特許拒絶査定不服審判
2023-010276
遅延線コーディングを有する多重化表面弾性波センサ
- 審判番号
- 2023-010276
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-521852外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年06月21日
- 審決日
- 2024年07月23日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アヴィアーナ モレキュラー テクノロジーズ,エルエルシー
- 【請求人代理人】小林 浩
- 【請求人代理人】大森 規雄
- 【請求人代理人】阿久津 勝久
- 分類
- P18 .113-Z (G01N) / P18 .121-Z (G01N) / P18 .575-Z (G01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-521852「遅延線コーディングを有する多重化表面弾性波センサ」拒絶査定不服審判事件〔平成31年1月10日国際公開、WO2019/010356、令和2年8月31日国内公表、特表2020-526776〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1.手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)7月6日(優先権主張外国庁受理 2017年(平成29年)7月7日)を国際出願日とする特許出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和4年 6月 3日付け:拒絶理由通知
同年 12月 6日 :意見書の提出
同日 :手続補正書の提出
(以下、この手続補正書による手続補正を「査定前補正」という。)
令和5年 2月14日付け:拒絶査定
同年 6月21日 :手続補正書の提出
(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)
同日 :審判請求書の提出
同年 12月22日 :上申書の提出
(以下単に「上申書」という。)
第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正前請求項1
本件補正前にされた査定前補正により補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本件補正前請求項1」という。)の記載は、以下のとおりである(改行位置は文意を損ねない範囲で適宜変更した、各構成単位冒頭の「pA」などは当審で付した分説番号であり、後記において、前記各構成単位について前記分説番号を用い「構成pA」などということがある。以下、他の発明についても同様。)。
「【請求項1】
pA 表面弾性波(SAW)デバイスであって、
pB 圧電基板と、
pC 前記圧電基板に取り付けられ、前記圧電基板の表面に配置された複数のSAWセンサとを備え、
pD 前記複数のSAWセンサは、
pD1 第1の表面弾性波を伝搬させるように構成された第1の遅延線を備える第1のSAWセンサであって、
pD2 前記第1のSAWセンサが、前記圧電基板に位置決めされたトランスデューサと、前記トランスデューサに対向して前記圧電基板に位置決めされた反射物とを備え、
pD3 前記トランスデューサは、第1の遅延線に沿って第1の表面弾性波を伝送し、
pD4 前記トランスデューサは、前記第1の表面弾性波が前記反射物で反射して前記第1の遅延線に沿って2回伝搬した後の前記第1の表面弾性波を受信する、第1のSAWセンサ、及び
pE1 第2の表面弾性波を伝搬させるように構成された第2の遅延線を備える第2のSAWセンサであって、
pE2 前記第1の遅延線の長さは前記第2の遅延線の長さよりも長い、前記第2のSAWセンサ を含む、
pF 前記SAWデバイス。」
(2)本件補正後請求項1
本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載(以下「本件補正後請求項1」という。)は以下のとおり(下線部は補正箇所を示す。)。
「【請求項1】
A 表面弾性波(SAW)デバイスであって、
B 圧電基板と、
C 前記圧電基板に取り付けられ、前記圧電基板の表面に配置された複数のSAWセンサとを備え、
D 前記複数のSAWセンサは、
D1 第1の表面弾性波を伝搬させるように構成された第1の遅延線を備える第1のSAWセンサであって、
D2 前記第1のSAWセンサが、前記圧電基板に位置決めされたトランスデューサと、
前記トランスデューサに対向して前記圧電基板に位置決めされた反射物とを備え、
D3 前記トランスデューサは、第1の遅延線に沿って第1の表面弾性波を伝送し、
D4 前記トランスデューサは、前記第1の表面弾性波が前記反射物で反射して前記第1の遅延線に沿って2回伝搬した後の前記第1の表面弾性波を受信し、
D5 前記第1の遅延線は、前記第1の表面弾性波の伝搬を制限する導波層、及び
D6 前記複数のSAWセンサのそれぞれの前記第1の遅延線の表面に取付けられた感応性層を備える、第1のSAWセンサ、及び
E1 第2の表面弾性波を伝搬させるように構成された第2の遅延線を備える第2のSAWセンサであって、
E2 前記第1の遅延線の長さは前記第2の遅延線の長さよりも長い、前記第2のSAWセンサを含む、
F 前記SAWデバイス。」
2 本件補正の適否について
2-1 本件補正の目的について
本件補正の前後において、本件補正前の構成pA~pD4・pE1~pFはそれぞれ、本件補正後の構成A~D4・E1~Fに概ね対応し、本件補正により構成D5・D6が新たに加入されたものである。
そして、該本件補正により、本件補正前請求項1の構成pD1に備わる発明を特定するために必要な事項(以下「発明特定事項」という。)である「第1のSAWセンサ」について、それが「前記第1の遅延線は、前記第1の表面弾性波の伝搬を制限する導波層」「を備える」ものであること(構成D5)、及び「前記複数のSAWセンサのそれぞれの前記第1の遅延線の表面に取付けられた感応性層を備える」ものであること(構成D6)、が限定された。
そうすると、本件補正は、前記補正前請求項1の発明特定事項を限定する補正を含むものと認められる。
また、本件補正は、本件補正前請求項1に備わる発明特定事項についてさらに限定を加えるものであるから、本件補正前請求項1に記載された発明と本件補正後請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、該本件補正後請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、該本件補正発明が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について下記2-2においてさらにに検討する。
2-2 独立特許要件について
2-2-1 進歩性の欠如について
(1)本件補正発明について
分説を含め上記2-1(2)に記載したとおりである。
(2)引用文献に記載された事項
(2-1)引用文献2に記載された事項
ア 引用文献2の記載事項
本件出願の拒絶査定において、新規性・進歩性欠如に係る理由1・2の主引用例(引用文献2)として引用された文献であって優先日前に公知となった引用文献2(特開2015-59878号公報)には次の記載がある(主たる引用箇所に当審にて下線を示した。)。
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波センサに関する。
・・・
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様は、測定対象における目標の変化量が外乱による変化量に対して小さな場合において、差動検出を行うために、第1弾性表面波素子と、第2弾性表面波素子とを有し、前記第2弾性表面波素子の伝搬距離を前記第1弾性表面波素子の伝搬距離に対して、外乱と測定対象の変化量の比率に応じて設定する、ことを特徴とする弾性表面波センサである。
・・・。
(5)また、本発明の一態様は、上記の弾性表面波センサにおいて1つの入出力電極と、反射器により構成される、ことを特徴とする。
・・・
