特許拒絶査定不服審判
2023-003814
レーダ装置およびレーダ装置の対象物検出方法
- 審判番号
- 2023-003814
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-562089
- 請求日
- 2023年03月06日
- 審決日
- 2024年10月16日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】古河電気工業株式会社
- 【請求人代理人】来間 清志
- 【請求人代理人】加藤 竜太
- 【請求人】古河AS株式会社
- 【請求人代理人】来間 清志
- 【請求人代理人】加藤 竜太
- 審判長/審判官
- 審判長 濱野 隆
- 審判官 佐々木 祐
- 審判官 中塚 直樹
- 分類
- P18 .575-Z (G01S) / P18 .121-Z (G01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第159条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-562089「レーダ装置およびレーダ装置の対象物検出方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 7月 4日国際公開、WO2019/131739〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)12月26日を国際出願日とする日本語特許出願(優先権主張 2017年(平成29年)12月28日)であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。なお、以下、2017年12月28日を「優先日」という。
令和4年 6月 1日付け :拒絶理由通知書
同年10月 5日 :意見書及び手続補正書の提出
同年12月 1日付け :拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月 6日 :原査定の謄本の送達)
令和5年 3月 6日 :審判請求書及び手続補正書の提出
令和6年 2月28日付け :審尋
同年 5月 7日 :回答書の提出
第2 令和5年3月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年3月6日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の概要
令和5年3月6日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正するものであって、次の(1)に示される本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、後記の(2)に示される本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、令和4年10月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
第1周波数を有する第1送信信号と、前記第1周波数とは異なる第2周波数を有する第2送信信号とを少なくとも送信する送信手段と、
前記送信手段によって送信され、1または複数の対象物によって反射された前記第1送信信号および前記第2送信信号を、第1受信信号および第2受信信号として受信する受信手段と、
前記受信手段から出力される前記第1受信信号および前記第2受信信号のそれぞれに対して直交復調を施す直交復調手段と、
所定の距離と、前記第1周波数および前記第2周波数と、に対応する所定の位相角を決定し、決定した前記所定の位相角に応じて、前記直交復調された前記第1受信信号および前記第2受信信号の少なくとも一方をIQ平面上において回転させる回転手段と、
前記回転手段によって少なくとも一方が回転された前記第1受信信号および前記第2受信信号を加算または減算する処理手段と、
前記処理手段の処理結果に基づいて1または複数の前記対象物を検出する検出手段と、
を有することを特徴とするレーダ装置。」
(2) 本件補正後の請求項1
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。
「【請求項1】
第1周波数を有する第1送信信号と、前記第1周波数とは異なる第2周波数を有する第2送信信号とを少なくとも送信する送信手段と、
前記送信手段によって送信され、複数の対象物によって反射された前記第1送信信号および前記第2送信信号を、第1受信信号および第2受信信号として受信する受信手段と、
前記受信手段から出力される前記第1受信信号および前記第2受信信号のそれぞれに対して直交復調を施す直交復調手段と、
所定の距離と、前記第1周波数および前記第2周波数と、に対応する所定の位相角を決定し、決定した前記所定の位相角に応じて、前記直交復調された前記第1受信信号および前記第2受信信号の少なくとも一方をIQ平面上において回転させる回転手段と、
前記回転手段によって少なくとも一方が回転された前記第1受信信号および前記第2受信信号を加算または減算する処理手段と、
前記処理手段の処理結果に基づいて1または複数の前記対象物を検出する検出手段と、
を有し、
前記回転手段は、複数の前記対象物のうち一の前記対象物との距離と、前記第1周波数と、に対応する第1の位相角が、前記一の前記対象物との距離と、前記第2周波数と、に対応する第2の位相角と同じになるように前記直交復調された前記第1受信信号および前記第2受信信号の少なくとも一方をIQ平面上において回転させることを特徴とするレーダ装置。」
2 本件補正の目的について
本件補正による請求項1についての補正は、本件補正前の「回転手段」が「前記直交復調された前記第1受信信号および前記第2受信信号の少なくとも一方をIQ平面上において回転させる」ことについて、その具体的態様を、「複数の前記対象物のうち一の前記対象物との距離と、前記第1周波数と、に対応する第1の位相角が、前記一の前記対象物との距離と、前記第2周波数と、に対応する第2の位相角と同じになるように前記直交復調された前記第1受信信号および前記第2受信信号の少なくとも一方をIQ平面上において回転させる」と限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正による請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3 独立特許要件について
本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか否か、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明の認定等
ア 本件補正発明の認定と分説
本件補正発明は、前記1(2)の本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。本件補正後の請求項1を次に再掲するとともに、参考として本願の図1及び図9を符号の説明とともに示す。
なお、便宜上次のとおり、構成Xと構成Aから構成Fまでに分説する。
「【請求項1】
(構成A)第1周波数を有する第1送信信号と、前記第1周波数とは異なる第2周波数を有する第2送信信号とを少なくとも送信する送信手段と、
(構成B)前記送信手段によって送信され、複数の対象物によって反射された前記第1送信信号および前記第2送信信号を、第1受信信号および第2受信信号として受信する受信手段と、
(構成C)前記受信手段から出力される前記第1受信信号および前記第2受信信号のそれぞれに対して直交復調を施す直交復調手段と、
(構成D0)所定の距離と、前記第1周波数および前記第2周波数と、に対応する所定の位相角を決定し、決定した前記所定の位相角に応じて、前記直交復調された前記第1受信信号および前記第2受信信号の少なくとも一方をIQ平面上において回転させる回転手段と、
(構成E)前記回転手段によって少なくとも一方が回転された前記第1受信信号および前記第2受信信号を加算または減算する処理手段と、
(構成F)前記処理手段の処理結果に基づいて1または複数の前記対象物を検出する検出手段と、
を有し、
(構成D1)前記回転手段は、複数の前記対象物のうち一の前記対象物との距離と、前記第1周波数と、に対応する第1の位相角が、前記一の前記対象物との距離と、前記第2周波数と、に対応する第2の位相角と同じになるように前記直交復調された前記第1受信信号および前記第2受信信号の少なくとも一方をIQ平面上において回転させることを特徴とする
(構成X)レーダ装置。」
<参考図>
【図1】
[図:0001417980000001.jpg]
10 レーダ装置
11 制御部 12 局部発振部
13 変調信号生成部 14 変調部
15 増幅部 16 送信アンテナ
17 受信アンテナ 18 増幅部
19 局発周波数モニタ部 20 直交復調部
21 ADC 22 信号処理部
23 データ処理部
【図9】
[図:0001417980000002.jpg]
イ 課題・作用効果に関連する明細書の詳細な発明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、本件補正発明の背景・目的に関する記載を抜粋する(下線部は合議体による。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置およびレーダ装置の対象物検出方法に関するものである。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す技術では、対象物が近接して存在する場合には、これらの対象物を弁別することができないという問題点がある。
【0005】
また、送信するパルス信号としては、時間軸上において、単峰型の波形信号(例えば、ガウス関数型の波形信号)に制限される。このようなパルス信号は、周波数軸上においてもガウス関数型の波形となることから、中心周波数成分が最も大きく、帯域の端部に近づく程強度が低くなる。この結果、使用可能な周波数帯域を有効利用できないことから、時間軸でのパルス幅が広くなり、距離の分解能が低下するという問題点がある。
【0006】
本発明は、近接して存在する対象物を弁別するとともに、距離の分解能を向上させることが可能なレーダ装置およびレーダ装置の対象物検出方法を提供することを目的としている。」
「【0037】
まず、図4~7を参照して、本発明の動作原理について説明する。図4(A)は、第1対象部と第2対象物の2つの対象物が距離d1を隔てて存在する場合を示している。なお、図4(A)において横軸は距離を示し、縦軸は対象物によって反射される反射信号の反射強度を示している。図4(A)において、距離d1がレーダ装置の分解能未満である場合、第1対象物と第2対象物とを弁別することができない。すなわち、レーダ装置は、図4(B)に示すように、第1対象物からの反射信号R1と、第2対象物からの反射信号R2とを区別することができず、これらの合成波としての反射信号R12として検出する。なお、図4(B)の横軸は距離を示し、縦軸は信号強度を示している。」
「【図4】
[図:0001417980000003.jpg]
」
「【0040】
図7は、図4に示すように、第1対象物と第2対象物が、分解能未満の距離dを隔てて存在する場合において、受信信号を直交復調した結果を示している。より詳細には、図7(A)に示すように、第1対象物からの反射信号R1と、第2対象物からの反射信号R2とが合成されて反射信号R12が生成されている場合に、反射信号R12のP1とP2の2箇所において受信信号を直交復調した結果を図7(B)および図7(C)に示す。
【0041】
図7(B)は、P1における直交復調の結果を示している。図7(B)に示すように、P1における直交復調の結果は、P1における第1対象物からの反射信号R1の振幅に応じた半径r1と第1対象物の距離に対応する位相角θ1を有する細線の矢印と、P1における第2対象物からの反射信号R2の振幅に応じた半径r2と第2対象物の距離に対応する位相角θ2を有する細線の矢印とが合成された結果が太線の矢印として表示されている。
【0042】
図7(C)は、P2における直交復調の結果を示している。図7(C)に示すように、P2における直交復調の結果は、P2における第1対象物からの反射信号R1の振幅に応じた半径r1と第1対象物の距離に対応する位相角θ1を有する細線の矢印と、P2における第2対象物からの反射信号R2の振幅に応じた半径r2と第2対象物の距離に対応する位相角θ2を有する細線の矢印とが合成された結果が太線の矢印として表示されている。
【0043】
このように、異なる対象物からの反射信号が混合した場合でも、これらの信号に対して直交復調を施すと、それぞれの対象物からの反射信号の位相は維持される。但し、レーダ装置に検出される信号は、反射信号R12であるので、第1対象物と第2対象物とを弁別することはできない。」
「【図7】
[図:0001417980000004.jpg]
」
「【0044】
そこで、本発明の実施形態では、パルス信号の周波数を変更して対象物を検出することで、レーダ装置10の分解能未満の間隔dを隔てて配置されている第1対象物および第2対象物を弁別することができる。これについて、以下に説明する。
【0045】
レーダ装置10から距離L1離れた位置に第1対象物が存在し、距離L2離れた位置に第2対象物が存在する場合を想定する。また、レーダ装置10は周波数f1と周波数f2の2種類のパルス信号を送信する場合を想定し、周波数f1に対する波数をk1(=2πf1/c)とし、周波数f2に対する波数をk2(=2πf2/c)とする。なお、cは光速を示している。図8は、周波数f1および周波数f2のパルス信号の周波数特性と、スペクトルマスクとの関係を示す図である。図8に示すように、周波数f1および周波数f2のパルス信号は、周波数軸上においてシフトされるとともに、スペクトルマスク内に収まった状態とされている。
【0046】
IQ平面における任意の点は、A×exp(iθ)で示すことができる。ここで、Aは振幅を示し、iは虚数を示し、θは位相角を示す。以下の説明では、振幅Aについては説明を簡略化するために“1”であるとする。
