特許拒絶査定不服審判
2023-019948
ステントと弁尖との連結構造及び当該連結構造を応用した介入弁内弁と介入大動脈弁
- 審判番号
- 2023-019948
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-558007外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年11月27日
- 審決日
- 2025年01月28日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】北京佰仁医療科技股▲ふん▼有限公司
- 【請求人代理人】新保 斉
- 分類
- P18 .113-Z (A61F) / P18 .121-Z (A61F) / P18 .575-Z (A61F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-558007「ステントと弁尖との連結構造及び当該連結構造を応用した介入弁内弁と介入大動脈弁」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年10月15日国際公開、WO2020/207332、令和 4年 6月 8日国内公表、特表2022-528091〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和 2年) 4月 3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2019年(平成31年) 4月 8日、中華人民共和国(CN))を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和 4年11月10日付け:拒絶理由通知書
令和 5年 4月14日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 7月18日付け:拒絶査定
同年11月27日 :審判請求書及び手続補正書の提出
第2 令和 5年11月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和 5年11月27日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
ステントは金属メッシュチューブであり、弁尖は前記ステントの内側に設置された3つの扇形弁尖であり、3つの前記扇形弁尖は、いずれも遊離縁、円弧状底辺及び両側に延びる弁尖の交連部を有する介入弁内弁又は介入大動脈弁用のステントと弁尖との連結構造であって、
前記金属メッシュチューブには3つの連結柱が均等に配置され、前記連結柱のそれぞれは少なくとも1つの矩形スリットを有し、前記扇形弁尖の交連部は略矩形の径方向反転連結部と略矩形の軸方向反転連結部とを含み、前記各扇形弁尖は、互いに隣接する前記扇形弁尖の径方向反転連結部同士が合わせられ、前記径方向反転連結部が前記連結柱の前記矩形スリットを通過した後に内側から外側へ折り曲がり、前記軸方向反転連結部が前記連結柱の内側で折り曲がって、前記遊離縁の根部に緩衝部が形成された後に、縫合糸で前記連結柱に連結固定される
ことを特徴とする介入弁内弁又は介入大動脈弁用のステントと弁尖との連結構造。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和 5年 4月14日の手続補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
ステントは金属メッシュチューブであり、弁尖は前記ステントの内側に設置された3つの扇形弁尖であり、3つの前記扇形弁尖は、いずれも遊離縁、円弧状底辺及び両側に延びる弁尖の交連部を有する介入弁内弁又は介入大動脈弁用のステントと弁尖との連結構造であって、前記金属メッシュチューブには3つの連結柱が均等に配置され、前記連結柱のそれぞれは少なくとも1つの矩形スリットを有し、前記扇形弁尖の交連部は径方向反転連結部と軸方向反転連結部とを含み、前記各扇形弁尖は、前記径方向反転連結部が前記連結柱の前記矩形スリットを通過した後に内側から外側へ折り曲がり、前記軸方向反転連結部が前記連結柱の内側で折り曲がって、前記遊離縁の根部に緩衝部が形成された後に、縫合糸で前記連結柱に連結固定されることを特徴とする介入弁内弁又は介入大動脈弁用のステントと弁尖との連結構造。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「径方向反転連結部」及び「軸方向反転連結部」のそれぞれについて「略矩形」であること、及び本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「各扇形弁尖」について「互いに隣接する前記扇形弁尖の径方向反転連結部同士が合わせられ」ることを限定する補正を含むものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特表2013-543406号公報(以下「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)
