特許無効審判
2021-800046
塗装機器および塗装方法
- 審判番号
- 2021-800046
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2011-532528
- 登録番号
- 5976320
- 請求日
- 2021年05月28日
- 審決日
- 2022年08月12日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ABB 株式会社
- 【請求人代理人】アイアット国際特許業務法人
- 【被請求人】デュール システムズ アーゲー
- 【被請求人代理人】木村 満
- 【被請求人代理人】森川 泰司
- 【被請求人代理人】長谷川 陽子
- 【被請求人代理人】早川 牧子
- 【被請求人代理人】宮脇 良平
- 【被請求人代理人】三瓶 真弘
- 【被請求人代理人】桜田 圭
- 【被請求人代理人】遠藤 雅士
- 【被請求人代理人】齋藤 悟郎
- 【被請求人代理人】湯浅 夏樹
- 【被請求人代理人】庄野 寿晃
- 【被請求人代理人】山本 洋美
- 審判長/審判官
- 審判長 大島 祥吾
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1123.121-YAA(B05B) / P1123.537-YAA(B05B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項3号特許法123条1項4号特許法135条特許法169条2項民事訴訟法61条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第134条の2第1項、特許法第134条の2第3項、特許法第134条の2第9項、特許法第131条の2第2項、特許法第135条、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第5976320号発明「塗装機器および塗装方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第5976320号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項5、12、18、20、23、26、32、33、36、37、39及び40について訂正することを認める。
特許第5976320号の請求項5、12、18、21、22、26、28、36及び37に係る発明についての本件審判の請求は、成り立たない。
特許第5976320号の請求項20、23、32、33、39及び40に係る発明についての本件審判の請求を却下する。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第5976320号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし40に係る発明についての出願は、2009年(平成21年)10月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2008年10月24日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする特許出願であって、平成28年7月29日に特許権の設定登録がされ、令和3年5月28日に本件特許に対して、本件審判の請求がされた。
そして、本件審判の請求についての主な経緯は次のとおりである。
令和3年7月26日:手続補正書提出(請求人)
令和3年11月2日:審判事件答弁書及び訂正請求書提出(被請求人)
令和3年12月16日付け:通知書(請求人及び被請求人双方に対して)
令和4年1月13日:第1回口頭審尋
令和4年2月17日:審判事件弁駁書提出(請求人)
令和4年3月31日付け:審理事項通知(請求人及び被請求人双方に対して)
令和4年5月17日:口頭審理陳述要領書提出(請求人及び被請求人)
令和4年5月31日:第1回口頭審理
令和4年6月14日:上申書提出(請求人及び被請求人)
なお、本件特許については、令和2年1月31日に別の無効審判請求(無効2020-800009号)がされ、令和2年12月11日付けで「特許第5976320号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3、4、11、13-15、19、24、25、29、34、35〕、〔2〕、〔5〕、〔6-10〕、〔12〕、〔16、17〕、〔18〕、〔20〕、〔21〕、〔22〕、〔23〕、〔26〕、〔27〕、〔28〕、〔30〕、〔31〕、〔32、33〕、〔36〕、〔37〕、〔38〕、〔39、40〕について訂正することを認める。本件審判の請求を却下する。」旨の審決がされ、該審決は確定している。
第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
令和3年11月2日にされた訂正の請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項5に「a)前記塗布機器が、部品が前記塗装剤で塗装される塗装キャビン内に配置される、および/または
d)前記塗装キャビン(2)から下向きに、および/または、測道を通して前記キャビンの空気を抜き出す空気抜き器(10)が設けられ、および/または、
e)前記空気抜き器(10)の上流に配置され、前記キャビンの空気から前記オーバースプレーを除去する空気フィルター(11)が設けられ、および/または、
f)前記キャビンの空気がフィルター天井を通して前記塗装キャビン(2)から下向きに抜き出されるように、前記塗装キャビン(2)の基部に配置されたフィルター天井として前記空気フィルター(11)が設計された、」と記載されているのを、「a)前記塗布機器が、部品が前記塗装剤で塗装される塗装キャビン内に配置される、および、
d)前記塗装キャビン(2)から下向きに前記キャビンの空気を抜き出す空気抜き器(10)が設けられ、および、
e)前記空気抜き器(10)の上流に配置され、前記キャビンの空気から前記オーバースプレーを除去する空気フィルター(11)が設けられた、」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項12に「a)前記プリントヘッド(8、9)が、行(einer zeile)および列(einer spalte)の行列形式に配置された塗装剤ノズル(29)を有し、および/または、
b)さまざまな前記ノズル列(28.1~28.4)の前記塗装剤ノズル(29)が色変換器(30)によって一緒に供給され、および/または、
c)入力側において、前記色変換器(30)が、特殊塗料が前記色変換器(30)に供給される特殊カラー供給ラインに接続され、および/または、
d)入力側において、前記色変換器(30)が、表色系の原色(C、M、Y、K)のさまざまなカラーの塗装剤を供給され、塗料を所望の色合いと混合する混合器(31)と接続され、
e)前記色変換器(30)が、前記特殊塗料の1つ、または、前記混合器(31)によって混合された前記塗料のどちらかを選択的に選択し、それを前記塗装剤ノズルに供給する、」と記載されているのを、「a)前記プリントヘッド(8、9)が、行(einer zeile)および列(einer spalte)の行列形式に配置された塗装剤ノズル(29)を有し、および、
b)さまざまな前記ノズル列(28.1~28.4)の前記塗装剤ノズル(29)が色変換器(30)によって一緒に供給される、」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項18に「a)前記プリントヘッド(8、9、43)が回転軸に対して回転自在に搭載され、塗装中、または、連続的な塗装セッションの間に回転し、および/または、
b)前記プリントヘッド(8、9、43)が異なるサイズの塗装剤ノズルを有し、および/または、
c)より大きな塗装剤ノズル(44)よりも、より小さな塗装剤ノズル(45)が前記プリントヘッド(8、9、43)の前記回転軸のより近くに配置される、」と記載されているのを、「a)前記プリントヘッド(8、9、43)が回転軸に対して回転自在に搭載され、塗装中、または、連続的な塗装セッションの間に回転し、および、
b)前記プリントヘッド(8、9、43)が異なるサイズの塗装剤ノズルを有する、」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項20を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項23を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項26に「a)前記センサー(62)が光学センサーであり、および/または、
b)前記ガイド経路が以前に塗布された塗装剤の経路であり、または、
c)前記ガイド経路が、紫外線または赤外線が照射される時にのみ可視化される塗装剤を含む、」と記載されているのを、「a)前記センサー(62)が光学センサーであり、および、
b)前記ガイド経路が以前に塗布された塗装剤の経路である、」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項32を削除する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項33を削除する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項36に「a)大きな表面積のエリア塗装においては、均一な塗装を得るために前記プリントヘッド(8、9)が回転し、および/または、
b)細部または図面の詳細な塗装においては、局所的な高解像度を得るために前記プリントヘッド(8、9)が回転しない、」と記載されているのを、「a)大きな表面積のエリア塗装においては、均一な塗装を得るために前記プリントヘッド(8、9)が回転し、および、
b)細部または図面の詳細な塗装においては、局所的な高解像度を得るために前記プリントヘッド(8、9)が回転しない、」に訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項37に「b)測定された位置の関数として、前記プリントヘッド(8、9)の前記空間位置を開ループ調節(steureung)および/または閉ループ制御(regelung)する工程と、」と記載されているのを、「b)測定された位置の関数として、前記プリントヘッド(8、9)の前記空間位置を開ループ調節(steureung)および閉ループ制御(regelung)する工程と、」に訂正する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項39を削除する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項40を削除する。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項5についての訂正について
訂正事項1による請求項5についての訂正は、「a)」、「d)」及び「e)」を接続する接続詞の「および/または」から「または」を削除し、接続詞の「および/または」で接続されていた「f)」の発明特定事項を削除し、「d)」の中の接続詞の「および/または」で接続されていた「測道を通して」という発明特定事項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1による請求項5についての訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
さらに、訂正事項1による請求項5についての訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)請求項12についての訂正について
訂正事項2による請求項12についての訂正は、「a)」及び「b)」を接続する接続詞の「および/または」から「または」を削除し、接続詞の「および/または」で接続されていた「c)」の発明特定事項及び「d)」の発明特定事項と「e)」の発明特定事項のまとまりを削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2による請求項12についての訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
さらに、訂正事項2による請求項12についての訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
