特許無効審判
2022-800054
回転式噴霧装置、及び該回転式噴霧装置を使用することによって被覆製品を噴霧する方法
- 審判番号
- 2022-800054
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2011-528410
- 登録番号
- 5628179
- 請求日
- 2022年06月27日
- 審決日
- 2024年09月17日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】デュール システムズ アーゲー
- 【請求人代理人】木村 満
- 【請求人代理人】長谷川 陽子
- 【請求人代理人】早川 牧子
- 【請求人代理人】宮脇 良平
- 【請求人代理人】三瓶 真弘
- 【請求人代理人】桜田 圭
- 【請求人代理人】遠藤 雅士
- 【請求人代理人】齋藤 悟郎
- 【請求人代理人】湯浅 夏樹
- 【請求人代理人】庄野 寿晃
- 【請求人代理人】豊田 朝子
- 【請求人代理人】橋本 幸治
- 【請求人代理人】佐藤 彩秋
- 【被請求人】サメ クレムリン
- 【被請求人代理人】阿部 達彦
- 【被請求人代理人】黒田 晋平
- 【被請求人代理人】源田 正宏
- 審判長/審判官
- 審判長 門前 浩一
- 審判官 関根 裕
- 審判官 光本 美奈子
- 分類
- P1113.111-YAA(B05B) / P1113.112-YAA(B05B) / P1113.113-YAA(B05B) / P1113.121-YAA(B05B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第1項、特許法第134条の2第9項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第134条の2第3項、特許法第126条第7項、特許法第134条第1項、特許法第29条の2、特許法第131条の2第2項、特許法第135条、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第5628179号発明「回転式噴霧装置、及び該回転式噴霧装置を使用することによって被覆製品を噴霧する方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第5628179号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~26〕について訂正することを認める。
特許第5628179号の請求項1~8、10、13~26に係る発明についての本件審判の請求は成り立たない。
特許第5628179号の請求項9、11、12に係る発明についての本件審判の請求を却下する。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨
1 請求の趣旨
特許第5628179号の請求項1~26に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。
2 答弁の趣旨
本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。
第2 手続の経緯
特許第5628179号(以下「本件特許」という。)についての出願は、2009年(平成21年)9月30日(パリ条約による優先権主張 2008年9月30日(以下「本件優先日」という。) フランス(FR))を国際出願日とする特許出願であって、平成26年10月10日にその特許権の設定登録(請求項の数26)がされたものであり、その後の本件特許無効審判請求事件に係る主な手続の経緯は次のとおりである。
令和4年 6月27日 :審判請求書(無効審判請求人は、デュール システムズ アーゲー(以下「請求人」又は「デュール社」という。))
同年 8月 9日付け:手続補正指令書
同年 9月 8日 :審判請求書に対する手続補正書(請求人)
同年10月13日 :上申書(請求人)
令和5年 1月12日 :訂正請求書、答弁書(特許権者は、サメ・クレムリン(以下「被請求人」という。))
同年 1月25日付け:手続補正指令書
同年 2月24日 :訂正請求書に対する手続補正書(被請求人)
同年12月14日付け:審理事項通知書
令和6年 1月10日 :口頭審理陳述要領書(請求人)
同年 1月24日 :令和6年1月10日の口頭審理陳述要領書に対する手続補正書(請求人)
同年 2月 7日 :口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 3月 6日 :第1回口頭審理
同年 3月 6日 :口頭による訂正拒絶理由通知
同年 3月 6日 :訂正請求書に対する手続補正書(被請求人)
同年 3月15日 :上申書の提出期限の延長を求める上申書(請求人)
同年 4月18日 :上申書(請求人)
同年 5月22日 :上申書(被請求人)
第3 訂正請求について
1 訂正請求の趣旨及び訂正の内容
令和5年2月24日の手続補正書及び令和6年3月6日の手続補正書により補正された令和5年1月12日の訂正請求書による訂正の請求(以下、この請求による訂正を「本件訂正」ともいう。)は、本件特許の特許請求の範囲を、令和6年3月6日の手続補正書により補正された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~26について訂正することを求めるものであって、その内容は、次のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「を備えている固定式本体(2)と、」と記載されているのを、
「を備え、前記第1の輪郭(C4)と前記第2の輪郭(C6)とが、前記回転軸線(X1)上に中心が配置された円(C)において一致している、固定式本体(2)と、」に訂正する。
請求項1を直接または間接的に引用する請求項2~8、10、13~26についても同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、
「交差領域(R46)が、前記端部(12)の上流に存在することを特徴とする回転式噴霧装置(P)」と記載されているのを、
「交差領域(R46)が、前記端部(12)の上流に存在し、
前記端部(12)の直径(D12)と前記円(C)の直径(D)との比が、0.65~1とされることを特徴とする回転式噴霧装置(P)」に訂正する。
請求項1を直接または間接的に引用する請求項2~8、10、13~26についても同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項9を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1~9のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)」と記載されているのを、「請求項1~8のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項11を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項12を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項13に「請求項12に記載の回転式噴霧装置(P)」と記載されているのを、「請求項1~8、10のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項14に「請求項12又は13に記載の回転式噴霧装置(P)」と記載されているのを、「請求項1~8、10、13のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)」に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項18に「請求項1~17のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)」と記載されているのを、「請求項1~8、10、13~17のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)」に訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項20に「請求項2~15のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)」と記載されているのを、「請求項1~8、10、13~15のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)」に訂正する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項23に「請求項1~22のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)を実施することを特徴とする方法」と記載されているのを、「請求項1~8、10、13~22のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)を実施することを特徴とする方法」に訂正する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項24に「請求項1~22のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)を実施することを特徴とする方法」と記載されているのを、「請求項1~8、10、13~22のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)を実施することを特徴とする請求項23に記載の方法」に訂正する。
(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項25に「請求項1~22のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)を実施することを特徴とする方法」と記載されているのを、「請求項1~8、10、13~22のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)を実施することを特徴とする請求項23又は24のいずれか一項に記載の方法」に訂正する。
(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項26に「請求項1~22のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)を実施することを特徴とする方法」と記載されているのを、「請求項1~8、10、13~22のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)を実施することを特徴とする請求項23~25のいずれか一項に記載の方法」に訂正する。
2 一群の請求項
訂正前の請求項1~26について、請求項2~26は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1、2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。本件訂正は、特許法134条の2第3項に規定する一群の請求項ごとにされたものである。
3 訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の「固定式本体(2)」について、「前記第1の輪郭(C4)と前記第2の輪郭(C6)とが、前記回転軸線(X1)上に中心が配置された円(C)において一致している」との構成を付加限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
前記アの前記限定付加は、本件特許の願書に最初に添付した明細書の段落【0017】の「第1の輪郭及び第2の輪郭は回転軸線上に中心をおく円に一致し」との記載や同特許請求の範囲の請求項11の「前記第1の輪郭(C4)と前記第2の輪郭(C6)とが、前記回転軸線(X1)上に中心が配置された円(C)において一致しており」との記載に基いたものであるので、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張、変更の存否
訂正事項1は、前記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の「回転式噴霧装置(P)」について、「前記端部(12)の直径(D12)と前記円(C)の直径(D)との比が、0.65~1とされる」との記載により、端部(12)の直径(D12)と前記円(C)の直径(D)との関係を具体的に特定し、さらに限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
前記アの前記限定付加は、本件特許の願書に最初に添付した明細書の段落【0017】の「端部の直径と円の直径の比は0.65から1であり」との記載や、同特許請求の範囲の請求項11の「前記端部(12)の直径(D12)と前記円(C)の直径(D)との比が、0.65~1とされ」との記載に基いたものであるので、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張、変更の存否
訂正事項1は、前記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(3)訂正事項3、5、6
