特許拒絶査定不服審判
2023-008315
金色印刷物
- 審判番号
- 2023-008315
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-066344外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年05月22日
- 審決日
- 2024年06月04日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】TOPPANホールディングス株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人小笠原特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (B41M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019- 66344「金色印刷物」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年10月 8日出願公開、特開2020-163696〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成31年3月29日の出願であって、令和4年11月17日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、令和5年1月11日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年2月6日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされたのに対し、同年5月22日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願発明は、令和5年5月22日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
基材上に光輝性インキと暗色インキとを重ね刷りして成る印刷物であって、
前記光輝性インキが金属粉末と黄色顔料とを含有しており、
網点面積率100%で印刷された前記光輝性インキの上に、40%以下の網点面積率で前記暗色インキが印刷され、
前記暗色インキが、赤色顔料と墨色顔料とを含んでおり、この暗色インキが前記光輝性インキを透視できるように重ね刷りされていることを特徴とする金色印刷物。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の理由とされた、令和4年11月17日付け拒絶理由通知書に記載した理由の概要は、以下の通りである。
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用例1乃至3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用例一覧>
1.特開2000-211234号公報
2.特開昭63-290789号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2017-036349号公報(周知技術を示す文献)
第4 引用例
1 引用例1
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前である平成12年8月2日に頒布された刊行物である特開2000-211234号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は印刷によるメタル仕上げ模様の表現方法に関する。」
(2)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の筋目模様は金属表面への機械加工により表現されるもので、複数の機械を用いたり、被加工材の取付位置を変更することは加工費用増大させるため単調な模様が主流になっていた。
【0004】また任意の形状の文字や模様を抜いて表現する手段にあっては、箔や薄板の場合に抜き位置に歪みが残り、模様が作れなくなったり、逆にヘアーブラッシングによるヘアーラインでは抜き位置の縁に斑を付けてしまう等不良率が多かった。
【0005】さらに抜き形状によっては、位置決めができなくなったり、抜いた後の残部が狭くなってしまうこともあり、デザイン上の限界もあった。」
(3)「【0016】
【実施例】図1は本発明にかかるメタル仕上げ模様印刷の第1の実施例説明図である。図1において記号1はガラス板、プラスチック板等からなる被印刷板で、平面部を印刷に支障のない程度に平滑に形成されている。図において、まず被印刷板1の表面に不透明で隠ぺい力の優れた白色顔料等を用いたインキでベタ刷りを施し、隠ぺい層4を形成する。ここで隠ぺい層4の上面にブロンズ粉、アルミ粉を顔料に用いた金インキ、銀インキあるいは、雲母に酸化チタンや酸化鉄をコーテイングした顔料を用いたパールインキ等のメタリックインキでベタ刷りを施し、メタル地色層2を形成する。この時被印刷板1の裏面12の側からメタル地色層2の地色は、透明な被印刷板1を用いた場合にあっても、隠ぺい層4により隠ぺいされ隠ぺい層4の色のみが見え、裏面12側の美観を表現する。メタル地色層2の上面には、ヘアーライン、梨地、ラップ仕上げ模様等の金属表面の仕上げ加工模様等を印刷したデザイン層3を形成する。デザイン層3は刷版を用い独自の調色によるインキを用い仕上げ加工模様を表現する。たとえばインキとしてメジウムと墨インキ等を混練し、光沢や透明度を増したスモークインキにしメタル地色層2の上面に印刷する。この時、インキが透明になっていることからメタル地色層2の色彩は、スモークインキの墨色により曇りを生じて再現され、さらにスモークインキの印刷部分で生じるわずかの凹凸により色彩、光沢が変化しメタル仕上げ模様が表現される。」