なお、請求人は、審判事件弁駁書において、「e)」の要件の削除は、その直前に「または」という文言がないことから、択一的記載の削除ではなく、特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない旨主張する(審判事件弁駁書第34ページ第22行ないし第36ページ第19行)。
そこで、上記主張について検討する。
訂正前の請求項12において、「d)」の発明特定事項と「e)」の発明特定事項の間に「または」のような選択的接続詞はないから、「d)」の発明特定事項と「e)」の発明特定事項は、一つのまとまりのある発明特定事項として扱われるもので、どちらかが選択されるものではない。
したがって、訂正事項2による請求項12についての訂正は、接続詞の「および/または」で直前の発明特定事項と接続されていた「d)」の発明特定事項と「e)」の発明特定事項のまとまりを削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
よって、請求人の上記主張は採用できない。
(3)請求項18についての訂正について
訂正事項3による請求項18についての訂正は、「a)」及び「b)」を接続する接続詞の「および/または」から「または」を削除し、接続詞の「および/または」で接続されていた「c)」の発明特定事項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3による請求項18についての訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
さらに、訂正事項3による請求項18についての訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)請求項20についての訂正について
訂正事項4による請求項20についての訂正は、訂正前の請求項20を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項4による請求項20についての訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
さらに、訂正事項4による請求項20についての訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)請求項23についての訂正について
訂正事項5による請求項23についての訂正は、訂正前の請求項23を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項5による請求項23についての訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
さらに、訂正事項5による請求項23についての訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)請求項26についての訂正について
訂正事項6による請求項26についての訂正は、「a)」及び「b)」を接続する接続詞の「および/または」から「または」を削除し、接続詞の「および/または」で接続されていた「c)」の発明特定事項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項6による請求項26についての訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
さらに、訂正事項6による請求項26についての訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)請求項32についての訂正について
訂正事項7による請求項32についての訂正は、訂正前の請求項32を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項7による請求項32についての訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
さらに、訂正事項7による請求項32についての訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(8)請求項33についての訂正について
訂正事項8による請求項33についての訂正は、訂正前の請求項33を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項8による請求項33についての訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
さらに、訂正事項8による請求項33についての訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(9)請求項36についての訂正について
訂正事項9による請求項36についての訂正は、「a)」及び「b)」を接続する接続詞の「および/または」から「または」を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項9による請求項36についての訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
さらに、訂正事項9による請求項36についての訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(10)請求項37についての訂正について
訂正事項10による請求項37についての訂正は、「b)」の中の「開ループ調節(steureung)」と「閉ループ制御(regelung)」を接続する接続詞の「および/または」から「または」を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項10による請求項37についての訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
さらに、訂正事項10による請求項37についての訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(11)請求項39についての訂正について
訂正事項11による請求項39についての訂正は、訂正前の請求項39を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項11による請求項39についての訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
さらに、訂正事項11による請求項39についての訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(12)請求項40についての訂正について
訂正事項12による請求項40についての訂正は、訂正前の請求項40を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項12による請求項40についての訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
さらに、訂正事項12による請求項40についての訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 むすび
したがって、訂正事項1ないし12による請求項5、12、18、20、23、26、32、33、36、37、39及び40についての訂正は、いずれも特許法134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項40は訂正前の請求項39を引用するものであるから、訂正前の請求項39及び40は一群の請求項に該当するものである。そして、訂正事項11による請求項39についての訂正及び訂正事項12による請求項40についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第134条の2第3項の規定に適合する。
さらに、本件審判は、訂正前の請求項5、12、18、20、21、22、23、26、28、32、33、36、37、39及び40に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第134条の2第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件訂正は適法なものである。
そして、訂正後の請求項32及び33並びに訂正後の請求項39及び40については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することの求めがされているので、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項5、12、18、20、23、26、32、33、36、37、39及び40について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項5、12、18、20、21、22、23、26、28、32、33、36、37、39及び40に係る発明(以下、順に「本件発明5」のようにいい、総称して「本件発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項5、12、18、20、21、22、23、26、28、32、33、36、37、39及び40に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項5】
塗装剤を塗布する塗布機器を有し、塗料で車両部品を塗装する塗装機器であって、
前記塗布機器が、少なくとも1つの塗装剤ノズル(12; 14.1~14.4; 16.1~16.6; 20; 29; 36; 44; 45)から前記塗装剤を吐出するプリントヘッド(8、9)であり、
前記プリントヘッドが、ノズル列に配置された塗装剤ノズルを有し、それぞれのノズル列がいくつかの塗装剤ノズルを含み、
前記塗装剤ノズルの全てが前記車両部品に同一の塗装剤を塗布し得るように、さまざまな前記ノズル列の前記塗装剤ノズルが、塗布される前記塗装剤が供給される塗装剤供給ラインに一緒に接続され、
前記プリントヘッドが搭載される多軸ハンドを有する多軸ロボットによって前記プリントヘッドが位置決めされ、
前記プリントヘッドが、少なくとも1m2/分の面積塗装性能を発揮するように構成され、かつ、
a)前記塗布機器が、部品が前記塗装剤で塗装される塗装キャビン内に配置される、および、
d)前記塗装キャビン(2)から下向きに前記キャビンの空気を抜き出す空気抜き器(10)が設けられ、および、
e)前記空気抜き器(10)の上流に配置され、前記キャビンの空気から前記オーバースプレーを除去する空気フィルター(11)が設けられた、
ことを特徴とする塗装機器。
【請求項12】
塗装剤を塗布する塗布機器を有し、塗料で車両部品を塗装する塗装機器であって、
前記塗布機器が、少なくとも1つの塗装剤ノズル(12; 14.1~14.4; 16.1~16.6; 20; 29; 36; 44; 45)から前記塗装剤を吐出するプリントヘッド(8、9)であり、
前記プリントヘッドが、ノズル列に配置された塗装剤ノズルを有し、それぞれのノズル列がいくつかの塗装剤ノズルを含み、
前記塗装剤ノズルの全てが前記車両部品に同一の塗装剤を塗布し得るように、さまざまな前記ノズル列の前記塗装剤ノズルが、塗布される前記塗装剤が供給される塗装剤供給ラインに一緒に接続され、
前記プリントヘッドが搭載される多軸ハンドを有する多軸ロボットによって前記プリントヘッドが位置決めされ、
前記プリントヘッドが、少なくとも1m2/分の面積塗装性能を発揮するように構成され、
かつ、
a)前記プリントヘッド(8、9)が、行(einer zeile)および列(einer spalte)の行列形式に配置された塗装剤ノズル(29)を有し、および、
b)さまざまな前記ノズル列(28.1~28.4)の前記塗装剤ノズル(29)が色変換器(30)によって一緒に供給される、
ことを特徴とする塗装機器。
【請求項18】
塗装剤を塗布する塗布機器を有し、塗料で車両部品を塗装する塗装機器であって、
前記塗布機器が、少なくとも1つの塗装剤ノズル(12; 14.1~14.4; 16.1~16.6; 20; 29; 36; 44; 45)から前記塗装剤を吐出するプリントヘッド(8、9)であり、
前記プリントヘッドが、ノズル列に配置された塗装剤ノズルを有し、それぞれのノズル列がいくつかの塗装剤ノズルを含み、
前記塗装剤ノズルの全てが前記車両部品に同一の塗装剤を塗布し得るように、さまざまな前記ノズル列の前記塗装剤ノズルが、塗布される前記塗装剤が供給される塗装剤供給ラインに一緒に接続され、
前記プリントヘッドが搭載される多軸ハンドを有する多軸ロボットによって前記プリントヘッドが位置決めされ、
前記プリントヘッドが、少なくとも1m2/分の面積塗装性能を発揮するように構成され、かつ、