訂正事項3は、訂正前の特許請求の範囲の請求項9を削除する訂正であり、訂正事項5は、同請求項11を削除する訂正であり、訂正事項6は、同請求項12を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、本件明細書等に記載された事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4、11~14
訂正事項4は、前記訂正事項3において請求項9が削除されたことに伴い、請求項10が記載を引用する複数の請求項のうち、請求項9を引用しないものとする訂正であり、訂正事項11~14も、同様に、前記訂正事項3、5及び6において請求項9、請求項11及び請求項12が削除されたことに伴い、各請求項が記載を引用する複数の請求項のうち、これらの削除された請求項を引用しないものとする訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とし、本件明細書等に記載された事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項7~10
訂正事項7は、訂正前の請求項13が、請求項12のみを引用していたのを、「請求項1~8、10のいずれか一項」を引用する形式に訂正するものである。
これは、訂正前の請求項13が、請求項9又は10を引用する請求項12を引用し、当該請求項9が請求項1~8の何れかを引用する形式で記載されたものであったところ、前記訂正事項3、5及び6により請求項9、11及び12が削除され、実質的に請求項9及び12の特定事項が請求項1に取り込まれたことに伴い、請求項13が引用する請求項を、訂正前に間接的に引用していた請求項1~8、10のいずれか一項を引用する形式に書き改めたものである。
訂正事項8~10も同様に、前記訂正事項3、5及び6において請求項9、請求項11及び請求項12が削除され、実質的に請求項9及び12の特定事項が請求項1に取り込まれたことに伴い、各請求項が間接的に引用していた請求項を引用する形式に書き改めたものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とし、本件明細書等に記載された事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)独立特許要件
本件特許無効審判事件においては、請求項1~26に記載された発明すべてが無効審判の請求の対象とされているので、訂正前の請求項1~26に係る訂正事項1~14に関して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。
4 訂正請求のまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号又は同第3号に掲げる事項を目的とし、同法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、前記訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~26〕について訂正することを認める。
第4 本件発明について
前記第3のとおり、本件訂正は適法にされたものであるから、本件特許の請求項1~26に係る発明(以下番号順に「本件発明1」等ともいう。)は、令和6年3月6日の手続補正書により補正された訂正特許請求の範囲の請求項1~26に記載される事項により特定される次のとおりのものである。
なお、請求項1に付した(A)~(G1)の分説記号は、答弁書の記載に基いて、合議体が付したものである。各分説に係る構成要件を「構成A」~「構成G1」ともいう。
また、第5の1の説明のため、訂正前の請求項1、9及び12を訂正特許請求の範囲の後に記載する。
(訂正特許請求の範囲)
「【請求項1】
A1. 被覆製品のための回転式噴霧装置(P)であって、
B1. 少なくとも1つの略円状の端部(12)を有していると共に、前記被覆製品の噴流を形成可能な前記被覆製品を噴霧するための噴霧部材(1)と、
C1. 前記噴霧部材(1)を回転駆動させるための手段と、
D1-1. -前記噴霧部材(1)の回転軸線(X1)を囲んでいる第1の輪郭(C4)上に配置された第1のオリフィス(4)であって、前記第1のオリフィス(4)それぞれが第1の方向(X4)において第1の空気噴流(J4)を噴射するように構成されている、前記第1のオリフィス(4)と、
D1-2. -前記噴霧部材(1)の前記回転軸線(X1)を囲んでいる第2の輪郭(C6)上に配置された第2のオリフィス(6)であって、前記第2のオリフィス(6)それぞれが第2の方向(X6)において第2の空気噴流(J6)を噴射するように構成されている、第2のオリフィス(6)と、
を備え、
D1-3. 前記第1の輪郭(C4)と前記第2の輪郭(C6)とが、前記回転軸線(X1)上に中心が配置された円(C)において一致している、固定式本体(2)と、
を備えている前記回転式噴霧装置(P)において、
E1. 互いに関連する少なくとも1つの前記第1の空気噴流(J4)と少なくとも1つの前記第2の空気噴流(J6)とが交差することによって、混合噴流(J46)それぞれが形成されるように、前記第1の方向(X4)それぞれと前記第2の方向(X6)それぞれとが方向付けられ、且つ、前記第1のオリフィス(4)それぞれと前記第2のオリフィス(6)それぞれとが配置されており、
F1. 交差領域(R46)が、前記端部(12)の上流に存在し、
G1. 前記端部(12)の直径(D12)と前記円(C)の直径(D)との比が、0.65~1とされることを特徴とする回転式噴霧装置(P)。
【請求項2】
前記第1の方向(X4)それぞれと前記噴霧部材(1)とが分離されており、
前記第2の方向(X6)それぞれが、前記噴霧部材(1)に対する割線であることを特徴とする請求項1に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項3】
前記第2の方向(X6)それぞれが、前記回転軸線(X1)を含む平面内において延在しており、
前記第2の方向(X6)が、前記回転軸線(X1)上に存在する頂点(S6)に向かって概略的に集束していることを特徴とする請求項2に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項4】
前記第1のオリフィス(4)それぞれと関連する前記第2のオリフィス(6)とが、0mm~10mmとされる距離(c46)で離間していることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項5】
前記第1のオリフィス(4)それぞれと関連する前記第2のオリフィス(6)とが、1mmとされる距離(c46)で離間していることを特徴とする請求項4に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項6】
前記第1のオリフィス(4)及び前記第2のオリフィス(6)それぞれが、2つの隣接する混合噴流(J46、J46)が部分的に混合されるように、前記第1の輪郭(C4)及び前記第2の輪郭(C6)上に配設されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項7】
前記第1の方向(X4)のうちすべての方向と前記第2の方向(X6)のうちすべての方向とがそれぞれ、前記回転軸線(X1)に関して対称とされることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項8】
前記第1の輪郭(C4)と前記端部(12)との間の距離(L1)が、前記回転軸線(X1)に沿って5mm~30mmとされ、
前記第2の輪郭(C6)と前記端部(12)との間の距離(L1)が、前記回転軸線(X1)に沿って5mm~30mmとされることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
前記第1の輪郭(C4)と前記第2の輪郭(C6)とが、共通平面(P46)内に配置されており、
前記共通平面(P46)が、前記回転軸線(X1)に対して垂直であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
前記端部(12)の直径(D12)と前記円(C)の直径(D)との比が、0.95とされることを特徴とする請求項1~8、10のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項14】
前記固定式本体(2)が、20個~60個の第1のオリフィス(4)と20個~60個の第2のオリフィス(6)とを備えており、
前記第1のオリフィス(4)と前記第2のオリフィス(6)とが、円状であり、
前記第1のオリフィス(4)が、前記第1のオリフィス(4)が前記第2のオリフィス(6)と交互になるように前記円(C)上に配置されており、
前記第1のオリフィス(4)の直径(d4)と前記第2のオリフィス(6)の直径(d6)とが、0.4mm~1.2mmとされることを特徴とする請求項1~8、10、13のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項15】
前記第1のオリフィス(4)の直径(d4)と前記第2のオリフィス(6)の直径(d6)とが、共に0.8mmとされることを特徴とする請求項14に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項16】
前記第1の方向(X4)と関連する第2の方向(X6)とが、交点(46)で交差しており、
前記共通平面(P46)と前記交点(46)との間における、前記回転軸線(X1)に沿った距離が、前記第1のオリフィス(4)又は第2のオリフィス(6)の、前記共通平面(P46)内における最長寸法(d4、d6)の0.5倍~30倍とされることを特徴とする請求項10に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項17】
前記共通平面(P46)と前記交点(46)との間における、前記回転軸線(X1)に沿った距離が、前記第1のオリフィス(4)又は第2のオリフィス(6)の、前記共通平面(P46)内における最長寸法(d4、d6)の1倍~2倍とされることを特徴とする請求項16に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項18】
前記混合噴流(J46)それぞれが、前記端部(12)の平面内において、前記端部(12)によって切頭された略楕円(E46)の形状をした断面を有しており、
前記楕円(E46)の長軸(X46)が、前記端部(12)に対して局所的に接する方向(T12)に対して、20°~70°の角度(A46)で傾斜していることを特徴とする請求項1~8、10、13~17のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項19】
前記楕円(E46)の長軸(X46)が、前記端部(12)に対して局所的に接する方向(T12)に対して、35°~55°の角度(A46)で傾斜していることを特徴とする請求項18に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項20】
前記第1の方向(X4)が、前記端部(12)からの径方向における距離(r4)が0mm~25mmの地点を通過しており、
前記第2の方向(X6)が、前記端部(12)からの軸線方向における距離(L136)が0mm~25mmの地点において、前記噴霧部材(1)と交差していることを特徴とする請求項1~8、10、13~15のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項21】
前記第1の方向(X4)が、前記端部(12)からの径方向における距離(r4)が、0mmの地点を通過していることを特徴とする請求項20に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項22】
前記第2の方向(X6)が、前記端部(12)からの軸線方向における距離(L136)が、3.5mmの地点において、前記噴霧部材(1)と交差していることを特徴とする請求項20又は21に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項23】
被覆製品を噴霧するための方法であって、
全空気流量が100Nl/分から1000Nl/分であり、前記全空気流量のうち前記第1の空気噴流(J4)からの流量が25%~75%であり、且つ、前記全空気流量のうち前記第2の空気噴流(J6)からの流量が75%~25%である状態において、請求項1~8、10、13~22のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)を実施することを特徴とする方法。
【請求項24】
全空気流量が300Nl/分から800Nl/分である状態において、請求項1~8、10、13~22のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)を実施することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記全空気流量のうち前記第1の空気噴流(J4)からの流量が33%である状態において、請求項1~8、10、13~22のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)を実施することを特徴とする請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記全空気流量のうち前記第2の空気噴流(J6)からの流量が67%である状態において、請求項1~8、10、13~22のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)を実施することを特徴とする請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。」
