特許異議申立
2023-701076
再生ボードの製造方法、及び再生ボード
- 審判番号
- 2023-701076
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-505780
- 登録番号
- 7254401
- 請求日
- 2023年10月06日
- 審決日
- 2024年11月18日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社ワークスタジオ
- 【権利者代理人】西村 知浩
- 【権利者代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
- 【異議申立人】青木 千晴
- 審判長/審判官
- 審判長 古屋野 浩志
- 審判官 太田 恒明
- 審判官 ▲高▼橋 祐介
- 分類
- P1651.121-YAA(B27N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7254401号発明「再生ボードの製造方法、及び再生ボード」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7254401号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、9について訂正することを認める。
特許第7254401号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7254401号(以下「本件特許」という。)は、2021年(令和3年)6月1日を国際出願日として特許出願され(特願2023-505780号)、令和5年3月31日にその特許権の設定登録がされ、同年4月10日に特許掲載公報が発行された。
本件特許の請求項1~9に係る特許に対して、令和5年10月6日に特許異議申立人青木千晴(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は同年12月25日付けで取消理由を通知し、特許権者はその指定期間内である令和6年2月22日に意見書を提出した。
その後、当審は令和6年5月27日付けで取消理由を通知し、特許権者はその指定期間内である同年7月5日に意見書及び訂正請求書の提出を行い、当審は同月24日付けで訂正請求書及び訂正特許請求の範囲に対して手続補正(方式)を指令し、特許権者はその指定期間内である同年8月2日に訂正請求書及び訂正特許請求の範囲に係る手続補正書(方式)の提出を行い、申立人は同年9月24日に意見書を提出した。
第2 訂正請求について
1 訂正の内容
令和6年7月5日付けの訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「繊維を含有する回収品を繊維状に粉砕することで繊維材料を生成する繊維材料生成工程と、」と記載されているのを、「前記繊維を含有する回収品を繊維状に粉砕することで繊維材料を生成する繊維材料生成工程と、」に訂正する。
特許請求の範囲の請求項1に「前記接着剤塗布工程において前記接着剤が塗布された繊維材料を板状に成形する成形工程と、」と記載されているのを、「前記接着剤塗布工程において前記接着剤が塗布された繊維材料を、くの字状を除く平板状に成形する成形工程と、」に訂正する。
特許請求の範囲の請求項1に「前記成形工程において前記板状に成形された繊維材料を加圧及び加熱する加圧加熱工程と、」と記載されているのを、「前記成形工程において前記平板状に成形された繊維材料を加圧及び加熱する加圧加熱工程と、」に訂正する。
特許請求の範囲の請求項1の冒頭に対して、すなわち「前記繊維を含有する回収品を繊維状に粉砕することで繊維材料を生成する繊維材料生成工程と、」の前に、「表面に繊維の質感が表れることにより前記表面が露出した状態で什器、家具又は建築用ボードのいずれかの構成部材に使用される、硬質繊維板である再生ボードの製造方法であって、」を追加する。
(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~7も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項9に「平均繊維長が10mm以下とされた天然繊維と、平均繊維長が10mm以下とされた合成繊維と、熱硬化性を有する接着剤と、を含んで形成された」と記載されているのを、「平均繊維長が10mm以下とされた天然繊維と、平均繊維長が10mm以下とされた合成繊維と、熱硬化性を有する接着剤と、を含んで形成され、」に訂正する。
特許請求の範囲の請求項9の冒頭に対して、すなわち「平均繊維長が10mm以下とされた天然繊維と、平均繊維長が10mm以下とされた合成繊維と、熱硬化性を有する接着剤と、を含んで形成され、」の前に、「表面に繊維の質感が表れることにより前記表面が露出した状態で什器、家具又は建築用ボードのいずれかの構成部材に使用される、硬質繊維板である再生ボードであって、」を追加する。
特許請求の範囲の請求項9の「平均繊維長が10mm以下とされた天然繊維と、平均繊維長が10mm以下とされた合成繊維と、熱硬化性を有する接着剤と、を含んで形成され、」と「再生ボード。」との間に対して、「前記表面は樹脂材料でコーティングされない」を追加する。
(3)訂正の単位について
訂正前の請求項2~7は、訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1~7は、一群の請求項に該当するものであり、訂正前の請求項1~7について訂正する訂正事項1は、一群の請求項に対してされたものである。
2 訂正の適否の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、
訂正前の請求項1における発明特定事項である「再生ボードの製造方法」について「表面に繊維の質感が表れることにより前記表面が露出した状態で什器、家具又は建築用ボードのいずれかの構成部材に使用される、硬質繊維板である再生ボードの製造方法」であることを限定し、
また、訂正前の請求項1における発明特定事項である「成形工程」において「前記接着剤塗布工程において前記接着剤が塗布された繊維材料を」「成形する」「板状」について「くの字状を除く平板状」とすることで、当該「板状」を「平板状」のものであり、かつ、「くの字状を除く」ものであるものに限定するものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張、変更
訂正事項1は、上記アのとおり、発明特定事項を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 新規事項
訂正事項1により限定された「表面に繊維の質感が表れることにより前記表面が露出した状態で什器、家具又は建築用ボードのいずれかの構成部材に使用される、硬質繊維板である再生ボードの製造方法」は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)における【0051】、【0062】及び【0093】に記載された事項であるから、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項1により限定された「平板状」は、本件明細書等における【0042】、図2~3及び図6~10に記載された事項であるから、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項1により限定された「くの字状を除く」は、令和6年5月27日付け取消理由で引用した特開2002-178848号公報(甲第4号証)に記載された発明が「くの字状」であることを含むものであって、訂正前の請求項1に係る発明が甲第4号証に記載された発明と重なるために進歩性が否定されるおそれがあるところ、その重なりのみを除く訂正であるから、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、
訂正前の請求項9における発明特定事項である「再生ボード」について、「表面に繊維の質感が表れることにより前記表面が露出した状態で什器、家具又は建築用ボードのいずれかの構成部材に使用される、硬質繊維板である再生ボード」であること、及び、「前記表面は樹脂材料でコーティングされない」ことを限定するものである。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張、変更
