2025-001721
内容物充填システム及び内容物入り容器の製造方法
- 審判番号
- 2025-001721
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2024-019716外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2025年02月04日
- 審決日
- 2026年04月17日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .575-Z (B65B) / P18 .121-Z (B65B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
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本願は、令和5年12月18日に出願された特願2023-213269号の一部を、令和6年2月13日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
同年 7月19日 :意見書、手続補正書の提出
同年 7月25日付け:拒絶理由(最後)通知書
同年10月 1日 :意見書、手続補正書の提出
第2 令和7年2月4日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和7年2月4日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の補正をするものであり、本件補正前の請求項5の「前記殺菌剤は、過酸化水素水溶液のガス又はミストであり、前記第1殺菌剤噴霧部において、前記缶に対する前記殺菌剤の付着量は、0.01μL/cm2以上0.4μL/cm2以下である」との記載、及び、本件補正前の請求項4の「前記容器殺菌装置は、前記缶に対して殺菌剤を噴霧する第1殺菌剤噴霧部と、前記第1殺菌剤噴霧部で前記殺菌剤が噴霧された前記缶をエアリンスする第1エアリンス部とを有」するとの記載を、本件補正前の請求項1の記載に加え(本件補正前の請求項5は請求項4の記載を引用し、請求項4は請求項1の記載を引用する。)、さらに、発明特定事項を追加して、本件補正後の請求項1の記載に補正することを含むものである。
(1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項5からの実質的な補正箇所を示す。)
「 【請求項1】製品原液を水によって希釈することにより作製される内容物を缶に充填する内容物充填システムであって、前記缶を殺菌する容器殺菌装置と、前記水を非加熱殺菌する水殺菌ラインと、続きを表示(全18行)前記製品原液を殺菌する原液殺菌ラインと、前記水殺菌ライン及び前記原液殺菌ラインにそれぞれ接続され、前記水及び前記製品原液を、殺菌された前記缶に充填する充填装置と、前記水及び前記製品原液が充填された前記缶を、殺菌された蓋により閉栓する蓋装着装置とを備え、前記製品原液は、アルコールを含み、前記原液殺菌ラインは、少なくとも、貯留及び濾過のうちの少なくとも1つによって前記製品原液を殺菌し、前記内容物は、酸性かつ炭酸ガスを含み、かつ、pHが4.6未満であるアルコール飲料であり、前記容器殺菌装置は、前記缶を加熱する第1加熱部と、加熱された前記缶に対して殺菌剤を噴霧する第1殺菌剤噴霧部と、前記第1殺菌剤噴霧部で前記殺菌剤が噴霧された前記缶をエアリンスする第1エアリンス部とを有し、前記缶の内面は、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂又はポリ塩化ビニルでコーティングされており、前記第1加熱部は、前記缶の内面に対して加熱エアを吹き付ける内面用ホットエアノズルと、前記缶の外面に対して加熱エアを吹き付ける外面用ホットエアノズルであって、前記内面用ホットエアノズルとは異なる外面用ホットエアノズルとを含んでおり、前記殺菌剤は、過酸化水素水溶液のガス又はミストであり、前記第1殺菌剤噴霧部において、前記缶に対する前記殺菌剤の付着量は、0.01μL/cm2以上0.4μL/cm2以下である、内容物充填システム。」
(2) 本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和6年7月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1、4、5の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】缶を殺菌する容器殺菌装置と、水を非加熱殺菌する水殺菌ラインと、製品原液を殺菌する原液殺菌ラインと、前記水殺菌ライン及び前記原液殺菌ラインにそれぞれ接続され、前記水及び前記製品原液を、殺菌された前記缶に充填する充填装置と、前記水及び前記製品原液が充填された前記缶を、殺菌された蓋により閉栓する蓋装着装置とを備え、前記製品原液は、アルコールを含み、前記原液殺菌ラインは、少なくとも、貯留及び濾過のうちの少なくとも1つによって前記製品原液を殺菌する、内容物充填システム。」
「 【請求項4】前記容器殺菌装置は、前記缶に対して殺菌剤を噴霧する第1殺菌剤噴霧部と、前記第1殺菌剤噴霧部で前記殺菌剤が噴霧された前記缶をエアリンスする第1エアリンス部とを有する、請求項1に記載の内容物充填システム。」
「 【請求項5】前記殺菌剤は、過酸化水素水溶液のガス又はミストであり、前記第1殺菌剤噴霧部において、前記缶に対する前記殺菌剤の付着量は、0.01μL/cm2以上0.4μL/cm2以下である、請求項4に記載の内容物充填システム。」
(3) 請求項1についての本件補正は、以下の補正事項ア~エを含むものである。
ア 補正前の「内容物重点システム」について、「製品原液を水によって希釈することにより作製される内容物を缶に充填する」ものであること、及び、内容物について「前記内容物は、酸性かつ炭酸ガスを含み、かつ、pHが4.6未満であるアルコール飲料であり」との事項を追加する補正。
