特許無効審判
2021-800044
ロボットの手首
- 審判番号
- 2021-800044
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2006-517058
- 登録番号
- 4559419
- 請求日
- 2021年05月21日
- 審決日
- 2023年02月01日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】デュール システムズ アーゲー
- 【請求人代理人】木村 満
- 【請求人代理人】長谷川 陽子
- 【請求人代理人】早川 牧子
- 【請求人代理人】宮脇 良平
- 【請求人代理人】三瓶 真弘
- 【請求人代理人】桜田 圭
- 【請求人代理人】遠藤 雅士
- 【請求人代理人】齋藤 悟郎
- 【請求人代理人】湯浅 夏樹
- 【請求人代理人】庄野 寿晃
- 【請求人代理人】山本 洋美
- 【被請求人】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
- 【被請求人代理人】蔵田 昌俊
- 【被請求人代理人】峰 隆司
- 【被請求人代理人】飯野 茂
- 【被請求人代理人】森川 元嗣
- 審判長/審判官
- 審判長 見目 省二
- 審判官 鈴木 貴雄
- 審判官 田々井 正吾
- 分類
- P1113.113-YAA(B25J) / P1113.121-YAA(B25J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第134条の2第9項、特許法第134条の2第1項、特許法第29条第1項第3号、特許法第123条第1項第2号、特許法第134条の2第3項、特許法第131条の2第2項、特許法第169条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第4559419号発明「ロボットの手首」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第4559419号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7、9~23〕、〔8、24〕について訂正することを認める。
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 特許権の設定登録まで
特許第4559419号(以下「本件特許」という。)は、2004年(平成16年)6月24日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2003年6月26日、欧州)を国際出願日とする特願2006-517058として出願したもの(以下、平成16年6月24日を「本件出願日」、2003年(平成15年)6月26日を「本件優先日」という。)であって、平成22年7月30日にその請求項1~23に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本件特許発明1」、同様に請求項2~23に係る発明を「本件特許発明2」~「本件特許発明23」という。また、これらの発明をまとめて「本件特許発明」ともいう。)について特許権の設定登録がされた。
2 本件無効審判の請求
令和3年5月21日に、本件特許の請求項1~23に係る特許を無効とする審判請求(以下「本件無効審判」という。)が、デュール システムズ アーゲー(以下「請求人」という。)によりされた。
これに対して、令和3年10月26日に、答弁書とともに、訂正請求書(以下、この訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。)が、アーベーベー・シュバイツ・アーゲー(以下「被請求人」という。)より提出された。
その後の経緯は、以下のとおりである。
令和4年 1月 7日 請求人より審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という)を提出
令和4年 4月13日付け 両当事者に対して審理事項を通知
令和4年 4月27日 請求人より上申書を提出
令和4年 5月25日 両当事者より口頭審理陳述要領書を提出
令和4年 6月23日 口頭審理
令和4年 7月 7日 請求人より上申書を提出
令和4年 7月22日 被請求人より上申書を提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正による訂正事項は、以下のとおりである。
(1)訂正事項
ア 訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「前記ギア部材のそれぞれは、内部保護用ホース(4)がその中を通る中空の開口を有する、ロボットの手首において、」とあるのを、「前記ギア部材のそれぞれは、内部保護用ホース(4)がその中を通っている中空の開口を有する、ロボットの手首において、」と訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~7、請求項9~23も同様に訂正する。)
イ 訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「第一手首部と第二手首部の間の回転軸(A1)は、第二手首部と第三手首部の間の回転軸(A2)と、前記ロボットの手首の少なくとも一つの状態で、前記内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差すること」とあるのを、「第一手首部と第二手首部の間の回転軸(A1)は、第二手首部と第三手首部の間の回転軸(A2)と、前記ロボットの手首の少なくとも一つの状態で、前記内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差することと、前記回転軸(A1)の周りでの前記第二手首部の回転と前記回転軸(A2)の周りでの前記第三手首部の回転の両方が前記内部保護用ホース(4)の曲げを引き起こすこと」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~7、請求項9~23も同様に訂正する。)
ウ 訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項8に「下記特徴を備えた請求項1に記載のロボットの手首: 前記内部保護用ホースは、前記手首が曲がった状態にあるとき、単一の円弧の形状に構成された前記手首部の内側を通るように構成されている。」とあるものを、以下のとおり訂正する。
(ア)請求項1を引用する引用形式請求項の記載を、当該請求項1を引用しない独立形式請求項の記載とする。
(イ)上記(ア)により請求項8に記載することとなった請求項1の発明特定事項に関し、訂正前の「前記ギア部材のそれぞれは、内部保護用ホース(4)がその中を通る中空の開口を有する、ロボットの手首において、」とあるのを、「前記ギア部材のそれぞれは、内部保護用ホース(4)がその中を通っている中空の開口を有する、ロボットの手首において、」とする。
エ 訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項23に「下記特徴を備えた請求項1から22のいずれか1項に記載のロボットの手首」を、「下記特徴を備えた請求項1から7、又は請求項9から22のいずれか1項に記載のロボットの手首」とする。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲に、以下の事項を、請求項24として新たに追加する。
「【請求項24】
下記特徴を備えた請求項8に記載のロボットの手首:
第一手首部のギア部材(10)及び第三手首部のギア部材(14)は、正のギア角度を有する凸面のベベルギアであって、
第二手首部のギア部材(12,13)は、負のベベル角度を有する凹面のベベルギアである。」
(2)一群の請求項について
訂正前の請求項1~23について、請求項2~23は、請求項1を直接的に、又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1、2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~23は一群の請求項であり、これに対応する訂正後の請求項1~24は、特許法134条の2第3項に規定する一群の請求項である。
そして、訂正事項1~5は、この一群の請求項に対して請求されたものである。
(3)訂正事項1~5の訂正要件への適合についての検討
ア 訂正事項1
(ア)訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1における「前記ギア部材のそれぞれは、内部保護用ホース(4)がその中を通る中空の開口を有する、ロボットの手首において、」との記載を、「前記ギア部材のそれぞれは、内部保護用ホース(4)がその中を通っている中空の開口を有する、ロボットの手首において、」と訂正することにより、訂正後の請求項1に係る発明が、内部保護用ホース(4)がロボット手首のそれぞれのギア部材の中空の開口を現に通っているロボットの手首に関するものであることが明確化するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)のとおり、訂正事項1は、訂正後の請求項1に係る発明が、内部保護用ホース(4)がロボット手首のそれぞれのギア部材の中空の開口を通っているロボットの手首に関するものであることを明確化するものであるから、訂正前の請求項1に係る発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ発明の対象や目的を変更するものでもない。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、本件特許明細書の段落【0022】、【0043】の記載、及び図3、4の記載に基づく。
すなわち、本件特許明細書の段落【0022】には、「図3は、本発明による実施形態の曲がった状態を概略的に示す。この図は、第一、第二及び第三手首部1,2,3及び保護用ホース4を示している。第一手首部と第二手首部の間のギア部材のための回転軸は、A1として示されている。第二手首部と第三手首部の間のギア部材のための回転軸は、A2として示されている。ロボットの手首のこの改良された内部形状によれば、保護用ホースの対称的な曲げを妨げるような障害がない。手首の内部が最大限に曲がった状態にあるとき、ホースは、一箇所のみで曲がり、単一な円弧を形成して最大の曲げを実現することが分かる。」、段落【0043】には、「図4は、手首の三つの部分1,2,3及び保護用ホース4を示している。・・・。図3はまた、第二手首部2の二つの部材の軸の中心線A1,A2が、ホース4の境界壁の内側で、且つ、図1,2の先行技術と比べて、アームの曲がりの半径の中心のより近くで交差していることを示している。なお、図1,2の先行技術では、図3,8,10のA1,A2に対応する軸E-E,F-Fの交点は、保護用ホース4の外側にあり、曲がりの半径の中心から遥かに離れている。」との記載がある。これらの記載と、図3、及び図4の記載からみて、ロボット手首におけるギア部材のそれぞれが有する中空の開口に、保護用ホース4が通っていることが明らかである。
また、内部保護用ホース(4)に関し、訂正前の請求項1に「第一手首部と第二手首部の間の回転軸(A1)は、第二手首部と第三手首部の間の回転軸(A2)と、前記ロボットの手首の少なくとも一つの状態で、前記内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差すること」は、内部保護用ホース(4)がロボットの手首の中を通っていることにより実現するものである。
したがって、訂正事項1に新規事項の追加はなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
イ 訂正事項2
(ア)訂正の目的について
訂正後の請求項1は、「・・・第一手首部と第二手首部の間の回転軸(A1)は、第二手首部と第三手首部の間の回転軸(A2)と、前記ロボットの手首の少なくとも一つの状態で、前記内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差することと、前記回転軸(A1)の周りでの前記第二手首部の回転と前記回転軸(A2)の周りでの前記第三手首部の回転の両方が前記内部保護用ホース(4)の曲げを引き起こすこと」との記載により、訂正前の請求項1に、「前記回転軸(A1)の周りでの前記第二手首部の回転と前記回転軸(A2)の周りでの前記第三手首部の回転の両方が前記内部保護用ホース(4)の曲げを引き起こすこと」との技術的事項を直列的に付加することで、訂正前の請求項1に係る発明の回転軸(A1)と回転軸(A2)に関する事項をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)に記載したとおり、訂正事項2は、「前記回転軸(A1)の周りでの前記第二手首部の回転と前記回転軸(A2)の周りでの前記第三手首部の回転の両方が前記内部保護用ホース(4)の曲げを引き起こすこと」との技術的事項を直列的に付加するものであり、訂正前の請求項1に係る発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ発明の対象や目的を変更するものでもない。
したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、本件特許明細書の段落【0022】、【0025】の記載、及び図3、4の記載に基づく。
すなわち、本件特許明細書の段落【0022】には、「図3は、本発明による実施形態の曲がった状態を概略的に示す。この図は、第一、第二及び第三手首部1,2,3及び保護用ホース4を示している。第一手首部と第二手首部の間のギア部材のための回転軸は、A1として示されている。第二手首部と第三手首部の間のギア部材のための回転軸は、A2として示されている。ロボットの手首のこの改良された内部形状によれば、保護用ホースの対称的な曲げを妨げるような障害がない。手首の内部が最大限に曲がった状態にあるとき、ホースは、一箇所のみで曲がり、単一な円弧を形成して最大の曲げを実現することが分かる。」、段落【0025】には、「本発明の好ましい実施形態が、図4に示されている。この図は、図3に示された本発明と同じ第一、第二及び第三手首部を示しているが、真直ぐな状態にある。これは、図1の従来技術における同等の状態と比較することができる。・・・。」との記載がある。これらの記載と、ロボットの手首が曲がった状態を示す図3、ロボットの手首が真直ぐな状態にある図4の図示内容からみて、回転軸A1の周りでの第二手首部2の回転と、回転軸A2の周りでの第三手首部3の回転の両方が内部保護用ホース4の曲げを引き起こすことが明らかであるから、訂正事項2に新規事項の追加はない。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 訂正事項3
(ア)訂正の目的について
訂正事項3の上記(1)ウ(ア)の訂正内容は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的としている。
そして、訂正事項3の上記(1)ウ(イ)の訂正内容は、訂正事項1と同じであり、よって、明瞭でない記載の釈明を目的としている。
したがって、訂正事項3は、特許法第134条の2第1項ただし書第4号、及び第3号に掲げる事項を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3の上記(1)ウ(ア)の訂正内容は、引用形式請求項を独立形式請求項に改めるもので、上記(1)ウ(イ)の訂正内容は訂正事項1と同じであるから、いずれも、訂正前の請求項8に係る発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ発明の対象や目的を変更するものでもない。
したがって、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3のうち上記(1)ウ(ア)の訂正内容は、訂正前の請求項8の請求項1との引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるもので、訂正後の請求項8に実質的な内容の変更はなく、上記(1)ウ(イ)の訂正内容は、訂正後の請求項8が独立形式請求項となって新たに記載した請求項1の発明特定事項に、訂正事項1と同じ訂正を行うのであるから、いずれも新規事項の追加はない。
したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
エ 訂正事項4
(ア)訂正の目的について
訂正事項4は、請求項1~22の何れか1項の記載を引用していた訂正前の請求項23を、請求項8の記載を引用しない請求項1~7、9~22の何れか1項の記載を引用するものとして、特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、訂正前の請求項23から請求項8の記載を引用する部分を削除するのであるから、訂正前の請求項8に係る発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ発明の対象や目的を変更するものでもない。
したがって、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、訂正前の請求項23から請求項8の記載を引用する部分を削除するのであるから、新規事項が加わる余地はない。
したがって、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
オ 訂正事項5
(ア)訂正事項5は、訂正事項3で請求項8を請求項1の記載を引用しない独立請求項に改め、訂正事項4で削除した請求項23の請求項8の記載を引用する部分について、独立形式請求項となった請求項8の記載のみを引用する請求項24として新たに設けるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正に伴うものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第134条の2第1項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5について、訂正事項4で請求項23から削除した請求項8の記載を引用する部分について、訂正事項3で独立形式請求項となった請求項8の記載のみを引用する請求項24として新たに設けることは、訂正前の請求項23に係る発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ発明の対象や目的を変更するものでもない。
したがって、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5で新たに追加した請求項24は、訂正事項4で請求項23から削除した請求項8の記載を引用する部分について、訂正事項3で独立形式請求項となった請求項8の記載のみを引用する請求項として新たに設けたものであり、新規事項が追加される余地はない。
したがって、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
カ 特許出願の際独立して特許を受けることができること
訂正事項1~5に関して、本件無効審判においては、全ての請求項1~23に係る発明の特許について無効とすることが請求されているので、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(4)別の訂正単位とする求め
本件訂正を請求する特許権者(本件無効審判の被請求人)は、訂正後の請求項8、及び請求項24については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することの求めをしている。
3 小括
したがって、上記の訂正事項1~5は、いずれも特許法134条の2第1項ただし書き第1号、第3号、及び第4号に掲げる事項のいずれかを目的とするものであり、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に違反するものでもない。
