2023-013422
滅菌装置および滅菌方法
- 審判番号
- 2023-013422
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-551248外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年08月09日
- 審決日
- 2025年05月27日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】サントリーホールディングス株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人R&C
- 分類
- P18 .121-Z (B65B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 9項目
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)10月11日(優先権主張 平成30年10月11日)を国際出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
第2 本願発明
本願の請求項1~6に係る発明は、令和5年3月3日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲1~6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】容器、容器のキャップ、および容器のプリフォームから選択される対象物に電子線を照射して前記対象物を滅菌する滅菌装置であって、前記対象物の口部と底部とを結ぶ軸方向に対する側方から電子線を照射する側方電子線照射部と、前記対象物の前記軸方向に沿って前記口部側の外側から電子線を照射する口部側電子線照射部と、を備え、前記側方電子線照射部において前記対象物に照射される電子線の線量である側方線量と、前記口部側電子線照射部において前記対象物に照射される電子線の線量である口部側線量と、が異なり、前記対象物を滅菌する際に、第一に前記側方電子線照射部による前記対象物の前記軸方向に対する側方からの電子線照射が行われ、第二に前記口部側電子線照射部による前記対象物の前記軸方向に沿って前記口部側の外側からの電子線照射が行われる滅菌装置。」
第3 原査定における拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1~2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
<引用文献等一覧>
1:特開2002-173114号公報
2:国際公開第2013/062006号
第4 当審の判断
1 引用文献の記載事項及び引用発明
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(1) 引用文献1及び引用発明
ア 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、次の事項が記載されている(・・・は省略を示す。下線は当審で付した。以下同様。)。
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、容器の殺菌方法に関する。【0002】【従来の技術】近年、携帯性に優れ、製造が容易なPETボトルが多用されるようになってきた。PETボトルに飲料水等の内容物を注入する前には殺菌が必要である。・・・」
「【0008】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、薬液を用いる殺菌方法では容器内での薬液の残留が問題となり、廃液の処理や薬液の充填その他、考慮すべき問題が発生する。・・・【0010】図3及び図4に示した従来例は容器の口部に過剰なエネルギーの電子線が照射されることがあり、この場合には容器が変質したり、変色するおそれがある。しかも走査プロファイル制御装置や反射板等の部材を必要とするため、その分だけ装置が大型化、複雑化してしまうという問題があった。」