「【0026】
図1~図3は、一実施形態による人工心臓弁10のさまざまな図を示す。図示する弁は、生体大動脈弁輪に植え込まれるように適合されているが、他の実施形態では、弁を、心臓の他の生体弁輪に植え込まれるように適合させることができる。弁10は4つの主な構成要素、すなわち、ステントまたはフレーム12、弁構造体14、内側スカート16および外側スカート18を有することができる。
【0027】
弁構造体14は、図2に最もよく示すように、三尖弁構成で折り畳めるように構成することができる、まとめて弁尖構造体を構成する3つの弁尖40を備えることができる。弁尖構造体14の下縁は、望ましくは、波状の湾曲した扇形形状を有している(図1に示す縫合線154は、弁尖構造体の扇形形状を辿っている)。この扇形形状の弁尖を形成することにより、弁尖に対する応力が低減し、それにより、弁の耐久性が向上する。さらに、扇形形状であるため、各弁尖の胴部(各弁尖の中心領域)における、それらの領域に早期の石灰化をもたらす可能性がある折目および波を、なくすかまたは少なくとも最小限にすることができる。扇形形状はまた、弁尖構造体を形成するために使用される組織材料の量を低減し、それにより、弁の流入端におけるより小さくより均一な圧着外形が可能になる。弁尖40を、心膜細胞(たとえばウシ心膜細胞)、生体適合性合成材料、または、本技術分野において既知であり、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,730,118号に記載されているような他のさまざまな適切な天然材料または合成材料から形成することができる。
【0028】
図4に、剥き出しのフレーム12を示す。フレーム12を、後により詳細に説明するように、複数の円周方向に間隔を空けて配置された溝穴、または弁構造体14の交連をフレームに取り付けるように適合された交連窓20(図示する実施形態では3つ)があるように形成することができる。フレーム12を、さまざまな適切な塑性的に拡張可能な材料(たとえばステンレス鋼等)または本技術分野において既知である自己拡張型材料(例えばニチノール)のいずれかから作製することができる。塑性的に拡張可能な材料から構成される場合、フレーム12(したがって弁10)を、送達カテーテルに半径方向に圧縮した状態で圧着し、その後、膨張式バルーンまたは等価な拡張機構により患者の内部で拡張させることができる。自己拡張型材料から構成される場合、フレーム12(したがって弁10)を、半径方向に圧縮した状態で圧着し、シースまたは送達カテーテルの等価な機構内に挿入することによって圧縮状態で保持することができる。体内に入ると、弁を送達シースから前進させることができ、それにより弁はその機能サイズまで拡張することができる。」
「【0030】
図4および図5を参照すると、図示する実施形態におけるフレーム12は、端と端を合わせて配置されかつフレームの流入端において円周方向に延在している、角度付き支柱22の下方の第1の列Iと、円周方向に延在している角度付き支柱24の第2の列IIと、円周方向に延在している角度付き支柱26の第3の列IIIと、円周方向に延在している角度付き支柱28の第4の列IVと、フレームの流出端における円周方向に延在している角度付き支柱32の第5の列Vとを備えている。複数の実質的に直線状の軸方向に延在している支柱34を使用して、第1の列Iの支柱22を第2の列IIの支柱24と相互接続することができる。角度付き支柱32の第5の列Vは、複数の軸方向に延在している窓枠部分30(交連窓20を画定する)および複数の軸方向に延在している支柱31によって、角度付き支柱28の第4の列IVに接続されている。各軸方向支柱31および各枠部分30は、2つの角度付き支柱32の下端の集まる部分(convergence)によって画定された位置から、2つの角度付き支柱28の上端の集まる部分によって画定された別の位置まで延在している。図6、図7、図8、図9および図10は、図4において文字A、B、C、DおよびEによってそれぞれ画定されているフレーム12の部分の拡大図である。」
「【0050】
上述したように、図示する実施形態における弁尖構造体14は、3つの可撓性弁尖40を備えている(ただし、より多いかまたは少ない弁尖を使用することができる)。図21に最もよく示すように、図示する構造における各弁尖40は、弁尖の両側の対向する上部タブ112の間に延在する上部(流出)自由縁110を有している。各上部タブ112の下方に、上部タブを対応する下部タブ116から分離する切欠き114がある。下部タブ116のそれぞれの端部の間に延在している弁尖の下部(流入)縁部分108は、対応する下部タブ116から下方に延在している弁尖の反対側にある垂直なまたは軸方向の縁部分118と、弁尖の下端における平滑な湾曲した頂点部分119と軸方向縁部分と頂点部分との間に延在する一対の傾斜部分121とを有する、実質的にV字型の中間縁部分120とを有している。傾斜部分は、頂点部分より大きい曲率半径を有することができる。各弁尖40は、図22に示すように、下縁部分108の内面に固定された(たとえば縫合された)補強ストリップ72を有することができる。
