特許拒絶査定不服審判
2023-008930
新規の安定した抗体の可変領域フレームワークの組み合わせ
- 審判番号
- 2023-008930
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-515647外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年05月31日
- 審決日
- 2026年01月20日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .113-WZ (C12N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-515647「新規の安定した抗体の可変領域フレームワークの組み合わせ」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月28日国際公開、WO2019/057787、令和 2年12月10日国内公表、特表2020-535799〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年 9月19日(パリ条約による優先権主張 2017年 9月20日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、令和 5年 1月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年 5月31日に拒絶査定不服審判請求がなされ、同年 7月12日に手続補正書(方式)(請求の理由の補正)が提出されたものである。その後の当審における手続の経緯は、以下のとおりである。
令和 7年 1月30日付け 拒絶理由通知書
令和 7年 8月 4日提出 意見書、手続補正書
第2 本願発明
本願の請求項1~16に係る発明は、令和 7年 8月 4日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~16に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。
「【請求項1】
以下を含む抗体、またはその抗原結合断片:
(a)可変軽鎖、
ここで、可変軽鎖は、N末端からC末端までの領域LFW1-LCDR1-LFW2-LCDR2-LFW3-LCDR3-LFW4を含み、ここで各LFWは軽鎖フレームワーク領域を示し、および各LCDRは軽鎖相補性決定領域を示し、ここで前記LFW1、LFW2、およびLFW3領域は一緒になって、配列番号41に記載のVΚ1配列の配列番号42~44を有する対応するフレームワーク領域に対して;または配列番号51に記載のVΚ3配列の配列番号52~54を有する対応するフレームワーク領域に対して、少なくとも90%の配列同一性を示す;
ならびに、
(b)可変重鎖、
ここで、可変重鎖は、N末端からC末端までの領域HFW1-HCDR1-HFW2-HCDR2-HFW3-HCDR3-HFW4を含み、ここで各HFWは重鎖フレームワーク領域を示し、および各HCDRは重鎖相補性決定領域を示し、ここで前記HFW1、HFW2、HFW3、およびHFW4領域は一緒になって、配列番号1に記載のVH1A配列の配列番号2~5を有する対応するフレームワーク領域に対して、少なくとも90%の配列同一性を示す;
であって、ここで前記抗体またはその抗原結合断片は、前記VΚベースのLFW1、LFW2、およびLFW3領域が、配列番号63と少なくとも90%同一であるVλベースのLFW4配列と組み合わされることを特徴とする、抗体、またはその抗原結合断片。」
第3 当審で通知した拒絶の理由
令和 7年 1月30日付けで当審が通知した拒絶理由の概要は、請求項1~16に係る発明は、本願優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、また、当該引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献1:特表2016-523537号公報
第4 引用文献の記載事項及び引用発明の認定
1 引用文献1の記載事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は合議体による。)。
ア.「【請求項1】
(i)ヒトVκフレームワーク領域IからIII;(ii)CDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3;及び(iii)フレームワーク領域IV、を含む抗体VLドメインであって、該抗体VLドメインは
a.フレームワーク領域IVのためのヒトVλ生殖系配列、特に配列番号16から22から選択されたVλ生殖系配列;
b.Vλ系配列であって、(bi)フレームワーク領域IVのためのヒトVλ生殖系配列由来のコンセンサスVλ配列、特に配列番号17;又は(bii)フレームワーク領域IVのための再配列されたヒトVλ配列由来のコンセンサスVλ配列、特に配列番号16及び17から選択されたVλコンセンサス配列であるVλ系配列;及び、
c.Vλ系配列であって、フレームワーク領域IVのための最も近いヒトVλ生殖系配列と比較して、1又は2の突然変異、特に1つの突然変異を有するVλ系配列;
から選択され、b又はcの場合に、フレームワーク領域IVが配列FGQGTKLTVLG(配列番号15)を有することを条件とし、
(w)前記ヒトVκフレームワーク領域IからIIIは、クローンのリスト: FW1.4gen(配列番号4)、375-FW1.4opt、435-FW1.4opt、509-FW1.4opt、511-FW1.4opt、534-FW1.4opt、567-FW1.4opt、578-FW1.4opt、1-FW1.4opt、8-FW1.4opt、15-FW1.4opt、19-FW1.4opt、34-FW1.4opt、35-FW1.4opt、42-FW1.4opt、及び43-FW1.4optにみられるフレームワーク領域とは異なり;