【0047】
このような場合に、図9(A)に示すP1における反射信号R12を直交復調した場合、図9(B)に示すように、周波数f1による検出信号は以下の式(1)で表される。なお、式(1)の第1項が図9(B)の第1対象物に対応する実線の細線の矢印に対応し、式(1)の第2項が図9(B)の第2対象物に対応する実線の細線の矢印に対応している。
【0048】
exp(i×k1×L1)+exp(i×k1×L2) ・・・(1)
【0049】
また、図9(A)に示すP1における反射信号R12を直交復調した場合、図9(B)に示すように、周波数f2における検出信号は以下の式(2)で表される。なお、式(2)の第1項が図9(B)の第1対象物に対応する破線の細線の矢印に対応し、式(2)の第2項が図9(B)の第2対象物に対応する破線の細線の矢印に対応している。
【0050】
exp(i×k2×L1)+exp(i×k2×L2) ・・・(2)
【0051】
k2=k1+Δkとすると、式(2)は以下の式(3)となる。
【0052】
exp(i×k1×L1)×exp(i×Δk×L1)
+exp(i×k1×L2)×exp(i×Δk×L2) ・・・(3)
【0053】
ここで、式(3)に対してexp(-i×Δk×L1)を乗算すると以下の式(4)を得る。なお、式(3)に対してexp(-i×Δk×L1)を乗算することは、IQ平面上において、図9(B)に示す周波数f2による検出結果(太線の破線の矢印)を、周波数f1による検出結果(太線の実線の矢印)と同じ位相角まで時計方向に回転させることを意味する(図9(C)参照)。
【0054】
exp(i×k1×L1)
+exp(i×k1×L2)×exp(i×Δk(L2-L1)) ・・・(4)
【0055】
式(1)から式(4)を減算すると以下の式(5)を得る。
【0056】
exp(i×k2×L2)-exp(i×k1×L2)×exp(i×Δk(L2-L1)) ・・・(5)
【0057】
L1が既知の場合、第1対象物に関する項を消去することができるので、第2対象物に関する情報のみを得ることができる。」
「【図9】
[図:0001417980000005.jpg]
」
「【0058】
以上は、第1対象物と第2対象物が分解能未満の距離で配置される場合に、これらを弁別するための動作原理を説明したが、本実施形態では、これ以外にも図10に示すように、分解能以上の距離d2を隔てて配置されている第1対象物と第2対象物のうち、(1)いずれか一方を抑制したり、あるいは、(2)いずれか一方を強調したりすることもできる。
【0059】
まず、前者の(1)いずれか一方を抑制する方法としては、周波数f1による検出動作を行った後に、周波数f2による検出動作を行い、位相回転処理を実行し、両者の差分を計算することで、目的の成分を抑制し、それ以外の成分を抽出することができる。
【0060】
より詳細には、周波数f1による検出信号は以下の式(6)で表される。
【0061】
exp(i×k1×L1)+exp(i×k1×L2) ・・・(6)
【0062】
また、周波数f2による検出信号は以下の式(7)で表される。
【0063】
exp(i×k2×L1)+exp(i×k2×L2)
=exp(i×k1×L1)×exp(i×Δk×L1)
+exp(i×k1×L2)×exp(i×Δk×L2) ・・・(7)
【0064】
ここで、式(8)に対してexp(-i×Δk×L1)を乗算すると以下の式(8)を得る。
【0065】
=exp(i×k1×L1)
+exp(i×k1×L2)×exp(i×Δk×(L2-L1)) ・・・(8)
【0066】
式(6)から式(8)を減算すると以下の式(9)を得る。
【0067】
exp(i×k1×L2)(1-exp(i×Δk×(L2-L1))) ・・・(9)
【0068】
すなわち、第1対象物に関する信号を抑制し、第2対象物に関する信号を抽出することができる。レーダ装置のレドームや、当該レーダ装置が搭載される車両のバンパ等を第1対象物として扱えば、これらから反射される信号を抑制することができる。
【0069】
なお、以上では、説明を簡略化するために、第1対象物が物として存在するとして説明したが、例えば、送信アンテナ16から受信アンテナ17に直接回り込む信号を第1対象物に対応する信号として扱えば、当該回り込む信号を抑制することもできる。加えて、レーダ装置のレドームや、当該レーダ装置が搭載される車両のバンパ等と合算して信号を抑制することも可能である。」
「【0073】
つぎに、(2)いずれか一方を強調する方法については、周波数f1で検出動作を行った後に、周波数f2で検出動作を行い、位相回転処理を実行し、両者を加算することで、目的の成分を強調することができる。
【0074】
より詳細には、前述した式(6)と式(8)を加算すると以下の式(10)を得る。
【0075】
2×exp(i×k1×L1)
+exp(i×k1×L2)×(1+exp(i×Δk×(L2-L1))) ・・・(10)
【0076】
すなわち、位相が同じ第1対象物については信号成分が2倍されている一方で、第2対象物については位相が異なることから2倍未満とされる。このため、第1対象物に関する成分を強調することができる。」
「【0079】
以上に説明したように、本発明の実施形態によれば、距離が分かっている所定の対象物を強調したり、抑制したりすることが可能となる。このため、例えば、レーダ装置10を覆うレドームや、車両のバンパからの反射波による誤検出等を抑制することができる。」
「【0101】
また、以上の実施形態では、送信パルス信号の波形としては、図20(A)に示すガウス関数型のパルス信号を用いることを想定しているが、例えば、図20(C)に示すSinc関数型のパルス信号を用いるようにしてもよい。
【0102】
より詳細には、図20(A)に示す、時間領域においてガウス関数型の波形を有するガウス関数型のパルス信号の場合、周波数領域でも図20(B)に示すようにガウス関数型の波形を有する。このため、図中に破線で示すスペクトルマスクを十分に利用していないため、時間領域におけるパルス波形の幅w1が広くなる。一方、図20(C)に示すSinc関数型のパルス信号の場合、図20(D)に示すように図中に破線で示すスペクトルマスクを十分に利用していることから、パルス波形の幅w2をw1に比較して狭くすることができる。
【0103】
なお、従来技術では、図20(C)に示すSinc関数型のパルス信号を用いた場合、当該パルスは複峰であるので、それぞれのピークにおいて複数の対象物を誤検出してしまう。一方、本実施形態では、それぞれのピークに対応する成分の一つを前述した処理によって抑制すると、他のピークからの成分も、同じ対象物からの反射信号であることから、同様に抑制される。このため、複数のピークが存在する複峰型のパルス波形を用いた場合でも、誤検出を防止できる。また、このような幅w2が狭いパルス信号を用いることで、例えば、TOF(Time of Flight)によって、対象物までの距離を検出する際に、距離の分解能を向上させることができる。」
「【図20】
[図:0001417980000006.jpg]
」
(2) 引用文献3の記載事項及び引用発明の認定
ア 引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用され、優先日前に発行された文献である米国特許出願公開第2017/0219691号明細書(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。
なお、引用文に続く括弧内に当合議体が作成した訳文を記載している。また、下線は、当合議体が付したものである。
(ア) 段落[0002]-[0003]
「[0002] 1. Technical Field
[0003] The present disclosure is related to automotive radar systems
and, in particular, to an apparatus and method for attenuating
close-range radar signals in an automotive radar sensor.」
([0002] 1.発明の属する技術分野
[0003] 本開示は、自動車レーダシステムに関し、特に、自動車レーダセンサにおいて近距離レーダ信号を減衰させるための装置及び方法に関する。)
(イ) 段落[0028]-[0031]、Fig. 1
「[0028] According to the exemplary embodiments of the present
disclosure, provided is an automotive radar system in which the
undesirable effects of objects appearing at a particular
predetermined range are removed from the radar signal. For example,
the effects contributed to the radar signal by the bumper fascia of
the host vehicle, which may generate a near-range time-varying
signal due to vibrations and other movement relative to the radar
sensor, can be eliminated. This results in substantially improved
radar system performance characterized by substantial improvement in
the ability of the automotive radar system to detect objects and
correctly determine their range, bearing and Doppler velocity.
According to the exemplary embodiments, the system of the disclosure
eliminates or substantially reduces these undesirable effects by
substantially or completely attenuating the signal at the range at
which the object producing the signal, e.g., the bumper fascia, is
located. The technique is also effective at removing any signal that
is due to an object that is physically very close to the sensor,
e.g., rain spray, reflection from rotating tire(s), etc. The
technique of the current disclosure can also be used to attenuate
signals at any predetermined range from the sensor.」
([0028] 本開示の例示的な実施形態によれば、特定の所定の距離に現れる物体の望ましくない影響がレーダ信号から除去される自動車用レーダシステムが提供される。例えば、振動及びレーダセンサに対する他の動きに起因して近距離時変信号を生成し得る、ホスト車両のバンパフェイシアによってレーダ信号に寄与される影響を除去することができる。この結果、自動車レーダシステムが物体を検出し、その距離、方位、及びドップラー速度を正確に決定する能力が大幅に向上することを特徴とするレーダシステムの性能が大幅に向上する。例示的な実施形態によれば、本開示のシステムは、信号を生成する物体、例えばバンパフェイシアが位置する距離で信号を実質的に又は完全に減衰させることによって、これらの望ましくない影響を排除又は実質的に低減する。この技術はまた、センサに物理的に非常に近い物体(例えば、雨の噴霧、回転するタイヤからの反射など)に起因する任意の信号を除去するのに有効である。本開示の技術はまた、センサからの任意の所定の距離における信号を減衰させるために使用されることができる。)
「[0029] FIG. 1 includes a schematic block diagram of an
automotive radar system 10, including one or more radar sensor
modules 12 for processing automotive radar signals, in accordance
with some exemplary embodiments. Referring to FIG. 1, system 10
includes one or more radar modules 12, which process radar transmit
and receive signals which are compatible with the radar detection
and monitoring system 10 in the host automobile. Radar module 12
generates and transmits radar signals into the region adjacent to
the host vehicle that is being monitored by the radar system.
Generation and transmission of signals is accomplished by RF signal
generator 24, radar transmit circuitry 20 and transmit antenna 16.
