特許異議申立
2022-701121
フッ素オイルを含む組成物
- 審判番号
- 2022-701121
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-136153
- 登録番号
- 7068598
- 請求日
- 2022年11月16日
- 審決日
- 2024年06月27日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ダイキン工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
- 【異議申立人】石井 ゆかり
- 審判長/審判官
- 審判長 門前 浩一
- 審判官 関根 裕
- 審判官 弘實 由美子
- 分類
- P1651.113-YAA(C09D) / P1651.121-YAA(C09D) / P1651.537-YAA(C09D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項、特許法第41条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特許第7068598号発明「フッ素オイルを含む組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7068598号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3、7〕、4、5、6について訂正することを認める。
特許第7068598号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7068598号の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和3年8月24日(優先権主張 令和2年8月31日 日本国)にされたものであって、令和4年5月9日にその特許権の設定登録がされ、同年同月17日に特許掲載公報が発行された。その後の特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年11月16日 特許異議申立人 石井ゆかり(以下「申立人
」という。)による全請求項に係る特許に対
する特許異議の申立て
令和5年 3月23日付け 取消理由通知書
同年 5月26日 意見書及び訂正請求書(特許権者)
同年 6月 6日付け 訂正請求があった旨の通知
同年 8月 3日 上申書(申立人)
同年11月16日付け 取消理由通知書(決定の予告)
令和6年 1月12日 意見書及び訂正請求書(特許権者)
同年 2月 8日付け 訂正請求があった旨の通知
同年 3月13日 意見書(申立人)
なお、令和5年5月26日の訂正請求書による訂正請求は、特許法120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和6年1月12日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」ともいう。)の内容は、次の訂正事項1~5のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「(A)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)、並びに
(B)フッ素オイル
を含み、
前記フッ素オイルが、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びにクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物である、組成物。」とあるのを、
「(A)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)、並びに
(B)フッ素オイル
を含み、
前記フッ素オイルが、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びにクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物であり、
前記(A)が、
(a1)HFE-356mmz;
(a2)HFE-356mec;又は
(a3)HFE-356mmz及びHFE-356mec
であり、且つ、
前記(A)が、前記(a1)である場合、前記フッ素オイルが、クロロトリフルオロエチレンの低重合物である、
組成物。」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2、3及び7も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、
「前記(A)成分及び前記(B)成分の総量に対して、
前記(A)成分の含有割合が1質量%以上99.99質量%以下であり、
前記(B)成分の含有割合が0.01質量%以上99質量%以下である、請求項1に記載の組成物。」
とあるのを、
「前記(A)が、前記(a1)である場合、
前記(a1)及び前記クロロトリフルオロエチレンの低重合物の総量に対して、前記(a1)の含有割合が1質量%以上99.99質量%以下であり、前記クロロトリフルオロエチレンの低重合物の含有割合が0.01質量%以上99質量%以下であり、
前記(A)が、前記(a2)である場合、
前記(a2)及び前記(B)の総量に対して、前記(a2)の含有割合が1質量%以上99.99質量%以下であり、前記(B)の含有割合が0.01質量%以上99質量%以下であり、
前記(A)が、前記(a3)である場合、
前記(a3)及び前記(B)の総量に対して、前記(a3)の含有割合が1質量%以上99.99質量%以下であり、前記(B)の含有割合が0.01質量%以上99質量%以下である、請求項1に記載の組成物。」に訂正する。(請求項2の記載を引用する請求項3、7も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に、
「1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)を含むことを特徴とする、フッ素オイルを除去するための溶剤用組成物又は洗浄用組成物であって、
前記フッ素オイルが、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びにクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物である、溶剤用組成物又は洗浄用組成物。」
とあるのを、
「フッ素オイルを除去するための溶剤用組成物又は洗浄用組成物であって、
前記溶剤用組成物又は洗浄用組成物が、
(a1)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz);
(a2)1.1.2,3,3.3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec);又は
(a3)HFE-356mmz及びHFE-356mec
を含み、
前記フッ素オイルが、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びにクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物であり、且つ、
前記溶剤用組成物又は洗浄用組成物が、前記(a1)を含む場合、前記フッ素オイルが、クロロトリフルオロエチレンの低重合物である、
溶剤用組成物又は洗浄用組成物。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に、
「1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)を含む洗浄剤を用いて、フッ素オイルを除去する、洗浄方法であって、
前記フッ素オイルが、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びにクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物である、洗浄方法。」
