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特許拒絶査定不服審判

2023-012462

情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム

審判番号
2023-012462
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-190629
請求日
2023年07月25日
審決日
2024年06月05日
公報発行日
2024年08月30日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】LINEヤフー株式会社
  • 【請求人代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 伏本 正典
  • 審判官 相崎 裕恒
  • 審判官 安井 雅史
分類
P18 .55 -Z (G06Q) / P18 .572-Z (G06Q) / P18 .575-Z (G06Q) / P18 .537-Z (G06Q) / P18 .121-Z (G06Q)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-190629「情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 4月30日出願公開、特開2021- 67985〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和元年10月18日の特許出願であって、同4年11月29日付けで拒絶理由が通知され、同5年1月5日に意見書及び手続補正書が提出され、同年4月19日付けで拒絶査定がなされ、その謄本が送達された。 その後、同年7月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされた。 第2 令和5年7月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和5年7月25日にされた手続補正を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)令和5年7月25日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)による補正前及び補正後の請求項1の記載は、それぞれ、次のア及びイに示すとおりである。(補正に係る記載に下線を付した。) ア 補正前の請求項1 ユーザとともに移動する端末装置が検知した検知情報を取得する取得部と、 前記取得部が取得した検知情報に対応する対象物を推定する推定部と を備え、 前記端末装置が検知した検知情報は、前記端末装置のセンサを利用したPDR技術を用いて検出された前記端末装置の屋内位置や移動方位に関するPDR情報である ことを特徴とする情報処理装置。 イ 補正後の請求項1 ユーザが対象物の購入を検討したときに、前記ユーザとともに移動する端末装置が検知した検知情報を取得する取得部と、 前記取得部が取得した検知情報に対応する対象物を推定する推定部と を備え、 前記取得部は、対象物の購入の検討として、対象物が陳列された陳列棚の前での停止、減速又は所定速度以下での通過、前記ユーザが対象物を手に取ったこと、陳列棚の周囲でのカートの積載物の質量の増減又は変化量により対象物がカートに入れられたこと、対象物を手に取らずとも所定時間その場に留まってみたこと、あるいは対象物が陳列された陳列棚に何度も接近したことを前記端末装置が検出した際に、前記端末装置から、前記端末装置が検知した検知情報として、前記端末装置のセンサを利用したPDR技術を用いて検出された前記端末装置の屋内位置や移動方位に関するPDR情報と前記ユーザのモーションに関するセンサ情報を取得し、 前記推定部は、前記PDR情報及び前記ユーザのモーションに関するセンサ情報に基づいて、前記ユーザが複数段を有する所定の陳列棚の何段目にある所定の商品を手に取ったかを判断し、対象物が前記所定の商品であると推定する ことを特徴とする情報処理装置。 (2)上記(1)によれば、本件補正は、次の補正事項1~3を含む。 ア 補正事項1 「情報処理装置」の「取得部」が「ユーザとともに移動する端末装置」(以下「端末装置」という。)が「検知」した「検知情報」を「取得する」タイミングについて、補正前には特定していなかったものを、補正後には「ユーザが対象物の購入を検討したとき」であるとし、さらに、補正後においては、「対象物の購入の検討として」、「対象物が陳列された陳列棚の前での停止、減速又は所定速度以下での通過、前記ユーザが対象物を手に取ったこと、陳列棚の周囲でのカートの積載物の質量の増減又は変化量により対象物がカートに入れられたこと、対象物を手に取らずとも所定時間その場に留まってみたこと、あるいは対象物が陳列された陳列棚に何度も接近したこと」を「前記端末装置が検出した際に」取得する旨を特定する補正。 イ 補正事項2 「端末装置」が「検知」した「検知情報」について、補正前には「前記端末装置のセンサを利用したPDR技術を用いて検出された前記端末装置の屋内位置や移動方位に関するPDR情報」としていたものを、補正後には「前記端末装置のセンサを利用したPDR技術を用いて検出された前記端末装置の屋内位置や移動方位に関するPDR情報と前記ユーザのモーションに関するセンサ情報」とする補正。 ウ 補正事項3 「情報処理装置」の「推定部」における「前記取得部が取得した検知情報に対応する対象物が前記所定の商品であると推定」する処理について、補正前には、(「取得部」が「取得」した「検知情報」である)「前記端末装置のセンサを利用したPDR技術を用いて検出された前記端末装置の屋内位置や移動方位に関するPDR情報」に「対応する対象物」を「推定」するものであったのを、補正後には、(「取得部」が「取得」した「検知情報」である)「前記PDR情報及び前記ユーザのモーションに関するセンサ情報」に基づいて「前記ユーザが複数段を有する所定の陳列棚の何段目にある所定の商品を手に取ったかを判断し」て「推定」するものと特定する補正。 2 新規事項追加禁止要件について (1)補正事項1~3によれば、補正後の請求項1の「情報処理装置」について、次のことがいえる。 ア 補正事項1によれば、補正後の情報処理装置(取得部)が「端末装置」が「検知」した「検知情報」を取得するタイミングは、「ユーザ」が「対象物の購入を検討したとき」であり、さらに、ユーザとともに移動する端末装置は、「対象物が陳列された陳列棚の前での停止、減速又は所定速度以下での通過」、「前記ユーザが対象物を手に取ったこと」、「陳列棚の周囲でのカートの積載物の質量の増減又は変化量により対象物がカートに入れられたこと」、「対象物を手に取らずとも所定時間その場に留まってみたこと」あるいは「対象物が陳列された陳列棚に何度も接近したこと」のいずれかの事象を「対象物の購入の検討として」検出するものとなっており、補正事項1は、文言上、補正後の情報処理装置における「検知情報」の「取得」のタイミングとして、「端末装置」における「対象物の購入の検討として」の事象の「検出」がなされることを特定しており、そのように検出される事象には、「前記ユーザが対象物を手に取ったこと」以外の事象(「対象物が陳列された陳列棚の前での停止、減速又は所定速度以下での通過」、「陳列棚の周囲でのカートの積載物の質量の増減又は変化量により対象物がカートに入れられたこと」、「対象物を手に取らずとも所定時間その場に留まってみたこと」あるいは「対象物が陳列された陳列棚に何度も接近したこと」のいずれかの事象)が含まれている。 