Radar transmit circuitry 20 generally includes any circuitry
required to generate the signals transmitted via transmit antenna
16, such as pulse shaping/timing circuitry, transmit trigger
circuitry, RF switch circuitry, or any other appropriate transmit
circuitry used by radar system 10.」
([0029] 図1は、いくつかの例示的な実施形態による、自動車レーダ信号を処理するための一つ又は複数のレーダセンサモジュール12を含む自動車レーダシステム10の概略ブロック図を含む。図1を参照すると、システム10は、ホスト自動車内のレーダ検出及び監視システム10と互換性のあるレーダ送信及び受信信号を処理する一つ又は複数のレーダモジュール12を含む。レーダモジュール12は、レーダ信号を生成し、レーダシステムによって監視されているホスト車両に隣接する領域に送信する。信号の生成及び送信は、RF信号発生器24、レーダ送信回路20及び送信アンテナ16によって達成される。レーダ送信回路20は、一般に、パルス整形/タイミング回路、送信トリガ回路、RFスイッチ回路、又はレーダシステム10によって使用される任意の他の適切な送信回路など、送信アンテナ16を介して送信される信号を生成するのに必要な任意の回路を含む。)
「Fig. 1
[図:0001417980000007.jpg]
」
「[0030] Radar module 12 also receives returning radar signals at
radar receive circuitry 22 via receive antenna 18. Radar receive
circuitry 22 generally includes any circuitry required to process
the signals received via receive antenna 18, such as pulse
shaping/timing circuitry, receive trigger circuitry, RF switch
circuitry, or any other appropriate receive circuitry used by the
radar system. The received signals processed by radar receive
circuitry 22 are forwarded to phase shifter circuitry 26, which
generates two signals having a predetermined phase difference. These
two signals, referred to as an inphase (I) signal and a quadrature
(Q) signal, are mixed with an RF signal from RF signal generator 24
by mixers 28 and 30, respectively. The resulting difference signals
are further filtered as required by filtering circuitry 32 to
generate baseband I and Q signals, labeled I and Q in FIG. 1. The
baseband I and Q signals are digitized by analog-to-digital
converter circuitry (ADC) 34.」
([0030] レーダモジュール12はまた、受信アンテナ18を介してレーダ受信回路22において戻りレーダ信号を受信する。レーダ受信回路22は、一般に、パルス整形/タイミング回路、受信トリガ回路、RFスイッチ回路、又はレーダシステムによって使用される任意の他の適切な受信回路など、受信アンテナ18を介して受信された信号を処理するのに必要な任意の回路を含む。レーダ受信回路22によって処理された受信信号は移相器回路26に転送され、移相器回路26は所定の位相差を有する二つの信号を生成する。同相(I)信号及び直交(Q)信号と呼ばれるこれらの二つの信号は、それぞれミキサ28及び30によってRF信号発生器24からのRF信号と混合される。結果として得られる差信号は、必要に応じてフィルタリング回路32によってさらにフィルタリングされて、図1にI及びQとラベル付けされたベースバンドI及びQ信号が生成される。ベースバンドI及びQ信号は、アナログ-デジタル変換器回路(ADC)34によってデジタル化される。)
「[0031] In automotive radar systems, these digitized I and Q baseband signals are processed by a processor, such as a digital signal
processor (DSP) 36. In some exemplary embodiments, the DSP 36 can
perform processing such as signal subtraction and/or Fast Fourier
Transform (FFT) processing to generate a plurality of range bins
processed according to the detailed description herein to attenuate
close-range radar signals to improve performance of radar system 10.
In one particular embodiment, radar system 10 is a blind spot radar
system used to detect and/or identify objects in a blind spot of a
host automobile.」
([0031] 自動車レーダシステムでは、これらのデジタル化されたI及びQベースバンド信号は、デジタル信号プロセッサ(DSP)36などのプロセッサによって処理される。いくつかの例示的な実施形態では、DSP36は、信号減算及び/又は高速フーリエ変換(FFT)処理などの処理を実行して、本明細書の詳細な説明に従って処理された複数の距離ビンを生成し、近距離レーダ信号を減衰させてレーダシステム10の性能を改善することができる。特定の一実施形態では、レーダシステム10は、ホスト自動車の死角内の物体を検出及び/又は識別するために使用される死角レーダシステムである。)
(ウ) 段落[0036]-[0041]、Figs.3-4
「[0036] FIG. 3 includes a schematic timing diagram which
illustrates exemplary timing of the radar processing to attenuate
near-range objects, according to some exemplary embodiments. FIG. 4
includes a logical flow diagram illustrating the logical flow of the
radar processing to attenuate near-range objects, according to some
exemplary embodiments. In the timing diagram of FIG. 3, the first
curve illustrates exemplary timing of exemplary illuminating
transmit pulses, the second curve illustrates exemplary timing of
exemplary receive and integration processing, the third curve
indicates exemplary timing of complex subtraction of the integrated
receive signals, and the fourth curve indicate exemplary object
detection radar processing on the subtracted receive signals for
multiple range increments.」
([0036] 図3は、いくつかの例示的な実施形態による、近距離物体を減衰させるためのレーダ処理の例示的なタイミングを示す概略タイミング図を含む。図4は、いくつかの例示的な実施形態による、近距離物体を減衰させるためのレーダ処理の論理フローを示す論理フロー図を含む。図3のタイミング図において、第1の曲線は、例示的な照射送信パルスの例示的なタイミングを示し、第2の曲線は、例示的な受信及び積分処理の例示的なタイミングを示し、第3の曲線は、積分された受信信号の複素減算の例示的なタイミングを示し、第4の曲線は、複数の距離増分に対する減算された受信信号に対する例示的な物体検出レーダ処理を示す。)
「Fig. 3
[図:0001417980000008.jpg]
Fig. 4
[図:0001417980000009.jpg]
」
「[0037] Referring to FIGS. 3 and 4, in step S302, for the first
range, i.e., Range 1, an illuminating radar pulse is transmitted at
a first frequency f1, as indicated by 302(111), where, by convention
used herein, the first number in parentheses indicates range
increment 1, the second number in parentheses indicates frequency
number 1, and the third number in parentheses indicates the number
of the pair of transmit pulses. Although not illustrated in FIG. 3,
this third number would run in a range from 1 to the number of
repetitions of the f1/f2 transmit pairs, which, as noted above, in
one particular exemplary embodiment, is 29. Returns are received and
integrated in step S304 for the first transmit pulse in the first
range, i.e., 302(111), as indicated by active receive signal or
receive gate 305(111). As indicated in step S306, an integrated
first receive signal for the signal transmitted at f1 is generated.
Next, as indicated in step S308, for the first range increment,
i.e., Range 1, radar pulse 302(121) is then transmitted at second
frequency f2. Returns are received and integrated in step S310 for
the second transmit pulse 302(121) in the first range increment as
indicated by active receive signal or receive gate 305(121). As
indicated in step S312, an integrated second receive signal for the
signal transmitted at f2 is generated.」
([0037] 図3及び図4を参照すると、ステップS302において、第1の距離、すなわち距離1に対して、照射レーダパルスは、302(111)によって示されるように第1の周波数f1で送信され、ここで、本明細書で使用される慣例により、括弧内の第1の数は距離増分1を示し、括弧内の第2の数は周波数番号1を示し、括弧内の第3の数は送信パルスのペアの数を示す。図3には示されていないが、この第3の数は、1からf1/f2送信ペアの反復数までの範囲内で変化し、上述のように、特定の例示的な一実施形態では当該反復数は29である。ステップS304において、アクティブな受信信号又は受信ゲート305(111)によって示されるように、第1の距離、すなわち302(111)内の第1の送信パルスに対する戻りが受信され、積分される。ステップS306に示すように、f1で送信された信号に対する統合された第1の受信信号が生成される。次に、ステップS308示すように、第1の距離増分、すなわち距離1に対して、レーダパルス302(121)が第2周波数f2で送信される。ステップS310において、アクティブな受信信号又は受信ゲート305(121)によって示されるように、第1の距離増分における第2の送信パルス302(121)に対する戻りが受信され、積分される。ステップS312に示されるように、f2で送信された信号に対する統合された第2の受信信号が生成される。)
「[0039] Next, as indicated in step S314 and by pulse 301(1) in
FIG. 3, the integrated first and second receive signals are
subtracted to generate a subtracted receive signal for the current
range increment, i.e., Range 1. Generally, the subtraction is a
complex subtraction of complex numbers. As indicated in step S316,
the range increment number is incremented, e.g., to Range 2, and, in
decision step S318, the range increment is checked to determine
whether the maximum range of interest being processed has been
reached. If not, then flow returns to step S302, and the process of
steps S302 through S318 is repeated for the next range increment,
i.e., Range 2. That is, two sets of transmit pulses are transmitted
at frequencies f1 and f2 in Range 2, and return signals are received
and integrated as illustrated by receive active signals or receive
gates 305(211) and 305(221). Subtraction is performed at 301(2) for
range increment Range 2.」
([0039] 次に、ステップS314及び図3のパルス301(1)によって示されるように、積分された第1及び第2の受信信号が減算されて、現在の距離増分、すなわち距離1についての減算された受信信号が生成される。一般に、減算は複素数の複素減算である。ステップS316に示されるように、距離インクリメント数は、例えば距離2にインクリメントされ、決定ステップS318において、距離インクリメントは、処理されている関心のある最大距離に達したか否かを決定するためにチェックされる。そうでない場合、フローはステップS302に戻り、ステップS302~S318のプロセスが、次の距離増分、すなわち距離2について繰り返される。すなわち、2組の送信パルスが距離2内の周波数f1及びf2で送信され、戻り信号が受信され、受信アクティブ信号又は受信ゲート305(211)及び305(221)によって示されるように積分される。減算は、距離増分の距離2に対して301(2)で実行される。)
「[0040] The above process continues until the entire process is
complete, i.e., a subtracted receive signal is generated for each
range increment or bin in the total range of interest. That is, as
illustrated in FIG. 3, the process continues until a subtracted
receive signal for Range N is competed. This is referred to as a
complete sweep of transmit pulses. After the complete sweep, in
decision step S318, the present range will exceed the maximum range
N, and flow continues to step S320. In step S320, radar processing
of the subtracted receive signals for the multiple ranges is
performed to provide object detection, as indicated by active object
detection processing signal 303 in the timing diagram of FIG. 3.
According to the exemplary embodiments, in contrast to prior
systems, the radar object detection of step S320 is carried out with
the effects of irrelevant near-range objects, such as, for example,
the bumper fascia, removed and, therefore, not influencing radar
object detection. In step S322, when relevant objects are detected,
alerts are generated.」
([0040] 上記のプロセスは、プロセス全体が完了するまで、すなわち、減算された受信信号が、関心のある全距離内の各距離増分又はビンについて生成されるまで続く。すなわち、図3に示すように、距離Nに対する減算された受信信号が競合するまで、プロセスは継続する。これは、送信パルスの完全掃引と呼ばれる。完全な掃引の後、決定ステップS318において、現在の距離は最大距離Nを超え、フローはステップS320に続く。ステップS320において、図3のタイミング図におけるアクティブ物体検出処理信号303によって示されるように、物体検出を提供するために、複数の距離に対する減算された受信信号のレーダ処理が実行される。本実施形態によれば、従来のシステムとは対照的に、ステップS320のレーダ物体検出は、例えばバンパフェイシアなどの無関係な近距離物体の影響が除去された状態で実行され、したがってレーダ物体検出に影響を及ぼさない。ステップS322において、関連する物体が検出されると、アラートが生成される。)
「[0041] With reference to FIG. 3, it is noted that the different
range increments are achieved by varying the time at which the
receiver is opened up to receive and process returns, relative to
the timing of the transmit pulses. That is, referring to FIG. 3, the
timing of the active receiver periods or range gates 305 with
respect to the transmit pulses is varied. By opening up the receiver
period later, a longer range is being analyzed, due to the longer
round-trip time of the signals being received and processed.
However, because of the relatively long transmit pulses and the
relatively short receive pulses, all returns will include
information related to short-range targets, e.g., the bumper fascia.
That is, all returns will be due to reflections from all objects
between immediately adjacent to the radar unit out to the maximum
range determined for the particular range increment, which is
defined by the relative timing of the transmit and receive pulses.