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本実施形態に係るSAWセンサ1(弾性表面波センサ)の概略的な上面図である。また、図2は、SAWセンサ1の概略的な断面図である。なお、図1において、図5と同一の部分には同一の符号を付している。また、図2は、図1に示すSAWセンサ1_1(第1弾性表面波素子)をSAWの伝搬方向に沿って切断した場合の断面図を示している。図1に示すように、SAWセンサ1は、同じ圧電素子基板10上に形成されるSAWセンサ1_1、及びSAWセンサ1_2(第2弾性表面波素子)を有している。また、図1、及び図2を参照して、SAWセンサ1_1は、送信電極11-1a、送信電極11-1b、受信電極11-2a、受信電極11-2b、反応領域薄膜12(チャネル領域A)、多孔性基材13、封止構造14_1、及び封止構造14_2を含んで構成される。また、SAWセンサ1_2は、送信電極11-3a、送信電極11-3b、受信電極11-4a、受信電極11-4b、反応領域薄膜(チャネル領域R)、多孔性基材13、封止構造14_3(図1、2において不図示)、及び封止構造14_4(図1、2において不図示)を含んで構成される。圧電素子基板は、SAWを伝播する基板であり、例えば、水晶基板である。
【0019】
送信電極11-1a、及び送信電極11-1bは、送信側電極部を構成する櫛歯状のパターンにより形成された金属電極である。また、送信電極11-3a、及び送信電極11-3bは、送信側電極部を構成する櫛歯状のパターンにより形成された金属電極である。以下、送信電極11-1a、及び送信電極11-1bを総称してIDT11-1と呼び、送信電極11-3a、及び送信電極11-3bを総称してIDT11-3と呼ぶものとする。また、受信電極11-2a、及び受信電極11-2bは、受信側電極部を構成する櫛歯状のパターンにより形成された金属電極である。また、受信電極11-4a、及び受信電極11-4bは、受信側電極部を構成する櫛歯状のパターンにより形成された金属電極である。以下、受信電極11-2a、及び受信電極11-2bを総称してIDT11-2と呼び、受信電極11-4a、及び受信電極11-4bを総称してIDT11-4と呼ぶものとする。IDT11-1、及びIDT11-2(総称してIDT11_1と呼ぶ)、IDT11-3、及びIDT11-4(総称してIDT11_2と呼ぶ)は、それぞれ圧電素子基板上に構成される電極である。IDT11_1、IDT11_2は、それぞれ対向した一対の電極である。IDT11_1、IDT11_2、IDT11-3、及びIDT11-4は、それぞれ例えばアルミニウム薄膜によって構成される。
・・・
【0022】
SAWセンサ1_2においては、SAWセンサ1_1と同様に、多孔性基材13内を移送された溶液は、反応領域薄膜の特定の領域を濡らす。例えば、反応領域薄膜の全面を多孔性基材13で覆う場合、反応領域薄膜の全領域となる。本実施形態では、反応領域薄膜の全領域を、図1に示すように、チャネル領域Rと呼ぶものとする。溶液中の抗原は、チャネル領域Aと同じように、チャネル領域R上に担持された抗体と反応し、チャネル領域R上の特定領域に抗原抗体結合物を生成する。
すなわち、チャネル領域Rでは、チャネル領域Aと同じように、その表面に抗原を含んだ液体試料を滴下することにより、チャネル領域R上に担持された抗体と、液体試料中の抗原との間で抗原抗体反応が起こる。その結果、チャネル領域R上には、チャネル領域R上に担持した抗体と抗原が結合した抗原抗体結合物が生成する。なお、チャネル領域Rは、金以外であっても抗体を担持できるものであればいかなるものでもよい。
【0023】
また、本実施形態において、チャネル領域A、及びチャネル領域RのSAWの伝搬方向の長さは、チャネル領域Aに比べてチャネル領域Rの方が短く設定されている。以下では、図1に示すように、チャネル領域AのSAWの伝搬方向の長さを長さL1、チャネル領域RのSAWの伝搬方向の長さを長さL2とする。なお、長さL2の長さL1に対する比率の設定の仕方については後述する。
・・・
【0026】
IDT11-1、及びIDT11-3のいずれか一方は、RFスイッチ22を介して正弦波交流信号が入力される。IDT11-1、及びIDT11-3のいずれか一方は、入力された正弦波交流信号に対応するSAWを圧電素子基板の表面に励起する。IDT11-2、及びIDT11-4のいずれか一方は、圧電素子基板10の表面を伝播してきたSAWを電気信号に変換する。IDT11-2、及びIDT11-4のいずれか一方は、受信した電気信号(検出信号と呼ぶ)を後述する位相・振幅検出回路23に出力する。SAWセンサ1の測定者が、例えば、チャネル領域A、チャネル領域Rの上の多孔性基材に溶液を滴下すると、それぞれの多孔性基材は、滴下された溶液を、毛細管現象により多孔性基材の内部及びチャネル領域A、チャネル領域Rのそれぞれの表面に移送し、保持する。つまり、多孔性基材が、平面視において検出領域に重ならない部分を有していても、多孔性基材が溶液をチャネル領域A、チャネル領域Rの表面に移送し、保持することで、チャネル領域A、チャネル領域Rを、滴下された溶液により濡らすことができる。
【0027】
SAWセンサ1を用いた溶液測定には、図6に示すセンサ回路20が使用される。センサ回路20は、SAWセンサ1、交流信号源21、RFスイッチ22、位相・振幅検出回路23、PC24を含んで構成される。交流信号源21は、例えば、250MHzの正弦波交流信号を発生する。この正弦波交流信号は、RFスイッチ22によりSAWセンサ1のIDT11-1、及びIDT11-3のいずれか一方と、位相・振幅検出回路23とに出力する。なお、SAWセンサ1から出力される信号に含まれる主とする信号以外の直達波や他のバルク波などを含むノイズ等の妨害信号が十分に小さい場合には、交流信号源21からの正弦波交流信号は連続波でよい。しかしながら、直達波やバルク波などを含むノイズ等の妨害信号が大きい場合には、正弦波交流信号を周期的なバースト信号に変換して、SAWセンサ1に入力してもよい。このバースト信号の周期は、例えば、SAWが圧電素子基板10の表面のIDT11-1からIDT11-2までの間を進行するのに要する時間より大きくなるようにする。バースト信号に変換するには、図示しない既知のバースト回路を交流信号源21の直後に直列に挿入する。
・・・
【0029】
ここで、SAWの位相変化と振幅の減衰量について説明する。SAWは、圧電素子基板10の表面近傍に集中して伝播する音響波である。圧電素子基板10は、その表面に物質が吸着すると、その表面の単位体積当たりの質量と粘性が変化する。その結果、SAWの伝播速度と振幅が変化する。従って、SAWの伝播時間が変化し、振幅の減衰量が変化する。本実施形態では、位相の変化量と振幅の減衰量の変化量を利用して溶液中に含まれる抗原を測定する。具体的には、SAWセンサ1の測定者は、従来と相違して、図1に示すチャネル領域A、及びチャネル領域Rのいずれの領域にも、その上にある多孔性基材に抗原を含んだ溶液を滴下し、チャネル領域A、及びチャネル領域Rの上を溶液で濡らし、SAWの伝播時間による位相変化をチャネル毎に測定する。チャネル領域Aにおける位相変化とチャネル領域Rにおける位相変化との差が、抗原抗体反応によってチャネル領域Aに生成した抗原抗体結合物に起因する位相の変化量となる。
・・・
【0044】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。例えば、上記の各実施形態では、送信電極及び受信電極を用いた例を示したが、受信電極の代わりにSAWの反射体(反射器)を設け、送信電極が受信電極の機能を兼ねるようにしてもかまわない。
・・・
【図1】
[図:0001418016000001.jpg]
【図2】
[図:0001418016000002.jpg]
」
イ 看取・認定事項
(ア)図1看取事項
【0018】~【0019】の記載事項を参照すれば、図1から、
「送信側電極部IDT11-1と受信側電極部IDT11-2とは、チャネル領域Aを挟んで対向していること。」(図1看取事項)
との技術事項を見て取ることができる。
(イ)図2看取事項
【0018】~【0019】の記載事項を参照すれば、図2から、
「SAWセンサ1_1において、該センサを構成するチャネル領域A(反応領域薄膜12)と、それを間に挟んで対向する送信電極11-1a・11-1b(送信側電極部IDT11-1)及び受信電極11-2a・11-2b(受信側電極部IDT11-2)と、多孔性基材13 、封止構造14_1、及び封止構造14_2は、全て圧電素子基板12の表面上に設けられていること。」(図2看取事項)
との技術事項を見て取ることができる。
(ウ)認定事項1