(x)前記ヒトVκフレームワーク領域IからIIIは、クローンのリスト: FW1.4gen(配列番号4)、375-FW1.4opt、435-FW1.4opt、509-FW1.4opt、511-FW1.4opt、534-FW1.4opt、567-FW1.4opt、578-FW1.4opt、1-FW1.4opt、8-FW1.4opt、15-FW1.4opt、19-FW1.4opt、34-FW1.4opt、35-FW1.4opt、42-FW1.4opt、及び43-FW1.4optにみられるフレームワーク領域の配列から置換によって得られる配列とは異なり;
(y)前記ヒトVκフレームワーク領域IからIIIは、配列FW1.4gen(配列番号4)の位置15、22、48、57、74、87、88、90、92、95、97及び99の1以上における突然変異によって得られる配列とは異なり;又は、
(z)前記ヒトVκフレームワーク領域IからIIIは、配列番号8を有するヒトVκ配列内の各領域と比較して、5以下の突然変異を含み、特に、配列番号8を有するヒトVκ配列と比較して、5未満、4未満、3未満、特に、ただ一つの突然変異を含むか、又は突然変異を含まない、
抗体VLドメイン。
・・・・・・・・・・・・
【請求項3】
前記Vκフレームワーク領域IからIIIはVκ1ファミリー由来である、請求項1又は2に記載の抗体VLドメイン。
【請求項4】
前記Vκフレームワーク領域IからIIIは、配列番号2及び配列番号8から選択される配列、特に配列番号8の配列に存在するフレームワーク領域である、請求項3に記載の抗体VLドメイン。
【請求項5】
前記CDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3は、(i)目的の抗原に対して特異性を有する親非ヒト抗体由来、特に親ウサギ抗体由来又は親げっ歯類抗体、特に親マウスもしくはラット抗体由来のCDRドメイン CDR1、CDR2及びCDR3;(ii)Vκドメインを含む親ヒト抗体又は親ヒト化抗体由来、特に、治療のために認可され又はその他の商業化されている抗体由来のCDRドメイン CDR1、CDR2及びCDR3;(iii)(i)又は(ii)のCDRドメイン、特に、(i)又は(ii)の1以上のCDRドメインの最適化により得られたCDRドメインに由来するCDRドメイン CDR1、CDR2及びCDR3;及び(iv)(i)、(ii)及び/又は(iii)の1以上のCDRドメインにより置換されることになるCDRドメイン、
から独立して選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗体VLドメイン。
【請求項6】
フレームワーク領域IからIVは、配列番号8、配列番号9、配列番号11、配列番号12及び配列番号13から選択された配列にみられるフレームワーク領域の組み合わせである、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体VLドメイン。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の抗体VLドメインを含む、単離された抗体又はその機能的フラグメント。
【請求項8】
VH1A、VH1B、VH2、VH3、VH4、VH5及びVH6から選択されるVHドメインサブファミリーに属するVHドメインを含み、特にVHドメインサブファミリーVH3又はVH4、特にはVHドメインサブファミリーVH3に属するVHドメインを含む、請求項7に記載の単離された抗体又はその機能的フラグメント。
・・・・・・・・・・・・
【請求項10】
請求項7から9のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその機能的フラグメント、並びに、必要に応じて薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項11】
(i)請求項1から6のいずれか一項に記載の抗体VLドメイン、又は、請求項7から9のいずれか一項に記載の単離された抗体もしくはその機能的フラグメントをコードし;あるいは(ii)請求項17に記載の方法によって得られる、核酸配列もしくは核酸配列の集合物。
【請求項12】
請求項11に記載の核酸配列又は核酸配列の集合物を含む、ベクター又はベクターの集合物。
【請求項13】
請求項11に記載の核酸配列もしくは核酸配列の集合物、又は請求項12に記載のベクターもしくはベクターの集合物を含む、宿主細胞、特に、発現宿主細胞。
【請求項14】
請求項1から6のいずれか一項に記載の抗体VLドメイン、又は請求項7から9のいずれか一項に記載の単離された抗体もしくはその機能的フラグメントの製造方法であって、請求項11に記載の核酸配列もしくは核酸配列の集合物、又は請求項12に記載のベクターもしくはベクターの集合物、又は請求項13に記載の宿主細胞、特に、発現宿主細胞を発現するステップを含む、方法。
【請求項15】
ヒト化ウサギ抗体又はげっ歯類抗体の作製方法であって、以下のステップ:
a.目的の抗原によるウサギ又はげっ歯類の免疫化;
b.少なくとも一つの目的の抗体の単離;及び
c.請求項1から6のいずれか一項に記載の抗体VLドメインをコードする核酸配列に対する、前記少なくとも一つの目的の抗体のVL CDR領域のクローニング、
を含む、方法。
【請求項16】
以下の1以上のステップ:
aa.特に、蛍光活性化細胞選別(fluorescence activated cell-sorting)を用いることにより、目的の抗原と相互作用する親和性成熟メモリーB細胞のクローン単離;
ab.単一のB細胞クローンの不死化を必要としない共培養システムにおける、単一のB細胞の培養;
ac.目的の抗原に結合する少なくとも1つの抗体を同定するための、細胞ベースのELISAでのB細胞培養上清のスクリーニング;及び/又は