a)前記プリントヘッド(8、9、43)が回転軸に対して回転自在に搭載され、塗装中、または、連続的な塗装セッションの間に回転し、および、
b)前記プリントヘッド(8、9、43)が異なるサイズの塗装剤ノズルを有する、
ことを特徴とする塗装機器。
【請求項20】(削除)
【請求項21】
塗装剤を塗布する塗布機器を有し、塗料で車両部品を塗装する塗装機器であって、
前記塗布機器が、少なくとも1つの塗装剤ノズル(12; 14.1~14.4; 16.1~16.6; 20; 29; 36; 44; 45)から前記塗装剤を吐出するプリントヘッド(8、9)であり、
前記プリントヘッドが、ノズル列に配置された塗装剤ノズルを有し、それぞれのノズル列がいくつかの塗装剤ノズルを含み、
前記塗装剤ノズルの全てが前記車両部品に同一の塗装剤を塗布し得るように、さまざまな前記ノズル列の前記塗装剤ノズルが、塗布される前記塗装剤が供給される塗装剤供給ラインに一緒に接続され、
前記プリントヘッドが搭載される多軸ハンドを有する多軸ロボットによって前記プリントヘッドが位置決めされ、
前記プリントヘッドが、少なくとも1m2/分の面積塗装性能を発揮するように構成され、
特殊塗料が、エフェクト塗料、メタリック塗料、もしくはマイカ塗料である、
ことを特徴とする塗装機器。
【請求項22】
塗装剤を塗布する塗布機器を有し、塗料で車両部品を塗装する塗装機器であって、
前記塗布機器が、少なくとも1つの塗装剤ノズル(12; 14.1~14.4; 16.1~16.6; 20; 29; 36; 44; 45)から前記塗装剤を吐出するプリントヘッド(8、9)であり、
前記プリントヘッドが、ノズル列に配置された塗装剤ノズルを有し、それぞれのノズル列がいくつかの塗装剤ノズルを含み、
前記塗装剤ノズルの全てが前記車両部品に同一の塗装剤を塗布し得るように、さまざまな前記ノズル列の前記塗装剤ノズルが、塗布される前記塗装剤が供給される塗装剤供給ラインに一緒に接続され、
前記プリントヘッドが搭載される多軸ハンドを有する多軸ロボットによって前記プリントヘッドが位置決めされ、
前記プリントヘッドが、少なくとも1m2/分の面積塗装性能を発揮するように構成され、
前記塗装剤と接する前記プリントヘッド(8、9)の表面のエリアが、摩耗を減少させる塗装、ダイヤモンド塗装、硬質メタル、もしくは、硬質材料と軟質材料との材料の組み合わせ、を提供される、
ことを特徴とする塗装機器。
【請求項23】(削除)
【請求項26】
塗装剤を塗布する塗布機器を有し、塗料で車両部品を塗装する塗装機器であって、
前記塗布機器が、少なくとも1つの塗装剤ノズル(12; 14.1~14.4; 16.1~16.6; 20; 29; 36; 44; 45)から前記塗装剤を吐出するプリントヘッド(8、9)であり、
前記プリントヘッドが、ノズル列に配置された塗装剤ノズルを有し、それぞれのノズル列がいくつかの塗装剤ノズルを含み、
前記塗装剤ノズルの全てが前記車両部品に同一の塗装剤を塗布し得るように、さまざまな前記ノズル列の前記塗装剤ノズルが、塗布される前記塗装剤が供給される塗装剤供給ラインに一緒に接続され、
前記プリントヘッドが搭載される多軸ハンドを有する多軸ロボットによって前記プリントヘッドが位置決めされ、
前記プリントヘッドが、少なくとも1m2/分の面積塗装性能を発揮するように構成され、かつ、
前記塗装機器は、
a)前記プリントヘッド(59)を位置決めする多軸ロボット(58)と、
b)ロボット(58)によって前記プリントヘッド(59)と一緒に位置決めされ、塗装される部品(60)上のガイド経路の方向を検知する、センサー(62)と、
c)入力側において前記センサー(62)と接続され、出力側において前記ロボット(58)と接続されるロボット制御装置(61)と、
を備え、
前記ロボット制御装置(61)が前記ガイド経路の前記方向の関数として、前記プリントヘッド(59)を位置決めし、さらに、
a)前記センサー(62)が光学センサーであり、および、
b)前記ガイド経路が以前に塗布された塗装剤の経路である、
ことを特徴とする塗装機器。
【請求項28】
塗装剤を塗布する塗布機器を有し、塗料で車両部品を塗装する塗装機器であって、
前記塗布機器が、少なくとも1つの塗装剤ノズル(12; 14.1~14.4; 16.1~16.6; 20; 29; 36; 44; 45)から前記塗装剤を吐出するプリントヘッド(8、9)であり、
前記プリントヘッドが、ノズル列に配置された塗装剤ノズルを有し、それぞれのノズル列がいくつかの塗装剤ノズルを含み、
前記塗装剤ノズルの全てが前記車両部品に同一の塗装剤を塗布し得るように、さまざまな前記ノズル列の前記塗装剤ノズルが、塗布される前記塗装剤が供給される塗装剤供給ラインに一緒に接続され、
前記プリントヘッドが搭載される多軸ハンドを有する多軸ロボットによって前記プリントヘッドが位置決めされ、
前記プリントヘッドが、少なくとも1m2/分の面積塗装性能を発揮するように構成され、かつ、
a)前記プリントヘッド(74)が、経路の方向に関してお互いに隣に配置される塗装剤ノズル(75)を有し、
b)外側の前記塗装剤ノズル(75)は、内側の前記塗装剤ノズル(75)よりも少ない塗装剤を吐出する、
ことを特徴とする塗装機器。
【請求項32】(削除)
【請求項33】(削除)
【請求項36】
塗料で車両部品を塗装する塗装方法であって、
塗装剤ノズルの全てが前記車両部品に同一の塗装剤を塗布し得るように、塗装機器に設けられたプリントヘッド(8、9)によって塗装剤が塗布され、
前記塗装機器は、
塗装剤を塗布する塗布機器を有し、塗料で車両部品を塗装する塗装機器であって、
前記塗布機器が、少なくとも1つの塗装剤ノズル(12; 14.1~14.4; 16.1~16.6; 20; 29; 36; 44; 45)から前記塗装剤を吐出するプリントヘッド(8、9)であり、
前記プリントヘッドが、ノズル列に配置された塗装剤ノズルを有し、それぞれのノズル列がいくつかの塗装剤ノズルを含み、
前記塗装剤ノズルの全てが前記車両部品に同一の塗装剤を塗布し得るように、さまざまな前記ノズル列の前記塗装剤ノズルが、塗布される前記塗装剤が供給される塗装剤供給ラインに一緒に接続され、
前記プリントヘッドが搭載される多軸ハンドを有する多軸ロボットによって前記プリントヘッドが位置決めされ、
前記プリントヘッドが、少なくとも1m2/分の面積塗装性能を発揮するように構成される、
塗装機器であり、
a)大きな表面積のエリア塗装においては、均一な塗装を得るために前記プリントヘッド(8、9)が回転し、および、
b)細部または図面の詳細な塗装においては、局所的な高解像度を得るために前記プリントヘッド(8、9)が回転しない、
ことを特徴とする塗装方法。
【請求項37】
塗料で車両部品を塗装する塗装方法であって、
塗装剤ノズルの全てが前記車両部品に同一の塗装剤を塗布し得るように、塗装機器に設けられたプリントヘッド(8、9)によって塗装剤が塗布され、
前記塗装機器は、
塗装剤を塗布する塗布機器を有し、塗料で車両部品を塗装する塗装機器であって、
前記塗布機器が、少なくとも1つの塗装剤ノズル(12; 14.1~14.4; 16.1~16.6; 20; 29; 36; 44; 45)から前記塗装剤を吐出するプリントヘッド(8、9)であり、
前記プリントヘッドが、ノズル列に配置された塗装剤ノズルを有し、それぞれのノズル列がいくつかの塗装剤ノズルを含み、
前記塗装剤ノズルの全てが前記車両部品に同一の塗装剤を塗布し得るように、さまざまな前記ノズル列の前記塗装剤ノズルが、塗布される前記塗装剤が供給される塗装剤供給ラインに一緒に接続され、
前記プリントヘッドが搭載される多軸ハンドを有する多軸ロボットによって前記プリントヘッドが位置決めされ、
前記プリントヘッドが、少なくとも1m2/分の面積塗装性能を発揮するように構成される、
塗装機器であり、
前記塗装方法は、さらに、
a)前記プリントヘッド(8、9)および/または塗装される前記部品表面の空間位置を検知する工程と、
b)測定された位置の関数として、前記プリントヘッド(8、9)の前記空間位置を開ループ調節(steureung)および閉ループ制御(regelung)する工程と、
を含むことを特徴とする塗装方法。
【請求項39】(削除)
【請求項40】(削除)」
第4 請求人の主張の概要及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
請求人は、審判請求書とともに下記甲第1ないし20号証を証拠方法として提出し、口頭審理陳述要領書及び上申書を提出した。
そして、請求人は、「特許第5976320号の請求項5、12、18、20、21、22、23、26、28、32、33、36、37、39及び40に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由として、おおむね次の無効理由を主張している。
(1)無効理由1(甲第1号証を主引用文献とする進歩性)
本件発明5、12、18、20、21、22、23、26、28、32、33、36、37、39及び40は、いずれも、甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらについての特許は、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものである。
(2)無効理由2(サポート要件)
本件発明5、12、18、20、21、22、23、26、28、32、33、36、37、39及び40についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し無効とすべきものである。
(3)無効理由3(明確性要件)
本件発明5、12、18、20、21、22、23、26、28、32、33、36、37、39及び40についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し無効とすべきものである。
(4)無効理由4(簡潔性要件)
本件発明26についての特許は、特許法第36条第6項第3号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し無効とすべきものである。
なお、令和4年5月31日に行った第1回口頭審理において、以下のとおりの補正の許否の決定を行った。
【補正の許否の決定】
特許法第131条の2第2項の規定に基づき、下記のとおり決定する。
記
令和4年2月17日付け審判事件弁駁書第34ページ[リ]で主張する無効理由は、請求の理由の要旨を変更するものなので、許可しない。
2 証拠方法
甲第1号証 米国特許出願公開第2007/0062383号明細書
甲第2号証 特開平9-164706号公報
甲第3号証 特開2008-173942号公報
甲第4号証 特開2000-288442号公報
甲第5号証 特開2005-103446号公報
甲第6号証 米国特許第6264547号明細書
甲第7号証 特開2005-125273号公報
甲第8号証 特開2007-276165号公報
甲第9号証 米国特許出願公開第2008/0252671号明細書
甲第10号証 特開2007-216220号公報
甲第11号証 特開平10-43675号公報
甲第12号証 米国特許出願公開第2007/0097176号明細書
甲第13号証 特開2004-284121号公報
甲第14号証 特開2000-238254号公報
甲第15号証 特開平6-121944号公報
甲第16号証 欧州特許出願公開第1884365号明細書
甲第17号証 米国特許出願公開第2006/0068109号明細書
甲第18号証 計測と制御 Vol.25,No.1、p.37-44
甲第19号証 米国特許出願公開第2003/0202215号明細書
甲第20号証 特開平6-206041号公報
証拠の表記はおおむね請求書の記載に従った。以下、順に「甲1」のようにいう。
第5 被請求人の主張の概要及び証拠方法
1 被請求人の主張の概要
被請求人は、審判事件答弁書とともに下記乙第1号証を証拠方法として提出し、口頭審理陳述要領書及び上申書を提出した。
そして、被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由として、請求人が主張する上記無効理由1ないし4はいずれも理由がない旨主張している。
2 証拠方法
乙第1号証 「精密位置決め・送り系設計のための制御工学」、表紙、20、21、73、74、143頁、奥付
証拠の表記はおおむね答弁書に添付された証拠説明書の記載に従った。以下、「乙1」という。
第6 当審の判断
1 無効理由1(甲1を主引用文献とする進歩性)について
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「固定表面上での大判の3次元デジタル印刷のためのロボット、および少なくとも1つのそのようなロボットを伴う印刷方法」に関して、おおむね次の記載がある。なお、原文の摘記は省略し、訳文を摘記する。
