特許拒絶査定不服審判
2023-003830
更新システム、車両システム、及び更新管理装置
- 審判番号
- 2023-003830
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-116214外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年03月06日
- 審決日
- 2024年06月18日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】トヨタ自動車株式会社
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 分類
- P18 .121-Z (B60R)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-116214「更新システム、車両システム、及び更新管理装置」拒絶査定不服審判事件〔令和3年10月28日出願公開、特開2021-169308〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年11月6日に出願した特願2017-214241号(以下「原出願」という。)の一部を令和3年7月14日に新たな特許出願としたものであって、同日に上申書が提出され、令和4年6月17日付け(発送日:同年6月21日)で拒絶理由が通知され、同年8月5日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、同年11月29日付け(発送日:同年12月6日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して、令和5年3月6日に本件拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされた。
第2 令和5年3月6日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年3月6日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された((2)における下線部分を削除したものである。)。
「【請求項1】
所定の制御を実現するためのプログラムの更新を管理する更新管理装置と、前記プログラムを実行する複数の電子制御装置を含む更新システムであって、
前記複数の電子制御装置のうち、1つ以上の電子制御装置は、
1つ以上の更新前のプログラムと、前記更新管理装置が取得した更新データに基づく1つ以上の更新後のプログラムとを記憶する記憶部と、
自装置が実行する1つ以上の対象プログラムを、前記1つ以上の更新前のプログラムから前記1つ以上の更新後のプログラムに切り替える第1の切替処理と、前記更新管理装置から第2の切替処理の実行が要求された場合に、自装置が実行する前記1つ以上の対象プログラムを、前記1つ以上の更新後のプログラムから前記1つ以上の更新前のプログラムに切り替える前記第2の切替処理とを実行する切替部と、を備え、
前記更新管理装置は、
前記1つ以上の電子制御装置のうち少なくとも1つの電子制御装置の前記切替部が、1つ以上の更新後のプログラムへの切り替えに失敗した場合に、前記1つ以上の電子制御装置のうち、前記1つ以上の対象プログラムを前記1つ以上の更新前のプログラムから前記1つ以上の更新後のプログラムに切り替えた電子制御装置に、前記第2の切替処理の実行を要求する要求部を備える、
更新システム。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
所定の制御を実現するためのプログラムの更新を管理する更新管理装置と、前記プログラムを実行する複数の電子制御装置を含む更新システムであって、
前記複数の電子制御装置のうち、1つ以上の電子制御装置は、
1つ以上の更新前のプログラムと、前記更新管理装置が取得した更新データに基づく1つ以上の更新後のプログラムとを記憶する記憶部と、
自装置が実行する1つ以上の対象プログラムを、前記1つ以上の更新前のプログラムから前記1つ以上の更新後のプログラムに切り替える第1の切替処理と、前記更新管理装置から第2の切替処理の実行が要求された場合に、自装置が実行する前記1つ以上の対象プログラムを、前記1つ以上の更新後のプログラムから前記1つ以上の更新前のプログラムに切り替える前記第2の切替処理とを実行する切替部と、を備え、
前記更新管理装置は、
前記1つ以上の電子制御装置のうち少なくとも1つの電子制御装置の前記記憶部が、1つ以上の更新後のプログラムの少なくとも一部の記憶に失敗した場合、または、前記1つ以上の電子制御装置のうち少なくとも1つの電子制御装置の前記切替部が、1つ以上の更新後のプログラムへの切り替えに失敗した場合に、前記1つ以上の電子制御装置のうち、前記1つ以上の対象プログラムを前記1つ以上の更新前のプログラムから前記1つ以上の更新後のプログラムに切り替えた電子制御装置に、前記第2の切替処理の実行を要求する要求部を備える、
更新システム。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記1つ以上の電子制御装置のうち少なくとも1つの電子制御装置の前記記憶部が、1つ以上の更新後のプログラムの少なくとも一部の記憶に失敗した場合、または、前記1つ以上の電子制御装置のうち少なくとも1つの電子制御装置の前記切替部が、1つ以上の更新後のプログラムへの切り替えに失敗した場合に、」との記載事項を、「前記1つ以上の電子制御装置のうち少なくとも1つの電子制御装置の前記切替部が、1つ以上の更新後のプログラムへの切り替えに失敗した場合に、」との記載事項に限定したものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではないから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項、引用発明
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の原出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開2017-157004号公報(平成29年9月7日出願公開、以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。
(ア)「【請求項1】
車両に搭載された複数の制御装置と、複数の前記制御装置と車内通信可能に接続されたゲートウェイと、を含むプログラム更新システムであって、
前記ゲートウェイは、
複数の前記制御装置に対する更新プログラムを記憶する記憶部と、
記憶された複数の前記更新プログラムを対応する前記制御装置にそれぞれ送信する車内通信部と、
同時更新の必要性があるすべての前記制御装置が前記更新プログラムを用いた制御プログラムの更新を完了するまで、当該制御装置に制御プログラムの更新を継続させる、更新継続処理を実行する処理部と、を備えるプログラム更新システム。
【請求項2】
複数の前記制御装置は、前記制御プログラムの動作領域が複数存在する記憶装置を有する複数領域タイプであり、
前記更新継続処理は、いずれかの前記制御装置において途中で更新が中断した場合に、中断した当該制御装置に中断点から更新を再開させる更新復帰処理、或いは、すべての前記制御装置を更新前の旧バージョンに戻すロールバック処理である請求項1に記載のプログラム更新システム。」
(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム更新システム、プログラム更新方法及びコンピュータプログラムに関する。具体的には、本発明は、複数の制御装置に対する制御プログラムの同時更新を適切に行うための技術に関する。」
(ウ)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
管理サーバから受信した更新プログラムを用いて、ECUが制御プログラムを更新する最中に、電源失陥やファイル欠損などの何らかの障害が発生することがある。この場合、ECUが旧バーションへの復元が可能ならば、障害がなくなった後に新バーションの制御プログラムの書き込みを最初からやり直すようにすればよい。しかし、車両に搭載された複数のECUの制御プログラムを同時に更新する場合には、1つECUの書き込み中に障害が生じた時に、他のECUが既に新バーションへの更新を完了している場合がある。
【0007】