イ 補正前の「容器殺菌装置」について、「前記缶を加熱する第1加熱部」を有し、「前記第1加熱部は、前記缶の内面に対して加熱エアを吹き付ける内面用ホットエアノズルと、前記缶の外面に対して加熱エアを吹き付ける外面用ホットエアノズルであって、前記内面用ホットエアノズルとは異なる外面用ホットエアノズルとを含んで」いるとの事項を追加する補正。
ウ 補正前の「容器殺菌装置」について、「第1殺菌剤噴霧部」が「加熱された前記缶」に対して殺菌剤を噴霧するとの事項を追加する補正。
エ 補正前の「缶」について、「前記缶の内面は、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂又はポリ塩化ビニルでコーティングされており」との記載を追加する補正。
2 補正の適否
上記1(3)の補正事項ア~エは、本件補正前の請求項5に記載された発明を特定するために必要な事項に限定を付加するものであって、補正前の請求項5に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2) 引用文献の記載及び引用発明等
ア 引用文献1、引用発明
(ア) 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された特開2023-59187号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は、合議体が付加した。以下、同じ。)。
「【技術分野】【0001】本開示は、内容物充填システム及び殺菌方法に関する。【背景技術】続きを表示(全82行)【0002】殺菌された容器(PETボトル)に殺菌された内容物を無菌環境下で充填し、その後、容器をキャップによって閉栓する無菌充填システム(アセプティック充填システム)が知られている(例えば、特許文献1参照)。【0003】具体的には、無菌充填システムにおいて、成形した容器を無菌充填システムに供給し、無菌充填システム内で、容器に殺菌剤としての過酸化水素水溶液をスプレーする。その後、過酸化水素水溶液を乾燥することにより容器を殺菌する。次いで、容器に内容物を無菌充填する。【0004】ところで、近年、環境負荷の低減を目的として、排出される二酸化炭素の量を低減することが求められている。・・・【発明が解決しようとする課題】【0006】本開示はこのような点を考慮してなされたものであり、二酸化炭素の排出量を低減することが可能な、内容物充填システム及び殺菌方法を提供することを目的とする。・・・【発明を実施するための形態】【0026】以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図10Bは本発明の一実施の形態を示す図である。【0027】(内容物充填システム)まず、図1により、実施の形態による内容物充填システム(無菌充填システム)について説明する。【0028】図1に示す内容物充填システム10は、ボトル(容器)100に飲料等の内容物を充填するシステムである。内容物は、製品原液を水によって希釈することによって作製され得る。この場合、製品原液は、水によって、1.1倍以上100倍以下に希釈されても良く、好ましくは2倍以上10倍以下に希釈されても良い。また、製品原液は、水によって、10倍以上80倍以下に希釈されても良く、20倍以上70倍以下に希釈されても良く、30倍以上50倍以下に希釈されても良い。ボトル100は、合成樹脂材料を射出成形して製作したプリフォーム100aを二軸延伸ブロー成形することにより作製できる。なお、ボトル100は、ダイレクトブロー成形により作製されても良い。ボトル100の材料としては、熱可塑性樹脂、特にPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、又はPEN(ポリエチレンナフタレート)を使用することが好ましい。このほか、容器としては、ガラス、缶、紙、パウチ、カップ又はこれらの複合容器であっても良い。本実施の形態においては、容器として合成樹脂製ボトルを用いる場合を例にとって説明する。【0029】図1に示すように、内容物充填システム10は、水を殺菌する水殺菌ライン50と、製品原液を殺菌する原液殺菌ライン70と、水殺菌ライン50及び原液殺菌ライン70にそれぞれ接続された充填装置(フィラー)20とを備えている。また、内容物充填システム10は、充填装置20を制御する制御部90を備えている。さらに、内容物充填システム10は、ボトル成形部30と、殺菌装置(容器殺菌装置)11と、エアリンス装置14と、上述した充填装置20と、キャップ装着装置(キャッパー、巻締及び打栓機)16と、製品ボトル搬出部25とを備えている。これらボトル成形部30、殺菌装置11、エアリンス装置14、充填装置20、キャップ装着装置16及び製品ボトル搬出部25は、ボトル100の搬送方向に沿って、上流側から下流側に向けてこの順に配設されている。また、エアリンス装置14、充填装置20及びキャップ装着装置16等の間には、これらの装置間でボトル100を搬送する複数の搬送ホイール12が設けられている。ここでは、まず、ボトル成形部30、殺菌装置11、エアリンス装置14、充填装置20、キャップ装着装置16及び製品ボトル搬出部25について説明する。【0030】ボトル成形部30は、外部からプリフォーム100aを受け入れるとともにボトル100の成形を行うように構成されている。そして、ボトル成形部30は、成形されたボトル100を殺菌装置11へ向けて搬送するように構成されている。これにより、内容物充填システム10において、プリフォーム100aの供給からボトル100の成形を経て、ボトル100への内容物の充填及び閉栓に至る工程を連続して行うようにできる。この場合、容積の大きいボトル100ではなく、容積の小さいプリフォーム100aが、外部から内容物充填システム10に運搬される。このため、運送費を低減できる。・・・【0045】殺菌装置11は、殺菌剤をボトル100に噴射することにより、ボトル100を殺菌する装置である。