このことから、補正後の情報処理装置は、「前記ユーザが対象物を手に取ったこと」との事象が「対象物の購入の検討として」、「ユーザとともに移動する端末装置」において「検出」されることで「ユーザ」が「対象物の購入を検討したとき」に、「前記端末装置が検知した検知情報」を「取得」する情報処理装置(以下「補正後装置A」という。)又は、「前記ユーザが対象物を手に取ったこと」以外の事象が「対象物の購入の検討として」、「ユーザとともに移動する端末装置」において「検出」されることで「ユーザ」が「対象物の購入を検討したとき」に、「前記端末装置が検知した検知情報」を「取得」する情報処理装置(以下「補正後装置B」という。)のいずれかとなる。 そして、このうち、補正後装置Bにおいては、「対象物の購入の検討として」「検出」される事象が「前記ユーザが対象物を手に取ったこと」以外の事象であることから、ユーザによる「購入」の「検討」がなされたものとされる「対象物」(端末装置が検出する事象に基づいて「ユーザ」によって「購入」の「検討」がなされたとされる対象物)は、ユーザが「手に取った」対象物ではないことになる。例えば、「対象物が陳列された陳列棚」の前での「所定の速度以下での通過」の事象を「対象物の購入の検討として」端末装置が検出することによる「ユーザが対象物の購入を検討したとき」というタイミングで検知情報を取得する補正後装置Bについてみると、ユーザが「手に取った」対象物ではなく、ユーザが「所定の速度以下での通過」をした陳列棚に陳列された商品のすべてがユーザによって「購入」の「検討」がなされた対象物となる。 イ 補正事項2及び補正事項3によれば、補正後の情報処理装置は、「検知情報」(「端末装置」が「検知」した「検知情報」)として「前記端末装置のセンサを利用したPDR技術を用いて検出された前記端末装置の屋内位置や移動方位に関するPDR情報と前記ユーザのモーションに関するセンサ情報」を取得し、取得された「PDR情報」及び「ユーザのモーションに関するセンサ情報」に基づいて「前記ユーザが複数段を有する所定の陳列棚の何段目にある所定の商品を手に取ったかを判断し」て、「前記取得部が取得した検知情報に対応する対象物」についての「推定」を行う。文言上、この「判断」は、陳列棚の各段の商品が「所定の商品」であることを前提として、「取得部が取得した検知情報」である「PDR情報」及び「ユーザのモーションに関するセンサ情報」(以下「取得されたモーションに関するセンサ情報等」という。)に対応する対象物について、これが「陳列棚の何段目」の「所定の商品」であるかに応じたいずれの「所定の商品」を「手に取った」かの「判断」を行うものである。 補正事項2及び補正事項3においては、補正後の情報処理装置が補正後装置Aと補正後装置Bのいずれであっても、「前記取得部が取得した検知情報に対応する対象物」についての推定にあたって、取得されたモーションに関するセンサ情報等に対応する対象物が「所定の商品」であるとの「判断」を経て「推定」がなされることが特定されている。 ウ 補正後装置Aにおいては、「ユーザ」が対象物を「手に取った」との事象は、「対象物の購入の検討として」、「ユーザとともに移動する端末装置」において「検出」される。そして、この「検出」による「対象物の購入を検討したとき」というタイミングで「取得」した「検知情報」についての「検知情報に対応する対象物」は、その後に「手に取」られることで「購入」が「検討」された対象物であると判断され、この「購入」が「検討」された対象物が「所定の商品」であるとの「推定」がされているといえる。 エ これに対し、補正後装置Bにおいては、「対象物の購入を検討したとき」というタイミングで「取得」した「検知情報」についての「検知情報に対応する対象物」が「手に取」られたとの判断は、その対象物が「購入」が「検討」されたとの判断を含まないものとなっている。 例えば、「対象物が陳列された陳列棚」の前での「所定の速度以下での通過」の事象を「対象物の購入の検討として」端末装置が検出することによる「ユーザが対象物の購入を検討したとき」というタイミングで検知情報を取得する補正後装置Bについてみると、ユーザが「手に取った」対象物でなくても、ユーザが「所定の速度以下での通過」をした陳列棚に陳列された商品は、いずれも「購入」の「検討」がなされた対象物である。 オ 以上を踏まえると、補正後の情報処理装置は、「前記ユーザが対象物を手に取ったこと」以外の事象が「対象物の購入の検討として」、「ユーザとともに移動する端末装置」において「検出」されることで「ユーザ」が「対象物の購入を検討したとき」に、「前記端末装置が検知した検知情報」を「取得」する補正後装置Bであり得る。そして、この補正後装置Bにおける「推定」のための「判断」は、「対象物の購入を検討したとき」というタイミングで「取得」した「検知情報」についての「検知情報に対応する対象物」が「手に取」られたとの判断であるものの、「前記ユーザが対象物を手に取ったこと」以外の事象の検出をもって対象物の「購入」の「検討」としていることから、その対象物の「購入」が「検討」されたとの判断を含まないものとなっている。 (2)補正事項1~3に関連する、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の記載は、次のとおりである。(下線は当審で付した。) 「【0013】 図1に示す情報処理装置100は、例えばデスクトップPC(Personal Computer)、サーバ、あるいはメインフレーム又はワークステーション等である。また、情報処理装置30は、分散コンピューティングやクラウドコンピューティングを実現する複数台のサーバのうちの一台でもよい。情報処理装置100は、1又は複数のユーザ端末10と通信し、ユーザ端末10の屋内位置や移動方位に関するPDR情報に基づいて、ユーザUが興味を持った商品を推定し、さらに推定された商品からユーザUが興味を持ちそうな商品を予測し、これらの商品の関連情報をユーザ端末10に提供する。 【0014】 図1に示すように、ユーザ端末10は、そのユーザUとともに店舗内を巡回し、例えば店舗内で第1商品が陳列された陳列棚に接近し(ステップS1)、ユーザUが第1商品の購入を検討したときに(ステップS2)、ユーザ端末10の屋内位置や移動方位に関する第1のPDR情報を、実施形態に係る情報処理装置100に通知する(ステップS3)。・・・ 【0015】 例えば、ユーザ端末10は、第1商品が陳列された陳列棚の前で停止/減速したり、その陳列棚の前を低速(所定速度以下)で通過したりしたときに、第1商品が陳列された陳列棚への接近や、第1商品の購入の検討が行われたと判断し、その時点で第1のPDR情報を情報処理装置100に通知してもよい。また、第1商品の購入の検討は、第1商品を実際に購入したか否かは問わず、例えば第1商品を手に取ってみたり、カートに入れてみたりしたこと、もしくは第1商品を手に取らずとも所定時間その場に留まってみたことや、第1商品が陳列された陳列棚に何度も接近することも含む。