2023-004750
データ構造
- 審判番号
- 2023-004750
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-185907外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年03月22日
- 審決日
- 2024年04月16日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .1 -Z (G05B) / P18 .56 -Z (G05B) / P18 .575-Z (G05B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第2条第1項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第2条第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 10項目
第1 手続の経緯
本件審判に係る出願は、平成30年9月28日にされた特許出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
同年 8月25日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 令和5年3月22日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年3月22日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1については、以下の(1)本件補正前の請求項1(すなわち、令和4年8月25日に提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1)を、以下の(2)本件補正後の請求項1に補正するものである(下線部は、本件補正により記載を変更した個所として請求人が付したものである。)。
(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】受信部および変換部を備えるコンピュータにより実現される情報処理装置に用いられ、前記受信部が受信した生産設備の状態を示す状態データを記憶するデータレイクのデータ構造であって、前記状態データの情報種別を示す情報と、当該状態データの前記データ構造のバージョンを示す情報とを含むキー情報を格納する第1領域と、続きを表示(全14行)前記状態データに含まれる測定データを格納する第2領域と、を備え、前記測定データは、複数の異なる事象を示す情報を含むことができ、前記測定データは、前記事象毎に、異なるデータ項目、および当該データ項目の値を含むことができ、前記第2領域に構造化用の言語を用いて記述され、前記データレイクの前記データ構造は、前記受信部が、受信した前記状態データの前記キー情報を前記データレイクの前記第1領域に、当該状態データの前記測定データを前記第2領域に、それぞれ記憶させる処理、前記変換部が、前記データレイクの前記第1領域から読み出した前記キー情報に対応する処理内容であって、前記第2領域に格納されている前記測定データに施す処理内容を特定する処理、に用いられる、データ構造。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】受信部および変換部を備えるコンピュータにより実現される情報処理装置に用いられ、前記受信部が受信した生産設備の状態を示す状態データを記憶するデータレイクのデータ構造であって、前記状態データの情報種別を示す情報と、当該状態データの前記データ構造のバージョンを示す情報とを含むキー情報を格納する第1領域と、続きを表示(全15行)前記状態データに含まれる測定データを格納する第2領域と、を備え、前記測定データは、複数の異なる事象を示す情報を含むことができ、前記測定データは、前記事象毎に、異なるデータ項目、および当該データ項目の値を含むことができ、前記第2領域に構造化用の言語を用いて記述され、前記データレイクの前記データ構造は、前記受信部が、受信した前記状態データの前記キー情報を前記データレイクの前記第1領域に、当該状態データの前記測定データを前記第2領域に、それぞれ記憶させる処理、前記変換部が、前記データレイクの前記第1領域から読み出した前記キー情報に対応する処理内容であって、前記第2領域に格納されている前記測定データに施す処理内容を特定する処理、特定された前記処理内容を用いて前記測定データのデータ加工を行う処理、に用いられる、データ構造。」
2 本件補正の適否
(1)補正の目的について