【0018】に記載された、SAWセンサ1_1を構成する「送信電極11-1a、送信電極11-1b、受信電極11-2a、受信電極11-2b、反応領域薄膜12(チャネル領域A)、多孔性基材13、封止構造14_1、及び封止構造14_2」なる構成要素は、図2によれば、全て圧電素子基板12の表面上に直接、または他の構成要素を介して間接的に配置されている。よって、該各構成要素からなる「SAWセンサ1_1は圧電素子基板12の表面上に設けられている。」といえる。
また、【図2】は前記「SAWセンサ1_1」の各構成要素について描かれているが、【0018】において「図2は、SAWセンサ1の概略的な断面図である」、及び「SAWセンサ1は、同じ圧電素子基板10上に形成されるSAWセンサ1_1、及びSAWセンサ1_2(第2弾性表面波素子)を有している」と記載されているから、該【0018】に示される「SAWセンサ1_2」の「送信電極11-3a、送信電極11-3b、受信電極11-4a、受信電極11-4b、反応領域薄膜(チャネル領域R)、多孔性基材13、封止構造14_3(図1、2において不図示)、及び封止構造14_4(図1、2において不図示)」なる各構成要素と圧電素子基板12との関係についても、図2に示される「SAWセンサ1_1」と同様である(少なくとも該同様である態様が第一義的に含まれる)と認められる。
以上総合して、【0018】及び図2の記載事項から、
「SAWセンサ1_1及びSAWセンサ1_2は共に同じ圧電素子基板12の表面上に設けられている。」(認定事項1)
なる技術事項を認定できる。
ウ 引用文献2に記載された発明
上記アの各記載及び上記イの看取・認定事項から、引用文献2には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。ここで、各構成単位末尾括弧内には、該各構成単位の主たる認定根拠とした記載箇所を記した(他の引用文献についても同様。)。
「a 弾性表面波センサ1(SAWセンサ)であって、(【0001】・【0018】)
b SAWを伝搬する基板であり、例えば水晶基板である、圧電素子基板10と(【0018】)、
c 該同じ圧電素子基板10の表面上に形成される2つのSAWセンサであるSAWセンサ1_1・1_2とを備え、(【0018】、認定事項1)
d 前記2つのSAWセンサは、
d1 SAWの伝搬方向の長さがL1であるチャネル領域A(反応領域薄膜12)を圧電素子基板10の表面上に設けたSAWセンサ1_1(第1弾性表面波素子)であって、(【0018】・【0023】、図2看取事項、認定事項1)
d21 SAWセンサ1_1は、圧電素子基板10の表面上に形成され、送信電極11-1a及び送信電極11-1bで構成される送信側電極部IDT11-1と、受信電極11-2a及び受信電極11-2bで構成される受信側電極部IDT11-2とが、圧電素子基板10表面上に設けられたチャネル領域A(反応領域薄膜12)を挟んで対向した一対の電極をなし、(【0018】・【0019】・【0027】・図1看取事項、図2看取事項、認定事項1)
d22 一態様として、受信電極の代わりにSAWの反射体(反射器)を設け、送信電極が受信電極の機能を兼ねるようにした1つの入出力電極と、反射器とにより構成される態様を含み、(【0015】・【0044】)
d31 送信側電極部IDT11-1に入力された正弦波交流信号に対応するSAWを圧電素子基板10の表面に励起し、SAWの伝搬方向の長さL1を有するチャネル領域A(反応領域薄膜12)が設けられた圧電素子基板10の表面を伝搬させ、(【0023】・【0026】)
d32 SAWは圧電素子基板10の表面近傍に集中して伝搬する音響波であり、(【0029】)
d4 チャネル領域A(反応領域薄膜12)が設けられた圧電素子基板10の表面を伝搬してきたSAWを受信側電極部IDT11-2が受信し、電気信号(検出信号)に変換して出力し、(【0026】、図2看取事項)
d61 SAWセンサ1_1のチャネル領域Aにおいて圧電素子基板10表面上には反応領域薄膜12が設けられ、(図2看取事項)
d62 同様に圧電素子基板10の表面上に形成されるSAWセンサ1_2の、SAWの伝搬方向の長さL2を有するチャネル領域Rにも、反応領域薄膜が設けられており、(【0018】・【0022】、認定事項1)
e11 SAWの伝搬方向の長さがL2であるチャネル領域R(反応領域薄膜)を圧電素子基板10の表面上に設けたSAWセンサ1_2(第2弾性表面波素子)であって、(【0018】・【0023】、図2看取事項、認定事項1)
e12 送信側電極部IDT11-3に入力された正弦波交流信号に対応するSAWを圧電素子基板10の表面に励起し、SAWの伝搬方向の長さL2を有するチャネル領域R(反応領域薄膜)が設けられた圧電素子基板10の表面を伝搬させ、(【0018】・【0023】・【0026】、図2看取事項)
e13 チャネル領域R(反応領域薄膜)が設けられた圧電素子基板10の表面を伝搬してきたSAWを受信側電極部IDT11-4が受信し、電気信号(検出信号)に変換して出力し、(【0026】)
e2 チャネル領域A及びチャネル領域RのSAWの伝搬方向の長さは、チャネル領域Aに比べてチャネル領域Rの方が短く設定されている、SAWセンサ1_2(第2弾性表面波素子)を含む、(【0026】)
f 弾性表面波センサ1(SAWセンサ)。(【0001】・【0018】)」
(2-2)引用文献5に記載された事項
本件出願の拒絶査定において、進歩性欠如に係る理由2の副引用例(引用文献5)として引用された文献であって優先日前に公知となった引用文献5(特表2007-524853号公報)には次の記載がある(主たる引用箇所に当審にて下線を示した。以下同様。)。
ア 引用文献5の記載事項
引用文献5には次の記載がある。
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面弾性波(SAW)デバイスに関し、特に、センサとして用いられる層状SAWデバイスに関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
SAWセンサの信頼性を改善し、そして当該センサの動作性能を最適化することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、本発明は、表面弾性波(SAW)センサであって、
a)その表面上に交叉指状電極を有する圧電結晶と前記交叉指状電極上の第2の圧電層とから成る第1の層状SAWデバイスと、
b)その表面上に交叉指状電極を有する圧電結晶と前記交叉指状電極上の第2の圧電層と前記第2の圧電層上の検体感応表面とから成る第2の層状SAWデバイスと、を備え、
c ) 両方の前記SAWデバイスが、同じ基板上に製作され、
d ) 前記SAWデバイスの帯域幅を低減するため各SAWデバイスの前記交叉指状電極に隣接して配置された反射器を更に備え、
e )SAWセンサの共振器回路が、従属性の増幅器を組み込んでいる、表面弾性波(SAW)センサを提供する。
・・・
【0013】
第2の層は、酸化亜鉛、AINLiTaO3、LiTaO3又は水晶である層のような圧電膜であることが好ましい。第2の層は、非圧電性であることができ、それは、窒化珪素、異なる種類の金属酸化物、ポリマ、又は金属化合物のようなそれ自体で音響エネルギを閉じ込める能力を有する。
・・・
【0018】
生物学的に感応する層(biologically sensitive layer)は、第2のSAWデバイスの第2の圧電層上に被着されて、検出されるべき適切な生化学的成分と相互作用する。
・・・
【0027】
図1において、第1の波発生トランスデューサ3及び第1の受信トランスデューサ4が、圧電基板1の表面に製作される。トランスデューサ(transducers)3及び4は、SAWデバイスで用いられるいずれかの適切な交差指状電極(interdigital transducer)(IDT)である。波伝送層5、即ち、圧電層は、トランスデューサ3及び4が圧電基板1と波伝送層5との間に位置するように圧電基板1上に製作される。検知層6は、波伝搬層5の上に被着されて、当該検知層6が暴露される液体又はガス媒体の中の媒介物(agent)に対して選択的に物理的、化学的又は生物学に活性である表面を形成する。当該表面は、いずれの生物学的目標を検出するよう処理され得る。
・・・
【0035】
本発明においては、次の方法が、システムの雑音を低減し、そして発振周波数の周波数安定性を増大するため採用された。
1.回折格子をトランスデューサ間に追加
層状SAWデバイスは、表面横波(STW)の伝搬を可能にする結晶カット上に製作される(漏洩SAW及びSSBWは、STWのファミリである。)。SAWデバイスは、
・低いデバイス損失
・高い固有のQ
・低い1/f雑音、及び
・低い振動感度
