特許拒絶査定不服審判
2023-018744
組織拡張を促進する陰茎及び他のインプラント
- 審判番号
- 2023-018744
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-527002外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年11月06日
- 審決日
- 2024年12月24日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】オグメンタ,エルエルシー
- 【請求人代理人】小林 浩
- 【請求人代理人】大森 規雄
- 【請求人代理人】中村 佳正
- 分類
- P18 .113-Z (A61F) / P18 .121-Z (A61F) / P18 .575-Z (A61F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-527002「組織拡張を促進する陰茎及び他のインプラント」拒絶査定不服審判事件〔令和2年1月30日国際公開、WO2020/023359、令和3年11月25日国内公表、特表2021-531937〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和1年)7月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年7月23日 (US)アメリカ合衆国 2018年12月14日 (US)アメリカ合衆国 2019年1月3日 (US)アメリカ合衆国 2019年1月3日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の概要は以下のとおりである。
令和 4年 7月20日 :手続補正書の提出
令和 4年 8月 9日付け:拒絶理由通知書
令和 4年11月15日 :意見書、手続補正書の提出
令和 4年12月 6日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和 5年 5月30日 ;意見書、手続補正書の提出
令和 5年 6月28日付け:補正の却下の決定、拒絶査定
令和 5年11月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 5年12月28日 :手続補正書(方式)の提出
第2 令和5年11月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年11月6日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線は補正箇所を示すために当審で付した。)。
「【請求項1】
所望の動物又はヒトの身体部位又はその部分に適したインプラントであって、
前記インプラントは、1以上の生体適合性材料を含むインプラント本体を備え、
前記1以上の材料は、正常な解剖学的動作を実質的に阻害せずに組織拡張を促進するように選択又は構成され、
前記1以上の生体適合性材料は、前記インプラント内であって前記インプラント表面の下側に、前記インプラントの少なくとも一部の伸張性を増大させるように構成された、複数の内部空隙を備え、前記インプラントの第1の位置における硬度の測定特性が、前記インプラントの第2の位置における同じ前記測定特性とは異なるように構成されている、前記インプラント。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和4年11月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
所望の動物又はヒトの身体部位又はその部分に適したインプラントであって、
前記インプラントは、1以上の生体適合性材料を含むインプラント本体を備え、
前記1以上の材料は、正常な解剖学的動作を実質的に阻害せずに組織拡張を促進するように選択又は構成され、
前記1以上の生体適合性材料は、前記インプラント内に内部ポケットを備え、前記内部ポケットは、前記インプラントの第1の位置における硬度の測定特性が、前記インプラントの第2の位置における同じ前記測定特性とは異なるように構成されている、前記インプラント。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記1以上の生体適合性材料」について、「前記インプラント内に内部ポケットを備え、前記内部ポケットは、前記インプラントの第1の位置における硬度の測定特性が、前記インプラントの第2の位置における同じ前記測定特性とは異なるように構成されている」とあったのを、「前記インプラント内であって前記インプラント表面の下側に、前記インプラントの少なくとも一部の伸張性を増大させるように構成された、複数の内部空隙を備え、前記インプラントの第1の位置における硬度の測定特性が、前記インプラントの第2の位置における同じ前記測定特性とは異なるように構成されている」と限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項及び引用発明
ア 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった米国特許第9877835号明細書(以下「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、和訳及び下線は当審で付した。
(ア)3欄下から11~8行
「Referring now to FIG. 1-10, in one embodiment, the present invention features a penile insert device (100) effective for increasing a length of a penis in its flaccid or erect state.」
(和訳)ここで図1-10を参照すると、一つの実施形態では、本発明は、弛緩状態又は勃起状態における陰茎の長さを増大させるのに有効な陰茎挿入装置(100)を特徴とする。
(イ)5欄27~37行
「In a preferred embodiment, the body (110) may be constructed from a semi-rigid, bendable silicone rubber material. The material may also be medical grade silicone rubber. The semi-rigid bendable material is advantageous in that allows for the device to bend with the penis while maintaining its structure. To illustrate, when the device is mounted, or sutured at each end, the penis may retract and if the material is too soft or pliable, the device may bow out and protrude, which would make the device visible through the penis skin. Further still, it is preferred that the material can stretch to accommodate a penis entering an erect state.」
(和訳)好ましい実施形態では、本体(110)は、半剛性で、可撓性のシリコーンゴム材料から構成されることができる。この材料は、医療グレードのシリコーンゴムであってもよい。半剛性で可撓性の材料は、その構造を維持しながら陰茎と共に装置が屈曲する点で有利である。例を挙げると、装置が取り付けられ、又は各端部で縫合されている際に陰茎が後退すると、もし材料が柔らかすぎるか、しなやかすぎると、装置が外側に曲がって突出し、陰茎の皮膚を通して装置が見えることとなる。更に、材料は、陰茎が勃起状態に入ることに対応できるよう、伸びることができるのが好ましい。
(ウ)5欄41~55行
「In one embodiment, the body (110) may further comprise a plurality of widthwise trenches (192) disposed on the top and bottom surfaces, and extending from the first side edge (122) to the second side edge (124). In another embodiment, the body(110) may further comprise a plurality of lengthwise trenches (194) disposed on the top and bottom surfaces. The lengthwise trenches (194) may be perpendicular to the widthwise trenches (192).