訂正事項2は、上記アのとおり、発明特定事項を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 新規事項
訂正事項2により限定された「表面に繊維の質感が表れることにより前記表面が露出した状態で什器、家具又は建築用ボードのいずれかの構成部材に使用される、硬質繊維板である再生ボード」は、本件明細書等における【0051】、【0062】及び【0093】に記載された事項であるから、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項2により限定された「前記表面は樹脂材料でコーティングされない」は、本件明細書等における【0093】に記載された事項であるから、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(3)独立特許要件について
訂正前の全請求項が特許異議の申立ての対象とされており、本件訂正請求による訂正において、上記(1)~(2)のとおり特許請求の範囲の減縮が行われていても、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。
(4)申立人の主張について
申立人は令和6年9月24日に下記参考資料1~3とともに意見書を提出し、本件訂正請求による訂正後の請求項1~7、9に係る発明は、ナイロン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂繊維を「繊維材料」とし、加圧加熱工程において260℃(参考資料1を参照)でプレス加工することを含むため、発明の課題を解決するための手段が反映されていない構成を含むから、特許法第36条第6項第1号(サポート要件)を満たさない等と主張している。この申立人により主張されたサポートされていない発明特定事項は、新規事項の追加にあたる蓋然性があることから、当該主張について検討する。
しかしながら、参考資料1の記載は、熱硬化性樹脂の加圧加熱工程であるのか明らかでなく、また、参考資料1には、華氏500度(260℃)のほかに華氏300度(149℃)で加熱することも記載されており、さらに、「ハードボード」が接着剤を用いずに湿式でプレス成形するものであることが技術常識であることからみても、熱硬化性樹脂の加圧加熱工程において260℃で加熱するものであると認めることはできない。
また、職権で調査した結果、熱硬化性樹脂は、ナイロンやポリエステルの融点よりも低い温度である170℃程度に熱した金型で加工できると認められる。
よって、本件訂正請求による訂正後の請求項1~7、9に係る発明は、サポート要件を満たさないものであるとは、認められない。そうすると、本件訂正請求による訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるとは、認められない。
記
参考資料1:長島隆、「アメリカのハードボード工業について」、北海道立総合研究機構、インターネット<URL:https://www.hro.or.jp/upload/11023/01730004001.pdf>
参考資料2:「ファイバーボード|木質建材の種類と特徴」、日本木材総合情報センター、インターネット<URL:https://www.jawic.or.jp/syurui/05.php>
参考資料3:「木質ボード」、日本繊維板工業会、インターネット<URL:https://jfpma.jp/docs/about/catalog.pdf>
3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、9について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件特許発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正請求による訂正後の請求項1~9に係る発明(以下「本件特許発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。なお、符号P2等は分説のため当審で付与した。以下、分説された本件特許発明1等の発明特定事項を、符号に基づき「本件発明特定事項P2」等という。
「【請求項1】
P2 表面に繊維の質感が表れることにより前記表面が露出した状態で什器、家具又は建築用ボードのいずれかの構成部材に使用される、硬質繊維板である再生ボードの製造方法であって、
A 前記繊維を含有する回収品を繊維状に粉砕することで繊維材料を生成する繊維材料生成工程と、
B 前記繊維材料生成工程において生成された繊維材料に対して、熱硬化性を有する接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
C 前記接着剤塗布工程において前記接着剤が塗布された繊維材料を、くの字状を除く平板状に成形する成形工程と、
D 前記成形工程において前記平板状に成形された繊維材料を加圧及び加熱する加圧加熱工程と、
を有する
P 再生ボードの製造方法。
【請求項2】
E 前記繊維材料生成工程では、前記回収品を、平均繊維長が10mm以下になるように粉砕することで、前記繊維材料を生成する
Q 請求項1に記載の再生ボードの製造方法。
【請求項3】
F 前記回収品は、革の繊維を含有する皮革であり、
G 前記繊維材料として前記革の繊維を含む再生ボードを製造する
R 請求項1又は2に記載の再生ボードの製造方法。
【請求項4】
H 前記回収品は、衣料であり、
I 前記繊維材料として天然繊維と合成繊維とを含む再生ボードを製造する
S 請求項1又は2に記載の再生ボードの製造方法。
【請求項5】
J 前記合成繊維の含有質量が前記天然繊維の含有質量よりも大きい再生ボードを製造する
T 請求項4に記載の再生ボードの製造方法。
【請求項6】
K 前記天然繊維の含有質量が前記合成繊維の含有質量よりも大きい再生ボードを製造する
U 請求項4に記載の再生ボードの製造方法。
【請求項7】
L 前記繊維材料生成工程において生成された前記繊維材料に他の繊維を混合する混合工程を有し、
M 前記接着剤塗布工程は、前記混合工程において他の繊維が混合された繊維材料に対して、熱硬化性を有する接着剤を塗布する
V 請求項1~6のいずれか1項に記載の再生ボードの製造方法。
【請求項8】
N1 平均繊維長が10mm以下とされた革の繊維と、
N2 熱硬化性を有する接着剤と、を含んで形成された
W 再生ボード。
【請求項9】
Y 表面に繊維の質感が表れることにより前記表面が露出した状態で什器、家具又は建築用ボードのいずれかの構成部材に使用される、硬質繊維板である再生ボードであって、
O1 平均繊維長が10mm以下とされた天然繊維と、
O2 平均繊維長が10mm以下とされた合成繊維と、
O3 熱硬化性を有する接着剤と、を含んで形成され、
Z 前記表面は樹脂材料でコーティングされない
X 再生ボード。」
第4 特許異議申立理由、取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
申立人による異議申立理由の概要は、次のとおりである。
(1)甲1を主たる証拠とした進歩性の欠如
本件特許発明1~9は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証~甲第10号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)甲2を主たる証拠とした進歩性の欠如
本件特許発明1~9は、甲第2号証に記載された発明、並びに、甲第1号証及び甲第3号証~甲第10号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 取消理由の概要
当審が通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)甲4を主たる証拠とした進歩性の欠如
本件特許発明1~2、4~7、9は、甲第4号証に記載された発明、及び、甲第1号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1~2、4~7、9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)甲3を主たる証拠とした進歩性の欠如
本件特許発明9は、甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 証拠一覧、甲号証について
1 証拠一覧
申立人により、特許異議申立書とともに提出された証拠は、次のとおりである。
甲第1号証:特許第6530551号公報
