特許拒絶査定不服審判
2023-000443
ガスメータ
- 審判番号
- 2023-000443
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-048385
- 請求日
- 2023年01月11日
- 審決日
- 2024年02月07日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】オムロン株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人秀和特許事務所
- 【請求人】東京瓦斯株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人秀和特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 濱野 隆
- 審判官 濱本 禎広
- 審判官 田辺 正樹
- 分類
- P18 .575-Z (G01F) / P18 .121-Z (G01F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018- 48385「ガスメータ」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 9月19日出願公開、特開2019-158763〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年3月15日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
令和3年10月29日付け:拒絶理由通知書
同年12月16日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 5月 9日付け:拒絶理由通知書
同年 6月28日 :意見書、手続補正書の提出
同年10月13日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月18日 :原査定の謄本の送達)
令和5年 1月11日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年1月11日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年1月11日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和5年1月11日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてした補正を含むものであり、この補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和4年6月28日にされた手続補正後をいう。)の請求項1が、後記の(2)に示す本件補正後の請求項1に補正された。下線は、補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
「【請求項1】
ガスメータの内部のガスが流れる流管に設置され、ガスの流量を検出するガス流量検出装置と、
前記流管に前記ガス流量検出装置が設置された際の、前記ガス流量検出装置の傾斜角度を検出する加速度センサと、を備え、
前記ガス流量検出装置は、
前記流管内を流れるガスを加熱するヒータと、
ガスの流れる方向に前記ヒータを跨いで並んで設けられ、加熱されたガスの温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部の出力に基づいてガスの熱拡散率又は熱伝導率を検出する物性値検出部と、を備え、
前記熱拡散率又は前記熱伝導率と、前記傾斜角度と、前記熱拡散率又は前記熱伝導率に関する補正値の関係を記憶する記憶部と、
前記記憶部において記憶された前記熱拡散率又は前記熱伝導率に関する前記補正値を使用して前記流量を補正する流量補正部と、をさらに備える、
ガスメータ。」
(2) 本件補正後の請求項1
「【請求項1】
ガスメータの内部のガスが流れる流管に設置され、ガスの流量を検出するガス流量検出装置と、
前記流管に前記ガス流量検出装置が設置された際の、前記ガス流量検出装置の傾斜角度を検出する加速度センサと、を備え、
前記ガス流量検出装置は、
前記流管内を流れるガスを加熱するヒータと、
ガスの流れる方向に前記ヒータを跨いで並んで設けられ、加熱されたガスの温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部の出力に基づいてガスの熱拡散率又は熱伝導率を検出する物性値検出部と、を備え、
前記熱拡散率又は前記熱伝導率と、前記傾斜角度と、前記熱拡散率に関する補正値又は前記熱伝導率に関する補正値の関係を記憶する記憶部と、
前記記憶部において記憶された前記熱拡散率に関する前記補正値又は前記熱伝導率に関する前記補正値を使用して前記流量を補正する流量補正部と、をさらに備える、
ガスメータ。」
2 補正の目的
本件補正は、本件補正前の「前記熱拡散率又は前記熱伝導率に関する(前記)補正値」について、「前記熱拡散率に関する(前記)補正値又は前記熱伝導率に関する(前記)補正値」とするものに限定するものである。
ただし、この限定は、請求項1の「記憶部」に係る段落と「流量補正部」に係る段落の二箇所においてされているため、請求項1の「流量補正部」に係る段落における限定については、「(前記)」を付して示した。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 独立特許要件の判断
前記2のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
(2) 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献4に記載された事項と引用発明の認定
(ア) 引用文献4に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2004-93179号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は当合議体により付したものであり、以下同様である。
a 【0001】~【0004】、【図4】
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、所定の流路を通流する流体(ガス)の流量を熱式流量センサを用いて検出する熱式流量計に係り、特に上記熱式流量センサの取り付け姿勢に拘わることなくその流量計測を高精度に行い得る熱式流量計に関する。
【0002】
【関連する背景技術】
ガスメータ等の積算流量計は、例えば流量センサを用いて所定の流体通路(ガス引込管)を通流する流体(ガス)の瞬時流量を求め、この瞬時流量を積算することで、例えば1ヶ月毎の流体通流量(ガス使用量)を求めるものである。このような積算流量計(ガスメータ)にて求められる積算流量は、直接課金対象となるので、その計測精度が十分に高いことが要求される。
【0003】
そこで最近では、専ら、計測精度の高い熱式流量センサが用いられている。この熱式流量センサは、基本的には図4に示すようにシリコン基台B上に設けた発熱抵抗体からなるヒータ素子Rhを間にして、流体の通流方向Fに測温抵抗体からなる一対の温度検出素子Ru,Rdを設けた素子構造を有する。そして上記ヒータ素子Rhから発せられる熱の拡散度合い(温度分布)が前記流体の通流によって変化することを利用し、前記温度検出素子Ru,Rdの熱による抵抗値変化から前記流体の質量流速(質量流量)を検出する如く構成される。
【0004】
尚、図中Rrは、前記ヒータ素子Rhから離れた位置に設けられた測温抵抗体からなる温度検出素子であって、周囲温度(流体の温度)の計測に用いられる。そしてこの熱式流量センサは、上記温度検出素子Rrによって検出される流体の温度よりも前記ヒータ素子Rhの発熱温度が一定温度だけ高くなるように駆動され、このときの前記温度検出素子Ru,Rdの抵抗値変化をセンサ出力(計測値)として求めるものとなっている。」
「【図4】
[図:0001408647000001.jpg]
」
b 【0015】~【0019】、【図1】
「【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る熱式流量計について説明する。
この熱式流量計は、概略的には図1に示すように、所定の流体通路をなす配管10の周壁に該配管10内を通流する流体(ガス)の流速(流量)を計測する為の複数(例えば4個)の熱式流量センサ11a,11b,11c,11dを設けると共に、前記流体の温度を検出する為の温度センサ12、および前記流体の圧力を検出する為の圧力センサ13をそれぞれ設けて構成される。
【0016】
ちなみに4つの熱式流量センサ11a,11b,11c,11dは、例えば低流量域検出用の低速流量センサ11a,11bと、高流量域検出用の高速流量センサ11c,11dとからなる。そしてこれらの流量センサ11a,11b,11c,11dは、円筒状の配管10の周方向に沿って90°間隔で、その左上側、右上側、左下側、および右下側からなる対角方向の4箇所にそれぞれ対向して設けられる。またサーミスタ等からなる温度センサ12は、配管10の中央部に向けて突出して該配管10内の流体(ガス)の温度を検出するように設けられている。
【0017】
尚、低速流量センサ11a,11bおよび高速流量センサ11c,11dは、前述したヒータ素子Rhと一対の温度検出素子Ru,Rdとの離間距離を異ならせることで、流速(流量)に対する計測レンジを異ならせたものからなる。また上記各流量センサ11a,11b,11c,11dは、そのヒータ素子Rhの駆動回路や一対の温度検出素子Ru,Rdの抵抗値差(温度差)を検出するセンシング回路(ブリッジ回路)と共に所定の回路基板に搭載されて前記配管10に組み込まれている。
【0018】
