2023-006323
丸みを有して接続されたリジッド部分およびフレキシブル部分を備える部品キャリアの耐不良性の曲げ
- 審判番号
- 2023-006323
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-051852外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年04月18日
- 審決日
- 2024年01月29日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (H05K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
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結論
理由
目次 ▾ 13項目
第1 手続の経緯
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本願は、令和 3年 3月25日(パリ条約による優先権主張 2020年(令和 2年) 4月 8日(以下、「優先日」という。)欧州特許庁)の特許出願であって、その手続の経緯は、概略以下のとおりである。
第2 本願発明
本願の請求項1~14に係る発明は、令和4年8月31日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載した事項により特定されるものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
<本願発明>
「【請求項1】部分的にリジッドであり部分的にフレキシブルである部品キャリアであって、少なくとも1つの第1の導電層構造および/または少なくとも1つの第1の電気絶縁層構造を含む第1のスタックを有するリジッド部分と、少なくとも1つの第2の導電層構造および/または少なくとも1つの第2の電気絶縁層構造を含む第2のスタックを有するフレキシブル部分とを備え、前記第1のスタックおよび前記第2のスタックの前記層構造のスタッキング方向に沿った視線方向での前記部品キャリアの平面視において、前記リジッド部分と前記フレキシブル部分との間の接点における移行部分が、曲げ応力を低減するために丸み付けられ、前記移行部分が半径によって規定される丸みを有し、前記半径が0.5mm未満である、部品キャリア。」
第3 原査定の概要
原査定(令和4年12月12日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
理由2(進歩性)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内または外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由2(進歩性)について
・請求項 1~6、8~14 :引用文献 1
・請求項 5 :引用文献 1~2
・請求項 7、8、13 :引用文献 1~3
・請求項 10 :引用文献 1~4
<引用文献等一覧>
1.特開2005-19965号公報
2.実願昭61-169707号(実開昭63-75074号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
3.米国特許出願公開第2015/0373830号明細書(周知技術を示す文献)
4.特開2016-54313号公報(周知技術を示す文献)
第4 引用文献の記載及び引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定で引用された引用文献1(特開2005-19965号公報)には、以下の記載がある。(下線のうち、引用文献1にないものは、当審にて付した。)
「【0002】配線パターンが形成されたフレキシブルプリント配線基板の一部に、リジッド部を形成してなるプリント配線板は、一般にフレックスリジッド配線板(図1)と呼ばれている。このフレックスリジッド配線板は、電気部品が実装される比較的硬質なリジッド部と、リジッド部間またはリジッド部と電気部品との間を電気的に接続するための、折り曲げ(屈曲)可能なフレキシブル部とから構成されている。このフレックスリジッド配線板は、折り曲げ可能なフレキシブル部を有しているため空間的な配置の自由度が大きく、また可動部と固定部にまたがって設置することも可能である(図2)。」
