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特許拒絶査定不服審判

2023-002229

下層膜形成用材料、レジスト下層膜および積層体

審判番号
2023-002229
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-571089外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年02月09日
審決日
2024年05月13日
公報発行日
2024年08月30日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (G03F) / P18 .537-WZ (G03F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-571089「下層膜形成用材料、レジスト下層膜および積層体」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月13日国際公開、WO2020/162183〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2020年(令和2年)1月22日(先の出願に基づく優先権主張 平成31年2月7日、令和元年9月11日)を国際出願日とする出願であって、令和4年11月2日付けで拒絶査定がされ、これに対し令和5年2月9日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がなされ、その後、当合議体において令和5年12月26日付けで拒絶理由を通知し、これに対し令和6年3月6日に、意見書の提出と共に手続補正がなされた。 第2 本件発明 本願の請求項に係る発明は、令和6年3月6日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項4に係る発明(以下「本件発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「 多層レジストプロセスに用いられる下層膜形成用材料であって、当該下層膜形成用材料の固形分が、以下(i)~(iii)を満たす下層膜形成用材料。 (i)以下数式(1)で定義される元素構成比率Reが1.5~2.8である。 (ii)ガラス転移温度が50~190℃である。 (iii)下記一般式(1)で表される構造単位を有する樹脂を含む。 【数3】 [図:0001412802000001.jpg] 数式(1)中、 NHは、下層膜形成用材料の固形分中の、水素原子の数であり、 NCは、下層膜形成用材料の固形分中の、炭素原子の数であり、 NOは、下層膜形成用材料の固形分中の、酸素原子の数である。 【化7】 [図:0001412802000002.jpg] 一般式(1)中、 R1~R4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数7~20のアリールオキシアルキル基、炭素数7~20のアリールオキシカルボニル基、炭素数8~20のアルキルアリールアミノカルボニル基、炭素数8~30のアルコキシカルボニルアリール基および炭素数8~20のアリールオキシカルボニルアルキル基なる群より選ばれるいずれかの基であり、かつ、R1~R4のうち少なくとも1つは水素原子以外の基であり、さらに、R1~R4の少なくとも2つが結合しており、 nは、0~2の整数を表し、 X1およびX2は、それぞれ独立に-CH2-または-O-を表す。」 第3 当審における拒絶の理由 当合議体が、令和5年12月26日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本件出願の請求項1~14に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 なお、引用文献1及び引用文献2を、主引用発明が記載された文献として引用し、引用文献3及び引用文献4を、副引用文献として引用している。 引用文献1:国際公開第2017/141612号 引用文献2:国際公開第2018/221575号 引用文献3:国際公開第2015/001936号 引用文献4:国際公開第2008/117867号 第4 引用文献 1 引用文献2 (1)引用文献2の記載事項 本願の優先権主張に係る最先の出願前に、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された引用文献である、国際公開第2018/221575号(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載事項がある。なお、引用発明の認定及び判断に利用した箇所に下線を付した。 ア 技術分野 「[0001] 本発明は、下層膜形成用材料、レジスト下層膜、レジスト下層膜の製造方法および積層体に関する。」 