ad.ヒト抗体VHドメインをコードする核酸配列に対する、少なくとも1つの抗体のVH CDR領域のクローニング、
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1から6のいずれか一項に記載の抗体VLドメインをコードする核酸配列、又は、請求項7から9のいずれか一項に記載の単離された抗体もしくはその機能的フラグメントをコードする1以上の核酸配列の作製方法であって、(i)ヒトVκフレームワーク領域IからIII;(ii)CDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3並びに(iii)フレームワーク領域IVをコードする、1以上の核酸配列を組み合わせることを含み、
該核酸配列は、
a.フレームワーク領域IVのためのヒトVλ生殖系配列、特に配列番号16から22から選択されたVλ生殖系配列;
b.Vλ系配列であって、(bi)フレームワーク領域IVのためのヒトVλ生殖系配列由来のコンセンサスVλ配列、特に配列番号17;又は(bii)フレームワーク領域IVのための再配列されたヒトVλ配列由来のコンセンサスVλ配列、特に配列番号16及び17から選択されたVλコンセンサス配列であるVλ系配列;及び、
c.Vλ系塩基配列であって、フレームワーク領域IVのための最も近いヒトVλ生殖系配列と比較して、1又は2の突然変異、特に1つの突然変異を有するVλ系塩基配列;
から選択され、
特に、上記作製方法は、以下の方法:
i.ヒト又はヒト化Vκドメインをコードする核酸配列を含む核酸構築物、特に、組換えベクターにおいて、Vκフレームワーク領域をフレームワーク領域IVによって置換し、ここで、
該核酸配列は、
a.フレームワーク領域IVのためのヒトVλ生殖系配列、特に配列番号16から22から選択されたVλ生殖系配列;
b.Vλ系配列であって、(bi)フレームワーク領域IVのためのヒトVλ生殖系配列由来のコンセンサスVλ配列、特に配列番号17;又は(bii)フレームワーク領域IVのための再配列されたヒトVλ配列由来のコンセンサスVλ配列、特に配列番号16及び17から選択されたVλコンセンサス配列であるVλ系配列;及び、
c.Vλ系塩基配列であって、フレームワーク領域IVのための最も近いヒトVλ生殖系配列と比較して、1又は2の突然変異、特に1つの突然変異を有するVλ系塩基配列
から選択され;
ii.1以上のステップにおいて、フレームワーク領域IVをコードする核酸配列を含む核酸構造物、特に組換えベクターに、(i)ヒトVκフレームワーク領域IからIII;並びに(ii)CDR ドメインCDR1、CDR2及びCDR3をコードする1以上の核酸配列を挿入し、ここで、
前記フレームワーク領域IVは、
a.フレームワーク領域IVのためのヒトVλ生殖系配列、特に配列番号16から22から選択されたVλ生殖系配列;
b.Vλ系配列であって、(bi)フレームワーク領域IVのためのヒトVλ生殖系配列由来のコンセンサスVλ配列、特に配列番号17;又は(bii)フレームワーク領域IVのための再配列されたヒトVλ配列由来のコンセンサスVλ配列、特に配列番号16及び17から選択されたVλコンセンサス配列であるVλ系配列;及び、
c.Vλ系塩基配列であって、フレームワーク領域IVのための最も近いヒトVλ生殖系配列と比較して、1又は2の突然変異、特に1つの突然変異を有するVλ系塩基配列
から選択され;
iii.ヒト又はヒト化Vκドメインをコードする核酸配列において、フレームワーク領域IVを産生するために、フレームワーク領域IVをコードする核酸配列を突然変異させ、ここで、
該核酸配列は、
a.フレームワーク領域IVのためのヒトVλ生殖系配列、特に配列番号16から22から選択されたVλ生殖系配列;
b.Vλ系配列であって、(bi)フレームワーク領域IVのためのヒトVλ生殖系配列由来のコンセンサスVλ配列、特に配列番号17;又は(bii)フレームワーク領域IVのための再配列されたヒトVλ配列由来のコンセンサスVλ配列、特に配列番号16及び17から選択されたVλコンセンサス配列であるVλ系配列;及び、
c.Vλ系塩基配列であって、フレームワーク領域IVのための最も近いヒトVλ生殖系配列と比較して、1又は2の突然変異、特に1つの突然変異を有するVλ系塩基配列
から選択され;あるいは
iv.1以上のステップにおいて、ヒトVκフレームワーク領域IからIII、CDR ドメインCDR1、CDR2及びCDR3、並びにフレームワーク領域IVを含む、軽鎖ドメインをコードする核酸配列を含む核酸構築物、特に組換えベクターにおいて、目的の抗体由来の対応するCDRドメイン(複数)をコードする核酸配列(複数)によって前記CDRドメインをコードする1以上の核酸配列を置換すること、ここで、
前記フレームワーク領域は、
a.フレームワーク領域IVのためのヒトVλ生殖系配列、特に配列番号16から22から選択されたVλ生殖系配列;
b.Vλ系配列であって、(bi)フレームワーク領域IVのためのヒトVλ生殖系配列由来のコンセンサスVλ配列、特に配列番号17;又は(bii)フレームワーク領域IVのための再配列されたヒトVλ配列由来のコンセンサスVλ配列、特に配列番号16及び17から選択されたVλコンセンサス配列であるVλ系配列;及び、
c.Vλ系塩基配列であって、フレームワーク領域IVのための最も近いヒトVλ生殖系配列と比較して、1又は2の突然変異、特に1つの突然変異を有するVλ系塩基配列
から選択される、
のうちの一つが用いられる、方法。」(特許請求の範囲)
イ.「【0030】
従って、第1の態様において、本発明は(i)ヒトVκフレームワーク領域IからIII;(ii)CDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3;及び(iii)フレームワーク領域IV、を含む抗体VLドメインであって、該抗体VLドメインは、
