特許拒絶査定不服審判
2023-001749
回路接続用接着剤フィルム及びその製造方法、回路接続構造体の製造方法、並びに、接着剤フィルム収容セット
- 審判番号
- 2023-001749
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-541029外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年02月01日
- 審決日
- 2024年02月07日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (H05K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-541029「回路接続用接着剤フィルム及びその製造方法、回路接続構造体の製造方法、並びに、接着剤フィルム収容セット」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月14日国際公開、WO2019/050006〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)9月7日(優先権主張 2017年9月11日(以下「優先日」という。))を国際出願日とする特許出願であって、その後の手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年 4月28日付け 拒絶理由通知
令和4年 7月11日 意見書、手続補正書の提出
令和4年10月28日付け 拒絶査定(原査定)
令和5年 2月 1日 審判請求書、手続補正書の提出
令和5年 3月20日 手続補正書(方式)の提出
第2 令和5年2月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年2月1日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線は、補正箇所である。)
「【請求項1】
第1の接着剤層と、該第1の接着剤層上に積層された第2の接着剤層と、を備え、
前記第1の接着剤層は光硬化性組成物の硬化物からなり、
前記第2の接着剤層は熱硬化性組成物からなり、
前記光硬化性組成物は、重合性化合物と、導電粒子と、光重合開始剤と、を含有し、
前記重合性化合物は、ラジカル重合性基を有するラジカル重合性化合物として、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含み、
前記光重合開始剤は、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)及び2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オンからなる群より選択される少なくとも一種を含む、回路接続用接着剤フィルム。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の請求項1の記載は、令和4年7月11日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
第1の接着剤層と、該第1の接着剤層上に積層された第2の接着剤層と、を備え、
前記第1の接着剤層は光硬化性組成物の硬化物からなり、
前記第2の接着剤層は熱硬化性組成物からなり、
前記光硬化性組成物は、重合性化合物と、導電粒子と、光重合開始剤と、を含有し、
前記重合性化合物は、ラジカル重合性基を有するラジカル重合性化合物を含み、
前記光重合開始剤は、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)及び2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オンからなる群より選択される少なくとも一種を含む、回路接続用接着剤フィルム。」
2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「重合性化合物」が含む「ラジカル重合性基を有するラジカル重合性化合物」について、「ラジカル重合性基を有するラジカル重合性化合物として、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含」むとの限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献
ア 引用文献1の記載と引用発明
(ア)引用文献1の記載
原査定の拒絶理由で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2009-16133号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。(下線は当審で付した。以下同じ。)
「【0001】
本発明は、ICチップ、液晶ディスプレイ(LCD)における液晶パネル(LCDパネル)等の電子部品と基板や、基板同士を電気的かつ機械的に接続可能な異方性導電膜及びその効率的な製造方法、並びに該異方性導電膜を用いた、電子部品と基板等との接合体に関する。」