(本件訂正前の請求項1、9及び12の記載)
「【請求項1】
被覆製品のための回転式噴霧装置(P)であって、
少なくとも1つの略円状の端部(12)を有していると共に、前記被覆製品の噴流を形成可能な前記被覆製品を噴霧するための噴霧部材(1)と、
前記噴霧部材(1)を回転駆動させるための手段と、
-前記噴霧部材(1)の回転軸線(X1)を囲んでいる第1の輪郭(C4)上に配置された第1のオリフィス(4)であって、前記第1のオリフィス(4)それぞれが第1の方向(X4)において第1の空気噴流(J4)を噴射するように構成されている、前記第1のオリフィス(4)と、
-前記噴霧部材(1)の前記回転軸線(X1)を囲んでいる第2の輪郭(C6)上に配置された第2のオリフィス(6)であって、前記第2のオリフィス(6)それぞれが第2の方向(X6)において第2の空気噴流(J6)を噴射するように構成されている、第2のオリフィス(6)と、
を備えている、固定式本体(2)と、
を備えている前記回転式噴霧装置(P)において、
互いに関連する少なくとも1つの前記第1の空気噴流(J4)と少なくとも1つの前記第2の空気噴流(J6)とが交差することによって、混合噴流(J46)それぞれが形成されるように、前記第1の方向(X4)それぞれと前記第2の方向(X6)それぞれとが方向付けられ、且つ、前記第1のオリフィス(4)それぞれと前記第2のオリフィス(6)それぞれとが配置されており、
交差領域(R46)が、前記端部(12)の上流に存在することを特徴とする回転式噴霧装置(P)。」
「【請求項9】
前記第1の輪郭(C4)と前記第2の輪郭(C6)とがそれぞれ、円状とされることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)。」
「【請求項12】
前記第1の輪郭(C4)と前記第2の輪郭(C6)とが、前記回転軸線(X1)上に中心が配置された円(C)において一致しており、
前記端部(12)の直径(D12)と前記円(C)の直径(D)との比が、0.65~1とされることを特徴とする請求項9又は10に記載の回転式噴霧装置(P)。」
第5 請求人の主張及び証拠方法
1 審判請求書における請求人の主張の概要
請求人は、後記4(1)の甲第1号証~甲第31号証(以下番号順に「甲1」等ともいう。)を提出するとともに、令和4年9月8日の手続補正書により補正された審判請求書において、概略、次の無効理由を主張した。
なお、甲16、甲23は、本件特許に係る出願の優先日前に公知となったものではない。
(1)無効理由1(29条1項2号)
本件訂正前の請求項1、2、4、6~12、14、16、17、20、21、23~26に係る発明は、本件優先日前にドイツ国内で販売された、デュール社のEcoBell2 HDという回転噴霧器に係る発明であるから、公然実施された発明である。
(2)無効理由2(29条1項1号)
本件訂正前の請求項1、2、4、6~12、14、16、17、20、21、23~26に係る発明は、本件優先日前に、デュール社がEcoBell2 HDという回転噴霧器をルノー社の社員に公開することによって、公然知られた発明である。
(3)無効理由3(29条1項1号)
本件訂正前の請求項1、2、4、6~12、14、16、17、20、21、23~26に係る発明は、本件優先日前に、デュール社がEcoBell2 HDという回転噴霧器をプジョー・シトロエン社の社員に公開することによって、公然知られた発明である。
(4)無効理由4(29条1項3号)
ア 本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲6~甲13、甲15、甲16、甲18、甲19、甲21~甲23、甲25~甲31に記載された発明である。
イ 本件訂正前の請求項2に係る発明は、甲7、甲10、甲15、甲18、甲25、甲27、甲30、甲31に記載された発明である。
ウ 本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲10、甲25、甲31に記載された発明である。
エ 本件訂正前の請求項4に係る発明は、甲18、甲29に記載された発明である。
オ 本件訂正前の請求項6に係る発明は、甲7~甲12、甲15、甲16、甲23、甲25、甲27、甲31に記載された発明である。
カ 本件訂正前の請求項7に係る発明は、甲6~甲13、甲15、甲16、甲18、甲21~甲23、甲25、甲27~甲31に記載された発明である。
キ 本件訂正前の請求項8に係る発明は、甲12、甲16、甲18、甲21、甲23、甲25に記載された発明である。
ク 本件訂正前の請求項9に係る発明は、甲6~甲13、甲15、甲16、甲18、甲21~甲23、甲25、甲27~甲29、甲31に記載された発明である。
ケ 本件訂正前の請求項10に係る発明は、甲6~甲13、甲15、甲16、甲18、甲21、甲23、甲26、甲29、甲31に記載された発明である。
コ 本件訂正前の請求項11に係る発明は、甲15に記載された発明である。
サ 本件訂正前の請求項12に係る発明は、甲6、甲12、甲19に記載された発明である。
シ 本件訂正前の請求項14に係る発明は、甲6に記載された発明である。
ス 本件訂正前の請求項18、19に係る発明は、甲13に記載された発明である。
セ 本件訂正前の請求項20に係る発明は、甲7、甲10、甲30に記載された発明である。
ソ 本件訂正前の請求項23~26に係る発明は、甲18、甲30に記載された発明である。
(5)無効理由5(29条2項)
ア 本件訂正前の請求項5、6、8、11、13、15~17、22に係る発明は、本件優先日前にデュール社が公然実施したEcoBell2という回転噴霧器に係る発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲8、甲11又は甲26に記載された発明と、甲7、甲15、甲18、甲20、甲27に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 本件訂正前の請求項5に係る発明は、甲18又は甲29に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 本件訂正前の請求項6に係る発明は、甲7~甲12、甲15、甲16、甲23、甲25、甲27又は甲31に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ 本件訂正前の請求項8に係る発明は、甲12、甲16、甲18、甲21、甲23又は甲25に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
カ 本件訂正前の請求項11に係る発明は、甲15に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
キ 本件訂正前の請求項12に係る発明は、甲14に記載された発明と、甲7~甲11、甲13、甲15、甲16、甲18、甲21~甲23、甲25~甲31に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ク 本件訂正前の請求項13に係る発明は、甲6、甲12、甲19に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ケ 本件訂正前の請求項14に係る発明は、甲12、甲14又は甲15に記載された発明と、甲19、甲21、甲22、甲25、甲29に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
コ 本件訂正前の請求項15に係る発明は、甲6に記載された発明に基いて、或いは、甲14に記載された発明と、甲21、甲25に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
サ 本件訂正前の請求項18、19に係る発明は、甲13に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
シ 本件訂正前の請求項20に係る発明は、甲6、甲11又は甲13に記載された発明と、甲15、甲18、甲20、甲25、甲27、甲31に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ス 本件訂正前の請求項21に係る発明は、甲6、甲11又は甲13に記載された発明と、甲15、甲18、甲20、甲25、甲27、甲30、甲31に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
セ 本件訂正前の請求項22に係る発明は、甲7又は甲10に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ソ 本件訂正前の請求項23に係る発明は、甲12、甲21、甲22又は甲25に記載された発明と、甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
タ 本件訂正前の請求項24に係る発明は、甲12、甲21又は甲22に記載された発明と、甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 令和4年10月13日の上申書における請求人の主張の概要
請求人は、後記4(2)の甲32を提出するとともに、概略、次の無効理由を主張した。
無効理由6(29条の2)
本件発明1~8、10、13~26は、甲32に記載された発明である。
3 審理事項通知で整理した無効理由
令和5年12月14日付けの審理事項通知書において、本件発明1(訂正後の請求項1)は、実質的に、訂正前の請求項1を引用する請求項9をさらに引用する請求項12で特定されたものとなったから、請求人の主張する無効理由を、訂正前の請求項12を対象とするものについて整理して通知したところ、請求人は、合議体の無効理由の整理について意見がないと回答した上で、後記4(3)の甲33及び甲34、並びに後記4(4)の甲35~甲37を提出するとともに、令和6年1月24日の手続補正書により補正された口頭審理陳述要領書、同年4月18日の上申書において、概略、次の無効理由を主張した。
なお、後記第7で述べるとおり、後記(6)の「無効理由6(29条の2)」の追加は許可しないため、下記無効理由(1)~(5)を本件無効審判事件の口頭審理時の審理範囲とした。
また、審判請求書とともに提出された参考資料1を甲3-1に、参考資料2を甲1-5に、参考資料3を甲6-1に、それぞれ資料名を変更した。
(1)無効理由1(29条1項2号)
本件発明1~8、10、13~26は、本件優先日前にドイツ国内で販売された、デュール社のEcoBell2 HDという回転噴霧器に係る発明であるから、公然実施された発明である。
(2)無効理由2(29条1項1号)
本件発明1~8、10、13~26は、本件優先日前に、デュール社が前記(1)のEcoBell2 HDという回転噴霧器をルノー社の社員に公開したことによって、公然知られた発明である。
(3)無効理由3(29条1項1号)
本件発明1~8、10、13~26は、本件優先日前にデュール社が前記(1)のEcoBell2 HDという回転噴霧器をプジョー・シトロエン社の社員に公開したことによって、公然知られた発明である。
(4)無効理由4(29条1項3号)
本件発明1~8、10、13~26は、本件優先日前に公知となった甲6、甲12又は甲19に記載された発明である。
(5)無効理由5(29条2項)
本件発明1~8、10、13~26は、本件優先日前に公知となった甲14に記載された発明と、甲7~甲11、甲13、甲15、甲16、甲18、甲21~甲23、又は甲25~甲31に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)無効理由6(29条の2)
本件発明1~8、10、13~26は、本件優先日前に優先日があり、本件優先日後に公知となった甲32に記載された発明である。
4 証拠方法
(1)審判請求書とともに提出されたもの
甲1:ダイムラー社社員トルステン・シュレーダー氏の宣誓供述書、トルステン・シュレーダー作成、2018年2月14日
甲1-1:ダイムラー社とデュール社の事前会議の議事録、トルステン・シュレーダー作成、2007年8月27日
甲1-2:ダイムラー社シュレーダー氏からデュール社シューマッハ氏へのEメール、トルステン・シュレーダー作成、2007年10月29日
甲1-3:ダイムラー社でのプレゼン資料、デュール社従業員作成、2007年10月23日(著作権表示は同年同月26日)
甲1-4:エアリングの設計図、デュール社の従業員作成、2007年3月26日
甲1-5:ベル・ディスク ステアリング・エアリング・システムECOBELL2/3/4、デュール社従業員作成、2021年3月25日
甲2:マティアス・シュルツ氏の宣誓供述書、マティアス・シュルツ作成、2018年2月19日
甲2-1:デュール社からダイムラー社への納品説明書、マティアス・シュルツ作成、2007年7月17日
甲2-2:ダイムラー社の注文書、ダイムラー社従業員作成、2007年8月15日
甲2-3:ダイムラー社の注文書の変更書、ダイムラー社従業員作成、2007年8月30日
甲2-4:デュール社からダイムラー社への受領書、デュール社従業員作成、2007年10月24日
甲2-5:請求書、デュール社の従業員作成、2007年10月26日
甲3:製品説明会資料、デュール社従業員作成、2007年7月24日
