
- 審判番号
- 2025-700218
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-522612
- 登録番号
- 7540813
- 請求日
- 2025年02月20日
- 審決日
- 2025年05月21日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ボンドテック株式会社
- 【権利者代理人】龍竹 史朗
- 【異議申立人】新井 温
- 審判長/審判官
- 審判長 梶尾 誠哉
- 審判官 綿引 隆
- 審判官 松永 稔
- 分類
- P1652.121-Y (H01L) / P1652.16 -Y (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条の2
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7540813号発明「接合方法、接合システム、照射装置および活性化処理装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7540813号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7540813号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~26に係る特許についての出願は、2024年(令和6年)1月5日(優先権主張 2023年(令和5年)1月6日)を国際出願日とする出願であって、令和6年8月19日にその特許権の設定登録がされ、同年8月27日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許の請求項1~4に係る特許に対し、令和7年2月20日に特許異議申立人 新井温(以下、「異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明4」といい、併せて「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、請求項1~4に記載された構成要件「A」、「B」、・・・、「G」等の符号は、異議申立人が異議申立書で付与したものであり、本決定でも採用した。
「【請求項1】
A:2つの被接合物同士を接合する接合方法であって、
B:前記2つの被接合物のうちの少なくとも一方の接合面を不飽和炭化水素ガスとオゾンガスとが存在する雰囲気に曝露するガス曝露工程と、
C:前記少なくとも一方の接合面に付着している水分を除去する水分除去工程と、
D:前記2つの被接合物同士を仮接合する仮接合工程と、を含む、
接合方法。
【請求項2】
E:前記水分除去工程において、前記2つの被接合物のうちの少なくとも一方を減圧雰囲気下に放置する、
請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
F:前記水分除去工程において、前記2つの被接合物のうちの少なくとも一方を加熱することにより前記少なくとも一方の接合面に付着した水分を除去する、
請求項1に記載の接合方法。
【請求項4】
G:前記ガス曝露工程の前に行われ、前記2つの被接合物のうちの少なくとも一方の接合面を活性化する活性化処理工程を更に含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載の接合方法。」
第3 申立理由の概要
1 異議申立人の提出した証拠
異議申立人は、次の甲第1号証の1~3(以下、それぞれ、「甲1の1」~「甲1の3」という。)を主たる証拠として提出し、甲第2~6号証(以下、それぞれ、「甲2」~「甲6」という。)を従たる証拠として提出している。
甲第1号証の1(甲1の1):Press Release, MEIDEN Quality connecting the next, 報道関係者各位 2022年3月3日(木) 株式会社明電舎,“世界初低温ダメージレス無接着剤接合技術を確立 独自の"OERプロセス技術“により低温での基板接合に成功", インターネット<URL:https://www.meidensha.co.jp/news/news_03/news_03_01/pdf/20220303.pdf>
甲第1号証の2(甲1の2):MEIDEN Quality connecting the next 製品・サービス“世界初低温ダメージレス無接着剤接合技術を確立 独自の”OERプロセス技術”により低温での基板接合に成功”2022年03月03日,[online], 2025年1月22日検索,インターネット<https://www.meidensha.co.jp/news/news_03/news_03_01/1242931_10499.html>
