特許拒絶査定不服審判
2023-020270
プラスティネーションスライス専用の垂直包埋ボックス
- 審判番号
- 2023-020270
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-575892外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年11月30日
- 審決日
- 2024年12月03日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .575-Z (G01N) / P18 .121-Z (G01N) / P18 .113-Z (G01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-575892「プラスティネーションスライス専用の垂直包埋ボックス」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 8月19日国際公開、WO2021/159954、令和 4年 8月29日国内公表、特表2022-537761〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」という。)は、令和3年 1月26日(パリ条約による優先権主張2020年(令和2年) 2月10日、中国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和4年 9月21日付け:拒絶理由通知(最初)
令和5年 3月 3日提出:意見書、手続補正書
令和5年 3月30日付け:拒絶理由通知(最後)
令和5年 6月30日提出:意見書、手続補正書
令和5年 7月28日付け:補正却下の決定、拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和5年11月30日提出:審判請求書、手続補正書
第2 令和 5年11月 30日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和 5年11月 30日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正について
令和 5年11月30日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1を以下のように補正するものである(下線部は補正箇所を示す。)。
(1)本件補正前
「対向して設置される2枚のパネル及び2枚のパネル内に設けられるシール部を含み、前記シール部は2枚のパネルの間に固着される垂直シールストリップ及び水平シールストリップを含み、前記垂直シールストリップは2つ設置され、2つの前記垂直シールストリップの下部の間に水平シールストリップが設けられる、プラスティネーションスライス専用の垂直包埋ボックスであって、
前記シール部はU字形を呈し、前記ボックスの上端が開放され、他の三面が密封された扁平な垂直空間が形成される、
ことを特徴とする、プラスティネーションスライス専用の垂直包埋ボックス。」
(2)本件補正後
「対向して設置される2枚のパネル及び2枚のパネル内に設けられるシール部を含み、前記シール部は2枚のパネルの間に固着される垂直シールストリップ及び水平シールストリップを含み、前記垂直シールストリップは2つ設置され、2つの前記垂直シールストリップの下部の間に水平シールストリップが設けられる、プラスティネーションスライス専用の垂直包埋ボックスであって、
前記シール部はU字形を呈し、前記ボックスの上端が開放され、他の三面が密封された扁平な垂直空間が形成される、
ことを特徴とする、プラスティネーションスライス専用の垂直包埋ボックスであって、
前記垂直シールストリップ及び水平シールストリップの材質はシリコーンゴム又はクロロプレンゴムであることを特徴とする、プラスティネーションスライス専用の垂直包埋ボックス。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「垂直シールストリップ及び水平シールストリップ」について、「材質はシリコーンゴム又はクロロプレンゴムである」と限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である英国特許出願公開第2082041号明細書(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある(下線は当審において付加した。)。
(引-ア)
「This invention relates to the preservation of large sections of biological tissues, specifically to a method which turns such a section, e.g. cross section of a rabbit, into a plastinated sheet, which is a preserved tissue containing polymer sheet of smooth surface and uniform thickness.」(1頁6-11行)
(当審訳:本発明は、生物組織の大切片の保存に関し、具体的には、ウサギの断面などのそのような切片を、滑らかな表面と均一な厚さのポリマーシートを含む保存組織であるプラスティネートシートにする方法に関する。)
(引-イ)
「Stage Ill-Casting plastinated sheets
This stage is the core of my invention. The critical procedure of this stage is shown in the drawing. Therefore several references to the drawing are made in the ensuing description of this stage. The indicating letters of the drawing will be placed in brackets behind the items named.
