特許拒絶査定不服審判
2023-008738
突然変異アセトヒドロキシ酸合成酵素タンパク質のラージサブユニットをコードする突然変異ポリヌクレオチドを有し、除草剤耐性が増大したソルガム植物
- 審判番号
- 2023-008738
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-053561
- 請求日
- 2023年05月29日
- 審決日
- 2025年06月05日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アドヴァンタ・ホールディングス・ベスローテン・フェンノートシャップ
- 【請求人代理人】奥山 尚一
- 【請求人代理人】中村 綾子
- 【請求人代理人】森本 聡二
- 審判長/審判官
- 審判長 上條 肇
- 審判官 幸田 俊希
- 審判官 長井 啓子
- 分類
- P18 .113-Z (C12N) / P18 .121-Z (C12N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021- 53561「突然変異アセトヒドロキシ酸合成酵素タンパク質のラージサブユニットをコードする突然変異ポリヌクレオチドを有し、除草剤耐性が増大したソルガム植物」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 8月12日出願公開、特開2021-118688〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成24年4月5日を国際出願日とする特願2015-503768号の一部を平成29年1月16日に新たな特許出願とした特願2017-5343号の一部を、平成31年3月4日にさらに新たな特許出願とした特願2019-38627号の一部を、令和3年3月26日にさらに新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年 4月 8日付け 拒絶理由通知書
同年10月12日 意見書の提出
令和5年 1月24日付け 拒絶査定
同年 5月29日 審判請求書、手続補正書の提出
同年 8月 7日 手続補正書(請求の理由)の提出
第2 令和5年5月29日付け手続補正についての補正却下の決定
[結論]
令和5年5月29日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正
本件補正は、出願時の特許請求の範囲の請求項33に、
(補正前)「【請求項33】
a)配列番号1に記載のヌクレオチド配列、
b)配列番号2に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
c)配列番号2のアミノ酸配列に対する少なくとも95%の配列同一性を有し、除草剤耐性AHAS活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
d)配列番号1に記載のヌクレオチド配列に対する少なくとも85%の同一性を有し、AHASのラージサブユニットを含み、除草剤耐性AHAS活性を示すポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
e)ヌクレオチド配列a)~(d)の1つと完全に相補的なヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。」
とあったものを、本件補正による補正後の請求項7において、
(補正後)「【請求項7】
a)配列番号1に記載のヌクレオチド配列、
b)配列番号2に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
c)ヌクレオチド配列a)または(b)の1つと完全に相補的なヌクレオチド配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、ソルガムAHASポリヌクレオチド。」
とする補正事項を含むものである。
2 目的要件について
本件補正は、補正前の請求項33にa)~e)の5つの選択肢により択一的に記載されていた「ポリヌクレオチド」について、当該選択肢のうちc)~d)を削除し、「ポリヌクレオチド」を「ソルガムAHASポリヌクレオチド」と限定するものである。補正前の請求項33に記載された発明と補正後の請求項7に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項7に記載された事項により特定される発明(以下、「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。
3 独立特許要件について
(1)引用文献1の記載事項
令和5年1月24日付け拒絶査定(以下、「原査定」という。)で引用文献1として引用された特表2010-523123号公報には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審が付したものである。