甲第2号証:特開2003-245933号公報
甲第3号証:特開2003-201657号公報
甲第4号証:特開2002-178848号公報
甲第5号証:特開2014-76588号公報
甲第6号証:特開2015-223782号公報
甲第7号証:特公昭38-20389号公報
甲第8号証:特公昭57-49600号公報
甲第9号証:特開平8-173206号公報
甲第10号証:特開平10-273817号公報
以下、各甲号証を「甲1」等という。
2 甲1について
(1)記載事項
甲1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済の織られた又は編まれたテキスタイル、特に多くの植物繊維又は動物繊維、特に綿又はウールを含む使用済の織られた又は編まれたテキスタイルから製品を製造する方法に関する。本発明はまた、本発明の方法によって製造された製品に関する。」
イ 「【0007】
本発明によれば、上述の目的及び他の目的は、植物繊維又は動物繊維、特に綿又はウールを含む使用済の織られた又は編まれたテキスタイルからの製品を製造する方法であって、以下の工程を含む方法によって達成される、
- 前記使用済の織られた又は編まれたテキスタイルを収集する、
- 前記使用済の織られた又は編まれたテキスタイルを粉砕して3.5mm~5.5mmの平均繊維長を有する繊維にする、前記粉砕された使用済の織られた又は編まれたテキスタイルを熱可塑性繊維ベースのバインダーと混合する、及び
- 前記粉砕された使用済の織られた又は編まれたテキスタイルと繊維ベースのバインダーの混合物から不織マットを形成する、但し、前記不織マットは、59%~75%の植物繊維を含むか、又は前記不織マットは、少なくとも80%の動物繊維を含む。
【0008】
実施例3及び5でわかるように、繊維含有物に対して与えられる割合は、不織マットがMDF代替物を作るために使用されることを可能にする機械的割合を与えることができる。
……
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、方法は、以下の工程をさらに含む:
- 不織マットを予め加熱された三次元の型又はフラットプレス中に置く;及び
- 不織マットを圧縮して三次元の型又はフラットプレスの形状によって決定される形状を持つ製品にする。
【0024】
使用済の織られた又は編まれたテキスタイルを3.5mm~5.5mmの平均繊維長に粉砕することによって、極めて微細で均一な構造を有する不織マットを形成することが可能であり、それによってそれを圧縮して高度の仕上げを有する造形製品にすることが可能である。熱可塑性バインダーは、加熱すると溶融しかつ流動されることができ、冷却時に再硬化するバインダーを意味する。この加熱及び冷却手順は、繰り返されることができる。
……
【0026】
本発明による方法の好ましい実施形態では、収集された使用済の織られた又は編まれたテキスタイルが、繊維産業からのトリミング物、末端物、欠陥物、実験物、却下物、使用済テキスタイル、使用済衣類、使用済シーツと枕カバー、使用済タオル、使用済作業服、使用済室内装飾材料、又は使用済カーテンから選択される使用済の織られたもしくは編まれた綿テキスタイル又は使用済の織られたもしくは編まれたウールテキスタイルを含む。」
(2)甲1記載の技術事項
上記(1)から、甲1には、以下の技術事項(以下「甲1記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる(引用箇所の段落番号を併記した。以下同様。)。
「植物繊維又は動物繊維、特に綿又はウールを含む使用済の織られた又は編まれたテキスタイルからの製品を製造する方法において、
前記使用済の織られた又は編まれたテキスタイルを粉砕して3.5mm~5.5mmの平均繊維長を有する繊維にすること(【0007】)。」
(3)甲1発明1
上記(1)から、甲1には、次の発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されていると認められる。
「植物繊維又は動物繊維、特に綿又はウールを含む使用済の織られた又は編まれたテキスタイルからの製品を製造する方法であって、
前記使用済の織られた又は編まれたテキスタイルを粉砕して3.5mm~5.5mmの平均繊維長を有する繊維にし、前記粉砕された使用済の織られた又は編まれたテキスタイルを熱可塑性繊維ベースのバインダーと混合し、及び
前記粉砕された使用済の織られた又は編まれたテキスタイルと繊維ベースのバインダーの混合物から不織マットを形成し(【0007】)
不織マットを予め加熱された三次元の型又はフラットプレス中に置く;及び
不織マットを圧縮して三次元の型又はフラットプレスの形状によって決定される形状を持つ製品にし(【0023】)
繊維含有物に対して与えられる割合は、不織マットがMDF代替物を作るために使用されることを可能にする機械的割合を与えることができる(【0008】)
植物繊維又は動物繊維、特に綿又はウールを含む使用済の織られた又は編まれたテキスタイルからの製品を製造する方法(【0007】)。」
(4)甲1発明8
上記(1)及び(3)から、甲1には、次の発明(以下「甲1発明8」という。)が記載されていると認められる。
「甲1発明1によって製造された植物繊維又は動物繊維、特に綿又はウールを含む使用済の織られた又は編まれたテキスタイルからの製品(【0007】、【0008】)。」
3 甲2について
(1)記載事項
甲2には、次の事項が記載されている。
ア 「【0004】
【発明が解決しようとする課題】繊維、糸や織物などの繊維くずは、焼却による大気汚染を減らすため、焼却量を減らして再利用量を増やすことが望まれる。
【0005】一方、廃プラスチック、廃木材や故紙などの廃棄物から再生された板は、用途を広げるため、又は、使用し易くするため、未使用の素材から製作した非再生の旧来の板と同程度の物性を備えることが望まれる。
【0006】即ち、繊維くず、廃プラスチック、廃木材や故紙などの廃棄物から、各種の物性を備えた再生板を得ることが望まれる。
【0007】
【課題を解決するための着眼】繊維くずには、合成繊維くずと天然繊維くずがある。天然繊維くずは、合成繊維の素材になり得る。廃プラスチックも、合成繊維の素材になり得る。廃木材と故紙は、天然繊維の素材になり得る。
【0008】また、繊維自身の外に、繊維を素材とした製板法に着目した。天然繊維と合成繊維を混合し、これを堆積してマットを形成し、マットを熱圧成形してマット中の合成繊維を溶融し、溶融合成繊維でマット中の繊維同士を結合すると、板が得られる。……」
イ 「【0013】
【課題を解決するための手段】1)合成繊維くずと廃プラスチック又は合成繊維くず若しくは廃プラスチックから得た糸状ないし繊維状の合成素材と、廃木材又は故紙から得たチップ状ないし繊維状の天然素材とを混合し、これを堆積してマットを形成し、マットを熱圧成形してマット中の合成素材を溶融し、溶融合成素材でマット中の素材同士を結合し、再生板を得ることを特徴とする再生板の製造方法。
……
【0016】4)合成繊維くずと廃プラスチック又は合成繊維くず若しくは廃プラスチックから得た糸状ないし繊維状の合成素材と、廃木材又は故紙から得たチップ状ないし繊維状の天然素材とが混合して圧縮され、その中の合成素材が溶融し固化して素材同士が結合していることを特徴とする再生板。」
ウ 「【0021】
【発明の実施の形態】再生板の製造装置は、合成素材部、天然素材部、マット部と製板部を備えている。合成素材部は、合成繊維くずと廃プラスチック又は合成繊維くず若しくは廃プラスチックから糸状ないし繊維状の合成素材を製作してこれを貯蔵する。天然素材部は、故紙からチップ状ないし繊維状の天然素材を製作してこれを貯蔵する又は廃木材チップをチップ状ないし繊維状の天然素材として貯蔵する。マット部は、糸状ないし繊維状の合成素材とチップ状ないし繊維状の天然素材とからマットを製作する。製板部は、マットから再生板を製作する。
……
【0036】製板部は、図4に示すように、マットの熱圧成形機31、冷却成形機32と切断機33を順次設けている。熱圧成形機31は、四角形状のマットを上下の加熱板に挟んで熱圧成形する。マットは、圧縮されて薄くなる。マット中の合成素材は、溶融する。冷却成形機32は、熱圧成形されたマットを上下の冷却板に挟んで冷却成形する。マット中の溶融した合成素材が固化し、マット中の素材同士が結合する。マットは、再生板になる。再生板は、均等厚さであって、両側の板面が滑らかな平面であり、両側の板面部が芯部より緻密である。切断機33は、再生板の四周を切断する。四角形平板形状の再生板が得られる。」
