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特許拒絶査定不服審判

2023-014066

マチ付きパウチおよび水分を含む内容物入りマチ付きパウチ

審判番号
2023-014066
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-040740
請求日
2023年08月22日
審決日
2025年08月07日
公報発行日
2025年10月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】東洋製罐株式会社
  • 【請求人代理人】藤本 信男
  • 【請求人代理人】澤井 容子
審判長/審判官
  • 審判長 八木 誠
  • 審判官 木原 裕二
  • 審判官 金丸 治之
分類
P18 .121-Z (B65D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-40740号「マチ付きパウチおよび水分を含む内容物入りマチ付きパウチ」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 9月10日出願公開、特開2020-142833号〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成31年3月6日に出願された特願2019-40740号に係る特許出願であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 令和 4年12月28日付け:拒絶理由通知 令和 5年 3月 3日 :意見書、手続補正書の提出 令和 5年 5月24日付け:拒絶査定 (令和 5年 6月 6日 :拒絶査定の謄本の送達) 令和 5年 8月22日 :審判請求、手続補正書の提出 令和 5年10月 4日付け:前置報告書 令和 6年 3月29日 :上申書の提出 第2 本件補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和5年8月22日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。ここで、下線部は補正箇所を示す。 「 【請求項1】 対向して配置される表側フィルムおよび裏側フィルムと、前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムの間に折り畳まれた状態で配置されるマチ部用フィルムとから構成されるマチ付きパウチに、水分を含む内容物が収容されてなる内容物入りマチ付きパウチであって、 前記マチ部用フィルムは、その吸湿時における剛性が前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムの吸湿時における剛性よりも低くなるように形成され、 前記マチ部用フィルムは、ループ状に保持してロードセルで押し、フィルムを変形させるために必要な応力として測定される剛性が、前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムのループ状に保持してロードセルで押し、フィルムを変形させるために必要な応力として測定される剛性よりも低く、その差が1.5g・f以上であることを特徴とする水分を含む内容物入りマチ付きパウチ。 【請求項2】 前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムは、ポリアミド系樹脂から成るポリアミド層を含まない多層構造で形成され、 前記マチ部用フィルムは、ポリアミド系樹脂から成るポリアミド層を含む多層構造で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の水分を含む内容物入りマチ付きパウチ。 【請求項3】 前記マチ付きパウチは、その底部に前記マチ部用フィルムが配置されたスタンディングパウチとして構成されていることを特徴とする請求項2に記載の水分を含む内容物入りマチ付きパウチ。 【請求項4】 前記マチ部用フィルムは、前記マチ付きパウチの底部のみに配置されていることを特徴とする請求項3に記載の水分を含む内容物入りマチ付きパウチ。 【請求項5】 対向して配置される表側フィルムおよび裏側フィルムと、前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムの間に折り畳まれた状態で配置されるマチ部用フィルムとから構成されるマチ付きパウチであって、 前記マチ部用フィルムは、その吸湿時における剛性が前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムの吸湿時における剛性よりも低くなるように形成されており、 前記マチ部用フィルムは、ループ状に保持してロードセルで押し、フィルムを変形させるために必要な応力として測定される剛性が、前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムのループ状に保持してロードセルで押し、フィルムを変形させるために必要な応力として測定される剛性よりも低く、その差が1.5g・f以上であり、 前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムは、ポリエチレンテレフタレート層および/またはポリブチレンテレフタレート層を含む多層構造で形成され、 マチ付きパウチ内の蒸気を自動的に外部に抜くための蒸気抜き部が設けられていることを特徴とするマチ付きパウチ。」 (2) 本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1~5の記載は次のとおりである。 