「【0028】図2は本発明の容器の殺菌方法を適用した装置の他の実施の形態を示す概念図である。なお、図1に示した部材と同様の部材には共通の符号を用いた。【0029】図1に示した装置との相違点は、PETボトル20を横に倒した状態で搬送すると共にPETボトル20の口部20cに他の電子線発生装置30からの電子線を照射するようにした点である。【0030】すなわち、この装置は、PETボトル20を横に倒したまま前工程から後工程に搬送する網目コンベア21と、PETボトル20の側壁20aを透過した後PETボトル20内で拡散すると共に反射する程度の弱いエネルギーを有する電子線23をPETボトル20の側面に上方から下方に向けて照射する電子線発生装置24と、電子線発生装置24からの電子線23のエネルギーよりさらに弱いエネルギーの電子線31をPETボトル20の口部20cに照射する他の電子線発生装置30とで構成されている。【0031】電子線発生装置30は、電子線を発生する電子銃32と、電子銃32からの電子線を加速する加速管33と、加速管33で加速された電子線31をPETボトル20の口部20cの近傍に向けて走査するスキャンホーン34とで構成されている。【0032】PETボトル20の側面に照射される電子線23のエネルギーを300keV~500keVの範囲内とし、口部20cに照射される電子線31のエネルギーを略100keVとするのが好ましい。【0033】このような装置においても図1に示した装置と同様にPETボトル20の内面を均一に殺菌することができ、しかもPETボトル20の口部20cの肉厚が厚い場合や凹凸が多い場合でも十分な殺菌を行うことができる。また、他の電子線発生装置30は電子線31のエネルギーが略100keVと弱いため、小型で安価なものを用いることができる。」
「【図2】[図:0001425056000001.jpg]」
イ 上記アの【図2】からは、電子線発生装置24が、PETボトル20の口部20cと底部とを結ぶ軸方向に対する側方から電子線23を照射し、他の電子線装置30が、PETボトル20の口部20cと底部とを結ぶ軸方向に沿って前記口部20cの外側から電子線31を照射する事項が看取される。
してみると、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「PETボトル20に電子線23、31を照射して前記PETボトル20を殺菌する装置であって、前記PETボトル20の口部20cと底部とを結ぶ軸方向に対する側方から電子線23を照射する電子線発生装置24と、前記PETボトル20の前記軸方向に沿って口部20cの外側から電子線31を照射する他の電子線発生装置30とで構成され、他の電子線発生装置30からの電子線31のエネルギーは、電子線発生装置24からの電子線23のエネルギーよりさらに弱いエネルギーである、前記装置。」
(2) 引用文献2
ア 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。
「[0094] チャンバー10の内部には、図1及び図2に示すように、円筒容器B(図3参照)を支持して電子線を照射するために搬送するスターホイールコンベア機構20及び吸着コンベア機構30、並びに、これらで搬送中の円筒容器Bの各部位に電子線を照射して滅菌するための3台の電子線加速器E1、E2、E3が設けられている。」
「[0127] 電子線加速器E2は、図1及び図2に示すように、チャンバー10の中央部分の底壁部外側に位置している。この電子線加速器E2は、図6に示すように、チャンバー10の底壁部から照射口E2aを上方に向けて位置し、真空吸引器31の真空吸引口31aに支持された円筒容器Bの胴部Bb及び首部Bcに向けて電子線を照射して当該部位を滅菌する。このとき、真空吸引口31aに支持された円筒容器Bは、真空吸引器31と共にその円筒軸の回りに回転しているので、この円筒容器Bは、その側面の全周に亘って滅菌される。なお、照射口E2aからの電子線の照射によって、円筒容器Bの胴部Bbと首部Bcの側面だけでなく、首部Bcの上面Bf及び下面Bgも十分に滅菌することができる。[0128] 電子線加速器E3は、図1及び図2に示すように、チャンバー10の中央部分の右寄りの背壁部外側に位置している。この電子線加速器E3は、図7に示すように、チャンバー10の背壁部から照射口E3aを手前側に向けて位置し、真空吸引器31の真空吸引口31aに支持された円筒容器Bの首部Bcの上面Bf及び収納部Baに向けて電子線を照射して当該部位を滅菌する。ここでは、特に医薬品を収納するための収納部Baを十分に滅菌することができる。」
