2023-005047
弱アルカリ安定液
- 審判番号
- 2023-005047
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-128971外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年03月28日
- 審決日
- 2024年08月19日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】フマキラー株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人前田特許事務所
- 分類
- P18 .16 -Z (A01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条の2
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条の2、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第184条の13
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 13項目
第1 手続の経緯
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本願は、令和元年9月20日に出願された特願2019-171681号の一部を、令和2年7月22日に特願2020-124920号として、新たに特許出願し、さらにその一部を令和3年8月5日に新たな特許出願としたものであって、同年8月5日に上申書が提出され、令和4年7月11日付けで拒絶理由が通知され、同年9月2日に意見書及び手続補正書が提出され、令和5年1月5日付けで拒絶査定がされ、同年3月28日に拒絶査定不服審判請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 令和5年3月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年3月28日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
令和5年3月28日にされた手続補正(以下「本件補正」ともいう。)は、
(1)補正前の特許請求の範囲の請求項1の
「 pHが8以上10.5以下の弱アルカリ性で安定する弱アルカリ安定液であって、0.15質量%以上3.0質量%以下の柑橘類の種子エキスと、強アルカリと弱酸の塩とからなるpH調整剤とが水に溶解しており、ウイルスを不活化する弱アルカリ安定液。」
との記載(令和4年9月2日受付の手続補正書を参照。)を、下記(2)のとおり補正することを含むものである。
(2)本件補正後の特許請求の範囲の記載
「 pHが8以上10.5以下の弱アルカリ性で安定する弱アルカリ安定液であって、0.15質量%以上3.0質量%以下の柑橘類の種子エキスと、強アルカリと弱酸の塩とからなるpH調整剤とが水に溶解しており、ウイルスを不活化するための弱アルカリ安定液。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ウイルスを不活化する弱アルカリ安定液」を、「ウイルスを不活化するための弱アルカリ安定液」として、弱アルカリ安定液の用途を限定する補正を含み、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を包含する(その他、本件補正により、本願明細書中の特許請求の範囲の対応記載である【0009】の記載も同様の補正が行われている。)。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。
本件補正発明は、本願の原出願のさらに原出願の出願日である令和元年9月20日に出願された特許請求の範囲、明細書及び図面に記載された発明であるから、本件補正発明に係る本願の出願日は、令和元年9月20日であるとみなされる。
(2)原査定で引用された先願について
ア 原査定の拒絶の理由3.で引用された特願2020-506286号(国際公開第2020/174980号)(以下、「先願」という。)には、国内優先権主張(第1優先日:2019年2月26日、第2優先日:2019年7月30日)がされており、その国内優先権主張の基礎とする出願である特願2019-139338号(出願日(第2優先日):2019年7月30日)の願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲には、ウイルス不活性化剤組成物の請求項10~14と、実施例3のウイルス不活性化効果の確認試験と、表6及び7のウイルス不活性化剤のpHやウイルス感染価の測定結果が記載されているので(後記イで詳述する。)、先願の優先日は、第2優先日の2019年(令和元年)7月30日であると認める。
したがって、先願は、2019年(令和元年)7月30日を優先日とする国内優先権主張を伴う国際出願(PCT/JP2020/002958(特願2020-506286号)。国際出願日は2020年1月28日。)であり、上記優先日は、本願の出願日(2019年9月20日)より前である。また、当該国際出願の国際公開(国際公開第2020/174980号)の日は2020年9月3日であって、本願の出願日より後である。
さらに、先願に係る発明をした者と本願の発明者とは同一ではなく、また本願の出願時において、本願の出願人と先願の出願人とは同一ではない。
イ 先願明細書3の記載事項