ア 特許請求の範囲
「【請求項14】
第1のAHASL単一変異体ポリペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドおよび第2のAHASL単一変異体ポリペプチドをコードする第2のポリヌクレオチド、または前記第1および前記第2のAHASL単一変異体ポリペプチドのアミノ酸突然変異に対応するアミノ酸突然変異をもたらす2つのヌクレオチド突然変異を含むAHASLをコードするポリヌクレオチドを含むものである植物であって、前記第1と前記第2のポリペプチドが次のポリペプチドからなる群より選択される前記植物:
a)配列番号1の122位もしくは配列番号2の90位に対応する位置においてバリン、トレオニン、グルタミン、システインまたはメチオニンを有する第一のポリペプチドおよび配列番号1の653位もしくは配列番号2の621位に対応する位置においてフェニルアラニン、アスパラギン、トレオニン、グリシン、バリンまたはトリプトファンを有する第二のポリペプチド;
b)配列番号1の122位もしくは配列番号2の90位に対応する位置においてバリン、トレオニン、グルタミン、システインまたはメチオニンおよび配列番号1の199位もしくは配列番号2の167位に対応する位置においてアラニン、グルタミン酸、セリン、フェニルアラニン、トレオニン、アスパラギン酸、システインまたはアスパラギンを有するポリペプチド;
c)配列番号1の122位もしくは配列番号2の90位に対応する位置においてバリン、トレオニン、グルタミン、システインまたはメチオニンおよび配列番号1の197位もしくは配列番号2の165位に対応する位置においてセリン、アラニン、グルタミン酸、ロイシン、グルタミン、アルギニン、バリン、トリプトファン、チロシンまたはイソロイシンを有するポリペプチド;
d)配列番号1の122位もしくは配列番号2の90位に対応する位置においてバリン、トレオニン、グルタミン、システインまたはメチオニンおよび配列番号1の124位もしくは配列番号2の92位に対応する位置においてグルタミン酸、イソロイシン、ロイシンまたはアスパラギンを有するポリペプチド;
e)配列番号1の122位もしくは配列番号2の90位に対応する位置においてバリン、トレオニン、グルタミン、システインまたはメチオニンおよび配列番号1の139位もしくは配列番号2の107位に対応する位置においてイソロイシンを有するポリペプチド;
f)配列番号1の122位もしくは配列番号2の90位に対応する位置においてバリン、トレオニン、グルタミン、システインまたはメチオニンおよび配列番号1の269位もしくは配列番号2の237位に対応する位置においてヒスチジンを有するポリペプチド;
g)配列番号1の122位もしくは配列番号2の90位に対応する位置においてバリン、トレオニン、グルタミン、システインまたはメチオニンおよび配列番号1の416位もしくは配列番号2の384位に対応する位置においてメチオニンを有するポリペプチド;
h)配列番号1の122位もしくは配列番号2の90位に対応する位置においてバリン、トレオニン、グルタミン、システインまたはメチオニンおよび配列番号1の426位もしくは配列番号2の394位に対応する位置においてイソロイシンを有するポリペプチド;
i)配列番号1の122位もしくは配列番号2の90位に対応する位置においてバリン、トレオニン、グルタミン、システインまたはメチオニンおよび配列番号1の430位もしくは配列番号2の398位に対応する位置においてバリンを有するポリペプチド;
j)配列番号1の122位もしくは配列番号2の90位に対応する位置においてバリン、トレオニン、グルタミン、システインまたはメチオニンおよび配列番号1の442位もしくは配列番号2の410位に対応する位置においてイソロイシンを有するポリペプチド;
k)配列番号1の122位もしくは配列番号2の90位に対応する位置においてバリン、トレオニン、グルタミン、システインまたはメチオニンおよび配列番号1の445位もしくは配列番号2の413位に対応する位置においてイソロイシンまたはアスパラギン酸を有するポリペプチド;
l)配列番号1の122位もしくは配列番号2の90位に対応する位置においてバリン、トレオニン、グルタミン、システインまたはメチオニンおよび配列番号1の580位もしくは配列番号2の548位に対応する位置においてグルタミン酸を有するポリペプチド;
m)配列番号1の124位もしくは配列番号2の92位に対応する位置においてグルタミン酸、イソロイシン、ロイシンまたはアスパラギンおよび配列番号1の653位もしくは配列番号2の621位に対応する位置においてフェニルアラニン、アスパラギン、トレオニン、グリシン、バリンまたはトリプトファンを有するポリペプチド;