とあるのを、
「洗浄剤を用いて、フッ素オイルを除去する、洗浄方法であって、
前記洗浄剤が、
(a1)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz);
(a2)1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec);又は
(a3)HFE-356mmz及びHFE-356mec
を含み、
前記フッ素オイルが、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びにクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物であり、且つ、
前記洗浄剤が、前記(a1)を含む場合、前記フッ素オイルが、クロロトリフルオロエチレンの低重合物である、
洗浄方法。」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に、
「1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)を含む溶剤を用いて、フッ素オイルを溶解させる、溶解方法であって、
前記フッ素オイルが、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びにクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物である、溶解方法。」
とあるのを、
「溶剤を用いて、フッ素オイルを溶解させる、溶解方法であって、
前記溶剤が、
(a1)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz);
(a2)1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec);又は
(a3)HFE-356mmz及びHFE-356mec
を含み、
前記フッ素オイルが、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びにクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物であり、且つ、
前記溶剤が、前記(a1)を含む場合、前記フッ素オイルが、クロロトリフルオロエチレンの低重合物である、
溶解方法。」に訂正する。
2 一群の請求項
本件訂正前の請求項1~7において、請求項2、3及び7は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して記載が訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~3、7は一群の請求項である。また、独立形式で記載された請求項4~6は、それぞれ訂正事項3~5によって記載が訂正されるものである。よって、本件訂正のうち請求項1~3、7については、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごと、本件訂正のうち請求項4、5、6については請求項ごとにされた訂正である。
3 訂正の適否についての当審の判断
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「組成物」について、「前記(A)」が、「(a1)HFE-356mmz」である場合に、「(B)フッ素オイル」が「クロロトリフルオロエチレンの低重合物」であることを限定するもの、ないしは、「(B)フッ素オイル」の選択肢から「パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物」を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか
前記アのとおり、訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「組成物」を限定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「組成物」について、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」ともいう。)の【0054】の「・フッ素オイル(A8):ダイキン工業社製、クロロトリフルオロエチレンの低重合物「ダイフロイル#20」(25℃における動粘度=350~1500cst)」及び【0064】の「(実施例10)フッ素オイル(A1)の代わりに、フッ素オイル(A8)を使用した以外は、実施例1と同一条件にて組成物を調整し、HFE-356mmzとフッ素オイル(A8)とが25℃において相互に溶解しているかを観察した。・・・HFE-356mmzに対してフッ素オイル(A8)が完全に溶解することが確認できた。」との記載に基くものであるか、あるいは、前記アで述べたとおり、「(B)フッ素オイル」の選択肢から「パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物」を除いたものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正に該当し、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものといえる。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項2の「(A)成分及び」「(B)成分」の重量%比について、「前記(A)が、(a1)HFE-356mmz;(a2)HFE-356mec;又は(a3)HFE-356mmz及びHFE-356mecであり」という(a1)~(a3)の3つの場合のうち、前記請求項1についての訂正事項1により、「前記(A)が、前記(a1)である場合」に、「(B)」成分である「フッ素オイルが、クロロトリフルオロエチレンの低重合物」に特定されたことに対応して、「(B)」が「クロロトリフルオロエチレンの低重合物」であることを明示するようにしたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とした訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定にも適合するものである。
(3)訂正事項3~5
ア 訂正の目的
訂正事項3~5は、前記(1)アと同じく、訂正前の請求項4~6に記載された「組成物」、「洗浄剤」及び「溶剤」について、「組成物」、「洗浄剤」又は「溶剤」が「(a1)HFE-356mmz」を含む場合に、「(B)フッ素オイル」が、「クロロトリフルオロエチレンの低重合物」であることを限定するもの、ないしは、「(B)フッ素オイル」の選択肢から「パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物」を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とした訂正である。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか
前記アのとおり、訂正事項3~5は、訂正前の請求項4~6に記載された「組成物」、「洗浄剤」又は「溶剤」を限定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか
訂正事項3~5は、前記(1)ウと同じく、訂正前の請求項4~6に記載された「組成物」、「洗浄剤」又は「溶剤」について、本件明細書等の【0054】の「・フッ素オイル(A8):ダイキン工業社製、クロロトリフルオロエチレンの低重合物「ダイフロイル#20」(25℃における動粘度=350~1500cst)」、【0064】の「(実施例10)フッ素オイル(A1)の代わりに、フッ素オイル(A8)を使用した以外は、実施例1と同一条件にて組成物を調整し・・・」及び【0073】の「(実施例19)フッ素オイル(A1)の代わりに、フッ素オイル(A8)を使用した以外は、実施例13と同一条件にて組成物を調整し・・・」との記載に基いて、「(a1)HFE-356mmz」「を含む場合、前記フッ素オイルが、クロロトリフルオロエチレンの低重合物である」ことを特定するものであるか、あるいは、「(B)フッ素オイル」の選択肢から「パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物」を除いたものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正に該当し、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものといえる。