According to the disclosure, the complex subtraction of the returns
due to the different transmit frequencies within a range increment
attenuates the effects of these returns which are from close range
objects.」
([0041] 図3を参照すると、異なる距離増分は、送信パルスのタイミングに対して、受信機が受信のために開かれ、プロセスが戻る時間を変化させることによって達成されることに留意されたい。すなわち、図3を参照すると、送信パルスに対するアクティブ受信機期間又は距離ゲート305のタイミングが変更される。後に受信機期間を開くことによって、受信され処理される信号のより長い往復時間に起因して、より長い距離が分析される。しかしながら、比較的長い送信パルス及び比較的短い受信パルスのために、全ての戻りは、短距離ターゲット、例えば、バンパフェイシアに関連する情報を含む。すなわち、全ての戻りは、レーダユニットのすぐ隣から送信パルス及び受信パルスの相対的タイミングによって定義される特定の距離増分に対して決定された最大距離までの、全ての物体からの反射によるものである。本開示によれば、距離増分内の異なる送信周波数による戻りの複素減算は、近距離物体からのこれらの戻りの影響を減衰させる。)
(エ) 段落[0052]、Fig. 6
「[0052] According to some exemplary embodiments, optimum
cancellation of the unwanted bumper signal is achieved by dynamic
balancing of the radar signals of the two different frequencies
prior to differencing. This technique is referred to herein as
balanced FSK. FIG. 6 includes a logical flow diagram illustrating
the logical flow of the radar processing to attenuate near-range
objects, using balanced FSK, according to some exemplary
embodiments. FIG. 6 includes a modification to the flow diagram of
FIG. 4 to include the balancing step S513. All of the remaining
steps of FIG. 6 have the same reference numerals of corresponding
steps of FIG. 4 and are the same as described in detail above in
connection with FIG. 4. Detailed description of these like steps
will not be repeated.」
([0052] いくつかの例示的な実施形態によれば、不要なバンパ信号の最適なキャンセルは、差分をとる前に二つの異なる周波数のレーダ信号の動的なバランスをとることによって達成される。この技法は、本明細書ではバランスFSKと呼ばれる。図6は、いくつかの例示的な実施形態による、バランスFSKを使用して近距離物体を減衰させるためのレーダ処理の論理フローを示す論理フロー図を含む。図6は、図4のS513を含むように図4のフロー図を変更したものである。図6の残りのステップは全て、図4の対応するステップと同じ参照番号を有し、図4に関連して上記で詳細に説明したものと同じである。これらの同様のステップの詳細な説明は繰り返さない。)
「Fig. 6
[図:0001417980000010.jpg]
」
(オ) 段落[0053]-[0076]、Fig. 7
「[0053] FIG. 7 includes a logical flow diagram illustrating the
logical flow of the radar processing to produce the balancing that
optimizes the dual-frequency difference, according to some exemplary
embodiments. That is, FIG. 7 includes a detailed logical flow
diagram of the balancing step S513 shown in FIG. 6. The received
signals F1 and F2 at the two different radar frequencies f1 and f2,
respectively, are balanced to optimize the cancellation of the
unwanted residual from FSK subtraction. The balance adjustment
optimizes a measure of the match between the signals from the two
radar frequencies. In some exemplary embodiments, the match is
optimized for radar returns at the range of the bumper and other
nearby objects. The balance adjustment results in a change to the
complex phase and amplitude of one or both of the received signals.
The amount of adjustment is determined by an optimization, e.g.,
minimization, process using radar signals from the region near the
bumper.」
([0053] 図7は、いくつかの例示的な実施形態による、デュアル周波数差を最適化するバランシングを生成するためのレーダ処理の論理フローを示す論理フロー図を含む。すなわち、図7は、図6に示すバランシングステップS513の詳細な論理フロー図を含む。二つの異なるレーダ周波数f1及びf2における受信信号F1及びF2は、それぞれ、FSK減算からの望ましくない残余の相殺を最適化するようにバランスされる。バランス調整は、二つのレーダ周波数からの信号間のマッチングの程度を最適化する。いくつかの例示的な実施形態では、マッチングは、バンパ及び他の近くの物体の距離におけるレーダの戻りに対して最適化される。バランス調整の結果、受信信号の一方又は両方の複素位相及び振幅が変化する。調整量は、バンパ付近の領域からのレーダ信号を用いた最適化(例えば最小化)処理によって決定される。)
「Fig. 7
[図:0001417980000011.jpg]
」
「[0056] Referring to FIG. 7, according to the exemplary
embodiments, the data are conditioned by subtracting the true zero
value from the data, as illustrated at step S513A. Each true zero
value is subtracted from the entire signal from which it was
sampled. I and Q signals are conditioned separately. FIG. 9
illustrates an I and a Q signal prior to this conditioning, with the
true zero at 40 and 30 respectively. The subtraction of the true
zero value may be understood as the removal of unwanted offsets
introduced by the specific characteristics of the radar hardware.」
([0056] 図7を参照すると、例示的な実施形態によれば、データは、ステップS513Aに示すように、データから真のゼロ値を減算することによって調整される。各真のゼロ値は、それがサンプリングされた信号全体から減算される。I及びQ信号は別々に調整される。図9は、この調整の前のI及びQ信号を示し、真のゼロはそれぞれ40及び30にある。真のゼロ値の減算は、レーダハードウェアの特定の特性によって導入される望ましくないオフセットの除去として理解することができる。)
「[0057] FIG. 9 shows the signals as a function of receiver gate
delay, as determined by the timing of the receive sample and hold.
Referring to FIG. 9, according to the exemplary embodiments, the
balance region is denoted as the signal region between the two
dashed vertical lines. The balance region corresponds to the receipt
of radar reflected energy from objects at close ranges, including
the bumper fascia. The signal function shown in FIG. 9 can be
described as the integration of the receive gate pulse with the
reflected radar signal from the longer transmit pulse. Various
exemplary embodiments may assign the balance region to different
locations on the signal. The important characteristic of the balance
region is that it corresponds to the radar range where we desire to
substantially attenuate or eliminate object detection.」
([0057] 図9は、受信サンプルアンドホールドのタイミングによって決定される、受信機ゲート遅延の関数としての信号を示す。図9を参照すると、例示的な実施形態によれば、バランス領域は、二つの垂直破線の間の信号領域として示される。バランス領域は、バンパフェイシアを含む近距離の物体からのレーダ反射エネルギーの受信に対応する。図9に示される信号関数は、受信ゲートパルスと、より長い送信パルスからの反射レーダ信号との積分として記述することができる。様々な例示的な実施形態は、バランス領域を信号上の異なる位置に割り当てることができる。バランス領域の重要な特性は、物体検出を実質的に減衰又は除去することが望まれるレーダ距離に対応することである。)
「[0058] Step S513B of FIG. 7 prepares the initial version of the balance hypothesis set. The balance hypothesis set is a set of M
hypotheses, where the mth hypothesis includes a proposed balance
amplitude Am, and a proposed balance phase φm. In one exemplary
embodiment, the initial version of the balance hypothesis set is
defined as the set of M=9 hypotheses described by:
Initial balance hypothesis set={A+iΔA, φ+jΔφ}
[0059] where i∈{-1, 0, +1}
[0060] and j∈{-1, 0, +1}.
In one exemplary embodiment, the initial value of the amplitude A is
1.0, the initial value of phase φ is 0.0 degrees, the value of the
amplitude step ΔA is 0.1, and the value of phase step Δφ is 10
degrees. Other embodiments may determine the hypothesis set in a
different manner.」
([0058] 図7のステップS512Bは、バランス仮説セットの初期バージョンを準備する。バランス仮説セットは、M個の仮説のセットであり、m番目の仮説は、提案されたバランス振幅Am及び提案されたバランス位相φmを含む。例示的な一実施形態では、バランス仮説セットの初期バージョンは、以下によって記述されるM=9個の仮説のセットとして定義される。
初期バランス仮説セット={A+iΔA,φ+jΔφ}
[0059] ただし、i∈{-1,0,+1}
[0060] かつ、j∈{-1,0,+1}
例示的な一実施形態では、振幅Aの初期値は1.0であり、位相の初期値は0.0度であり、振幅ステップΔAの値は0.1であり、位相ステップの値Δφは10度である。他の実施形態は、異なる方法で仮説セットを決定することができる。)
「[0062] Step S513C of FIG. 7 computes the F1 balance value and
the F2 balance value. According to one exemplary embodiment, the
computation of each balance value is a simple average of a
collection of samples from the balance region. Various embodiments
may set the balance value from a single sample of the radar signal
or a combination of several signal values from the balance region.
Those of ordinary skill in the art will recognize that the balance
values of the I and Q radar signals may be treated jointly as
complex values. Two complex balance values are obtained for the two
radar signals F1 and F2, collected with the radar frequencies f1 and
f2, respectively.」
([0062] 図7のステップS513Cは、F1バランス値及びF2バランス値を計算する。一つの例示的な実施形態によれば、各バランス値の計算は、バランス領域からのサンプルの集合の単純平均である。様々な実施形態は、バランス領域からのレーダ信号の単一のサンプル又はいくつかの信号値の組合せからバランス値を設定することができる。当業者であれば、I及びQレーダ信号のバランス値を複合値として一緒に扱うことができることを認識するであろう。二つの複素バランス値が、それぞれレーダ周波数f1及びf2で収集された二つのレーダ信号F1及びF2について得られる。)
「[0063] Step S513D increments the hypothesis loop counter, which is denoted by m.」
([0063] ステップS513Dは、mによって示される仮説ループカウンタをインクリメントする。)
[0064] Step S513E computes the hypothetical F2 balance value using
the F2 balance value determined in step S513C and the mth balance
hypothesis.