そして、訂正事項1~5により、上記(2)のとおり、一群の請求項である訂正前の請求項1ないし23に対応する訂正後の請求項1ないし24について本件訂正が請求されている一方で、上記(4)のとおり、請求項8、24に対しては当該請求項についての訂正が認められる場合には、上記一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することの求めがされているものである。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7、9~23〕、〔8、24〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
1 第2のとおり本件訂正が認められたから、本件特許の請求項1~24に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~24に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである。(以下、本件訂正後の請求項1に係る発明を「訂正特許発明1」、同様に請求項2~24に係る発明を「訂正特許発明2」~「訂正特許発明24」という。また、これらの発明をまとめて「訂正特許発明」ともいう。なお、請求項1、及び請求項8については、審判請求書における請求人による分説に準じてA~H3の符号を付与した。)
「【請求項1】
A 互いに直列に配置された複数の回転可能部を有するロボットの手首であって、
B 第一の軸の回りでの第一手首部の回転運動が可能であるように、ロボットの腕または自動化機械に装着されるように構成された少なくとも一つの第一手首部(1)と、
C この第一手首部にジャーナル接続された第二手首部(2)と、
D この第二手首部にジャーナル接続された第三手首部(3)と、を備え、
E 各手首部は、前記手首部のいずれか一つの、前記手首部の他のいずれか一つに対する前記回転運動を駆動するための、一つまたはそれ以上のギア部材を有しており、
F 前記ギア部材の少なくとも一つは、負のベベル角度(Cn)を有する凹面のベベルギアとして構成され、
G1 前記ギア部材のそれぞれは、内部保護用ホース(4)がその中を通っている中空の開口を有する、ロボットの手首において、
H1 第一手首部と第二手首部の間の回転軸(A1)は、第二手首部と第三手首部の間の回転軸(A2)と、前記ロボットの手首の少なくとも一つの状態で、前記内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差することと、
H2 前記回転軸(A1)の周りでの前記第二手首部の回転と前記回転軸(A2)の周りでの前記第三手首部の回転の両方が前記内部保護用ホース(4)の曲げを引き起こすこと、
H3 を特徴とするロボットの手首。
【請求項2】
下記特徴を備えた請求項1に記載のロボットの手首:
前記ギア部材の少なくとも一つは、前記回転軸(A1,A2)に対して垂直な平面に対して正のベベル角度を有する凸面のベベルギアを有している。
【請求項3】
下記特徴を備えた請求項1に記載のロボットの手首:
前記負のベベル角度(Cn)は、0度から20度の間の範囲内にある。
【請求項4】
下記特徴を備えた請求項1に記載のロボットの手首:
前記負のベベル角度(Cn)は、8度から12度の間の範囲内にある。
【請求項5】
下記特徴を備えた請求項1に記載のロボットの手首:
前記ギア部材は、環状のベベルギアである。
【請求項6】
下記特徴を備えた請求項1に記載のロボットの手首:
前記第二手首部(2)は、負のベベル角度(Cn)を有する前記ギア部材(12,13)を有している。
【請求項7】
下記特徴を備えた請求項4に記載のロボットの手首:
前記第二手首部(2)のギア部材の負のベベル角度(Cn)は、前記第一手首部(1)のギア部材(10)に噛み合うように構成されている。
【請求項8】
A 互いに直列に配置された複数の回転可能部を有するロボットの手首であって、
B 第一の軸の回りでの第一手首部の回転運動が可能であるように、ロボットの腕または自動化機械に装着されるように構成された少なくとも一つの第一手首部(1)と、
C この第一手首部にジャーナル接続された第二手首部(2)と、
D この第二手首部にジャーナル接続された第三手首部(3)と、を備え、
E 各手首部は、前記手首部のいずれか一つの、前記手首部の他のいずれか一つに対する前記回転運動を駆動するための、一つまたはそれ以上のギア部材を有しており、
F 前記ギア部材の少なくとも一つは、負のベベル角度(Cn)を有する凹面のベベルギアとして構成され、
G1 前記ギア部材のそれぞれは、内部保護用ホース(4)がその中を通っている中空の開口を有する、ロボットの手首において、
H1 第一手首部と第二手首部の間の回転軸(A1)は、第二手首部と第三手首部の間の回転軸(A2)と、前記ロボットの手首の少なくとも一つの状態で、前記内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差し、
O 前記内部保護用ホースは、前記手首が曲がった状態にあるとき、単一の円弧の形状に構成された前記手首部の内側を通るように構成されていること、
H3 を特徴とするロボットの手首。
【請求項9】
下記特徴を備えた請求項1に記載のロボットの手首:
前記手首部(1,2,3)の内側を通る前記内部保護用ホース(4)は、曲がった状態と真直ぐな状態において、全長が同じである。
【請求項10】
下記特徴を備えた請求項1に記載のロボットの手首:
前記内部保護用ホースは、実質的に円筒状の壁面を有するホースである。
【請求項11】
下記特徴を備えた請求項10に記載のロボットの手首:
前記内部保護用ホースは、真直ぐで平行な壁断面を有する円筒状の壁面を有するホースである。
【請求項12】
下記特徴を備えた請求項11に記載のロボットの手首:
前記内部保護用ホースは、波状の断面を有する壁を有するホースである。
【請求項13】
下記特徴を備えた請求項11に記載のロボットの手首:
前記内部保護用ホースは、少なくとも二つの異なる直径の円形の断面を有する関節式に接続されたホースを有している。
【請求項14】
下記特徴を備えた請求項12に記載のロボットの手首:
前記内部保護用ホースは、少なくとも一つの金属強化部材と複合化された高分子材料で形成されている。
【請求項15】
下記特徴を備えた請求項14に記載のロボットの手首:
前記内部保護用ホースは、フッ素重合体を有している。
【請求項16】
下記特徴を備えた請求項14に記載のロボットの手首:
前記金属強化部材は、複数の金属リングを有している。
【請求項17】
下記特徴を備えた請求項14に記載のロボットの手首:
前記金属強化部材は、ラセン状のワイヤを有している。
【請求項18】
下記特徴を備えた請求項16または17に記載のロボットの手首:
前記ホースの金属リングまたはラセン状のワイヤは、前記高分子材料の外側表面に取り付けられている。
【請求項19】
下記特徴を備えた請求項16または17に記載のロボットの手首:
前記ホースの金属リングまたはラセン状のワイヤは、前記高分子材料の中に埋め込まれている。
【請求項20】
下記特徴を備えた請求項1に記載のロボットの手首:
複数のホースおよび/またはケーブルは、前記手首部(1,2,3)の内側の前記内部保護用ホース(4)の中に収容されている。
【請求項21】
下記特徴を備えた請求項20に記載のロボットの手首:
前記複数のホースおよび/またはケーブルは、前記内部保護用ホースの内側で、所定の程度、捩じられていて、且つ、ホース、ワイヤ、フィードロッド、ケーブルの中のいずれかを有している。
【請求項22】
下記特徴を備えた請求項21に記載のロボットの手首:
前記複数のホースおよび/またはケーブルは、前記ロボットの手首の内側に収容され、180度までの所定の程度、捩じられている。
【請求項23】
下記特徴を備えた請求項1から7、又は請求項9から22の何れか1項に記載のロボットの手首:
第一手首部のギア部材(10)及び第三手首部のギア部材(14)は、正のギア角度を有する凸面のベベルギアであって、
第二手首部のギア部材(12,13)は、負のベベル角度を有する凹面のベベルギアである。
【請求項24】
下記特徴を備えた請求項8に記載のロボットの手首:
第一手首部のギア部材(10)及び第三手首部のギア部材(14)は、正のギア角度を有する凸面のベベルギアであって、
第二手首部のギア部材(12,13)は、負のベベル角度を有する凹面のベベルギアである。」
第4 請求人の主張
1 請求人の請求の趣旨
特許第4559419号発明の特許請求の範囲の請求項1~23に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。
2 請求の理由の補正
請求人は、請求の理由を、令和4年4月27日提出の上申書のとおり補正したところ、令和4年6月23日の口頭審理において、審判長は特許法第131条の2第2項の規定に基づき決定をもって補正を許可した(第1回口頭審理調書)。
3 無効理由
上記2で補正された請求の理由における無効理由は、本件訂正による訂正後の特許請求の範囲の請求項1~24に記載された発明についての特許を無効とすることを求めるものであって、令和4年4月27日に提出した上申書に記載した以下のとおりのものである(第1回口頭審理調書)。
(1)無効理由1-1(甲第1号証に記載された発明に基づく訂正特許発明1ないし8、20、23、24の新規性欠如)
ア 訂正特許発明1ないし8、20、23、24は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
イ したがって、訂正特許発明1ないし8、20、23、24に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(2)無効理由1-2(甲第2号証に記載された発明に基づく訂正特許発明1ないし8、20、23、24の新規性欠如)
ア 訂正特許発明1ないし8、20、23、24は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
イ したがって、訂正特許発明1ないし8、20、23、24に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(3)無効理由2-1(甲第1号証に記載された発明を主引例とする訂正特許発明1ないし24の進歩性欠如)
ア 訂正特許発明1ないし7、20、23は、甲第1号証に記載された発明と、
(a)甲第4号証に記載された事項、甲第5号証に記載された事項、若しくは甲第6号証に記載された事項、又は、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された周知技術、及び、
(b)甲第8号証に記載された事項、又は、甲第8号証に記載された周知技術から、
当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
イ 訂正特許発明8、24は、甲第1号証に記載された発明と、
(a)甲第4号証に記載された事項、甲第5号証に記載された事項、若しくは甲第6号証に記載された事項、又は、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された周知技術、及び、
(b)甲第2号証に記載された事項若しくは甲第8号証に記載された事項、又は、甲第2号証又は甲第8号証に記載された周知技術から、
当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
ウ 訂正特許発明9ないし13は、甲第1号証に記載された発明と、
(a)甲第5号証に記載された事項、及び、
(b)甲第4号証に記載された事項若しくは甲第6号証に記載された事項、又は、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された周知技術、及び、
(c)甲第8号証に記載された事項、又は、甲第8号証に記載された周知技術から、
当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
エ 訂正特許発明14ないし19は、甲第1号証に記載された発明と、
(a)甲第5号証に記載された事項、及び、甲第7号証に記載された事項、及び、
(b)甲第4号証に記載された事項若しくは甲第6号証に記載された事項、又は、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された周知技術、及び、
(c)甲第8号証に記載された事項、又は、甲第8号証に記載された周知技術から、
当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
オ 訂正特許発明21、22は、甲第1号証に記載された発明と、
(a)甲第5号証に記載された事項、及び、甲第6号証に記載された事項、及び、
(b)甲第4号証に記載された事項、又は、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された周知技術、及び、
(c)甲第8号証に記載された事項、又は、甲第8号証に記載された周知技術から、
当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
カ したがって、訂正特許発明1ないし24に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(4)無効理由2-2(甲第2号証に記載された発明を主引例とする訂正特許発明1ないし24の進歩性欠如)
ア 訂正特許発明1ないし7、20、23は、甲第2号証に記載された発明と、
(a)甲第4号証に記載された事項、甲第5号証に記載された事項、若しくは甲第6号証に記載された事項、又は、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された周知技術、及び、
(b)甲第3号証に記載された事項、又は、甲第3号証に記載された周知技術、及び、
(c)甲第8号証に記載された事項、又は、甲第8号証に記載された周知技術、
から、
当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
イ 訂正特許発明8、24は、甲第2号証に記載された発明と、
(a)甲第4号証に記載された事項、甲第5号証に記載された事項、若しくは甲第6号証に記載された事項、又は、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された周知技術、及び、
(b)甲第8号証に記載された事項、又は、甲第8号証に記載された周知技術、
から、
当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
ウ 訂正特許発明9ないし13は、甲第2号証に記載された発明と、
(a)甲第5号証に記載された事項、及び
(b)甲第4号証に記載された事項若しくは甲第6号証に記載された事項、又は、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された周知技術、及び、
(c)甲第3号証に記載された事項、又は、甲第3号証に記載された周知技術、及び、
(d)甲第8号証に記載された事項、又は、甲第8号証に記載された周知技術、
から、
当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
エ 訂正特許発明14ないし19は、甲第2号証に記載された発明と、
(a)甲第5号証に記載された事項、及び、甲第7号証に記載された事項、及び、
(b)甲第4号証に記載された事項若しくは甲第6号証に記載された事項、又は、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された周知技術、及び、
(c)甲第3号証に記載された事項、又は、甲第3号証に記載された周知技術、及び、
(d)甲第8号証に記載された事項、又は、甲第8号証に記載された周知技術、
から、
当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
オ 訂正特許発明21、22は、甲第2号証に記載された発明と、
(a)甲第5号証に記載された事項、及び、甲第6号証に記載された事項、及び、
(b)甲第4号証に記載された事項、又は、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された周知技術、及び、
(c)甲第3号証に記載された事項、又は、甲第3号証に記載された周知技術、及び、
(d)甲第8号証に記載された事項、又は、甲第8号証に記載された周知技術、
から、
当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
カ したがって、訂正特許発明1ないし24に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(5)無効理由2-3(甲第3号証に記載された発明を主引例とする訂正特許発明1ないし24の進歩性欠如)
ア 訂正特許発明1ないし7、20、23は、甲第3号証に記載された発明と、
(a)甲第4号証に記載された事項ないし甲第6号証に記載された事項、又は、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された周知技術、及び、
(b)甲第8号証に記載された事項、又は、甲第8号証に記載された周知技術から、
当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
イ 訂正特許発明8、24は、甲第3号証に記載された発明と、
(a)甲第4号証に記載された事項ないし甲第6号証に記載された事項、又は、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された周知技術、及び、
(b)甲第2号証に記載された事項若しくは甲第8号証に記載された事項、又は、甲第2号証若しくは甲第8号証に記載された周知技術から、
当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
ウ 訂正特許発明9ないし13は、甲第3号証に記載された発明と、
(a)甲第5号証に記載された事項、及び、
(b)甲第4号証に記載された事項若しくは甲第6号証に記載された事項、又は、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された周知技術、及び、
(c)甲第8号証に記載された事項、又は、甲第8号証に記載された周知技術から、
当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
エ 訂正特許発明14ないし19は、甲第3号証に記載された発明と、
(a)甲第5号証に記載された事項、及び、甲第7号証に記載された事項、及び
(b)甲第4号証に記載された事項若しくは甲第6号証に記載された事項、又は、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された周知技術、及び、
(c)甲第8号証に記載された事項、又は、甲第8号証に記載された周知技術から、
当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
オ 訂正特許発明21、22は、甲第3号証に記載された発明と、
(a)甲第5号証に記載された事項、及び、甲第6号証に記載された事項、及び
(b)甲第4号証に記載された事項、又は、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された周知技術、及び、
(c)甲第8号証に記載された事項、又は、甲第8号証に記載された周知技術から、
当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
カ したがって、訂正特許発明1ないし24に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
4 証拠方法
請求人は、審判請求書とともに甲第1号証~甲第7号証を、弁駁書とともに甲第8号証を、それぞれ提出した(以下、甲第1号証を「甲1」、同様に甲第2号証~甲第8号証をそれぞれ「甲2」~「甲8」という。)。
(1)審判請求書とともに提出した証拠方法
甲1:特開平7-148688号公報
甲2:特開昭58-40292号公報
甲3:特開昭60-150990号公報
甲4:特開平10-329079号公報
甲5:特開平8-229874号公報
甲6:実願昭61-75923号(実開昭62-188384号)のマイクロフィルム