n)配列番号1の197位もしくは配列番号2の165位に対応する位置においてセリン、アラニン、グルタミン酸、ロイシン、グルタミン、アルギニン、バリン、トリプトファン、チロシンまたはイソロイシンおよび配列番号1の653位もしくは配列番号2の621位に対応する位置においてフェニルアラニン、アスパラギン、トレオニン、グリシン、バリンまたはトリプトファンを有するポリペプチド;
o)配列番号1の197位もしくは配列番号2の165位に対応する位置においてセリン、アラニン、グルタミン酸、ロイシン、グルタミン、アルギニン、バリン、トリプトファン、チロシンまたはイソロイシンおよび配列番号1の375位もしくは配列番号2の343位に対応する位置においてアスパラギンを有するポリペプチド;
p)配列番号1の197位もしくは配列番号2の165位に対応する位置においてアラニン、グルタミン酸、ロイシン、グルタミン、アルギニン、バリン、トリプトファン、チロシンまたはイソロイシンおよび配列番号1の199位もしくは配列番号2の167位に対応する位置においてアラニン、グルタミン酸、セリン、フェニルアラニン、トレオニン、アスパラギン酸、システインまたはアスパラギンを有するポリペプチド;
q)配列番号1の199位もしくは配列番号2の167位に対応する位置においてアラニン、グルタミン酸、セリン、フェニルアラニン、トレオニン、アスパラギン酸、システインまたはアスパラギンおよび配列番号1の653位もしくは配列番号2の621位に対応する位置においてフェニルアラニン、アスパラギン、トレオニン、グリシン、バリンまたはトリプトファンを有するポリペプチド;および
r)配列番号1の205位もしくは配列番号2の173位に対応する位置においてバリン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、トレオニン、トリプトファンまたはチロシンおよび配列番号1の653位もしくは配列番号2の621位に対応する位置においてフェニルアラニン、アスパラギン、トレオニン、グリシン、バリンまたはトリプトファンを有するポリペプチド。」
「【請求項17】
植物がシロイヌナズナ、トウモロコシ、コムギ、ライムギ、オートムギ、ライコムギ、イネ、オオムギ、モロコシ、雑穀、サトウキビ、ダイズ、サトウダイコン、ピーナッツ、ワタ、アブラナ、キャノーラ、アブラナ属、トロアオイ、コショウ、ヒマワリ、マリーゴールド、ナス科植物、ジャガイモ、タバコ、ナス、トマト、ソラマメ属、エンドウマメ、アルファルファ、コーヒー、カカオ、チャ、ヤナギ属、オイルパーム、ココナッツ、多年生イネ科植物および飼料植物からなる群より選択される、請求項14に記載の植物。」
イ 技術分野
「【0001】
本発明は、一般的に、アセトヒドロキシ酸合成酵素阻害性除草剤に対する植物の耐性を増加する組成物および方法に関する。」
ウ 背景技術
「【0011】
除草剤に対する耐性または抵抗性を与える、いくつものAHAS大サブユニットにおける単一突然変異が公知である(Dugglebyら (2000) Journal of Biochem and Mol. Bio. 33:1-36; Janderら (2003) Plant Physiology 131:139-146)。例えば、シロイヌナズナAHASLの122位におけるアラニンのバリンへの置換(またはオオモミ(キク科植物)AHASLの対応する100位におけるアラニンのトレオニンへの置換)はイミダゾリノンおよびスルホニルウレアに対する耐性を与える。」
エ 図面の簡単な説明
「【図3-1】シロイヌナズナ(Arabidopsis)AHAS大サブユニットタンパク質(AtAHASL、配列番号1)と本発明の二重および三重突然変異を行うことができる次の多数の種のAHAS大サブユニットタンパク質との対応位置のアラインメントであり、配列番号1の置換位置に対応する置換位置を示す:Amaranthus sp.(AsAHASL 配列番号9)、Brassica napus(BnAHASL1A 配列番号3、BnAHASL1C 配列番号10、BnAHASL2A 配列番号11)、Camelina microcarpa(CmAHASL1 配列番号12、CmAHASL2 配列番号13)、Solanum tuberosum(StAHASL1 配列番号16、StAHASL2 配列番号17)、Oryza sativa(OsAHASL 配列番号4)、Lolium multiflorum(LmAHASL 配列番号20)、Solanum ptychanthum(SpAHASL 配列番号14)、Sorghum bicolor(SbAHASL 配列番号15)、Glycine max(GmAHASL 配列番号18)、Helianthus annuus(HaAHASL1 配列番号5、HaAHASL2 配列番号6、HaAHASL3 配列番号7)、Triticum aestivum(TaAHASL1A 配列番号21、TaAHASL1B 配列番号22、TaAHASL1D 配列番号23)、Xanthium sp.(XsAHASL 配列番号19)、Zea mays(ZmAHASL1 配列番号8、ZmAHASL2 配列番号2)、Gossypium hirsutum(GhAHASA5 配列番号24、GhAHASA19 配列番号25)、およびE.coli(ilvB 配列番号26、ilvG 配列番号27、ilvI 配列番号28)。