甲3-1:甲3の資料を用いて2007年9月21日~28日に開催された製品説明会の参加者名簿、デュール社従業員作成、2007年9月28日
甲4:製品説明会出展製品のエアリングの写真、デュール社従業員作成、2007年7月24日
甲5:ウド・ボルフ氏の宣誓供述書、ウド・ボルフ氏作成、2019年4月17日
甲5-1:ルノー社に対するプレゼン資料、デュール社従業員作成、2007年5月15日
甲5-2:ルノー社に対する技術試験の報告書、デュール社従業員作成、2008年1月31日
甲5-3:プジョー社に対する技術試験の報告書、デュール社従業員作成、2007年12月20日
甲6:特開平8-84941号公報
甲6-1:特開平3-101858号公報
甲7:特開平8-99052号公報
甲8:国際公開第2008/095657号
甲9:米国特許第5685495号明細書
甲10:欧州特許出願公開第1331037号明細書
甲11:特開平7-24367号公報
甲12:独国特許出願公開第102006057596号明細書
甲13:特開平8-33859号公報
甲14:特開平9-85134号公報
甲15:国際公開第2008/061584号
甲16:国際公開第2009/012025号
甲17:特開平8-131902号公報
甲18:国際公開第2005/115636号
甲19:特開平9-94488号公報
甲20:特開2008-93521号公報
甲21:米国特許出願公開第2007/0034715号明細書
甲22:特開2003-225592号公報
甲23:国際公開第2009/112932号
甲24:欧州特許出願公開第0801992号明細書
甲25:特開2002-224611号公報
甲26:独国特許第3912700号明細書
甲27:特開平10-216567号公報
甲28:特開平5-131159号公報
甲29:特開平8-323249号公報
甲30:欧州特許出願公開第0216173号明細書
甲31:米国特許出願公開第2007/0063068号明細書
(2)令和4年10月13日の上申書ともに提出されたもの
甲32:特表2011-524801号公報
(3)口頭審理陳述要領書とともに提出されたもの
甲33:甲3の4頁に説明を追加した図、請求人作成、2023年12月22日
甲34:欧州特許庁へ提出した異議申立の上訴書類、欧州の特許事務所の弁理士であるフォン・ベゾルド氏作成、2018年5月17日
(4)令和6年4月18日の上申書ともに提出されたもの
甲35:中国特許庁へ提出した無効審判の証拠である、デュール社上級副社長のミヒャエル・ライトル氏の宣誓供述書、2021年10月13日
甲36:デュール社の特許部門に勤務するマーカス・フライ氏の宣誓供述書、マーカス・フライ氏作成、2024年4月11日
甲37:甲1-4の製品化後のエアリングの設計図、デュール社の従業員作成、2012年12月6日
第6 被請求人の主張及び証拠方法
1 被請求人の主張の概要
被請求人の主張する答弁の理由(無効理由に対する反論)は、審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書、令和6年5月22日の上申書の記載からみて、概略、次のとおり整理することができる。
(1)無効理由1~3(29条1項1号、29条1項2号)
ア 甲1-4、甲4、甲37に開示されたエアリングの構造は、EcoBell2という回転噴霧器のエアリングの構造と同一のものであるとは認められない。
イ 甲1及び甲2の宣誓供述書には、甲3や甲4についての説明がないため、甲1及び甲2は、甲3や甲4の構造と、EcoBell2という回転噴霧器の構造とが同一であることを立証するものではない。
ウ 甲3及び甲4は、どのように配布や発表されたかが不明であるから、公然実施の証拠としての適格性を欠いている。
エ 甲3に示されたEcoBell2のベルカップ及びエアリングと、甲4の写真に示されたベルカップ及びエアリングとが同一の構造であるか否かは明確でなく、また、甲4の写真のエアリングのLLlから延びる針金とLL2から延びる針金とが交差していることまでは判別できないから、甲3又は甲4に本件発明1のF1(交差領域(R46)が、前記端部(12)の上流に存在し)に相当する事項が開示されているとはいえない。(答弁書11頁22行~14頁15行、陳述要領書4頁24行~8頁7行)
(2)無効理由2、3(29条1項1号)
ア 甲5の宣誓供述書には、EcoBell2 HDの記載があるだけで、「OpenHouse 2007」と称する説明会並びに甲3及び甲4についての言及がない。そのため、デュール社の従業員とルノー社の従業員とが行った技術試験におけるEcobell2 HDの構成が甲3に示されているEcoBell2の構成と同一であるかは不明である。
同様に、デュール社がプジョー社の試験場において公知の状態で行った技術試験におけるEcobell2 HDの構成が、甲3に示されているEcoBell2の構成と同一であるかも不明である。
イ 甲5の項目7には、「EcoBell2HD」の回転式アトマイザーの技術的な設計は、当時から変わっていない、との趣旨の記載があるが、例えば甲1-4には「M35020081に置き換えた図面」などと記載されており、少なくとも一回の改変が行われていることが把握できるから、「EcoBell2HD」の回転式アトマイザーの概念が変更されていないとの主張は信用できない。(答弁書14頁最終行~16頁最終行、陳述要領書8頁20行~14頁9行)
(3)無効理由4(29条1項3号)
ア 甲6には、カップの外周縁部よりも上流側で干渉が発生すること(本件発明1のF1の特定事項)までは記載されていない。また、甲6には、同一の吹出口56を形成することが記載されているだけであり、本件発明1の構成D1-1、D1-2、D1-3、F1、G1に相当する事項が開示されていない。甲6-1についても同様に、本件発明1の構成D1-1、D1-2、D1-3、F1、G1に相当する事項が開示されていない。
イ 甲7の第1の噴出孔14Aから噴射されたシェーピングエアと第2の噴出孔15Aから噴射されて外周面11Aに衝突したシェーピングエアとは、塗料放出端縁11C付近で合流するのであり、塗料放出端縁11Cの上流で合流することまでは記載されていない。よって、甲7には、本件発明1の構成D1-1、D1-2、D1-3、E1、F1、G1に相当する事項が開示されていない。
ウ 甲8、甲9、甲12、甲18には、本件発明1の構成D1-1、D1-2、D1-3、E1、F1、G1に相当する事項が開示されていない。
エ 甲10、甲30には、本件発明1の構成D1-2、D1-3、E1、F1、G1に相当する事項が開示されていない。
オ 甲11、甲21、甲22、甲27、甲31には、本件発明1の構成D1-3、E1、F1、G1に相当する事項が開示されていない。
カ 甲13、甲25、甲29には、本件発明1の構成D1-3、F1、G1に相当する事項が開示されていない。
キ 甲14には、少なくとも、本件発明1の構成E1、F1に相当する事項が開示されていない。
ク 甲15、甲20には、少なくとも、本件発明1の構成F1、G1に相当する事項が開示されていない。
ケ 甲16、甲23は、本件特許に係る出願の優先日より後に出願され、優先日も後であるから、公知文献としての引用適格を満たしていない。
コ 甲17、甲19、甲24には、少なくとも、本件発明1の構成F1に相当する事項が開示されていない。
サ 甲26、甲28には、本件発明1の構成D1-1、D1-3、E1、F1、G1に相当する事項が開示されていない。(答弁書17頁12行~45頁17行)
(4)無効理由5(29条2項)
審判請求人は、審判請求書において容易に想到できることについての具体的な主張を行っていない。
また、本件発明1は、交差領域(R46)が、前記端部(12)の上流に存在することを規定する構成F1によって、混合噴流が端部で重なることが可能となり、空気速度の比較的良好な均一さを確保することができ(段落【0056】参照)、塗装される物体上に付着されない一般に「スプレーしぶき」として知られている被覆製品の量を減少させることができるという作用効果を奏するものであり(段落【0058】参照)、この点はいずれの甲号証にも開示も示唆もされていない。(答弁書46頁1行~12行)
(5)無効理由6(29条の2)
答弁書において、被請求人は、無効理由6の追加が本件無効審判請求における理由の要旨を変更するものであると認識しつつも甲第32号証に記載された事項に関する反論を行った。しかしながら、当該反論は、合議体からの令和4年10月18日起案の上申書副本の送付通知において、「なお、本上申書に対する答弁も、令和4年10月14日に発送した答弁指令(特許法第134条第1項)に対して提出する答弁書に併せて記載してください。」と記載されていたためであり、「被請求人の同意」を示したものではない。
したがって、令和4年10月13日付けの上申書において請求人により追加された無効理由6は本件無効審判請求における理由の要旨を変更するものであり、当審において審理されるべきではない。(陳述要領書4頁)
第7 補正の許否の決定
前記第5の2の「無効理由6(29条の2)」について、令和6年3月6日の第1回口頭審理の調書にも記載したとおり、請求人により令和4年10月13日の上申書に記載された甲32を証拠とする特許法第29条の2に規定される拡大先願違反の無効理由の追加は、特許法第131条の2第2項各号のいずれかに該当する事由があるとは認められないから、許可しないと当審は決定した。また、甲32は証拠として採用しないこととした。
第8 無効理由に対する当審の判断
1 前記第5の3及び前記第7で検討した結果を踏まえ、無効理由1~5について検討を行う。
2 証拠の記載
(画像データが多いので、提出された甲号証のうち、審決で用いたもののみ摘記した。外国語については、請求人の提出した抄訳を付した。)
(1)甲1には、次の記載がある。
「
[図:0001421676000001.jpg]
[図:0001421676000002.jpg]
」
(抄訳)「
[図:0001421676000003.jpg]
[図:0001421676000004.jpg]
[図:0001421676000005.jpg]
」
(2)甲1-3には、次の記載がある。
「
[図:0001421676000006.jpg]
」
「
[図:0001421676000007.jpg]
[図:0001421676000008.jpg]
[図:0001421676000009.jpg]
」
(抄訳)「
[図:0001421676000010.jpg]
」
「
[図:0001421676000011.jpg]
[図:0001421676000012.jpg]
[図:0001421676000013.jpg]
」
(3)甲1-4には、次の記載がある。
「
[図:0001421676000014.jpg]
」
(抄訳)「
[図:0001421676000015.jpg]
」
(4)甲3には、次の記載がある。
「
[図:0001421676000016.jpg]
[図:0001421676000017.jpg]
」
「
[図:0001421676000018.jpg]
」
「
[図:0001421676000019.jpg]
[図:0001421676000020.jpg]
」
(抄訳)「
[図:0001421676000021.jpg]
[図:0001421676000022.jpg]
」
「
[図:0001421676000023.jpg]
」
「
[図:0001421676000024.jpg]
[図:0001421676000025.jpg]
」
(5)甲4には、次の記載がある。
「
[図:0001421676000026.jpg]
[図:0001421676000027.jpg]
」
(抄訳)「
[図:0001421676000028.jpg]
[図:0001421676000029.jpg]
」
(6)甲5には、次の記載がある。
「
[図:0001421676000030.jpg]
[図:0001421676000031.jpg]
」
(抄訳)「
[図:0001421676000032.jpg]
[図:0001421676000033.jpg]
[図:0001421676000034.jpg]
」
(7)甲5-1には、次の記載がある。
「
[図:0001421676000035.jpg]
」
「
[図:0001421676000036.jpg]
[図:0001421676000037.jpg]
」
「
[図:0001421676000038.jpg]
[図:0001421676000039.jpg]
」
(仮訳)「
[図:0001421676000040.jpg]
」
「
[図:0001421676000041.jpg]
[図:0001421676000042.jpg]
」
「
[図:0001421676000043.jpg]
[図:0001421676000044.jpg]
」
(8)甲5-2には、次の記載がある。
「
[図:0001421676000045.jpg]
」
(抄訳)「
[図:0001421676000046.jpg]
」
(9)甲5-3には、次の記載がある。
「
[図:0001421676000047.jpg]
[図:0001421676000048.jpg]
」
(抄訳)「
[図:0001421676000049.jpg]
[図:0001421676000050.jpg]
」
(10)甲6には、次の記載がある。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車体等の塗装に用いられる回転霧化静電塗装方法および装置に関するものである。」
