特許拒絶査定不服審判
2024-020557
バックル装置
- 審判番号
- 2024-020557
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-097602
- 請求日
- 2024年12月23日
- 審決日
- 2026年05月07日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社東海理化電機製作所
- 【請求人代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 遠藤 秀明
- 審判官 西山 智宏
- 審判官 種子島 貴裕
- 分類
- P18 .113-Z (B60R) / P18 .121-Z (B60R)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-97602「バックル装置」拒絶査定不服審判事件〔令和4年12月22日出願公開、特開2022-189176〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
この出願(以下「本願」という。)は、令和3年6月10日の出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和6年 4月18日付け:拒絶理由通知(発送日:同年4月23日)
令和6年 6月11日 :意見書及び手続補正書の提出
令和6年 9月12日付け:拒絶査定(発送日:同年9月24日)
令和6年12月23日 :審判請求書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~4に係る発明は、令和6年6月11日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「 【請求項1】
乗員に装着されるウェビングに設けられるタングが係合されるバックル本体と、
前記バックル本体に連結される連結部材と、
前記連結部材が巻取られて前記バックル本体と前記連結部材を介して連結され、前記連結部材の引出しが制限されると共に、前記連結部材の引出許容荷重以上での引出しが許容されて前記バックル本体の延出が許容される巻取軸と、
前記連結部材が摺動可能にされ、前記連結部材の前記巻取軸からの引出しが許容される際に前記連結部材の前記巻取軸からの引出位置における前記連結部材と前記巻取軸との合計半径が小さくされて前記連結部材の摺動抵抗が小さくされる摺動部と、
を備えるバックル装置。」
第3 原査定の拒絶の理由
令和6年9月12日付け拒絶査定の拒絶の理由2の概要は以下のとおりである。
理由2.(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
引用文献1.特開2020-125010号公報
第4 引用文献の記載事項等
1 引用文献1について
(1)記載事項
引用文献1には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。以下同様。)。
「【0034】
<第1の実施形態>
以下、図1~図9を用いて、本発明の第1実施形態に係るバックル装置10、バックル装置のシート搭載構造12及び車両用シートベルト装置14について説明する。なお、各図中に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印LH(OUT)は、車両の前方、上方、左方(車両幅方向の外方)をそれぞれ示している。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両左右方向(車両幅方向)の左右、車両上下方向の上下を示すものとする。また、各図においては、図面を見易くする関係から、一部の符号を省略している場合がある。
【0035】
(構成)
図1に示されるように、本発明の第1実施形態に係る車両用シートベルト装置14は、車両用シート16に着座した乗員Pを拘束するための3点式シートベルト装置とされている。この車両用シートベルト装置14は、本発明の第1実施形態に係るバックル装置10を含んで構成されている。このバックル装置10は、本発明の第1実施形態に係るバックル装置のシート搭載構造12が適用されて車両用シート16に搭載されている。」
「【0040】