甲7:特開平9-178056号公報
(2)弁駁書とともに提出した証拠方法
甲8:国際公開第99/11388号
第5 答弁書等における被請求人の主張
1 答弁の趣旨
本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。
2 無効理由に対する反論
答弁書の「7.理由」(第2~16ページ)、及び被請求人陳述要領書の6の「(2)審理事項通知書の第2の2.(審判請求人が主張する無効理由について)」(第2~4ページ)のとおりであり、すべての無効理由に基づく請求は成立しない旨主張するところ、概要は以下のとおりである。
(1)答弁書の主張
訂正特許発明1~24は、各甲号証記載の発明からみて、新規性及び進歩性を有する。
ア 訂正特許発明1及び訂正特許発明8は、甲1記載の発明からみて、新規性及び進歩性を有する。
イ 訂正特許発明1及び訂正特許発明8は、甲2記載の発明からみて、新規性及び進歩性を有する。
ウ 訂正特許発明1及び訂正特許発明8は、甲3-6記載の発明からみて、進歩性を有する。
(2)被請求人陳述要領書の主張
ア 甲1には、訂正特許発明1の第1構成(当審注:上記第3の1における分説G1)及び第2構成(同分説H1)、並びに、訂正特許発明8の第1構成、第2構成及び第4構成(同分説O)が、それぞれ開示されていない。
イ 甲2には、訂正特許発明1の第1構成、第2構成及び第3構成(同分説H2)、並びに、訂正特許発明8の第1構成、第2構成及び第4構成が、それぞれ開示されていない。
ウ 甲3には、訂正特許発明1の第1構成及び第2構成、並びに、訂正特許発明8の第1構成、第2構成及び第4構成が、それぞれ開示されていない。
エ 甲4~8のいずれにも、上記第1~4構成について開示されていない。
第6 証拠の記載
請求人による主な証拠には、以下の事項がそれぞれ記載されている(下線は当審で付与した。)。
1 甲1の記載事項
(1)発明の詳細な説明
「【0002】本発明によるロボットは中空で、それ故にスポット溶接またはアーク溶接、シーリング、ペインティング、接着、レーザー加工などのような処理工程に特に好適である。狭い空間内でのアクセス性はロボット内部へのプロセスケーブルの引込みが可能であることから特に良好となる。更に、内部へのケーブル引込みはロボットの非常に高い性能を生む。何故なら、ロボット工具の高速動作時において外部ケーブル配置の場合に生じる制御不能な振り回し運動を考慮する必要がないからである。
・・・
【0006】【課題を達成するための手段】これらの特徴を備えたロボットは請求項1に記載した特徴を有する設計の本発明によって達成される。ロボットの2つのアームの間の特別な関節連結により、上側ロボットアームは回転可能とされねばならないようなロボットスタンドを備えずに垂直面内で上方/後方および横方向に揺動できる。このことは位置およびその作動範囲に関して著しい融通性を与えることができる。この新規な設計の他の利点は、伝染および例えば冷却水、圧縮空気などのホースを含むプロセスケーブルが簡単且つ容易に交換可能にできることである。アーク溶接に関してはこのことは条件である。簡単なケーブル配置が使用可能となる。何故なら、中空チャンネルの彎曲半径が大きいからである。中空チャンネルが完全に真っ直ぐな状態となる位置にロボットを設定可能となされることで、ケーブルは容易に交換可能となるのであり、これは前述のEP-A-0299551号によるロボットではできない。
・・・
【0008】【実施例】図1に示された工業用ロボットは、管状の下側アーム2が水平な第1軸線Aののまわりに枢動可能に軸支されるロボット用スタンド1を有して設計されている。ロボットアーム2の枢動は、スタッド1に取付けられ且つ減速歯車を有する駆動モーターで構成されている第1駆動ユニット3によって行われる。下側ロボットアーム2はまたその長手軸線と一致する第2軸線Bのまわりに回転可能に軸支されている。軸線Bのまわりの下側アーム2の回転は、そのアームの下端部に取付けられ且つ減速歯車を備えた駆動モーターで構成されている第2駆動ユニット4によって行われる。
【0009】管状の上側ロボットアーム5は、両端を斜めに切り落とされた管状スリーブの関節連結部材を介して下側ロボットアーム2の上端部に関節連結されている。下側ロボットアーム2は軸受7の座部を作る斜めに切断された上端部を有し、その内部には関節連結部材6が第2軸線Bと交差する第3軸線Cのまわりに回転可能に軸支されている。
【0010】上側ロボットアーム5は第3軸線Cと交差する第4軸線Dのまわりに回転するように、関節連結部材6に固定されている。第1の環状の円錐歯車9は下側ロボットアームの斜めに切断された上端部に固定され、軸受7のための固定リングを形成している。この歯車9は第2の環状の円錐歯車10と係合されており、この第2円錐歯車は上側ロボットアームの後端部に固定されて軸受8のための固定リングを形成している。
【0011】関節連結部材6の回転は、下側ロボットアーム2の下端部に配置され且つ第2駆動ユニット4と同じ設計とされ得る第3駆動ユニット11によって行われる。この第3駆動ユニット11は下側ロボットアームに回転可能に軸支されたチューブ12を介して関節連結部材6に連結されており、このチューブの上端部は第3の環状の円錐歯車13に固定されている。この歯車13は第4の環状の円錐歯車14と係合されており、この第4円錐歯車は関節連結部材6に固定されて軸受7のための固定リングを形成している。【0012】図示された関節の設計によれば、駆動ユニット4および11を関連して制御することにより、上側ロボットアーム5をロボット上方へ振り上げ、また前方と実質的に同じ距離で後方へ振り下げるように揺動させることが可能となる。この揺動運動は1つの同じ垂直面内で行われ、これはこの設計のロボットを互いに非常に接近させて位置決めすることを可能にし、またこれらのロボットは互いに矛盾することなく後方の部品をピックアップできる。
【0013】上側ロボットアーム5は第4軸線Dのまわりに回転可能な管状後部部品51、および後部部品内の軸受に軸支され且つアームの軸線Eのまわりに回転可能な管状前部部品52を含んで構成される。」
(2)図面
「【図1】
[図:0001400986000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001400986000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001400986000003.jpg]
」
(3)甲1の記載事項の整理
ア 段落【0008】~【0013】、図2からみて、甲1には、下側ロボットアーム2、関節連結部材6、上側ロボットアーム5を有するロボットの2つのアームの間の関節連結構造について、記載されている。
イ 段落【0008】、図1の記載からみて、下側ロボットアーム2は、第2軸線Bの回りでの下側ロボットアーム2の回転運動が可能であるように、第2駆動ユニット4に取付けられている。
ウ 段落【0009】、図2の記載からみて、関節連結部材6は、下側ロボットアーム2に軸受7を介して接続されている。
エ 段落【0010】、図2の記載からみて、上側ロボットアーム5は、関節連結部材6に軸受8を介して接続されている。
オ 段落【0010】~【0011】、図2の記載からみて、下側ロボットアーム2、関節連結部材6、上側ロボットアーム5は、互いに対する回転運動を駆動するための、第3の環状の円錐歯車13、第4の環状の円錐歯車14、第2の環状の円錐歯車10、第1の環状の円錐歯車9を有している。
カ 段落【0011】、図2の記載からみて、第4の環状の円錐歯車14は、負のベベル角度を有する凹面のベベルギアとして構成されている。
キ 段落【0002】、【0010】~【0011】、図2の記載からみて、第3の環状の円錐歯車13、第4の環状の円錐歯車14、第2の環状の円錐歯車10、第1の環状の円錐歯車9のそれぞれは、プロセスケーブルがその中を通っている環状の構造を有する。
ク 段落【0009】~【0010】、【0012】、図2の記載からみて、下部ロボットアーム2と関節連結部材6の間の第3軸線Cは、関節連結部材6と上部ロボットアーム5の間の第4軸線Dと、上側ロボットアーム5を前方へ振り下げた状態で、関節連結部材6の内側で交差する。
ケ 段落【0009】~【0010】、図2の記載からみて、第3軸線Cの周りでの前記関節連結部材6の回転と第4軸線Dの周りでの上側ロボットアーム5の回転の両方がプロセスケーブルの曲げを引き起こすことが認められる。
コ 段落【0002】、【0006】、【0012】、図1~図2の記載からみて、プロセスケーブルは、上側ロボットアーム5を前方へ振り下げた状態にあるとき、下側ロボットアーム2、関節連結部材6、上側ロボットアーム5の内側を通るように構成されていることが認められる。
(4)甲1に記載された発明
上記(1)~(3)からみて、甲1には、次の発明(以下「甲1発明1」、及び「甲1発明8」という。また、「甲1発明1」と「甲1発明8」をまとめて「甲1発明」ということがある。)が記載されていると認められる。(なお、上記第3の分説の符号を考慮して、対応する符号を小文字で付記する。以下同様。)
<甲1発明1>
「a 下側ロボットアーム2、関節連結部材6、上側ロボットアーム5を有するロボットの2つのアームの間の関節連結構造であって、
b 第2軸線Bの回りでの下側ロボットアーム2の回転運動が可能であるように、第2駆動ユニット4に取付けられるように構成された下側ロボットアーム2と、
c この下側ロボットアーム2に軸受7を介して接続された関節連結部材6と、
d この関節連結部材6に軸受8を介して接続された上側ロボットアーム5と、を備え、
e 下側ロボットアーム2、関節連結部材6、上側ロボットアーム5は、互いに対する回転運動を駆動するための、第3の環状の円錐歯車13、第4の環状の円錐歯車14、第2の環状の円錐歯車10、第1の環状の円錐歯車9を有しており、
f 前記第4の環状の円錐歯車14は、負のベベル角度を有する凹面のベベルギアとして構成され、
g1 第3の環状の円錐歯車13、第4の環状の円錐歯車14、第2の環状の円錐歯車10、第1の環状の円錐歯車9のそれぞれは、プロセスケーブルがその中を通っている環状の構造を有する、ロボットの2つのアームの間の関節連結構造において、
h1 下部ロボットアーム2と関節連結部材6の間の第3軸線Cは、関節連結部材6と上部ロボットアーム5の間の第4軸線Dと、上側ロボットアーム5を前方へ振り下げた状態で、関節連結部材6の内側で交差し、
h2 前記第3軸線Cの周りでの前記関節連結部材6の回転と前記第4軸線Dの周りでの前記上側ロボットアーム5の回転の両方が前記プロセスケーブルの曲げを引き起こす、
h3 ロボットの2つのアームの間の関節連結構造。」
<甲1発明8>
「a 下側ロボットアーム2、関節連結部材6、上側ロボットアーム5を有するロボットの2つのアームの間の関節連結構造であって、
b 第2軸線Bの回りでの下側ロボットアーム2の回転運動が可能であるように、第2駆動ユニット4に取付けられるように構成された下側ロボットアーム2と、
c この下側ロボットアーム2に軸受7を介して接続された関節連結部材6と、
d この関節連結部材6に軸受8を介して接続された上側ロボットアーム5と、を備え、
e 下側ロボットアーム2、関節連結部材6、上側ロボットアーム5は、互いに対する回転運動を駆動するための、第3の環状の円錐歯車13、第4の環状の円錐歯車14、第2の環状の円錐歯車10、第1の環状の円錐歯車9を有しており、
f 前記第4の環状の円錐歯車14は、負のベベル角度を有する凹面のベベルギアとして構成され、
g1 第3の環状の円錐歯車13、第4の環状の円錐歯車14、第2の環状の円錐歯車10、第1の環状の円錐歯車9のそれぞれは、プロセスケーブルがその中を通っている環状の構造を有する、ロボットの2つのアームの間の関節連結構造において、
h1 下部ロボットアーム2と関節連結部材6の間の第3軸線Cは、関節連結部材6と上部ロボットアーム5の間の第4軸線Dと、上側ロボットアーム5を前方へ振り下げた状態で、関節連結部材6の内側で交差し、
o 前記プロセスケーブルは、前記上側ロボットアーム5を前方へ振り下げた状態にあるとき、前記下側ロボットアーム2、関節連結部材6、上側ロボットアーム5の内側を通るように構成されている、
h3 ロボットの2つのアームの間の関節連結構造。」
2 甲2の記載事項
(1)発明の詳細な説明
(a)「障害のない通路を用いるということには、支持部材に装着した加工工具に流体および電力を供給するホースやワイヤのための保護を行なえるという利点がある。第3の独立した運動軸線(独特の歯車配置およびハウジング構造を伴う)を包含し、かつそれにもかかわらず障害のない通路を用いることができる機械的リスト機構が必要とされる。」(第2ページ右上欄第20行~左下欄第7行)
(b)「本発明による好ましい配置においては、静止したベース部材が3つの入力駆動部材を回転自在に支持し、これらの入力駆動部材がそれぞれの歯車列を介して第1のハウジング、この第1のハウジングに回転自在に支えられた第2のハウジングおよびこの第2のハウジングに回転自在に支えられた工具支持部材に連結してあり、これらのハウジングおよび支持部材の各々がそれぞれの軸線周りに回転できるようになつている。」(第2ページ左下欄第18行~右下欄第7行)
(c)「図面に示したように、リスト機構10はブームまたは支持アーム(不図示)に連結されるようになつている相対的静止ベース部材12を包含する。このベース部材12は長手方向の軸線14を有し、この軸線周りに複数の入力駆動軸16,18,20が周方向に離間して設けてある。駆動軸16は一対のニードル軸受22,24に回転自在に支えられており、駆動歯車26が固着してある。駆動軸18は一対のニードル軸受28,30に回転自在に支えられており、駆動歯車32が固着してある。駆動軸20は一対のニードル軸受34,36に回転自在に支えられており、駆動歯車38が固着されている。」(第2ページ右下欄第10行~第3ページ左上欄第3行)
(d)「ベース部材12は、玉軸受42,44によつて回転自在に支えられて軸線14の周りに回転できるようになつているハウジング部材40を有する。このハウジング40の軸線14の周りの回転は一体の歯車46によつて行なわれ、この歯車46は駆動歯車26とかみ合つており、したがつて入力駆動軸16の回転に応じて回転する。
ベース部材12は、軸線14の周りに回転できるように玉軸受50,52に回転自在に支えられたスリーブ部材48を有する。このスリーブ部材48には歯車部材54が固着してあり、この歯車部材は駆動歯車38とかみ合つており、したがつて、入力軸20が回転した時、スリーブ部材48が軸線14の周りに回転することになる。このスリーブ部材48にはかさ歯車56も固着してある。」(第3ページ左上欄第4~20行)
(e)「入力軸18にある駆動歯車32は歯車58とかみ合つており、この歯車58は一対の玉軸受60,62によつてスリーブ48上に軸線14周りに回転できるように支えられている。歯車58にはかさ歯車64が取付けてある。」(第3ページ右上欄第1~6行)
(f)「ハウジング40は中間の軸線68の周りに配置された孔(開口)66を有し、この中間軸線68は角度70だけ軸線14から角度的に変位している。軸線68,14は点72のところで交差している。孔66には一対の玉軸受74,76が取り付けてあり、これらの玉軸受は軸線68の周りに回転できるように中間ハウジング78を回転自在に支えている。」(第3ページ右上欄第7~14行)
(g)「第1図で分るように、中間ハウジング78は軸線82に沿つて延びるスリーブ部80を有し、この軸線82は角度84だけ軸線68から角度的に変位している。軸線82は点72のところで軸線14,68双方と交差しており、したがつて、3つの軸線14,16,82が互に交差する点を持つことになる。」(第3ページ右上欄第15行~左下欄第1行)
(h)「中間ハウジング78にはかさ歯車86が固着してあり、このかさ歯車はかさ歯車64とかみ合つており、したがつて、入力軸18によつて歯車32が回転する時、中間ハウジング78が軸線68の周りに回転することになる。
中間ハウジング78には一対の玉軸受88,90が固着してあり、これらの軸受は、軸線68の周りに回転できるようにかさ歯車組立体92を回転自在に支えている。かさ歯車組立体92はかさ歯車56とかみ合うかさ歯車94と、かさ歯車96とを包含する。このかさ歯車96はかさ歯車98とかみ合つており、このかさ歯車98は工具支持部材100に固着されるかあるいはそこに一体に形成されている。工具支持部材100は、中間ハウジング78に固着された玉軸受102,104によつて軸線82の周りに回転できるように支えられている。」(第3ページ左下欄第2~20行)
(i)「工具支持部材100は工具取付面106が固着してあり、この工具取付面は製品の組立または仕上げで用いる溶接機、塗料噴霧器その他の装置のような加工工具を与えるようになつている。工具支持部材100は歯車38と54、かさ歯車56と94、かさ歯車96と98のかみ合いを介して駆動軸20の回転に応じて軸線82の周りに回転させられる。」(第3ページ右下欄第1~8行)
(j)「図面で分るように、スリーブ部材48は長手方向の通路108を有し、この通路は軸線14に沿つて障害のないものとなつている。ハウジング40は空所110を有する。この空所にはかさ歯車112が配置してあり、これは障害のない中心孔112を有する。中間ハウジング78はかさ歯車組立体92の一部を囲む大きな内部空所114を有する。工具支持部材100は障害のない長手方向の開口116を有し、この開口は軸線82に沿つて配置されている。このようにして、相対的に静止したベース部材12から工具取付面106まで障害のない通路が設けられる。この障害のない通路は、公知なもの(例えば米国特許第4218166号)と同様の方式でホースおよびワイヤを収容することができる。」(第3ページ右下欄第9行~第4ページ左上欄第4行)
(k)「このリスト機構10は、特に、噴霧塗装や溶接のような種々の製造生産過程を達成するように制御される産業ロボツトで有益である。」(第4ページ右上欄第20行~左下欄第2行)
(2)図面
「第1図
[図:0001400986000004.jpg]
」
「第2図
[図:0001400986000005.jpg]
」
(3)甲2の記載事項の整理
ア 上記(1)(d)、(f)、(h)、(k)、第1図からみて、甲2には、ハウジング部材40、中間ハウジング78、工具支持部材100を有する産業ロボットのリスト機構10について記載されている。
イ 上記(1)(d)、第1図の記載からみて、ハウジング部材40は、軸線14の回りでのハウジング部材40の回転運動が可能であるように、ベース部材12に支えられるように構成されている。
ウ 上記(1)(f)、第1図の記載からみて、中間ハウジング78は、このハウジング部材40に一対の玉軸受74、76を介して支えられている。
エ 上記(1)(h)、第1図の記載からみて、工具支持部材100は、中間ハウジング78に玉軸受102、104を介して支えられている。
オ 上記(1)(h)、(i)、第1図の記載からみて、ハウジング部材40、中間ハウジング78、工具支持部材100は、互いに対する回転運動を駆動するための、かさ歯車64、かさ歯車86、かさ歯車56、かさ歯車94、かさ歯車96、かさ歯車98を有している。
カ 上記第1図の記載からみて、かさ歯車86、かさ歯車94、かさ歯車96は、負のベベル角度を有する凹面のベベルギアとして構成されている。
キ 上記(1)(a)、(j)、第1図の記載からみて、かさ歯車64、かさ歯車86、かさ歯車56、かさ歯車94、かさ歯車96、かさ歯車98のそれぞれは、加工工具に流体および電力を供給するホースやワイヤがその中を通っている中空の開口を有する。
ク 上記(1)(h)、第1~2図の記載からみて、ハウジング40は中間ハウジング78を軸線68の廻りに回転自在に支え、中間ハウジング78は工具支持部材100を軸線82の廻りに回転できるように支え、ハウジング40と中間ハウジング78の間の軸線68は、中間ハウジング78と工具支持部材100の間の軸線82と、前記産業ロボットのリスト機構10の少なくとも一つの作動姿勢(第1図あるいは第2図図示の姿勢)で、中間ハウジング78の内側で交差する。
ケ 上記(1)(h)、(j)、第1~2図の記載からみて、軸線68の周りでの前記中間ハウジング78の回転と前記軸線82の周りでの前記工具支持部材100の回転のうち、軸線68の周りでの前記中間ハウジング78の回転が前記加工工具に流体および電力を供給するホースやワイヤの曲げを引き起こすことが認められる。