「【0007】また、図26~29に示すものは、特開平3-101858号公報において開示されたものであり、本体51内にモータ(図示していない)によって駆動される回転軸52を配設し、本体51の外まで延ばした回転軸52の先端にカップ53を固定し、本体51の先端に固定したヘッド部材54に、カップ53へ孔53aから塗料を供給するための塗料供給管55とカップ53の外周縁部の背面に向けてシェーピングエアを供給するための吹出口56とを設けている。」
「【0011】さらに、カップ53の外周縁端に向かうシェーピングエアは、多数の円形の吹出口56から吹き出されているが、図6に示すように、互いに隣接する円形の吹出口56から吹き出されたシェーピングエアが拡散してカップの外周縁部で相互に干渉することにより部分的にシェーピングエアの流速にむらが発生してしまうため、塗料の均一な微粒化がなされないといった問題がある。」
「
[図:0001421676000051.jpg]
」
「
[図:0001421676000052.jpg]
」
「
[図:0001421676000053.jpg]
」
(11)甲8には、次の記載がある。
「
[図:0001421676000054.jpg]
[図:0001421676000055.jpg]
」
(12)甲12には、次の記載がある。翻訳は、特表2010-511500号公報を参照した。
「
[図:0001421676000056.jpg]
[図:0001421676000057.jpg]
」
(翻訳)「【請求項1】
部材、特に、自動車本体の部品をコーティングするためのロータリーアトマイザー(1)に用いられるシェーピングエアリング(6,16,22)であって、
a)動作状態においては、前記ロータリーアトマイザー(1)のベルカップ(5)に面する端面、及び、
b)前記ベルカップ(5)により放出されるスプレイジェットを形成するためのシェーピングエアストリームを放出するための、少なくとも1のシェーピングエアノズル(7,20、21,27、28)、を有し、
c)前記シェーピングエアリング(6,16,22)の端面において、環状に囲むよう配された、環状の空洞(12,17,23)、
を有する、ことを特徴とするシェーピングエアリング。」
「
[図:0001421676000058.jpg]
」
(翻訳)「【0047】
図1における断面図は、アトマイザーハウジング3内に配置され、中空のベルカップシャフト4を駆動するエアタービン2、ベルカップシャフト4の端に搭載されるベルカップ5を有する、大部分は通常のロータリーアトマイザー1を示す。
【0048】
シェーピングエアリング6は、加えて、ロータリーアトマイザー1の端面に適合しており、そのシェーピングエアリングは、多数のシェーピングエアノズル7を有する、シェーピングエアノズルのリングを含み、シェーピンエアノズル7は、ベルカップシャフト4と同軸上に配向されており、ベルカップ5によって放出されるスプレイジェットを形成すべく、ベルカップシャフト4と同軸上で前方方向に、シェーピングエアストリームを放出している。
【0049】
ベルカップ5は、大部分は通常の構成であり、外側に円錐状の円周面8を、内側に同様にして円錐状のフロー面9を有する。更に、そらせ板10は、ベルカップ5の環状に囲まれているスプレイリリース端11において、塗装成分が最終的に放出されるように、空洞のベルカップシャフト4から軸方向に塗装成分がベルカップ5に侵入するのを食い止めるべく、フロー面9上で半径方向外側に向かって、ベルカップ5の内側の前面に搭載されている。
【0050】
この具体的態様において、シェーピングエアノズル7は、シェーピングエアストリームのセンターラインが、ベルカップ5のスプレイリリース端11を通り過ぎて、その外側へ半径方向に進むよう、シェーピングエアリング6内に配向されていて、シェーピングエアストリームのセンターラインとスプレイリリース端11との間の半径方向の距離は、およそ3mmである。」
「
[図:0001421676000059.jpg]
」
(翻訳)「【0054】
図2は、本発明におけるロータリーアトマイザー1の、別の具体的態様の断面図を示し、主に、図1によるロータリーアトマイザー1に対応しており、重複を避けるため、上記開示でなされた参照については、詳細を整合するために同じ参照番号が用いられている。
【0055】
本具体的態様における特別な特徴が、シェーピングエアリング6における、シェーピングエアノズル7の配置にある。例えば、シェーピングエアノズル7は、ここでは、シェーピングエアジェット7のセンターラインが、ロータリーアトマイザー5の外周面8上の外側に、2mmの半径方向のオーバーラップで当たるように配置されている。シェーピングエアジェットは、よってこの場合、ベルカップ5の円周面8の外部に、直接的に向けられる。」
「
[図:0001421676000060.jpg]
」
(翻訳)「【0061】
図4は、本発明によるシェーピングエアリング16の更なる具体的態様に関する前面図である。」
「
[図:0001421676000061.jpg]
」
(翻訳)「【0064】
環状の空洞17の外部には、シェーピングエアノズルの2つのリングが配されており、双方同じ直径を有している。これにより、どのノズル対19も、シェーピングエアノズルの一方のリングからの1のシェーピングエアノズル20と、シェーピングエアノズルの他方のリングからの1のシェーピングエアノズル21とを含み、円周周りに配されていて、個々のノズル対19における、シェーピングエアノズル20、21が、間隔α離れた特定の角度で配置されている。シェーピングエアストリームは、シェーピングエアノズルの2つのリングの各々を通して放出され、それによって、スプレイジェットの柔軟な形成が可能となる。」
「
[図:0001421676000062.jpg]
」
(翻訳)「【0068】
2つのシェーピングエアノズル20、21からの、2つのシェーピングエアストリームの放出の際、2つのシェーピングエアストリームは、統合して、結果として特定の方向及び特定の開口角度を持ったシェーピングエアストリームを生成する。」
「
[図:0001421676000063.jpg]
[図:0001421676000064.jpg]
」
「
[図:0001421676000065.jpg]
」
(13)甲14には、次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、自動車製造工程における車体塗装に用いられる回転霧化静電塗装方法に関するものである。」
「【0019】図1に示す回転霧化静電塗装装置1は、有底円筒形の樹脂ハウジング2内にエアモータ3が収容してあり、エアモータ3の中空状出力軸4の先端にカップ状の霧化頭5が固定してある。
【0020】樹脂ハウジング2は、その先端に、環状の脈動吸収用チャンバ6を形成するヘッド部材7が設けてある。また、樹脂ハウジング2の内部には、その軸線方向にわたってエア流路8が形成してある。エア流路8は、一端部が脈動吸収用チャンバ6内に連通しており、他端部には、エア供給源9から導いたエアホース10が接続してある。
【0021】霧化頭5は、図2(a)(b)に示すように、中央部分に多数の塗料吐出孔11が円形に配列して設けてあると共に、出力軸4の先端部との間に塗料供給室12を形成している。また、出力軸4の中空部13内には、塗料供給源14から導かれた塗料の供給管15が非回転状態で収容してあり、この供給管15の先端部は塗料供給室12内で開口している。
【0022】樹脂ハウジング2の先端部に設けたヘッド部材7は、霧化頭5の後方側において同霧化頭5と同心円状に配置されており、図2(a)に示す如く霧化頭5を正面から見た状態において、霧化頭周縁部5bの全周に沿う位置に複数のエアノズルを備えている。
【0023】ここで、エアノズルには、図3(a)(b)に示すように、霧化頭5の回転軸Cに対してねじれ方向となる噴射角度θ1で第1シェーピングエアA1を噴射する第1エアノズルN1と、第1エアノズルN1の第1シェーピングエアA1よりも大きい噴射角度θ2で第2シェーピングエアA2を噴射する第2エアノズルN2とがある。
【0024】そして、この実施例では、第1および第2エアノズルN1,N2の直径を同一にすると共に、2つの第1エアノズルN1,N1と1つの第2エアノズルN2を等間隔で並べてこれを1組とし、複数の組を同一円周上に所定の間隔で並べた構成になっている。なお、1組におけるエアノズルの配置は、2つの第1エアノズルN1,N1を隣合わせ、その片側に第2エアノズルN2を配置している。」
「【0027】上記の回転霧化静電塗装装置1は、アースされた被塗装物Wに対向して負の高電圧が与えられており、この回転霧化静電塗装装置1において、塗料供給管15から塗料供給室12内に供給された塗料は、霧化頭5の塗料吐出孔11から出て霧化頭内周面5aに伝わり、霧化頭5の高速回転による遠心力で外周側に流れ、帯電した塗料粒子となって霧化頭周縁部5bから放出される。その一方で、各第1エアノズルN1から噴射角度θ1で噴射される第1シェーピングエアA1と、各第2エアノズルN2から噴射角度θ2で噴射される第2シェーピングエアA2は、霧化頭周縁部5bを通過している。
【0028】これにより、霧化頭周縁部5bから放出された塗料粒子は、霧化頭5の遠心力によってその半径方向に飛び出し、次に、第1および第2シェーピングエアA1,A2により、回転中心Cに対する各噴射角度θ1,θ2で被塗装物Wの方向に搬送され(点線M1,M2で示す)、被塗装物Wに吸引付着することとなる。」
「【0044】そして、霧化頭5の回転軸Cに対してねじれ方向となる噴射角度θ1で第1エアノズルN1から噴射される第1シェーピングエアAのエア中心と、第1シェーピングエアA1の噴射角度θ1よりも大きい噴射角度θ2で第2エアノズルN2から噴射される第2シェーピングエアA2のエア中心が霧化頭周縁部5bで最接近する状態、つまり側方から見て交差する状態にしてある。このとき、第1シェーピングエアA1のエア中心は、第2シェーピングエアA2のエア中心よりも内側に位置している。
【0045】このとき、第1シェーピングエアA1のエア中心と第2シェーピングエアA2のエア中心との接近距離Lは、なるべく小さいことが望ましいが、接近距離Lがゼロに近づくと両シェーピングエアA1,A2同士が干渉し、エアの流れが乱れるので、その乱れが生じる手前で接近距離Lを保つように各エアノズルN1,N2の位置を設定する。」
「
[図:0001421676000066.jpg]
」
(14)甲15には、次の記載がある。
「
[図:0001421676000067.jpg]
[図:0001421676000068.jpg]
[図:0001421676000069.jpg]
[図:0001421676000070.jpg]
」
(15)甲19には、次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば高速回転する回転軸に取付けられたベルから塗料を遠心力で飛ばして同塗料を回転霧化させると共に、マイナス電荷を帯びた塗料粒子とプラスに帯電させた自動車のボディ等の被塗物との間に作用する静電吸引力を利用して塗装を行なうようにしたベル型塗装装置に関するものである。」
「【0055】図1は、本実施の形態1におけるベル型塗装装置の全体的な構成を示している。このベル型塗装装置1は、装置本体としての本体ハウジング2内にエアモータ3を内蔵し、このエアモータ3の回転軸4の先端(図面上では下端)4aに、ディスク状のベルカップ5を有するベル6を螺合固定している。
【0056】ベル6は、内部が中空のテーパコーン状に形成されており、上記ベルカップ5との境界部および中心部において仮想同一円周上に配列されるように多数の塗料吐出孔7b,7b・・・・、7a,7a・・・・を等間隔に穿設して構成されている。
【0057】また一方、上記エアモータ3の回転軸4の内部中心軸部分には、所定内径の塗料フィードライン8が同軸方向に延びて形成されており、該塗料フィードライン8の先端部に設けられた塗料ノズル9の先端部9aを上述のベルカップ5の中央部位置にある円錐状の凸部5aに対し、所定のギャップを保った離間状態で対向させられている。そして、この塗料ノズル9の先端9aから吐出された塗料は、上記塗料吐出孔7a,7a・・・、7b,7b・・・・を通って上記ベル6の下面側に流出するとともに、該ベル6の高速回転による遠心力により、図1に鎖線の矢印で示すように、該ベル6の中心部寄りからその外周寄りへ飛散せしめられ、効率良く霧化される。
【0058】一方、上記本体ハウジング2の先端部側内周面にはリングブロック10を螺合固定し、このリングブロック10の内周部には、さらに図4に示すような断面ハット形の霧化エアリング12を螺合固定している。
【0059】霧化エアリング12の下縁部12aには、図2、図3及び図5~図7に示すように、上記ベル6外周の塗料の飛散部に対して霧化エアa,b,cを噴出する次述の第1~第3の霧化エア噴出孔13,13・・・、14,14・・・、15,15・・・(特許請求の範囲中の「エア噴出部」に該当する)が各々形成されている。
【0060】上記第1~第3の霧化エア噴出孔13,13・・・、14,14・・・、15,15・・・は、ベースコートの色出しを支配する前記4つのパラメータとしての塗料粒子の粒径、塗料粒子の衝突速度、塗着ノンブラ(いわゆる塗着NV)、エア衝撃力を調整するとともに、併せて塗料噴出パターンをも調整するためのものであり、上述のベル6の軸心に対して同心円状で、且つ上述のように半径を異にする第1~第3の3組の仮想円周R1,R2,R3上に、上記ベル6の円周方向にそれぞれ異なる傾斜角θ1~θ3(θ1=30°、θ2=15°、θ3=30°をもって等間隔に穿設されている。」