これらの各流量センサ(回路基板)11a,11b,11c,11dは、前記配管10の外周壁に取り付けられたセレクタ回路基板14からの制御を受けて作動するものであって、またそのセンサ出力(検出信号)を上記セレクタ回路基板14を介して出力するようになっている。このセレクタ回路基板14は、後述する計測装置本体20にケーブル16を介して接続されるもので、前記各流量センサ(回路基板)11a,11b,11c,11dのインターフェース部をなす。また前記温度センサ12および圧力センサ13も、インターフェース部としての上記セレクタ回路基板14を介して計測装置本体20に接続される。
【0019】
さてCPUを主体として構成される計測装置本体20は、基本的には前記流量センサ(回路基板)11a,11b,11c,11dによりそれぞれ求められる検出信号(センサ出力)に従って、前記配管10を通流する流体(ガス)の瞬時流量Qを算出する流量演算部21を備える。またこの計測装置本体20は、前記温度センサ12により検出される流体(ガス)の温度に応じて、前記検出信号(センサ出力)を温度補正する為の温度補正テーブル22を備えると共に、前記圧力センサ13により検出される流体(ガス)の圧力に応じて、前記検出信号(センサ出力)を圧力補正する為の圧力補正テーブル23を備えている。」
「【図1】
[図:0001408647000002.jpg]
」
c 【0020】~【0030】、【図2】、【図3】、【図5】
「【0020】
更にこの計測装置本体20は、前記各流量センサ11a,11b,11c,11dからのセンサ出力(検出信号)をゼロ点補正する為のゼロ点補正テーブル24を備える。このゼロ点補正テーブル24は、前記流量センサ11(11a,11b,11c,11d)を組み込んだ配管10における流体の通流方向の向き、即ち、配管10の敷設方向によって定まる流量センサ11(11a,11b,11c,11d)の取り付け姿勢(向き)に応じたゼロ点補正値をそれぞれ登録したものからなる。
【0021】
具体的にはゼロ点補正テーブル24には、前記流量センサ11の取り付け姿勢が図5(a)に示したように下から上へと鉛直に通流する流体(ガス)の流量を検出する上向きの姿勢であるか、図5(b)に示したように水平方向に通流する流体(ガス)の流量を検出する横向きの姿勢であるか、或いは図5(c)に示したように上から下へと鉛直に通流する流体(ガス)の流量を検出する下向きの姿勢であるかに応じて、そのゼロ点補正値がそれぞれ分類して登録されている。」
「【図5】
[図:0001408647000003.jpg]
」
「【0022】
特にこの実施形態においては、上述したゼロ点補正値が流体(ガス)の種類によって異なり、更にはその圧力によっても異なることから、ゼロ点補正テーブル24には図2に例示するように、流量センサ11の取り付け姿勢毎に流体(ガス)の種類とその圧力に応じたゼロ点補正値(補正特性)が登録されている。
ちなみに図2は流体としての空気、天然ガス(13A)、CO2、およびプロパンガスについてのゼロ点補正特性をそれぞれ示している。尚、図2において特性Hは流量センサ11の取り付け姿勢が水平の場合のゼロ点補正量(実質的にゼロ)、特性U1,U2,U3,U4は流量センサ11の取り付け姿勢が上向きの場合のゼロ点補正量、そして特性D1,D2,D3,D4は流量センサ11の取り付け姿勢が下向きの場合のゼロ点補正量を、流体の圧力に対応付けてそれぞれ示している。」
「【図2】
[図:0001408647000004.jpg]
」
「【0023】
このようなゼロ点補正テーブル24に登録されたゼロ点補正特性のどれを用いるかは、熱式流量計が所定の配管10に設備された際に初期設定される、流量センサ11の取り付け姿勢と前記配管10を通流する流体(ガス)の種類とによって決定される。尚、熱式流量計を所定の配管10に設備した際、その設備仕様によって決定される流量センサ11の取り付け姿勢と前記配管10を通流する流体(ガス)の種類とによって決定されるゼロ点補正特性だけを前記ゼロ点補正テーブル24に登録するようにしても良い。
【0024】
そして流量計の運用時には前記流量演算部21は、前記流量センサ11の取り付け姿勢および前記配管10を通流する流体(ガス)の種類に応じて、更には前記圧力センサ13によって検出される流体(ガス)の圧力に応じて前記ゼロ点補正テーブル24を参照し、該ゼロ点補正テーブル24から該当するゼロ点補正値を求める。そしてこのゼロ点補正値に従って前記流量センサ11のセンサ出力(検出信号)を補正した後、その補正したセンサ出力(検出信号)に従って前記配管10を通流した流体(ガス)の流量を求めるものとなっている。
【0025】
具体的には図3に流量演算部21における概略的な処理手順を示すように、先ず流量センサ11からのセンサ出力を入力する[ステップS1]。次いで前記流量センサ11の取り付け姿勢と前記流体の種別(ガス種)に応じて、更に前記圧力センサ13によって検出される前記流体の圧力とに応じて前記ゼロ点補正テーブル24からゼロ点補正量を求め、前記流量センサ11から求められたセンサ出力(検出信号)のゼロ点をシフト補正する[ステップS2]。
【0026】
しかる後、前記流体の種別(ガス種)に応じて前記流量センサ11の検出感度を調整するべく上記センサ出力を補正する[ステップS3]。更には前記流体の圧力に応じて前記センサ出力を圧力補正すると共に[ステップS4]、前記流体の温度に応じて前記センサ出力を温度補正する[ステップS5]。即ち、前記流量センサ11の検出特性の、流体の種別に依存する変化分、およびその圧力と温度に依存する変化をそれぞれ補正する。その後、前記流量センサ11の基準検出特性に応じてその個体差を補正し[ステップS6]、これらの補正を施したセンサ出力に従って前記配管10を通流した流体の流量(流速)を求める[ステップS7]。
【0027】
尚、以上の補正処理と、補正したセンサ出力に基づく流量(流速)の算出処理は、前述した4つの流量センサ11a,11b,11c,11d毎にそれぞれ行われる。ちなみにこれらの処理は並列的に行っても良く、或いは前述したセレクタ回路基板14を介して前記各流量センサ11a,11b,11c,11dのセンサ出力を所定の周期で巡回的に入力する場合には、時分割的に実行することも勿論可能である。
【0028】
このようにして前記各流量センサ11a,11b,11c,11dのセンサ出力からそれぞれ流体の流量(流速)が求められたならば、次に各流量(流速)の平均値を求める[ステップS8]。そしてこの平均値を流量計にて計測された最終的な流量値として出力する[ステップS9]。以降、上述した処理を繰り返し実行することで、前記配管10を通流する流体の流量計測を継続して実行する。
【0029】
かくして上述した如く構成された熱式流量計によれば、流量計11の取り付け姿勢に応じて該流量計11のセンサ出力をゼロ点補正するので、自然対流に起因する熱の移動の影響を受けることなく、流体の通流による熱の拡散度合いを検出することが可能となり、その計測精度を高めることが可能となる。つまり上下方向に通流する流体の流量を検出するべく熱式流量センサ11が縦向きに取り付けられた場合であっても、ヒータ素子Rhから発せられた熱により生起される対流の影響を除去して高精度な流量計測を実現することができる。
【0030】
特に流体の種別(ガス種)やその圧力に応じたゼロ点補正量を求めてセンサ出力をゼロ点補正するので、流体の圧力変化に拘わることなく、また流体の種別(ガス種)に応じた適切な補正を行うことができる。従って熱式流量計の使用形態を制限することなく、様々な用途に活用することが可能となる等の実用上多大なる効果が奏せられる。」
「【図3】
[図:0001408647000005.jpg]
」
(イ) 引用文献4から読み取れる認定事項
a 引用文献4の【0002】及び【0003】には、ガスメータ等の積算流量計に求められる積算流量は、直接課金対象となるため、計測精度が高い熱式流量センサが用いられることが記載されており、当該記載から、引用文献4に記載された熱式流量計は、ガスメータとして用いることを想定していることが読み取れる。
b 引用文献4の【0017】には、「低速流量センサ11a,11bおよび高速流量センサ11c,11dは、前述したヒータ素子Rhと一対の温度検出素子Ru,Rdとの離間距離を異ならせることで、流速(流量)に対する計測レンジを異ならせたものからなる。」と記載されている。
ここで、前記記載における「前述したヒータ素子Rhと一対の温度検出素子Ru,Rd」は、引用文献4の【0003】に記載された「発熱抵抗体からなるヒータ素子Rh」と「測温抵抗体からなる一対の温度検出素子Ru,Rd」を指すものであるから、引用文献4の【0017】に記載された、低速流量センサ11a,11b及び高速流量センサ11c,11dの構成は、【0003】に記載された熱式流量センサの構成と同じであり、シリコン基台B上に設けた発熱抵抗体からなるヒータ素子Rhを間にして、流体の通流方向Fに測温抵抗体からなる一対の温度検出素子Ru,Rdを設けた素子構造を有し、上記ヒータ素子Rhから発せられる熱の拡散度合い(温度分布)が前記流体の通流によって変化することを利用し、前記温度検出素子Ru,Rdの熱による抵抗値変化から前記流体の質量流速(質量流量)を検出する如く構成されることが読み取れる。
(ウ) 引用発明の認定
前記(ア)の記載事項及び前記(イ)の認定事項を総合すると、引用文献4には、次の引用発明が記載されていると認められる。
<引用発明>
「所定の流体通路をなす配管10の周壁に該配管10内を通流する流体(ガス)の流速(流量)を計測する為の複数(例えば4個)の熱式流量センサ11a,11b,11c,11dを設けると共に、前記流体の温度を検出する為の温度センサ12、および前記流体の圧力を検出する為の圧力センサ13をそれぞれ設けて構成される熱式流量計であって、(【0015】)
前記熱式流量計は、ガスメータとして用いることを想定しており、(前記(イ)aの認定事項)
4つの熱式流量センサ11a,11b,11c,11dは、低流量域検出用の低速流量センサ11a,11bと、高流量域検出用の高速流量センサ11c,11dとからなり、(【0016】)