「 【請求項1】 対向して配置される表側フィルムおよび裏側フィルムと、前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムの間に折り畳まれた状態で配置されるマチ部用フィルムとから構成されるマチ付きパウチに、水分を含む内容物が収容されてなる内容物入りマチ付きパウチであって、 前記マチ部用フィルムは、その吸湿時における剛性が前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムの吸湿時における剛性よりも低くなるように形成されていることを特徴とする水分を含む内容物入りマチ付きパウチ。 【請求項2】 前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムは、ポリアミド系樹脂から成るポリアミド層を含まない多層構造で形成され、 前記マチ部用フィルムは、ポリアミド系樹脂から成るポリアミド層を含む多層構造で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の水分を含む内容物入りマチ付きパウチ。 【請求項3】 前記マチ付きパウチは、その底部に前記マチ部用フィルムが配置されたスタンディングパウチとして構成されていることを特徴とする請求項2に記載の水分を含む内容物入りマチ付きパウチ。 【請求項4】 前記マチ部用フィルムは、前記マチ付きパウチの底部のみに配置されていることを特徴とする請求項3に記載の水分を含む内容物入りマチ付きパウチ。 【請求項5】 対向して配置される表側フィルムおよび裏側フィルムと、前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムの間に折り畳まれた状態で配置されるマチ部用フィルムとから構成されるマチ付きパウチであって、 前記マチ部用フィルムは、その吸湿時における剛性が前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムの吸湿時における剛性よりも低くなるように形成されており、 前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムは、ポリエチレンテレフタレート層および/またはポリブチレンテレフタレート層を含む多層構造で形成され、 マチ付きパウチ内の蒸気を自動的に外部に抜くための蒸気抜き部が設けられていることを特徴とするマチ付きパウチ。」 2 補正の適否 本件補正における請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項1の「内容物入りマチ付きパウチ」における「マチ部用フィルム」について「ループ状に保持してロードセルで押し、フィルムを変形させるために必要な応力として測定される剛性が、前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムのループ状に保持してロードセルで押し、フィルムを変形させるために必要な応力として測定される剛性よりも低く、その差が1.5g・f以上である」点を限定する補正であって、本件補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か)について、以下、検討する。 (1) 本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)の【請求項1】に記載したとおりのものである。 (2) 引用文献の記載事項と引用発明 ア 引用文献1 (ア)引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2007-246157号公報(「引用文献1」という。)には、次の記載がある。(下線は当審にて付した。「・・・」は省略を示す。以下、同様。) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 袋の底部が、前後の壁面の積層フィルムの下部の間に底面の積層フィルムを内側に折り込んで挿入してなるガセット部を有する形式で形成され、該ガセット部が内側の中央部が低くその両側が袋の側部に向かって徐々に高くなる船底形のシールパターンでヒートシールして形成される自立袋において、該底面の積層フィルムが、少なくともポリアミド層とシーラント層としての線状低密度ポリエチレン層とを含む共押し出し成形による積層フィルムで形成されていることを特徴とする自立袋。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、自立袋に関し、更に詳しくは、袋の底部をガセット形式で形成して自立性を付与した自立袋の分野において、袋が自立性に優れることはもとより、内容物充填の際に、口部と共に底部も前後に広がり易く、比較的軽量の内容物に対しても充填適性がよく、更に、製造工程の簡略化や生産性向上による製造コストの低減も可能で経済性にも優れた自立袋に関する。 【背景技術】 【0002】 従来、自立袋としては、底部をガセット形式で形成して自立性を付与したスタンディングパウチ形式などの自立袋が、自立性に優れ取り扱い易く、また、立体容器としての特徴も一部備え、外観にも優れることから、固形物や、粒状、粉状等の内容物のほか、液状の内容物まで広範囲の内容物の密封包装用に汎用されるようになっている。 ・・・ 【0004】 しかし、厳密には、壁面用の積層フィルムと底面用の積層フィルムには、要求される性能に異なるものもあり、具体的には、壁面用の積層フィルムでは、袋の形状安定性のために剛性が求められ、また、手での引き裂きによる袋の開口を容易にするため、通常、積層フィルムの流れ方向の易引き裂き性が求められている。このため、壁面用の積層フィルムは、その基材層だけではなく、シーラント層にも引き裂き性をよくする配慮がなされている。 一方、底面用の積層フィルムに対しては、前記易引き裂き性は全く不要であり、逆に耐衝撃強度などに対してはマイナス要素であり、また、剛性に関しても、高すぎると内容物充填の際に、袋の底部が前後に広がり難くなるので、剛性よりもむしろ柔軟性を有することが求められている。 