特許異議申立
2022-701077
ホットメルト接着剤組成物
- 審判番号
- 2022-701077
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-535622
- 登録番号
- 7066854
- 請求日
- 2022年11月02日
- 審決日
- 2023年02月15日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】エルジー・ケム・リミテッド
- 【権利者代理人】実広 信哉
- 【権利者代理人】渡部 崇
- 【異議申立人】齊藤 整
- 審判長/審判官
- 審判長 門前 浩一
- 審判官 瀬下 浩一
- 審判官 関根 裕
- 分類
- P1651.121-Y (C09J) / P1651.537-Y (C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7066854号発明「ホットメルト接着剤組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7066854号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7066854号の請求項1~11に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)12月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年12月27日 (KR)韓国)を国際出願日とする出願であって、令和4年5月2日にその特許権の設定登録がされ、同年同月13日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~11に係る特許に対し、同年11月2日に特許異議申立人 齊藤 整(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件特許発明
特許第7066854号の請求項1~11に係る発明(以下「本件特許発明1」~「本件本件発明11」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
A1)
a1)スチレン系単位の含有量が30~50重量%であり、
a2)ジブロック含有量が55重量%以上であり、
a3)ASTM D1238基準により測定された190℃/5kgでの溶融流れ指数が30g/10min以上である、スチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体;
A2)
a21)スチレン系単位の含有量が30~50重量%であり、
a22)ジブロック含有量(Diblock Content)が5重量%未満であり、 a23)ASTM D1238基準により測定された190℃/5kgでの溶融流れ指数が30~50g/10minである、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体;
B)粘着付与剤;および
C)可塑性オイルを含み;
ASTM D36基準により測定された軟化点が85℃以上である、ホットメルト接着剤組成物。
【請求項2】
140℃で溶融粘度が6500cPs以下であり、160℃で粘度変化率が15%以下である、請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項3】
ASTM D638基準による試験片の製造時、引張強度値が1N/mm2以上である、請求項1または2に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項4】
前記スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体は、前記スチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体100重量部に対して、1~30重量部で含まれる、請求項1~3のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項5】
前記粘着付与剤は、
少なくとも一部が水素化されたロジンエステル系化合物および少なくとも一部が水素化されたジシクロペンタジエン系重合石油樹脂のうちのいずれか1つ以上を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項6】
前記粘着付与剤は、前記スチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体およびスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体100重量部に対して、200~400重量部で含まれる、請求項1~5のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項7】
前記可塑性オイルは、石油系鉱物油を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項8】
前記可塑性オイルは、前記スチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体およびスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体100重量部に対して、50~150重量部で含まれる、請求項1~7のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項9】
