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特許拒絶査定不服審判

2023-001966

眼用レンズの明確な近見視力を判定する方法

審判番号
2023-001966
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-562281外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年02月06日
審決日
2024年03月11日
公報発行日
2024年08月30日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (A61B) / P18 .575-Z (A61B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-562281「眼用レンズの明確な近見視力を判定する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月15日国際公開、WO2018/206336、令和 2年 7月 2日国内公表、特表2020-519374〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2018年(平成30年)4月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年(平成29年)5月12日、(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、令和4年2月28日付けの拒絶理由の通知に対し、同年6月3日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年9月22日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対して令和5年2月6日に審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、同年3月3日に審判請求書を補正する手続補正(方式)がなされたものである。 第2 令和5年2月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和5年2月6日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「 【請求項1】 眼用処方箋を有する着用者に提供される眼用レンズの、近距離視に対する明確な近見視力を判定するための装置の作動方法であって、前記方法は、 少なくとも、近距離視に適合した平均度数を備える近距離視ゾーンを有する眼用レンズが着用者に提供される、眼用レンズ提供ステップと、 前記提供された眼用レンズを着用しているときの前記着用者による近見視タスク処理速度が判定される、近見視タスク速度判定ステップと、を含み、 改善された近見視タスク処理速度を提供する前記平均度数に対応する明確な近見視力を判定するために、前記眼用レンズ提供ステップ及び前記近見視タスク速度判定ステップが、異なる平均度数を有する眼用レンズで繰り返される、装置の作動方法。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和4年6月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。 「 【請求項1】 眼用処方箋を有する着用者に提供される眼用レンズの、近距離視に対する明確な近見視力を判定するための方法であって、前記方法は、 少なくとも、近距離視に適合した平均度数を備える近距離視ゾーンを有する眼用レンズが着用者に提供される、眼用レンズ提供ステップと、 前記提供された眼用レンズを着用しているときの前記着用者による近見視タスク処理速度が判定される、近見視タスク速度判定ステップと、を含み、 改善された近見視タスク処理速度を提供する前記平均度数に対応する明確な近見視力を判定するために、前記眼用レンズ提供ステップ及び前記近見視タスク速度判定ステップが、異なる平均度数を有する眼用レンズで繰り返される、方法。」 2 補正の適否 上記補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「眼用処方箋を有する着用者に提供される眼用レンズの、近距離視に対する明確な近見視力を判定するための方法」を、「眼用処方箋を有する着用者に提供される眼用レンズの、近距離視に対する明確な近見視力を判定するための装置の作動方法」とすることにより、当該方法の主体を「装置の作動」に限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献1 (ア)原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015-79127号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審において付与した。以下同様)。 (引1ア) 「【背景技術】 【0002】 人は、網膜の中心部で見る中心視だけでなく、網膜の周辺部で見る周辺視も合わせて使用して、情報を視覚的に認識している。この情報認識の際に用いられる視野を、有効視野と表記する。人は、眼で得られる全ての視野を有効視野として用いるのではなく、それよりも狭い視野を有効視野として用いている。たとえば、文章認識の際には、1文字1文字を中心視で認識するのではなく、周辺視の能力に応じて文章をいくつかの文字を含む領域に区分けして、各領域に含まれる複数の文字を一度の固視で認識し、次の領域に跳躍することを繰り返していると考えられている。同じ文章でも人によって読解する速度が異なるのは、有効視野の大きさ、すなわち一度の固視で認識可能な領域の大きさが人によって異なることに起因する。 ・・・ 【0006】 眼鏡レンズの設計においても、有効視野を考慮することが重要であると考えられる。しかし、上述した文献では、視野を制限して有効視野を計測した旨は記載されているが、眼鏡レンズの収差が有効視野にどのように影響を与えるかについては考慮されていない。眼鏡レンズを装用している状態であっても、有効視野が広ければ広いほど視覚的認識に有利であると考えられる。したがって、視野を強制的に制限すると読書効率が低下したことから、眼鏡レンズを装用した場合に、眼鏡レンズの収差によって視野内にぼけ・ゆがみが発生し、視覚的な認識プロセスに何らかの影響があると考えられる。」 (引1イ) 「【図面の簡単な説明】 【0009】 【図1】人が文章を読む場合に、一度の固視で認識できる領域の一例を示す図である。 【図2】第1の実施形態における計測システムの構成を説明する図である。 【図3】第1~第3の実施形態における手順を説明するフローチャートである。」 (引1ウ) 「【0010】 以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。なお、具体的な実施形態について説明する前に、本発明における前提となる説明を行う。以下の説明において、非点収差および平均球面度数は、たとえば、レンズ面上の任意の点を透過した光線における最大の球面度数をDmaxとし、最小の球面度数をDminとしたとき、次の式(1)および(2)でそれぞれ表されるものとする。 非点収差=(Dmax-Dmin) ・・・(1) 平均球面度数=(Dmax+Dmin)/2 ・・・(2) ・・・ 【0012】 図1は、人が文章を読む場合に、一度の固視で認識できる領域の一例を示す図である。図1の楕円で囲まれた領域は、人が一度の固視で認識できる領域を示しており、有効視野に相当するものと考えることができる。人はこの領域を順につないで全体の文章の認識を行うため、楕円から楕円への視線の移動が視線の跳躍と考えることができる。これらの楕円の大きさもしくは視線が跳躍する回数は、読書効率によって異なる。速読の得意な(読書効率のよい)人であればわずか数回の固視で短時間に文章の認識を行えるが、速読の苦手な人の場合は、一度の固視で認識できる文字が少ないばかりでなく、同じ場所を何度も跳躍し、認識に多くの時間を要することもある。 ・・・ 【0014】 眼鏡レンズを装用した場合には、眼鏡レンズの収差が有効視野を制限して、視覚的な認識に影響を与えるおそれがある。そこで、有効視野を広げるために、収差補正を行うことが対処法として考えられる。しかしながら、眼鏡レンズ、特に累進屈折力レンズの場合、装用時においてレンズの上方に位置する遠方視用矯正領域(以下、遠用部と呼ぶ)と、レンズの下方に位置する近方視用矯正領域(以下、近用部と呼ぶ)と、双方の領域の間で連続的に屈折力が変化する累進領域(以下、中間部と呼ぶ)とを備えている。この中間部の性質上、形状的なゆがみに由来する収差がどうしても発生してしまうため、レンズ全面に亘って収差を抑え、レンズのあらゆる領域において有効視野を広くするような収差分布にすることは困難である。ゆえに、有効視野への影響をどの程度まで考慮するのか、有効視野を重視すべきレンズの使用領域はどこなのかといった条件を設けて、収差分布と有効視野への影響のバランスをとって眼鏡レンズを選択あるいは設計することが有効である。 【0015】 以上のような事情を鑑みて、以下の説明では、被検者が眼鏡レンズを装用した状態で視覚的情報を認識する際の、被検者の周辺視に関連する情報(すなわち有効視野に関連する情報)を計測し、計測結果に基づいて眼鏡レンズを評価する方法を提案する。この評価によって、眼鏡レンズ、特に累進屈折力レンズを装用した状況でも視覚的情報を認識する効率を落とさないようにするための、眼鏡レンズの選択あるいは設計が可能となる。なお、以下に説明する方法は、単焦点または多焦点の眼鏡レンズの選択・設計に用いることができるが、特にレンズ面内に複雑な収差分布をもつ累進屈折力レンズの選択・設計において効果を発揮する。」 (引1エ) 「【0016】 -第1の実施形態- 図面を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。第1の実施形態では、被検者の周辺視に関連する情報として、視覚的情報の認識に要した時間および認識の正答率のうち少なくとも1つを計測する。視覚的情報の認識に要した時間が短いほど、または認識の正答率が高いほど、眼鏡レンズの収差が被検者の周辺視および有効視野に与える影響が少なく、視覚的な認識に適した眼鏡レンズであると考えられる。 【0017】 図2は、第1の実施形態における眼鏡レンズの計測システム1の構成を説明する図である。計測システム1は、情報処理装置20と表示装置30とを有している。情報処理装置20には、たとえば液晶ディスプレイなどの表示装置21と、たとえばキーボードやマウスなどの入力装置22と、たとえばハードディスクドライブなどの記憶装置23とが接続されている。表示装置30は、後述するテスト情報を表示するためのものであり、たとえば液晶ディスプレイなどを用いることができる。また、表示装置30は、情報処理装置20との間で有線または無線によって通信を行う。図2は、有線の場合を示している。 【0018】 次に、計測システム1による計測を複数の眼鏡レンズについて行い、複数の眼鏡レンズの中から被検者に適した眼鏡レンズを選択する手順を、図3に示すフローチャートを用いて説明する。この方法では、より多くのタイプの収差分布を有する眼鏡レンズについて計測を行うことで、より被検者に適した眼鏡レンズの選択を行うことが可能となる。 【0019】 ステップS1において、評価対象である複数の眼鏡レンズから、今回の計測で用いる眼鏡レンズを決定する。被検者は、決定された眼鏡レンズ10を装用する。なお、評価対象の眼鏡レンズとしては、様々なものを用いることができる。たとえば、テストレンズ、検眼レンズもしくは実際に調製されたレンズ等のレンズ面の形状が既知である眼鏡レンズを用いることができる。