特許拒絶査定不服審判
2023-001692
流体流制御のためのインプラント可能なメディカルデバイス
- 審判番号
- 2023-001692
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-503754外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年02月01日
- 審決日
- 2024年05月21日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .113-Z (A61F) / P18 .121-Z (A61F) / P18 .575-Z (A61F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-503754「流体流制御のためのインプラント可能なメディカルデバイス」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 1月30日国際公開、WO2020/023514、令和 3年11月25日国内公表、特表2021-531884〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和 1(2019)年 7月23日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 平成30(2018)年 7月24日 米国、平成30(2018)年 7月24日 米国、平成30(2018)年 7月24日 米国)を国際出願日とする出願であって、以後の手続は以下のとおりである。
令和 3年 3月17日 上申書の提出及び手続補正
令和 4年 3月 7日 拒絶理由通知(発送日:3月15日)
同年 7月 5日 意見書の提出及び手続補正
同年 9月28日 拒絶査定(発送日:10月 4日)
令和 5年 2月 1日 審判請求書の提出及び手続補正(以下、「本件補正」という。)
第2 令和 5年 2月 1日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和 5年 2月 1日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。
「患者の血管内の血流を変化させるためのインプラント可能なメディカルデバイスであって、
ステント要素及び前記ステント要素の少なくとも一部に取り付けられたグラフト構成要素を含み、
前記ステント要素及びグラフト構成要素は、
狭められた流れ管腔を有する制限部分であって、血管からの1つ以上の側枝に流れを指向させるように構成された制限部分、及び、
前記制限部分のインレットを前記血管内のほぼ中央に配置するためのアンカー部分、
を含み、前記制限部分は、前記アンカー部分内に吊り下げられている、デバイス。」(下線は補正箇所を示すために当審で付した。)
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和 4年 7月 5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「患者の血管内の血流を変化させるためのインプラント可能なメディカルデバイスであって、
ステント要素及び前記ステント要素の少なくとも一部に取り付けられたグラフト構成要素を含み、
前記ステント要素及びグラフト構成要素は、
狭められた流れ管腔を有する制限部分であって、血管からの1つ以上の側枝に流れを指向させるように構成された制限部分、及び、
前記制限部分のインレットを前記血管内のほぼ中央に配置するためのアンカー部分、
を含む、デバイス。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「制限部分」及び「アンカー部分」について、「前記制限部分は、前記アンカー部分内に吊り下げられている」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)補正発明
補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項及び引用発明
本件優先権主張の日前に公表され、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特表2014-502191号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
A「【0002】
本開示は概して、血管系疾患の治療用ステントグラフトに関する。
【背景技術】
【0003】
ステントグラフトは、損傷した、異常な、又は罹患した血管の一部を補強、置換、又はブリッジするために構成された医療用デバイスである。ステントグラフトはこのように、その円筒形の内部構造により規定された管腔を通して、血流を誘導することができる。しかしながら、患者の体内のステントグラフトが移植されたところでは、血液は通常、ステントグラフトの外側部分にリークする又は流れることができない。」
B「【0030】