コ 上記第2図の記載からみて、加工工具に流体および電力を供給するホースやワイヤは、リスト機構10が曲がった状態にあるとき、一つの曲部において屈曲し、リスト機構10の内側を通るように構成されることは明らかである。
(4)甲2に記載された発明
上記(1)~(3)からみて、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明1」、及び「甲2発明8」という。また、「甲2発明1」と「甲2発明8」をまとめて「甲2発明」ということがある。)が記載されていると認められる。
<甲2発明1>
「a ハウジング部材40、中間ハウジング78、工具支持部材100を有する産業ロボットのリスト機構10であって、
b 軸線14の回りでのハウジング部材40の回転運動が可能であるように、ベース部材12に支えられるように構成されたハウジング部材40と、
c このハウジング部材40に一対の玉軸受74、76を介して支えられた中間ハウジング78と、
d この中間ハウジング78に玉軸受102、104を介して支えられた工具支持部材100と、を備え、
e ハウジング部材40、中間ハウジング78、工具支持部材100は、互いに対する回転運動を駆動するための、かさ歯車64、かさ歯車86、かさ歯車56、かさ歯車94、かさ歯車96、かさ歯車98を有しており、
f 前記かさ歯車86、前記かさ歯車94、前記かさ歯車96は、負のベベル角度を有する凹面のベベルギアとして構成され、
g1 かさ歯車64、かさ歯車86、かさ歯車56、かさ歯車94、かさ歯車96、かさ歯車98のそれぞれは、加工工具に流体および電力を供給するホースやワイヤがその中を通っている中空の開口を有する、産業ロボットのリスト機構10において、
h1 ハウジング40と中間ハウジング78の間の軸線68は、中間ハウジング78と工具支持部材100の間の軸線82と、前記産業ロボットのリスト機構10の少なくとも一つの作動姿勢で、中間ハウジング78の内側で交差し、
h2 前記軸線68の周りでの前記中間ハウジング78の回転と前記軸線82の周りでの前記工具支持部材100の回転のうち、前記軸線68の周りでの前記中間ハウジング78の回転が前記加工工具に流体および電力を供給するホースやワイヤの曲げを引き起こす、
h3 産業ロボットのリスト機構10。」
<甲2発明8>
「a ハウジング部材40、中間ハウジング78、工具支持部材100を有する産業ロボットのリスト機構10であって、
b 軸線14の回りでのハウジング部材40の回転運動が可能であるように、ベース部材12に支えられるように構成されたハウジング部材40と、
c このハウジング部材40に一対の玉軸受74、76を介して支えられた中間ハウジング78と、
d この中間ハウジング78に玉軸受102、104を介して支えられた工具支持部材100と、を備え、
e ハウジング部材40、中間ハウジング78、工具支持部材100は、互いに対する回転運動を駆動するための、かさ歯車64、かさ歯車86、かさ歯車56、かさ歯車94、かさ歯車96、かさ歯車98を有しており、
f 前記かさ歯車86、前記かさ歯車94、前記かさ歯車96は、負のベベル角度を有する凹面のベベルギアとして構成され、
g1 かさ歯車64、かさ歯車86、かさ歯車56、かさ歯車94、かさ歯車96、かさ歯車98のそれぞれは、加工工具に流体および電力を供給するホースやワイヤがその中を通っている中空の開口を有する、産業ロボットのリスト機構10において、
h1 ハウジング40と中間ハウジング78の間の軸線68は、中間ハウジング78と工具支持部材100の間の軸線82と、前記産業ロボットのリスト機構10の少なくとも一つの作動姿勢で、中間ハウジング78の内側で交差し、
o 前記加工工具に流体および電力を供給するホースやワイヤは、前記リスト機構10が曲がった状態にあるとき、一つの曲部において屈曲し、前記リスト機構10の内側を通るように構成されている、
h3 産業ロボットのリスト機構10。」
3 甲3の記載事項
(1)発明の詳細な説明
(a)「ロボツト腕及び腕関節は中空であつてそれらの中にケーブル及び他の線のための通路を納めている。この通路は曲つた関節の場合及びその他のケーブル及び線を注意して扱う形状の場合に大きな曲率半径を有する。」(第2ページ右上欄第5~9行)
(b)「本発明は大きな配列能力を有するロボツト腕関節に3つの軸線を備えかつ異なる種類の線を中空ロボツト腕から腕関節によつて支持された工具へ通し得る通路を腕関節を通して設けることを目的とする。」(第2ページ左下欄第1~5行)
(c)「しかしながら、若干の簡単な応用例では、工具を腕関節の第三の部分に直接に取付けることを妨げるものがないので相当に簡単化された腕関節を得られる。」(第2ページ右下欄第1~4行)
(d)「第二の腕関節部分はロボツト腕の駆動軸及びこの駆動軸及び第二の腕関節部分のかさ歯車ピニオンを介して駆動手段に連結されている。第三の腕関節部分の工具取付具はロボツト腕の駆動軸及び第二の腕関節に直列に配置された多数の歯車ピニオンを有する中間歯車ユニツトを介してロボツトの駆動装置に適当に連結されている。これらの歯車ピニオンは適当に環状であつて、ケーブル及び他の線を例えば溶接工具のような工具まで延ばすことができる貫通した開口又は通路を腕関節中に得る。また、工具取付具のための駆動モータを腕関節中に配置することは可能である。」(第2ページ右下欄第5~16行)
(e)「第1図において、1は6つの軸線を有する産業用ロボツトであり、その3つの軸線はロボツト自体にありかつ3つの軸線は腕関節にある。基盤2上に、柱3が軸線A-Aの周りに回転可能に軸接されている。この柱に、第一の腕4が軸線Bの周りに回転可能に軸接されている。第一の腕の上方部分に、第二の腕5が軸線Cの周りに回転可能に軸接されている。柱は駆動手段(図示せず)によつて作動され、腕4は駆動装置6によつて作動されかつ腕5は駆動装置7によつて作動され、その主要部分は駆動装置6によつてかくれている。腕関節10を駆動するための駆動装置8は腕5に設けられている。」(第2ページ右下欄第18行~第3ページ左上欄第10行)
(f)「腕関節10は、前後して配置されかつ相互に回転し得る3つの部分11,12,13で構成される。第一の腕関節部分11は軸線D-Dの周りに回転可能であり、第二の部分12は軸線E-Eの周りに回転可能であり、かつ第三の部分13は軸線F-Fの周りに回転可能である。腕関節10全体はその第一の部分がロボツトの腕5の軸受14に軸接された管状駆動軸15に連結し得るので容易に交換可能なユニツトを構成する。」(第3ページ左上欄第11~19行)
(g)「腕関節部分11は軸線D-Dと直角に切られかつねじ切りされたフランジ17を形成した端部を有する管スリーブ16と、ボルト18によつてスリーブ16に連結されかつ軸受21及び22のための座を形成するリング20と、軸線E-Eと直角にありかつ軸受23のための座を形成した斜めに切られた端部とからなる。腕関節10は、ねじ切りされたフランジ17と、駆動軸のフランジ24に設けられたねじ切りされたリング25と、部品を相互に正しい角度位置に固定する鎖錠ピン26とによつて駆動軸15に連結されている。環状かさ歯車ピニオン27はボルト28によつてスリーブ16の斜めに切られた端部に連結されかつ軸受23のための固定リングを形成する。」(第3ページ左上欄第20行~右上欄第13行)
(h)「腕関節10の第二の部分12は、両端で斜めに切られかつ軸受23のための座を形成する管スリーブ30と、対応する軸受31及び軸受32,33,34,35と、ボルト38によつて管スリーブ30に連結されかつ軸受23及び32のための固定リングを形成する環状かさ歯車ピニオン37と、ボルト41によつて管スリーブ30に連結されかつ軸受31及び32のための固定リングを形成するリング40と、緊定装置43によつて管スリーブ30に連結された保護装置42とからなる。腕関節10の第二の部分12はスリーブ45のかさ歯車ピニオン44に連結されており、スリーブ45はリング20中で軸受21及び22に軸接されておりかつリング48によつて軸線方向に固定されている。スリーブ45は内部スプラインを設けた管状駆動軸50と連結する外部スプラインを設けている。この駆動軸50は駆動軸15の内側の軸受51に軸接されている。」(第3ページ右上欄第14行~左下欄第11行)
(i)「腕関節10の第三の部分13は、基部において斜めに切られかつそこに軸受31のための座を形成しておりかつ先端部においてその軸線G-Gに対して直角に切られかつそこに軸受53及び54のための座を形成している截頭円錐体52と、ボルト56によつて円錐体52に連結されかつ軸受51のための固定リングを構成する環状かさ歯車ピニオン55とからなる。歯車ピニオン55は第一の腕関節部分11の歯車ピニオン27と協働する。腕関節部分11及び13はこのようにして一緒に連結される。軸線D-Dの周りでの腕関節部分11の回転時に、腕関節部分は軸線F-Fの周りへ回転する。」(第3ページ左下欄第12行~右下欄第4行)
(j)「第三の腕関節部分13に、軸線G-Gの周りを回転し得る工具取付具57がある。この取付具は、軸受53及び54に軸接されかつその内方部分にかさ歯車ピニオン60を形成したスリーブ58と、工具を支持するためスリーブ58上で軸線方向に取外し得る固定リング61と、スリーブ58を軸受53,54に及び固定リング61をスリーブ58に固定するためのくさび62及び鎖錠リング63とを有する。工具取付具57は、軸受62によつて駆動軸50に軸接されかつ内部スプラインを設けた駆動軸65へ、外部スプラインを設けたスリーブ66、その歯車ピニオン67、歯車ピニオン68及び69、歯車ピニオン71及び72を有するスリーブ70、歯車ピニオン73及び74、及びスリーブ58の歯車ピニオン60を介して連結されている。」(第3ページ右下欄第4~19行)
(k)「スリーブ66は軸受75及び76によつてスリーブ45に軸接されておりかつ鎖錠装置77によつて固定されている。歯車ピニオン68及び69、スリーブ70及び歯車ピニオン73及び74は軸受32,34及び35及び33によつて第二の腕関節に回転可能に軸接されている。環状歯車ピニオン68及び69はねじ切りされたリング77によつて保持され、そのねじ部分は環状歯車ピニオン69の内部ねじ部分と協働する。環状歯車ピニオン73及び74はねじ切りされたリング78によつて保持され、そのねじ部分は環状歯車ピニオン73の内部ねじ部分と協働する。スリーブ70は鎖錠リング79によつて軸受34,35に軸線方向へ固定されている。」(第3ページ右下欄第19行~第4ページ左上欄第13行)
(l)「図示した実施例では、第2図による位置で、腕関節の軸線D-D及びG-G並びに腕関節部分12の中心軸線H-Hは一致している。軸線D-D及びE-Eの間の角度α及び軸線E-E及びH-Hの間の角度α′は等しく大きく、かつ軸線H-H及びF-Fの間の角度γ及び軸線F-F及びG-Gの間の角度γ′は等しく大きく、α=α′=γ=γ′である。角度βは180°-(α+γ)になり、α=γの時にβは180°-2αに等しい。α=α′=γ=γ′=35°の時、ηは140°に等しくなり、かつ非常に良好な接近性が得られ、それは特に箱形構造の内側を溶接する時に非常に価値がある。」(第4ページ左上欄第14行~右上欄第6行)
(m)「以上の説明及び図面から明らかなように、腕関節は中空であるので、例えば溶接棒のためのケーブル及び保護ガス導管及び線がロボツト腕を通してかつ更に腕関節を通して作業ステーシヨンまで通ることができる。」(第4ページ左下欄第4~8行)
(n)「別の重要な利点は工具の回転中に管状軸65及びロボツト腕関節中及び軸65を通るケーブル組立体を取囲む全ての要素が同じ方向へ回転することである。ケーブル組立体の捩れがなくかつ摩耗が重大ではない。」(第4ページ左下欄第16~20行)
(2)図面
「第1図
[図:0001400986000006.jpg]
」
「第2図
[図:0001400986000007.jpg]
」
「第3図
[図:0001400986000008.jpg]
」
(3)甲3の記載事項の整理
ア 上記(1)(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、第1図の記載からみて、甲3には、第一の腕関節部分11、第二の部分12、第三の部分13を有する産業用ロボット1の腕関節10について記載されている。
イ 上記(1)(f)、第1~3図の記載からみて、第一の腕関節部分11は、軸線D-Dの回りでの第一の腕関節部分11の回転運動が可能であるように、ロボットの腕5に連結される。
ウ 上記(1)(g)、(h)、第2~3図の記載からみて、第二の部分12は、第一の腕関節部分11に軸受23を介して連結される。
エ 上記(1)(h)、(i)、第2~3図の記載からみて、第三の部分13は、第二の部分12に軸受31を介して連結される。
オ 上記(1)(h)、(i)、第2~3図の記載からみて、第一の腕関節部分11、第二の部分12、第三の部分13は、互いに対する回転運動を駆動するための、かさ歯車ピニオン44、環状かさ歯車ピニオン37、環状かさ歯車ピニオン27、環状かさ歯車ピニオン55を有している。
カ 上記第2~3図の記載からみて、環状かさ歯車ピニオン37は、負のベベル角度を有する凹面のベベルギアとして構成される。
キ 上記(1)(a)、(d)、(m)、第2~3図の記載からみて、かさ歯車ピニオン44、環状かさ歯車ピニオン37、環状かさ歯車ピニオン27、環状かさ歯車ピニオン55のそれぞれは、溶接棒のためのケーブル及び保護ガス導管及び線がその中を通っている環状の構造を有する。
ク 上記第2~3図の記載からみて、第一の腕関節部分11は第二の部分12と軸線E-Eの周りに相互に回転可能であり、第二の部分12と第三の部分13は軸線F-Fの周りに相互に回転可能であり、第一の腕関節部分11と第二の部分12の間の軸線E-Eは、第二の部分12と第三の部分13の間の軸線F-Fと、前記産業用ロボット1の腕関節10の少なくとも一つの状態(第2図あるいは第3図の図示の状態)で、第二の部分12の内側で交差する。
ケ 上記(1)(l)、第2~3図の記載からみて、軸線E-Eの周りでの第二の部分12の回転と軸線F-Fの周りでの第三の部分13の回転の両方が前記溶接棒のためのケーブル及び保護ガス導管及び線の曲げを引き起こすことが、認められる。
コ 上記(1)(a)、(b)、(m)の記載からみて、前記溶接棒のためのケーブル及び保護ガス導管及び線は、腕関節10が曲がった状態にあるとき、中空である腕関節10に納められた通路(管スリーブ30の内部)を通るように構成されている。
(4)甲3に記載された発明
上記(1)~(3)からみて、甲3には、次の発明(以下、「甲3発明1」、「甲3発明8」という。また、「甲3発明1」と「甲3発明8」をまとめて「甲3発明」ということがある。)が記載されていると認められる。
<甲3発明1>
「a 第一の腕関節部分11、第二の部分12、第三の部分13を有する産業用ロボット1の腕関節10であって、
b 軸線D-Dの回りでの第一の腕関節部分11の回転運動が可能であるように、ロボットの腕5に連結されるように構成された第一の腕関節部分11と、
c この第一の腕関節部分11に軸受23を介して連結された第二の部分12と、
d この第二の部分12に軸受31を介して連結された第三の部分13と、
e 第一の腕関節部分11、第二の部分12、第三の部分13は、互いに対する回転運動を駆動するための、かさ歯車ピニオン44、環状かさ歯車ピニオン37、環状かさ歯車ピニオン27、環状かさ歯車ピニオン55を有しており、
f 前記環状かさ歯車ピニオン37は、負のベベル角度を有する凹面のベベルギアとして構成され、
g1 かさ歯車ピニオン44、環状かさ歯車ピニオン37、環状かさ歯車ピニオン27、環状かさ歯車ピニオン55のそれぞれは、溶接棒のためのケーブル及び保護ガス導管及び線がその中を通っている環状の構造を有する、産業用ロボット1の腕関節10において、
h1 第一の腕関節部分11と第二の部分12の間の軸線E-Eは、第二の部分12と第三の部分13の間の軸線F-Fと、前記産業用ロボット1の腕関節10の少なくとも一つの状態で、第二の部分12の内側で交差し、
h2 前記軸線E-Eの周りでの前記第二の部分12の回転と前記軸線F-Fの周りでの前記第三の部分13の回転の両方が前記溶接棒のためのケーブル及び保護ガス導管及び線の曲げを引き起こす、
h3 産業用ロボット1の腕関節10。」
<甲3発明8>
「a 第一の腕関節部分11、第二の部分12、第三の部分13を有する産業用ロボット1の腕関節10であって、
b 軸線D-Dの回りでの第一の腕関節部分11の回転運動が可能であるように、ロボットの腕5に連結されるように構成された第一の腕関節部分11と、
c この第一の腕関節部分11に軸受23を介して連結された第二の部分12と、
d この第二の部分12に軸受31を介して連結された第三の部分13と、
e 第一の腕関節部分11、第二の部分12、第三の部分13は、互いに対する回転運動を駆動するための、かさ歯車ピニオン44、環状かさ歯車ピニオン37、環状かさ歯車ピニオン27、環状かさ歯車ピニオン55を有しており、
f 前記環状かさ歯車ピニオン37は、負のベベル角度を有する凹面のベベルギアとして構成され、
g1 かさ歯車ピニオン44、環状かさ歯車ピニオン37、環状かさ歯車ピニオン27、環状かさ歯車ピニオン55のそれぞれは、溶接棒のためのケーブル及び保護ガス導管及び線がその中を通っている環状の構造を有する、産業用ロボット1の腕関節10において、
h1 第一の腕関節部分11と第二の部分12の間の軸線E-Eは、第二の部分12と第三の部分13の間の軸線F-Fと、前記産業用ロボット1の腕関節10の少なくとも一つの状態で、第二の部分12の内側で交差し、
o 前記溶接棒のためのケーブル及び保護ガス導管及び線は、前記腕関節10が曲がった状態にあるとき、中空である前記腕関節10に納められた通路(管スリーブ30の内部)を通るように構成されている、
h3 産業用ロボット1の腕関節10。」
4 甲8の記載事項
(a)「A flexible tubular shaft 100 has an inner end rotatably supported by the housing 22 through bearing 102, bevel gear 92 and bearing 106, which inner end is secured in non-rotating relationship with a center gear 104. The flexible tubular shaft 100 has an outer end 108 in driving engagement with the spray head 38. A spray head drive means includes flexible drive shaft assembly 110 and a third pinion 112 in meshing engagement with the hollow center gear 104 for rotating the inner end of the tubular flexible shaft 100. The flexible and hollow shaft 100 is hollow and the paint line 72, the air line 80 and the core element 46 and the conduit 58 extend from the coupling member 54 and into the hollow shaft 100 at the inner end and through the hollow shaft 100 to the spray head 38 or 38'.」(明細書第6頁第17~27行)
(和訳(請求人が提出したもの。以下同じ):可撓性管状シャフト100は、ベアリング102、ベベルギア92、およびベアリング106を介してハウジング22によって回転可能に支持される内端を有し、内端は、センターギア104と非回転関係で固定される。可撓性管状シャフト100は、スプレーヘッド38と駆動係合する、外端108を有する。スプレーヘッド駆動手段は、可撓性駆動シャフト組立体110と第3のピニオン112を含み、管状可撓性シャフト100の内端を回転させるための中空センターギア104と噛み合って係合する。可撓中空シャフト100は、中空であり、塗装ライン72、空気ライン80、コア要素46、および導管58は、カップリング部材54から延び、内側端部の中空シャフト100に入り、中空シャフト100を通ってスプレーヘッド38または38’に達する。)