「【0016】
(異方性導電膜)
本発明の異方性導電膜は、絶縁層と、導電性粒子含有層とを少なくとも有してなり、ベースフィルムを有していてもよく、更にその他の層を有していてもよい。
【0017】
ここで、本発明の異方性導電膜の一例を、図面を用いて説明する。図1は、本発明の異方性導電膜の一例を示す模式断面図である。
図1に示すように、本発明の異方性導電膜は、導電性粒子含有層10と、導電性粒子含有層10上に積層された絶縁層20とを有してなる。
絶縁層20は、絶縁性樹脂組成物22で形成されてなる。
導電性粒子含有層10は、光及び熱硬化性樹脂組成物12と導電性粒子14とを含んでおり、導電性粒子14は、絶縁層20側の界面に単層配列している。また、導電性粒子含有層10の厚み方向において、導電性粒子14の存在する側から導電性粒子14が存在しない側にかけて、硬化度が漸次低くなっており、即ち、硬化度が傾斜しており、硬化度の高い領域では、導電性粒子14が絶縁層20側の界面に単層配列した状態で固定されている。一方、導電性粒子含有層10における導電性粒子14が存在しない側は、硬化度が低い状態乃至未硬化状態であり、光及び熱硬化性樹脂組成物12が接着性を有する。
なお、前記未硬化状態とは、硬化が完全に行われておらず、押圧力を付与すると、樹脂が流動性を示す状態を意味する。
【0018】
〔絶縁層〕
前記絶縁層は、絶縁性樹脂組成物で形成されてなる。
-絶縁性樹脂組成物-
前記絶縁性樹脂組成物は、絶縁性樹脂を少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択した、その他の成分を含んでなる。
【0019】
--絶縁性樹脂--
前記絶縁性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐熱性及び信頼性が高い点で、熱硬化性樹脂が好ましく、例えば、エポキシ樹脂が好適に挙げられる。
・・・(中略)・・・
【0022】
〔導電性粒子含有層〕
前記導電性粒子含有層は、光及び熱硬化性樹脂組成物と導電性粒子とを少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択した、その他の成分を含んでなる。
【0023】
-光及び熱硬化性樹脂組成物-
前記光及び熱硬化性樹脂組成物としては、光及び熱硬化性樹脂(光及び熱により硬化する樹脂)を少なくとも含む限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0024】
--光及び熱硬化性樹脂--
前記光及び熱硬化性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(メタ)アクリル樹脂が好適に挙げられる。
前記アクリル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エポキシアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチレングリコールテトラアクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジアクリロキシプロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレートトリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、前記アクリレートをメタクリレートにしたものが挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
また、前記光及び熱硬化性樹脂組成物は、硬化成分としての(メタ)アクリル系モノマーを含んでいるのが好ましい。
前記(メタ)アクリル系モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートが挙げられる。
【0026】
前記光及び熱硬化性樹脂組成物は、硬化用光の照射による樹脂の硬化を促進させることができる点で、光重合開始剤を更に含んでいるのが好ましく、本発明の前記異方性導電膜を用いて電子部品等と基板等とを接合する際、加熱処理による樹脂の硬化を促進させることができる点で、熱硬化性開始剤を更に含んでいるのが好ましい。」
「【0042】
前記硬化用光の照射の際には、前記導電性粒子含有層における前記導電性粒子が存在する側の表面に、透明剥離PETシート等の基材を貼り付けて、大気中の酸素を遮蔽するのが好ましい。この場合、前記導電性粒子が存在する側の表面は、前記ラジカル重合反応の反応阻害物質としての前記酸素と接触しないため、光硬化される。
なお、前記導電性粒子含有層に硬化用光吸収材を添加した状態にて前記硬化用光を照射する場合、前記導電性粒子含有層における前記導電性粒子が存在しない側の表面は、開放系として、酸素と接触させてもよいし、前記透明剥離PETシート等を貼り付けることにより酸素を遮蔽してもよい。」
「【0046】
-使用例-
本発明の前記異方性導電膜の使用例として、例えば、液晶画面制御用ICチップとITOガラス基板との接合体への適用例を、以下に図面を用いて説明する。