図2には、ステントグラフト102の透視図が示されている。ステントグラフト102は、複数の区域又は部分200、202及び204に分けてもよい。第一の区域200は、血管100の壁に係合することのできる、より大きな直径を備えてもよい。血管100の壁の係合は、ステントグラフト102が血管100内で展開されると、動かないように、ステントグラフト102を適切な位置で支えてよい。様々な実施形態において、第一の区域200は、ステントグラフト102を血管100に固定する又は付着させるのを助ける摩擦ばめ、1以上のフック、1以上のバーブ、及び/又は1以上の隆起したステント頂部により、血管100に係合してもよい。
【0031】
移行区域202は、第一の区域200と、より小さい直径の第二の区域204との間で先細になっていてよい。移行区域202は、少なくとも1つの灌流窓116を備えてもよく、それを通過して血液及び/又は他の液体(例えば造影剤)が流れてよい又は灌流してよい。灌流窓116を通過する液体の流れの方向及び様態は、矢印118により表されている。図において灌流窓116は三角形として描かれているが、灌流窓116は、様々な実施形態において任意の形状を備えていてよく、例えば、円、楕円、長方形、正方形、ひし形、多面体、それらの任意の組み合わせなどがある。灌流窓116はさらに、レーザーを使用してステントグラフト102を貫き灌流窓116を切り取ることを含む、当技術分野において既知の任意の方法により製造されてもよい。
【0032】
第二の区域204は、第一の区域200よりもより小さい直径を備えてもよい。また、本明細書中の他の場所で説明されているように、第二の区域204は、血管100の壁に係合しないよう構成されてもよい。例えば、第二の区域204は、第一の区域200及び/又は移行区域202よりも直径が小さくてよい。このように、第二の区域204は血管100の壁に係合しない、なぜならば第二の区域204は血管100の壁から間隔を空けて配置されているからである。」
C「【0038】
従って、ステントグラフト102が開窓されると、1以上の側枝ステントグラフト、すなわち第二のステントグラフトが、1以上の血管側枝104及び/又は106内に送達及び展開されてよい。例えば、図6及び7に特に関連し、側枝ステントグラフト400の一部分は血管側枝104及び/又は106内で展開されてもよい。さらに、展開の間、側枝ステントグラフト400の一部分はステントグラフト102に取り付けられ又は結合されてもよい。すなわち、例えば、側枝ステントグラフト400の一部分は、開窓デバイス300により形成された1以上の開窓を経由して又は通って、ステントグラフト102と結合されてもよい。加えて、ある実施形態において、ステントグラフト102の開窓の後、側枝ステントグラフト400を展開する前に、バルーンを開窓に設置して膨らませ、開窓をさらに画定及び/又は拡大してもよい。」
D「【図2】
[図:0001415806000001.jpg]
」
E「【図7】
[図:0001415806000002.jpg]
」
a 上記記載事項Aの「本開示は概して、血管系疾患の治療用ステントグラフトに関する。・・・ステントグラフトはこのように、その円筒形の内部構造により規定された管腔を通して、血流を誘導することができる。しかしながら、患者の体内のステントグラフトが移植されたところでは、血液は通常、ステントグラフトの外側部分にリークする又は流れることができない。」との記載および上記記載事項Bの「血管100の壁の係合は、ステントグラフト102が血管100内で展開されると、動かないように、ステントグラフト102を適切な位置で支えてよい。」との記載から、引用文献3に記載された発明は、血管系疾患の治療用ステントグラフトであって、その円筒形の内部構造により規定された管腔を通して、血流を誘導するものであって、患者に移植され、血管内で展開されるものである。(下線は、当審で付したものである。以下同様。)
b 上記記載事項Bの「ステントグラフト102は、複数の区域又は部分200、202及び204に分けてもよい。第一の区域200は、血管100の壁に係合することのできる、より大きな直径を備えてもよい。血管100の壁の係合は、ステントグラフト102が血管100内で展開されると、動かないように、ステントグラフト102を適切な位置で支えてよい。・・・移行区域202は、第一の区域200と、より小さい直径の第二の区域204との間で先細になっていてよい。・・・例えば、第二の区域204は、第一の区域200及び/又は移行区域202よりも直径が小さくてよい。このように、第二の区域204は血管100の壁に係合しない、なぜならば第二の区域204は血管100の壁から間隔を空けて配置されているからである。」との記載および上記記載事項Dの図示内容から、引用文献3に記載されたステントグラフトは、第一の区域、移行区域、第二の区域を備え、第一の区域は血管の壁に係合する、より大きな直径を備え、移行区域は第一の区域と、より小さい直径の第二の区域との間で先細であり、第二の区域は、第一の区域および移行区域よりも小さい直径を備え、血管の壁に係合せず、血管の壁から間隔を空けて配置されている。
c 上記記載事項Cの「例えば、図6及び7に特に関連し、側枝ステントグラフト400の一部分は血管側枝104及び/又は106内で展開されてもよい。さらに、展開の間、側枝ステントグラフト400の一部分はステントグラフト102に取り付けられ又は結合されてもよい。すなわち、例えば、側枝ステントグラフト400の一部分は、開窓デバイス300により形成された1以上の開窓を経由して又は通って、ステントグラフト102と結合されてもよい。」との記載から、引用文献3に記載されたステントグラフトは、血管側枝で展開される側枝ステントグラフトを備える。