F2'I = Am(F2I cosφm - F2Q sinφm)
F2'Q = Am(F2Q cosφm + F2I sinφm)
In the above equations, F2'I denotes the real part of the
hypothetical F2 balance value, and F2'Q denotes the imaginary part
of the hypothetical F2 balance value.」
([0064] ステップS513Eは、ステップS513Cにおいて決定されたF2バランス値及びm番目のバランス仮説を使用して、仮説F2バランス値を計算する。
F2’I=Am(F2Icosφm - F2Qsinφm)
F2’Q=Am(F2Qcosφm + F2Isinφm)
上記式において、F2’Iは仮想F2バランス値の実数部を示し、F2’Qは仮想F2バランス値の虚数部を示す。)
「[0065] Step S513F computes the complex difference between the F1
balance value determined in step 513C and the hypothetical F2
balance value determined in step S513E.」
([0065] ステップS513Fは、ステップS513Cで決定されたF1バランス値とステップS513Eで決定された仮想F2バランス値との間の複素差を計算する。)
「[0066] Step S513G is the computation of a power in the
difference value computed in step S513F. The power value is stored,
indexed according to the hypothesis loop counter m. The power is
defined as the sum of the squares of the in-phase and quadrature
components of the complex difference value.」
([0066] ステップS513Gは、ステップS513Fで計算された差分値におけるパワーの計算である。パワー値は記憶され、仮説ループカウンタmに従ってインデックス付けされる。パワーは、複素差分値の同相成分及び直交成分の二乗の和として定義される。)
「[0067] Step S513H terminates the loop over the balance
hypotheses when all M balance hypothesis have been considered.」
([0067] ステップS513Hは、全てのM個のバランス仮説が考慮されたとき、バランス仮説にわたるループを終了する。)
「[0068] Step S513I selects the hypothesis with the minimum power
from the set of M difference values computed during the previous M
loops through step S513G. This balance hypothesis (Amin, φmin)
with the minimum power is saved as the best balance hypothesis.」
([0068] ステップS513Iは、ステップS513Gを通る前のM個のループ中に計算されたM個の差分値のセットから最小パワーをもつ仮説を選択する。最小パワーを有するこのバランス仮説(Amin,φmin)は、最良のバランス仮説として保存される。)
「[0075] Step S513L applies the final balance amplitude and
balance phase, which is obtained from the most recently computed
best balance hypothesis, to the entire signal F2 to create the
balanced signal F2'.」
([0075] ステップS513Lは、最後に計算された最良バランス仮説から得られる最終バランス振幅及びバランス位相を信号F2全体に適用して、バランス信号F2’を生成する。)
「[0076] Step S513M indicates the completion of the balancing
procedure. The balanced signal F2' is used as the second received
signal in step S314.」
([0076] ステップS513Mは、バランシング手順の完了を示す。バランス信号F2’は、ステップS314において第2の受信信号として使用される。)
イ 引用発明3の記載から認められる事項
(ア) 前記ア(エ)に摘記したとおり、引用文献3の段落[0052]には「図6は、いくつかの例示的な実施形態による、バランスFSKを使用して近距離物体を減衰させるためのレーダ処理の論理フローを示す論理フロー図を含む。図6は、図4のS513を含むように図4のフロー図を変更したものである。図6の残りのステップはすべて、図4の対応するステップと同じ参照番号を有し、図4に関連して上記で詳細に説明したものと同じである。これらの同様のステップの詳細な説明は繰り返さない。」と記載されている。
(イ) また、前記ア(オ)に摘記したとおり、引用文献3の段落[0053]には「図7は、いくつかの例示的な実施形態による、デュアル周波数差を最適化するバランシングを生成するためのレーダ処理の論理フローを示す論理フロー図を含む。すなわち、図7は、図6に示すバランシングステップS513の詳細な論理フロー図を含む。」と記載されている。
(ウ) 前記(ア)及び(イ)を踏まえると、図6に示されたバランスFSKを使用して近距離物体を減衰させるためのレーダ処理を認定するにあたり、図4に示された近距離物体を減衰させるためのレーダ処理及び図7に示されたデュアル周波数差を最適化するバランシングを生成するためのレーダ処理に関する構成を踏まえて認定すべきである。
ウ 引用発明3の認定
前記イにおいて認定した事項に留意すると、前記アにおいて摘記した事項から、引用文献3には、図1に示された自動車レーダシステム10の構成及び図6に示されたバランスFSKを使用して近距離物体を減衰させるためのレーダ処理に対応した、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明3」という。)。なお、括弧内に引用文献3の記載の該当箇所の見出し符号を示した。
<引用発明3>
「特定の所定の距離に現れる物体の望ましくない影響がレーダ信号から除去される自動車用レーダシステムであって、([0028])
信号を生成する物体、例えばバンパフェイシアが位置する距離で信号を実質的に又は完全に減衰させることによって、これらの望ましくない影響を排除又は実質的に低減するものであり、([0028])
上記自動車用レーダシステムは、自動車レーダ信号を処理するための一つ又は複数のレーダセンサモジュール12を含む自動車レーダシステム10であり、([0029])
レーダモジュール12は、レーダ信号を生成し、レーダシステムによって監視されているホスト車両に隣接する領域に送信し、信号の生成及び送信は、RF信号発生器24、レーダ送信回路20及び送信アンテナ16によって達成され、([0029])
レーダモジュール12は、受信アンテナ18を介してレーダ受信回路22において戻りレーダ信号を受信し、([0030])
比較的長い送信パルス及び比較的短い受信パルスのために、全ての戻りは、短距離ターゲット、例えば、バンパフェイシアに関連する情報を含み、全ての戻りは、レーダユニットのすぐ隣から送信パルス及び受信パルスの相対的タイミングによって定義される特定の距離増分に対して決定された最大距離までの、全ての物体からの反射によるものであり、([0041])
レーダ受信回路22によって処理された受信信号は移相器回路26に転送され、移相器回路26は所定の位相差を有する二つの信号を生成し、同相(I)信号及び直交(Q)信号と呼ばれるこれらの二つの信号は、それぞれミキサ28及び30によってRF信号発生器24からのRF信号と混合され、結果として得られる差信号は、必要に応じてフィルタリング回路32によってさらにフィルタリングされて、ベースバンドI及びQ信号が生成され、ベースバンドI及びQ信号は、アナログ-デジタル変換器回路(ADC)34によってデジタル化され、([0030])
デジタル化されたI及びQベースバンド信号は、デジタル信号プロセッサ(DSP)36などのプロセッサによって処理され、DSP36は、信号減算及び/又は高速フーリエ変換(FFT)処理などの処理を実行して、複数の距離ビンを生成し、近距離レーダ信号を減衰させてレーダシステム10の性能を改善することができ、([0031])
不要なバンパ信号の最適なキャンセルは、差分をとる前に二つの異なる周波数のレーダ信号の動的なバランスをとることによって達成され、この技法は、バランスFSKと呼ばれるものであり、バランスFSKを使用して近距離物体を減衰させるためのレーダ処理として、([0052])
ステップS302において、第1の距離、すなわち距離1に対して、照射レーダパルスは、第1の周波数f1で送信され、([0037])
ステップS304において、第1の距離内の第1の送信パルスに対する戻りが受信され、積分され、([0037])
ステップS306に示すように、f1で送信された信号に対する統合された第1の受信信号が生成され、([0037])
ステップS308に示すように、第1の距離増分、すなわち距離1に対して、レーダパルスが第2周波数f2で送信され、([0037])
ステップS310において、第1の距離増分における第2の送信パルスに対する戻りが受信され、積分され、([0037])
ステップS312に示されるように、f2で送信された信号に対する統合された第2の受信信号が生成され、([0037])
二つの異なるレーダ周波数f1及びf2における受信信号F1及びF2は、それぞれ、FSK減算からの望ましくない残余の相殺を最適化するようにバランスされ、バランス調整は、二つのレーダ周波数からの信号間のマッチングの程度を最適化するものであり、マッチングは、バンパ及び他の近くの物体の距離におけるレーダの戻りに対して最適化され、バランス調整の結果、受信信号の一方又は両方の複素位相及び振幅が変化するものであり、([0053])
ステップS513Aに示すように、データは、データから真のゼロ値を減算することによって調整され、各真のゼロ値は、それがサンプリングされた信号全体から減算され、I及びQ信号は別々に調整され、([0056])
ステップS512Bは、バランス仮説セットの初期バージョンを準備し、バランス仮説セットは、M個の仮説のセットであり、m番目の仮説は、提案されたバランス振幅Am及び提案されたバランス位相φmを含み、([0058])
ステップS513Cは、F1バランス値及びF2バランス値を計算し、バランス領域からのレーダ信号の単一のサンプル又はいくつかの信号値の組合せからバランス値を設定することができ、二つの複素バランス値が、それぞれレーダ周波数f1及びf2で収集された二つのレーダ信号F1及びF2について得られ、([0062])
バランス領域は、バンパフェイシアを含む近距離の物体からのレーダ反射エネルギーの受信に対応し、バランス領域の重要な特性は、物体検出を実質的に減衰又は除去することが望まれるレーダ距離に対応することであり、([0057])
ステップS513Dは、mによって示される仮説ループカウンタをインクリメントし、([0063])
ステップS513Eは、ステップS513Cにおいて決定されたF2バランス値及びm番目のバランス仮説を使用して、仮説F2バランス値を計算し、
F2’I=Am(F2Icosφm - F2Qsinφm)
F2’Q=Am(F2Qcosφm + F2Isinφm)
上記式において、F2’Iは仮想F2バランス値の実数部を示し、F2’Qは仮想F2バランス値の虚数部を示し、([0064])
ステップS513Fは、ステップS513Cで決定されたF1バランス値とステップS513Eで決定された仮想F2バランス値との間の複素差を計算し、([0065])
ステップS513Gは、ステップS513Fで計算された差分値におけるパワーの計算であり、パワー値は記憶され、仮説ループカウンタmに従ってインデックス付けされ、パワーは、複素差分値の同相成分及び直交成分の二乗の和として定義され、([0066])
ステップS513Hは、全てのM個のバランス仮説が考慮されたとき、バランス仮説にわたるループを終了し、([0067])
ステップS513Iは、ステップS513Gを通る前のM個のループ中に計算されたM個の差分値のセットから最小パワーをもつ仮説を選択し、最小パワーを有するこのバランス仮説(Amin,φmin)は、最良のバランス仮説として保存され、([0068])
ステップS513Lは、最後に計算された最良バランス仮説から得られる最終バランス振幅及びバランス位相を信号F2全体に適用して、バランス信号F2’を生成し、([0075])
ステップS513Mは、バランシング手順の完了を示し、バランス信号F2’は、ステップS314において第2の受信信号として使用され、([0076])