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先願の優先権の主張の基礎とされ、同法第184条の15第2項の規定により読み替えて適用される同法第41条第3項の規定により、国際公開されたものとみなされる特願2019-139338号の願書に最初に添付した明細書及び請求の範囲(以下「先願明細書3」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア1)「技術分野
【0001】
本発明は、殺菌、ウイルス不活性化成分を水溶液中に配合して成る殺菌、ウイルス不活性化剤組成物、および殺菌、ウイルス不活性化剤組成物の殺菌、ウイルス不活性化効力増強方法に関する。」
(イ1)「発明が解決しようとする課題
【0010】
しかしながら、特許文献1のアルコール製剤は、エタノールを含有するため引火性やエタノールによる刺激性の問題があった。また、pHが2.5以上6.0以下と酸性であるため、 酸による刺激性の問題もあった。特許文献2の洗浄ならびに除菌用組成物は強アルカリ性であるため、アルカリによる刺激性の問題があった。
【0011】
また、特許文献3のウイルス不活性化剤は、銀系抗菌剤を含有するため、銀イオンによる樹脂の変色、着色という問題点があった。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑み、殺菌成分として次亜塩素酸やアルコールを含まず、ウイルス不活性化成分として銀系抗菌剤を含まない殺菌、ウイルス不活性化剤組成物、および殺菌、 ウイルス不活性化効力増強方法を提供することを目的とする。」
(ウ1)「【実施例1】
【0072】
[試験液の調製]
(A)グレープフルーツ種子抽出物(エービーシーテクノ社製)、(B)炭酸水素ナトリウム、クエン酸三ナトリウムニ水和物、安息香酸ナトリウム、炭酸ナトリウムー水和物、クエン酸三カリウムー水和物、酢酸ナトリウム、リン酸水素ニナトリウム(以上、和光純薬工業社製)、コハク酸ニナトリ ウム、ソルビン酸カリウム、亜硫酸ナトリウム(以上、ナカライテスク社製)・・・を表1、表2、表6に示す配合割合(質量%)で配合し、精製水を加えて100重量%として試験液(本発明1~38)を得た。」
(エ1)「【実施例3】
【0091】 [ウイルス不活性化効果の確認試験(Feline calicivirus)]
(試験ウイルス液の調製)
MEM培地(ナカライテスク社製)に牛胎仔血清を10%加えた細胞増殖培地を用いてCRFK細胞(JCRB細胞バンク)を組織培養シャーレ内に単層培養した。単層培養シャーレ内から細胞増殖培地を除去し、ネコカリシウイルス(Feline calicivirus F-9 ATCC VR-782)を接種した。 次に、MEM培地に牛胎仔血清を2%加えた細胞維持培地を加えて37±1℃の炭酸ガスインキュベーター(CO2濃度5%)内で1~5日間培養した。ネコカリシウイルスはノンエンべロープウイルスの一種であり、細胞培養できないノロウイルスの代替ウイルスとして広く使用されている。
【0092】
培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態を観察し、細胞に形態変化(細胞変性効果)が起こっていることを確認した。次に、培養液を1000rpm/分遠心分離し、得られた上澄み液を限外ろ過して試験ウイルス液とした。
【0093】
実施例1で調製した本発明27~38、比較例33~39の試験液0.9mLに、試験ウイルス液0.1mLを添加混合し、作用液とした。5分後に作用液をMEM培地で100倍希釈し、10倍希釈系列を作製した。なお、精製水に試験ウイルス液を添加したものを対照として同様の操作を行った。
【0094】
(ウイルス感染価の測定)
細胞増殖培地を用い、使用細胞を組織培養用マイクロプレート(96穴)内で単層培養した後、細胞増殖培地を除去して細胞維持培地を0.1mLずつ加えた。次に、作用液の10倍希釈系列0.1mLをそれぞれ4穴ずつに接種し、37±1℃の炭酸ガスインキュベーター(CO2濃度5%)内で4~7日間培養した。培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態変化(細胞変性効果)の有無を観察し、Reed-Muench法により50%細胞培養感染量(TCID50)を算出して作用液1mL当たりの感染価に換算し、対照とした精製水の感染価と比較して、感染価対数減少値を算出した。ウイルス感染価の測定結果を試験液の配合、pHと併せて表6、表7に示す。
【0095】
【表6】
[図:0001415871000001.jpg]
【0096】
【表7】
[図:0001415871000002.jpg]
【0097】
表6に示すように、(A)グレープフルーツ種子抽出物と、(B)炭酸水素ナトリウム、 クエン酸三ナトリウムニ水和物、クエン酸三カリウムー水和物のいずれかとを配合した本発明27~38では、ネコカリシウイルス・・・に対して感染価対数減少値が1以上となり、ウイルス不活性化効果を有することが確認された。」
上記(ア1)の記載は、2019年(令和元年)7月30日を優先日と認定した先願の国際公開第2020/174980号の明細書の段落[0001]に、上記(イ1)の記載は、当該国際公開の明細書の段落[0010][0011][0012]に、上記(ウ1)の記載は、当該国際公開の明細書の段落[0072]に、上記(エ1)の記載は、当該国際公開の明細書の段落[0086]~[0092]に、それぞれ記載され、国際公開されている。
(3)先願明細書3に記載された発明について
先願明細書3は、ウイルス不活性化成分を水溶液中に配合して成るウイルス不活性化剤組成物に関するものである(摘記(ア1))。
