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特許異議申立

2022-701134

木質複合材及び床材

審判番号
2022-701134
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-146978
登録番号
7072781
請求日
2022年11月17日
審決日
2024年03月14日
公報発行日
2025年06月27日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】大建工業株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人前田特許事務所
  • 【権利者】地方独立行政法人北海道立総合研究機構
  • 【権利者代理人】弁理士法人前田特許事務所
  • 【異議申立人】脇谷 治義
審判長/審判官
  • 審判長 前川 慎喜
  • 審判官 土屋 真理子
  • 審判官 佐藤 史彬
分類
P1651.121-ZAA(B27N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7072781号発明「木質複合材及び床材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7072781号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 特許第7072781号の請求項1~3に係る特許を取り消す。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7072781号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、令和3年9月9日に出願され、令和4年5月13日にその特許権の設定登録がされ、同月23日に特許掲載公報が発行されたものであり、その後の特許異議の申立ての経緯は以下のとおりである。 令和4年11月17日 特許異議申立人脇谷 治義(以下「申立人」と いう。)による請求項1~3に係る発明の特許 に対する特許異議の申立て 令和5年 1月23日付け 取消理由通知 同年 3月27日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同年 6月15日 申立人による意見書の提出 同年 8月28日付け 取消理由通知(決定の予告) 同年10月31日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同年12月21日 申立人による意見書の提出 なお、令和5年10月31日に訂正の請求がされたので、同年3月27日にされた先の訂正の請求は、特許法120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和5年10月31日に提出された訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)の内容(以下「本件訂正」という。)は以下のとおりである。(下線は、訂正箇所を示す。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「 木質ボードと2.7mm以上の厚さを有する中密度繊維板とが接合一体化された木質複合材であって、 上記木質ボードは、繊維方向に沿った表裏面を有する細長形状の多数の木質小薄片が集合状態で積層されて接着一体化されてなり、 上記木質小薄片は、上記表裏面間の厚さが0.20mm以上0.50mm以下、上記繊維方向に沿った長さが40mm以下、上記繊維方向と直交する方向に沿った幅が15mm以下である」と記載されているのを、 「 合板の代替材として用いられる木質ボードと、2.7mm以上の厚さを有する中密度繊維板とが接合一体化された木質複合材であって、 上記木質ボードは、繊維方向に沿った表裏面を有する細長形状の多数の木質小薄片が集合状態で積層されて接着一体化されてなり、 上記木質ボードの密度が400kg/m3以上550kg/m3以下であり、 上記木質小薄片は、上記表裏面間の厚さが0.20mm以上0.50mm以下、上記繊維方向に沿った長さが40mm以下、上記繊維方向と直交する方向に沿った幅が15mm以下の細長形状に大きさと形状が均質に揃い、節部分がなく、且つ上記繊維方向がランダムに配向されている」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~3についても同様に訂正する。) 2 訂正の適否についての判断 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的 上記訂正事項1のうち、 (ア)訂正前の請求項1の「木質ボードと2.7mm以上の厚さを有する中密度繊維板と」を「合板の代替材として用いられる木質ボードと、2.7mm以上の厚さを有する中密度繊維板と」とする訂正は、「木質ボード」が「合板の代替材として用いられる」ものであることを特定して限定するとともに、「合板の代替材として用いられる」のが「木質ボード」であることを明確にするために「木質ボードと」と「2.7mm以上の厚さを有する中密度繊維板と」との間に「、」を付加するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (イ)訂正前の請求項1に「 上記木質ボードの密度が400kg/m3以上550kg/m3以下であり、」を付加する訂正は、木質ボードについて「密度が400kg/m3以上550kg/m3以下」であるものに特定して限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (ウ)訂正前の請求項1の「上記木質小薄片は、上記表裏面間の厚さが0.20mm以上0.50mm以下、上記繊維方向に沿った長さが40mm以下、上記繊維方向と直交する方向に沿った幅が15mm以下である」を「上記木質小薄片は、上記表裏面間の厚さが0.20mm以上0.50mm以下、上記繊維方向に沿った長さが40mm以下、上記繊維方向と直交する方向に沿った幅が15mm以下の細長形状に大きさと形状が均質に揃い、節部分がなく、且つ上記繊維方向がランダムに配向されている」とする訂正は、「木質小薄片」について「細長形状に大きさと形状が均質に揃い、節部分がな」いとの発明特定事項を直列的に付加するとともに、木質ボード内における木質小薄片の配向について「上記繊維方向がランダムに配向されている」と特定して限定したものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 そして、訂正事項1に係る訂正は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮ないし明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、請求項1に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 ウ 新規事項の有無 本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」といい、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面を「本件明細書等」という。)