2022-020994
包装材料
- 審判番号
- 2022-020994
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-174875外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年12月26日
- 審決日
- 2024年09月24日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .572-Z (B32B) / P18 .575-Z (B32B) / P18 .121-Z (B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
本願は、平成30年9月19日の出願であって、その手続の概要は以下のとおりである。
第2 令和4年12月26日になされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年12月26日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「順に少なくとも熱可塑性樹脂層、紙基材層、第1の接着樹脂層、バリア層、第2の接着樹脂層、環状オレフィン共重合体からなる樹脂を含む熱融着性樹脂層を備えた包装材料であって、前記第1の接着樹脂層および前記第2の接着樹脂層が、樹脂に加え、カルボン酸基含有化合物、エポキシ基含有化合物、シラン基含有化合物及び酸無水物含有化合物からなる群から選ばれた1種以上の化合物を含み、前記第1の接着樹脂層の厚さが、15μm以上50μm以下であることを特徴とする包装材料。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和4年7月8日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「順に少なくとも熱可塑性樹脂層、紙基材層、第1の接着樹脂層、バリア層、第2の接着樹脂層、環状オレフィン共重合体からなる樹脂を含む熱融着性樹脂層を備えた包装材料であって、前記第1の接着樹脂層または前記第2の接着樹脂層の少なくとも一方が、樹脂に加え、カルボン酸基含有化合物、エポキシ基含有化合物、シラン基含有化合物及び酸無水物含有化合物からなる群から選ばれた1種以上の化合物を含み、前記第1の接着樹脂層の厚さが、15μm以上50μm以下であることを特徴とする包装材料。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1の接着樹脂層」および「第2の接着樹脂層」の内容について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
ア 引用文献2
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2012-86856号公報(平成24年5月10日出願公開。以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「【請求項1】表面に少なくとも熱可塑性樹脂層を有し、裏面に少なくともガスバリア層とシーラント層を有する、紙を基材とする積層体を成形してなる液体用紙容器であって、該積層体は、前記紙基材とガスバリア層、およびガスバリア層とシーラント層を、接着性熱可塑性樹脂を用いた溶融押出ラミネート法によってアンカー剤を介在することなく積層したものであり、前記シーラント層は、少なくとも内容物が接する面に環状オレフィン系樹脂層を有することを特徴とする液体用紙容器。・・・【請求項3】続きを表示(全35行)前記シーラント層は、ポリエチレン樹脂層と環状オレフィン系樹脂層との共押出フィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載の液体用紙容器。・・・【0001】本発明は、液体用紙容器に関し、特に清酒や焼酎のようにごく微量の香気成分を含み、これが失われると風味を損なうような内容物や、逆にミネラルウォーターのように容器から少しでも臭気が移行すると風味を損なうような内容物を収納するための、低吸着性と低移行性を兼ね備えた液体用紙容器に関する。・・・【0014】本発明の解決しようとする課題は、内容物に含まれる成分の吸着性が低く、また内容物に移行する物質量が少なく、さらにバリア性に優れ、生産に当たっての成形性にも優れており、使用後の廃棄に当っては、紙容器として廃棄ないしはリサイクルすることが可能な液体用紙容器を提案するものである。・・・【0021】本発明に係る液体用紙容器は、ガスバリア層を有するので、内容物の保存性が高い。また各層の積層に当っては、接着性熱可塑性樹脂を用いた溶融押出ラミネート法によってアンカー剤を介在することなく積層したものであり、積層する際に接着剤やアンカー剤を使用しないので、これらに起因する比較的低分子量の物質の内容液への移行がなく、わずかな異物の移行を嫌う用途にも安心して使用することができる。・・・【0027】図3は、本発明に係る液体用紙容器を構成する積層体10の一実施態様を示した断面模式図である。