基材;および
前記基材の少なくとも一面に形成され、請求項1~8のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物によって形成される、接着層を含む、接着部材。
【請求項10】
前記接着層の厚さは、10~100μmである、請求項9に記載の接着部材。
【請求項11】
ASTM D1876基準による、T-剥離強度値が3.9N/cm以上である、請求項9または10に記載の接着部材。」
第3 申立理由の概要
1 理由1(進歩性)本件特許の請求項1~11に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(甲第1号証~甲第8号証)に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
甲第1号証:特表2017-503069号公報
甲第2号証:特開2004-137297号公報
甲第3号証:特表2014-508832号公報
甲第4号証:特開2016-153448号公報
甲第5号証:クレイトンD1162 クレイトンポリマー社製 データドキュメント 2021年6月16日(クレイトンポリマー社:全2頁:
https://kraton.com/products/pdsDocs/polymer/D1162P.pdf)
甲第6号証:アサプレンT438 旭化成ケミカルズ社製 製品情報(旭化成ケミカルズ社:全2頁:
https://www.akelastomer.com/products/p_s_b_elastomer/t438/)
甲第7号証:アサプレンT439 旭化成ケミカルズ社製 製品情報(旭化成ケミカルズ社:全2頁:
https://www.akelastomer.com/products/p_s_b_elastomer/t439/)
甲第8号証:エスコレッツ5637 ExxonMobil社製 製品情報
(ExxonMobi1社:全2頁:
https://www.exxonmobilchemical.com/en/chemicals/webapi/dps/vl/datasheets/150000000166/0/en)
2 理由2(サポート要件)本件特許の請求項1~11の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
・請求項1~11について
発明の詳細な説明には、「発明が解決しようとする課題」の項に、「低粘度特性を有することによって、相対的に低い温度で溶融加工が可能で、工程性を改善できながらも、接着力および耐熱性に優れ、硬化後の機械的物性にも優れたホットメルト接着剤を提供しようとする。」と、記載されている。
しかし、発明の詳細な説明において、当咳課題を解決することができることを具体的に検討し、実証しているのは、以下の場合のみである。
Al)スチレン含有量が「44.5~45重量%」、ASTM D1238基準により測定された190℃/5kgでの溶融流れ指数が「46.3~46.9g/l0min」、ジプロック含有量が「62~63重量%」であるSBSを「25重量部」含有し、
A2)スチレン含有量が「44重量%」、ASTM D1238基準により測定された190℃/5kgでの溶融流れ指数が「40g/10min」、ジブロック含有量が「~0重量%」であるSISを「5重量部」含有し、
B)粘着付与剤が「水添ジシクロペンタジェン系重合石油樹脂」を「55重量部」含有し、
C)可塑性オイルが「white mineral oil」を「14重量部」含有する。
そうすると、特定のSBSを25重量部と、特定のSISを5重量部と、特定の粘着付与剤を55重量部と、特定の可塑性オイルを14重量部とを用いた場合に、上記課題を解決することができたという内容を、このような特定がされていない請求項1~11記載された発明の範囲にまで拡張乃至一般化することはできない。
第4 理由1(進歩性)について
1 甲号証について
前記第3 1に記載のとおり。
2 甲号証の記載について
(1)甲第1号証(以下、「甲1」という。)
1a「【請求項1】
以下の成分を含むホットメルト接着剤組成物:
(a) 30重量%を超えるスチレン含量および30重量%を超えるジブロック含量を有するスチレン-ブタジエン-スチレンブロックポリマーを含む、約2~約25重量%の第1のスチレン系ブロックコポリマー;
(b) 第1のスチレン系ブロックコポリマーよりも低いジブロック含量を有するイソプレン中間ブロックまたはブタジエン中間ブロックのいずれかを有することができる、約2~約25重量%の第2のスチレン系ブロックコポリマー;
(c) 第1および第2のスチレン系ブロックコポリマーの合計量よりも多い量で存在する、約25~約60重量%の粘着付与樹脂;
(d) 約0~約15重量%の芳香族末端ブロック強化用樹脂;
(e) 約15~約50重量%の液体可塑剤;および
(f) 約0~約5重量%の安定剤または酸化防止剤。」
1b「【0001】
本発明は、感圧ホットメルト接着剤、特に、綿、ナイロンおよびマイクロファイバー基材上で改善された剥離値を有する、女性用衛生パッド(生理用ナプキン)または成人用失禁製品で使用するためのホットメルトポジショニング接着剤に関する。」
1c「【0018】