図4Aに示すように、ITOガラス基板40におけるITO電極42側に、異方性導電膜における導電性粒子含有層10を接触させ、液晶画面制御用ICチップ30におけるバンプ32側に、絶縁層20を接触させるように、図1に示す異方性導電膜を配置して仮圧着する。そして、図4Bに示すように、熱及び圧力によりこれらを圧着すると、絶縁層20における樹脂は、流動性を有するため、バンプ32に押しのけられた状態にて熱硬化する。導電性粒子含有層10の厚み方向において、導電性粒子14が存在する側は、硬化度が高く、導電性粒子14が固定されているので、導電性粒子14が流動することなく、高い捕捉率でバンプ32に捕捉される。一方、導電性粒子含有層10の導電性粒子14が存在しない側に向かって、硬化度が漸次低くなっているので、導電性粒子14が存在しない側の樹脂は、バンプ32からの押圧力により流動し排除され、ITO電極42と導電性粒子14との接触を妨げない状態にて熱硬化する。以上により、液晶表示用ICチップ30とITOガラス基板40との接合体が形成され、導電性粒子14を介してバンプ32とITO電極42との導通が図られる。」
「【0065】
(実施例1)
・・・(中略)・・・
【0068】
<絶縁層(NCF層)積層工程>
下記表2に示す組成に基づいて、絶縁層形成用溶液を調製した。
【表2】
[図:0001408681000001.jpg]
得られた絶縁層形成用溶液を、バーコーターを用いて剥離PETシートS4上に塗布し、60℃で10分間乾燥させて溶剤を揮発させることにより、厚み10μmのフィルムB(絶縁層200)を得た(図5G参照)。
【0069】
次いで、導電性粒子含有層100上に積層された透明剥離PETシートS3を剥離し、その剥離面に絶縁層200を積層した。また、導電性粒子含有層100における導電性粒子Pが存在しない側の面に、剥離PETシートS5をラミネートし、異方性導電膜を得た(図5H参照)。
【0070】
(実施例2)
-異方性導電膜の製造-
実施例1において、前記導電性粒子含有層形成工程を、下記方法により行った以外は、実施例1と同様にして、異方性導電膜を製造した。
【0071】
<導電性粒子含有層(ACF層)形成工程>
下記表3に示す組成に基づいて、導電性粒子含有層形成用溶液を調製した。
【表3】
[図:0001408681000002.jpg]
得られた導電性粒子含有層形成用溶液を、バーコーターを用いて剥離PETシートS6上に塗布し、60℃のオーブン中で10分間加熱して溶剤を揮発させ、厚み5μmのフィルムA(導電性粒子含有層120)を得た(図6A参照)。得られたフィルムAの表面は、タック性を有していた。
【0072】
フィルムAにおける導電性粒子Pが存在する側の面に、透明剥離PETシートS7をラミネートする一方、反対側の面の剥離PETシートS6を剥離した。そして、UV照射機(「キュアマックス」;大宮化成製)を用いて紫外線を13mW/cm2の照射量で1分間にわたって、透明剥離PETシートS7側から、フィルムAに対して照射した(図6B参照)。
その結果、透明剥離PETシートS7を剥離すると、紫外線の照射前には、導電性粒子含有層120の両面がタック性を有していたが、紫外線の照射後には、導電性粒子含有層120における導電性粒子Pが存在する側の面のみ、タック性が消失していたことが確認された。
【0073】
その後、実施例1と同様にして、絶縁層200を形成し、導電性粒子含有層120に積層して、異方性導電膜を得た(図6C参照)。」
「【0088】
<接合体の製造実験>
実施例1~3及び比較例1~5と同様にして、それぞれ製造した異方性導電膜を用いて、以下に示すITOガラス基板とICチップとの接合体を製造した。
・ITOガラス基板:厚み0.7mmのガラス基板の片面にITO(インジウム錫酸化物)電極が形成されたもの。
・ICチップ:2mm×20mm×0.55mm(厚み)の寸法で、バンプ面積が2,500μm2であるバンプを有するもの。
各異方性導電膜の両面に形成された剥離PETシールを剥離し、導電性粒子含有層100をICチップ側、絶縁層200をITOガラス基板側に、それぞれ配置した状態で、異方性導電膜を介してICチップとITOガラス基板とを接触させ、190℃、60MPa、10秒間の条件で、圧着した。
」
「【図1】
[図:0001408681000003.jpg]
」
(イ)引用発明
上記(ア)の記載からみて、引用文献1には以下の事項が記載されているといえる。
a 上記(ア)の【0001】の記載によれば、引用文献1には、「ICチップ、液晶ディスプレイ(LCD)における液晶パネル(LCDパネル)等の電子部品と基板を電気的かつ機械的に接続可能な異方性導電膜」に関する発明が記載されている。
b 同【0017】の「本発明の異方性導電膜は、導電性粒子含有層10と、導電性粒子含有層10上に積層された絶縁層20とを有してなる。」の記載から、上記aの「異方性導電膜」は、「導電性粒子含有層と、導電性粒子含有層上に積層された絶縁層とを有する」といえる。
c 同【0018】の「前記絶縁層は、絶縁性樹脂組成物で形成されてなる。」及び「前記絶縁性樹脂組成物は、絶縁性樹脂を少なくとも含み」の記載、並びに同【0019】の「前記絶縁性樹脂としては、・・・、耐熱性及び信頼性が高い点で、熱硬化性樹脂が好ましく」の記載から、上記bの「絶縁層」は、「熱硬化樹脂を含む絶縁性樹脂組成物で形成される」ものといえる。