(2)甲2発明1
上記(1)から、甲2には、次の発明(以下「甲2発明1」という。)が記載されていると認められる。
「合成繊維くずと廃プラスチック又は合成繊維くず若しくは廃プラスチックから得た糸状ないし繊維状の合成素材と、廃木材又は故紙から得たチップ状ないし繊維状の天然素材とを混合し、これを堆積してマットを形成し、マットを熱圧成形してマット中の合成素材を溶融し、溶融合成素材でマット中の素材同士を結合し、再生板を得る再生板の製造方法(【0013】)。」
(3)甲2発明8
上記(1)~(2)から、甲2には、次の発明(以下「甲2発明8」という。)が記載されていると認められる。
「合成繊維くずと廃プラスチック又は合成繊維くず若しくは廃プラスチックから得た糸状ないし繊維状の合成素材と、廃木材又は故紙から得たチップ状ないし繊維状の天然素材とが混合して圧縮され、その中の合成素材が溶融し固化して素材同士が結合している再生板(【0016】)。」
4 甲3について
(1)記載事項
甲3には、次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えばダッシュパネルやフロアパネルに装着されるインシュレータダッシュ、フロアカーペット等に好適な吸音材に係り、特に、紡績工程で発生する繊維屑を有効利用することで、廉価に製作できるとともに、吸音性能に優れ、しかもリサイクルに適した吸音材に関する。」
イ 「【0062】図1乃至図6は本発明に係る吸音材を自動車用インシュレータダッシュに適用した一実施形態を示すもので、図1はインシュレータダッシュの構成を示す断面図、図2は同インシュレータダッシュの製造工程を示すチャート図、図3は同インシュレータダッシュに使用する吸音材における基材の製造工程を示すチャート図、図4は同基材の製造工程を示す概要図、図5はインシュレータダッシュの製造工程を示す概要図、図6はインシュレータダッシュの成形に使用するプレス成形用金型に真空吸引力、あるいは圧空力を作用させるタイミングを示すチャート図である。
……
【0065】上記吸音材20は、製糸、紡績工程で製品を得るために取り除かれた繊維屑とセルロース系解繊物または粉砕物とを主繊維として基本的に使用するもので、例えば、製糸、紡績工程で発生した繊維屑としては、スカーティング工程で取り除かれた綿。選毛工程、梳毛工程、そ毛工程、そ綿工程で取り除かれた綿。コーマ工程で取り除かれたコーマ繊維屑、ノイル綿。紡糸、紡績工程で生じた屑繊維。紡糸、紡績における検査で規格外品とされた繊維のような屑繊維(当審注:「屑繊維」は「繊維屑」の誤記と認める。)を使用する。上記繊維屑は、繊維長2~60mm、繊維径6~30μmであることが好ましい。
……
【0067】そして、上記屑繊維(当審注:「屑繊維」は「繊維屑」の誤記と認める。)とセルロース系解繊物または粉砕物とを結合させるバインダは、熱可塑性樹脂の融着繊維(単繊維でも芯鞘構造でも良い)や、熱可塑性樹脂パウダー、あるいは熱硬化性樹脂等を適宜使用可能である。
……
【0070】ここで、繊維屑、セルロース系解繊物または粉砕物等の主繊維に他繊維を添加しても良く、添加される他繊維としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリアミド(PA)、ビニロンなどの合成繊維、竹,麻,綿,ケナフ,バナナ,ジュート,椰子等の植物を原料とした繊維状解繊物、あるいは羊毛,絹,獣毛に代表される動物由来繊維等の天然繊維、衣類や繊維製品を解繊することで得られた反毛繊維、各種廃棄物の粉砕品あるいは解繊品等の使用が可能である。尚、本発明と従来例との配合を対比して表1に示す。」
ウ 「【0113】次いで、基材Mの配合及び構成の具体例について説明する。
【0114】図18に示すように、吸音層56の両面に表面層57が積層される場合には、吸音層56は繊維屑類/繊維径6~30μm、セルロース系解繊物または粉砕物、PET/290μm以下、PETバインダ=5~80:5~80:5~70:5~70、総厚み5~60mm、密度0.005~0.6g/cm3 。また、表面層57としては、290μm以下のPET/290μm以下のPETバインダ=0~95:5~100、12~300g/m2 の面密度である。
【0115】そして、添加する合成繊維としては、繊維径1.9~290μm(好ましくは60~150μm)、繊維長さ2~80mm(好ましくは30~74mm)、バインダ(繊維の場合)では、繊維径1.9~290μm(好ましくは20~150μm)、繊維長さ2~80mm(好ましくは30~74mm)、素材としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリアミド(PA)、ビニロン等からなる合成繊維。融点は、90~170℃の範囲のものが良い。」
エ 「【図1】
[図:0001419325000001.jpg]
(2)認定事項
ア 認定事項1
上記(1)イにおける【0062】によれば、「図1はインシュレータダッシュの構成を示す断面図」であるところ、上記(1)エにおける【図1】の記載、及び、自動車用インシュレータダッシュの技術常識から、以下の事項が示されているといえる。
「吸音材20は、側面視にて「くの字状」に形成された平板状であり、剛性を備えていること」(以下「認定事項3-1」という。)
(3)甲3発明
上記(1)から、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。なお、本件発明特定事項O1等に概ね対応させたo等を含む符号を付した。
「oア,xア
製糸、紡績工程で製品を得るために取り除かれた繊維屑とセルロース系解繊物または粉砕物とを主繊維として基本的に使用し、繊維屑としては、スカーティング工程で取り除かれた綿のような繊維屑を使用し、繊維屑は、繊維長2~60mmであることが好ましく(【0065】)、
そして、繊維屑とセルロース系解繊物または粉砕物とを結合させるバインダは、熱硬化性樹脂であり(【0067】)、
繊維屑、セルロース系解繊物または粉砕物等の主繊維に合成繊維である他繊維を添加し(【0070】)、
oイ
そして、添加する合成繊維としては、繊維長さ2~80mm、素材としては、合成繊維が良く(【0115】)、
xイ
側面視にて「くの字状」に形成された平板状であり、剛性を備えている(認定事項3-1)、
xウ
吸音材20(【0065】)。」
5 甲4について
甲4には、次の事項が記載されている。
(1)記載事項
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ダッシュパネルやフロアパネルに装着されるインシュレータダッシュ、フロアカーペット等に好適な車両用防音材及びその製造方法に係り、特に、廉価でかつ吸音性能に優れ、しかもリサイクルに適したセルロース系解繊物又は粉砕物をベースとした車両用防音材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】通常、車両には、走行時における静粛性を確保するために、各種防音材が設置されている。例えば、図9に示すように、エンジンルームEと車室Rとを区画するダッシュパネル1aの室内側には、インシュレータダッシュ1が装着されているとともに、車室R内のフロアパネル2aの室内面にフロアカーペット2が敷設されている。
【0003】また、エンジンルームE内には、ダッシュパネル1aのエンジンルームE側面にダッシュフロントインシュレータ3やフードパネル4aのエンジンルームE内面にフードインシュレータ4等が設置され、エンジンルームE内の音圧低下を図るとともに、ルーフパネル5aの室内面には、ルーフトリム5が装着されている。尚、図示はしないが、トランクルームやラゲージルーム内にはトランクトリム、ラゲージトリム、ホイールハウストリム等の防音性を有する内装材が設置されている。
【0004】このように、車室RやエンジンルームE、あるいはトランクルーム、ラゲージルーム内には各種防音材が設置されているが、その代表的なものとして、ダッシュパネル1aの室内面に装着されるインシュレータダッシュ1の構成について図10を基に説明する。このインシュレータダッシュ1としては、吸音・遮音性能を有する防音性基材6の表面側に遮音材7を一体化した二層構造のものが従来から知られている。」
イ 「【0048】図1は本発明に係る車両用防音材を自動車用インシュレータダッシュに適用した第1実施形態を示す断面図、……である。
