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特許拒絶査定不服審判

2023-009869

高層間密着性ガスバリア蒸着フィルム

審判番号
2023-009869
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-032274外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年06月14日
審決日
2025年04月01日
公報発行日
2025年06月27日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (B32B) / P18 .572-Z (B32B) / P18 .575-Z (B32B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-32274号「高層間密着性ガスバリア蒸着フィルム」拒絶査定不服審判事件〔令和2年8月31日出願公開、特開2020-131675号〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 12項目
理 由

第1 手続の経緯

本願は、平成31年2月26日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和4年10月14日付け:拒絶理由通知書
令和4年12月19日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 3月 7日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)

(令和5年 3月14日 :原査定の謄本の送達)

令和5年 6月14日 :審判請求書の提出、同時に手続補正書の提出

第2 令和5年6月14日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和5年6月14日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について

本件補正は、以下(1)の令和4年12月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下(2)の記載にする補正を含むものである。なお、下線部は、補正箇所である。

(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載

「【請求項1】
基材層とガスバリア層と接着剤層とシーラント層とをこの順に有する高層間密着性ガスバリア積層体であって、
該基材層は、ポリプロピレン系樹脂を含有する2軸延伸樹脂フィルムからなる層と、PVA系樹脂層とを有し、
該2軸延伸樹脂フィルムからなる層の厚みは10μm以上、50μm以下であり、
該PVA系樹脂層の厚みは0.3μm以上、1.5μm以下であり、
該ガスバリア層は、酸化珪素蒸着層を有し、
該酸化珪素蒸着層は、プラズマCVD法蒸着によって、該PVA系樹脂層の上に接して積層されており、
該シーラント層は、ヒートシール性を有する無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムから形成された層であり、
JISK7126に準拠して、23℃、相対湿度90%RH環境下において測定した酸素透過度が5cc/m2・day・atm以下であり、JIS K7129に準拠して、40℃、相対湿度90%RH環境下において測定した水蒸気透過度水蒸気透過度が0.8g/m2・day以下のガスバリア性を有し、
該酸化珪素蒸着層と該PVA系樹脂層との間の層間密着強度が、3N/15mm以上であることを特徴とする、高層間密着性ガスバリア積層体。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載

「【請求項1】
基材層とガスバリア層と接着剤層とシーラント層とをこの順に有する高層間密着性ガスバリア積層体であって、
該基材層は、ポリプロピレン系樹脂を含有する2軸延伸樹脂フィルムからなる層と、PVA系樹脂層とを有し、
該基材層は、PVA系樹脂層を表面に有し、
続きを表示(全13行)
該ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンモノマーの重合体、またはプロピレンモノマーと炭素数2~8のアルケンモノマーとの共重合体であり、
該PVA系樹脂層は、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリビニルアルコ一ル、またはエチレンと酢酸ビニルとの共重合体をケン化して得られたエチレン・ビニルアルコール共重合体からなり、PVA系樹脂のケン化度は、80~100モル%であって、
該2軸延伸樹脂フィルムからなる層の厚みは10μm以上、50μm以下であり、
該PVA系樹脂層の厚みは0.3μm以上、1.5μm以下であり、
該ガスバリア層は、酸化珪素蒸着層を有し、
該酸化珪素蒸着層は、プラズマCVD法蒸着によって、該PVA系樹脂層の上に接して積層されており、
該シーラント層は、ヒートシール性を有する無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムから形成された層であり、
JISK7126に準拠して、23℃、相対湿度90%RH環境下において測定した酸素透過度が0.6~5cc/m2・day・atm以下であり、JIS K7129に準拠して、40℃、相対湿度90%RH環境下において測定した水蒸気透過度が0.8g/m2・day以下のガスバリア性を有し、
該酸化珪素蒸着層と該PVA系樹脂層との間の層間密着強度が、4N/15mm以上であることを特徴とする、高層間密着性ガスバリア積層体。」

2 本件補正の適否

本件補正は、基材層について、「PVA系樹脂層を表面に有し、該ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンモノマーの重合体、またはプロピレンモノマーと炭素数2~8のアルケンモノマーとの共重合体であり、該PVA系樹脂層は、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリビニルアルコ一ル、またはエチレンと酢酸ビニルとの共重合体をケン化して得られたエチレン・ビニルアルコール共重合体からなり、PVA系樹脂のケン化度は、80~100モル%であ」るとの事項を追加するとともに、「酸素透過度が0.6~5cc/m2・day・atm以下」であり、「該酸化珪素蒸着層と該PVA系樹脂層との間の層間密着強度が、4N/15mm以上である」ことを特定するものである。そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載及び引用発明等

ア 引用文献1の記載事項等

折りたたみ中(クリックで表示)

(ア)原査定の拒絶の理由で引用された特開平9-201897号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(下線は当審において付与し、・・・は省略を示す。以下同様。)。

・「【請求項1】オレフィン系樹脂層の上面に、エチレン含有量20~50モル%、ケン化度が90%以上のエチレン・ビニルアルコール共重合体の塗布層を介して無機酸化物層を形成した、ガスバリア性オレフィン系樹脂積層体。