In some embodiments, each widthwise trench (192) disposed on the top surface (132) may gradually widen midway between the first side edge (122) and the second side edge (124). In other embodiments, each widthwise trench (192) disposed on the bottom surface (132) may gradually narrow midway between the first side edge (122) and the second side edge (124).」
(和訳)一つの実施形態では、本体(110)は、第一の側端(122)から第二の側端(124)まで延びている、上面及び底面に配置された複数の幅方向溝(192)を更に含む。他の実施例では、本体(110)は、上面及び底面に配置された複数の長手方向溝(194)を更に含む。長さ方向の溝(194)は、幅方向の溝(192)に対して垂直であってもよい。
いくつかの実施形態では、上面(132)に配置される各幅方向溝(192)は、第一の側端(122)と第二の側端(124)の間の中間で徐々に広がってもよい。他の実施形態では、底面(132)に配置される各幅方向溝(192)は、第一の側端(122)と第二の側端(124)の間の中間で徐々に狭まってもよい。
(エ)7欄58行~8欄10行
「When the penile insert is implanted into a penis, the penile insert can bend upwardly or downwardly. Referring to FIG. 9, when the penile insert is bent, the widthwise trenches at the top surface can close, i.e. their internal walls will approximate, to allow for the insert to flex as needed. However, this approximation is not uniform due to the curvature of the top and bottom surfaces, which causes the central or mid-section of the trench to touch or approximate sooner. Hence, in some embodiments, the top widthwise trenches are wider at the mid-sections so that when the insert is bent, each trench will collapse evenly upon its walls. This widening applies to the top vertical trenches. In other embodiments, as shown in FIG. 10, since the section of the widthwise trench at or near the edges will tend to approximate sooner than at the mid-sections, the bottom widthwise trenches are narrower at their mid-sections and wider at or near the edges to allow for uniform approximation. In still other embodiments, the lengthwise trenches at the top and bottom surfaces have uniform width along their entire lengths.」
(和訳)陰茎挿入物が陰茎に埋め込まれると、陰茎挿入物は、上方又は下方に曲がることができる。図9を参照すると、陰茎挿入物が曲がるとき、上面の幅方向溝は閉じ、すなわち、内部の壁が、必要に応じて挿入物の屈曲を可能とするように、近づく。しかし、この接近は、上面と底面の曲率のために均一ではなく、これにより、溝の中央又は中間部分がより早く接触又は接近することを引き起こす。したがって、いくつか実施形態では、上面の幅方向溝は、挿入物が曲げられるとき、各溝がその壁に沿って均一に倒れるよう、中間区間においてより広い。このより広いことは、上面の垂直溝に適用される。他の実施形態では,図10に示されるように、幅方向溝の端部又は端部近傍における区間が、中間区間よりも早く接近する傾向にあるので、底面の幅方向溝は、均一な接近を可能にするために、中間区間においてより狭く、端部又は端部近傍においてより広い。更に、他の実施形態では、上面と底面の長手方向溝は、その長さ全体に沿って、均一な幅を有する。」
(オ)図1A
「
[図:0001423036000001.jpg]
」
(カ)図6
「
[図:0001423036000002.jpg]
」
(キ)図7
「
[図:0001423036000003.jpg]
」
(ク)図8
「
[図:0001423036000004.jpg]
」
(ケ)図9
「
[図:0001423036000005.jpg]
」
(コ)図10
「
[図:0001423036000006.jpg]
」
イ 引用発明
上記アを総合すると、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「弛緩状態又は勃起状態における陰茎の長さを増大させるのに有効な陰茎挿入装置(100)であって、