a.フレームワーク領域IVのためのヒトVλ生殖系配列、特に配列番号16から22から選択されたVλ生殖系配列;
b.Vλ系配列であって、(bi)フレームワーク領域IVのためのヒトVλ生殖系配列由来のコンセンサスVλ配列、特に配列番号17;又は(bii)フレームワーク領域IVのための再配列されたヒトVλ配列由来のコンセンサスVλ配列、特に配列番号16及び17から選択されたVλコンセンサス配列であるVλ系配列;及び、
c.Vλ系配列であって、フレームワーク領域IVのための最も近いヒトVλ生殖系配列と比較して、1又は2の突然変異、特に1つの突然変異を有するVλ系配列;
から選択され、
b又はcの場合に、フレームワーク領域IVが配列FGQGTKLTVLG(配列番号15)を有することを条件とし、
(w)前記ヒトVκフレームワーク領域IからIIIは、クローンのリスト: FW1.4gen(配列番号4)、375-FW1.4opt、435-FW1.4opt、509-FW1.4opt、511-FW1.4opt、534-FW1.4opt、567-FW1.4opt、578-FW1.4opt、1-FW1.4opt、8-FW1.4opt、15-FW1.4opt、19-FW1.4opt、34-FW1.4opt、35-FW1.4opt、42-FW1.4opt、及び43-FW1.4optにみられるフレームワーク領域とは異なり;
(x)前記ヒトVκフレームワーク領域IからIIIは、クローンのリスト: FW1.4gen(配列番号4)、375-FW1.4opt、435-FW1.4opt、509-FW1.4opt、511-FW1.4opt、534-FW1.4opt、567-FW1.4opt、578-FW1.4opt、1-FW1.4opt、8-FW1.4opt、15-FW1.4opt、19-FW1.4opt、34-FW1.4opt、35-FW1.4opt、42-FW1.4opt、及び43-FW1.4optにみられるフレームワーク領域の配列から置換によって得られる配列とは異なり;
(y)前記ヒトVκフレームワーク領域IからIIIは、配列FW1.4gen(配列番号4)の位置15、22、48、57、74、87、88、90、92、95、97及び99(AHo ナンバリング)の1以上における突然変異によって得られる配列とは異なり;又は、
(z)前記ヒトVκフレームワーク領域IからIIIは、配列番号8を有するヒトVκ配列内の各領域と比較して、5以下の突然変異を含み、特に、配列番号配列番号8を有するヒトVκ配列と比較して、5未満、4未満、3未満、特に、ただ一つの突然変異を含むか、又は突然変異を含まない、
抗体VLドメインに関する。
・・・・・・・・・・・・
【0038】
本発明の一の実施態様において、前記Vκフレームワーク領域IからIIIは、Vκ1、Vκ2、Vκ3及びVκ4、特にVκ1から選択される、Vκドメインサブファミリーに属する。
【0039】
本発明の文脈において、Vκドメインサブファミリーは、配列番号23から26に示されるコンセンサス配列によって表される。所定の抗体可変軽鎖ドメインは、段落[0039]に記載の方法を用いた際に、前記Vκドメインサブファミリーと最も高度な配列の相同性を示す場合、Vκドメインサブファミリーに属しているとみなされる。
【0040】
特定の実施態様において、Vκフレームワーク領域IからIIIは、(a)最も近いヒト生殖配列、又は(b)配列番号23から26を有するコンセンサス配列の一つ、特に配列番号23と比較して5以下の突然変異を含み、特に、(a)最も近いヒト生殖配列、又は(b)配列番号23から26を有するコンセンサス配列の一つ、特に配列番号23と比較して、5未満、4未満、3未満、特にただ一つの突然変異を含むか、又は突然変異を含まない。
【0041】
本発明の一の実施態様において、前記Vκフレームワーク領域IからIIIは、配列番号2及び配列番号8から選択される配列、特に配列番号8の配列に存在するフレームワーク領域である。
【0042】
本発明の一の実施態様において、前記CDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3は、(i)目的の抗原に対して特異性を有する親非ヒト抗体由来、特に親ウサギ抗体由来又は親げっ歯類抗体、特に親マウスもしくはラット抗体由来のCDRドメイン CDR1
、CDR2及びCDR3;(ii)Vκドメインを含む親ヒト抗体又は親ヒト化抗体由来、特に、治療のために認可され、又はその他の商業化されている抗体由来のCDRドメイン CDR1、CDR2及びCDR3;(iii)(i)又は(ii)のCDRドメイン、特に、(i)又は(ii)の1以上のCDRドメインの最適化により得られたCDRドメインに由来するCDRドメイン CDR1、CDR2及びCDR3;及び(iv)(i)、(ii)及び/又は(iii)の1以上のCDRドメインにより置換されることになるCDRドメイン、から独立して選択される。
【0043】
本発明の一の実施態様において、フレームワーク領域IからIVは、配列番号8、配列番号9、配列番号11、配列番号12及び配列番号13から選択された配列にみられるフレームワーク領域の組み合わせである。
【0044】
第2の態様において、本発明は、本発明に係る抗体VLドメインを含む、単離された抗体又はその機能的フラグメントに関する。
・・・・・・・・・・・・
【0056】
本発明の一の実施態様において、単離された抗体又はその機能的フラグメントは、VH1A、VH1B、VH2、VH3、VH4、VH5及びVH6から選択されるVHドメインサブファミリーに属するVHドメインを含み、特にVHドメインサブファミリーVH3又はVH4、特にはVHドメインサブファミリーVH3に属するVHドメインを含む。
【0057】