なお、ユーザ端末10がカートと連動している場合には、陳列棚の周囲でのカートの積載物の質量の増減/変化量により、第1商品がカートに入れられたことを検出し、その時点で第1のPDR情報を情報処理装置100に通知してもよい。 【0016】 情報処理装置100は、ユーザ端末10から第1のPDR情報の通知を受けると、第1のPDR情報から第1商品を推定する(ステップS4)。例えば、情報処理装置100は、第1のPDR情報と、店舗内の商品の陳列場所情報とに基づいて、ユーザUが購入を検討した商品が第1商品であると推定する。このとき、情報処理装置100は、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストア、量販店、ドラッグストア等の店舗内のように陳列棚が通路を挟んで向かい合っている場合であっても、第1のPDR情報に基づいて、ユーザ端末10の屋内位置や移動方位を特定し、ユーザUがどれだけの時間、何の商品を見ていたのか、陳列棚単位での興味度から第1商品を推定する。また、ユーザUが店舗に入場(入店)してから最初に向かった/購入を検討した商品を知ることで、ユーザUが最も興味を持っている商品や、ユーザUの嗜好を推定することができる。 【0017】 なお、一般的には、店舗内の陳列棚には1つの商品に限らず複数の商品が陳列されていることが多いため、通常は、この時点で第1商品を特定することは困難である。また、例えば陳列棚の3段目に焼きそばの麺、4段目にうどんの麺が陳列されている場合には、位置情報だけでは、どちらの商品の購入を検討したのか判断できない。したがって、第1商品は、焼きそばの麺又はうどんの麺のいずれかであると漠然と推定することになる。このとき、情報処理装置100は、さらに第1のPDR情報やユーザUのモーションに関するセンサ情報等に基づいて、ユーザUが陳列棚の3段目にある焼きそばの麺を手に取ったと判断し、第1商品が焼きそばの麺であると推定するようにしてもよい。」 「【0063】 (PDR履歴情報122について) PDR履歴情報122は、ユーザ端末10から通知されたPDR情報を蓄積する。ここで、図6に、実施形態に係るPDR履歴情報122の一例を示す。図6は、実施形態に係るPDR履歴情報122の一例を示す図である。図6に示した例では、PDR履歴情報122は、「端末ID」、「ユーザID」、「店舗ID」、「PDR情報」、「推定商品」、「予測商品」、「提供情報」といった項目を有する。また、「PDR情報」の項目は、「取得日時」、「位置」、「方位」、「各種センサ情報」といった小項目を有する。 ・・・ 【0068】 「各種センサ情報」は、位置が検知された際に、各種センサによって検知された情報を示す。図6では、各種センサ情報を「X1」といった概念で表記しているが、実際には、各種センサ情報の項目には、ユーザUが商品を見たり手に取ったりした際のユーザ端末10の加速度や傾き、ユーザUが商品をカートに入れた際のカートの記載物の質量の変化量等、各種センサによって取得された具体的な情報が記憶される。」 「【0088】 (推定部132について) 推定部132は、ユーザ端末10から通知されたPDR情報と陳列場所情報121に基づいて、ユーザUが購入を検討した商品を推定する。例えば、推定部132は、陳列場所情報121の中から、第1のPDR情報に対応する商品の情報を検索し、第1のPDR情報に対応する商品があれば、その商品が、ユーザUが購入を検討した第1商品であると推定する。その結果として、推定部132は、PDR履歴情報122の第1のPDR情報に対応する「推定商品」の項目に候補となる第1商品の商品ID「C1、C4」を記憶する。また、推定部132は、陳列場所情報121の中から、第2のPDR情報に対応する商品の情報を検索し、第2のPDR情報に対応する商品があれば、その商品が、ユーザUが購入を検討した第2商品であると推定する。その結果として、推定部132は、PDR履歴情報122の第2のPDR情報に対応する「推定商品」の項目に候補となる第2商品の商品ID「C2」を記憶する。 ・・・ 【0090】 さらに、推定部132は、PDR情報から推定された商品と、記憶部120に記憶されている学習モデル123とに基づいて、PDR情報から推定された商品をより高精度に推定する。例えば、推定部132は、学習モデル123を利用して、推定した第2商品から、第1商品の推定の精度を向上させる。具体的には、第1商品に該当する商品の候補が複数存在していても(商品ID「C1、C4」)、推定した第2商品(商品ID「C2」)と、学習モデル123に記憶されている第1商品と第2商品との組合せに関する情報(モデルID「M1」)とに基づいて、第1商品に該当する商品を絞り込む(商品ID「C1」)。その結果として、推定部132は、PDR履歴情報122の「推定商品」の項目の内容を、絞り込んだ第1商品の商品ID「C1」に更新する。」 (3)以下に示すとおり、当初明細書における「推定」(及びそのための「判断」)は、いずれも、ユーザが「購入」を「検討」した商品やその上位概念であるユーザが「興味を持った商品」(以下「ユーザが購入を検討した商品等」という。)についての「推定」(及びそのための「判断」)であり、ユーザが購入を検討した商品等を推定するために、「取得」した「検知情報」に「対応」する「対象物」が「手に取」られたことを判断することは、記載されているものの、ユーザが購入を検討した商品等の推定以外の目的で「取得」した「検知情報」に「対応」する「対象物」が「手に取」られたと判断することや、このように判断された対象物について所定の商品であると「推定」することは、記載されていない。 ア 上記(2)によれば、当初明細書等の段落【0014】~【0017】の記載において、「ユーザUが興味を持った商品を推定」すること(段落【0013】)の例として、「ユーザU」による「(第1)商品」の「購入」の「検討」を示す例が記載されており、具体的には、「第1商品を手にとってみ」ることが、「第1商品」の「購入」の「検討」の例であることが示されている。 このことから、当初明細書等には、上記(1)アにおける「補正後装置A」に係る記載に対応する内容は、記載されているといえる。 イ また、上記アの記載のうち段落【0015】には、「例えば、ユーザ端末10は、第1商品が陳列された陳列棚の前で停止/減速したり、その陳列棚の前を低速(所定速度以下)で通過したりしたときに、第1商品が陳列された陳列棚への接近や、第1商品の購入の検討が行われたと判断し、その時点で第1のPDR情報を情報処理装置100に通知してもよい。」との記載がある。 この記載は、情報処理装置が、ユーザとともに移動する端末装置における所定の事象(陳列棚の前で停止/減速」したり、「陳列棚の前を低速(所定速度以下)で通過」したこと)の検出のタイミングで、端末装置が検知した検知情報である「第1のPDR情報」を情報処理装置が取得する旨を示すものといえる。 そして、この記載では、「ユーザ端末10」が所定の事象(「陳列棚の前で停止/減速」したり、「陳列棚の前を低速(所定速度以下)で通過」したこと)を「陳列棚への接近」と判断してこれを検出する場合と「商品の購入の検討が行われた」と判断してこれを検出する場合との2つの場合分けが示されており、このうち、所定の事象を「商品の購入の検討が行われた」と判断してこれを検出する場合についての記載は、上記(1)アにおける「補正後装置B」に係る記載に対応するものといえる。 