の段落【0027】、【0036】、【0040】~【0043】、【0048】及び【0050】の記載からみて、訂正事項1は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 (2)一群の請求項 訂正前の請求項1~3について、請求項2及び3は、直接または間接的に請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の請求項1~3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法120条の5第9項により準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 上記第2のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~3に係る発明(以下、請求項番号に対応して「本件発明1」等という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 合板の代替材として用いられる木質ボードと、2.7mm以上の厚さを有する中密度繊維板とが接合一体化された木質複合材であって、 上記木質ボードは、繊維方向に沿った表裏面を有する細長形状の多数の木質小薄片が集合状態で積層されて接着一体化されてなり、 上記木質ボードの密度が400kg/m3以上550kg/m3以下であり、 上記木質小薄片は、上記表裏面間の厚さが0.20mm以上0.50mm以下、上記繊維方向に沿った長さが40mm以下、上記繊維方向と直交する方向に沿った幅が15mm以下の細長形状に大きさと形状が均質に揃い、節部分がなく、且つ上記繊維方向がランダムに配向されていることを特徴とする木質複合材。 【請求項2】 請求項1の木質複合材において、 木質ボードの木質小薄片は、長さが20mm以下、幅が5mm以下の細長形状であることを特徴とする木質複合材。 【請求項3】 請求項1又は2の木質複合材からなり、中密度繊維板が表側になるように施工されることを特徴とする床材。」 第4 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1~3に係る特許に対して、当審が令和5年8月28日付けで特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。 1 通知した取消理由 (1)請求項1に係る発明は、甲1発明並びに甲4技術事項または甲5技術事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、取り消されるべきものである。 (2)請求項2に係る発明は、甲1発明及び甲5技術事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、取り消されるべきものである。 (3)請求項3に係る発明は、甲1発明、甲4技術事項または甲5技術事項並びに周知技術に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、取り消されるべきものである。 2 引用した証拠 引用した証拠は以下のとおり。 (1)甲第1号証:特開2002-225002号公報 (2)甲第3号証:特開2000-240265号公報 (3)甲第4号証:特開平10-249817号公報 (4)甲第5号証:特開2003-94411号公報 以下、甲第1号証を「甲1」等ということがある。 第5 当審の判断 1 各証拠の記載 (1)甲1 ア 甲1の記載 甲1には次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、水性エマルジョン系接着剤を用いて2枚以上の木質材料を接着積層して製造される木質積層材及びその製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】フローリング材、壁材などの基材として、厚さ5~15mm程度の木質材料を所要枚数だけ接着剤により接着積層した木質積層材が用いられる。木質材料としては、無垢の単板やそれを積層した合板に加え、パーティクルボード(PB)、中密度繊維板(MDF)、配向性ストランドボード(OSB)、ウエハーボード(WB)などの合成木質材も用いられており、それらは、同種のもの同士が接着積層されることもあり、異種材料同士を接着積層することもある。接着剤としては、木質材料と木質材料を接着する際のコスト、作業性、性能の面から、従来、水分率が約50%程度の水性エマルジョン系接着剤が用いられている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】上記のように、現在使われている水性エマルジョン系接着剤は水分率が50%程度のものであり、木質材料と木質材料とを接着する際に、水性エマルジョン系接着剤中の水分が木質材料中に移行することにより、木質材料に寸法変化が生じて、製造された木質積層材に反りや捻れなどが発生することがある。特に、木質材料の含水率が低いときには、この現象が顕著に現れる恐れがあることから、木質材料の含水率管理を厳しく行い、木質材料に寸法変化が生じるのを防止するようにしている。 【0004】一例として、例えば、合板の片面に厚み3mm程度の薄物MDFを練り合わせた複合積層材を基材として持つ木質フロアーを製造する場合、薄物MDFと合板を水性エマルジョン系接着剤にて接着して基材を製造し、そこに、突き板貼り、実加工、仕上げ作業などを行うようにしているが、接着工程中に、薄物MDFと合板との双方に水性エマルジョン系接着剤中の水分が移行して、薄物MDFと合板の双方に寸法変化を生じさせる。その際に、MDFと合板との吸湿による寸法変化率が異なることから、木質基板に反り、捻れなどが発生しやすい。反りや捻れが生じると、その後の製造工程である突き板貼り作業や、仕上げ工程時での接着剤あるいは塗料の均一な塗布が難しくなる。その結果として、突き板の剥がれ、浮き、仕上げのムラが生じて製品不良を生じることもあった。」 (イ)「【0008】すなわち、本発明による木質積層材は、2枚以上の木質材料が水分率が30%以下、好ましくは30%から20%である水性エマルジョン系接着剤を介して接着積層されていることを特徴とする。なお、ここで水分率とは、JISK6833:接着剤の一般試験方法における不揮発分試験での不揮発分以外のものとして定義される。 ・・・ 【0012】本発明において、接着積層する木質材料の種類は任意であり、従来、木質積層材の素材として用いられてきたものを任意に用いうる。例えば、無垢の木質単板、それを積層した単板積層材(LVL)、単板積層板(LVB)、合板、又は、合成木質材などであり、合成木質材としては、パーティクルボード(PB)や、中密度繊維板(MDF)のような木質繊維板や、配向性ストランドボード(OSB)や、ウエハーボード(WB)のようなものがあげられる。それらは、同種のもの同士を接着積層してもよく、異種材料を接着積層してもよい。合板と中密度繊維板(MDF)のように、吸放湿による寸法変化率に大きな差がある木質材料同士を接着積層するときに、本発明は特に有効に作用する。」 (ウ)「【0022】[実施例2]接着剤として、水分率が26%で粘度が15,000mPa・sのエチレン酢酸ビニルエマルジョンを用いた。12mm厚OSB(含水率3%)にその接着剤を117g/m2(固形分87g/m2)[10.7g/尺角(固形分8g/尺角)]になるよう塗布し、2.7mm厚MDF(含水率6%)を載せ、その組み合わせのものを10組重ね合わせ78×104N/m2で15分間コールドプレスした。OSBとMDFの接着性能をJAS2類浸漬剥離試験により測定したところ、満足する結果が得られた。また、比較例1のようなプレス圧縮時のずれはなく、プレス開圧後、反りはほとんどみられなかった。反りを測定したところ長さ900mmについてその最大矢高は0~5mm位であった。 【0023】その基材を突き板貼り工程にもっていき、突き板用接着剤(変性酢酸ビニル+尿素・メラミン系)をスプレッダーで塗布したが、均一に塗布でき突き板の接着性能も問題なかった。さらに、上記条件のコールドプレスを10分間に短縮してみたが、15分間プレスしたときと同様、OSBとMDFの接着性能に問題はなく、その後の工程でも何の不都合もなかった。」 