d 同【0017】の「導電性粒子含有層10は、光及び熱硬化性樹脂組成物12と導電性粒子14とを含んでおり」との記載、及び「導電性粒子含有層10の厚み方向において、導電性粒子14の存在する側から導電性粒子14が存在しない側にかけて、硬化度が漸次低くなっており、」「硬化度の高い領域では、導電性粒子14が絶縁層20側の界面に単層配列した状態で固定されている。一方、導電性粒子含有層10における導電性粒子14が存在しない側は、硬化度が低い状態乃至未硬化状態であり、光及び熱硬化性樹脂組成物12が接着性を有する」の記載から、上記bの「導電性粒子含有層」は、「光及び熱硬化性樹脂組成物と導電性粒子とを含み、導電性粒子含有層の厚み方向において、導電性粒子の存在する側から導電性粒子が存在しない側にかけて、硬化度が漸次低くなっており、硬化度の高い領域では、導電性粒子が絶縁層側の界面に単層配列した状態で固定され、導電性粒子含有層における導電性粒子が存在しない側は、硬化度が低い状態乃至未硬化状態であり、光及び熱硬化性樹脂組成物12が接着性を有する」ものといえる。
e 同【0025】の「前記光及び熱硬化性樹脂組成物は、硬化成分としての(メタ)アクリル系モノマーを含んでいるのが好ましい。」及び「前記(メタ)アクリル系モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタンアクリレート、・・・が挙げられる。」の記載から、上記dの「光及び熱硬化性樹脂組成物」の好ましい態様として、「硬化成分としての(メタ)アクリル系モノマーを含み、該(メタ)アクリル系モノマーとしてウレタンアクリレートを選択したもの」とすることは、引用文献1に記載されているに等しい事項である。
f 同【0026】の「前記光及び熱硬化性樹脂組成物は、硬化用光の照射による樹脂の硬化を促進させることができる点で、光重合開始剤を更に含んでいるのが好ましく」の記載、及び同【0042】の「前記硬化用光の照射の際には、前記導電性粒子含有層における前記導電性粒子が存在する側の表面に、透明剥離PETシート等の基材を貼り付けて、大気中の酸素を遮蔽するのが好ましい。この場合、前記導電性粒子が存在する側の表面は、前記ラジカル重合反応の反応阻害物質としての前記酸素と接触しないため、光硬化される。」の記載から、上記dの「光及び熱硬化性樹脂組成物」は、さらに「ラジカル重合反応のための光重合開始剤を含む」といえる。
g 上記a~fによれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明)
「ICチップ、液晶ディスプレイ(LCD)における液晶パネル(LCDパネル)等の電子部品と基板を電気的かつ機械的に接続可能な異方性導電膜であって、(上記a)
導電性粒子含有層と、導電性粒子含有層上に積層された絶縁層とを有し、(上記b)
絶縁層は、熱硬化樹脂を含む絶縁性樹脂組成物で形成され、(上記c)
導電性粒子含有層は、光及び熱硬化性樹脂組成物と導電性粒子とを含み、導電性粒子含有層の厚み方向において、導電性粒子の存在する側から導電性粒子が存在しない側にかけて、硬化度が漸次低くなっており、硬化度の高い領域では、導電性粒子が絶縁層側の界面に単層配列した状態で固定され、導電性粒子含有層における導電性粒子が存在しない側は、硬化度が低い状態乃至未硬化状態であり、光及び熱硬化性樹脂組成物が接着性を有するものであり、(上記d)
光及び熱硬化性樹脂組成物は、硬化成分としての(メタ)アクリル系モノマーを含み、該(メタ)アクリル系モノマーとしてウレタンアクリレートを選択したものであり、(上記e)
光及び熱硬化性樹脂組成物は、さらにラジカル重合反応のための光重合開始剤を含む、(上記f)
異方性導電膜。」
イ 引用文献2の記載と引用文献2記載事項
(ア)引用文献2の記載
原査定の拒絶理由で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2016-82070号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。
「【0030】
[異方性導電フィルム]
異方性導電フィルム6は、光硬化型の接着剤であり、後述する熱圧着ツール20によって熱加圧されることにより流動化して導電性粒子16が透明フィルム2及びフレキシブル基板5の各接続端子3、7の間で押し潰され、光照射により、導電性粒子16が押し潰された状態で硬化する。これにより、異方性導電フィルム6は、透明フィルム2とフレキシブル基板5とを電気的、機械的に接続する。
【0031】
異方性導電フィルム6は、例えば図3に示すように、バインダー樹脂15(接着剤)に導電性粒子16が分散されてなり、この熱硬化性接着材組成物がベースフィルム17上に塗布されることによりフィルム状に成型されたものである。
【0032】
ベースフィルム17は、例えば、PET(Poly Ethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methylpentene-1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)等にシリコーン等の剥離剤を塗布してなる。