ステップS314によって示されるように、積分された第1及び第2の受信信号が減算されて、現在の距離増分、すなわち距離1についての減算された受信信号が生成され、減算は複素数の複素減算であり、([0039])
ステップS316に示されるように、距離インクリメント数は、例えば距離2にインクリメントされ、([0039])
決定ステップS318において、距離インクリメントは、処理されている関心のある最大距離に達したか否かを決定するためにチェックされ、そうでない場合、フローはステップS302に戻り、ステップS302~S318のプロセスが、次の距離増分、すなわち距離2について繰り返され、上記のプロセスは、プロセス全体が完了するまで、すなわち、減算された受信信号が、関心のある全距離内の各距離増分又はビンについて生成されるまで続き、すなわち、距離Nに対する減算された受信信号が競合するまで、プロセスは継続し、([0039]、[0040])
ステップS320において、物体検出を提供するために、複数の距離に対する減算された受信信号のレーダ処理が実行され、([0040])
ステップS322において、関連する物体が検出されると、アラートが生成される、([0040])
自動車レーダシステム10。」
(3) 引用文献2の記載事項及び引用文献2技術事項の認定
ア 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用され、優先日前に発行された文献である特開2005-315738号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0001】
この発明は、合成帯域処理を行うパルスレーダ装置に関し、特に、強度の大きい反射信号を抑圧することによって強度の小さい反射信号を強度の大きい反射信号のサイドロープに埋もれることなく検出するためのパルスレーダ装置に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
合成帯域処理については、上記文献に記載されているが、ここでは発明が解決しようとする課題を明確にするために、合成帯域処理によって、高分解能距離が得られる原理を簡単に説明する。
【0006】
合成帯域処理を用いて高分解能距離を得るパルスレーダ装置では、送信時に、N個の送信パルスStに対して、パルス毎に送信周波数をf0からfN-1までステップ周波数間隔Δf毎に変化させる。その時の送信信号Sn(t)は式(1)で表される。ただし、ここでは、数式による表現を簡略化するために、各信号を複素信号で表現している。
【0007】
【数1】
[図:0001417980000012.jpg]
ただし、Aは送信信号の振幅、φnは各送信周波数の初期位相、Tpはパルス幅、Tpriはパルス繰り返し周期を表す。
【0008】
式(1)で表される送信信号Sn(t)がパルスレーダ装置から相対距離R離れたところにある目標に反射して、パルスレーダ装置に受信された場合、受信信号Un(t)は式(2)で表される。
【0009】
【数2】
[図:0001417980000013.jpg]
ただし、A’は受信信号の振幅、cは光速を表す。
【0010】
式(2)で表される受信信号Un(t)に対して、振幅が1で、送信信号Sn(t)と同じ周波数同じ初期位相をもつ式(3)で示す局部発信信号Wn(t)を用いて周波数をダウンコンバートすることによって生成した複素ビデオ信号Vn(t)は式(4)で表される。
【0011】
【数3】
[図:0001417980000014.jpg]
【0012】
【数4】
[図:0001417980000015.jpg]
【0013】
式(4)より、同じレンジビン番号でサンプリングされたn(n=0,1,・・・,N-1)番目の送信パルスに対する複素ディジタルビデオ信号V(n)は式(5)で表される。
【0014】
【数5】
[図:0001417980000016.jpg]
」
「【0036】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るパルスレーダ装置の構成を示すブロック図である。図1に示す実施の形態1に係るパルスレーダ装置は、予め定めたパルス繰り返し周期とパルス幅で、パルス毎に送信周波数を予め定めたステップ周波数間隔毎に変化させてパルスを送信する送信手段として、タイミング発生器1、周波数シンセサイザ2、分配器3a、基準中間周波数信号発生器4、周波数変換機5a、パルス変調器6、電力増幅器7を備えており、送受切替器8を介してアンテナ9により送信信号が空間へ放射される。
【0037】
また、パルス繰り返し周期毎に得られる各送信パルスに対する受信信号からそれぞれ送信周波数に応じた局部発信信号を用いてビデオ信号を生成する受信手段として、送信手段と共通のタイミング発生器1、周波数シンセサイザ2、分配器3a、基準中間周波数信号発生器4に加え、周波数変換機5b、中間周波数増幅器11、90度ハイブリッド器12、分配器3b、位相検波器13a及び13b、A/D変換器14a及び14bを備えており、目標10及び背景で反射された反射信号が受信される。
【0038】
さらに、N(2以上の整数)個の周波数の異なる送信パルスに対する受信信号から得られた同じレンジビン番号のビデオ信号に対し所定のシフト距離を用いて距離をシフトさせた距離シフトビデオ信号を生成する距離シフト器15、距離シフト器15からの距離シフトビデオ信号に対して予め定めたN未満の正の整数値だけ送信周波数番号をずらした距離シフトビデオ信号から距離シフトビデオ信号を引くことによって抑圧後ビデオ信号を生成する信号抑圧器16、信号抑圧器16からの抑圧後ビデオ信号に対し距離シフト器15で用いたシフト距離と同じ値のシフト距離を用いて距離シフト器15の距離シフト方向とは逆方向に距離をシフトさせて距離逆シフトビデオ信号を生成する距離逆シフト器17、距離逆シフト器17からの距離逆シフトビデオ信号に対し帯域の合成を行う合成帯域器18を備えており、合成帯域器18による出力は包絡線検波器19により包絡線検波され、表示器20に表示される。」
「【図1】
[図:0001417980000017.jpg]
」
「【0043】
距離シフト器15では、N個の周波数の異なる送信パルスに対する受信信号から得られた同じレンジビン番号のディジタルIビデオ信号を実部、ディジタルQビデオ信号を虚部とした、式(5)で表される複素ディジタルビデオ信号に対して、レーダ装置の高度とアンテナ指向方向から予め求めた、あるいは他のレーダシステムより得られた抑圧したい距離の情報より求まるシフト距離Rs1を用いて式(11)で表される処理を行い、距離シフト複素ディジタルビデオ信号V’(n)を生成し、信号抑圧器16に出力する。
【0044】
【数12】
[図:0001417980000018.jpg]
」
イ 引用文献2技術事項の認定
前記アにおいて示した摘記事項によれば、引用文献2には次の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献2技術事項>
「強度の大きい反射信号を抑圧することによって強度の小さい反射信号を強度の大きい反射信号のサイドロープに埋もれることなく検出するためのパルスレーダ装置であって、(【0001】)
パルスレーダ装置は、予め定めたパルス繰り返し周期とパルス幅で、パルス毎に送信周波数を予め定めたステップ周波数間隔毎に変化させてパルスを送信する送信手段として、タイミング発生器1、周波数シンセサイザ2、分配器3a、基準中間周波数信号発生器4、周波数変換機5a、パルス変調器6、電力増幅器7を備えており、送受切替器8を介してアンテナ9により送信信号が空間へ放射されるものであり、(【0036】)
パルス繰り返し周期毎に得られる各送信パルスに対する受信信号からそれぞれ送信周波数に応じた局部発信信号を用いてビデオ信号を生成する受信手段として、送信手段と共通のタイミング発生器1、周波数シンセサイザ2、分配器3a、基準中間周波数信号発生器4に加え、周波数変換機5b、中間周波数増幅器11、90度ハイブリッド器12、分配器3b、位相検波器13a及び13b、A/D変換器14a及び14bを備えており、目標10及び背景で反射された反射信号が受信されるものであり、(【0037】)
N(2以上の整数)個の周波数の異なる送信パルスに対する受信信号から得られた同じレンジビン番号のビデオ信号に対し所定のシフト距離を用いて距離をシフトさせた距離シフトビデオ信号を生成する距離シフト器15、距離シフト器15からの距離シフトビデオ信号に対して予め定めたN未満の正の整数値だけ送信周波数番号をずらした距離シフトビデオ信号から距離シフトビデオ信号を引くことによって抑圧後ビデオ信号を生成する信号抑圧器16、信号抑圧器16からの抑圧後ビデオ信号に対し距離シフト器15で用いたシフト距離と同じ値のシフト距離を用いて距離シフト器15の距離シフト方向とは逆方向に距離をシフトさせて距離逆シフトビデオ信号を生成する距離逆シフト器17、距離逆シフト器17からの距離逆シフトビデオ信号に対し帯域の合成を行う合成帯域器18を備えており、(【0038】)
距離シフト器15では、N個の周波数の異なる送信パルスに対する受信信号から得られた同じレンジビン番号のディジタルIビデオ信号を実部、ディジタルQビデオ信号を虚部とした、式(5)で表される複素ディジタルビデオ信号に対して、レーダ装置の高度とアンテナ指向方向から予め求めた、あるいは他のレーダシステムより得られた抑圧したい距離の情報より求まるシフト距離Rs1を用いて式(11)で表される処理を行い、距離シフト複素ディジタルビデオ信号V’(n)を生成し、信号抑圧器16に出力する、(【0043】)
パルスレーダ装置。
[図:0001417980000019.jpg]
[図:0001417980000020.jpg]
」
(4) 本件補正発明と引用発明3との対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明3を対比する。
(ア) (構成X)「レーダ装置」の発明の観点
a 引用発明3の「自動車レーダシステム10」は「レーダセンサモジュール12」を含むものであるところ、引用発明3の「自動車レーダシステム10」の「レーダセンサモジュール12」は、本件補正発明の「レーダ装置」に相当する。
b したがって、本件補正発明と引用発明3とは、「レーダ装置」の発明である点において一致する。
(イ) (構成A)「第1周波数を有する第1送信信号と、前記第1周波数とは異なる第2周波数を有する第2送信信号とを少なくとも送信する送信手段」の観点
a 引用発明3の「自動車レーダシステム10」の「レーダモジュール12」は、「レーダ信号を生成し、レーダシステムによって監視されているホスト車両に隣接する領域に送信し、信号の生成及び送信は、RF信号発生器24、レーダ送信回路20及び送信アンテナ16によって達成され[る]」ものであるところ、引用発明3の「レーダ送信回路20及び送信アンテナ16」は、本件補正発明の「送信手段」に相当する。
b 引用発明の「第1の周波数f1」及び「第2周波数f2」は、それぞれ本件補正発明の「第1周波数」及び「第1周波数とは異なる第2周波数」に相当するから、引用発明3の「第1の周波数f1で送信され[る]」「レーダパルス」、「第2周波数f2で送信され[る]」「レーダパルス」は、それぞれ、本件補正発明の「第1周波数を有する第1送信信号」、「第1周波数とは異なる第2周波数を有する第2送信信号」に相当する。
c したがって、本件補正発明と引用発明3とは、次の点において一致する。
「第1周波数を有する第1送信信号と、第1周波数とは異なる第2周波数を有する第2送信信号とを少なくとも送信する送信手段」を有する点。
(ウ) (構成B)「前記送信手段によって送信され、複数の対象物によって反射された前記第1送信信号および前記第2送信信号を、第1受信信号および第2受信信号として受信する受信手段」の観点
a 引用発明3の「自動車レーダシステム10」の「レーダモジュール12」は、「受信アンテナ18を介してレーダ受信回路22において戻りレーダ信号を受信[する]」ものであるところ、引用発明3の「受信アンテナ18」及び「レーダ受信回路22」は、本件補正発明の「受信手段」に相当する。
b 引用発明においては、「全ての戻りは、短距離ターゲット、例えば、バンパフェイシアに関連する情報を含み、全ての戻りは、レーダユニットのすぐ隣から送信パルス及び受信パルスの相対的タイミングによって定義される特定の距離増分に対して決定された最大距離までの、全ての物体からの反射によるもの」であるから、「レーダユニットのすぐ隣」にある「バンパフェイシア」のような「短距離ターゲット」を含めて「最大距離」までにある「全ての物体からの反射」を「全ての戻り」として受信しているといえる。そうすると、これは、本件補正発明の「送信手段によって送信され、複数の対象物によって反射された」「送信信号」を「受信信号として受信する」ことに相当する。
c そして、引用発明3において、「距離1に対して、照射レーダパルスは、第1の周波数f1で送信され」「第1の送信パルスに対する戻りが受信され」「f1で送信された信号に対する統合された第1の受信信号が生成され」ることは、本件補正発明の「送信手段によって送信され」「複数の対象物によって反射された」「第1送信信号」を「第1受信信号」「として受信する」ことに相当する。