このように壁面用の積層フィルムと底面用の積層フィルムとでは、求められる性能に異なるものもあり、細かく対応するためには、それぞれを別々に製造して、それぞれの材質、フィルム形成方法、積層方法などの構成を使い分ける必要があり、工程や管理が煩雑になるという問題があった。」 「【0009】 本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その課題は、袋の底部をガセット形式で形成して自立性を付与した自立袋において、袋が自立性に優れることはもとより、自立袋に必要とされる基本的な性能を維持でき、且つ、底面用の積層フィルムが柔軟性に優れ、内容物充填の際に袋の底部が前後に容易に広がり、軽量の内容物でもスムーズに充填することができ、更に、製造工程も簡略化でき、小ロット生産の場合でも効率よく製造でき経済性にも優れた自立袋を提供することである。」 「【発明の効果】 【0017】 請求項1に記載した発明によれば、袋の底部が、前後の壁面の積層フィルムの下部の間に底面の積層フィルムを内側に折り込んで挿入してなるガセット部を有する形式で形成され、該ガセット部が内側の中央部が低くその両側が袋の側部に向かって徐々に高くなる船底形のシールパターンでヒートシールして形成される自立袋において、該底面の積層フィルムが、少なくともポリアミド層とシーラント層としての線状低密度ポリエチレン層とを含む共押し出し成形による積層フィルムで形成された構成としているので、内容物が充填された袋は、底部が前後に大きく広がりフラットな底面が形成されるので自立性に優れている。 【0018】 また、袋の底面の積層フィルムは、基材層をポリアミド層とし、シーラント層を線状低密度ポリエチレン層としているので、柔軟性に優れると共に、強度およびヒートシール性にも優れており、内容物の充填の際に、袋の底部が容易に前後に広がり軽量の内容物でもスムーズに充填することができる。また、耐衝撃強度やヒートシール強度などの性能面でも必要な性能を具備した自立袋とすることができる。 更に、袋の底面の積層フィルムは、共押し出し成形により製膜しているので、ドライラミネーション法などで貼り合わせる方法と比較して、多層構成の積層フィルムを一工程で製膜でき、製造工程が大幅に簡略化され生産性が著しく向上されると同時に、小ロット生産の場合でも、ロス率が少なく効率よく製造することができる。」 「【0033】 図3は、本発明の自立袋の第1の実施例の構成を示す正面図であり、図3に示した自立袋100は、外観上は通常のスタンディングパウチと同様な構成であるが、袋に使用する前後の壁面の積層フィルム1、1′と底面の積層フィルム2のうち、特に、底面の積層フィルム2の構成を前記図1の(イ)、(ロ)で説明した構成のいずれかに変更して構成したものである。 即ち、外観面では、前記図2でも一部説明したように、自立袋100の底部が、前後の壁面の積層フィルム1、1′の下部の間に、底面の積層フィルム2を内側に折り込んで底面フィルム折り返し部3まで挿入してなるガセット部5を有する形式で形成され、内側に折り込まれた底面の積層フィルム2の両側下端近傍には、この場合、半円形の底面フィルム切り欠き部4a、4bが設けられ、該ガセット部5が、内側が両側から中央部にかけて湾曲線状に凹状となる船底形の底部シール部6でヒートシールして形成され、胴部が前後の壁面の積層フィルム1、1′の左右両側の端縁部を側部シール部7a、7bでヒートシールして形成され、また、自立袋100の上部の端縁部は、所定幅の上部シール部8でヒートシールされるが、この部分を内容物の充填口に使用するため、内容物の充填前は未シールの開口部とし、内容物の充填後にヒートシールして密封するものである。そして、上部シール部8の下側には袋の開封手段として、切取り線9とその両側の端部にノッチ10a、10bを設けて構成したものである。 上記切取り線9は、印刷による切取り指示線でもよいが、レーザー光照射によるハーフカット線としてもよい。」 「【実施例1】 【0039】 図3に示した構成の自立袋を、以下の構成の壁面の積層フィルムと底面の積層フィルムとを用いて、以下の寸法で製袋して実施例1の自立袋とした。 (1)壁面の積層フィルム1、1′の構成 (外側)二軸延伸ナイロンフィルム(以下、ONフィルム)(厚み15μm)・印刷層/接着剤/線状低密度ポリエチレン(以下、L・LDPE)フィルム(厚み150μm) 上記各フィルムの貼り合わせは、ドライラミネーション法で行い、各フィルムの間の接着剤は、ドライラミネート用の二液硬化型ポリウレタン系接着剤(乾燥時の塗布量3g/m2 )を使用したものである。 (2)底面の積層フィルム2の構成 (外側)ナイロン6層(厚み30μm)/接着性樹脂層(厚み15μm)/L・LDPE層(厚み120μm) 上記の積層フィルムは、Tダイ共押し出し成形により製膜したものである。」 「【0045】 上記の試験の結果、充填シール機における自立袋の底開き性については、実施例1、2の自立袋は、いずれも底面の積層フィルムをTダイ共押し出し成形で製膜していることもあって、柔軟性に優れ、底開き性がよく良好に内容物の充填シールを行うことができ、充填シール機適性が良好であった。 これに対して比較例1の自立袋は、壁面の積層フィルムと同様に底面の積層フィルムも予め製膜した各層のフィルムをドライラミネーション法で貼り合わせているので、共押し出し成形法で製膜した積層フィルムと比較してその剛性が高くなり、全体的に袋の底開き性が悪く、また、内容物が軽量でもあるため、充填時に内容物充填面の上昇があり、著しい場合は上部シール部8のシール時に粉かみを発生するものもあり、充填シール機適性に劣っていた。」 「【図2】 [図:0001427232000001.jpg] 」 「【図3】 [図:0001427232000002.jpg] 」 (イ)引用文献1に記載されていると認められる事項 上記(ア)の記載事項から以下のことがわかる。 