特許拒絶査定不服審判
2024-013925
電気機器用筐体
- 審判番号
- 2024-013925
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-090767
- 請求日
- 2024年08月30日
- 審決日
- 2025年06月30日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】古河電気工業株式会社
- 【請求人代理人】来間 清志
- 【請求人代理人】齋藤 拓也
- 【請求人】古河AS株式会社
- 【請求人代理人】来間 清志
- 【請求人代理人】齋藤 拓也
- 審判長/審判官
- 審判長 伊藤 隆夫
- 審判官 富澤 哲生
- 審判官 梅本 章子
- 分類
- P18 .121-WY (H05K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特願2020- 90767「電気機器用筐体」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年12月13日出願公開、特開2021-190442、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年5月25日の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年12月25日付け:拒絶理由通知書
令和6年 3月 1日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 6月 3日付け:拒絶査定
令和6年 8月30日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定(令和6年6月3日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。
本願の請求項1-7に係る発明は、以下の引用文献1-4に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2014-194439号公報
2.国際公開第2019/193677号
3.国際公開第2020/021684号
4.特開2014-208728号公報
第3 本願発明
本願の請求項1-7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、令和6年8月30日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される、次のとおりの発明である。
「 【請求項1】
電気機器を設置可能な設置部を有する電気機器用筐体であって、
前記設置部を内面に有し、金属から構成される筐体部と、
前記筐体部の内面に接して設けられ、25℃における熱伝導率が0.3W/m・K以上1.0W/m・K以下であり、前記筐体部の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有し、空間を空けて少なくとも前記設置部に対向配置される成形体と
を備えることを特徴とする電気機器用筐体。
【請求項2】
前記設置部は、重力方向に配置される、請求項1に記載の電気機器用筐体。
【請求項3】
前記設置部は、前記筐体部の下部に設けられ、前記成形体は、前記筐体部の上部に設けられる、請求項1または2に記載の電気機器用筐体。
【請求項4】
内気と外気の圧力平衡を行う通気フィルターを有する開口部をさらに備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の電気機器用筐体。
【請求項5】
前記成形体は、樹脂基材と、前記樹脂基材中に分散される複数の潜熱蓄熱材とを含み、
前記潜熱蓄熱材の融点は、40℃以上80℃以下である請求項1~4のいずれか1項に記載の電気機器用筐体。
【請求項6】
前記複数の潜熱蓄熱材は、融点の異なる2種以上の潜熱蓄熱材から構成される、請求項5に記載の電気機器用筐体。
【請求項7】
前記成形体は多孔質ではない、請求項1~6のいずれか1項に記載の電気機器用筐体。」
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1、引用発明
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。
「【0011】