本体(110)は、半剛性で、可撓性のシリコーンゴム材料から構成され、
材料は、陰茎が勃起状態に入ることに対応できるよう、伸びることができ、
上面及び底面に配置された複数の幅方向溝(192)を含み、
上面及び底面に配置された複数の長手方向溝(194)を含み、
上面(132)に配置される各幅方向溝(192)は、第一の側端(122)と第二の側端(124)の間の中間で徐々に広がり、底面(132)に配置される各幅方向溝(192)は、第一の側端(122)と第二の側端(14)の間の中間で徐々に狭まる、
陰茎挿入装置(100)。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「弛緩状態又は勃起状態における陰茎の長さを増大させるのに有効な陰茎挿入装置(100)」は、その機能及び構造からみて、本件補正発明の「所望の動物又はヒトの身体部位又はその部分に適したインプラント」に相当する。
イ 引用発明の「半剛性で、可撓性のシリコーンゴム材料」は、本件補正発明の「生体適合性材料」に相当するから、引用発明の「本体(110)は、半剛性で、可撓性のシリコーンゴム材料から構成され」ることは、本件補正発明の「前記インプラントは、1以上の生体適合性材料を含むインプラント本体を備え」ることに相当する。また、引用発明の「材料は、陰茎が勃起状態に入ることに対応できるよう、伸びることができる」ことは、本件補正発明の「前記1以上の材料は、正常な解剖学的動作を実質的に阻害せずに組織拡張を促進するように選択又は構成され」ることに相当する。
したがって、両者は、
「所望の動物又はヒトの身体部位又はその部分に適したインプラントであって、
前記インプラントは、1以上の生体適合性材料を含むインプラント本体を備え、
前記1以上の材料は、正常な解剖学的動作を実質的に阻害せずに組織拡張を促進するように選択又は構成される、前記インプラント。」
である点で一致し、次の点で一応相違する。
<相違点1>
本件補正発明は、1以上の生体適合性材料が「前記インプラント内であって前記インプラント表面の下側に、前記インプラントの少なくとも一部の伸張性を増大させるように構成された、複数の内部空隙を備え、前記インプラントの第1の位置における硬度の測定特性が、前記インプラントの第2の位置における同じ前記測定特性とは異なるように構成されている」のに対して、引用発明は、上面(132)に配置される各幅方向溝(192)が、第一の側端(122)と第二の側端(124)の間の中間で徐々に広がり、底面(132)に配置される各幅方向溝(192)が、第一の側端(122)と第二の側端(14)の間の中間で徐々に狭まり、伸張性及び硬度について特定がない点。
(4)判断
上記相違点1について検討する。
引用発明の「長手方向溝(192)」及び「幅方向溝(194)」は、空隙である。
また、引用発明の底面に設けられた「長手方向溝(192)」及び「幅方向溝(194)」は、表面からみて内側、すなわち下側に複数形成されているから、陰茎挿入装置(100)の「表面の下側」に備えられた「複数の内部空隙」と表現できる。また、引用発明の上面に設けられた「長手方向溝(192)」及び「幅方向溝(194)」も、表面から内部に向けて、すなわち下側に向けて複数形成されているから、陰茎挿入装置(100)の「表面の下側」に備えられた「複数の内部空隙」と表現できる。
そして、引用発明は、「陰茎が勃起状態に入ることに対応できるよう、伸びることができる」ものであるところ、引用発明の「長手方向溝(192)」及び「幅方向溝(194)」は、陰茎挿入装置(100)の「少なくとも一部の伸張性を増大させる」ことは明らかである。また、引用文献の「陰茎挿入物が曲がるとき、上面の幅方向溝は閉じ、すなわち、内部の壁が、必要に応じて挿入物の屈曲を可能とするように、近づく」(上記(2)ア(エ))の記載によれば、陰茎挿入装置(100)が屈曲する際、上面の幅方向溝(194)は閉じる。ここで、技術常識を踏まえれば、屈曲に伴い上面の幅方向溝(194)が閉じる際、底面の幅方向溝(194)、すなわち、当該屈曲により凸となる面の幅方向溝(194)は、開くことになるところ、屈曲により凸となる面は伸張するから、「幅方向溝(194)」は、陰茎挿入装置(100)の「少なくとも一部の伸張性を増大」させるものである。
更に、技術常識を参酌すれば、表面に長手方向溝(192)又は幅方向溝(194)を含む範囲の硬度、及び、底面に長手方向溝(192)又は幅方向溝(194)がある位置の上面の硬度は、長手方向溝(192)又は幅方向溝(194)が無い位置の硬度に比べて低いし、幅方向溝(194)を含む範囲の硬度は幅方向溝(194)の溝幅により異なるから、引用発明は、陰茎挿入装置(100)の第1の位置における硬度の測定特性が、第2の位置における硬度の測定特性とは異なるように構成されている。
したがって、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。
よって、本件補正発明は、引用発明である。
仮に、引用発明の「長手方向溝(192)」及び「幅方向溝(194)」が「表面の下側」に備えられた「複数の内部空隙」に当たらないとしても、柔軟性を得るための構成として、独立した空洞を備えることや、材料の内部に空洞を備えることは、従来周知の技術であるから(前者について、例えば、国際公開第2018/045118号の段落[0061](16ページ19~23行)、特表2012-517319号公報の段落【0074】及び米国特許出願公開第2009/0069904号明細書の段落[0053]等参照。後者について、例えば、米国特許出願公開第2009/0069904号明細書の段落[0040]及び特表2013-526932号公報の段落【0051】等参照。)、引用発明の陰茎挿入装置(100)において、柔軟性を得るためにこれら周知の技術を採用して上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本件補正発明の効果についてみても、引用発明及び周知の技術からみて格別なものということはできない。