本発明の文脈において、VHドメインサブファミリーは、配列番号27から33に示されるコンセンサス配列によって表される。所定の抗体可変重鎖ドメインは、段落[0039]に記載の方法を用いた際に、前記VHドメインサブファミリーと最も高度な配列相同性を示す場合、VHドメインサブファミリーに属しているとみなされる。
【0058】
特定の実施態様において、VHドメインは(a)最も近いヒト生殖配列、又は(b)配列番号28から34を有するコンセンサス配列の一つ、特に配列番号30と比較して5以下の突然変異を含み、特に、(a)最も近いヒト生殖配列、又は(b)配列番号27から33を有するコンセンサス配列の一つ、特に配列番号30と比較して、5未満、4未満、3未満、特にただ一つの突然変異を含むか、又は突然変異を含まない。」(【0030】~【0058】)
ウ.「・・・・・・
[図:0001436430000001.jpg]
[図:0001436430000002.jpg]
・・・・・・」(表1)
エ.「【0072】
実施例1: 代表的なウサギCDRを有するscFvコンストラクトの構築
変性及び凝集傾向に関して改善された安定性を示す可変ドメインを同定することは我々の目的であった。加えて、これらドメインは、ヒトにおける免疫応答を誘発するリスクを最小限にするために、ヒト生殖系レパートリーとできる限り近くあるべきである。驚いたことに、コンセンサスVκ1由来のフレームワーク領域IからIII及び異なるVλドメイン由来のフレームワーク領域IV(図1参照)から構成されるキメラVL ドメインを有するVH3コンセンサスフレームワークの組み合わせは、結果として、優れた生物物理学的特性のscFvコンストラクトとなることを我々は発見した。
・・・・・・・・・・・・
【0076】
安定性において観察された違いを合理的に説明する試みの中で、フレームワーク内の配列変異は、より厳密に調べられた。フレームワークIV領域の5アミノ酸領域は、FW1.4genにおけるVκ1のコンセンサス配列に変換されたとき(scFv3)、ストレス安定性試験において、単量体状態の安定性障害をもたらしたことが明らかにされた(図3参照)。
【0077】
この発見は大いに予想外であった。なぜなら、それは、Vκ1の場合、コンセンサス配列は、各可変ドメインの安定性に関して最も支持された解決を提示したであろう、という共通の理解と矛盾するためである。この発見に基づいて、我々は、モデル系におけるドメイン安定性の決定因子をさらに調査することに着手した。FW1.4のフレームワーク領域IVにおける5アミノ酸が、κタイプよりもむしろλタイプフレームワーク領域IV配列と似ている、連結セグメント(フレームワーク領域IV)を形成したので、我々は、λタイプ連結セグメントは、Vκ1-VH3可変ドメインの安定性について、κタイプ連結セグメントよりも有利であろうと仮定した。
【0078】
実際、我々は、対応するVλフレームワーク領域によるVκ1フレームワーク領域IVのすべての置換は(scFv5、scFv9)、熱変性の中点(表3)と、ストレス安定性試験中の単量体状態の安定性(表4)のいずれの点でも、scFv1又はscFv2と比較して、有利な安定性プロフィールをもたらした、ということを発見した。さらに、Vκ1コンセンサスフレームワークのバックグラウンドへの、異なる切断Vλフレームワーク領域IV生殖系モチーフの導入は(scFv7、scFv10)、いくらかの安定効果を示した。重要なことに、本手法ではすべての個々のフレームワーク領域は、生殖系又は生殖系コンセンサスと同一のままであるので、Vλ領域IVによるVκ1フレームワーク領域IVのすべての置換は、免疫原性となる、より低い可能性を有する。
【0079】
加えて、フレームワークIIIにおける位置AHo101は、フレームワーク領域IVのパッキングに寄与することになるVκ及びVλ可変ドメインの構造モデルの比較によって同定された(図4)。該位置におけるVλコンセンサス残基の導入は(scFv4、scFv6、scFv8)、熱変性(表3)及びストレス安定性(表4)におけるドメイン安定性のさらなる増大をもたらした。」(【0072】~【0079】)
オ.「
[図:0001436430000003.jpg]
[図:0001436430000004.jpg]
[図:0001436430000005.jpg]
」(表2~表4)
2 引用発明の認定
引用文献1には、Vκフレームワーク領域IからIII、CDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3、Vλフレームワーク領域IV、を含むVLドメインと、VHドメインとを含む、単離された抗体又はその機能的フラグメントが記載されている(上記記載事項ア.中の【請求項1】及び【請求項7】~【請求項8】、上記記載事項イ.中の【0030】、【0044】及び【0056】)ところ、
前記Vκフレームワーク領域IからIIIは、Vκ1ファミリー由来であること(上記記載事項ア.中の【請求項3】、上記記載事項イ.中の【0038】)、Vκ1ファミリーは、配列番号23のコンセンサス配列を有すること(上記記載事項イ.中の【0039】、上記記載事項ウ.中の配列番号23の欄)、
前記Vκフレームワーク領域IからIIIは、配列番号16のVλフレームワーク領域IVと組み合わされること(上記記載事項ア.中の【請求項1】、上記記載事項イ.中の【0030】、上記記載事項ウ.中の配列番号16の欄)、
前記VHドメインは、VHドメインサブファミリーVH1Aを選択することができること(上記記載事項ア.中の【請求項8】、上記記載事項イ.中の【0056】)、VHドメインサブファミリーVH1Aは、配列番号27のコンセンサス配列を有すること(上記記載事項イ.中の【0057】、上記記載事項ウ.中の配列番号27の欄)が記載されている。
また、引用文献1には、Vκ1ファミリー由来のVκフレームワーク領域IからIIIと配列番号16のVλフレームワーク領域IVとを組み合わせた、配列番号12のアミノ酸配列を有するVLドメイン(上記記載事項ア.中の【請求項6】、上記記載事項イ.中の【0043】、上記記載事項ウ.中の配列番号12の欄)も記載されている。