現在、STWベース共振器は、最近の通信、無線リモート・センシング、及び兵器誘導システムに広く用いられている。
【0036】
案内膜(guiding film)の被着により、層状SAWデバイスは、製作される。安定なセンサを製作する方法は、高いQのSH共振器を設計することである。SH型音波は、IDTにより、圧電基板上で、選択された温度が補償された回転されたY軸の向き上でX軸に対して垂直の方向に励振される。複数のIDTが互いに自由表面により分離される場合、SH波は、SSBW(表面スキミング・バルク波)又は漏洩波である。これらの伝搬モードに対して、パワーは、結晶のバルク(bulk)の中に放射される。IDTの周期に等しい周期を有する金属ストリップ回折格子がIDT同士の間に被着される場合、それは、SSBW及び漏洩波の速度を遅くし、それらをSTWに変える。波動エネルギは、表面上に閉じ込められ、そしてデバイスのバルクの中に放散しない。
・・・
【0038】
2.材料の選定の最適化(例えば、酸化亜鉛の使用)
案内層及び基板としての異なる材料の組み合わせは、デバイスの感度を設計する際に重要な役割を果たす。基板の剪断水平伝搬速度より小さい剪断水平伝搬速度を有する層は、通常、音波のエネルギを当該層の中に閉じ込める。この近表面のエネルギが、感応層及び目標検体の中への音波の貫入を増大させる。その結果、デバイスの感度が増大する。
【0039】
SSBW又は漏洩波の伝搬を可能にするSAWウエーハが、そのようなデバイスの製作のため採用されなければならない。案内層は、ZnOのような圧電材料、又はSiO2及びSi3N4のような非圧電材料であることができる。」
イ 引用文献5に記載された技術事項
上記アの摘記事項において、特に下線を施した箇所の記載に基づけば、引用文献5には次の事項(以下「技術事項5」という。)が記載されていると認められる。
「5a センサとして用いられる表面弾性波(SAW)デバイスにおいて、(【0001】)
5b 圧電結晶(圧電基板1)と、(【0010】・【0027】)
5c 前記圧電結晶1の表面上に設けた交差指状電極(IDT)である波発生トランスデューサ3及び受信トランスデューサ4と、(【0027】)
5d1 前記交差指状電極上に設けられ、
5d2 酸化亜鉛、AINLiTaO3、LiTaO3又は水晶である層のような圧電膜、又は、窒化珪素、異なる種類の金属酸化物、ポリマ、又は金属化合物のような、非圧電性の層であり、
5d3 それ自体で音響エネルギを閉じ込める能力を有する、
5d4 第2の圧電層(案内膜、案内層)と、(以上、【0013】・【0027】・【0036】・【0038】・【0039】)
5e 前記第2の圧電層上に被着され、検出されるべき適切な生化学的成分と相互作用する、生物学的に感応する検知層6と、を備える、(【0018】・【0027】)
5f 表面弾性波(SAW)デバイス。」
(2-3)引用文献6に記載された事項
本件出願の拒絶査定において、進歩性欠如に係る理由2の副引用例(引用文献6)として引用された文献であって優先日前に公知となった引用文献6(特表2007-520698号公報)には次の記載がある)。
ア 引用文献6の記載
引用文献6には次の記載がある。
「【0002】
本発明は、弾性表面波(SAW)センサに関し、より特定的には、SAWセンサを回路に結合するための技術に関する。
・・・
【0004】
化学的または生物学的検知能力のために開発されたセンサの1タイプは、弾性表面波(SAW)センサである。・・・。
・・・
【課題を解決するための手段】
【0006】
概して、本発明は、Z軸導電性エラストマーなどのZ軸導電層を使用する弾性表面波センサ(SAW)アセンブリに関する。・・・。
・・・
【0019】
SAWセンサ12は、複数の電極13A~13H(まとめて電極13)を含み、回路層14は、回路層14の底側19に形成された複数の電気コンタクト15A~15H(まとめて電気コンタクト15)を含む。・・・。
【0020】
図1に示された電極13および電気コンタクト15の数は、ここに広く具体化され請求されるような本発明を限定するものではない。換言すれば、いかなる数の電極13および電気コンタクト15も本発明によって使用することができる。図1にさらに示されているように、SAWセンサ12は、1つ以上の入力および出力トランスデューサ(図示せず)の上に形成された導波路層8を含む。・・・。
・・・
【0025】
一例において、センサ12は、ラブモード剪断水平弾性表面波(SH-SAW)センサを含む。SH-SAWセンサは、たとえば、4つの主構成要素:1)圧電性基材;2)圧電効果に基いて音波を励起するために使用される、基材上の入力インターデジットトランスデューサ(IDT);3)圧電効果を利用することによって、伝送された音波を受けて電気出力を発生する、基材上の出力IDT;および4)入力IDTから出力IDTへの伝送のためSHタイプ波を導波路ラブモードに変換する、IDTの上の導波路層、を含む。
・・・
【0027】
SAWセンサ12は、非常にさまざまな化学的または生物学的作用物質のいずれかの検出のために設計することができる。さまざまな化学的または生物学的作用物質の検出を促進するために、さまざまな材料をSAWセンサ12の導波路層上にコーティングすることができる。導波路材料は、好ましくは、次の特性:低音波損失、低導電性、水および水溶液中の安定性および堅牢性、比較的低い音響速度、疎水性、より高い分子量、高度架橋などの1つ以上を示す材料であることができる。一例において、SiO2が石英基材上の音響導波路層(acousticwaveguidelayer)として使用されている。他の熱可塑性および架橋ポリマー導波路材料の例としては、たとえば、エポキシ、ポリメチルメタクリレート、フェノール樹脂(たとえば、ノバラク(NOVALAC))、ポリイミド、ポリスチレンなどが挙げられる。
【0028】
特に、SAWセンサの表面上の特定の材料の存在は、導波路層を通る波伝播に影響を及ぼし、これは、特定の化学的または生物学的作用物質の検出を促進する。したがって、導波路層上にコーティングされた材料を、導波路を横切って流れる流体中に浮遊した材料を引きつけるか、捕えるか、それらと接合するか、それらに他の態様で付着するように選択することができる。SAWセンサ12は、他のタイプのそのようなセンサを含むこともできる。いずれにせよ、電極13は、SAWセンサ12の構成要素への電気的インタフェースを提供する。」
イ 引用文献6に記載された技術事項
上記アの摘記事項において、特に下線を施した箇所の記載に基づけば、引用文献6には次の事項(以下「技術事項6」という。)が記載されていると認められる。
「6a 科学的または生物学的検知のための弾性表面波(SAW)センサであって、(【0004】)
6b 圧電性基材、(【0025】)
6c 前記圧電性基材上に形成された入力IDT及び出力IDT、(【0025】)
6d 入力IDTから出力IDTへのSAWの伝送のためSHタイプ波を導波路ラブモードに変換する、IDT上に設けられた導波路層であって、
該導波路層の材料は、比較的低い音響速度を示す材料であることができ、一例において、SiO2が石英基材上の音響導波路層として使用され、他の熱可塑性および架橋ポリマー導波路材料の例としては、たとえば、エポキシ、ポリメチルメタクリレート、フェノール樹脂(たとえば、ノバラク(NOVALAC))、ポリイミド、ポリスチレンなども挙げられるものである、導波路層、(【0027】)
6e 化学的または生物学的作用物質のいずれかの検出のために、導波路上にコーティングされる材料、を備える、(【0027】・【0028】)
6f 弾性表面波(SAW)センサ。」
(3)本件補正発明と引用発明との対比
ア 構成a・fの「弾性表面波センサ1(SAWセンサ)」は、構成A・Fの「表面弾性波(SAW)デバイス」に相当する。
イ 構成bの「SAWを伝搬する基板であり、例えば水晶基板である、圧電素子基板10」は、構成Bの「圧電基板」に相当する。
ウ 構成cの「前記同じ圧電素子基板10の表面上に形成される2つのSAWセンサであるSAWセンサ1_1・1_2」は、構成Cの「前記圧電基板に取り付けられ、前記圧電基板の表面に配置された複数のSAWセンサ」に相当する。
エ(ア)本件補正発明の「遅延線」に関係して、本件出願の発明の詳細な説明には次の各記載がある。
「【0072】
SAWデバイスは、圧電基板、圧電基板の表面の一部分における入力インターデジタルトランスデューサ(IDT)(送信IDTといわれることもある)及び圧電基板の他の部分における出力IDT(受信IDTといわれることもある)を含み得る。・・・。圧電効果に起因して、送信IDTは、受信IDTの方向のIDT間の空間(一般的に、遅延線といわれる)に沿って伝搬する表面弾性波を生成する。表面弾性波の波長は、遅延線に沿った伝搬の後に、分析物とレセプターの間の物理的、化学的又は電気的反応に起因して変化し得る。・・・。