これにより、内容物の充填前に殺菌剤によってボトル100が殺菌される。殺菌剤としては、例えば過酸化水素水溶液が用いられる。殺菌装置11においては、過酸化水素水溶液のガス又はミストが生成され、ガス又はミストがボトル100の内外面に噴霧される。このようにボトル100が過酸化水素水溶液のガス又はミストで殺菌されるので、ボトル100の内外面がムラなく殺菌される。【0046】エアリンス装置14は、ボトル100に無菌の加熱エア又は常温エアを供給することにより、過酸化水素の活性化を行いつつ、ボトル100内から異物、過酸化水素等を除去する装置である。この際、ボトル100の口部を下に向けた状態で、ボトル100に対して無菌エアが供給されることが好ましい。これにより、ボトル100内から異物を効果的に除去できる。このため、無菌水によってボトル100を洗浄する工程を省略でき、内容物充填システム10が排出する二酸化炭素の排出量を低減できる。なお、必要に応じて、常温の無菌化されたエアに、低濃度の過酸化水素の凝結ミストを混ぜて過酸化水素をガス化させて、ボトル100に供給しても良い。【0047】充填装置20は、水及び製品原液をボトル100に充填する装置である。すなわち、充填装置20は、ボトル100の口部からボトル100内へ、予め殺菌処理された水及び製品原液を充填するものである。これにより、充填装置20において、製品原液を希釈することによって作製された内容物が、空の状態のボトル100に充填される。この充填装置20では、複数のボトル100が回転搬送されながら、ボトル100の内部へ内容物が充填される。【0048】充填装置20は、水殺菌ライン50に接続された水充填装置21と、原液殺菌ライン70に接続された原液充填装置22とを有していても良い。水充填装置21及び原液充填装置22は、ボトル100の搬送方向に沿って、上流側から下流側に向けてこの順に配設されている。水充填装置21は、後述する第1無菌チャンバ70fの内部に配置されている。原液充填装置22は、後述する第2無菌チャンバ70hの内部に配置されている。水充填装置21及び原液充填装置22は、それぞれ、いわゆるロータリーフィラーであっても良い。・・・【0052】キャップ装着装置16は、ボトル100にキャップ88を装着することにより、ボトル100を閉栓する装置である。キャップ装着装置16において、水及び製品原液(内容物)が充填されたボトル100はキャップ88により閉じられ、ボトル100内に外部の空気や微生物が侵入しないように密封される。キャップ装着装置16において、内容物が充填された複数のボトル100が回転(公転)されながら、その口部にキャップ88が装着される。このようにして、ボトル100にキャップ88を装着することにより、製品ボトル101が得られる。【0053】キャップ88は、予めキャップ殺菌装置18によって殺菌される。キャップ殺菌装置18は、例えば第2無菌チャンバ70h(後述)等の外側であってキャップ装着装置16の近傍に配置されている。キャップ殺菌装置18において、内容物充填システム10の外部から搬入されたキャップ88は、予め多数集められ、キャップ装着装置16に向かって列になって搬送される。キャップ88がキャップ装着装置16に向かう途中で、過酸化水素のガス又はミストがキャップ88の内外面に向かって吹き付けられた後、ホットエアで乾燥し、殺菌処理される。・・・【0055】なお、内容物充填システム10は、プリフォーム殺菌チャンバ70aと、成形部チャンバ70bと、雰囲気遮断チャンバ70cと、殺菌剤噴霧チャンバ70dと、エアリンスチャンバ(第4無菌チャンバ)70eと、第1無菌チャンバ70fと、中間エリアチャンバ(第3無菌チャンバ)70gと、第2無菌チャンバ70hと、出口チャンバ70iとを有している。このうち、第1無菌チャンバ70fと第2無菌チャンバ70hとの間に、第1無菌チャンバ70fと第2無菌チャンバ70hとを互いに連結する中間エリアチャンバ(第3無菌チャンバ)70gが設けられている。また、第1無菌チャンバ70fの上流側に、エアリンスチャンバ(第4無菌チャンバ)70eが設けられている。すなわち、プリフォーム殺菌チャンバ70a、成形部チャンバ70b、雰囲気遮断チャンバ70c、殺菌剤噴霧チャンバ70d、エアリンスチャンバ70e、第1無菌チャンバ70f、中間エリアチャンバ70g、第2無菌チャンバ70h、及び出口チャンバ70iは、プリフォーム100a及びボトル100の搬送方向に沿って、上流側から下流側に向けてこの順に配設されている。【0056】各チャンバ70a乃至70iは、それぞれ隔壁によって分離されている。隔壁は、各チャンバ70a乃至70i間で、殺菌剤等が意図しない方向へ流通することを防ぎ、各チャンバ70a乃至70i内の圧力を安定させる役割を果たす。なお、隔壁には、それぞれプリフォーム100a又はボトル100が通過できる程度の隙間が形成されている。この隙間は、各チャンバ70a乃至70i内の圧力が変化しないように、最小限、例えば1個分のプリフォーム100a又はボトル100程度の大きさ形成されている。また、隔壁には、上述した隙間を閉鎖するシャッターが設けられていても良い。このシャッターは、例えば制御部90からの信号により、自動で開閉するように構成されていても良い。・・・【0071】また、エアリンスチャンバ(第4無菌チャンバ)70e内の圧力は、第1無菌チャンバ70f内の圧力以下であることが好ましい。これにより、エアリンスチャンバ70e内の空気が、第1無菌チャンバ70f内に入り込むことを抑制できる。このため、第1無菌チャンバ70fの内部の無菌状態を良好に維持できる。【0072】・・・なお、製品ボトル101を生産する際には、エアリンスチャンバ70e内の圧力は、10Pa以上30Pa以下であることが好ましい。・・・【0074】・・・なお、製品ボトル101を生産する際には、殺菌剤噴霧チャンバ70d内の圧力は、-10Pa以上10Pa以下であることが好ましい。・・・【0076】以上を纏めると、殺菌剤噴霧チャンバ70d乃至出口チャンバ70i内の圧力は、以下の表1のようにしても良い。