この場合、障害が生じたECUが旧バージョンで動作すると、旧バーションで動作するECUと新バーションで動作するECUが混在し、新旧バーションの制御プログラムの相性問題などによりECUが動作不良に陥る可能性がある。本発明は、かかる従来の問題点に鑑み、複数の制御装置の制御プログラムを同時に更新する場合に、制御装置に動作不良が生じる事態を未然に防止することができる、プログラム更新システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明の一態様に係るシステムは、車両に搭載された複数の制御装置と、複数の前記制御装置と車内通信可能に接続されたゲートウェイと、を含むプログラム更新システムであって、前記ゲートウェイは、複数の前記制御装置に対する更新プログラムを記憶する記憶部と、記憶された複数の前記更新プログラムを対応する前記制御装置にそれぞれ送信する車内通信部と、同時更新の必要性があるすべての前記制御装置が前記更新プログラムを用いた制御プログラムの更新を完了するまで、当該制御装置に制御プログラムの更新を継続させる、更新継続処理を実行する処理部と、を備える。」
(エ)「【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の制御装置の制御プログラムを同時に更新する場合に、制御装置に動作不良が生じる事態を未然に防止することができる。」
(オ)「【0013】
<本発明の実施形態の概要>
以下、本発明の実施形態の概要を列記して説明する。
(1) 本実施形態のプログラム更新システムは、車両に搭載された複数の制御装置と、複数の前記制御装置と車内通信可能に接続されたゲートウェイと、を含むプログラム更新システムであって、前記ゲートウェイは、複数の前記制御装置に対する更新プログラムを記憶する記憶部と、記憶された複数の前記更新プログラムを対応する前記制御装置にそれぞれ送信する車内通信部と、同時更新の必要性があるすべての前記制御装置が前記更新プログラムを用いた制御プログラムの更新を完了するまで、当該制御装置に制御プログラムの更新を継続させる、更新継続処理を実行する処理部と、を備える。
【0014】
本実施形態のプログラム更新システムによれば、ゲートウェイの処理部が、同時更新の必要性があるすべての制御装置が更新プログラムを用いた制御プログラムの更新を完了するまで、当該制御装置に制御プログラムの更新を継続させる、更新継続処理を実行するので、旧バーションで動作する制御装置と新バーションで動作する制御装置が混在しない。このため、複数の制御装置の制御プログラムを同時に更新する場合に、制御装置に動作不良が生じる事態を未然に防止することができる。
【0015】
(2) 本実施形態のプログラム更新システムにおいて、複数の前記制御装置が、前記制御プログラムの動作領域が複数存在する記憶装置を有する複数領域タイプである場合には、前記更新継続処理として、いずれかの前記制御装置において途中で更新が中断した場合に、中断した当該制御装置に中断点から更新を再開させる更新復帰処理を採用すればよい。また、旧バージョンを他領域にバックアップとして確保しているため、リプロ対象のECUを一斉に復帰させる(「ロールバック」という)こともできる。
【0016】
本実施形態のプログラム更新システムではこの場合、基本的に中断点から再開させるが、場合によっては、すぐに車両を動かす必要がある事態が生じる。ゲートウェイの処理部が上記のロールバック処理を実行すると、短時間で復帰できる。いずれも旧バーションで動作する制御装置と新バーションで動作する制御装置が混在しない。このため、複数の制御装置の制御プログラムを同時に更新する場合に、制御装置に動作不良が生じる事態を未然に防止することができる。」
(カ)「【0024】
〔システムの全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係るプログラム更新システムの全体構成図である。図1に示すように、本実施形態のプログラム更新システムは、広域通信網2を介して通信可能な車両1、管理サーバ5及びDL(ダウンロード)サーバ6を含む。」
(キ)「【0025】
車両1には、ゲートウェイ10及び複数のECU30と、各ECU30によりそれぞれ制御される各種の車載機器(図示せず)が搭載されている。車両1には、共通の車内通信線にバス接続された複数のECU30による通信グループが存在し、ゲートウェイ10は、通信グループ間の通信を中継している。このため、ゲートウェイ10には、複数の車内通信線が接続されている。
【0026】
ゲートウェイ10は、携帯電話網などの広域通信網2に通信可能に接続されている。ゲートウェイ10は、広域通信網2を通じて管理サーバ5及びDLサーバ6などの車外装置から受信した情報をECU30に送信する。ゲートウェイ10は、ECU30から取得した情報を、広域通信網2を介して管理サーバ5などの車外装置に送信する。
【0027】
図1では、ゲートウェイ10が車外装置と直接通信を行う場合が例示されている。もっとも、ゲートウェイ10に別の通信装置を接続し、別の通信装置を介して車外装置と通信を行う構成としてもよい。ゲートウェイ10に接続される別の通信装置としては、例えば、ユーザが所有する携帯電話機、スマートフォン、タブレット型端末、ノートPC(Personal Computer)等の装置が考えられる。
【0028】
図1のプログラム更新システムでは、管理サーバ5とDLサーバ6が別個のサーバで構成されているが、これらのサーバ5,6を1つのサーバ装置で構成してもよい。」
(ク)「【0029】
〔ゲートウェイの内部構成〕
図2はゲートウェイ10の内部構成を示すブロック図である。図2に示すように、ゲートウェイ10は、CPU(Central Processing Unit)11、RAM(Random Access Memory)12、記憶部13、及び車内通信部14などを備える。ゲートウェイ10は、無線通信部15と車内通信線を介して接続されているが、これらは一つの装置で構成してもよい。
【0030】
CPU11は、記憶部13に記憶された一又は複数のプログラムをRAM12に読み出して実行することにより、ゲートウェイ10を各種情報の中継装置として機能させる。CPU11は、例えば時分割で複数のプログラムを切り替えて実行することにより、複数のプログラムを並列的に実行可能である。RAM12は、SRAM(Static RAM)又はDRAM(Dynamic RAM)等のメモリ素子で構成され、CPU11が実行するプログラム及び実行に必要なデータ等が一時的に記憶される。
【0031】
記憶部13は、フラッシュメモリ若しくはEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性のメモリ素子などにより構成されている。記憶部13は、CPU11が実行するプログラム及び実行に必要なデータ等を記憶する記憶領域を有する。記憶部13は、DLサーバ6から受信した各ECU30の更新プログラムなども記憶する。」
(ケ)「【0035】
〔ECUの内部構成〕
図3はECU30の内部構成を示すブロック図である。図3に示すように、ECU30は、CPU31、RAM32、記憶部33、通信部34などを備える。ECU30は、車両1に搭載された複数の車載機器を個別に制御する制御装置である。ECU30の種類には、例えば、エンジン制御ECU、ステアリング制御ECU、及びドアロック制御ECUなどがある。
【0036】
CPU31は、記憶部33に予め記憶された一又は複数のプログラムをRAM32に読み出して実行することにより、自身が担当する車載機器の動作を制御する。RAM32は、SRAM又はDRAM等のメモリ素子で構成され、CPU31が実行するプログラム及び実行に必要なデータ等が一時的に記憶される。
【0037】
記憶部33は、フラッシュメモリ若しくはEEPROM等の不揮発性のメモリ素子、或いは、ハードディスクなどの磁気記憶装置等により構成されている。記憶部33が記憶する情報には、例えば、制御対象である車載装置を制御するための処理をCPU31に実行させるためのコンピュータプログラム(以下、「制御プログラム」という。)が含まれる。」
(コ)「【0039】
ECU30のCPU31には、当該CPU31による制御モードを、「通常モード」又は「リプログラミングモード」(以下、「リプロモード」ともいう。)のいずれかに切り替える起動部35が含まれる。通常モードとは、ECU30のCPU31が本来の制御内容(例えば、エンジン制御やステアリング制御など)を実行する制御モードのことである。リプログラミングモードとは、CPU31が制御プログラムのROM領域に対して消去、書き換えの権限が付与されるモードのことである。本モードのときにのみ、制御プログラムを新バージョンに更新することが可能となる。
【0040】
起動部35は、リプログラミングモードにおいて新バーションの制御プログラムを記憶部33に書き込むと、いったん再起動(リセット)して新バージョンの制御プログラムが書き込まれた記憶領域についてベリファイ処理を実行し、ベリファイ処理の完了後にCPU31を更新後の制御プログラムによって動作させる。」
(サ)「【0041】
〔管理サーバの内部構成〕
図4は、管理サーバ5の内部構成を示すブロック図である。図4に示すように、管理サーバ5は、CPU51、ROM52、RAM53、記憶部54、及び通信部55などを備える。」
(シ)「【0044】