被検者が表示装置30に表示されたテスト情報を見ることができないと正確に評価を行うことができないため、評価対象の眼鏡レンズは、被検者が表示装置30に表示されたテスト情報を見ることができるように視力矯正されていることが望ましい。 【0020】 ステップS2において、情報処理装置20は、記憶装置23に記憶されたテスト情報を読み出して、表示装置30に表示する。テスト情報は、視覚的認識に関する情報が得られるようなものが望ましい。テスト情報は、文章、図、および絵のうちの少なくとも1つから構成される視覚的情報であり、たとえば、読解に時間を要する複数の行から構成される文章、形状判別が求められる図や絵、色覚検査等に用いられるテストチャートなどである。 【0021】 ステップS3において、被検者は表示装置30に表示されたテスト情報を観察して、テスト情報の内容を認識する。情報処理装置20は、被検者がテスト情報を認識するのに要した時間または認識の正答率といった認識情報を計測する。なお、認識に要した時間および認識の正答率の両方を計測してもよいし、いずれか一方を計測してもよい。 【0022】 たとえば、テスト情報が文章であれば、文章を読解するのに要した時間や誤読率等をそのまま計測値としても構わないし、それらの数値を、文章を構成する文字数、単語数、行数もしくは文字の大きさ等で規格化した値を計測値としてもよい。また、テスト情報が図や絵であれば、図や絵の判別に要した時間もしくは多くの図や絵を判別した場合の正答率等を計測値とする。また、テスト情報がテストチャートであれば、正答率等を計測値とする。 【0023】 なお、認識に要した時間については、たとえば、被検者がテスト情報の認識を開始した開始時間とテスト情報の認識を終了した終了時間とが、入力装置22を介して情報処理装置20に入力される。情報処理装置20は、入力された開始時間と終了時間とに基づいて、認識に要した時間を計測する。また、認識の正答率については、たとえば、被検者の認識結果が、入力装置22を介して情報処理装置20に入力される。情報処理装置20は、入力された認識結果に基づいて、認識の正答率を計測する。 【0024】 ステップS4において、評価対象である全ての眼鏡レンズについて認識情報の計測が終了したか否かを判定する。まだ、認識情報の計測が終了していない眼鏡レンズがある場合は、ステップS1に戻って、認識情報の計測が終了していない眼鏡レンズについて、ステップS1~S3の手順を繰り返す。このとき、人間の記憶能力や学習能力による影響を排除するために、表示装置30に表示するテスト情報は全ての眼鏡レンズで同じものでなくても構わないが、テスト情報の認識に要する難易度については全ての眼鏡レンズで揃えることが望ましい。たとえば、テスト情報が文章である場合は、文章を構成する言語、文字数、単語数、行数あるいは文字の大きさ等を全ての眼鏡レンズで揃えることが望ましい。また、テスト情報が図形である場合は、図形の大きさあるいは形状の複雑さ等を全ての眼鏡レンズで揃えることが望ましい。また、テスト情報がテストチャートである場合は、テストチャートの大きさ等を全ての眼鏡レンズで揃えることが望ましい。評価対象である全ての眼鏡レンズについて認識情報の計測が終了した場合には、ステップS5に進む。 【0025】 ステップS5において、評価対象である各眼鏡レンズにおいて、ステップS3での計測結果に基づいて眼鏡レンズを評価する。評価方法としては、たとえば、ステップS3で計測した、認識に要した時間または認識の正答率の単純な大小を比較して、評価対象である複数の眼鏡レンズの中から、認識効率が最良の眼鏡レンズを決定するようにしてもよい。すなわち、認識に要した時間が最も短い眼鏡レンズを最良の眼鏡レンズとして評価してもよいし、認識の正答率が最も高い眼鏡レンズを最良の眼鏡レンズとして評価してもよい。 【0026】 また、たとえば、あらかじめ多数のモニター調査等に基づいて、テスト情報の認識に要した時間または認識の正答率における平均値または閾値を算出し、統計データベースとして記憶装置23に記録しておく。そして、記憶装置23に記録された平均値または閾値と今回の計測結果とを比較し、比較結果に基づいて眼鏡レンズが視覚的な認識に適しているか否かを評価してもよい。すなわち、認識に要した時間が記憶装置23に記録された平均値または閾値よりも短い眼鏡レンズを、視覚的な認識に適した眼鏡レンズとして評価してもよい。また、認識の正答率が記憶装置23に記録された平均値または閾値よりも高い眼鏡レンズを、視覚的な認識に適した眼鏡レンズとして評価してもよい。 【0027】 また、たとえば、被検者が眼鏡レンズの掛け替えを目的としている場合に、ステップS2において、被検者が掛け替え前の眼鏡レンズを装用した状態でテスト情報を認識した場合の、認識に要した時間または認識の正答率を計測してもよい。そして、掛け替え前の眼鏡レンズを装用した場合の計測結果に対して、他の眼鏡レンズを装用した場合の計測結果の変化が許容範囲内に収まっているかどうかで、眼鏡レンズが視覚的な認識に適しているか否かを評価してもよい。 【0028】 また、たとえば、ステップS2において、被検者が眼鏡レンズを装用しない状態でテスト情報を認識した場合の、認識に要した時間または認識の正答率を計測してもよい。そして、眼鏡レンズを装用しない場合の計測結果に対して、評価対象である眼鏡レンズを装用した場合の計測結果の変化が許容範囲内に収まっているかどうかで、眼鏡レンズが視覚的な認識に適しているか否かを評価してもよい。 【0029】 ステップS6において、ステップS5での評価結果に基づいて、評価対象である複数の眼鏡レンズの中から少なくとも1つの眼鏡レンズを選択する。たとえば、ステップS5で認識効率が最良の眼鏡レンズとして評価された眼鏡レンズを選択する。また、ステップS5で複数の眼鏡レンズが視覚的な認識に適していると評価された場合には、ある程度の認識のしやすさを保証したレンズとして、複数の眼鏡レンズを被検者に提示する。