そうすると、上記記載事項ア.~ウ.から、引用文献1には、
「Vκフレームワーク領域IからIII、CDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3、Vλフレームワーク領域IV、を含むVLドメインと、
配列番号27のVHドメインサブファミリーVH1Aに属するVHドメインとを含む、
単離された抗体又はその機能的フラグメントであって、
Vκフレームワーク領域IからIIIは、配列番号23のコンセンサス配列を有するVκ1ファミリー由来であり、配列番号16のVλフレームワーク領域IVと組み合わされる、単離された抗体又はその機能的フラグメント。」の発明(以下、「引用発明1A」という。)が記載されていると認められる。
第5 対比・判断
1 本願発明1Aについて
本願発明1のうち、可変軽鎖がVΚ1配列に由来する配列を含む場合の発明は、次のとおりのものである(以下、「本願発明1A」という。)
「以下を含む抗体、またはその抗原結合断片:
(a)可変軽鎖、
ここで、可変軽鎖は、N末端からC末端までの領域LFW1-LCDR1-LFW2-LCDR2-LFW3-LCDR3-LFW4を含み、ここで各LFWは軽鎖フレームワーク領域を示し、および各LCDRは軽鎖相補性決定領域を示し、ここで前記LFW1、LFW2、およびLFW3領域は一緒になって、配列番号41に記載のVΚ1配列の配列番号42~44を有する対応するフレームワーク領域に対して、少なくとも90%の配列同一性を示す;
ならびに、
(b)可変重鎖、
ここで、可変重鎖は、N末端からC末端までの領域HFW1-HCDR1-HFW2-HCDR2-HFW3-HCDR3-HFW4を含み、ここで各HFWは重鎖フレームワーク領域を示し、および各HCDRは重鎖相補性決定領域を示し、
ここで前記HFW1、HFW2、HFW3、およびHFW4領域は一緒になって、配列番号1に記載のVH1A配列の配列番号2~5を有する対応するフレームワーク領域に対して、少なくとも90%の配列同一性を示す;
であって、ここで前記抗体またはその抗原結合断片は、前記VΚベースのLFW1、LFW2、およびLFW3領域が、配列番号63と少なくとも90%同一であるVλベースのLFW4配列と組み合わされることを特徴とする、抗体、またはその抗原結合断片。」
2 対比・判断
本願発明1Aと引用発明1Aとを対比する。
引用発明1Aの配列番号23のVκ1コンセンサス配列のVκフレームワーク領域I~IIIは、本願発明1Aの「配列番号41に記載のVΚ1配列の配列番号42~44を有する対応するフレームワーク領域」と100%同一であり、引用発明1Aの配列番号27のVHドメインサブファミリーVH1Aのフレームワーク領域I~IVは、本願発明1Aの「配列番号1に記載のVH1A配列の配列番号2~5を有する対応するフレームワーク領域」と100%同一であり、引用発明1Aの配列番号16のVλフレームワーク領域IVは、本願発明1Aの配列番号63のVλベースのLFW4配列と100%同一である。
また、引用発明1Aの「VLドメイン」、「VHドメイン」は、本願発明1Aの「可変軽鎖」、「可変重鎖」に相当し、引用発明1AのVLドメインの「フレームワーク領域I」、「フレームワーク領域II」、「フレームワーク領域III」、「フレームワーク領域IV」は、本願発明1Aの「LFW1」、「LFW2」、「LFW3」、「LFW4」に相当し、引用発明1Aの「その機能的フラグメント」は、本願発明1Aの「その抗原結合断片」に相当する。また、可変軽鎖は、N末端からC末端までの領域LFW1-LCDR1-LFW2-LCDR2-LFW3-LCDR3-LFW4を含み、ここで各LFWは軽鎖フレームワーク領域を示し、および各LCDRは軽鎖相補性決定領域を示し、可変重鎖は、N末端からC末端までの領域HFW1-HCDR1-HFW2-HCDR2-HFW3-HCDR3-HFW4を含み、ここで各HFWは重鎖フレームワーク領域を示し、および各HCDRは重鎖相補性決定領域を示すことは、技術常識である。
そうすると、本願発明1Aと引用発明1Aとは、
「以下を含む抗体、またはその抗原結合断片:
(a)可変軽鎖、
ここで、可変軽鎖は、N末端からC末端までの領域LFW1-LCDR1-LFW2-LCDR2-LFW3-LCDR3-LFW4を含み、ここで各LFWは軽鎖フレームワーク領域を示し、および各LCDRは軽鎖相補性決定領域を示し、ここで前記LFW1、LFW2、およびLFW3領域は一緒になって、配列番号41に記載のVΚ1配列の配列番号42~44を有する対応するフレームワーク領域に対して、少なくとも90%の配列同一性を示す;
ならびに、
(b)可変重鎖、
ここで、可変重鎖は、N末端からC末端までの領域HFW1-HCDR1-HFW2-HCDR2-HFW3-HCDR3-HFW4を含み、ここで各HFWは重鎖フレームワーク領域を示し、および各HCDRは重鎖相補性決定領域を示し、
ここで前記HFW1、HFW2、HFW3、およびHFW4領域は一緒になって、配列番号1に記載のVH1A配列の配列番号2~5を有する対応するフレームワーク領域に対して、少なくとも90%の配列同一性を示す;
であって、ここで前記抗体またはその抗原結合断片は、前記VΚベースのLFW1、LFW2、およびLFW3領域が、配列番号63と少なくとも90%同一であるVλベースのLFW4配列と組み合わされることを特徴とする、抗体、またはその抗原結合断片。」である点で一致し、相違点はない。
したがって、本願発明1Aは、引用文献1に記載された発明である。
3 まとめ
本願発明1は、本願発明1Aを包含する発明であるから、本願発明1は、引用文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
第6 審判請求人の主張
審判請求人は、令和 7年 8月 4日提出の意見書において、以下のア.及びイ.の点を主張しているので、以下この点について検討する。