図4に示すように、記憶部54が記憶する情報には、車両1に搭載されたECU30(ここでは、VIN=1の車両1に搭載されたECU30の識別番号を1~3とする。)の制御プログラムのバーションを記録したリビジョンテーブルRTが含まれる。リビジョンテーブルRTは、車両1の車両識別番号(VIN)と、車両識別番号ごとのリビジョンアップの履歴を表す識別情報であるリビジョン番号と、各リビジョン番号に対応するECU1~3のバージョンとを纏めたテーブルよりなる。」
(ス)「【0049】
〔制御プログラムの同時更新のシーケンス〕
図5は、本実施形態のプログラム更新システムにおいて実行される、複数のECU1~3に対する制御プログラムの同時更新の一例を示すシーケンス図である。なお、以下においては、図4のリビジョンテーブルRTに従って、各ECU1~3の制御プログラムを次のように更新する場合を想定する。リビジョン番号:R2.0→R2.4ECU1:バーション1.0→バーション1.2ECU2:バーション1.3→バーション2.0ECU3:バーション2.0→バーション2.2
【0050】
更新プログラムは、新バーションのプログラムそのものであってもよいが、本実施形態では、旧バーションからの差分プログラムである場合を想定する。この場合、旧バージョンと新バージョンとのファイルの差分情報を含むΔが同じ記憶領域にあれば、旧バージョンにΔを適応することで、新バージョンに更新することができる。ECU1のバーション1.0からバーション1.2への更新プログラムを「Δ1」とし、ECU2のバーション1.3からバーション2.0への更新プログラムを「Δ2」とし、ECU3のバーション2.0からバーション2.2への更新プログラムを「Δ3」とする。
【0051】
図5に示すように、本実施形態の制御プログラムの同時更新においては、まず、ゲートウェイ10が、各ECU1~3の制御プログラムの現状のバージョン情報を収集する(ステップS1)。図示の例では、ECU1の制御プログラムの現バーションは「1.0」であり、ECU2の制御プログラムの現バーションは「1.3」であり、ECU3の制御プログラムの現バーションは「2.0」である。
【0052】
次に、ゲートウェイ10は、収集したECU1~3の制御プログラムのバージョン情報と、自車両の車両識別番号(VIN)を管理サーバ5に送信する(ステップS2)。管理サーバ5は、ゲートウェイ10から通知されたバージョン情報と車両識別番号に基づいて、前述のリビジョンテーブルRT(図4参照)を探索することにより、各ECU1~3について、車両1の各ECU1~3の制御プログラムを同時に更新する必要があるか否かを判定する。
【0053】
ここでは、ECU1がバーション1.0であり、ECU2がバーション1.3であり、ECU3がバーション2.0であるから、管理サーバ5は、車両1がリビジョンR2.0で運用中であると判定する。また、管理サーバ5は、最新版のリビジョンR2.4が存在することから、ECU1のバーション1.2への更新、ECU2のバーション2.0への更新、及び、ECU3のバーション2.2への更新を、同時に行う必要があると判定する。
【0054】
そこで、管理サーバ5は、バーション情報を送信してきたゲートウェイ10宛てに、各ECU1~3の更新プログラムΔ1~Δ3の保存先URLとダウンロード要求をゲートウェイ10宛てに送信する(ステップS3)。これにより、ゲートウェイ10は、各ECU1~3のための更新プログラムΔ1~Δ3をDLサーバ6からダウンロードする(ステップS4)。ゲートウェイ10は、受信した更新プログラムΔ1~Δ3を自装置の記憶部13に一時的に格納して保存する。
【0055】
更新プログラムΔ1~Δ3の保存が完了すると、ゲートウェイ10は、DLが正常に完了したことを管理サーバ5に送信する(ステップS5)。引き続き自動で更新を行う場合、DL完了通知を受信した管理サーバ5は、制御プログラムの更新要求をゲートウェイ10に送信する。DL完了後、一時中断し外部から更新要求を受けてから、制御プログラムの更新要求をゲートウェイ10に送信してもよい(ステップS6)。更新要求を受信したゲートウェイ10は、記憶部13に保存した更新プログラムΔ1~Δ3を用いて制御プログラムを更新させるべく、各ECU1~3にリプロモード移行要求をそれぞれ送信する(ステップS7)。
【0056】
リプロモード移行要求を受信すると、各ECU1~3は自身の制御モードを通常モードからリプログラミングモードに切り替える。これにより、各ECU1~3は、更新プログラムΔ1~Δ3の展開と、現状の制御プログラムを新バーションの制御プログラムに書き換える処理が可能な状態となる。
【0057】
ゲートウェイ10は、記憶部13に保存した更新プログラムΔ1をECU1に送信する(ステップS8)。ECU1は、受信した更新プログラムΔ1を展開して旧バーション1.0に適用することにより、制御プログラムを旧バーション1.0から新バーション1.2に書き換える。書き換えが完了すると、ECU1は、書き換えの完了通知をゲートウェイ10に送信する(ステップS9)。【0058】
ゲートウェイ10は、記憶部13に保存した更新プログラムΔ2をECU2に送信する(ステップS10)。ECU2は、受信した更新プログラムΔ2を展開して旧バーション1.3に適用することにより、制御プログラムを旧バーション1.3から新バーション2.0に書き換える。書き換えが完了すると、ECU2は、書き換えの完了通知をゲートウェイ10に送信する(ステップS11)。
【0059】
ゲートウェイ10は、記憶部13に保存した更新プログラムΔ3をECU3に送信する(ステップS12)。ECU3は、受信した更新プログラムΔ3を展開して旧バーション2.0に適用することにより、制御プログラムを旧バーション2.0から新バーション2.2に書き換える。書き換えが完了すると、ECU3は、書き換えの完了通知をゲートウェイ10に送信する(ステップS13)。
【0060】
なお、図5に例示するシーケンスでは、ステップS8~ステップS13までの処理が時系列に表現されているが、これらの処理は同時並行的に行われるので、前後の順番が入れ替わってもよい。
【0061】
ゲートウェイ10は、すべてのECU1~3から書き換えの完了通知を受信すると、各ECU1~3に通常モード移行要求とリセット要求を各ECU1~3に送信する(ステップS14)。通常モード移行要求を受信した各ECU1~3は、自身の制御モードをリプロモードから通常モードに切り替え、リセット要求に応じてシステムを再起動する。これにより、各ECU1~3が、新バーションの制御プログラムによりそれぞれ動作する。
【0062】
また、ゲートウェイ10は、書き換えの完了通知をすべてのECU1~3から受信すると、更新完了通知を管理サーバ5に送信する(ステップS15)。これにより、管理サーバ5は、車両1の各ECU1~3について、制御プログラムの更新がすべて完了したことを察知する。」
(セ)「【0063】
〔複数領域ECUによる書き換え処理〕
図6は、制御プログラムの動作領域を複数(図例では2つ)有するECU30(以下、「複数領域ECU」という。)が実行する制御プログラムの書き換え処理を示す状態遷移図である。図6では、ECU30の制御プログラムのバーションを「1.0」から「1.2」に更新する場合を例示しているが、その他のバージョン番号の場合も以下と同様の書き換え処理が実行される。
【0064】
ECU30の記憶部33は、制御プログラムが動作可能な2つ主領域1,2と、更新プログラムΔ1が格納される1つのワークスペースとに区分されている。ECU30の起動部35は、起動時において制御プログラムの動作領域を主領域1,2のいずれかに選択可能である。ここでは、プログラム更新前の通常モードにおいて、動作領域として主領域1が選択されているものとする。なお、図6中のハッチング付きの領域は制御プログラムが実行されるアクティブな領域を示す。
【0065】
起動部35は、リプログラミングモードにおいてゲートウェイ10から更新プログラムΔ1を受信すると、更新プログラムΔ1をワークスペースに格納するとともに、主領域2に旧バーション1.0の制御プログラムのバックアップを作成する(図6(a))。次に、起動部35は、更新プログラムΔ1を展開して主領域2のバーション1.0のバックアップに適用し(図6(b))、主領域2の制御プログラムをバーション1.0からバーション1.2に書き換える(図6(c))。
【0066】
上記の書き換えが完了すると、起動部35は、動作領域を主領域2に切り替えて主領域2のベリファイ処理を実行したあと(図6(d))、主領域2に格納されたバーション1.2の制御プログラムにてCPU31を動作させる(図6(e))。上記のようにして主領域2に対する制御プログラムの書き換えが完了すると、起動部35は、通常モードにおける起動時の動作領域を主領域2に切り替えるとともに、書き換えの完了通知をゲートウェイ10に送信する。
(ソ)「【0067】
〔複数領域ECUに対するロールバック処理〕