被検者は、提示された複数の眼鏡レンズの中から、自分の好みや予算などから購入を希望する眼鏡レンズを選択することができる。 【0030】 ステップS7において、眼鏡レンズの製造装置(不図示)は、ステップS6で選択された眼鏡レンズのレンズデータに基づいて、眼鏡レンズを製造する。この結果、視覚的な認識に適した眼鏡レンズが被検者に提供される。 【0031】 以上説明した第1の実施形態によれば、次の作用効果が得られる。 計測システム1は、文章、図、および絵のうちの少なくとも1つから構成される視覚的情報(テスト情報)を表示する表示装置30と、被検者が眼鏡レンズを装用した状態でテスト情報を認識する際の、認識に要した時間および認識の正答率のうち少なくとも1つを計測する情報処理装置20と、を備える。眼鏡レンズの提供者は、この計測システム1による計測を複数の眼鏡レンズについて行い、この計測結果に基づいて、複数の眼鏡レンズの中から少なくとも1つの眼鏡レンズを選択して製造する。これにより、被検者(顧客)の視覚的な認識に適した眼鏡レンズを提供することができる。」 (引1オ)図1 「 [図:0001412794000001.jpg] 」 (引1カ)図2 「 [図:0001412794000002.jpg] 」 (引1キ)図3 「 [図:0001412794000003.jpg] 」 (イ)上記(ア)の記載及び図面から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 a 引用文献1の【0006】「眼鏡レンズの設計においても、有効視野を考慮することが重要であると考えられる。・・・したがって、視野を強制的に制限すると読書効率が低下したことから、眼鏡レンズを装用した場合に、眼鏡レンズの収差によって視野内にぼけ・ゆがみが発生し、視覚的な認識プロセスに何らかの影響があると考えられる。」との記載、【0012】「図1は、人が文章を読む場合に、一度の固視で認識できる領域の一例を示す図である。図1の楕円で囲まれた領域は、人が一度の固視で認識できる領域を示しており、有効視野に相当するものと考えることができる。人はこの領域を順につないで全体の文章の認識を行うため、楕円から楕円への視線の移動が視線の跳躍と考えることができる。これらの楕円の大きさもしくは視線が跳躍する回数は、読書効率によって異なる。」、及び【0015】「以上のような事情を鑑みて、以下の説明では、被検者が眼鏡レンズを装用した状態で視覚的情報を認識する際の、被検者の周辺視に関連する情報(すなわち有効視野に関連する情報)を計測し、計測結果に基づいて眼鏡レンズを評価する方法を提案する。・・・以下に説明する方法は、単焦点または多焦点の眼鏡レンズの選択・設計に用いることができるが、特にレンズ面内に複雑な収差分布をもつ累進屈折力レンズの選択・設計において効果を発揮する。」 との記載を踏まえると、【0015】に記載の「被検者が眼鏡レンズを装用した状態で視覚的情報を認識する際の、被検者の周辺視に関連する情報(すなわち有効視野に関連する情報)を計測し、計測結果に基づいて眼鏡レンズを評価する方法」における「視覚的情報」は、読書する程度の距離に置かれた「視覚的情報」であるといえる。 b 引用文献1の【0015】「以下に説明する方法は、単焦点または多焦点の眼鏡レンズの選択・設計に用いることができるが、特にレンズ面内に複雑な収差分布をもつ累進屈折力レンズの選択・設計において効果を発揮する。」との記載、【0014】「累進屈折力レンズの場合、装用時においてレンズの上方に位置する遠方視用矯正領域(以下、遠用部と呼ぶ)と、レンズの下方に位置する近方視用矯正領域(以下、近用部と呼ぶ)と、双方の領域の間で連続的に屈折力が変化する累進領域(以下、中間部と呼ぶ)とを備えている。」との記載、及び上記aの記載を踏まえると、【0015】に記載の「単焦点」「の眼鏡レンズ」は、レンズの全面に単一の度数を有する眼鏡レンズであり、読書する程度の距離の1点(単点)に焦点が合う度数を有する「近方視用矯正領域」を備えているといえる。 c 引用文献1の【0015】「以上のような事情を鑑みて、以下の説明では、被検者が眼鏡レンズを装用した状態で視覚的情報を認識する際の、被検者の周辺視に関連する情報(すなわち有効視野に関連する情報)を計測し、計測結果に基づいて眼鏡レンズを評価する方法を提案する。」との記載、【0031】「以上説明した第1の実施形態によれば、次の作用効果が得られる。・・・これにより、被検者(顧客)の視覚的な認識に適した眼鏡レンズを提供することができる。」との記載を踏まえると、【0015】及び「第1の実施形態」(【0016】~【0031】)の「被検者」は「被検者(顧客)」であるといえる。 (ウ)上記(イ)のa~cを含め上記(ア)の記載及び図面を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。ここで、各構成単位末尾の括弧内には、主たる認定箇所となる引用文献1の記載箇所を示す。 「被検者(顧客)が眼鏡レンズを装用した状態で、読書する程度の距離に置かれた視覚的情報を認識する際の、被検者(顧客)の周辺視に関連する情報(すなわち有効視野に関連する情報)を計測し、計測結果に基づいて眼鏡レンズを評価する方法であって、(【0015】、a、c) 当該方法は、読書する程度の距離の1点に焦点が合う度数を有する近方視用矯正領域を備える単焦点の眼鏡レンズの選択に用いることができ、(【0015】、b) 被検者(顧客)の周辺視に関連する情報として、視覚的情報の認識に要した時間を計測し、視覚的情報の認識に要した時間が短いほど、視覚的な認識に適した眼鏡レンズであり、(【0016】、c) 