4 独立特許要件についての判断
本件訂正においては、訂正前の全ての請求項である請求項1~7に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定は課されない。
5 小括
以上のとおりであるから、本件特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3、7〕、4、5、6について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
本件訂正は前記第2のとおり認められたので、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~7に係る発明(以下、番号順に「本件訂正発明1」等といい、まとめて「本件訂正発明」ともいう。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
(A)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)、並びに
(B)フッ素オイル
を含み、
前記フッ素オイルが、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びにクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物であり、
前記(A)が、
(a1)HFE-356mmz;
(a2)HFE-356mec;又は
(a3)HFE-356mmz及びHFE-356mec
であり、且つ、
前記(A)が、前記(a1)である場合、前記フッ素オイルが、クロロトリフルオロエチレンの低重合物である、
組成物。
【請求項2】
前記(A)が、前記(a1)である場合、
前記(a1)及び前記クロロトリフルオロエチレンの低重合物の総量に対して、前記(a1)の含有割合が1質量%以上99.99質量%以下であり、前記クロロトリフルオロエチレンの低重合物の含有割合が0.01質量%以上99質量%以下であり、
前記(A)が、前記(a2)である場合、
前記(a2)及び前記(B)の総量に対して、前記(a2)の含有割合が1質量%以上99.99質量%以下であり、前記(B)の含有割合が0.01質量%以上99質量%以下であり、
前記(A)が、前記(a3)である場合、
前記(a3)及び前記(B)の総量に対して、前記(a3)の含有割合が1質量%以上99.99質量%以下であり、前記(B)の含有割合が0.01質量%以上99質量%以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
コーティング剤用である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
フッ素オイルを除去するための溶剤用組成物又は洗浄用組成物であって、
前記溶剤用組成物又は洗浄用組成物が、
(a1)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz);
(a2)1.1.2,3,3.3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec);又は
(a3)HFE-356mmz及びHFE-356mec
を含み、
前記フッ素オイルが、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びにクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物であり、且つ、
前記溶剤用組成物又は洗浄用組成物が、前記(a1)を含む場合、前記フッ素オイルが、クロロトリフルオロエチレンの低重合物である、
溶剤用組成物又は洗浄用組成物。
【請求項5】
洗浄剤を用いて、フッ素オイルを除去する、洗浄方法であって、
前記洗浄剤が、
(a1)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz);
(a2)1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec);又は
(a3)HFE-356mmz及びHFE-356mec
を含み、
前記フッ素オイルが、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びにクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物であり、且つ、
前記洗浄剤が、前記(a1)を含む場合、前記フッ素オイルが、クロロトリフルオロエチレンの低重合物である、
洗浄方法。
【請求項6】
溶剤を用いて、フッ素オイルを溶解させる、溶解方法であって、
前記溶剤が、
(a1)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz);
(a2)1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec);又は
(a3)HFE-356mmz及びHFE-356mec
を含み、
前記フッ素オイルが、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びにクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物であり、且つ、
前記溶剤が、前記(a1)を含む場合、前記フッ素オイルが、クロロトリフルオロエチレンの低重合物である、
溶解方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の組成物を塗布する工程を含む、コーティング方法。」
第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要
1 特許異議の申立ての理由の概要
申立人は、後記(1)~(3)の特許異議の申立の理由(以下「申立理由」ともいう。)を主張するとともに、証拠方法として後記3の証拠を提出した。
(1)申立理由1(新規性)
本件特許の請求項1~7に係る発明は、後記3の甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)申立理由2(進歩性)
本件特許の請求項1~7に係る発明は、後記3の甲1に記載された発明に基いて、当該出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3)申立理由3(サポート要件)
本件特許に係る出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないものであるから、それらの発明に係る特許は同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
2 令和5年3月23日付けの取消理由通知書で通知した取消理由の概要
(1)取消理由1:(新規性)
本件特許の請求項1~7に係る発明は、後記3の甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)取消理由2:(進歩性)
本件特許の請求項1~7に係る発明は、後記3の甲1に記載された発明に基いて、当該出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 証拠方法
(1)申立人が特許異議の申立てとともに提出した甲第1号証~甲第10号証は、次のとおりのものである。以下、番号に応じて、甲第1号証を甲1、甲2号証を甲2のように略称する。
甲1:特開2020-132688号公報
甲2:特願2020-146120号(本件出願の優先権主張の基礎となる出願)に係る証明請求書、並びに特許願及び出願受付情報の証明