a 【0002】の「従来、自立袋としては、・・・液状の内容物まで広範囲の内容物の密封包装用に汎用されるようになっている。」と記載されており、引用文献1に記載の自立袋は、当該【0002】の事項を前提として、【0009】に示される課題を解決しようとするものである。すなわち、引用文献1に記載の自立袋の実施例である実施例1に示された自立袋100は、液状の内容物をも密封包装するものであるといえ、液状の内容物を密封包装している自立袋100についても記載されているに等しいといえる。 b 【0017】の「該底面の積層フィルムが、少なくともポリアミド層とシーラント層としての線状低密度ポリエチレン層とを含む共押し出し成形による積層フィルムで形成された構成としているので、内容物が充填された袋は、底部が前後に大きく広がりフラットな底面が形成されるので自立性に優れている」という記載、及び【0018】の「袋の底面の積層フィルムは、基材層をポリアミド層とし、シーラント層を線状低密度ポリエチレン層としているので、柔軟性に優れると共に、強度およびヒートシール性にも優れており、内容物の充填の際に、袋の底部が容易に前後に広がり軽量の内容物でもスムーズに充填することができる」という記載をふまえると、【0045】の「上記の試験の結果、充填シール機における自立袋の底開き性については、実施例1、2の自立袋は、いずれも底面の積層フィルムをTダイ共押し出し成形で製膜していることもあって、柔軟性に優れ、底開き性がよく良好に内容物の充填シールを行うことができ、充填シール機適性が良好であった。」という記載からは、実施例1の自立袋について、底面の積層フィルムが、柔軟性に優れるという事項が把握できる。 (ウ)引用文献1に記載された発明 上記(ア)及び(イ)より、引用文献1には、特に【0039】~【0040】に記載の実施例1に着目すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「底部が、前後の壁面の積層フィルム1、1′の下部の間に、底面の積層フィルム2を内側に折り込んで底面フィルム折り返し部3まで挿入してなるガセット部5を有する形式で形成された自立袋100に、(【0033】) 液状の内容物を密封包装している自立袋100であって、(【0002】) 壁面の積層フィルム1、1′の構成を、(外側)二軸延伸ナイロンフィルム(厚み15μm)・印刷層/接着剤/線状低密度ポリエチレン(以下、L・LDPE)フィルム(厚み150μm)とし、底面の積層フィルム2の構成を、(外側)ナイロン6層(厚み30μm)/接着性樹脂層(厚み15μm)/L・LDPE層(厚み120μm)とし、(【0039】) 底面の積層フィルム2は、柔軟性に優れた、(【0045】) 自立袋100。」 イ 引用文献3 (ア)引用文献3の記載 原査定の拒絶査定時に引用文献3として引用された特開2014-43272号公報(「引用文献3」という。)には、次の記載がある。 「【0001】 本発明は、内容物を入れることにより自立性が付与される自立袋に関する。」 「【0034】 表面フィルム部4及び裏面フィルム部5の素材は、特に限定されないが、側面マチ部6、側面マチ部7の素材よりも剛性が高いものを用いることが好ましく、側面マチ部6、側面マチ部7及び底面マチ部8の素材よりも剛性が高いものを用いることが更に好ましい。表面フィルム部4及び裏面フィルム部5の素材として、側面マチ部6、側面マチ部7及び底面マチ部8の素材よりも剛性が高いものを用いることで、表面フィルム部4及び裏面フィルム部5の袋自立性を向上させることができる。一方、側面マチ部6、側面マチ部7及び底面マチ部8の素材として、表面フィルム部4及び裏面フィルム部5の素材よりも剛性の低いものを用いることで、側面マチ部6、側面マチ部7及び底面マチ部8の開閉性を向上させることができる。」 (イ)引用文献3記載事項 上記(ア)により、引用文献3には以下の技術事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されていると認める。 「内容物を入れることにより自立性が付与される自立袋において、表面フィルム部4及び裏面フィルム部5の素材が、底面マチ部8の素材よりも剛性が高いものを用いることで袋自立性を向上させることができること。」 ウ 周知技術について (ア)引用文献4の記載 当審で引用する特開2007-253403号公報(「引用文献4」という。)には、次の記載がある。 「【0002】 自動車、自動二輪車等の燃料タンクにおいて、特開平5-116548号公報に開示するように燃料タンクを樹脂製の中空容器で形成する技術は公知であり、貯留燃料の透過を防止するためにナイロン樹脂を単層又は積層して用いることも知られている。 しかし、ナイロン樹脂には吸湿により剛性が低下する傾向があり、取付金具をインサート成型すると、取付金具とナイロン樹脂との接合部が吸湿により弱くなり取付金具の接合強度(引抜強度)が低下し、樹脂製の中空容器を安定して固定できない技術的課題があった。」 (イ)引用文献5の記載 当審で引用する特開2003-313322号公報(「引用文献5」という。)には、次の記載がある。 「【0002】 【従来の技術】ポリアミドフィルムは、透明性、耐ピンホール性、ガスバリヤー性、耐熱性および耐油性などの諸特性が優れているために主に食品包装の分野で使用されている。このポリアミドフィルムは、未延伸フィルムおよび延伸フィルムに分けられる。ポリアミドフィルムは、水蒸気バリヤー性およびヒートシール性が劣るため、共押出しやラミネートなどの手段によりポリオレフィンと積層化したフィルムとして使用されることが多い。近年、食品包装ではガスバリヤー性の一層の向上が要求されているが、用途によってはポリアミドフィルムのガスバリヤー性は十分とは言えない。