【0033】
バインダー樹脂15は、光硬化型であれば、特に限定されるものではなく、ラジカル重合型、カチオン重合型などを用いることができる。以下では、ラジカル重合型のバインダー樹脂について、説明する。
【0034】
ラジカル重合型のバインダー樹脂は、膜形成樹脂、ラジカル硬化性化合物、ラジカル重合開始剤を含有する。膜形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド、EVA等の熱可塑性エラストマー等を使用することができる。これらの中でも、耐熱性、接着性のために、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンより合成されるビスフェノールA型フェノキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0035】
ラジカル重合性化合物としては、接着剤等の分野で用いられている(メタ)アクリレートから適宜選択して使用することができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリル酸エステル(アクリレート)とメタクリル酸エステル(メタクリレート)とを包含する意味である。
【0036】
ラジカル重合性化合物の具体例としては、エポキシアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ウレタンアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、2-アクリロイロキシエチルコハク酸、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、o-フタル酸ジグリシジルエーテルアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、及びこれらに相当する(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、アクリレートやウレタンアクリレート等が好ましく用いられる。市場で入手可能な具体例としては、東亜合成工業株式会社製の商品名「M-315」や「M1600」等が挙げられる。
【0037】
光ラジカル重合開始剤は、公知のラジカル重合開始剤の中から適宜選択して使用することができる。
【0038】
光重合型のラジカル重合開始剤としては、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、ベンゾフェノン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン等のチオキサントン類;ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類等が挙げられる。
【0039】
これらのラジカル重合開始剤は1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることが可能である。これらの中でも、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等が好ましく用いられる。市場で入手可能な具体例としては、BASFジャパン(株)の商品名「IRGACURE OXE02」等が挙げられる。」
「【0070】
[異方性導電フィルム]
各実施例及び比較例に係る接続体サンプルの製造に用いた異方性導電フィルムは、表1に示す配合(単位:質量部)により、A~Dの4種類を用意した。配合A~Cに係る異方性導電フィルムは光硬化型の接着剤であり、配合Dに係る異方性導電フィルムは加熱硬化型の接着剤である。
【0071】
【表1】
[図:0001408681000004.jpg]
・・・(中略)・・・
【0077】
そして、各実施例及び比較例に係る接続体サンプルについて、初期導通抵抗値(Ω)及び信頼性試験後における導通抵抗値(Ω)を測定した。信頼性試験の条件は、60℃95%RH100hrである。導通抵抗値の測定は、評価用フレキシブル基板の接続端子と接続された透明プラスチックフィルム基板のITO電極又はCu電極にデジタルマルチメータを接続し、いわゆる4端子法にて電流2mAを流したときの抵抗値を30回測定し、その平均値を導通抵抗値とした。導通信頼性評価は、5Ω以下をOK、それより大きい場合をNGとした。
・・・(中略)・・・
【0081】
[実施例1]
実施例1では、配合Aに係る光硬化型の異方性導電フィルムを用いた。配合Aに係る異方性導電フィルムは、本圧着工程における加熱温度(80℃)における溶融粘度は1000Pa・sである。実施例1に係る接続体サンプルの導通信頼性評価は5Ω以下(OK)、フェレットのはみ出し幅Wは550μm(OK)であった。また、外縁領域における粒子密度(a)は12.1pcs/200×200μm、押圧領域における粒子密度(b)は4.2pcs/200×200μmであった。さらに、接続体サンプルの透明プラスチックフィルムの歪みも確認されなかった。」
(イ)引用文献2記載事項