イ 甲1に記載された発明 甲1は、従来の技術として「フローリング材、壁材などの基材として、厚さ5~15mm程度の木質材料を所要枚数だけ接着剤により接着積層した木質積層材が用いられる」ことを記載するが、甲1は、従来の水分率50%程度の水性エマルジョン系接着剤を使用した木質積層材において生じる課題を、水分率が30%以下の水性エマルジョン系接着剤を介して接着積層することにより解決したものであるから、甲1の実施例においても、従来の技術と同様の用途に使われることは明らかである。そうすると、上記アからみて、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 (甲1発明) 「2枚以上の木質材料を接着積層して製造される、 フローリング材、壁材などの基材として、木質材料を接着積層した木質積層材が用いられ、木質材料としては、合板に加え、パーティクルボード(PB)、配向性ストランドボード(OSB)などの合成木質材も用いられている、木質積層材であって、 接着積層する木質材料の種類は、従来、木質積層材の素材として用いられてきたパーティクルボード(PB)、中密度繊維板(MDF)、配向性ストランドボード(OSB)を任意に用いうるものであり、 実施例として、12mm厚OSBに接着剤を塗布し、2.7mm厚MDFを載せ、コールドプレスした木質積層材。」 (2)甲3 ア 甲3の記載 甲3には次の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は床材、特に、表面に貼着される化粧表面層の挙動に高い安定性を与えるようにした床材に関する。 【0002】 【従来の技術】木質基材の表面に突板、化粧紙などの化粧表面層を貼着した床材は知られている。木質基材としては、合板、OSB(Oriented Strand Board)、ブロックボード、集成材、パーティクルボードなど、多くのものが用いられる。そして、遮音性を高めるために少なくとも裏面側に多数の凹溝が形成され、また、緩衝性を向上させるために発泡合成樹脂シートや不織布のような緩衝材が裏面に貼着される。上記したような材料から木質基材を作った場合、その表面平滑性が必ずしも十分でなく、そのままで突板などの化粧表面層を貼着すると、化粧表面層の表面に微細な凹凸や割れ(クラック)が生じる場合がある。そのために、通常、木質基材の表面にはなんらかの平滑化処理が施される。 【0003】平滑化処理は種々の方法で行われるが、その一つに、木質基材の表面に中密度繊維板(MDF)や高密度繊維板(HDF)を接着積層することが行われる。このような繊維板はそれ自体で表面が平滑であり、かつ、ある程度の緩衝性も有することから、その上に突板や化粧紙を化粧表面材として貼着しても、突板表面に凹凸やクラックが生じないなどの利点がある。」 (3)甲4 ア 甲4の記載 甲4には次の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、配向性ストランドマットの製造方法及びその装置に関する。 【0002】 【従来の技術】配向性ストランドマットSMは図7に示すように、多数の例えば0.1mm以上の木質薄片で幅と長さとの比が1:2以上のいわゆるストランドSiに、接着剤を塗布し、その長軸方向が一定方向(図示の例では矢印方向)になるように配向して複層に積層し、ホットプレスして板状に成形したもので、廃材の有効利用の方法として極めて合理的なものである。 ・・・ 【0007】 【発明が解決しようとする課題】従来の方法においては、落下方向が不規則で、すなわち、配向性が悪く、したがって、均一な厚さのマットを形成し難く、また、構造が複雑であった。 【0008】本発明は、配向性を向上して均一な厚さのマットが得られ、かつ、構造が簡単な配向性ストランドマットの製造方法及びその装置を提供することを目的としている。 【0009】 【知見】本発明者は種々研究の結果、例えば厚さが0.3mm、幅が8mm、長さが24mmのストランドを高速気流中に浮かせると、ストランドは気流の速度とほとんど同じ速度で飛び、長軸の方向は気流の方向を向いて配向性が得られ、それをネット状のコンベアで受けてストランドマット薄層を形成できることを見出した。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。」 (イ)図7は以下のとおり。 「 [図:0001423417000001.jpg] 」 イ 甲4に記載された事項 上記アからみて、甲4には、次の技術事項(以下「甲4技術事項」という。) が記載されていると認められる。 (甲4技術事項) 「ストランドSiに、接着剤を塗布し、複層に積層し、ホットプレスして板状に成形した配向性ストランドマットSMにおいて、ストランドを、厚さが0.3mm、幅が8mm、長さが24mmとすること。」 (4)甲5 ア 甲5の記載 甲5には次の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は例えば建築材料として使用される木質板および該木質板の製造方法に関するものである。 ・・・ 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、木片Fを熱可塑性樹脂によって結着した芯層(3) と、木質分を熱硬化性樹脂によって結着した表層(2)および/または裏層(4) とからなる木質板(1) を提供するものである。・・・ 【0005】 【作用】本発明では、芯層(3) は木片Fを使用して粗構造となるが、表層(2) および/または裏層(4) は木質分を熱可塑性樹脂によって結着して緻密な構造とするので、軽量でも寸法安定性良く高強度が得られるし、またホットプレス時表裏層(2,4) の熱硬化性樹脂が硬化していれば、木質板(1) が完全に冷却しないうちでも容易にプレス型から離型出来、また木質板(1) は完全に冷却しないうちでも取扱い容易な保形性を有する。また本発明では、基板(6) 上に木質分と熱硬化性樹脂とを含有する表層用原料混合物M1を散布して表層マット(2A)をフォーミングし、該表層マット(2A)上に熱可塑性樹脂溶融物Rと木片Fとの芯層用原料混合物M2を供給堆積して芯層マット(3A)をフォーミングし、その上に木質分と熱硬化性樹脂とを含有する裏層用原料混合物M1を散布して裏層マット(4A)をフォーミングし、該三層マットをプレス成形するので、表裏層(2,4) と芯層(3) とは、該表裏層(2,4) に含まれる熱硬化性樹脂と該芯層(3) の熱可塑性樹脂溶融物Rにより接着一体化される。したがって芯層(3) と表裏層(2,4) との接着には接着剤が不要となるし、また表裏層(2,4) のみに熱硬化性樹脂を使用しているので、樹脂分解物の発生も少ない。」 (イ)「【0006】 【発明の実施の形態】本発明を以下に詳細に説明する。 〔芯層〕本発明の芯層は木片を熱可塑性樹脂によって結着したものである。上記木片は木材からフレーカーによる切削によって製造され、サイズとしては好ましくは厚さ0.1~5mm、長さ1~50mm、幅0.5~20mm、更に好ましくは厚さ0.5~1mm、長さ20~25mm、幅4~8mmのものである。上記木片の原料となる木材は、好ましくは建築物解体の際に発生する解体木材、木材切断の際に発生する端切れ等を使用する。このような再生品を使用することによって、木材廃棄物の高度利用を図ることが出来る。 ・・・ 【0008】〔表裏層〕本発明の表裏層は木質分を熱硬化性樹脂によって結着したものである。上記木質分としては通常木粉および/または木片が使用され、該木粉は26メッシュ全通の粒径を有することが好ましく、また該木片は上記芯層に用いる木片よりも小サイズで、例えば厚さ0.1~2mm、長さ1~30mm、幅0.1~5mm、好ましくは厚さ0.2~0.5mm、長さ6~12mm、幅0.5~2.5mmのものが使用される。上記木質分もまた芯層用木片と同様に再生品を使用することが好ましい。上記木質分を結着する熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、レゾルシノール樹脂等が使用される。」 (ウ)図1は以下のとおり。 「 [図:0001423417000002.jpg] 」 イ 甲5に記載された事項 上記アからみて、甲5には、次の技術事項(以下「甲5技術事項」という。)