低速流量センサ11a,11bおよび高速流量センサ11c,11dは、シリコン基台B上に設けた発熱抵抗体からなるヒータ素子Rhを間にして、流体の通流方向Fに測温抵抗体からなる一対の温度検出素子Ru,Rdを設けた素子構造を有し、上記ヒータ素子Rhから発せられる熱の拡散度合い(温度分布)が前記流体の通流によって変化することを利用し、前記温度検出素子Ru,Rdの熱による抵抗値変化から前記流体の質量流速(質量流量)を検出する如く構成され、(前記(イ)bの認定事項)
上記各流量センサ11a,11b,11c,11dは、そのヒータ素子Rhの駆動回路や一対の温度検出素子Ru,Rdの抵抗値差(温度差)を検出するセンシング回路(ブリッジ回路)と共に所定の回路基板に搭載されて前記配管10に組み込まれており、(【0017】)
これらの各流量センサ(回路基板)11a,11b,11c,11dは、前記配管10の外周壁に取り付けられたセレクタ回路基板14からの制御を受けて作動するものであって、またそのセンサ出力(検出信号)を上記セレクタ回路基板14を介して出力するようになっており、このセレクタ回路基板14は、計測装置本体20にケーブル16を介して接続されるもので、前記各流量センサ(回路基板)11a,11b,11c,11dのインターフェース部をなし、(【0018】)
CPUを主体として構成される計測装置本体20は、基本的には前記流量センサ(回路基板)11a,11b,11c,11dによりそれぞれ求められる検出信号(センサ出力)に従って、前記配管10を通流する流体(ガス)の瞬時流量Qを算出する流量演算部21を備え、(【0019】)
計測装置本体20は、前記各流量センサ11a,11b,11c,11dからのセンサ出力(検出信号)をゼロ点補正する為のゼロ点補正テーブル24を備え、このゼロ点補正テーブル24は、配管10の敷設方向によって定まる流量センサ11(11a,11b,11c,11d)の取り付け姿勢(向き)に応じたゼロ点補正値をそれぞれ登録したものからなり、(【0020】)
具体的にはゼロ点補正テーブル24には、前記流量センサ11の取り付け姿勢が下から上へと鉛直に通流する流体(ガス)の流量を検出する上向きの姿勢であるか、水平方向に通流する流体(ガス)の流量を検出する横向きの姿勢であるか、或いは上から下へと鉛直に通流する流体(ガス)の流量を検出する下向きの姿勢であるかに応じて、そのゼロ点補正値がそれぞれ分類して登録されており、(【0021】)
ゼロ点補正値が流体(ガス)の種類によって異なり、更にはその圧力によっても異なることから、ゼロ点補正テーブル24には、流量センサ11の取り付け姿勢毎に流体(ガス)の種類とその圧力に応じたゼロ点補正値(補正特性)が登録されており、その流体(ガス)の種類は、空気、天然ガス(13A)、CO2、およびプロパンガスであり、(【0022】)
ゼロ点補正テーブル24に登録されたゼロ点補正特性のどれを用いるかは、熱式流量計が所定の配管10に設備された際に初期設定される、流量センサ11の取り付け姿勢と前記配管10を通流する流体(ガス)の種類とによって決定され、(【0023】)
流量計の運用時には前記流量演算部21は、前記流量センサ11の取り付け姿勢および前記配管10を通流する流体(ガス)の種類に応じて、更には前記圧力センサ13によって検出される流体(ガス)の圧力に応じて前記ゼロ点補正テーブル24を参照し、該ゼロ点補正テーブル24から該当するゼロ点補正値を求め、このゼロ点補正値に従って前記流量センサ11のセンサ出力(検出信号)を補正した後、その補正したセンサ出力(検出信号)に従って前記配管10を通流した流体(ガス)の流量を求めるものとなっており、(【0024】)
以上の補正処理と、補正したセンサ出力に基づく流量(流速)の算出処理は、前述した4つの流量センサ11a,11b,11c,11d毎にそれぞれ行われ、(【0027】)
前記各流量センサ11a,11b,11c,11dのセンサ出力からそれぞれ流体の流量(流速)が求められたならば、次に各流量(流速)の平均値を求めて、この平均値を流量計にて計測された最終的な流量値として出力する、(【0028】)
熱式流量計。」
イ 引用文献2に記載された事項と引用文献2技術事項の認定
(ア) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2012-247266号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【課題を解決するための手段】
【0009】
(請求項1に係る発明)
本発明は、通電によって発熱するヒータ素子を備え、このヒータ素子から放出される放熱量を基に、流体通路を流れる流体流量を検出する流量センサと、この流量センサの姿勢変化を検出する姿勢検出手段と、流量センサの姿勢変化によって生じる流量誤差と流体流量との相関データを有し、この相関データより姿勢検出手段の検出結果を基に流量誤差を求め、流量センサによって検出される流体流量を流量誤差に応じて補正する流量補正手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の熱式流量測定装置は、流量センサの姿勢変化を検出する姿勢検出手段を備えているので、この姿勢検出手段によって流量センサの姿勢変化が検出された場合は、流量センサの姿勢変化によって生じる流量誤差と流体流量との相関データより、姿勢検出手段の検出結果を基に流量誤差を求めて、流量センサによって検出される流体流量を流量誤差分だけ補正することができる。これにより、流量センサの姿勢変化によって生じる流量誤差を低減できるので、例えば、使用中に流量センサの姿勢が変化する自動車用の空気流量計にも好適に用いることができる。
【0011】
(請求項2に係る発明)
請求項1に記載した熱式流量測定装置は、内燃機関を搭載する車両に使用され、内燃機関が吸入する吸入空気量を検出することを特徴とする。
自動車等の車両は、走行中に車体の姿勢が変化することが多いため、本発明の熱式流量測定装置を使用することにより、車体の姿勢変化に伴って流量センサの姿勢が変化しても、その姿勢変化によって生じる流量誤差を補正できるので、内燃機関に吸入される吸気量を精度良く検出できる。
【0012】
(請求項3に係る発明)
請求項1または2に記載した熱式流量測定装置において、姿勢検出手段は、流量センサの傾斜角度を検出する傾斜センサであることを特徴とする。
姿勢検出手段は、その一例として、傾斜による液面の変化を静電容量の変化として検出し、電圧等の電気信号に変換して出力する重力応用静電容量変化型の傾斜センサを用いることができる。
【0013】
(請求項4に係る発明)
請求項3に記載した熱式流量測定装置において、傾斜センサは、流量センサに取り付けられている、あるいは、流量センサが組み込まれるセンサハウジングに取り付けられていることを特徴とする。
傾斜センサを流量センサまたはセンサハウジングに取り付けることにより、流量センサの姿勢変化を精度良く検出できる。」
(イ) 引用文献2技術事項の認定
前記(ア)の記載事項を総合すると、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
<引用文献2技術事項>
「流量センサの姿勢変化を検出する姿勢検出手段を備え、この姿勢検出手段によって流量センサの姿勢変化が検出された場合は、流量センサの姿勢変化によって生じる流量誤差と流体流量との相関データより、姿勢検出手段の検出結果を基に流量誤差を求めて、流量センサによって検出される流体流量を流量誤差分だけ補正する熱式流量測定装置において、(【0010】)
姿勢検出手段は、流量センサの傾斜角度を検出する傾斜センサであること。(【0012】)」
ウ 引用文献3に記載された事項と周知技術Aの認定
(ア) 引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に発行された文献である特開平11-237268号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0024】また、この発明では、フローセンサ15の傾きを傾き検知装置で検知し、フローセンサ15が水平状態にないと、傾き検知装置の検知結果に基づき作動装置を作動してフローセンサ15を動かして傾きを矯正する構成にすることもできる。
【0025】この他例では、傾き検知装置として、たとえば加速度センサを用い、図5に示すように、水平管13のフローセンサ15の真上に加速度センサ35を取り付ける。また、水平管13上には、加速度センサ35を間に挟んで左右の対称位置に、作動装置40・40を設ける。作動装置40・40は、たとえばモータ部40aで作動する作動杆40bを備える装置で、加速度センサ35と電気的に接続してなる。そして、フローセンサ15が水平位置にないとき、加速度センサ35からの検知結果に基づき、モータ部40aで作動杆40bを出し入れして水平管13の傾きを矯正し、フローセンサ15を水平にする。」
「【図5】
[図:0001408647000006.jpg]
」
(イ) 周知技術Aの認定
前記引用文献3に例示されているように、次の事項は周知技術であると認められる(以下「周知技術A」という。)。
<周知技術A>
「加速度センサにより、傾きを検知すること。」
エ 引用文献5及び6に記載された事項と周知技術Bの認定
(ア) 引用文献5に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に発行された文献である米国特許出願公開第2016/0161951号明細書(以下「引用文献5」という。)には、以下の事項が記載されている。日本語訳は、当合議体による。