図1、図2に示すように、デジタルカメラは、前面ケース1と背面ケース2とからなる外装ケース内に、カメラ本体3を収容することにより構成されている。カメラ本体3は、第1の撮像ユニット4と第2の撮像ユニット5とを有し、これらの第1の撮像ユニット4と第2の撮像ユニット5を所定の間隔をあけて外装ケース内部の金属製のフレーム6に取り付けることにより構成されている。また、カメラ本体3は、デジタルカメラの電源となるバッテリ(図示せず)を収容した電源ブロック7と、カメラ本体3の動作コントロールを行うための回路ブロック8とを備えており、それぞれ外装ケース内の空間に配置されている。ここで、電源ブロック7は、カメラ本体3で使用するための電力を各部に供給するもので、バッテリを収容する以外に、AC電源から直流電源に変換する電源アダプタが接続される電源端子が配置されている。」
「【0028】
上述したように、本発明においては、第1の撮像ユニット4と第2の撮像ユニット5の2つの撮像ユニットを備えており、第1の撮像ユニット4による通常の撮影と、第1の撮像ユニット4と第2の撮像ユニット5の2つの撮像ユニットを使用した立体画像の撮影も可能な構成であり、2つの撮像ユニットを備えていることから、撮像ユニットにおける発熱量が2倍となるとともに、撮影した画像を処理するカメラコントローラー16における発熱量も従来に比べて大きくなってしまう。
【0029】
このように発熱量が増加した場合、外装ケースの温度が上昇し、使用者がデジタルカメラを使用しているときに、周辺温度との温度差から違和感を感じ、製品に対して不信感を抱くおそれがある。
【0030】
図5は本発明におけるデジタルカメラの概略構成を示す図である。図6はその要部構造を示す断面図である。
【0031】
図5、図6に示すように、本発明においては、外装ケースの内面に、蓄熱部材22aを樹脂塗料22b中に分散させた蓄熱層22を形成したものである。前記蓄熱部材22aとしては、蓄熱マイクロカプセルを使用することができる。
【0032】
この蓄熱マイクロカプセルとは、図7に示すように、融点が雰囲気温度以上で使用者の体温以下の部材で、所定温度、例えば体温付近36度で固体から液体に可逆的に相変化する蓄熱物質をマイクロカプセルに封止したものである。蓄熱物質としては、n-パラフィン類や、NaCH3COO3H2O、LiNO33H2O、n-テトラデカン、n-オクタデカン、ステアリン酸、セチルアルコール、水、Ni(NO3)2・6H2Oなどの無機共晶物及び無機系水和物、カプリン酸等の脂肪酸類、o-クレゾール等の芳香族炭化水素化合物、パルミチン酸メチル等のエステル化合物、ラウリルアルコールやミリスチルアルコール、ポリエチレングリコール等のアルコール類の化合物が挙げられ、化学的、物理的に安定なものが用いられる。また、融点の異なる蓄熱材料を2種以上混合してもよい。
【0033】
市販されている蓄熱部材としては、三菱製紙(株)製の「サーモメモリー」(商品名)がある。
【0034】
蓄熱部材は、図7に示すように、36度付近で固形から液体に相変化する際に、潜熱として吸熱反応が生じるため、温度上昇は36度で平坦となり、全て液体となった段階で、また温度上昇を続ける。」
「【図2】
[図:0001424432000001.jpg]
」
「【図3】
[図:0001424432000002.jpg]
」
「【図5】
[図:0001424432000003.jpg]
」
「【図6】
[図:0001424432000004.jpg]
」
(2)上記(1)の記載から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「前面ケース1と背面ケース2とからなり、
外装ケース内に、カメラ本体3を収容し、
カメラ本体3は、回路ブロック8を備えており、外装ケース内の空間に配置されており、
外装ケースの内面に、蓄熱部材22aを樹脂塗料22b中に分散させた蓄熱層22を形成した、
外装ケース。」
2 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。
「[0007] 本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、蓄熱可能であり、高い弾性率を有する樹脂部材及びその製造方法、並びに樹脂部材を用いた蓄熱体を提供することを目的とする。」
「[0017] 図1は、樹脂部材の一実施形態を示す模式断面図である。樹脂部材1は、一実施形態において、エチレンと炭素数が3以上のオレフィンとの共重合体(以下、「(A)成分」ともいう)と、脂肪酸エステル(以下、「(B)成分」ともいう)と、を含む。樹脂部材1は、例えばシート状(フィルム状)であってよい。」
「[0021] (B)成分は、実用範囲で蓄熱効果を得る観点から、例えば-40~70℃の範囲内に融点を有する。(B)成分は、例えば、脂肪酸と脂肪族アルコールとのエステルであってよい。(B)成分は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。」