が記載されていると認められる。 (甲5技術事項) 「建築材料として使用される、木片Fを熱可塑性樹脂によって結着した芯層(3) と、木質分を熱硬化性樹脂によって結着した表層(2)および/または裏層(4) とからなる木質板(1) において、 芯層は木片を熱可塑性樹脂によって結着したものであり、木片はサイズとしては好ましくは厚さ0.1~5mm、長さ1~50mm、幅0.5~20mmのものであり、 表裏層は木質分を熱硬化性樹脂によって結着したものであり、木質分としては木粉または木片が使用され、該木片は、好ましくは厚さ0.2~0.5mm、長さ6~12mm、幅0.5~2.5mmのものが使用され、 表層(2) および/または裏層(4) は木質分を熱可塑性樹脂によって結着して緻密な構造とするので、軽量でも寸法安定性良く高強度が得られること。」 (5)甲7(特開平11-58330号公報) ア 甲7の記載 申立人が令和5年12月21日付け意見書に添付して甲第7号証として提出した特開平11-58330号公報(以下「甲7」という。)には次の事項が記載されている。 (ア)「【0002】 【従来の技術】住宅建築分野において用いられる木質系構造用材は、金属等と同様に構造計算対象となる材料、つまり機械的強度保証が必要な重要建築材料である。 【0003】近年、良質な大径木の供給が少なくなりつつあり、原木よりの製材品に代わって、木材小片を木目方向に略配向させて積層・接着した配向ストランドボード(OSB)や、長尺木細片を配向させて積層・接着したOSL(Oriented StrandLumber)、PSL(Parallel Strand Lumber)等の木質系再構成材を木質系構造用材として活用することが多くなりつつある。これらの細片化木材を用いた再構成材は、原木を細片化してこれを再構成するために、原木から切り出した製材品のように節等による欠陥が存在せず、性能が安定してより均質な強度が得られるという有用な特徴を持つ。」 2 本件発明1 (1)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 ア 甲1発明の「12mm厚OSB」は、「木質材料」として「合板」に加えて並列的に示されるものであり、「合板の代替材として用いられる」ものといえるから、本件発明1の「合板の代替材として用いられる木質ボード」に相当するといえる。 イ 甲1発明の「2.7mm厚MDF」は、本件発明1の「2.7mm以上の厚さを有する中密度繊維板」に相当する。 ウ 上記ア及びイの対比を踏まえると、甲1発明の「12mm厚OSBに接着剤を塗布し、2.7mm厚MDFを載せ、コールドプレスした基材」は、本件発明1の「合板の代替材として用いられる木質ボードと、2.7mm以上の厚さを有する中密度繊維板とが接合一体化された木質複合材」に相当する。 エ OSBが繊維方向に沿った表裏面を有する細長形状の多数の木質小薄片が集合状態で積層されて接着一体化されてなることは技術常識であるから、甲1発明の「木質積層材」に2.7mm厚MDFとともに用いられるのが「12mm厚OSB」であることは、本件発明1の「上記木質ボードは、繊維方向に沿った表裏面を有する細長形状の多数の木質小薄片が集合状態で積層されて接着一体化されてな」ることに相当する。 オ そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点、相違点を有する。 (一致点) 「合板の代替材として用いられる木質ボードと、2.7mm以上の厚さを有する中密度繊維板とが接合一体化された木質複合材であって、 上記木質ボードは、繊維方向に沿った表裏面を有する細長形状の多数の木質小薄片が集合状態で積層されて接着一体化されてなる木質複合材。」 (相違点1) 本件発明1は、「上記木質ボードの密度が400kg/m3以上550kg/m3以下であ」るのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点。 (相違点2) 本件発明1は、「上記木質小薄片は、上記表裏面間の厚さが0.20mm以上0.50mm以下、上記繊維方向に沿った長さが40mm以下、上記繊維方向と直交する方向に沿った幅が15mm以下の細長形状に大きさと形状が均質に揃い、節部分がな」いのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点。 (相違点3) 本件発明1は、「上記繊維方向がランダムに配向されている」のに対し、甲1発明はそのように特定されていない点。 (2)判断 上記相違点について検討する ア 相違点1について 甲1発明の「OSB」(木質ボード)は、木質小薄片が集合状態で積層されて接着一体化されてなるものであるが、甲1には、OSBの密度について「400kg/m3以上550kg/m3以下」等の特定の密度とすることを阻害する記載は無い。また、後記(3)イ(ウ)bにおいて述べるように、密度が「400kg/m3以上550kg/m3以下」に特定されることによって「ラワン合板と同等の性能」の特性を備えるものになるとはいえず、密度を「400kg/m3以上550kg/m3以下」という特定の範囲とすることが、それによって本件発明1の進歩性が肯定されるものとなるような技術的意義を有するものとはいえない。そして、数値範囲を最適化又は好適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮であるところ、甲1発明の木質ボードの密度は、木質小薄片とする樹種の選択、接着に用いるバインダの材料の選択及びバインダ量、圧縮の程度等により調節できるものであるから、これを400kg/m3以上550kg/m3と特定することは、当業者が適宜なし得たことである。 イ 相違点2について (ア)甲4技術事項を副引用例として用いる場合 甲4技術事項は、ストランドを、厚さが0.3mm、幅が8mm、長さが24mmとするものである。また、ストランドが、通常、繊維方向に沿った方向に長い細長形状とされることは技術常識である。 甲4は、ストランドを上記の大きさとすることで、配向性を向上して均一な厚さのマットが得られるという利点を有するものであり、甲1発明において、OSBを、甲4技術事項の、ストランドを、厚さが0.3mm、幅が8mm、長さが24mm程度としたものとし、もって、木質小薄片の表裏面間の厚さ、繊維方向に沿った長さ及び繊維方向と直交する方向に沿った幅を、それぞれ、0.20mm以上0.50mm以下、40mm以下、15mm以下の細長形状に大きさと形状が均質に揃っているものとすることは、当業者が容易になし得たことである。また、甲7(上記1(5)ア)に「原木を細片化してこれを再構成するために、原木から切り出した製材品のように節等による欠陥が存在せず、性能が安定してより均質な強度が得られる」と記載されるように、技術常識として「原木を細片化」することは節等の欠陥を除外する作用をも奏するものであり、甲1発明においても、ストランドを、厚さが0.3mm、幅が8mm、長さが24mm程度とすれば、その過程において節部分は除かれて「節部分がな」い小薄片となるものと認められる。 (イ)甲5技術事項を副引用例として用いる場合 a 甲5技術事項は、「芯層」の「木片」の好適なサイズを「厚さ0.1~5mm、長さ1~50mm、幅0.5~20mm」とするものである。 木質板を構成する木片は、通常、繊維方向に沿った方向に長い細長形状とされることは技術常識であり、甲1発明において、OSBの木片のサイズを決定するにあたり、強度とともに平滑性、寸法安定性等の所望の性能を考慮して、甲5技術事項の芯層において好適とされる「厚さ0.1~5mm、長さ1~50mm、幅0.5~20mm」との範囲の中から、「厚さ0.20mm以上0.50mm以下、長さが40mm以下、幅15mm以下」を選択し、もって、木質小薄片の表裏面間の厚さ、繊維方向に沿った長さ及び繊維方向と直交する方向に沿った幅を、それぞれ、0.20mm以上0.50mm以下、40mm以下、15mm以下とすることは、当業者が容易になし得たことである。