【0077】【表1】[図:0001436925000001.jpg]・・・【0082】水殺菌ライン水殺菌ライン50は、水を非加熱殺菌する殺菌ラインである。この水殺菌ライン50は、紫外線によって水を殺菌しても良い。なお、本明細書中、「非加熱殺菌」とは、電気ヒーター又は蒸気等による熱エネルギーを用いることなく、水を殺菌することをいう。・・・【0123】再度図2Aを参照すると、第1無菌フィルタ63は、第1殺菌機62の下流側に設けられている。この第1無菌フィルタ63は、水に残存する菌を捕集することにより、水を除菌するフィルタである。第1無菌フィルタ63の目開きは、0.1μm以上0.45μm以下であっても良く、0.1μm以上0.22μm以下であることが好ましい。第1無菌フィルタ63の目開きが0.1μm以上であることにより、水の殺菌効率の低下を抑制できる。また、第1無菌フィルタ63の目開きが0.45μm以下であることにより、水に残存する菌を第1無菌フィルタ63によって効果的に捕集できる。・・・【0141】次に、原液殺菌ライン70について説明する。原液殺菌ライン70は、製品原液を加熱殺菌する殺菌ラインである。・・・【0265】(第6変形例)・・・【0270】本変形例によれば、第3水タンク54の上流側に、水に炭酸を添加する炭酸添加装置58が連結されている。これにより、内容物充填システム10において、炭酸飲料をボトル100に充填できる。・・・【0282】(第13変形例)また、上述した実施の形態において、内容物充填システム10がボトル成形部30を備えている場合について説明したが、これに限られない。例えば、内容物充填システムが、成形された空のボトル100を外部からエア搬送等で順次受け入れ、受け入れたボトル100を殺菌装置11へ向けて搬送するように構成されていても良い。この場合においても、上述した効果を得ることができる。【0283】(第14変形例)さらに、上述した実施の形態において、内容物充填システム10が、ボトル100に内容物を充填するシステムである場合を例にとって説明したが、これに限られない。・・・また、本実施の形態による内容物充填システム10において、殺菌を必要とする任意の液体(例えば、調味料、アルコール飲料又は乳飲料等)を容器に充填しても良い。」
「【図1】[図:0001436925000002.jpg]」
(イ) 引用文献1の記載から把握できる事項
A 上記(ア)【0028】によれば、「内容物充填システム10」は、「ボトル(容器)100に飲料等の内容物を充填するシステム」であって、「内容物は、製品原液を水によって希釈することによって作製され得る」ものであり、また、「容器」は「缶」であっても良いものである。
そうすると、引用文献1には、「製品原液を水によって希釈することによって作製され得る内容物を、缶であるボトル(容器)100に充填する内容物充填システム10」が記載されているといえる。
B 上記(ア)【0029】によれば、「内容物重点システム10」は、「水を殺菌する水殺菌ライン50と、製品原液を殺菌する原液殺菌ライン70」「を備えている」。
また、上記(ア)【0082】によれば、「水殺菌ライン50」は、「水を非加熱殺菌する殺菌ラインである」。
また、上記(ア)【0141】によれば、「原液殺菌ライン70」は、「製品原液を加熱殺菌する殺菌ラインである」。
そうすると、引用文献1には、「内容物重点システム10」が、「水を非加熱殺菌する水殺菌ライン50と、製品原液を加熱殺菌する原液殺菌ライン70と」を備えることが記載されているといえる。
C 上記(ア)【0029】によれば、「内容物重点システム10」は、「ボトル成形部30と、殺菌装置(容器殺菌装置)11と、エアリンス装置14と」、「水殺菌ライン50及び原液殺菌ライン70にそれぞれ接続された」「充填装置20と、キャップ装着装置(キャッパー、巻締及び打栓機)16」「を備えている」。
また、上記(ア)【0047】によれば、「充填装置20」は、「水及び製品原液をボトル100に充填する装置」である。
また、上記(ア)【0052】によれば、「キャップ装着装置16」は、「ボトル100にキャップ88を装着することにより、ボトル100を閉栓する装置」であり、上記(ア)【0053】によれば、「キャップ88」は、「予めキャップ殺菌装置18によって殺菌され」ている。
なお、上記(ア)【0282】によれば、「内容物充填システム10」は、「ボトル成形部30を備えている」構成に限られず、「受け入れたボトル100を殺菌装置11へ向けて搬送するように構成されていても良い」ものであり、「ボトル100」が「缶」の場合には、「ボトル成型部30」が必要ないことは明らかである。
そうすると、引用文献1には、「内容物重点システム10」が、「殺菌装置11と、エアリンス装置14と、水殺菌ライン50及び原液殺菌ライン70にそれぞれ接続され、水及び製品原液をボトル100に充填する充填装置20と、予め殺菌されたキャップ88を装着することにより、ボトル100を閉栓するキャップ装着装置16を備える」ことが記載されているといえる。
D 上記(ア)【0045】によれば、「殺菌装置11は、殺菌剤をボトル100に噴射することにより、ボトル100を殺菌する装置」であって、「殺菌装置11においては、過酸化水素水溶液のガス又はミストが生成され、ガス又はミストがボトル100の内外面に噴霧される」。
また、上記(ア)【0046】によれば、「エアリンス装置14は、ボトル100に無菌の加熱エア又は常温エアを供給することにより、過酸化水素の活性化を行いつつ、ボトル100内から」「過酸化水素」「を除去する装置である。」
そうすると、引用文献1には、「殺菌装置11は、ボトル100の内外面に過酸化水素水溶液のガス又はミストである殺菌剤を噴霧し、エアリンス装置14は、ボトル100に無菌の加熱エア又は常温エアを供給することにより、過酸化水素の活性化を行いつつ、ボトル100内から過酸化水素を除去する」ことが記載されているといえる。
E 上記(ア)【0270】、【0283】によれば、「内容物充填システム10」は、「炭酸飲料」や「アルコール飲料」をボトル100に充填できる。