・「【0001】
本発明は、固定表面上でのデジタルの大判3次元印刷のためのロボット、および少なくともそのようなロボットを使用するプロセスに関する。本発明の特定の分野は、車両のグラフィック、たとえばトラック、バス、ワゴン、飛行機への印刷である。」
・「【0010】
本発明の目的は、コストを低減させるためのインクジェット印刷技術と、複雑さにかかわらずあらゆる画像または写真を印刷することが可能なデジタル技術とを使用して、事前に取り外すことなく、表面を印刷することを可能にする、5つの電動軸を有する印刷ロボットを提案することによって、従来技術のロボットを簡略化することである。本発明では、媒体上のインクの乾燥が瞬時に行われ、したがって乾燥のための追加の固定化時間は生じない。」
・「【0011】
本発明は、固定表面上での大判の3次元印刷のためのロボットに関し、このロボットは、インクジェットプリントアセンブリと、このプリントアセンブリをいくつかの軸に沿って変位および配向する手段と、これらの手段を制御する少なくとも1つの制御ユニットと、前記表面上へ噴霧されたインクを乾燥させる乾燥デバイスとを備え、前記ロボットは、5つの電動軸を有する印刷ロボットであり、これらの変位および配向手段は、
【0012】
プリントアセンブリの位置決めを確実にし、その水平、垂直、および深さ方向の並進を可能にする3並進自由度を有するキャリアと、
【0013】
プリントアセンブリの向きを支持して確実にし、2つの直交軸に沿ってその回転を可能にする2回転自由度を有するリストとを備えることを特徴とする。」
・「【0043】
有利には、プリントアセンブリは、少なくとも1つの印刷ブロックを備え、少なくとも1つの印刷ブロックには、異なる色のインクを使用するいくつかのプリントヘッドが設けられる。各印刷ブロックは、それぞれ黄色、シアン、マゼンタ、および黒色のインクを使用する4つのプリントヘッドを備えることができる。インクは、紫外線乾燥インクとすることができる。」
・「【0055】
本発明のロボットで使用される技術は、1600万色による180dpiの印刷品質で、表面上でのデジタル画像の3次元自動印刷を可能にする。品質は、ダブルパスによって360dpiまで延ばすことができる。使用される紫外線インク(UV)は、ターポリン、塗装された薄板金属、塗装された壁などの様々な媒体上への印刷を可能にする。一体型の乾燥デバイスが、媒体上で瞬時乾燥を提供する。」
・「【0057】
図1は、本発明のデジタル印刷ロボットを示す。」
・「【0068】
本発明のロボット10は、5つの電動軸を有する印刷ロボットであり、3つの並進軸および2つの回転軸を有する。このロボット10は、少なくとも1つの印刷ブロック18を備えるプリントアセンブリ13を空間内で動かして配向することができ、少なくとも1つの印刷ブロック18には、いくつかのインクジェットプリントヘッド14が設けられており、たとえば4つのヘッドがそれぞれ、固定されたままの印刷すべき媒体12の表面11上へ、黄色、シアン、マゼンタ、および黒色のインクを噴霧する。
【0069】
このロボットの運動学は、可能な限り簡単になるように設計されている。このロボットは、一般に使用される市販の製品(伝達軸、制御、...)を利用している。
【0070】
図1は、媒体12の表面11、たとえばトラック12の外面11上への3次元印刷に使用される本発明のロボット10を示す。
【0071】
この印刷ロボット10は、
【0072】
たとえば異なる色のインクジェットプリントヘッド14を備えた少なくとも1つの印刷ブロック18を備えるプリントアセンブリ13と、
【0073】
プリントアセンブリ13の位置決めを確実にし、水平(Tx)、垂直(Ty)、および深さ(Tz)方向の並進を可能にする3並進自由度を有するキャリア15と、
【0074】
プリントアセンブリ13の向きを確実にし、2つの直交軸に沿ってその回転(Rx、Ry)を可能にする2自由度を有するリスト16とを備える。」
・「【0217】
最大印刷速度は、180dpiの解像度で2.142m2/分である。」
・「
[図:0001404004000001.jpg]
」
・「
[図:0001404004000002.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を、特に【0070】ないし【0074】及び【0217】に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、順に「甲1機器発明」及び「甲1方法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1機器発明>
「異なる色のインクジェットプリントヘッド14を備えた少なくとも1つの印刷ブロック18を備えるプリントアセンブリ13と、プリントアセンブリ13の位置決めを確実にし、水平(Tx)、垂直(Ty)、および深さ(Tz)方向の並進を可能にする3並進自由度を有するキャリア15と、プリントアセンブリ13の向きを確実にし、2つの直交軸に沿ってその回転(Rx、Ry)を可能にする2自由度を有するリスト16とを備え、最大印刷速度は、180dpiの解像度で2.142m2/分であるトラック12の外面11上への3次元印刷に使用されるロボット10。」
<甲1方法発明>
「異なる色のインクジェットプリントヘッド14を備えた少なくとも1つの印刷ブロック18を備えるプリントアセンブリ13と、プリントアセンブリ13の位置決めを確実にし、水平(Tx)、垂直(Ty)、および深さ(Tz)方向の並進を可能にする3並進自由度を有するキャリア15と、プリントアセンブリ13の向きを確実にし、2つの直交軸に沿ってその回転(Rx、Ry)を可能にする2自由度を有するリスト16とを備え、最大印刷速度は、180dpiの解像度で2.142m2/分であるトラック12の外面11上への3次元印刷に使用されるロボット10によって、トラック12の外面11上へ3次印刷する方法。」
(2)本件発明5について
ア 対比
本件発明5と甲1機器発明を対比する。
甲1機器発明における「少なくとも1つの印刷ブロック18」に備えられた「異なる色のインクジェットプリントヘッド14」は、「異なる色の」という特定がされている点を除き、本件発明5における「少なくとも1つの塗装剤ノズル(12; 14.1~14.4; 16.1~16.6; 20; 29; 36; 44; 45)」に相当するとともに「ノズル列に配置された塗装剤ノズル」に相当する。
甲1機器発明における「少なくとも1つの印刷ブロック18」は本件発明5における「ノズル列に配置された塗装剤ノズルを有し、それぞれのノズル列がいくつかの塗装剤ノズルを含」む「前記塗装剤を吐出するプリントヘッド(8、9)」に相当する。
甲1機器発明における「プリントアセンブリ13」は本件発明5における「塗装剤を塗布する塗布機器」に相当する。
甲1機器発明における「プリントアセンブリ13の位置決めを確実にし、水平(Tx)、垂直(Ty)、および深さ(Tz)方向の並進を可能にする3並進自由度を有するキャリア15と、プリントアセンブリ13の向きを確実にし、2つの直交軸に沿ってその回転(Rx、Ry)を可能にする2自由度を有するリスト16とを備え」た「トラック12の外面11上への3次元印刷に使用されるロボット10」は本件発明5における「前記プリントヘッドが搭載される多軸ハンドを有する多軸ロボットによって前記プリントヘッドが位置決めされ」た「塗料で車両部品を塗装する塗装機器」に相当する。
甲1機器発明における「最大印刷速度は、180dpiの解像度で2.142m2/分である」は本件発明5における「少なくとも1m2/分の面積塗装性能を発揮するように構成され」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「塗装剤を塗布する塗布機器を有し、塗料で車両部品を塗装する塗装機器であって、
前記塗布機器が、少なくとも1つの塗装剤ノズル(12; 14.1~14.4; 16.1~16.6; 20; 29; 36; 44; 45)から前記塗装剤を吐出するプリントヘッド(8、9)であり、
前記プリントヘッドが、ノズル列に配置された塗装剤ノズルを有し、それぞれのノズル列がいくつかの塗装剤ノズルを含み、
前記プリントヘッドが搭載される多軸ハンドを有する多軸ロボットによって前記プリントヘッドが位置決めされ、
前記プリントヘッドが、少なくとも1m2/分の面積塗装性能を発揮するように構成された、塗装機器。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点5-1>
「塗装剤ノズル」に関し、本件発明5においては、「前記塗装剤ノズルの全てが前記車両部品に同一の塗装剤を塗布し得るように、さまざまな前記ノズル列の前記塗装剤ノズルが、塗布される前記塗装剤が供給される塗装剤供給ラインに一緒に接続され」と特定されている(当審注:「前記塗装剤ノズルの全て」とは「塗布機器に設けられた全ての塗装ノズル」のことである。)のに対し、甲1機器発明においては、「異なる色」のものと特定されるものであって、本件発明5のようには特定されていない点。
なお、請求人は、「「前記塗装剤ノズルの全て」については、「特定のプリントヘッドに備えられた塗装剤ノズルの全てのこと」と解釈されると思料する。」(請求人が提出した口頭審理陳述要領書の第8ページ第21行ないし第18ページ第19行)と主張する。また、上申書においても同様の主張をしている。
そこで、上記主張について検討する。
請求項5の「前記塗布機器が、少なくとも1つの塗装剤ノズル(12; 14.1~14.4; 16.1~16.6; 20; 29; 36; 44; 45)から前記塗装剤を吐出するプリントヘッド(8、9)であり、前記プリントヘッドが、ノズル列に配置された塗装剤ノズルを有し、それぞれのノズル列がいくつかの塗装剤ノズルを含み、前記塗装剤ノズルの全てが前記車両部品に同一の塗装剤を塗布し得るように、さまざまな前記ノズル列の前記塗装剤ノズルが、塗布される前記塗装剤が供給される塗装剤供給ラインに一緒に接続され」という記載は、「塗布機器」が「プリントヘッド(8、9)」であり、「前記プリントヘッド」、すなわち「プリントヘッド(8、9)」が「塗装剤ノズルを含み」、その「塗装剤ノズル」の「全て」が「同一の塗装剤を塗布し得るように」という記載であるから、「同一の塗装剤を塗布し得るように」されているのは、「塗布機器」に備えられた「全ての塗装ノズル」と理解すべきである。そして、そのような理解は、本件特許明細書の記載及び図面とも整合する。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
<相違点5-2>
本件発明5においては、「a)前記塗布機器が、部品が前記塗装剤で塗装される塗装キャビン内に配置される、および、
d)前記塗装キャビン(2)から下向きに前記キャビンの空気を抜き出す空気抜き器(10)が設けられ、および、
e)前記空気抜き器(10)の上流に配置され、前記キャビンの空気から前記オーバースプレーを除去する空気フィルター(11)が設けられた」と特定されているのに対し、甲1機器発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
そこで、相違点5-1について検討する。
甲1機器発明は、「異なる色のインクジェットプリントヘッド14」を備えるものであって、甲1の【0010】及び【0055】によると「あらゆる画像複雑さにかかわらずあらゆる画像または写真を印刷することが可能なデジタル技術とを使用して」、「1600万色による180dpiの印刷品質で、表面上でのデジタル画像の3次元自動印刷を可能にする」ことを目的とするものである。してみると、甲1機器発明における「インクジェットプリントヘッド14」の全てが同一の塗装剤を塗布し得るように塗装剤供給源に一緒に接続されると、その目的を果たすことができなくなるので、甲1機器発明において、相違点5-1に係る本件発明5の発明特定事項を採用することには阻害要因がある。
そうすると、仮に、甲1及び他の証拠のいずれかに相違点5-1に係る本件発明5の発明特定事項に関する記載又は示唆があったとしても、甲1機器発明において、相違点5-1に係る本件発明5の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
ウ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書、審判事件弁駁書及び上申書において、本件発明5の進歩性に関して、おおむね次の(ア)ないし(ク)のとおり主張する。なお、他の本件発明についても同様の主張をしている。