そして、摘記(ウ1)の[表6]には、本発明27、28、29、30のウイルス不活化剤として、それぞれ、
グレープフルーツ種子抽出物を、0.5質量%、0.2質量%、0.5質量%、0.2質量%、炭酸水素Naを、0.5質量%、0.2質量%、0.1質量%、0.1質量%、精製水が残部であって、pHが、8.51、8.42、8.33、8.40であることが示されている。
そうすると、先願明細書3には、次の発明(以下、「引用発明3-1」、「引用発明3-2」、「引用発明3-3」及び「引用発明3-4」という。)が記載されていると認められる。
(4)本件補正発明と引用発明の対比
ア 本件補正発明と引用発明3-1とを対比する。
まず、引用発明3-1の「グレープフルーツ種子抽出物0.5質量%」は、本件補正発明の「0.15質量%以上3.0質量%以下の柑橘類の種子エキス」に相当する。
そして、引用発明3-1の「炭酸水素Na」は、強アルカリと弱酸の塩であり、炭酸水素ナトリウムは緩衝剤であることは技術常識であるから(第十五改正 日本薬局方解説書 医薬品各条【た行】~【わ行】、2006年、東京 廣川書店、C-2376~C-2380、炭酸水素ナトリウムの本質の項目参照)、本願明細書【0036】や【0043】の記載も考慮すれば、一定のpH調整機能を有することは明らかであるから、本件補正発明の「強アルカリと弱酸の塩とからなるpH調整剤」に相当するといえる。
さらに、引用発明3-1の「精製水」は、本件補正発明の「水」に相当する。
そして、引用発明3-1の「pH8.51のウイルス不活化剤」は、pH8.51であるから弱アルカリ液であるといえるので、本件補正発明の「pHが8以上10.5以下の弱アルカリ性で安定する弱アルカリ安定液であって、」「ウイルスを不活化するための弱アルカリ安定液」と、「pHが8以上10.5以下の」「弱アルカリ」「液であって、」「ウイルスを不活化するための弱アルカリ」「液」である点で共通する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明3-1とは、
「pHが8以上10.5以下の弱アルカリ液であって、0.15質量%以上3.0質量%以下の柑橘類の種子エキスと、強アルカリと弱酸の塩とからなるpH調整剤とが水に溶解しており、ウイルスを不活化するための弱アルカリ液。」
である点で一致し、以下の点で一応相違している。
ウ 相違点1の判断
以下、相違点1について検討する。
(ア)本件補正発明における「弱アルカリ性で安定する」「安定液」との特定は、柑橘類の種子エキスと、強アルカリと弱酸の塩とからなるpH調整剤とが水に溶解しているウイルスを不活化するための弱アルカリ液がある程度のpH範囲で安定している性質を表しているにすぎないので、本件補正発明の「弱アルカリ性で安定する」「安定液」は、引用発明3-1のpH8.51のウイルス不活化剤と相違するところはない。
したがって、相違点1は、実質的な相違点とはいえない。
(イ)上記(ア)のとおり、相違点1は、実質的な相違点ではないが、仮に相違点1を実質的な相違点であるとして念のため検討しておく。
本件補正発明において、「安定する」及び「安定液」の意味は、本願明細書【0036】に「pH調整剤として強アルカリと弱酸の塩を用いることにより、緩衝液にすることなく、アルカリ電解水でpH調整した場合と比べてpHの経時的安定性を高めることができる。強アルカリと弱酸の塩を用いた場合、緩衝液のように一定のpHに安定するわけではないが、弱酸は水中でOH-イオンを供給する平衡が生じるため、空気中の二酸化炭素が溶け込んでもpHが変動しにくい。」との記載があるように(下線は、当審合議体による。以下同じ。)、緩衝液のように一定のpHになるのではなく、pHの変動が少ないという程度のものであるところ、引用発明3-1は、緩衝剤として機能することが技術常識である炭酸水素ナトリウムを含有させているのであるから、何らかのpHの安定化作用の生じることは明らかである。
したがって、引用発明3-1において、「弱アルカリ液」を「弱アルカリ性で安定する」及び「安定液」との特定事項を有するように規定することは、周知慣用技術の付加にすぎず、緩衝剤としても作用する成分を含有するウイルスを不活化するための特定pHの弱アルカリ液の提供という課題解決のための具体化手段においては、微差にすぎない。
(ウ)本件補正発明と引用発明3-2又は引用発明3-3又は引用発明3-4の対比・判断においても、引用発明3-2又は引用発明3-3又は引用発明3-4のいずれの発明も、本件補正発明のpHが8以上10.5以下の弱アルカリ性で、0.15質量%以上3.0質量%以下の柑橘類の種子エキスを含有するウイルス不活化剤であるから、引用発明3-1との対比・判断と同様に、実質的な相違点はないか、又は仮に実質的な相違点が存在しても、周知慣用技術の付加に過ぎず、課題解決のための具体化手段における微差にすぎない。
(エ)以上のとおり、本件補正発明は、引用発明3-1~引用発明3-4と同一である。
(オ)審判請求人の主張について
a 審判請求人は、意見書2~3頁において、先願明細書3記載の炭酸水素ナトリウムが不活化効力増強成分として添加されている点で、本件補正発明と大きく異なる旨の主張をしているが、上述のとおり、炭酸水素ナトリウムが緩衝剤としても作用することは技術常識であるし、組成物において各成分がどのような意図で添加しているかは発明の同一性に影響を及ぼすものではなく、本件補正発明と引用発明3-1~3-4とは、同一成分組成の同一用途の組成物であるから、全体として異なる発明として認識されるということはない。
したがって、上記審判請求人の主張を採用することはできない。