甲第1号証の3(甲1の3):明電ナノプロセス・イノベーション ニュースリリース2022年“世界初低温ダメージレス無接着剤接合技術を確立 独自の”OERプロセス技術“により低温での基板接合に成功”2022年03月03日,[online], 2025年1月22日検索,インターネット
<URL:https://www.meidensha.co.jp/npi/news/news_03/news_03_03/〉
甲第2号証(甲2):特開2009-226412号公報
甲第3号証(甲3):特許第6052470号公報
甲第4号証(甲4):須賀唯知“三次元集積化のための低温接合-表面活性化接合(SAB)" 表面科学Vol.35, N0.5, pp262-266, 2014 特集「LSIの配線技術と表面・界面の科学」
甲第5号証(甲5):赫然(He Ran),藤野真久,山内朗,須賀唯知“Cu/Dielectric Hybrid Bonding by Using Combined Surface Activated Bonding Method" MES2016(第26回マイクロエレクトロニクスシンポジウム) 2016年9月 2C3-3
甲第6号証(甲6):特開2024-7593号公報
2 特許異議の申立理由
異議申立人の主張する特許異議の申立ての理由は、以下のとおりである。
(1) 申立理由1(進歩性)
本件発明1、3は、甲1の1~3のいずれかに記載された発明及び甲2に記載された発明、又は、甲1の1~3のいずれかに記載された発明及び甲3に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、本件発明2は、甲1の1~3のいずれかに記載された発明及び甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明4は、甲1の1~3のいずれかに記載された発明、甲2に記載された発明及び甲2、4、5に示される周知技術、又は、甲1の1~3のいずれかに記載された発明、甲3に記載された発明及び甲2、4、5に示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2) 申立理由2(拡大先願)
本件発明1、2は、甲6に記載された発明と同一であり、かつ、本件特許の発明者が甲6に記載された発明をした者と同一ではなく、また、本件特許の出願の時において、その出願人が甲6に係る出願の出願人と同一でもないから、本件特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
第4 異議申立人の提出した証拠の記載
1 甲1の1について
(1) 甲1の1の記載
甲1の1には、以下の記載がある(下線は当審において加筆した。以下同じ。)。
「1.低温ダメージレス無接着剤接合技術とは
近年、CPUなど高性能デバイスの製造では、接着剤などを使わないで基板を接合する「直接接合」という技術が用いられています。例えば3次元積層半導体の製造などに用いられるフュージョン接合では、(1)2枚の基板接合面に水酸基(OH基)を形成し、(2)接合面を密着させ、(3)加熱処理を行うことで、接合面の水酸基に脱水縮合反応を発生させて接合します。一方、この方法には、加熱処理の必要性から高温環境下(300~400℃)の作業となる点や基板表面に残留した水分子が脱水縮合反応を阻害するといった点が、課題として上げられてきました。
「低温ダメージレス無接着剤接合技術」は、明電NPI独自の「OERプロセス技術」により、水原料を用いずに効率良く水酸基を形成するとともに、加熱による回路へのダメージを最小限としながら基板を接合することができ、工程の時間短縮にも貢献できる技術です。
<OER(Ozone-Ethylene Radical generation technology)プロセス技術>
明電NPIのキーデバイスである「ピュアオゾンジェネレータ」(後述)から供給される高純度100%オゾンとエチレンガスを反応させることで、常温※3で高活性なOHラジカル※4を発生させるNPI独自の技術です(特許取得済み)。OERプロセス技術を用いて基板表面に水酸基(OH基)を形成することで、従来の課題を解決できることが期待されます。
・・・
2.実証成果の解説
図1に、2枚のシリコン基板接合面にOERプロセス技術で水酸基を形成し、接合面を密着させ、加熱処理(300℃)により接合したSi(シリコン)- Si(シリコン)接合基板外観、図2に引張試験を行った結果を示します。接合部以外の場所で破断しており、少なくとも基板の破断強度よりも強く接合していることが分かります。
図3に、Si-Si接合部の断面を示します。接合面にはSi自然酸化膜のラインが見えますが、ボイドが一切見られず完全に接合していることが分かります。」
(注:上記の丸括弧付き数字は、甲1の1においては、丸囲み数字である。)
(2) 甲1の1発明