さらに別の局面において、第2のスチレン系ブロックコポリマーは、約2~約25重量%、好ましくは約5~約20重量%、最も好ましくは約8~約16重量%の量で存在する。該ポリマーの中間ブロックは、ブタジエン、イソプレン、またはブタジエン/イソプレンであり得るが、好ましくは、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ポリマーである。該ポリマーのスチレン含量は、好ましくは15~30重量%、より好ましくは15~25重量%、または15~20重量%である。ジブロックが該ポリマー中に存在する場合、それは50重量%未満に維持されるべきである。より好ましくは、ジブロックは40重量%未満、最も好ましくは30重量%未満に維持されるべきである。第2のスチレン系ブロックコポリマーは、ASTM D1238(190℃/5kg)を用いて、好ましくは約5g/10分を超える、より好ましくは約8g/10分を超える、最も好ましくは約10g/10分を超えるメルトインデックスを有する。
【0019】
さらに別の局面において、粘着付与樹脂は、脂肪族および脂環式石油炭化水素樹脂、水素化脂肪族および脂環式炭化水素樹脂、水素化芳香族石油炭化水素樹脂、脂肪族/芳香族石油炭化水素樹脂、水素化脂肪族/芳香族石油炭化水素樹脂、芳香族変性脂環式樹脂、および水素化芳香族変性脂環式樹脂から選択される。粘着付与樹脂は、100℃を超える、より好ましくは115℃より高い、さらに好ましくは125℃より高い環球式軟化点(Ring & Ball Softening Point)を有し、約25~約60重量%の範囲で存在する。
【0020】
さらに別の局面において、末端ブロック強化用樹脂は、約0%または約0.5%~約15%、好ましくは約0%または約0.5%~約10%、最も好ましくは約0%または約0.5%~約5%の量で存在することができる。
【0021】
さらに別の局面において、可塑剤は約15~約50重量%の量で、好ましくは約20~約45重量%の量で、より好ましくは約25~約40重量%の量で存在する。好ましい可塑剤は液体の鉱物油である。」
1d「【0028】
本発明の目的のために、高スチレン高ジブロックのスチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ポリマーを含む第1のスチレン系ブロックコポリマーは、約2~約25重量%、好ましくは約5~約20重量%、最も好ましくは約8~約16重量%の量で存在する。そのスチレン含量は、好ましくは30重量%超、より好ましくは33重量%超、最も好ましくは35重量%超である。ジブロック含量は、低温でかつマイクロファイバー基材上で必要とされる高い剥離強度を促進するために、かなり高くなければならない。それは30重量%超、より好ましくは45重量%超、最も好ましくは60重量%超であるべきである。該スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ポリマーは、約5g/10分を超える、より好ましくは約8g/10分を超えるメルトインデックスを有する。
・・・
【0032】
本発明の目的のために、第2のスチレン系ブロックコポリマー、好ましくはスチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ポリマーは、約2~約25重量%、好ましくは約5~約20重量%、最も好ましくは約8~約16重量%の量で存在する。そのスチレン含量は、好ましくは15~30重量%、より好ましくは15~25重量%、最も好ましくは15~18重量%である。ジブロックが該ポリマー中に存在する場合、それは50重量%未満、より好ましくは30重量%未満、最も好ましくは18重量%未満に維持されるべきである。スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ポリマーは、ASTM 1238(190℃/5kg)を用いて、好ましくは約5g/10分を超える、より好ましくは約8g/10分を超えるメルトインデックスを有する。また、スチレン-ブタジエン-スチレンポリマーを第2のポリマーとして使用することもできる。しかし、SBSポリマーの合計量が配合物中で増加するにつれて、完成した接着剤配合物はあまり熱的に安定でなくなる可能性が生じる。高レベルのSBSポリマーを含むホットメルト接着剤は、長期の熱老化(heat aging)後に、例えば350°Fで100時間後に、架橋してゲル化することがある。これが発生する可能性を最小限にとどめるために、適切な酸化防止剤系を確保するように注意する必要がある。また、特定の水素化スチレン系ブロックコポリマーを使用することができるが、完成した接着剤配合物が完全に相溶性であることを確実にするよう注意しなければならない。
・・・
【0037】
本発明によるホットメルト配合物はまた、重量基準で、約15%~約50%、好ましくは約20%~約45%、最も好ましくは約25%~約40%の任意の可塑剤を含有し、その可塑剤は周囲温度で液体である。可塑剤は、押し出し性、柔軟性、加工性、またはストレッチ性を向上させるためにゴムおよび他の樹脂に添加することができる、典型的には有機の組成物として広く定義される。適切な可塑剤は、鉱物油などの通常の可塑化オイルだけでなく、オレフィンオリゴマーおよび低分子量ポリマー、グリコールベンゾアート、ならびに植物油、動物油およびこのような油の誘導体をも含むグループから選択することができる。使用できる石油系の油は、わずかな割合の芳香族炭化水素を含有する比較的高沸点の物質である。これに関して、芳香族炭化水素は、重量基準で、好ましくは該油の30%未満、より好ましくは15%未満であるべきである。好ましくは、該油は全体的に非芳香族であり、かつ重度に水素化処理されていてよい。」
1e「【0043】
以下の材料を使用した:
1) Nyflex 222Bは、Nynas社から入手可能な、重度に水素化処理されたナフテン系プロセス油である。