この点、上記(1)アに示したとおり、補正事項1は、文言上、補正後の情報処理装置における「取得」に先だって、「端末装置」における「対象物の購入の検討として」の事象の「検出」がなされることを特定しており、このことから、当該所定の事象を単に「陳列棚への接近」と判断し、端末装置からの検知情報の取得後に「対象物の購入の検討が行われた」と判断して推定するものは、補正後の情報処理装置から明示的に排除されている。よって、上記の2つの場合分けのうち、「ユーザ端末10」が当該所定の事象を「陳列棚への接近」と判断してこれを検出する場合を前提とした記載は、補正後の情報処理装置についての記載ではないことになる。 ウ 上記(1)イの「前記取得部が取得した検知情報に対応する対象物」についての推定にあたって、取得されたモーションに関するセンサ情報等に対応する対象物が「所定の商品」であるとの「判断」を経て「推定」がなされることについては、段落【0017】に関連する記載があるのみである。 段落【0017】には、「一般的には、店舗内の陳列棚には1つの商品に限らず複数の商品が陳列されていることが多いため、通常は、この時点で第1商品を特定することは困難である。」「例えば陳列棚の3段目に焼きそばの麺、4段目にうどんの麺が陳列されている場合には、位置情報だけでは、どちらの商品の購入を検討したのか判断できない。・・このとき、情報処理装置100は、さらに第1のPDR情報やユーザUのモーションに関するセンサ情報等に基づいて、ユーザUが陳列棚の3段目にある焼きそばの麺を手に取ったと判断し、第1商品が焼きそばの麺であると推定するようにしてもよい。」と記載されており、「第1のPDR情報やユーザUのモーションに関するセンサ情報等に基づいて、ユーザUが陳列棚の3段目にある焼きそばの麺を手に取った」との「判断」は、「陳列棚の3段目に焼きそばの麺、4段目にうどんの麺が陳列されている場合には、位置情報だけでは、どちらの商品の購入を検討したのか判断できない」という課題に対する解決手段であるとされているのであって、取得されたモーションに関するセンサ情報等に対応する対象物についての「判断」は、どちらの商品の「購入」を「検討」したのかの判断として行われることが明示されている。 この段落【0017】の記載は、「位置情報」に基づいて「陳列棚への接近」がなされたとの判断によっては「どちらの商品の購入を検討したのか判断できない」ことを課題として記載しているともいえ、そもそも、上記アに示した段落【0015】の2つの場合分けのうち、「陳列棚の前で停止/減速」したり「陳列棚の前を低速(所定速度以下)で通過」したことを「商品の購入の検討」ではなく単に「陳列棚への接近」と判断する場合に対応しており、補正後装置Bにおける、「前記ユーザが対象物を手に取ったこと」以外の事象(「対象物が陳列された陳列棚の前での停止、減速又は所定速度以下での通過」、「陳列棚の周囲でのカートの積載物の質量の増減又は変化量により対象物がカートに入れられたこと」、「対象物を手に取らずとも所定時間その場に留まってみたこと」あるいは「対象物が陳列された陳列棚に何度も接近したこと」のいずれかの事象)が「対象物の購入の検討として」、「ユーザとともに移動する端末装置」において「検出」されることと相容れない記載となっているともいえる。 エ その他、当初明細書等には、「推定部132」について、「ユーザUが購入を検討した商品を推定する」(段落【0088】)ものであること、その推定の精度を向上させるために「学習モデル」(【0090】)を用いた推定をも行うこと、さらに、推定に用いる「PDR履歴情報122」は、「PDR情報」の項目として「各種センサ情報」を含む(【0063】【0068】)ものの、この「PDR履歴情報122」も、「推定部132」における「ユーザUが購入を検討した商品を推定する」(段落【0088】)ために用いられることが記載されているところ、これらのいずれの記載も、情報処理装置が端末装置からの検知情報の取得後にその検知情報(PDR履歴情報122等)に基づいてユーザが「第1の商品」等の所定の商品の購入を検討したことを推定する旨を示す記載であって、その対象物が「購入」が「検討」されたとの判断を含まない「推定」する旨の記載でないし、「端末装置」における「対象物の購入の検討として」の事象の「検出」のタイミングで取得された検知情報に基づいてその検知情報に基づく推定を行う旨の記載でもない。 なお、段落【0090】には、「推定部132」が「PDR履歴情報122の「推定商品」の項目の内容を、絞り込んだ第1商品の商品ID「C1」に更新する」等の記載があり、その意味では、ユーザによって「購入」の「検討」がなされた対象物でないものの「推定」ないしユーザによって「購入」の「検討」がなされた対象物を2段階以上の段階で行う旨の記載はあるものの、この段落の記載も、検知情報を取得した側の情報処理装置における「推定」を踏まえてユーザによって「購入」の「検討」がなされたものとされた「第1商品と第2商品との組合せに関する情報」を用いた処理を示すものであって、「端末装置」における「対象物の購入の検討として」の事象の「検出」のタイミングで取得された検知情報に基づいてその対象物が「購入」が「検討」されたとの判断を含まない推定を行う旨の記載ではない。 オ その他、当初明細書等の記載は、いずれも、ユーザ端末において「商品の購入の検討が行われたと判断」された商品についての「推定」を行う旨を示す記載であるということはできても、ユーザ端末において「商品の購入の検討が行われたと判断」された商品についてと別の商品についての「推定」を行う旨を示すものではなく、ユーザが購入を検討した商品等の推定以外の目的での、「取得」した「検知情報」に「対応」する「対象物」が「手に取」られたとの判断や所定の商品であるとの推定を行う旨を示す記載は、見当たらない。 (4)さらには、当初明細書等においては、ユーザが「購入」を「検討した」り「興味を持った」との判断を含まない推測処理として、「ユーザUが興味をもちそうな商品」の「予測」の処理が記載されているところ、当初明細書等において、「予測」は「推定」と異なる処理として明確に区別されており、このことに照らせば、ユーザが「購入」を「検討した」との判断を含まない「推定」を行うことは、当初明細書等の記載から当業者において自明な事項であるともいえない。 すなわち、当初明細書等においては、ユーザにより「購入」の「検討」がなされた「商品」の上位概念として「推定」の対象を示す「ユーザUが興味を持った商品」(段落【0013】)の文言が用いられている。そして、ユーザにより「購入」の「検討」がなされた「商品」等の「ユーザUが興味を持った商品」の文言は、「推定」ではなく「予測」の対象を示す「ユーザUが興味を持ちそうな商品」という文言と対比されるものとして用いられており、「ユーザUが興味を持った商品」の「推定」と「ユーザUが興味を持ちそうな商品」の「予測」とは、明確に文言が使い分けられており、「予測」に係る「予測商品」や「予測部133」(段落【0071】、【0091】、摘記省略)は、「推定」に係る「推定商品」や「推定部132」と明確に異なるものとされている。 