・・・

【請求項3】オレフィン系樹脂層が二軸延伸されてなる請求項1記載のガスバリア性オレフィン系樹脂積層体。

【請求項4】エチレン・ビニルアルコール共重合体がエチレン含有量25~35モル%、かつ、ケン化度が96~100%である請求項1記載のガスバリア性オレフィン系樹脂積層体。

【請求項5】オレフィン系樹脂層の厚さが10~500μm、エチレン・ビニルアルコール共重合体の塗布層の厚さが0.03~5.0μm、無機酸化物層の厚さが4~500nm、かつ、無機酸化物層/エチレン・ビニルアルコール層の塗布層の厚さ比が0.003~1である請求項1記載のガスバリア性オレフィン系樹脂積層体。」

・「【0002】

【従来の技術】食品、電子工業部品等をフィルム、容器で包装し酸素の透過を抑制することにより内容物の酸化を防止し、品質を長期間保つことが提案されている。例えば、特公昭53-12953号、特開平4-353532号公報には、厚さが5~300μmのポリエチレンテレフタレート、セロファン、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン等のフレキシブルプラスチックフィルムの少なくとも片面に一般式SixOy(x=1,2、y=0,1,2,3)なる組成の珪素化合物の厚さ100~3000オングストロームの透明薄膜層を設けた高度の透気防止性と透湿防止性を有する透明フレキシブルプラスチックフィルムが開示されている。」

・「【0007】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、無機酸化物薄膜が積層されたオレフィン系樹脂積層体で、ガスバリア性に優れ、更にこれの二次加工時や使用時に無機酸化薄膜が剥離せず、ガスバリア性が低下しないオレフィン系樹脂積層体を提供することを目的とするものである。

【0008】

【課題を解決するための手段】本発明は、オレフィン系樹脂層の上面に、エチレン含有量が20~50モル%、ケン化度が90%以上のエチレン・ビニルアルコール共重合体の塗布層を介して無機酸化物層を形成した、ガスバリア性の付与された、オレフィン系樹脂積層体を提供するものである。

【0009】

【作用】エチレン・ビニルアルコール共重合体と無機酸化物を組み合わせることにより良好なガスバリア性が得られ、更にエチレン・ビニルアルコール共重合体のアルコール性水酸基の存在により、基材と無機酸化物層の密着性がより強固となると共に、欠陥の少ない緻密な無機酸化物層を有するオレフィン系樹脂積層体を得ることができる。又、塗布によりエチレン・ビニルアルコール共重合体層を設けることにより、表面が平滑になり、無機酸化物層が均一にかつ緻密に積層するため、厚さが薄くても良好なガスバリア性が得られ、又、外部からの力でもガスバリア性が低下しないオレフィン系樹脂積層体を得ることができる。」

・「【0010】

【発明の実施の形態】

オレフィン系樹脂

オレフィン系樹脂層を形成するオレフィン系樹脂は、プロピレンホモポリマー、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン-1共重合体、プロピレン・4-メチルペンテン-1共重合体等のプロピレン系樹脂、リニア-ポリエチレン等のエチレン系樹脂、あるいは、α、β-不飽和カルボン酸で変性したオレフィン系樹脂が利用出来る。これらは2種以上混合してもよく、あるいは、積層して用いてもよく、更に、一方向、或いは二方向に、延伸されていてもよい。更に、抗ブロッキング剤、核剤、安定剤、滑剤等含有していてもよい。

・・・

【0012】また、オレフィン系樹脂層の厚さは特に制限されないが一般に5~1000μm、好ましくは10~500μm、特に好ましくは15~200μmのフィルム、シートからなる板状体とされる。更に、オレフィン系樹脂からなる板状体を真空成形、圧空成形等で二次加工してもよい。

【0013】エチレン・ビニルアルコール共重合体の塗布層

塗布層を形成するエチレン・ビニルアルコール共重合体は、エチレンが20~50モル%、好ましくは25~35モル%、ビニルアルコールが50~80モル%、好ましくは65~75モル%の共重合体であって、通常は、エチレンと酢酸ビニル(50~80モル%)との共重合体を苛性ソーダ、苛性カリ等のアルカリでケン化度が90%以上、好ましくは96~100%となるように加水分解して得られるものである。ビニルアルコールが共重合体中に占める割合が50モル%未満では、無機酸化物層との接着力が十分でない。逆に80モル%を越えると延伸性等の加工性が損なわれる。

・・・

【0016】エチレン・ビニルアルコール共重合体を塗布した積層体は、必要に応じて一方向、或いは二方向に延伸される。延伸倍率は一般に一方向に3倍以上、好ましくは5倍以上に延伸される。更に、表面を、コロナ処理、オゾン処理、グロー放電処理、プラズマ処理、火炎処理などの表面処理を施してもよい。エチレン・ビニルアルコール共重合体の塗布層の厚さは、好ましくは0.03~5μm、さらに好ましくは0.05~1.0μmである。エチレン・ビニルアルコール共重合体の塗布層の厚さが0.03μm未満では、効果が乏しく、逆に、5μmを越えると、ガスバリア性能は良くなるが、湿度依存性が大きくなり、また経済的にも好ましくない。