「【0040】このようにして得られる本発明のフレックスリジッド配線板において、図1のごとくフレキシブル配線板部分はリジッド部分に接続する上端4とこれと交叉する側端5とを有するが、該上端と該側端との交叉する角度αを鋭角とすることでリジッド配線板とフレキシブル配線板間の破断強度を向上させることが可能となる。特に前記上端4が側端5と交叉する部分3が円弧であることが破断強度の点で好ましい。前記円弧の曲率半径は任意であるが、1.0mm以上とすることで特に破断強度が向上するため好ましい。」
「【0096】フレックスリジッド配線板の製造と評価6)フレックスリジッド配線板の製造以下の工程に従い、図1に示す形状を有するフレックスリジッド配線板を製造した。続きを表示(全15行)ステップ1:市販の銅張積層板(松下電工(株)製、R-F775、厚さ25μmのポリイミドフィルムの片面に厚さ18μmの圧延銅箔を積層したもの)に、ドライフィルムレジストを圧着後、フォトマスク露光、現像、エッチング、および剥離の各工程を経て、片面に配線パターンが形成されたベースフィルム層(I)(図5中11)を製造した。【0097】ステップ2:上記ステップ1で得たベースフィルム層(I)上に、回路パターンを被覆するように所定の柔軟性絶縁材料組成物をスクリーン印刷(100メッシュのポリエステルスクリーンを使用)により塗工し、ついで塗膜を80℃の熱風乾燥器で30分乾燥した後、紫外線で全面露光(超高圧水銀ランプ、主波長365nm、400mJ/cm2)し、厚さ40μmの柔軟性絶縁材料層(II)(図5中12)を製造した。【0098】ステップ3:次に上記ステップ2で製造されたフレキシブルプリント配線基板の全面に、カバーフィルム層(III)(図5中13)としてポリイミドカバーレイフィルム(東レ(株)製、Tタイプ、厚さ25μmのポリイミドフィルムに厚さ8μmの接着剤が塗布されたもの)を積層、圧着(160℃、4.3N/cm、60分)し、フレキシブル配線板を製造した。ステップ4:その後、上記ステップ3で製造されたフレキシブルプリント配線板の一部の両面に、100μm厚の多層積層板用プリプレグおよび18μm厚の銅箔を積層し、加熱プレスにより180℃で接着させてリジッド部分を形成した。【0099】ステップ5:上記ステップ4で製造したリジッド部分の金属層をエッチングして回路パターンを形成させたのち(図5中15)、スクリーン印刷によりソルダーレジストを厚さ40μmとなるように塗布することで(図5中16)、フレックスリジッド配線板を製造した(図5を参照のこと)。【0100】実施例14~16各成分の配合、フレキシブル部各層の構成を実施例3と同一とし、図1のリジッド部1の下端4がフレキシブル部2の側端5と交叉する部分3の形状を、それぞれ曲率半径が0.5mm、1.5mmおよび2.0mmの円弧としたフレックスリジッド配線板を上記の方法により製造した。得られた配線板のリジッド部分をクランプにより水平に固定し、フレキシブル部分を該リジッド部と垂直となるように配置して、フレキシブル部分に荷重をかけ破断に要する荷重を測定した。リジッド部分とフレキシブル部分との間が破断に至る荷重は、それぞれ120gf、600gfおよび720gfであった。」
「【図面の簡単な説明】【0104】【図1】フレックスリジッド配線板の平面図。」
「[図:0001411956000001.jpg]」
「[図:0001411956000002.jpg]」
(2)上記(1)より、引用文献1には以下の技術事項が記載されている。
ア(ア)段落0096には、「以下の工程に従い、図1に示す形状を有するフレックスリジッド配線板を製造した。」と記載され、「ステップ1:市販の銅張積層板(松下電工(株)製、R-F775、厚さ25μmのポリイミドフィルムの片面に厚さ18μmの圧延銅箔を積層したもの)に、ドライフィルムレジストを圧着後、フォトマスク露光、現像、エッチング、および剥離の各工程を経て、片面に配線パターンが形成されたベースフィルム層(I)」「を製造した。」と記載されている。