d 同様に、引用発明3において、「距離1に対して、レーダパルスが第2周波数f2で送信され」「第2の送信パルスに対する戻りが受信され」「f2で送信された信号に対する統合された第2の受信信号が生成され」ることは、本件補正発明の「送信手段によって送信され」「複数の対象物によって反射された」「第2送信信号」を「第2受信信号」「として受信する」ことに相当する。
e したがって、本件補正発明と引用発明3とは、次の点において一致する。
「送信手段によって送信され、複数の対象物によって反射された第1送信信号および第2送信信号を、第1受信信号および第2受信信号として受信する受信手段」を有する点。
(エ) (構成C)「前記受信手段から出力される前記第1受信信号および前記第2受信信号のそれぞれに対して直交復調を施す直交復調手段」の観点
a 引用発明3において、「レーダ受信回路22によって処理された受信信号は移相器回路26に転送され、移相器回路26は所定の位相差を有する二つの信号を生成し、同相(I)信号及び直交(Q)信号と呼ばれるこれらの二つの信号は、それぞれミキサ28及び30によってRF信号発生器24からのRF信号と混合され、結果として得られる差信号は、必要に応じてフィルタリング回路32によってさらにフィルタリングされて、ベースバンドI及びQ信号が生成され、ベースバンドI及びQ信号は、アナログ-デジタル変換器回路(ADC)34によってデジタル化され[る]」ものである。
b すなわち、引用発明3の「移相器回路26」、「ミキサ28及び30」、「フィルタリング回路32」並びに「アナログ-デジタル変換器回路(ADC)34」は、「レーダ受信回路22によって処理された受信信号」に対して「デジタル化され[た]」「ベースバンドI及びQ信号」を生成する処理を施すものである。
c そして、引用発明3において、「同相(I)信号」及び「直交(Q)信号」を生成することは、本件補正発明における「直交復調を施す」ことに相当するから、引用発明3の「移相器回路26」、「ミキサ28及び30」、「フィルタリング回路32」並びに「アナログ-デジタル変換器回路(ADC)34」は、本件補正発明の「直交復調手段」に相当する。
d ここで、前記(ウ)を踏まえると、引用発明3における「ベースバンドI及びQ信号」を生成する処理は、「第1受信信号」及び「第2受信信号」のそれぞれに対して施されることは明らかである。
e したがって、本件補正発明と引用発明3とは、次の点において一致する。
「受信手段から出力される第1受信信号および第2受信信号のそれぞれに対して直交復調を施す直交復調手段」を有する点。
(オ) (構成DO)「所定の距離と、前記第1周波数および前記第2周波数と、に対応する所定の位相角を決定し、決定した前記所定の位相角に応じて、前記直交復調された前記第1受信信号および前記第2受信信号の少なくとも一方をIQ平面上において回転させる回転手段」の観点
a 引用発明3は、「例えばバンパフェイシアが位置する距離で信号を実質的に又は完全に減衰させることによって、これらの望ましくない影響を排除又は実質的に低減するもの」であるところ、「不要なバンパ信号の最適なキャンセル」は、「差分をとる前に二つの異なる周波数のレーダ信号の動的なバランスをとる」「バランスFSKと呼ばれる」「技法」を使用して行われるものである。
b ここで、引用発明3の「バランスFSK」においては、「二つの異なるレーダ周波数f1及びf2における受信信号F1及びF2は、それぞれ、FSK減算からの望ましくない残余の相殺を最適化するようにバランスされ、バランス調整は、二つのレーダ周波数からの信号間のマッチングの程度を最適化するものであり、マッチングは、バンパ及び他の近くの物体の距離におけるレーダの戻りに対して最適化され、バランス調整の結果、受信信号の一方又は両方の複素位相及び振幅が変化するもの」であるから、二つの異なるレーダ周波数f1及びf2の受信信号F1及びF2の少なくとも一方の複素位相及び振幅を変化させて受信信号F1及びF2のマッチングの程度を最適化させているといえる。
c そして、「バランスFSKを使用して近距離物体を減衰させるためのレーダ処理」の具体的手順としては、「バランス仮説セットの初期バージョンを準備し、バランス仮説セットは、M個の仮説のセットであり、m番目の仮説は、提案されたバランス振幅Am及び提案されたバランス位相φmを含み、」「F1バランス値及びF2バランス値を計算し、バランス領域からのレーダ信号の単一のサンプル又はいくつかの信号値の組合せからバランス値を設定[し]」、「mによって示される仮説ループカウンタをインクリメントし、」「決定されたF2バランス値及びm番目のバランス仮説を使用して、仮説F2バランス値を計算し、」「F1バランス値と仮想F2バランス値との間の複素差を計算し、」「計算された差分値におけるパワー[を]計算[し]」、「全てのM個のバランス仮説が考慮されたとき、バランス仮説にわたるループを終了し、」「M個のループ中に計算されたM個の差分値のセットから最小パワーをもつ仮説を選択し、最小パワーを有するこのバランス仮説(Amin,φmin)[を]、最良のバランス仮説として保存[し]、」「最後に計算された最良バランス仮説から得られる最終バランス振幅及びバランス位相を信号F2全体に適用して、バランス信号F2’を生成し」、「バランス信号F2’」は「第2の受信信号として使用され[る]」ものである。
d ここで、「バランス振幅Am」及び「バランス位相φm」を含むバランス仮説を「信号F2」に適用して「バランス信号F2’」を計算する具体的態様として、以下の式が開示されているところ、当該計算式は「信号F2」をIQ平面上で位相角φmだけ回転することを意味する。
F2’I=Am(F2Icosφm - F2Qsinφm)
F2’Q=Am(F2Qcosφm + F2Isinφm)
e そうすると、引用発明3において「最後に計算された最良バランス仮説から得られる最終バランス振幅及びバランス位相を信号F2全体に適用して、バランス信号F2’を生成」して、「バランス信号F2’」を「第2の受信信号として使用[する]」ことは、本件補正発明における「直交復調された第1受信信号および第2受信信号の少なくとも一方をIQ平面上において回転させる」ことに相当し、引用発明3の「デジタル化されたI及びQベースバンド信号」を「処理」する「デジタル信号プロセッサ(DSP)36」は、本件補正発明の「回転手段」に相当する。
f したがって、本件補正発明と引用発明3とは、次の点において一致する。
「直交復調された第1受信信号および第2受信信号の少なくとも一方をIQ平面上において回転させる回転手段」を有する点。
g そして、本件補正発明と引用発明3とは、次の点で相違する。
直交復調された第1受信信号および第2受信信号の少なくとも一方をIQ平面上において回転させる際に、
本件補正発明は、「所定の距離と、前記第1周波数および前記第2周波数と、に対応する所定の位相角を決定し、決定した前記所定の位相角に応じて」回転させるのに対し、
引用発明3にはそのような限定がない点。
(カ) (構成E)「前記回転手段によって少なくとも一方が回転された前記第1受信信号および前記第2受信信号を加算または減算する処理手段」の観点
a 引用発明3においては、「第1及び第2の受信信号」が「複素減算」されるところ、「複素減算」に係る「第2の受信信号」は、「信号F2」をIQ平面上で位相角φmだけ回転して得られる「バランス信号F2’」を「第2の受信信号として使用」したものを指すから、「第1の受信信号」から回転された「第2の受信信号」を「複素減算」することになる。
b そうすると、引用発明3において「第1の受信信号」から回転された「第2の受信信号」を「複素減算」することは、本件補正発明における「回転手段によって少なくとも一方が回転された第1受信信号および第2受信信号を減算する」ことに相当し、引用発明3の「デジタル化されたI及びQベースバンド信号」を「処理」する「デジタル信号プロセッサ(DSP)36」は、本件補正発明の「処理手段」にも相当する。
c したがって、本件補正発明と引用発明3とは、次の点において一致する。
「回転手段によって少なくとも一方が回転された第1受信信号および第2受信信号を加算または減算する処理手段」を有する点。
(キ) (構成F)「前記処理手段の処理結果に基づいて1または複数の前記対象物を検出する検出手段」の観点
a 引用発明3は、「減算された受信信号のレーダ処理」が実行されることで「関連する物体[の]検出」を行うものである。また、引用発明3が、そのようなレーダ処理を行う手段を有することは明らかである。
b そうすると、引用発明3において「関連する物体[の]検出」を行うために「減算された受信信号のレーダ処理」を実行することは、本件補正発明における「処理手段の処理結果に基づいて1または複数の対象物を検出する」ことに相当し、引用発明3においてそのようなレーダ処理を行う手段は本件補正発明の「検出手段」に相当する。
c したがって、本件補正発明と引用発明3とは、次の点において一致する。
「処理手段の処理結果に基づいて1または複数の対象物を検出する検出手段」を有する点。
(ク) (構成D1)「前記回転手段は、複数の前記対象物のうち一の前記対象物との距離と、前記第1周波数と、に対応する第1の位相角が、前記一の前記対象物との距離と、前記第2周波数と、に対応する第2の位相角と同じになるように前記直交復調された前記第1受信信号および前記第2受信信号の少なくとも一方をIQ平面上において回転させること」の観点
a 引用発明3において、「バランス調整は、二つのレーダ周波数からの信号間のマッチングの程度を最適化するものであり、マッチングは、バンパ及び他の近くの物体の距離におけるレーダの戻りに対して最適化され」るものであるから、「バンパ及び他の近くの物体」からの「受信信号F1及びF2」に着目して、受信信号同士の「マッチング」を行っており、「マッチング」される「受信信号F1及びF2」の位相角は、いずれも「バンパ及び他の近くの物体の距離」に対応したものであるといえる。
b そして、引用発明3の「バンパ及び他の近くの物体の距離」は、本件補正発明の「複数の前記対象物のうち一の前記対象物との距離」に相当する。
c 引用発明3の「受信信号F1及びF2」は、「二つの異なるレーダ周波数f1及びf2」に対応するものであるから、「マッチング」される「受信信号F1」の位相角は、「レーダ周波数f1」に対応したものであり、「マッチング」される「受信信号F2」の位相角は、「レーダ周波数f2」に対応したものであるといえる。
d 前記a~cを踏まえると、「マッチング」される「受信信号F1」の位相角は、「バンパ及び他の近くの物体の距離」と、「レーダ周波数f1」とに対応したものとなるから、引用発明3の「マッチング」される「受信信号F1」の位相角は、本件補正発明の「複数の前記対象物のうち一の前記対象物との距離と、前記第1周波数と、に対応する第1の位相角」に相当する。
同様に、引用発明3の「マッチング」される「受信信号F2」の位相角は、本件補正発明の「複数の前記対象物のうち一の前記対象物との距離と、前記第2周波数と、に対応する第2の位相角」に相当する。
e ここで、前記(オ)bにおいて検討したとおり、引用発明3においては、二つの異なるレーダ周波数f1及びf2の受信信号F1及びF2の少なくとも一方の複素位相及び振幅を変化させて受信信号F1及びF2のマッチングの程度を最適化させているのであるから、引用発明3の「マッチング」される「受信信号F1」の位相角と、「マッチング」される「受信信号F2」の位相角とは、同じになるように変化させていることは明らかである。
f したがって、前記(オ)の検討結果を踏まえると、引用発明3は、「複数の前記対象物のうち一の前記対象物との距離と、前記第1周波数と、に対応する第1の位相角が、前記一の前記対象物との距離と、前記第2周波数と、に対応する第2の位相角と同じになるように前記直交復調された前記第1受信信号および前記第2受信信号の少なくとも一方をIQ平面上において回転させる」「回転手段」に相当する構成を備えているといえる。
g したがって、本件補正発明と引用発明3とは、次の点において一致する。
「前記回転手段は、複数の前記対象物のうち一の前記対象物との距離と、前記第1周波数と、に対応する第1の位相角が、前記一の前記対象物との距離と、前記第2周波数と、に対応する第2の位相角と同じになるように前記直交復調された前記第1受信信号および前記第2受信信号の少なくとも一方をIQ平面上において回転させること」
イ 一致点及び相違点の認定
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明3は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点において相違すると認められる。
(ア) 一致点
「第1周波数を有する第1送信信号と、前記第1周波数とは異なる第2周波数を有する第2送信信号とを少なくとも送信する送信手段と、
前記送信手段によって送信され、複数の対象物によって反射された前記第1送信信号および前記第2送信信号を、第1受信信号および第2受信信号として受信する受信手段と、
前記受信手段から出力される前記第1受信信号および前記第2受信信号のそれぞれに対して直交復調を施す直交復調手段と、
前記直交復調された前記第1受信信号および前記第2受信信号の少なくとも一方をIQ平面上において回転させる回転手段と、
前記回転手段によって少なくとも一方が回転された前記第1受信信号および前記第2受信信号を加算または減算する処理手段と、
前記処理手段の処理結果に基づいて1または複数の前記対象物を検出する検出手段と、
を有し、