【0017】無機酸化物層

本発明の無機酸化物としては、透明な無機酸化物層を形成するものが好ましく、珪素、アルミニウム、チタン、錫、亜鉛、マグネシウム、インジウム等の酸化物が挙げられ、これらの内の1種類、或いは2種類以上の混合物であってもよい。好ましくは、珪素酸化物、アルミニウム酸化物、或いはこれらの混合物が用いられる。無機酸化物層の厚さは、好ましくは4~500nm、更に好ましくは7~300nmである。

・・・

【0020】樹脂積層体

樹脂積層体の厚さは特に制限されないが一般に5~1000μm、好ましくは10~500μm特に好ましくは15~200μmである。また、本発明ガスバリア性オレフィン系樹脂積層体には、必要に応じてその片面あるいは両面に熱可塑性樹脂フィルム等を積層することができる。」

・「【0021】以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、これにより本発明の範囲は特に限定されるものではない。

実施例1

ポリプロピレン(MFR2.3g/10分)樹脂を押出機内で溶融し、Tダイより、シート状に押出し、未延伸のシートを得た。この未延伸シートを周速の異なる加熱ロール群からなる縦延伸機で、130℃の温度で5倍に延伸し、続いて、この縦延伸シートを90℃に加熱ロールで熱加温し、片面に、コロナ放電処理を施した。次に、80℃に加熱したエチレン(29モル%)・ビニルアルコール(71モル%)ランダム共重合樹脂(日本合成化学工業(株)ソアノール30L(商品名);融点188℃)塗布液(樹脂濃度30重量%)を、コロナ放電処理面に、メタリングバーコーターを用いてウエット膜15μm厚さにコーティングし、搬送ローラを介してテンターに導入し、165℃で横方向に10倍延伸し、160℃で熱セットし、このフィルムのコーティング面に加温コロナ処理を行い、厚さ20μmのエチレン・ビニルアルコール樹脂コーティングフィルム(コート層0.45μm)を得た。このフィルムを、プラズマ蒸着装置(BP-1;サムコインターナショナル研究所)内に置き、装置内を1.33×10-4Paの減圧下にしたのち、ヘキサメチルジシロキサン3容量部、酸素3容量部、ヘリウム20容量部の混合気体を導き、不平衡型マグネトロンよりグロー放電を行ってプラズマを発生させ、エチレン・ビニルアルコール樹脂のコーティング層側にSiO2層(厚さ50nm)を形成させた。このフィルムの酸素透過度を測定した。

【0022】実施例2

ポリプロピレン(MFR2.3g/10分)樹脂と接着性樹脂として、無水マレイン酸(0.35重量%)グラフトポリプロピレン(三菱化学株式会社製“モディック MFS-3”)を別々の押出機で溶融したものを一台のダイに供給し、ダイ内で層状に重ねて押出し、20μmの二層フィルム(層構成、ポリプロピレン/接着性樹脂=19μm/1μm)を得た。得られた接着性樹脂側に、コロナ放電処理を施し、コロナ放電処理面に、グラビアロール(100メッシュ)で実施例1と同様のエチレン・ビニルアルコールランダム共重合樹脂塗布液を塗布した。このフィルムのコーティング面に、加温コロナ処理を行い、エチレン・ビニルアルコール樹脂コーチィングフィルム(コート層0.6μm)を得た。このフィルムを実施例1と同様にSiO2層(厚さ50nm)を形成させた。このフィルムの酸素透過率を測定した。」

・「【0027】評価

(1)二次加工に対する変化

実施例1、2、3、および比較例1、2、3、4、5で得た二軸延伸フィルムの無機酸化物層面、あるいはコロナ放電処理面に、ラミネータ装置を用い、MFRが5g/10分、密度0.922g/cm3の低密度ポリエチレンを320℃で20μmの肉厚のフィルム状にT-ダイより押し出し、ラミネートした。このラミネート物の酸素透過率を表1に示す。

【0028】(2)外応力に対する変化

実施例1、2、3、および比較例1、2、3、4、5で得た二軸延伸フィルム、および低密度ポリエチレンとのラミネートフィルムを、名立計器(株)製ゲルボテスターを用い、フィルムを筒状に丸めたのち、この筒の両端をテスターの把持器具に固定し、10回、±90度回転ねじりの繰り返しを行った後、酸素透過率を測定した。その測定値を表1に示す。

【0029】

【表1】

[図:0001422882000001.jpg]

【0030】

【発明の効果】本発明の無機酸化物が蒸着したオレフィン系樹脂積層体は、塗布によりエチレン・ビニルアルコール共重合体層を設けることにより、表面が平滑になり、無機酸化物層が均一にかつ緻密に積層するため、厚さが薄くても良好なガスバリア性が得られ、又、二次加工時や使用時の外部からの熱や力が加わってもガスバリア性が低下しないオレフィン系樹脂積層体を得ることができる。」