そして、「ユーザUが・・・購入を検討した商品を知ることで、ユーザUが最も興味を持っている商品・・・を推定することができる。」(段落【0016】)との記載(「購入を検討した商品」からこれとは別の「ユーザU」が「興味を持っている商品」を「推定」する旨を示す記載)と段落【0013】の記載からみて、ユーザが「購入」を「検討」した商品やその上位概念であるユーザが「購入」を「検討」した「商品」を含めた「興味を持った商品」(以下「ユーザが購入を検討した商品等」という。)の「推定」の結果を用いて行われる「ユーザUが興味をもちそうな商品」の「予測」をすることは記載されており、この「予測」は、ユーザが「購入」を「検討した」り「興味を持った」との判断を含まない推測処理であるといえる。 しかしながら、上記のとおり、当初明細書等においては、「ユーザUが興味を持った商品」の「推定」と「ユーザUが興味を持ちそうな商品」の「予測」とは、明確に文言が使い分けられているのであって、「予測」の処理を「推定」の処理とすることが想定されていないことは明らかである。 (5)以上をまとめると、次のとおりである。 本件補正は、請求項1記載の情報処理装置を「前記ユーザが対象物を手に取ったこと」以外の事象が「対象物の購入の検討として」、「ユーザとともに移動する端末装置」において「検出」されることで「ユーザ」が「対象物の購入を検討したとき」に、「前記端末装置が検知した検知情報」を「取得」して、ユーザによって「購入」の「検討」がなされた対象物についてではなく、取得されたモーションに関するセンサ情報等に対応する対象物についての「推定」を行う補正後装置Bを含む情報処理装置とするものであり、この補正後装置Bは、「対象物の購入を検討したとき」というタイミングで「取得」した「検知情報」についての「検知情報に対応する対象物」の「購入」が「検討」されたとの判断としてでなくこれが「手に取」られたと「判断」し「推定」するものである。 これに対し、当初明細書等には、このような補正後装置Bやこれを含む補正後の情報処理装置は、記載されていない。(当初明細書等においては、ユーザ端末が「陳列棚の前で停止/減速」したり「陳列棚の前を低速(所定速度以下)で通過」したことを「陳列棚への接近」と判断して、このタイミングで取得部により取得されたモーションに関するセンサ情報等に対応する対象物についての「判断」を経てユーザによって「購入」の「検討」がなされた対象物について「推定」する情報処理装置は記載されているものの、この情報処理装置は、補正後の情報処理装置とも補正後装置Bとも異なる。) さらには、当初明細書等においては、ユーザが「興味を持った商品」のような「ユーザが購入を検討した商品等」ではない商品として「ユーザUが興味を持ちそうな商品」の記載があるものの、これを推測する処理は「推定」ではなく「予測」の処理とされており、「予測」の処理を「推定」の処理とすることは、当初明細書等において想定されておらず、当初明細書等の記載から当業者において自明な事項であるともいえない。 以上を踏まえれば、補正後装置Bやこれを含む本件補正による補正後の情報処理装置は、当初明細書等に記載した事項(当業者によって、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項)との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。 3 目的要件について (1)補正事項2について 補正事項2は、「推定部」における推定処理の入力となる「取得部が取得した検知情報」が、補正前には、「前記端末装置のセンサを利用したPDR技術を用いて検出された前記端末装置の屋内位置や移動方位に関するPDR情報」とされているものを、補正後には、「前記端末装置のセンサを利用したPDR技術を用いて検出された前記端末装置の屋内位置や移動方位に関するPDR情報と前記ユーザのモーションに関するセンサ情報」とするものである。 一般に、「推定部」における「推定」処理には、「学習モデル」を用いた「推定」処理が含まれるところ、入力情報が異なる学習モデルを用いた推定処理は、一部の入力情報が同じであるとしても異なる推定処理である。本件明細書の記載(上記2(2))においても、推定部における「推定処理」に「学習モデル」(段落【0090】)を用いることが記載されており、このことに鑑みれば、請求項1の「推定部」の記載は、「学習モデル」を用いた「推定」処理を行う「推定部」を排除していない。そうであるとすると、推定部への入力情報の変更は、推定部そのものの推定処理の変更を含むといわざるを得ない。 してみると、補正事項2は、補正前には、「前記端末装置のセンサを利用したPDR技術を用いて検出された前記端末装置の屋内位置や移動方位に関するPDR情報」を入力とする学習モデルを用い得る推定部を、補正後には、「前記端末装置のセンサを利用したPDR技術を用いて検出された前記端末装置の屋内位置や移動方位に関するPDR情報と前記ユーザのモーションに関するセンサ情報」を入力とする学習モデルを用い得る推定部へと変更しようとするものであり、実質的には、「推定部」を異なる「推定部」への変更しようとするものである。 よって、補正事項2は、発明特定事項の減縮を目的とする補正に該当せず、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。 また、補正事項2が、同項第1号の請求項の削除、同項第3号の誤記の訂正、同項第4号の明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しないことは、明らかである。 (2)補正事項3について 補正事項3は、「推定部」の「推定処理」について、上記補正事項2について述べたことに加え、補正前において「前記端末装置のセンサを利用したPDR技術を用いて検出された前記端末装置の屋内位置や移動方位に関するPDR情報」に「対応する対象物」について「推定」するとされていたものを、補正後には、「前記PDR情報及び前記ユーザのモーションに関するセンサ情報」に基づいて「前記ユーザが複数段を有する所定の陳列棚の何段目にある所定の商品を手に取ったかを判断し」て「推定」するものとしており、「推定」処理の入力のみならず、その内容をも変更するものとなっている。 補正後においては、補正前の「推定」処理(「前記端末装置のセンサを利用したPDR技術を用いて検出された前記端末装置の屋内位置や移動方位に関するPDR情報」に「対応する対象物」についての「推定」処理)を行う旨の記載がなく、このことから、補正後の「推定部」は、補正前の「推定処理」を削除して別の「推定処理」を行うものへと変更するものである。 さらには、上記(1)で示したとおり、「推定部」における「推定」処理には、「学習モデル」を用いた「推定」処理が含まれるところ、「前記ユーザが複数段を有する所定の陳列棚の何段目にある所定の商品を手に取ったか」の「判断」を経て「推定」する処理は、この「判断」を経ずに「推定」する処理とは別の学習モデルを用いた別の推定であり得るものである。 よって、補正事項3は、いずれの観点からみても、実質的に「推定部」を異なる「推定部」へと変更しようとするものであって、発明特定事項の減縮を目的とする補正に該当せず、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。 