ア 上記(1)の「例えば3次元積層半導体の製造などに用いられるフュージョン接合では、(1)2枚の基板接合面に水酸基(OH基)を形成し、(2)接合面を密着させ、(3)加熱処理を行うことで、接合面の水酸基に脱水縮合反応を発生させて接合します。一方、この方法には、加熱処理の必要性から高温環境下(300~400℃)の作業となる点や基板表面に残留した水分子が脱水縮合反応を阻害するといった点が、課題として上げられてきました。」との記載によれば、甲1の1には、はじめに、2枚の基板接合面に水酸基(OH基)を形成し、次に、接合面を密着させ、最後に、加熱処理を行うことで、接合面の水酸基に脱水縮合反応を発生させて接合するという「方法」に関する発明が開示されているといえる。
イ 上記(1)及び上記アによれば、甲1の1には、以下の発明(以下、「甲1の1発明」という。)が記載されている。
「2枚のシリコン基板接合面にOERプロセス技術で水酸基を形成し、接合面を密着させ、加熱処理(300℃)により接合する方法であって、
OERプロセス技術は、オゾンとエチレンガスを反応させることで、常温で高活性なOHラジカルを発生させる技術であり、
基板表面に残留した水分子が脱水縮合反応を阻害するという課題を解決し、水原料を用いずに効率良く水酸基を形成するとともに、加熱による回路へのダメージを最小限としながら基板を接合することができ、工程の時間短縮にも貢献できる方法。」
2 甲1の2について
(1) 甲1の2の記載
「1.低温ダメージレス無接着剤接合技術とは
近年、CPUなど高性能デバイスの製造では、接着剤などを使わないで基板を接合する「直接接合」という技術が用いられています。例えば3次元積層半導体の製造などに用いられるフュージョン接合では、(1)2枚の基板接合面に水酸基(OH基)を形成し、(2)接合面を密着させ、(3)加熱処理を行うことで、接合面の水酸基に脱水縮合反応を発生させて接合します。一方、この方法には、加熱処理の必要性から高温環境下(300~400℃)の作業となる点や基板表面に残留した水分子が脱水縮合反応を阻害するといった点が、課題として上げられてきました。
「低温ダメージレス無接着剤接合技術」は、明電NPI独自の「OERプロセス技術」により、水原料を用いずに効率良く水酸基を形成するとともに、加熱による回路へのダメージを最小限としながら基板を接合することができ、工程の時間短縮にも貢献できる技術です。
<OER(Ozone-EthyleneRadical generation technology)プロセス技術>
明電NPIのキーデバイスである「ピュアオゾンジェネレータ」(後述)から供給される高純度100%オゾンとエチレンガスを反応させることで、常温※3で高活性なOHラジカル※4を発生させるNPI独自の技術です(特許取得済み)。OERプロセス技術を用いて基板表面に水酸基(OH基)を形成することで、従来の課題を解決できることが期待されます。
・・・
2.実証成果の解説
図1に、2枚のシリコン基板接合面にOERプロセス技術で水酸基を形成し、接合面を密着させ、加熱処理(300℃)により接合したSi(シリコン)-Si(シリコン)接合基板外観、図2に引張試験を行った結果を示します。接合部以外の場所で破断しており、少なくとも基板の破断強度よりも強く接合していることが分かります。
図3に、Si-Si接合部の断面を示します。接合面にはSi自然酸化膜のラインが見えますが、ボイドが一切見られず完全に接合していることが分かります。」
(注:上記の丸括弧付き数字は、甲1の2においては、丸囲み数字である。)
(2) 甲1の2発明
上記(1)の記載は、上記1(1)の甲1の1の記載と同様であるから、甲1の2には、以下の発明(以下、「甲1の2発明」という。)が記載されている。
「2枚のシリコン基板接合面にOERプロセス技術で水酸基を形成し、接合面を密着させ、加熱処理(300℃)により接合する方法であって、
OERプロセス技術は、オゾンとエチレンガスを反応させることで、常温で高活性なOHラジカルを発生させる技術であり、
基板表面に残留した水分子が脱水縮合反応を阻害するという課題を解決し、水原料を用いずに効率良く水酸基を形成するとともに、加熱による回路へのダメージを最小限としながら基板を接合することができ、工程の時間短縮にも貢献できる方法。」
3 甲1の3について
(1) 甲1の3の記載
「1.低温ダメージレス無接着剤接合技術とは
近年、CPUなど高性能デバイスの製造では、接着剤などを使わないで基板を接合する「直接接合」という技術が用いられています。例えば3次元積層半導体の製造などに用いられるフュージョン接合では、(1)2枚の基板接合面に水酸基(OH基)を形成し、(2)接合面を密着させ、(3)加熱処理を行うことで、接合面の水酸基に脱水縮合反応を発生させて接合します。一方、この方法には、加熱処理の必要性から高温環境下(300~400℃)の作業となる点や基板表面に残留した水分子が脱水縮合反応を阻害するといった点が、課題として上げられてきました。
