審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2023-008083

印刷基体及びその製造方法

審判番号
2023-008083
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-024594外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年05月17日
審決日
2024年07月30日
公報発行日
2024年10月25日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (B41M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
行政事件訴訟法46条特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019- 24594「印刷基体及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月31日出願公開、特開2020-131467〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成31年2月14日の出願であって、令和4年11月24日付けの拒絶理由の通知に対し、令和5年1月27日に意見書及び手続補正書が提出され、同年2月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年5月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、その後、当審において、令和6年4月9日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年6月6日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明について 本願の請求項1-5に係る発明は、令和6年6月6日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「基材上に、マルチアングルスキャナにより表面凹凸及び/又は質感を有する3Dスキャン対象物から取得されたデータに基づく、二次元の印刷層が形成されて成る印刷基体であって、 前記印刷層が前記表面凹凸及び/又は質感が再現された印刷画像により形成され、 前記印刷層が前記基材上に直接又はベースコート層若しくはベースフィルムを介して形成され、 前記印刷層上に透明性を有する乱反射層が形成され、 前記乱反射層が、艶消しニス層又は艶消しフィルムから成り、 前記艶消しニス層又は艶消しフィルムが、艶消し剤を固形分中に1重量%以上の量で含有し、 前記艶消し剤が、平均粒径が1~10μmの範囲のシリカであり、 前記3Dスキャン対象物の表面凹凸段差量が0.5~10mmであり、 前記基材がシームレス缶であることを特徴とする印刷基体。」 第3 当審拒絶理由の概要 令和6年4月9日付け当審拒絶理由において通知した理由は、次に概略を記した理由を含むものである。 理由2(進歩性)この出願の令和5年5月17日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1及び引用文献2に記載の発明に記載の発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1.登録実用新案第3173896号公報 引用文献2.特開2012-171636号公報 第4 当審の判断 1 引用文献 (1)引用文献1 ア 引用文献1に記載された事項 本願の出願前である平成24年2月23日に頒布された刊行物である登録実用新案第3173896号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。 (ア)「【技術分野】 【0001】 本考案は、例えばハム、ソーセージ、乾麺、瓶詰め商品などの食品を模して形成される商品サンプルに関する。」 (イ)「【0012】 本考案の目的は、カメラで撮影した画像を印刷原稿とする場合に比べて、見た目の本物感と立体感を格段に向上しながら、商品サンプルのコストを大幅に削減して展示コストを削減できる商品サンプルを提供することにある。 本考案の目的は、食品サンプルなどの商品サンプルに比べて低コストであり、商品サンプルの変更や追加などに迅速に対応できるレリーフ構造の商品サンプルを提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0013】 本考案に係る商品サンプルは、シート基材4の表面に実物商品の印刷画像5が形成してあるサンプル本体1と、サンプル本体1を収容する実物商品用の包装体2とを含む。