本発明に係る液体用紙容器は、表面に少なくとも熱可塑性樹脂層12を有し、裏面に少なくともガスバリア層15とシーラント層17を有する、紙13を基材とする積層体10を成形してなる液体用紙容器である。【0028】図3に示した実施態様においては、紙13の表面側に熱可塑性樹脂層12と、その表面に印刷されたインキ11が存在する。紙13の裏面側には、ガスバリア層15が、接着性熱可塑性樹脂層14によって積層されており、さらにガスバリア層15とシーラント層17が接着性熱可塑性樹脂層16によって積層されている。・・・【0040】紙13とガスバリア層15とを貼り合わせるために使用する接着性熱可塑性樹脂層14および、ガスバリア層15とシーラント層17を積層するための接着性熱可塑性樹脂層16としては、エポキシ化植物油含有ポリエチレン樹脂等の所謂ノーアンカーコート仕様のポリエチレン樹脂や、エチレン・アクリル酸共重合体樹脂(EAA)、エチレン・メタクリル酸共重合体樹脂(EMAA)等の酸コポリマー、酸無水物グラフト変性ポリエチレン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体樹脂、エチレン・メタクリル酸・メタクリル酸エステル三元共重合体樹脂、アイオノマー樹脂などが使用できる。これらの樹脂を溶融させ、押出ラミネーション法によって紙13とガスバリア層15を貼り合わせる。樹脂層の厚さとしては10~50μmの範囲が適当である。・・・【実施例1】【0047】図4に示した層構成に従い、紙13として坪量400g/m2のミルク原紙を使用し、ガスバリア層15として厚さ12μmのPETフィルムに酸化アルミニウム蒸着層を形成した無機酸化物蒸着フィルムを使用した。蒸着フィルムと紙を貼り合わせる接着性熱可塑性樹脂層14としては、厚さ15μmのエチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)を使用した。またシーラント層17として厚さ40μmの環状オレフィンコポリマー(COC)と厚さ20μmのLLDPEとの共押出フィルムを使用し、シーラント層17と蒸着フィルムを貼り合わせる接着性熱可塑性樹脂層16としては厚さ20μmのエポキシ化植物油を含有したLDPEであるノーアンカーコート仕様のポリエチレン樹脂を使用した。またミルク原紙の表面には、厚さ20μmのLDPEを押出ラミネートした。・・・【0049】実施例1および比較例1の積層体を使用して、図1に示した液体用紙容器を作製した。これらの紙容器それぞれに芋焼酎を充填し、60℃の雰囲気中で3ヶ月保存して、保存後の内容物成分吸着性評価と味覚官能評価を行った。芋焼酎は市販の瓶入り品を使用した。・・・【図3】[図:0001417004000001.jpg]【図4】[図:0001417004000002.jpg]」
(イ)上記記載、特に実施例1に着目すると、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「熱可塑性樹脂層12、紙13、厚さ15μmのエチレン・メタクリル酸共重合体樹脂(EMAA)である接着性熱可塑性樹脂層14、ガスバリア層15、エポキシ化植物油含有ポリエチレン樹脂である接着性熱可塑性樹脂層16、環状オレフィンコポリマー(COC)とLLDPEとの共押出フィルムであるシーラント層17をこの順に備えた、液体用紙容器10の材料である積層体。」
(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「熱可塑性樹脂層12」、「紙13」、「接着性熱可塑性樹脂層14」、「ガスバリア層15」、「接着性熱可塑性樹脂層16」、「環状オレフィンコポリマー(COC)とLLDPEとの共押出フィルムであるシーラント層17」はそれぞれ、本件補正発明の「熱可塑性樹脂層」、「紙基材層」、「第1の接着樹脂層」、「バリア層」、「第2の接着樹脂層」、「環状オレフィン共重合体からなる樹脂を含む熱融着性樹脂層」に相当する。
(イ)引用発明の「液体用紙容器10の材料である積層体」は、本件補正発明の「包装材料」に相当する。
(ウ)引用発明の「ポリエチレン樹脂」は、本件補正発明の「樹脂」に相当する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「順に少なくとも熱可塑性樹脂層、紙基材層、第1の接着樹脂層、バリア層、第2の接着樹脂層、環状オレフィン共重合体からなる樹脂を含む熱融着性樹脂層を備えた包装材料であって、前記第1の接着樹脂層の厚さが、15μm以上50μm以下である包装材料。」
【相違点1】
「第1の接着樹脂層」について、本件補正発明は、「樹脂に加え、カルボン酸基含有化合物、エポキシ基含有化合物、シラン基含有化合物及び酸無水物含有化合物からなる群から選ばれた1種以上の化合物」を含むものであるのに対し、引用発明は、「エチレン・メタクリル酸共重合体樹脂(EMAA)である接着性熱可塑性樹脂層14」である点。
【相違点2】