甲3:申立人と特許庁普及支援課広報企画班との間で送信されたEメールの写し
甲4:特開2008-195929号公報
甲5:特開2010-77267号公報
甲6:特開2010-77222号公報
甲7:特開2009-242754号公報
甲8:特開2009-242753号公報
甲9:特許第5286289号公報
甲10:特開2008-260814号公報
(2)申立人が令和5年8月3日の上申書とともに提出した甲11~甲19は、次のとおりである。
甲11:特表2013-537965号公報
甲12:特表2011-506681号公報
甲13:特開2019-167304号公報
甲14:特開2006-199865号公報
甲15:国際公開第2011/114921号の再公表公報
甲16:国際公開第2008/081804号の再公表公報
甲17:特開2015-67779号公報
甲18:特開2009-215409号公報
甲19:特開2000-119691号公報
(3)申立人が令和6年3月13日の意見書とともに提出した甲20~甲27は、次のとおりである。
甲20:特開平2-144550号公報
甲21:特開2004-225326号公報
甲22:特開2016-193968号公報
甲23:特開2006-83374号公報
甲24:特開2017-42533号公報
甲25:特開2016-169256号公報
甲26:特開2017-43742号公報
甲27:特開2012-241128号公報
(4)特許権者が令和5年5月26日の意見書とともに提出した乙第1号証は次のとおりのものである。(以下「乙1」という。)
乙1:特表2013-532755号公報
4 甲号証の記載
(1)摘記する甲号証
前記第3のとおり、本件訂正発明1は、「(A)」が「(a1)HFE-356mmz」である場合に、「(B)フッ素オイル」が「クロロトリフルオロエチレンの低重合物」であることが特定されたものとなり、本件訂正発明4~6では、「組成物」、「洗浄剤」又は「溶剤」が「(a1)HFE-356mmz」を含む場合に、「(B)フッ素オイル」が「クロロトリフルオロエチレンの低重合物」であることが特定されたものとなった。
そこで、HFE-356mmz及びパーフルオロポリエーテル化合物を混合させて使用することが周知であることを示すための甲4~甲10、HFEに対するパールフルオロポリエーテルの割合を溶液の用途に応じて適宜20質量%以上に調整することが一般的に行われていることであることを示すための甲11~甲15、及び、安定剤として不飽和アルコール系安定剤を使用することが本分野において周知技術であることを示すための甲16~甲19については、摘記を省略する。
(2)令和2年8月31日に公開された甲1には、次の記載がある。
「【請求項1】
パーフルオロポリエーテル基を有する化合物を溶解するための溶剤組成物であって、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)を含む溶剤組成物。」
「【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の溶剤組成物と、パーフルオロポリエーテル基を有する化合物とを含む、溶液。」
「【請求項8】
パーフルオロポリエーテル基を有する化合物を物品に塗布して塗膜を形成するための溶液である、請求項6または7に記載の溶液。
【請求項9】
請求項8に記載の溶液を物品に塗布し、次いで該物品から溶剤組成物を蒸発させて、該物品にパーフルオロポリエーテル基を有する化合物を含む塗膜を形成する方法。
【請求項10】
請求項1~4のいずれかに記載の溶剤組成物を用いて、パーフルオロポリエーテル基を有する化合物が付着した物品を洗浄する方法。」
「【0001】
本発明は、パーフルオロポリエーテル基(以下、「PFPE基」ともいう)を有する化合物を溶解するための溶剤組成物に関する。」
「【0007】
本発明は、地球環境への負荷が小さく、かつ、PFPE基を有する化合物を溶解したときに安定性に優れる溶液とすることのできる溶剤組成物を提供することを課題とする。
【0008】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)を含む組成物が、パーフルオロポリエーテル(PFPE)を十分に溶解し、洗浄剤、溶剤として優れていることを見出し、本発明を完成させた。」
「【0026】
(安定剤)
本溶剤組成物には、安定剤が含まれてもよい。安定剤が含まれることで、例えば、熱安定性、耐酸化性等を向上させることができる。例えば、本溶剤組成物において、安定剤は10質量%以下、3質量%以下、1質量%以下、0.1質量%以下含まれてもよい。この安定剤としては、例えば、ニトロ化合物、エポキシ化合物、フェノール類、イミダゾール類、アミン類、不飽和炭化水素類等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。」
「【0053】
本実施例において、PFPE基を有する化合物として、以下に示す市販のPFPE #1~PFPE #6のいずれかを使用した。
PFPE#1(Fomblin(登録商標)Y H VAC25/6(ソルベイ スペシャリティポリマー社製)): CF3-[(OCF(CF3)CF2)m-(OCF2)n]-OCF3で表される構造式を有するポリマー(数平均分子量3300)、
PFPE#2(Fomblin(登録商標)M15(ソルベイ スペシャリティポリマー社製)): CF3-[(OC2F4)p-(OCF2)q]-OCF3で表される構造式を有するポリマー(数平均分子量9700)、
PFPE#3(DEMNUM(登録商標)S-65(ダイキン工業社製)): F-(C3F6O)m-C2F5で表される構造式を有するポリマー(数平均分子量4500)、
PFPE#4(Fomblin(登録商標)Y25(ソルベイ スペシャリティポリマー社製)): CF3-[(OCF(CF3)CF2)m-(OCF2)n]-OCF3で表される構造式を有するポリマー(数平均分子量3700)、
PFPE#5(Fomblin(登録商標)Y L VAC06/6(ソルベイ スペシャリティポリマー社製)): CF3-[(OCF(CF3)CF2)m-(OCF2)n]-OCF3で表される構造式を有するポリマー(数平均分子量1800)、
PFPE#6(Krytox(登録商標)143AD(デュポン社製)): F-(C3F6O)m-C2F5で表される構造式を有するポリマー(数平均分子量7480)。
【0054】
<1.PFPE溶液の溶解安定性試験>
[実施例1~実施例16、比較例1~比較例15]
110mL硝子製スクリュー管瓶に溶剤38gを入れた後に、PFPE2gを入れ、十分に混合し均一な溶液とした。これを密閉状態、室温(20℃)、遮光下で保存し、0日後(PFPEと溶剤を混合した直後)、3日後、10日後の溶液の状態を目視で観察した。溶液が無色透明(濁りが無い)状態のものを「○」と評価し、わずかに濁りが生じた状態のものを「△」と評価し、明らかな着色、ゲル化の発生または二層分離が生じた状態のものを「×」と評価した。その結果を表1および表2に示す。
【表1】
[図:0001415249000001.jpg]
【表2】
[図:0001415249000002.jpg]
【0055】
実施例1~実施例16に示されるように、HFE-356mmz、HFE-356mmz/1233zd(Z)混合液、HFE-356mmz/HFC-365mfc混合液を溶剤として用いた場合には、3日後、10日後の溶液の状態はいずれも無色透明であった。一方で、比較例1~比較例15に示されるように、HFO類の一種である1233zd(Z)や、HFE類の一種である347pc-f、HFC類の一種であるHFC-365mfcを溶剤として用いた場合には、PFPEとの混合直後から二層分離した。
【0056】
全ての含フッ素化合物がPFPE基を有する化合物を溶解できるわけではない。一般的に、化合物中のフッ素原子の割合が高い溶剤は、PFPE基を有する化合物を溶解すると考えられている。しかしながら、上記の比較例が示すように、化合物中のフッ素原子の割合がより高いHFE-347pc-fを溶剤として用いた場合には、PFPE #1~PFPE #6を溶解できなかったのに対し、上記の実施例が示すように、化合物中のフッ素原子の割合がより低いHFE-356mmzやHFE-356mmzを含む混合液を溶剤として用いた場合には、PFPE #1~PFPE #6を溶解することができた。