シート基材4に印刷された印刷画像5は、質感および立体感を忠実に再現する特殊スキャナーで取込んだ実物商品の画像データを使用して印刷する。」 (ウ)「【0024】 印刷画像5の外面に、光沢面と光沢のない凹凸面を形成するための擬似エンボス加工を施したサンプル本体1によれば、光沢のない凹凸面によって印刷画像5の外面の質感をさらにリアルに表現して、凹凸のある実物商品の表面の状態を忠実に再現することができる。 ・・・ 【0027】 (実施例)・・・サンプル本体1は、シート基材4の表面に実物商品の画像を印刷し、必要に応じて印刷画像5に擬似エンボス加工を施して形成してある。シート基材4としては、紙、合成紙、プラスチックシート、金属薄板などを適用することができるが、コスト面で、紙、またはプラスチックシートを使用することが好ましい。 ・・・ 【0029】 サンプル本体1は、図7に示す各過程を経て形成する。まず、実物商品の画像を質感および立体感を忠実に再現する特殊スキャナーで取込む。次に、特殊スキャナーの画像データの色調を補正するなど、画像データを加工した後、補正された画像データに基づき、印刷画像5の一群をシート基材4に対して高精細精度の印刷が可能な印刷機で印刷する。同時に、印刷画像5の表面に紫外線の照射によって硬化するUVクリアニス(紫外線硬化型インキ)、および油性ニス(紫外線硬化型ニス)をコーティングして擬似エンボス加工を施す。UVクリアニスで覆われた印刷画像5の表面は、透明なフィルムをラミネートした場合と同様に光沢面とすることができる。また、擬似エンボス加工を施すことにより、油性ニスが塗布された印刷画像5の表面を、光沢のない凹凸面として、ざらざら感やつぶつぶ感などの質感を強調することができる。・・・ 【0030】 実物商品の画像を取込む特殊スキャナーとしては、日本製図器工業株式会社のクルーズリアルスキャナー、特許第4373492号公報に開示されているマルチアングルスキャナーなどを使用することができる。特殊スキャナーにおいては、実物商品とスキャナーの読取りヘッドのいずれか一方を他方あるいはに対して傾斜させ、印影を強調した状態で、読取りヘッドに設けたラインCCDで画像を取込む。その際に、実物商品の表面の変化に追随して焦点位置を自動的に調整しながら、画像を取込むことができる。従って、実物商品をカメラで撮影する場合とは異なり、実物商品の表面の全ての部分においてピントをシャープに合わせた状態で撮像でき、実物商品の画像データの解像度を向上でき、さらに印刷画像5の立体感を向上し、凹凸のある実物商品の表面の状態を忠実に再現できる。」 (エ)「【0036】 上記の実施例では、商品サンプルが、ハムおよびソーセージ等の食肉加工品である場合について説明したが、食肉加工品以外の商品を模して商品サンプルを形成することができる。例えば、図8に示すように、そうめん、うどんなどを丸棒状に束ねた乾麺を模してサンプル本体1を形成することができる。その場合には、図9に示すように、サンプル本体1を断面優弧状に湾曲させた状態で展示することにより、細部にわたって精密な印刷画像5を再現して、カメラで撮影した映像を印刷原稿として使用する場合に比べて、商品サンプルの見た目の本物感を格段に向上することができる。」 (オ)「【図7】 [図:0001414778000001.jpg] 【図9】 [図:0001414778000002.jpg] 」 イ 引用文献1の記載から把握できる事項 前記ア(オ)の【図9】から、サンプル本体1を断面優弧状に湾曲させた状態とする場合、断面優弧状に湾曲させたシート基材4が用いられることが看取できる。 ウ 引用文献1に記載された発明等 前記ア及びイから、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。 <引用発明1> 「断面優弧状に湾曲させたシート基材4の表面に実物商品の印刷画像5が形成してあるサンプル本体1であって、 前記印刷画像5は、質感および立体感を忠実に再現する特殊スキャナーで取込んだ実物商品の画像データを使用して印刷され、 前記特殊スキャナーとしては、マルチアングルスキャナーが使用され、 前記シート基材4は、金属薄板であり、 前記印刷画像5の表面にUVクリアニスおよび油性ニスをコーティングして擬似エンボス加工を施すことにより、油性ニスが塗布された印刷画像5の表面が光沢のない凹凸面とされ、光沢のない凹凸面によって印刷画像5の外面の質感をリアルに表現して、凹凸のある実物商品の表面の状態を忠実に再現したサンプル本体1。」 (2)引用文献2 ア 引用文献2に記載された事項 本願の出願前である平成24年9月10日に頒布された刊行物である特開2012-171636号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。 (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、容器に係るものであり、容器の一例として飲料を充填する金属缶等に使用される容器に関する。」 (イ)「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 ここで容器の外観としてマット感(艶消し感)を有する塗膜が求められることがある。そしてこのために容器に塗装を行なう際に使用する塗料に艶消し剤を添加することがある。しかしながらマット感を強調するために艶消し剤の添加量を増加させると、塗膜表面の滑り性が低下したり、塗膜の密着性が低下して塗膜が剥離しやすくなることがあった。 【0006】 本発明は、従来の技術が有する上記の問題点に鑑みてなされたものである。 即ち、本発明の目的は、容器に塗装を行なう場合に塗膜表面の滑り性の低下や塗膜の密着性の低下を抑制しつつ、マット感(艶消し感)を有する塗膜を有する容器を提供しようとするものである。」 (ウ)「【0014】 <容器の第1の実施形態についての説明> ・・・ 【0015】 そして容器10は、内容物が充填可能な容器基体12と、容器基体12の外周面に形成される塗膜14とからなる。また本実施の形態では、塗膜14は、容器基体12の外周面に形成され標記が付される標記層としての印刷層142と、印刷層142を保護するために印刷層142上に形成される保護層としてのトップコート層143とから構成されている。 【0016】 ・・・また容器基体12の材料としては、内容物を充填可能であるものであれば特に限定されるものではなく、PET(Polyethylene terephthalate)等の樹脂類やアルミニウム、鉄(スチール)等の金属類を使用することができる。ただし本実施の形態は、特に金属類を容器基体12の材料とする場合に好適に適用することができる。 ・・・ 【0018】 塗膜14のトップコート層143は、上述の通り印刷層142を保護するために設けられる層である。トップコート層143の成分は、主として樹脂である。この樹脂の種類は透明であれば特に限定されるものではなく、エポキシ/フェノール樹脂、ポリエステル/アミノ系樹脂、エポキシ/ポリエステル/アクリル/アミノ系樹脂等を使用することができる。このうちエポキシ/ポリエステル/アクリル/アミノ系樹脂を使用した場合は、水性塗料とすることができる。そのため詳しくは後述するが、容器10の製造時における塗膜14の焼付け乾燥時に揮発する有機溶剤量が少ない利点がある。また、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、低分子ポリエステル樹脂、天然油脂、蝋等の添加剤も任意に配合することができる。さらに、トップコート層143の塗装に使用する塗布液は、エクソンモービル社製のソルベッソ(登録商標)等の溶剤や添加剤を加えて所要粘度の液状塗料として調製されるが、塗布後の焼付け乾燥によって塗布液中の不揮発成分のみが残留する。従って、トップコート層143は、上述した樹脂組成物や後述する艶消し剤等の不揮発成分によって構成されている。」 (エ)「【0024】 図2は、本実施の形態の艶消し剤を含むトップコート層143の概念図である。 図2に示すトップコート層143は、図1(b)で説明したのと同様に容器基体12上に塗膜14として印刷層142とトップコート層143が順に塗布されている。そしてトップコート層143には、艶消し剤16が含まれている。艶消し剤16は、第1の艶消し剤である大粒子161と、第1の艶消し剤とは異なる成分からなる第2の艶消し剤である小粒子162とを含む。 【0025】 そしてこのとき第1の艶消し剤は、光の散乱により印刷層142の艶消しを行う。また第2の艶消し剤は、光の散乱を更に増大させる。 つまり図2に示すように大粒子161は、トップコート層143の表面から露出しやすい。そのため大粒子161がトップコート層143に含まれることで、トップコート層143の表面に凹凸が生じやすくなる。そしてこれによりトップコート層143に照射された光は、トップコート層143中で散乱するとともにトップコート層143表面においても散乱する。そのために反射する光は、特定の方向に反射されずに拡散して反射されやすい。つまり大粒子161を含ませることで、光の散乱により印刷層142の艶消しを行なうことができる。