(イ)上記指摘事項から、以下の事項が把握される。

a 段落【0021】より、「プラズマ蒸着装置(BP-1;サムコインターナショナル研究所)」は、装置内を減圧下にし、グロー放電を行いプラズマを発生させていることから、プラズマCVD法によりSiO2層を形成している。

b 段落【0007】、【0028】、【0030】より、評価では、実施例1~3の積層体に対し、外応力を加えた場合の酸素透過率についても測定しており、それは表1における「変形後」の酸素透過率といえる。そして、「初期」の酸素透過率は、外応力を加える前の状態の酸素透過率といえる。

c 上記b及び表1より、実施例1の積層体の酸素透過率は0.3cc/m2・atm/日であり、実施例2の積層体の酸素透過率は0.6cc/m2・atm/日である。

(ウ)引用発明

以上より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ポリプロピレン(MFR2.3g/10分)樹脂を押出機内で溶融し、Tダイより、シート状に押出し、未延伸のシートを得て、この未延伸シートを周速の異なる加熱ロール群からなる縦延伸機で、130℃の温度で5倍に延伸し、続いて、この縦延伸シートを90℃に加熱ロールで熱加温し、片面に、コロナ放電処理を施し、80℃に加熱したエチレン(29モル%)・ビニルアルコール(71モル%)ランダム共重合樹脂(日本合成化学工業(株)ソアノール30L(商品名);融点188℃)塗布液(樹脂濃度30重量%)を、コロナ放電処理面に、メタリングバーコーターを用いてウエット膜15μm厚さにコーティングし、搬送ローラを介してテンターに導入し、165℃で横方向に10倍延伸し、160℃で熱セットし、このフィルムのコーティング面に加温コロナ処理を行い、厚さ20μmのエチレン・ビニルアルコール樹脂コーティングフィルム(コート層0.45μm)を得て、このフィルムを、プラズマ蒸着装置(BP-1;サムコインターナショナル研究所)内に置き、装置内を1.33×10-4Paの減圧下にしたのち、ヘキサメチルジシロキサン3容量部、酸素3容量部、ヘリウム20容量部の混合気体を導き、不平衡型マグネトロンよりグロー放電を行ってプラズマを発生させ、エチレン・ビニルアルコール樹脂のコーティング層側にプラズマCVD法によりSiO2層(厚さ50nm)を形成させ、
エチレン・ビニルアルコール共重合体のケン化度は90%以上が好ましく、
酸素透過率は0.3cc/m2・atm/日であるガスバリア性オレフィン系樹脂積層体。」

イ 引用文献2記載事項

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(ア)引用文献2の記載事項

原査定の拒絶の理由で引用した特開2000-218726号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。

・「【請求項1】基材フィルムの少なくとも片面に、透明プライマー層、厚さ5~300nmの無機酸化物からなる蒸着薄膜層、水溶性高分子と、(a)1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物又は、(b)塩化錫の少なくとも一方を含む水溶液或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、加熱乾燥してなるガスバリア被膜層を順次積層し、さらに接着剤層を介して透明プラスチック材料を積層し、さらに基材フィルムの透明プライマー層を設けた反対面に接着剤層を介してシール層としてポリオレフィン系熱可塑性樹脂を積層したことを特徴とする強密着透明積層体。」

・「【0049】またシール層6は袋状包装体などを形成する際に接着層として設けられるものである。例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体及びそれらの金属架橋物等の樹脂が用いられる。厚さは目的に応じて決められるが、一般的には15~200μmの範囲である。形成方法としては、上記樹脂からなるフィルム状のものを2液硬化型ウレタン樹脂などの接着剤を用いて貼り合わせるドライラミネート法等を用いることが一般的であるがいずれも公知の方法により積層することができる。」

(イ)引用文献2記載事項

上記(ア)より引用文献2には次の事項(以下「引用文献2記載事項」)が記載されている。

「強密着透明積層体において、シール層6にポリプロピレンを用い、接着剤を用いて基材フィルムに貼り合わせること。」

ウ 引用文献3記載事項

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(ア)引用文献3の記載事項

原査定の拒絶の理由で引用した特開2019-6437号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに次の記載がある。

・「【0020】

図1に示した積層体10は、基材層11と、印刷層14と、接着剤層15と、バリア層13を構成する金属箔131と、接着剤層16と、シーラント層12とをこの順に備える。積層体10を備える包装袋においては、シーラント層12が内面側に位置する。」

・「【0030】

[シーラント層]

シーラント層は、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレンから選択される1種または2種以上の樹脂を含む。シーラント層は、単層であってもよく、多層であってもよい。また、シーラント層は、好ましくは無延伸のフィルムからなる。」

・「【図1】

[図:0001422882000002.jpg]

」

(イ)引用文献3記載事項

上記(ア)より引用文献3には次の事項(以下「引用文献3記載事項」)が記載されている。

「積層体10において、基材層11に接着剤層15を介して無延伸のポリプロピレンからなるシーラント層12を設けること。」

エ 周知技術1

(ア)引用文献4の記載事項

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新たに引用する特開平11-300875号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。