【図3-2】(図3-1の続き)」
「【図8-1】 色々な種から誘導したAHASL遺伝子の一致したアミノ酸位置を示す表である。」
オ 発明を実施するための形態
「【0030】
様々な種のAHASLタンパク質は長さが数個のアミノ酸だけ異なるが、本発明による改変を行う残基の相対位置は保存されている(図8)。従って、本明細書に記載の突然変異は、シロイヌナズナAHASLポリペプチド(配列番号1、図1、図8)のアミノ酸残基番号に対応する位置を用いて、特に断わりなしに表現されるかまたは前後関係から明らかである。例えば、シロイヌナズナAHASLの残基122は、トウモロコシAHASLの残基90、Brassica napus AHASL 1Aの残基104、B. napus AHASL 1Cの残基107、O. sativa AHASLの残基96、Amaranthus AHASLの残基113、Escherichia coli ilvGの残基26、Saccharomyces cerevisiae AHASLの残基117、サトウダイコンの残基113、ワタの残基111、Camelina microcarpa AHASL1の残基120、Camelina microcarpa AHASL2の残基117、Solanum tuberosum AHASL1の残基109、Solanum tuberosum AHASL2の残基111、Lolium multiflorumの残基92、Solanum ptychanthumの残基27、Sorghum bicolorの残基93、Glycine maxの残基103、Helianthus annuus AHASL1の残基107、Helianthus annuus AHASL2の残基101、Helianthus annuus AHASL3の残基97、Triticum aestivumの残基59、およびXanthium属の残基100に対応する。これらの対応は当業者にとって周知である。かかる対応に基づいて、本明細書で具体的に開示してないAHAS 大サブユニット 配列における対応位置を、当業者は容易に確認することができよう。本発明に関する対応の具体的な例示領域を図3に示す。」
「【0055】
本発明はさらに、AHASL二重変異体ポリペプチドをコードする1つのポリヌクレオチド、またはAHASL単一変異体ポリペプチドをコードする2つのポリヌクレオチドを含む、非トランスジェニックおよびトランスジェニック除草剤耐性植物を提供する。それから作製される非トランスジェニック植物は、第1の植物を第2の植物と他家受粉し、花粉受容植物(第1のまたは第2の植物のいずれであってもよい)がこの他家受粉から種子を生じるようにすることにより、作製することができる。作製されるその種子および子孫植物は、1つの単一対立遺伝子または2つの対立遺伝子上に交雑した二重突然変異を有しうる。花粉受容植物は第1または第2の植物のいずれであってもよい。第1の植物は第1のAHASL単一変異体ポリペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドを含む。第2の植物は第2のAHASL単一変異体ポリペプチドをコードする第2のポリヌクレオチドを含む。第1と第2のAHASL単一変異体ポリペプチドは、野生型AHASLポリペプチドと比較して、異なる単一のアミノ酸置換を含む。それから生じる種子または子孫植物はAHASL二重変異体ポリペプチドをコードする1つのポリヌクレオチドまたは2つのAHASL単一変異体ポリペプチドをコードする2つのポリヌクレオチドを含むので、選択することができる。選択された子孫植物は、AHAS阻害性除草剤、例えばイミダゾリノン系除草剤またはスルホニルウレア系除草剤に対して、単一植物中の2つのAHASL単一変異体ポリペプチドの組合わせから予想されるより、意外に高いレベルの耐性を提示する。その子孫植物は、除草剤耐性に関して相乗作用を提示し、それにより、親植物由来の第1のおよび第2の突然変異を含む子孫植物の除草剤耐性のレベルは、第1のポリヌクレオチドの2コピーまたは第2のポリヌクレオチドの2コピーを含む植物の除草剤耐性より高い。」
カ 実施例
「(実施例2)
トウモロコシ(Zea mays)AHASL変異体遺伝子を含有するベクター」
「【0180】