【0051】
弁尖40を、それらの隣接する側部において互いに固定することにより、弁尖構造体の交連122を形成することができる。複数の可撓性コネクタ124(そのうちの1つを図23に示す)を使用して、弁尖の隣接する側部の対を相互接続し、弁尖を交連窓枠部分30に取り付けることができる。可撓性コネクタ124を、織られたPET布片から作製することができるが、他の合成材料および/または天然材料を使用することができる。各可撓性コネクタ124は、コネクタの中心において下縁から上縁まで延在するくさび126を備えることができる。くさび126は、暫定縫合糸128によってコネクタに固定された、Ethibond2-0縫合材のロープまたは切片等、非金属材料を含むことができる。くさび126は、交連窓枠部分30に固定された弁尖タブの回転移動を防止するのに役立つ。コネクタ124は、その上縁および下縁に沿って形成された一連の内側切欠き130および外側切欠き132を有することができる。」
「【0055】
図29は、対応する窓枠部分30に固定された2つの弁尖の隣接する上部を示す、フレームおよび弁尖構造体の一部の断面図である。図30~図36は、弁尖構造体14の交連部122をフレームの交連窓枠部分30に固定する1つの特定の手法を示す。まず、図30に示すように、2つの弁尖の2つの隣接する側部を固定する可撓性コネクタ124が横方向に折り畳まれ、上部タブ部分112が、可撓性コネクタに対して下方に折り畳まれる。図30および図31に最もよく示すように、各上部タブ部分112が縦方向に(垂直に)折目を付けられて、弁尖の内面に対して折り畳まれた内側部分142と、コネクタ124に対して折り畳まれた外側部分144とを有するL字型を呈する。そして、外側部分144を、縫合線146に沿ってコネクタ124に縫合することができる。次に、図31に示すように、(コネクタ124によって接続された一対の下部タブ部分116からなる)交連タブアセンブリが、対応する窓枠部分30の交連窓20を通して挿入される。図32は、窓枠部分30を通って外側に延在する交連タブアセンブリを示すフレーム12の側面図である。
【0056】
図29および図33に最もよく示すように、交連タブアセンブリは、くさび126において半径方向内側に押圧されて、下部タブ部分116の一方およびコネクタ124の一部が、窓枠部分30の一方の側でフレーム12に対して折り畳まれ、他方の下部タブ部分116およびコネクタ124の一部が、窓枠部分30の他方の側でフレーム12に対して折り畳まれる。下部タブ部分116をフレーム12に対して図29に示すように保持するように、一対の縫合線148が形成される。各縫合線148は、コネクタ124、下部タブ部分116、くさび126およびコネクタ124の別の部分を通って延在している。そして、図29および図34に示すように、各下部タブ部分116は、主縫合線150によって対応する上部タブ部分112に固定され、主縫合線150は、コネクタ124の1つの層、下部タブ部分116、コネクタ124の別の層、コネクタ124の別の層および上部タブ部分112と通って延在している。最後に、図29および図35に示すように、主縫合線150を形成するために使用された縫合材料を使用して、タブ部分112、116の間に挟装されたコネクタ124の2つの層を通って延在するタブ部分112、116の縁にかがり縫い152をさらに形成することができる。
【0057】
図29および図30に示すように、折り畳まれた上部タブ部分112は、交連において弁尖材料の2重の層を形成する。上部タブ部分112の内側部分142は、交連を形成している2つの弁尖40の層に当接して平坦に配置され、それにより、各交連は、窓枠30のすぐ内側に弁尖材料の4つの層を含む。この交連の4層部分は、相対的により剛性の4層部分から半径方向すぐ内側の弁尖40の部分より、屈曲または関節運動(articulating)に対してより耐性があり得る。これにより、弁尖40は、窓枠30の軸方向支柱の周囲で関節運動するのに対して、体内の動作中に弁を通って流れる血液に応じて、主に折り畳まれた内側部分142の内縁143において関節運動する。弁尖は、窓枠30から半径方向内側に間隔が空けられた位置で関節運動するため、フレームと接触しフレームから損傷を受けることを回避することができる。しかしながら、大きい力が加わると、交連の4層部分は、窓枠30に隣接する長手方向軸145(図29)を中心に離れるように傾斜する可能性があり、各内側部分142はそれぞれの外側部分144に対して伸ばされる。たとえば、これは、弁10が圧縮されて送達シャフトに取り付けられた時に発生する可能性があり、より小さい圧着径が可能になる。交連の4層部分はまた、弁の拡張中にバルーンカテーテルが膨張する時に軸145を中心に離れるように傾斜することができ、それにより、バルーンによってもたらされる交連に対する圧力の幾分かを緩和することができ、そのため、交連が拡張中に損傷を受けない。