(イ)段落0097には、「ステップ2:上記ステップ1で得たベースフィルム層(I)上に、回路パターンを被覆するように所定の柔軟性絶縁材料組成物をスクリーン印刷(100メッシュのポリエステルスクリーンを使用)により塗工し、ついで塗膜を80℃の熱風乾燥器で30分乾燥した後、紫外線で全面露光(超高圧水銀ランプ、主波長365nm、400mJ/cm2)し、厚さ40μmの柔軟性絶縁材料層(II)」「を製造した。」と記載されている。
(ウ)段落0098には、「ステップ3:次に上記ステップ2で製造されたフレキシブルプリント配線基板の全面に、カバーフィルム層(III)」「としてポリイミドカバーレイフィルム(東レ(株)製、Tタイプ、厚さ25μmのポリイミドフィルムに厚さ8μmの接着剤が塗布されたもの)を積層、圧着(160℃、4.3N/cm、60分)し、フレキシブル配線板を製造した。」及び「ステップ4:その後、上記ステップ3で製造されたフレキシブルプリント配線板の一部の両面に、100μm厚の多層積層板用プリプレグおよび18μm厚の銅箔を積層し、加熱プレスにより180℃で接着させてリジッド部分を形成した。」と記載されている。
(エ)段落0099には、「ステップ5:上記ステップ4で製造したリジッド部分の金属層をエッチングして回路パターンを形成させたのち」「スクリーン印刷によりソルダーレジストを厚さ40μmとなるように塗布することで」「フレックスリジッド配線板を製造した」と記載されている。
(オ)ここで、上記(ア)の「ステップ1:」「片面に配線パターンが形成されたベースフィルム層(I)」「を製造した。」との記載、及び、上記(イ)の「ステップ2:上記ステップ1で得たベースフィルム層(I)上に、回路パターンを被覆するように所定の柔軟性絶縁材料組成物を」「塗工し」との記載より、「ステップ2」における「回路パターン」は、「ステップ1」における「配線パターン」に対応すると認められる。また、上記(ウ)の「次に上記ステップ2で製造されたフレキシブルプリント配線基板」との記載より、上記(イ)の「ステップ2」において「柔軟性絶縁材料層(II)」「を製造」することにより、「フレキシブルプリント配線基板」が形成されるといえる。さらに、上記(ウ)の「ステップ3」における「フレキシブル配線板を製造した。」との記載、及び、「ステップ4」における「上記ステップ3で製造されたフレキシブルプリント配線板」との記載より、「ステップ3」における「フレキシブル配線板」は、「ステップ4」における「フレキシブルプリント配線板」に対応すると認められる。
(カ)上記(ア)~(オ)によれば、ステップ1:市販の銅張積層板(松下電工(株)製、R-F775、厚さ25μmのポリイミドフィルムの片面に厚さ18μmの圧延銅箔を積層したもの)に、ドライフィルムレジストを圧着後、フォトマスク露光、現像、エッチング、および剥離の各工程を経て、片面に配線パターンが形成されたベースフィルム層(I)を製造し、ステップ2:ステップ1で得たベースフィルム層(I)上に、回路パターンを被覆するように所定の柔軟性絶縁材料組成物をスクリーン印刷(100メッシュのポリエステルスクリーンを使用)により塗工し、ついで塗膜を80℃の熱風乾燥器で30分乾燥した後、紫外線で全面露光(超高圧水銀ランプ、主波長365nm、400mJ/cm2)し、厚さ40μmの柔軟性絶縁材料層(II)を製造することによって、フレキシブルプリント配線基板を製造し、ステップ3:ステップ2で製造されたフレキシブルプリント配線基板の全面に、カバーフィルム層(III)としてポリイミドカバーレイフィルム(東レ(株)製、Tタイプ、厚さ25μmのポリイミドフィルムに厚さ8μmの接着剤が塗布されたもの)を積層、圧着(160℃、4.3N/cm、60分)して、フレキシブル配線板を製造し、ステップ4:ステップ3で製造されたフレキシブル配線板の一部の両面に、100μm厚の多層積層板用プリプレグおよび18μm厚の銅箔を積層し、加熱プレスにより180℃で接着させてリジッド部分を形成し、ステップ5:上記ステップ4で製造したリジッド部分の銅箔をエッチングして回路パターンを形成させたのち、スクリーン印刷によりソルダーレジストを厚さ40μmとなるように塗布することで、製造したフレックスリジッド配線板が記載されている。