(b)「In operation, the drive shaft assembly 96 rotates the second pinion 98 to rotate the third drive gear 94 and bevel gear 92 to rotate the second drive gear 36 to move the tool support member 30 about the transverse axis (C) to anyone of various positions between the straight ahead position and the right angle position. In order to rotate the spray head in a circle when in the right angle position shown in phantom in Figure 2, or any other transverse angle, the flexible shaft assembly 88 rotates the pinion 90 which, in turn, rotates the first drive gear 28 to rotate the housing 22. In these various positions, the flexible drive shaft assembly 110 rotates the pinion 112 to rotate the center gear 104 and the hollow shaft 100.」(明細書第6頁第28行~第7頁第7行)
(和訳:動作中、ドライブシャフト組立体96は、第2のピニオン98を回転させて第3のドライブギア94とかさ歯車92を回転させて、第2のドライブギア36を回転させて、ツール支持部材30を横軸(C)の周りで、直進位置と直角位置の間において、様々な位置のいずれかに移動させる。図2の仮想線に示される直角位置、または他の任意の横角度にあるとき、スプレーヘッドを円状に回転させるために、可撓性シャフト組立体88はピニオン90を回転させ、次に、ピニオン90は第1のドライブギア28を回転させて、ハウジング22を回転させる。これらの様々な位置において、可撓性駆動シャフトアセンブリ110は、ピニオン112を回転させて、センターギア104および中空シャフト100を回転させる。)
(c)「【図2】
[図:0001400986000009.jpg]
」
第7 当審の判断
1 甲1を主引用例とする無効理由1-1及び2-1について
(1)訂正特許発明1
ア 訂正特許発明1と甲1発明1の対比
(ア)甲1発明1の「下側ロボットアーム2、関節連結部材6、上側ロボットアーム5を有するロボットの2つのアームの間の関節連結構造」を訂正特許発明1の「互いに直列に配置された複数の回転可能部を有するロボットの手首」と対比する。甲1発明1の下側ロボットアーム2、関節連結部材6、及び上側ロボットアーム5は、それぞれ回転可能であって互いに直列に配置されているところ、「関節連結構造」はアームだけでなくロボットの手首にも存在することから、両者は「互いに直列に配置された複数の回転可能部を有するロボットの関節連結構造」という点で一致する。
(イ)甲1発明1の「第2軸線B」は訂正特許発明1の「第一の軸」に相当し、同様に「第2駆動ユニット4に取付けられる」ことは「ロボットの腕または自動化機械に装着される」ことに、「ジャーナル接続された」は「軸受7あるいは軸受8を介して接続された」に相当する。
(ウ)上記(ア)のとおり、「関節連結構造」はアームだけでなくロボットの手首にも存在することから、甲1発明1の「下側ロボットアーム2」は訂正特許発明1の「第一手首部(1)」と、関節連結構造の構造部材としての「第一構造部材」である点で共通し、同様に「関節連結部材6」は「第二手首部(2)」と「第二構造部材」である点で、「上側ロボットアーム5」は「第三手首部(3)」と「第三構造部材」である点でそれぞれ共通する。
(エ)甲1発明1の「第3の環状の円錐歯車13、第4の環状の円錐歯車14、第2の環状の円錐歯車10、第1の環状の円錐歯車9」は、訂正特許発明1の「一つまたはそれ以上のギア部材」に相当し、甲1発明1の「第4の環状の円錐歯車14」は、「ギア部材の少なくとも一つ」として、訂正特許発明1の「ベベルギヤ」に相当する。
(オ)甲1発明1の「第3軸線C」は訂正特許発明1の「回転軸A1」に、同様に「第3軸線D」は「回転軸A2」にそれぞれ相当し、甲1発明1の「上側ロボットアーム5を前方へ振り下げた状態」は、訂正特許発明1の「ロボット」の「一つの状態である」ことに該当する。
(カ)甲1発明1のg1「第3の環状の円錐歯車13、第4の環状の円錐歯車14、第2の環状の円錐歯車10、第1の環状の円錐歯車9のそれぞれは、プロセスケーブルがその中を通っている環状の構造を有する、」ロボットの手首において、h1「下部ロボットアーム2と関節連結部材6の間の第3軸線Cは、関節連結部材6と上部ロボットアーム5の第4軸線Dと、上側ロボットアーム5を前方へ振り下げた状態で、関節連結部材6の内側で交差」することと、h2「前記第3軸線Cの周りでの前記関節連結部材6の回転と前記第4軸線Dの周りでの前記上側ロボットアーム5の回転の両方が前記プロセスケーブルの曲げを引き起こす」ことを、
訂正特許発明1のG1「前記ギア部材のそれぞれは、内部保護用ホース(4)がその中を通っている中空の開口を有する、」ロボットの関節連結構造において、H1「第一手首部と第二手首部の間の回転軸(A1)は、第二手首部と第三手首部の間の回転軸(A2)と、前記ロボットの手首の少なくとも一つの状態で、前記内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差する」ことと、H2「前記回転軸(A1)の周りでの前記第二手首部の回転と前記回転軸(A2)の周りでの前記第三手首部の回転の両方が前記内部保護用ホース(4)の曲げを引き起こす」ことと対比すると、甲1発明1の「プロセスケーブル」と訂正特許発明1の「内部保護ホース(4)」は、ロボットの中空の内部に配置される「柔軟性を有する線状の部材」という点では共通する。
したがって、両発明は、「前記ギア部材のそれぞれは、柔軟性を有する線状の部材がその中を通っている中空の開口を有する、」ロボットの関節連結構造において、「第一構造部材と第二構造部材の間の回転軸(A1)は、第二構造部材と第三構造部材の間の回転軸(A2)と、前記ロボットの関節連結構造の少なくとも一つの状態で、交差」することと、「前記回転軸(A1)の周りでの前記第二構造部材の回転と前記回転軸(A2)の周りでの前記第三構造部材の回転の両方が前記柔軟性を有する線状の部材の曲げを引き起こす」ことに限り、一致する。
イ 訂正特許発明1と甲1発明との一致点及び相違点
上記アの点を踏まえると、訂正特許発明1と甲1発明とは、以下の一致点1で一致し、相違点1、及び相違点2で相違する。
(ア)<一致点1>
「互いに直列に配置された複数の回転可能部を有するロボットの関節連結構造であって、
第一の軸の回りでの第一構造部材の回転運動が可能であるように、ロボットの腕又は自動化機械に装着されるように構成された少なくとも一つの第一構造部材と、
この第一構造部材にジャーナル接続された第二構造部材と、
この第二構造部材にジャーナル接続された第三構造部材と、を備え、
各構造部材は、前記構造部材のいずれか一つの、前記構造部材の他のいずれか一つに対する前記回転運動を駆動するための、一つまたはそれ以上のギア部材を有しており、
前記ギア部材の少なくとも一つは、負のベベル角度(Cn)を有する凹面のベベルギアとして構成され、
前記ギア部材のそれぞれは、柔軟性を有する線状の部材がその中を通っている中空の開口を有する、ロボットの関節連結構造において、
第一構造部材と第二構造部材の間の回転軸(A1)は、第二構造部材と第三構造部材の間の回転軸(A2)と、前記ロボットの関節連結構造の少なくとも一つの状態で、交差し、
前記回転軸(A1)の周りでの前記第二構造部材の回転と前記回転軸(A2)の周りでの前記第三構造部材の回転の両方が前記柔軟性を有する線状の部材の曲げを引き起こす、
ロボットの関節連結構造。」
(イ)<相違点1>
本件訂正発明1と甲1発明1は、いずれも「互いに直列に配置された複数の回転可能部を有するロボットの関節連結構造」であるものの、本件訂正発明1は、「ロボットの手首」に関する発明であって、当該「ロボットの手首」が「第一手首部(1)」と「第二手首部(2)」と「第三手首部(3)」とを備える構成であるのに対し、甲1発明1は、「ロボットの2つのアームの間の関節連結構造」に関する発明であって、「ロボットの手首」に関する発明ではなく、また、「ロボットの2つのアームの間の関節連結構造」を構成する「下側ロボットアーム2」、「関節連結部材6」、「上側ロボットアーム5」は、いずれも「手首部」とはいえない点。
(ウ)<相違点2>
「ロボットの関節連結構造」の中に通っている「柔軟性を有する線状の部材」について、訂正特許発明1は「内部保護用ホース(4)」であるのに対し、甲1発明1は「プロセスケーブル」であって「内部保護用ホース(4)」ではなく、したがって、ロボットの関節連結構造の少なくとも一つの状態における、「回転軸(A1)」と「回転軸(A2)」との交差位置が、訂正特許発明1は、「内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差」するのに対し、甲1発明は、「関節連結部材6の内側で交差」するものの、「内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差」するものではなく、加えて、回転軸(A1)の周りでの第二構造部材の回転と回転軸(A2)の周りでの第三構造部材の回転の両方が曲げを引き起こす柔軟性を有する線状の部材が、訂正特許発明1では「内部保護用ホース(4)」であるのに対して、甲1発明1では「プロセスケーブル」である点。
ウ 相違点の検討(判断)
(ア)無効理由1-1について
上記イ(イ)~(ウ)より、訂正特許発明1と甲1発明1とは相違点1、2が存在するから、訂正特許発明1は甲1発明1ではない。また、訂正特許発明2~7、20、23は、訂正特許発明1を引用し、訂正特許発明1の特定事項の全てを含むものであり、甲1発明1とは少なくとも相違点1、2を有するから、甲1発明1でない。
よって、訂正特許発明1~7、20、23は、無効理由1-1により無効とすることはできない。
(イ)無効理由2-1について
次に、無効理由2-1(甲1発明を主引例とする進歩性欠如)について検討する。
事案に鑑み、相違点2から検討する。
(内部保護用ホースを設けることについて)
甲1発明1は、下側ロボットアーム2、関節連結部材6、上側ロボットアーム5の内側を通るように構成されたプロセスケーブルを備えるが、このプロセスケーブルを保護するための訂正特許発明1の内部保護用ホースに相当する部材については甲1に記載がなく、このような部材を有していないことは明らかである。すなわち、甲1の段落【0006】には、プロセスケーブルについて、「伝染および例えば冷却水、圧縮空気などのホースを含む」(当審注:「伝染」は「電線」の誤記である。)ことが記載されているが、内部保護用ホースを伴うことについては記載がないし、甲1発明1において、このような内部保護用ホースを伴うことが自明とする事情も見当たらない。
また、甲1の段落【0002】には、ロボット内部へのプロセスケーブルの引込みが、外部ケーブル配置に比べてロボットの性能向上に有利であり、特に狭い範囲でのアクセス性の向上や制御不能な振り回し運動を考慮することがないこと等が記載され、段落【0006】には、甲1発明1によりプロセスケーブルが簡単且つ容易に交換可能にできることが記載されているが、このような効果は、甲1発明1のような関節構造を有するロボットの内部にプロセスケーブルを引き込むことで実現されるものであって、甲1発明1に対して、さらに内部保護用ホースを設けることについて動機は見出せない。
この点、甲4には、ロボットの手首の内部を通過するケーブルのバングル49(段落【0022】)、甲5には、産業用ロボットの手首装置の内部に設けられる筒状部材50(段落【0013】~【0017】、【0021】)、甲6には、円筒状に形成した第1の歯車軸35(明細書第10ページ第6~12行)が、それぞれ記載されている。
しかしながら、甲4、甲6はそもそもプロセスケーブルを保護する「ホース」を示すものではないから、甲4~甲6からは、関節連結構造の内部に内部保護用ホースを設けることが周知の技術であるということはできない。また、甲5は、ホース、ケーブル及び導管等を有害過酷な外部環境から保護するため、通路を密封状態とするものであるところ(段落【0002】~【0006】)、甲1にはこのような過酷な外部環境で用いることや、そのためにプロセスケーブルを密封することについては何ら記載がないから、当該技術を採用する動機は生じない。
(内部保護用ホースの境界壁の内側で回転軸が交差することについて)
上記相違点2の回転軸(A1)と回転軸(A2)との交差位置が、内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差すること(以下「交差位置関係」という。)についても検討すると、そもそもこの交差位置関係の構成は、内部保護用ホースの存在が前提となって初めて実現する事項であるところ、内部保護用ホースの存在しない甲1発明1において内部保護用ホースを設けることが容易であるとはいえないのであるから、交差位置関係を採用することも容易に想到し得たことではない。
加えて、回転軸(A1)と回転軸(A2)との交差位置が、内部保護用ホースの境界壁の内側で交差することを示す証拠もなく、交差位置関係を採用する積極的な動機もないのであるから、仮に甲1発明1に、内部保護用ホースを採用し得たとしても、交差位置関係になるとは限らない。
よって、相違点1について検討するまでもなく、訂正特許発明1は、甲1発明1及び他の各号証記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
また、訂正特許発明2~7、9~23は、訂正特許発明1を引用し、訂正特許発明1の特定事項の全てを含むものであり、甲1発明1とは少なくとも相違点1、2を有するところ、相違点2については上記と同様のことがいえるから、甲1発明1及び他の各号証記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
エ 小括
したがって、上記ウ(ア)のとおり、訂正特許発明1、及びこれを引用する訂正特許発明2~7、20、23は、甲1に記載された甲1発明1でなく特許法第29条第1項第3号に該当せず同条第1項の規定に違反してされたものでないから、無効理由1-1により無効とすることはできない。
また、上記ウ(イ)のとおり、訂正特許発明1、及びこれを引用する訂正特許発明2~7、9~23は、甲1発明1及び他の各号証記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでなく特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでないから、無効理由2-1により無効とすることはできない。
(2)訂正特許発明8
ア 訂正特許発明8と甲1発明8の対比
上記(1)アにおける訂正特許発明1と甲1発明1の対比を踏まえて、訂正特許発明8と甲1発明8とを対比すると、上記(1)ア(ア)~(オ)は共通である。そして上記(1)ア(カ)に代えて、以下の(カ’)のことがいえる。
(カ’)甲1発明8のg1「第3の環状の円錐歯車13、第4の環状の円錐歯車14、第2の環状の円錐歯車10、第1の環状の円錐歯車9のそれぞれは、プロセスケーブルがその中を通っている環状の構造を有する、」ロボットの手首において、h1「下部ロボットアーム2と関節連結部材6の間の第3軸線Cは、関節連結部材6と上部ロボットアーム5の第4軸線Dと、上側ロボットアーム5を前方へ振り下げた状態で、関節連結部材6の内側で交差」することと、o「前記プロセスケーブルは、前記上側ロボットアーム5を前方へ振り下げた状態にあるとき、前記下側ロボットアーム2、関節連結部材6、上側ロボットアーム5の内側を通るように構成されている」ことを、
訂正特許発明8のG1「前記ギア部材のそれぞれは、内部保護用ホース(4)がその中を通っている中空の開口を有する、」ロボットの関節連結構造において、H1「第一手首部と第二手首部の間の回転軸(A1)は、第二手首部と第三手首部の間の回転軸(A2)と、前記ロボットの手首の少なくとも一つの状態で、前記内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差する」ことと、O「前記内部保護用ホースは、前記手首が曲がった状態にあるとき、単一の円弧の形状に構成された前記手首部の内側を通るように構成されていること」と対比すると、甲1発明1の「プロセスケーブル」と訂正特許発明1の「内部保護ホース(4)」は、ロボットの中空の内部に配置される「柔軟性を有する線状の部材」という点では共通する。
したがって、両発明は、「前記ギア部材のそれぞれは、柔軟性を有する線状の部材がその中を通っている中空の開口を有する、」ロボットの関節連結構造において、「第一構造部材と第二構造部材の間の回転軸(A1)は、第二構造部材と第三構造部材の間の回転軸(A2)と、前記ロボットの関節連結構造の少なくとも一つの状態で、交差」することと、「前記柔軟性を有する線状の部材は、前記関節連結構造が曲がった状態にあるとき、前記構造部材の内側を通るように構成されている」ことに限り、一致する。
イ 訂正特許発明8と甲1発明8との一致点及び相違点
上記(1)アの点を踏まえると、訂正特許発明8と甲1発明8とは以下の一致点2で一致し、相違点1及び相違点3で相違する。
(ア)<一致点2>
「互いに直列に配置された複数の回転可能部を有するロボットの関節連結構造であって、
第一の軸の回りでの第一構造部材の回転運動が可能であるように、ロボットの腕又は自動化機械に装着されるように構成された少なくとも一つの第一構造部材と、
この第一構造部材にジャーナル接続された第二構造部材と、
この第二構造部材にジャーナル接続された第三構造部材と、を備え、
各構造部材は、前記構造部材のいずれか一つの、前記構造部材の他のいずれか一つに対する前記回転運動を駆動するための、一つまたはそれ以上のギア部材を有しており、
前記ギア部材の少なくとも一つは、負のベベル角度(Cn)を有する凹面のベベルギアとして構成され、
前記ギア部材のそれぞれは、柔軟性を有する線状の部材がその中を通っている中空の開口を有する、ロボットの関節連結構造において、
第一構造部材と第二構造部材の間の回転軸(A1)は、第二構造部材と第三構造部材の間の回転軸(A2)と、前記ロボットの関節連結構造の少なくとも一つの状態で、交差し、
前記柔軟性を有する線状の部材は、前記関節連結構造が曲がった状態にあるとき、前記構造部材の内側を通るように構成されている、
ロボットの関節連結構造。」
(イ)<相違点1>上記(1)イ(ア)と同じ。
(ウ)<相違点3>「ロボットの関節連結構造」の中に通っている「柔軟性を有する線状の部材」について、訂正特許発明8は「内部保護用ホース(4)」であるのに対し、甲1発明8は「プロセスケーブル」であって「内部保護用ホース(4)」ではなく、したがって、ロボットの関節連結構造の少なくとも一つの状態における、「回転軸(A1)」と「回転軸(A2)」との交差位置が、訂正特許発明8は、「内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差」するのに対し、甲1発明8は、「関節連結部材6の内側で交差」するものの、「内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差」するものではなく、加えて、関節連結構造が曲がった状態にあるとき、構造部材の内側を通るように構成されている柔軟性を有する線状の部材が、訂正特許発明8では「単一の円弧の形状」の「内部保護用ホース(4)」であるのに対して、甲1発明8では「プロセスケーブル」である点。
ウ 相違点の検討(判断)
(ア)無効理由1-1について
上記イ(イ)~(ウ)より、訂正特許発明8と甲1発明8は相違点が存在する。よって、訂正特許発明8、及びこれを引用する訂正特許発明24は甲1に記載された甲1発明8でなく、無効理由1-1により無効とすることはできない。