そうすると、引用文献1には、「内容物充填システム10」がボトル100に充填する「内容物は、炭酸飲料やアルコール飲料でも良い」ことが記載されているといえる。
(ウ) 引用発明
上記(イ)A~Eによれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「製品原液を水によって希釈することによって作製され得る内容物を、缶であるボトル(容器)100に充填する内容物充填システム10であって、水を非加熱殺菌する水殺菌ライン50と、製品原液を加熱殺菌する原液殺菌ライン70と、殺菌装置11と、エアリンス装置14と、水殺菌ライン50及び原液殺菌ライン70にそれぞれ接続され、水及び製品原液をボトル100に充填する充填装置20と、予め殺菌されたキャップ88を装着することにより、ボトル100を閉栓するキャップ装着装置16を備え、殺菌装置11は、ボトル100の内外面に過酸化水素水溶液のガス又はミストである殺菌剤を噴霧し、エアリンス装置14は、ボトル100に無菌の加熱エア又は常温エアを供給することにより、過酸化水素の活性化を行いつつ、ボトル100内から過酸化水素を除去し、内容物は、炭酸飲料やアルコール飲料でも良い、内容物充填システム10。」
イ 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された特開2000-309310号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、密封容器入り日本酒(清酒又は濁り酒)の製造方法に関し、特に、炭酸ガス含有日本酒を、炭酸ガスの飛散によるガスボリュームの低下や熱による味や香りの低下を招くようなことなく、無菌充填法により容器内に充填・密封して容器詰の製品とするための製造方法に関する。・・・【0025】図1に示した実施形態(第1実施形態)は、火入れ殺菌処理前の生酒に本来含まれている炭酸ガス(発酵により発生して日本酒中に溶解した炭酸ガス)だけを含有する炭酸ガス含有日本酒の缶詰を製造するためのものであって、炭酸ガスのガスボリューム(日本酒全体に対するガスの容積比)が0.1~2.0で、アルコール濃度が10~20%である炭酸ガス含有日本酒の缶詰を製造するためのものである。【0026】この実施形態では、従来の醸造法により製造された炭酸ガスのガスボリュームが0.1~2.0でアルコール濃度が10~20%である火入れ殺菌処理前の生酒を、細管式熱交換器による殺菌装置(特に図示していないが、従来からジュース類の缶詰の製造において一般的に使用されている加熱殺菌装置と同様の構造のもの)を通すことにより、先ず、熱交換器の狭路中(細管中)で70℃達温まで加熱(70℃×約1~2秒間)してから、直ちに(60秒以内、好ましくは30秒以内に)熱交換器の狭路中(細管中)で約5℃に急速冷却させることで、高温で短時間に火入れ殺菌処理を済ませる。【0027】次いで、約5℃に冷却された火入れ殺菌処理済みの炭酸ガス含有日本酒を、予め殺菌処理された完全密閉状態のパイプ内を通して、略無菌雰囲気(空気清浄度がクラス100)のクリーンブース内に設置された充填装置(フィラー)の貯留槽内に送り込み、予め殺菌処理された充填装置により、クリーンブース内で、予め薬液(過酸化水素)で殺菌され洗浄されて連続的に送られてくる空缶内に所定量ずつ充填する。・・・【0032】上記の実施形態(第1実施形態)に示した本発明の缶入り日本酒(日本酒の缶詰)の製造方法に対し、その比較例として、図2は、従来から飲料缶詰の製造方法として広く適用されているホットパック法による缶入り日本酒の製造方法について、図3は、従来から飲料缶詰の製造方法として広く適用されている後殺菌法による缶入り日本酒の製造方法について、また、図4は、火入れ殺菌処理する代わりに膜濾過法によりフィルターを使用して生酒中に含まれる細菌を濾過した除菌済みの炭酸ガス含有日本酒を無菌充填法により缶詰にする缶入り日本酒の製造方法について、それぞれフローチャートにより概略的に示すものである。」
「【図4】[図:0001436925000003.jpg]」
ウ 引用文献3
原査定の拒絶の理由で引用された特開2018-193091号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
「【技術分野】【0001】本発明は、プリフォームを殺菌し、殺菌したプリフォームを無菌雰囲気で成形し、同時に内容物を充填する無菌充填機及び無菌充填方法に関する。・・・【0057】殺菌剤を過酸化水素水とした場合、過酸化水素水のガス等の吹き付け量は以下の通りとなる。殺菌剤ガス吹き付けノズル39からプリフォーム1に吹き付けられる過酸化水素水のガス等により、プリフォーム1に付着する過酸化水素水の量は、過酸化水素水を35質量%含む過酸化水素水に換算して、0.0035μL/cm2~0.35μL/cm2が好ましい。また、プリフォーム1に吹き付けられる過酸化水素水のガス等の過酸化水素水濃度は、2mg/L~20mg/Lが好ましく、より好ましくは、5mg/L~10mg/Lである。」
エ 引用文献4、引用文献4に記載された事項
(ア) 引用文献4の記載
当審において新たに引用する特開2014-50478号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。