・「【0035】上記実施例1、2および比較例1、2のアルミニウム・酸化アルミニウムが積層された複合フィルムについて、酸素透過度、水蒸気透過度等を評価した結果を表1に示した。なお、評価方法として、

(1)酸素透過度・・・MOCONOXTRAN10/50A酸素ガス透過度測定装置(モダンコントロール社製)を用いて、30℃℃、70%RHの雰囲気下で測定し、酸素透過度とした。

(2)水蒸気透過度・・・JIS Z-0208のカップ法により、40℃、90%の雰囲気下で測定し、水蒸気透過度とした。

・・・

また、表中の酸素透過度の単位はすべてcc/m2/Day、水蒸気透過度の単位はg/m2/Day、光線透過度の単位は%、膜の厚さの単位はnmである。なお、加工時の膜の厚さの設定値と実際の測定値には若干の違いがある。

【0036】

【表1】

[図:0001422882000003.jpg]

」

(イ)引用文献4から把握される事項

上記(ア)より、実施例1に着目すると、引用文献4から以下の事項が把握される。

「30℃、70%RHの雰囲気下で測定した酸素透過度が1.1cc/m2/Dayであり、40℃、90%の雰囲気下で測定した水蒸気透過度が0.7g/m2/Dayである複合フィルム。」

(ウ)引用文献5の記載事項

新たに引用する特開2016-33054号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。

・「【0062】

(評価)

実施例1及び比較例1~6で製造した使い捨てカイロ外袋用多層フィルムを用いて、以下のとおり、酸素透過度、水蒸気透過度及び外観評価を行った。

【0063】

(1)酸素透過度の測定

以下の温度及び湿度の条件において、以下の測定機械を以下の測定条件で用いて酸素透過度(cc/(m2・day・atm))を測定した。

温度:20℃、湿度:90%RH、
測定機械:モコン(mocon)社製 OX-TRAN 2/20、測定方法:30分おき 20回連続測定

【0064】

(2)水蒸気透過度の測定

以下の温度及び湿度の条件において、以下の測定機械を以下の測定条件で用いて、水蒸気透過度(g/(m2・day))を測定した。

温度:40℃、湿度:90%RH、
測定機械:モコン(mocon)社製 OX-TRAN 2/20、測定方法:30分おき 20回連続測定」

・「【0075】

【表2】

[図:0001422882000004.jpg]

」

(エ)引用文献5から把握される事項

上記(ウ)より、実施例1に着目すると、引用文献5から以下の事項が把握される。

「20℃、90%RHで測定した酸素透過度が3.7cc/(m2・day・atm)であり、40℃、90%RHで測定した水蒸気透過度が0.5g/(m2・day)である多層フィルム。」

(オ)周知技術1

上記(イ)、(エ)より、以下の事項は周知の事項であることが把握される(以下「周知技術1」という。)。

「30℃、70%RHの雰囲気下で測定した酸素透過度が1.1cc/m2/Dayであり、40℃、90%の雰囲気下で測定した水蒸気透過度が0.7g/m2/Dayあるいは、
20℃、90%RHで測定した酸素透過度が3.7cc/(m2・day・atm)であり、40℃、90%RHで測定した水蒸気透過度が0.5g/(m2・day)であるフィルム。」

オ 周知技術2

(ア)引用文献6の記載事項

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新たに引用する特開2018-134844号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある。

・「【0044】

また、太陽電池モジュールを施工する際や曲げが生じた場合に、バリアフィルム内部での剥離を防止するために、第1のフィルム6、第2のフィルム7とエポキシ系樹脂含有層3とのT字型剥離試験で測定される層間密着強度は5N/25mm以上であることが好ましく、10N/25mm以上であることがさらに好ましい。一方、上限は特にない。」

(イ)引用文献7の記載事項

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新たに引用する国際公開第2007/123095号(以下「引用文献7」という。)には、次の記載がある。

・「[0027] 本発明の成形部材用二軸配向ポリエステルフィルムは、成形後の層間の剥離を防ぐために、A層とB層との層間密着力が5N/15mm以上であることが必要である。A層とB層との層間密着力が5N/15mm未満であれば、ポリエステルフィルムまたは、ポリエステルフィルムを使用した成形部材を成形加工した後に、A層/B層の界面で剥離が発生してしまう場合がある。さらに好ましい層間密着力は8N/15mm以上であり、12N/15mm以上であれば最も好ましい。」

(ウ)周知技術2

上記(ア)、(イ)より、以下の事項は周知の事項であることが把握される(以下「周知技術2」という。)。

「積層体の層間密着強度は5N/25mmあるいは5N/15mm以上が好ましく、層間密着強度は大きい方がより好ましいこと。」

(3)本件補正発明との対比

ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。

・引用発明の「ポリプロピレン(MFR2.3g/10分)樹脂」は、その機能、構造及び技術的意義を考慮して対比すると、本件補正発明の「ポリプロピレン系樹脂」に相当し、以下同様に、