ベクターZE23~ZE38を次の通り作製した。ベクターZE3を、QuikChange(登録商標)マルチサイト部位特異的変異誘発キット(Stratagene、La Jolla、California)を使い、General Guidelines for Creating Engineered Mutant Clone(登録商標) Collectionsの添付プロトコルに従って、飽和部位特異的変異誘発で処理した。トウモロコシAHAS大サブユニットの重要部位における全ての可能なコドンを作製しうる変異誘発オリゴヌクレオチドを様々な組合わせで用いて、残基A90、M92、P165、R167、S621、およびG622にて置換された変異体のコレクションを作製した。変異体コレクションプラスミドをAHAS欠失大腸菌中に導入して形質転換し、100μg/lのカルベニシリンを補充したLB寒天培地上にプレーティングした。これから得たコロニーを拾って、マイクロタイタープレート内の1x濃度(等張性バッファーに対して)のM9塩中に移し、次いで分枝鎖アミノ酸を含まずかつ150μMイマゼタピルを含有する最小寒天培地上にレプリカをプレーティングした。この選択培地で増殖するコロニーは、イミダゾリノン耐性でもある機能性トウモロコシAHAS変異体遺伝子を所持した。
【0181】
トウモロコシAHAS大サブユニット遺伝子のDNA配列を、増殖クローンポジティブコロニーのそれぞれについて決定した。選択培地で増殖しなかったトウモロコシAHAS大サブユニット遺伝子の配列は決定しなかった。
【表2】
[図:0001428442000001.jpg]
【0182】
*大腸菌におけるZmAHASL2発現用ベクター(ZEプラスミド)および植物形質転換用プラスミド(ZPプラスミド)のリスト。それぞれのベクター中の突然変異を配列番号2と比較して示した。
【0183】
**AHASインヒビターイマゼタピルの存在のもとでのZEプラスミドを含有するAHASマイナス大腸菌におけるトウモロコシAHAS機能の耐性のスコアを、コロニーサイズの増加に対してそれぞれ単純な1つ、2つまたは3つの+、すなわち、+、++、または+++を用いて可視的に表した。「-」は無増殖を示し、突然変異組合わせが不活性なタンパク質を生じるかまたは選択した施用率においてイマゼタピルに対する耐性がなかったことを意味する。INは不活性タンパク質を意味する一方、NTはイミダゾリノン耐性でないことを意味する。NAは利用できるDNAがないことを意味する(試験されてない)。
【0184】
@トウモロコシ全植物耐性スコアは、温室内と複数圃場でいくつかの生長季節にわたって実施した試験から得た結果の組合わせに基づくものである。トウモロコシに対するスコアリングシステムは大腸菌イミダゾリン耐性について先に記載したのと同じであった。+++スコアをもつ全てのZP構築物は、最高の試験した噴霧率である1ヘクタール当たり3000gを超えるイマザモックスに対して耐性があることに注目されたい。」
「(実施例8)
形質転換されたトウモロコシによる圃場試験」
「【0198】
材料および方法
試験材料の供給源
遺伝的に改変された生物をトウモロコシ近交系J553を形質転換することにより作製した。8つのベクター構築物由来のF1雑種種子はTR5753を近交系雄性テスターとして使用し、作製した。ベクター構築物を表4に記載した。」
「【表4】
[図:0001428442000002.jpg]
」
「【0202】
結果と考察
イマザモックス除草剤施用の有無について収率を比較すると、3立地にわたる組合わせたデータ分析によって、有意な収率低下(p0.05)を伴う1つのベクター構築物を得た(表5)。
【0203】
試験の目的は、イマザモックスに対して除草剤耐性の改善を与えるように最適化したベクター構築物にイマザモックスの除草剤施用を適用すれば、大まかな、または明らかな生理学的または生殖の影響をもたらしうるかを確認することであった。ただ1つのベクター構築物(構築物1、単一の変異体、P197L)だけ、イマザモックスで処理した時に、穀粒収率について有意な(p0.05)ネガティブな応答を有した。残りの7つのベクター構築物は、除草剤イマザモックスの存在または不在のもとで有害な生理学的または生殖の影響を示さなかった。これらの屋外試験の結果は、AHASL二重または三重変異体を含むベクターにより形質転換したトウモロコシ植物の優れた農学的能力を実証する。
【表5】
[図:0001428442000003.jpg]
」
キ 図面
「【図3-2】
[図:0001428442000004.jpg]
」
「【図8-1】
[図:0001428442000005.jpg]
」
(2)引用発明の認定
引用文献1は、アセトヒドロキシ酸合成酵素阻害性除草剤に対する植物の耐性を増加する組成物および方法に関する発明を開示する特許文献であり(上記(1)イ)、従来技術として、シロイヌナズナのAHASL(AHAS大サブユニット)の122位におけるアラニンのバリンへの置換や、オオモミ(キク科植物)AHASLの対応する100位におけるアラニンのトレオニンへの置換といった、除草剤に対する抵抗性を付与する単一突然変異が知られていたこと(上記(1)ウ)が記載され、特許請求の範囲の請求項14には、「第1のAHAS単一変異体ポリペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドおよび第2のAHAS単一変異体ポリペプチドをコードする第2のポリヌクレオチド」「を含む植物」であって、当該第1又は第2のポリペプチドとしてa)~r)の18種類の組合せが記載されているところ、このうちa)~l)の12種類が、「第1のAHAS単一変異体ポリペプチド」として「配列番号1の122位もしくは配列番号2の90位に対応する位置においてバリン、トレオニン、グルタミン、システインまたはメチオニンを有する第一のポリペプチド」を含むものである(上記(1)ア)。ここで、「配列番号1」はシロイヌナズナAHASLのアミノ酸配列であって、変異される122位の相対位置は、数多くの植物種のAHASLで保存されており、「配列番号2」で示されるトウモロコシAHASLでは90位に対応する(上記(1)オ)。