図7は、複数領域ECU30に対してゲートウェイ10が実行するロールバック処理の説明図である。図7において縦横に配列された各ボックスは、各ECU1~3の記憶部33内の時間経過ごとのメモリ状態R1~R5の変遷を示す。各ボックスの上段部分は図6の「主領域1」に対応し、下段部分は図6の「主領域2」に対応している。
【0068】
図7において、時間tは下向きに進行する。時刻t0は、ゲートウェイ10によるリプロモード移行要求S7の送信時点である。時刻t9は、ゲートウェイ10による完了通知S9の受信時点であり、時刻t11は、ゲートウェイ10による完了通知S11の受信時点であり、時刻t13は、ゲートウェイ10による完了通知S13の受信時点である。
【0069】
メモリ状態R1は、各ECU1~3がリプロモード移行要求S7を受信したあと、主領域2に旧バーションのバックアップが作成された状態を示している。メモリ状態R1では、各ECU1~3が書き換え処理を未だ実行していないので、主領域1,2の双方ともに旧バーションの制御プログラムが格納されている。メモリ状態R2は、各ECU1~3が主領域2について書き換え処理を実行中である状態を示している。
【0070】
メモリ状態R3は、ECU1が主領域2の書き換えを完了して完了通知S9を送信し、ECU2,3が未だ書き換え処理を実行中である状態を示している。メモリ状態R4は、更にECU2が主領域2の書き換えを完了して完了通知S11を送信し、ECU3が未だ書き換え処理を実行中である状態を示している。メモリ状態R5は、更にECU3が主領域2の書き換えを完了して完了通知S13を送信し、すべてのECU1~3が新バーションに書き換えられた状態を示している。
【0071】
ここで、例えばt9≦t<t11の期間中に、車両1の電源失陥などの何らかの障害により、ECU3の書き換え処理が中断時点tpにおいて中断したと仮定する。この場合、ゲートウェイ10は、上記の障害がなくなったあとに、リプロモード移行要求S7をすべてのECU1~3に再送信する。これがロールバック処理である。これにより、書き換え中であったECU2,3だけでなく、書き換え済みであったECU1についても、当初のメモリ状態R1から新バーションへの書き換え処理を再度実行する。
【0072】
なお、t9≦t<t11の期間中だけでなく、t0≦t<t9或いはt11≦t<t13の期間中に、電源失陥などの障害に伴う中断時点tpを検出した場合でも、ゲートウェイ10は同様のロールバック処理を実行する。すなわち、ゲートウェイ10は、リプロモード移行要求S7の送信時点t0から、すべての完了通知S9,S11,S13の受信を検出するまでの間は、制御プログラムの書き込みを阻害する障害を検出した場合にロールバック処理を実行する。
【0073】
このように、本実施形態のプログラム更新システムでは、いずれかのECU1~3において途中で更新が中断した場合に、すべてのECU1~3に更新をやり直させるロールバック処理を実行する。従って、複数領域ECU1~3の同時更新中においていずれかのECU1~3における書き換え処理が中断した場合に、すべてのECU1~3を動作保障されている現状の旧バージョンに戻すことができる。
【0074】
このため、旧バーションの制御プログラムで動作するECU30と新バーションの制御プログラムで動作するECU30とが混在することにより、動作保障されていない制御プログラムが同時に動作して動作不良となるのを未然に防止することができる。なお、上記のロールバック処理は、同時更新の必要性があるすべてのECU1~3が更新プログラムΔ1~Δ3を用いた制御プログラムの更新を完了するまで、当該ECU1~3に制御プログラムの更新を継続させる「更新継続処理」の一種である。」
(タ)図1
「
[図:0001413822000001.jpg]
」
(チ)図2
「
[図:0001413822000002.jpg]
」
(ツ)図3
「
[図:0001413822000003.jpg]
」
(テ)図4
「
[図:0001413822000004.jpg]
」
(ト)図5
「
[図:0001413822000005.jpg]
」
(ナ)図6
「
[図:0001413822000006.jpg]
」
(ニ)図7
「
[図:0001413822000007.jpg]
」
(ヌ)認定事項
a 上記(オ)の段落【0013】の下線部の記載から「ゲートウェイは、複数の制御装置に対する更新プログラムを記憶する記憶部と、記憶された複数の前記更新プログラムを対応する前記制御装置にそれぞれ送信する車内通信部と、更新継続処理を実行する処理部と、を備える」ものであり、図1等から「ゲートウェイ10」であることが理解でき、上記(ケ)の段落【0035】、【0037】の下線部の記載から、制御装置であるECU30の「記憶部33が記憶する情報には、制御対象である車載装置を制御するための処理をCPU31に実行させるための制御プログラムが含まれ」、そして、図5の制御プログラムの同時更新のシーケンスと上記(ス)の段落【0051】~【0062】(特に、段落【0061】の下線部)の説明により「ゲートウェイ10は、すべてのECU1~3から書き換えの完了通知を受信すると、各ECU1~3に通常モード移行要求とリセット要求を各ECU1~3に送信」する処理をし、「通常モード移行要求を受信した各ECU1~3は、自身の制御モードをリプロモードから通常モードに切り替え、リセット要求に応じてシステムを再起動」して、「各ECU1~3が、新バーションの制御プログラムによりそれぞれ動作する」ことからみて、「ゲートウェイ10は制御対象である車載装置を制御するための処理をCPU31に実行させるための制御プログラムの更新を管理していること」は明らかである。
b 上記(ケ)の段落【0035】の下線部の「ECU30は、車両1に搭載された複数の車載機器を個別に制御する制御装置である。」という記載、同じく段落【0037】の下線部の制御装置であるECU30の「記憶部33が記憶する情報には、制御対象である車載装置を制御するための処理をCPU31に実行させるための制御プログラムが含まれる」という記載及び図3からみて、「ECU30(のCPU31)が」「制御対象である車載装置を制御するための処理を実行すること」は明らかであり、上記(カ)の段落【0024】の下線部の「プログラム更新システムは、広域通信網2を介して通信可能な車両1、管理サーバ5及びDL(ダウンロード)サーバ6を含む。」という記載、同じく段落【0025】の下線部の「車両1には、ゲートウェイ10及び複数のECU30と、各ECU30によりそれぞれ制御される各種の車載機器が搭載されている。」という記載と上記aを踏まえて、「プログラム更新システムは、制御対象である車載装置を制御するための処理をCPU31に実行させるための制御プログラムの更新を管理するゲートウェイ10と、前記制御対象である車載装置を制御するための処理を実行する複数のECU30を含む」ことは明らかである。
c 上記(セ)の記載事項及び〔複数領域ECUが実行する制御プログラムの書き換え処理〕を示す図6を参照すると、段落【0064】の下線部には、「ECU30の記憶部33は、制御プログラムが動作可能な2つ主領域1,2と、更新プログラムΔ1が格納される1つのワークスペースとに区分されている。」と記載され、図6(e)からみて、ECU30の記憶部33の主領域1には、更新前の制御プログラムv1.0が記憶され、主領域2には、更新後の制御プログラムv1.2が記憶されていることは明らかである。
そして、上記(ソ)の段落【0067】の「図7において縦横に配列された各ボックスは、各ECU1~3の記憶部33内の時間経過ごとのメモリ状態R1~R5の変遷を示す。各ボックスの上段部分は図6の「主領域1」に対応し、下段部分は図6の「主領域2」に対応している。」との記載、及び、〔複数領域ECUに対するロールバック処理〕を示す図7のメモリ状態R3~R5を参照すると、ECU30の複数のECU1~3について、同様に主領域1に更新前の制御プログラムが、主領域2に更新後の制御プログラムが記憶され得ることが分かる。
また、上記(ス)の段落【0054】の下線部の「ゲートウェイ10は、各ECU1~3のための更新プログラムΔ1~Δ3をDLサーバ6からダウンロードする」(図5のステップS4)との記載、及び、同じく段落【0057】の「ゲートウェイ10は、記憶部13に保存した更新プログラムΔ1をECU1に送信する(ステップS8)。ECU1は、受信した更新プログラムΔ1を展開して旧バーション1.0に適用することにより、制御プログラムを旧バーション1.0から新バーション1.2に書き換える。」という記載 、段落【0058】の「ゲートウェイ10は、記憶部13に保存した更新プログラムΔ2をECU2に送信する(ステップS10)。ECU2は、受信した更新プログラムΔ2を展開して旧バーション1.3に適用することにより、制御プログラムを旧バーション1.3から新バーション2.0に書き換える。」という記載、及び段落【0059】の「ゲートウェイ10は、記憶部13に保存した更新プログラムΔ3をECU3に送信する(ステップS12)。ECU3は、受信した更新プログラムΔ3を展開して旧バーション2.0に適用することにより、制御プログラムを旧バーション2.0から新バーション2.2に書き換える。」という記載からみて、「3つの更新後の制御プログラムは、ゲートウェイ10がDLサーバ6から取得した更新プログラムΔ1~Δ3に基づいていること」は明らかである。