2) Escorez 5615は、約118℃の環球式軟化点を有する水素化芳香族変性脂環式炭化水素樹脂である。これはExxonMobil Chemical社から入手可能である。
3) Escorez 5637は、約130℃の環球式軟化点を有する水素化芳香族変性脂環式炭化水素樹脂である。これはExxonMobil Chemical社から入手可能である。
4) Eastotac H-142Rは、約142℃の環球式軟化点および4の溶融ガードナー色(molten Gardner color)を有する水素化炭化水素樹脂である。これはEastman Chemical社から入手可能である。
5) Plastolyn 290は、約140℃の軟化点を有する末端ブロック強化用樹脂である。これはEastman Chemical社から入手可能である。
6) Vector 4111Aは、スチレン含量が18重量%で、ジブロック含量が実質的にゼロである、線状スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロックコポリマーである。これは、200℃/5kgでASTM D-1238により測定して、12g/10分のメルトインデックスを有する。この材料はTRSC社のDexco Polymerから入手可能である。
7) Vector 4114Aは、スチレン含量が15重量%で、ジブロック含量が約42重量%である、線状スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロックコポリマーである。これは、200℃/5kgでASTM D-1238により測定して、25g/10分のメルトインデックスを有する。この材料はTRSC社のDexco Polymerから入手可能である。
8) Taipol 1307は、スチレン含量が16重量%で、ジブロック含量が約18重量%である、線状スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ブロックコポリマーである。これは、190℃/5kgで8g/10分のメルトインデックスを有する。この材料はTRSC社から入手可能である。
9) Taipol 3206は、スチレン含量が29重量%で、ジブロック含量が約18重量%である、線状スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ブロックコポリマーである。これは、190℃/5kgで5.5g/10分のメルトインデックスを有する。この材料はTRSC社から入手可能である。
10) Taipol 4265は、スチレン含量が36重量%で、ジブロック含量が約65重量%である、線状スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ブロックコポリマーである。これは、190℃/5kgで12g/10分のメルトインデックス、および約360センチポアズの溶液粘度(トルエン中25重量%)を有する。この材料はTRSC社から入手可能である。
11) Globalprene 3545は、スチレン含量が45重量%で、ジブロック含量が約63重量%である、線状スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ブロックコポリマーである。これは、190℃/5kgで50g/45分のメルトインデックス、および約150センチポアズの溶液粘度(トルエン中25重量%)を有する。この材料はLCY Elastomers LPから入手可能である。
12) Kraton D1124は、スチレン含量が30重量%で、ジブロック含量が約29重量%である、放射状スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロックコポリマーである。これは、200℃/5kgでASTM D-1238により測定して、4g/10分のメルトインデックスを有する。この材料はKraton Performance Polymers社から入手可能である。
13) Irganox 1010は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤である。これはBASF社から入手可能である。
【0044】
機器による特性評価
ブルックフィールド粘度は、ASTM D-3236の方法に従って試験し、センチポアズ(cP)の単位で記録される。
【0045】
動的温度試験
所与のホットメルト接着剤のレオロジーは、TA Instruments社のレオメータ、例えばAres 3モデル、を用いて測定することができる。以下の表に示した接着剤では、温度段階法を用いて、さまざまな温度での貯蔵弾性率G'ならびにガラス転移温度Tgを測定した。機器を10ラジアン毎秒の周波数に設定し、温度を+140℃から-40℃まで変化させた。使用したパラレルプレートは、25mmの直径および1.6mmのギャップを有していた。
【0046】
本発明に記載の新規な接着剤配合物のレオロジー分析は、20℃から92℃まで明らかなゴム状平坦域を示し、さまざまな量のジブロックが配合物中に取り込まれているにもかかわらず、強力な弾性応答を与える。従来の低スチレン-ブタジエン(SB)ジブロックポリマー、例えばSolprene 1205など、の少量の添加は、高温クロスオーバー値(Tx)の大幅な低下に現れ、40℃で接着剤の移りをもたらす。本発明の目的のためには、ガラス転移温度(Tg)は、好ましくは15℃以下、より好ましくは10℃以下、最も好ましくは5℃以下である。これは、表2に示した従来のパッド取付け用製品よりも強力な低温下剥離強度を与える製品を提供する。
【0047】
試験方法