(ア)甲1には、本件発明5における、構成要件A5(塗装剤を塗布する塗布機器を有し、塗料で車両部品を塗装する塗装機器であって)、B5(前記塗布機器が、少なくとも1つの塗装剤ノズル(12; 14.1~14.4; 16.1~16.6; 20; 29; 36; 44; 45)から前記塗装剤を吐出するプリントヘッド(8、9)であり)、C5(前記プリントヘッドが、ノズル列に配置された塗装剤ノズルを有し、それぞれのノズル列がいくつかの塗装剤ノズルを含み)、E5(前記プリントヘッドが搭載される多軸ハンドを有する多軸ロボットによって前記プリントヘッドが位置決めされ)に相当する構成について開示されていて、さらに「5つの電動軸の(多軸の)ロボット+インクジェット印刷技術」による、車両への塗装(印刷)という着想および構成が開示され、さらに車両の広い面積について塗装(印刷)可能なことについても開示されている。
また、甲2には、構成要件B5、C5、D5(前記塗装剤ノズルの全てが前記車両部品に同一の塗装剤を塗布し得るように、さまざまな前記ノズル列の前記塗装剤ノズルが、塗布される前記塗装剤が供給される塗装剤供給ラインに一緒に接続され)に相当する構成について開示されているが、この甲2は、インクジェットプリンタに関する技術(インクジェット印刷技術)に関するものである。
同じく、甲3は、構成要件B5、C5、D5に相当する構成について開示されているが、この甲3も、インクジェットプリンタに関する技術(インクジェット印刷技術)に関するものである。
甲4には、構成要件G5(前記塗布機器が、部品が前記塗装剤で塗装される塗装キャビン内に配置される)に相当する構成が開示されているが、この甲4は、自動車等の塗装分野に関するものであると共に、インクジェット技術に関するものである。
甲5には、本件発明5の構成要件G5、H5(前記塗装キャビン(2)から下向きに、および/または、測道を通して前記キャビンの空気を抜き出す空気抜き器(10)が設けられ)、I5に相当する構成が開示されているが、この甲5は、自動車等の塗装分野に関するものである。
甲6には、本件発明5の構成要件H5、I5(前記空気抜き器(10)の上流に配置され、前記キャビンの空気から前記オーバースプレーを除去する空気フィルター(11)が設けられ)、J5(前記キャビンの空気がフィルター天井を通して前記塗装キャビン(2)から下向きに抜き出されるように、前記塗装キャビン(2)の基部に配置されたフィルター天井として前記空気フィルター(11)が設計された)に相当する構成が開示されているが、この甲6は、自動車等の塗装分野に関するものである。
甲7には、本件発明5の構成要件I5に相当する構成が開示されているが、この甲7は、自動車等の塗装分野に関するものである。
甲1に対し、(a)甲2と甲3のうちから少なくとも1つと、(b)甲4、甲5、甲6及び甲7のうちから少なくとも1つを組み合わせることに、何等の阻害要因も存在しない。
そのため、当業者であれば、甲1に対し、(a)甲2と甲3のうちから少なくとも1つと、(b)甲4、甲5、甲6及び甲7のうちから少なくとも1つを組み合わせることで、本件発明5を容易に想到することができる(審判請求書第63ページ第11行ないし第64ページ第12行)。
(イ)甲1ないし3は、全て、インクジェットの技術分野におけるものであるので、これらの間には、技術分野の関連性がある(審判事件弁駁書第5ページ第7行ないし第7ページ第17行)。
(ウ)画像データ全体、またはあるエリアにおける全ての画素の画素値を等しく設定するだけで、画像データとしては最もシンプルなベタ塗状態の画像が得られる点は、インクジェット技術における当業者又は当業者ではない一般ユーザにとって、技術常識であり、かかる技術常識と、甲1の【0010】に「あらゆる画像」と記載されていることに鑑みれば、甲1に開示のプリントヘッドにおいても、単一色の塗装が可能なことが開示されている(審判事件弁駁書第7ページ第19行ないし第10ページ第3行)。
(エ)甲1ないし3に開示の各インクジェットプリントヘッドは作用効果及び機能の共通性がある(審判事件弁駁書第13ページ第10行ないし第14ページ第4行)。
(オ)被請求人は、「プリントヘッドのノズルの数を増やすこと」や、「プリントヘッドの移動速度を速くすること」で面積塗装性能を向上させることができることを、「周知技術」である旨主張しており、被請求人の主張する周知技術の適用を行えば、甲1に対して、甲2及び/又は甲3を組み合わせることの支障となるとは到底思われない(審判事件弁駁書第14ページ第5行ないし第15ページ第4行)。
(カ)本件特許明細書の開示を見ると、請求項1から31のいずれか1項に従属している、削除された請求項32、およびその請求項32に対応している図26、明細書の【0132】には、プリントヘッド(68)が、異なる要素(塗料の液滴)を、車両部品の表面で別々に塗布することについて、開示されている。いわば、被請求人自らの手によって、阻害要因があるどころか、「甲第1号証に対して、甲第2号証および/または甲第3号証を組み合せること」の開示を行っている状態となっている。かかる開示からすると、被請求人は、自らの手によって、主引用例である甲第1号証に対して、副引用例である甲第2号証や甲第3号証を適用すると本件特許発明が機能しなくなってしまうとか、主引用例の発明の目的を反する方向の変更となってしまうことを、上記の開示では否定するどころか肯定しているかのように記載している(審判事件弁駁書第15ページ第12行ないし第16ページ末行)。
(キ)単色塗装(印刷)というのは、技術的には、多色塗装(印刷)よりも古く、多色のインクジェット技術も既に周知技術と言える段階にある。また、上記の多色のインクジェット技術に対し、液滴の着弾位置の高精度化や、高度な画像処理が要求されない、単色のインクジェット技術は、ある意味、先祖返り的で、一般的には技術的な難易度の低いものであるから、当然に周知技術と呼べるものであり、当業者にとって、その実施は容易である(審判事件弁駁書第17ページ第1行ないし第18ページ第23行)。
(ク)被請求人は、甲1発明において、4つのプリントヘッドの全てを甲2又は3に記載のプリントヘッドの構成1つに置き換えるという組み合わせ方をすると、多色印刷が不可能となる旨述べているが、そもそも、プリントヘッドから吐出される塗料は、供給される塗料は、当業者が適宜に選択する事項であり、多色印刷を行うといっても、基本的には、単色印刷をベースにしたものである。ここで、インク(塗料)の液滴を「打つか打たないか」の単色2値画像に分解して、プリントヘッドを駆動させることはインクジェットの基本であり、そのようなプリントヘッドを多色の数だけ準備すれば多色印刷は可能となるものであり、そのような複雑なことをせずに単色分だけ設ける場合には、単色印刷のみが可能となるものである(上申書第17ページ第16行ないし第18ページ第3行)。
そこで、上記主張について検討する。
・(ア)、(イ)、(エ)及び(オ)について
甲1ないし3の間に、技術分野の関連性や作用効果及び機能の共通性があったとしても、また、「プリントヘッドのノズルの数を増やすこと」や、「プリントヘッドの移動速度を速くすること」で面積塗装性能を向上させることができることが「周知技術」であったとしても、上記イのとおり、甲1機器発明において、相違点5-1に係る本件発明5の発明特定事項を採用することに阻害要因がある以上、相違点5-1に係る本件発明5の発明特定事項を採用することが当業者に容易であったとはいえない。
したがって、(ア)、(イ)、(エ)及び(オ)の主張は採用できない。
・(ウ)について
甲1に単一色の塗装が可能なことが開示されているとしても、そもそも、甲1機器発明は、単一色の塗装を含めてあらゆる画像の印刷が可能なものであるから、甲1機器発明において、相違点5-1に係る発明特定事項を採用することに阻害要因があることに変わりはない。
したがって、(ウ)の主張も採用できない。
・(カ)について
本件特許明細書は本件特許の優先日前の文献ではないから、本件特許明細書の開示は、甲1機器発明において、相違点5-1に係る本件発明5の発明特定事項を採用できるかどうかの判断の根拠とすることはできない。
したがって、(カ)の主張も採用できない。
・(キ)について
仮に、単色塗装(印刷)が技術的には、多色塗装(印刷)よりも古く、単色のインクジェット技術は、ある意味、先祖返り的で、一般的には技術的な難易度の低いものであるとしても、上記イのとおり、甲1機器発明において、相違点5-1に係る本件発明5の発明特定事項を採用することに阻害要因がある以上、相違点5-1に係る本件発明5の発明特定事項を採用することが当業者に容易であったとはいえない。
したがって、(キ)の主張も採用できない。
・(ク)について
甲1発明は、「あらゆる画像複雑さにかかわらずあらゆる画像または写真を印刷することが可能なデジタル技術とを使用して」、「1600万色による180dpiの印刷品質で、表面上でのデジタル画像の3次元自動印刷を可能にする」ことを目的とするものである以上、プリントヘッドを単色分だけ設けて、単色印刷をするものではないというべきである。
したがって、(ク)の主張も採用できない。
エ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明5は甲1機器発明、すなわち甲1に記載された発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明12について
ア 対比
本件発明12と甲1機器発明を対比する。
本件発明12と甲1機器発明の間には、本件発明5と甲1機器発明の間と同様の相当関係が成り立つ。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「塗装剤を塗布する塗布機器を有し、塗料で車両部品を塗装する塗装機器であって、
前記塗布機器が、少なくとも1つの塗装剤ノズル(12; 14.1~14.4; 16.1~16.6; 20; 29; 36; 44; 45)から前記塗装剤を吐出するプリントヘッド(8、9)であり、
前記プリントヘッドが、ノズル列に配置された塗装剤ノズルを有し、それぞれのノズル列がいくつかの塗装剤ノズルを含み、
前記プリントヘッドが搭載される多軸ハンドを有する多軸ロボットによって前記プリントヘッドが位置決めされ、
前記プリントヘッドが、少なくとも1m2/分の面積塗装性能を発揮するように構成された、塗装機器。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点12-1>
「塗装剤ノズル」に関し、本件発明12においては、「前記塗装剤ノズルの全てが前記車両部品に同一の塗装剤を塗布し得るように、さまざまな前記ノズル列の前記塗装剤ノズルが、塗布される前記塗装剤が供給される塗装剤供給ラインに一緒に接続され」と特定されているのに対し、甲1機器発明においては、「異なる色」のものと特定されるものであって、本件発明12のようには特定されていない点。
<相違点12-2>
「プリントヘッド」に関し、本件発明12においては、「a)前記プリントヘッド(8、9)が、行(einer zeile)および列(einer spalte)の行列形式に配置された塗装剤ノズル(29)を有し、および、
b)さまざまな前記ノズル列(28.1~28.4)の前記塗装剤ノズル(29)が色変換器(30)によって一緒に供給される」と特定されているのに対し、甲1機器発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
そこで、相違点12-1について検討する。
相違点12-1は相違点5-1と同じであるから、その判断も同じである。
したがって、甲1機器発明において、相違点12-1に係る本件発明12の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明12は甲1機器発明、すなわち甲1に記載された発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件発明18について
ア 対比
本件発明18と甲1機器発明を対比する。
本件発明18と甲1機器発明の間には、本件発明5と甲1機器発明の間と同様の相当関係が成り立つ。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「塗装剤を塗布する塗布機器を有し、塗料で車両部品を塗装する塗装機器であって、
前記塗布機器が、少なくとも1つの塗装剤ノズル(12; 14.1~14.4; 16.1~16.6; 20; 29; 36; 44; 45)から前記塗装剤を吐出するプリントヘッド(8、9)であり、
前記プリントヘッドが、ノズル列に配置された塗装剤ノズルを有し、それぞれのノズル列がいくつかの塗装剤ノズルを含み、
前記プリントヘッドが搭載される多軸ハンドを有する多軸ロボットによって前記プリントヘッドが位置決めされ、