ここで本実施の形態では、最外層であるトップコート層143に艶消し剤16を含ませており、これにより印刷層142等の最外層でない層に艶消し剤16を含ませた場合よりも光の散乱効果を大きくすることができる。 ・・・ 【0027】 また図3は、本実施の形態の艶消し剤16の粒度分布について説明した概念図である。図3では、横軸が粒径を表わし、そして縦軸が所定の粒径に対する頻度分布を個数%で表わしている。 図3に示すように艶消し剤の粒度分布は、粒径がaのときと、粒径がbのときについて2つの極大値を有している。このうち頻度曲線の極大値のうち粒径が大きい方(粒径b)の極大値を主として形成するのは第1の艶消し剤であり、粒径が小さい方(粒径a)の極大値を主として形成するのは、第2の艶消し剤である。 そして本実施の形態において第1の艶消し剤は、シリカ(SiO2)からなり、第2の艶消し剤は、酸化チタン(TiO2)からなることが好ましい。 また本実施の形態では、第1の艶消し剤は、個数平均径で1μm~5μmであり、第2の艶消し剤は、個数平均径で50nm~250nmであることが好ましい。また添加する重量としては、第1の艶消し剤がトップコート層143の重量に対し2.5wt%~5wt%になるようにし、第2の艶消し剤が、トップコート層143の重量に対し0.1wt%~2wt%になるようにすることが好ましい。」 (オ)「【0030】 <容器の第2の実施形態についての説明> ・・・ 【0031】 一方本実施の形態では、塗膜14について、容器基体12と印刷層142との間に容器基体12の素地を隠蔽するための隠蔽層としてのベースコート層141が設けられている。 【0032】 本実施の形態では、ベースコート層141は、主として樹脂である。樹脂としては、ポリエステル/エポキシ/アミノ系樹脂及びポリエステル/アクリル/アミノ系樹脂等を使用することができる。また紫外線硬化型塗料によりベースコート層141を形成する場合は光重合開始剤を含有させたエポキシ/ポリエチレン系樹脂等が使用できる。また、容器基体12の金属色を打ち消すために、添加剤として白色顔料を添加してもよい。ベースコート層141の厚さは、例えば、2μm~10μmとすることができる。 【0033】 このようなベースコート層141を設けることにより、容器基体12の金属色等の地色を隠蔽することができ、印刷層142の色彩をより鮮明にすることができる。」 (カ)「【図2】 [図:0001414778000003.jpg] 」 イ 引用文献2の記載から把握できる事項 (ア)前記ア(カ)の【図2】から、大粒子161がトップコート層143に含まれることで、トップコート層143の表面に凹凸が生じることが看取でき、この大粒子161は前記ア(エ)の【0024】から、第1の艶消し剤であると認められる。 (イ)前記ア(カ)の【図2】と前記ア(エ)の【0027】から、トップコート層143の厚さは、第1の艶消し剤である大粒子161の径より薄いことが看取できる。 ウ 引用文献2に記載された発明 前記ア及びイから、引用文献2には、次の発明が記載されていると認められる。 <引用発明2> 「印刷層142上に形成されるトップコート層143であって、 前記トップコート層143は、樹脂を主成分として天然油脂が配合された塗料の塗布後の焼付け乾燥により製造され、 印刷層142の艶消しを行う第1の艶消し剤が前記トップコート層143に含まれることで、前記トップコート層143の表面に凹凸が生じ、 前記第1の艶消し剤は、個数平均径1μm~5μmのシリカからなり、前記トップコート層143の重量に対し2.5wt%~5wt%になるようにされていて、 前記第1の艶消し剤の径より薄い厚さであるトップコート層143。」 2 対比・判断 (1)対比 本願発明と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1の「シート基材4」、「『マルチアングルスキャナーが使用され』る『特殊スキャナー』」及び「印刷画像5が形成してあるサンプル本体1」は、本願発明の「基材」、「マルチアングルスキャナ」及び「印刷基体」に相当する。引用発明1の「実物商品」は「表面」に「凹凸」があるものであるから、引用発明1の「『特殊スキャナー』で画像データが取込まれる『実物商品』」及び「特殊スキャナーで取込んだ実物商品の画像データ」は、本願発明の「3Dスキャン対象物」及び「『マルチアングルスキャナにより』『3Dスキャン対象物から取得されたデータ』」に相当する。 