「低温ダメージレス無接着剤接合技術」は、明電NPI独自の「OERプロセス技術」により、水原料を用いずに効率良く水酸基を形成するとともに、加熱による回路へのダメージを最小限としながら基板を接合することができ、工程の時間短縮にも貢献できる技術です。
<OER(Ozone-Ethylene Radical generation technology)プロセス技術>
明電NPIのキーデバイスである「ピュアオゾンジェネレータ」(後述)から供給される高純度100%オゾンとエチレンガスを反応させることで、常温※3で高活性なOHラジカル※4を発生させるNPI独自の技術です(特許取得済み)。OERプロセス技術を用いて基板表面に水酸基(OH基)を形成することで、従来の課題を解決できることが期待されます。
・・・
2.実証成果の解説
図1に、2枚のシリコン基板接合面にOERプロセス技術で水酸基を形成し、接合面を密着させ、加熱処理(300℃)により接合したSi(シリコン)- Si(シリコン)接合基板外観、図2に引張試験を行った結果を示します。接合部以外の場所で破断しており、少なくとも基板の破断強度よりも強く接合していることが分かります。
図3に、Si-Si接合部の断面を示します。接合面にはSi自然酸化膜のラインが見えますが、ボイドが一切見られず完全に接合していることが分かります。」
(注:上記の丸括弧付き数字は、甲1の3においては、丸囲み数字である。)
(2) 甲1の3発明
上記(1)の記載は、上記1(1)の甲1の1の記載と同様であるから、甲1の3には、以下の発明(以下、「甲1の3発明」という。)が記載されている。
「2枚のシリコン基板接合面にOERプロセス技術で水酸基を形成し、接合面を密着させ、加熱処理(300℃)により接合する方法であって、
OERプロセス技術は、オゾンとエチレンガスを反応させることで、常温で高活性なOHラジカルを発生させる技術であり、
基板表面に残留した水分子が脱水縮合反応を阻害するという課題を解決し、水原料を用いずに効率良く水酸基を形成するとともに、加熱による回路へのダメージを最小限としながら基板を接合することができ、工程の時間短縮にも貢献できる方法。」
4 甲2について
甲2には、以下の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の板状部材と第2の板状部材との表面を、プラズマを照射することにより平滑化するとともに活性化させた後、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材とを大気中で密着させて接合する接合方法において、
前記プラズマで平滑化及び活性化された前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との表面に大気中で付着する水分の量を減少させて前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との接合を行うことを特徴とする接合方法。
・・・
【請求項4】
前記プラズマは希ガスプラズマであって、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との表面を前記プラズマにより平滑化及び活性化した後、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材を加熱して前記表面に大気中で付着した水分を除去することにより前記表面の水分量を減少させて該第1の板状部材と該第2の板状部材との接合を行うことを特徴とする請求項1に記載の接合方法。」
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2枚の板状部材の表面をプラズマで平滑化するとともに活性化することにより接合する接合方法に関する。」
「【発明を実施するための最良の形態】
・・・
【0037】
第3の接合方法では、図4に示すように、まずチャンバー30内に設けられたテーブル20A、20B上に第1の板状部材10と第2の板状部材11とを固定し、チャンバー30内を減圧した後に発生源22A、22Bより第1の板状部材10と第2の板状部材11との表面にアルゴン等による希ガスプラズマを照射する。プラズマの照射条件としては、例えば単位面積当たりの出力が0.01W/cm2から1W/cm2、処理室のガス交換回数が1分当たり0.1%から10%、圧力が5Paから130Pa、照射時間が板状部材の素材にもよるが5秒から120分の条件で行われる。これにより、第1の板状部材10と第2の板状部材11との表面が平滑化(例えば表面粗さが100nm以下、好ましくは10nm以下、更に好ましくは1nm以下)されるとともに活性化される。
【0038】
希ガスプラズマを照射した後は、チャンバー30内を大気状態に戻し、不図示の加熱手段により第1の板状部材10と第2の板状部材11とを加熱(例えば20℃から400℃まで)し、第1の板状部材10と第2の板状部材11との表面の水分が1平方ミリメートル当たり250ng以下、好ましくは50ng以下の範囲となるように除去する。加熱後はシリンダー21A、21Bを移動させて、第1の板状部材10と第2の板状部材11との接合面全面を密着させて仮接合を行う。」