イ 発明が解決しようとする課題 「[0011] 本件第一発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、十分な光学特性およびエッチング耐性を満たすとともに平坦性に優れ、揮発分の発生量も抑制されたレジスト下層膜を実現できる下層膜形成用材料を提供するものである。 また、本件第一発明は、凹凸構造への埋め込み性に優れ、十分な光学特性およびエッチング耐性を満たすとともに平坦性に優れ、揮発分の発生量も抑制されたレジスト下層膜を複雑な形状の基板上に形成できる下層膜形成用材料を提供するものである。」 ウ 発明の効果 「[0015] 本件第一発明によれば、十分な光学特性およびエッチング耐性を満たすとともに平坦性に優れ、揮発分の発生量も抑制されたレジスト下層膜を実現できる下層膜形成用材料を提供することができる。 また、本件第一発明の下層膜形成用材料は凹凸構造への埋め込み性に優れるため、本発明によれば、凹凸構造への埋め込み性に優れ、十分な光学特性およびエッチング耐性を満たすとともに平坦性に優れ、揮発分の発生量も抑制されたレジスト下層膜を複雑な形状の基板上に形成することができる。…」 エ 下層膜形成用材料 「[0020]<下層膜形成用材料> 本実施形態に係る下層膜形成用材料は、多層レジストプロセスに用いられるレジスト下層膜を形成するための下層膜形成用材料であって、下記一般式(1)で表される繰返し構造単位[A]および下記一般式(2)で表される繰返し構造単位[B]を有する環状オレフィンポリマーを含み、上記環状オレフィンポリマーにおける構造単位[A]と構造単位[B]とのモル比[A]/[B]が5/95以上95/5以下である。… [0072] 本実施形態に係る環状オレフィンポリマーの示差走査熱量分析によるガラス転移温度は好ましくは40~220℃であり、より好ましくは40~200℃であり、さらに好ましくは40~180℃である。また、本実施形態に係る環状オレフィンポリマーの示差走査熱量分析によるガラス転移温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上、さらにより好ましくは70℃以上、そして好ましくは220℃以下、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは180℃以下である。ガラス転移温度が上記範囲であると、上記した貯蔵弾性率(G’)曲線と損失弾性率(G’’)曲線の交点の温度を上記した範囲に調整しやすくなる。」 オ 請求の範囲 「[請求項1] 多層レジストプロセスに用いられるレジスト下層膜を形成するための下層膜形成用材料であって、 下記一般式(1)で表される繰返し構造単位[A]および下記一般式(2)で表される繰返し構造単位[B]を有する環状オレフィンポリマーを含み、 前記環状オレフィンポリマーにおける前記構造単位[A]と前記構造単位[B]とのモル比[A]/[B]が5/95以上95/5以下である下層膜形成用材料。 [化1] [図:0001412802000003.jpg] (前記一般式(1)中、R1~R4のうち少なくとも1つが、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数2~10のアルコキシアルキル基、炭素数7~20のアリールオキシアルキル基、炭素数2~20のアルコキシカルボニル基、炭素数3~10のジアルキルアミノカルボニル基、炭素数7~20のアリールオキシカルボニル基、炭素数8~20のアルキルアリールアミノカルボニル基、炭素数3~30のアルコキシカルボニルアルキル基、炭素数8~30のアルコキシカルボニルアリール基、炭素数8~20のアリールオキシカルボニルアルキル基、炭素数3~20のアルコキシアルキルオキシカルボニル基および炭素数4~30のアルコキシカルボニルアルキルオキシカルボニル基、から選ばれ、R1~R4は互いに結合して環構造を形成していてもよく、nは0~2の整数を表す。) [化2] [図:0001412802000004.jpg] (前記一般式(2)中、R5~R8のうち少なくとも1つが、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数2~10のアルコキシアルキル基、炭素数7~20のアリールオキシアルキル基、炭素数2~20のアルコキシカルボニル基、炭素数3~10のジアルキルアミノカルボニル基、炭素数7~20のアリールオキシカルボニル基、炭素数8~20のアルキルアリールアミノカルボニル基、炭素数3~30のアルコキシカルボニルアルキル基、炭素数8~30のアルコキシカルボニルアリール基、炭素数8~20のアリールオキシカルボニルアルキル基、炭素数3~20のアルコキシアルキルオキシカルボニル基および炭素数4~30のアルコキシカルボニルアルキルオキシカルボニル基から選ばれ、R5~R8が互いに結合して環構造を形成していてもよく、nは0~2の整数を表し、X1は-O-または-S-を表す。)」 (2)引用文献2に記載された発明 引用文献2の記載事項オに基づけば、引用文献2には、請求項1に係る発明として、前記(1)オに示すとおりの発明(以下「引用発明」という。)が記載されていたと認められる。 2 引用文献4 (1)引用文献4の記載事項 本願の優先権主張に係る最先の出願前に、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された引用文献である、国際公開第2008/117867号(以下「引用文献4」という。)には、以下の記載事項がある。なお、技術的事項の認定に利用した箇所に下線を付した。 ア 技術分野 「[0001] 本発明は、レジスト下層膜用組成物及びデュアルダマシン構造の形成方法に関する。更に詳しくは、ビアホールに良好に埋め込まれ、良好なエッチング耐性を有し、容易に除去が可能であり、パターン転写性能に優れたレジスト下層膜を形成可能なレジスト下層膜用組成物、及びこの組成物を用いたデュアルダマシン構造の形成方法に関する。」 イ 背景技術 「[0002] 従来、集積回路素子等を製造する際には、シリコン系酸化膜や層間絶縁膜等の無機被膜上に、フォトレジスト膜等の有機被膜を形成し、例えば、放射線の照射、現像、パターン転写等の工程を経るレジストプロセス(即ち、フォトリソグラフィ)により、上記有機被膜及び無機被膜に所望のレジストパターンが形成される。このフォトリソグラフィにおいては、フォトレジスト膜の下に有機被膜であるレジスト下層膜を設けることが一般的である。即ち、予めレジスト下層膜を形成した後、このレジスト下層膜上にフォトレジスト膜を形成することが行われる。 [0003] このレジスト下層膜は、下地基板の凹凸や溝などのギャップを充填して平坦化する機能、パターンにハレーションが生じることを防ぐために基板から反射した放射線を吸収する機能、及び無機被膜を微細加工するためのマスクとしての機能が求められるものである。… [0005] 特に、無機被膜を微細加工するためのマスクとしての機能を有するレジスト下層膜、即ち、エッチング耐性を有するレジスト下層膜については、このレジスト下層膜に含有させるポリマーについて種々検討がなされており、エッチング耐性とポリマー構造についての、いくつかの経験的な関係式が提案されている。 [0006] 例えば、大西らは、大西パラメーターと呼ばれる下記式(i)によってエッチング耐性を評価することが可能であることを提案している(例えば、非特許文献1)。 (i):NT/{NC-NO-(2×NX)} (但し、上記式(i)中、NTは総原子数、NCは炭素原子数、NOは酸素原子数、NXはハロゲン原子数である) [0007] この大西パラメーターによると、そのパラメーター値が小さい場合、例えば、炭素原子数が多く、酸素原子数及びハロゲン原子数が少ないレジスト下層膜は、エッチング耐性が良好であることを意味する。 [0008] また、大西らは、上記大西パラメーターによって、プラズマアッシング(以下、「アッシング」と記す場合がある)の評価を行うことができることを提案している。具体的には、大西パラメーターの値が大きい場合は、プラズマアッシングの処理速度が良好である(速い)と評価することができるということを提案している。」 (2)引用文献4に記載された技術的事項 引用文献4における上記記載事項イに基づけば、レジスト下層膜用組成物の技術分野の背景技術として、次の技術的事項が知られていたといえる。 「レジスト下層膜に含有させるポリマーについて、大西パラメーターと呼ばれる下記式(i)のパラメーター値が小さい場合、例えば、炭素原子数が多く、酸素原子数及びハロゲン原子数が少ないレジスト下層膜は、エッチング耐性が良好であり、値が大きい場合は、プラズマアッシングの処理速度が良好であること。 (i):NT/{NC-NO-(2×NX)} (但し、上記式(i)中、NTは総原子数、NCは炭素原子数、NOは酸素原子数、NXはハロゲン原子数である)」 第5 対比 本件発明と引用発明とを対比する。 1 一般式(1)で表される構造単位を有する樹脂 本件発明の「一般式(1)で表される構造単位を有する樹脂」と、引用発明の「一般式(1)で表される繰返し構造単位[A]および下記一般式(2)で表される繰返し構造単位[B]を有する環状オレフィンポリマー」とは、次の樹脂を選択肢として含む点で共通する。 「 【化7】 [図:0001412802000005.jpg] 一般式(1)中、 R1~R4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数7~20のアリールオキシアルキル基、炭素数7~20のアリールオキシカルボニル基、炭素数8~20のアルキルアリールアミノカルボニル基、炭素数8~30のアルコキシカルボニルアリール基および炭素数8~20のアリールオキシカルボニルアルキル基なる群より選ばれるいずれかの基であり、 nは、0~2の整数を表し、 X1およびX2は、-CH2-または-O-を表す。」 