そうすると、これらの事項からみて、「複数のECU30のうち、1つ以上のECU30は、1つ以上の更新前の制御プログラムと、ゲートウェイ10がDLサーバ6から取得した更新プログラムΔ1~Δ3に基づく1つ以上の更新後の制御プログラムとを記憶する記憶部33を備えること」が分かる。
d 上記(セ)の段落【0064】の下線部の「ここでは、プログラム更新前の通常モードにおいて、動作領域として主領域1が選択されているものとする。」という記載、同じく段落【0065】の下線部の「起動部35は、リプログラミングモードにおいてゲートウェイ10から更新プログラムΔ1を受信すると、更新プログラムΔ1をワークスペースに格納するとともに、主領域2に旧バーション1.0の制御プログラムのバックアップを作成する」、「起動部35は、更新プログラムΔ1を展開して主領域2のバーション1.0のバックアップに適用し、」「主領域2の制御プログラムをバーション1.0からバーション1.2に書き換える」という記載、同じく段落【0066】の下線部の「書き換えが完了すると、起動部35は、動作領域を主領域2に切り替えて主領域2のベリファイ処理を実行したあと、主領域2に格納されたバーション1.2の制御プログラムにてCPU31を動作させ、上記のようにして主領域2に対する制御プログラムの書き換えが完了すると、起動部35は、通常モードにおける起動時の動作領域を主領域2に切り替える」という記載及び図3の図示内容からみて、「ECU30のCPU31を動作させる制御プログラムを更新前の制御プログラムから更新後の制御プログラムに切り替える処理を実行する起動部35を備え」ることは明らかである。
また、図7のメモリ状態R5のECU1~ECU3からなる態様を考慮すれば、ECU30のCPU31を動作させる制御プログラム、更新前の制御プログラム、及び、更新後の制御プログラムがそれぞれ「1つ以上」となることも明らかである。
e 上記(オ)の段落【0015】の下線部の記載からみて、「ロールバック」とは「複数の制御装置が、制御プログラムの動作領域が複数存在する記憶装置を有する複数領域タイプである場合には、更新継続処理として、いずれかの前記制御装置において途中で更新が中断した場合に、旧バージョンを他領域にバックアップとして確保しているため、リプロ対象のECUを一斉に復帰させること」といえる。
そして、上記(ソ)の段落【0067】の下線部に「図7は、複数領域ECU30に対してゲートウェイ10が実行するロールバック処理の説明図である。図7において縦横に配列された各ボックスは、各ECU1~3の記憶部33内の時間経過ごとのメモリ状態R1~R5の変遷を示す。」と記載されているように、複数領域タイプの複数のECU30(ECU1~3)に対してゲートウェイ10が実行する「ロールバック処理」の説明図が図7であり、上記(ソ)の段落【0071】の下線部の「車両1の電源失陥などの何らかの障害により、ECU3の書き換え処理が中断時点tpにおいて中断したと仮定する。この場合、ゲートウェイ10は、上記の障害がなくなったあとに、リプロモード移行要求S7をすべてのECU1~3に再送信する。これがロールバック処理である。」という記載及び同じく段落【0073】の下線部の「プログラム更新システムでは、いずれかのECU1~3において途中で更新が中断した場合に、すべてのECU1~3に更新をやり直させるロールバック処理を実行する。」という記載からみて、「ロールバック処理」とは「いずれかのECU1~3において途中で更新が中断した場合に、リプロモード移行要求S7をすべてのECU1~3に再送信して、更新をやり直させる」ことであり、プログラム更新システムのゲートウエイ10が実行するものである。
そうすると、「ロールバック処理」は、上記「ロールバック」を含む処理といえる。
そして、「ロールバック」を行うことにより、上記(ソ)の段落【0073】の下線部に記載されるように「複数領域ECU1~3の同時更新中においていずれかのECU1~3における書き換え処理が中断した場合に、すべてのECU1~3を動作保障されている現状の旧バージョンに戻すことができる」ものである。
また、上記(ソ)の段落【0071】の下線部の「書き換え済みであったECU1についても、当初のメモリ状態R1から新バーションへの書き換え処理を再度実行する」という記載からみて、「ロールバック処理」における「ロールバック」により、「書き換え済みであったECUを当初のメモリ状態とする」ことが行われており、「1つ以上の更新後の制御プログラムから1つ以上の更新前の制御プログラムに戻す処理を実行」していることは明らかである(ここで、メモリ状態R4の場合には、「1つ以上」の例として「2つ」になる。)。
さらに、上述したように、「ロールバック処理」とは「いずれかのECU1~3において途中で更新が中断した場合に、リプロモード移行要求S7をすべてのECU1~3に再送信して、更新をやり直させる」ことであり、上記(オ)の段落【0016】の下線部の記載により「ロールバック処理を実行」して、リプロモード移行要求S7を再送信するのは「ゲートウェイ10の処理部」であって、リプロモード移行要求S7を受けて、ECU1等を当初のメモリ状態に戻すのは、上記(セ)の段落【0064】の下線部の記載や図3から「起動部35」)であることは明らかであるから、「ゲートウェイ10の処理部からリプロモード移行要求S7が再送信された場合に、1つ以上の動作させようとする制御プログラムを、1つ以上の更新後の制御プログラムから1つ以上の更新前の制御プログラムに戻す処理を実行する起動部35」といえる。
f 上記d、eから、引用文献1には、「ECU30のCPU31が実行する1つ以上の制御プログラムを、1つ以上の更新前の制御プログラムから1つ以上の更新後の制御プログラムに切り替える処理と、ゲートウェイ10の処理部からリプロモード移行要求S7が再送信された場合に、1つ以上の動作させようとする制御プログラムを、1つ以上の更新後の制御プログラムから1つ以上の更新前の制御プログラムに戻す処理を実行する起動部35と、を備え」ることが記載されているといえる。
g 上記(ソ)の段落【0071】の下線部の「車両1の電源失陥などの何らかの障害により、ECU3の書き換え処理が中断時点tpにおいて中断した」という記載、同じく段落【0072】の下線部の「ゲートウェイ10は、リプロモード移行要求S7の送信時点t0から、すべての完了通知S9,S11,S13の受信を検出するまでの間は、制御プログラムの書き込みを阻害する障害を検出した場合にロールバック処理を実行する。」という記載や同じく段落【0073】の下線部の「プログラム更新システムでは、いずれかのECU1~3において途中で更新が中断した場合に、すべてのECU1~3に更新をやり直させるロールバック処理を実行する。」という記載及び段落【0072】の「書き込みを阻害する障害」や段落【0073】の「途中で更新が中断した場合」の例として段落【0071】に「車両1の電源失陥などの障害」が挙げられていることからみて、上記e、fを踏まえると、「ゲートウェイ10は、いずれかのECU1~3において、リプロモード移行要求S7の送信時点t0から、すべての完了通知S9,S11,S13の受信を検出するまでの間に、車両1の電源失陥などの、制御プログラムの書き込みを阻害する障害を検出した場合や途中で更新が中断した場合に、1つ以上の更新前の制御プログラムから1つ以上の更新後の制御プログラムに切り替える処理をした起動部35に、1つ以上の更新後の制御プログラムから1つ以上の更新前の制御プログラムに戻す処理の実行を含むリプロモード移行要求S7を再送信するゲートウェイ10の処理部を備える」ことが分かる。
(ネ)引用発明
これらの記載事項及び認定事項からみて、本件補正発明に倣って整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「制御対象である車載装置を制御するための処理をCPU31に実行させるための制御プログラムの更新を管理するゲートウェイ10と、前記制御対象である車載装置を制御するための処理を実行する複数のECU30を含むプログラム更新システムであって、
複数のECU30のうち、1つ以上のECU30は、
1つ以上の更新前の制御プログラムと、前記ゲートウェイ10がDLサーバ6から取得した更新プログラムΔ1~Δ3に基づく1つ以上の更新後の制御プログラムとを記憶する記憶部33と、
前記ECU30のCPU31を動作させる1つ以上の制御プログラムを、1つ以上の更新前の制御プログラムから1つ以上の更新後の制御プログラムに切り替える処理と、前記ゲートウェイ10の処理部からリプロモード移行要求S7が再送信された場合に、1つ以上の動作させようとする制御プログラムを、1つ以上の更新後の制御プログラムから1つ以上の更新前の制御プログラムに戻す処理を実行する起動部35と、を備え、