5 甲3について
甲3には、以下の記載がある。
「【背景技術】
・・・
【0004】
フィルムの多層積層化及びフィルムの表面制御では、例えば、特許文献1のようなフィルムの表面改質が行われる。一般的に、表面改質は、バリア性向上、耐久性向上、濡れ性向上(接着性向上)等を目的とし、疎水性(撥水性)であるフィルム表面を親水性に改質する。つまり、フィルム材質表面の分子構造を何らかの手段で壊して、親水性のあるOH基やO基等を付加することでフィルム表面が改質される。」
「【発明を実施するための形態】
・・・
【0032】
改質処理温度は、低温が好ましい。ただし、改質処理の効果をあげるため、樹脂が変形、変質しない範囲で樹脂を加熱してもよい。例えば、樹脂は、ガラス転位温度以下に加熱して改質処理に供される。
・・・
【0039】
[実施例]
この実施例では、樹脂6の一例として、有機フィルム(ポリイミドフィルム)の改質を放電を伴わないガス反応により行った。ポリイミドフィルムは、フレキシブル配線基板等に用いられる材料である。実施例では、不飽和炭化水素供給装置3から100体積%のエチレンガスを供給し、オゾン発生装置4から100体積%のオゾンを供給した。
【0040】
まず、試料ステージ7上にポリイミドフィルムを載置した。そして、真空ポンプ5により、チャンバ2内部を数Pa以下に真空排気した。」
6 甲4について
甲4の265ページ右欄には、以下の記載がある。
「 7.表面活性化接合の拡張
金属に対する親水化接合は,前節で触れたように酸化表面を前提にした接合であるため,十分な平滑化処理をしない限り,常温での強度は大きくならない。さらに樹脂とのハイブリットボンディングでは,Cu表面ないしはSn表面の酸化膜が,最後まで,安定な接合を妨げる要因となる。これをアルゴンなどの不活性ガスのイオンビーム照射により除去し,その上で改めて水の吸着を行わせれば,常温ないしは150℃程度の低温でもかなりの強度が得られることがわかってきた27)。」
7 甲5について
甲5には、以下の記載がある(なお、翻訳文は、異議申立人が提出したものを採用した。)。
「Recently、we proposed a combined surface activated bonding (SAB) technique to improve the Si02-Si02 bonding strength achieved in vacuum.[15][16] The combined SAB method involves a combination of surface irradiation using a Si-containing Ar beam surface irradiation and prebonding attach-detach process prior to bonding in vacuum conditions. The Si atoms are added in the Ar beam to increase the number of reactive Si sites on Si02 surface, while the prebonding attach-detach process is used to enhance the OH adsorption and to reduce excess H2O prior to bonding.」(299ページ右欄第15行~第25行)
(翻訳文:最近、真空中で達成されたSi0、-Si0、接合強度を向上させる複合表面活性化接合(SAB)技術を提案した[15][16]。複合SAB法は、Si含有Arビーム表面照射を用いた表面照射と真空条件での接合に先立つ前結合アタッチ-デタッチプロセスの組合せを含む。Si原子をArビーム中に添加して、SiO、表面上の反応性Siサイトの数を増加させ、一方、結合前の付着-脱着プロセスを用いて、OH吸着を強化し、結合前の過剰HOを低減する。)
「
[図:0001423543000001.jpg]
」
(翻訳文:
[図:0001423543000002.jpg]
)
「3 Results and Discussions
3.1 Si02-Si02 and Si02-SiNx Bonding
Bonding strength was measured to show the benefit of using the Si-containing Ar beam instead of the conventional Ar beam.」(300ページ右欄第6行~第9行)
(翻訳文:3結果と考察
3.1 Si0、-Si0、およびSi0、-SiN接合
従来のArビームの代わりにSi含有Arビームを用いる利点を示すために、接合強度を測定した。)