【0073】
ある実施形態では、レセプター(感応性層ともいわれる)は、遅延線に載置される。感応性層は、特定の気体、化学的材料、生物学的材料などのような分析物に露出された場合には、表面弾性波が遅延線に沿って伝搬するにつれて、感応性層が表面弾性波を変調又は変化させるように、感応性層には定量化可能な変化が生じる。・・・。
・・・
【0078】
一方向SAWセンサ図1Aは、ある実施形態による表面弾性波(SAW)デバイス100の図である。SAWデバイス100は、圧電基板(不図示)と、異なる長さ112、114、116、118、120の遅延線126を有するSAWセンサ102、104、106、108、110のアレイとを含む。・・・。
【0079】
SAWセンサ102は、基板上にあり、表面弾性波を圧電基板に励起する送信インターデジタルトランスデューサ(IDT)122を含む。SAWセンサ102はまた、基板を通じた伝搬後の表面弾性波を検出する受信IDT124、及びIDT122、124を電気構成要素に電気的に接続するための2対の電気コンタクト132、134も含む。
・・・
【0081】
送信IDT122(入力IDTといわれることがある)は、励起信号を表面弾性波に変換し、その表面弾性波を、表面弾性波が遅延線126に沿って基板を通じて伝搬するように圧電基板に伝送する。
・・・
【0083】
送信IDTのアレイは、励起されると(例えば、電圧又は励起信号が印加された場合に)、各SAWセンサ102、104、106、108、110の遅延線126に沿って基板を通じて伝搬する複数の表面弾性波を生成する。
・・・
【0085】
ある実施形態では、SAWデバイス100は、基板を通じて伝搬するにつれて表面弾性波を制限する薄い導波層(不図示)を含む。
【0086】
受信IDT124(出力IDTといわれることがある)は、ある有限時間の遅延後の(例えば、表面弾性波が送信IDT122から遅延線を通じて受信IDT124に伝搬した後の)表面弾性波を受信する。
・・・
【0091】
ある実施形態では、遅延線126は、アルミニウム若しくは金の層、又はポリマー、SiO2若しくはZnOを有する導波層を含む。
・・・
【0093】
・・・感応性層は、送信IDT122と受信IDT124の間でSAWセンサの各々の表面に(例えば、遅延線126に)取り付けられる。」
・・・
【0103】
双方向SAWセンサ
・・・
【0119】
ある実施形態では、感応性層は、送信/受信IDT222と反射物224の間でSAWセンサ202、204、206、208、210の各々の表面に(例えば、遅延線226に)ある。」
(イ)上記(ア)の摘記記載では、「SAWセンサ」は圧電基板上にある(【0079】)もので圧電基板は含まない(複数の「SAWセンサ」からなる「SAWデバイス100」としては含む)要素として説明されており(【0072】)、該「SAWセンサ」が有するとする「遅延線」は、「圧電基板の表面の一部分における入力インターデジタルトランスデューサ(IDT)(送信IDTといわれることもある)及び圧電基板の他の部分における出力IDT(受信IDTといわれることもある)」について「IDT間の空間」(【0072】)であり、該「遅延線」に沿って表面弾性波が伝搬する要素、である旨定義されている。
また、構成D2に特定されるような、IDTが送信/受信IDTであって、対向側に反射物がある態様においては、その存在位置について【0119】では「送信/受信IDT222と反射物224の間でSAWセンサ202・・・の表面」である旨定義されている。
(ウ)そうすると、
・構成cの「2つのSAWセンサであるSAWセンサ1_1・1_2」のうち、構成d1で再定義される「SAWセンサ1_1(第1弾性表面波素子)」が構成D1の「第1のSAWセンサ」に相当し、
・該「SAWセンサ1_1」の「送信電極11-1a及び送信電極11-1bで構成される送信側電極部IDT11-1」(構成d21)「に入力された正弦波交流信号に対応するSAWを圧電素子基板10の表面に励起し、SAW1_1の伝搬方向の長さL1を有するチャネル領域A(反応領域薄膜12)が設けられた圧電素子基板10の表面を伝搬させ」(構成d31)ることは、構成D1の「第1の表面弾性波を伝搬させる」ことに相当し、
・ここで、構成d21・d31の「送信電極11-1a及び送信電極11-1bで構成される送信側電極部IDT11-1」「に入力された正弦波交流信号に対応するSAW」は、構成D1の「第1の表面弾性波」に相当し、構成d31の「チャネル領域A」は構成D1の「第1の遅延線」に相当する。
オ(ア)構成d22の「送信電極が受信電極の機能を兼ねるようにした1つの入出力電極」は、構成d21の「圧電素子基板10の表面上に形成され、送信電極11-1a及び送信電極11-1bで構成される送信側電極部IDT11-1と、受信電極11-2a及び受信電極11-2bで構成される受信側電極部IDT11-2とが、圧電素子基板10表面上に設けられたチャネル領域A(反応領域薄膜12)を挟んで対向した一対の電極」のうちの「受信電極11-2a及び受信電極11-2bで構成される受信側電極部IDT11-2」の機能を「送信側電極部IDT11-1」に兼ねさせた、つまり、「圧電素子基板10の表面上に形成され」、「送信側電極部IDT1-1」の位置において「1つの入出力電極」に「送信側電極部IDT11-1」と「受信側電極部IDT11-2」との機能を兼ねさせたもの(態様)であると解される。
(イ)構成d22の「受信電極の代わりに」「設け」た「SAWの反射体(反射器)」は、構成d21において、「受信電極11-2a及び受信電極11-2bで構成される受信側電極部IDT11-2」の位置に設けた「SAWの反射体(反射器)」であると解される。
(ウ)上記(ア)・(イ)から、引用発明は、構成d21を前提とする構成d22に対応する別態様として、下記構成d22’を備えると認められる。以下、引用発明は下記構成d22’を備え、それに伴い前記前提のもと構成d31・d4の各別態様として下記構成d31’・d4’を備えるものとして対比を行う。
構成d22’:
SAWセンサ1_1は、圧電素子基板10の表面上に形成され、送信電極11-1a及び送信電極11-1bで構成される送信側電極部IDT11-1と、受信電極11-2a及び受信電極11-2bで構成される受信側電極部IDT11-2との機能を兼ねる≪1つの入出力電極≫が、圧電素子基板10表面上に設けられたチャネル領域A(反応領域薄膜12)を挟んで、受信側電極部IDT11-2の代わりに設けられたSAWの第1の反射体(反射器)と対向し、
構成d31’:
前記≪1つの第1入出力電極≫に入力された正弦波交流信号に対応するSAWを圧電素子基板10の表面に励起し、SAWの伝搬方向の長さL1を有するチャネル領域A(反応領域薄膜12)が設けられた圧電素子基板10の表面を伝搬させ、
構成d4’:
チャネル領域A(反応領域薄膜12)が設けられた圧電素子基板10の表面を伝搬してきた前記SAWが受信側電極部IDT11-2の代わりに設けられたSAWの反射体(反射器)により反射され、チャネル領域A(反応領域薄膜12)が設けられた圧電素子基板10の表面を伝搬して前記≪1つの第1入出力電極≫が受信し、電気信号(検出信号)に変換して出力し、
(エ)構成d22’の「圧電素子基板10の表面上に形成され、送信電極11-1a及び送信電極11-1bで構成される送信側電極部IDT11-1と、受信電極11-2a及び受信電極11-2bで構成される受信側電極部IDT11-2との機能を兼ねる1つの第1入出力電極」は、構成D2の「前記圧電基板に位置決めされたトランスデューサ」に相当する。
(オ)構成d22’の「1つの第1入出力電極が、圧電素子基板10表面上に設けられたチャネル領域A(反応領域薄膜12)を挟んでSAWの第1の反射体(反射器)と対向」するとの位置関係における「SAWの第1の反射体(反射器)」は、構成D2の「前記トランスデューサに対向して前記圧電基板に位置決めされた反射物」に相当する。
(カ)構成d31’の「前記≪1つの第1入出力電極≫に入力された正弦波交流信号に対応するSAWを圧電素子基板10の表面に励起し、SAWの伝搬方向の長さL1を有するチャネル領域A(反応領域薄膜12)が設けられた圧電素子基板10の表面を伝搬させ」ることは、構成D3の「前記トランスデューサは、第1の遅延線に沿って第1の表面弾性波を伝送」することに相当する。