「エチレン(29モル%)・ビニルアルコール(71モル%)ランダム共重合樹脂(日本合成化学工業(株)ソアノール30L(商品名);融点188℃)」は、「PVA系樹脂」に、

「SiO2層」は、「酸化珪素蒸着層を有」する「ガスバリア層」にそれぞれ相当する。

また、引用発明の「ガスバリア性オレフィン系樹脂積層体」と、本件補正発明の「高層間密着性ガスバリア積層体」とは、「ガスバリア積層体」の限りで一致する。

・引用発明では「ポリプロピレン(MFR2.3g/10分)樹脂」の片面に、「エチレン(29モル%)・ビニルアルコール(71モル%)ランダム共重合樹脂(日本合成化学工業(株)ソアノール30L(商品名);融点188℃)」をコーティングしていることから、引用発明の「ガスバリア性オレフィン系樹脂積層体」と本件補正発明の「基材層とガスバリア層と接着剤層とシーラント層とをこの順に有する高層間密着性ガスバリア積層体」とは、「基材層とガスバリア層とをこの順に有するガスバリア積層体」の限りで一致する。

また、引用発明の「ポリプロピレン(MFR2.3g/10分)樹脂」は「縦延伸機で、130℃の温度で5倍に延伸し」ていることから、引用発明の「エチレン・ビニルアルコール樹脂コーティングフィルム(コート層0.45μm)」と、本件補正発明の「ポリプロピレン系樹脂を含有する2軸延伸樹脂フィルムからなる層と、PVA系樹脂層とを有し」、「PVA系樹脂層を表面に有」する「基材層」とは、「ポリプロピレン系樹脂を含有する延伸樹脂フィルムからなる層と、PVA系樹脂層とを有し」、「PVA系樹脂層を表面に有」する「基材層」の限りで一致する。

・引用発明の「ポリプロピレン(MFR2.3g/10分)樹脂」は、本件補正発明の「プロピレンモノマーの重合体、またはプロピレンモノマーと炭素数2~8のアルケンモノマーとの共重合体であ」るといえる。

・引用発明の「ケン化度は90%以上が好まし」い「エチレン(29モル%)・ビニルアルコール(71モル%)ランダム共重合樹脂(日本合成化学工業(株)ソアノール30L(商品名);融点188℃)」は、本件補正発明の「ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリビニルアルコ一ル、またはエチレンと酢酸ビニルとの共重合体をケン化して得られたエチレン・ビニルアルコール共重合体からなり、PVA系樹脂のケン化度は、80~100モル%であ」るといえる。

・引用発明の「厚さ20μmのエチレン・ビニルアルコール樹脂コーティングフィルム(コート層0.45μm)」は、エチレン・ビニルアルコール樹脂のコーティング層の厚さが0.45μmであることから、本件補正発明の「該PVA系樹脂層の厚みは0.3μm以上、1.5μm以下であ」ることに相当する。また、引用発明の「ポリプロピレン(MFR2.3g/10分)樹脂」と、本件補正発明の「厚みは10μm以上、50μm以下であ」る「該2軸延伸樹脂フィルムからなる層」とは、「厚みは10μm以上、50μm以下であ」る「該延伸樹脂フィルムからなる層」の限りで一致する。

・引用発明の「SiO2層(厚さ50nm)」は、プラズマCVD法により「エチレン・ビニルアルコール樹脂コーティングフィルム(コート層0.45μm)」上に形成されていることから、本件補正発明の「該酸化珪素蒸着層は、プラズマCVD法蒸着によって、該PVA系樹脂層の上に接して積層されて」いる態様を備えるものである。

・引用発明の「ガスバリア性オレフィン系樹脂積層体」の「酸素透過率は0.3cc/m2・atm/日である」ことから、本件補正発明の「JISK7126に準拠して、23℃、相対湿度90%RH環境下において測定した酸素透過度が0.6~5cc/m2・day・atm以下であ」ることと、「酸素透過度が0.6~5cc/m2・day・atm以下であ」る限りで一致する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]

「基材層とガスバリア層とをこの順に有するガスバリア積層体であって、
該基材層は、ポリプロピレン系樹脂を含有する延伸樹脂フィルムからなる層と、PVA系樹脂層とを有し、
該基材層は、PVA系樹脂層を表面に有し、
該ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンモノマーの重合体、またはプロピレンモノマーと炭素数2~8のアルケンモノマーとの共重合体であり、
続きを表示(全11行)
該PVA系樹脂層は、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリビニルアルコ一ル、またはエチレンと酢酸ビニルとの共重合体をケン化して得られたエチレン・ビニルアルコール共重合体からなり、PVA系樹脂のケン化度は、80~100モル%であって、
該延伸樹脂フィルムからなる層の厚みは10μm以上、50μm以下であり、
該PVA系樹脂層の厚みは0.3μm以上、1.5μm以下であり、
該ガスバリア層は、酸化珪素蒸着層を有し、
該酸化珪素蒸着層は、プラズマCVD法蒸着によって、該PVA系樹脂層の上に接して積層されており、
酸素透過度が0.6~5cc/m2・day・atm以下である、
ガスバリア積層体。」