【0058】
3つの交連タブアセンブリすべてがそれぞれの窓枠部分30に固定された後、交連タブアセンブリ間の弁尖40の下縁を、内側スカート16に縫合することができる。たとえば、図36~図38に示すように、各弁尖40を、たとえばEthibond糸を用いて、縫合線154に沿ってスカート16に縫合することができる。縫合糸は、各弁尖40、スカート16および各補強ストリップ72を通って延在する並縫い縫合糸であり得る。各弁尖40およびそれぞれの補強ストリップ72を、スカート16に別個に縫合することができる。このように、弁尖の下縁がスカート16を介してフレーム12に固定される。図38に示すように、補強ストリップ72および弁尖40の縁の周囲に輪を形成する一方で補強ストリップ72、弁尖40およびスカート16を通って延在するブランケット縫合糸156により、弁尖をスカートにさらに固定することができる。縫合糸156を、PTFE縫合材から形成することができる。図39および図40は、弁尖構造体およびスカートをフレームに固定し弁尖構造体をスカートに固定した後のフレーム12、弁尖構造体14およびスカート16を示す。」
図2
「
[図:0001425187000001.jpg]
」
図4
「
[図:0001425187000002.jpg]
」
図5
「
[図:0001425187000003.jpg]
」
図21
「
[図:0001425187000004.jpg]
」
図29
「
[図:0001425187000005.jpg]
」
図30
「
[図:0001425187000006.jpg]
」
図31
「
[図:0001425187000007.jpg]
」
段落【0055】~【0058】及び図29~31の記載を総合すると、引用文献1には、フレーム12と弁尖40とを固定した構造が記載されている。
以上の記載によれば、引用文献には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、引用文献において、「上部タブ112」及び「上部タブ部分112」は、同じ部分を指すと認められるから、以下では「上部タブ112」に表記を統一する。「下部タブ116」及び「下部タブ部分116」についても同様に「下部タブ116」に統一する。
「フレーム12はステンレス鋼又はニチノールから作製され、弁尖40はフレーム12に固定された3つの弁尖40であり、各弁尖40は、上部(流出)自由縁110、下部(流入)縁部分108、及び下部タブ116及び上部タブ112を有する、生体大動脈弁輪に植え込まれるフレーム12と弁尖40とを固定した構造であって、
複数の窓枠部分30は交連窓20を画定し、前記弁尖40は下部タブ116と上部タブ112とを有し、前記弁尖40は、一対の下部タブ116からなる交連タブアセンブリが前記窓枠部分30の前記交連窓20を通して挿入され、下部タブ116の一方が前記窓枠部分30の一方の側でフレーム12に対して折り畳まれ、他方の下部タブ116が前記窓枠部分30の他方の側でフレームに対して折り畳まれ、前記上部タブ112が折り畳まれ、前記弁尖40の内面に対して折り畳まれた内側部分142を有するL字型を呈し、縫合材料で前記窓枠部分30に固定される
生体大動脈弁輪に植え込まれるフレーム12と弁尖40とを固定した構造。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「フレーム12」は、本件補正発明の「ステント」に相当する。また、引用発明の「フレーム12」は、ステンレス鋼又はニチノールから作製されるものであり、図4、5からメッシュチューブの形状であることが看て取れるので、本件補正発明の「金属メッシュチューブ」に相当する。
イ 引用発明の「フレーム12に固定された3つの弁尖40」は、図2よりフレーム12の内側に設置されることは明らかであり、引用発明の「フレーム12に固定された3つの弁尖40」と、本件補正発明の「ステントの内側に設置された3つの扇形弁尖」とは、ステントの内側に設置された3つの弁尖の限りで一致する。また、引用発明の「上部(流出)自由縁110」、「下部(流入)縁部分108」は、本件補正発明の「遊離縁」、「円弧状底辺」にそれぞれ相当する。さらに、引用発明の「下部タブ116及び上部タブ112」は、図21より弁尖40の両側に延びていることが看て取れるので、本件補正発明の「両側に延びる弁尖の交連部」に相当する。