前記プリントヘッドが、少なくとも1m2/分の面積塗装性能を発揮するように構成された、塗装機器。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点18-1>
「塗装剤ノズル」に関し、本件発明18においては、「前記塗装剤ノズルの全てが前記車両部品に同一の塗装剤を塗布し得るように、さまざまな前記ノズル列の前記塗装剤ノズルが、塗布される前記塗装剤が供給される塗装剤供給ラインに一緒に接続され」と特定されているのに対し、甲1機器発明においては、「異なる色」のものと特定されるものであって、本件発明18のようには特定されていない点。
<相違点18-2>
「プリントヘッド」に関し、本件発明18においては、「a)前記プリントヘッド(8、9、43)が回転軸に対して回転自在に搭載され、塗装中、または、連続的な塗装セッションの間に回転し、および、
b)前記プリントヘッド(8、9、43)が異なるサイズの塗装剤ノズルを有する」と特定されているのに対し、甲1機器発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
そこで、相違点18-1について検討する。
相違点18-1は相違点5-1と同じであるから、その判断も同じである。
したがって、甲1機器発明において、相違点18-1に係る本件発明18の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明18は甲1機器発明、すなわち甲1に記載された発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件発明21について
ア 対比
本件発明21と甲1機器発明を対比する。
本件発明21と甲1機器発明の間には、本件発明5と甲1機器発明の間と同様の相当関係が成り立つ。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「塗装剤を塗布する塗布機器を有し、塗料で車両部品を塗装する塗装機器であって、
前記塗布機器が、少なくとも1つの塗装剤ノズル(12; 14.1~14.4; 16.1~16.6; 20; 29; 36; 44; 45)から前記塗装剤を吐出するプリントヘッド(8、9)であり、
前記プリントヘッドが、ノズル列に配置された塗装剤ノズルを有し、それぞれのノズル列がいくつかの塗装剤ノズルを含み、
前記プリントヘッドが搭載される多軸ハンドを有する多軸ロボットによって前記プリントヘッドが位置決めされ、
前記プリントヘッドが、少なくとも1m2/分の面積塗装性能を発揮するように構成された、塗装機器。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点21-1>
「塗装剤ノズル」に関し、本件発明21においては、「前記塗装剤ノズルの全てが前記車両部品に同一の塗装剤を塗布し得るように、さまざまな前記ノズル列の前記塗装剤ノズルが、塗布される前記塗装剤が供給される塗装剤供給ラインに一緒に接続され」と特定されているのに対し、甲1機器発明においては、「異なる色」のものと特定されるものであって、本件発明21のようには特定されていない点。
<相違点21-2>
本件発明21においては、「特殊塗料が、エフェクト塗料、メタリック塗料、もしくはマイカ塗料である」と特定されているのに対し、甲1機器発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
そこで、相違点21-1について検討する。
相違点21-1は相違点5-1と同じであるから、その判断も同じである。
したがって、甲1機器発明において、相違点21-1に係る本件発明21の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明21は甲1機器発明、すなわち甲1に記載された発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(6)本件発明22について
ア 対比
本件発明22と甲1機器発明を対比する。
本件発明22と甲1機器発明の間には、本件発明5と甲1機器発明の間と同様の相当関係が成り立つ。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「塗装剤を塗布する塗布機器を有し、塗料で車両部品を塗装する塗装機器であって、
前記塗布機器が、少なくとも1つの塗装剤ノズル(12; 14.1~14.4; 16.1~16.6; 20; 29; 36; 44; 45)から前記塗装剤を吐出するプリントヘッド(8、9)であり、
前記プリントヘッドが、ノズル列に配置された塗装剤ノズルを有し、それぞれのノズル列がいくつかの塗装剤ノズルを含み、
前記プリントヘッドが搭載される多軸ハンドを有する多軸ロボットによって前記プリントヘッドが位置決めされ、
前記プリントヘッドが、少なくとも1m2/分の面積塗装性能を発揮するように構成された、塗装機器。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点22-1>
「塗装剤ノズル」に関し、本件発明22においては、「前記塗装剤ノズルの全てが前記車両部品に同一の塗装剤を塗布し得るように、さまざまな前記ノズル列の前記塗装剤ノズルが、塗布される前記塗装剤が供給される塗装剤供給ラインに一緒に接続され」と特定されているのに対し、甲1機器発明においては、「異なる色」のものと特定されるものであって、本件発明22のようには特定されていない点。
<相違点22-2>
本件発明22においては、「前記塗装剤と接する前記プリントヘッド(8、9)の表面のエリアが、摩耗を減少させる塗装、ダイヤモンド塗装、硬質メタル、もしくは、硬質材料と軟質材料との材料の組み合わせ、を提供される」と特定されているのに対し、甲1機器発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
そこで、相違点22-1について検討する。
相違点22-1は相違点5-1と同じであるから、その判断も同じである。
したがって、甲1機器発明において、相違点22-1に係る本件発明22の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明22は甲1機器発明、すなわち甲1に記載された発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(7)本件発明26について
ア 対比
本件発明26と甲1機器発明を対比する。
本件発明26と甲1機器発明の間には、本件発明5と甲1機器発明の間と同様の相当関係が成り立つ。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「塗装剤を塗布する塗布機器を有し、塗料で車両部品を塗装する塗装機器であって、
前記塗布機器が、少なくとも1つの塗装剤ノズル(12; 14.1~14.4; 16.1~16.6; 20; 29; 36; 44; 45)から前記塗装剤を吐出するプリントヘッド(8、9)であり、
前記プリントヘッドが、ノズル列に配置された塗装剤ノズルを有し、それぞれのノズル列がいくつかの塗装剤ノズルを含み、
前記プリントヘッドが搭載される多軸ハンドを有する多軸ロボットによって前記プリントヘッドが位置決めされ、
前記プリントヘッドが、少なくとも1m2/分の面積塗装性能を発揮するように構成された、塗装機器。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点26-1>
「塗装剤ノズル」に関し、本件発明26においては、「前記塗装剤ノズルの全てが前記車両部品に同一の塗装剤を塗布し得るように、さまざまな前記ノズル列の前記塗装剤ノズルが、塗布される前記塗装剤が供給される塗装剤供給ラインに一緒に接続され」と特定されているのに対し、甲1機器発明においては、「異なる色」のものと特定されるものであって、本件発明26のようには特定されていない点。
<相違点26-2>
本件発明26においては、「前記塗装機器は、
a)前記プリントヘッド(59)を位置決めする多軸ロボット(58)と、
b)ロボット(58)によって前記プリントヘッド(59)と一緒に位置決めされ、塗装される部品(60)上のガイド経路の方向を検知する、センサー(62)と、
c)入力側において前記センサー(62)と接続され、出力側において前記ロボット(58)と接続されるロボット制御装置(61)と、
を備え、
前記ロボット制御装置(61)が前記ガイド経路の前記方向の関数として、前記プリントヘッド(59)を位置決めし、さらに、
a)前記センサー(62)が光学センサーであり、および、
b)前記ガイド経路が以前に塗布された塗装剤の経路である」と特定されているのに対し、甲1機器発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
そこで、相違点26-1について検討する。
相違点26-1は相違点5-1と同じであるから、その判断も同じである。
したがって、甲1機器発明において、相違点26-1に係る本件発明26の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明26は甲1機器発明、すなわち甲1に記載された発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(8)本件発明28について
ア 対比
本件発明28と甲1機器発明を対比する。
本件発明28と甲1機器発明の間には、本件発明5と甲1機器発明の間と同様の相当関係が成り立つ。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「塗装剤を塗布する塗布機器を有し、塗料で車両部品を塗装する塗装機器であって、
前記塗布機器が、少なくとも1つの塗装剤ノズル(12; 14.1~14.4; 16.1~16.6; 20; 29; 36; 44; 45)から前記塗装剤を吐出するプリントヘッド(8、9)であり、
前記プリントヘッドが、ノズル列に配置された塗装剤ノズルを有し、それぞれのノズル列がいくつかの塗装剤ノズルを含み、
前記プリントヘッドが搭載される多軸ハンドを有する多軸ロボットによって前記プリントヘッドが位置決めされ、
前記プリントヘッドが、少なくとも1m2/分の面積塗装性能を発揮するように構成された、塗装機器。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点28-1>
「塗装剤ノズル」に関し、本件発明28においては、「前記塗装剤ノズルの全てが前記車両部品に同一の塗装剤を塗布し得るように、さまざまな前記ノズル列の前記塗装剤ノズルが、塗布される前記塗装剤が供給される塗装剤供給ラインに一緒に接続され」と特定されているのに対し、甲1機器発明においては、「異なる色」のものと特定されるものであって、本件発明28のようには特定されていない点。
<相違点28-2>
本件発明28においては、「a)前記プリントヘッド(74)が、経路の方向に関してお互いに隣に配置される塗装剤ノズル(75)を有し、
b)外側の前記塗装剤ノズル(75)は、内側の前記塗装剤ノズル(75)よりも少ない塗装剤を吐出する」と特定されているのに対し、甲1機器発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
そこで、相違点28-1について検討する。
相違点28-1は相違点5-1と同じであるから、その判断も同じである。
したがって、甲1機器発明において、相違点28-1に係る本件発明28の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明28は甲1機器発明、すなわち甲1に記載された発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(9)本件発明36について
ア 対比
本件発明36と甲1方法発明を対比する。
本件発明36の「塗装機器」に関する部分と甲1方法発明の「ロボット10」に関する部分との間には、本件発明5と甲1機器発明の間と同様の相当関係が成り立つ。
また、甲1方法発明における「トラック12の外面11上へ3次印刷する方法」は本件発明36における「塗料で車両部品を塗装する塗装方法」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「塗料で車両部品を塗装する塗装方法であって、
塗装機器に設けられたプリントヘッド(8、9)によって塗装剤が塗布され、
前記塗装機器は、
塗装剤を塗布する塗布機器を有し、塗料で車両部品を塗装する塗装機器であって、
前記塗布機器が、少なくとも1つの塗装剤ノズル(12; 14.1~14.4; 16.1~16.6; 20; 29; 36; 44; 45)から前記塗装剤を吐出するプリントヘッド(8、9)であり、