情報処理装置20と表示装置30とを有し、情報処理装置20には記憶装置23が接続されている、計測システム1による計測を、複数の眼鏡レンズについて行い、複数の眼鏡レンズの中から被検者(顧客)に適した眼鏡レンズを選択する手順は、以下のとおりである、(【0017】、【0018】、c) ステップS1において、評価対象である複数の眼鏡レンズから、今回の計測で用いる眼鏡レンズを決定し、被検者(顧客)は、決定された眼鏡レンズを装用し、評価対象の眼鏡レンズとしては、検眼レンズを用いることができ、被検者(顧客)が表示装置30に表示されたテスト情報を見ることができないと正確に評価を行うことができないため、評価対象の眼鏡レンズは、被検者(顧客)が表示装置30に表示されたテスト情報を見ることができるように視力矯正されており、(【0019】、c) ステップS2において、情報処理装置20は、記憶装置23に記憶されたテスト情報を読み出して、表示装置30に表示し、(【0020】) ステップS3において、被検者(顧客)は表示装置30に表示されたテスト情報を観察して、テスト情報の内容を認識し、情報処理装置20は、被検者(顧客)がテスト情報を認識するのに要した時間といった認識情報を計測し、テスト情報が文章であれば、文章を読解するのに要した時間を計測値とし、その数値を文字数で規格化した値を計測値としてもよく、(【0021】、【0022】、c) ステップS4において、評価対象である全ての眼鏡レンズについて認識情報の計測が終了したか否かを判定し、まだ、認識情報の計測が終了していない眼鏡レンズがある場合は、ステップS1に戻って、認識情報の計測が終了していない眼鏡レンズについて、ステップS1~S3の手順を繰り返し、評価対象である全ての眼鏡レンズについて認識情報の計測が終了した場合には、ステップS5に進み、(【0024】) ステップS5において、評価対象である各眼鏡レンズにおいて、ステップS3での計測結果に基づいて眼鏡レンズを評価し、評価方法としては、ステップS3で計測した、認識に要した時間が最も短い眼鏡レンズを最良の眼鏡レンズとして評価し、(【0025】) ステップS6において、ステップS5での評価結果に基づいて、評価対象である複数の眼鏡レンズの中から少なくとも1つの眼鏡レンズを選択し、ステップS5で複数の眼鏡レンズが視覚的な認識に適していると評価された場合には、ある程度の認識のしやすさを保証したレンズとして、複数の眼鏡レンズを被検者(顧客)に提示し、被検者(顧客)は、提示された複数の眼鏡レンズの中から、自分の好みや予算などから購入を希望する眼鏡レンズを選択することができる、(【0029】、c) 方法。」 イ 引用文献2 (ア)同じく原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった米国特許出願公開第2015/0009474号明細書(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。 「[0007] One exemplary embodiment is a method for determining an ophthalmic prescription to improve vision at night. The method employs lenses of different power (e.g. ophthalmic trial lenses or a phoropter), or a variable power system (e.g. a Badal optometer). A unique testing protocol is utilized. In one part of the testing, the room is kept light to simulate daytime viewing conditions and a conventional eye chart is used as a visual stimulus. The clinician determines a first preferred spherical lens power by varying spherical lens powerand asking the patient to subjectively report when perceived vision is best based upon specified criteria. The starting point for this procedure is the patient's existing prescription, or if that is not available, a distance prescription obtained by ordinary clinical methods. Astigmatism is an optical flaw of the eye unrelated to night myopia and therefore may be determined and corrected by ordinary clinical methods. In another part of the testing, the room is kept dark to simulate nighttime viewing conditions for which the eye's pupil is dilated. The visual stimulus utilized is a white point source on a dark background, or a self illuminated letter (or any other symbol) on a dark background. The clinician determines a second preferred spherical lens power by varying spherical lens power and asking the patient to subjectively report when perceived vision is best based upon specified criteria. An ophthalmic prescription is provided including a first corrective component including the first preferred spherical lens power, and a second corrective component including the second preferred spherical lens power.」 (当審訳:「[0007]1つの例示的な実施形態は、夜間の視力を改善するための眼科処方を決定する方法である。この方法は、異なる度数のレンズ(例えば、眼科用トライアルレンズ又はフォロプター)、又は可変度数システム(例えば、バダル視力計)を用いる。独自の検査プロトコルが用いられる。検査の一部では、昼間の視環境をシミュレートするために部屋を明るくし、視覚刺激として従来の視力表を使用する。臨床医は、球面レンズの度数を変化させ、指定された基準に基づいて、知覚される視力が最も良いときを主観的に報告するよう患者に求めることで、最初に好ましい球面レンズの度数を決定する。この手順の出発点は、患者の既存の処方箋、又はそれが入手できない場合は、通常の臨床的方法で得られた距離処方箋である。乱視は夜間近視とは関係のない眼の光学的欠陥であるため、通常の臨床的方法で判定し、矯正することができる。別の検査では、部屋を暗くして夜間視力をシミュレートし、瞳孔を開く。視覚刺激は、暗い背景の白色点光源、又は暗い背景の自照式文字(又はその他の記号)である。臨床医は、球面レンズ度数を変化させ、指定された基準に基づいて、知覚された視力がいつ最も良いかを患者に主観的に報告させることにより、第二の好ましい球面レンズ度数を決定する。第1の好ましい球面レンズ度数を含む第1の矯正コンポーネントと、第2の好ましい球面レンズ度数を含む第2の矯正コンポーネントを含む眼科処方箋が提供される。」) (イ)上記(ア)の記載から、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「夜間の視力を改善するための眼科処方を決定する方法であって、この方法は、異なる度数のレンズ(例えば、眼科用トライアルレンズ又はフォロプター)、又は可変度数システム(例えば、バダル視力計)を用い、視覚刺激として従来の視力表を使用し、臨床医は、球面レンズの度数を変化させ、知覚される視力が最も良いときを主観的に報告するよう患者に求めることで、最初に好ましい球面レンズの度数を決定し、この手順の出発点は、患者の既存の処方箋である、方法。」 (3)対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明は、「評価対象である」「読書する程度の距離の1点に焦点が合う度数を有する近方視用矯正領域を備える」「眼鏡レンズを装用し」た「被検者(顧客)」が、「近方視」の「文章を読解するのに要した時間」の「計測を、複数の眼鏡レンズについて行い、複数の眼鏡レンズの中から被検者(顧客)に適した眼鏡レンズを選択する」ものである。 ここで、引用発明の「眼鏡レンズを装用」する「被検者(顧客)」は、本件補正発明の「着用者」に相当する。また、引用発明の「眼鏡レンズ」は、本件補正発明の「眼用レンズ」に相当する。そして、引用発明の「眼鏡レンズ」が「被検者(顧客)」に「評価対象」とされることは、本件補正発明の「眼用レンズ」が「着用者に」「提供される」ことに相当する。また、引用発明の「近方視」は、本件補正発明の「近距離視」・「近見視」に相当する。 また、引用発明の「複数の眼鏡レンズの中から被検者(顧客)に適した眼鏡レンズを選択する」ことは、「近方視用」の「複数の」「読書する程度の距離の1点に焦点が合う度数」「の中から被検者(顧客)に適した」「度数」を「選択する」ことに他ならない。 また、本件補正発明の「明確」との事項について、発明の詳細な説明を参照する。段落【0027】には、「本発明の方法は、読み取りなどの着用者の近距離タスク能力を測定し、人に適合した明確な近見視力を判定することである。」と記載され、明確な近見視力は人に適合した近見視力であると理解できる。この理解を踏まえると、引用発明の「被検者(顧客)に適した」は、本件補正発明の「明確な」に相当する。また、度数は、その「見える力」(視力)を目に発揮させるために必要な視力矯正領域(レンズ)の強さを数値化したものであることが技術常識であることを踏まえると、引用発明の「近方視用」の「読書する程度の距離の1点に焦点が合う度数」を「選択する」ことは、「近方視用」の視力を判定することに他ならず、本件補正発明の「近見視力を判定する」に相当するといえる。 してみると、引用発明の「被検者(顧客)」に「評価対象」とされる「眼鏡レンズ」の、「近方視用」の「被検者(顧客)に適した」「読書する程度の距離の1点に焦点が合う度数」を「選択する」ことは、本件補正発明の「着用者に提供される眼用レンズの、近距離視に対する明確な近見視力を判定する」ことに相当する。 すると、引用発明の「被検者(顧客)」に「評価対象」とされる「眼鏡レンズ」の、「近方視用」の「被検者(顧客)に適した」「読書する程度の距離の1点に焦点が合う度数」を「選択する」ための「方法」と、本件補正発明の「眼用処方箋を有する着用者に提供される眼用レンズの、近距離視に対する明確な近見視力を判定するための装置の作動方法」とは、「着用者に提供される眼用レンズの、近距離視に対する明確な近見視力を判定するための」「方法」の点で共通する。 (イ)引用発明の「近方視用矯正領域」は、本件補正発明の「近距離視ゾーン」に相当する。また、引用発明の「近方視用矯正領域」が「読書する程度の距離の1点に焦点が合う度数を有する」ことと、本件補正発明の「近距離視ゾーン」が「平均度数を備える」こととは、「近距離視ゾーン」が所定の「度数を備える」ことの点で共通する。 