また、補正事項3が、同項第1号の請求項の削除、同項第3号の誤記の訂正、同項第4号の明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しないことは、明らかである。 (3)以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項を目的とする補正にも該当しないから、同項の規定に違反するものである。 4 独立特許要件について 上記3のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当しないが、これに該当すると仮定しても、以下のとおり、同条第6項の規定に違反するものである。 すなわち、上記本件補正による補正後の情報処理装置は、上記2(1)に示すとおり、端末装置が「前記ユーザが対象物を手に取ったこと」以外の事象を検出する場合に、「ユーザが対象物の購入を検討したとき」に取得する「検知情報」を用いて、そのユーザが「購入」を「検討」した「対象物」ではないものを「推定」するものを含むものであり、他方、本願の発明の詳細な説明の記載は、上記2(2)に示すとおりであって、ユーザが「購入」を「検討」した「対象物」ではないものを「推定」することを記載したものとなっていないから、本件補正による補正後の請求項1の記載は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に適合しないものであり、独立して特許を受けることができず、同法第17条の2第6項の規定に違反するものである。 5 むすび 以上のとおり、本件補正における請求項1の補正は、特許法第17条の2第3項及び同条同項第5項の規定に違反するものである。 また、仮に同条同項第5項の規定に違反するものでなく同項第2号に掲げる事項を目的とする補正であるとして検討しても、本件補正による補正後の請求項1の記載が同法36条第6項第1号の規定に適合しないことから、独立して特許を受けることができないものであり、同法第17条の2第6項の規定に違反するものである。 したがって、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~10に係る発明は、令和5年1月5日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(1)アに記載のとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-10に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献3~5に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 1.特開2016-076047号公報 3.特開2019-090669号公報(周知技術を示す文献) 4.特開2019-090759号公報(周知技術を示す文献) 5.特開2015-169636号公報(周知技術を示す文献) 3 引用文献 (1)引用文献1の記載事項、引用発明 ア 引用文献1は、平成28年5月12日の出願公開に係る公開特許公報であり、図面とともに、次のとおりの記載がある。 「【0028】 [商品推薦システム1の概要] 図1は、本発明の好適な実施形態である商品推薦システム1の概要を説明するための図である。この図1に基づいて、商品推薦システム1の概要を説明する。 【0029】 商品推薦システム1において、初めにユーザは、ユーザ端末10を所持したまま店等の特定領域内を移動し、領域内に設置されたビーコン4と通信を行う(ステップS01)。ビーコン4は領域内に複数設置されており、それぞれがユーザ端末10との距離を計測する。ユーザ端末10は、二つ以上のビーコン4と通信を行うことで二次元空間上のユーザ端末10の位置を特定することができ、ビーコン4の数を増やすことで更に精度を向上させることが可能である。 【0030】 前記のような位置の特定を時系列上で行うことで、ユーザ端末10は位置と時間の関係、すなわち移動経路をデータとして取得可能である(ステップS02)。図1では、実際の店舗の略図に移動経路を点線で重ねた概要図を示している。また、位置情報は時系列データであるため、各地点における滞留時間も同時に取ることができる。 【0031】 ところで、商品推薦サーバ200は、ユーザ端末10に商品購入の際に利用可能なクーポンを送信することができる(ステップS03)。ここでクーポンは、ユーザの購買行動を促進させるのみならず、その利用履歴を参照することで、ユーザ端末10の購買行動を参照することができるという利点もある。また、場合によってはクーポンを利用する、しないといった判断のみならず、そもそも受け取る、受け取らないという行動も、興味度合い等を計る指標にすることが可能である。 【0032】 以上のように行動を行った後、ユーザ端末10は、移動経路と購買行動を商品推薦サーバ200に送信する(ステップS04)。購買行動は、主としてクーポンの利用履歴として取得することを想定しているが、別の方法で購買行動を取得することを妨げない。なおここでいう購買行動とは単に商品を買った、買わないといった情報を指しているが、文脈によって、売り場での移動経路や滞留時間を含め、購買に関する一連の行動全てを含む場合がある。 【0033】 商品推薦サーバ200は、移動経路と購買行動を取得すると、移動経路上に陳列された陳列商品情報を商品データベース250から取得する(ステップS05)。ここで陳列商品情報は、各商品の商品情報と、陳列場所の位置情報が含まれる。なお、陳列商品情報の取得元は商品データベース250に限られない。 【0034】 商品推薦サーバ200は、移動経路と陳列商品情報を基に、関連商品を特定し、その関連商品から推薦商品を特定する。推薦の例として、関連商品と似た商品、推薦、協調フィルタリングによる推薦、商品特性に基づいた関連商品の継続的推薦、等が挙げられる。ここで、この推薦には既存の推薦アルゴリズムが使われてよく、本発明の本旨は、現実の購買行動を推薦に用いることにある。 【0035】 商品推薦サーバ200は推薦商品を特定すると、推薦商品の商品情報を商品データベース250から読み出し(ステップS06)、ユーザ端末10に送信する(ステップS07)。ここで、送信する商品情報には、オンライン上で直接可能な購入リンクが付記されていてよく、商品推薦サーバ200自体が、ECサイトの一部であってもよい。以上が、商品推薦システム1の概要である。」 「【0045】 [商品推薦処理] 図4は、ユーザ端末10、商品推薦サーバ200が実行する商品推薦処理のフローチャートである。上述した各装置のモジュールが行う処理について、本処理にて併せて説明する。 【0046】 はじめに、商品推薦サーバ200のクーポン送信モジュール207は、ユーザ端末10に商品購入の際に利用可能なクーポンを送信する(ステップS11)。ユーザ端末10のクーポン受信モジュール13は、クーポンを受信する(ステップS12)。 【0047】 次に、ユーザ端末10は移動し、移動経路取得・送信モジュール14がその移動経路を取得する(ステップS13)。