「【0067】しかも、これらの場合において、上記構成では、上記第1~第3の霧化エア噴出孔13,13・・・、14,14・・・、15,15・・・が半径方向に位置を異にし且つベル円周方向に相互に異なる傾斜角θ1~θ3をもって設けられていることから、例えば図8に示すように、それぞれの噴出エアa,b,cは相互に上記ベル6の円周方向に交叉することになる。この結果、少量のエア量でありながら良好な乱流(撹拌流)が形成されて、内外の塗料粒径分布の均一化(いわゆる高分散性)が図られながら、塗面近くでの低速度化により、塗料Pが静電吸引力を受けて被塗物にぶつかる時の衝撃力が効果的に弱められて、被塗物からの塗料の跳ね返りが防止された安定状態下において、上述のメタリック系塗料Pのアルミフレークの良好な配列状態(被塗物の面に対して水平に配列する状態)を得るベースコートが行なわれるようになる。」
「
[図:0001421676000071.jpg]
[図:0001421676000072.jpg]
」
「
[図:0001421676000073.jpg]
」
(16)甲33には次の記載がある。
「
[図:0001421676000074.jpg]
」
3 無効理由1~3について
(1)無効理由1
ア 本件発明1
本件発明1が、本件優先日前にドイツ国内で販売されたデュール社のEcoBell2 HDという回転噴霧器であったか否かについて検討する。
甲号証に記載されたEcoBell2 HDの構成について検討すると、2007年9月に開催された「Open House 2007」で発表された資料とされる甲3には、デュール社の回転噴霧器であるEcoBell2 HD(本件発明1の構成A1の「被覆製品のための回転式噴霧装置(P)」に対応。)の概略が記載されており、甲3の4頁の図と、令和5年12月22日の陳述要領書に添付された甲33の図を合わせ読めば、EcoBell2 HDが、端部を有するベルカップ(本件発明1の構成B1の「噴霧部材(1)」に対応。)と、ベルカップを駆動するエアモータ(本件発明1の構成C1の「噴霧部材(1)を回転駆動させるための手段」に対応。)と、エア操作リング(本件発明1の構成D1-3の「固定式本体(2)」に対応。)とを備えていることを看てとれる。
また、甲3の8頁の写真と、甲1-3の7頁の写真及び甲1-3に添付されたエア操作リングの設計図とされる甲1-4の図を合わせ読めば、当該エア操作リングには、LL1孔とLL2孔(本件発明1の構成D1-1の「第1のオリフィス(4)」及び同構成D1-2の「第2のオリフィス(6)」に対応。)が、ベルカップの回転軸線を中心とする同心円上に配置されたこと(本件発明1の構成D1-3の「前記第1の輪郭(C4)と前記第2の輪郭(C6)とが、前記回転軸線(X1)上に中心が配置された円(C)において一致している」に対応。)を看てとれる。
そうすると、EcoBell2 HDは、概略本件発明1の構成A1、B1、C1、D1-1、D1-2及びD1-3に相当する構成を備えているといえる。
これに対して、請求人が、EcoBell2 HDが本件発明1の構成E1、F1及びG1に相当する構成要件を備える証拠としている甲4は、審判請求書46頁下から5行~最終行において、「Open House 2007」で展示された「EcoBell2 HD」のベルカップとエア操作リングを組み立てた状態(以下「組立体」という。)を示す資料とされ、当該写真には、エア操作リングのLL1孔に挿入した針金と、当該LL1孔から孔2つ分を隔てたLL2孔に挿入した針金が、ベルカップの端部の上流で交差すること、及びLL1孔に挿入した針金が、ベルカップの端部付近に延在することが表示されている。
しかしながら、甲4の組立体のLL1孔に挿入された針金が、エア操作リングの面に対して鉛直方向に挿入されているか否かは不明であるから、EcoBell2 HDが本件発明1の構成G1(前記端部(12)の直径(D12)と前記円(C)の直径(D)との比が、0.65~1)に相当する構成を備えているとはいえない。また、甲4の組立体の針金の延在方向が、噴流の方向と一致している確証はないから、EcoBell2 HDが本件発明1の構成E1(互いに関連する少なくとも1つの前記第1の空気噴流(J4)と少なくとも1つの前記第2の空気噴流(J6)とが交差することによって、混合噴流(J46)それぞれが形成される)及びF1(交差領域(R46)が、前記端部(12)の上流に存在)に相当する構成を備えているともいえない。
そうすると、甲4の存在を持って、EcoBell2 HDが本件発明1の構成E1~G1に相当する構成を備えていたとはいえない。
また、仮に甲4の写真から、本件発明1の構成E1~G1に相当する構成を認定し得たとしても、甲4のエア操作リングにはくぼみが存在するのに対し、甲3や甲1-4に示されたエア操作リングにはくぼみが存在しないことから、甲4のエア操作リングが、甲3のEcoBell2 HDに装着されたエア操作リングであるとはいえないし、他の甲号証にも、EcoBell2 HDがくぼみのついたエア操作リングを装着していることを確認できる記載はないから、列挙された甲号証に基いて、本件発明1が、EcoBell2 HDという回転噴霧器であったとはいえない。
そうすると、仮に、甲1~甲2-5によりEcoBell2が本件出願の優先日前にドイツ国内で販売されていたことが証明されたとしても、本件発明1がEcoBell2 HDという回転噴霧器と同じであるとはいえないから、無効理由1には理由がない。
イ 本件発明2~8、10、13~26について
本件発明2~8、10、13~26は、本件発明1を直接又は間接的に引用することで、本件発明1の構成をすべて備えたものであるから、前記アで検討した理由と同じ理由により、本件発明2~8、10、13~26は、EcoBell2 HDという回転噴霧器と同じであるとはいえない。
(2)無効理由2、3
ア 本件発明1
ルノー社の社員に公開したことを証明する甲5-2の上から三段目左欄や、プジョー・シトロエン社の社員に公開したことを証明する甲5-3の2頁最下段には、守秘義務を課す趣旨の表示がされていることから、これらの公開は、守秘義務を課さず公開されたものとはいえない。
そうすると、そもそも、EcoBell2という回転噴霧器が本件優先日前に公然知られていたとはいえず、本件発明1は、本件優先日前に公然知られた発明ではないから、無効理由2及び3には理由がない。
仮に、甲5~甲5-2により、EcoBell2 HDが本件出願の優先日前にドイツ国内においてデュール社がルノー社の社員に公開したことが証明されたとしても、あるいは、甲5及び甲5-3により、EcoBell2 HDが本件出願の優先日前にフランス国内においてデュール社がプジョー・シトロエン社の社員に公開したことが証明されたとしても、前記(1)で検討したとおり、本件発明1がEcoBell2 HDという回転噴霧器と同じであるとはいえないから、無効理由2及び無効理由3には理由がない。
イ 本件発明2~8、10、13~26について
本件発明2~8、10、13~26は、本件発明1を直接又は間接的に引用することで、本件発明1の構成をすべて備えたものであるから、前記アで検討した理由と同じ理由により、本件発明2~8、10、13~26は、EcoBell2 HDという回転噴霧器と同じであるとはいえない。
(3)請求人の主張
ア 請求人は、陳述要領書7頁の(4)カにおいて、本件発明1の構成F1に相当する構成について、「甲3の9頁の下の写真には、LL1から噴射されたエアと、LL2から噴射されたエアとが混合され、混合後の噴流の拡散角度はLL2の拡散角度より小さくなっており、ベルカップの上流側で交差していることは明らかである。」と主張する。
しかしながら、混合後の噴流の拡散角度がLL2の拡散角度より小さくなる現象は、例えば、LL1からのエアが、ベルカップのエッジ端でLL2からのエアと合流することでも生じ得るから、この現象は、LL1からのエアとLL2からのエアがベルカップの上流側で交差していることを証明する根拠とはならない。
イ また、請求人は、令和6年4月18日の上申書の3頁の「4-3.”EcoBell2 HD”の外面のくぼみについて」において、概略「このくぼみは、回転噴霧器の組立時及び分解時のためのくぼみであり、当初形成していなかったものの、「EcoBell2 HD」の最終バージョンに設けられました。・・・甲37は、甲1-4のエア操作リングの製品化後の図面であり、・・・両図面の違いは、エア操作アリングの外側のくぼみの有無のみです。・・・このくぼみは、組立時及び分解時の利便性のために設けたもので、回転噴霧器「EcoBell2 HD」の塗装性能に何ら影響を与えるものではなく、技術的な思想に変更をもたらすものではありません。」との主張をしている。
しかしながら、この主張は、甲3に示されたEcoBell2のエア操作リングが、甲4に示されたものとは異なることを自認するものである。また、甲4の写真のエア操作リングが甲37の設計図に示された「M35020081」の写真であることを客観的に証明する証拠は示されておらず、甲5-1の13頁には、くぼみのない「M35020081」の図が示されていることも考慮すれば、甲37の設計図に示された「M35020081」が甲4の写真の組立体のエア操作リングであるとはいえないから、甲3に示されたEcoBell2のエア操作リングが、甲4の写真のエア操作リングと、くぼみ以外は同じ構成を備えているともいえない。
甲4は、審判請求書46頁下から5行~最終行において、「Open House 2007」で展示された「EcoBell2 HD」のベルカップとエア操作リングを組み立てた状態(以下「組立体」という。)を示す資料とされているが、そもそも、甲1、甲2及び甲5の宣誓供述書には甲4についての言及がなく、また、当該組立体の写真自体には製品名や日付の表示がないことから、甲4の写真と「EcoBell2 HD」を結びつけるものは、写真の枠外に表示された「異議EP2328689B1回転噴霧器「EcoBell2 HD」「Open House 2007」から」との説明文言や、審判請求書における請求人の説明のみであって、甲4は、「Open House 2007」の現場での写真なのか、「Open House 2007」で展示されたものに、後日針金を挿入して撮影されたものなのかも不明である。そうすると、甲4の写真は、「EcoBell2 HD」が本件発明1の構成を備えることを証明する証拠としては、客観性を欠いている。
ウ また、請求人は、同上申書の4頁の「4-4.甲第5号証の2及び甲第5号証の3の機密性について」において、概略、甲38の宣誓供述書の項目8にあるとおり、これらの報告書は守秘義務表示を含む誤ったテンプレートに基づき作成されたものであって、ルノー社やプジョー・シトロエン社には、これらの報告書を自由に配布・発行できるという共通認識があったとの趣旨の主張をしている。
しかしながら、当該共通認識があったことを客観的に示す証拠は提示されていないため、EcoBell2 HDが公然知られていたとは認められない。
よって、請求人の主張は採用できない。
4 無効理由4(新規性)について
(1)甲6を主たる引用例とした場合
ア 本件発明1
(ア)甲6に記載された発明
甲6の【図29】には、カップ53が円状の端部を有することが示されているから、甲6の【0001】、【0007】、【0008】及び【0011】の記載に基づき、【図6】及び【図29】を参酌すれば、甲6には、次の発明が記載されているものと認められる。
(甲6発明)
「車体等の塗装に用いられる回転霧化静電塗装装置であって、
本体51内にモータによって駆動される回転軸52を配設し、本体51の外まで延ばした回転軸52の先端にカップ53を固定し、本体51の先端に固定したヘッド部材54に、カップ53へ孔53aから塗料を供給するための塗料供給管55とカップ53の外周縁部の背面に向けてシェーピングエアを供給するための吹出口56とを設けており、
吹出口56は、カップ53の直径よりわずかに大きなピッチ円上に配置され、
カップ53は、円状の端部を有しており、
カップ53の外周縁端に向かうシェーピングエアは、多数の円形の吹出口56から吹き出され、互いに隣接する円形の吹出口56から吹き出されたシェーピングエアが拡散してカップの外周縁部で相互に干渉することにより部分的にシェーピングエアの流速にむらが発生し、塗料の均一な微粒化がなされないといった問題が生じる、
回転霧化静電塗装装置。」
(イ)対比
本件発明1と甲6発明を対比すると、甲6発明の「車体等の塗装に用いられる回転霧化静電塗装装置」は、本件発明1の構成A1に相当する。
甲6発明の「カップ53は、円状の端部を有しており」は、本件発明1の構成B1に相当する。
甲6発明の「モータ」は、本件発明1の構成C1に相当する。
甲6発明の「カップ53の外周縁部の背面に向けてシェーピングエアを供給するための吹出口56」を設けた「ヘッド部材54」は、本件発明1の構成D1-1、D1-2及びD1-3に相当する。
甲6発明の「吹出口56は、カップ53の直径よりわずかに大きなピッチ円上に配置され」は、カップ53の直径が、吹出口56が配置されるピッチの直径よりわずかに小さいことを意味するから、本件発明1の構成G1を充足する。
そうすると、両者は、構成A1、B1、C1、D1-1、D1-2、D1-3及びG1の点で一致し、次の点で相違する。
<相違点6-1>
構成E1及びF1について、本件発明1は「互いに関連する少なくとも1つの前記第1の空気噴流(J4)と少なくとも1つの前記第2の空気噴流(J6)とが交差することによって、混合噴流(J46)それぞれが形成されるように、前記第1の方向(X4)それぞれと前記第2の方向(X6)それぞれとが方向付けられ」、「交差領域(R46)が、前記端部(12)の上流に存在」するのに対し、甲6発明は、「互いに隣接する円形の吹出口56から吹き出されたシェーピングエアが拡散してカップの外周縁部で相互に干渉する」ものの、シェーピングエアの方向は積極的に混合噴流が形成されるように方向付けられたものではなく、逆に、シェーピングエアが干渉すると、塗料の均一な微粒化がなされないといった問題が生じるとされたものである点。