イ(ア)段落0104には、「【図1】フレックスリジッド配線板の平面図。」と記載され、段落0040には、「フレックスリジッド配線板において、図1のごとくフレキシブル配線板部分はリジッド部分に接続する上端4とこれと交叉する側端5とを有する」と記載され、段落0100には、「図1のリジッド部1の下端4がフレキシブル部2の側端5と交叉する部分3の形状を」「曲率半径が0.5mm」「の円弧としたフレックスリジッド配線板を上記の方法により製造した。」と記載されている。(下線は当審にて付した。)
ここで、段落0100に記載された「フレキシブル部2」は、段落0040に記載された「フレキシブル配線板部分」に対応すると認められる。
そして、図1の平面図より、フレックスリジッド配線板は、リジッド部1、1’とフレキシブル部2とからなり、段落0040の記載を勘案すると、フレキシブル部2は、リジッド部1に接続する上端4と、上端4と交叉する側端5とを有し、側端5の上端4と交叉する部分3を有することが見て取れる。
さらに、上記段落0100の記載より、実施例14では、交差する部分3の形状は曲率半径が0.5mmの円弧であるといえる。
(イ)上記ア(ウ)及び(エ)によれば、「フレックスリジッド配線板」は、「フレキシブルプリント配線板の一部の両面に」「リジッド部分を形成し」、「リジッド部分の銅箔をエッチングして回路パターンを形成させたのち」「ソルダーレジストを」「塗布することで、製造した」ものであるから、フレキシブルプリント配線板のリジッド部分が形成された部分と、リジッド部分が形成されない部分とからなるといえる。そして、フレキシブルプリント配線板はフレキシブルであり、フレックスリジッド配線板のリジッド部分はリジッドであると認められること、及び、上記(ア)のとおり、フレックスリジッド配線板はリジッド部1、1’とフレキシブル部2とからなるから、フレックスリジッド配線板のリジッド部分が形成された部分がリジッド部1、1’であり、リジッド部分が形成されなかった部分がフレキシブル部2であるといえる。
ウ 上記ア及びイによれば、引用文献1には、実施例14について、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「ステップ1:市販の銅張積層板(松下電工(株)製、R-F775、厚さ25μmのポリイミドフィルムの片面に厚さ18μmの圧延銅箔を積層したもの)に、ドライフィルムレジストを圧着後、フォトマスク露光、現像、エッチング、および剥離の各工程を経て、片面に回路パターンが形成されたベースフィルム層(I)を製造し、ステップ2:ステップ1で得たベースフィルム層(I)上に、回路パターンを被覆するように所定の柔軟性絶縁材料組成物をスクリーン印刷(100メッシュのポリエステルスクリーンを使用)により塗工し、ついで塗膜を80℃の熱風乾燥器で30分乾燥した後、紫外線で全面露光(超高圧水銀ランプ、主波長365nm、400mJ/cm2)し、厚さ40μmの柔軟性絶縁材料層(II)を製造することによって、フレキシブルプリント配線基板を製造し、ステップ3:ステップ2で製造されたフレキシブルプリント配線基板の全面に、カバーフィルム層(III)としてポリイミドカバーレイフィルム(東レ(株)製、Tタイプ、厚さ25μmのポリイミドフィルムに厚さ8μmの接着剤が塗布されたもの)を積層、圧着(160℃、4.3N/cm、60分)して、フレキシブル配線板を製造し、ステップ4:ステップ3で製造されたフレキシブル配線板の一部の両面に、100μm厚の多層積層板用プリプレグおよび18μm厚の銅箔を積層し、加熱プレスにより180℃で接着させてリジッド部分を形成し、ステップ5:上記ステップ4で製造したリジッド部分の銅箔をエッチングして回路パターンを形成させたのち、スクリーン印刷によりソルダーレジストを厚さ40μmとなるように塗布することで、製造したフレックスリジッド配線板であって、フレックスリジッド配線板のリジッド部分が形成された部分はリジッド部1、1’であり、リジッド部分が形成されなかった部分はフレキシブル部2であり、フレックスリジッド配線板の平面図でみて、フレキシブル部2は、リジッド部1に接続する上端4と、上端4と交叉する側端5とを有し、側端5の上端4と交叉する部分3は、曲率半径が0.5mmの円弧である、フレックスリジッド配線板。」