「[0008] In a first aspect, the present invention provides a method for determining a fluid composition parameter of an unknown fluid in a mass flow controller, the mass flow controller comprising a flow sensor and a control valve, the flow sensor comprising a heating element arranged between a first and a second temperature sensor, the method comprising:
(a) actuating the control valve to establish a constant flow through the mass flow controller;
(b) activating the heating element of the flow sensor and measuring at least one temperature value with the first and/or second temperature sensors of the flow sensor while the fluid contacts the flow sensor;
(c) retrieving first calibration data, the first calibration data having, as input values, temperature values measured with the thermal flow sensor at said constant flow and having, as output values, said fluid composition parameter; and
(d) using the first calibration data to determine said fluid composition parameter from the measured temperature value.
[0009] Preferably, the constant flow established in step (a) is zero, i.e. the control valve is closed completely. If the constant flow is different from zero, the constant flow may be established by setting the control valve to a predetermined valve opening, or by setting the valve to a valve opening that causes a predetermined temperature difference between the first and the second temperature sensors when step (b) is carried out.
[0010] The first calibration data can be provided in the form of a first lookup table. The calibration data can be stored locally in a memory of the mass flow controller, or they can be retrieved from a remote network location by any appropriate file transfer protocol.
[0011] The fluid composition parameter can include at least one of the following:
[0012] a fluid identifier selected from a set of predetermined fluid identifiers;
[0013] a concentration parameter indicative of a mixing ratio of a binary mixture of two fluids;
[0014] a heat conductivity parameter indicative of a heat conductivity of the fluid;
[0015] a heat capacity parameter indicative of a molar, specific or volumetric heat capacity of the fluid; and
[0016] a heat diffusivity parameter indicative of a heat diffusivity of the fluid.
[0017] A key advantage of the present invention is that the determination of the fluid composition parameter is carried out at constant flow, i.e. under controlled conditions. An unknown mass flow is only determined thereafter, once the fluid composition parameter is known. This greatly improves accuracy over methods in which both fluid flow rate and fluid composition are unknown variables in the same measurement.
[0018] A single temperature value as measured by one of the temperature sensors can be employed for determining the fluid composition parameter; however, it is also conceivable to employ both temperature values or to employ one or more parameters derived from these temperature values, such as a (possibly weighted) sum of the temperature values.
[0019] The method can further comprise outputting the fluid composition parameter through a user interface, e.g., to an external application for further processing, or directly to the user via a display.
[0020] In a preferred embodiment, the method comprises:
(f) retrieving second calibration data, the second calibration data having, as input values, values of the fluid composition parameter and values of a temperature difference or temperature ratio between the first and second temperature sensors, and having, as output values, mass flow values; and
(f) operating the mass flow controller employing the second calibration data associated with the fluid composition parameter determined in step (d).
[0021] Step (f) can include any known control procedure for mass flow control. In particular, step (f) may comprise the following substeps:
(f1) activating the heating element of the flow sensor and measuring a temperature difference or temperature ratio between the first and second temperature sensors of the flow sensor while the fluid contacts the flow sensor;
(f2) using the second calibration data to determine a value of the mass flow from the measured temperature difference or temperature ratio and the fluid composition parameter determined in step (d);
(f3) deriving a valve signal from values of the mass flow determined in step (f2) and values of a desired mass flow value;
(f4) setting the control valve according to the valve signal; and
(f5) repeating steps (f1)-(f4).