上記の車両用シート16に適用された車両用シートベルト装置14は、図1に示されるように、乗員拘束用の3点式のシートベルト(ウエビング)46と、車両用シート16に対して車両幅方向中央側(ここでは右側)に配置されたバックル装置10と、バックル装置10の車両下方側に配置されたアンカブラケット94とを備えている。なお、図3ではシートベルト46の図示を省略している。
【0041】
シートベルト46の図示しない長手方向一端部は、車両用シート16に対する車両幅方向外側(ここでは左側)で車体フロアFに固定された図示しないアンカプレートに係止されている。また、シートベルト46の図示しない他端部は、センタピラーの下部等に配設された図示しないリトラクタ(ウエビング巻取装置)の巻取軸に係止されている。シートベルト46の中間部は、センタピラーの上部等に配設された図示しないショルダアンカに挿通されて折り返されている。また、シートベルト46におけるショルダアンカからアンカプレートまでの間の部分には、タング(タングプレート)48が摺動可能に取り付けられている。このタング48は、バックル装置10に対応している。
【0042】
図1~図3に示されるように、バックル装置10は、車両用シート16の車両幅方向中央側でシートクッション18の後部の側方(ここでは右方)に配置されている。このバックル装置10は、タング48が連結されるバックル本体(バックルボデー)50と、帯状部材(連結部材)としてのウエビング54(図3参照)と、フォースリミッタ機構56と、ブーツ82とを備えている。
【0043】
バックル本体50は、略矩形のブロック状に形成されており、バックル装置10の上部に設けられている。このバックル本体50の内部には、タング48を保持する図示しない保持機構と、当該保持機構によるタング48の保持を解除する図示しない解除機構と、これらの保持機構及び解除機構が組み付けられたフレーム52(図3参照)とが設けられている。このフレーム52の基端部(下端部)には、ウエビング54の長手方向一端部が連結(係止)される連結部52Aが設けられている。
【0044】
ウエビング54は、シートベルト46と同様の材料によって長尺帯状に形成されたものであり、可撓性を有している。ウエビング54の長手方向一端部は、連結部52Aに巻き掛けられると共に、巻き掛け前後の部分が縫製されている。ウエビング54の長手方向他端部は、フォースリミッタ機構56が有する巻取軸としてのスプール68(図3、図7~図9参照)に係止されている。
【0045】
図1~図9に示されるように、フォースリミッタ機構56は、上記のスプール68の他、フレーム58、バー72、プロテクタ78、カバー84、トーションシャフト(トーションバー)86、及びケース90を有している。フレーム58は、例えば鋼板がプレスによる絞り成形をされて製造されたものであり、図9に示されるように、板状の背板58Aを備えている。背板58Aの上部の幅方向両端部からは脚片58B、58Cが略直角に延出されており、フレーム58は、平面視でシート幅方向外側が開放された略U字形状をなしている。背板58Aの上部には、長尺矩形の開口部60が形成されており、背板58Aの下部には、円形の取付孔62が形成されている。また、脚片58B、58Cには、それぞれ円形の軸受孔64、66が形成されている。これらの軸受孔64、66は、同軸状に配置されており、スプール68に対応している。
【0046】
スプール68は、例えば鍛造によって製造されたものであり、略円柱状に形成されている。図9に示されるように、スプール68は、軸線方向中間部が断面略D字状に形成されたウエビング係止部68Aとされており、軸線方向両端部が断面円形状に形成された軸部68B、68Cとされている。スプール68の軸部68B、68Cは、脚片58B、58Cの軸受孔64、66に回転自在に嵌合している。これにより、スプール68がフレーム58に対して回転可能に支持されている。なお、図7において、AXはスプール68の軸線である。
【0047】
スプール68の一方の軸部68Bは、軸受孔64よりも大径な大径部68B1を有しており、当該大径部68B1が軸受孔64の孔縁部に対して脚片58Cとは反対側から係合している。また、スプール68の他方の軸部68Cには、略C字状に形成されたリング70が装着されており、当該リング70が軸受孔66の孔縁部に対して脚片58Bとは反対側から係合している。これにより、フレーム58に対するスプール68の軸線方向の変位が規制されている。
【0048】