Two plates, preferably clean toughened glass plates of about the same size are taken and, if necessary, treated with an release agent. A chosen, uncured polymer is taken, deaired and poured as a thin layer in the center of one of the glass plates. A formation of air bubbles should be avoided. The large section which has been prepared by the procedures in stage I and II, impregnated with cured, partially cured (i.e. jelled) or uncured polymer is now placed on the poured layer of uncured polymer. The entrapment of air bubbles has to be avoided. Thereafter a flexible, elastic gasket, preferably made out of especially graded polyvinylchloride and with a thickness of about that one of the impregnated section, is placed on the glass plate, around the impregnated section as it is obvious from the drawing (flexible gasket indicated by letter "d"). For an unexperienced person, it may be helpful to fix the gasket in its position with the aid of very thin polyamid-thread which is fixed in turn with pressure sensitive adhesive tape on the reverse side of the glass plate. Thereafter the impregnated large section is coved with an additional thin layer of uncured polymer. The first glass plate with the impregnated large section (b), the flexible gasket (d) and the poured polymer on it (c) is now covered by the second glass plate. Both glass plates are indicated with letter "a" in the drawing. During this procedure attention has to be paid, to avoid the entrapment of air bubbles above the impregnated large section. As next step in this procedure the two glass plates (a) are pressed together by especially designed clamps (e), holding she impregnated large section and the flexible gasket in its position, thus providing a flat cell, whereby both cut surfaces of the impregnated large section ) are abutting against the inner surfaces of the two glass plates (a). Now an especially designed funnel (f) is placed into the upper slot of this flat cell. The flat cell is tilted upright as it is obvious from the drawing and additional polymer (g) is poured into the cell, merging therein with the previously, beneath and above the section poured polymer (c). Air bubbles (h) are allowed to rise and if allowed to do so both ends of the flexible gaskets are melted together with a soldering tool and squeezed fully between the glass plates. This may be done with te aid of a wooden tongue blade. Polymerization of the uncured polymer can now be implemented. This may be done, dependent upon the kind of uncured, polymer by means of elevated temperature, light or other methods.」(3頁2-59行)
(当審訳:段階 III プラスティネートシートの成型
この段階は、本発明の核心です。この段階の重要な手順は、図面に示されています。したがって、この段階の以下の説明では、図面を何度か参照します。図面の指示文字は、項目名の後ろに括弧で示します。