ア.引用文献1は、VΚ1(λ型FR4を含む)とVH3との組み合わせを開示しているにすぎない。
また、引用文献1では、VΚサブファミリー1~4とVHサブファミリーVH1A、VH1B、VH2~VH6との組み合わせの可能性について一般的な議論がされているが、具体的なサブファミリーの組み合わせについては一切記載されていない。
したがって、拒絶理由通知書で特定されている本願発明1AにおけるVK1とVH1Aとの組み合わせは、引用文献1には具体的に記載されておらず、本願発明1Aは、引用文献1に記載された発明ではない。
イ.本願発明は、引用文献1および出願時の技術水準からは予測し得ない、際立って優れた有利な効果を奏するものである。
本願の表2に示されたデータは、本願発明1Aとして特定されたVK1/VH1Aの組み合わせが、引用文献1で使用されたVK1/VH3の組み合わせと比較して融解温度が上昇していることを明確に示している。
特に、37℃、10mg/mLの濃度での2週間保管後の単量体損失という指標において、著しい安定性の向上を示しており、両方の組み合わせにおいて、モノマー損失率は、それぞれ1.8%、4.3%と最も低い値を示している。さらに、純粋なVKフレームワークと本願のVK/λハイブリッドの単量体含有量の損失の差は、いずれの場合も55%以上を超えており、それぞれ56.6%および55.1%であることが示されている。
本願明細書段落【0013】に記載されている(「具体的には、VH3、およびVΚ1のヒトコンセンサス配列は、好ましい生物物理学的特性を有し(Ewert etal.、J Mol Biol、 325 (2003) 531-53)」)ように、VH3とVΚ1のヒトコンセンサス配列が好ましい生物物理学的特性を有すると報告されていたことから、ラムダキャップアプローチを用いることで、それよりもさらに優れた安定性を示す他のVL/VH組み合わせが得られることは、当業者といえども到底予測し得たことではない。
主張ア.について
審判請求人の「引用文献1は、VΚ1(λ型FR4を含む)とVH3との組み合わせを開示しているにすぎない。」という主張は、引用文献1の実施例の記載(上記記載事項エ.及びオ.)に基づくものと認められるが、上記「第4 引用文献の記載事項」で述べたように、引用文献1の実施例の記載だけでなく、引用文献1の特許請求の範囲の記載(上記記載事項ア.)、発明の詳細な説明の記載(上記記載事項イ.及びウ.)から、引用発明を認定することができるから、審判請求人の上記主張は採用できない。
また、このことに関して、本願出願人(審判請求人)と同一の出願人(ヌマブ セラピューティクス アクチェンゲゼルシャフト)に係る出願である、引用文献1の特願2016-522319号の審査経緯、該出願の分割出願である特願2019-111990号の審査経緯において、出願人は、引用文献1には、VΚ1(λ型FR4を含む)とVH1Aとの組み合わせを含む発明が記載されていることを、以下のように主張している。
出願人は、当該特願2016-522319号の平成30年 7月 3日提出の手続補正書において、
「【請求項1】
(a)VH1A、VH1B、VH2、VH3、VH4、VH5及びVH6から選択される
VHドメインサブファミリーに属するVHドメインと、
(b)i)ヒトVκフレームワーク領域IからIII;(ii)CDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3;及び(iii)フレームワーク領域IV、とを含む、
単離された抗体又はその機能的フラグメントであって、該フレームワーク領域IVは配列番号16から22から選択されるフレームワーク領域IVのためのヒトVλ生殖系配列である、
単離された抗体又はその機能的フラグメント。
【請求項2】
前記Vκフレームワーク領域IからIIIはVκ1ファミリー由来である、請求項1に記載の単離された抗体又はその機能的フラグメント。」と補正し、
同日提出の意見書において、
「ニ)理由4(サポート要件違反)
審査官殿におかれましては、要するに、補正前の「請求項1-17に係る発明は、発明
の詳細な説明に記載したものでない。」とのことであります。
出願人は、かかる審査官殿の見解に対し同意しません。
同手続補正書により補正された請求項は、
(a)VH1A、VH1B、VH2、VH3、VH4、VH5及びVH6から選択される
VHドメインサブファミリーに属するVHドメインと、
(b)i)ヒトVκフレームワーク領域IからIII;(ii)CDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3;及び(iii)フレームワーク領域IV、とを含む、
単離された抗体又はその機能的フラグメントであって、該フレームワーク領域IVは配列番号16から22から選択されるフレームワーク領域IVのためのヒトVλ生殖系配列である、
単離された抗体又はその機能的フラグメント。
のとおりであります。」と主張している。
また、出願人は、前記出願の分割出願である特願2019-111990号の令和 3年 1月12日提出の手続補正書において、
「【請求項1】
(a)VHフレームワーク領域IからIV及びCDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3を含むVHドメイン、ここで当該VHドメインはVH1A(配列番号27)、VH1B(配列番号28)、VH2(配列番号29)、VH3(配列番号30)、VH4(配列番号31)、VH5(配列番号32)、及びVH6(配列番号33)から選択されるVHドメインサブファミリーに属する、と、
(b)(i)ヒトVκフレームワーク領域IからIII、ここで当該Vκフレームワーク領域IからIIIはVκ1(配列番号23)、Vκ2(配列番号24),Vκ3(配列番号25)及びVκ4(配列番号26)から選択されたVκドメインサブファミリーに属する;(ii)CDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3;及び(iii)配列番号16から22から選択された、フレームワーク領域IVのヒトVλ生殖系配列である、フレームワーク領域IV、を含むVLドメイン、