第5 対比、判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア(ア)本願の願書に添付した明細書(以下、「本願明細書」という。)の発明の詳細な説明の段落0007には、「「部品キャリア」という用語は、特に、機械的支持および/または電気接続性を提供するため、1つもしくは複数の部品をその上および/または中に受け入れることができる、任意の支持構造を示してもよい。」と記載されている。よって、本願発明の「部品キャリア」は、機械的支持または電気接続性を提供するため、1つもしくは複数の部品をその上または中に受け入れることができる支持構造であるといえる。
(イ)一方、引用文献1の段落0002には「フレックスリジッド配線板は、電気部品が実装される比較的硬質なリジッド部と、リジッド部間またはリジッド部と電気部品との間を電気的に接続するための、折り曲げ(屈曲)可能なフレキシブル部とから構成されている。」と記載されている。よって、引用発明の「フレックスリジッド配線板」は、少なくとも電気部品が実装されるものであり、電気部品を実装するために機械的支持及び電気接続性を提供する支持構造であるといえるから、上記(ア)を踏まえると、本願発明の「部品キャリア」に相当するといえる。
(ウ)また、引用発明のフレックスリジッド配線板の「リジッド部分が形成された部分がリジッド部1、1’であり、リジッド部分が形成されなかった部分がフレキシブル部2で」あることは、本願発明の「部分的にリジッドであり部分的にフレキシブルで」あることに相当し、さらに、引用発明の「リジッド部1」及び「フレキシブル部2」は、本願発明の「リジッド部分」及び「フレキシブル部分」に相当する。
(エ)上記(イ)及び(ウ)より、引用発明の「フレックスリジッド配線板」は、「部分的にリジッドであり部分的にフレキシブルである部品キャリアであって」、「リジッド部分と」、「フレキシブル部分とを備え」る点で、本願発明の「部品キャリア」と一致する。
イ 引用発明の「フレキシブル部2」は、「フレックスリジッド配線板の」「リジッド部分が形成されなかった部分」であるから、「リジッド部分を形成」する「ステップ4」、及び「ステップ5」を行わなかった部分であり、「ステップ1」で「片面に回路パターンが形成されたベースフィルム層(I)を製造し」、「ステップ2」で「ベースフィルム層(I)上に」「柔軟性絶縁材料層(II)を製造することによって、フレキシブルプリント配線基板を製造し」、「ステップ3」で「フレキシブルプリント配線基板の全面に」「、カバーフィルム層(III)としてポリイミドカバーレイフィルム」「を積層、圧着」することで、製造した部分であるといえる。
したがって、引用発明の「フレキシブル部2」は、(ステップ1でベースフィルム層(I)の片面に形成された)「回路パターン」および/または「柔軟性絶縁材料層(II)及び「ポリイミドカバーレイフィルム」を含むスタックを有するといえる。
引用発明において、ステップ1でベースフィルム層(I)の片面に形成された「回路パターン」は、「圧延銅箔」を用いて形成されたものであるから、導電性を有することが明らかである。したがって、引用発明の当該「回路パターン」のうち、「フレキシブル部2」の部分は、本願発明の「少なくとも1つの第2の導電層構造」に相当する。
また、ポリイミドが絶縁性を有するものであることを踏まえると、引用発明の「柔軟性絶縁材料層(II)」及び「ポリイミドカバーレイフィルム」のうち、「フレキシブル部2」の部分は、本願発明の「少なくとも1つの第2の電気絶縁層構造」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明は、「少なくとも1つの第2の導電層構造および/または少なくとも1つの第2の電気絶縁層構造を含む第2のスタックを有するフレキシブル部分」を備える点で一致する。