[0022] The second calibration data can be provided in the form of a second lookup table. Like the first calibration data, also the second calibration data can be stored locally in a memory of the mass flow controller, or they can be retrieved from a remote network location.」
([0008] 第1の態様では、本発明は、質量流量コントローラ内の未知の流体の流体組成パラメータを決定するための方法を提供し、質量流量コントローラは、流量センサ及び制御弁を備え、流量センサは、第1の温度センサと第2の温度センサとの間に配置された加熱素子を備え、その方法は以下を含む。
(a) 質量流量コントローラを通じて一定流量を確立するように、制御弁を作動させるステップと、
(b) 前記流体が前記流量センサに接触している間に、前記流量センサの前記加熱素子を作動させ、前記流量センサの前記第1及び/又は第2の温度センサで少なくとも1つの温度値を測定するステップと、
(c) 第1の較正データを検索するステップであって、前記第1の較正データは、入力値として、前記一定流量で前記熱流量センサを用いて測定された温度値を有し、出力値として、前記流体組成パラメータを有する、ステップと、
(d) 前記測定された温度値から前記流体組成パラメータを決定するために、前記第1の較正データを使用するステップ。
[0009] 好ましくは、ステップ(a)で確立される一定流量はゼロであり、すなわち、制御弁は完全に閉じられる。一定流量がゼロでない場合、一定流量は、制御弁を所定の弁開度に設定することによって、又は、ステップ(b)が実行されるときに第1の温度センサと第2の温度センサとの間に所定の温度差を生じさせる弁開度に弁を設定することによって確立され得る。
[0010] 第1の較正データは、第1のルックアップテーブルの形態で提供することができる。較正データは、質量流量コントローラのメモリにローカルに格納することができ、又は、任意の適切なファイル転送プロトコルによってリモートネットワークロケーションから取り出すことができる。
[0011] 流体組成パラメータは、以下の少なくとも1つを含むことができる。
[0012] 予め決定された流体識別子のセットから選択される流体識別子と、
[0013] 2つの流体の二元混合物の混合比を示す濃度パラメータと、
[0014] 前記流体の熱伝導率を示す熱伝導率パラメータと、
[0015] 前記流体のモル熱容量、比熱容量、又は、体積熱容量を示す熱容量パラメータと、
[0016] 前記流体の熱拡散率を示す熱拡散率パラメータ。
[0017] 本発明の重要な利点は、流体組成パラメータの決定が一定の流量で、すなわち制御された条件下で行われることである。その後、流体組成パラメータが分かると、未知の質量流量のみが決定される。これは、流体流量及び流体組成の両方が同じ測定において未知の変数である方法よりも精度を大幅に改善する。
[0018] 流体組成パラメータを決定するために、温度センサのうちの1つによって測定された単一の温度値を使用することができるが、両方の温度値を使用すること、又は、これらの温度値から導出された1つ又は複数のパラメータ、例えば(場合によっては重み付けされた)温度値の合計を使用することも考えられる。
[0019] 本方法は、流体組成パラメータを、ユーザインターフェースを通して、例えば、更なる処理のために外部アプリケーションに、又は、ディスプレイを介して直接ユーザに出力するステップをさらに含むことができる。
[0020] 好ましい実施形態では、本方法は以下を含む。
(f) 第2の較正データを取り出すステップであって、前記第2の較正データは、入力値として、前記流体組成パラメータの値と、前記第1の温度センサと前記第2の温度センサとの間の温度差又は温度比の値とを有し、出力値として、質量流量値を有する、ステップと、
(f) ステップ(d)で決定された前記流体組成パラメータに関連付けられた前記第2の較正データを用いて前記質量流量コントローラを動作させるステップ。
[0021] ステップ(f)は、質量流量制御のための任意の既知の制御手順を含むことができる。特に、ステップ(f)は、以下のサブステップを含むことができる。
(f1) 前記流量センサの前記加熱素子を作動させ、前記流体が前記流量センサに接触している間に、前記流量センサの前記第1の温度センサと前記第2の温度センサとの間の温度差又は温度比を測定するステップと、
(f2) 前記第2の較正データを使用して、前記測定された温度差又は温度比及び前記ステップ(d)で決定された前記流体組成パラメータから前記質量流量の値を決定するステップと、
(f3) ステップ(f2)で決定された質量流量の値及び所望の質量流量値の値からバルブ信号を導出するステップと、
(f4) 前記弁信号に従って前記制御弁を設定するステップと、
(f5) ステップ(f1)~(f4)を繰り返す。
[0022] 第2の較正データは、第2のルックアップテーブルの形態で提供することができる。第1の較正データと同様に、第2の較正データも、質量流量コントローラのメモリにローカルに格納することができ、又は、リモートネットワークロケーションから取り出すことができる。)
(イ) 引用文献6に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された特開2017-129470号公報(以下「引用文献6」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0039】
<流量測定処理>
図9は、流量測定処理の一例を示す処理フロー図である。図9に示すように、流量検出部11は、流量検出部内第1温度検出部および流量検出部内第2温度検出部112から温度検出信号を出力し、流量算出部133は、2つの温度検出信号に基づいて測定対象流体の流量を算出する(図9:S1)。
【0040】
具体的には、流量検出部11は、流量検出部内第1温度検出部111から出力された温度検出信号と流量検出部内第2温度検出部112から出力された温度検出信号とを出力する。また、流量算出部133は、2つの温度検出信号の差分を算出し、差分に基づいて測定対象流体の流量を示す値を算出する。
【0041】
なお、流量検出部内第1温度検出部111および流量検出部内第2温度検出部112から出力された温度検出信号に基づいて定対象流体の流量を算出する手法は、公知のものを用いることができる。流量検出部11は、算出した測定対象流体の流量を制御部13に出力する。
【0042】
また、物性値検出部12は、特性値取得処理を実行する(S2)。特性値取得処理の詳細は、図10を用いて説明する。
【0043】
図10は、特性値取得処理の一例を示す処理フロー図である。制御部13の特性値算出部132は、物性値検出部12の物性値検出部内加熱部123に、第1の温度で加熱させる(図10:S11)。その後、物性値検出部12の物性値検出部内第1温度検出部121及び物性値検出部内第2温度検出部122は、第1の温度を検出する(S12)。本ステップは、例えば制御部13による制御に基づいて行うようにしてもよい。測定対象流体を伝わる熱の速度は、熱伝導率、熱拡散率、比熱などの物性値によって決定される。また、物性値検出部内加熱部123と、物性値検出部内第1温度検出部121および物性値検出部内第2温度検出部122との温度差を検出することによって、熱伝導率を求めることができる。例えば、物性値検出部内加熱部123と、物性値検出部内第1温度検出部121および物性値検出部内第2温度検出部122との温度差が大きいほど、熱伝導率は小さくなる。このような性質を利用して、本ステップでは、測定対象流体の流れ方向と直交する方向に配置された物性値検出部内第1温度検出部121および物性値検出部内第2温度検出部122によって測定対象流体の温度を検出する。
【0044】
次に、制御部13の特性値算出部132は、物性値検出部12の物性値検出部内加熱部123に、第2の温度で加熱させる(S13)。その後、物性値検出部12の物性値検出部内第1温度検出部121及び物性値検出部内第2温度検出部122は、第2の温度を検出する(S14)。本ステップも、例えば制御部13による制御に基づいて行うようにしてもよい。このようにして、物性値検出部内加熱部123の温度変化の前後において物性値検出部内第1温度検出部121及び物性値検出部内第2温度検出部122により検出された温度を示す値が取得される。
【0045】