そして、実施例では、各種AHASL変異体をコードするポリヌクレオチドを用いた実験が行われ、実施例2(表2)では、1~3個のアミノ酸変異を有するトウモロコシAHASLをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドで形質転換した大腸菌のイミダゾリノン耐性及び、同ポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換したトウモロコシのイミダゾリノン耐性を検証する実験が行われ、A90T(90位のアラニンがトレオニンに変異)という単一変異を有するトウモロコシAHASLをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドZE21で形質転換した大腸菌は「++」、同ポリヌクレオチドを含むベクターZP7で形質転換したトウモロコシは「+++」という、それぞれ相当程度高いイミダゾリノン耐性を示したことが記載されている(上記(1)カ(実施例2))。また、実施例8(表4、5)では、1~3個のアミノ酸変異を有するシロイヌナズナAHASLをコードするポリヌクレオチドで形質転換したトウモロコシへのイマザモックス(イミダゾリノン系除草剤)施用が生理学的または生殖に与える影響を検証する実験が行われ、A122T(122位のアラニンがトレオニンに変異)という単一変異を有するシロイヌナズナAHASLをコードするポリヌクレオチドを含む構築物3で形質転換したトウモロコシは、有害な生理学的又は生殖の影響を示さなかったことが具体的データにより示されている(上記(1)カ(実施例8))。したがって、引用文献1には、次のとおりの発明が記載されていると認められる。
「単一変異を有するAHASLをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、シロイヌナズナAHASLにおいて122位のアラニンがトレオニンに変異してなる単一変異を有するAHASL、又は、トウモロコシAHASLにおいてシロイヌナズナAHASLの122位に対応する90位のアラニンがトレオニンに変異してなる単一変異を有するAHASLをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。」(以下、「引用発明」という。)
(3)対比
補正発明と引用発明とを対比するに、補正発明において「b)配列番号2に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列」は、本願出願当初の請求項1及び請求項4の記載や配列表の記載に照らすと、93位のアラニンがトレオニンに変異してなる単一変異を有するソルガム(Sorghum bicolor)AHASL(アミノ酸配列は、配列番号2)をコードするヌクレオチド配列である。そして、引用文献1の記載(上記(1)オ【0030】、キ【図3-2】、【図8-1】)によれば、ソルガム(Sorghum bicolor)AHASLの93位のアラニンは、シロイヌナズナAHASLの122位のアラニンに対応するものであるから、補正発明のうちのb)と引用発明は、
「シロイヌナズナAHASLの122位に対応する位置のアラニンがトレオニンに変異してなる単一変異を有するAHASLをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。」
である点で一致し、次の点で一応相違する。
一応の相違点: AHASLの由来する植物が、補正発明はソルガム(Sorghum bicolor)であるのに対して、引用発明はシロイヌナズナ又はトウモロコシである点。
(4)判断
上記一応の相違点について検討すると、引用発明は、引用文献1において具体的に作成され、イミダゾリノン系除草剤に対する耐性が確認された、シロイヌナズナAHASLの122位に対応する位置のアラニンがトレオニンに変異してなる単一変異を有する、シロイヌナズナ又はトウモロコシのAHASLをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドである。引用文献1には、さらに従来技術として、シロイヌナズナAHASLの122位に対応する100位のアラニンがトレオニンに変異してなる単一変異を有するオオモミ(キク科植物)AHASLがイミダゾリノンに耐性を有することが記載されているうえ(上記(1)ウ)、様々な植物種のAHASLは長さがアミノ酸数個分だけ異なるが、変異させるアミノ酸の相対位置は保存されていることが、植物種ごとのAHASLのアミノ酸配列及びシロイヌナズナAHASLの122位のアラニンに対応するアラニンの位置とともに記載されている(上記(1)オ【0030】、キ【図3-2】、【図8-1】)。