そして、「節部分がな」いことについては、上記(ア)において検討したのと同様であり、木片を細片化することによって「節部分がな」いものとなると認められる。 b また、甲5技術事項は、木質板において、木質分を熱可塑性樹脂によって結着するにあたり、木質分として使用される木片として、厚さ0.2~0.5mm、長さ6~12mm、幅0.5~2.5mmのものが好ましく使用されるものである。この木片は「表裏層」に使用される木片の例として示されたものではあるが、上記の「芯層」の「木片」の好適なサイズとされる「厚さ0.1~5mm、長さ1~50mm、幅0.5~20mm」の範囲にも含まれるものである。 そして、木片が、通常、繊維方向に沿った方向に長い細長形状とされることは技術常識であるから、甲1発明において、甲5技術事項の木片の上記寸法を参照して、木質小薄片の表裏面間の厚さ、繊維方向に沿った長さ及び繊維方向と直交する方向に沿った幅を、それぞれ、0.2mm~0.5mm、6~12mm、0.5~2.5mm程度とし、もって、木質小薄片の表裏面間の厚さ、繊維方向に沿った長さ及び繊維方向と直交する方向に沿った幅を、それぞれ、0.20mm以上0.50mm以下、40mm以下、15mm以下とすることも、当業者が容易になし得たことである。また、「節部分がな」いことについては、上記(ア)において検討したのと同様であり、木片を細片化することによって「節部分がな」いものとなると認められる。 c ここで、「細長形状に大きさと形状が均質に揃っている」ことの技術的意味について検討する。 本件特許の明細書の段落【0013】には「目的」につき「1種類の大きさの薄片のみを用いて、高強度で寸法安定性や表面性に優れ、製造の容易な木質ボードに加え、その木質ボードを用いた床材のための複合材が得られるようにすることにある。」との記載があり、また、段落【0054】には、「すなわち、木質ボードAは、1種類の木質小薄片1,1,…のみで構成され、その木質小薄片1,1,…の厚さtが極めて薄く、0.20~0.50mmという狭い範囲内に収まっているので、多数の木質小薄片1,1,…は厚さtのばらつきが小さくて均一な厚さtに揃ったものになる。また、木質小薄片1,1,…の繊維方向寸法d1(長さ)及び繊維直交方向寸法d2(幅)も一定範囲内にあるので、木質ボードAは大きさが一定範囲内に揃った木質小薄片1,1,…が集合して均質なものとなる。そのため、木質ボードAの強度が高くなるだけでなく、吸放湿による反りが発生し難く、南洋材合板と同程度の良好な寸法安定性が得られる。また、多数の木質小薄片1,1,…が均一な大きさに揃っているので、通常のOSBのように木質ボードAの表面に大きな凹凸が生じることはなく、木質ボードAは表面性に優れたものとなる。また、均一な大きさの多数の木質小薄片1,1,…を集合させて積層するので、その製造も容易となる。」との記載がある(下線は当審において付与した。)。 上記記載から、「木質小薄片」が「細長形状に大きさと形状が均質に揃っている」こととは、「厚さt」、「繊維方向寸法d1(長さ)」及び「繊維直交方向寸法d2(幅)」が、「狭い範囲内に収まってい」ることや、「ばらつきが小さ」いことなど、「一定範囲内にある」ことをいうものと理解することができる。 なお、上記段落には、「1種類の大きさの・・・」との記載があるが、上記理解をふまえれば、特定の(1種類の)数値の寸法を指すものではなく、「一定範囲内」と同様の意味と理解するのが妥当といえる。 そして、「木質小薄片」が上記に示した意味での「細長形状に大きさと形状が均質に揃っている」ことにより、高強度で寸法安定性や表面性に優れた木質ボードを得ることができることを示しているといえる。 d 上記cの検討を踏まえると、甲1発明において木質小薄片の表裏面間の厚さ、繊維方向に沿った長さ及び繊維方向と直交する方向に沿った幅を、それぞれ、0.20mm以上0.50mm以下、40mm以下、15mm以下としたものは、「細長形状に大きさと形状が均質に揃っている」ものといえる。 (ウ)よって、甲1発明において、甲4技術事項または甲5技術事項を参照して、木質小薄片の表裏面間の厚さ、繊維方向に沿った長さ及び繊維方向と直交する方向に沿った幅を、それぞれ、0.20mm以上0.50mm以下、40mm以下、15mm以下の細長形状に大きさと形状が均質に揃い、節部分がないものとすることは、当業者が容易になし得たことである。 ウ 相違点3について (ア)本件明細書の記載 a まず、「上記繊維方向がランダムに配向されている」ことについて、本件明細書の記載について検討する。本件明細書の段落【0036】には以下の記載がある。 「【0036】 上記木質ボードA内において、多数の木質小薄片1,1,…は、その繊維1a,1a,…に沿った方向である繊維方向(長さ方向)が基準方向に配向されていてもよいが、この繊維方向の配向性は必須ではなく、繊維方向がランダムに配向されていてもよい。尚、繊維方向(長さ方向)が基準方向に配向されているとは、木質ボードA内において、全ての木質小薄片1,1,…の繊維1a,1a,…が正確に同一方向を向いていること、換言すると、配向された木質小薄片1,1,…の繊維方向が互いに平行になっていることを限定しない。一部の木質小薄片1,1,…として、繊維方向が基準方向に対してある程度(例えば20°程度)傾いている木質小薄片1,1,…が含まれていてもよい。」 b 上記記載によれば、多数の木質小薄片は、繊維方向が基準方向に配向されていてもよいが、ランダムに配向されていてもよく、基準方向に配向されているとは、全ての木質小薄片の繊維が正確に同一方向を向いていることを意味せず、繊維方向が基準方向に対してある程度(例えば20°程度)傾いている木質小薄片が含まれていてもよいことが理解できる。 c 上記bによれば、「ランダムに配向され」るとは、繊維方向が基準方向に配向されず、繊維方向が基準方向に対してある程度(例えば20°程度)より傾いている状態とも理解できる。 (イ)引用文献の記載 a 甲4に記載されたストランドの配向について 上記(ア)cの理解のもとに甲4の図7(上記1(3)ア(イ))に記載されたストランドマットをみると、ストランドマットにおいて、多数のストランドが繊維方向が基準方向に対してある程度傾いて配置されており、甲4は配向性を向上しようとしてはいるものの、本件明細書にいう「基準方向に配向されている」ものではなく、「ランダムに配向されている」といえるものである。 b 甲5に記載された木片の配向について 甲5のフォーミング装置が示された図1(上記1(4)ア(エ))をみると、木片、特に芯層用原料混合物M2は、配向させる工夫等が特段なされることなく高所から落下している様子が示されており、木片の配置に配向性のない木質ボードであることが推認できる。 (ウ)相違点3についての判断 a 上記(イ)a及びbによれば、甲4技術事項及び甲5技術事項も、「上記繊維方向がランダムに配向されている」ものといえ、相違点3は、一応相違点として検討したが、実質的な相違点ではない。 b 仮に「上記繊維方向がランダムに配向されている」ことが実質的な相違点であったとしても、甲1発明は、配向性ストランドボードとともにパーティクルボードが、接着積層する木質材料として任意に選択できるものであり、甲1発明において2.7mm厚MDFに接着積層される木質積層材の素材をパーティクルボードのような「繊維方向がランダムに配向されている」ものとすることも、当業者が容易になし得たことである。 (3)特許権者の主張 ア 特許権者は、令和5年10月31日提出の意見書(以下、単に「意見書」という。)において、概略以下の主張をしている。 (ア)本件発明1は、繊維方向に沿った表裏面を有する細長形状の多数の木質小薄片が集合状態で積層されて接着一体化されてなる木質ボードと、2.7mm以上の厚さを有する中密度繊維板とが接合一体化された木質複合材の発明であり、木質ボードは、合板の代替材として用いられる(すなわち木質複合材の基材を構成する)ものであって、ラワン合板等の代替資材としてラワン合板と同等かそれ以上に高強度で寸法安定性や表面性に優れるという特性を満足するために、 ・木質ボードの密度が400kg/m3以上550kg/m3以下である構成と、 ・木質ボードの構成材料である木質小薄片は、上記表裏面間の厚さが0.20mm以上0.50mm以下、上記繊維方向に沿った長さが40mm以下、上記繊維方向と直交する方向に沿った幅が15mm以下の細長形状に大きさと形状が均質に揃い、節部分がなく、且つ上記繊維方向がランダムに配向されている構成とを併せ持つ点で、従来の木質ボードを基材とする甲1発明、甲4技術事項または甲5技術事項とは技術的思想が大きく相違する。 本件発明1の課題は、本件特許の明細書の【0013】に記載のとおり、「その目的は、多数の木質薄片を積層する構造の木質ボードに改良技術を施すことにより、1種類の大きさの薄片のみを用いて、高強度で寸法安定性や表面性に優れ、製造の容易な木質ボードに加え、その木質ボードを用いた床材のための複合材が得られるようにすること」であり、上記課題を解決できる複合材の基材としての木質ボードの構成材料、すなわち「1種類の大きさの薄片」として、「表裏面間の厚さ」、「繊維方向に沿った長さ」及び「繊維方向と直交する方向に沿った幅」のすべての寸法が狭い範囲に特定され、細長形状に大きさと形状が均質に揃い、節部分がない「木質小薄片」を用いる点、「木質小薄片」の「繊維方向がランダムに配向されている」点及び「木質ボードの密度」が特定されている点を併せ持つことが本件特許発明1の課題解決手段として重要な技術的意義があるといえ、「木質ボード」の構成全体として本件発明1の課題解決に大きく寄与することは当業者であれば容易に理解できる。 そうすると、本件発明1と甲1発明との間の相違点を認定するに当たっては、発明の技術的課題の解決の観点から、相違点をことさらに細かく分けて認定し、各相違点の容易想到性を個々に判断することは適切ではなく、本件発明1において、「木質ボード」の構成全体をひとまとまりの相違点として判断するのが相当である(意見書2頁下から3行~3頁10行、意見書7頁18行~8頁12行) (イ)甲1発明は、木質ボードの構成材料について(上記(1)オの相違点2及び3)相違し、密度が特定されていない点(上記(1)オの相違点1)でも相違する。甲4技術事項、5技術事項には、「木質小薄片」の「繊維方向がランダムに配向されている」点(上記(1)オの相違点3)及び密度(上記(1)オの相違点1)について記載ないし示唆がなく、甲1発明と組み合わせても本件発明1は構成されない。(意見書4頁9行~6頁14行) (ウ)密度に関し、従来製品であるOSBでは構成材料が本件発明1の木質小薄片よりも大きいことに起因して、ラワン合板と同等の性能をばらつきの下限値で得ようとすると、550kg/m3よりも高い密度が必要となり、一方でPB(パーティクルボード)では構成材料は本件発明1の木質小薄片よりも小さいことに起因して、ラワン合板と同等の性能を得ようとすると、OSBと同様に、550kg/m3よりも高い密度が必要となり、いずれも本件発明1の特徴を満たすことはできない。(意見書3頁下から2行~4頁8行) イ 主張の検討 (ア)本件明細書等の記載 本件明細書には以下の記載がある。 a 背景技術について 「【背景技術】 【0002】 既存の木質ボードとしてラワン合板等の南洋材合板はよく知られており、広く利用されている。しかし、近年、南洋材合板は、原料の枯渇や環境破壊防止の点で入手自体が難しくなってきており、他の木質ボードによる置き換えが図られている。 【0003】 国産の針葉樹を原料とした合板は、原料枯渇の点では問題がないが、その表面性が十分ではないことから、強度に特化した用途に限られている。 【0004】 OSBやPB(パーティクルボード)、MDFも原料面では問題ない。しかし、OSBは強度が高いものの、その表面性が十分ではない。PBは価格が安いが、寸法安定性や強度が十分ではない。MDFは表面性がよいものの、寸法安定性が十分ではない。そして、OSBやPB、MDFは南洋材合板と比較して密度が大きい難がある。 【0005】 このように、原料の安定性に加え、強度、重量、表面性、さらに寸法安定性といった複数の要素を満足する木質ボードが存在していないのが現状である。」 b 課題及び課題を解決するための手段について 「【0013】 本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたもので、その目的は、多数の木質薄片を積層する構造の木質ボードに改良技術を施すことにより、1種類の大きさの薄片のみを用いて、高強度で寸法安定性や表面性に優れ、製造の容易な木質ボードに加え、その木質ボードを用いた床材のための複合材が得られるようにすることにある。 【課題を解決するための手段】 【0014】 上記の目的を達成するために、この発明では、木質薄片の厚さを含む大きさを微小な範囲に限定し、その多数の木質薄片を集合状態で積層して木質ボードとするようにした。 【0015】 具体的には、第1の発明は、木質ボードと2.7mm以上の厚さを有する中密度繊維板(MDF)とが接合一体化された木質複合材が対象である。この木質複合材における上記木質ボードは、繊維方向に沿った表裏面を有する多数の木質小薄片が集合状態で積層されて接着一体化されてなり、その木質小薄片は、厚さが0.20~0.50mm、繊維方向に沿った繊維方向寸法が40mm以下、繊維方向と直交する方向に沿った繊維直交方向寸法が40mm以下であることを特徴としている。 【0016】 この第1の発明では、木質複合材は木質ボードとMDFとが接合一体化されたものであり、そのうちの木質ボードは、厚さ0.20~0.50mm、繊維方向に沿った繊維方向寸法40mm以下、繊維方向と直交する方向に沿った繊維直交方向寸法40mm以下の多数の木質小薄片が集合状態で積層されて接着一体化により構成されている。木質小薄片の厚さ、長さ及び幅はいずれも平均値である。 【0017】 このように木質ボードは、1種類の大きさの木質小薄片のみで構成され、その小薄片は厚さが極めて薄く、0.20~0.50mmという狭い範囲内に収まっているので、多数の小薄片は厚さのばらつきが小さくて均一な厚さに揃ったものになる。また、小薄片の長さ及び幅も一定範囲内にあるので、木質ボードは大きさが一定範囲内に揃った小薄片が集合して均質なものとなる。そのため、木質ボードの強度が高くなるだけでなく、吸放湿による反りが発生し難くなり、南洋材合板と同程度の良好な寸法安定性が得られる。また、多数の小薄片が均一な大きさに揃っているので、通常のOSBのように木質ボードの表面に大きな凹凸は生じず、木質ボードは表面性に優れたものとなる。また、均一な大きさの多数の小薄片を集合させて積層するので、その製造も容易となる。」 c 発明の効果について 「【発明の効果】 【0022】 以上説明したように、本発明によると、厚さ2.7mm以上のMDFと接着一体化されて木質複合材となる木質ボードを、繊維方向に沿った表裏面を有する多数の木質小薄片が集合状態で積層されて接着一体化されてなるものとし、木質小薄片の厚さを0.20~0.50mm、繊維方向寸法及び繊維直交方向寸法を40mm以下としたことにより、多数の小薄片はばらつきの小さい均一な大きさに揃ったものになり、木質ボードの強度を高くすることができるとともに、南洋材合板と同程度の良好な寸法安定性及び表面性が得られ、木質ボードの製造も容易となり、よって木質複合材を容易に製造することができる。」 d 木質ボードの実施形態について 「【0027】 上記基材としての木質ボードAは、例えば厚さ9~10mm、密度400~550kg/m3のものが用いられている。本発明の特徴は上記基材としての木質ボードAにあり、木質ボードAは、既存の台板用合板の代替材として用いられる。この木質ボードAについて詳細に説明する。 ・・・ 【0033】 木質小薄片1の物性に関し、その密度は好ましくは250kg/m3以上、より好ましくは300kg/m3以上であり、また好ましくは800kg/m3以下、より好ましくは500kg/m3以下、さらに好ましくは400kg/m3以下である。