低温剥離接着試験
綿、ナイロンまたはPelicanoを問わず、横(幅)方向に生地の最大の伸縮性を有する、4.75インチ×2インチ[12.05cm×5.08cm]の生地のストリップを切り出す。ポリまたは不織布/接着剤/剥離ライナー積層の5インチ[12.70cm]長のストリップを切り出す。生地サンプルおよび接着剤コーティングしたポリを5℃で少なくとも4時間平衡化させる。この温度で、4.5ポンド[2.04kg]のゴム製ローラーを2回(前後に)通過させて合体させる。
【0048】
5つのサンプルの製造後、可能な限り迅速に剥離接着試験を実施する必要がある。この試験プロトコルは、Instronを環境室に取り付けることによって、さまざまな環境条件で行うことができる。このInstronは、張力、圧縮、曲げ、疲労、衝撃、ねじり、および硬さ試験により材料および部品の機械的特性を評価するために使用される、較正されたマシンである。Instronの固定具(jaw)間隔を2インチ[5.08cm]に設定する。クロスヘッド変位速度は20インチ[50.8cm]/分である。ポリ/剥離ライナー端を上固定具に、綿生地端を下固定具に置く。ナイロンまたはマイクロファイバー基材上での試験が望まれる場合には、ナイロンまたはマイクロファイバー基材を綿生地の代わりに使用して、Instronの下固定具に配置する必要がある。試験片が上固定具と下固定具の間に均一な距離で配置されるように注意を払うべきである。5つのサンプルの平均剥離値を測定して記録する。
【0049】
使用中の剥離試験
生地とホットメルト接着剤の積層は、剥離接着試験プロトコルと同様の方法で製造される。剥離ライナーをはがし、約2.5インチ[6.35cm]の接着剤コーティングした素材をそれ自体に折り重ねる。生地と接着剤コーティングした素材を、生地自体の重さ以外の追加の圧力をかけることなく、一緒に合わせる。試験サンプルを(生地面を上にして)アルミニウムプレートの上に置く。各サンプルの上に250gの真鍮製ブロック(2インチ×2インチ)を慎重に置く。アルミニウムプレートと250gの真鍮製ブロックは、オーブン試験温度で予め状態調整されていることに留意することが重要である。
【0050】
サンプルを置いたアルミニウムプレートを105°F±3°F[41℃±1.5℃]のオーブンに16時間入れる。16時間後、オーブンからプレートを取り出し、重りを取り除き、剥離値試験のためにサンプルを残しておく。冷却期間中にサンプルを積層してはならないことに留意することが重要である。Instron剥離試験を開始する前に、サンプルが室温へと平衡化するまで45分間待つ。最大平衡時間は2時間である。
【0051】
Instronの設定は、低温剥離試験プロトコルの場合と同じやり方である。5つのサンプルの平均剥離値、接着剤移りの発生、基材破損の結果、またはこれらのいずれかの組み合わせを記録することができる。試験プロトコルは、必要に応じて、繰り返すことが可能である。
【0052】
伸び試験
綿、ナイロンまたはマイクロファイバーを問わず、横(幅)方向に生地の最大の伸縮性を有する、4.75インチ×1インチ[12.05cm×2.54cm]の生地のストリップを切り出す。油性マーカーペンを用いて、生地ストリップ上の1インチの正方形の領域を塗りつぶす。木製撹拌棒の1インチ[2.54cm]部分を切り取り、その周囲に生地の一端を巻き、それを一緒にホチキスで留める。完成したら、ダブルクリップ(alligator clip)を用いて、木製撹拌棒のない生地端を静的剪断ステーションに固定する。次に、生地にホチキス留めした木製撹拌棒を有する端部に追加のバインダークリップを配置し、500グラムの重りを取り付ける。生地にホチキス留めした木製撹拌棒を取り入れることは、ダブルクリップが負荷の下で外れるのを防止するのに役立つであろう。生地をぶら下げた後、1インチの正方形の領域が負荷の下に置かれたときに拡張した伸びを測定する。その後、これら2つの測定値間の差を求めてから、その差を元の1インチで割って試験中の生地の伸び率を決定する。
【0053】
性能評価
本発明に記載の新規な接着剤配合物の結合評価は、5℃で従来のパッド取付け用接着剤と比べて増加した剥離値を実証する。5℃での剥離強度の増加は、40℃での接着剤移りの犠牲の上に成り立っていない。表1は、スチレン系ブロックコポリマー類、粘着付与樹脂、および鉱物油のブレンドから成るいくつかの配合物を示している。物理的特性、選択されたレオロジーデータ、5℃での剥離値、および接着剤の移りに関するデータが含まれている。
【0054】
表2には、4つの先行技術の製品がそれらの物理的特性と共に示されている。H2850は、可塑剤オイル含量が高い、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ポリマーを利用する汎用の感圧接着剤(PSA)である。H20080は、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ポリマーとスチレン-ブタジエン-スチレンポリマーの両方を取り入れた汎用のPSAである。H5400は、スチレン-エチレン/ブタジエン-スチレン(SEBS)ベースのパッド取付け用接着剤の例を提供する。H20028は、SISポリマーのブレンドから構成されるパッド取付け用接着剤である。H2850、H20080、H5400およびH20028は、ウィスコンシン州Wauwatosa所在のBostik社から現在市販されている。
【0055】
表3は、剥離試験で使用した基材の異なる伸び特性を詳述している。
【0056】
【表1】
[図:0001395250000001.jpg]
」