前記回転手段は、複数の前記対象物のうち一の前記対象物との距離と、前記第1周波数と、に対応する第1の位相角が、前記一の前記対象物との距離と、前記第2周波数と、に対応する第2の位相角と同じになるように前記直交復調された前記第1受信信号および前記第2受信信号の少なくとも一方をIQ平面上において回転させる
レーダ装置。」
(イ) 相違点
直交復調された第1受信信号及び第2受信信号の少なくとも一方をIQ平面上において回転させる際に、
本件補正発明は「所定の距離と、前記第1周波数および前記第2周波数と、に対応する所定の位相角を決定し、決定した前記所定の位相角に応じて、」回転させているのに対し、
引用発明3にはそのような限定がない点。
(5) 判断
前記相違点について検討する。
ア 引用文献2技術事項について
(ア) 引用文献2技術事項の「強度の大きい反射信号を抑圧することによって強度の小さい反射信号を強度の大きい反射信号のサイドロープに埋もれることなく検出するためのパルスレーダ装置」では、「N個の周波数の異なる送信パルスに対する受信信号から得られた同じレンジビン番号のディジタルIビデオ信号を実部、ディジタルQビデオ信号を虚部とした、式(5)で表される複素ディジタルビデオ信号に対して、レーダ装置の高度とアンテナ指向方向から予め求めた、あるいは他のレーダシステムより得られた抑圧したい距離の情報より求まるシフト距離Rs1を用いて式(11)で表される処理を行い、距離シフト複素ディジタルビデオ信号V’(n)を生成」している。
[図:0001417980000021.jpg]
[図:0001417980000022.jpg]
(イ) ここで、引用文献2技術事項の「シフト距離Rs1」は、「抑圧したい距離の情報より求まる」のであるから、所定の距離に対応するように予め定められているといえる。
(ウ) そうすると、式(11)の右辺にある次の位相成分は、「シフト距離Rs1」(所定の距離)に対応して決定された所定の位相角であるといえる。
<位相成分>
[図:0001417980000023.jpg]
(エ) 上記(ウ)の位相成分は、「Rs1」の他に「(f0+nΔf)」を含むから、所定の距離「Rs1」と、所定の周波数「f0」と、「f0」とは異なる所定の周波数「f0+nΔf」とに対応して決定された所定の位相角であるといえる。
(オ) また、式(11)の右辺は、式(5)のV(n)を所定の位相角に応じてIQ平面上において回転させることを意味する。
イ 引用文献2技術事項を適用することによる容易想到性について
(ア) 引用発明3においては、「ステップS513Cは、F1バランス値及びF2バランス値を計算し、バランス領域からのレーダ信号の単一のサンプル又はいくつかの信号値の組合せからバランス値を設定することができ[る]」としているところ、「バランス領域は、バンパフェイシアを含む近距離の物体からのレーダ反射エネルギーの受信に対応し、バランス領域の重要な特性は、物体検出を実質的に減衰又は除去することが望まれるレーダ距離に対応すること」であるから、引用発明3において、バランス領域からのレーダ信号の「単一のサンプル」からバランス値を設定することは、物体検出を実質的に減衰又は除去することが望まれるレーダ距離を「単一のサンプル」から設定することを意味する。
(イ) すなわち、引用発明3の「バランスFSKを使用して近距離物体を減衰させるためのレーダ処理」においても、「バランス信号F2’」を得る前提として、「単一のサンプル」から設定された予め定められた距離を用いているのであるから、「信号F2」をIQ平面上で位相角φmだけ回転して「バランス信号F2’」を得る際に、前記(ア)に示した引用文献2技術事項のIQ平面上における回転操作を適用することにより、前記相違点に係る「所定の距離と、前記第1周波数および前記第2周波数と、に対応する所定の位相角を決定し、決定した前記所定の位相角に応じて」回転させる構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得たことである。
ウ 引用発明3からみた容易想到性について
前記イにおいて示した容易想到性の判断は措くとして、引用発明3において、相違点に係る本件補正発明の構成とすることは、以下の(ア)~(エ)に詳述するとおり、当業者にとって当然に考慮されるべきことにすぎない。
(ア) そもそも引用発明3は、最大減衰を所望の位置(例えばバンパフェイシアからの反射信号に相当する位置)に移動させて望ましくない信号(例えばバンパフェイシアからの反射信号)の相殺を最適化するための複素位相及び振幅の変化量を算出するにあたり、環境変化に応答した受信信号特性の微細な変化にも対応できるように、反復仮説バランシング手順で信号F2の振幅及び位相の空間を探索することによって最適なバランス振幅及びバランス位相を得るものである。
(イ) そうすると、そのような微細な変化にあえて対応させることなく単に望ましくない信号の相殺を行えば足りるようにすることは、引用発明3が前提とする課題以前の原始的な発想というべきものであり、かかる発想に想到することに当業者が格別困難を要することはない。
(ウ) すなわち、かかる発想のもと、反復仮説バランシング手順で信号F2の振幅及び位相の空間を探索することによって最適なバランス振幅及びバランス位相を得ることに換えて、予め計算して一定値として記憶された振幅及び位相を用いるようにすることは、当業者であれば適宜選択し得る設計的事項の範囲内のことにすぎない。
(エ) その際、予め計算して一定値として記憶された位相が、送信信号を反射した物体までの距離(例えばレーダセンサからバンパフェイシアまでの距離)に依存していることは明らかである。また、上記位相が送信信号の周波数に依存していることも自明である。
(オ) そうすると、一定値として記憶される位相を計算するにあたり、送信信号を反射した物体までの距離及び送信信号の周波数に基づいて算出することは、当業者であれば当然に考慮すべきことである。
エ まとめ
以上ア~ウを踏まえると、引用発明3において前記相違点に係る本件補正発明の構成とすることは、いずれにしても当業者ならば容易に想到し得たことである。
オ 請求人の主張の検討
(ア) 請求人の主張の概要
請求人は、審判請求書及び令和6年5月7日に提出された回答書において、概略、以下のとおり主張している。
a 主張1
引用文献3では、第1受信信号及び第2受信信号の合成信号が最小となるようなバランス位相で位相回転をしており、本件補正発明のように第1受信信号及び第2受信信号それぞれで複数の対象物の成分から構成されており、複数の対象物のうちいずれか1つの同じ対象物における異なる周波数の成分同士が同じ位相角になるように回転させていない。
引用文献3には、IQ平面上での位相角度処理において、信号を反射する複数の対象物のうち一の対象物との距離と第1周波数とに対応する第1の位相角が、同じ一の対象物との距離と第2周波数とに対応する第2の位相角と同じ角度になるように回転させることについて記載も示唆もされていない。
本件補正発明におけるIQ平面上の回転は以下の図1の右上図に例示される回転であり、周波数f1の受信信号(第1受信信号)と周波数f2の受信信号(第2受信信号)のうち、抑制したい対象物(例えば第1対象物)の成分同士が一致するように位相回転を行い、位相回転を行った信号を加算又は減算することで抑制したい対象物(例えば第1対象物)に関する信号を抑制することができるのに対し、引用発明3における位相回転は、以下の図1の右下図に例示するように、周波数f1の受信信号と周波数f2の受信信号とが一致するように位相回転を行っているため、抑制したい対象物(例えば第1対象物)の信号同士が一致しない可能性があり、抑制したい対象物に関する受信信号を確実に抑制することはできない。
[図:0001417980000024.jpg]
b 主張2
同一の対象物由来の成分において、ピークの位相と裾野の位相とがIQ平面上では同じ位相となることは自明ではないため、引用発明3に基づいて、抑制したい対象物の成分同士の位相角が一致するように位相回転を行い加算または減算することに想到するのは困難である。
対象物1と対象物2の成分が重ね合わされるような近距離に複数の対象物が存在する場合、受信信号の対象物1が存在する距離L1においては、対象物1由来の成分のピークと対象物2由来の成分の裾野とが混在する。
距離L1が既知の場合には第1対象物に関する項を消去することができるため、第2対象物に関する情報のみを得ることができ、近接して存在する対象物が弁別されるとともに、距離の分解能を向上させることが可能となる。
引用文献3には、本件補正発明が着目している、同一の対象物由来の成分においてピークの位相と裾野の位相とがIQ平面上で同じ位相となることについて記載も開示もされておらず、引用文献3から本件補正発明に想到するのは容易ではない。
(イ) 請求人の主張の検討
a 主張1について
(a) 引用発明3は、バンパフェイシアからの不要なレーダ信号の最適な相殺を提供するものであるから、抑制したい対象物に関する受信信号を抑制するものである。
すなわち、前記ア(ク)において説示したとおり、引用発明3においては、「バンパ及び他の近くの物体」からの「受信信号F1及びF2」に着目して、受信信号同士の「マッチング」を行っており、「マッチング」される「受信信号F1及びF2」の位相角は、いずれも「バンパ及び他の近くの物体の距離」に対応したものである。
したがって、引用発明3においては、「バンパ及び他の近くの物体」が抑制したい対象物であって、これが請求人の主張における「第1対象物」に該当するから、当該第1対象物の成分同士が一致するように位相回転を行う点において、本件補正発明と相違するところはない。
(b) もし、請求人の主張するとおり、引用発明3における複素回転が、「バンパ及び他の近くの物体」以外の物体を含む複数の対象物からの反射信号を含む受信信号全体の位相角を一致させるものであったと解釈すると、そのように複素回転された受信信号どうしを複素減算することにより受信信号全体が相殺されてしまうところ、このような事態は、「バンパ及び他の近くの物体の距離におけるレーダの戻りに対して最適化され」るように「マッチング」を行うという趣旨に明らかに反するものである。
したがって、請求人の前記主張1は、引用文献3の記載を正解しないものである。
b 主張2について
本件補正発明の「対象物」については、「複数の対象物」と規定しているのみであり、対象物1と対象物2の成分が重ね合わされるような近距離に「複数の対象物」が存在することを規定していない。
また、「複数の前記対象物のうち一の前記対象物との距離」(受信信号の対象物1が存在する距離L1)において、対象物1由来の成分のピークと対象物2由来の成分の裾野とが混在することも規定していない。
主張2は、これらの事項を前提とする主張であるから、請求項1の記載から離れたところの主張であって、採用することはできない。
カ 総合評価
前記アからオにおける検討を総合してみても、引用発明3において、相違点に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、本件補正発明の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6) 本件補正の却下の決定についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、特許法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1から9に係る発明は、令和4年10月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1から9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の1(1)に示した本件補正前の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、本願発明は、本願の優先日前に発行された下記引用文献2及び3に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
記
引用文献2:特開2005-315738号公報
引用文献3:米国特許出願公開第2017/0219691号明細書(主たる引用文献)
3 引用発明等の認定
引用発明3及び引用文献2技術事項は、それぞれ前記第2の3(2)ウ及び同(3)イにおいて認定したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明の「前記回転手段は、複数の前記対象物のうち一の前記対象物との距離と、前記第1周波数と、に対応する第1の位相角が、前記一の前記対象物との距離と、前記第2周波数と、に対応する第2の位相角と同じになるように前記直交復調された前記第1受信信号および前記第2受信信号の少なくとも一方をIQ平面上において回転させる」という限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、本願発明の発明特定事項の一部を更に限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3において検討したとおり、引用発明3及び引用文献2技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明3及び引用文献2技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-003814