よって、本件補正発明は、引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)小括
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
また、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
3 むすび
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~5に係る発明は、令和4年11月15日の手続補正より補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(2)に記載されたとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由(令和4年12月6日付け拒絶理由通知書に記載した理由)は、以下の理由を含むものである。
理由3:本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由4:本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
3 引用文献の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献の記載事項及び引用発明は、上記第2の[理由]2(2)のとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記インプラント表面の下側に」及び「前記インプラントの少なくとも一部の伸張性を増大させるように構成された、複数の」という限定事項を削除し、本件補正発明の「内部空隙」を「内部ポケット」と表現し、前記インプラントの第1の位置における硬度の測定特性が、前記インプラントの第2の位置における同じ前記測定特性とは異なるように構成されていることについて、その主語を「前記内部ポケットは」と特定したものである。
そして、本願発明と引用発明を対比すると、第2の[理由]2(3)ア及びイのとおりであるから、本願発明と引用発明とは、
「所望の動物又はヒトの身体部位又はその部分に適したインプラントであって、
前記インプラントは、1以上の生体適合性材料を含むインプラント本体を備え、
前記1以上の材料は、正常な解剖学的動作を実質的に阻害せずに組織拡張を促進するように選択又は構成される、前記インプラント。」
である点で一致し、次の点で一応相違する。
<相違点1’>
本願発明は、1以上の生体適合性材料が「前記インプラント内に内部ポケットを備え、前記内部ポケットは、前記インプラントの第1の位置における硬度の測定特性が、前記インプラントの第2の位置における同じ前記測定特性とは異なるように構成されている」のに対して、引用発明は、上面(132)に配置される各幅方向溝(192)が、第一の側端(122)と第二の側端(124)の間の中間で徐々に広がり、底面(132)に配置される各幅方向溝(192)が、第一の側端(122)と第二の側端(14)の間の中間で徐々に狭まり、硬度について特定がない点。
上記相違点1’について検討する。
引用発明の「長手方向溝(192)」及び「幅方向溝(194)」はポケットである。
また、引用発明の底面に設けられた「長手方向溝(192)」及び「幅方向溝(194)」は、表面からみて内側、すなわち内部に形成されているから、陰茎挿入装置(100)内の「内部ポケット」と表現できる。また、引用発明の上面に設けられた「長手方向溝(192)」及び「幅方向溝(194)」も、表面から内部に向けて形成されているから、陰茎挿入装置(100)内の「内部ポケット」と表現できる。
そして、技術常識を参酌すれば、長手方向溝(192)又は幅方向溝(194)を含む範囲の硬度、及び、底面に長手方向溝(192)又は幅方向溝(194)がある位置の上面の硬度は、長手方向溝(192)又は幅方向溝(194)が無い位置の硬度に比べて低いし、幅方向溝(194)を含む範囲の硬度は幅方向溝(194)の溝幅により異なるから、引用発明は、長手方向溝(192)及び幅方向溝(194)が、陰茎挿入装置(100)の第1の位置における硬度の測定特性が、第2の位置における硬度の測定特性とは異なるように構成されている。
したがって、上記相違点1’は、実質的な相違点ではない。
よって、本願発明は、引用発明である。
仮に、引用発明の「長手方向溝(192)」及び「幅方向溝(194)」が陰茎挿入装置(100)内の「内部ポケット」に当たらないとしても、柔軟性を得るための構成として、材料の内部に空洞を備えることは、従来周知の技術であるから(例えば、米国特許出願公開第2009/0069904号明細書の段落[0040]及び特表2013-526932号公報の段落【0051】等参照。)、引用発明の陰茎挿入装置(100)において、柔軟性を得るために当該周知の技術を採用して上記相違点1’に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本願発明の効果についてみても、引用発明及び周知の技術からみて格別なものということはできない。
よって、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、また、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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