また、特性値算出部132は、検出された温度を用いて特性値を算出する(S15)。本ステップでは、センサ感度比を求める。センサ感度比とは、基準となる気体を流した場合のセンサ出力値に対する、所定の気体を流した場合のセンサ出力値の比であり、熱拡散率を表す特性値である。センサ感度比αは、下記の式(1)で求められる。
α = β × ΔT ・・・(1)
βは所定の係数である。また、ΔTは、物性値検出部内加熱部123の温度変化の前後において物性値検出部内第1温度検出部121及び物性値検出部内第2温度検出部122により出力された検出値の差分である。
【0046】
その後、図9の処理に戻り、制御部13は、特性値を用いて、流量算出部が算出した測定対象流体の流量を補正する(図9:S3)。具体的には、制御部13は、下記の式(2)を用いて、補正後の流量を算出する。
補正後の出力 = 流量算出部の出力 × α ・・・(2)
【0047】
本実施形態では、ヒータの温度を変化させた際にヒートパイルで検出される温度の変化量(ΔT)を用いることで、測定対象流体の熱拡散率を検出することができるようになる。ここで、熱式のフローセンサが出力する流量は、熱拡散率と相関がある。したがって、本実施形態に係る流量の補正処理によれば、あらゆる気体について適切に補正できるようになる。すなわち、熱拡散率が異なる測定対象流体について、流量の測定の精度を向上させることができる。」
「【図9】
[図:0001408647000007.jpg]
」
「【図10】
[図:0001408647000008.jpg]
」
(ウ) 周知技術Bの認定
前記引用文献5及び6に例示されているように、次の事項は周知技術であると認められる(以下「周知技術B」という。)。
<周知技術B>
「熱式流量計において、検出した流量を補正するために、温度検出部が検出した温度に基づいて流体の熱拡散率や熱伝導率等の物性値を検出する物性値検出部を設けること。」
オ 引用文献7に記載された事項と技術常識の認定
(ア) 引用文献7に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された特開平10-78342号公報(以下「引用文献7」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0013】図1は本発明の一実施例に係るガスメータの概略断面構成を表すものである。このガスメータ10は、本体11と、この本体11内に挿通され、ガスaを受け入れる入口部12Aおよびガスを排出する出口部12Bを有するガス流路としてのガス管12とを備えている。ガス管12には、入口部12A側から順に、異常時においてガス流路を遮断するための遮断弁13と、ガス流路を流れるガスの流量を検出する流量検出部14と、流量検出部14の下流側におけるガス管12に設けられた導圧孔17を介して得られるガス管内圧力が予め設定された所定の圧力を超えたときに内部接点が閉じて設定圧力検出信号を出力する圧力スイッチ15とが配置されている。本体11内には、さらに、流量検出部14および圧力センサ15の各出力信号を入力すると共に、遮断弁13を制御する制御部20が設けられている。遮断弁13としては、ガス流路を遮断する遮断状態とガス流路を開放する復帰状態とを電気的に選択可能な双方向遮断弁が用いられている。流量検出部14としては、例えば後述する膜式流量計(図4)を使用する。」
「【0031】以上、いくつかの実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、その均等の範囲で種々変形可能である。例えば、本実施の形態では、流量検出部14として膜式流量計を例に説明したが、その他の形式の流量計(フルイディック流量計や熱式流量計等)であってもよい。」
「【図1】
[図:0001408647000009.jpg]
」
(イ) 技術常識の認定
前記引用文献7に例示されているように、ガスメータに関する次の事項は技術常識であると認められる。
<技術常識>
「ガスメータが、本体と、本体内に挿通されるガス管とを備えており、ガス管には、当該ガス管に流れるガスの流量を検出する流量検出部が配置されていること。」
(3) 対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア)a 引用発明の「熱式流量計」は、「ガスメータとして用いることを想定して」いるから、本件補正発明の「ガスメータ」に相当する。
b よって、本件補正発明と引用発明は、「ガスメータ」の発明である点において一致する。
(イ)a 引用発明の「低流量域検出用の低速流量センサ11a,11bと、高流量域検出用の高速流量センサ11c,11dとからな[る]」「4つの熱式流量センサ11a,11b,11c,11d」は、「配管10内を通流する流体(ガス)の流速(流量)を計測する為」のものであり、「所定の回路基板に搭載されて前記配管10に組み込まれ」るものであるから、引用発明の「熱式流量センサ11a,11b,11c,11d」は、本件補正発明の「ガスの流量を検出するガス流量検出装置」に相当する。
b また、前記(2)オ(イ)で示したように、「ガスメータが、本体と、本体内に挿通されるガス管とを備えており、ガス管には、当該ガス管に流れるガスの流量を検出する流量検出部が配置されていること」は技術常識であることを考慮すると、引用発明において、「熱式流量センサ11a,11b,11c,11d」が「周壁に」「設け」られる「所定の流体通路をなす配管10」は、「熱式流量計」の本体の内部に挿通されたものであると理解されるから、引用発明の「配管10」は、本件補正発明の「ガスの流量を検出するガス流量検出装置」が「設置」された「ガスメータの内部のガスが流れる流管」に相当する。
c よって、本件補正発明と引用発明は、「ガスメータの内部のガスが流れる流管に設置され、ガスの流量を検出するガス流量検出装置」を備える点において一致する。
(ウ)a 引用発明の「熱式流量センサ11a,11b,11c,11d」は、「発熱抵抗体からなるヒータ素子Rhを間にして、流体の通流方向Fに測温抵抗体からなる一対の温度検出素子Ru,Rdを設けた素子構造を有し、上記ヒータ素子Rhから発せられる熱の拡散度合い(温度分布)が前記流体の通流によって変化することを利用し、前記温度検出素子Ru,Rdの熱による抵抗値変化から前記流体の質量流速(質量流量)を検出する」ものであるところ、引用発明の「発熱抵抗体からなるヒータ素子Rh」は、本件補正発明の「流管内を流れるガスを加熱するヒータ」に相当する。
b また、引用発明の「発熱抵抗体からなるヒータ素子Rhを間にして、流体の通流方向Fに」「設けた」「測温抵抗体からなる一対の温度検出素子Ru,Rd」は、本件補正発明の「ガスの流れる方向に前記ヒータを跨いで並んで設けられ、加熱されたガスの温度を検出する温度検出部」に相当する。
c よって、前記(イ)aを踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「前記ガス流量検出装置は、前記流管内を流れるガスを加熱するヒータと、ガスの流れる方向に前記ヒータを跨いで並んで設けられ、加熱されたガスの温度を検出する温度検出部と、を備え[る]」点において共通する。
(エ)a 引用発明の「CPUを主体として構成される計測装置本体20」が備える「前記各流量センサ11a,11b,11c,11dからのセンサ出力(検出信号)をゼロ点補正する為のゼロ点補正テーブル24」には、「配管10の敷設方向によって定まる流量センサ11(11a,11b,11c,11d)の取り付け姿勢(向き)に応じたゼロ点補正値」が、「流量センサ11の取り付け姿勢毎に流体(ガス)の種類とその圧力に応じたゼロ点補正値(補正特性)」として「登録」されており、「流量センサ11の取り付け姿勢」と、「ゼロ点補正値」の間には対応関係が存在するといえる。
b ここで、引用発明の「流量センサ11(11a,11b,11c,11d)の取り付け姿勢(向き)」と、本件補正発明の「ガス流量検出装置の傾斜角度」は、「ガス流量検出装置の取り付け姿勢(向き)」という点で共通する。
c そして、引用発明の「ゼロ点補正値」は、本件補正発明の「補正値」に相当するから、前記a及びbを踏まえると、引用発明の「ゼロ点補正テーブル24」は、ガス流量検出装置の取り付け姿勢(向き)と、補正値の関係を記憶する「記憶部」であるといえる。
d よって、本件補正発明と引用発明は、「ガス流量検出装置の取り付け姿勢(向き)と、補正値の関係を記憶する記憶部」を備える点において共通する。
(オ)a 引用発明の「CPUを主体として構成される計測装置本体20」が備える「流量演算部21」は、「流量センサ11の取り付け姿勢」「に応じて」、「ゼロ点補正テーブル24から該当するゼロ点補正値を求め、このゼロ点補正値に従って前記流量センサ11のセンサ出力(検出信号)を補正」するものであるから、本件補正発明の「前記記憶部において記憶された」「前記補正値を使用して」「前記流量を補正する流量補正部」に相当する。