2 多層レジストプロセスに用いられる下層膜形成用材料 引用発明の「多層レジストプロセスに用いられるレジスト下層膜を形成するための下層膜形成用材料」は、技術的にみて、本件発明の「多層レジストプロセスに用いられる下層膜形成用材料」に相当する。 3 一致点及び相違点 以上より、本件発明と引用発明とは、 「多層レジストプロセスに用いられる下層膜形成用材料であって、当該下層膜形成用材料の固形分が、以下(iii)を満たす下層膜形成用材料。 (iii)下記一般式(1)で表される構造単位を有する樹脂を選択肢として含む。 【化7】 [図:0001412802000006.jpg] 一般式(1)中、 R1~R4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数7~20のアリールオキシアルキル基、炭素数7~20のアリールオキシカルボニル基、炭素数8~20のアルキルアリールアミノカルボニル基、炭素数8~30のアルコキシカルボニルアリール基および炭素数8~20のアリールオキシカルボニルアルキル基なる群より選ばれるいずれかの基であり、 nは、0~2の整数を表し、 X1およびX2は、-CH2-または-O-を表す。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点2-1]本件発明は、数式(1)で定義される元素構成比率Reが「1.5~2.8」であるのに対し、引用発明は、元素構成比率Reの範囲を特定していない点。 [相違点2-2]本件発明は、ガラス転移温度が「50~190℃」であるのに対し、引用発明は、ガラス転移温度の範囲を特定していない点。 [相違点2-3]一般式(1)について、本件発明は、R1~R4の選択肢を「それぞれ独立に、水素原子、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数7~20のアリールオキシアルキル基、炭素数7~20のアリールオキシカルボニル基、炭素数8~20のアルキルアリールアミノカルボニル基、炭素数8~30のアルコキシカルボニルアリール基および炭素数8~20のアリールオキシカルボニルアルキル基なる群より選ばれるいずれかの基」とし、かつ、「R1~R4のうち少なくとも1つは水素原子以外の基であり、さらに、R1~R4の少なくとも2つが結合しており」とするのに対し、引用発明は、上記選択肢に加えて「炭素数1~10のアルキル基」、「炭素数1~10のアルコキシ基」、「炭素数2~10のアルコキシアルキル基」、「炭素数2~20のアルコキシカルボニル基」、「炭素数3~10のジアルキルアミノカルボニル基」、「炭素数3~30のアルコキシカルボニルアルキル基」、「炭素数3~20のアルコキシアルキルオキシカルボニル基」および「炭素数4~30のアルコキシカルボニルアルキルオキシカルボニル基」を選択肢として含み、「R1~R4のうち少なくとも1つは水素原子以外の基であり、さらに、R1~R4の少なくとも2つが結合しており」とする限定がなく、また、本件発明は、X1およびX2の選択肢を「それぞれ独立に-CH2-または-O-を表す」とするのに対し、引用発明は、上記選択肢に加えて「-S-」を選択肢として含む点。 第6 判断 1 [相違点2-1]について 前記第4の2(2)に記載したとおり、レジスト下層膜用組成物の技術分野の背景技術として、レジスト下層膜に含有させるポリマーについて、大西パラメーターの値が小さい場合は、レジスト下層膜の「エッチング耐性が良好」であり、大西パラメーターの値が大きい場合は「プラズマアッシングの処理速度が良好」であることが知られていた。 ここで、大西パラメーターは、以下の式(i)で定義されるものである。 (i):NT/{NC-NO-(2×NX)} (但し、上記式(i)中、NTは総原子数、NCは炭素原子数、NOは酸素原子数、NXはハロゲン原子数である) レジスト下層膜に含有させるポリマーが、本件発明の一般式(1)で表される構造単位を有する樹脂のように、炭素原子、酸素原子、及び、水素原子から構成される場合、大西パラメーターは、本件発明における数式(1)で定義される元素構成比率Reと同じものとなる。 以上より、本件発明において「元素構成比率Re」と称されるパラメータが小さい場合は、レジスト下層膜のエッチング耐性が良好であり、大きい場合はプラズマアッシングの処理速度が良好であることが、本願の優先権主張に係る最先の出願前に知られていたといえる。 引用発明は、引用文献2の記載事項イ(段落[0011])に「本件第一発明は、凹凸構造への埋め込み性に優れ、十分な光学特性およびエッチング耐性を満たすとともに平坦性に優れ、揮発分の発生量も抑制されたレジスト下層膜を複雑な形状の基板上に形成できる下層膜形成用材料を提供する」と記載されているとおり、十分なエッチング耐性を満たすことを課題とする発明である。また、引用発明は、レジスト下層膜形成用の材料であることから、プラズマアッシングの処理速度が良好であることも、当然に要求されることである。 