(イ)無効理由2-1について
次に、無効理由2-1(甲1発明を主引例とする進歩性欠如)について検討する。
事案に鑑み、相違点3から検討する。
(内部保護用ホースを設けることについて)
甲1発明8は、下側ロボットアーム2、関節連結部材6、上側ロボットアーム5の内側を通るように構成されたプロセスケーブルを備えるが、このプロセスケーブルを保護するための訂正特許発明8の内部保護用ホースに相当する部材については甲1に記載がなく、このような部材を有していないことは明らかである。すなわち、甲1の段落【0006】には、プロセスケーブルについて、「伝染および例えば冷却水、圧縮空気などのホースを含む」(当審注:「伝染」は「電線」の誤記である。)ことが記載されているが、内部保護用ホースを伴うことについては記載がないし、甲1発明8において、このような内部保護用ホースを伴うことが自明とする事情も見当たらない。
また、甲1の段落【0002】には、ロボット内部へのプロセスケーブルの引込みが、外部ケーブル配置に比べてロボットの性能向上に有利であり、特に狭い範囲でのアクセス性の向上や制御不能な振り回し運動を考慮することがないこと等が記載され、段落【0006】には、甲1発明8によりプロセスケーブルが簡単且つ容易に交換可能にできることが記載されているが、このような効果は、甲1発明8のような関節構造を有するロボットの内部にプロセスケーブルを引き込むことで実現されるものであって、甲1発明8に対して、さらに内部保護用ホースを設けることについて動機は見出せない。
この点、甲4には、ロボットの手首の内部を通過するケーブルのバングル49(段落【0022】)、甲5には、産業用ロボットの手首装置の内部に設けられる筒状部材50(段落【0013】~【0017】、【0021】)、甲6には、円筒状に形成した第1の歯車軸35(明細書10ページ6~12行)が、それぞれ記載されている。
しかしながら、甲4、甲6はそもそもプロセスケーブルを保護する「ホース」を示すものではないから、甲4~甲6からは、関節連結構造の内部に内部保護用ホースを設けることが周知の技術であるということはできない。また、甲5は、ホース、ケーブル及び導管等を有害過酷な外部環境から保護するため、通路を密封状態とするものであるところ(段落【0002】~【0006】)、甲1にはこのような過酷な外部環境で用いることや、そのためにプロセスケーブルを密封することについては何ら記載がないから、当該技術を採用する動機は生じない。
(内部保護用ホースの境界壁の内側で回転軸が交差することについて)
上記相違点3の回転軸(A1)と回転軸(A2)との交差位置が、内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差すること、及び関節連結構造が曲がった状態にあるとき、構造部材の内側を通るように構成されている柔軟性を有する線状の部材が、「単一の円弧の形状」の「内部保護用ホース(4)」であることについても検討すると、そもそもこの交差位置関係の構成及び内部保護用ホースが単一の円弧の形状となることは、内部保護用ホースの存在が前提となって初めて実現する事項であるところ、内部保護用ホースの存在しない甲1発明8において内部保護用ホースを設けることが必ずしも容易であるとはいえないのであるから、交差位置関係を採用すること、内部保護用ホースが単一の円弧の形状となるようにすることも容易に想到し得たことではない。
加えて、回転軸(A1)と回転軸(A2)との交差位置が、内部保護用ホースの境界壁の内側で交差することを示す証拠もなく、交差位置関係を採用する積極的な動機もないし、内部保護用ホースを単一の円弧形状とすることについても証拠がない。また、甲8には、中空シャフト100が一つの曲部において屈曲する構成の開示があるものの、この曲部が単一の円弧形状であるかどうかは不明であるし、甲8に記載されたものとは異なる関節連結構造を有する甲1発明8のような関節連結構造において、内部保護用ホースを単一の円弧形状とすることを示すものでもない。
そうすると、仮に甲1発明8に、内部保護用ホースを採用し得たとしても、交差位置関係になるとは限らないし、内部保護用ホースが単一の円弧の形状となるともいえない。
よって、相違点1について検討するまでもなく、訂正特許発明8は、甲1発明8及び他の各号証記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
また、訂正特許発明24は、訂正特許発明8を引用し、訂正特許発明8の特定事項の全てを含むものであり、甲1発明8とは少なくとも相違点1、3を有するところ、相違点3については上記と同様のことがいえるから、甲1発明3及び他の各甲号証記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
エ 小括
したがって、上記ウ(ア)より、訂正特許発明8、及びこれを引用する訂正特許発明24は、甲1に記載された甲1発明8でなく特許法第29条第1項第3号に該当せず同条第1項の規定に違反してされたものでないから、無効理由1-1により無効とすることはできない。
また、上記ウ(イ)より、相違点1について検討するまでもなく、訂正特許発明8、及びこれを引用する訂正特許発明24は、甲1発明8及び他の各号証記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでなく特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでないから、無効理由2-1により無効とすることはできない。
2 甲2を主引用例とする無効理由1-2及び2-2
(1)訂正特許発明1
ア 訂正特許発明1と甲2発明1の対比
(ア)甲2発明1の「ハウジング部材40、中間ハウジング78、工具支持部材100を有する産業ロボットのリスト機構10」は、ハウジング部材40、中間ハウジング78、工具支持部材100が、いずれも回転可能部を有し互いに直列に配置されているから、訂正特許発明1の「互いに直列に配置された複数の回転可能部を有するロボットの手首」に相当する。
(イ)甲2発明1の「軸線14」は訂正特許発明1の「第一の軸」に、同様に「ハウジング部材40」は「第一手首部(1)」に、「ベース部材12に支えられる」ことは「ロボットの腕または自動化機械に装着される」ことにそれぞれ相当する。
(ウ)甲2発明1の「中間ハウジング78」は訂正特許発明1の「第二手首部(2)」に、同様に「工具支持部材100」は「第三手首部(3)」にそれぞれ相当し、甲2発明1の「一対の玉軸受74、76、102、104を介して支えられた」ことは訂正特許発明1の「ジャーナル接続された」ことに相当する。
(エ)甲2発明1の「かさ歯車64、かさ歯車86、かさ歯車56、かさ歯車94、かさ歯車96、かさ歯車98」は訂正特許発明1の「一つまたはそれ以上のギア部材」に相当し、甲1発明の「かさ歯車86、かさ歯車94、かさ歯車98」は、「ギア部材の少なくとも一つ」として、訂正特許発明1の「ベベルギヤ」に相当する。
(オ)甲2発明1の「軸線68」は訂正特許発明1の「回転軸A1」に、同様に「軸線82」は「回転軸A2」にそれぞれ相当し、甲2発明1の「一つの作動姿勢」は、訂正特許発明1の「一つの状態である」ことに該当する。
(カ)甲2発明1のg1「かさ歯車64、かさ歯車86、かさ歯車56、かさ歯車94、かさ歯車96、かさ歯車98のそれぞれは、加工工具に流体および電力を供給するホースやワイヤがその中を通っている中空の開口を有する、」産業ロボットのリスト機構10において、h1「ハウジング40と中間ハウジング78の間の軸線68は、中間ハウジング78と工具支持部材100の間の軸線82と、前記産業ロボットのリスト機構10の少なくとも一つの作動姿勢で、中間ハウジング78の内側で交差」することと、h2「前記軸線68の周りでの前記中間ハウジング78の回転と前記軸線82の周りでの前記工具支持部材100の回転のうち、前記軸線68の周りでの前記中間ハウジング78の回転が前記加工工具に流体および電力を供給するホースやワイヤの曲げを引き起こす」ことを、
訂正特許発明1のG1「前記ギア部材のそれぞれは、内部保護用ホース(4)がその中を通っている中空の開口を有する、」ロボットの手首において、H1「第一手首部と第二手首部の間の回転軸(A1)は、第二手首部と第三手首部の間の回転軸(A2)と、前記ロボットの手首の少なくとも一つの状態で、前記内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差する」ことと、H2「前記回転軸(A1)の周りでの前記第二手首部の回転と前記回転軸(A2)の周りでの前記第三手首部の回転の両方が前記内部保護用ホース(4)の曲げを引き起こす」ことと対比すると、甲2発明1の「加工工具に流体および電力を供給するホースやワイヤ」と訂正特許発明1の「内部保護ホース(4)」は、ロボットの中空の内部に配置される「柔軟性を有する線状の部材」という点では共通する。
したがって、両発明は、「前記ギア部材のそれぞれは、柔軟性を有する線状の部材がその中を通っている中空の開口を有する、」ロボットの手首において、「第一手首部と第二手首部の間の回転軸(A1)は、第二手首部と第三手首部の間の回転軸(A2)と、前記ロボットの手首部の少なくとも一つの状態で、交差」することと、「前記回転軸(A1)の周りでの前記第二手首部の回転が前記柔軟性を有する線状の部材の曲げを引き起こす」ことに限り、一致する。
イ 訂正特許発明1と甲2発明1との一致点及び相違点
上記アの点を踏まえると、訂正特許発明1と甲2発明1とは、以下の一致点3で一致し、相違点4、及び相違点5で相違する。
(ア)<一致点3>
「互いに直列に配置された複数の回転可能部を有するロボットの手首であって、
第一の軸の回りでの第一手首部の回転運動が可能であるように、ロボットの腕又は自動化機械に装着されるように構成された少なくとも一つの第一手首部と、
この第一手首部にジャーナル接続された第二手首部と、
この第二手首部にジャーナル接続された第三手首部と、を備え、
各手首部は、前記手首部のいずれか一つの、前記手首部の他のいずれか一つに対する前記回転運動を駆動するための、一つまたはそれ以上のギア部材を有しており、
前記ギア部材の少なくとも一つは、負のベベル角度(Cn)を有する凹面のベベルギアとして構成され、
前記ギア部材のそれぞれは、柔軟性を有する線状の部材がその中を通っている中空の開口を有する、ロボットの手首において、
第一手首部と第二手首部の間の回転軸(A1)は、第二手首部と第三手首部の間の回転軸(A2)と、前記ロボットの手首の少なくとも一つの状態で、交差し、
前記回転軸(A1)の周りでの前記第二手首部の回転が前記柔軟性を有する線状の部材の曲げを引き起こす、
ロボットの手首。」
(イ)<相違点4>
「ロボットの手首」の中に通っている「柔軟性を有する線状の部材」について、訂正特許発明1は「内部保護用ホース(4)」であるのに対し、甲2発明1は「加工工具に流体および電力を供給するホースやワイヤ」であって「内部保護用ホース(4)」ではなく、したがって、ロボットの手首の少なくとも一つの状態における、「回転軸(A1)」と「回転軸(A2)」との交差位置が、訂正特許発明1は、「内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差」するのに対し、甲2発明1は、「中間ハウジング78の内側で交差」するものの、「内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差」するものではなく、加えて、回転軸(A1)の周りでの第二手首部の回転が曲げを引き起こす柔軟性を有する線状の部材が、訂正特許発明1では「内部保護用ホース(4)」であるのに対して、甲2発明1では「加工工具に流体および電力を供給するホースやワイヤ」である点。
(ウ)<相違点5>
訂正特許発明1は、「前記回転軸(A1)の周りでの前記第二手首部の回転」と「前記回転軸(A2)の周りでの前記第三手首部の回転」の「両方」が「前記内部保護用ホース(4)の曲げ」を引き起こすのに対し、
甲2発明1は、「前記軸線68の周りでの前記中間ハウジング78の回転」と「前記軸線82の周りでの前記工具支持部材100の回転」のうち、前者の回転は「前記加工工具に流体および電力を供給するホースやワイヤの曲げ」を引き起こすものの、後者の回転は「前記加工工具に流体および電力を供給するホースやワイヤの曲げ」を引き起こすものではない点。
ウ 相違点の検討(判断)
(ア)無効理由1-2について
上記イ(イ)~(ウ)より、訂正特許発明1と甲2発明1は相違点が存在するから、訂正特許発明1は甲2発明1ではない。また、訂正特許発明2~7、20、23は、訂正特許発明1を引用し、訂正特許発明1の特定事項の全てを含むものであり、甲2発明1とは少なくとも相違点4、5を有するから、甲2発明1でない。
よって、訂正特許発明1~7、20、23は、無効理由1-2により無効とすることはできない。
(イ)無効理由2-2について
次に、無効理由2-2(甲2発明を主引例とする進歩性欠如)について検討する。
事案に鑑み、相違点4から検討する。
(内部保護用ホースを設けることについて)
甲2発明1は、加工工具に流体および電力を供給するホースやワイヤを備えるが、これらのホースやワイヤを保護するための訂正特許発明1の内部保護用ホースに相当する部材については甲2に記載がなく、このような部材を有していないことは明らかである。
甲2発明1は「ホース」を有しているものの、これは加工工具に流体および電力を供給する用途に用いられるものであって、「内部保護用ホース」とは異なるものである。
甲2には、柔軟性を有する線状の部材に関し、(A)「障害のない通路を用いるということには、支持部材に装着した加工工具に流体および電力を供給するホースやワイヤのための保護を行なえるという利点がある。」(第2ページ右上欄第20行~左下欄第3行)、及び(B)「このようにして、相対的に静止したベース部材12から工具取付面106まで障害のない通路が設けられる。この障害のない通路は、公知なもの(例えば米国特許第4218166号)と同様の方式でホースおよびワイヤを収容することができる。」(第3ページ右下欄第19行-第4ページ左上欄第4行)との記載があるが、これら(A)~(B)の記載から、甲2において、障害のない通路を用いたことでホースやワイヤのための保護をできることが示されるものの、内部保護用ホースを伴うことについては記載がないし、このような内部保護用ホースを伴うことが自明とする事情も見当たらない。
また、上記(A)の記載は、障害のない通路を設けること、すなわち内部保護用ホースのような特別な手段を設けずとも、通路の障害をなくすことで、ホースやワイヤを保護することを示唆しているともいえるから、これらの事項から甲2発明1において、内部保護用ホースを設けることについて動機は見出せない。
この点、甲4には、ロボットの手首の内部を通過するケーブルのバングル49(段落【0022】)、甲5には、産業用ロボットの手首装置の内部に設けられる筒状部材50(段落【0013】~【0017】、【0021】)、甲6には、円筒状に形成した第1の歯車軸35(明細書10ページ6~12行)が、それぞれ記載されている。
しかしながら、甲4、甲6はそもそもプロセスケーブルを保護する「ホース」を示すものではないから、甲4~甲6からは、関節連結構造の内部に内部保護用ホースを設けることが周知の技術であるということはできない。また、甲5は、ホース、ケーブル及び導管等を有害過酷な外部環境から保護するため、通路を密封状態とするものであるところ(段落【0002】~【0006】)、甲2にはこのような過酷な外部環境で用いることや、そのためにプロセスケーブルを密封することについては何ら記載がないから、当該技術を採用する動機は生じない。
(内部保護用ホースの境界壁の内側で回転軸が交差することについて)
上記相違点4の回転軸(A1)と回転軸(A2)との交差位置が、内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差することについても検討すると、そもそもこの交差位置関係の構成は、内部保護用ホースの存在が前提となって初めて実現する事項であるところ、内部保護用ホースの存在しない甲2発明1において内部保護用ホースを設けることが容易であるとはいえないのであるから、交差位置関係を採用することも容易に想到し得たことではない。
加えて、回転軸(A1)と回転軸(A2)との交差位置が、内部保護用ホースの境界壁の内側で交差することを示す証拠もなく、交差位置関係を採用する積極的な動機もないのであるから、仮に甲2発明1に、内部保護用ホースを採用し得たとしても、交差位置関係になるとは限らない。
よって、相違点5について検討するまでもなく、訂正特許発明1は、甲2発明1及び他の各号証記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
また、訂正特許発明2~7、9~23は、訂正特許発明1を引用し、訂正特許発明1の特定事項の全てを含むものであり、甲2発明1とは少なくとも相違点4、5を有するところ、相違点4については上記と同様のことがいえるから、甲2発明1及び他の各号証記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
エ 小括
したがって、上記ウ(ア)より、訂正特許発明1、及びこれを引用する訂正特許発明2~7、20、23は、甲2に記載された甲2発明1でなく特許法第29条第1項第3号に該当せず同条第1項の規定に違反してされたものでないから、無効理由1-2により取り消すことはできない。
また、上記ウ(イ)より、訂正特許発明1、及びこれを引用する訂正特許発明2~7、9~23は、甲2発明1及び他の各号証記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでなく特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでないから、無効理由2-2により無効とすることはできない。
(2)訂正特許発明8
ア 訂正特許発明8と甲2発明8の対比
上記(1)アにおける訂正特許発明1と甲2発明1の対比を踏まえて、訂正特許発明8と甲2発明8とを対比すると、上記(1)ア(ア)~(オ)は共通である。そして上記(1)ア(カ)に代えて、以下の(カ’)のことがいえる。
(カ’)甲2発明8のg1「かさ歯車64、かさ歯車86、かさ歯車56、かさ歯車94、かさ歯車96、かさ歯車98のそれぞれは、加工工具に流体および電力を供給するホースやワイヤがその中を通っている中空の開口を有する、」産業ロボットのリスト機構10において、h1「ハウジング40と中間ハウジング78の間の軸線68は、中間ハウジング78と工具支持部材100の間の軸線82と、前記産業ロボットのリスト機構10の少なくとも一つの作動姿勢で、中間ハウジング78の内側で交差」することと、o「前記加工工具に流体および電力を供給するホースやワイヤは、前記リスト機構10が曲がった状態にあるとき、一つの曲部において屈曲し、前記リスト機構10の内側を通るように構成されている」ことを、
訂正特許発明8のG1「前記ギア部材のそれぞれは、内部保護用ホース(4)がその中を通っている中空の開口を有する、」ロボットの手首において、H1「第一手首部と第二手首部の間の回転軸(A1)は、第二手首部と第三手首部の間の回転軸(A2)と、前記ロボットの手首の少なくとも一つの状態で、前記内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差する」ことと、O「前記内部保護用ホースは、前記手首が曲がった状態にあるとき、単一の円弧の形状に構成された前記手首部の内側を通るように構成されていること」と対比すると、甲2発明8の「加工工具に流体および電力を供給するホースやワイヤ」と訂正特許発明8の「内部保護ホース(4)」は、ロボットの中空の内部に配置される「柔軟性を有する線状の部材」という点では共通する。
したがって、両発明は、「前記ギア部材のそれぞれは、柔軟性を有する線状の部材がその中を通っている中空の開口を有する、」ロボット手首において、「第一手首部と第二手首部の間の回転軸(A1)は、第二手首部と第三手首部の間の回転軸(A2)と、前記ロボットの手首の少なくとも一つの状態で、交差」することと、「前記柔軟性を有する線状の部材は、前記手首部が曲がった状態にあるとき、一つの曲部において屈曲し、前記手首部の内側を通るように構成されている」ことに限り、一致する。