【0049】図1に基づいて本発明の第1実施形態について説明する。図面において、自動車用インシュレータダッシュ10は、エンジンルームEと車室Rとを区画するダッシュパネル11の室内面側に装着されており、本発明に係る車両用防音材の実施形態であるセルロース系基材20の表面に高密度の再生ゴムシート、再生塩ビシート等の遮音材12を積層一体化した二層構造体から構成されている。
【0050】そして、遮音材12は、面密度2~8kg/m2の高比重材料を使用し、セルロース系基材20とプレス一体化される。また、この遮音材12は、ダッシュパネル11と遮音材12との二重壁遮音機能により良好な遮音特性を発揮しているが、遮音材12を廃止してセルロース系基材20単一層でインシュレータダッシュ10を構成しても良く、また、再生ゴムシートに代えて、高密度不織布やフィルムを適用しても良い。
【0051】一方、セルロース系基材20は、樹脂バインダで結合させた吸音・遮音成分をベースとして構成されている。上記吸音・遮音成分としては、セルロースからなる成分であり、具体的には、純パルプ、再生セルロース、古紙(古新聞、古雑誌、段ボール等)や、木材など植物、また、化学的に装飾・加工したセルロース類、製紙工業等で発生する天然素材由来の産業廃棄物(ヘドロ状であったり湿っていたりしても良い)を必要に応じ乾燥させたものなどを使用し、これらは解繊、あるいは粉砕されることによって繊維状又は粉末状となっている。
【0052】一方、樹脂バインダとしては、低融点PETからなる熱融着性繊維、ポリエチレン樹脂等の樹脂パウダーや反応性接着剤(例えばウレタン系接着剤)が使用でき、この実施形態においては、古紙を解繊処理した粉砕物に低融点PETを素材とした熱融着性繊維を樹脂バインダとして使用している。
【0053】そして、吸音・遮音成分と樹脂バインダとの配合比は、吸音・遮音成分/樹脂バインダ=90:10~20:80の範囲内に設定すれば良いが、この配合比の設定については、例えば吸音性能やソフト感が要求される用途には、吸音・遮音成分リッチな配合とし、剛性や遮音性能が要求される用途には、樹脂バインダリッチな配合比を適宜選択することにより、セルロース系基材20の使用範囲を大幅に広げることができる。
……
【0058】次いで、上記セルロース系基材20の製造方法の第1実施形態について、図2,図3を基に説明する。
【0059】この第1実施形態においては、図2に示すチャート図のように、吸音・遮音成分と樹脂バインダ成分とを混合器内で混合撹拌した後、成形型内に散布し、プレス加圧しながら熱風、あるいは水蒸気を吹き込むことによりセルロース系基材20の成形を完了するというものであり、図3に示すように、成形下型30のキャビティ内に吸音・遮音成分と樹脂バインダとを混合した混合材料aを型内に散布し、その後、成形上型31を降下させて型内に熱風、あるいは水蒸気を吹き込むことで、樹脂バインダにより吸音・遮音成分を絡め合わせる。このとき、上述したように吸音・遮音成分/樹脂バインダ=80:20の配合比で混合した混合材料aは成形上下型30,31の型間クリアランスによる厚み5~30mm平均、面密度1000g/m2となるように成形され、セルロース系基材20が得られる。
……
【0061】そして、この第1実施形態では、吸音・遮音成分として古紙の粉砕物、樹脂バインダとして低融点PET樹脂からなる熱融着性繊維を使用したが、ポリエチレン樹脂パウダー等のホットメルト系接着剤やウレタン系接着剤等の反応性接着剤を使用しても、同様の方法でセルロース系基材20を所望形状に成形することができる。
……
【0063】尚、図示はしないが、熱硬化性樹脂を使用した場合には、成形金型30,31を高温に加熱して、熱硬化性樹脂を硬化させてセルロース系基材20を成形すれば良い。」
ウ 「【0075】次いで、図6乃至図8は、本発明に係る車両用防音材の別実施形態を示すもので、図6は、吸音・遮音成分に天然繊維を添加した状態を示す模式図、図7は、吸音・遮音成分にリサイクル材を添加した状態を示す模式図であり、図8はリサイクル材添加によるコストメリットを示すコスト-配合比の相関図である。
【0076】まず、図6のインシュレータダッシュ10は、遮音材12とセルロース系基材20との積層体から構成されており、このセルロース系基材20は、樹脂バインダにより結合させた吸音・遮音成分21とこれら吸音・遮音成分と樹脂バインダ成分に加えて、天然繊維22が添加されている。この天然繊維は、竹、麻、ケナフ、バナナ、ジュート、椰子など、繊維状に解繊したものが使用されている。
……
【0079】また、この天然繊維22の繊維長さは、2~80mmのものが使用できるが、繊維長さを長くするほど成形性や剛性は高まるものの、吸音・遮音成分や樹脂バインダとの混合が難しくなるため、10~64mm程度の範囲のものが実用上好ましい。
【0080】次に、図7は吸音・遮音成分21にリサイクル材23としてのフロアカーペット50を粉砕した粉砕物を添加したもので、カーペット地51裏面の樹脂バッキング層52は、EVA(エチレン酢ビ共重合体)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)等の熱可塑性樹脂を素材としている。
【0081】このように、リサイクル材23としては、内装材製造工程で生じる端材などの産業廃棄物、使用後の内装材、バンパー等、樹脂製外装材などが使用できる。また、粉砕物、解繊物は、自動車関係の廃材に限らず、カーペット、布地、合成樹脂成形品などの一般廃棄物を使用することもできる。
【0082】そして、リサイクル材23を吸音・遮音成分21に添加すれば、安価な増量材となるため、吸音・遮音成分や樹脂バインダの量を低減でき、コスト低減に役立つとともに、廃棄物の排出量低減にも繋がる。
……
【0085】次いで、吸音・遮音成分と樹脂バインダに対してリサイクル材23を添加する際、これら混合材料を均一に混合するために、以下の手順が有効である。まず、混合器や噴霧器を使用して、吸音・遮音成分に液性の樹脂バインダ、例えば、反応性接着剤(ウレタン樹脂系)、あるいは水などを混合する。そして、混合しながら、あるいは展開した状態にして、粉末状のリサイクル材23を散布する。従って、吸音・遮音成分が湿った状態になっているため、粉末状のリサイクル材23が吸音・遮音成分によく吸着され、これにより粉末状のリサイクル材23が重力で下方に落下して、均一な混合がなされないという不具合を有効に解決でき、均一な混合が可能となる。」
エ 「【図3】
[図:0001419325000002.jpg]
……
【図9】
[図:0001419325000003.jpg]
」
(2)認定事項
ア 認定事項4-1
上記(1)イにおける【0053】の「吸音・遮音成分と樹脂バインダとの配合比は、吸音・遮音成分/樹脂バインダ=90:10~20:80の範囲内に設定すれば良いが、」「剛性や遮音性能が要求される用途には、樹脂バインダリッチな配合比を適宜選択する」との記載、上記(4)における【図3】の記載、及び、自動車用インシュレータダッシュの技術常識から、以下の事項が示されているといえる。
「成形されたセルロース系基材20は、側面視にて「くの字状」に形成された平板状であり、剛性を備えていること」(以下「認定事項4-1」という。)
イ 認定事項4-2
上記(1)エにおける【図3】の記載から、以下の事項が示されているといえる。
「成形下型30は、上面が開口しており、側面視にて五角形をしている容器であること」(以下「認定事項4-2」という。)
(3)甲4発明1、9
上記(1)~(2)から、甲4には、次の発明(以下「甲4発明1」、「甲4発明9」という。)が記載されていると認められる。なお、本件発明特定事項P2等に概ね対応させたp等を含む符号を付した。
ア 甲4発明1
「p,a,cア
車両用防音材であるセルロース系基材20は、樹脂バインダで結合させた吸音・遮音成分をベースとして構成されており、上記吸音・遮音成分は、セルロースからなる成分であり、古紙(古新聞、古雑誌、段ボール等)や、製紙工業等で発生する天然素材由来の産業廃棄物(ヘドロ状であったり湿っていたりしても良い)を必要に応じ乾燥させたものなどを使用し、これらは解繊、あるいは粉砕されることによって繊維状又は粉末状となっており(【0049】、【0051】)、
吸音・遮音成分と樹脂バインダとの配合比は、吸音・遮音成分/樹脂バインダ=90:10~20:80の範囲内に設定すれば良いが、剛性や遮音性能が要求される用途には、樹脂バインダリッチな配合比が適宜選択され(【0053】)、
b,cイ,d
成形下型30は、上面が開口しており、側面視にて五角形をしている容器であり(認定事項4-2)、