(キ)構成d4’の「チャネル領域A(反応領域薄膜12)が設けられた圧電素子基板10の表面を伝搬してきた前記SAWが受信側電極部IDT11-2の代わりに設けられたSAWの第1の反射体(反射器)により反射され、チャネル領域A(反応領域薄膜12)が設けられた圧電素子基板10の表面を伝搬して前記≪1つの第1入出力電極≫が受信」することは、SAWが構成d31’(構成d4’の「チャネル領域A(反応領域薄膜12)が設けられた圧電素子基板10の表面を伝搬してきた」ことに対応)の往路で一度「チャネル領域A」を伝搬し、構成d4’における復路での「チャネル領域A(反応領域薄膜12)が設けられた圧電素子基板10の表面を伝搬」が往復で2回目のチャネル領域A伝搬にあたる。
よって、構成d4’で、「前記≪1つの第1入出力電極≫が、チャネル領域A(反応領域薄膜12)が設けられた圧電素子基板10の表面を伝搬してきた前記SAWが受信側電極部IDT11-2の代わりに設けられたSAWの第1の反射体(反射器)により反射され、」該SAWが「チャネル領域A(反応領域薄膜12)が設けられた圧電素子基板10の表面を伝搬して」きたものを「受信」することは、構成D4の「前記トランスデューサは、前記第1の表面弾性波が前記反射物で反射して前記第1の遅延線に沿って2回伝搬した後の前記第1の表面弾性波を受信」することに相当する。
カ(ア)本件補正発明は、「SAWセンサ」について、
「前記圧電基板に取り付けられ、前記圧電基板の表面に配置された複数のSAWセンサ」「を備え」、(構成C)
「前記複数のSAWセンサは、」(構成D)
「・・・第1のSAWセンサであって、」(構成D1)
「前記複数のSAWセンサのそれぞれの前記第1の遅延線の表面に取付けられた感応性層を備える、第1のSAWセンサ、及び、」(構成D6)
「・・・第2のSAWセンサであって、」(構成E1)
「・・・前記第2のSAWセンサを含む、」(構成E2)
との特定がなされている。
(イ)a 上記(ア)の特定において、構成D6の「それぞれの」は、構成D~D1にかけての、「複数のSAWセンサ」のうち「第1のSAWセンサ」という1つのSAWセンサについての特定事項を受けての構成D6において、「第1のSAWセンサ」又は「第1の遅延線」が複数であるかのような、又は、第2のSAWセンサを含めた特定事項であるかのような意味付けを持ち得る語句であり、前後と整合がとれないために、何らかの誤記載である可能性がある。
b(a)また、誤記載でないとすれば、前記「それぞれの」は、「複数のSAWセンサ」、「第1の遅延線」いずれを修飾するとも解される。しかし、「第1の遅延線」を修飾するとすれば、「複数のSAWセンサ」に対し複数の「第1の遅延線」が存在する場合を含むとの意味に理解されるし、「複数のSAWセンサ」を修飾するとしても、該複数のSAWセンサ個々に「第1の遅延線」が存在し得る、つまりは、「第1の遅延線」が複数存在し得る意味とも理解される。
(b)しかし、「第1」・「第2」と区別して付番される各SAWセンサや、それら固有の、同じく「第1」・「第2」と区別し、かつ各SAWセンサと同じ番号にて付番されるの「遅延線」が、個々に複数組からなるといった解釈は、特段の断りがない限り自然な解釈とはいいがたいし、少なくとも、該各「SAWセンサ」・「遅延線」がそれぞれ1つからなる態様は当然に含まれるといえる。下記(ウ)以下においてさらに検討する。
(ウ)a 上記(ア)の特定において、「複数のSAWセンサ」には「第1のSAWセンサ」と「第2のSAWセンサ」とが「含まれ」ると特定され、「第1のSAWセンサ」及び「第2のSAWセンサ」個々には複数である旨の特定を伴わないから、前記「複数のSAWセンサ」は少なくとも「第1」及び「第2」の計2つの「SAWセンサ」からなるものと認められる。そして、「第1」・「第2」の「SAWセンサ」はいずれも単複の特定はないから、それぞれが単数である場合も少なくとも含まれると理解される、
b 上記aの解釈は、本件出願の発明の詳細な説明において、例えば【0088】で
「SAWセンサ102、104、106、108、110」
と計5つの「SAWセンサ」を備える態様が示されつつ、同段落において
「例えば、SAWデバイス100は5つのSAWセンサ102、104、106、108、110を含んで示されるが、任意数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上)のSAWセンサを利用可能である。」
と、「SAWセンサ」の全個数が1・2及び3以上を含む単数又は複数であると説明されることにより裏付けられる(双方向SAWセンサについても一部一方向SAWセンサの記述を援用する形で例えば【0103】において同様に説明される。)。
c つまり、本件補正発明は、「複数のSAWセンサ」が1つの「第1のSAWセンサ」及び1つの「第2のSAWセンサ」の計2つの「SAWセンサ」のみからなる態様を当然に含む。
(エ)また、上記(ウ)と同時に、本件補正発明は、「複数のSAWセンサ」について、構成D6・E2で、「第1のSAWセンサ、及び、・・・第2のSAWセンサを『含む』」と特定しているので、「複数のSAWセンサ」には前記「第1」・「第2」以外の「SAWセンサ」を含む態様、すなわち、
・態様1:それぞれ単数の「第1」・「第2」の各「SAWセンサ」以外に、各々単数である、第3のSAWセンサを含む他の「SAWセンサ」を1~複数備える態様、
を含むといえる。
該≪態様1≫によれば、「複数のSAWセンサ」には、本件補正発明において特定される「第1のSAWセンサ」・「第2のSAWセンサ」以外に別のSAWセンサが単数又は複数含まれる。しかし、本件補正発明において該「別のSAWセンサ」の構成については何らの特定をも伴わないから、該態様1にあたる実施形態においても、「第1」「第2」の「SAWセンサ」についての特定事項や相互関係は上記(ア)と変わりない。
(オ)本件補正発明は、上記(エ)の態様以外に、「第1のSAWセンサ」(及び「第2のSAWセンサ」それぞれ)について単数か複数かの特定を伴わないことによって、例えば、
・態様2:「第1のSAWセンサ」が複数のSAWセンサから成り立つような態様、
が文言上想定可能であり、この場合、構成D6の「それぞれの」は「第1のSAWセンサ」及びその「第1の遅延線」がそれぞれ複数存在する態様について用いられた用語と解することもできる。
(カ)しかし、本件補正発明が上記(エ)・(オ)の各態様を含み得るとしても、上記(ウ)cの場合(SAWセンサが第1・第2の2つのみである態様)も含むことが、本件補正後請求項1の記載や発明の詳細な説明の記載に照らしても明らかである。
(キ)構成D6に係る本件補正発明の解釈は上記(ア)~(カ)のとおりである。
よって、構成d61の「SAWセンサ1_1のチャネル領域Aにおいて圧電素子基板10表面上に」「設けられ」た「反応領域薄膜12」は、構成D6の「前記複数のSAWセンサのそれぞれの前記第1の遅延線の表面に取付けられた感応性層」に含まれる、「第1のSAWセンサ」及び「第1の遅延線」が共に一つである態様に相当するといえる。
キ(ア)上記オ(ウ)における認定と同様に、構成e11~e12を前提としてd22に対応する反射体を用いた別態様として、引用発明は下記構成e12’・e13’を備えると認められる。
構成e12’:
送信側電極部IDT11-3と受信側電極部IDT11-4との機能を兼ねる1つの第2入出力電極が、圧電素子基板10表面上に設けられたチャネル領域R(反応領域薄膜)を挟んでSAWの第2の反射体(反射器)と対向し、
前記≪1つの第2入出力電極≫が、それに入力された正弦波交流信号に対応するSAWを圧電素子基板10の表面に励起し、AWの伝搬方向の長さL2を有するチャネル領域R(反応領域薄膜)が設けられた圧電素子基板10の表面を伝搬させ、
構成e13’:
SAWの第2の反射体(反射器)で反射され、チャネル領域R(反応領域薄膜)が設けられた圧電素子基板10の表面を伝搬してきたSAWを1つの第2入出力電極が受信し、電気信号(検出信号)に変換して出力し、(【0026】)
(イ)上記ア~オの対比を踏まえれば、
・構成e12・e12’の「SAWの伝搬方向の長さL2を有するチャネル領域R(反応領域薄膜)」は構成E1の「第2の遅延線」に相当し、
・構成e12・e12’の「≪1つの第2入出力電極≫が、」「圧電素子基板10の表面に励起」した「SAW」は、構成E1の「第2の弾性表面波」に相当し、
・構成e11の「SAWセンサ1_2(第2弾性表面波素子)」は構成E1の「第2のSAWセンサ」に相当する。
ク 構成e2の「チャネル領域A及びチャネル領域RのSAWの伝搬方向の長さは、チャネル領域Aに比べてチャネル領域Rの方が短く設定されている」ことは、構成E2の「前記第1の遅延線の長さは前記第2の遅延線の長さよりも長い」ことに相当する。