そうすると、引用発明に含まれる環状オレフィンポリマーについて、十分なエッチング耐性を満たすとともに、プラズマアッシングの処理速度も良好であるように、大西パラメーターの値を最適化し、その値を1.5~2.8の範囲内のものとすることは、当業者が適宜なし得たことである。そして、そのように最適化することにより、「元素構成比率Re」も、本件発明の[相違点2-1]に係る要件を満たすことになる。 2 [相違点2-2]について 引用文献2の記載事項エには、環状オレフィンポリマーのガラス転移温度について、「より好ましくは50℃以上」、「さらに好ましくは180℃以下」であると記載されている。当該記載に基づいて、引用発明の一般式(1)で表される繰返し構造単位[A]および下記一般式(2)で表される繰返し構造単位[B]を有する環状オレフィンポリマーについて、ガラス転移温度が50~180℃の範囲にあるものを選択することにより、本件発明の[相違点2-2]に係る要件を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことである。 3 [相違点2-3]について 引用発明は、一般式(1)で表される繰返し構造単位[A]のR1~R4および一般式(2)で表される繰返し構造単位[B]のR5~R8について、「互いに結合して環構造を形成していてもよく、」とされる発明であるところ、前記繰返し構造単位[A]のR1~R4および一般式(2)で表される繰返し構造単位[B]のR5~R8について、互いに結合して環構造を形成した態様は、本件発明における「R1~R4の少なくとも2つが結合しており」とする要件を満たすことになる。また、引用発明の一般式(1)で表される繰返し構造単位[A]のR1~R4および一般式(2)で表される繰返し構造単位[B]のR5~R8の選択肢として、「水素」、「炭素数6~20のアリール基」、「炭素数6~20のアリールオキシ基」、「炭素数7~20のアリールオキシアルキル基」、「炭素数7~20のアリールオキシカルボニル基」、「炭素数8~20のアルキルアリールアミノカルボニル基」、「炭素数8~30のアルコキシカルボニルアリール基」、「炭素数8~20のアリールオキシカルボニルアルキル基」が示されている。さらに、引用発明の一般式(2)で表される栗可視単位[B]のX1の選択肢として、「-O-」が示されている。 したがって、引用発明において、「環状オレフィンポリマー」として、具体的な選択肢として示された上記構造単位を選択して、[相違点2-3]に係る本件発明の構成に想到することは当業者が適宜なし得たことである。 請求人は、令和6年3月6日に提出した意見書において、「引用発明2、引用文献2および引用文献4には、R1~R4の少なくとも2つが結合してR1~R4が環構造を形成することを発明の構成とすることについて、開示も示唆もされていません。」(第9頁)と主張している。 しかし、上記のとおり、引用発明には、選択肢として、繰返し構造単位[A]のR1~R4および一般式(2)で表される繰返し構造単位[B]のR5~R8について、互いに結合して環構造を形成しているものが示されているから、引用発明2に上記構成についての開示及び示唆があることは明らかである。 また、請求人は、令和6年3月6日に提出した意見書において、「なお、本願明細書の段落[0062]には、「R1~R4が環構造を形成することで単位構造内に結合連鎖を形成し、エッチングにより環構造の一部が切れても、他方の結合は残り揮発せず、実質的に良好なエッチング耐性を示すことが期待される」と記載されておりますが、引用発明2、引用文献2および引用文献4には、このような、R1~R4が環構造を形成することにより得られる効果に関する記載は特にありません。」(第9頁)と主張している。 しかし、大西パラメーターが小さい場合にエッチング耐性が良好となることは、前記4の2(2)に記載したとおり、レジスト下層膜用組成物の技術分野の背景技術として、知られていたことである。ここで、環構造を形成することにより、炭素元素の比率を高くすれば、大西パラメーターが小さくなることは、化学構造からみて自明である。また、本願の実施例等の記載を参酌しても、側鎖の末端部分の構造が環構造であることにより、予測できない顕著な効果が奏されると理解することができない。したがって、本件発明の上記[相違点2-3]に係る選択肢を採用した場合に、予測できない顕著な効果が奏されるともいえない。 以上のとおりであるから、請求人の主張は、いずれも採用できない。 第7 むすび 以上のとおり、本件発明は、その優先権主張に係る最先の出願前に、日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった引用文献2に記載された発明及び引用文献4に記載された事項に基づいて、その優先権主張に係る最先の出願前に、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-002229

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