【0057】
<2.塗布性、乾燥性評価試験>
[実施例17~実施例33]
PFPEと溶剤を混合して、0.5質量%PFPE溶液を調製した。このPFPE溶液をSUS316製テストピース上に塗布し、溶剤を風乾することにより、SUS316製テストピース表面に膜厚2nmのPFPE塗膜を形成した。得られた塗膜の状態を目視で確認した。塗膜にムラが見られなかったものを、塗布性が良好である(「〇」と表記)と評価した。また、塗膜の形成時にただちに溶剤が蒸発したものを、乾燥性が良好である(「〇」と表記)と評価した。その結果を表3に示す。
【表3】
[図:0001415249000003.jpg]
【0058】
<3.洗浄性試験>
[実施例34]
300mL硝子製ビーカーにPFPE #1を200g入れた。次に、SUS316製テストピース(30mm×15mm×2mm)1枚をPFPE #1中に完全に浸漬させた。このテストピースをPFPE #1中から取り出して目視で確認したところ、テストピース表面にはPFPE #1が付着していた。その後、500mL硝子製ビーカーにHFE-356mmzを200g入れ、前記PFPE #1が付着したSUSテストピースを完全に浸漬するように入れ、25℃2分間超音波洗浄(超音波発振器:Alex Corporation社製 ネオソニック、出力100W、周波数28kHz)した。その後、テストピースを取り出し、80℃で5分間乾燥した後、テストピースの表面を目視観察したところ、テストピース表面に汚れは確認されなかった。
【0059】
[実施例35]
HFE-356mmzの替わりに、HFE-356mmz/HFC-365mfc(質量比:60/40)混合溶剤を用いた以外は実施例34と同様の操作を行った。その結果、洗浄乾燥後のテストピース表面に汚れは確認されなかった。
【0060】
[実施例36]
HFE-356mmzの替わりに、HFE-356mmz/1233zd(Z)(質量比:50/50)混合溶剤を用いた以外は実施例34と同様の操作を行った。その結果、洗浄乾燥後のテストピース表面に汚れは確認されなかった。
【0061】
実施例34~実施例36により、HFE-356mmz、HFE-356mmzを含む混合液の良好なPFPE洗浄性が示された。」
(3)令和4年6月14日に申立人により請求され、同年同月23日に特許庁長官が発行した甲2には、本件出願の優先権主張の基礎となる出願である特願2020-146120号の出願日時について、次の記載がある。
「
[図:0001415249000004.jpg]
」
(4)令和4年6月9日の申立人からの問い合わせのEメールに対して、同日に送信された特許庁普及支援課公報企画班からの回答のEメールを印刷した甲3には、甲1の公開日時について、次の記載がある。
「
[図:0001415249000005.jpg]
」
(5)甲20の2頁右下欄5行~16行には、次の記載がある。
「本発明において用いられる固体潤滑剤としての含フッ素樹脂粉体としては、四フッ化エチレン、三フッ化塩化エチレン、六フッ化エチレンプロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、ニフッ化塩化エチレンまたはトリフルオロプロピルメチルシランなどの重合体あるいは塩化ビニルとの共重合体または四フッ化エチレンと六フッ化プロピレンの共重合体などの樹脂粉体が適宜用いられるが、特に四フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、四フッ化エチレンと六フッ化プロピレン共重合体が好ましく、樹脂の分子量や粉体の粒径は適宜選択できる。」
(6)甲21には、次の記載がある。
「【0034】
フッ素樹脂系固体潤滑剤としては、公知のフッ素樹脂系固体潤滑剤を使用することができる。その例としては、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化エチレンプロピレン樹脂、パーフロロアルコキシ樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニルなどが挙げられる。フッ素樹脂系固体潤滑剤は、その一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。」
(7)甲22には、次の記載がある。
「【0025】
[固体潤滑剤]
固体潤滑剤としては、上述したハイドロフルオロエーテル溶剤との溶解、分散性の観点から、また低摩擦係数を示すという観点から、フッ素樹脂潤滑剤であることが好ましい。
【0026】
具体的に、フッ素樹脂潤滑剤としては、例えは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フルオネートエチレンポリエチレン(FEP)、パーフルオロアルキル(PFA)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)等が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を併せて用いることができる。その中でも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いることが特に好ましい。」
(8)甲23には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、スポーツ装具、例えばスキーなどのウィンタースポーツ装具の滑走特性を改善するための作用物質、これを含有する組成物、およびこの目的のためのそれらの使用に関する。さらに詳細には、潤滑剤としてのポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)に関する。」
(9)甲24には、次の記載がある。
「【0017】
フッ素系潤滑剤としては、フッ素オイル、フッ素グリース、フッ素系固体潤滑剤(ポリテトラフルオロエチレンの粉末等)が挙げられる。
【0018】
フッ素オイルとしては、パーフルオロポリエーテル、クロロトリフルオロエチレンの低重合物が好ましい。
【0019】
フッ素オイルの市販品としては、たとえば、下記のものが挙げられる。
・デュポン社製の「クライトックス(登録商標)GPL102」。
・ダイキン工業社製の「ダイフロイル(登録商標)#1」、「ダイフロイル(登録商標)#3」、「ダイフロイル(登録商標)#10」、「ダイフロイル(登録商標)#20」、「ダイフロイル(登録商標)#50」、「ダイフロイル(登録商標)#100」、「デムナム(登録商標)S-65」。」
(10)甲25には、次の記載がある。
「【0059】
フッ素系潤滑剤としては、フッ素オイル、フッ素グリース、ポリテトラフルオロエチレンの樹脂粉末等のフッ素系固体潤滑剤が挙げられる。フッ素オイルとしては、パーフルオロポリエーテルやクロロトリフルオロエチレンの低重合物が好ましい。例えば、製品名「クライトックス(登録商標)GPL102」(デュポン株式会社製)、「ダイフロイル#1」、「ダイフロイル#3」、「ダイフロイル#10」、「ダイフロイル#20」、「ダイフロイル#50」、「ダイフロイル#100」、「デムナムS-65」(ダイキン工業株式会社製)等が挙げられる。フッ素グリースとしては、パーフルオロポリエーテルやクロロトリフルオロエチレンの低重合物等のフッ素オイルを基油として、ポリテトラフルオロエチレンの粉末やその他の増ちょう剤を配合したものが好ましい。・・・」
(11)甲26には、次の記載がある。
「【0057】
フッ素系潤滑剤としては、フッ素オイル、フッ素グリース、ポリテトラフルオロエチレンの樹脂粉末等のフッ素系固体潤滑剤が挙げられる。フッ素オイルとしては、パーフルオロポリエーテルやクロロトリフルオロエチレンの低重合物が好ましい。例えば、製品名「クライトックス(登録商標)GPL102」(デュポン株式会社製)、「ダイフロイル#1」、「ダイフロイル#3」、「ダイフロイル#10」、「ダイフロイル#20」、「ダイフロイル#50」、「ダイフロイル#100」、「デムナムS-65」(ダイキン工業株式会社製)等が挙げられる。フッ素グリースとしては、パーフルオロポリエーテルやクロロトリフルオロエチレンの低重合物等のフッ素オイルを基油として、ポリテトラフルオロエチレンの粉末やその他の増ちょう剤を配合したものが好ましい。・・・」