上記(ア)には、「バインダー樹脂15(接着剤)に導電性粒子16が分散されて」なる「異方性導電フィルム6」(【0031】)について、
ラジカル重合型のバインダー樹脂は、ラジカル硬化性化合物、ラジカル重合開始剤を含有すること(【0034】)、
ラジカル重合性化合物としては、ウレタンアクリレートが好ましく用いられ、これは市場で入手可能(東亜合成工業株式会社製の商品名「M1600」)であること(【0036】)、
光重合型のラジカル重合開始剤としては、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)が挙げられ(【0038】)、これは市場で入手可能(BASFジャパン(株)の商品名「IRGACURE OXE02」)であること(【0039】)が記載されている。
また、上記(ア)の【表1】には、実施例1としてラジカル重合性化合物としてのウレタンアクリレート(M1600(東亜合成工業株式会社製))と光開始剤(Irgacure OXE02(BASF社製))とを配合した配合Aが記載されている。
さらに、実施例1では、「初期導通抵抗値(Ω)及び信頼性試験後における導通抵抗値(Ω)を測定し」た「導通信頼性評価は5Ω以下(OK)であった」(【0077】、【0081】)ことが記載されている。
そうすると、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されているといえる。
(引用文献2記載事項)
「バインダー樹脂(接着剤)に導電性粒子が分散されてなる異方性導電フィルムにおいて、バインダー樹脂に、ラジカル重合性化合物としてのウレタンアクリレートと、ラジカル重合開始剤として市場で入手可能なエタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)を含めたものは、初期導通抵抗値(Ω)及び信頼性試験後における導通抵抗値(Ω)を測定した導通信頼性評価が5Ω以下(OK)であったこと。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「導電性粒子含有層」及び導電性粒子含有層上に積層された「絶縁層」は、積層関係からみて、それぞれ本件補正発明の「第1の接着剤層」及び該第1の接着剤層上に積層された「第2の接着剤層」に対応する。
そして、引用発明の「導電性粒子含有層」と「絶縁層」は、「ICチップ、液晶ディスプレイ(LCD)における液晶パネル(LCDパネル)等の電子部品と基板を電気的かつ機械的に接続」するための層であるところ、「導電性粒子含有層」が含む「光及び熱硬化性樹脂組成物」は「接着性を有するもの」であるから、「導電性粒子含有層」は、「接着剤層」ということができ、この点で、本件補正発明の「第1の接着剤層」に相当する。
ここで、本願明細書(【0114】)には、本件補正発明の「第2の接着剤層」に関し、「そして、図3(b)に示すように、第1の回路部材13、接着剤フィルム1及び第2の回路部材16を加熱しながら、第1の回路部材13と第2の回路部材16とを厚み方向に加圧することで、第1の回路部材13と第2の回路部材16とを互いに熱圧着する。この際、図3(b)において矢印で示すように、第2の接着剤層3は、流動可能な未硬化の熱硬化性組成物からなっているため、第2の電極15,15間の空隙を埋めるように流動すると共に、上記加熱によって硬化する。これにより、第1の電極12及び第2の電極15が導電粒子4を介して互いに電気的に接続され、また、第1の回路部材13及び第2の回路部材16が互いに接着されて、図2に示す回路接続構造体10が得られる。」(下線は当審で付した。以下同様。)と記載されている。
この記載によれば、本件補正発明の「第2の接着剤層」は、「流動可能な未硬化の熱硬化性組成物」からなり、加熱により硬化することで、第1の回路部材13と第2の回路部材とを接着するものであり、このときの「接着剤層」は、流動性を有し加熱により硬化する材料を含む層のことといえる。
一方、引用発明の「絶縁層」は「熱硬化樹脂を含む絶縁性樹脂組成物で形成」されているところ、引用文献1(上記(2)ア(ア)の【0046】)には、引用発明の「絶縁層」に関し、
「図4Aに示すように、ITOガラス基板40におけるITO電極42側に、異方性導電膜における導電性粒子含有層10を接触させ、液晶画面制御用ICチップ30におけるバンプ32側に、絶縁層20を接触させるように、図1に示す異方性導電膜を配置して仮圧着する。そして、図4Bに示すように、熱及び圧力によりこれらを圧着すると、絶縁層20における樹脂は、流動性を有するため、バンプ32に押しのけられた状態にて熱硬化する。導電性粒子含有層10の厚み方向において、導電性粒子14が存在する側は、硬化度が高く、導電性粒子14が固定されているので、導電性粒子14が流動することなく、高い捕捉率でバンプ32に捕捉される。一方、導電性粒子含有層10の導電性粒子14が存在しない側に向かって、硬化度が漸次低くなっているので、導電性粒子14が存在しない側の樹脂は、バンプ32からの押圧力により流動し排除され、ITO電極42と導電性粒子14との接触を妨げない状態にて熱硬化する。以上により、液晶表示用ICチップ30とITOガラス基板40との接合体が形成され、導電性粒子14を介してバンプ32とITO電極42との導通が図られる。」と記載されている。