成形下型30のキャビティ内に吸音・遮音成分と樹脂バインダとを混合した混合材料aを散布し、その後、成形上型31を降下させて(【0059】)、樹脂バインダとして熱硬化性樹脂を使用した場合には、成形金型30,31を高温に加熱して、熱硬化性樹脂を硬化させてセルロース系基材20を成形し(【0061】、【0063】)、
cウ
成形されたセルロース系基材20は、側面視にて「くの字状」に形成された平板状であり、剛性を備えている(認定事項4-1)、
p
セルロース系基材20の製造方法(【0058】)。」
イ 甲4発明9
「oア
樹脂バインダで結合させた吸音・遮音成分をベースとして構成されており、上記吸音・遮音成分は、セルロースからなる成分であり、古紙(古新聞、古雑誌、段ボール等)や、製紙工業等で発生する天然素材由来の産業廃棄物(ヘドロ状であったり湿っていたりしても良い)を必要に応じ乾燥させたものなどを使用し、これらは解繊、あるいは粉砕されることによって繊維状又は粉末状となっており(【0051】)、
oイ
吸音・遮音成分と樹脂バインダとの配合比は、吸音・遮音成分/樹脂バインダ=90:10~20:80の範囲内に設定すれば良いが、剛性や遮音性能が要求される用途には、樹脂バインダリッチな配合比が適宜選択され(【0053】)、
oエ
成形下型30のキャビティ内に吸音・遮音成分と樹脂バインダとを混合した混合材料aを散布し、その後、成形上型31を降下させて(【0059】)、樹脂バインダとして熱硬化性樹脂を使用した場合には、成形金型30,31を高温に加熱して、熱硬化性樹脂を硬化させてセルロース系基材20を成形し(【0061】、【0063】)、
oオ
成形されたセルロース系基材20は、側面視にて「くの字状」に形成された平板状であり、剛性を備えている(認定事項4-1)、
x
セルロース系基材20(【0051】)。」
(4)甲4記載の技術事項
ア 甲4記載の技術事項1
上記(1)ウにおける【0076】、【0079】の記載から、甲4には、以下の技術事項(以下「甲4記載の技術事項1」という。)が記載されていると認められる。
「セルロース系基材20は、吸音・遮音成分と樹脂バインダ成分に加えて、天然繊維22が添加され(【0076】)、
天然繊維22の繊維長さは、2~80mmのものが使用できること(【0079】)。」
イ 甲4記載の技術事項2
上記(1)ウにおける【0081】の記載から、甲4には、以下の技術事項(以下「甲4記載の技術事項2」という。)が記載されていると認められる。
「粉砕物、解繊物は、布地などの一般廃棄物を使用することもできること(【0081】)。」
ウ 甲4記載の技術事項3
上記(1)ウにおける【0085】の記載から、甲4には、以下の技術事項(以下「甲4記載の技術事項3」という。)が記載されていると認められる。
「噴霧器を使用して、吸音・遮音成分に液性の樹脂バインダを混合すること(【0085】)。」
第6 対比・判断
1 甲4を主たる証拠とした進歩性の欠如について
上記第4の2(1)で述べたように、令和6年5月27日付けの取消理由において、請求項1~2、4~7、9に係る発明に対して甲4を主たる証拠とした進歩性の欠如を通知した。以下、この点について検討する。
(1)対比
本件特許発明1と甲4発明1とを対比する。
ア 本件発明特定事項Aについて
甲4発明1の「古紙(古新聞、古雑誌、段ボール等)や、製紙工業等で発生する天然素材由来の産業廃棄物(ヘドロ状であったり湿っていたりしても良い)を必要に応じ乾燥させたものなど」は、本件特許発明1の「繊維を含有する回収品」に相当する。
また、甲4発明1の「古紙(古新聞、古雑誌、段ボール等)や、製紙工業等で発生する天然素材由来の産業廃棄物(ヘドロ状であったり湿っていたりしても良い)を必要に応じ乾燥させたものなど」を「解繊、あるいは粉砕」する「ことによって繊維状又は粉末状となって」いる「吸音・遮音成分」は、本件特許発明1の「繊維を含有する回収品を繊維状に粉砕することで」「生成」された「繊維材料」に相当する。
そうすると、甲4発明1の「古紙(古新聞、古雑誌、段ボール等)や、製紙工業等で発生する天然素材由来の産業廃棄物(ヘドロ状であったり湿っていたりしても良い)を必要に応じ乾燥させたものなどを使用し」た「吸音・遮音成分」を「解繊、あるいは粉砕」する「ことによって繊維状又は粉末状と」することは、本件特許発明1の「繊維を含有する回収品を繊維状に粉砕することで繊維材料を生成する繊維材料生成工程」に相当する。
よって、甲4発明1は、本件発明特定事項Aに相当する構成を有する。
イ 本件発明特定事項Bについて
上記アで述べたように、甲4発明1の「吸音・遮音成分」は、本件特許発明1の「繊維材料」に相当する。
また、甲4発明1では、「樹脂バインダとして熱硬化性樹脂を使用」するから、甲4発明1の「樹脂バインダ」は、本件特許発明1の「熱硬化性を有する接着剤」に相当する。
そうすると、甲4発明1の「吸音・遮音成分と樹脂バインダとを混合」する工程は、本件特許発明1の「前記繊維材料生成工程において生成された繊維材料に対して、熱硬化性を有する接着剤を塗布する接着剤塗布工程」と、「前記繊維材料生成工程において生成された繊維材料に対して、熱硬化性を有する接着剤を」混合「する接着剤」混合「工程」である点で共通する。
ウ 本件発明特定事項Cについて
上記アで述べたように、甲4発明1の「吸音・遮音成分」は、本件特許発明1の「繊維材料」に相当する。
また、上記イで述べたように、甲4発明1の「樹脂バインダ」は、本件特許発明1の「熱硬化性を有する接着剤」に相当する。
そうすると、甲4発明1の「吸音・遮音成分と樹脂バインダとを混合した混合材料a」は、「接着剤」混合「工程において前記接着剤が」混合「された繊維材料」であるといえる。
また、甲4発明1の「成形下型30のキャビティ内に吸音・遮音成分と樹脂バインダとを混合した混合材料aを散布」することは、「繊維材料を」容器に収容する収納工程であるといえる。ここで、本件明細書の【0042】~【0043】には、「成形工程」「では、例えば、上面が開口した箱形容器に混合繊維A2を収容することで、接着剤が塗布された混合繊維A2を板状に成形することができる」ことが記載されているから、「繊維材料を」容器に収容する工程は、本件特許発明1の「繊維材料を」「成形する成形工程」に対応すると解される。そうすると、甲4発明1の「成形下型30のキャビティ内に吸音・遮音成分と樹脂バインダとを混合した混合材料aを散布」することは、本件特許発明1の「繊維材料を」「成形する成形工程」に相当する。
そうすると、甲4発明1は、本件特許発明1と、「前記接着剤」混合「工程において前記接着剤が」混合「された繊維材料を」「成形する成形工程」を有する点で共通する。
エ 本件発明特定事項Dについて
甲4発明1の「成形下型30のキャビティ内に吸音・遮音成分と樹脂バインダとを混合した混合材料aを散布し」た後に「成形上型31を降下させ」ることは、収納工程で収納された「繊維材料を加圧」することであるといえる。
また、甲4発明1の「成形金型30,31を高温に加熱」することは、本件特許発明1の「加熱する」ことに相当する。
よって、甲4発明1は、本件特許発明1と、前記収容工程において容器に収容された繊維材料を加圧及び加熱する加圧加熱工程を有する点で共通する。
オ 本件発明特定事項Pについて
上記ウで述べたように、甲4発明1の「セルロース系基材20」は「板状に成形」されたものであるといえるから、「ボード」であるといえる。
ここで、甲4発明1の「セルロース系基材20」は、「樹脂バインダで結合させた吸音・遮音成分をベースとして構成されて」いるところ、「上記吸音・遮音成分は、」「古紙(古新聞、古雑誌、段ボール等)や、製紙工業等で発生する天然素材由来の産業廃棄物(ヘドロ状であったり湿っていたりしても良い)を必要に応じ乾燥させたものなどを使用」するものであるから、「再生ボード」を含むといえる。
また、甲4発明1の「製造方法」は、本件特許発明1の「製造方法」に相当する。
よって、甲4発明1は、本件発明特定事項Pに相当する構成を有する。
カ 一致点・相違点
以上のことから、本件特許発明1と甲4発明1とは、
「A 繊維を含有する回収品を繊維状に粉砕することで繊維材料を生成する繊維材料生成工程と、
B’ 前記繊維材料生成工程において生成された繊維材料に対して、熱硬化性を有する接着剤を混合する接着剤混合工程と、
C’ 前記接着剤混合工程において前記接着剤が混合された繊維材料を成形する成形工程と、
D’ 前記収納工程において容器に収納された繊維材料を加圧及び加熱する加圧加熱工程と、
を有する
P 再生ボードの製造方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-1(本件発明特定事項P2)>