(ウ)判断
相違点6-1について検討すると、甲6発明のシェーピングエアは、いずれも同じ方向を向いたものであって、互いに平行な位置関係にあるから、本件発明1の構成E1のように、第1の空気噴流と第2の空気噴流とが交差することによって混合噴流それぞれが形成されるように、第1の方向と第2の方向とが方向付けられたものとはいえないし、また、交差の意味を考慮すれば、互いに平行に噴出されたシェーピングエアの干渉領域は、本件発明1の構成F1の交差領域とは異なるものであるから、相違点6-1は、実質的な相違点である。
そうすると、本件発明1は、甲6発明であるとはいえない。
(エ)請求人の主張
請求人は、陳述要領書10頁の(1)オ、カにおいて、甲6の段落0011、図6には、互いに隣接する吹出口56から吹き出されたシェーピングエアは、拡散してカップ53の外周縁部で互いに干渉し、混合噴流が形成されることが開示されているから、甲6には、本件発明の構成E1、F1に相当する構成が記載されているとの趣旨の主張をしている。
しかしながら、甲6のシェーピングエアは、全て同じ方向を向いており、シェーピングエア同士の位置関係は平行の関係にあるから、本件発明1の構成E1が特定する「互いに関連する少なくとも1つの前記第1の空気噴流(J4)と少なくとも1つの前記第2の空気噴流(J6)とが交差することによって、混合噴流(J46)それぞれが形成されるように、前記第1の方向(X4)それぞれと前記第2の方向(X6)それぞれとが方向付けられ」との構成を備えていない。
また、図6に示された、カップ53の外周縁部における、隣り合うシェーピングエアの干渉領域は、シェーピングエアの断面の半分未満にとどまり、半分を超えていない。交差とは、二つ以上の線状のものがある一点で交わることを意味するものであることを考慮すれば、図6に示された干渉領域は、交差領域に該当しない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
イ 本件発明2~8、10、13~26
本件発明2~8、10、13~26は、本件発明1を直接又は間接的に引用することで、本件発明1の構成をすべて備えているものであるから、前記アで検討した理由と同じ理由により、甲6発明であるとはいえない。
(2)甲12を主たる引用例とした場合
ア 本件発明1
(ア)甲12に記載された発明
甲12の【図1】及び【図4】に着目し、【請求項1】、【0047】~【0050】、【0064】及び【0068】の記載を参酌すれば、甲12には、次の発明が記載されているものと認められる。
(甲12発明)
「部材、特に、自動車本体の部品をコーティングするためのロータリーアトマイザーであって、
アトマイザーハウジング3内に配置され、中空のベルカップシャフト4を駆動するエアタービン2、ベルカップシャフト4の端に搭載されるベルカップ5を有し、
シェーピングエアリング6は、ロータリーアトマイザー1の端面に適合しており、そのシェーピングエアリングは、多数のシェーピングエアノズル7を有する、シェーピングエアノズルのリングを含み、シェーピンエアノズル7は、ベルカップシャフト4と同軸上に配向されており、ベルカップ5によって放出されるスプレイジェットを形成すべく、ベルカップシャフト4と同軸上で前方方向に、シェーピングエアストリームを放出しており、
ベルカップ5は、外側に円錐状の円周面8を、内側に同様にして円錐状のフロー面9を有し、そらせ板10は、ベルカップ5の環状に囲まれているスプレイリリース端11において、塗装成分が最終的に放出されるように、空洞のベルカップシャフト4から軸方向に塗装成分がベルカップ5に侵入するのを食い止めるべく、フロー面9上で半径方向外側に向かって、ベルカップ5の内側の前面に搭載されており、
シェーピングエアノズル7は、シェーピングエアストリームのセンターラインが、ベルカップ5のスプレイリリース端11を通り過ぎて、その外側へ半径方向に進むよう、シェーピングエアリング6内に配向されていて、シェーピングエアストリームのセンターラインとスプレイリリース端11との間の半径方向の距離は、およそ3mmであり、
シェーピングエアノズルの2つのリングは、双方同じ直径を有しており、どのノズル対19も、シェーピングエアノズルの一方のリングからの1のシェーピングエアノズル20と、シェーピングエアノズルの他方のリングからの1のシェーピングエアノズル21とを含み、
2つのシェーピングエアノズル20、21からの、2つのシェーピングエアストリームの放出の際、2つのシェーピングエアストリームは、統合して、結果として特定の方向及び特定の開口角度を持ったシェーピングエアストリームを生成する、ロータリーアトマイザー。」
(イ)対比
本件発明1と甲12発明を対比すると、甲12発明の「部材、特に、自動車本体の部品をコーティングするためのロータリーアトマイザー」は、本件発明1の構成A1に相当する。
甲12発明の「ベルカップ5の環状に囲まれているスプレイリリース端11において、塗装成分が最終的に放出される」「ベルカップ5」は、本件発明1の構成B1に相当する。
甲12発明の「エアタービン2」は、本件発明1の構成C1に相当する。
甲12発明の「シェーピングエアリング6は、ロータリーアトマイザー1の端面に適合しており、そのシェーピングエアリングは、多数のシェーピングエアノズル7を有する、シェーピングエアノズルのリングを含み」「シェーピングエアノズルの2つのリングは、双方同じ直径を有しており、どのノズル対19も、シェーピングエアノズルの一方のリングからの1のシェーピングエアノズル20と、シェーピングエアノズルの他方のリングからの1のシェーピングエアノズル21とを含み、2つのシェーピングエアノズル20、21からの、2つのシェーピングエアストリームの放出の際、2つのシェーピングエアストリームは、統合して、結果として特定の方向及び特定の開口角度を持ったシェーピングエアストリームを生成し」は、本件発明1の構成D1-1、D1-2、及びD1-3に相当する。
甲12発明の「2つのシェーピングエアノズル20、21からの、2つのシェーピングエアストリームの放出の際、2つのシェーピングエアストリームは、統合して、結果として特定の方向及び特定の開口角度を持ったシェーピングエアストリームを生成し」は、本件発明1の構成E1に相当する。
そうすると、両者は、構成A1、B1、C1、D1-1、D1-2、D1-3及びE1の点で一致し、次の点で相違する。
<相違点12-1>
構成F1について、本件発明1は、「交差領域(R46)が、前記端部(12)の上流に存在」するのに対し、甲12発明は、2つのシェーピングエアノズル20、21からの、2つのシェーピングエアストリームが統合する位置と、ベルカップ5のスプレイリリース端11の位置との関係は不明である点。
<相違点12-2>
構成G1について、本件発明1は「前記端部(12)の直径(D12)と前記円(C)の直径(D)との比が、0.65~1」であるのに対し、甲12発明は不明である点。
(ウ)判断
まず、相違点12-1について検討する。甲12発明は、2つのシェーピングエアノズル20、21からの、2つのシェーピングエアストリームを統合するものであるが、当該統合する位置と、ベルカップ5のスプレイリリース端11の位置との関係については、甲12発明を認定した甲12にも記載がない。
また、前記した2つのシェーピングエアストリームが統合する位置と、ベルカップ5のスプレイリリース端11の位置との関係は、甲12の図1や図2の記載を参酌しても不明というほかないから、前記相違点12-1は、実質的な相違点である。
そうすると、相違点12-2について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明12であるとはいえない。
(エ)請求人の主張
請求人は、陳述要領書11頁の(2)カにおいて、甲12の図1、2には、シェーピングエアノズル7は、噴射されるエアジェットがベルカップの上流側にあたるように配置されたことが開示され、混合流は、ベルカップから噴射される塗料に作用するので、ベルカップの上流側で合流することは、当業者であれば、当然認識できたことであるから、甲12には、本件発明1の構成F1に相当する構成が記載又は示唆されているとの趣旨の主張をしている。
しかしながら、甲12の図1の態様は、甲12発明で認定したとおり、「シェーピングエアノズル7は、シェーピングエアストリームのセンターラインが、ベルカップ5のスプレイリリース端11を通り過ぎて、その外側へ半径方向に進むよう、シェーピングエアリング6内に配向されていて、シェーピングエアストリームのセンターラインとスプレイリリース端11との間の半径方向の距離は、およそ3mm」であること、すなわち、シェーピングエアノズル7からのシェーピングエアストリームのセンターラインが、ベルカップ5のスプレイリリース端11のおよそ3mm外側を通過するものであって、請求人の主張する「シェーピングエアノズル7が、噴射されるエアジェットがベルカップの上流側にあたるように配置された」との構成を備えていない。したがって、図1に基いて、混合流が、ベルカップの上流側で合流することを認識することはできない。
また、甲12の図2の態様として、甲12の【0055】には、「シェーピングエアジェット7のセンターラインが、ロータリーアトマイザー5の外周面8上の外側に、2mmの半径方向のオーバーラップで当たるように配置されている」こと、すなわち、シェーピングエアノズル7からのシェーピングエアストリームのセンターラインが、ベルカップ5のスプレイリリース端11の2mm内側を通過することが記載されている。
しかしながら、2つのシェーピングエアストリームは、ベルカップ5のスプレイリリース端11の2mm内側に当たった後、ベルカップ5のスプレイリリース端11近傍で、ベルカップから噴射される塗料に作用するものであって、2つのシェーピングエアストリームがベルカップ5のスプレイリリース端の上流側で合流しなければならない必然性はないから、請求人の前記「混合流は、ベルカップから噴射される塗料に作用するので、ベルカップの上流側で合流することは、当業者であれば、当然認識できたことである」との主張には根拠がない。
そして、仮に、図2の態様において、2つのシェーピングエアストリームがベルカップ5のリリース端11より上流側で合流していたとしても、当該図2には、シェーピングエアノズルの2つのリングの直径よりも、ベルカップ5の環状に囲まれているスプレイリリース端11の直径が、明らかに大きいこと、すなわち、ベルカップ5のスプレイリリース端11の直径と、シェーピングエアノズルのリングの直径との比が、1を超えることが示されており、これは、本件発明1の構成G1を充足しない。
そうすると、甲12発明が、仮に図2の態様をとったとしても、本件発明1の構成F1と構成G1をともに充足することはないから、いずれにしても、甲12発明が、本件発明1の構成F1とG1を同時に充足することはない。
請求人の主張は、いずれも根拠のないものであるから、新規性欠如の主張として、採用できない。
イ 本件発明2~8、10、13~26について
本件発明2~8、10、13~26は、本件発明1を直接又は間接的に引用することで、本件発明1の構成をすべて備えたものであるから、上記アで検討した理由と同じ理由により、甲12発明であるとはいえない。
(3)甲19を主たる引用例とした場合
ア 本件発明1
(ア)甲19に記載された発明
甲19の【0001】、【0055】~【0060】、【0067】、【図1】、【図2】及び【図8】の記載を考慮すれば、甲19には、次の発明が記載されているものと認められる。
(甲19発明)
「自動車のボディ等の被塗物に塗装を行なうベル型塗装装置であって、
装置本体としての本体ハウジング2内にエアモータ3を内蔵し、このエアモータ3の回転軸4の先端4aに、ディスク状のベルカップ5を有するベル6を螺合固定し、ベル6は、内部が中空のテーパコーン状に形成されており、
塗料は、上記ベル6の下面側に流出するとともに、該ベル6の高速回転による遠心力により、該ベル6の中心部寄りからその外周寄りへ飛散せしめられ、効率良く霧化され、
上記本体ハウジング2の先端部側内周面にはリングブロック10を螺合固定し、このリングブロック10の内周部には、断面ハット形の霧化エアリング12を螺合固定しており、霧化エアリング12の下縁部12aには、上記ベル6外周の塗料の飛散部に対して霧化エアa,b,cを噴出する次述の第1~第3の霧化エア噴出孔13,13・・・、14,14・・・、15,15・・・が各々形成され、
上記第1~第3の霧化エア噴出孔13,13・・・、14,14・・・、15,15・・・が半径方向に位置を異にし且つベル円周方向に相互に異なる傾斜角θ1~θ3をもって設けられていることから、それぞれの噴出エアa,b,cは相互に上記ベル6の円周方向に交叉することになり、この結果、少量のエア量でありながら良好な乱流(撹拌流)が形成されて、内外の塗料粒径分布の均一化(いわゆる高分散性)が図られる、ベル型塗装装置。」
(イ)対比
本件発明1と甲19発明を対比すると、甲19発明の「自動車のボディ等の被塗物に装を行なうベル型塗装装置」は、本件発明1の構成A1に相当する。
甲19発明の「ディスク状のベルカップ5を有するベル6」及び「塗料は、上記ベル6の下面側に流出するとともに、該ベル6の高速回転による遠心力により、該ベル6の中心部寄りからその外周寄りへ飛散せしめられ」る「ベル6」は、本件発明1の構成B1に相当する。
甲19発明の「エアモータ3」は、本件発明1の構成C1に相当する。