スプール68のウエビング係止部68Aには、ウエビング54の長手方向他端部が巻き掛けられると共に、ウエビング54における巻き掛け前後の部分が縫製されている。これにより、ウエビング54の長手方向他端部がスプール68に係止されている。また、スプール68には、円柱状に形成された金属製のバー72が取り付けられており、当該バー72によってスプール68に対するウエビング54の相対回転が規制されている。このバー72は、スプール68と平行に配置されており、スプール68の軸部68B、68Cに形成された溝部74、76に軸線方向両端部が嵌め込まれている。このバー72の軸線方向両端部は、フレーム58の軸受孔64、66内に配置されており、上記の溝部74、76からの脱落を阻止されている。
【0049】
ウエビング54の長手方向他端側は、スプール68に巻き付けられており、ウエビング54の長手方向一端側は、スプール68から上方側へ延びている。ウエビング54の長手方向中間部は、プロテクタ78に形成されたウエビング挿通孔80に挿通されている。プロテクタ78は、例えば樹脂によって成形されたものであり、爪嵌合等の手段でフレーム58の上端部に取り付けられている。このプロテクタ78によって、ウエビング54とフレーム58との接触が防止されている。
【0050】
上記のプロテクタ78とバックル本体50との間には、ブーツ82が設けられている。このブーツ82は、例えば軟質の樹脂又はゴムによって長尺な略角筒状に形成されている。ブーツ82の長手方向一端部(上端部)には、バックル本体50の下部が嵌合しており、ブーツ82の内側には、ウエビング54の長手方向一端側が収容されている。このブーツ82によってバックル本体50が起立状態に保持されている。なお、スプール68に巻き付けられたウエビング54の長手方向他端側の一部は、フレーム58の背板58Aに形成された開口部60内に配置されている。これにより、背板58Aの板厚方向に沿ったフォースリミッタ機構56の厚さ寸法を低減するようにしている。
【0051】
また、フレーム58の上部には、背板58Aとは反対側からカバー84が取り付けられている。このカバー84は、例えば樹脂によって成形されたものであり、スプール68の軸線方向から見てシート幅方向内側が開放された略U字状の断面を有している。このカバー84は、例えば爪嵌合等の手段でフレーム58に取り付けられており、スプール68及びウエビング54の長手方向他端側を覆っている。
【0052】
図9に示されるように、スプール68の一方の軸部68Bに対してウエビング係止部68Aとは反対側には、スプール68の回転により変形されるエネルギ吸収部材としてのトーションシャフト86が配置されている。トーションシャフト86は、例えば鍛造によって略円柱状に形成されたものであり、スプール68に対して軸線方向(図7に示される軸線AXの方向)に並んで同軸的に配置されている。このトーションシャフト86の軸長L(図7参照)は、ウエビング54の幅寸法W(図7参照)よりも短く設定されている。
【0053】
トーションシャフト86の軸線方向両端部には、スプライン86A、86Bが形成されている。トーションシャフト86の軸線方向一端部に形成されたスプライン86Aは、スプール68の軸部68Bの大径部68B1に形成されたスプライン孔88に嵌合している。これにより、トーションシャフト86の軸線方向一端部がスプール68に対して相対回転不能に連結されている。トーションシャフト86の軸線方向他端部に形成されたスプライン86Bは、ケース(フォースリミッタケース)90に対応している。
【0054】
ケース90は、例えばアルミニウム合金のダイキャストによって製造されたものであり、有底の略角筒状に形成されている。このケース90は、内側にトーションシャフト86を収容しており、一対のビス92を用いて脚片58Bに固定されている。このケース90の底壁には、スプライン孔89(図7参照)が形成されており、当該スプライン孔89には、トーションシャフト86の軸線方向他端部に形成されたスプライン86Bが嵌合している。これにより、トーションシャフト86の軸線方向他端部がケース90に対して相対回転不能に連結されている。
【0055】
上記構成のフォースリミッタ機構56では、スプール68に作用する回転力がトーションシャフト86の耐捩り荷重(耐変形荷重)を上回ると、トーションシャフト86が捩り変形し、スプール68の回転が許容される構成になっている。」
「【0059】
(作用及び効果)
次に、本第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0060】