ここで移動経路の取得は、GPS等で代用可能であるものの、前述のとおり無線ビーコン等を用いた数メートル単位の精度での取得を想定している。また、この移動経路には、各地点の各タイミングにおけるユーザ端末10の向いている方歩行や移動方向を、電子コンパスや加速度センサで取得して含めてもよい。 【0048】 ユーザ端末10が移動経路を時系列データとして取得すると、移動経路取得・送信モジュール14はその移動経路を商品推薦サーバ200に送信する(ステップS14)。商品推薦サーバ200の移動経路取得モジュール204はこれを受信する(ステップS15)。 【0049】 また、ユーザ端末10のクーポン利用履歴送信モジュール15は、クーポンの利用履歴を商品推薦サーバ200に送信し(ステップS16)、商品推薦サーバ200のクーポン利用履歴取得モジュール208がこれを受信する(ステップS17)。 【0050】 ここでクーポン利用履歴を参照することは、ユーザ端末10の購買行動を参照することに他ならない。利用履歴は、単にクーポンを使ったという情報のみならず、クーポンを使っていないという情報もまた利用価値がある。 【0051】 一方で、クーポンを利用する前に「受け取る」という構成になっているシステムにおいては、受け取る、受け取らないという行動も、ユーザの行動として判断材料とすることができる。この受け取る、受け取らないという判断は、クーポンの利用履歴の一部として含めてよい。なお、これらの利用履歴は、ユーザ端末10以外の装置、例えば利用履歴を蓄積する専用のサーバから取得してもよい。 【0052】 以上により、商品推薦サーバ200に移動経路と購買行動が渡された後、商品推薦サーバ200は、推薦商品特定処理実行する(ステップS18) 【0053】 [推薦商品特定処理] 図5は、商品推薦サーバ200が実行する推薦商品特定処理のフローチャートである。上述した各装置のモジュールが行う処理について、本処理にて併せて説明する。 【0054】 初めに、商品推薦サーバ200の陳列商品取得モジュール206は、ユーザ端末10の移動経路に係る陳列商品を取得する(ステップS31)。ここで、陳列商品情報は、商品情報と位置情報が組み合わせられたもので、商品データベース250や、各店舗のサービスから取得可能であるものとする。また位置情報は、ユーザの移動経路と相対位置で把握できればよく、店舗内の座標や、陳列されている棚のID等であってよい。 【0055】 次に、商品推薦サーバ200の関連商品特定モジュール209は、移動経路と陳列商品情報から、関連商品を特定する(ステップS32)。ここで関連商品の特定は、概念的にはユーザが一連の購買行動で関心を持った商品の特定である。具体的処理としては、ユーザの移動経路から一定の範囲にあった商品を特定し、特に向きが利用可能な場合には、その向いた方向にある商品を特定する。滞留時間に閾値を設け、一定以上滞留した地点のみを使って、関連商品を特定してもよい。」 イ 引用文献1の段落【0032】~【0034】の記載によれば、引用文献1には、ユーザ端末10が送信した移動経路と購買行動を取得して、移動経路上に陳列された陳列商品情報を商品データベース250から取得し、移動経路と陳列商品情報を基に、関連商品を特定し、その関連商品から推薦商品を特定する商品推薦サーバ200が記載されている。 また、段落【0029】【0030】の記載によれば、ユーザ端末10は、店等の特定領域内を移動するユーザが所持するものであり、領域内に複数設置されたビーコン4と通信を行うことで二次元空間上のユーザ端末10の位置を特定することができ、このような位置の特定を時系列上で行うことで、移動経路をデータとして取得可能であり、段落【0047】の記載によれば、この移動経路には、各地点の各タイミングでのユーザ端末10の向いている方向や移動方向を電子コンパスや加速度センサで取得して含めてもよいものである。 さらに、段落【0052】~【0055】の記載によれば、商品推薦サーバ200は、移動経路と購買行動を取得した後に、推薦商品特定処理を実行し、そこでは、ユーザ端末10の移動経路に係る陳列商品を取得し、移動経路と陳列商品情報から、関連商品を特定するが、この関連商品の特定は、概念的にはユーザが一連の購買行動で関心を持った商品の特定であり、ユーザの移動経路から一定の範囲にあった商品を特定し、特に向きが利用可能な場合には、その向いた方向にある商品を特定するものである。 してみると、引用文献1には、次のとおりの発明(引用発明)が記載されている。 (引用発明) ユーザ端末が送信した移動経路と購買行動を取得して、移動経路上に陳列された陳列商品情報を商品データベースから取得し、移動経路と陳列商品情報を基に、関連商品を特定し、その関連商品から推薦商品を特定する商品推薦サーバであって、 ここで、該ユーザ端末は、店等の特定領域内を移動するユーザが所持するものであり、領域内に複数設置されたビーコンと通信を行うことで二次元空間上の該ユーザ端末の位置を特定し、このような位置の特定を時系列上で行うことで、移動経路をデータとして取得可能であり、この移動経路には、各地点の各タイミングでの該ユーザ端末の向いている方向や移動方向を電子コンパスや加速度センサで取得して含めてもよいものであり、 該ユーザ端末の移動経路に係る陳列商品を取得して移動経路と陳列商品情報から関連商品を特定するが、この関連商品の特定は、概念的にはユーザが一連の購買行動で関心を持った商品の特定であり、ユーザの移動経路から一定の範囲にあった商品を特定し、特に向きが利用可能な場合には、その向いた方向にある商品を特定する、 商品推薦サーバ。 (2)周知例 ア 引用文献3 「【0002】 GPS(Global Positioning System)の電波が届きにくい若しくは届かない屋内で現在の位置を測位する方法の一つにPDR(Pedestrian Dead Reckoning:歩行者自律航法又は歩行者推測航法)がある。PDRは、例えば歩行者が携帯するスマートフォン(以下、「スマホ」)のセンサ値からスマホ、すなわち歩行者の位置を推定する。具体的には、加速度センサの値から移動距離を、磁気センサの値から進行方向を推定することにより、起点からの移動先を相対的に推定する。このように、PDRは、屋内に網目状に発信装置を設置する必要がなく、スマホ単体で位置推定ができるというメリットがある。」 イ 引用文献4 「【0002】 従来、屋内での位置を測定する屋内測位方法として、例えば以下の(1)~(5)の方法が知られている。 ・・・ 【0004】 (2)ビーコン測位 Bluetooth(登録商標)と同じ形式のビーコン発信器を屋内に設置して、スマホ側がBLE(Bluetooth Low Energy)と呼ばれる通信方式の信号強度判別を元に自己位置を推定する方式である。Bluetooth(登録商標)の信号はせいぜい半径10メートル程度しか届かないため、発信器は密度高く設置する必要がある反面、Wi-Fiに比べると測位精度は向上する。Apple社はこの仕組みをiBeacon(登録商標)と呼びiOS7(iOSは登録商標)に実装しており、Android(登録商標)も4.3以降に実装している。 【0005】 (3)歩行者自立航法 歩行者自立航法はPDR(Pedestrian Dead Reckoning)とも呼ばれ、現在の大半のスマホが備えている加速度、磁気、角速度などのセンサー機能を活用し、自己の移動方向と移動量を推定する方式である。