「[0042] 実施例、参考例及び比較例においては、以下に示す各成分を用いて表1~3に示す組成の樹脂部材を作製した。すなわち、脂肪酸エステル((B)成分)を融点以上に加温した状態で、エチレンと炭素数が3以上のオレフィンとの共重合体((A)成分)と、必要に応じてフィラー((D)成分)とを加え混合した。均一に混合後、必要に応じてカルボン酸及び/又はカルボン酸金属塩((C)成分)を添加して、更に均一混合することにより樹脂部材を得た。参考例1においては、(B)成分に代えて、以下に示す脂肪酸エステル代替材料を用いた。
[0043](エチレンと炭素数が3以上のオレフィンとの共重合体)
A-1:エチレンとオクテンとの共重合体(ダウ・ケミカル日本(株)製、製品名「ENGAGE8150」)
A-2:エチレンとオクテンとの共重合体(ダウ・ケミカル日本(株)製、製品名「ENGAGE8003」)
(脂肪酸エステル)
B-1:ステアリン酸メチル(融点:37℃)
B-2:ステアリン酸エチル(融点:33℃)
B-3:ステアリン酸2-エチルヘキシル(融点:10℃)
(脂肪酸エステル代替材料)
B-4:ヘキサデカン(融点:18℃)
(カルボン酸又はカルボン酸金属塩)
C-1:オレイン酸
C-2:2-エチルヘキサン酸アルミニウム
C-3:12-ヒドロキシステアリン酸
(フィラー)
D-1:膨張化黒鉛粉砕粉((株)ダイネン産業、平均粒径175~250μm)」
「[0048][表1]
[図:0001424432000005.jpg]
」
「[0054] さらに、実施例5及び実施例6の樹脂部材について熱伝導率を求めたところ、実施例5に係る樹脂部材の熱伝導率は約0.36W/mK、実施例6に係る樹脂部材の熱伝導率は約1.11W/mKであった。これらの結果より、樹脂部材が膨張黒鉛を含むことで熱伝導性が更に向上し、銅管から離れた点においても、蓄熱作用を短時間で発現できることが分かった。すなわち、実施例5及び実施例6の樹脂部材について、蓄熱材としての更なる有用性を確認できた。」
3 引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、次の事項が記載されている。
「[0008] 本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、熱伝導性が向上された上に蓄熱容量の低下が抑制された組成物を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、滲みだしが抑制されたシート及び蓄熱材を提供することである。」
「[0021] 一実施形態に係る組成物は、蓄熱性成分(以下、「(A)成分」ともいう)及び膨張化黒鉛(以下、「(B)成分」ともいう)を含有する。
[0022] (A)成分は、蓄熱性を有する成分であり、例えば、固体状から液体状に相転移する際に周囲の熱を吸熱して蓄熱する性質を有する成分である。(A)成分は、例えば、融点が0~100℃である化合物であってよい。このような化合物は、蓄熱材として実用的な温度範囲である0~100℃の環境下において、融点よりも低い温度から融点以上の温度に変化する際に相転移する。したがって、(A)成分は、蓄熱材としての実用範囲である当該温度範囲において蓄熱性を有している。(A)成分は、高い蓄熱容量を有する化合物ともいえる。」
「[0074](蓄熱性成分)
A-1:パラフィンワックス(日本精蝋(株)製、製品名「HNP-9」、融点76℃)
A-2:n-ヘキサデカン(東京化成工業(株)製、融点18℃)
A-3:ステアリン酸メチル(東京化成工業(株)製、融点40℃)
A-4:ステアリルアクリレート/ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレート=80/15/5(質量比)の共重合ポリマー(重量平均分子量:60万)
(膨張化黒鉛)
B-1:膨張化黒鉛粉砕粉((株)ダイネン産業製、平均粒径175~250μm)
B-2:膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業(株)製、「EC100」、平均粒径170~230μm)
B-3:膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業(株)、製品名「EC10」、平均粒径150~250μm)
(エチレンと炭素数が3以上のオレフィンとの共重合体)
C-1:エチレンとプロピレンとの共重合体(住友化学(株)製、製品名「エスプレン SPO V0141」)
C-2:エチレンとオクテンとの共重合体(ダウ・ケミカル日本(株)製、製品名「ENGAGE8150」)
C-3:エチレンとオクテンとの共重合体(ダウ・ケミカル日本(株)製、製品名「ENGAGE8003」)
(ポリプロピレン)
D-1:ポリプロピレン(住友化学(株)製、製品名「ノーブレンAU891E2」)
D-2:ポリプロピレン(住友化学(株)製、製品名「ノーブレンW101」)
(比較用黒鉛)