この記載によれば、流動性を有する「絶縁層20」は、熱硬化することで液晶表示用ICチップ30とITOガラス基板40との接合体を形成するものである。そうすると、引用発明の「絶縁層」は、流動性を有し熱硬化する層であるから本件補正発明と同様の「接着剤層」ということができ、この点で本件補正発明の「第2の接着剤層」に相当する。
イ 引用発明の「光及び熱硬化性樹脂組成物と導電性粒子」を合わせたものが、本件補正発明の「光硬化性組成物」に相当する。
ここで、本件補正発明の「光硬化性組成物の硬化物」について、本願明細書(【0025】)には以下の記載がある。
「(第1の接着剤層)
第1の接着剤層2は、光硬化性組成物の硬化物(光硬化物)からなる。光硬化性組成物は、(A)重合性化合物(以下、「(A)成分」ともいう。)、(B)光重合開始剤(以下、「(B)成分」ともいう。)、及び(C)導電粒子4(以下、「(C)成分」ともいう。)を含有する。(中略)第1の接着剤層2は、例えば、光硬化性組成物からなる層に対して光エネルギーを照射することで(A)成分を重合させ、光硬化性組成物を硬化させることで得られる。つまり、第1の接着剤層2は、導電粒子4と、光硬化性組成物の導電粒子4以外の成分を硬化させてなる接着剤成分5と、からなる。第1の接着剤層2は、光硬化性組成物を完全に硬化させた硬化物であってもよく、光硬化性組成物を部分的に硬化させた硬化物であってもよい。すなわち、接着剤成分5は、未反応の(A)成分及び(B)成分(略)を含有していてもよく、含有していなくてもよい。」
この記載からみて、本件補正発明の「光硬化性組成物の硬化物」は、「部分的に硬化させた硬化物」を含むものと解される。
そうすると、引用発明の「導電性粒子含有層は、光及び熱硬化性樹脂組成物と導電性粒子とを含み、導電性粒子含有層の厚み方向において、導電性粒子の存在する側から導電性粒子が存在しない側にかけて、硬化度が漸次低くなっており、硬化度の高い領域では、導電性粒子が絶縁層側の界面に単層配列した状態で固定され、導電性粒子含有層における導電性粒子が存在しない側は、硬化度が低い状態乃至未硬化状態であ」ることは、「導電性粒子含有層」が「光及び熱硬化性樹脂組成物と導電性粒子」を「部分的に硬化させた硬化物」であるといえるから、本件補正発明の「前記第1の接着剤層は光硬化性組成物の硬化物からな」ることに相当する。
ウ 引用発明の「絶縁層は、熱硬化樹脂を含む絶縁性樹脂組成物で形成され」ることは、本件補正発明の「前記第2の接着剤層は熱硬化性組成物からな」ることに相当する。
エ 引用発明の「硬化成分としての(メタ)アクリル系モノマー」、「導電性粒子」及び「光重合開始剤」は、それぞれ本件補正発明の「重合性化合物」、「導電粒子」及び「光重合開始剤」に相当する。そして、引用発明の「硬化成分としての(メタ)アクリル系モノマー」、「導電性粒子」及び「光重合開始剤」を合わせたものが、本件補正発明の「光硬化性組成物」に相当する。
オ 引用発明の「光及び熱硬化性樹脂組成物」に含まれる「硬化成分としての(メタ)アクリル系モノマー」は、「光重合開始剤」による「ラジカル重合反応」により硬化するものであるから、本件補正発明の「ラジカル重合性基を有するラジカル重合性化合物」に相当する。そして、引用発明の「ウレタンアクリレート」は、本件補正発明の「(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート化合物」に相当する。
そうすると、引用発明の「光及び熱硬化性樹脂組成物は、硬化成分としての(メタ)アクリル系モノマーを含み、該(メタ)アクリル系モノマーとしてウレタンアクリレートを選択したものであ」ることは、本件補正発明の「前記重合性化合物は、ラジカル重合性基を有するラジカル重合性化合物として、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含」むことに相当する。
カ 引用発明の「ICチップ、液晶ディスプレイ(LCD)における液晶パネル(LCDパネル)等の電子部品と基板を電気的かつ機械的に接続可能な異方性導電膜」は、後述の相違点を除き本件補正発明の「回路接続用接着剤フィルム」に相当する。
キ 上記ア~カを総合すると、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また相違する。
<一致点>
「第1の接着剤層と、該第1の接着剤層上に積層された第2の接着剤層と、を備え、
前記第1の接着剤層は光硬化性組成物の硬化物からなり、
前記第2の接着剤層は熱硬化性組成物からなり、
前記光硬化性組成物は、重合性化合物と、導電粒子と、光重合開始剤と、を含有し、
前記重合性化合物は、ラジカル重合性基を有するラジカル重合性化合物として、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含む、回路接続用接着剤フィルム。」
<相違点>