「
[図:0001423543000003.jpg]
」
(翻訳文:
[図:0001423543000004.jpg]
)
8 甲6について
(1) 甲6の記載
甲6には、以下の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内に収容した被接合基体の被接合面に水酸基を形成する水酸基形成工程と、
前記水酸基を形成した2個の前記被接合基体を被接合面にて重ね合わせて積層する積層工程と、
前記積層した状態の各被接合基体を加熱することにより、当該各被接合基体を被接合面にて接合する接合工程と、
を有し、
前記水酸基形成工程は、前記チャンバ内に収容した被接合基体の被接合面に対し、不飽和炭化水素ガスおよびオゾン濃度50体積%超のオゾンガスをそれぞれ供給することにより、当該不飽和炭化水素ガスおよび当該オゾンガスの両者のラジカル反応により発生するOHラジカルを当該被接合面に曝露して、当該被接合面に対して水酸基を形成し、
前記接合工程は、前記加熱によって前記水酸基を脱水縮合反応させることを特徴とする基体の接合方法。」
「【発明を実施するための形態】
・・・
【0028】
すなわち、本実施形態の基体の接合方法は、水酸基形成工程において、被接合基体の被接合面に対し、不飽和炭化水素ガスおよびオゾン濃度50体積%超のオゾンガスをそれぞれ供給することにより、当該不飽和炭化水素ガスおよび当該オゾンガスの両者のラジカル反応により発生するOHラジカルを当該被接合面に曝露して、当該被接合面に対して水酸基(水酸基による分子層)を形成するものである。
・・・
【0044】
次に、積層工程S2では、前記水酸基形成工程S1により水酸基を形成した2個の被接合基体1a,1bを、被接合面10にて重ね合わせて積層(仮接合)する。この積層状態にした被接合基体1a,1bは、被接合面10にて互いに圧接(例えば1MPa以上で圧接)し、十分密着させておくことが好ましい。
・・・
【0046】
<水酸基形成工程S1で適用可能なチャンバの一例>
水酸基形成工程S1では、例えばチャンバ内に被接合基体1を収容して当該チャンバ内を減圧状態にし、当該チャンバ内に不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスをそれぞれ供給することにより、当該被接合基体1の被接合面10に水酸基を形成することが挙げられる。このチャンバは、前記のように被接合基体1を収容した状態で不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスを供給でき、当該被接合面10に水酸基を形成できるものであれば良く、種々の態様が適用可能である。
【0047】
一例として、図4に示すチャンバ2(図4ではチャンバ2A、後述の図5,図6ではチャンバ2B,2C;以下、適宜纏めて単にチャンバ2と称する)では、当該チャンバ2内に不飽和炭化水素ガスを供給する不飽和炭化水素ガス供給部3と、当該チャンバ2内にオゾンガスを供給するオゾンガス供給部4と、当該チャンバ2内のガスを吸気して当該チャンバ2外に排出するガス排出部5と、を備えたものとなっている。ガス排出部5においては、単にチャンバ2内のガスを吸気して当該チャンバ2外に排出するだけでなく、当該チャンバ2内を減圧状態(例えばチャンバ2内が真空環境下となるような状態)に維持することが可能な態様が挙げられる。」
(2) 甲6発明
上記(1)によれば、甲6には、以下の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されている。
「チャンバ内に収容した被接合基体の被接合面に水酸基を形成する水酸基形成工程と、
前記水酸基を形成した2個の前記被接合基体を被接合面にて重ね合わせて積層する積層工程と、
を有し、
水酸基形成工程は、チャンバ内に被接合基体を収容して当該チャンバ内を減圧状態にし、当該チャンバ内に不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスをそれぞれ供給することにより、当該被接合基体の被接合面に水酸基を形成する、
基体の接合方法。」
第5 当審の判断
1 申立理由1(進歩性)について
(1) 甲1の1を主引例とする検討
ア 本件発明1
(ア) 甲1の1発明との対比
a 構成要件Aについて
甲1の1発明の「2枚のシリコン基板接合面にOERプロセス技術で水酸基を形成し、接合面を密着させ、加熱処理(300℃)により接合する方法」は、被接合物である2枚のシリコン基板を接合する方法であるから、本件発明1の「2つの被接合物同士を接合する接合方法」に相当する。
b 構成要件Bについて
甲1の1発明の「2枚のシリコン基板接合面にOERプロセス技術で水酸基を形成」する工程において、「OERプロセス技術」は、「オゾンとエチレンガスを反応させることで、常温で高活性なOHラジカルを発生させる技術」である。