(4)一致点・相違点
上記(3)の対比を踏まえれば、本件補正発明と引用発明とは、下記アの点で一致し、下記イの点で相違する。
ア 一致点
「A 表面弾性波(SAW)デバイスであって、
B 圧電基板と、
C 前記圧電基板に取り付けられ、前記圧電基板の表面に配置された複数のSAWセンサとを備え、
D 前記複数のSAWセンサは、
D1 第1の表面弾性波を伝搬させるように構成された第1の遅延線を備える第1のSAWセンサであって、
D2 前記第1のSAWセンサが、前記圧電基板に位置決めされたトランスデューサと、
前記トランスデューサに対向して前記圧電基板に位置決めされた反射物とを備え、
D3 前記トランスデューサは、第1の遅延線に沿って第1の表面弾性波を伝送し、
D4 前記トランスデューサは、前記第1の表面弾性波が前記反射物で反射して前記第1の遅延線に沿って2回伝搬した後の前記第1の表面弾性波を受信し、
D6 前記複数のSAWセンサのそれぞれの前記第1の遅延線の表面に取付けられた感応性層を備える、第1のSAWセンサ、及び
E1 第2の表面弾性波を伝搬させるように構成された第2の遅延線を備える第2のSAWセンサであって、
E2 前記第1の遅延線の長さは前記第2の遅延線の長さよりも長い、前記第2のSAWセンサを含む、
F 前記SAWデバイス。」
イ 相違点(構成D5)
本件補正発明は、第1の遅延線が第1の表面弾性波の伝搬を制限する導波層を備えるのに対し、引用発明の第1の遅延線では表面弾性波の伝搬は圧電素子基板10の表面で生じ、導波層に相当する特段の付加要素を備えない点。
(5)相違点の判断
ア 圧電素子上に入力用・出力用IDTを設け、弾性表面波の伝搬領域表層に反応性膜を設けることで化学物質や生物学的物質の検出に用いる弾性表面波(SAW)センサにおいて、圧電素子と反応性膜との間に、音響速度が圧電素子よりも遅い材料からなり弾性表面波を該層内に閉じ込める機能を持つ導波路層を設けることは、上記技術事項5における「第2の圧電層(案内膜、案内層)」及び上記技術事項6における「音響導波路層」が本件補正発明の「導波路層」に相当し、上記技術事項5・6として認定したとおり公知の技術である。
本件補正発明の導波層としては実施例において「アルミニウム若しくは金の層、又はポリマー、SiO2若しくはZnOを有する」ものが例示されているが、この点も技術事項5が「酸化亜鉛」(構成5d2)を例示し、技術事項6が「SiO2」を例示(構成6d)していることと共通する。
また、本件補正発明における導波路層の設置目的が、「基板を通じて伝搬するにつれて表面弾性波を制限する」(【0085】)すなわち表面弾性波を(層内に)局在化することにあるとしているのに対し、技術事項5では「それ自体で音響エネルギを閉じ込める」(構成5d3)ことにあるとし、技術事項6では「入力IDTから出力IDTへのSAWの伝送のためSHタイプ波を導波路ラブモードに変換する」(構成6d)、つまり導波路層がある表面に沿って伝わるモードとすることにあるとしている点も、相互に共通する。
そして、弾性表面波の伝搬領域表面に設けた反応領域薄膜12が設けられ、「SAWは圧電素子基板10の表面近傍に集中して伝搬する音響波」であること(構成d32)を要件とする引用発明において、前記技術事項5・6弾性表面波を圧電素子基板が反応領域薄膜12と接する基板表層部により集中させる動機付けは十分に存在するといえる。
以上のとおりであるから、引用発明において、公知技術である技術事項5・6に基づいて相違点の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ(ア)さらに、弾性表面波(SAW)センサにおいて、表層の反応膜(反応領域)と圧電素子基板との間に、弾性表面波を局在化するための導波層を設けることは、上記技術事項5・6に係る引用文献5・6のほか、いずれも本件出願の優先日前に公知であるところの、下記(イ)に一部例示的に摘記する周知文献1~3にも記載されているとおりの周知技術であるともいえる。
よって、引用発明において相違点の構成とすることは、引用発明に同分野における周知技術を適用することによっても当業者が容易になし得たことである。
(イ)周知文献の記載事項
下記周知文献1~3はいずれも、本件出願の優先日前に公知である。
a 周知文献1(国際出願公開第2015/088446)の記載事項
(a)請求項1
[図:0001418016000003.jpg]
(当審訳:「標的インフルエンザウイルスを検出するためのインフルエンザ検出器であって、該インフルエンザ検出器は、液体環境;該液体環境と接触する表面弾性波(SAW)センサー;および該SAWセンサーの表面に固定化され、該標的インフルエンザウイルスに対する分析物を選択的に捕捉するための標的生物活性インフルエンザ種、を含み、該SAWセンサーは、以下からなる: 印加された電界に応答して表面弾性波信号を生成するための圧電材料からなる基板と、該基板の上に形成され、標的生物活性インフルエンザ種を選択的に固定化するためにその上に形成された機能化表面を有する絶縁性層であって、該機能化表面は液体環境と接触しており、該SAWセンサーによって生成される表面音響波信号は、標的インフルエンザウイルスの分析物が液体エムドロンメント中に存在し、SAWセンサーの絶縁性層の機能化表面に固定化された標的生物活性インフルエンザ種によって捕捉されることに応答して変化する、絶縁性層。」)
(b)請求項4
[図:0001418016000004.jpg]
(当審訳:「前記SAWセンサが、前記基板上に形成された、一対の電極幅単相一方向トランスデューサへの2ポート遅延線をさらに備え、前記弾性表面波信号が、液体環境中のインフルエンザAウイルスの被分析物の存在に応答して変化する面内モード弾性表面波信号からなり、前記変化が、無線周波数(RF)範囲S21のSパラメータの位相シフトからなる、請求項1に記載のインフルエンザ検出器。」)
(c)請求項6
[図:0001418016000005.jpg]
(当審訳:「前記面内モード弾性表面波信号がラブモード波信号からなり、前記基板の上面に形成された絶縁層が導波路として機能する、請求項4に記載のインフルエンザ検出器。」)
(d)[0026]
[図:0001418016000006.jpg]
[図:0001418016000007.jpg]
(当審訳:「41°YX Lib03のSAW伝搬は、漏洩SH波モード(すなわち、水平面内で偏極したせん断波またはS波)によるものであるが、LiNb03基板上に導波層を追加することにより、表面に集中するLoveモード波の発生が可能になり、表面感応型デバイスを製造することができる。SiO2は、せん断速度が小さく、LiNb03基板からSi02層へのSAWの効率的な結合を可能にするため、導波路材料として好ましく選択される。また、41°YX LiNb03基板とSi02導波層を用いたラブモードSAWの使用により、ラブモードの面内伝搬は液体中で機械的減衰効果が小さいため、得られるSAWセンサーを液体媒体や液体環境中のウイルス検出に使用することができ、機械的エネルギー損失を最小限に抑えることができる。また、LiNb03の高誘電率とSi02層の高絶縁性により、高周波における液体媒体中の電気エネルギー損失も低減される。」)
b 周知文献2(特表2013-533489号公報)
「【0004】化学的または生物学的検出を行えるものとして開発された1つのタイプの音響力学的センサとしては、弾性表面波(SAW)センサが挙げられる。SAWの一例としては、ラブ型の横波弾性表面波(shear-horizontal surface acoustic wave;SH-SAW)センサが挙げられる。SH-SAWセンサは、以下の4つの主要構成要素を含む:1)圧電基板;2)上記の基板上に配された入力用のすだれ状トランスデューサ(inter-digitated transducer;IDT)であって、圧電効果に基づいて弾性波を励起するために用いられるIDT;3)上記の基板上に配された出力用のIDTであって、伝搬された弾性波を受け取り、圧電効果を利用して電気的出力を発生させるIDT;および4)上記2つのIDTの上に配された導波層であって、波をその導波層内に閉じ込めて、入力用IDTから出力用IDTへと波を伝搬させる導波層。SH-SAWの表面上に1つまたは複数の材料が存在することにより、導波層を通る波の伝搬が影響を受け、所与の検体の検出を容易にする。たとえば、SAWセンサは、SAWデバイスの表面上に生物学的な感知層が設けられた、積層構造のセンサであってもよい。金または二酸化ケイ素の層が、表面上に積層されてもよい。たとえば、金は、高い親和力で蛋白質と相互作用し、抗原検出のための特定の抗体と共に用いることができる。動作時には、SAWセンサは、そのSAWセンサに信号を送出しそのSAWセンサから信号を受け取る回路に、電気的に接続される。典型的には、かかる回路は高周波信号発振器を含む。」