ウ 引用発明の「リジッド部1、1’」は、「フレックスリジッド配線板のリジッド部分が形成された部分」であるから、「ステップ1」で「片面に回路パターンが形成されたベースフィルム層(I)を製造し」、「ステップ2」で「ベースフィルム層(I)上に」「柔軟性絶縁材料層(II)を製造することによって、フレキシブルプリント配線基板を製造し」、「ステップ3」で「フレキシブルプリント配線基板の全面に」「カバーフィルム層(III)としてポリイミドカバーレイフィルム」「を積層、圧着」「して、フレキシブル配線板を製造し」、「ステップ4」で「フレキシブル配線板の一部の両面に」「多層積層板用プリプレグおよび」「銅箔を積層し、加熱プレスにより」「接着させてリジッド部分を形成し」、「ステップ5」で「リジッド部分の銅箔をエッチングして回路パターンを形成させたのち」「ソルダーレジストを」「塗布することで」、製造した部分であるといえる。
したがって、引用発明の「リジッド部1,1’」は、(ステップ1でベースフィルム層(I)の片面に形成された)「回路パターン」及び(ステップ5で形成された)「回路パターン」および/または「柔軟性絶縁材料層(II)及び「ポリイミドカバーレイフィルム」を含むスタックを有するといえる。
引用発明において、ステップ1でベースフィルム層(I)の片面に形成された「回路パターン」及びステップ5で形成された「回路パターン」は、「圧延銅箔」ないし「銅箔」を用いて形成されたものであるから、いずれも導電性を有することが明らかである。したがって、引用発明のステップ1でベースフィルム層(I)の片面に形成された「回路パターン」及びステップ5で形成された「回路パターン」のうち、「リジッド部1、1’」の部分は、本願発明の「少なくとも1つの第1の導電層構造」に相当する。
また、ポリイミド及びソルダーレジストが絶縁性を有するものであることを踏まえると、引用発明の「柔軟性絶縁材料層(II)」、「ポリイミドカバーレイフィルム」及び「ソルダーレジスト」のうち、「リジッド部1、1’」の部分は、本願発明の「少なくとも1つの第1の電気絶縁層構造」に相当する。
さらに、引用発明の「リジッド部1」が、「片面に配線パターンが形成されたベースフィルム層(I)」上に「柔軟性絶縁材料層(II)を製造することによって、フレキシブルプリント配線基板を製造し」、「フレキシブルプリント配線基板の全面に」「ポリイミドカバーレイフィルム」「を積層、圧着」「して、フレキシブル配線板を製造し」、「フレキシブル配線板の一部の両面に」「銅箔を積層し」、「銅箔をエッチングして回路パターンを形成させたのち」「ソルダーレジストを」「塗布することで」製造したものであることは、「配線パターン」、「柔軟性絶縁材料層(II)」、「ポリイミドカバーレイフィルム」及び「ソルダーレジスト」が積層されたスタックを有することであるから、本願発明の「第1のスタックを有する」ことに相当する。
したがって、引用発明の「リジッド部1」は、本願発明の「少なくとも1つの第1の導電層構造および/または少なくとも1つの第1の電気絶縁層構造を含む第1のスタックを有するリジッド部分」に相当する。
エ 引用発明の「フレックスリジッド配線板の平面図でみて」は、本願発明の「前記第1のスタックおよび前記第2のスタックの前記層構造のスタッキング方向に沿った視線方向での前記部品キャリアの平面視において」に相当する。また、引用発明の「フレキシブル部2」の「側端5の上端4と交叉する部分3」は、フレキシブル部2からリジッド部1へ移行する部分であるから、本願発明の「前記リジッド部分と前記フレキシブル部分との間の接点における移行部分」に相当する。さらに、引用発明の「交叉する部分3は、曲率半径が0.5mmの円弧である」ことは、本願発明の「移行部分が」「丸み付けられ、前記移行部分が半径によって規定される丸みを有」することに相当する。
したがって、引用発明の「フレックスリジッド配線板の平面図でみて、フレキシブル部2は、リジッド部1に接続する上端4と、上端4と交叉する側端5とを有し、側端5の上端4と交叉する部分3が、曲率半径が0.5mmの円弧である」ことは、本願発明の「第1のスタックおよび前記第2のスタックの前記層構造のスタッキング方向に沿った視線方向での前記部品キャリアの平面視において、前記リジッド部分と前記フレキシブル部分との間の接点における移行部分が」「丸み付けられ、前記移行部分が半径によって規定される丸みを有」することに相当する。