2枚のプレート、できれば同じサイズの清潔な強化ガラスプレートを用意し、必要に応じて離型剤で処理します。選択した未硬化ポリマーを用意し、脱気して、一方のガラスプレートの中央に薄い層として注ぎます。段階 I および II の手順で準備され、硬化ポリマー、部分的に硬化した (つまり、ゲル化した) ポリマー、または未硬化ポリマーで含浸された大きな切片は、次に、注ぎ込まれた未硬化ポリマーの層の上に配置されます。気泡の閉じ込めは避ける必要があります。その後、好ましくは特別グレードのポリ塩化ビニルで作られ、含浸切片の厚さとほぼ同じ厚さの柔軟で弾性のあるガスケットが、図面から明らかなように、含浸切片の周囲にガラスプレート上に配置されます (柔軟なガスケットは文字「d」で示されています)。経験の浅い人の場合は、非常に細いポリアミド糸の助けを借りてガスケットを所定の位置に固定し、次にガラスプレートの裏側に感圧接着テープで固定すると便利です。その後、含浸された大きな切片は、未硬化ポリマーの追加の薄い層で覆われます。含浸された大きな切片 (b)、柔軟なガスケット (d)、およびその上に注入されたポリマー (c) を備えた最初のガラスプレートは、2番目のガラスプレートで覆われます。両方のガラスプレートは、図面で文字「a」で示されています。この手順中は、含浸された大きな切片の上に気泡が閉じ込められないように注意する必要があります。この手順の次のステップとして、特別に設計されたクランプ (e) で 2枚のガラスプレート (a) を一緒に押し付け、含浸された大きな切片と柔軟なガスケットを所定の位置に保持します。これにより、含浸された大きな切片の両方の切断面が 2枚のガラスプレート (a) の内側の面に接する平らなセルが形成されます。次に、特別に設計された漏斗 (f) をこの平らなセルの上部のスロットに配置します。図面から明らかなように、平らなセルを垂直に傾け、追加のポリマー (g) をセルに注ぎ、そのセル内で、切片の上下に注ぎ込まれたポリマー (c) と融合させます。気泡 (h) が上昇し、気泡が上昇した場合は、柔軟なガスケットの両端をはんだ付けツールで溶かし、ガラスプレートの間に完全に押し込みます。これは、木製の舌状刃を使用して行うことができます。これで、未硬化ポリマーの重合を実行できます。これは、未硬化ポリマーの種類に応じて、高温、光、またはその他の方法によって行うことができます。)
(引-ウ)
図面は、次のとおりのものである。
[図:0001422021000001.jpg]
(引-エ)
上記(引-イ)に記載の「硬化ポリマー、部分的に硬化した(つまり、ゲル化した)ポリマー、または未硬化ポリマーで含浸された大きな切片」、「含浸切片」及び「切片」のいずれも同じ「切片」を意味するものであることは明らかである。
(引-オ)
上記(引-イ)、(引-エ)及び図面より、垂直に立てられた2枚のガラスプレート(a)の間に、含浸切片(b)と、ガスケット(d)とが保持されており、前記ガスケット(d)は、ガラスプレート(a)の上方の辺を除く3辺に沿って配置され、前記含浸切片(b)を下方と両側方とから囲んでおり、前記2枚のガラスプレート(a)の内側に形成された平らなセルに、当該セルの上部に配置された漏斗(f)より追加のポリマー(g)が注がれる一方、気泡(h)が上昇していることが明らかである。
イ 引用文献2に記載された発明
上記(引-ア)ないし(引-オ)より、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。なお、参考のため、認定の主な根拠とした箇所を括弧内に示す。
「2枚のガラスプレート(a)を用意し、
未硬化ポリマー(c)を一方のガラスプレート(a)の中央に薄い層として注ぎ、注ぎ込まれた未硬化ポリマーの層の上に含浸切片(b)を配置し、ポリ塩化ビニルで作られ、前記含浸切片の厚さとほぼ同じ厚さの柔軟で弾性のあるガスケット(d)が、前記含浸切片(b)の周囲にガラスプレート(a)上に配置され、前記含浸切片(b)は、未硬化ポリマーの追加の薄い層で覆われ、
前記含浸切片(b)、前記柔軟なガスケット(d)、およびその上に注入されたポリマー(c)を備えた前記一方のガラスプレート(a)を他方のガラスプレート(a)で覆った後、
クランプ(e)で2枚のガラスプレート(a)を一緒に押し付け、前記含浸切片(b)と前記ガスケット(d)を所定の位置に保持することにより、前記含浸切片(b)の両方の切断面が2枚のガラスプレート(a)の内側の面に接する平らなセルを形成し、
次に、漏斗(f)をこの平らなセルの上部のスロットに配置し、前記平らなセルを垂直に傾け、追加のポリマー(g)を前記平らなセルに注ぎ、そのセル内で前記含浸切片(b)の上下に注ぎ込まれた前記未硬化ポリマー(c)と融合させ、未硬化ポリマー(c)の重合を実行して得られる((引―イ)、(引-エ)、図面)、
プラスティネートシートであって((引―ア))、
前記追加のポリマー(g)を前記平らなセルに注ぐ際、垂直に立てられた2枚のガラスプレート(a)の間に、前記含浸切片(b)と、前記ガスケット(d)とが保持されており、前記ガスケット(d)は、ガラスプレート(a)の上方の辺を除く3辺に沿って配置され、前記含浸切片(b)を下方と両側方とから囲んでおり、前記2枚のガラスプレート(a)の内側に形成された平らなセルに、当該セルの上部に配置された漏斗(f)より追加のポリマー(g)が注がれる一方、気泡(h)が上昇するもの((引―オ)、図面)。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「2枚のガラスプレート(a)」及び「プラスティネートシート」は、それぞれ、本件補正発明における「2枚のパネル」及び「プラスティネーションスライス」に相当する。
イ 引用発明の「2枚のガラスプレート(a)」は、クランプ(e)により一緒に押し付けられて、含浸切片(b)と柔軟なガスケットを所定の位置に保持するものであるから、「対向して設置される2枚のパネル」といえる。
ウ 「ガスケット」と、「シール部」とは、一般に、部材間の隙間等を埋めて密閉性を維持するために用いられるものとして共通し、引用発明における「ガスケット」と、本件補正発明における「シール部」とは、2枚のパネルの間に固定されて(2枚のガラスプレート(a)の間に保持されて)、密閉性を維持して、注がれる液体(追加のポリマー(g))を漏らさないという共通の機能を果たすものである。
よって、引用発明における「ガスケット」は、本件補正発明における「シール部」に相当する。
エ 引用発明の「含浸切片の厚さとほぼ同じ厚さの柔軟で弾性のあるガスケット(シール部)」は、2枚のガラスプレート(a)の間に保持され、かつ、ガラスプレート(a)の上方の辺を除く3辺に沿って配置され、前記含浸切片を下方と両側方とから囲むものであるから、本件補正発明のシール部と、「2枚のパネルの間に固着される垂直シールストリップ及び水平シールストリップを含み、前記垂直シールストリップは2つ設置され、2つの前記垂直シールストリップの下部の間に水平シールストリップが設けられる」点及び「U字形を呈し」ている点で共通する。
オ 引用発明において、追加のポリマー(g)を平らなセルに注ぐ際、垂直に立てられた2枚のガラスプレート(a)の間に、含浸切片(b)と、柔軟なガスケット(d)とが保持されており、前記柔軟なガスケット(d)は、ガラスプレート(a)の上方の辺を除く3辺に沿って配置され、前記含浸切片を下方と両側方とから囲んでいるから、「前記2枚のガラスプレート(a)の内側に形成された平らなセル」は、本件補正発明の「ボックスの上端が開放され、他の三面が密封された扁平な垂直空間」に相当する。