ウ 引用発明の「生体大動脈弁輪に植え込まれるフレーム12」は、本件補正発明の「介入大動脈弁用のステント」に相当する。また、引用発明の「固定した構造」は、本件補正発明の「連結構造」に相当する。
エ 上記ア~ウより、引用発明の「フレーム12はステンレス鋼又はニチノールから作製され、弁尖40はフレーム12に固定された3つの弁尖40であり、各弁尖40は、上部(流出)自由縁110、下部(流入)縁部分108、及び下部タブ116及び上部タブ112を有する、生体大動脈弁輪に植え込まれるフレーム12と弁尖40とを固定した構造」と、本件補正発明の「ステントは金属メッシュチューブであり、弁尖は前記ステントの内側に設置された3つの扇形弁尖であり、3つの前記扇形弁尖は、いずれも遊離縁、円弧状底辺及び両側に延びる弁尖の交連部を有する介入弁内弁又は介入大動脈弁用のステントと弁尖との連結構造」とは、ステントは金属メッシュチューブであり、弁尖は前記ステントの内側に設置された3つの弁尖であり、3つの前記弁尖は、いずれも遊離縁、円弧状底辺及び両側に延びる弁尖の交連部を有する介入大動脈弁用のステントと弁尖との連結構造の限りで一致する。
オ 引用発明の「複数の窓枠部分30」は、図2、4、5からフレーム12に3つ均等に配置されていることが看て取れるので、本件補正発明の「前記金属メッシュチューブに」「均等に配置され」る「3つの連結柱」に相当する。また、引用発明の「交連窓20」は、図5で図示された形態に照らせば、本件補正発明の「矩形スリット」に相当し、引用発明の「複数の窓枠部分30は交連窓20を画定」することは、本件補正発明の「前記連結柱のそれぞれは少なくとも1つの矩形スリットを有」することに相当する。
カ 引用発明の「下部タブ116」、「上部タブ112」は、本件補正発明の「径方向反転連結部」、「軸方向反転連結部」にそれぞれ相当し、引用発明の「弁尖40は下部タブ116と上部タブ112とを含み」は、本件補正発明の「弁尖の交連部は径方向反転連結部と軸方向反転連結部とを含み」に相当する。
キ 図29及び31の記載も参酌すると、引用発明の「一対の下部タブ116からなる交連タブアセンブリが前記窓枠部分30の前記交連窓20を通して挿入され、下部タブ116の一方が窓枠部分30の一方の側でフレーム12に対して折り畳まれ、他方の下部タブ116が窓枠部分30の他方の側でフレームに対して折り畳まれ」と、本件補正発明の「互いに隣接する前記扇形弁尖の径方向反転連結部同士が合わせられ、前記径方向反転連結部が前記連結柱の前記矩形スリットを通過した後に内側から外側へ折り曲がり」とは、互いに隣接する前記弁尖の径方向反転連結部同士が合わせられ、前記径方向反転連結部が前記連結柱の前記矩形スリットを通過した後に内側から外側へ折り曲がりの限りで一致する。
ク 引用発明の「内側部分142」は、引用文献の段落【0055】、【0057】及び図21、30の記載から、その構成と機能に照らして、本件補正発明の「緩衝部」に相当する。したがって、引用発明の「前記上部タブ112が折り畳まれ、弁尖の内面に対して折り畳まれた内側部分142を有するL字型を呈し」は、本件補正発明の「前記軸方向反転連結部が前記連結柱の内側で折り曲がって、前記遊離縁の根部に緩衝部が形成され」に相当する。
ケ 引用発明の「縫合材料で前記窓枠部分30に固定される」構成は、本件補正発明の「縫合糸で前記連結柱に連結固定される」構成に相当する。
コ 引用文献の段落【0055】及び【0056】の記載から、引用発明において「縫合材料で前記窓枠部分30に固定される」のは「前記弁尖40は、一対の下部タブ116からなる交連タブアセンブリが前記窓枠部分30の前記交連窓20を通して挿入され、フレーム12に対して折り畳まれ、前記上部タブ112が折り畳まれ」た後であるから、引用発明の「前記弁尖40は、一対の下部タブ116からなる交連タブアセンブリが前記窓枠部分30の前記交連窓20を通して挿入され、下部タブ116の一方が窓枠部分30の一方の側でフレーム12に対して折り畳まれ、他方の下部タブ116が窓枠部分30の他方の側でフレームに対して折り畳まれ、前記上部タブ112が折り畳まれ、弁尖の内面に対して折り畳まれた内側部分142を有するL字型を呈し、縫合材料で前記窓枠部分30に固定される」と、本件補正発明の「前記各扇形弁尖は、互いに隣接する前記扇形弁尖の径方向反転連結部同士が合わせられ、前記径方向反転連結部が前記連結柱の前記矩形スリットを通過した後に内側から外側へ折り曲がり、前記軸方向反転連結部が前記連結柱の内側で折り曲がって、前記遊離縁の根部に緩衝部が形成された後に、縫合糸で前記連結柱に連結固定される」とは、前記各弁尖は、互いに隣接する前記弁尖の径方向反転連結部同士が合わせられ、前記径方向反転連結部が前記連結柱の前記矩形スリットを通過した後に内側から外側へ折り曲がり、前記軸方向反転連結部が前記連結柱の内側で折り曲がって、前記遊離縁の根部に緩衝部が形成された後に、縫合糸で前記連結柱に連結固定される限りで一致する。
したがって、両者は、