を含み、抗原に特異的に結合することができる、単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記Vκフレームワーク領域IからIIIはVκ1ファミリー(配列番号23)由来である、請求項1に記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。」と補正し、
同日提出の意見書において、
「B.理由2(サポート要件)について
リ)審査官殿におかれましては、要するに、請求項1~11に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない、とのことであります。
審査官殿は、「明細書の記載より理解される本願発明が解決しようとする課題は、高い安定性を有し、凝集性が低減されたヒト化抗体を提供することであると認められる。」との述べられております。この点については特に反論はありません。
しかしながら、それに続き、審査官殿は「明細書に開示されている上記課題を解決するための手段は、「VH3」であるVHドメインフレームワーク、及び、「Vκ1」であるVLドメインフレームワークに、「ウサギ」抗体由来のCDRを移植し、かつ、Vκ1のフレームワーク領域IVを、「配列番号16又は17」で示されるVλフレームワーク領域IVで置換した抗体を作製したことであると認められる。」と認定されております。この認定については出願人は承服いたしかねます。
本願明細書段落0017に記載の通り、本発明の課題を解決する手段は、「Vκ由来のフレームワーク領域I~III及びVλ由来のフレームワーク領域を含む、新規なキメラヒト抗体軽鎖フレームワーク」、の提供により達成されたものであります。このように、Vκ由来のフレームワーク領域I~IIIとVλ由来のフレームワーク領域とを組み合わせることで、ヒト抗体の安定性を高め、凝集性を低減できるという想定外の効果が奏されることは、全く新しい知見であり、本発明者が初めて見出したものであります。審査官殿も御承知かと思われますが、Vκ由来のフレームワーク領域I~IIIと、Vλ由来のフレームワーク領域IVである配列番号16や17の配列とを組み合わせて形成されたキメラヒト抗体軽鎖フレームワークは高い安定性などの効果を奏することが、明細書において実証されております。
審査官殿は、「抗体の機能特性は、フレームワーク及びCDRからなる各パーツの協調的作用として発揮されるものであることが出願時の技術常識であった。」と仰せです。出願人も同意します。そして、出願時のさらなる技術常識は、Vκ由来のフレームワーク領域は、Vκ由来のフレームワーク領域と組み合わせることで、またVλ来のフレームワーク領域I~IIIは、Vλ由来のフレームワーク領域IVと組み合わせることで、はじめて協調的作用を発揮するというのが技術常識でありました。本発明はそのような技術常識を打ち破るものであり、κ由来のフレームワーク領域I~IIIとVλ由来のフレームワーク領域とを組み合わせることでも協調的作用が発揮され、しかも抗体の安定性が図れるという当業界に全く新たな知見をもたらしたものであります。このような新たな知見は、当業者であれば従来にない全く新たなフレームワークの組み合わせを試みる動機付けとなり、抗体技術に関連する産業への寄与度は大きいものであります。
にもかかわらず、上述の通り、出願人は本発明に係る抗体などのVHドメインのVHフレームワーク領域I~III、VLドメインのヒトVκフレームワーク領域IからIIIを特定に配列に限定し、さらにはVLドメインのフレームワーク領域IVを、配列番号16及び17の他、配列番号18~22といった特定のヒトVλ生殖系配列に限定しており、明細書の開示範囲を超えるものではありません。」と主張している。
そうすると、審判請求人の「引用文献1は、VΚ1(λ型FR4を含む)とVH3との組み合わせを開示しているにすぎない。」、「引用文献1では、VΚサブファミリー1~4とVHサブファミリーVH1A、VH1B、VH2~VH6との組み合わせの可能性について一般的な議論がされているが、具体的なサブファミリーの組み合わせについては一切記載されていない。」という上記主張ア.は失当である。
主張イ.について
上記「第4 引用文献の記載事項」で述べたように、引用文献1の記載から、引用発明1Aを認定することができるから、審判請求人が主張する本願発明1Aの効果は、引用発明1Aが本来有している効果である。
また、本願発明1Aには、LFW1、LFW2、およびLFW3領域は一緒になって、配列番号41に記載のVΚ1配列の配列番号42~44を有する対応するフレームワーク領域に対して、少なくとも90%の配列同一性を示す、可変軽鎖と、HFW1、HFW2、HFW3、およびHFW4領域は一緒になって、配列番号1に記載のVH1A配列の配列番号2~5を有する対応するフレームワーク領域に対して、少なくとも90%の配列同一性を示す、可変重鎖とを含む抗体に係る発明も含まれるが、審判請求人が主張する本願発明1Aの効果は、配列番号41に記載のVΚ1配列の配列番号42~44と同一のアミノ酸配列を有するフレームワーク領域の可変軽鎖と、配列番号1に記載のVH1A配列の配列番号2~5と同一のアミノ酸配列を有するフレームワーク領域の可変重鎖とを含む抗体が奏する効果であって、本願発明1A全体が奏する効果であるとは認められない。
したがって、審判請求人の上記主張イ.は採用できない。
第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないので、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-008930