また、引用発明において、「平らなセル」を囲む「2枚のガラスプレート(a)」及び「柔軟なガスケット(d)」は、本件補正発明の「プラスティネーションスライス専用の垂直包埋ボックス」に相当する。
(4)一致点・相違点
上記(3)から、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「対向して設置される2枚のパネル及び2枚のパネル内に設けられるシール部を含み、前記シール部は2枚のパネルの間に固着される垂直シールストリップ及び水平シールストリップを含み、前記垂直シールストリップは2つ設置され、2つの前記垂直シールストリップの下部の間に水平シールストリップが設けられる、プラスティネーションスライス専用の垂直包埋ボックスであって、
前記シール部はU字形を呈し、前記ボックスの上端が開放され、他の三面が密封された扁平な垂直空間が形成されるプラスティネーションスライス専用の垂直包埋ボックス。」
(相違点)
「前記垂直シールストリップ及び水平シールストリップの材質が、本件補正発明では、シリコーンゴム又はクロロプレンゴムであると特定されているのに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。」
(5)判断
上記相違点について検討する。
ア 材質がシリコーンゴムであるガスケット(シール部)は、特開2009-236589号公報【0023】(当審注:シリコンゴムは、シリコーンゴムを意味するものと認められる。)、特開2004-226207号公報【0076】、特開2005-83968号公報【0016】及び【0017】、特開平4-259452号公報【0040】(当審注:シール部材は、シール部を意味するものと認められる。)に開示されるように周知である。
イ 引用発明におけるガスケット(シール部)は、2枚のガラスプレート(2枚のパネル)と共に平らなセル(扁平な垂直空間)を形成して、注がれた追加のポリマーを漏らすことなく保持するものであるところ、このように液体を漏らすことなく保持するガスケット(シール部)の材質として周知のシリコーンゴムを用いることは、当業者であれば適宜なし得たことである。
ウ 本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び上記周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものに過ぎず、格別に顕著なものということはできない。
エ したがって、本件補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)審判請求人の主張について
ア 審判請求人は、審判請求の理由において次の主張をしている。
『本願発明と引用文献2記載の発明では、以下のような相違点があります。
本願発明では「垂直シールストリップ及び水平シールストリップの材質はシリコーンゴム又はクロロプレンゴム」であります。これは、補正前の請求項6の特徴から、さらに、垂直シールストリップ及び水平シールストリップの材質を、シリコーンゴム又はクロロプレンゴムに限定する補正を行ったものです。一方で、引用文献2記載の発明では、これに相当するものが「柔軟で弾性のあるガスケット」であります。
本願発明におけるシリコーンゴムは、「耐熱、耐低温特性、及び良好な疎水性、通気性及び絶縁性能を有する」という効果を有します。また、本願発明におけるクロロプレンゴムは、「シール材質として良好な耐薬品性及び接着性を有する」という効果を有します。
これらの効果は、引用文献2におけるガスケットにはない効果です。引用文献2にはシリコーンゴムについての記載はありますが、プラスティネートシートの鋳造に用いることが記載されているのみであり、ガスケットの代わりとして用いることは記載も示唆もされていません。
さらに、審査官殿は、「ガスケットの材料は、当業者であれば公知の材料から適宜選択し得る設計事項にすぎず、格別なことではない」と指摘されています。
しかしながら、引用文献2にはない本願発明におけるシリコーンゴムの「耐熱、耐低温特性、及び良好な疎水性、通気性及び絶縁性能を有する」という効果、クロロプレンゴムの、「シール材質として良好な耐薬品性及び接着性を有する」という効果を得るために、どのような材料をガスケットの代わりとして用いるかは無数に考えられるため、どれを用いれば良いかは当業者であっても容易に想到し得ません。
以上の理由から、本件補正後の請求項1は進歩性を有するものであると判断いたします。』
イ 上記主張に係る相違点及び本件補正発明の奏する作用効果については、上記(5)にて述べたとおり、シリコーンゴムの有する物性(特徴)として広く知られたものに過ぎない。
よって、上記主張を本件補正発明が進歩性を有することの証左として採用することはできない。
(7)まとめ
以上のとおり、本件補正発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和 5年11月30日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和5年 3月 3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし5及び7に係る発明は、その優先日前に頒布された刊行物である下記の引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献2:英国特許出願公開第2082041号明細書
3 引用文献2について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2の記載事項及び引用発明は、上記第2[理由]2(2)アないしイに記載したとおりである。
4 対比・判断
(1)本願発明は、上記第2[理由]2(3)ないし(5)で検討した本件補正発明に対して、「前記垂直シールストリップ及び水平シールストリップの材質はシリコーンゴム又はクロロプレンゴムである」という限定事項を削除したものである。
(2)上記(1)の削除された限定事項は、前記第2[理由]2(4)に記載の相違点そのものである。
(3)そうすると、本願発明と引用発明とは、前記第2[理由]2(4)に記載の一致点で共通し、両者の間に相違点はない。よって、本願発明は、引用文献2に記載された発明である。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願優先日前に頒布された刊行物である引用文献2に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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