(12)甲27には、次の記載がある。
「【0024】
フルオロモノマーの重合は、公知の重合方法により行うことができ、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法等が挙げられるが、乳化重合法又は懸濁重合法により重合することが好ましく、懸濁重合法により重合することがより好ましい。」
「【0029】
上記フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、フッ化ビニリデン〔VdF〕、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、フッ化ビニル〔VF〕、へキサフルオロプロピレン〔HFP〕、へキサフルオロイソブテン〔HFIB〕、CH2=CX6(CF2)nX7(式中、X6はH又はF、X7はH、F又はCl、nは1~10の整数である。)で示される単量体、CF2=CF-ORf1(式中、Rf1は炭素数1~8のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕、CF2=CF-OCH2-Rf2(式中、Rf2は炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、及びヨウ素含有フッ素化ビニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種のフルオロモノマーに基づく重合単位を有することが好ましい。」
「【0055】
[実施例1]
内容積4Lのオートクレーブに蒸留水0.945Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)945gを仕込み、系内を29℃、攪拌速度580rpmに保った。その後、テトラフルオロエチレン(TFE)を110g、メタノールを2g仕込み、その後7H-ドデカフルオロヘプタノイルパーオキサイド/ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(CH3OCH(CF3)2)の8wt%溶液12gを投入して重合を開始した。2時間ごとに7H-ドデカフルオロヘプタノイルパーオキサイド/ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテルの8wt%溶液12gを投入し重合を継続した。重合の進行と共に系内圧力が低下するので、テトラフルオロエチレン(TFE)を連続して供給し、系内圧力を0.931MPaGに保った。そして、テトラフルオロエチレン(TFE)を合計量110g仕込み、6時間攪拌を継続した。そして、放圧して大気圧に戻した後、反応生成物を水洗、乾燥してフッ素樹脂(TFE/HFP共重合体)の粉末120gを得た。融点は263℃で、372℃で測定したMFRの値は20であった。」
第5 取消理由についての当審の判断
1 甲1に記載された発明
(1)甲1A発明
甲1(前記第4の4(2)参照。)の請求項1及び請求項6を引用する請求項8には、「パーフルオロポリエーテル基を有する化合物を溶解するための溶剤組成物であって、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)を含む溶剤組成物と、パーフルオロポリエーテル基を有する化合物とを含む溶液であって、パーフルオロポリエーテル基を有する化合物を物品に塗布して塗膜を形成するための溶液である溶液」が記載されている。
甲1の【0053】~【0054】には、実施例1として、HFE-356mmzの38gと、PFPE#1:CF3-[(OCF(CF3)CF2)m-(OCF2)n]-OCF3で表される構造式を有するポリマー(数平均分子量3300)の2gとを混合した溶剤組成物が記載されている。
してみると、甲1には、次の発明(以下「甲1A発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲1A発明)
「1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)を含む溶剤組成物と、パーフルオロポリエーテル基を有する化合物とを含む溶液であって、
当該溶液は、パーフルオロポリエーテル基を有する化合物を物品に塗布して塗膜を形成するための溶液である溶液であり、
溶剤組成物は、具体的には、HFE-356mmzの38gと、CF3-[(OCF(CF3)CF2)m-(OCF2)n]-OCF3で表される構造式を有するポリマー(数平均分子量3300)の2gとを混合した溶剤組成物である、溶液。」
(2)甲1B発明及び甲1C発明
甲1の請求項1を引用する請求項10には「パーフルオロポリエーテル基を有する化合物を溶解するための溶剤組成物であって、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)を含む溶剤組成物を用いて、パーフルオロポリエーテル基を有する化合物が付着した物品を洗浄する方法」が記載されている。
前記「溶剤組成物」は、「パーフルオロポリエーテル基を有する化合物を溶解するための」ものであり、「パーフルオロポリエーテル基を有する化合物が付着した物品を洗浄する」ものであるから、「パーフルオロポリエーテル基を有する化合物を溶解」し、「パーフルオロポリエーテル基を有する化合物が付着した物品を洗浄する」「溶剤組成物」であるともいえる。
してみると、甲1には、次の発明(以下「甲1B発明」及び「甲1C発明」という。また、甲1A発明~甲1C発明を総称して「甲1発明」ともいう。)が記載されているものと認められる。
(甲1B発明)
「1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)を含む溶剤組成物であって、
パーフルオロポリエーテル基を有する化合物を溶解し、パーフルオロポリエーテル基を有する化合物が付着した物品を洗浄する溶剤組成物。」
(甲1C発明)
「1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)を含む溶剤組成物を用いて、パーフルオロポリエーテル基を有する化合物を溶解し、パーフルオロポリエーテル基を有する化合物が付着した物品を洗浄する方法。」
2 本件出願の優先権主張の効果について
特許法第41条第2項には、優先権主張の効果について、「・・・前項の規定による優先権の主張を伴う特許出願に係る発明のうち、当該優先権の主張の基礎とされた先の出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面・・・に記載された発明・・・についての第二十九条・・・の規定の適用については、当該特許出願は、当該先の出願の時にされたものとみなす。・・・」と記載され、甲2(前記第4の4(3)参照。)には、前記「先の出願」(本件出願の優先権主張の基礎となる特願2020-146120号)の出願日時が2020年8月31日17時1分であることが記載されている。
これに対し、甲3(前記第4の4(4)参照。)には、2020年8月31日に発行した公開公報全体のアップロード時間が0時5分8秒であること、換言すると、甲1は、遅くとも2020年8月31日0時5分8秒には、公衆がダウンロード可能な状態にあったことが記載されている。
そうすると、遅くとも2020年8月31日0時5分8秒に公衆がダウンロード可能な状態にあった甲1は、2020年8月31日17時1分に出願されたものとみなされる本件出願よりも前に利用可能となったものといえる。
3 対比・判断
(1)本件訂正発明1
本件訂正発明1と甲1A発明を対比すると、甲1A発明の「1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)を含む溶剤組成物と、パーフルオロポリエーテル基を有する化合物とを含む溶液」は、本件訂正発明1の「(A)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)」「並びに(B)フッ素オイルを含み、前記フッ素オイルが、パーフルオロポリエーテル化合物」「である、組成物」に相当する。