そして、「エチレン」は、2重結合を有する炭化水素であるから、「エチレンガス」は、「不飽和炭化水素ガス」であるといえ、「オゾンとエチレンガスを反応させることで常温で高活性なOHラジカルを発生させる」ことは、「不飽和炭化水素ガスとオゾンガスとが存在する雰囲気に曝露するガス曝露」することである。
そうすると、甲1の1発明の当該工程は、本件発明1の「前記2つの被接合物のうちの少なくとも一方の接合面を不飽和炭化水素ガスとオゾンガスとが存在する雰囲気に曝露するガス曝露工程」に相当する。
c 構成要件Dについて
甲1の1発明の「接合面を密着させ」る工程は、本件発明1の「前記2つの被接合物同士を仮接合する仮接合工程」に相当する。
以上によれば、本件発明1と甲1発明は、以下の一致点、相違点を有する。
[一致点]
A:2つの被接合物同士を接合する接合方法であって、
B:前記2つの被接合物のうちの少なくとも一方の接合面を不飽和炭化水素ガスとオゾンガスとが存在する雰囲気に曝露するガス曝露工程と、
D:前記2つの被接合物同士を仮接合する仮接合工程と、を含む、
接合方法。
[相違点]
本件発明1は、「前記少なくとも一方の接合面に付着している水分を除去する水分除去工程」との構成(構成要件C)を含んでいるのに対し、甲1の1発明は、構成要件Cを含んでいない点(以下、相違点1という)。
(イ) 進歩性についての判断
上記第4の1(2)のとおり、甲1の1発明は、「2枚のシリコン基板接合面にOERプロセス技術で水酸基を形成し、接合面を密着させ、加熱処理(300℃)により接合する」ことにより、「基板表面に残留した水分子が脱水縮合反応を阻害するという課題を解決し、水原料を用いずに効率良く水酸基を形成するとともに、加熱による回路へのダメージを最小限としながら基板を接合することができ、工程の時間短縮にも貢献できる」ものであり、「OERプロセス技術」によって、すでに「基板表面に残留した水分子が脱水縮合反応を阻害するという課題」が解決されているから、「2枚のシリコン基板接合面にOERプロセス技術で水酸基を形成」する工程(構成要件B)や、「接合面を密着させ」る工程(構成要件D)とは異なる工程として、上記構成要件Cの「前記少なくとも一方の接合面に付着している水分を除去する水分除去工程」を含むように構成する動機付けはない。
したがって、異議申立人の主張する甲2及び甲3の記載の如何に関わらず、また、甲4及び甲5の記載を含めて検討しても、甲1の1発明において、相違点1の構成を含むように構成することは、当業者であっても容易に想到し得るものではない。
よって、本件発明1は、甲1の1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲2~甲5に記載された事項を含めて検討しても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ) 異議申立人の主張について
異議申立人は、異議申立書の第18ページ第5行~第20ページ第4行において、甲1に記載された発明に甲2や甲3に記載された水分除去工程を適用することで、本件発明1に想到することができる旨主張する。
しかしながら、上記(イ)のとおり、甲1発明において、構成要件Cの水分除去工程を含むように構成する動機付けはない。
したがって、異議申立人の主張は採用できない。
イ 本件発明2~4
上記第2のとおり、本件発明2~4は、本件発明1の全ての構成を有するものであり、いずれも上記相違点1に係る本件発明1の構成を有している。
そうすると、本件発明2~4と甲1発明を対比すると、少なくとも、上記相違点1の構成で相違するから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~4は、甲1の1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲2~甲5に記載された事項を含めて検討しても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2) 甲1の2、甲1の3を主引例とする検討
上記第4の2(2)のとおり、甲1の2には、甲1の2発明が記載されているところ、甲1の2発明は、甲1の1発明と同じである。
したがって、上記(1)と同様に、本件発明1~4は、甲1の2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲2~甲5に記載された事項を含めて検討しても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、上記第4の2(3)のとおり、甲1の3には、甲1の3発明が記載されているところ、甲1の3発明は、甲1の1発明と同じである。
したがって、上記(1)と同様に、本件発明1~4は、甲1の3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲2~甲5に記載された事項を含めて検討しても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3) 小括