[相違点1]

高層間密着性ガスバリア積層体に関し、本件補正発明は、「基材層とガスバリア層と接着剤層とシーラント層とをこの順に有する」とともに、「該シーラント層は、ヒートシール性を有する無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムから形成された層であ」るのに対し、引用発明は接着剤層とシーラント層を有していない点。

[相違点2]

ポリプロピレン系樹脂に関し、本件補正発明は、「2軸延伸樹脂フィルムからなる」のに対し、引用発明では、縦延伸機で縦延伸したものである点。

[相違点3]

酸素透過度及び水蒸気透過度に関し、本件補正発明は、「JISK7126に準拠して、23℃、相対湿度90%RH環境下において測定した酸素透過度が0.6~5cc/m2・day・atm以下であり、JIS K7129に準拠して、40℃、相対湿度90%RH環境下において測定した水蒸気透過度が0.8g/m2・day以下のガスバリア性を有」するのに対し、引用発明では、「酸素透過率が0.3cc/m2・atm/日であ」る点。

[相違点4]

層間密着強度に関し、本件補正発明は、「該酸化珪素蒸着層と該PVA系樹脂層との間の層間密着強度が、4N/15mm以上である」「高層間密着性ガスバリア積層体」であるのに対し、引用発明の「ガスバリア性オレフィン系樹脂積層体」は、どのような層間密着強度を有するのか不明な点。

(4)判断

以下、上記各相違点について検討する。

ア 相違点1について

引用文献1の段落【0020】、【0027】には、ガスバリア性オレフィン系樹脂積層体の片面あるいは両面に熱可塑性樹脂フィルム等を積層することができることが記載されている。

引用発明のガスバリア性オレフィン系樹脂積層体において、引用文献2記載事項のように接着剤層を介して熱可塑性樹脂フィルムを積層するようにすることは、当業者が容易になし得たことである。また、引用発明のガスバリア性オレフィン系樹脂積層体において、引用文献3記載事項のように、熱可塑性樹脂フィルムとして、SiO2層の上に接着剤層と無延伸のポリプロピレンからなるフィルムをこの順に積層するようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点2について

引用文献1の【請求項3】、段落【0010】には、オレフィン系樹脂として、二軸延伸した樹脂を用いてもよいことが記載されている。

引用発明において、引用文献1の記載事項に基づいて、ポリプロピレン(MFR2.3g/10分)樹脂を二軸延伸して用いるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

ウ 相違点3について

引用文献1の段落【0002】には、従来より内容物の酸化を防止するため、高度の透気防止性と透湿防止性を有するフィルムが用いられていることが記載されている。

また、引用文献1の段落【0009】には、「エチレン・ビニルアルコール共重合体と無機酸化物を組み合わせることにより良好なガスバリア性が得られ、更にエチレン・ビニルアルコール共重合体のアルコール性水酸基の存在により、基材と無機酸化物層の密着性がより強固となると共に、欠陥の少ない緻密な無機酸化物層を有するオレフィン系樹脂積層体を得ることができる。又、塗布によりエチレン・ビニルアルコール共重合体層を設けることにより、表面が平滑になり、無機酸化物層が均一にかつ緻密に積層するため、厚さが薄くても良好なガスバリア性が得られ」ることが記載されており、エチレン・ビニルアルコール共重合体と無機酸化物を組み合わせることで、基材と無機酸化物層の密着性が強固となると共に、緻密な無機酸化物層を有するオレフィン系樹脂積層体を得ることができ、良好なガスバリア性が得られることが記載されている。

すなわち、引用発明は、「エチレン(29モル%)・ビニルアルコール(71モル%)ランダム共重合樹脂(日本合成化学工業(株)ソアノール30L(商品名);融点188℃)」の上に「SiO2層(厚さ50nm)」を形成することで、「酸素透過率は0.3cc/m2・atm/日」であるガスバリア性に優れたガスバリア性オレフィン系樹脂積層体を得ているといえる。

そして、引用文献1の段落【0002】に記載されているように、内容物を保護するために、フィルムが備える性能として、透気防止性だけでなく透湿防止性も重要な指標であり、酸素透過度及び水蒸気透過度として小さな値が望まれることは当業者にとって自明な課題である。

また、周知技術1に示すように、酸素透過度として、0.6~5cc/m2・day・atm以下であり、水蒸気透過度として、0.8g/m2・day以下の性能を有するフィルムは従来より用いられている。

したがって、引用発明において、内容物の種類や品質、コスト等に応じて、酸素透過度及び水蒸気透過度を周知技術1のような値となるようにすることは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎず、JISK7126に準拠して、23℃、相対湿度90%RH環境下において測定した酸素透過度が0.6~5cc/m2・day・atm以下であり、JIS K7129に準拠して、40℃、相対湿度90%RH環境下において測定した水蒸気透過度が0.8g/m2・day以下のガスバリア性を有するようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