本件特許発明1と甲4発明1とは、「再生ボードの製造方法」である点で共通するものの、
本件特許発明1の「再生ボード」は「表面に繊維の質感が表れることにより前記表面が露出した状態で什器、家具又は建築用ボードのいずれかの構成部材に使用される、硬質繊維板」であるのに対し、
甲4発明1の「セルロース系基材20」は「車両用防音材」である点。
<相違点1-2(本件発明特定事項B、C)>
本件特許発明1と甲4発明1とは、前記繊維材料生成工程において生成された繊維材料に対して、熱硬化性を有する接着剤を混合する接着剤混合工程を有する点で共通するものの、
接着剤混合工程が、本件特許発明1では、「接着剤を塗布する接着剤塗布工程」であるのに対し、甲4発明1では、「吸音・遮音成分と樹脂バインダとを混合」する工程であり、
これに伴い、接着剤混合工程において接着剤が混合された繊維材料が、本件特許発明1では、「前記接着剤が塗布された繊維材料」であるのに対し、甲4発明1では、「吸音・遮音成分と樹脂バインダとを混合した混合材料a」である点。
<相違点1-3(本件発明特定事項C、D)>
本件特許発明1と甲4発明1とは、前記接着剤混合工程において前記接着剤が混合された繊維材料を成形する成形工程を有する点で共通するものの、
繊維材料を成形する成形工程が、本件特許発明1では、「繊維材料を平板状に成形する成形工程」であるのに対し、甲4発明1では、そのような工程であるか明らかでなく、
これに伴い、成形工程において成形された繊維材料が、本件特許発明1では、「平板状」であるのに対し、甲4発明1では、そのような状態であるか明らかでない点。
(2)判断
相違点1-1について検討する。
甲4発明1の「セルロース系基材20」は、「車両用防音材」であるから、空気中に伝わる音波の振動を熱エネルギーに変換させることで音を減衰させるものであると認められる。そして、そのように音を減衰させるために、音波を伝える空気が存在する空間が防音材内に必要であることは、技術常識から明らかである。そうすると、甲4発明1の「セルロース系基材20」は、音波を伝える空気が存在する空間を必要とすることから、密度、曲げ及び弾性変形等における制約があると解されるが、このことは繊維板を「硬質」なものとすることと相反するものと解することができるし、甲4には「硬質」なものとすることについて記載も示唆もない。
以上のように、甲4発明1では、「セルロース系基材20」を「硬質繊維板」のように「硬質」なものとすることに阻害要因があるから、このような甲4発明1を出発点として本件特許発明1に至ることは、当業者が容易に想到できたことではない。
(3)小括
よって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲4発明1、及び、甲1記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件特許発明1を引用する本件特許発明2~7も、甲4発明1、及び、甲1記載の技術事項等に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 甲3を主たる証拠とした進歩性の欠如について
上記第4の2(2)で述べたように、令和6年5月27日付けの取消理由において、請求項9に係る発明に対して甲3を主たる証拠とした進歩性の欠如を通知した。以下、この点について検討する。
(1)対比
本件特許発明9と甲3発明とを対比する。
ア 本件発明特定事項O1について
甲3発明の「スカーティング工程で取り除かれた綿のような繊維屑を使用」する「繊維屑」は、本件特許発明9の「天然繊維」に相当する。
よって、甲3発明は、本件特許発明9と、「天然繊維」「を含んで形成された」点で、共通する。
イ 本件発明特定事項O2について
甲3発明の「繊維屑、セルロース系解繊物または粉砕物等の主繊維に」「添加」される「合成繊維である他繊維」は、本件特許発明9の「合成繊維」に相当する。
よって、甲3発明は、本件特許発明9と、「合成繊維」「を含んで形成された」点で、共通する。
ウ 本件発明特定事項O3について
甲3発明の「熱硬化性樹脂であ」る「繊維屑とセルロース系解繊物または粉砕物とを結合させるバインダ」は、本件特許発明9の「熱硬化性を有する接着剤」に相当する。
よって、甲3発明は、本件発明特定事項O3に相当する構成を有する。
エ 本件発明特定事項Xについて
甲3発明の「吸音材20」は、「製糸、紡績工程で製品を得るために取り除かれた繊維屑とセルロース系解繊物または粉砕物とを主繊維として基本的に使用」するから「再生」されたものであるといえ、「側面視にて「くの字状」に形成された平板状であり、剛性を備えている」から「ボード」であるといえる。そうすると、甲3発明の「吸音材20」は、本件特許発明9の「再生ボード」に相当する。
よって、甲3発明は、本件発明特定事項Xに相当する構成を有する。
オ 一致点・相違点
以上のことから、本件特許発明9と甲3発明とは、
「O1’ 天然繊維と、
O2’ 合成繊維と、
O3 熱硬化性を有する接着剤と、を含んで形成された
X 再生ボード。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点9-1(本件発明特定事項Y)>
本件特許発明9と甲3発明とは「再生ボード」である点で共通するものの、
本件特許発明9では、「表面に繊維の質感が表れることにより前記表面が露出した状態で什器、家具又は建築用ボードのいずれかの構成部材に使用される、硬質繊維板である再生ボード」であるのに対し、
甲3発明では、「吸音材20」である点。
<相違点9-2(本件発明特定事項O1、O2)>
本件特許発明9と甲3発明とは、「天然繊維と、」「合成繊維と、」「を含んで形成された」点で共通するものの、
本件特許発明9では、「天然繊維」及び「合成繊維」が「平均繊維長が10mm以下とされた」のに対し、
甲3発明では、「繊維屑は、繊維長2~60mmであることが好ましく」、「添加する合成繊維としては、繊維長さ2~80mm」「が良」い点。
(2)判断
相違点9-1について検討する。
甲3発明の「吸音材20」は、空気中に伝わる音波の振動を熱エネルギーに変換させる事で音を減衰させるものであると認められる。そして、そのように音を減衰させるために、音波を伝える空気が存在する空間が吸音材内に必要であることは、技術常識から明らかである。そうすると、甲3発明の「吸音材20」は、音波を伝える空気が存在する空間を必要とすることから、密度、曲げ及び弾性変形等における制約があると解されるが、このことは繊維板を「硬質」なものとすることと相反するものと解することができるし、甲3には「硬質」なものとすることについて記載も示唆もない。
以上のように、甲3発明の「吸音材20」を「硬質繊維板」のように「硬質」なものとすることに阻害要因があるから、このような甲3発明を出発点として本件特許発明9に至ることは、当業者が容易に想到できたことではない。
(3)小括
よって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明9は、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第7 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について
1 甲1を主たる証拠とした進歩性の欠如について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明1とを対比すると、少なくとも次の点で相違する。
<相違点A1(本件発明特定事項B)>
本件特許発明1は、「前記繊維材料生成工程において生成された繊維材料に対して、熱硬化性を有する接着剤を塗布する」のに対し、
甲1発明1では、「前記粉砕された使用済の織られた又は編まれたテキスタイルを熱可塑性繊維ベースのバインダーと混合」する点。
イ 判断
甲1発明1はテキスタイルのバインダーとして熱可塑性樹脂を用いる発明であるのに対し、本件特許発明1は繊維材料のバインダーとして熱硬化性を有する接着剤を用いる発明である。
ここで、熱可塑性樹脂と熱硬化性を有する接着剤とは異なる性質を持った樹脂であるところ、甲1発明1には熱硬化性を有する接着剤を用いる動機付けがない。
そして、甲1発明1のような従来技術では、テキスタイルのバインダーとして熱可塑性樹脂を用いることで、表面に光沢感が出やすいという解決すべき課題があったところ、本件特許発明1は、テキスタイルのバインダーとして熱硬化性を有する接着剤を用いることで、表面に光沢感がでにくいという効果を奏するものである。各甲号証を見ても、この点は記載も示唆もされていない。