イ 訂正特許発明8と甲2発明8との一致点及び相違点
上記アの点を踏まえて訂正特許発明8と甲2発明8とを対比すると、以下の一致点4で一致し、上記相違点5で相違するのに加えて、以下の相違点6で相違する。
(ア)<一致点4>
「互いに直列に配置された複数の回転可能部を有するロボットの手首であって、
第一の軸の回りでの第一手首部の回転運動が可能であるように、ロボットの腕又は自動化機械に装着されるように構成された少なくとも一つの第一手首部と、
この第一手首部にジャーナル接続された第二手首部と、
この第二手首部にジャーナル接続された第三手首部と、を備え、
各手首部は、前記手首部のいずれか一つの、前記手首部の他のいずれか一つに対する前記回転運動を駆動するための、一つまたはそれ以上のギア部材を有しており、
前記ギア部材の少なくとも一つは、負のベベル角度(Cn)を有する凹面のベベルギアとして構成され、
前記ギア部材のそれぞれは、柔軟性を有する線状の部材がその中を通っている中空の開口を有する、ロボットの手首において、
第一手首部と第二手首部の間の回転軸(A1)は、第二手首部と第三手首部の間の回転軸(A2)と、前記ロボットの手首部の少なくとも一つの状態で、交差し、
前記柔軟性を有する線状の部材は、前記手首部が曲がった状態にあるとき、一つの曲部において屈曲し、前記手首部の内側を通るように構成されている、
ロボットの手首。」
(イ)<相違点5>上記(1)イ(ウ)と同じ。
(ウ)<相違点6>
「ロボットの手首」の中に通っている「柔軟性を有する線状の部材」について、訂正特許発明8は「内部保護用ホース(4)」であるのに対し、甲2発明8は「加工工具に流体および電力を供給するホースやワイヤ」であって「内部保護用ホース(4)」ではなく、したがって、ロボットの手首の少なくとも一つの状態における、「回転軸(A1)」と「回転軸(A2)」との交差位置が、訂正特許発明8は、「内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差」するのに対し、甲2発明8は、「中間ハウジング78の内側で交差」するものの、「内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差」するものではなく、加えて、手首が曲がった状態にあるとき、手首部の内側を通るように構成されている柔軟性を有する線状の部材が、訂正特許発明8では「単一の円弧の形状」の「内部保護用ホース(4)」であるのに対して、甲2発明8では「一つの曲部において屈曲」する「加工工具に流体および電力を供給するホースやワイヤ」である点。
ウ 相違点の検討(判断)
(ア)無効理由1-2について
上記イ(イ)~(ウ)より、訂正特許発明8と甲2発明8は相違点が存在する。よって、訂正特許発明8、及びこれを引用する訂正特許発明24は甲2に記載された甲2発明8でなく、無効理由1-2により無効とすることはできない。
(イ)無効理由2-2について
次に、無効理由2-2(甲2発明を主引例とする進歩性欠如)について検討する。
事案に鑑み、相違点6から検討する。
(内部保護用ホースを設けることについて)
甲2発明8は、加工工具に流体および電力を供給するホースやワイヤを備えるが、これらのホースやワイヤを保護するための訂正特許発明1の内部保護用ホースについては甲2に記載がなく、このような部材を有していないことは明らかである。
甲2発明8は「ホース」を有しているものの、これは加工工具に流体および電力を供給する用途に用いられるものであって、「内部保護用ホース」とは異なるものである。
甲2には、柔軟性を有する線状の部材に関し、(A)「障害のない通路を用いるということには、支持部材に装着した加工工具に流体および電力を供給するホースやワイヤのための保護を行なえるという利点がある。」(第2ページ右上欄第20行-左下欄第3行)、及び(B)「このようにして、相対的に静止したベース部材12から工具取付面106まで障害のない通路が設けられる。この障害のない通路は、公知なもの(例えば米国特許第4218166号)と同様の方式でホースおよびワイヤを収容することができる。」(第3ページ右下欄第19行~第4ページ左上欄第4行)との記載があるが、これら(A)~(B)の記載から、甲2において、障害のない通路を用いたことでホースやワイヤのための保護をできることが示されるものの、内部保護用ホースを伴うことについては記載がないし、このような内部保護用ホースを伴うことが自明とする事情も見当たらない。
また、上記(A)の記載は、障害のない通路を設けること、すなわち内部保護用ホースのような特別な手段を設けずとも、通路の障害をなくすことで、ホースやワイヤを保護することが示唆しているともいえるから、これらの事項から甲2発明8において、内部保護用ホースを設けることについて動機は見出せない。
この点、甲4には、ロボットの手首の内部を通過するケーブルのバングル49(段落【0022】)、甲5には、産業用ロボットの手首装置の内部に設けられる筒状部材50(段落【0013】~【0017】、【0021】)、甲6には、円筒状に形成した第1の歯車軸35(明細書10ページ6~12行)が、それぞれ記載されている。
しかしながら、甲4、甲6はそもそもプロセスケーブルを保護する「ホース」を示すものではないから、甲4~甲6からは、関節連結構造の内部に内部保護用ホースを設けることが周知の技術であるということはできない。また、甲5は、ホース、ケーブル及び導管等を有害過酷な外部環境から保護するため、通路を密封状態とするものであるところ(段落【0002】~【0006】)、甲2にはこのような過酷な外部環境で用いることや、そのためにプロセスケーブルを密封することについては何ら記載がないから、当該技術を採用する動機は生じない。
(内部保護用ホースの境界壁の内側で回転軸が交差することについて)
上記相違点6の回転軸(A1)と回転軸(A2)との交差位置が、内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差すること、及び関節連結構造が曲がった状態にあるとき、構造部材の内側を通るように構成されている柔軟性を有する線状の部材が、「単一の円弧の形状」の「内部保護用ホース(4)」であることについても検討すると、そもそもこの交差位置関係の構成及び内部保護用ホースが単一の円弧の形状となることは、内部保護用ホースの存在が前提となって初めて実現する事項であるところ、内部保護用ホースの存在しない甲2発明8において内部保護用ホースを設けることが必ずしも容易であるとはいえないのであるから、交差位置関係を採用すること、内部保護用ホースが単一の円弧の形状となるようにすることも容易に想到し得たことではない。
加えて、回転軸(A1)と回転軸(A2)との交差位置が、内部保護用ホースの境界壁の内側で交差することを示す証拠もなく、交差位置関係を採用する積極的な動機もないし、内部保護用ホースを単一の円弧形状とすることについても証拠がない。また、甲8には、中空シャフト100が一つの曲部において屈曲する構成の開示があるものの、この曲部が単一の円弧形状であるかどうかは不明であるし、甲8に記載されたものとは異なる関節連結構造を有する甲2発明8において内部保護用ホースを単一の円弧形状とすることを示すものでもない。
そうすると、仮に甲2発明8に、内部保護用ホースを採用し得たとしても、交差位置関係になるとは限らないし、内部保護用ホースが単一の円弧の形状となるともいえない。
よって、相違点5について検討するまでもなく、訂正特許発明8は、甲2発明8及び他の各号証記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
また、訂正特許発明24は、訂正特許発明8を引用し、訂正特許発明1の特定事項の全てを含むものであり、甲3発明1とは少なくとも相違点4、5を有するところ、相違点4については上記と同様のことがいえるから、甲2発明8及び他の各号証記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
エ 小括
したがって、上記ウ(ア)より、訂正特許発明8、及びこれを引用する訂正特許発明24は、甲2に記載された甲2発明8でなく特許法第29条第1項第3号に該当せず同条第1項の規定に違反してされたものでないから、無効理由1-2により無効とすることはできない。
また、上記ウ(イ)より、訂正特許発明8、及びこれを引用する訂正特許発明24は、甲2発明8及び他の各号証記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでなく特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでないから、無効理由2-2により無効とすることはできない。
3 甲3を主引用例とする無効理由2-3
(1)訂正特許発明1
ア 訂正特許発明1と甲3発明1の対比
(ア)甲3発明1の「第一の腕関節部分11、第二の部分12、第三の部分13を有する産業用ロボット1の腕関節10」は、第一の腕関節部分11、第二の部分12、第三の部分13が、いずれも回転可能部を有し互いに直列に配置されており、第1図の図示内容からみて、訂正特許発明1の「互いに直列に配置された複数の回転可能部を有するロボットの手首」に相当する。
(イ)甲3発明1の「軸線D-D」は訂正特許発明1の「第一の軸」に、同様に「第一の腕関節部分11」は「第一手首部(1)」に、「ロボットの腕5に連結される」ことは「ロボットの腕または自動化機械に装着される」ことにそれぞれ相当する。
(ウ)甲3発明1の「第二の部分12」は訂正特許発明1の「第二手首部(2)」に、同様に「第三の部分13」は「第三手首部(3)」にそれぞれ相当し、甲3発明1の「軸受23、31を介して連結された」ことは訂正特許発明1の「ジャーナル接続された」ことに相当する。
(エ)甲3発明1の「かさ歯車ピニオン44、環状かさ歯車ピニオン37、環状かさ歯車ピニオン27、環状かさ歯車ピニオン55」は訂正特許発明1の「一つまたはそれ以上のギア部材」に相当し、甲1発明の「環状かさ歯車ピニオン37」は、「ギア部材の少なくとも一つ」として、訂正特許発明1の「ベベルギヤ」に相当する。
(オ)甲3発明1の「軸線E-E」は訂正特許発明1の「回転軸A1」に、同様に「軸線F-F」は「回転軸A2」にそれぞれ相当し、甲2発明1の「一つの作動姿勢」は、訂正特許発明1の「一つの状態である」ことに該当する。
(カ)甲3発明1のg1「かさ歯車ピニオン44、環状かさ歯車ピニオン37、環状かさ歯車ピニオン27、環状かさ歯車ピニオン55のそれぞれは、溶接棒のためのケーブル及び保護ガス導管及び線がその中を通っている環状の構造を有する、」産業用ロボット1の腕関節10において、h1「第一の腕関節部分11と第二の部分12の間の軸線E-Eは、第二の部分12と第三の部分13の間の軸線F-Fと、前記産業用ロボット1の腕関節10の少なくとも一つの状態で、第二の部分12の内側で交差」することと、h2「前記軸線E-Eの周りでの前記第二の部分12の回転と前記軸線F-Fの周りでの前記第三の部分13の回転の両方が前記溶接棒のためのケーブル及び保護ガス導管及び線の曲げを引き起こす」ことを、
訂正特許発明1のG1「前記ギア部材のそれぞれは、内部保護用ホース(4)がその中を通っている中空の開口を有する、」ロボットの手首において、H1「第一手首部と第二手首部の間の回転軸(A1)は、第二手首部と第三手首部の間の回転軸(A2)と、前記ロボットの手首の少なくとも一つの状態で、前記内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差する」ことと、H2「前記回転軸(A1)の周りでの前記第二手首部の回転と前記回転軸(A2)の周りでの前記第三手首部の回転の両方が前記内部保護用ホース(4)の曲げを引き起こす」ことと対比すると、甲3発明1の「溶接棒のためのケーブル及び保護ガス導管及び線」と訂正特許発明1の「内部保護ホース(4)」は、ロボットの中空の内部に配置される「柔軟性を有する線状の部材」という点では共通する。
したがって、両発明は、「前記ギア部材のそれぞれは、柔軟性を有する線状の部材がその中を通っている中空の開口を有する、」ロボットの手首において、「第一手首部と第二手首部の間の回転軸(A1)は、第二手首部と第三手首部の間の回転軸(A2)と、前記ロボットの手首部の少なくとも一つの状態で、交差」することと、「前記回転軸(A1)の周りでの前記第二手首部の回転が前記柔軟性を有する線状の部材の曲げを引き起こす」ことに限り、一致する。
イ 訂正特許発明1と甲3発明1との一致点及び相違点
上記アの点を踏まえて訂正特許発明1と甲3発明1とを対比すると、以下の一致点5で一致し、相違点7で相違する。
(ア)<一致点5>
「互いに直列に配置された複数の回転可能部を有するロボットの手首であって、
第一の軸の回りでの第一手首部の回転運動が可能であるように、ロボットの腕又は自動化機械に装着されるように構成された少なくとも一つの第一手首部と、
この第一手首部にジャーナル接続された第二手首部と、
この第二手首部にジャーナル接続された第三手首部と、を備え、
各手首部は、前記手首部のいずれか一つの、前記手首部の他のいずれか一つに対する前記回転運動を駆動するための、一つまたはそれ以上のギア部材を有しており、
前記ギア部材の少なくとも一つは、負のベベル角度(Cn)を有する凹面のベベルギアとして構成され、
前記ギア部材のそれぞれは、柔軟性を有する線状の部材がその中を通っている中空の開口を有する、ロボットの手首において、
第一手首部と第二手首部の間の回転軸(A1)は、第二手首部と第三手首部の間の回転軸(A2)と、前記ロボットの手首部の少なくとも一つの状態で、交差し、
前記回転軸(A1)の周りでの前記第二手首部の回転と前記回転軸(A2)の周りでの前記第三手首部の回転の両方が前記柔軟性を有する線状の部材の曲げを引き起こす、
ロボットの手首。」
(イ)<相違点7>
「ロボットの手首」の中に通っている「柔軟性を有する線状の部材」について、訂正特許発明1は「内部保護用ホース(4)」であるのに対し、甲3発明1は「溶接棒のためのケーブル及び保護ガス導管及び線」であって「内部保護用ホース(4)」ではなく、したがって、ロボットの手首の少なくとも一つの状態における、「回転軸(A1)」と「回転軸(A2)」との交差位置が、訂正特許発明1は、「内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差」するのに対し、甲3発明1は、「第二の部分12の内側で交差」するものの、「内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差」するものではなく、加えて、回転軸(A1)の周りでの第二手首部の回転が曲げを引き起こす柔軟性を有する線状の部材が、訂正特許発明1では「内部保護用ホース(4)」であるのに対して、甲3発明1では「溶接棒のためのケーブル及び保護ガス導管及び線」である点。
ウ 相違点の検討(判断)
相違点7を検討する。
(内部保護用ホースを設けることについて)
甲3発明1は、加工工具に流体および電力を供給するホースやワイヤを備えるが、これらのホースやワイヤを保護するための訂正特許発明1の内部保護用ホースに相当する部材については甲3に記載がなく、このような部材を有していないことは明らかである。
甲3には、柔軟性を有する線状の部材に関し、(A)「ロボツト腕及び腕関節は中空であつてそれらの中にケーブル及び他の線のための通路を納めている。この通路は曲つた関節の場合及びその他のケーブル及び線を注意して扱う形状の場合に大きな曲率半径を有する」(第2ページ右上欄第5-9行)、(B)「本発明は大きな配列能力を有するロボツト腕関節に3つの軸線を備えかつ異なる種類の線を中空ロボツト腕から腕関節によつて支持された工具へ通し得る通路を腕関節を通して設けることを目的とする。」(第2ページ左下欄第1-5行)、(C)「以上の説明及び図面から明らかなように、腕関節は中空であるので、例えば溶接棒のためのケーブル及び保護ガス導管及び線がロボツト腕を通してかつ更に腕関節を通して作業ステーシヨンまで通ることができる。」(第4ページ左下欄第4~8行)、(D)「別の重要な利点は工具の回転中に管状軸65及びロボツト腕関節中及び軸65を通るケーブル組立体を取囲む全ての要素が同じ方向へ回転することである。ケーブル組立体の捩れがなくかつ摩耗が重大ではない。」(第4ページ左下欄第16~20行)の記載があるが、これらの(A)~(D)の記載から、甲3には、ロボツト腕及び腕関節を中空として、ケーブル及び他の線のための通路を形成したことが記載されるが、内部保護用ホースを伴うことについては記載がないし、このような内部保護用ホースを伴うことが自明とする事情も見当たらない。
また、上記の(A)~(D)の記載からは、上記のとおり、ロボツト腕及び腕関節を中空として、ケーブル及び他の線のための通路を形成したものが把握され、このような構成を採ることで、例えば溶接棒のためのケーブル及び保護ガス導管及び線がロボツト腕を通してかつ更に腕関節を通して作業ステーシヨンまで通ることができるものであるから、これらの事項から甲3発明1において、内部保護用ホースを設けることについて動機は見出せない。
この点、甲4には、ロボットの手首の内部を通過するケーブルのバングル49(段落【0022】)、甲5には、産業用ロボットの手首装置の内部に設けられる筒状部材50(段落【0013】~【0017】、【0021】)、甲6には、円筒状に形成した第1の歯車軸35(明細書10ページ6~12行)が、それぞれ記載されている。
しかしながら、甲4、甲6はそもそもプロセスケーブルを保護する「ホース」を示すものではないから、甲4~甲6からは、関節連結構造の内部に内部保護用ホースを設けることが周知の技術であるということはできない。また、甲5は、ホース、ケーブル及び導管等を有害過酷な外部環境から保護するため、通路を密封状態とするものであるところ(段落【0002】~【0006】)、甲3にはこのような過酷な外部環境で用いることや、そのためにプロセスケーブルを密封することについては何ら記載がないから、当該技術を採用する動機は生じない。
(内部保護用ホースの境界壁の内側で回転軸が交差することについて)
甲3発明1において、上記相違点7の回転軸(A1)と回転軸(A2)との交差位置が、内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差することについても検討すると、そもそもこの交差位置関係の構成は、内部保護用ホースの存在が前提となって初めて実現するする事項であるところ、内部保護用ホースの存在しない甲3発明1において内部保護用ホースを設けることが容易であるとはいえないのであるから、交差位置関係を採用することも容易に想到し得たことではない。
加えて、回転軸(A1)と回転軸(A2)との交差位置が、内部保護用ホースの境界壁の内側で交差することを示す証拠もなく、交差位置関係を採用する積極的な動機もないのであるから、仮に甲3発明1に、内部保護用ホースを採用し得たとしても、交差位置関係になるとは限らない。
よって、訂正特許発明1は、甲3発明1及び他の各号証記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
また、訂正特許発明2~7、9~23は、訂正特許発明1を引用し、訂正特許発明1の特定事項の全てを含むものであり、甲3発明1とは相違点7を有するところ、相違点7については上記と同様のことがいえるから、甲3発明1及び他の各号証記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
エ 小括
したがって、上記ウより、訂正特許発明1、及びこれを引用する訂正特許発明2~7、9~23は、甲3発明1及び他の各号証記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでなく特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでないから、無効理由2-3により無効とすることはできない。
(2)訂正特許発明8
ア 訂正特許発明8と甲3発明8の対比
上記(1)アにおける訂正特許発明1と甲3発明1の対比を踏まえて、訂正特許発明8と甲3発明8とを対比すると、上記(1)ア(ア)~(オ)は共通である。そして上記(1)ア(カ)に代えて、以下の(カ’)のことがいえる。