本実施形態によれば、車両の衝突時には、車両前方側へ慣性移動しようとする乗員Pからの荷重が、3点式のシートベルト46及びタング48を介してバックル本体50に作用する。このバックル本体50には、ウエビング54の長手方向一端部が連結されている。ウエビング54の長手方向他端側は、フォースリミッタ機構56のスプール68に巻き付けられている。このスプール68は、バックル本体50の車両下方側で車両用シート16に対して回転可能に支持されている。
【0061】
このため、上記の荷重によりバックル本体50及びウエビング54が引っ張られると、スプール68に回転力が作用する。この回転力がトーションシャフト86の耐捩り荷重を上回ると、トーションシャフト86が捩り変形し、スプール68の回転が許容される。これにより、ウエビング54の長手方向他端側がスプール68から引き出され、バックル本体50が上記荷重の作用方向に変位する。この際には、トーションシャフト86の捩り変形に供される荷重が、フォースリミッタ荷重としてシートベルト46に作用する。これにより、シートベルト46から乗員Pに加わる衝撃が吸収される。そして、ウエビング54においてスプール68に巻き付けられた部分が全て引き出されると、スプール68の回転及びトーションシャフト86の捩り変形が止まる。その後、乗員拘束終了までの間、シートベルト46に加わる荷重が、スプール68、フレーム58、アンカブラケット94及びスライドレール24を介して車体フロアFにより受け止められる。
【0062】
ここで、上記のフォースリミッタ機構56では、衝撃吸収時におけるスプール68からのウエビング54の引き出し量が、バックル本体50の変位量(衝撃吸収ストローク)となる。つまり、通常時にスプール68に巻き付けられるウエビング54の巻き付け量が、衝撃吸収ストロークとなる。このため、上記のフォースリミッタ機構56では、衝撃吸収ストロークに比例して筒状部材が長くなるパイプタイプのフォースリミッタ機構と比較して、衝撃吸収ストロークの確保に伴う大型化を抑制することができる。」
「【図1】
[図:0001436858000001.jpg]
」
「【図3】
[図:0001436858000002.jpg]
」
「【図4】
[図:0001436858000003.jpg]
」
「【図7】
[図:0001436858000004.jpg]
」
「【図8】
[図:0001436858000005.jpg]
」
「【図9】
[図:0001436858000006.jpg]
」
(2)認定事項
ア 【0061】の「この回転力がトーションシャフト86の耐捩り荷重を上回ると、トーションシャフト86が捩り変形し、スプール68の回転が許容される。これにより、ウエビング54の長手方向他端側がスプール68から引き出され、バックル本体50が上記荷重の作用方向に変位する。この際には、トーションシャフト86の捩り変形に供される荷重が、フォースリミッタ荷重としてシートベルト46に作用する。これにより、シートベルト46から乗員Pに加わる衝撃が吸収される。そして、ウエビング54においてスプール68に巻き付けられた部分が全て引き出されると、スプール68の回転及びトーションシャフト86の捩り変形が止まる。」との記載及び図3、5の図示内容から、ウエビング54の長手方向他端側がスプール68から引き出されてから、ウエビング54においてスプール68に巻き付けられた部分が全て引き出されるまで、ウエビング54とスプール68との合計半径が小さくされることが明らかである。そして、図8に「ウエビング54がスプール68から離れる位置」を付記した以下の参考図も踏まえると、ウエビング54の長手方向他端側がスプール68から引き出される際にウエビング54がスプール68から離れる位置におけるウエビング54とスプール68との合計半径が小さくされると認められる。
(参考図)
[図:0001436858000007.jpg]
イ 「ウエビング54の長手方向他端側がスプール68から引き出され」(【0061】)る際に、ウエビング54には張力が付与されるから、ウエビング54がスプール68から離れる位置は、フレーム58の背板58A側に(参考図の右側に)変位すると認められる。ここで、【0049】の「このプロテクタ78によって、ウエビング54とフレーム58との接触が防止されている。」との記載も踏まえると、ウエビング54の引き出しに伴い、ウエビング54がスプール68から離れる位置が背板58A側に(参考図の右側に)変位した際に、ウエビング54の背板58A側の面とプロテクタ78とが接触することが明らかである。そして、ウエビング54とプロテクタ78とが接触した状態において、ウエビング54の長手方向他端側がスプール68から引き出されることにより、ウエビング54はプロテクタ78に対して摺動することになるから、プロテクタ78はウエビング54が摺動可能にされていると認められる。