d 上記記載事項Eの【図7】から、第二の区域及び側枝ステントグラフトは、血管の壁に係合する第一の区域内に吊り下げられていることが看取できる。
上記記載事項A~E、認定事項a~dを総合すると、引用文献3には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「血管系疾患の治療用ステントグラフトであって、
その管腔を通して血流を誘導するものであって、患者に移植され、血管内で展開されるものであり、
第一の区域、移行区域、第二の区域を備え、
第一の区域は血管の壁に係合する、より大きな直径を備え、
移行区域は第一の区域と、より小さい直径の第二の区域との間で先細であり、
第二の区域は、第一の区域および移行区域よりも小さい直径を備え、血管の壁に係合せず、血管の壁から間隔を空けて配置されており、
さらに血管側枝で展開される側枝ステントグラフトを備え、前記第二の区域及び側枝ステントグラフトは、前記第一の区域内に吊り下げられている、
治療用ステントグラフト。」
(3)対比、検討
補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「血管系疾患の治療用ステントグラフト」は、「その管腔を通して血流を誘導するものであって、患者に移植され」「るものであ」るから、補正発明の「患者の血管内の血流を変化させるためのインプラント可能なメディカルデバイス」に相当する。同様に、引用発明の「第一の区域」は血管の壁に係合するから、補正発明の「ステント要素」に相当する。また、引用発明の「第二の区域」および「側枝ステントグラフト」は、補正発明の「グラフト構成要素」に相当する。そして、引用発明の「第二の区域」は第一の区域よりも小さい直径を備えるから、補正発明の「狭められた流れ管腔を有する」ものであり、さらに、引用発明の「側枝ステントグラフト」は血管側枝で展開されるから、補正発明の「血管からの1つ以上の側枝に流れを指向させるように構成された」ものに相当し、引用発明の「第二の区域」および「側枝ステントグラフト」は、補正発明の「制限部分」に相当する。
また、引用発明の「第一の区域」は、「血管の壁に係合」しており、「第二の区域」は当該「第一の区域と、より小さい直径の第二の区域との間で先細」の「移行区域」を介して接続されているのであるから、引用発明の「第一の区域」は、補正発明の「制限部分のインレットを血管内に配置するためのアンカー部分」に相当する。
そして、引用発明の治療用ステントグラフトは、患者に移植され、管形状である血管内で展開されるものであるから、治療用ステントグラフト及び血管の軸線に対称な形態であることは明らかであって、引用発明の第二の区域のインレットは、血管内で展開された状態において、治療用ステントグラフトの軸線と直交する断面のほぼ中央、すなわち、血管内のほぼ中央に配置されることになる。
してみると、引用発明は補正発明の構成を全て備えているから、両者に差異はない。
よって、補正発明は引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
仮に、引用発明の第一の区域が、第二の区域のインレットを血管内のほぼ中央に配置するためのものとまでは認定できなかったとしても、血管内の血流を偏りなく流通させるために、第二の区域のインレットを血管内のほぼ中央に配置することは、当業者が容易に想到できたことである。
よって、補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条7項の規定に違反するので、同法第159条1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和 5年 2月 1日にされた手続補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和 4年 7月 5日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により、または、引用文献に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
3 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した補正発明から、「前記制限部分は、前記アンカー部分内に吊り下げられている」との発明特定事項を削除したものである。
そうすると、前記第2の[理由]2(3)に示したように補正発明と引用発明とは一致するから、本願発明は引用発明である。
さらに、本願発明の発明特定事項を全て含み、当該発明特定事項を付加したものに相当する補正発明が、前記第2の[理由]2(3)に記載したとおり、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号及び第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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