生物種が異なっても、対応するタンパク質は同様の作用を有するという本願優先日当時の技術常識もふまえると、引用文献1において、引用発明の単一変異を有するシロイヌナズナAHASL及びトウモロコシAHASLをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドのみならず、【0030】、【図3】及び【図8-1】に列挙された各種植物の、シロイヌナズナAHASLの122位に対応する90位のアラニンがトレオニンに変異してなる単一変異を有するAHASLをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドも記載されているに等しいものである。そして、【0030】、【図3】及び【図8-1】にはソルガム(Sorgham bicolor)AHASLが配列番号15のアミノ酸配列を有し、その93位のアラニンがシロイヌナズナAHASLの122位のアラニンに対応することが記載されており、配列番号15のアミノ酸配列において93位のアラニンをトレオニンに変異させると本願の配列番号2に一致するのだから、補正発明のうちのb)は引用文献1に記載されているに等しいものといえる。
したがって、上記一応の相違点は、実質的な相違点であるとは認められず、補正発明に新規性を認めることはできない。
仮に実質的な相違点であるとしても、上記一応の相違点に係る構成は、引用文献1の【0030】、【図3】及び【図8-1】を考慮することにより、当業者が容易に想到し得るものにすぎず、補正発明が予測しうる範囲を超える格別顕著な効果を有するものと認めることもできないから、補正発明に進歩性を認めることはできない。
以上のとおり、補正発明は、引用文献1に記載されたに等しい発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから同法同条第2項の規定により、特許を受けることができない。
(5)審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において概ね次の主張をする。
ア 審判請求時に、特許請求の範囲に「イマゼタピル、イマザピル、およびイマザピックから選択される1つまたは複数の除草剤の推奨量の4倍までの高施用率に対する耐性が増大しており」という施用率についての新たな特定を含める補正を行ったから、補正後の特許請求の範囲に係る発明は引用文献1~3に対して当該特定というさらなる相違点となる特徴を備える。
イ 参考資料1の実験結果によれば、補正発明のソルガム植物は、対応するAHASL単一変異を有する他の作物や二重変異を有するソルガム植物と比較して、高施用率の除草剤に対して高い抵抗性を有するという顕著な効果を有する。
ウ 参考資料2(訳文は参考資料3)の実験結果によれば、補正発明のソルガム植物は、除草剤の散布とは無関係に収量が増加するという予期せぬ効果を有する。
これらの主張に対する当審の判断は、次のとおりである。
主張アについて
「イマゼタピル、イマザピル、およびイマザピックから選択される1つまたは複数の除草剤の推奨量の4倍までの高施用率に対する耐性が増大しており」という発明特定事項は、審判請求時の補正により請求項1(及びそれを引用する請求項2、3及び11)のみに追加されたものであって、上記第2において独立特許要件の判断を行った請求項7(補正発明)を含む、請求項4~10は当該発明特定事項を備えていない。
したがって、請求人の主張アは採用することができない。
主張イについて
参考資料1には、AHASLが変異を有するか野生型であるソルガム、イネ、トウモロコシ及びヒマワリ(表1)を推奨用量の2倍量のイミダゾリノン除草剤で処理(又は無処理)した2週間後の植物体の乾燥物重量のデータ(表2)が記載されている。
しかし、参考資料1のデータから、補正発明の効果の顕著性を認めることはできない。すなわち、補正発明は上記(3)で説明したとおり、「93位のアラニンがトレオニンに変異してなる単一変異を有する、ソルガム(Sorghum bicolor)AHASLをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド」であるところ、参考資料1の実験で用いた各種植物は、表1に記載されたように、hybrid(交配種)、Inbred line(近交系)又はvariety(変種)であって、AHASLをコードする遺伝子(ポリヌクレオチド)以外のゲノム構成が明らかでなく、AHASLをコードする遺伝子(ポリヌクレオチド)以外のゲノム構成が同一であることが立証されていないから、表2に記載された各データの対比により認められる効果がAHASLをコードするポリヌクレオチドのみに起因するものとは認めることができない。