前記ゲートウェイ10は、いずれかの前記ECU1~3において、リプロモード移行要求S7の送信時点t0から、すべての完了通知S9,S11,S13の受信を検出するまでの間に、車両1の電源失陥などの、制御プログラムの書き込みを阻害する障害を検出した場合や途中で更新が中断した場合に、1つ以上の更新前の制御プログラムから1つ以上の更新後の制御プログラムに切り替える処理をした起動部35に、1つ以上の更新後の制御プログラムから1つ以上の更新前の制御プログラムに戻す処理の実行を含むリプロモード移行要求S7を再送信するゲートウェイ10の処理部を備える、プログラム更新システム。」
イ 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の原出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2004-126960号公報(平成16年4月22日出願公開、以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次の記載がある。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、広域の複数箇所に分散配置された分散手段におけるソフトウェア(以下、ソフトウェアをソフトと略して示す)のバージョンアップを簡便かつ確実に実施することができるリモートメンテナンスシステムに関するものである。」
(イ)「【0008】
・・・また、バージョンアップしたソフトに問題があり、バージョンアップ前の状態に戻したい場合、更新前のソフトをサーバより、クライアントに送付しなければならないという問題点がある。
【0009】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、簡便にかつ確実にソフトの更新を行うことができるリモートメンテナンスシステムを得ることを目的とする。」
(ウ)「【0011】
【発明の実施の形態】実施の形態1.・・・。本願リモートメンテナンスシステムは保守センター手段1と、現ソフトにて稼動している複数の分散手段2a、2b・・・と、公衆回線またはLAN3とから成る。」
(エ)「【0014】
分散手段2a、2b・・・にはそれぞれ、分散側通信手段21と、ソフト更新手段22と、更新待ソフト待機手段23と、ソフト稼動手段24と、稼動ソフト管理手段25、旧ソフト格納手段26と、旧ソフト管理手段27と、更新情報送信手段28と、更新情報確認手段29と、時刻決定手段30とを備えている。」
(オ)「【0025】
次に、分散手段2aにおける、予め設定された反映時刻にソフト更新処理を行う、ソフト更新の動作について図4のフローチャートに基づいて説明する。まず、時刻決定手段30が更新するための反映時刻に成ると、ソフト更新手段22にソフト更新処理を開始させる(ステップS61)。次に、ソフト更新手段22は更新待ソフト格納手段23へソフトの有無をチェックする(ステップS63)。そして新ソフトが無い場合には、反映終了と成る(ステップS68)。
【0026】
次に、新ソフトがあれば、分散手段2aにて行っている業務処理を自動で終了させる(ステップS64)。次に、更新対象の現ソフト(現世代)および現ソフトの情報を、ソフト稼動手段23および稼動ソフト管理手段25から、それぞれ旧ソフト格納手段26および旧ソフト管理手段27にコピーする(ステップS65)。
【0027】
次に、更新待ソフト格納手段23の新ソフトをソフト稼動手段24にコピーし、対応するソフト情報を稼動ソフト管理手段25に更新する(ステップS65)。次に、ソフト更新手段22は、更新状態を「更新処理中」として分散手段2aを自動で再起動する(ステップS66)。次に、更新情報送信手段28は、分散手段2aが立ち上がり後、保守センター手段1に反映完了を送信する(ステップS67)。そして、反映を終了する(ステップS68)。」
(カ)「【0030】
次に、分散手段2aのソフトのバージョンの戻し処理の動作を図7のフローチャートに基づいて説明する。まず、分散側通信手段21は、保守センター手段1より「戻し処理」を受信する(ステップS92)。その情報をソフト更新手段22に渡す。通知されたソフト更新手段22は、業務処理を自動で終了させる(ステップS93)。そして、旧ソフト格納手段(前世代)26および旧ソフト管理手段(前世代)27のソフトおよびソフト情報をそれぞれソフト稼動手段(現世代)24および稼動ソフト管理手段(前世代)25にコピーする(ステップS94)。
【0031】
次に、更新情報手段28を「戻し処理中」として自動でソフト稼動手段(現世代)24にて、分散手段2aを再起動する(ステップS95)。次に、分散手段2aが立ちあがった後、更新情報送信手段28は、保守センター手段1に「戻し完了」を送信する(ステップS96)。そして、保守センター手段1は分散手段2aより「戻し完了」を受信する(図5のフローチャートの、分散手段2aから反映結果を受信(ステップS73))。次に、保守側通信手段12は、当該分散手段2aのソフト更新情報手段16に戻し日を登録する(ステップS75)。
【0032】
上記のように構成された実施の形態1のリモートメンテナンスシステムは、分散手段に転送・反映する新ソフトを、保守センター手段に格納するのみで、保守センター手段が自動的にソフト更新情報を作成し、更新対象の分散手段を決定して、当該新ソフトを送信して、分散手段の反映結果を分散手段対応のソフト更新履歴に反映するため、リモート保守作業の軽減と人為的ミスをなくすことができる。」
(キ)図1
「
[図:0001413822000008.jpg]
」
(ク)図4
「
[図:0001413822000009.jpg]
」
(ケ)図7
「
[図:0001413822000010.jpg]
」
(コ)以上の記載事項から引用文献2には、以下の事項が記載されていると認められる。
「分散手段2aの分散側通信手段21は、保守センター手段1より「戻し処理」を受信すると、前世代のソフトウェアを現世代にコピーした後、自動でソフト稼動手段(現世代)24にて、分散手段2aを再起動すること」
(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「制御プログラム」は前者の「プログラム」に相当し、以下同様に、「ゲートウェイ10」は「更新管理装置」に、「ECU30」は「電子制御装置」に、「プログラム更新システム」は「更新システム」に、「更新プログラムΔ1~Δ3」は「更新データ」に、「記憶部33」は「記憶部」に、「ECU30」は「自装置」に、1つ以上の更新前の制御プログラムから1つ以上の更新後の制御プログラムに切り替える処理の「処理」は「第1の切替処理」に、1つ以上の更新後の制御プログラムから1つ以上の更新前の制御プログラムに戻す処理の「戻す処理」は「第2の切替処理」に、「起動部35」は「切替部」に、「ゲートウェイ10の処理部」は「要求部」に、それぞれ相当する。
上記アの相当関係を踏まえると以下のことがいえる。
イ 後者の「制御対象である車載装置を制御するための処理をCPU31に実行させるための制御プログラムの更新を管理するゲートウェイ10と、前記制御対象である車載装置を制御するための処理を実行する複数のECU30を含むプログラム更新システム」は前者の「所定の制御を実現するためのプログラムの更新を管理する更新管理装置と、前記プログラムを実行する複数の電子制御装置を含む更新システム」に相当する。
ウ 後者の「複数のECU30のうち、1つ以上のECU30」は前者の「前記複数の電子制御装置のうち、1つ以上の電子制御装置」に相当し、後者の「1つ以上の更新前の制御プログラムと、前記ゲートウェイ10がDLサーバ6から取得した更新プログラムΔ1~Δ3に基づく1つ以上の更新後の制御プログラムとを記憶する記憶部33」は、前者の「1つ以上の更新前のプログラムと、前記更新管理装置が取得した更新データに基づく1つ以上の更新後のプログラムとを記憶する記憶部」に相当する。
エ 後者の「1つ以上の動作させようとする制御プログラムを、1つ以上の更新後の制御プログラムから1つ以上の更新前の制御プログラムに戻す処理」は前者の「自装置が実行する前記1つ以上の対象プログラムを、前記1つ以上の更新後のプログラムから前記1つ以上の更新前のプログラムに切り替える前記第2の切替処理」と「1つ以上の対象プログラムを、前記1つ以上の更新後のプログラムから前記1つ以上の更新前のプログラムに切り替える第2の切替処理」という限りにおいて一致する。
後者の「リプロモード移行要求S7を再送信」することは前者の「第2の切替要求の実行が要求された」ことに相当する。