特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、本件補正前の請求項1における「前記変換部」にて行われる処理に関して、「処理内容を特定する処理」であることに加え、その「特定された処理内容を用いて測定データのデータ加工を行う処理」であるとの限定を付加するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載されたデータ構造と、本件補正後の請求項1に記載されるデータ構造とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる、いわゆる「特許請求の範囲の限定的減縮」を目的とするものに該当する。
(2)独立特許要件について
本件補正は、上記(1)のとおり、特許法第17条の2第5項第2号を目的とするものであるから、本件補正後の請求項1に記載されるデータ構造(以下「補正後データ構造」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
<発明該当性について(特許法第29条第1項柱書)>
ア 請求項1に特定される補正後データ構造
補正後データ構造は、上記1(2)のとおり、令和5年3月22日に提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである(なお、符号(A1)~(D2)は、請求項1を分説するために当審にて付したものであり、以下、「構成A1」~「構成D2」等と称する。)。
「(A1)受信部および変換部を備えるコンピュータにより実現される情報処理装置に用いられ、(A2)前記受信部が受信した生産設備の状態を示す状態データを記憶する(A)データレイクのデータ構造であって、(B1)前記状態データの情報種別を示す情報と、当該状態データの前記データ構造のバージョンを示す情報とを含むキー情報を格納する第1領域と、続きを表示(全16行)(B2)前記状態データに含まれる測定データを格納する第2領域と、(B)を備え、(B21)前記測定データは、複数の異なる事象を示す情報を含むことができ、(B22)前記測定データは、前記事象毎に、異なるデータ項目、および当該データ項目の値を含むことができ、(B23)前記第2領域に構造化用の言語を用いて記述され、(A)前記データレイクの前記データ構造は、(C)前記受信部が、(C1)受信した前記状態データの前記キー情報を前記データレイクの前記第1領域に、当該状態データの前記測定データを前記第2領域に、それぞれ記憶させる処理、(D)前記変換部が、(D1)前記データレイクの前記第1領域から読み出した前記キー情報に対応する処理内容であって、前記第2領域に格納されている前記測定データに施す処理内容を特定する処理、(D2)特定された前記処理内容を用いて前記測定データのデータ加工を行う処理、(A1)に用いられる、データ構造。」
イ 補正後データ構造の、情報処理に関連するデータ要素
上記アから、補正後データ構造は、次の(ア)及び(イ)の構成を有する。
(ア)「補正後データ構造」は、「受信部および変換部を備えるコンピュータにより実現される情報処理装置に用いられ」(構成A1)、「前記受信部が受信した生産設備の状態を示す状態データを記憶する」(構成A2)、「データレイクのデータ構造」である(構成A)。
(イ)「補正後データ構造」は、「前記状態データの情報種別を示す情報と、当該状態データの前記データ構造のバージョンを示す情報とを含むキー情報を格納する第1領域」(構成B1)と、「前記状態データに含まれる測定データを格納する第2領域」(構成B2)とを備える(構成B)。また、「第2領域」に格納される「測定データ」は、「複数の異なる事象を示す情報を含む」(構成B21)ことができ、「前記事象毎に、異なるデータ項目、および当該データ項目の値を含む」(構成B22)ことができ、「前記第2領域に構造化用の言語を用いて記述され」る(構成B23)。
すなわち、「補正後データ構造」に記憶される「生産設備の状態を示す状態データ」は、「第1領域」に格納される「状態データの情報種別を示す情報」及び「当該状態データの前記データ構造のバージョンを示す情報」を含む「キー情報」、並びに、「第2領域」に構造化用の言語を用いて記述されることで格納され、複数の異なる「事象を示す情報」であって、前記事象毎に異なる「データ項目」及び「当該データ項目の値」を含む「測定データ」を、データ要素として含むものである。
ウ 補正後データ構造に関連する、コンピュータにより実現される情報処理装置による処理
また、上記アから、補正後データ構造は、受信部および変換部を備えるコンピュータにより実現される情報処理装置による、次の(ア)及び(イ)の処理に用いられるものである。
(ア)「受信部」による、「受信した前記状態データの前記キー情報を前記データレイクの前記第1領域に、当該状態データの前記測定データを前記第2領域に、それぞれ記憶させる処理」(構成C、C1)。
(イ)「変換部」による、「前記データレイクの前記第1領域から読み出した前記キー情報に対応する処理内容であって、前記第2領域に格納されている前記測定データに施す処理内容を特定する処理」、及び「特定された前記処理内容を用いて前記測定データのデータ加工を行う処理」(構成D、D1、D2)。