甲19発明の「霧化エアリング12の下縁部12aには、上記ベル6外周の塗料の飛散部に対して霧化エアa,b,cを噴出する次述の第1~第3の霧化エア噴出孔13,13・・・、14,14・・・、15,15・・・が各々形成され、
上記第1~第3の霧化エア噴出孔13,13・・・、14,14・・・、15,15・・・が半径方向に位置を異にし且つベル円周方向に相互に異なる傾斜角θ1~θ3をもって設けられていることから、それぞれの噴出エアa,b,cは相互に上記ベル6の円周方向に交叉することになり、この結果、少量のエア量でありながら良好な乱流(撹拌流)が形成されて、内外の塗料粒径分布の均一化(いわゆる高分散性)が図られる」は、本件発明1の構成D1-1、D1-2及びE1に相当する。
そうすると、両者は、構成A1、B1、C1、D1-1、D1-2及びE1の点で一致し、次の点で相違する。
<相違点19-1>
構成D1-3について、本件発明1は、「第1の輪郭(C4)と前記第2の輪郭(C6)とが、前記回転軸線(X1)上に中心が配置された円(C)において一致している」のに対し、甲19発明は、第1~第3の霧化エア噴出孔13,13・・・、14,14・・・、15,15・・・が半径方向に位置を異にしたものである点。
<相違点19-2>
構成F1について、本件発明1は、「交差領域(R46)が、前記端部(12)の上流に存在」するのに対し、甲19発明は、噴出エアa,b,cの交叉する位置と、ベル6の外周寄りの塗料を飛散させる位置との関係は不明である点。
<相違点19-3>
構成G1について、本件発明1は「前記端部(12)の直径(D12)と前記円(C)の直径(D)との比が、0.65~1」であるのに対し、甲12発明は不明である点。
(ウ)判断
まず、相違点19-1について検討すると、甲19発明は、第1~第3の霧化エア噴出孔13,13・・・、14,14・・・、15,15・・・が半径方向に位置を異にしたものであって、同一円周上に配置されたものではないから、相違点19-1は、実質的な相違点である。
また、相違点19-2について検討すると、甲19発明は、噴出エアa,b,cが相互に上記ベル6の円周方向に交叉するものであるが、それらの交叉する位置と、ベル6の外周寄りの塗料を飛散させる位置との関係については記載がない。
また、前記した噴出エアa,b,cの交叉する位置と、ベル6の外周寄りの塗料を飛散させる位置との関係は、甲19の図1、図10、図13、図18、図19、図22及び図25の記載を参酌しても、噴出エアa,b,cの交叉する位置が、ベル6の外周寄りの塗料を飛散させる位置の上流に存在する構成を読み取ることは困難であるから、前記相違点12-1は、実質的な相違点である。
そうすると、相違点19-3について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明19であるとはいえない。
(エ)請求人の主張
請求人は、陳述要領書12頁の(3)カにおいて、甲19の図25には、第1霧化エア噴出孔33から噴出する霧化エアaと、第2霧化エア噴出孔34から噴出する霧化エアbとは、ベル6の外周縁より上流で衝突することが記載されているから、本件発明1の構成F1に相当する構成が記載されており、同(3)キにおいて、甲19の【0077】、図14、図16には、同一の円周上に千鳥状に等間隔で形成された霧化エア噴出孔23と霧化エア噴出孔24とが設けられたことが記載されているから、本件発明1の構成D1-3に相当する構成が記載されているとの趣旨の主張をしている。
しかしながら、甲19の図25には、霧化エアaと霧化エアbがベル6の外周縁より下流で衝突することが記載されているから、請求人の主張には誤りがある。
また、甲19の【0077】等の同一の円周上に千鳥状に形成された霧化エア噴出孔23と霧化エア噴出孔24とは、同一の円周を挟んで千鳥状に配置されているものであって、それぞれの孔の中心が同一の円周上にないことが明らかであるから、請求人の主張には誤りがある。
したがって、請求人の主張は採用できない。
イ 本件発明2~8、10、13~26について
本件発明2~8、10、13~26は、本件発明1を直接又は間接的に引用することで、本件発明1の構成をすべて備えたものであるから、前記アで検討した理由と同じ理由により、甲19発明であるとはいえない。
5 無効理由5(進歩性)について
(1)甲14を主たる引用例とした場合
ア 本件発明1
(ア)甲14に記載された発明
甲14の【0001】、【0019】~【0024】、【図1】及び【図2】の記載を考慮すれば、甲14には、次の発明が記載されているものと認められる。
(甲14発明)
「車体塗装に用いられる回転霧化静電塗装装置であって、
回転霧化静電塗装装置1は、有底円筒形の樹脂ハウジング2内にエアモータ3が収容してあり、エアモータ3の中空状出力軸4の先端にカップ状の霧化頭5が固定してあり、
霧化頭5は、中央部分に多数の塗料吐出孔11が円形に配列して設けてあり、
塗料供給管15から塗料供給室12内に供給された塗料は、霧化頭5の塗料吐出孔11から出て霧化頭内周面5aに伝わり、霧化頭5の高速回転による遠心力で外周側に流れ、帯電した塗料粒子となって霧化頭周縁部5bから放出され、
樹脂ハウジング2の先端部に設けたヘッド部材7は、霧化頭5の後方側において同霧化頭5と同心円状に配置されており、霧化頭5を正面から見た状態において、霧化頭周縁部5bの全周に沿う位置に複数のエアノズルを備えており、
エアノズルには、霧化頭5の回転軸Cに対してねじれ方向となる噴射角度θ1で第1シェーピングエアA1を噴射する第1エアノズルN1と、第1エアノズルN1の第1シェーピングエアA1よりも大きい噴射角度θ2で第2シェーピングエアA2を噴射する第2エアノズルN2とがあり、
2つの第1エアノズルN1,N1と1つの第2エアノズルN2を等間隔で並べてこれを1組とし、複数の組を同一円周上に所定の間隔で並べた構成になっており、
霧化頭周縁部5bから放出された塗料粒子は、霧化頭5の遠心力によってその半径方向に飛び出し、次に、第1および第2シェーピングエアA1,A2により、回転中心Cに対する各噴射角度θ1,θ2で被塗装物Wの方向に搬送され、被塗装物Wに吸引付着する、回転霧化静電塗装装置。」
(イ)対比
本件発明1と甲14発明を対比すると、甲14発明の「車体塗装に用いられる回転霧化静電塗装装置」は、本件発明1の構成A1に相当する。
甲14発明の「霧化頭5の高速回転による遠心力で外周側に流れ、帯電した塗料粒子」を「霧化頭周縁部5bから放出」する「霧化頭5」は、本件発明1の構成B1に相当する。
甲14発明の「エアモータ3」は、本件発明1の構成C1に相当する。
甲14発明の「樹脂ハウジング2の先端部に設けたヘッド部材7は、霧化頭5の後方側において同霧化頭5と同心円状に配置されており、霧化頭5を正面から見た状態において、霧化頭周縁部5bの全周に沿う位置に複数のエアノズルを備えており、エアノズルには、霧化頭5の回転軸Cに対してねじれ方向となる噴射角度θ1で第1シェーピングエアA1を噴射する第1エアノズルN1と、第1エアノズルN1の第1シェーピングエアA1よりも大きい噴射角度θ2で第2シェーピングエアA2を噴射する第2エアノズルN2とがあり、2つの第1エアノズルN1,N1と1つの第2エアノズルN2を等間隔で並べてこれを1組とし、複数の組を同一円周上に所定の間隔で並べた構成になっており」は、本件発明1の構成D1-1、D1-2及びD1-3に相当する。
そうすると、両者は、構成A1、B1、C1、D1-1、D1-2及びD1-3の点で一致し、次の点で相違する。
<相違点14-1>
構成E1、F1について、本件発明1は、「互いに関連する少なくとも1つの前記第1の空気噴流(J4)と少なくとも1つの前記第2の空気噴流(J6)とが交差することによって、混合噴流(J46)それぞれが形成されるように、前記第1の方向(X4)それぞれと前記第2の方向(X6)それぞれとが方向付けられ、且つ、前記第1のオリフィス(4)それぞれと前記第2のオリフィス(6)それぞれとが配置されており」、「交差領域(R46)が、前記端部(12)の上流に存在」するのに対し、甲14発明は、「霧化頭周縁部5bから放出された塗料粒子は、霧化頭5の遠心力によってその半径方向に飛び出し、次に、第1および第2シェーピングエアA1,A2により、回転中心Cに対する各噴射角度θ1,θ2で被塗装物Wの方向に搬送」されるものであるが、第1および第2シェーピングエアA1,A2が交差するものではなく、したがって、交差領域も存在しない点。
<相違点14-2>
構成G1について、本件発明1は、「前記端部(12)の直径(D12)と前記円(C)の直径(D)との比が、0.65~1」であるのに対し、甲14発明は、不明である点。
(ウ)判断
まず、相違点14-1について検討する。甲14発明の第1および第2シェーピングエアA1,A2について、甲14発明を認定した甲14の【0044】及び【0045】には、「第1シェーピングエアAのエア中心と」「第2シェーピングエアA2のエア中心が霧化頭周縁部5bで最接近する状態、つまり側方から見て交差する状態にしてある」、「このとき、第1シェーピングエアA1のエア中心と第2シェーピングエアA2のエア中心との接近距離Lは、なるべく小さいことが望ましいが、接近距離Lがゼロに近づくと両シェーピングエアA1,A2同士が干渉し、エアの流れが乱れるので、その乱れが生じる手前で接近距離Lを保つように各エアノズルN1,N2の位置を設定する。」と記載されている。
そうすると、甲14発明において、「第1シェーピングエアA1」と「第2シェーピングエアA2」を交差させて混合噴流を形成することには、阻害要因があるというべきであるから、甲14発明において、本件発明1の前記相違点14-1に係る構成を備えるようにすること、すなわち、本件発明1の構成E1、F1に相当する構成を採用することは、当業者が容易になし得たとはいえない。
このことは、仮に、他の甲号証に本件発明1の構成E1、F1に相当する構成が記載されていたとしても、影響を受けることはない。
そうすると、相違点14-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲14発明、並びに甲7~甲11、甲13~甲16、甲18、甲21~甲23、甲25~甲31に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)請求人の主張
請求人は、陳述要領書13~14頁の(4)オ及び同(4)カにおいて、本件発明1の構成E1及びF1に相当する構成が、列挙された甲号証に記載ないしは示唆されている旨を縷々主張する。
しかしながら、請求人の主張は、請求人が各甲号証に記載又は示唆されていると主張する構成を列挙するにとどまり、甲号証に記載された事項の技術的な意味合いや、甲号証に記載された事項を組み合わせる動機付けについての説明は何らされていない。
前記(ウ)で検討したとおり、甲14発明において、本件発明1の構成E1及びF1に相当する構成を採用することを妨げる事情が存在するから、本件発明1は、列挙された甲号証の有無によらず、甲14発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
イ 本件発明2~8、10、13~26について
本件発明2~8、10、13~26は、本件発明1を直接又は間接的に引用することで、本件発明1の構成をすべて備えたものであるから、前記アで検討した理由と同じ理由により、甲14発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第9 他の甲号証を主たる引用例とした検討
前記第5の3及び前記第8において、請求人の主張する無効理由1~5を、訂正前の請求項12、すなわち、訂正後の請求項1を対象とするものについて整理して検討を行ったが、無効理由4(29条1項3号)については、前記第5の1(4)のとおり、訂正前の請求項1や下位の請求項に係る発明に対して、甲6、甲12又は甲19に記載された発明と同一という無効理由に加え、甲7~甲11、甲13、甲15、甲16、甲18、甲21~甲23、甲25~甲31のいずれかに記載された発明と同一という無効理由が主張されており、また、無効理由5(29条2項)については、前記第5の1(5)のとおり、請求項3、5等の下位の請求項に係る発明に対して、公然実施されたとされるEcoBell2 HD、甲6~甲13、甲15、甲16、甲18、甲19、甲21~甲23、甲25~甲27、甲29~甲31のいずれかに記載された発明から容易という無効理由が主張されている。
しかしながら、いずれの甲号証にも、本件発明の構成D1-3、構成F1及び構成G1の3つに相当する構成を同時に備えることは記載されていないから、いずれの甲号証も本件発明1と同一ではない。また、いずれの甲号証にも、本件発明の構成D1-3、構成F1及び構成G1の3つに相当する構成を同時に備える必然性や動機付けはないから、いずれの甲号証に基いても、本件発明1は、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
本件発明1を直接又は間接的に引用することで、本件発明1の構成をすべて備えた本件発明2~8、10、13~26についても同様である。
第10 むすび
以上のとおりであるから、前記第5の1(1)~(5)の無効理由1~5はいずれも理由がないものであり、請求人の主張及び証拠方法によっては、請求項1~8、10、13~26に係る発明についての特許を無効とすることはできない。
また、請求項9、11及び12は、本件訂正により存在しないものとなったため、これらの請求項に係る発明についての本件無効審判請求は、不適法な請求であって補正をすることができないものとなったから、特許法第135条の規定により却下すべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-800054