一方で、上記アにおいて述べたように、ウエビング54の長手方向他端側がスプール68から引き出される際にウエビング54がスプール68から離れる位置におけるウエビング54とスプール68との合計半径が小さくされると認められるところ、当該合計半径が小さくされるにつれて、ウエビング54がスプール68から離れる位置は、フレーム58の背板58Aと反対側に(参考図の左側に)変位し、ウエビング54とプロテクタ78とが接触する圧力が小さくなるから、ウエビング54のプロテクタ78との摺動抵抗は小さくされると認められる。
(3)引用発明
上記(1)、(2)を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、第1の実施形態として、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「乗員Pを拘束するためのシートベルト46に取り付けられているタング48が連結されるバックル本体50と、
バックル本体50に連結されるウエビング54と、
ウエビング54の長手方向他端側が巻き付けられてバックル本体50及びウエビング54が引っ張られると回転力が作用し、回転力が耐捩り荷重を上回ると回転が許容されて、ウエビング54の長手方向他端側が引き出され、バックル本体50が荷重の作用方向に変位するスプール68と、
ウエビング54が摺動可能にされ、ウエビング54の長手方向他端側がスプール68から引き出される際にウエビング54がスプール68から離れる位置におけるウエビング54とスプール68との合計半径が小さくされてウエビング54の摺動抵抗は小さくされるプロテクタ78と、
を備えるバックル装置10。」
第5 対比・判断
1 対比
ア 本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「乗員P」は前者の「乗員」に相当し、以下同様に、
「乗員Pを拘束するためのシートベルト46」は「乗員に装着されるウェビング」に、
「取り付けられている」は「設けられる」に、
「タング48」は「タング」に、
「連結される」は「係合される」に、
「バックル本体50」は「バックル本体」に、
「連結される」は「連結される」に、
「ウエビング54」は「連結部材」に、
「巻き付けられ」は「巻取られ」に、
「耐捩り荷重」は「引出許容荷重」に、
「回転が許容されて、ウエビング54の長手方向他端側が引き出され」ることは「前記連結部材の」「引出しが許容され」ることに、
「バックル本体50が荷重の作用方向に変位する」ことは「前記バックル本体の延出が許容される」ことに、
「スプール68」は「巻取軸」に、
「ウエビング54が摺動可能にされ」ることは「前記連結部材が摺動可能にされ」ることに、
「ウエビング54がスプール68から離れる位置」は「前記連結部材の前記巻取軸からの引出位置」に、
「ウエビング54とスプール68との合計半径」は「前記連結部材と前記巻取軸との合計半径」に、
「プロテクタ78」は「摺動部」に、
「バックル装置10」は「バックル装置」に、それぞれ相当する。
イ 引用発明において「ウエビング54」は「バックル本体50に連結され」ているから、上記アを踏まえると、引用発明の「ウエビング54の長手方向他端側が巻き付けられてバックル本体50及びウエビング54が引っ張られると回転力が作用」することは、本願発明の「前記連結部材が巻取られて前記バックル本体と前記連結部材を介して連結され」ることに相当する。
ウ 引用発明において、「回転力が耐捩り荷重を上回ると回転が許容されて、ウエビング54の長手方向他端側が引き出され、バックル本体50が荷重の作用方向に変位する」ことは、「回転力が耐捩り荷重を上回」らないと「回転が許容され」ず、「ウエビング54の長手方向他端側が引き出され」ず、「バックル本体50が荷重の作用方向に変位」しないことも意味するといえる。してみると、上記アを踏まえると、引用発明の「回転力が耐捩り荷重を上回ると回転が許容されて、ウエビング54の長手方向他端側が引き出され、バックル本体50が荷重の作用方向に変位する」ことは、本願発明の「前記連結部材の引出しが制限されると共に、前記連結部材の引出許容荷重以上での引出しが許容されて前記バックル本体の延出が許容される」ことに相当する。