すなわち、補正後データ構造が関連し「コンピュータ」が実行する情報処理は、次のc1、d1及びd2のとおりである。
c1 記憶させる処理
受信部により受信した状態データのキー情報をデータレイクの第1領域に、状態データの測定データを第2領域に、それぞれ記憶すること。
d1 処理内容を特定する処理
データレイクの第1領域から読み出したキー情報に対応する、第2領域に格納されている測定データに施す処理内容を特定すること。
d2 データ加工を行う処理
特定された処理内容を用いて測定データのデータ加工を行うこと。
エ 補正後データ構造が特許法上の「発明」に該当するかの判断
以下の理由により、補正後データ構造は、特許法上の「発明」に該当するものであるとはいえない。
(ア)「データ構造」が特許法上の「発明」に該当するかについての判断は、まず、「データ構造」が特許法第2条第4項に規定された「プログラムに準ずるもの」に該当するか否かによりなされる(審査ハンドブック付属書B 第1章コンピュータソフトウエア関連発明 2.特許要件 2.1発明該当性(第29条第1項柱書) 2.1.2「構造を有するデータ」及び「データ構造」の取扱い (1)、第24ページ)。ここで、「プログラムに準ずるもの」とは、コンピュータに対する直接の指令ではないためプログラムとは呼べないが、コンピュータの処理を規定するものという点でプログラムに類似する性質を有するものをいい(審査ハンドブック付属書B 第1章 “本書において用いられる用語の説明”(vii)、第2ページ)、「データ構造」が「プログラムに準ずるもの」でない場合には、そもそも特許法上の「発明」に該当するとは判断されない(特許法第2条第1項、第3項第1号及び第4項、並びに、審査ハンドブック付属書B 第1章 事例2-8)。
(イ)上記(ア)の考え方に基づいて、本件の補正後データ構造がプログラムに準ずるものといえるかについて検討すると、本件の補正後データ構造は、上記イのとおり、「状態データの情報種別を示す情報」及び「当該状態データの前記データ構造のバージョンを示す情報」を含む「キー情報」、並びに、複数の異なる「事象を示す情報」であって「前記事象毎に、異なるデータ項目、および当該データ項目の値を含む」「測定データ」という、生産設備の状態を示す状態データのデータ要素の内容を定義したものを単に「データ構造」と称しているに過ぎない。
(ウ)また、本件の補正後データ構造が関連し「コンピュータ」が実行する情報処理は、上記ウのc1、d1及びd2のとおりである。
そして、上記c1の処理は、コンピュータの受信部が、状態データを受信した際に、状態データに含まれる、状態データのキー情報をデータレイクの第1領域に、状態データの測定データをデータレイクの第2領域に、それぞれ記憶するものであって、「状態データ」に関する「キー情報」と「測定データ」とが、補正後データ構造に、一般的な機能を有するコンピュータにより記憶されるという程度の特定にすぎない。
また、上記d1の処理は、コンピュータの変換部が、データレイクの第1領域からキー情報を読み出し、読み出したキー情報に対応して、第2領域に格納されている測定データに施す処理内容を特定するものである。すなわち、コンピュータの処理を規定するために、補正後データ構造のデータ要素である「キー情報」を用いるものである、とはいえる。しかしながら、「キー情報」自体が、コンピュータの処理を規定するのではなく、上記ウ(イ)に示したように、コンピュータの処理は、コンピュータが備える「変換部」が「キー情報」を参照して処理内容を特定する(構成A1及び構成D1)のであって、補正後データ構造が、一般的な機能を有するコンピュータに参照されるという程度の特定にすぎない。
さらに、上記d2の処理は、コンピュータの変換部が、特定された処理内容を用いて測定データのデータ加工を行うものであって、補正後データ構造のデータ要素である「測定データ」を対象としてデータ加工を行うものであるものの、上記ウ(イ)に示したように、コンピュータの処理は、コンピュータが備える「変換部」が特定された処理内容を用いて処理する(構成A1及び構成D2)のであって、補正後データ構造が、コンピュータの処理を規定しているとはいえない。
(エ)以上のことから、補正後データ構造に含まれる、情報処理に関連するデータ要素である「キー情報」及び「測定データ」は、コンピュータの処理により記憶され、参照され、データ加工される対象となるデータ内容を単に特定しているに過ぎず、それ自体では、コンピュータに対する指令が一の結果を得るように組み合わされたプログラムに類似する性質を有しているとはいえず、すなわち、電子計算機による処理を規定するものであるとはいえない。
したがって、「補正後データ構造」は、特許法第2条第4項に規定された「プログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう)その他電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるもの」ということはできず、「人為的な取決め」を記載したに止まるものであって、「自然法則を利用した技術的思想の創作」(特許法第2条第1項)ではなく、特許法第29条第1項柱書に規定される「発明」には該当しない。