「【技術分野】【0001】本発明は、ボトル等の容器を作るためのプリフォームを殺菌する方法並びに飲料等の充填方法及び装置に関する。・・・続きを表示(全50行)【発明が解決しようとする課題】【0006】従来の殺菌剤のスプレーによってプリフォームを殺菌する方法は、殺菌剤がプリフォーム内に残留する可能性があるという問題がある。また、殺菌後にプリフォームをブロー成形すると、成形機の各部が残留殺菌剤により腐食されやすくなるという問題がある。・・・【発明の効果】【0015】本発明によれば、0.5%~15%濃度の過酸化水素を混ぜた水から作った過熱蒸気(S)の吹き付けによってプリフォーム(1)を殺菌処理するので、薬剤をスプレーして殺菌処理する場合のような薬剤の残留の問題はない。また、過熱蒸気(S)には過酸化水素が混じっているので、プリフォーム1に付着した一般細菌、カビ、酵母類のみならず芽胞菌までも殺菌可能である。さらに、水蒸気のドレンを発生させることなく殺菌することができるので、プリフォーム(1)からドレンを除去する工程が不要になり、それだけ容器(2)の製造速度を向上させることができる。・・・【0016】また、過熱蒸気(S)による殺菌処理に先立ちプリフォーム(1)をホットエア(H)により予熱し、プリフォーム(1)の表面温度を高めたうえで、過熱蒸気(S)をプリフォーム(1)に吹き付けるので、プリフォーム(1)を迅速かつ適正に加熱殺菌処理することができ、過熱蒸気(S)の吹き付け量も低減することができる。・・・【0020】図1に示すように、プリフォーム1は、試験管状の有底筒状体として形成される。プリフォーム1は、一般にPETを射出成形することによって作られる。プリフォーム1は、後に図4(E)に示すような容器であるボトル2として成形されるが、このボトル2におけると同様な口部1aをその成形当初に付与される。この口部1aの外周面には雄ネジ3がプリフォーム1の成形と同時に形成される。この雄ネジ3は、図4(G)に示すようにボトル2の口部に被せられるキャップ4の雌ネジと螺合可能である。雄ネジ3の下方にはサポートリング5が形成される。・・・【0032】これにより、予熱用ノズル9aの開口10から噴出したホットエアHはプリフォーム1の口部1aからプリフォーム1内へと入り、プリフォーム1の全内表面に接触し、全内表面を上記所定の温度まで予熱する。【0033】また、予熱用ノズル9bのスリット11から噴出したホットエアHは、軸芯を中心に回転するプリフォーム1の口部1aを含む全外表面に接触し、全外表面を上記所定の温度まで予熱する。・・・【0037】また、過熱蒸気Sをプリフォーム1に吹き付ける時間は、1.0秒~3.0秒であるのが望ましい。1.0秒未満であると、殺菌不良を生じ易くなり、3.0秒より永いとプリフォーム1の口部1aに変形を生じ易くなる。この過熱蒸気Sの吹き付け時間は、上述のごとく予めプリフォーム1の表面を予熱していることから、予熱を行なわない場合に比べ、 2.0秒~4.0秒短縮することが可能である。・・・【0051】まず、図3(A)に示すように、プリフォーム1が正立状態で搬送されつつ、予熱用ノズル9a,9bである筒状ノズルとスリット状ノズルの設置箇所を一定速度で通過する。この通過の際に、上述したように、プリフォーム1内に口部1aから無菌のホットエアHが吹き込まれ、プリフォーム1の外面に無菌のホットエアHが吹き付けられ、プリフォーム1の内外面を含めてプリフォーム1の内外面の全体が短時間内で予熱される。【0052】図示例ではホットエアHの吹き付け時にプリフォーム1は正立状態になっているが、倒立状態であってもかまわない。【0053】続いて、図3(B)に示すように、プリフォーム1が正立状態で搬送されつつ、殺菌用ノズル13a,13bである筒状ノズルとスリット状ノズルの設置箇所を一定速度で通過する。この通過の際に、上述したように、0.5%~15%濃度の過酸化水素を混ぜた水から作った過熱蒸気Sがプリフォーム1内に口部1aから吹き込まれ、プリフォーム1の外面に同様な過熱蒸気Sが吹き付けられ、プリフォーム1の内外面を含めてプリフォーム1の内外面の全体が短時間内で殺菌される。・・・【0072】プリフォーム供給機22におけるプリフォームコンベア25がホイール26に接続される箇所よりもやや上流側には、無菌のホットエアHをプリフォーム1に向かって吹き付ける予熱用ノズル9a,9bが設けられる。これらのノズル9a,9bからプリフォーム1に向かってホットエアHが吹き付けられる(図1、図3(A)参照)。これにより、プリフォーム1の内外面が均等に予熱される。・・・【0097】加熱部30aに入る前に、図1に示す予熱用ノズル9a,9bから、プリフォーム1の内外面に向かって無菌のホットエアHが吹き付けられる(図3(A)参照)。これにより、プリフォーム1の全表面が予熱されて所定温度まで温められる。・・・【実施例1】【0106】3.0%濃度の過酸化水素を混ぜた水からなる過熱水蒸気を誘電加熱方式による過熱蒸気発生装置により水を加熱して発生させた流量0.7g/秒の過熱蒸気を内径8mmφのノズルから、吹き出し温度300℃で、500mL(ミリリットル)PETボトル用プリフォーム及び2L(リットル)PETボトル用プリフォームの各内面に向かって下記の時間噴射した。【0107】この過熱水蒸気の噴射による殺菌効果は、内面に植菌した指標菌で確認したところ表1に示す通りであった。【0108】【表1】[図:0001436925000004.jpg]【0109】なお、表1中、「B.sub」は、Bacillus subtilisの略語であり、「A.niger」は、Aspergillus nigerの略語である。「D」は殺菌効果を示すD値である。また、予熱温度は、プリフォーム内面の温度である。【0110】表1から明らかなように、B.subに対して6.0D以上の殺菌効果を得ようとした場合、PETボトルのプリフォームを予熱した場合は、予熱しない場合よりも過熱蒸気の吹き付け時間を1/5程度に短縮することができた。また、芽胞菌の滅菌も可能であった。」
「【図3】[図:0001436925000005.jpg]」
(イ) 引用文献4に記載された事項
A 公知技術1
上記(ア)【0015】、【0016】、【0037】、【0110】の記載によると引用文献4には次の技術(以下「公知技術1」という。)が記載されているといえる。
「過酸化水素を混ぜた水から作った過熱蒸気(S)の吹き付けによる殺菌処理を予熱してから行うことにより、過熱蒸気(S)の吹き付け量を低減し、過熱蒸気Sの吹き付け時間を短縮すること。」
B 公知技術2
上記(ア)【0020】、【0032】、【0033】、【0051】、【0072】、【0097】、図3(A)の記載によると、引用文献4には次の技術(以下「公知技術2」という。)が記載されているといえる。