なお、本願明細書の【0034】の表2及び実施例2(図1A~C)にも、参考資料1と同様の、除草剤処理をした場合としなかった場合の植物体乾燥重量を示すデータが記載されているが、これらの実験で使用されたソルガムも、AHASLをコードする遺伝子(ポリヌクレオチド)以外のゲノム構成が明らかにされていないから、当該データの対比により認められる効果がAHASLをコードするポリヌクレオチドのみに起因するものとは認めることができない。
したがって、請求人の主張イは採用することができない。
主張ウについて
参考資料2(訳文は参考資料3)には、イミダゾリノン耐性ソルガムハイブリッドIMI-R-Iをイミダゾリノン除草剤処理した場合、処理しなかった場合、及び従来型ソルガムハイブリッドIMI-S-Iを除草剤処理しなかった場合(表1)の収穫粒重量のデータ(表2)が記載されている。
しかし、参考資料2のデータから、補正発明の効果の顕著性を認めることはできない。すなわち、補正発明は上記(3)で説明したとおり、「93位のアラニンがトレオニンに変異してなる単一変異を有する、ソルガム(Sorghum bicolor)AHASLをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド」であるところ、参考資料2の実験で用いたソルガムハイブリッドIMI-R-IとIMI-S-Iが、AHASLをコードする遺伝子(ポリヌクレオチド)以外のゲノム構成が同一であることが立証されていないから、参考資料2のデータの対比により認められる効果がAHASLをコードするポリヌクレオチドのみに起因するものとは認めることができない。
したがって、請求人の主張ウも採用の限りでない。
4 小括
以上のとおり、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項7に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではなく、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~60に係る発明は、出願時の特許請求の範囲の請求項1~60に記載の事項により特定される発明であり、そのうち請求項33に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2の1に補正前のものとして記載した請求項33により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項33】
a)配列番号1に記載のヌクレオチド配列、
b)配列番号2に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
c)配列番号2のアミノ酸配列に対する少なくとも95%の配列同一性を有し、除草剤耐性AHAS活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
d)配列番号1に記載のヌクレオチド配列に対する少なくとも85%の同一性を有し、AHASのラージサブユニットを含み、除草剤耐性AHAS活性を示すポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
e)ヌクレオチド配列a)~(d)の1つと完全に相補的なヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。」
2 原査定の理由
原査定の理由は、本願の請求項1~60に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献1(特表2010-523123号公報)に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、当該発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから同法同条第2項の規定により、特許を受けることができない、という理由を含むものである。
3 判断
上記第2のとおり、補正発明は、引用文献1に記載されたに等しい発明であるか、当該発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるところ、本願発明は、補正発明をその一態様としてそのまま含むものであるから、上記第2に示した理由により、特許法第29条第1項第3号に該当し、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項33に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-008738