特に、高湿度下ではポリアミドフィルムのガスバリヤー性は著しく低下する。このため、ガスバリヤー性が優れたエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)とポリアミドを共押出し成形したり、ポリアミドフィルムの表面にガスバリヤー性の良好なポリ塩化ビニルデン(PVDC)をコートすることが行われている。しかし、このEVOHおよびPVDCは高価格であるだけでなく、共押出しフィルムの層構成の増加やコーティングラインの設置などによる設備面のコストアップもあり、価格面で要求を満たさない場合が多い。さらに、ポリアミドフィルム、特にナイロン6フィルムでは湿度の高い環境下では吸湿することによりフィルムの滑り性および腰(剛性)が低下してしまう。このような剛性の低下はラミネート工程、印刷工程、製袋工程などの後加工の際にトラブルを招くことになるため、その改善が強く要望されている。」 (ウ)引用文献6の記載 当審で引用する特開平10-120798号公報(「引用文献6」という。)には、次の記載がある。 「【0017】尚、前記半芳香族ポリアミドに指摘される難点を脂肪族ポリアミドを使用することによって改質することも考えられるが、脂肪族ポリアミドを単独で炭素繊維と複合したものでは、成形体が剛性不足となってケーシング本来の保護機能が著しく劣化するばかりでなく、吸湿によって剛性が更に低下してくる。また、最も一般的な脂肪族ポリアミドであるナイロン6やナイロン66は、いずれも吸湿性が高くて吸湿により剛性劣化を来すばかりでなく、寸法変化の問題も生じてくる。脂肪族ポリアミドの中には、ナイロン11やナイロン12等の様に吸湿性の低いものもあるが、いずれも炭素繊維と複合したものの剛性が乏しく、薄肉ケーシング用の素材としてはそぐわない。」 (エ)引用文献7 a 引用文献7の記載 当審で引用する特開2013-124135号公報(「引用文献7」という。)には、次の記載がある。 「【請求項1】 2枚の側壁フィルムと1枚の底面フィルムからなり、容器本体の上部周縁部に口栓部を有し、内部空間に液体を収容した状態で自立可能なパウチ容器であって、 少なくとも1枚の前記側壁フィルムの外面に、内容物容量を示す目盛りが設けられており、 前記側壁フィルムの腰強度が50~1000mN/25mm幅であり、前記底面フィルムの腰強度が5~120mN/25mm幅であることを特徴とするパウチ容器。」 「【0018】 なお、本発明及び本願明細書において、フィルムの腰強度とは、TOYOSEIKI LOOP STIFFNESS TESTER(東洋精機製作所製)を用いて、幅25mm 、ループ長100mmの試験検体を測定して得られた測定値である。」 「【0034】 [実施例1~2、比較例1~2] 表1に示す構成の側壁フィルム及び底面フィルムを用いて、各フィルムをヒートシールすることにより、口栓部(口径:13mm)を有し、内部空間に液体を収容した状態で自立可能なパウチ容器(スタンディングパウチ、外寸:高さ152mm×幅83mm×底開き幅35mm)を、それぞれ3つずつ製造した。表1中、「PP」はポリプロピレン、「PE」はポリエチレン、「NY」はナイロン、「PET」はポリエチレンテレフタレートを、それぞれ意味する。 側壁フィルム及び底面フィルムの腰強度については、TOYOSEIKI LOOP STIFFNESS TESTER(東洋精機製作所製)を用いて、幅25mm×長さ100mmのフィルムについて、繰り返し3回測定を行い、得られた測定値の平均値を実測値とした。底面フィルムの腰強度を表1に示す。側壁フィルムの腰強度は、いずれも350mN/25mm幅であった。 【0035】 【表1】 [図:0001427232000003.jpg] 」 b 引用文献7に記載されていることが明らかな事項及び引用文献7記載事項 上記aの【0034】及び【0035】【表1】で示される実施例1では、側面フィルム構成包材及び底面フィルム構成包材の腰強度実測値はそれぞれ350mN/25mm及び8mN/25mmである。この数値を、「g・f」及び「/10mm」に換算すると、350mN/25mm=14.28g・f/10mm及び8mN/25mm=0.33g・f/10mmとなり、その差は13.95g・f/10mmと算出することができる。 そうすると、引用文献7には以下の技術事項(以下「引用文献7記載事項」という。)が記載されていると認める。 「2枚の側壁フィルムと1枚の底面フィルムからなり、容器本体の上部周縁部に口栓部を有し、内部空間に液体を収容した状態で自立可能なパウチ容器(対向して配置される表側フィルムおよび裏側フィルムと、前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムの間に折り畳まれた状態で配置されるマチ部用フィルムとから構成されるマチ付きパウチ)において、TOYOSEIKI LOOP STIFFNESS TESTER(東洋精機製作所製)を用いて、幅25mm 、ループ長100mmの試験検体を測定して得られた測定値であるフィルムの腰強度)(ループ状に保持してロードセルで押し、フィルムを変形させるために必要な応力として測定される剛性)が、前記底面フィルム(マチ部用フィルム)は8mN/25mm=0.33g・f/10mm、前記側壁フィルム(表側フィルムおよび裏側フィルム)は350mN/25mm=14.28g・f/10mmで、その差が13.95g・f/10mmであること。」 (オ)引用文献8 a 引用文献8の記載 当審で引用する特開2006-347566号公報(「引用文献8」という。)には、次の記載がある。 「【請求項1】 2枚の側壁用積層材料と1枚の2つ折りした底用積層材料とからなり、周縁がシールされている自立性パウチのパウチ本体部の上辺にスパウトとキャップからなる口栓を設けた口栓付き自立性パウチであって、前記側壁用積層材料が少なくとも、基材層の一方の面に、高密度ポリエチレン樹脂層の両側に直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層が積層されてなる総厚90~120μmの三層共押出フィルムからなるシーラント層を積層した積層体からなり、かつ、その腰強度が98mN/15mm幅以上のものからなることを特徴とする口栓付き自立性パウチ。 