してみると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「 (A)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)、並びに
(B)フッ素オイル
を含み、
前記フッ素オイルが、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びにクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物であり、
前記(A)が、
(a1)HFE-356mmz;
(a2)HFE-356mec;又は
(a3)HFE-356mmz及びHFE-356mec
である、
組成物。」
<相違点1>
(A)が、(a1)HFE-356mmzである場合に、本件訂正発明1は「前記フッ素オイルが、クロロトリフルオロエチレンの低重合物である」のに対し、甲1A発明は「パーフルオロポリエーテル基を有する化合物」である点。
相違点1について検討する。甲1A発明を認定した甲1の【0044】には、パーフルオロポリエーテル基を有する化合物について、「パーフルオロポリエーテルを含有するフッ素系潤滑剤は、パーフルオロポリエーテルとともに添加剤(例えば防錆剤等)が含まれたり、ポリテトラフルオロエチレン樹脂パウダー等のフッ素系固体潤滑剤と混合して使用されることもある。本溶剤組成物は、PFPE基を有する化合物を溶解するとともに、このような成分が存在する場合にも有用である。したがって、本発明においては、PFPE基を有する化合物が、パーフルオロポリエーテルとともにこのような成分を含有する組成物であっても適用できる。」と記載されているものの、混合して使用されるフッ素系固体潤滑剤の詳細については記載がない。
この点について、甲20(2頁右下欄5行~16行)には「固体潤滑剤としての含フッ素樹脂粉体としては・・・三フッ化塩化エチレン・・・などの重合体・・・が好ましく、樹脂の分子量や粉体の粒径は適宜選択できる」と記載され、甲21の【0034】には「フッ素樹脂系固体潤滑剤としては・・・ポリクロロトリフルオロエチレン・・・などが挙げられる」と記載され、甲22の【0025】には「フッ素樹脂潤滑剤としては・・・ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)・・・等が挙げられ」と記載され、甲23の【0001】等には「潤滑剤としてのポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)」が記載されているものの、これらのPCTFEは、あくまでも「固体潤滑剤」であって、PCTFEの低重合物ではないし、「HFE-356mmz」への溶解性についての記載や示唆もない。
そして、甲1A発明の「溶剤組成物」が「パーフルオロポリエーテル基を有する化合物を溶解するための溶剤組成物」であったことも考慮すれば、甲20~甲23の記載に触れた当業者が、フッ素系固体潤滑剤としてPCTFEが周知であることを認識したとしても、甲1A発明の組成物に、「パーフルオロポリエーテル基」を有せず、しかも、固体潤滑剤ともいえない「クロロトリフルオロエチレンの低重合物」を添加する動機付けを見いだすことはできない。
したがって、甲20~甲23の記載に基いて、甲1A発明の組成物に「クロロトリフルオロエチレンの低重合物」を添加することが容易であったとすることはできない。
また、甲24の【0008】及び【0018】には、溶剤であるHCFO-233zd(Z)にジアミン変性シリコーンオイルを添加した潤滑剤にさらに添加するフッ素オイルについて、「フッ素オイルとしては、パーフルオロポリエーテル、クロロトリフルオロエチレンの低重合物が好ましい」と記載され、同【0019】には、フッ素オイルの市販品として「ダイフロイル(登録商標)#20」が挙げられており、甲25の【0018】及び【0059】には、溶媒としてのHCFO-1223zaに添加するフッ素系潤滑剤として、「フッ素系潤滑剤としては・・・パーフルオロポリエーテルやクロロトリフルオロエチレンの低重合物が好ましい。例えば、製品名・・・「ダイフロイル#20」・・・等が挙げられる。」と記載され、甲26の【0008】及び【0057】には、HCFO-1233zd(Z)と、1214ya、HFE-7100及びHFE-7200からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒に添加するフッ素系潤滑剤として、「フッ素オイルとしては、パーフルオロポリエーテルやクロロトリフルオロエチレンの低重合物が好ましい。例えば、製品名・・・「ダイフロイル#20」・・・等が挙げられる。」と記載されているものの、溶媒として「HFE-356mmz」を用いることについては記載も示唆もされていない。
そして、甲1A発明の「溶剤組成物」が「パーフルオロポリエーテル基を有する化合物を溶解するための溶剤組成物」であったことも考慮すれば、甲24~甲26の記載に触れた当業者が、潤滑剤に添加するフッ素オイルとして、パーフルオロポリエーテルやPCTFEの低重合物が周知であることを認識したとしても、甲1A発明の組成物に、「パーフルオロポリエーテル基」を有せず、「HFE-356mmz」への溶解性も不明な「クロロトリフルオロエチレンの低重合物」を添加する動機付けを見いだすことはできない。
したがって、甲24~甲26の記載に基いて、甲1A発明の組成物に「クロロトリフルオロエチレンの低重合物」を添加することが容易であったとすることはできない。
また、甲27の【0055】には、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とテトラフルオロエチレン(TFE)の重合溶媒として「7H-ドデカフルオロヘプタノイルパーオキサイド/ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(当審注:HFE-356mmzと同義。)」を用いて、「反応生成物を水洗、乾燥してフッ素樹脂(TFE/HFPの共重合体)の粉末を得た」ことが記載され、同【0029】には「上記フルオロポリマーは・・・テトラフルオロエチレン・・・クロロトリフルオロエチレン・・・からなる群より選択される少なくとも1種のフルオロモノマーに基づく重合単位を有することが好ましい」と記載されているが、水洗可能な反応生成物が得られているということは、反応生成物は重合溶媒に溶解しておらず、固体として分離されるという意味であるから、甲27の記載事項は、HFE-356mmzにクロロトリフルオロエチレンの重合物が溶解しやすいことを示す証拠とはならない。
したがって、甲27の記載に基いて、甲1A発明の組成物に「クロロトリフルオロエチレンの低重合物」を添加することが容易であったとすることはできない。
さらに、前記第4の4(1)で述べたとおり、甲4~甲19には、「HFE-356mmz」と「クロロトリフルオロエチレンの低重合物」の関係を示唆する記載はないから、甲4~甲19に記載された事項によって、甲1A発明の組成物に「クロロトリフルオロエチレンの低重合物」を添加することが容易であったとすることもできない。
そうすると、本件訂正発明1は、甲1A発明及び甲1~甲27に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件訂正発明2、3及び7
本件訂正発明2、3及び7は、本件訂正発明1で特定される事項を全て含むものであるから、前記(1)と同じ理由により、本件訂正発明2は、甲1A発明及び甲1~甲27に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件訂正発明4
本件訂正発明4と甲1B発明を対比すると、甲1B発明の「パーフルオロポリエーテル基を有する化合物」は、本件発明4の「パーフルオロポリエーテル化合物」「である」「フッ素オイル」に相当する。
また、甲1B発明の「パーフルオロポリエーテル基を有する化合物を溶解し、パーフルオロポリエーテル基を有する化合物が付着した物品を洗浄する溶剤組成物」は、本件訂正発明4の「溶剤用組成物又は洗浄用組成物」に相当する。