前記プリントヘッドが、ノズル列に配置された塗装剤ノズルを有し、それぞれのノズル列がいくつかの塗装剤ノズルを含み、
前記プリントヘッドが搭載される多軸ハンドを有する多軸ロボットによって前記プリントヘッドが位置決めされ、
前記プリントヘッドが、少なくとも1m2/分の面積塗装性能を発揮するように構成される、塗装機器である塗装方法。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点36-1>
本件発明36においては、「塗装機器」が「前記塗装剤ノズルの全てが前記車両部品に同一の塗装剤を塗布し得るように、さまざまな前記ノズル列の前記塗装剤ノズルが、塗布される前記塗装剤が供給される塗装剤供給ラインに一緒に接続され」るものに特定され、かつ、「塗装剤ノズルの全てが前記車両部品に同一の塗装剤を塗布し得るように」「塗装剤が塗布され」と特定されているのに対し、甲1方法発明においては、「インクジェットプリントヘッド14」は「異なる色」のものと特定されるものであって、本件発明36のようには特定されていない点。
<相違点36-2>
本件発明36においては、「a)大きな表面積のエリア塗装においては、均一な塗装を得るために前記プリントヘッド(8、9)が回転し、および、
b)細部または図面の詳細な塗装においては、局所的な高解像度を得るために前記プリントヘッド(8、9)が回転しない」と特定されているのに対し、甲1方法発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
そこで、相違点36-1について検討する。
相違点36-1は相違点5-1と同じ発明特定事項を含むものであり、それについての判断は同じである。
したがって、甲1方法発明において、相違点36-1に係る本件発明36の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明36は甲1方法発明、すなわち甲1に記載された発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(10)本件発明37について
ア 対比
本件発明37と甲1方法発明を対比する。
本件発明37と甲1方法発明の間には、本件発明36と甲1方法発明の間と同様の相当関係が成り立つ。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「塗料で車両部品を塗装する塗装方法であって、
塗装機器に設けられたプリントヘッド(8、9)によって塗装剤が塗布され、
前記塗装機器は、
塗装剤を塗布する塗布機器を有し、塗料で車両部品を塗装する塗装機器であって、
前記塗布機器が、少なくとも1つの塗装剤ノズル(12; 14.1~14.4; 16.1~16.6; 20; 29; 36; 44; 45)から前記塗装剤を吐出するプリントヘッド(8、9)であり、
前記プリントヘッドが、ノズル列に配置された塗装剤ノズルを有し、それぞれのノズル列がいくつかの塗装剤ノズルを含み、
前記プリントヘッドが搭載される多軸ハンドを有する多軸ロボットによって前記プリントヘッドが位置決めされ、
前記プリントヘッドが、少なくとも1m2/分の面積塗装性能を発揮するように構成される、塗装機器である塗装方法。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点37-1>
本件発明37においては、「塗装機器」が「前記塗装剤ノズルの全てが前記車両部品に同一の塗装剤を塗布し得るように、さまざまな前記ノズル列の前記塗装剤ノズルが、塗布される前記塗装剤が供給される塗装剤供給ラインに一緒に接続され」るものに特定され、かつ、「塗装剤ノズルの全てが前記車両部品に同一の塗装剤を塗布し得るように」「塗装剤が塗布され」と特定されているのに対し、甲1方法発明においては、「インクジェットプリントヘッド14」は「異なる色」のものと特定されるものであって、本件発明37のようには特定されていない点。
<相違点37-2>
本件発明37においては、「a)前記プリントヘッド(8、9)および/または塗装される前記部品表面の空間位置を検知する工程と、
b)測定された位置の関数として、前記プリントヘッド(8、9)の前記空間位置を開ループ調節(steureung)および閉ループ制御(regelung)する工程と、
を含む」と特定されているのに対し、甲1方法発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
そこで、相違点37-1について検討する。
相違点37-1は相違点36-1と同じであるから、その判断も同じである。
したがって、甲1方法発明において、相違点37-1に係る本件発明37の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明37は甲1方法発明、すなわち甲1に記載された発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(11)無効理由1についてのむすび
したがって、本件発明5、12、18、21、22、26、28、36及び37は、甲1に記載された発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえず、それらについての特許は同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものであるとはいえない。
よって、無効理由1は理由がない。
2 無効理由2(サポート要件)について
(1)請求人の主張の概要
請求人の審判請求書、審判事件弁駁書、口頭審理陳述要領書及び上申書におけるサポート要件に関する主張の概要は、おおむね次のとおりである。
なお、請求項20、23、32、33、39及び40は、本件訂正により削除され、該請求項に係る発明についての主張は対象がなくなったので、摘記は省略した。
・本件発明5、12、18、21、22、26、28、36及び37の「前記プリントヘッドが、少なくとも1m2/分の面積塗装性能を発揮するように構成され」たという発明特定事項は、いわゆる機能的表現とされるものであるが、このような機能的表現は、その機能が当てはまる物を広く包含し得るため、その外延が必ずしもはっきりしない、という周知の問題点が存在している。また、かかる機能的表現は、発明の詳細な説明に開示した以上の発明を包含する状態となることが多く、発明内容の開示の代償として独占権を付与するという特許制度の目的にも反してしまう場合が多い。
ところで、本件特許の明細書の記載を参酌しても、上記の発明特定事項でいう面積塗装性能を、具体的にどのようにして発揮させたのかが、全く開示されていない。かかる面積塗装性能が、従来構成よりも優れている、というのであれば、どのような構成・手段(たとえばインクジェット方式はどのようなものを採用し、その構成(ノズル径、駆動周波数他)はどのようにし、さらには塗装剤の粘度等の特性はどのようなものであるのか等)によって、そのような面積塗装性能が発揮されたのかが示されるべきであるが、そのような開示は一切存在していない。
たとえば「1000万m2/分以上の面積塗装性能を発揮するように構成された塗装機」や「時速1万kmで飛行するように構成された飛行機」等と請求項に記載される一方、その具体的な構成が一切明細書に開示されていない場合には、単なる願望を記載したに過ぎず、サポート要件違反に該当する。
加えて、「前記プリントヘッドが、少なくとも1m2/分の面積塗装性能を発揮するように構成された」という記載は、たとえば1000m2/分の面積塗装性能や、上記のような1000万m2/分も文言上、含まれる。すなわち、塗装機の面積塗装性能には、現在の技術をもってしても達成できない上限があるはずであるが、そのような開示は一切存在していない。加えて、1m2/分を実証する実験データはおろか、たとえば2m2/分、5m2/分・・・1000m2/分等を実証するような実験データは何ら存在していない。以上から、面積塗装性能に関する数値を裏付ける実験データ等が何ら開示されていないので、サポート要件違反に該当する。
(2)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(3)サポート要件の判断
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
また、本件特許の発明の詳細な説明の【0001】ないし【0009】によると、本件発明の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は「適切な改良を引き出すこと」である。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0011】ないし【0065】には、本件発明の各発明特定事項に対応する記載があり、また、同じく【0067】ないし【0147】及び図面には、塗装剤を塗布する塗布機器を有し、塗料で車両部品を塗装する塗装機器であって、前記塗布機器が、少なくとも1つの塗装剤ノズルから前記塗装剤を吐出するプリントヘッドであり、前記プリントヘッドが、ノズル列に配置された塗装剤ノズルを有し、それぞれのノズル列がいくつかの塗装剤ノズルを含み、前記プリントヘッドが搭載される多軸ハンドを有する多軸ロボットによって前記プリントヘッドが位置決めされた塗装機器であって、塗装剤ノズルの全てが車両部品に同一の塗装剤を塗布し得るように、さまざまなノズル列の塗装剤ノズルが、塗布される塗装剤が供給される塗装剤供給ラインに一緒に接続され、前記プリントヘッドが、少なくとも1m2/分の面積塗装性能を発揮するように構成された塗装機器について、具体的に記載され、特に【0071】には「プリントヘッド8、9の表面塗装性能は従来型のプリントヘッドよりも非常に大きく、車両部品が満足のいく作業速度で塗装され得る。」と従来型のプリントヘッドよりも優れていることが記載されている。
そうすると、当業者は、「塗装剤を塗布する塗布機器を有し、塗料で車両部品を塗装する塗装機器であって、前記塗布機器が、少なくとも1つの塗装剤ノズルから前記塗装剤を吐出するプリントヘッドであり、前記プリントヘッドが、ノズル列に配置された塗装剤ノズルを有し、それぞれのノズル列がいくつかの塗装剤ノズルを含み、前記プリントヘッドが搭載される多軸ハンドを有する多軸ロボットによって前記プリントヘッドが位置決めされた」「塗装機器」において、「前記塗装剤ノズルの全てが前記車両部品に同一の塗装剤を塗布し得るように、さまざまな前記ノズル列の前記塗装剤ノズルが、塗布される前記塗装剤が供給される塗装剤供給ラインに一緒に接続され」、「前記プリントヘッドが、少なくとも1m2/分の面積塗装性能を発揮するように構成され」た「塗装機器」及び該「塗装機器」を用いた「塗装方法」は、発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件発明は上記発明の課題を解決できると認識できる「塗装機器」及び「塗装方法」をさらに限定したものである。
したがって、本件発明は発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
よって、本件発明に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。
(4)請求人の主張について
請求人の主張について検討する。
本件発明において、「プリントヘッド」の「面積塗装性能」の上限の特定がされていないとしても、下限が明確である以上、発明の外延ははっきりしており、発明は明確である。
また、プリントヘッドのノズルの数を増やしたり、プリントヘッドの移動速度を速くしたり、塗料の吐出圧力を高くすれば、面積塗装性能を高くすることができることは当業者に明らかであるから、本件発明に関する特許請求の範囲の記載が単なる願望を記載したに過ぎないとはいえないし、現在の技術をもってしても達成できないものが含まれるともいえない。
そもそも、サポート要件に適合するかの判断は、上記(2)の判断基準により行うものであり、請求人が上記(1)で主張するような点は、サポート要件に適合するかどうかとは関係がない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
(5)無効理由2についてのむすび
したがって、本件発明5、12、18、21、22、26、28、36及び37は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、それらについての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、同法第123条第1項第4号に該当し無効とすべきものであるとはいえない。
よって、無効理由2は理由がない。
3 無効理由3(明確性要件)について