「無菌のホットエアHを有底筒状体のプリフォーム1の全内面に接触するように噴出する予熱用ノズル9aと、プリフォーム1の全外表面に接触するように噴出する予熱用ノズル9bとによって、プリフォーム1の全表面を予熱すること。」
(3) 本件補正発明と引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明は、「製品原液を水によって希釈することによって作製され得る内容物を、缶であるボトル(容器)100に充填する内容物充填システム10」である。
そうすると、引用発明と本件補正発明とは、「製品原液を水によって希釈することにより作製される内容物を缶に充填する内容物充填システム」である点で共通する。
イ 引用発明の「原液殺菌ライン70」は、「製品原液を加熱殺菌する」ものであるのに対し、本件補正発明の「原液殺菌ライン」は、「少なくとも、貯留及び濾過のうちの少なくとも1つによって前記製品原液を殺菌」するものである。
そうすると、引用発明の「原液殺菌ライン70」は、本件補正発明の「原液殺菌ライン」と「製品原液を殺菌する」ものである点で共通する。
ウ 引用発明の「水を非加熱殺菌する水殺菌ライン50」は、本件補正発明の「前記水を非加熱殺菌する水殺菌ライン」に相当する。
また、引用発明の「ボトル100」は「缶」であるから、引用発明の「水殺菌ライン50及び原液殺菌ライン70にそれぞれ接続され、水及び製品原液をボトル100に充填する充填装置20」、「予め殺菌されたキャップ88を装着することにより、ボトル100を閉栓するキャップ装着装置16」は、本件補正発明の「前記水殺菌ライン及び前記原液殺菌ラインにそれぞれ接続され、前記水及び前記製品原液を、殺菌された前記缶に充填する充填装置」、「前記水及び前記製品原液が充填された前記缶を、殺菌された蓋により閉栓する蓋装着装置」にそれぞれ相当する。
エ 引用発明の「ボトル100」に充填する内容物は、「炭酸飲料やアルコール飲料」でも良いものである。
そうすると、引用発明と本件補正発明は、「前記製品原料は、アルコールを含み」、「前記内容物は、アルコール飲料」である点で共通する。
オ 引用発明の「殺菌装置11」は、「ボトル100の内外面に過酸化水素水溶液のガス又はミストである殺菌剤を噴霧」するものであるから、ボトル100を殺菌するものであって、ボトル100に対して殺菌剤を噴霧する殺菌剤噴霧部を有することは自明である。
また、引用発明の「エアリンス装置14」は、「ボトル100に無菌の加熱エア又は常温エアを供給することにより、過酸化水素の活性化を行いつつ、ボトル100内から過酸化水素を除去」するものである。
そうすると、引用発明の「殺菌装置11」及び「エアリンス装置14」は、本件補正発明の「容器殺菌装置」に対応し、「前記缶を殺菌する容器殺菌装置」であって、「前記缶に対して殺菌剤を噴霧する第1殺菌剤噴霧と、前記第1殺菌剤噴霧部で前記殺菌剤が噴霧された前記缶をエアリンスする第1エアリンス部とを有」する点で共通する。
また、引用発明の「殺菌剤」と本件補正発明の「殺菌剤」は、「過酸化水素水溶液のガス又はミストである」点で一致する。
カ 以上によれば、本願発明と引用発明は、以下の一致点、相違点を有する。
[一致点]
製品原液を水によって希釈することにより作製される内容物を缶に充填する内容物充填システムであって、
前記缶を殺菌する容器殺菌装置と、
前記水を非加熱殺菌する水殺菌ラインと、
前記製品原液を殺菌する原液殺菌ラインと、
前記水殺菌ライン及び前記原液殺菌ラインにそれぞれ接続され、前記水及び前記製品原液を、殺菌された前記缶に充填する充填装置と、
前記水及び前記製品原液が充填された前記缶を、殺菌された蓋により閉栓する蓋装着装置とを備え、
前記製品原液は、アルコールを含み、
前記内容物は、アルコール飲料であり、
前記容器殺菌装置は、
前記缶に対して殺菌剤を噴霧する第1殺菌剤噴霧部と、
前記第1殺菌剤噴霧部で前記殺菌剤が噴霧された前記缶をエアリンスする第1エアリンス部とを有し、
前記殺菌剤は、過酸化水素水溶液のガス又はミストである、
内容物充填システム。」
[相違点]
(相違点1)
本件補正発明の「原液殺菌ライン」は、「少なくとも、貯留及び濾過のうちの少なくとも1つ」によって製品原液を殺菌するものであるのに対し、引用発明の「原液殺菌ライン70」は、「加熱殺菌」によって製品原液を殺菌するものである点。
(相違点2)
本件補正発明の「内容物」は、「酸性かつ炭酸ガスを含み、かつ、pHが4.6未満であるアルコール飲料」であるのに対し、引用発明の「内容物」は、「アルコール飲料」であるものの、「酸性かつ炭酸ガスを含み、かつ、pHが4.6未満である」ことが特定されていない点。
(相違点3)
本件補正発明の「容器殺菌装置」は、「前記缶を加熱する第1加熱部」を有し、「前記第1加熱部は、前記缶の内面に対して加熱エアを吹き付ける内面用ホットエアノズルと、前記缶の外面に対して加熱エアを吹き付ける外面用ホットエアノズルであって、前記内面用ホットエアノズルとは異なる外面用ホットエアノズルとを含んでおり」、「第1殺菌剤噴霧部」が、加熱された缶に対して殺菌剤を噴霧するのに対し、引用発明はそのように構成されていない点。
(相違点4)
本件補正発明の「缶の内面」は、「エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂又はポリ塩化ビニルでコーティングされて」いるのに対して、引用発明の「缶であるボトル(容器)100」の内面は、コーティングされているのか否か不明である点。
(相違点5)
本件補正発明は、「第1殺菌剤噴霧部」において、「前記缶に対する前記殺菌剤の付着量は、0.01μL/cm2以上0.4μL/cm2以下である」のに対し、引用発明はそのように構成されていない点。
(4) 相違点についての判断
ア 相違点1について