(4)「【図1】
[図:0001412939000001.jpg]
」
(5)上記(3)「被印刷板1の表面に不透明で隠ぺい力の優れた白色顔料等を用いたインキでベタ刷りを施し、隠ぺい層4を形成する。ここで隠ぺい層4の上面にブロンズ粉、アルミ粉を顔料に用いた金インキ、銀インキあるいは、雲母に酸化チタンや酸化鉄をコーテイングした顔料を用いたパールインキ等のメタリックインキでベタ刷りを施し、メタル地色層2を形成する」との記載より、被印刷板1上に金インキがベタ刷りされてメタル地色層2が形成されていると認められる。
(6)上記(3)「デザイン層3は刷版を用い独自の調色によるインキを用い仕上げ加工模様を表現する。たとえばインキとしてメジウムと墨インキ等を混練し、光沢や透明度を増したスモークインキにしメタル地色層2の上面に印刷する。」との記載より、デザイン層3は独自の調色によるメジウムと墨インキ等を混練し、光沢や透明度を増したスモークインキからなると認められる。
(7)上記(3)「図1は本発明にかかるメタル仕上げ模様印刷の第1の実施例説明図である。」との記載より、(4)【図1】には、メタル仕上げ模様印刷がなされた印刷物が示されていると認められる。
上記(1)乃至(4)の記載事項及び(5)乃至(7)の認定事項から、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「ガラス板、プラスチック板等からなる被印刷板1上に金インキがベタ刷りされてメタル地色層2が形成され、
メタル地色層2の上面には、独自の調色によるメジウムと墨インキ等を混練し、光沢や透明度を増したスモークインキからなるデザイン層3が印刷され、
インキが透明になっていることからメタル地色層2の色彩は、スモークインキの墨色により曇りを生じて再現された、
メタル仕上げ模様印刷がなされた印刷物。」
2 引用例2
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前である昭和63年11月28日に頒布された刊行物である特開昭63-290789号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)「(産業上の利用分野)
本発明は金属光沢のある記録物を感熱転写記録によって得ることのできる感熱転写材に関する。」(1ページ左欄10~12行)
(2)「(発明が解決しようとする問題点)
本発明者等は上記の欠点を改良するために鋭意検討したところ、金属光沢のある特殊な印刷物を家庭などで容易に作ることに成功した。」(1ページ右欄11~14行)
(3)「染料や顔料などの色素は着色した金属光沢を有する印刷物を得るために必要によって加えられ、金属粉に黄色系着色材を添加すると金色の印刷物が得られ、着色剤を加えないと銀色の印刷物となる。」(2ページ左上欄12~15行)
3 引用例3
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前である平成29年2月16日に頒布された刊行物である特開2017-36349号公報(以下「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型組成物、及び活性エネルギー線硬化型インク、並びに、それらを収容した容器、それらを用いた2次元又は3次元の像の形成方法と形成装置、及び当該像を加工してなる成形加工品に関する。」
(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この提案は、多官能モノマーを含有する結合材料のみをインクジェット方式により付与する方法であり、非重合性樹脂粒子自体は体積基準メディアン径が大きいため、ブレードを用いて塗布しており、ジェッティングによる付与はできず、インクジェット方式における吐出安定性、及び生産性が劣るという問題がある。
本発明は、吐出安定性に優れ、寸法安定性が良好な硬化物が得られる活性エネルギー線硬化型組成物を提供することを目的とする。」
(3)「【0053】
金色顔料としては、前述の銀色顔料にイエロー顔料を混合して金色インクとできる他、銀色とイエロー色を重ねて、又は近傍にドット形成することで画像形成することもできる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、物理特性などを考慮して、必要に応じて種々の無機顔料や有機顔料が使用できる。」
4 周知技術
上記2及び3より、以下の技術事項が、本願の出願日時点において、周知の技術事項(以下「周知技術」という。)であると認める。