また、甲1発明1は、熱可塑性樹脂を用いて製品を製造する方法の発明である。ここで技術常識を踏まえると、熱可塑性樹脂は、加熱される前には固化しており、加熱されると溶けて軟化し、冷却されると再び固化する樹脂である。熱可塑性樹脂は加熱される前には固化しているから、加熱した後でないと製品を製造する金型に熱可塑性樹脂を塗布することができない。また、熱可塑性樹脂は加熱されると溶けて軟化するから、冷却しないと製造された製品を金型から取り出すことができない。
これに対して、本件特許発明1は、熱硬化性を有する接着剤を用いて再生ボードを製造する方法の発明である。ここで技術常識を踏まえると、熱硬化性樹脂は、加熱される前には流動性を有し、加熱されると固化する樹脂である。熱硬化性樹脂は加熱される前には流動性を有するから、製品を製造する金型に熱硬化性樹脂を塗布することができる。また、熱硬化性樹脂は加熱されると固化し液状に戻ることはないから、冷却することなく製造された製品を金型から取り出すことができる。
したがって、本件特許発明1と甲1発明1とは、用いる材料が熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とで異なることから、再生ボード(製品)の製造方法も大きく異なる。
以上のとおりであるから、甲1発明1を出発点として本件特許発明1に至ることは、当業者が容易に想到できたことではない。
ウ 小括
よって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明1、及び、甲第2号証~甲第10号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件特許発明1を引用する本件特許発明2~7も、甲1発明1、及び、甲第2号証~甲第10号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件特許発明8について
ア 対比
本件特許発明8と甲1発明8とを対比すると、少なくとも次の点で相違する。
<相違点A2(本件発明特定事項N2)>
本件特許発明8では、「熱硬化性を有する接着剤」を含んで形成されるのに対し、
甲1発明8では、そのように構成されていない点。
イ 判断
上記(1)イで述べたことと同様に、甲1発明8は熱可塑性樹脂を用いる発明であるのに対し、本件特許発明8は熱硬化性樹脂を用いる発明であるから、甲1発明8を出発点として本件特許発明8に至ることは、当業者が容易に想到できたことではない。
ウ 小括
よって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明8は、甲1発明8、及び、甲第2号証~甲第10号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件特許発明9について
ア 対比
本件特許発明9と甲1発明8とを対比すると、少なくとも次の点で相違する。
<相違点A3(本件発明特定事項O3)>
本件特許発明9では、「熱硬化性を有する接着剤」を含んで形成されるのに対し、
甲1発明8では、そのように構成されていない点。
イ 判断
上記(1)イで述べたことと同様に、甲1発明8は熱可塑性樹脂を用いる発明であるのに対し、本件特許発明9は熱硬化性樹脂を用いる発明であるから、甲1発明8を出発点として本件特許発明9に至ることは、当業者が容易に想到できたことではない。
ウ 小括
よって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明9は、甲1発明8、及び、甲第2号証~甲第10号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 甲2を主たる証拠とした進歩性の欠如について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲2発明1とを対比すると、少なくとも次の点で相違する。
<相違点B1(本件発明特定事項B)>
本件特許発明1は、「前記繊維材料生成工程において生成された繊維材料に対して、熱硬化性を有する接着剤を塗布する」のに対し、
甲2発明1では、「合成繊維くずと廃プラスチック又は合成繊維くず若しくは廃プラスチックから得た糸状ないし繊維状の合成素材と、廃木材又は故紙から得たチップ状ないし繊維状の天然素材とを混合し、これを堆積してマットを形成し、マットを熱圧成形してマット中の合成素材を溶融し、溶融合成素材でマット中の素材同士を結合」する点。
イ 判断
甲2では、甲2発明1の「合成繊維くずと廃プラスチック又は合成繊維くず若しくは廃プラスチックから得た糸状ないし繊維状の合成素材」が熱硬化性を有するのか、熱可塑性を有するのかが、明記されていない。
しかしながら、甲2発明1では、「マットを熱圧成形してマット中の合成素材を溶融」するものである。
また、甲2の【0008】には、「マットを熱圧成形してマット中の合成繊維を溶融し」と記載されている。
さらに、甲2の【0036】には、「熱圧成形機31は、四角形状のマットを上下の加熱板に挟んで熱圧成形する。……マット中の合成素材は、溶融する。」と記載されている。
以上のことから、甲2発明1の「マット」は、「熱圧成形」によって「溶融」する熱可塑性を有するものであると認められる。
そうすると、上記1(1)イで述べたことと同様に、甲2発明1は熱可塑性樹脂を用いる発明であるのに対し、本件特許発明1は熱硬化性樹脂を用いる発明であるから、甲2発明1を出発点として本件特許発明1に至ることは、当業者が容易に想到できたことではない。
ウ 小括
よって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明1、並びに、甲1及び甲3~甲10に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件特許発明1を引用する本件特許発明2~7も、甲2発明1、並びに、甲1及び甲3~甲10に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件特許発明8について
ア 対比
本件特許発明8と甲2発明8とを対比すると、少なくとも次の点で相違する。
<相違点B2(本件発明特定事項N2)>
本件特許発明8では、「熱硬化性を有する接着剤」を含んで形成されるのに対し、
甲1発明8では、そのように構成されていない点。
イ 判断
上記(1)イで述べたことと同様に、甲2発明8の「マット」は、「熱圧成形」によって「溶融」する熱可塑性を有するものであると認められる。
そうすると、上記1(1)イで述べたことと同様に、甲2発明8は熱可塑性樹脂を用いる発明であるのに対し、本件特許発明8は熱硬化性樹脂を用いる発明であるから、甲2発明8を出発点として本件特許発明8に至ることは、当業者が容易に想到できたことではない。
ウ 小括
よって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明8は、甲2発明8、及び、甲第2号証~甲第10号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件特許発明9について
ア 対比
本件特許発明9と甲2発明8とを対比すると、少なくとも次の点で相違する。
<相違点B3(本件発明特定事項O3)>
本件特許発明9では、「熱硬化性を有する接着剤」を含んで形成されるのに対し、
甲2発明8では、そのように構成されていない点。
イ 判断
上記(1)イで述べたことと同様に、甲2発明8の「マット」は、「熱圧成形」によって「溶融」する熱可塑性を有するものであると認められる。
そうすると、上記1(1)イで述べたことと同様に、甲2発明8は熱可塑性樹脂を用いる発明であるのに対し、本件特許発明9は熱硬化性樹脂を用いる発明であるから、甲2発明8を出発点として本件特許発明9に至ることは、当業者が容易に想到できたことではない。
ウ 小括
よって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明9は、甲2発明8、及び、甲第2号証~甲第10号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1~9に係る特許は、取消理由で通知した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては取り消すことができない。
また、他に本件特許の請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701076