してみると、引用発明の「近方視用」の「読書する程度の距離の1点に焦点が合う度数を有する近方視用矯正領域を備える」ことと、本件補正発明の「少なくとも、近距離視に適合した平均度数を備える近距離視ゾーンを有する」こととは、「少なくとも、近距離視に適合した」所定の「度数を備える近距離視ゾーンを有する」ことの点で共通する。 すると、引用発明の「近方視用」の「読書する程度の距離の1点に焦点が合う度数を有する近方視用矯正領域を備える」「眼鏡レンズ」が「被検者(顧客)」に「評価対象」とされる、「ステップS1」と、本件補正発明の「少なくとも、近距離視に適合した平均度数を備える近距離視ゾーンを有する眼用レンズが着用者に提供される、眼用レンズ提供ステップ」とは、「少なくとも、近距離視に適合した」所定の「度数を備える近距離視ゾーンを有する眼用レンズが着用者に提供される、眼用レンズ提供ステップ」の点で共通する。 (ウ)引用発明の「近方視」の「文章を読解するのに要した時間」「を文字数で規格化した値」は、本件補正発明の「近見視タスク処理速度」に相当する。 すると、引用発明の前記「評価対象」とされた「眼鏡レンズを装用した状態で」の「被検者(顧客)」による「近方視」の「文章を読解するのに要した時間」「を文字数で規格化した値」が「計測」される、「ステップS3」は、本件補正発明の「前記提供された眼用レンズを着用しているときの前記着用者による近見視タスク処理速度が判定される、近見視タスク速度判定ステップ」に相当する。 (エ)引用発明は、「ステップS5において、評価対象である各眼鏡レンズ」について「ステップS3で計測した、認識に要した時間が最も短い眼鏡レンズを最良の眼鏡レンズとして評価」するものである。 ここで、引用発明の「最も短い」「近方視」の「文章を読解するのに要した時間」「を文字数で規格化した値」を「最良」「として評価とする」ことは、本件補正発明の「改善された近見視タスク処理速度を提供する」ことに相当する。 すると、引用発明の「最も短い」「近方視」の「文章を読解するのに要した時間」「を文字数で規格化した値」を「最良」「として評価とする」「近方視用」の「被検者(顧客)に適した」「読書する程度の距離の1点に焦点が合う度数」を「選択する」ことと、本件補正発明の「改善された近見視タスク処理速度を提供する前記平均度数に対応する明確な近見視力を判定する」こととは、「改善された近見視タスク処理速度を提供する前記」所定の「度数に対応する明確な近見視力を判定する」ことの点で共通する。 (オ)引用発明は、「ステップS4において、評価対象である全ての眼鏡レンズについて」「ステップS1」及び「S3の手順を繰り返」すものである。 ここで、引用発明の「ステップS1」及び「S3の手順」が「評価対象である全ての眼鏡レンズ」で「繰り返」されることは、「読書する程度の距離の1点に焦点が合う」異なる「度数を有する」「複数の眼鏡レンズ」が「被検者(顧客)」に順次「評価対象」とされ、「計測」されることであるから、本件補正発明の「前記眼用レンズ提供ステップ及び前記近見視タスク速度判定ステップが、異なる平均度数を有する眼用レンズで繰り返される」こととは、「前記眼用レンズ提供ステップ及び前記近見視タスク速度判定ステップが、異なる」所定の「度数を有する眼用レンズで繰り返される」ことの点で共通する。 (カ)上記(オ)の「ステップS4」は、上記(エ)の「ステップS5」のためのステップであるから、上記(エ)及び(オ)から、引用発明の「最も短い」「近方視」の「文章を読解するのに要した時間」「を文字数で規格化した値」を「最良」「として評価とする」「近方視用」の「被検者(顧客)に適した」「読書する程度の距離の1点に焦点が合う度数」を「選択する」ために、「ステップS1」及び「S3の手順」が「評価対象である全ての眼鏡レンズ」で「繰り返」されることと、本件補正発明の「改善された近見視タスク処理速度を提供する前記平均度数に対応する明確な近見視力を判定するために、前記眼用レンズ提供ステップ及び前記近見視タスク速度判定ステップが、異なる平均度数を有する眼用レンズで繰り返される」こととは、「改善された近見視タスク処理速度を提供する前記」所定の「度数に対応する明確な近見視力を判定するために、前記眼用レンズ提供ステップ及び前記近見視タスク速度判定ステップが、異なる」所定の「度数を有する眼用レンズで繰り返される」ことの点で共通する。 イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「着用者に提供される眼用レンズの、近距離視に対する明確な視力を判定するための方法であって、前記方法は、 少なくとも、近距離視に適合した所定の度数を備える近距離視ゾーンを有する眼用レンズが着用者に提供される、眼用レンズ提供ステップと、 前記提供された眼用レンズを着用しているときの前記着用者による近見視タスク処理速度が判定される、近見視タスク速度判定ステップと、を含み、 改善された近見視タスク処理速度を提供する前記所定の度数に対応する明確な視力を判定するために、前記眼用レンズ提供ステップ及び前記近見視タスク速度判定ステップが、異なる所定の度数を有する眼用レンズで繰り返される、方法。」 (相違点1) 本件補正発明では、着用者は「眼用処方箋」を有するのに対し、引用発明では、「被検者(顧客)」(着用者)はそれを有しているか不明である点。 (相違点2) 本件補正発明では、眼用レンズは「平均」度数を有するのに対し、引用発明では、眼鏡レンズ(眼用レンズ)は「読書する程度の距離の1点に焦点が合う度数」を有する点。 (相違点3) 本件補正発明は、「装置の作動方法」の発明であるのに対し、引用発明は、眼鏡レンズを評価する「方法」の発明である点。 (4)判断 以下、各相違点について検討する。 ア 相違点1について 引用発明、引用文献2技術的事項は、ともに矯正領域(レンズ)の度数を選択(決定)する点で同一の技術分野に属するといえる。