【請求項2】 前記底用積層材料が少なくとも、基材層の一方の面に、厚さ90~120μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂フィルムからなるシーラント層を積層した積層体からなり、かつ、その腰強度が98mN/15mm幅未満のものからなることを特徴とする請求項1記載の口栓付き自立性パウチ。」 「【0025】 〈評価〉 実施例1の本発明の口栓付き自立性パウチ及び実施例2~4の比較用の口栓付き自立性パウチに使用した側壁用積層材料及び底用積層材料の腰強度を以下の測定方法で測定し、評価すると共に、作成した口栓付き自立性パウチを用いて、自立性、内容物由来成分の吸着性、落下耐性を以下の評価方法で、評価した。その結果を表1に示す。 (1)腰強度 口栓付き自立性パウチに使用したそれぞれの側壁用積層材料及び底用積層材料を用いて、(株)東洋精機製作所のループスティフネステスタ、D型で、試験片幅15mm、ループ長100mmでその腰強度を測定した。 ・・・ 【0026】 【表1】 [図:0001427232000004.jpg] 表1に示すように、実施例1の本発明の口栓付き自立性パウチに使用した側壁用積層材料の腰強度は強く、底用積層材料の腰強度は適度に柔らかく、口栓付き自立性パウチの自立性も良好であり、また内容物の吸着量も少なく、落下耐性も良好であった。一方、実施例2の比較用の口栓付き自立性パウチは内容物の吸着量が多く、不良であり、実施例3の比較用の口栓付き自立性パウチは、落下耐性が不良であり、実施例4の比較用の口栓付き自立性パウチに使用した側壁用積層材料の腰強度は小さくて、口栓付き自立性パウチの自立性が悪く、また落下耐性も不良であった。」 b 引用文献8に記載されていることが明らかな事項及び引用文献8記載事項 上記aの【0026】【表1】で示される実施例1では、側壁用積層材料及び底用積層材料の腰強度はそれぞれ123mN/15mm及び94mN/15mmである。この数値を、「g・f」及び「/10mm」に換算すると、123mN/15mm=8.36g・f/10mm及び94mN/15mm=6.39g・f/10mmとなり、その差は1.97g・f/10mmと算出することができる。 そうすると、引用文献8には以下の技術事項(以下「引用文献8記載事項」という。)が記載されていると認める。 「2枚の側壁用積層材料と1枚の2つ折りした底用積層材料とからなり、周縁がシールされている自立性パウチ(対向して配置される表側フィルムおよび裏側フィルムと、前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムの間に折り畳まれた状態で配置されるマチ部用フィルムとから構成されるマチ付きパウチ)において、前記マチ部用フィルムは、(株)東洋精機製作所のループスティフネステスタ、D型で、試験片幅15mm、ループ長100mmで測定した腰強度(ループ状に保持してロードセルで押し、フィルムを変形させるために必要な応力として測定される剛性)が、前記底用積層材料(マチ部用フィルム)は94mN/15mm=6.39g・f/10mm、前記側壁用積層材料(表側フィルムおよび裏側フィルム)は123mN/15mm=8.36g・f/10mmで、その差が1.97g・f/10mmであること。」 (カ)周知技術 a 上記(ア)、(イ)及び(ウ)より、以下の事項は周知の技術である(「周知技術1」という。)。 「ナイロンは吸湿時に剛性が低下すること。」 b 上記(エ)b及び(オ)bより、以下の事項は周知の技術である(「周知技術2」という。)。 「対向して配置される表側フィルムおよび裏側フィルムと、前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムの間に折り畳まれた状態で配置されるマチ部用フィルムとから構成されるマチ付きパウチにおいて、前記マチ部用フィルムは、ループ状に保持してロードセルで押し、フィルムを変形させるために必要な応力として測定される剛性が、前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムのループ状に保持してロードセルで押し、フィルムを変形させるために必要な応力として測定される剛性よりも低いこと。」 (3) 引用発明との対比、判断 ア 対比 本件補正発明と引用発明を対比する。 引用発明の「壁面の積層フィルム1」、「壁面の積層フィルム1’」、「底面の積層フィルム2」及び「自立袋100」は、本件補正発明の「表側フィルム」、「裏側フィルム」、「マチ部用フィルム」及び「マチ付きパウチ」に相当するから、引用発明の「底部が、前後の壁面の積層フィルム1、1′の下部の間に、底面の積層フィルム2を内側に折り込んで底面フィルム折り返し部3まで挿入してなるガセット部5を有する形式で形成された自立袋100」は、本件補正発明の「対向して配置される表側フィルムおよび裏側フィルムと、前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムの間に折り畳まれた状態で配置されるマチ部用フィルムとから構成されるマチ付きパウチ」に相当する。 また引用発明の「液状の内容物」は、本件補正発明の「水分を含む内容物」に相当するから、引用発明の「液状の内容物を密封包装している自立袋100」は、本件補正発明の「水分を含む内容物が収容されてなる内容物入りマチ付きパウチ」に相当する。 