エ 相違点4について

引用発明のガスバリア性オレフィン系樹脂積層体において、上記ウにも示すように、基材と無機酸化物層の密着性は強固となっており、層間密着強度としてある程度高い値を備えているといえる。

そして、引用発明において、ガスバリア性オレフィン系樹脂積層体の層間密着強度は高い方が好ましいことは、周知技術2に示すように周知の課題であり、層間密着強度として、5N/15mm以上が好ましいことも周知技術2に示されている。

したがって、引用発明において、酸化珪素蒸着層とPVA系樹脂層との間の層間密着強度が、4N/15mm以上となるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

オ 相違点についてのまとめ

これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものであり、格別顕著なものということはできない。

よって、本件補正発明の上記相違点に係る構成は、引用発明に基いて、当業者が容易に想到し得たものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび

よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定のとおり決定する。

4 請求人の主張について

請求人は審判請求書において、以下の主張をしている。

(1)「引用文献1記載の発明においては、得られた積層体について、酸素透過度については評価されておりますが、良好な水蒸気透過度を有する積層体を得ることについては何も検討されておらず、具体的な方策や評価もされておりません。
すなわち、引用文献1記載の発明においては、使用時の外部からの熱や力が加わった際の酸素透過度は検討され評価されておりますが、これとは全く異なる要件である「水蒸気透過度」については何も検討されておりません。
酸素と水蒸気は分子の大きさや極性が異なることもあり全く別の挙動を示すものです。
一般に、高分子材料フィルムに対しては、水蒸気が一番早く透過し、次に二酸化炭素で、酸素が一番遅く透過し、水蒸気が一番透過しやすいものです。
すなわち、酸素透過度と、水蒸気透過度は全く異なる評価項目であり、測定方法も評価方法も異なり、それぞれが参考になるものではありません。
したがって、酸素や二酸化炭素のようなガスと、水蒸気とはバリア性の材料設計が異なりますから、酸素透過係数を用いて水蒸気バリア性材料の設計はできませんし、その逆もできませんから、引用文献1記載の発明から水蒸気透過度をも考慮した本願発明を想到することができるものではありません。」(審判請求書の第8ページ第3行~第18行)

しかしながら、上記2(4)ウで述べたように、酸素透過度と共に水蒸気透過度はフィルムに求められる周知の性能であり、水蒸気透過度を小さくするようにすることは、当業者が通常想到することであり、その数値範囲についても周知技術1に示すように、格別顕著なものとはいえない。したがって、請求人の主張を採用することはできない。

(2)「無機酸化物層を形成する方法について、引用文献1記載の発明では様々な方法が羅列されておりどの方法でも良い点が示されております。すなわち、高周波誘導加熱方式の蒸着機内で無機酸化物を蒸着する方法、プラズマを発生させてSiOxを該蒸着機内で成形品に蒸着させる方法、イオンプレーティング法、高周波プラズマCVD法、電子ビーム(EB)蒸着法等の様々な方法が羅列されており、実施例においてはプラズマ蒸着が示され、いずれの方法でも良いと記載されております。
しかしながら、引用文献1記載の発明においては、上記の材料を含めた層構成との関連で、特に高周波プラズマCVD法を選択することは示されておりません。」(審判請求書の第8ページ第23行~第9ページ第3行)

しかしながら、本件補正発明において、ガスバリア層を形成する際に高周波プラズマCVD法を用いることは特定されておらず、また、明細書等にも高周波プラズマCVD法を用いることは記載されていない。

ゆえに、上記主張は明細書及び請求項の記載に基づくものではなく、請求人の主張を採用することはできない。

第3 本願発明について

1 本願発明

令和5年6月14日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~6に係る発明は、令和4年12月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される「前記第2[理由]1(1)」に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定の本願発明についての理由の概要は、次のとおりである。

(進歩性)本願発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2~3に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記

<引用文献等一覧>

1.特開平9-201897号公報

2.特開2000-218726号公報

3.特開2019-6437号公報

3 引用文献

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び引用文献2、3並びにその記載事項は「前記第2[理由]2(2)ア、イ、ウ」に記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は、「前記第2[理由]2」で検討した本件補正発明から、基材層について、「PVA系樹脂層を表面に有し、該ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンモノマーの重合体、またはプロピレンモノマーと炭素数2~8のアルケンモノマーとの共重合体であり、該PVA系樹脂層は、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリビニルアルコ一ル、またはエチレンと酢酸ビニルとの共重合体をケン化して得られたエチレン・ビニルアルコール共重合体からなり、PVA系樹脂のケン化度は、80~100モル%であ」るとの事項を削除するとともに、「酸素透過度が5cc/m2・day・atm以下」であり、「該酸化珪素蒸着層と該PVA系樹脂層との間の層間密着強度が、3N/15mm以上である」と特定したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、「前記第2[理由]2(3)、(4)」に記載したとおり、引用発明、引用文献2、3記載事項及び周知技術1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用文献2、3記載事項及び周知技術1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2023-009869

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