密度が250kg/m3未満であると、同密度・同強度の木質ボードAを形成するために必要なマットの厚さが大きくなるとともに、プレス成形工程での】熱圧プレス処理に係るプレス圧を高める必要がある。 ・・・ 【0046】 (熱圧工程P5) このマットA1を熱圧プレス装置に搬入して熱盤間にセットし、熱圧プレス装置によりマットA1を所定の圧力及び温度で熱圧プレス処理して圧縮し、かつ接着剤の硬化により一体に成形する。このことで、図2に示す木質ボードAが形成される。 【0047】 このとき、図6に示すように、上記例示した90mm程度の厚さのマットA1は例えば9mmの木質ボードAに圧縮され、厚さが1/10まで圧縮される。熱圧プレス処理に係るプレス温度は、特に限定されないが、例えば100~180℃である。熱圧プレス処理に係るプレス圧は、例えば2~4N/mm2であり、プレス時間は例えば1.5~3分間である(例えば厚さ1mm当たり10~20秒)。尚、プレス時間は、木質ボードAの厚さによって変動するものであり、1分未満で終了する場合もあれば、3分よりも長い時間を要する場合もある。また、熱圧プレス装置による熱圧プレス処理の前に、加熱装置による予備加熱処理を行ってもよい。 【0048】 また、木質小薄片1,1,…は、節部分が除去されており、ばらつきがなくて細かい範囲内の大きさのものに保たれているので、マットA1全体で均質になり、このことによって木質ボード1の強度のばらつきがなくなる。つまり、大きなストランド(切削片)を用いるストランドボードでは、例えば節部分を含む不均一なマットにより部分的(スポット的)に薄くて低強度部分が生じ、強度のばらつきがでるが、それがなくなる。しかも、木質小薄片1,1,…も薄い方がマットA1の均質性が高くなり、木質ボード1の強度が出易くなる。一般に大きなストランド(切削片)を用いるストランドボードは強度を大きくできるのに対し、本発明ではストランド(切削片)よりも薄い木質薄片(切削後木質薄片)を粉砕によりさらに小さくした木質小薄片1によって木質ボードAの均質性と強度とを兼ねている。 ・・・ 【0050】 このような工程を経て、密度が400~550kg/m3でありかつ曲げヤングが1.5~4.0GPaの木質ボードAが成形される。」 e 木質小薄片の配向方向について 「【0036】 上記木質ボードA内において、多数の木質小薄片1,1,…は、その繊維1a,1a,…に沿った方向である繊維方向(長さ方向)が基準方向に配向されていてもよいが、この繊維方向の配向性は必須ではなく、繊維方向がランダムに配向されていてもよい。尚、繊維方向(長さ方向)が基準方向に配向されているとは、木質ボードA内において、全ての木質小薄片1,1,…の繊維1a,1a,…が正確に同一方向を向いていること、換言すると、配向された木質小薄片1,1,…の繊維方向が互いに平行になっていることを限定しない。一部の木質小薄片1,1,…として、繊維方向が基準方向に対してある程度(例えば20°程度)傾いている木質小薄片1,1,…が含まれていてもよい。」 f 実施形態の木質ボードの作用効果について 「【0052】 したがって、上記実施形態の木質ボードA及び木質複合材Cについては以下の作用効果を奏することができる。 【0053】 木質複合材Cは木質ボードAと中密度繊維板B(MDF)とが接合一体化されたものであり、そのうちの木質ボードAは、厚さtが0.20~0.50mm、繊維方向に沿った繊維方向寸法d1(長さ)が40mm以下、繊維方向と直交方向に沿った繊維直交方向寸法d2(幅)が40mm以下の多数の木質小薄片1,1,…が集合状態で積層されて接着一体化により構成されている。 【0054】 すなわち、木質ボードAは、1種類の木質小薄片1,1,…のみで構成され、その木質小薄片1,1,…の厚さtが極めて薄く、0.20~0.50mmという狭い範囲内に収まっているので、多数の木質小薄片1,1,…は厚さtのばらつきが小さくて均一な厚さtに揃ったものになる。また、木質小薄片1,1,…の繊維方向寸法d1(長さ)及び繊維直交方向寸法d2(幅)も一定範囲内にあるので、木質ボードAは大きさが一定範囲内に揃った木質小薄片1,1,…が集合して均質なものとなる。そのため、木質ボードAの強度が高くなるだけでなく、吸放湿による反りが発生し難く、南洋材合板と同程度の良好な寸法安定性が得られる。また、多数の木質小薄片1,1,…が均一な大きさに揃っているので、通常のOSBのように木質ボードAの表面に大きな凹凸が生じることはなく、木質ボードAは表面性に優れたものとなる。また、均一な大きさの多数の木質小薄片1,1,…を集合させて積層するので、その製造も容易となる。 ・・・ 【0056】 図7は、本発明に係る木質ボードAの特性を他の材料のボードと比較して例示したものであり、木質ボードAは、曲げヤング、吸放湿時の長さ変化率、平滑性がラワン合板程度に大きく、ラワン合板に比べ寸法安定性での異方性や表面性における色調・色均質性が優れている。また、木質ボードAは、OSBに比べ、曲げヤングが縦横に均一であり、寸法安定性での異方性や表面性における平滑性、色調・色均質性が良好である。」 g 【図7】は以下のとおり。 「 [図:0001423417000003.jpg] 」 (イ)「ラワン合板等の代替資材としてラワン合板と同等かそれ以上に高強度で寸法安定性や表面性に優れるという特性を満足する」こと、及び当該事項と「木質ボード」を構成する「木質小薄片」、「木質小薄片」の「配向」及び「木質ボードの密度」との関係について a 本件発明1の木質ボードの強度について 上記(ア)bによれば、本件発明1は木質ボードを「高強度」とすることを課題の一部としているものの、「木質ボード」の「強度」に関しては、本件明細書全体をみても、具体的には「曲げヤングが1.5~4.0GPa」であることが示されるのみである。そして、「曲げヤングが1.5~4.0GPa」との数値について、図7によると、ラワン合板が「縦5.3」「横5.2」とされていることから、本件発明1の木質ボードは、ラワン合板と同様の強度といえるものではない。また、上記(ア)aにおいて「強度が十分ではない」とされる「PB(パーティクルボード)」について、曲げヤング3.0GPa(図7)であることと比較すると、本件発明1の木質ボードは、「PB」の曲げヤングの1/2の1.5GPaをも数値範囲として含むものであり、格別高強度と評価できるものではない。そうすると、本件発明1は、「木質ボード」を構成する「木質小薄片」、「木質小薄片」の「配向」及び「木質ボードの密度」の如何によらず、「ラワン合板等の代替資材としてラワン合板と同等かそれ以上に高強度」であるとの特性を満足するものとはいえない。 b 本件発明1の木質ボードの平滑性について 平滑性が、木質ボードを構成する木片の大きさに依存し、小さい方が平滑性に優れることは技術常識である。また、本件明細書においても、【0054】(上記(ア)f)等において、木質小薄片は厚さが0.20~0.50mmという狭い範囲内に収まっており、ばらつきが小さくて均一な厚さに揃い、小薄片の長さ及び幅も一定範囲内にあることによって、木質ボードは表面性に優れたものとなるとしている。 そして、甲1発明において「木質小薄片」に関する厚さ、長さ及び幅の構成を備えることが容易であることについては、上記2(2)イにおいて検討したとおりである。 c 本件発明1の木質ボードの寸法安定性について 上記【0054】(上記(ア)f)等によれば、寸法安定性についても、結局、小薄片は厚さのばらつきが小さくて均一な厚さに揃い、小薄片の長さ及び幅が一定範囲内にあることによって吸放湿による反りが発生し難くなることによる効果であると認められる。 そして、甲1発明において「木質小薄片」に関する構成を備えることが容易であることについては、上記2(2)イにおいて検討したとおりである。 (ウ)本件発明1における「木質小薄片」の「配向」及び「木質ボードの密度」に関する構成について 上記a~cにおいて検討したとおり、本件の「ラワン合板等の代替資材としてラワン合板と同等かそれ以上に高強度で寸法安定性や表面性に優れるという特性」と関連するのは、主として「木質小薄片」の構成であると認められるが、本件訂正により追加された「木質小薄片」の「配向」及び「木質ボードの密度」の技術的意義について、念のため、以下に検討する。 