「ステントは金属メッシュチューブであり、弁尖は前記ステントの内側に設置された3つの弁尖であり、3つの前記弁尖は、いずれも遊離縁、円弧状底辺及び両側に延びる弁尖の交連部を有する介入大動脈弁用のステントと弁尖との連結構造であって、
前記金属メッシュチューブには3つの連結柱が均等に配置され、前記連結柱のそれぞれは少なくとも1つの矩形スリットを有し、前記弁尖の交連部は径方向反転連結部と軸方向反転連結部とを含み、前記各弁尖は、互いに隣接する前記弁尖の径方向反転連結部同士が合わせられ、前記径方向反転連結部が前記連結柱の前記矩形スリットを通過した後に内側から外側へ折り曲がり、前記軸方向反転連結部が前記連結柱の内側で折り曲がって、前記遊離縁の根部に緩衝部が形成された後に、縫合糸で前記連結柱に連結固定される
介入大動脈弁用のステントと弁尖との連結構造。」
である点で一致し、次の点で一応相違する。
[相違点1]
本件補正発明は、「弁尖」が「扇形弁尖」であるのに対し、引用発明は、「弁尖40」がそのように特定されていない点。
[相違点2]
本件補正発明は、「径方向反転連結部」及び「軸方向反転連結部」が「略矩形」であるのに対し、引用発明は、「下部タブ116」及び「上部タブ112」がそのように特定されていない点。
(4)判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]
引用文献の図2、21から、「弁尖40」は扇形と表現できる形状であるから、「扇形弁尖」に相当する。
したがって、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。
仮に、上記相違点1が実質的な相違点であるとしても、「弁尖40」の形状は、弁尖の機能を果たす範囲内で耐久性等を考慮して当業者が適宜設計するものであり、周知の形状である「扇形」とすることに格別の困難性はない。
[相違点2]
引用文献の段落【0055】から、引用発明の「下部タブ116」は窓枠部分30の交連窓20を通して挿入されるものであり、「上部タブ112」は折り畳まれて内側部分142と外側部分144とを有するL字型を呈するものであり、連結の態様及び図30の記載からみて、概略矩形と表現できる形状であり、引用文献の図21からもこの形状が裏付けられる。
したがって、上記相違点2は、実質的な相違点ではない。
仮に、上記相違点2が実質的な相違点であるとしても、「下部タブ116」と「上部タブ112」の形状は、「下部タブ116」が窓枠部分30の交連窓20を通して挿入され、「上部タブ112」が折り畳まれて内側部分142と外側部分144とを有するL字型を呈し、ステントと弁尖との連結を可能とする範囲内で当業者が適宜設計するものであり、一般的な形状である「略矩形」とすることに格別の困難性はない。
(5)小括
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。また、本件補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
3 むすび
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和 5年 4月14日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の[理由]1(2)に記載されたとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、次の理由を含むものである。
理由1.(新規性)本願発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2.(進歩性)本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献:特表2013-543406号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2(1)で検討した本件補正発明から、「径方向反転連結部」及び「軸方向反転連結部」のそれぞれについて「略矩形」であること、及び「各扇形弁尖」について「互いに隣接する前記扇形弁尖の径方向反転連結部同士が合わせられ」ることの限定事項を実質的に削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の事項を付加したものに相当する本件補正発明は、前記第2の[理由]2(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明であり、また、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明であり、また、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。ゆえに、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-019948