b よって、本件補正発明と引用発明は、「前記記憶部において記憶された前記補正値を使用して前記流量を補正する流量補正部」を備える点において共通する。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の検討結果を総合すると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次に示すとおりである。
(ア) 一致点
ガスメータの内部のガスが流れる流管に設置され、ガスの流量を検出するガス流量検出装置と、を備え、
前記ガス流量検出装置は、
前記流管内を流れるガスを加熱するヒータと、
ガスの流れる方向に前記ヒータを跨いで並んで設けられ、加熱されたガスの温度を検出する温度検出部と、を備え、
ガス流量検出装置の取り付け姿勢(向き)と、補正値の関係を記憶する記憶部と、
前記記憶部において記憶された前記補正値を使用して前記流量を補正する流量補正部と、をさらに備える、
ガスメータ、である点。
(イ) 相違点
本件補正発明においては、
「前記流管に前記ガス流量検出装置が設置された際の、前記ガス流量検出装置の傾斜角度を検出する加速度センサ」を備え、「ガス流量検出装置の取り付け姿勢(向き)」を「ガス流量検出装置の傾斜角度」として検出しており、(以下「構成A」という。)
「前記ガス流量検出装置」は、「前記温度検出部の出力に基づいてガスの熱拡散率又は熱伝導率を検出する物性値検出部」を備え、(以下「構成B」という。)
「記憶部」が「記憶する」「ガス流量検出装置の取り付け姿勢(向き)と、補正値の関係」を、「前記熱拡散率又は前記熱伝導率と、前記傾斜角度と、前記熱拡散率に関する補正値又は前記熱伝導率に関する補正値の関係」であるとして、
「流量補正部」が「前記流量を補正する」ために「使用」する「前記記憶部において記憶された前記補正値」を、「前記熱拡散率に関する前記補正値又は前記熱伝導率に関する前記補正値」であるとしている(以下「構成C」という。)のに対して、
引用発明においては、
流量センサ11(11a,11b,11c,11d)の取り付け姿勢(向き)は検出されるものではなく、流量センサ11の取り付け姿勢が、上向きの姿勢であるか、横向きの姿勢であるか、あるいは下向きの姿勢であるかを分類して、それに応じてゼロ点補正値が登録されており、
流量センサ11(11a,11b,11c,11d)が流体(ガス)の熱拡散率又は熱伝導率を検出しておらず、
ゼロ点補正テーブル24が、前記熱拡散率に関する補正値又は前記熱伝導率に関する補正値を記憶しておらず、流量演算部21が、熱拡散率に関する補正値又は熱伝導率に関する補正値を使用して流量を補正していない点。
(4) 当審の判断
ア 相違点に係る構成について
(ア) 構成A(加速度センサによる傾斜角度検出)について
a 前記引用文献2技術事項は、要するに、熱式流量計において、流量センサの姿勢変化を原因とする流量誤差を補正するために、流量センサの傾斜角度を検出する傾斜センサを設けたことを開示するものである。
b ここで、引用発明と引用文献2技術事項は、いずれも熱式流量計のセンサの取り付け姿勢に応じて流量を補正することにより、前記取り付け姿勢に依存しないような正確な流量を検出しようとする点において共通するといえるから、引用発明において、前記引用文献2技術事項に係る「傾斜センサ」を適用する契機はあるというべきである。
c もっとも、引用発明は、流量センサ11の取り付け姿勢が、上向きの姿勢であるか、横向きの姿勢であるか、あるいは下向きの姿勢であるかに分類して、それに応じてゼロ点補正値を登録しており、流量センサ11の取り付け姿勢は、上記三つの類型化された姿勢のみに限られ、その他の姿勢にあることを前提としておらず、流量センサ11の傾斜角度を検出する必要はないとも考えられるため、その点について、以下の(a)~(c)において検討する。
(a) 引用発明の「熱式流量計」は、「ガスメータとして用いることを想定」し、「流体(ガス)の種類」は、「空気、天然ガス(13A)、CO2、およびプロパンガス」のように多様なガスを対象としているから、「流量センサ11」が取り付けられる場所は、一般家屋のみならず工場等の大型設備も想定しており、「所定の流体通路をなす配管10」は、上向き、横向き、下向きの姿勢に限られず、取り付け場所の周辺環境に適合するような配置をとる必要があるため、現実には様々な姿勢をとらざるを得ないと考えるのが自然である。
(b) すなわち、引用発明において、上記三つの姿勢はあくまで典型的な姿勢として例示したものにすぎないのであって、その他の姿勢を上記三つの姿勢のいずれかに近似して(置き換えて)論じる趣旨であるとは認められないから、流量センサ11の取り付け姿勢として、上記三つの姿勢に該当しない姿勢のあることを排除していないと考えられる。
(c) そうすると、引用発明においても、流量センサ11の取り付け姿勢として、上記三つの姿勢に該当しない姿勢の取り付け角度(傾斜角度)を検出する必要はあるのであって、前記引用文献2技術事項に係る「傾斜センサ」を適用する契機はやはりあるというべきである。
d 仮に、引用発明の流量センサ11の取り付け姿勢が、上記三つの類型化された姿勢のみに限られるとしても、かかる姿勢の「厳密な」傾斜角度が、上向き姿勢の場合は90°、横向き姿勢の場合は0°、下向きの姿勢の場合は-90°であることは現実的には期待できず、実際には多少の角度変動があることが想定されるから、引用文献2技術事項のように、傾斜角度を検出する手段を用いる方が、より正確な姿勢(向き)が得られることは明らかであり、引用発明において、流量センサ11の取り付け姿勢をより正確に検出する手段として、引用文献2技術事項に係る「傾斜センサ」を用いることは、当業者ならば自然な発想である。
e そして、「加速度センサにより、傾きを検知すること」は本願出願前に周知であって(前記周知技術Aを参照)、前記傾斜角度を検出する姿勢検出手段として、加速度センサを採用することは、当業者にとって自明な設計事項にすぎず、格別困難性があるものではない。
(イ) 構成B(物性値検出部による熱拡散率・熱伝導率検出)について
a 引用発明の「流量演算部21」は、「前記流量センサ11の取り付け姿勢および前記配管10を通流する流体(ガス)の種類に応じて、更には前記圧力センサ13によって検出される流体(ガス)の圧力に応じて前記ゼロ点補正テーブル24を参照し、該ゼロ点補正テーブル24から該当するゼロ点補正値を求め、このゼロ点補正値に従って前記流量センサ11のセンサ出力(検出信号)を補正」するから、引用発明は、センサ出力の誤差要因として、少なくとも「流体(ガス)の種類」に由来したものがあることを前提としている。
b そして、引用発明は、「熱式」流量計が検出した流量を補正するものであるから、「流体(ガス)の種類」に由来するセンサ出力の誤差要因が、流体(ガス)の熱的な性質と関連することは明らかであって、かかる熱的な性質は、熱拡散率や熱伝導率等の代表的な物性値により定量化されることも当業者にとって自明である。
c そうすると、引用発明において、「流体(ガス)の種類」に由来するセンサ出力の誤差を補正するため、流体(ガス)の熱的な性質を表す「熱拡散率」や「熱伝導率」等の物性値を取得しようとする動機はあるというべきである。
d ここで、前記(2)エ(ウ)において周知技術Bとして示したとおり、「熱式流量計において、検出した流量を補正するために、温度検出部が検出した温度に基づいて流体の熱拡散率や熱伝導率等の物性値を検出する物性値検出部を設けること」は、本願出願前に周知である。
また、物性値検出部を流管に設置されるガス流量検出装置が備えるように構成することは、当業者が適宜なし得た設計事項にすぎない。
したがって、引用発明において、上記周知技術Bを採用することにより、前記相違点に係る構成Bを備えるようにすることは、格別困難なことではない。
(ウ) 構成C(補正値)について
a 引用発明においては、「熱式流量計が所定の配管10に設備された際に初期設定される、流量センサ11の取り付け姿勢と前記配管10を通流する流体(ガス)の種類とによって」「ゼロ点補正テーブル24に登録されたゼロ点補正特性のどれを用いるか」が「決定」されるから、「ゼロ点補正値」は、「流量センサ11の取り付け姿勢」と「流体(ガス)の種類」に対応づけられたものである。
b ここで、引用発明における、前記「流体(ガス)の種類」として、「空気、天然ガス(13A)、CO2およびプロパンガス」が挙げられているところ、これらのガスの27℃における熱伝導率(mW/(m・K))は、例えば、「空気」については26.14であり、「CO2」については16.55であり、「プロパン」については18.4であり、熱拡散率は、熱伝導率/(密度×比熱)から求まることを踏まえると、これらのガスにおいては、熱伝導率及び熱拡散率がそれぞれ異なるものであることは、当業者にとって技術常識であるから、引用発明において、「流体(ガス)の種類」と「熱拡散率又は熱伝導率」を一対一に対応させることが可能である。