b-1:鱗片状黒鉛(伊藤黒鉛工業(株)製、製品名「W-32」、粒度+32メッシュ 75%以上)
b-2:人造黒鉛(伊藤黒鉛工業(株)製、製品名「AGB-特20」、粒度60~20メッシュ 70%以上)
b-3:人造黒鉛(伊藤黒鉛工業(株)製、製品名「AGB-055、粒度0.5~5mm 85%以上)
b-4:微粉黒鉛(昭和電工(株)製、微粉径7μm以下(フィルター通過))」
「[0078][表1]
[図:0001424432000006.jpg]
」
4 引用文献4
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、次の事項が記載されている。
「【0009】
本発明は、マトリックスポリマーのオルガノポリシロキサンに対して、熱伝導性粒子とマイクロカプセル化した蓄熱材粒子を含み、熱伝導粒子はオルガノポリシロキサン100重量部に対して100~2000重量部含み、熱伝導率が0.2~10W/m・Kである蓄熱性シリコーン材料としたことにより、蓄熱性と熱伝導性が高く、発熱部品と筐体との間に前記蓄熱性シリコーン材料を介在させた場合、より高い蓄熱効果が得られる。」
「【0043】
(実施例1)
1.材料成分
(1)シリコーン成分
シリコーン成分として二液室温硬化シリコーンゴム(二液RTV)を使用した。なお、二液RTVにはベースポリマー成分(A成分)と架橋成分(B成分)と白金系金属触媒(C成分)が予め添加されている。
(2)マイクロカプセル化した蓄熱材粒子(E成分)
マイクロカプセル化した蓄熱材粒子は三菱製紙社製、商品名“サーモメモリー”、品番"FP-58"(平均粒径50μm、融点58℃、溶解熱量54.9J/g、嵩密度0.3~0.4g/cm3)を前記シリコーン成分(A+B)成分100重量部に対して200重量部添加した。このマイクロカプセル化した蓄熱材粒子には融点58℃のパラフィンがメラミン系樹脂により封入されている。
(3)熱伝導性粒子(D成分)
(a)小粒径熱伝導性粒子
小粒径熱伝導性粒子は平均粒子径0.3μmのアルミナをシランカップリング剤で表面処理して使用した。
(b)中粒径熱伝導性粒子
中粒径熱伝導性粒子は平均粒子径3μmのアルミナをシランカップリング剤で表面処理して使用した。
(c)大粒径熱伝導性粒子
大粒径熱伝導性粒子は平均粒子径75μmのアルミナを使用した。
(d)熱伝導性粒子(D成分)の添加量
シリコーン成分(A+B)100重量部に対して小粒径熱伝導性粒子を100重量部、中粒径熱伝導性粒子を200重量部、大粒径熱伝導性粒子200重量部添加した。
2.シート成形加工方法
離型処理をしたポリエステルフィルム上に厚さ2mmの金枠を置きコンパウンドを流し込み、もう一枚の離型処理をしたポリエステルフィルムを載せた。これを5MPaの圧力で、120℃、10分硬化した。」
「【0045】
(実施例2)
(1)シリコーン成分
実施例1と同一物を使用した。
(2)マイクロカプセル化した蓄熱材粒子(E成分)
マイクロカプセル化した蓄熱材粒子は三菱製紙社製、商品名“サーモメモリー”、品番"FP-58"を前記シリコーン成分(A+B)成分100重量部に対して250重量部添加した。
(3)熱伝導性粒子(D成分)
(a)小粒径熱伝導性粒子
小粒径熱伝導性粒子は平均粒子径0.3μmのアルミナをシランカップリング剤で表面処理して使用した。
(b)中粒径熱伝導性粒子
中粒径熱伝導性粒子は平均粒子径3μmのアルミナをシランカップリング剤で表面処理して使用した。
(c)熱伝導性粒子(D成分)の添加量
シリコーン成分(A+B)100重量部に対して小粒径熱伝導性粒子を150重量部、大粒径熱伝導性粒子200重量部添加した。
2.シート成形加工方法
実施例1と同様にシート成形した。」
「【0049】
【表1】
[図:0001424432000007.jpg]
」
第5 対比及び判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「回路ブロック8」は、本願発明1の「電気機器」に相当する。
また、引用発明の「外装ケース」は、「回路ブロック8」を「外装ケース内の空間に配置」するものであるから、本願発明1の「電気機器用筐体」に相当する。
そして、引用発明の「回路ブロック8」が「外装ケース内の空間に配置され」るためには、「回路ブロック8」の「配置」を可能とする構成を、「外装ケース」がその内部に有することは明らかであり、引用発明の「回路ブロック8」の「配置」を可能とする構成は、本願発明1の「設置部」に相当する。
したがって、引用発明の「外装ケース」は、本願発明1の「電気機器を設置可能な設置部を有する電気機器用筐体」に相当する。
イ 引用発明の「外装ケース」を構成する「前面ケース1と背面ケース2」は、本願発明1の「筐体部」に相当する。
したがって、上記アを踏まえると、引用発明の「前面ケース1と背面ケース2」と、本願発明1の「前記設置部を内面に有し、金属から構成される筐体部」は、「前記設置部を」「有」する「筐体部」である点で共通する。