a 「木質小薄片」の「配向」について 本件訂正により、木質小薄片の配向について、「繊維方向がランダムに配向されている」ことが特定された。この特定は、本件明細書の段落【0036】を根拠とするものであるが、「多数の木質小薄片1,1,…は、その繊維1a,1a,…に沿った方向である繊維方向(長さ方向)が基準方向に配向されていてもよいが、この繊維方向の配向性は必須ではなく、繊維方向がランダムに配向されていてもよい」ものであって、すなわち、いずれの態様も選択可能なものと認められる。そのため、配向性の有無によって課題解決の可否が左右されるものではないから、配向性の無いランダムな配置とすることを特定することによって進歩性が肯定されるような特段の技術的意義を有するといえるものではない。 b 「木質ボードの密度」について 本件訂正により、木質ボードの密度について、「400kg/m3以上550kg/m3以下であ」ることが特定された。密度について、【0004】(上記(ア)a)の「OSBやPB、MDFは南洋材合板と比較して密度が大きい難がある」との記載を踏まえると、上記ア(ウ)における特許権者の主張である「OSB」では「ラワン合板と同等の性能をばらつきの下限値で得ようとすると、550kg/m3よりも高い密度が必要となり」、「PB」では「ラワン合板と同等の性能を得ようとすると、OSBと同様に、550kg/m3よりも高い密度が必要となり、いずれも本件発明1の特徴を満たすことはできない」との主張は、本件発明1においては、「400kg/m3以上550kg/m3以下」という「大き」くない範囲の密度の範囲においてラワン合板と同等の性能を得られることを主張しているようにも見受けられる。 しかし、「強度」については、上記(イ)aにおいて検討したとおりであり、本件発明1がラワン合板と同等の性能であるといえるものではないし、「平滑性」と「寸法安定性」については、上記(イ)b及びcにおいて検討したとおり、「木質小薄片」の構成によるものであって、密度が400kg/m3以上550kg/m3以下であることと直接の因果関係が認められるものではない。 そして、上記(2)アにおいて検討したとおり、木質ボードの密度の数値範囲を400kg/m3以上550kg/m3以下とすることは、当業者が適宜なし得たことであり、密度が特定されることによって進歩性が肯定されるような技術的意義を有するといえるものではない。 (エ)相違点の認定について 上記(2)においては、本件発明1と甲1発明との相違点を相違点1~3として認定している。一方、特許権者は、意見書中にて、発明の技術的課題の解決の観点から、本件発明1と甲1発明との相違点をひとまとまりの相違点として判断すべきであると主張している(上記ア(ア))。 当該主張に関し、上記(イ)及び(ウ)において検討したとおり、本件発明の技術的課題の解決に寄与しているといえるのは「木質小薄片」の構成であって、「木質ボード」の「密度」(相違点1)と「木質小薄片」の「配向」(相違点3)については、当該構成によって技術的課題の解決の可否が左右されるような直接的な因果関係があるといえるものではなく、発明の技術的課題の解決の観点から、本件発明1と甲1発明との相違点をひとまとまりの相違点としなければならない事情を認めることはできない。 (オ)特許権者の主張についての小括 以上のとおりであるから、特許権者の主張は、上記(2)の判断を左右するものではない。 (4)小括 よって、本件発明1は、甲1発明及び甲4技術事項または甲5技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものである。 3 本件発明2 (1)対比 本件発明2と甲1発明とを対比すると、両者は、上記2(1)オの一致点で一致し、上記2(1)オの相違点1~3に加え、以下の点で相違する。 (相違点4) 本件発明2は、「木質ボードの木質小薄片は、長さが20mm以下、幅が5mm以下の細長形状である」のに対し、甲1発明はそのように特定されていない点。 (2)判断 上記相違点について検討する。 ア 上記相違点1~3について 上記相違点1~3については上記2(2)において検討したとおりである。 イ 上記相違点4について (ア)本件発明2は、木質ボードの木質小薄片について、本件発明1において長さが40mm以下、幅が15mm以下としていたものを、さらに限定して、長さが20mm以下、幅が5mm以下の細長形状(相違点4)としたものである。 (イ)上記2(2)イ(イ)において検討したとおり、甲5技術事項は、「芯層」の「木片」の好適なサイズを「厚さ0.1~5mm、長さ1~50mm、幅0.5~20mm」とするものであり、また、木質分として使用される木片として、厚さ0.2~0.5mm、長さ6~12mm、幅0.5~2.5mmを示すものであり、甲1発明において、OSBの木片のサイズを決定するにあたり、強度とともに平滑性、寸法安定性等の所望の性能を考慮して、甲5技術事項の芯層において好適とされる「厚さ0.1~5mm、長さ1~50mm、幅0.5~20mm」との範囲の中から、「厚さ0.20mm以上0.50mm以下、長さが20mm以下、幅5mm以下」の細長形状を選択し、相違点4にかかる本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 (3)小括 よって、本件発明2は、甲1発明及び甲5技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 本件発明3 (1)対比 本件発明3と甲1発明とを対比する。 ア 本件発明3の、「木質複合材からなり、中密度繊維板が表側になるように施工される」「床材」と、甲1発明の「OSBに接着剤を塗布し、2.7mm厚MDFを載せ、コールドプレスした木質積層材」が「フローリング材」「などの基材として用いられ」ることとは、「木質複合材からな」る「床材」である点で共通する。 イ そうすると、本件発明3と甲1発明とは、上記1(1)オの一致点に加え、「木質複合材からな」る「床材」の点で一致し、上記相違点1~3または相違点1~4に加え、以下の点で相違する。 (相違点5) 本件発明3は、「中密度繊維板が表側になるように施工される」のに対し、甲1発明はそのように特定されていない点。 (2)判断 上記相違点について検討する。 ア 上記相違点1~4について 上記相違点1~3については上記2(2)において、相違点4については、上記3(2)において検討したとおりである。 イ 上記相違点5について 上記相違点5について検討する。 平滑化処理として、木質基材の表面に中密度繊維板(MDF)を接着積層することは、甲3に記載されるように周知技術であるといえる。 そうすると、甲1発明において、「フローリング材」(床材)である「木質積層材」を、「中密度繊維板が表側になるように施工される」ものとすることは、当業者が容易になし得たことである。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件発明3は、甲1発明、甲4技術事項または甲5技術事項並びに周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本件発明1は、甲1発明及び甲4技術事項または甲5技術事項に基づいて、本件発明2は、甲1発明及び甲5技術事項に基づいて、本件発明3は、甲1発明、甲4技術事項または甲5技術事項並びに周知技術に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。 そうすると、本件発明1ないし3に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-701134

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