そうすると、本件補正発明と引用発明とは、 「対向して配置される表側フィルムおよび裏側フィルムと、前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムの間に折り畳まれた状態で配置されるマチ部用フィルムとから構成されるマチ付きパウチに、水分を含む内容物が収容されてなる内容物入りマチ付きパウチ。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本件補正発明は、「前記マチ部用フィルムは、その吸湿時における剛性が前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムの吸湿時における剛性よりも低くなるように形成され」ているのに対し、引用発明は、「壁面の積層フィルム1、1′の構成を、(外側)二軸延伸ナイロンフィルム(厚み15μm)・印刷層/接着剤/線状低密度ポリエチレン(以下、L・LDPE)フィルム(厚み150μm)とし、底面の積層フィルム2の構成を、(外側)ナイロン6層(厚み30μm)/接着性樹脂層(厚み15μm)/L・LDPE層(厚み120μm)とし、底面の積層フィルム2は、柔軟性に優れた」ものであり、当該本件補正発明の吸湿時における剛性の規定を有しない点。 <相違点2> 本件補正発明は、「前記マチ部用フィルムは、ループ状に保持してロードセルで押し、フィルムを変形させるために必要な応力として測定される剛性が、前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムのループ状に保持してロードセルで押し、フィルムを変形させるために必要な応力として測定される剛性よりも低く、その差が1.5g・f以上である」のに対し、引用発明は当該構成に関する規定を有しない点。 イ 判断 以下、相違点について検討する。 (ア)<相違点1>について 引用発明には、「底面の積層フィルム2」が、その吸湿時における剛性が「壁面の積層フィルム1、1’」前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムの吸湿時における剛性よりも低くなるように形成されることは規定していない。しかしながら、引用発明が、「液状の内容物を密封包装している自立袋100」であり、「底面の積層フィルム2は、柔軟性に優れた」ものであることに加えて、上記(2)ア(ア)に示した【0004】に「壁面用の積層フィルムと底面用の積層フィルムには、要求される性能に異なる・・・壁面用の積層フィルムでは、袋の形状安定性のために剛性が求められ、・・・底面用の積層フィルムに対しては、・・・剛性に関しても、高すぎると内容物充填の際に、袋の底部が前後に広がり難くなるので、剛性よりもむしろ柔軟性を有することが求められている。」と記載されていること、上記(2)ウ(カ)において周知技術1として示したとおり「ナイロンは吸湿時に剛性が低下すること」が周知であること、及び引用発明において、「底面の積層フィルム2」におけるナイロン素材の割合(15μm/165μm=0.36)が、「壁面の積層フィルム1、1′」におけるナイロン素材の割合(30μm/165μm=0.18)よりも高いことを総合的に鑑みると、「底面の積層フィルム2」が、その吸湿時における剛性が「壁面の積層フィルム1、1’」の吸湿時における剛性よりも低くなるように形成されている蓋然性がきわめて高いといえる。したがって<相違点1>は実質的な相違点ではない。 また仮にそうでないとしても、引用発明が、「液状の内容物を密封包装している自立袋100」であり、「底面の積層フィルム2は、柔軟性に優れた」ものであることに加えて、上記(2)ア(ア)の【0009】の「袋が自立性に優れることはもとより、自立袋に必要とされる基本的な性能を維持でき」という記載及び上記(2)イ(イ)で引用文献3記載事項として示した「内容物を入れることにより自立性が付与される自立袋において、表面フィルム部4及び裏面フィルム部5の素材が、底面マチ部8の素材よりも剛性が高いものを用いることで袋自立性を向上させることができること」により、液状の内容物の充填時のみならず充填後された状態の自立袋100の自立性についても考慮し、「底面の積層フィルム2」が、その吸湿時における剛性が「壁面の積層フィルム1、1’」の吸湿時における剛性よりも低くなるように形成する程度のことは容易に想到し得たことである。 (イ)<相違点2>について 上記(2)ウ(カ)において、周知技術2として示したとおり、「対向して配置される表側フィルムおよび裏側フィルムと、前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムの間に折り畳まれた状態で配置されるマチ部用フィルムとから構成されるマチ付きパウチにおいて、前記マチ部用フィルムは、ループ状に保持してロードセルで押し、フィルムを変形させるために必要な応力として測定される剛性が、前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムのループ状に保持してロードセルで押し、フィルムを変形させるために必要な応力として測定される剛性よりも低いこと」は周知の技術である。そして、「底面の積層フィルム2」(マチ部用フィルム)の、ループ状に保持してロードセルで押し、フィルムを変形させるために必要な応力として測定される剛性が、「壁面の積層フィルム1、1’」(表側フィルムおよび裏側フィルム)のそれと比較して、どの程度低いかについては、本件補正発明で規定する数値範囲に臨界的な意義は認められず、当業者であれば適宜決定し得たことにすぎない。そして、剛性の差については、上記(2)ウ(エ)及び(オ)で示す引用文献7記載事項(13.95g・f/10mm)及び引用文献8記載事項(1.97g・f/10mm)を参酌すると、本件補正発明で規定する「その差が1.5g・f以上」という数値範囲が特別なものとも認められない。 