イ 引用発明1の「実物商品」は「凹凸のある」ものであり、「特殊スキャナー」で「実物商品の画像データ」を取込むことにより、「質感および立体感」が「忠実に再現」されることからすると、「実物商品」は質感および立体感を有するといえるから、本願発明の「3Dスキャン対象物」と引用発明1の「実物商品」とは「表面凹凸及び質感を有する」ものとの概念で一致する。 ウ 引用発明1の「印刷画像5」は「シート基材4の表面に」形成されたものであるから、シート基材4上に形成されたものといえる。引用発明1の「シート基材4は、金属薄板であ」るから面状物、すなわち、二次元の広がりをもつものであり、マルチアングルスキャナは一般的に凹凸のあるスキャン対象物を2次元で表現可能とするものである(必要であれば、特開2009-163471号公報の【0013】を参照。)ことも踏まえると、引用発明1のシート基材4上の印刷画像5も、二次元の広がりをもつものといえる。してみると、引用発明1の「印刷画像5」はシート基材4上に形成された二次元の画像であると認められるから、本願発明の「二次元の印刷層」に相当し、本願発明の「印刷基体」と引用発明1の「サンプル本体1」とは、「二次元の印刷層が形成されて成る」ものとの概念で一致する。また、引用発明1の「印刷画像5は、質感および立体感を忠実に再現する特殊スキャナーで取込んだ実物商品の画像データを使用して印刷され、前記特殊スキャナーとしては、マルチアングルスキャナーが使用され」るから、前記イも踏まえると、本願発明の「二次元の印刷層」と引用発明1の「印刷画像5」とは、「マルチアングルスキャナにより表面凹凸及び/又は質感を有する3Dスキャン対象物から取得されたデータに基づく」ものとの概念でも一致する。 エ 引用発明1の「印刷画像5」は、「質感および立体感を忠実に再現する特殊スキャナーで取込んだ実物商品の画像データを使用して印刷され」、「凹凸のある実物商品の表面の状態を忠実に再現」するものであるから、本願発明の「印刷層」と引用発明1の「印刷画像5」とは、「マルチアングルスキャナにより」「取得されたデータに基づく」、「表面凹凸及び/又は質感が再現された印刷画像により形成され」るものとの概念で一致する。 オ 本願発明の「印刷層」と引用発明1の「印刷画像5」とは、「前記基材上に直接」形成され」る点で一致する。 カ 引用発明1の「油性ニス」は、印刷画像5の表面をコーティングしているので、印刷画像5の表面を覆う層を構成しているといえる。引用発明1の「印刷画像5」は、「凹凸のある実物商品の表面の状態を忠実に再現した」ものであるから、「印刷画像5」が視認できるよう、「印刷画像5の表面」に「コーティング」されて「光沢のない凹凸面」とされる「油性ニス」は透明性を有すると認められる。そして、凹凸面が光を乱反射することは例示するまでもなく技術常識であるから、引用発明1における「『光沢のない凹凸面』とされる『油性ニス』」及び「『前記印刷画像5の表面に』『油性ニスをコーティングして擬似エンボス加工を施すことにより、油性ニスが塗布された印刷画像5の表面が光沢のない凹凸面とされ』」ることは、本願発明の「透明性を有する乱反射層」及び「前記印刷層上に透明性を有する乱反射層が形成されていること」に相当する。 キ 引用発明1の「凹凸面」が「光沢のない」とは、凹凸のある物質表面に対し、入射光が乱反射し拡散反射が多くなる現象を意味し、艶消し状態と同義であるから、引用発明1の「『光沢のない凹凸面とされ』る『油性ニス』」は本願発明の「艶消しニス層」に相当し、本願発明の「乱反射層」と引用発明1の「『光沢のない凹凸面とされ』る『油性ニス』」とは、「艶消しニス層」「から成」るとの概念で一致する。 したがって、本願発明と引用発明1を対比すると、両者は、 <一致点> 「基材上に、マルチアングルスキャナにより表面凹凸及び/又は質感を有する3Dスキャン対象物から取得されたデータに基づく、二次元の印刷層が形成されて成る印刷基体であって、 前記印刷層が前記表面凹凸及び/又は質感が再現された印刷画像により形成され、 前記印刷層が前記基材上に直接形成され、 前記印刷層上に透明性を有する乱反射層が形成され、 前記乱反射層が、艶消しニス層から成る印刷基体。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本願発明の「前記艶消しニス層又は艶消しフィルムが、艶消し剤を固形分中に1重量%以上の量で含有し、前記艶消し剤が、平均粒径が1~10μmの範囲のシリカであ」るのに対し、引用発明1の「油性ニス」は「擬似エンボス加工を施すことにより」「光沢のない凹凸面とされ」ていて、平均粒径が1~10μmの範囲のシリカを固形分中に1重量%以上の量で含有していない点。 <相違点2> 本願発明の「3Dスキャン対象物の表面凹凸段差量が0.5~10mmであ」るのに対し、引用発明1の「実物商品」の表面凹凸段差量がどの程度か明らかでない点。 <相違点3> 本願発明の「印刷基体がシームレス缶である」のに対し、引用発明1の「断面優弧状に湾曲させたシート基材4」は「金属薄板」ではあるが「シームレス缶」ではない点。 (2)判断 ア 相違点1について (ア)「フィルム」は、一般的に「薄皮。薄膜」を意味する(広辞苑第七版)ところ、引用発明2の「トップコート層143」は、「個数平均径1μm~5μm」である「第1の艶消し剤の径より薄い厚さであ」って、「印刷層142の艶消しを行う」ものであることから、本願発明の「艶消しフィルム」に相当する。そして、引用発明2の「トップコート層143」は固形物であり、「第1の艶消し剤」は固形物である前記トップコート層143中に「2.5wt%~5wt%になるようにされてい」るので、本願発明の「艶消しフィルム」と引用発明2の「トップコート層143」とは、艶消し剤を固形分中に2.5wt%~5wt%の量で含有する点で一致する。また、引用発明2の「第1の艶消し剤」は「個数平均径1μm~5μmのシリカからな」るので、本願発明の「艶消し剤」と引用発明2の「第1の艶消し剤」とは、平均粒径が1~5μmの範囲のシリカである点で一致する。つまり、相違点1に係る構成は、引用発明2に示されている。 (イ)引用発明1も引用発明2も商品の外面に印刷層を形成する技術分野に属する点で共通し、引用発明1の「『光沢のない凹凸面とされ』る『油性ニス』」と引用発明2の「トップコート層143」とは、印刷画像(印刷層)の上に位置する凹凸面を構成し、艶消し、つまり光沢がないという共通の作用を有するから、引用発明1に、引用発明2を適用する動機付けがあるといえる。 (ウ)引用発明1の「油性ニス」は、「擬似エンボス加工を施すことにより」「光沢のない凹凸面とされ」ているところ、同様に凹凸面で光沢がない(艶消し)という作用を有する引用発明2の「トップコート層143」に置き換えて、前記相違点1の構成となすことは、当業者が容易になし得る設計変更である。 イ 相違点2について (ア)前記1(1)ア(ウ)の【0030】に「マルチアングルスキャナー」として例示されている特許第4373492号公報の特許権者であるニューリー株式会社の立体対象物読取スキャナーは、例えば「平成25年度補正 中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業-京都府-成果事例集」(平成28年9月 京都府中小企業団体中央会)<https://www.chuokai-kyoto.or.jp/whatsnew/20200826_H28%20mono.pdf>の34頁に記載のとおり、高さ10mmの凹凸がある対象物を鮮明に読み取り、シャープなデータに変換できるものである。つまり、本願の出願前に、高さ10mmの凹凸がある対象物を鮮明に読み取り、シャープなデータに変換できる立体対象物読取スキャナーは慣用技術であった。 (イ)引用発明1の「サンプル本体1」に印刷される「印刷画像5は、質感および立体感を忠実に再現する特殊スキャナーで取込んだ実物商品の画像データを使用して印刷され」、それにより「凹凸のある実物商品の表面の状態を忠実に再現」する。してみると、凹凸のある実物商品が、質感および立体感が得られる程度の凹凸を有していることは明らかであるから、質感および立体感が得られる程度の凹凸として、表面凹凸段差量が0.5mm以上の実物商品を対象とし、特殊スキャナーで取込可能な凹凸として、前記慣用技術を踏まえて表面凹凸段差量が10mm以下の実物商品を対象とすることは、当業者が技術の具体的適用に伴い適宜選択し得る設計的事項である。 ウ 相違点3について (ア)円筒形の金属缶であるシームレス缶(ツーピース缶)に、立体感を感じさせる模様を印刷することは、例えば特開2016-94222号公報の【0024】乃至【0027】、【図1A】や特開2004-244077号公報の【0001】、【0015】、【図1】に記載のとおり本願の出願前に周知の技術手段(以下、「周知技術」という。)である。 (イ)引用発明1の「シート基材4」は「断面優弧状に湾曲させた」形状で、且つ、「金属薄板」であるところ、技術の具体的適用に伴い「シート基材4」を前記周知の技術の円筒形の金属缶であるシームレス缶とすることは、当業者が適宜なし得ることである。 エ したがって、本願発明は、引用発明1、引用発明2、前記慣用技術及び前記周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 3 審判請求人の主張 (1)審判請求人は、令和6年6月6日付け意見書において、「5-2.相違点について」として、次のとおり主張している。 