(カ’)甲3発明8のg1「かさ歯車ピニオン44、環状かさ歯車ピニオン37、環状かさ歯車ピニオン27、環状かさ歯車ピニオン55のそれぞれは、溶接棒のためのケーブル及び保護ガス導管及び線がその中を通っている環状の構造を有する、」産業用ロボット1の腕関節10において、h1「第一の腕関節部分11と第二の部分12の間の軸線E-Eは、第二の部分12と第三の部分13の間の軸線F-Fと、前記産業用ロボット1の腕関節10の少なくとも一つの状態で、第二の部分12の内側で交差」することと、o「前記溶接棒のためのケーブル及び保護ガス導管及び線は、前記腕関節10が曲がった状態にあるとき、中空である前記腕関節10に納められた通路を通るように構成されている」ことを、
訂正特許発明8のG1「前記ギア部材のそれぞれは、内部保護用ホース(4)がその中を通っている中空の開口を有する、」ロボットの手首において、H1「第一手首部と第二手首部の間の回転軸(A1)は、第二手首部と第三手首部の間の回転軸(A2)と、前記ロボットの手首の少なくとも一つの状態で、前記内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差する」ことと、O「前記内部保護用ホースは、前記手首が曲がった状態にあるとき、単一の円弧の形状に構成された前記手首部の内側を通るように構成されていること」と対比すると、甲3発明8の「溶接棒のためのケーブル及び保護ガス導管及び線」と訂正特許発明8の「内部保護ホース(4)」は、ロボットの中空の内部に配置される「柔軟性を有する線状の部材」という点では共通する。
したがって、両発明は、「前記ギア部材のそれぞれは、柔軟性を有する線状の部材がその中を通っている中空の開口を有する、」ロボット手首において、「第一手首部と第二手首部の間の回転軸(A1)は、第二手首部と第三手首部の間の回転軸(A2)と、前記ロボットの手首の少なくとも一つの状態で、交差」することと、「前記柔軟性を有する線状の部材は、前記手首部が曲がった状態にあるとき、前記手首部の内側を通るように構成されている」ことに限り、一致する。
イ 訂正特許発明8と甲3発明8との一致点及び相違点
上記アの点を踏まえて訂正特許発明8と甲3発明8とを対比すると、以下の一致点6で一致し、相違点8で相違する。
(ア)<一致点6>
「互いに直列に配置された複数の回転可能部を有するロボットの手首であって、
第一の軸の回りでの第一手首部の回転運動が可能であるように、ロボットの腕又は自動化機械に装着されるように構成された少なくとも一つの第一手首部と、
この第一手首部にジャーナル接続された第二手首部と、
この第二手首部にジャーナル接続された第三手首部と、を備え、
各手首部は、前記手首部のいずれか一つの、前記手首部の他のいずれか一つに対する前記回転運動を駆動するための、一つまたはそれ以上のギア部材を有しており、
前記ギア部材の少なくとも一つは、負のベベル角度(Cn)を有する凹面のベベルギアとして構成され、
前記ギア部材のそれぞれは、柔軟性を有する線状の部材がその中を通っている中空の開口を有する、ロボットの手首において、
第一手首部と第二手首部の間の回転軸(A1)は、第二手首部と第三手首部の間の回転軸(A2)と、前記ロボットの手首部の少なくとも一つの状態で、交差し、
前記柔軟性を有する線状の部材は、前記手首が曲がった状態にあるとき、前記手首部の内側を通るように構成されている、
ロボットの手首。」
(イ)<相違点8>
「ロボットの手首」の中に通っている「柔軟性を有する線状の部材」について、訂正特許発明8は「内部保護用ホース(4)」であるのに対し、甲3発明8は「溶接棒のためのケーブル及び保護ガス導管及び線」であって「内部保護用ホース(4)」ではなく、したがって、ロボットの手首の少なくとも一つの状態における、「回転軸(A1)」と「回転軸(A2)」との交差位置が、訂正特許発明8は、「内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差」するのに対し、甲3発明8は、「第二の部分12の内側で交差」するものの、「内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差」するものではなく、加えて、手首が曲がった状態にあるとき、手首部の内側を通るように構成されている柔軟性を有する線状の部材が、訂正特許発明8では「単一の円弧の形状」の「内部保護用ホース(4)」であるのに対して、甲3発明8では「溶接棒のためのケーブル及び保護ガス導管及び線」である点。
ウ 相違点の検討(判断)
相違点8を検討する。
(内部保護用ホースを設けることについて)
甲3発明8は、加工工具に流体および電力を供給するホースやワイヤを備えるが、これらのホースやワイヤを保護するための訂正特許発明1の内部保護用ホースについては甲3に記載がなく、このような部材を有していないことは明らかである。
甲3には、柔軟性を有する線状の部材に関し、(A)「ロボツト腕及び腕関節は中空であつてそれらの中にケーブル及び他の線のための通路を納めている。この通路は曲つた関節の場合及びその他のケーブル及び線を注意して扱う形状の場合に大きな曲率半径を有する」(第2ページ右上欄第5~9行)、(B)「本発明は大きな配列能力を有するロボツト腕関節に3つの軸線を備えかつ異なる種類の線を中空ロボツト腕から腕関節によつて支持された工具へ通し得る通路を腕関節を通して設けることを目的とする。」(第2ページ左下欄第1~5行)、(C)「以上の説明及び図面から明らかなように、腕関節は中空であるので、例えば溶接棒のためのケーブル及び保護ガス導管及び線がロボツト腕を通してかつ更に腕関節を通して作業ステーシヨンまで通ることができる。」第4ページ左下欄第4~8行)、(D)「別の重要な利点は工具の回転中に管状軸65及びロボツト腕関節中及び軸65を通るケーブル組立体を取囲む全ての要素が同じ方向へ回転することである。ケーブル組立体の捩れがなくかつ摩耗が重大ではない。」(第4ページ左下欄第16~20行)の記載があるが、これらの(A)~(D)の記載から、甲3発明8において、内部保護用ホースを伴うとはいえないし、このような内部保護用ホースを伴うことが自明とする事情も見当たらない。
また、上記の(A)~(D)の記載からは、ロボツト腕及び腕関節を中空として、ケーブル及び他の線のための通路を形成したものが把握され、このような構成を採ることで、例えば溶接棒のためのケーブル及び保護ガス導管及び線がロボツト腕を通してかつ更に腕関節を通して作業ステーシヨンまで通ることができるものであるから、これらの事項から甲3発明8において、内部保護用ホースを設けることについて動機は見出せない。
この点、甲4には、ロボットの手首の内部を通過するケーブルのバングル49(段落【0022】)、甲5には、産業用ロボットの手首装置の内部に設けられる筒状部材50(段落【0013】~【0017】、【0021】)、甲6には、円筒状に形成した第1の歯車軸35(明細書10ページ6~12行)が、それぞれ記載されている。
しかしながら、甲4、甲6はそもそもプロセスケーブルを保護する「ホース」を示すものではないから、甲4~甲6からは、関節連結構造の内部に内部保護用ホースを設けることが周知の技術であるということはできない。また、甲5は、ホース、ケーブル及び導管等を有害過酷な外部環境から保護するため、通路を密封状態とするものであるところ(段落【0002】~【0006】)、甲2にはこのような過酷な外部環境で用いることや、そのためにプロセスケーブルを密封することについては何ら記載がないから、当該技術を採用する動機は生じない。
(内部保護用ホースの境界壁の内側で回転軸が交差することについて)
甲3発明8において、上記相違点8の回転軸(A1)と回転軸(A2)との交差位置が、内部保護用ホース(4)の境界壁の内側で交差すること、及び関節連結構造が曲がった状態にあるとき、構造部材の内側を通るように構成されている柔軟性を有する線状の部材が、「単一の円弧の形状」の「内部保護用ホース(4)」であることについても検討すると、そもそもこの交差位置関係の構成及び内部保護用ホースが単一の円弧の形状となることは、内部保護用ホースの存在が前提となって初めて実現する事項である。
内部保護用ホースの存在しない甲3発明8において内部保護用ホースを設けることが容易であるとはいえないのであるから、交差位置関係を採用すること、内部保護用ホースが単一の円弧の形状となるようにすることも容易に想到し得たことではない。
加えて、回転軸(A1)と回転軸(A2)との交差位置が、内部保護用ホースの境界壁の内側で交差することを示す証拠もなく、交差位置関係を採用する積極的な動機もないし、内部保護用ホースを単一の円弧形状とすることについても証拠がない。また、甲8には、中空シャフト100が一つの曲部において屈曲する構成の開示があるものの、この曲部が単一の円弧形状であるかどうかは不明であるし、甲8に記載されたものとは異なる関節連結構造を有する甲3発明8において内部保護用ホースを単一の円弧形状とすることを示すものでもない。
そうすると、仮に甲3発明8に、内部保護用ホースを採用し得たとしても、交差位置関係になるとは限らないし、内部保護用ホースが単一の円弧の形状となるともいえない。
よって、訂正特許発明8は、甲3発明8及び他の各号証記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
また、訂正特許発明24は、訂正特許発明8を引用し、訂正特許発明1の特定事項の全てを含むものであり、甲3発明8とは相違点8を有するところ、相違点8については上記と同様のことがいえるから、甲3発明8及び他の各号証記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
エ 小括
したがって、上記ウより、訂正特許発明8、及びこれを引用する訂正特許発明24は、甲3発明8及び他の各号証記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでなく特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでないから、無効理由2-3により無効とすることはできない。
第8 請求人の主張
1 弁駁書における請求人の主張
(1)甲1について
ア 甲1の開示内容
請求人は、甲1は、訂正特許発明1の構成要件G1、H1、H2(弁駁書の構成要件1~3)、及び訂正特許発明8の構成要件G1、H1、O(弁駁書の構成要件4~6)を開示していることを主張するが、既に第7の1(1)ウ、及び1(2)ウで検討したとおり、甲1に内部保護用ホースは記載されておらず、あるいは内部保護用ホースを伴うことが自明とする事情も見当たらないと説示したとおりであるから、甲1に、上記各構成要件が開示されているとする請求人の主張は採用することができない。
請求人は、甲1の段落【0004】に記載された米国特許第4690012号明細書について、被請求人が、本件特許明細書において、「ロボットの手首の中空構造の中に、内部保護用ホースを通して使用することを自認」していることを説明するが、甲1自体に内部保護用ホースを設けることの記載はなく、これを設けることの動機もないし、上記米国特許第4690012号明細書(この文献は、甲3に対応する米国ファミリー文献である。)においても同様であって、甲1に上記各構成要件が開示されていることの根拠たり得ない。
また、請求人は、内部保護用ホースがロボット手首の中を通る構成は、甲4、及び甲5にも開示されている周知技術であることを主張するが、これについても上記第7の1(1)ウ、及び1(2)ウで説示したとおりである。
イ 甲1発明と訂正特許発明の課題の共通性について
請求人は、甲1は、訂正特許発明の課題を内在し、又は当業者にとって自明な課題又は当業者が容易に着想できる課題を内在している旨の主張をする。
その根拠としては、本件特許明細書の段落【0011】と甲1の段落【0005】には、「狭い空間でのロボット手首の可動範囲を確保する」ことについて記載され、甲8の図2に開示されているように、内部保護用ホースが複数箇所で曲がらない、すなわち1箇所のみで曲がるようにしてホースの摩耗を防止して、強度を大きくすることが周知技術であることから、「狭い空間でのロボットの手首の可動範囲を確保する構造において、ホースの摩耗を防止すること」が訂正特許発明1と甲1発明の共通する課題であることを指摘する。
しかしながら、上述のとおり、甲1には内部保護用ホースについて記載も示唆もされていないし、そもそも甲1発明に内部保護用ホースを設けることが容易に想到し得ることではないから、このような課題が生じる合理的な理由がない。
また、請求人は課題の同一性が必要とされないことも主張するが、それとは別の思考過程による論理付けが示されているものでもないから、請求人の主張は採用できない。
(2)甲2について
請求人は、甲2についても甲1と同様に、訂正特許発明1の構成要件G1、H1、H2(弁駁書の構成要件1~3)、及び訂正特許発明8の構成要件G1、H1、O(弁駁書の構成要件4~6)を開示していることを主張するが、やはり、既に第7の2(1)ウ、及び(2)ウで検討したとおり、甲2に内部保護用ホースは記載されておらず、あるいは内部保護用ホースを伴うことが自明とする事情も見当たらないと説示したとおりである。
そして、請求人の主張はいずれも甲2で内部保護用ホースが開示されていることを前提とするものであるから、甲2に、上記各構成要件が開示されているとする請求人の主張は採用することができない。
(3)甲3について
請求人は、甲3について、訂正特許発明1の構成要件G1、H2(弁駁書の構成要件1、3)、及び訂正特許発明8の構成要件G1、O(弁駁書の構成要件4、6)を開示していることを主張するが、やはり、既に第7の3(1)ウ、及び(2)ウで検討したとおり、甲3に内部保護用ホースは記載されておらず、あるいは内部保護用ホースを伴うことが自明とする事情も見当たらないと説示したとおりである。また、本件特許明細書で、被請求人が甲3において「ロボットの手首の中空構造の中に、内部保護用ホースを通して使用することを自認」している旨の主張については、上記(1)で検討したとおりである。
そして、請求人の主張はいずれも甲3で内部保護用ホースが開示されていることを前提とするものであるから、甲3に、上記各構成要件が開示されているとする請求人の主張は採用することができない。
また、請求人は、甲3が開示していない訂正特許発明1の構成要件H1(弁駁書の構成要件2)、及び訂正特許発明8の構成要件H1(弁駁書の構成要件5)について、甲4~甲6に開示されていることを主張するが、これについても、第7の3(1)ウ、及び(2)ウで検討したとおりであるし、甲3には内部保護用ホースについて記載も示唆もされていないし、そもそも甲3発明に内部保護用ホースを設けることが容易に想到し得ることではないのであるから、やはり請求人の主張は採用できない。
(4)甲4-6について
請求人は、甲4及び甲5について、訂正特許発明1の構成要件G1、H1、H2(弁駁書の構成要件1~3)、及び訂正特許発明8の構成要件G1、H1、O(弁駁書の構成要件4~6)を開示していることを、甲6について、訂正特許発明1の構成要件G1、H1(弁駁書の構成要件1~2)、及び訂正特許発明8の構成要件G1、H1(弁駁書の構成要件4~5)を開示していることを主張する。
しかしながら、甲4~6を考慮しても、甲3発明に内部保護用ホースを設けることが容易に想到し得たことでないことは、上記第7の3(1)ウ、及び(2)ウに説示したとおりである。
(5)以上のとおりであるから、甲1~甲3に、訂正特許発明1の構成要件G1、H1、H2(弁駁書の構成要件1~3)、及び訂正特許発明8の構成要件G1、H1、O(弁駁書の構成要件4~6)を開示していることを前提として、訂正特許発明1~24の新規性及び進歩性が否定されるとする請求人の主張は、いずれも採用することができない。
2 請求人陳述要領書における請求人の主張
(1)審理事項通知書において認定した一致点と相違点について
請求人は、審理事項通知書において暫定的に認定した訂正特許発明1及び訂正特許発明8と、甲1~3発明の相違点について、以下のとおり分類する。(6-5.相違点と無効理由の関係:第9ページ)
相違点1:ロボット手首か否かの相違点
相違点2:内部保護用ホースか否かの相違点
相違点3:内部保護用ホースの境界壁の内側で交差するのか否かの相違点
相違点4:内部保護用ホースが単一の円弧の形状であるのか否かの相違点
相違点5:第二手首部の回転と第三手首部の回転の両方の回転が、内部保護用ホースの曲げを引き起こすか否かの相違点
ア 相違点1について
相違点1は訂正特許発明1の構成要件A及び訂正特許発明8の構成要件Aに関するものであって、請求人はこの相違点が存在しない旨主張するが、上記第7の1(1)イ(イ)及び第7の1(2)イ(イ)で認定したとおり、訂正特許発明1及び訂正特許発明8は相違点1で甲1発明と相違する。また、仮に相違しないとしても、第7の1(1)ウ、及び(2)ウのとおり、進歩性の判断には影響しないものである。
イ 相違点2~5について
相違点2~5は訂正特許発明1の構成要件G1、H1、H2、及び訂正特許発明8の構成要件G1、H1、Oに関する相違点であるが、甲1~3発明には内部保護用ホースが存在しないから、これらの相違点が存在しないとする請求人の主張は採用することができない。
(2)新規性について
上記(1)のとおり、上記相違点1~5が存在しないとする請求人の主張は採用できないから、訂正特許発明1及び訂正特許発明8が新規性を有しないとする主張も採用できない。
(3)進歩性について
請求人は、上記相違点1~5について、それぞれの相違点が甲4~6、及び甲8に記載されていることから、甲1~3発明に適用して、訂正特許発明1及び訂正特許発明8に想到することが容易である旨の主張をする。
しかしながら、上記第7の1(1)ウ及び(2)ウ、第7の2(1)ウ及び(2)ウ、第7の3(1)ウ及び(2)ウで検討したとおり、訂正特許発明1及び訂正特許発明8が、甲1~3発明、及び他の各甲号証記載の技術的事項から容易に発明をすることができたものであるということはできない。
3 請求人の令和4年7月7日提出の上申書における主張
(1)請求項1に記載した「少なくとも一つの状態」に関する主張
請求人は、訂正特許発明1に関して、請求項1に記載した「少なくとも一つの状態」について、ロボット手首の第二手首部及び第三手首部が曲がっていない状態も含まれ得ること、及び内部保護用ホースの位置について、手首内の開放空間において、例えば開口又は開放空間の中心線を外れるように偏らせるように内部保護用ホースを配置させる構成も含まれ得ることの解釈について説明した上で、この解釈に基づいて、訂正特許発明1が(構成要件A・B)を充足しても、内部保護用ホースの位置によっては、内部保護用ホースの曲がりの半径の中心から回転軸(A1)と回転軸(A2)との交点までの距離が内部保護用ホースの曲がりの半径から乖離せずとも、内部保護用ホースがロボット手首の開放空間又は開口内において2か所で曲がることもあるため、訂正特許発明1の効果に関する被請求人の理屈づけは成り立たないことを主張する。
しかしながら、この主張に関わらず、請求人の示した証拠によって、訂正特許発明が容易に想到し得たということはできないところ、請求人の上記主張は、請求項1の「少なくとも一つの状態」の内容が明確でない、もしく発明の詳細な説明に記載した発明の課題を解決するための手段が反映されていない等の請求項の記載に関する主張であって、本件無効審判の無効理由のいずれとも無関係であるから、採用することはできない。
(2)内部保護用ホースが単一の円弧の形状に曲がる点が甲8を参酌すれば進歩性がないという点について
請求人は、訂正特許発明8に関して、「単一の円弧」を(a)「円の一部を切り取ったものと解釈した場合」、及び(b)前記(a)を含み「更に円の一部を切り取った円弧に類する曲線をも含むと解釈した場合」について、いずれも甲1発明又は甲2発明と甲8記載の技術的事項を組み合わせることで、手首部が曲がった状態の時に内部保護用ホースを円弧状に形成することを容易に想到できるものであることを主張する。
しかしながら、「単一の円弧」を上記(a)、及び(b)のいずれに解釈した場合においても、上記第7の1(2)ウ、及び第7の2(2)ウで検討したとおり、甲1発明、又は甲2発明に対して、内部保護用ホースを設けること自体が容易に想到し得たことではない上、さらに甲8の内部保護用ホース(管状可撓性シャフト100)を適用して、訂正特許発明8に容易に想到することは「容易の容易」に該当し、採用することができない。
第9 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠によっては、訂正特許発明に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-800044