エ 上記アを踏まえると、引用発明の「ウエビング54の長手方向他端側がスプール68から引き出される際にウエビング54がスプール68から離れる位置におけるウエビング54とスプール68との合計半径が小さくされてウエビング54の摺動抵抗は小さくされる」ことは、本願発明の「前記連結部材の前記巻取軸からの引出しが許容される際に前記連結部材の前記巻取軸からの引出位置における前記連結部材と前記巻取軸との合計半径が小さくされて前記連結部材の摺動抵抗が小さくされる」ことに相当する。
してみれば、両者は、以下の点で一致し、相違点は存在しない。
[一致点]
「乗員に装着されるウェビングに設けられるタングが係合されるバックル本体と、
前記バックル本体に連結される連結部材と、
前記連結部材が巻取られて前記バックル本体と前記連結部材を介して連結され、前記連結部材の引出しが制限されると共に、前記連結部材の引出許容荷重以上での引出しが許容されて前記バックル本体の延出が許容される巻取軸と、
前記連結部材が摺動可能にされ、前記連結部材の前記巻取軸からの引出しが許容される際に前記連結部材の前記巻取軸からの引出位置における前記連結部材と前記巻取軸との合計半径が小さくされて前記連結部材の摺動抵抗が小さくされる摺動部と、
を備えるバックル装置。」
2 判断
本願発明は、引用発明である。
3 審判請求人の主張について
(1)審判請求人の主張
審判請求人は、令和6年12月23日の審判請求書において、以下のように主張する。
ア 主張A
「しかしながら、引用文献1では、ウェビング54のスプール68からの引出しが許容される際に、ウェビング54がプロテクタ78のウェビング挿通孔80と背板58Aとの間の部分に対し摺動されることが記載されていない(段落[0049]及び図8参照)。なお、図8では、スプール68に巻取られたウェビング54が引出されほどかされるポイントが物理学的にいって図示されている点よりもフレーム58の開口60に寄った点になることは記載されておらず、ウェビング54がウェビング挿通孔80に向かう途中でプロテクタ78のウェビング挿通孔80と背板58Aとの間の部分に接触、摺動することは記載されていない。また、段落[0049]に「このプロテクタ78によって、ウェビング54とフレーム58との接触が防止されている。」と記載されているが、ウェビング54がプロテクタ78のウェビング挿通孔80と背板58Aとの間以外の部分に接触することが考えられ、ウェビング54がプロテクタ78のウェビング挿通孔80と背板58Aとの間の部分に接触することが記載されていることにはならない。さらに、図3では、ウェビング54が、スプール68から図の上方に引出されて、プロテクタ78に接触されない。」
イ 主張B
「また、図8では、ウェビング54がスプール68からの引出位置において屈曲されている。このため、仮に、ウェビング54のスプール68からの引出位置をスプール68径方向内方に押圧する押圧部材が設けられて、ウェビング54の巻半径の減少に伴い押圧部材がスプール68径方向内方に移動されるとすると、ウェビング54のスプール68からの引出しが許容される際に、ウェビング54がプロテクタ78のウェビング挿通孔80と背板58Aとの間の部分に対し摺動されない。
したがって、引用文献1には、本発明の「摺動部」に対応するものが記載されていない。」
ウ 主張C
「これにより、ウェビング54の巻半径が小さくされて、ウェビング54の引出許容荷重が大きくされることで、バックル本体50の延出が許容される荷重のバラツキを抑制できない。」
(2)審判請求人の主張に対する判断
ア 主張Aについて
上記第4 1(2)イで認定したとおりであるから、審判請求人の主張Aは採用することができない。
イ 主張Bについて
審判請求人が主張する「ウェビング54のスプール68からの引出位置をスプール68径方向内方に押圧する押圧部材が設けられて、ウェビング54の巻半径の減少に伴い押圧部材がスプール68径方向内方に移動される」との事項は引用文献1に記載されていない。また、当該事項が技術常識であるとも認められない。してみると、引用発明は当該事項を有していないと解することが自然である。したがって、審判請求人の主張Bは採用することができない。
ウ 主張Cについて
審判請求人が主張する「バックル本体50の延出が許容される荷重のバラツキを抑制」との事項は、請求項1に記載されていないから、審判請求人の主張Cは、請求項1の記載に基づく主張であるとは認められず、採用することができない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-020557