濾過により液体の殺菌を行うことは、引用文献1の【0123】、引用文献2の【0032】に記載されているように周知技術であるから、引用発明に当該周知技術を適用し、濾過によって製品原液を殺菌する構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点2について
引用発明の内容物は、「炭酸飲料」や「アルコール飲料」を含む。そして、酸性かつ炭酸ガスを含み、かつ、pHが4.6未満であるビール類等のアルコール飲料は本願明細書の【0141】に記載されたように一般的なものであるから、引用発明の内容部を、酸性かつ炭酸ガスを含み、かつ、pHが4.6未満のアルコール飲料とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
ウ 相違点3について
殺菌剤を噴霧して殺菌を行うシステムにおいて、殺菌剤の噴霧量を低減し、殺菌剤の噴霧時間を短縮することは一般的な課題であり、缶であるボトル(容器)100の内外面に過酸化水素水溶液のガス又はミストである殺菌剤を噴霧することによって殺菌処理を行う引用発明においても、殺菌剤の噴霧量を低減し、殺菌剤の噴霧時間を短縮するという動機を有するから、引用発明に、公知技術1を採用して、殺菌処理の前に缶であるボトル(容器)100に対して予熱を行い、予熱された缶であるボトル(容器)100の内外面に過酸化水素水溶液のガス又はミストである殺菌剤を噴霧することは当業者が容易に想到し得る事項といえる。
そして、缶であるボトル(容器)100が有底筒状体であることを踏まえれば、引用発明において予熱を行う構成として、同様の有底筒状体を予熱する公知技術2に係る、内面用ホットエアノズルといえる予熱用ノズル9aと、外面用ホットエアノズルといえる予熱用ノズル9bを含む構成を採用することは、当業者が適宜なし得る事項に過ぎない。
エ 相違点4について
缶の耐食性を強化するため、缶の内容物の風味を保持するため等の目的で、缶の内面にPET樹脂等をコーティングすることは、一般に行われている周知技術である。したがって、引用発明において当該周知技術を適用し、相違点4に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
オ 相違点5について
引用発明の殺菌装置11において、殺菌剤をどの程度の付着量とするかは、殺菌剤の濃度、求められる殺菌効果、許容可能な殺菌剤の残留量等に応じて、当業者が適宜決定すべき設計的事項であって、引用文献3の【0057】の殺菌剤としても過酸化水素水の付着量について0.0035μL/cm2~0.35μL/cm2が好ましいとの記載を踏まえれば、引用発明において、相違点5に係る殺菌剤の付着量とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
カ 小括
以上のとおりであるから、本件補正発明は、引用発明、引用文献4に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(5) 請求人の主張について
請求人は、審判請求書の「4.(2)引用文献との対比」において、本願発明は、「前記缶を加熱する第1加熱部」を有し、「第1加熱部が、缶の内面に対して加熱エアを吹き付ける内面用ホットエアノズルと、缶の外面に対して加熱エアを吹き付ける外面用ホットエアノズルであって、内面用ホットエアノズルとは異なる外面用ホットエアノズルとを含んでいること」を特徴とするものであり、当業者が容易に発明することができたものではない旨主張する。
しかしながら、上記(4)ウで示したように、引用発明に引用文献4に記載された事項を適用し、相違点3に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことであり、請求人の上記主張は採用できない。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和6年7月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものを含むものである。
引用文献1.特開2023-59187号公報
引用文献2.特開2000-309310号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、2の記載事項、引用文献1に記載された発明(引用発明)は、上記第2[理由]2(2)ア、イに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2[理由]2(3)で検討した本件補正発明から、「内容物充填システム」について、「製品原液を水によって希釈することにより作製される内容物を缶に充填する」ものであること、「前記内容物は、酸性かつ炭酸ガスを含み、かつ、pHが4.6未満であるアルコール飲料」であること、「前記容器殺菌装置は、前記缶を加熱する第1加熱部と、加熱された前記缶に対して殺菌剤を噴霧する第1殺菌剤噴霧部と、前記第1殺菌剤噴霧部で前記殺菌剤が噴霧された前記缶をエアリンスする第1エアリンス部とを有」すること、「前記缶の内面は、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂又はポリ塩化ビニルでコーティングされて」いること、「前記第1加熱部は、前記缶の内面に対して加熱エアを吹き付ける内面用ホットエアノズルと、前記缶の外面に対して加熱エアを吹き付ける外面用ホットエアノズルであって、前記内面用ホットエアノズルとは異なる外面用ホットエアノズルとを含んで」いること、「前記殺菌剤は、過酸化水素水溶液のガス又はミストであり、前記第1殺菌剤噴霧部において、前記缶に対する前記殺菌剤の付着量は、0.01μL/cm2以上0.4μL/cm2以下である」ことを、それぞれ削除したものである。
そして、本願発明と引用発明とを対比すると、上記第2[理由]2(3)で示した相違点1が存在し、上記第2[理由]2(4)アで検討したとおり、引用発明に周知技術を適用し、相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-001721