「[0144] 次に、真空吸引器31に支持された円筒容器Bは、真空吸引口31a及び吸引管31bと共にこれらの円筒軸の回りに回転しながら電子線加速器E2の照射口E2aの上方位置まで搬送される(図6参照)。ここでは、搬送中の円筒容器Bの胴部Bb及び首部Bcの外表面が電子線加速器E2の照射口E2aから放射される電子線によって滅菌される。[0145] ここでは、円筒容器Bが真空吸引器31と共にその円筒軸の回りに回転していることにより、この円筒容器Bは、その側面の全周に亘って滅菌される。このとき、真空吸引器31の回転速度と循環移動速度、照射口E2aの開口径及び電子線強度を制御することにより、円筒容器Bの胴部Bb及び首部Bcの外表面が完全に滅菌される。[0146] 次に、真空吸引器31に支持された円筒容器Bは、電子線加速器E3の照射口E3aの正面位置まで搬送される(図7参照)。ここでは、搬送中の円筒容器Bの首部Bcの上面Bf及び収納部Baの内表面が電子線加速器E3の照射口E3aから放射される電子線によって滅菌される。このとき、真空吸引器31の循環移動速度、照射口E3aの開口径及び電子線強度を制御することにより、円筒容器Bの首部Bcの上面Bf及び収納部Baの内表面が完全に滅菌される。」
「[図1][図:0001425056000002.jpg][図2][図:0001425056000003.jpg]」
「[図6][図:0001425056000004.jpg][図7][図:0001425056000005.jpg]」
イ 上記アから、引用文献2には以下の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。
「電子線加速器E2で容器側方に電子線照射を行った後、電子線加速器E3で容器口部に電子線照射を行うこと」
2 対比
(1) 本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「PETボトル20」は本願発明の「容器」に相当するから、引用発明の「PETボトル20」は本願発明の「容器、容器のキャップ、および容器のプリフォームから選択される対象物」という条件を満たす。
イ 引用発明の「殺菌」は、PETボトルに飲料水等の内容物を注入する前に必要とされるレベルの殺菌(上記1(1)アの【0002】)であるから、本願発明における「滅菌」に相当する。そうすると、引用発明における「殺菌する装置」は本願発明の「滅菌装置」に相当する。
ウ 上記ア及びイを踏まえると、引用発明の「PETボトル20に電子線23、31を照射して前記PETボトル20を殺菌する装置」は本願発明の「容器、容器のキャップ、および容器のプリフォームから選択される対象物に電子線を照射して前記対象物を滅菌する滅菌装置」に相当する。
エ 引用発明における「前記PETボトル20の口部20cと底部とを結ぶ軸方向に対する側方から電子線23を照射する電子線発生装置24」は、本願発明における「前記対象物の口部と底部とを結ぶ軸方向に対する側方から電子線を照射する側方電子線照射部」に相当する。同様に、引用発明における「前記PETボトル20の前記軸方向に沿って口部20cの外側から電子線31を照射する他の電子線発生装置30」は、本願発明における「前記対象物の前記軸方向に沿って前記口部側の外側から電子線を照射する口部側電子線照射部」に相当する。
オ 引用発明の「電子線」の「エネルギー」は本願発明の「電子線の線量」に相当する。また、引用発明における「他の電子線発生装置30からの電子線31のエネルギーは、電子線発生装置24からの電子線23のエネルギーよりさらに弱いエネルギーである」という事項は、本願発明の「前記側方電子線照射部において前記対象物に照射される電子線の線量である側方線量と、前記口部側電子線照射部において前記対象物に照射される電子線の線量である口部側線量と、が異なり」という事項に相当する。
カ 上記ア~オを踏まえると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「容器、容器のキャップ、および容器のプリフォームから選択される対象物に電子線を照射して前記対象物を滅菌する滅菌装置であって、前記対象物の口部と底部とを結ぶ軸方向に対する側方から電子線を照射する側方電子線照射部と、前記対象物の前記軸方向に沿って前記口部側の外側から電子線を照射する口部側電子線照射部と、を備え、前記側方電子線照射部において前記対象物に照射される電子線の線量である側方線量と、前記口部側電子線照射部において前記対象物に照射される電子線の線量である口部側線量と、が異なる滅菌装置。」
<相違点>
前記対象物を滅菌する際に、本願発明は「第一に前記側方電子線照射部による前記対象物の前記軸方向に対する側方からの電子線照射が行われ、第二に前記口部側電子線照射部による前記対象物の前記軸方向に沿って前記口部側の外側からの電子線照射が行われる」のに対し、引用発明は「前記PETボトル20の側面に弱いエネルギーを有する電子線23を照射」し、また、これとは別に「前記PETボトル20の口部20cにさらに弱いエネルギーの電子線31を照射」しているものの、それらの照射タイミングが特定されていない点。