ウ まとめ 以上のとおり、本件補正発明は、引用発明、周知技術1及び周知技術2、並びに引用文献3記載事項、引用文献7記載事項及び引用文献8記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ 審判請求人の主張について (ア) 審判請求人の主張 審判請求人は、審判請求書において、 「上記の相違点について検討すると、本願発明の水分を含む内容物入りマチ付きパウチにおいては、マチ部用フィルムの、ループ状に保持してロードセルで押し、フィルムを変形させるために必要な応力として測定される剛性が、表側フィルムおよび裏側フィルムの同様に測定される剛性よりも低く、その差が1.5g・f以上であると共に、マチ部用フィルムが、その吸湿時における剛性が表側フィルムおよび裏側フィルムの吸湿時における剛性よりも低くなるように形成されていることにより、パウチの開底性(開き具合)に優れ、かつ、水分を含む内容物の充填後に当該内容物における水分を各フィルムが吸湿した時においてマチ部が開いた状態を維持することが可能であるため、内容物入りマチ付きパウチの保管・運搬・陳列・使用時にマチ付きパウチの全体形状を良好に維持し、マチ付きパウチの整列性や見栄えを良好に保つことができる、という効果が奏される。」(審判請求書「3.本願発明が特許されるべき理由」〔2〕(2)(2a)(2a-2))と主張する。 (イ) 審判請求人の主張の検討 上記は、「マチ部用フィルムの、ループ状に保持してロードセルで押し、フィルムを変形させるために必要な応力として測定される剛性が、表側フィルムおよび裏側フィルムの同様に測定される剛性よりも低く、その差が1.5g・f以上である」(以下「構成1」という。)ことと「マチ部用フィルムが、その吸湿時における剛性が表側フィルムおよび裏側フィルムの吸湿時における剛性よりも低くなるように形成されていること」(以下「構成2」という。)とが相互に関連し、「パウチの開底性(開き具合)に優れ」(以下「作用効果1」という。)かつ、「水分を含む内容物の充填後に当該内容物における水分を各フィルムが吸湿した時においてマチ部が開いた状態を維持することが可能である」(以下「作用効果2」)という効果を奏することを主張しているとも把握されるが、「マチ部用フィルムの、ループ状に保持してロードセルで押し、フィルムを変形させるために必要な応力として測定される剛性」が乾燥時のものであることから、「構成1」と「構成2」とは直接的には関連せず、「構成1」により「作用効果1」という効果が、「構成2」により「作用効果2」という効果を奏するものであることは明らかであり、相互に関連して効果を奏すると把握される主張部分については首肯することはできない。 そして「構成2」は上記<相違点1>の検討で示したように実質的な相違点でないか当業者であれば容易に想到し得たことであり、また「構成1」は上記<相違点2>の検討で示したように、当業者であれば容易に想到し得たことである。 よって、上記審判請求人の主張は採用することはできない。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 以上、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~5に係る発明は、令和5年3月3日の提出した手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)の【請求項1】として記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由は、本願発明は、上記第2[理由]2(2)の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、上記第2[理由]2(2)の引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載の技術事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許受けることができない、というものである。 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び3の記載事項は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2[理由]2で検討した本件補正発明から、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である内容物入りマチ付きパウチの構成に関して、「前記マチ部用フィルムは、ループ状に保持してロードセルで押し、フィルムを変形させるために必要な応力として測定される剛性が、前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムのループ状に保持してロードセルで押し、フィルムを変形させるために必要な応力として測定される剛性よりも低く、その差が1.5g・f以上である」という構成をさらに特定する補正事項を削除したものである。 そして、本願発明と引用文献1に記載の発明とを対比すると、上記第2[理由]2(3)アで対比したとおりであって、相違点1で一応相違しているが、上記第2[理由]2(3)イ(ア)での判断のとおり当該相違点1は実質的な相違点でないか、当業者が容易に想到し得たものである。 そうすると、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許受けることができないものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明、すなわち、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、又は、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-014066

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