しかし、「前記リジッド部分と前記フレキシブル部分との間の接点における移行部分」が、丸み付けられたものであることについて、本願発明では、「曲げ応力を低減するため」に丸み付けられたものであるのに対し、引用発明は、「側端5の上端4と交叉する部分3」が、「円弧である」ものの、「曲げ応力を低減するため」に丸み付けられたものであるか不明である点で相違する。
また、「移行部分」が有する「丸み」を規定する「半径」について、本願発明では、「前記半径が0.5mm未満である」のに対し、引用発明では、「円弧」である「側端5の上端4と交叉する部分3」は、「曲率半径が0.5mm」である点で相違する。
オ 上記ア~エによれば、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「部分的にリジッドであり部分的にフレキシブルである部品キャリアであって、少なくとも1つの第1の導電層構造および/または少なくとも1つの第1の電気絶縁層構造を含む第1のスタックを有するリジッド部分と、少なくとも1つの第2の導電層構造および/または少なくとも1つの第2の電気絶縁層構造を含む第2のスタックを有するフレキシブル部分とを備え、前記第1のスタックおよび前記第2のスタックの前記層構造のスタッキング方向に沿った視線方向での前記部品キャリアの平面視において、前記リジッド部分と前記フレキシブル部分との間の接点における移行部分が、丸み付けられ、前記移行部分が半径によって規定される丸みを有する、部品キャリア。」
<相違点1>
「前記リジッド部分と前記フレキシブル部分との間の接点における移行部分」が、丸み付けられたものであることについて、本願発明では、「曲げ応力を低減するため」に丸み付けられたものであるのに対し、引用発明は、「側端5の上端4と交叉する部分3」が、「円弧である」ものの、「曲げ応力を低減するため」に丸み付けられたものであるか不明である点。
<相違点2>
「移行部分」が有する「丸み」を規定する「半径」について、本願発明では、「前記半径が0.5mm未満である」のに対し、引用発明では、「円弧」である「側端5の上端4と交叉する部分3」は、「曲率半径が0.5mm」である点。
2 相違点についての検討
(1)相違点1について
本願明細書の段落0003には「部品キャリアを曲げることによって」「部品キャリアが損傷することがある。」と記載され、段落0084には「図1による」「移行部分118において実現される丸みにより、特に参照符号123で示した重要位置における曲げ応力を、大幅に低減できることが分かっている。」(下線は、当審において付した。)と記載されており、部品キャリアを曲げることによって部品キャリアが損傷する問題を解決するため、移行部分の丸みにより曲げ応力を低減することが記載されている。
一方、引用文献1の段落0040には、「該上端と該側端との交叉する角度αを鋭角とすることでリジッド配線板とフレキシブル配線板間の破断強度を向上させることが可能となる。特に前記上端4が側端5と交叉する部分3が円弧であることが破断強度の点で好ましい。」と記載され、部分3を円弧とすることにより、リジッド配線板とフレキシブル配線板間の破断強度が向上することが記載されている。
そうすると、本願発明においては、移行部分の丸みにより、曲げ応力が低減され、結果として、部品キャリアの損傷の問題が解決されるのに対し、引用発明においては、部分3が円弧であることにより、結果として、リジッド配線板とフレキシブル配線板間の破断強度の向上という課題が解決され、本願発明と同様の構成により、本願発明と同様の課題を解決するものであるから、その作用においても、本願発明と同様に、曲げ応力が低減されている蓋然性が高い。
よって、相違点1は実質的なものではない。
(2)相違点2について
引用文献1の段落0040には、「前記円弧の曲率半径は任意であるが、1.0mm以上とすることで特に破断強度が向上するため好ましい。」と記載され、同段落0100には、「部分3の形状を、それぞれ曲率半径が0.5mm、1.5mmおよび2.0mmの円弧としたフレックスリジッド配線板を上記の方法により製造した。」及び「リジッド部分とフレキシブル部分との間が破断に至る荷重は、それぞれ120gf、600gfおよび720gfであった。」と記載されている。