ウ 引用発明の「蓄熱層22」は、「蓄熱部材22aを樹脂塗料22b中に分散させ」たものであり、「外装ケースの内面に」「形成」されたものであるから、「成形体」といえる。
また、引用発明の「蓄熱層22」は、「外装ケースの内面に」「形成」されるから、「外装ケース」を構成する「前面ケース1と背面ケース2」の「内面」に接して設けられることは明らかである。
したがって、引用発明の「外装ケースの内面に」「形成」される「蓄熱層22」と、本願発明1の「前記筐体部の内面に接して設けられ、25℃における熱伝導率が0.3W/m・K以上1.0W/m・K以下であり、前記筐体部の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有し、空間を空けて少なくとも前記設置部に対向配置される成形体」は、「前記筐体部の内面に接して設けられ」る「成形体」である点で共通する。
エ したがって、本願発明1と引用発明の間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「電気機器を設置可能な設置部を有する電気機器用筐体であって、
前記設置部を有する筐体部と、
前記筐体部の内面に接して設けられる成形体と
を備えることを特徴とする電気機器用筐体。」
(相違点)
(相違点1)
本願発明1の「設置部」は、「筐体部」がその「内面に有」するものであるのに対し、引用発明ではそのように特定されていない点。
(相違点2)
本願発明1の「筐体部」は、「金属から構成される」のに対し、引用発明の「外装ケース」はそのように特定されていない点。
(相違点3)
本願発明1の「成形体」は、「25℃における熱伝導率が0.3W/m・K以上1.0W/m・K以下であり、前記筐体部の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有」するのに対し、引用発明の「蓄熱層22」は、熱伝導率について特定されていない点。
(相違点4)
本願発明1の「成形体」は、「空間を空けて少なくとも前記設置部に対向配置され」るのに対し、引用発明の「蓄熱層22」は、そのように特定されていない点。
(2)判断
事案に鑑みて、先に、相互に関連する相違点2及び3について検討する。
本願発明1は、段落【0029】に「成形体20の熱伝導率が0.3W/m・K以上であると、成形体20中に内包する潜熱蓄熱材と同等以上の熱伝導を有し、発熱デバイスなどの電気機器40からの熱を潜熱蓄熱材に効率良く伝達し、蓄熱効率が良好となる。さらに、蓄熱した熱を電気機器用筐体1に加温する効果も得られる。また、成形体20の熱伝導率が1.0W/m・K以下であると、筐体部10を構成する金属材料に対し、断熱の効果がある。また、上記観点から、成形体20の熱伝導率は、筐体部10の熱伝導率よりも低いことが好ましい。」と記載されるように、「金属から構成される筐体部」(相違点2)を前提として、「25℃における熱伝導率が0.3W/m・K以上1.0W/m・K以下であり、前記筐体部の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有」する「成形体」(相違点3)とするものである。
引用文献1には、そもそも「外装ケース」を構成する材料に関して記載も示唆もなく、「蓄熱層22」の熱伝導率を、金属から構成される筐体部との関係において特定の数値範囲とすることに関して記載も示唆もない。
引用文献2-4には、上記第4の2-4で説示したように、本願発明1で特定する数値範囲「0.3W/m・K以上1.0W/m・K以下」を満たす熱伝導率を有する蓄熱材が記載されているものの、金属から構成される筐体部との関係において熱伝導率を特定の数値範囲に限定することに関して記載も示唆もない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-4に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 本願発明2-7について
本願発明2-7は、いずれも本願発明1を減縮した発明であり、上記相違点2及び3に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-4に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 原査定について
上記第5で説示したとおり、本願発明1-7は、当業者であっても、原査定における引用文献1に記載された発明及び引用文献2-4に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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