そうすると、後者の「前記ECU30のCPU31を動作させる1つ以上の制御プログラムを、1つ以上の更新前の制御プログラムから1つ以上の更新後のプログラムに切り替える処理と、前記ゲートウェイ10の処理部からリプロモード移行要求S7が再送信された場合に、1つ以上の動作させようとする制御プログラムを、1つ以上の更新後のプログラムから1つ以上の更新前のプログラムに戻す処理を実行する起動部35」と、前者の「自装置が実行する1つ以上の対象プログラムを、前記1つ以上の更新前のプログラムから前記1つ以上の更新後のプログラムに切り替える第1の切替処理と、前記更新管理装置から第2の切替処理の実行が要求された場合に、自装置が実行する前記1つ以上の対象プログラムを、前記1つ以上の更新後のプログラムから前記1つ以上の更新前のプログラムに切り替える前記第2の切替処理とを実行する切替部」とは、「自装置が実行する1つ以上の対象プログラムを、前記1つ以上の更新前のプログラムから前記1つ以上の更新後のプログラムに切り替える第1の切替処理と、前記更新管理装置から第2の切替処理の実行が要求された場合に、1つ以上の対象プログラムを、前記1つ以上の更新後のプログラムから前記1つ以上の更新前のプログラムに切り替える前記第2の切替処理とを実行する切替部」という限りにおいて一致する。
オ 後者の「いずれかの前記ECU1~3において、リプロモード移行要求S7の送信時点t0から、すべての完了通知S9,S11,S13の受信を検出するまでの間に、車両1の電源失陥などの、制御プログラムの書き込みを阻害する障害を検出した場合や途中で更新が中断した場合」は前者の「前記1つ以上の電子制御装置のうち少なくとも1つの電子制御装置の前記切替部が、1つ以上の更新後のプログラムへの切り替えに失敗した場合」と「前記1つ以上の電子制御装置のうち少なくとも1つの電子制御装置の前記切替部が、1つ以上の更新後のプログラムへの更新に失敗した場合」において一致する。
後者の「前記ゲートウェイ10は、いずれかの前記ECU1~3において、リプロモード移行要求S7の送信時点t0から、すべての完了通知S9,S11,S13の受信を検出するまでの間に、車両1の電源失陥などの、制御プログラムの書き込みを阻害する障害を検出した場合や途中で更新が中断した場合に、1つ以上の更新前の制御プログラムから1つ以上の更新後の制御プログラムに切り替える処理をした起動部35に、1つ以上の更新後の制御プログラムから1つ以上の更新前の制御プログラムに戻す処理の実行を含むリプロモード移行要求S7を再送信するゲートウェイ10の処理部を備える」ことは前者の「前記更新管理装置は、前記1つ以上の電子制御装置のうち少なくとも1つの電子制御装置の前記切替部が、1つ以上の更新後のプログラムへの切り替えに失敗した場合に、前記1つ以上の電子制御装置のうち、前記1つ以上の対象プログラムを前記1つ以上の更新前のプログラムから前記1つ以上の更新後のプログラムに切り替えた電子制御装置に、前記第2の切替処理の実行を要求する要求部を備える」ことと、上記エを踏まえると、「前記更新管理装置は、前記1つ以上の電子制御装置のうち少なくとも1つの電子制御装置の前記切替部が、1つ以上の更新後のプログラムへの更新に失敗した場合に、前記1つ以上の電子制御装置のうち、前記1つ以上の対象プログラムを前記1つ以上の更新前のプログラムから前記1つ以上の更新後のプログラムに切り替えた電子制御装置に、前記第2の切替処理の実行を要求する要求部を備える」ことにおいて一致する。
カ そうすると、両者は、
「所定の制御を実現するためのプログラムの更新を管理する更新管理装置と、前記プログラムを実行する複数の電子制御装置を含む更新システムであって、
前記複数の電子制御装置のうち、1つ以上の電子制御装置は、
1つ以上の更新前のプログラムと、前記更新管理装置が取得した更新データに基づく1つ以上の更新後のプログラムとを記憶する記憶部と、
自装置が実行する1つ以上の対象プログラムを、前記1つ以上の更新前のプログラムから前記1つ以上の更新後のプログラムに切り替える第1の切替処理と、前記更新管理装置から第2の切替処理の実行が要求された場合に、1つ以上の対象プログラムを、前記1つ以上の更新後のプログラムから前記1つ以上の更新前のプログラムに切り替える第2の切替処理を実行する切替部と、を備え、
前記更新管理装置は、
前記1つ以上の電子制御装置のうち少なくとも1つの電子制御装置の前記切替部が、1つ以上の更新後のプログラムへの更新に失敗した場合に、前記1つ以上の電子制御装置のうち、前記1つ以上の対象プログラムを前記1つ以上の更新前のプログラムから前記1つ以上の更新後のプログラムに切り替えた電子制御装置に、前記第2の切替処理の実行を要求する要求部を備える、
更新システム。」
において一致し、以下の各点で相違すると認められる。
<相違点1>
切替部が、本件補正発明では、前記更新管理装置から第2の切替処理の実行が要求された場合に、「自装置が実行する」前記1つ以上の対象プログラムを、前記1つ以上の更新後のプログラムから前記1つ以上の更新前のプログラムに切り替える前記第2の切替処理を実行するものであって、第2の切替処理の実行により切り替えられた対象プログラムを「自装置が実行する」のに対して、引用発明では、「リプロモード移行要求S7」の「再送信」により、更新前の制御プログラムに戻した後に、当該更新前の制御プログラムが実行されるか不明である点。
<相違点2>
切替部が、1つ以上の更新後のプログラムへの更新に失敗した場合における「更新」に失敗が、本件補正発明では、「切り替え」に失敗であるのに対して、引用発明では、車両1の電源失陥などの、制御プログラムの書き込みを阻害する障害を検出した場合や途中で更新が中断した場合である点。
(4)相違点の判断
<相違点1について>
ア 引用文献1の段落【0073】に、ロールバック処理を実行させることにより、「複数領域ECU1~3の同時更新中においていずれかのECU1~3における書き換え処理が中断した場合に、すべてのECU1~3を動作保障されている現状の旧バージョンに戻すことができる。」と記載され、段落【0074】に「旧バーションの制御プログラムで動作するECU30と新バーションの制御プログラムで動作するECU30とが混在することにより、動作保障されていない制御プログラムが同時に動作して動作不良となるのを未然に防止することができる。」と記載されていることから、すべてのECU1~3を動作保障されている現状の旧バージョンに戻して、旧バージョンの制御プログラムでECU30を動作させることが示唆されているといえる。
イ また、引用文献1の段落【0016】には「本実施形態のプログラム更新システムではこの場合、基本的に中断点から再開させるが、場合によっては、すぐに車両を動かす必要がある事態が生じる。ゲートウェイの処理部が上記のロールバック処理を実行すると、短時間で復帰できる。」と記載されており、すぐに車両を動かす必要がある場合には、ゲートウェイの処理部が上記のロールバック処理を実行することにより、中断点から再開させる場合よりも短時間で復帰できて、すぐに車両を動かすことができる(つまり、旧バージョンの制御プログラムでECU30を動作させること。)と解することが相当であるといえる。
ウ そうすると、引用発明において、上記引用文献1の段落【0073】、【0074】及び【0016】の記載(以下「引用文献1に記載された事項1」という。)に基いて、「リプロモード移行要求S7」の「再送信」による「ロールバック処理」に含まれる「ロールバック」により、更新前の制御プログラムに戻した後に、当該更新前の制御プログラムが実行されること、つまり、相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
エ 仮に相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることが引用発明及び引用文献1に記載された事項1に基いて当業者が容易に想到し得たことでなかったとしても、引用文献2には、上記(2)イ(コ)で述べたように「分散手段2aの分散側通信手段21は、保守センター手段1より「戻し処理」を受信すると、分散手段2aは、前世代のソフトウエアを現世代にコピーした後、自動でソフト稼動手段(現世代)24にて、分散手段2aを再起動すること」という事項が記載されている。
本件補正発明と引用文献2の上記事項とを対比すると、後者の「分散手段2a」は前者の「自装置」及び「電子制御装置」に相当し、以下同様に、「保守センター手段1」は「更新管理装置」に、「戻し処理」は「第2の切替処理」に、「受信」することは「要求された場合」に、「前世代のソフトウエア」は「更新前のプログラム」に、それぞれ相当する。
また、後者の「前世代のソフトウエアを現世代にコピー」することは前者の「更新後のプログラムから更新前のプログラムに切り替える第2の切替処理を実行すること」ことに相当する。
さらに、後者において「現世代にて分散手段2aを再起動する」ことにより、更新前のプログラムが実行されることを意味していることは明らかである。
そうすると、本件補正発明に倣って整理すると、引用文献2には、以下の事項が記載されているといえる。
「更新管理装置から第2の切替処理の実行が要求された場合に、自装置が実行する対象プログラムを更新後のプログラムから更新前のプログラムに切り替える第2の切替処理を実行し、更新前のプログラムを実行すること」(以下「引用文献2に記載された事項」という。)