そうすると、円弧の曲率半径は任意であり、特定の値を排除するものではないといえる。また、曲率半径の値が大きくなるとともに破断に至る荷重も大きくなるが、0.5mm未満でも曲率半径の値に応じた破断強度を有するといえる。そうすると、引用発明の「円弧の曲率半径」は、所望の破断強度に応じて設定し得る値であるから、引用発明において、必要な破断強度が大きくない場合に、円弧の曲率半径を0.5mmよりも小さく設定し、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得た設計変更にすぎない。
また、本願の願書に添付した図面の図10に示された、異なる曲げ半径Rによる曲げ応力のシミュレーションによると、半径0.5mmにおける応力と比較して半径0.5mm未満における応力が低減しているとは認められないから、相違点2に係る本願発明の構成が臨界的意義を有すると認めることはできない。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、令和5年4月18日に提出された審判請求書の3.(3)(3-2)及び(3-3)において、以下の点を主張している。
<主張1>
引用文献1の実施例においては曲率半径を0.5mm、1.5mm、2.0mmにしたことが記載され、段落0040には、「前記円弧の曲率半径を1.0mm以上とすることで、特に破断強度が向上するため好ましい」との記載があることから、引用文献1にあたった本願出願当時の当業者であれば、破断強度を向上させるために、リジッド部分とフレキシブル部分との移行部分の曲率半径を1mm以上とすることに当然に想到し、該曲率半径を0.5mm未満とした場合には、破断強度(耐屈曲性)を向上させるという引用文献1の課題を解決できないものと当然に想到する。そのため、引用文献1の記載から、「前記半径が0.5mm未満である」という本願発明の構成に想到するには阻害事由が存する。
<主張2>
曲げが生じる移行部分における過度の負荷を、リジッド・フレキシブル接点に丸みを設けることによって、効率的に抑制することができるという優れた効果を示すこと、及び、比較的小さい半径Rにより、部品キャリア全体の構造に対する曲げ不良保護構造の幾何学的影響は非常に小さいことから、0.5mm未満の半径は、移行領域の応力を大幅に低減し、少ない空間利用量(すなわち小型化)で部品キャリアの耐性を強化するという優れた効果を有する。
イ 主張1について検討する。
上記(2)において検討したとおりであるから、引用発明において曲率半径を0.5mm未満とすることに阻害事由が存在するとは認められない。
よって、主張1を採用することはできない。
ウ 主張2について検討する。
引用発明において、「部分3」が円弧であることにより、曲げ応力が抑制される蓋然性が高いことは、上記(1)において検討したとおりであり、曲げ応力が抑制されることにより、移行部分における負荷が抑制されることは明らかである。また、引用発明において、「部分3」の円弧の曲率半径が小さいことにより、「部分3」におけるフレキシブル部2の「側端5」に直交する方向の幅が小さくなり、フレキシブル部2の空間利用量が少なくなることは幾何学的に明らかである。さらに、上記(2)において検討したとおり、本願発明において「半径」を0.5mm未満とすることに臨界的意義があるとも認められない。
よって、請求人が主張する「曲げが生じる移行部分における過度の負荷を」「効率的に抑制することができ」、「移行領域の応力を大幅に低減し、少ない空間利用量(すなわち小型化)で部品キャリアの耐性を強化する」という効果が、当業者が予想し得ない格別な効果であるとはいえず、主張2を採用することはできない。
3 小括
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである
第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-006323