ア 「相違点(1)について検討すると、引用文献1には、UVクリアニスおよび油性ニスを用いることは記載されています。しかしながら、艶消し剤を用いること、およびシリカを用いることは記載されていません。また引用文献2には、艶消し剤として、シリカを用いることが記載されていません。しかしながら、艶消し剤としてシリカを用いることで、マット感を強調することが可能になるという趣旨の記載があるだけで、艶消し剤としてシリカを用いることで、立体感や質感を強調することができるという記載や示唆はありません。 これに対して、本願発明では、表面凹凸及び/又は質感が再現された印刷画像を、立体感を有する画像にするために、特定の粒径のシリカを用いており、これにより、3Dスキャン対象物の微細な表面構造が精度よく再現されるという効果を有します。」 イ 「相違点(2)について検討すると、引用文献1および2には、3Dスキャン対象物の表面凹凸段差量について一切記載も示唆もされていません。すなわち、表面凹凸段差量について着目し、このような表面凹凸段差量が、立体感の優劣に関係しているという示唆が一切ないのですから、当業者が容易になし得る設計事項とはいえません。 これに対して、本願発明では、表面凹凸及び/又は質感を再現する点に関して、3Dスキャン対象物の表面凹凸段差量に着目し、その中でも0.5~10mmという特定の範囲に定め、上限値と下限値の範囲を明確にすることで、3Dスキャン対象物の微細な表面構造が精度よく再現されるという効果がさらに発揮されます。」 ウ 「相違点(3)について検討すると、引用文献1には、基材がシームレス缶であることは記載されていません。なお、引用文献1には、サンプルを、外突状に保持することが記載されていますが、サンプルが多少の湾曲を描いているとしても、シームレス缶のような曲面を想定しているものではありません。また、引用文献1のサンプルでは、シームレス缶の側面のように、全体が曲面になっている形状を考慮したものではなく、正面視部分における立体感のみ考慮されているといえます。たとえば、引用文献1のサンプルでは、正面視の側方部分などで、立体感が生じるか否か不明ですし、さらにいえば、シームレス缶のような曲面まで外突状にした場合にも、立体感が生じるのか不明です。 これに対して、本願発明では、基材がシームレス缶であり、シームレス缶の曲面状になっている側面に印刷画像が形成されています。このようなシームレス缶の側面に立体感のある印刷画像が形成されても、図4(A)および(B)に示すように、相違点(1)および相違点(2)に記載の内容と相俟って、3Dスキャン対象物の微細な表面構造が精度よく再現されます。このような内容は引用文献1および2のいずれにも記載がされていません。」 エ 「よって、本願請求項1に係る発明は、当業者であっても引用文献1および2に記載された発明から容易に発明することができたものではありません。」 (2)審判請求人の主張の検討 ア 相違点(1)について 前記1(2)ア(エ)に示した引用文献2の【0027】には、艶消し剤がシリカからなることが記載されているから、前記(1)アの「また引用文献2には、艶消し剤として、シリカを用いることが記載されていません。」という審判請求人の主張は、引用文献2の誤認に基づくものである。そして、引用発明1の「サンプル本体1」は、印刷画像5の表面を「光沢のない凹凸面」とすることにより「印刷画像5の外面の質感をリアルに表現して、凹凸のある実物商品の表面の状態を忠実に再現」しているから、前記2(2)アに示したように「光沢のない凹凸面」を同様に凹凸面で光沢がない(艶消し)という作用を有する引用発明2の「トップコート層143」に置き換えた場合でも、「質感をリアルに表現して、凹凸のある実物商品の表面の状態を忠実に再現」する効果を奏する。したがって、審判請求人の主張する前記(1)アの「3Dスキャン対象物の微細な表面構造が精度よく再現されるという効果」は、引用発明1に引用発明2を組み合わせたものでも奏する効果であるから、当該効果を理由として進歩性を認めることはできない。 イ 相違点(2)について 引用発明1の「サンプル本体1」は、「凹凸のある実物商品の表面の状態を忠実に再現」するから、特殊スキャナーで取り込む「凹凸のある実物商品」の表面凹凸段差量を、質感および立体感が得られる程度の凹凸であって、特殊スキャナーで取込可能な凹凸とすることは明らかであるので、前記2(2)イに示したとおり、表面凹凸段差量を0.5~10mmとすることは、当業者が技術の具体的適用に伴い適宜選択し得る設計的事項である。 