オ 請求人による審判請求書での主張について
(ア)請求人は、令和5年3月22日に提出の審判請求書において、次の点を主張する。
「(3.3)理由1(発明該当性)について補正後のデータ構造によれば、「キー情報」と「測定データ」とが、当該データ構造のデータレイクに記憶、管理されるだけでなく、情報処理装置の変換部が、当該データ構造を「特定された前記処理内容を用いて前記測定データのデータ加工を行う処理」に用いることが明確になりました。よって、補正後のデータ構造は、プログラムに類似する性質を有しており、コンピュータの情報処理を規定しているものとなり、人為的な取り決めに留まらないものとなりました。以上により、補正後の請求項1から4に記載された本願発明は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するものと思料致します。」
(イ)しかしながら、上記エにおいて検討したように、「補正後データ構造」は、「キー情報」と「測定データ」とをデータ要素として含み、コンピュータの情報処理は、コンピュータが備える「変換部」が、「キー情報」を参照して処理内容を特定し(構成D1)、特定された処理内容を用いて「測定データ」のデータ加工を行うものであるものの、補正後データ構造自体は、変換部を備えるコンピュータに用いられているという程度の特定にすぎない。そのため、補正後データ構造自体がコンピュータに対する指令が一の結果を得るように組み合わされたプログラムに類似する性質を有し「プログラムに準ずるもの」である、ということができないから、上記請求人の主張は、採用することができない。
カ 独立特許要件に関するまとめ
上記エのとおり、本件の補正後データ構造は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであることから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しているものである。
3 補正の却下の決定の[理由]のむすび
よって、本件補正は、上記2(2)のとおり、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しているものと認められるので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本件データ構造について
1 本件データ構造の認定
令和5年3月22日にされた手続補正は、上記第2のとおり却下されたので、本件の請求項1~4に係るデータ構造は、令和4年8月25日に提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載されたものであるところ、その請求項1に係るデータ構造(以下「本件データ構造」という。)は、前記第2[理由]1(1)の【請求項1】に記載されたものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定による拒絶の理由は、本件データ構造は、プログラムに類似する性質を有しておらず、また、プログラムに準ずるものでもないから、全体として人為的な取り決めに止まるものであり、「自然法則を利用した技術的思想の創作」とはいえず、特許法第29条第1項柱書に規定される「発明」には該当しない、というものである。
3 判断
本件データ構造は、上記第2の[理由]2(2)エで検討した補正後データ構造から、「(D2)特定された前記処理内容を用いて前記測定データのデータ加工を行う処理、」との限定事項を削除したものである。
そうすると、補正後データ構造が、上記第2の[理由]2(2)エに記載したとおり、「プログラムに準ずるもの」ということはできず、「人為的な取決め」を記載したに止まるものであって、「自然法則を利用した技術的思想の創作」(特許法第2条第1項)ではなく、特許法第29条第1項柱書に規定される「発明」には該当しないことから、補正後データ構造から構成D2を削除した本件データ構造についても同様に、「プログラムに準ずるもの」ということはできず、「人為的な取決め」を記載したに止まるものであって、「自然法則を利用した技術的思想の創作」(特許法第2条第1項)であるとはいえない。
よって、本件データ構造は、原査定の理由のとおり、特許法第29条第1項柱書に規定される「発明」には該当しない。
第4 むすび
以上のとおり、請求項1に係る本件データ構造は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができないものであることから、他の請求項に係るデータ構造について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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