「第2の接着樹脂層」について、本件補正発明は、「樹脂に加え、カルボン酸基含有化合物、エポキシ基含有化合物、シラン基含有化合物及び酸無水物含有化合物からなる群から選ばれた1種以上の化合物」を含むものであるのに対し、引用発明は、「エポキシ化植物油含有ポリエチレン樹脂である接着性熱可塑性樹脂層16」である点。
(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用文献2は、接着性熱可塑性樹脂層14にエポキシ化植物油含有ポリエチレン樹脂を用いた具体的な態様について開示していない。しかしながら、段落【0040】には、「接着性熱可塑性樹脂層14および・・・接着性熱可塑性樹脂層16としては、エポキシ化植物油含有ポリエチレン樹脂等の所謂ノーアンカーコート仕様のポリエチレン樹脂や、エチレン・アクリル酸共重合体樹脂(EAA)、エチレン・メタクリル酸共重合体樹脂(EMAA)等の酸コポリマー、酸無水物グラフト変性ポリエチレン樹脂、・・・アイオノマー樹脂などが使用できる。」と記載されており、すなわち、エチレン・メタクリル酸共重合体樹脂(EMAA)と同列にエポキシ化植物油含有ポリエチレン樹脂を使用できる旨も記載されている。
そうすると、引用発明の接着性熱可塑性樹脂層14について、エチレン・メタクリル酸共重合体樹脂(EMAA)に代えて、接着性熱可塑性樹脂層16と同じエポキシ化植物油含有ポリエチレン樹脂を採用することは、当業者が通常の創作能力を発揮することで容易になし得たことである。
イ 相違点2について
引用発明の「エポキシ化植物油」は、本件補正発明の「エポキシ基含有化合物」に相当するから、「樹脂に加え、エポキシ基含有化合物、シラン基含有化合物及び酸無水物含有化合物からなる群から選ばれた1種以上の化合物を含」む点を満たすものである。したがって、相違点2は実質的な相違点ではない。
ウ 請求人の主張について
請求人は、令和4年12月26日提出の審判請求書の「【請求の理由】(3)引用文献との対比」において、本件補正発明は上記の構成とすることで、液体用紙容器を製造する際に、「密着強度が強くなり、胴部熱融着部、頂部熱融着部、底部熱融着部を加熱圧着する際、加熱時のバブリング発生を抑制し易くなる。」という効果を奏するが、この特徴についてはどこにも記載がなく、よって本件補正発明は引用発明から容易に想到し得たものではない旨を主張している。
上記請求人の主張を検討するに、前述したように、接着性熱可塑性樹脂層14にエポキシ化植物油含有ポリエチレン樹脂を採用し、本件補正発明の構成とすることは、均等物による置換にすぎず、当業者が容易になし得たことである。
なお、本件補正発明の効果について検討するに、引用文献2には、バブリングの発生抑制効果について記載されていない。しかしながら、本願明細書には、エチレン・メタクリル酸共重合体樹脂(EMAA)を第1、第2の接着樹脂層としてそれぞれ25μmの厚さで用いた実施例1の液体用紙容器は、バブリングの発生を低減でき、かつ良好な加工適性及び充填適性を示した旨が記載されている(段落【0041】~【0054】)。
そして、上記本願明細書の記載からすれば、引用発明において接着性熱可塑性樹脂層16の材料としてエチレン・メタクリル酸共重合体樹脂(EMAA)を用いた場合も、本件補正発明と同様の効果が奏されると認められるから、これを「エポキシ化植物油含有ポリエチレン樹脂」に置換し、本件補正発明とすることによる効果が、引用発明の有する効果に比して格別顕著であるとは言えない。
以上より、請求人の上記主張は採用できない。
エ したがって、本件補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年12月26日になされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年7月8日付けで提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2に記載された発明に基いてその出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものを含むものである。
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2の記載事項及び引用発明は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「第1の接着樹脂層」および「第2の接着樹脂層」の両方が備える、「樹脂に加え、カルボン酸基含有化合物、エポキシ基含有化合物、シラン基含有化合物及び酸無水物含有化合物からなる群から選ばれた1種以上の化合物を含」むという限定事項のうち、どちらか片方についての当該限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることがでたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、ほかの請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2022-020994