ウ 相違点(3)について 引用発明1の「サンプル本体1」は,、「断面優弧状に湾曲させたシート基材4の表面に実物商品の印刷画像5が形成してある」から、一の方向から見た場合だけでなく、優弧状の曲面のいずれから見た場合であっても、凹凸のある実物商品の表面の状態を忠実に再現していると認められる。したがって、前記(1)ウの「引用文献1のサンプルでは、正面視の側方部分などで、立体感が生じるか否か不明ですし、さらにいえば、シームレス缶のような曲面まで外突状にした場合にも、立体感が生じるのか不明です。」という審判請求人の主張は、採用できない。そして、引用発明1の「シート基材4は、金属薄板であ」ることも踏まえると、前記2(2)ウに示したとおり、引用発明1の「シート基材4」をシームレス缶とすることは、当業者が適宜なし得ることである。 エ したがって、前記(1)の審判請求人の主張はいずれも採用できない。 第5 むすび 前記第4のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、上記の結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2023-008083

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決50件(東洋製罐株式会社)
  • 2024-018941拒絶査定不服審判 / 2026-08-04 / 原査定取消(特許/登録すべき)合成樹脂製容器
    同じ当事者: 東洋製罐株式会社
  • 2024-010039拒絶査定不服審判 / 2026-07-23 / 原査定取消(特許/登録すべき)電子レンジ用パウチ
    同じ当事者: 東洋製罐株式会社
  • 2024-004776拒絶査定不服審判 / 2026-05-12 / 原査定取消(特許/登録すべき)パウチ
    同じ当事者: 東洋製罐株式会社
  • 2024-000268拒絶査定不服審判 / 2025-09-30 / 原査定取消(特許/登録すべき)マチ付きパウチ
    同じ当事者: 東洋製罐株式会社
  • 2023-014066拒絶査定不服審判 / 2025-08-07 / 請求不成立マチ付きパウチおよび水分を含む内容物入りマチ付きパウチ
    同じ当事者: 東洋製罐株式会社
検索でもっと見る →
同じ根拠条文の審決7,724件(特許法29条2項、行政事件訴訟法46条)
  • 2023-015313拒絶査定不服審判 / 2024-08-13 / 請求不成立パッケージングシステム上に3Dマイクロ光学画像を印刷する方法
    共通の条文: 特許法29条2項、行政事件訴訟法46条
  • 2024-001855拒絶査定不服審判 / 2026-01-20 / 請求不成立パレット・エスケープ・シンボルのためのエントロピーコーディング
    共通の条文: 特許法29条2項、行政事件訴訟法46条
  • 2025-012295拒絶査定不服審判 / 2025-10-15 / 請求不成立景品取得ゲーム装置
    共通の条文: 特許法29条2項、行政事件訴訟法46条
  • 2024-014387拒絶査定不服審判 / 2025-10-08 / 請求不成立作業車両の表示装置
    共通の条文: 特許法29条2項、行政事件訴訟法46条
  • 2024-015574拒絶査定不服審判 / 2025-09-17 / 請求不成立インクジェット印刷方法、及び、このインクジェット印刷方法により形成された立体印刷…
    共通の条文: 特許法29条2項、行政事件訴訟法46条
同じ論点・分野の審決(審決分類)99件(121・B41M)
  • 2024-006624拒絶査定不服審判 / 2026-01-06 / 原査定取消(特許/登録すべき)水分散性の直接感熱またはインクジェット印刷可能媒体
    共通の審決分類: 121・B41M
  • 2024-009318拒絶査定不服審判 / 2025-11-10 / 原査定取消(特許/登録すべき)感熱記録体
    共通の審決分類: 121・B41M
  • 2024-008780拒絶査定不服審判 / 2025-04-14 / 原査定取消(特許/登録すべき)感熱記録体
    共通の審決分類: 121・B41M
  • 2023-019730拒絶査定不服審判 / 2025-01-24 / 原査定取消(特許/登録すべき)積層体の製造方法および感熱記録材料の製造方法
    共通の審決分類: 121・B41M
  • 2023-022193拒絶査定不服審判 / 2024-09-09 / 請求不成立印刷物品質の調整方法
    共通の審決分類: 121・B41M

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存