「光重合開始剤」について、本件補正発明では、「1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)及び2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オンからなる群より選択される少なくとも一種を含む」と特定されているのに対し、引用発明では、この特定がされていない点。
(4)判断
引用文献2には、上記(2)イ(イ)のとおり、「バインダー樹脂(接着剤)に導電性粒子が分散されてなる異方性導電フィルムにおいて、バインダー樹脂に、ラジカル重合性化合物としてのウレタンアクリレートと、ラジカル重合開始剤として市場で入手可能なエタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)を含めたものは、初期導通抵抗値(Ω)及び信頼性試験後における導通抵抗値(Ω)を測定した導通信頼性評価が5Ω以下(OK)であったこと。」(引用文献2記載事項)が記載されている。
そして、引用文献2記載事項における「ラジカル重合開始剤」としての「エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)」は、相違点に係る本件補正発明の「前記光重合開始剤は、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)及び2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オンからなる群より選択される少なくとも一種」における選択肢のうちの「エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)」に相当する。
そうすると、異方性導電膜の発明である引用発明において、周知の課題である初期導通抵抗値(Ω)及び信頼性試験後における導通抵抗値(Ω)を測定する導通信頼性評価を考慮すべく、硬化成分としてのウレタンアクリレートがラジカル重合反応するための光重合開始剤として、バインダー樹脂にラジカル重合性化合物としてのウレタンアクリレート、導電性粒子及び光重合開始剤を含む点で引用発明と共通する引用文献2記載事項に基づき、市場で入手可能な「エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)」を採用することで、相違点に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
また、本件補正発明が奏する効果は、引用発明と引用文献2記載事項が奏する効果から、当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別なものではない。
したがって、本件補正発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、その発明の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものである。
(5)請求人の主張について
請求人は、審判請求の理由(令和5年3月20日提出の手続補正書(方式)の特に(3-3)の項)において、「引用文献1に記載の発明と引用文献2に記載の発明とでは、光重合開始剤に求められる性能が全く異なりますので、引用発明2に「IRGACURE OXE02」を使用できることが記載されているというだけでは、引用文献2に接した当業者において、「IRGACURE OXE02」を引用文献1に記載された発明に適用しようという動機が生じるとはいえない」旨主張するが、上記(4)において検討したとおりであるから、請求人の主張は採用できない。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和5年2月1日にされた手続補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年7月11日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明については、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
<引用文献等一覧>
1.特開2009-16133号公報
2.特開2016-82070号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載及び引用発明は、前記第2の[理由]2(2)アに記載したとおりであり、同引用文献2の記載及び引用文献2記載事項は、同イに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明における「前記重合性化合物は、ラジカル重合性基を有するラジカル重合性化合物として、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含み」という事項から、下線部の「として、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート化合物」という限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由2]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-001749