「金属着色剤に黄色着色材を含有させてなる金属光沢表現する着色剤。」
第5 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
1 後者の「ガラス板、プラスチック板等からなる被印刷板被印刷板1」、「金インキ」、「メジウムと墨インキ等を混練し、光沢や透明度を増したスモークインキ」及び「印刷物」は、それぞれ、前者の「基材」、「光輝性インキ」、「暗色インキ」及び「印刷物」に相当する。
2 後者の「印刷物」は、「『ガラス板、プラスチック板等からなる被印刷板1』上に『金インキ』がベタ刷りされてメタル地色層2が形成され、メタル地色層2の上面には、『メジウムと墨インキ等を混練し、光沢や透明度を増したスモークインキ』からなるデザイン層3が印刷され」ており、「金インキ」と「メジウムと墨インキ等を混練し、光沢や透明度を増したスモークインキ」とは、「ガラス板、プラスチック板等からなる被印刷板1」上に重ね刷りされているといえる。
3 後者の「金インキ」は、ベタ刷りされてメタル地色層2が形成されるから、印刷技術分野における技術常識からすると、金属粉末を含有し、かつ、網点面積率100%で印刷されているといえる。
4 後者の「スモークインキ」は、光沢や透明度を増し、透明になっていることにより、メタル地色層2の色彩に対し、曇りを生じて再現するものであるから、スモークインキが金インキを透視できるよう印刷されているといえる。
5 後者の「スモークインキ」は、墨色により曇りを生じて再現されるものであるから、印刷技術分野における技術常識からすると、墨色顔料を含有しているといえる。
6 後者の「印刷物」のメタル地色層2は、金インキがベタ刷りされて形成されたものであるところ、金色であることは明らかであるから、前者の「印刷物」と後者の「印刷物」とは、「金色」である点で一致する。
そうすると、本願発明と引用発明1とは、
[一致点]
「基材上に光輝性インキと暗色インキとを重ね刷りして成る印刷物であって、
前記光輝性インキが金属粉末を含有しており、
網点面積率100%で印刷された前記光輝性インキの上に、前記暗色インキが印刷され、
前記暗色インキが、墨色顔料を含んでおり、この暗色インキが前記光輝性インキを透視できるように重ね刷りされている金色印刷物。」
で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
本願発明の光輝性インキが、「黄色顔料」を含有しているのに対し、引用発明1の金インキは、「黄色顔料」を含有しているのか否か明らかでない点。
[相違点2]
本願発明の暗色インキが、「40%以下の網点面積率」で印刷されているのに対し、引用発明1のスモークインキの「網点面積率」は、明らかでない点。
[相違点3]
本願発明の暗色インキが、「赤色顔料」を含有しているのに対し、引用発明1のスモークインキが、「赤色顔料」を含有しているのか否か明らかでない点。
第6 判断
上記各相違点について、以下検討する。
1 [相違点1]について
上記第4 4の通りであるから、上記相違点1は、周知技術といえる。
そして、引用発明1も、上記周知技術も、金属色表現を行うものであるから、引用発明1に、上記周知技術を適用して、上記相違点1の構成とすることは、当業者が適宜なし得るものである。
2 [相違点2]について
上記第5 4より、引用発明1の「スモークインキ」は、金インキを透視できるよう印刷されているといえるから、網点面積率100%で印刷されていないことは明らかである。
ここで、本願の願書に添付した明細書を参酌しても、暗色インキの「網点面積率」について、40%前後で「金色を表現」において、格別な差異が生じることを立証しているわけでもないし、作用機序を説明しているわけでもない。
してみると、本願発明における暗色インキの「網点面積率」について、40%に臨界的意義があるものとは認められない。
そうすると、引用発明1の「スモークインキ」について、金インキを透視できるよう、その網点面積率を40%以下とすることは、当業者が適宜選択し得る事項であるといえる。
よって、上記相違点2に係る構成は、引用発明1から、当業者が容易になし得るものである。
3 [相違点3]について
引用発明1は、光沢や透明度を増したスモークインキからなるデザイン層3を印刷するに際し、独自の調色によるメジウムと墨インキ等を混練しているものである。
ここで、表現する色は、設計者の意向に基づき、調色により設定されるものであるから、どのような色を調色するかは、当業者が適宜選択し採用し得る事項である。
そうすると、引用発明1において、スモークインキに「赤色顔料」を含有させることは、当業者が適宜採用し得る設計的事項である。
4 してみると、本願発明は、引用発明1に、上記周知技術を参酌することにより、当業者が容易になし得るものである。
そして、本願発明の効果も、引用発明1、上記周知技術から、当業者が予測し得る程度のものといえる。
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、当業者が容易に発明できた発明である。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-008315