したがって、異議申立人の主張する申立理由1(進歩性)は理由がない。
2 申立理由2(拡大先願)について
(1) 本件発明1
ア 本件発明1と甲6発明との対比
(ア) 構成要件Aについて
甲6発明の「基体の接合方法」は、「前記水酸基を形成した2個の前記被接合基体を被接合面にて重ね合わせて積層する積層工程」を有するものであるから、本件発明1の「2つの被接合物同士を接合する接合方法」に相当する。
(イ) 構成要件Bについて
甲6発明の「チャンバ内に収容した被接合基体の被接合面に水酸基を形成する水酸基形成工程」は、「チャンバ内に被接合基体を収容して当該チャンバ内を減圧状態にし、当該チャンバ内に不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスをそれぞれ供給することにより、当該被接合基体の被接合面に水酸基を形成する」ものである。
そして、「被接合基体の被接合面に水酸基を形成する」工程において、「被接合基体の被接合面」が、チャンバ内に供給された「不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガス」が存在する雰囲気に曝露されていることは、明らかである。
そうすると、甲6発明の当該工程は、本件発明1の「前記2つの被接合物のうちの少なくとも一方の接合面を不飽和炭化水素ガスとオゾンガスとが存在する雰囲気に曝露するガス曝露工程」に相当する。
(ウ) 構成要件Dについて
甲6発明の「前記水酸基を形成した2個の前記被接合基体を被接合面にて重ね合わせて積層する積層工程」は、本件発明1の「前記2つの被接合物同士を仮接合する仮接合工程」に相当する。
以上によれば、本件発明1と甲6発明は、以下の一致点、相違点を有する。
[一致点]
A:2つの被接合物同士を接合する接合方法であって、
B:前記2つの被接合物のうちの少なくとも一方の接合面を不飽和炭化水素ガスとオゾンガスとが存在する雰囲気に曝露するガス曝露工程と、
D:前記2つの被接合物同士を仮接合する仮接合工程と、を含む、
接合方法。
[相違点]
本件発明1は、「前記少なくとも一方の接合面に付着している水分を除去する水分除去工程」との構成(構成要件C)を含んでいるのに対し、甲6発明は、構成要件Cを含んでいない点(以下、相違点2という)。
イ 申立理由2(拡大先願)についての判断
上記アのとおり、本件発明1と甲6発明とは、上記相違点2を有する。
そして、本件発明1の「水分除去工程」は、他の「ガス暴露工程」や「仮接合工程」とは異なる別の工程として特定されており、一つの工程が複数の工程を兼ねているとはいえないから、相違点2は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲6発明と同一であるとはいえない。
ウ 異議申立人の主張について
異議申立人は、異議申立書の第23ページ第5行~第22行において、甲6に記載された「水酸基形成工程」は、チャンバ内に被接合基体1を収容して当該チャンバ内を減圧状態(例えばチャンバ内が真空環境下となるような状態)に維持した後、当該チャンバ内に不飽和炭化水素ガスおよびエチレンガスをそれぞれ供給しているところ、減圧により真空度を上げれば水分が除去されることは当業者にとって自明であるから、甲6に記載された「水酸基形成工程」は、本件発明1の「水分除去工程」と同じである旨主張する。
しかしながら、上記イのとおり、本件発明1の「水分除去工程」は、「ガス暴露工程」(甲6発明の「水酸基形成工程」)とは異なる別の工程として特定されている。
そうすると、仮に異議申立人が主張するように、甲6に記載された「水酸基形成工程」において、被接合基体1の水分が除去されていたとしても、本件発明1の「ガス暴露工程」で水分が除去されているといえるだけであって、それとは異なる別の工程で水分が除去されているわけではないから、甲6発明は、本件発明1の「水分除去工程」と同じ工程を含んでいるとはいえない。
したがって、異議申立人の主張は採用できない。
(2) 本件発明2
上記第2のとおり、本件発明2は、本件発明1の全ての構成を有するものであり、いずれも上記相違点2に係る本件発明1の構成を有している。
そうすると、本件発明2と甲6発明を対比すると、少なくとも、上記相違点2の構成で相違するから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2は、甲6発明と同一であるとはいえない。
(3) 小括
したがって、異議申立人の主張する特許異議の申立理由2(拡大先願)は理由がない。
第6 むすび
以上の次第であるから、特許異議の申立ての理由及び異議申立人の提出した証拠によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700218