この方式の最大のメリットは、追加コストがかからないことである。ただし、スタート地点が正確な位置であったとしても、誤差が徐々に積み重なっていく。このため、PDRのみで屋内測位を行うのではなく、他の方法と組み合わせるのが適している。」 ウ 引用文献5 「【0002】 歩行者ナビゲーションなどを目的とした歩行経路推定(PDR:Pedestrian Dead Reckoning)という技術が知られている。一般に、PDRを実現するために、GPS(Global Positioning System)、地磁気を利用する方位センサ、磁気の強さを計測する磁力センサ、加速度を計測する加速度センサ、角速度を計測するジャイロセンサ等が用いられる。しかし、屋内では、一般に、GPSは使用できない。このため、屋内でPDRを実現するためにはGPSによる絶対位置情報に依存しない歩行経路を推定する必要がある。 【0003】 屋内でPDRを実現する方法の一例として、加速度センサを用いて移動距離を推定し、ジャイロセンサを用いて移動方向を推定する方法が考えられる。ジャイロセンサは角速度を検出するため、これを積分することによって初期位置におけるジャイロセンサの向きを基準とする相対方位を求めることができる。しかし、ジャイロセンサの出力値はオフセットを含む(すなわち実際にはセンサが回転していないにもかかわらず出力がゼロにならない)ことが知られている。一般にオフセットの値は非常に小さいが、これを積分した場合には累積するため、最終的に得られる相対方位は大きな誤差を含むことになる。この現象はジャイロドリフトと呼ばれる。オフセットの値は温度等に依存するため、時間によって変化することが知られている。 ・・・ 【0005】 また、屋内でPDRを実現する方法の一例として、加速度センサを用いて移動距離を推定し、方位センサを用いて移動方向を推定する方法が考えられる。方位センサは方位を計測するため、測定地点の絶対方位を求めることができる。しかし、方位センサが電子機器に近づくと磁場の影響により方位センサが狂う問題が知られている。」 4 対比・判断 (1)対比 ア 引用発明の「ユーザ端末」は、店等の特定領域内を移動するユーザが所持するものであって、そのユーザとともに移動する端末装置であることから、本願発明の「ユーザとともに移動する」ものである「端末装置」に相当する。 引用発明の「移動経路」は、端末装置が店等の特定領域内に設置されたビーコンとの通信によって時系列上で特定された端末装置の位置や、電子コンパスや加速度センサで取得された端末装置の向いている方向や移動方向を含むものであり、これらは、いずれも端末装置が検知した情報であるといえることから、本願発明の「端末装置が検知した検知情報」に相当する。 そして、引用発明の商品推薦サーバは、この「端末装置が検知した検知情報」である移動経路を取得しており、本願発明の「取得部」に相当する構成を備えるといえる。 イ 引用発明の「関連商品」は、「端末装置」から取得された「端末装置が検知した検知情報」である移動経路から一定の範囲にあった商品として、特に向きが利用可能な場合にはその向いた方向にある商品として、特定される商品であって、本願発明の「前記取得部が取得した検知情報に対応する対象物」に相当するものである。 そして、引用発明における「関連商品」の「特定」は、この「前記取得部が取得した検知情報に対応する対象物」について、ユーザが関心を持った商品であるとの「推定」を行うものといえ、このことから、引用発明の商品推薦サーバは、本願発明と同様の、「前記取得部が取得した検知情報に対応する対象物を推定する」処理を行う「推定部」を備えるものといえる。 ウ 引用発明の商品推薦サーバは、「取得部」と「推定部」を備える「情報処理装置である点で、本願発明の「情報処理装置」と共通するといえる。 エ してみると、本願発明と引用発明とは、次の一致点において一致し、相違点において相違する。 <一致点> ユーザとともに移動する端末装置が検知した検知情報を取得する取得部と、 前記取得部が取得した検知情報に対応する対象物を推定する推定部と を備える、情報処理装置。 <相違点> 本願発明では、「前記端末装置が検知した検知情報」は「前記端末装置のセンサを利用したPDR技術を用いて検出された前記端末装置の屋内位置や移動方位に関するPDR情報」であるのに対し、引用発明では、領域内に複数設置されたビーコンと通信を行うことで二次元空間上の該ユーザ端末の位置を特定し、このような位置の特定を時系列上で行うことで取得された移動経路であって、PDR技術を用いて検出された屋内位置や移動方位に関するPDR情報ではない点 (2)相違点の判断 ア 上記3(2)に示した引用文献3、引用文献4及び引用文献5の記載に示されているように、屋内での人の位置等を測定するための技術として、PDR(Pedestrian Dead Reckoning。人が携帯するスマートフォン等が備える加速度センサ等のセンサを用いて基準位置からの移動距離や進行方向を推定する技術。)は、周知技術である。 イ 上記アの周知技術と引用発明におけるビーコンとの通信を用いる技術(いわゆるビーコン測位)とは、いずれも、屋内での人の位置を測定するための技術として周知なものであって、両者のメリットデメリットも当業者においてよく知られており、互いに置換可能な周知技術であるといえる。 さらには、引用発明の移動経路は、店等の特定領域内でのユーザの移動経路を示すものとして、移動経路から一定の範囲に合った商品や向きが利用可能な場合にはその向いた方向にある商品を特定するためにも用いられるものであり、さらに、各地点の各タイミングでのユーザ端末の向いている方向や移動方向を電子コンパスや加速度センサで取得して含めてもよいものとされている。このことからも、引用発明における移動経路の検出にあたって、上記アの周知技術を採用して、室内での人の移動方向や人の向きを示すための技術であるPDR技術を用いて検出された端末装置の屋内位置や移動方位に関する情報を移動経路の情報とすることは、動機付けられるといえる。 ウ そして、本願発明の奏する効果は、引用発明と上記アの周知技術とから予測できる範囲のものであり、格別なものではない。 エ してみると、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。よって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 (3)審判請求人の主張について 審判請求書における主張は、本願発明ではなく、前記第2で却下した本件補正による補正後の発明を前提としたものであり、採用できない。 また、令和5年1月5日提出の意見書において、審判請求人(出願人)は、引用文献1において「ビーコン」を用いることが必須である旨を主張している。しかし、引用文献1には、「移動経路の取得は、GPS等で代用可能である」旨の記載があり(段落【0047】)、「ビーコン」を用いることが必須でないことが明らかであることから、この主張も採用できない。 第4 結語 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-012462

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