してみると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「フッ素オイルを除去するための溶剤用組成物又は洗浄用組成物であって、
前記溶剤用組成物又は洗浄用組成物が、
(a1)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz);
(a2)1.1.2,3,3.3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec);又は
(a3)HFE-356mmz及びHFE-356mec
を含み、
前記フッ素オイルが、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びにクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物である、
溶剤用組成物又は洗浄用組成物。」
<相違点4>
溶剤用組成物又は洗浄用組成物が、(a1)HFE-356mmzを含む場合に、本件訂正発明4は「前記フッ素オイルが、クロロトリフルオロエチレンの低重合物である」のに対し、甲1B発明は「パーフルオロポリエーテル基を有する化合物」である点。
相違点4について検討する。前記(1)で検討したのと同じ理由により、甲4~甲27の記載に基いて、甲1B発明の組成物に「クロロトリフルオロエチレンの低重合物」を添加することが容易であったとすることはできない。
そうすると、本件訂正発明1は、甲1B発明及び甲1~甲27に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件訂正発明5
本件訂正発明5と甲1C発明を対比すると、甲1C発明の「パーフルオロポリエーテル基を有する化合物」は、本件訂正発明5の「パーフルオロポリエーテル化合物」「である」「フッ素オイル」に相当する。
また、甲1C発明の「パーフルオロポリエーテル基を有する化合物を溶解し、パーフルオロポリエーテル基を有する化合物が付着した物品を洗浄する方法」は、本件訂正発明5の「フッ素オイルを除去する、洗浄方法」に相当する。
してみると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「洗浄剤を用いて、フッ素オイルを除去する、洗浄方法であって、
前記洗浄剤が、
(a1)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz);
(a2)1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec);又は
(a3)HFE-356mmz及びHFE-356mec
を含み、
前記フッ素オイルが、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びにクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物である、
洗浄方法。」
<相違点5>
フッ素オイルが、(a1)HFE-356mmzを含む場合に、本件訂正発明5は「前記フッ素オイルが、クロロトリフルオロエチレンの低重合物である」のに対し、甲1C発明は「パーフルオロポリエーテル基を有する化合物」である点。
相違点5について検討する。前記(1)で検討したのと同じ理由により、甲4~甲27の記載に基いて、甲1C発明の組成物に「クロロトリフルオロエチレンの低重合物」を添加することが容易であったとすることはできない。
そうすると、本件訂正発明5は、甲1C発明及び甲1~甲27に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件訂正発明6
本件訂正発明6と甲1C発明を対比すると、甲1C発明の「パーフルオロポリエーテル基を有する化合物」は、本件訂正発明6の「パーフルオロポリエーテル化合物」「である」「フッ素オイル」に相当する。
また、甲1C発明の「パーフルオロポリエーテル基を有する化合物を溶解し、パーフルオロポリエーテル基を有する化合物が付着した物品を洗浄する方法」は、本件発明6の「フッ素オイルを溶解させる、溶解方法」に相当する。
してみると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「溶剤を用いて、フッ素オイルを溶解させる、溶解方法であって、
前記溶剤が、
(a1)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz);
(a2)1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec);又は
(a3)HFE-356mmz及びHFE-356mec
を含み、
前記フッ素オイルが、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びにクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物である、
溶解方法。」
<相違点6>
フッ素オイルが、(a1)HFE-356mmzを含む場合に、本件訂正発明6は「前記フッ素オイルが、クロロトリフルオロエチレンの低重合物である」のに対し、甲1C発明は「パーフルオロポリエーテル基を有する化合物」である点。
相違点6について検討する。前記(1)で検討したのと同じ理由により、甲4~甲27の記載に基いて、甲1C発明の組成物に「クロロトリフルオロエチレンの低重合物」を添加することが容易であったとすることはできない。
そうすると、本件訂正発明6は、甲1C発明及び甲1~甲27に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)小括
よって、本件訂正発明1~7は、甲1発明ではなく、また、甲1発明及び甲1~甲27に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
第6 取消理由で採用しなかった異議申立理由(前記第4の1(3)申立理由3(サポート要件))についての当審の判断
申立人は、サポート要件違反について、特許異議申立書の24頁2行~13行において、本件訂正発明1はHFE-356mmz及びHFE-356mecの両方を含む態様を含むものであるが、HFE-356mmz及びHFE-356mecの両方を使用した実施例は一例もなく、HFE-356mmz又はHFE-356mecを単独で使用した場合のフッ素オイルに対する溶解性等は示されているものの、両化合物を混合した場合に、フッ素オイルに対してどの程度の溶解特性を示すことができるかは自明であるとはいえないから、サポート要件を満たすものではないとの趣旨の主張をしている。
しかしながら、実施例において、HFE-356mmz又はHFE-356mecを単独で使用した場合のフッ素オイルに対する溶解性等が示されており、HFE-356mmzとHFE-356mecを混合した場合に化学反応が生じることも知られていないことを考慮すれば、HFE-356mmz及びHFE-356mecの両方を使用した場合のフッ素オイルに対する溶解性等は、前記したHFE-356mmz又はHFE-356mecを単独で使用した場合の溶解性等から推測できるものであって、本件特許の明細書の【00060】の「本開示は、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)、並びに、フッ素オイルを含む新規な組成物を提供すること」との課題を解決できないものではない。
そうすると、本件訂正発明に係る特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないものとはいえない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、本件訂正後の請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他にこれらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701121