そして、引用文献2技術的事項には、「レンズ」の「度数を決定」する際、「患者の既存の処方箋」を「出発点」とすることが記載されており、引用発明において、近方視用矯正領域(レンズ)の度数を効率的に選択(決定)することは、当然に内在する課題にすぎないから、引用発明において、引用文献2技術的事項を適用して、近方視用矯正領域(レンズ)の度数を選択(決定)する被検者(顧客)が「眼用処方箋」を有する相違点1の構成を得ることは、当業者にとって容易想到といえる。 そもそも、引用発明は、「被検者(顧客)は、提示された複数の眼鏡レンズの中から、自分の好みや予算などから購入を希望する眼鏡レンズを選択することができる」ことから、眼鏡店で行う方法であることが明らかに想定されるところ、眼鏡店で眼鏡レンズを選択する際、医師が記入した「眼用処方箋」を持参することは、日本国内において普通に行われている慣行であるから、引用発明において、眼鏡レンズを選択する被検者(顧客)が「眼用処方箋」を有することは、普通になし得ることでもある。 イ 相違点2について 引用文献1の【0010】の「本発明における前提となる説明を行う。・・・平均球面度数は、たとえば、レンズ面上の任意の点を透過した光線における最大の球面度数をDmaxとし、最小の球面度数をDminとしたとき、次の式・・・(2)で・・・表されるものとする。・・・平均球面度数=(Dmax+Dmin)/2 ・・・(2)」との記載を踏まえると、引用発明の読書する程度の距離の1点に焦点が合う度数を有する眼鏡レンズは、1点に焦点が合う「平均球面度数」を有するといえるから、相違点2は、実質的な相違点とはいえない。 ウ 相違点3について 本件補正発明は、「装置の作動方法」の発明である。そして、当該「装置の作動方法」は、「眼用レンズ提供ステップ」と「近見視タスク速度判定ステップ」とを含み、これらの各ステップが「装置の作動」により実行するものと解される。 一方、引用発明では、近見視タスク速度判定ステップに対応する「ステップS3」は、「計測システム1」の作動により実行するものと解される一方、眼用レンズ提供ステップに対応する「ステップS1」は、「眼鏡レンズとしては、検眼レンズを用いることができ」るものの、「検眼レンズ」がどのように(人の操作によって、装置の作動によって)「評価対象」とされるのか、不明である。 しかしながら、検眼レンズを評価対象とする(提供する)のにフォロプター装置を用いることは、例えば、引用文献2技術的事項にも記載されているように技術常識にすぎないから、当該技術常識に鑑み引用発明の「ステップS1」を、フォロプター装置の作動により実行することは普通に採用し得ることである。 してみると、引用発明において、ステップS1をフォロプター装置の作動により実行し、ステップS3を「計測システム1」である装置の作動により実行し、引用発明を全体として「装置の作動方法」の発明とする相違点3の構成を得ることは、当業者にとって容易想到といえる。 エ そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 (5)小括 したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (6)審判請求人の主張について 審判請求人は、審判請求書(令和5年3月3日の手続補正書(方式))の「2.本願の特許性/進歩性(理由3)について」の欄において、「(1)眼用レンズの特定の近見視力を決定することについて( ア)参照) ・・・ 引用文献1の段落[0019]、[0024]、[0025]に記載されるテストは、読書を含むものですが、ディスプレイと装用者の目との間の距離に関する情報は提供されておりません。また、図2や図4も、ディスプレイと装用者の目との間の距離に関する情報を提供するものではありません。 ・・・ 従って、引用文献1は、「眼用レンズの特定の近見視力を決定すること」を、開示も示唆もしておりません。 (2)近見視タスクについて ・・・ 引用文献1は、文章が、近距離に置かれることを明確に示しておりません。また、引用文献1は、引用文献1の評価により近見視力補正部分の評価が可能であることも明確に示しておりません。」と主張する。 しかしながら、引用文献1が、眼用レンズの特定の近見視力を決定すること、文章が近距離に置かれること、近見視力補正部分の評価が可能であること、に対応する構成を備えていることは、上記(3)アにおいて説示したとおりであるから、請求人の前記主張は採用できない。 (7)まとめ 以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和5年2月6日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年6月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶理由 原査定の拒絶の理由3は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2015-79127号公報 引用文献2:米国特許出願公開第2015/0009474号明細書 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし2及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「眼用処方箋を有する着用者に提供される眼用レンズの、近距離視に対する明確な近見視力を判定するための方法」に係る限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)~(5)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の原査定の拒絶の理由、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-001966

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