(1)請求人の主張の概要
請求人の審判請求書、審判事件弁駁書、口頭審理陳述要領書及び上申書における明確性要件に関する主張の概要は、おおむね次のアないしカのとおりである。
なお、請求項20、23、32、33、39及び40は、本件訂正により削除され、該請求項に係る発明についての主張は対象がなくなったので、摘記は省略した。
また、本件訂正により請求項12の「c)」及び「d)」に関する記載が削除され、それらの記載に対する主張も対象がなくなったので、摘記は省略した。
ア 本件発明5、12、18、21、22、26、28、36及び37の「前記プリントヘッドが、少なくとも1m2/分の面積塗装性能を発揮するように構成された」という発明特定事項は、単なる願望を記載したに過ぎず、明確性要件違反に該当する。
イ 本件発明21の「特殊塗料が、エフェクト塗料、メタリック塗料、もしくはマイカ塗料である」という発明特定事項は、「エフェクト塗料」と、「メタリック塗料」と、「マイカ塗料」との関係が不明確となっているので、明確性要件違反に該当する。なお、法令用語の観点から見ると、「もしくは」という文言は、小さな選択的接続に用いられ、大きな選択的接続では「または」が用いられる点でも、明確性の点で問題がある。
ウ 本件発明22の「摩耗を減少させる塗装、ダイヤモンド塗装、硬質メタル、もしくは、硬質材料と軟質材料との材料の組み合わせ」という発明特定事項は、「摩耗を減少させる塗装」と、「ダイヤモンド塗装」と、「硬質メタル」と、「硬質材料と軟質材料との材料の組み合わせ」との関係が不明確となっているので、明確性要件違反に該当する。なお、法令用語の観点から見ると、「もしくは」という文言は、小さな選択的接続に用いられ、大きな選択的接続では「または」が用いられる点でも、明確性の点で問題がある。
エ 本件発明28の「前記プリントヘッド(74)が、経路の方向に関してお互いに隣に配置される塗装剤ノズル(75)を有し」という発明特定事項と、「外側の前記塗装剤ノズル(75)は、内側の前記塗装剤ノズル(75)よりも少ない塗装剤を吐出する」という発明特定事項とは、「経路」とは何かが不明確であるから、両者の関係が不明確であり、明確性要件違反に該当する。
オ 本件発明36の「大きな表面積のエリア塗装」という発明特定事項は、何よりも大きなものなのか不明確であり、明確性要件違反に該当する。
カ 本件発明37の「前記プリントヘッド(8、9)および/または塗装される前記部品表面の空間位置を検知する工程」という発明特定事項及び「測定された位置の関数として、前記プリントヘッド(8、9)の前記空間位置を開ループ調節(steureung)および閉ループ制御(regelung)する工程」という発明特定事項は、具体的な構成・手段が発明の詳細な説明に一切開示されていないので、明確性要件違反に該当する。
(2)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
(3)明確性要件の判断
本件特許の特許請求の範囲の請求項5、12、18、21、22、26、28、36及び37の記載は、上記第3のとおりである。
そして、本件特許の特許請求の範囲の請求項5、12、18、21、22、26、28、36及び37の記載には、意味内容が不明な記載はなく、また、発明の詳細な説明の記載及び図面に本件発明5、12、18、21、22、26、28、36及び37の各発明特定事項について具体的に記載されているから、当業者は、特許請求の範囲の記載並びに願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して、本件発明5、12、18、21、22、26、28、36及び37がどのようなものかを理解することができる。
したがって、本件発明5、12、18、21、22、26、28、36及び37に関して、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
よって、本件発明5、12、18、21、22、26、28、36及び37に関して、特許請求の範囲の記載は明確性要件に適合する。
(4)請求人の主張について
請求人の主張について検討する。
・アについて
願望を記載したに過ぎないかどうかは、明確性要件に適合するかどうかとは関係がない。
なお、上記2(4)のとおり、プリントヘッドのノズルの数を増やしたり、プリントヘッドの移動速度を速くしたり、塗料の吐出圧力を高くすれば、面積塗装性能を高くすることができることは当業者に明らかであるので、本件発明に関する特許請求の範囲の記載は、単なる願望を記載したに過ぎないとはいえない。
したがって、アの主張は採用できない。
・イについて
本件発明21における「エフェクト塗料」、「メタリック塗料」及び「マイカ塗料」のそれぞれの意味は明確であるから、互いの関係が不明確だとしても、本件発明21の「特殊塗料が、エフェクト塗料、メタリック塗料、もしくはマイカ塗料である」という発明特定事項が不明確であるとはいえない。また、法令用語の観点からは、「もしくは」ではなく「または」という選択的接続詞を使うのが適切であったとしても、上記発明特定事項の意味は理解できるので、不明確であるとはいえない。
したがって、イの主張も採用できない。
・ウについて
本件発明22における「摩耗を減少させる塗装」、「ダイヤモンド塗装」、「硬質メタル」及び「硬質材料と軟質材料との材料の組み合わせ」のそれぞれの意味は明確であるから、互いの関係が不明確だとしても、本件発明22の「摩耗を減少させる塗装、ダイヤモンド塗装、硬質メタル、もしくは、硬質材料と軟質材料との材料の組み合わせ」という発明特定事項が不明確であるとはいえない。また、法令用語の観点からは、「もしくは」ではなく「または」という選択的接続詞を使うのが適切であったとしても、上記発明特定事項の意味は理解できるので、不明確であるとはいえない。
したがって、ウの主張も採用できない。
・エについて
本件発明28の「前記プリントヘッド(74)が、経路の方向に関してお互いに隣に配置される塗装剤ノズル(75)を有し」という発明特定事項における「経路」とは、本件明細書の【0140】の記載を考慮すれば、「塗装経路」のことであると当業者は理解するから、「経路」とは何かが不明確であるとはいえない。
そうすると、本件発明28の「前記プリントヘッド(74)が、経路の方向に関してお互いに隣に配置される塗装剤ノズル(75)を有し」という発明特定事項と「外側の前記塗装剤ノズル(75)は、内側の前記塗装剤ノズル(75)よりも少ない塗装剤を吐出する」という発明特定事項の関係が不明確であるともいえない。
したがって、エの主張も採用できない。
・オについて
本件発明36の「大きな表面積のエリア塗装」という発明特定事項における「大きな」が、「b)細部または図面の詳細な塗装においては、局所的な高解像度を得るための前記プリントヘッド(8,9)が回転しない」という発明特定事項によって塗装される「面積」よりも大きいことであると、当業者は理解するから、本件発明36の「大きな表面積のエリア塗装」という発明特定事項が不明確であるとはいえない。
したがって、オの主張も採用できない。
・カについて
本件発明37の「前記プリントヘッド(8、9)および/または塗装される前記部品表面の空間位置を検知する工程」という発明特定事項がどのようなものかは、本件明細書の【0066】の「【図24】プリントヘッドを位置決めするために、プリントヘッドおよびセンサーを制御する多軸ロボットを有する、本発明に係る塗装機器の模式図を示す。」及び【0149】の「58 ロボット
59 プリントヘッド
60 部品表面
61 ロボット制御装置
62 センサー」という記載並びに下記の図24から、当業者であれば理解できる。
・「【図24】
[図:0001404004000003.jpg]
」
また、本件発明37の「測定された位置の関数として、前記プリントヘッド(8、9)の前記空間位置を開ループ調節(steureung)および閉ループ制御(regelung)する工程」という発明特定事項がどのようなものかは、具体的な構成・手段が発明の詳細な説明に一切開示されていないとしても、位置決めの分野において「開ループ調節」及び「閉ループ制御」を行うことは技術常識(必要であれば、下記乙1に記載された事項を参照。)であるから、当業者に明らかである。
<乙1に記載された事項>
・「
[図:0001404004000004.jpg]
[図:0001404004000005.jpg]
[図:0001404004000006.jpg]
」(第20ページ及び21ページ)
したがって、本件発明37の「前記プリントヘッド(8、9)および/または塗装される前記部品表面の空間位置を検知する工程」という発明特定事項及び「測定された位置の関数として、前記プリントヘッド(8、9)の前記空間位置を開ループ調節(steureung)および閉ループ制御(regelung)する工程」という発明特定事項が不明確であるとはいえない。
よって、カの主張も採用できない。
(5)無効理由3についてのむすび
したがって、本件発明5、12、18、21、22、26、28、36及び37は明確であり、それらについての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、同法第123条第1項第4号に該当し無効とすべきものであるとはいえない。
よって、無効理由3は理由がない。
4 無効理由4(簡潔性要件)について
(1)請求人の主張の概要
請求人の審判請求書における簡潔性要件に関する主張の概要は、おおむね次のとおりである。
・本件発明26の「前記プリントヘッド(59)を位置決めする多軸ロボット(58)と、」という発明特定事項は、本件発明26の「前記プリントヘッドが搭載される多軸ハンドを有する多軸ロボットによって前記プリントヘッドが位置決めされ」という発明特定事項と重複的であり、簡潔性要件違反に該当する。
(2)簡潔性要件の判断基準
特許法第36条第6項第3号は、特許請求の範囲について、請求項ごとの記載が簡潔でなければならないこと(簡潔性要件)を規定する。
そして、以下の場合に、特許請求の範囲の記載が簡潔性要件を満たさないと判断される。
ア 請求項に同一内容の事項が重複して記載してあって、記載が必要以上に冗長すぎる場合
イ マーカッシュ形式で記載された化学物質の発明などのような択一形式による記載において、選択肢の数が大量である結果、請求項の記載の簡潔性が著しく損なわれている場合
そこで、検討する。
(3)簡潔性要件の判断
まず、上記(2)アの場合に該当するかどうかについて検討する。
本件発明26の「前記プリントヘッド(59)を位置決めする多軸ロボット(58)と、」という発明特定事項は「前記塗装機器は、a」前記プリントヘッド(59)を位置決めする多軸ロボット(58)と、・・・を備え」という発明特定事項の一部であり、ここでは、「塗装機器」が「多軸ロボット(58)」を備えていることを特定している。
他方、本件発明26の「前記プリントヘッド(59)を位置決めする多軸ロボット(58)と、」という発明特定事項においては「塗装機器」が「多軸ロボット(58)」を備えていることを特定するものではない。
したがって、本件発明26の上記発明特定事項に関する記載は同一内容の事項を重複して記載しているものとはいえない。また、仮に同一内容の事項が重複して記載されていたとしても、この程度の記載では、必要以上に冗長すぎる記載であるとはいえない。
よって、本件発明26に関する特許請求の範囲の記載は上記(2)アの場合に該当するものではない。
また、本件発明26に関する特許請求の範囲の記載が上記(2)イの場合に該当するものではないことは明らかである。
(4)無効理由4についてのむすび
したがって、本件発明26に関して、特許請求の範囲の記載は簡潔であり、それについての特許は、特許法第36条第6項第3号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、同法第123条第1項第4号に該当し無効とすべきものであるとはいえない。
よって、無効理由4は理由がない。
第7 結語
以上のとおり、本件発明5、12、18、21、22、26、28、36及び37に関して、無効理由1ないし4はいずれも理由がなく、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明5、12、18、21、22、26、28、36及び37についての特許を無効とすることはできない。
また、本件発明20、23、32、33、39及び40についての特許は訂正により削除された。これにより、本件発明20、23、32、33、39及び40についての特許についての審判請求は、その対象が存在しないものとなったため、特許法第135条の規定により却下する。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-800046