オ そして、引用発明と引用文献2に記載された事項とは、更新管理装置と電子制御装置とを含む更新システムという点で技術分野が共通し、自装置が実行する対象プログラムの更新という機能についても共通しているから、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、更新前のプログラムを実行すること、つまり、相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
<相違点2について>
ア 引用発明における「車両1の電源失陥などの、制御プログラムの書き込みを阻害する障害を検出した場合や途中で更新が中断した場合」も、プログラムの「更新」の失敗であり、広義では、プログラムの「切り替え」の失敗ともいえるから、相違点2は、実質的な相違点とはいえない。
イ 仮に、本件補正発明の「切替部が、1つ以上の更新後のプログラムへの切り替えに失敗した場合」を「切替部が」「実行する対象プログラムを更新前のプログラムから更新後のプログラムに切り替えること(アクティベート)に失敗した場合」と解せるとして、以下に検討する。
ウ 引用発明を開示する引用文献1の図6の〔複数領域ECUによる書き換え処理〕においては、段落【0064】に「ECU30の起動部35は、起動時において制御プログラムの動作領域を主領域1,2のいずれかに選択可能である。ここでは、プログラム更新前の通常モードにおいて、動作領域として主領域1が選択されているものとする。なお、図6中のハッチング付きの領域は制御プログラムが実行されるアクティブな領域を示す。」と記載され、段落【0066】に「主領域2に対する制御プログラムの書き換えが完了すると、起動部35は、通常モードにおける起動時の動作領域を主領域2に切り替えるとともに、書き換えの完了通知をゲートウェイ10に送信する。」と記載されており、主領域2に対する制御プログラムの書き換えが完了すると、起動部35は、制御プログラムが実行されるアクティブな領域(動作領域)を主領域2に切り替えることが開示されているといえる。
エ 引用文献1には、段落【0072】に「t9≦t<t11の期間中だけでなく、t0≦t<t9或いはt11≦t<t13の期間中に、電源失陥などの障害に伴う中断時点tpを検出した場合でも、ゲートウェイ10は同様のロールバック処理を実行する。」と記載され、段落【0073】に「本実施形態のプログラム更新システムでは、いずれかのECU1~3において途中で更新が中断した場合に、すべてのECU1~3に更新をやり直させるロールバック処理を実行する。」と記載されており、引用文献1には「t0≦t<t13の期間中(リプロモード移行要求S7の送信時点t0から、すべての完了通知S9,S11,S13の受信を検出するまでの間)に、途中で更新が中断した場合に、ロールバック処理を実行する」こと(以下「引用文献1に記載された事項2」という。)が記載されていると認められる。そして、段落【0066】に記載されるように、リプロモード移行要求S7の送信時点t0から、すべての完了通知の受信を検出するまでの間において、起動部35は、制御プログラムが実行されるアクティブな領域(動作領域)を主領域2に切り替えること(実行する対象プログラムを更新前のプログラムから更新後のプログラムに切り替えること)を含むものであるから、引用発明において上記引用文献1に記載された事項2を考慮して、起動部35がアクティブな領域(動作領域)の切り替えに失敗した場合を、車両1の電源失陥などの、制御プログラムの書き込みを阻害する障害を検出した場合や途中で更新が中断した場合と同様に、1つ以上の更新前の制御プログラムから1つ以上の更新後の制御プログラムに切り替える処理をした起動部35に、1つ以上の更新後の制御プログラムから1つ以上の更新前の制御プログラムに戻す処理を実行する条件に含めるようにして、相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本件補正発明の効果について検討しても、引用発明及び引用文献1に記載された事項1、引用発明及び引用文献2に記載された事項、引用発明、引用文献1に記載された事項1及び引用文献1に記載された事項2、又は、引用発明、引用文献2に記載された事項及び引用文献1に記載された事項2に基いて予期される以上の格別のものがあるとはいえない。
(5)請求人の主張の検討
ア 審判請求書において、請求人は、本件補正発明の「更新プログラムの切り替え」は、実行する対象プログラムを更新前のプログラムから更新後のプログラムに切り替えること(アクティベート)を指し、引用文献1、2には、「更新後のプログラムへの切り替え(アクティベート)に失敗した場合」に関して、開示も示唆もない旨主張する。
イ 主張の検討
(ア)本願の明細書には、ECU111のプログラムの更新の失敗の例として、段落【0137】には、「例えば、ECU111が、図8のステップS804aにおいて、第2の記憶領域333に更新後のプログラムを記憶しているとき、又は、ステップS805aにおいてブート情報を更新する前に、車両10がIG-OFFの状態に移行したものとする。」と例示されているが、プログラムの更新の失敗に関して、「アクティベート」の例は、記載されていない。
そうすると、プログラムの更新の失敗として「実行する対象プログラムを更新前のプログラムから更新後のプログラムに切り替えること」は、広義の意味での「プログラムの切り替え」と解するのが相当であり、「アクティベート」と限定して解釈すべき根拠はみあたらない。
(イ)仮に、「アクティベート」と限定して解釈した場合については、上記(4)<相違点2について>イに示したとおりである。
(ウ)したがって、請求人の上記主張は採用することができない。
(6)まとめ
以上より、本件補正発明は、引用発明及び引用文献1に記載された事項1、引用発明及び引用文献2に開示記載された事項、引用発明、引用文献1に記載された事項1及び引用文献1に記載された事項2、又は、引用発明、引用文献2に記載された事項及び引用文献1に記載された事項2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
そうすると、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本件補正前の本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、「第2 1(2)」に示したとおりのものと認められる。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
・請求項 1-7
・引用文献等 1、2
<引用文献等一覧>
1.特開2017-157004号公報(上記第2 2(2)アの引用文献1と同じ)
2.特開2004-126960号公報(上記第2 2(2)イの引用文献2と同じ)
3 引用文献とその記載事項等
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献、その記載事項及び引用発明は、上記「第2 2(2)ア、イ」に記載したとおりである。
4 対比・判断
「第2 2」を参照すると、本件補正発明は、本願発明を特定するために必要な事項である「前記1つ以上の電子制御装置のうち少なくとも1つの電子制御装置の前記記憶部が、1つ以上の更新後のプログラムの少なくとも一部の記憶に失敗した場合、または、前記1つ以上の電子制御装置のうち少なくとも1つの電子制御装置の前記切替部が、1つ以上の更新後のプログラムへの切り替えに失敗した場合に、」との記載事項から選択的記載事項である下線部分を削除して、「前記1つ以上の電子制御装置のうち少なくとも1つの電子制御装置の前記切替部が、1つ以上の更新後のプログラムへの切り替えに失敗した場合に、」との記載事項に限定したものであるから、本願発明は、本件補正発明に上記選択的記載事項を付加したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を付した本件補正発明が、引用発明及び引用文献1に記載された事項1、引用発明及び引用文献2に開示記載された事項、引用発明、引用文献1に記載された事項1及び引用文献1に記載された事項2、又は、引用発明、引用文献2に記載された事項及び引用文献1に記載された事項2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献1に記載された事項1、引用発明及び引用文献2に開示記載された事項、引用発明、引用文献1に記載された事項1及び引用文献1に記載された事項2、又は、引用発明、引用文献2に記載された事項及び引用文献1に記載された事項2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項を検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-003830