c 周知文献3(中国特許出願公開第102749130号明細書)
導波層の設置については本文中にも随所に記載があるが、それらを代表/要約する記載として摘要欄の記載事項を下記に示す。
第1頁「摘要」欄:
[図:0001418016000008.jpg]
(当審訳:「本発明は、微量物質の質量を測定するためのLOVE波型測定装置であって、同一の圧電基板材料上に作られた入力フォーク指トランスデューサと、2つの同一の出力フォーク指トランスデューサと、入力フォーク指トランスデューサの第1の電極と、入力フォーク指トランスデューサの第2の電極と、出力フォーク指トランスデューサの第1の電極と、出力フォーク指トランスデューサの第2の電極と、入力フォーク指トランスデューサを覆うカバーとを備えるLOVE波型測定装置を開示する、入力フォーク指トランスデューサの第1の電極、入力フォーク指トランスデューサの第2の電極、出力フォーク指トランスデューサの第1の電極、出力フォーク指トランスデューサの第2の電極、および出力フォーク指トランスデューサの第2の電極の端部はすべて、LOVE導波路層から突出しており、2つの出力フォーク指トランスデューサは、入力フォーク指トランスデューサの左右に対称に配置され、入力フォーク指トランスデューサは、出力フォーク指トランスデューサと 入力フォーク指変換器と出力フォーク指変換器の間の領域が測定領域となる。本発明は簡単な構造で、ミリグラム以下の物質の質量を測定することができる。」)
(6)引用発明の構成d22についての予備的見解(上記(3)オ)
ア 上記(3)オにおいては、引用発明の構成d22の態様に基づいて、構成d22’・d31’・d4’・e12’・e13’なる≪追加構成≫をそれぞれ追加的に引用発明の構成として認定し、これに基づいて、本件補正発明との相当関係の判断を行った。
しかし、仮に、前記d22の態様から直ちに前記追加構成が引用発明として認定できないとすれば、本件補正発明と引用発明とは、上記相違点のほか、下記相違点Aにおいて追加的に相違する。
[相違点A](構成D2~D4)
本件補正発明は、トランスデューサが一つであり、弾性表面波を伝送しかつ受信する機能を備えると共に、トランスデューサに対向した位置には反射物を備え、トランスデューサから第1の遅延線に沿って伝送した表面弾性波は、反射物で反射し、前記トランスデューサが第1の遅延線に沿って2回伝搬した後の表面弾性波を受信するのに対し、引用発明では、トランスデューサとしては、第1の遅延線を挟んで伝送用(送信用)と受信用とが対向し、反射物は備えず、受信用のトランスデューサは、伝送用トランスデューサから第1の遅延線に沿って1回伝送した表面弾性波を受信するものである点。
イ 相違点Aについて
上記相違点Aについて念のため検討する。
上記(3)で認定したとおり、引用発明は構成d22として、「一態様として、受信電極の代わりにSAWの反射体(反射器)を設け、送信電極が受信電極の機能を兼ねるようにした1つの入出力電極と、反射器とにより構成される態様」を備える。
そうすると、構成d22を除く構成が、送信用・受信用トランスデューサが対向配置され第1の遅延線に沿って表面弾性波が1回のみ伝送する態様である引用発明において、構成d22の態様に従い、トランスデューサを送受信兼用として受信用トランスデューサの位置に反射体を設け、第1の遅延線に沿って表面弾性波が往復、つまり2回伝送される方式に変更し、上記≪追加構成≫を備えるものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(7)請求人の主張について
ア 審判請求書における請求人の主張について
(ア)請求人の主張
請求人は、令和5年7月5日付け手続補正書により補正された審判請求書(以下「補正審判請求書」という。)において、引用文献1~6、特に引用文献5、6には、本補正の請求項1に記載される、「前記複数のSAWセンサのそれぞれの前記第1の遅延線の表面に取付けられた感応性層」が記載も示唆もされていない旨、主張する。
(イ)請求人の主張について
複数のSAWセンサのうち第1のSAWセンサの要素である第1の遅延線の表面に感応性層に相当する要素を設けることに相当する構成を、引用発明が備える(構成d61)ことは、上記カ(キ)において説示したとおりである。
よって、当該請求人の主張は採用できない。
イ 上申書における請求人の主張について
上申書において請求人は、本件補正発明の新規性・進歩性に関し、「出願人は、令和5年7月5日に審判請求書の請求の理由について補正し、令和5年6月21日付け手続補正書に記載の各請求項に係る発明が新規性及び進歩性を有する旨の主張をしております。」と述べるのみで、補正審判請求書における主張に付加されるべき新たな主張は行っていない。
補正審判請求書における請求人の主張については上記アで説示したとおりである。
ウ 上記ア・イのとおりであるから、上記請求人の各主張を採用することはできない。
(8)小括
上記(1)~(7)のとおりであるから、本件補正発明は、引用文献2に記載された発明並びに引用文献5・6に記載された技術事項、及び/又は周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
3 むすび
上記2において検討したことからみて、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3.本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1~20に係る発明は、査定前補正により補正された、特許請求の範囲の請求項1~20に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2.1(1)に本件補正前請求項1として記載したとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由
本願発明に係る原査定の、引用文献2に基づく拒絶の理由1・2は、概略以下のとおりである。
理由1:本願発明は、その出願前(優先日前)に日本国内又は外国において、頒布された引用文献2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2:本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2の記載事項は、上記第2.2-2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
(1)新規性について
本願発明は概略、本件補正発明の発明特定事項から、構成D5・D6を省いたものである。
上記第2.2-2(3)・(4)で検討したとおり、本件補正発明と引用発明との相違点は構成D5に関するもののみである。そうすると、この構成を省いた本願発明と引用文献2に記載された発明との間に相違点は存在しない。
したがって、本願発明は、引用文献2に記載された発明と同一であり、引用文献2に記載された発明であるといえる。
(2)進歩性について
ア 相違点が認められないこと
上記(1)のとおり本願発明と引用文献2に記載された発明との間には相違点は認められない。
また、仮に相違点が存在するとしても、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たことである。
よって、本願発明は引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
イ 仮に、引用文献2に記載された発明(引用発明)が上記≪追加構成≫を備えるとまでいえないとしても、引用発明に引用文献に記載された該≪追加構成≫に係る技術事項を適用して本件補正発明の構成とすることが当業者にとって容易になし得たことは、上記第2.2-2(6)で説示したとおりである。よって、本件補正発明の構成D5・D6を欠く上位概念にあたる本願発明の構成とすることも、前記説示と同様の理由により、引用発明に引用文献に記載された前記≪追加構成≫に係る技術事項を適用することにより当業者にとって容易になし得たことである。
第4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができないものである。
また、本願発明は、引用文献2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-010276