3 判断
(1) 上記相違点について検討する。
引用文献2記載事項は、上記1(2)イのとおり、「電子線加速器E2で容器側方に電子線照射を行った後、電子線加速器E3で容器口部に電子線照射を行う」というものであるところ、引用発明と引用文献2記載事項とは、対象物への複数方向からの電子線照射にあたり、複数の電子線照射装置を用いて減菌している点で技術分野及び機能が共通するから、引用発明において、引用文献2記載事項を適用し、第一に「前記PETボトル20の側面に弱いエネルギーを有する電子線23を照射」し、第二に「前記PETボトル20の口部20cにさらに弱いエネルギーの電子線31を照射する」ことで、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
ここで、引用文献2で滅菌している対象は、PETボトルではないが、容器の各所を複数の電子線で滅菌していることには変わりなく、技術分野及び機能の共通性についての判断を左右しない。
また、本願発明の効果は、引用発明及び引用文献2記載事項が奏する効果の総和を超えるものではないから、当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別顕著なものではない。
(2) 請求人の主張について
請求人は審判請求書【請求の理由】(3-1)において「引用文献1に記載の滅菌装置では、「PETボトル20の側壁20aを透過した後PETボトル20内で拡散すると共に反射する程度の弱いエネルギーを有する」電子線23がPETボトル20の側面から、「さらに弱いエネルギーの」電子線31がPETボトル20の口部20cから照射を行います(引用文献1、[0016]、[0025]、[0030]、図1、図2、)。電子線23および電子線31は両方ともボトルの内面を照射対象とし、また、両者は同時に行われると理解されます。
これに対し、引用文献2に記載の滅菌装置では、容器Bの「外表面」を滅菌するための電子線加速器E2が容器の側面から(引用文献2、[0127]段落第7行~第10行、図6)、容器Bの「内表面」(すなわち収納部Ba)を滅菌するための電子線加速器E3(引用文献2、[0128]段落第4行~第7行、図7)が容器の口部から照射を行います。ここで、「内外表面いずれの部位においても安定して均一な照射期間を確保する」目的(引用文献2、[0011])から電子線加速器E2とE3とが同等なエネルギーを有するものです(引用文献2、[0013]、[0014])。また、「滅菌処理を低温」で行い「容器の損傷」を防ぐ目的(引用文献2、[0015])からE2とE3とが搬送装置における異なる場所に設けられて照射を順番に行います(引用文献2、[0015]、図1)。
以上のように、引用文献1に記載の発明と引用文献2に記載の発明とは、審査官殿のご指摘のように両方とも「容器の滅菌装置という技術分野に属する」ものの、照射を順番に行うか否かという違いは、滅菌対象および要求性能の違いに起因するものです。「内面」のみの滅菌を目的とする引用発明1を出発点とする場合、「外表面」および「内表面」の両方とも滅菌するための引用発明2の構成を参照する動機付けがありません。
また、引用発明1では、補助的な電子線発生装置30は主たる電子線発生装置24よりもさらに弱いエネルギーで照射するため(引用文献1、[0022]~[0025]、[0032])、電子線発生装置24と電子線発生装置30とが同時に照射を行っても容器の損傷の恐れがありませんので、容器の損傷を防ぐために電子線加速器E2とE3との照射を順番に行うという引用文献2の技術的思想を採用する動機付けがありません。」と主張する。
しかしながら、引用文献1には、電子線23及び電子線31の照射タイミングについて特定する記載がなく、電子線23及び電子線31の照射が請求人の主張のように同時であると解すべき理由はないし、技術的に見て、別々には行い得ないと解する事情もない。
また、動機付けに関しては、上記(1)で検討したとおりである。
そのほか、請求人は審判請求書【請求の理由】(3-2)において、引用発明に引用文献2を組み合わせると装置が大型化、複雑化するので、引用発明の目的に反する旨を累々主張する。しかし、当該相違点に関する判断は、引用発明に引用文献2に記載の装置をそのまま組み合わせるといったものではなく、これを正解していない。
4 小括
よって、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載事項から当業者が容易に想到し得たものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-013422