c 前記(ア)及び(イ)を踏まえると、引用発明は、流量センサ11の傾斜角度を検出する加速度センサ(構成A)及び流体の熱拡散率や熱伝導率を検出する物性値検出部(構成B)を備えることになるところ、前記bに示した「流体(ガス)の種類」と「熱拡散率又は熱伝導率」の一対一対応の関係を踏まえると、引用発明において、上記構成A及びBを備えることにより、流量誤差を補正するための補正値(「ゼロ点補正値」)を、流量センサ11の傾斜角度、及び、流体の熱拡散率又は熱伝導率に対応づけるように構成できることは、明らかである。
d 以上より、前記相違点に係る構成Cの「前記熱拡散率又は前記熱伝導率と、前記傾斜角度と、前記熱拡散率に関する補正値又は前記熱伝導率に関する補正値の関係」を「記憶部」が「記憶する」こと、及び、「流量補正部」が「前記流量を補正する」ために「使用」する「前記記憶部において記憶された前記補正値」を、「前記熱拡散率に関する前記補正値又は前記熱伝導率に関する前記補正値」とすることは、前記相違点に係る構成A及びBを得たことを通じて、当業者ならば自明に導かれる事項にすぎない。
イ 総合検討
前記アの(ア)~(ウ)においてそれぞれ検討した結果を総合すると、引用発明において前記相違点に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本件補正発明の奏する作用効果としては、当業者が予測困難であり、格別顕著なものは、認めることができない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2技術事項、周知技術A及び周知技術Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張の内容
請求人は、審判請求の理由において、概略次のa及びbの主張をしている。
a 本件補正発明の「前記熱拡散率又は前記熱伝導率と、前記傾斜角度と、前記熱拡散率に関する補正値又は前記熱伝導率に関する補正値の関係を記憶する記憶部」と、引用発明の「ガスの種類と、ガスの圧力と、熱式流量センサ11の取り付け姿勢と、ゼロ点補正量の関係を記憶するゼロ点補正テーブル24」とは明らかに異なる。
引用文献4の図2には、流量センサ11の取り付け姿勢毎に流体(ガス)の種類とその圧力に応じたゼロ点補正値(補正特性)が示されており、流体(ガス)の種類だけでは、ゼロ点補正値を求めることはできない。
引用文献4に記載のガスメータを実現する上でガスの圧力も必須のパラメータであり、引用文献4に記載のガスメータにおいて、ガスの種類および流量センサ11の取り付け姿勢に応じてゼロ点補正値を求めることはできないため、ゼロ点補正テーブル24には、流量センサ11の取り付け姿勢毎にガスの種類とその圧力に応じたゼロ点補正値を登録することが必須になる。
b 引用文献5の段落[0011]~[0016]には、fluid composition parameterは、heat conductivity parameter、heat diffusivity parameterを含むことができることが記載されているだけであり、引用文献5には、熱伝導率又は熱拡散率からガスの種類を特定することの明示的な記載はない。引用文献5の段落[0011]~[0016]の記載に基づいて熱伝導率又は熱拡散率からガスの種類を特定する手段を想到することは、当業者であっても困難である。
仮に、引用文献5の段落[0011]~[0016]の記載に基づいて熱伝導率又は熱拡散率からガスの種類を特定する手段を当業者が容易に想到できたとしても、引用文献5に記載の技術を引用文献4に記載のガスメータに適用した場合に、当業者は、熱伝導率又は熱拡散率からガスの種類を特定し、ガスの種類、ガスの圧力及び流量センサ11の取り付け姿勢に応じてゼロ点補正値を求め、ゼロ点補正値に従って流量センサ11のセンサ出力を補正し、補正したセンサ出力に従ってガスの流量を求めることを想到するだけである。
よって、当業者は、本件補正発明の「前記熱拡散率又は前記熱伝導率と、前記傾斜角度と、前記熱拡散率に関する補正値又は前記熱伝導率に関する補正値の関係を記憶する記憶部」及び「前記記憶部において記憶された前記熱拡散率に関する前記補正値又は前記熱伝導率に関する前記補正値を使用して前記流量を補正する流量補正部」を容易に想到することができないものと思量する。
(イ) 請求人の主張についての検討
a 前記(ア)aの主張について検討する。
引用文献4の【図2】には、同じ圧力の場合において、空気、CO2、プロパンの補正値が互いに異なることが示されている。これは、予めガスの圧力が一定であることが分かっている場合は、ガスの種類と流量センサ11の取り付け姿勢を指定すれば、それに対応して補正値を特定できることを意味している。
よって、引用発明のゼロ点補正テーブル24において、ゼロ点補正値を求めるに当たり、ガスの圧力が必須のパラメータであるとは認められない。
b 前記(ア)bの主張について検討する。
前記ア(ウ)cにおいて示したとおり、「流体(ガス)の種類」と「熱拡散率又は熱伝導率」を一対一に対応させることが可能であるから、引用発明において、流量センサ11の傾斜角度を検出する加速度センサ(構成A)及び流体の熱拡散率や熱伝導率を検出する物性値検出部(構成B)を備えることにより、流量誤差を補正するための補正値(「ゼロ点補正値」)を、流量センサ11の傾斜角度、及び、流体の熱拡散率又は熱伝導率に対応づけるように構成できることは、明らかである。
c よって、請求人の主張はいずれも採用できない。
(5) 独立特許要件についてのまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明、引用文献2技術事項、周知技術A及び周知技術Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 本件補正の適否についてのまとめ
前記3において検討したとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、前記第2に示したとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和4年6月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(前記第2の1(1)参照)により特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する理由(引用文献4を主たる引用文献とした進歩性の欠如の理由)の概要は、次のとおりである。
本願発明は、本願の出願前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、本願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献2.特開2012-247266号公報
引用文献3.特開平11-237268号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4.特開2004-93179号公報(主たる引用文献)
引用文献5.米国特許出願公開第2016/0161951号明細書
3 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
引用文献2~7に記載された事項並びに引用発明、引用文献2技術事項、周知技術A、周知技術B及び技術常識の認定は、前記第2の3(2)ア~オにおいて示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明の「前記熱拡散率に関する(前記)補正値又は前記熱伝導率に関する(前記)補正値」について、「前記熱拡散率又は前記熱伝導率に関する(前記)補正値」とし、「熱拡散率に関する(前記)補正値」という限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、当該構成の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(3)、(4)において説示したとおり、引用発明、引用文献2技術事項、周知技術A及び周知技術Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様の理由により、本願発明も、引用発明、引用文献2技術事項、周知技術A及び周知技術Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-000443