b また、審判請求人は、意見書2~3頁及び審判請求書8頁において、本件補正発明においては、弱アルカリが3週間の長期間に亘って安定するものであって、先願明細書3記載の発明と同一でない旨主張をしている。
しかしながら、本願明細書に記載されるとおり、本願発明の効果は、空気中の二酸化炭素(炭酸ガス)がアルカリ性の抗ウイルス液にゆっくりと溶解することによってpHが酸性側にしだいに変化するという問題に対して、pHの変化が、アルカリ電解水の場合に比べて、炭酸水素ナトリウムを用いた場合に少ないという程度の効果であって(本願明細書【0049】及び【0051】には、アルカリ電解水の場合にpHが10.0から3週間後に、8.2程度になったのに対して、実施例1では、8.3程度から3週間後に8.0程度になったと記載されている。)、緩衝剤として用いられることが技術常識である炭酸水素ナトリウムを含有させた場合に、一定のpHの変化抑制ができ3週間程度pHの変化量が少ないという程度の効果が奏されることは、引用発明3-1~引用発明3-4も当然有する効果であり、当然予測される効果にすぎない。
したがって、上記審判請求人の主張も採用できない。
エ したがって、本件補正発明は、先願明細書3に記載された発明と同一であり、先願に係る発明をした者と本願の発明者とは同一ではなく、本願の出願時において、本願の出願人と先願の出願人とは同一ではないので、特許法29条の2規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するので、同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和4年9月2日受付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりである(前記第2[理由]1(1)を再掲)。
「 【請求項1】pHが8以上10.5以下の弱アルカリ性で安定する弱アルカリ安定液であって、0.15質量%以上3.0質量%以下の柑橘類の種子エキスと、強アルカリと弱酸の塩とからなるpH調整剤とが水に溶解しており、ウイルスを不活化する弱アルカリ安定液。」
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、令和4年7月11日付け拒絶理由通知書において下記のとおり通知された以下のものを含むと認める。
「1.・・・2.・・・3.(拡大先願)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた下記の日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)。続きを表示(全14行)記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)・・・●理由3について・請求項1・引用文献等3・備考・・・<引用文献等一覧>・・・3.特願2020-506286号(国際公開第2020/174980号)」
そして、拒絶査定において、以下のとおり理由が示されている。
「この出願については、令和4年7月11日付け拒絶理由通知書に記載した理由1~3によって、拒絶をすべきものです。・・・備考・・・続きを表示(全11行)●理由3(特許法29条の2)について・請求項1・引用文献等3・・・<引用文献等一覧>・・・3.特願2020-506286号(国際公開第2020/174980号)」
3 当審合議体の判断
当審合議体は、原査定の拒絶の理由のとおり、本願発明は、その出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許要件の特例として定めた特許法第184条の13を参照すると、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないと考える。
理由は、以下のとおりである。
4 先願明細書3の記載事項
(1)先願明細書3
原査定で引用された先願(国内優先権主張を伴う特願2020-506286号(国際公開2020/174980号))に係る先願明細書3には、前記第2 2(2)イのとおりの記載がある。
5 引用発明
先願明細書3には、それぞれ、前記第2 2(3)のとおり、引用発明3-1~引用発明3-4が記載されていると認定できる。
6 対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]2で検討した本件補正発明の「ウイルスを不活化するための弱アルカリ安定液」のとの用途を限定する特定事項について、「ウイルスを不活化する弱アルカリ安定液」という「弱アルカリ安定液」の「ウイルスを不活化する」という性質を特定事項とした以外は、本件補正発明と同じ特定事項からなるものである。そして、本件補正発明が、前記第2[理由]2に記載したとおり、先願明細書3に記載された発明と同一であるから、「弱アルカリ安定液」の「ウイルスを不活化する」という性質を特定したにすぎない本願発明も、先願明細書3に記載された発明と同一である。
第4 むすび
請求項1に係る発明は、国内優先権主張を伴い、本願の出願の日前の日本語特許出願であるとみなされ、本願の出願後に国際公開がされた特願2020-506286号(国際出願番号:PCT/JP2020/002958)の国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本願の出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
以上のとおり、本願発明は、特許法29条の2の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-005047