(2)甲第2号証(以下。「甲2」という。)
2a「【請求項1】
(I)成分:ブロック共重合体、(II)成分:粘着付与剤及び(III)成分:可塑剤を含んで成るホットメルト接着剤であって、
(I)成分:ブロック共重合体は、スチレン含有率が35~50重量%、スチレン-ブタジエンジブロック含有率が50~80重量%、15重量%トルエン溶液の25℃での粘度が20~40mPa・sである(A)スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体を、30重量%以上含んで成り、
(I)、(II)、及び(III)成分の総和に対して、(I)成分が17~30重量%含まれるホットメルト接着剤。」
2b「【0034】
本発明において「メルトフローレイト(MFR)」とは、ASTM D 1238のG条件(200℃、5.0kgの荷重)で測定して得られる値をいう。「MFR」は、60~140g/10minであることが好ましく、70~120g/10minであることがより好ましく、80~100g/10minであることが特に好ましい。
・・・
【0060】
また、本発明に係るホットメルト接着剤は、実施例において記載する剥離強度の評価方法による剥離強度が、900gf/inch(8.8N/2.54cm)以上であることが好ましく、1000gf/inch(9.8N/2.54cm)であることがより好ましい。」
2c「【0066】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
尚、実施例の記載において、特に記載がない限り、溶媒を考慮しない部分を、重量部及び重量%の基準としている。
【0067】
実施例において使用した、(I)~(IV)成分を以下に示す。
(I)成分に含まれる(A)として、(A1)旭化成工業(株)製のアサプレンJT96(商品名)(スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、15重量%のトルエン溶液の25℃における粘度:28mPa・s、スチレン含有率:43重量%、ジブロック含有率:63重量%、1,2-ブタジエニルの形態の含有率:約14重量%、メルトフローレイト:約100g/10min)を用いた。
【0068】
尚、「1,2-ブタジエニルの形態の含有率」とは、下記化学式(1)で示される化学構造が(A)成分に含まれる割合をいう。
【化3】
化学式(1):-CH2-CH(CH=CH2)-
【0069】
(B)として、下記のブロック共重合体を用いた:
(B1)旭化成工業(株)製のアサプレンT436(商品名)(スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、15重量%のトルエン溶液の25℃における粘度:110mPa・s、スチレン含有率:30重量%、ジブロック含有率:50重量%、1,2-ブタジエニル形態の含有率:約14重量%、MFR:6g/10min);
(B2)日本合成ゴム(株)製のTR2003(商品名)(スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、15重量%のトルエン溶液の25℃における粘度:75mPa・s、スチレン含有率:43重量%、ジブロック含有率:10重量%、1,2-ブタジエニル形態の含有率:約20重量%、MFR:18g/10min);
(B3)日本合成ゴム(株)製のTR2600(商品名)(スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、15重量%のトルエン溶液の25℃における粘度:58mPa・s、スチレン含有率:32重量%、ジブロック含有率:70重量%、1,2-ブタジエニル形態の含有率:約13重量%、MFR:40g/10min);
(B4)ファイヤーストン社製のステレオン857(商品名)(スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、15重量%のトルエン溶液の25℃における粘度:48mPa・s、スチレン含有率:44重量%、ジブロック含有率:約10重量%以下、1,2-ブタジエニル形態の含有率:約57重量%、MFR:13g/10min);
(B5)ファイヤーストン社製のステレオン841A(商品名)(スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、15重量%のトルエン溶液の25℃における粘度:85mPa・s、スチレン含有率:44重量%、ジブロック含有率:0重量%、1,2-ブタジエニル形態の含有率:約13重量%、MFR:12g/10min);
(B6)クレイトンポリマー社製のクレイトンD1118(商品名)(スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、15重量%のトルエン溶液の25℃における粘度:75mPa・s、スチレン含有率:31重量%、ジブロック含有率:80重量%、1,2-ブタジエニル形態の含有率:約13重量%、MFR:10g/10min);及び
(B7)デキシコ社製のベクター4411D(商品名)(スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、15重量%のトルエン溶液の25℃における粘度:30mPa・s
、スチレン含有率:44重量%、ジブロック含有率:0重量%、MFR:40g/10min)。
【0070】
(II)成分として、(C1)トーネックス社製のECR5600(商品名)(石油系粘着付与樹脂)、(C2)丸善石油化学社製のマルカクリヤーH(商品名)(石油系液状粘着付与樹脂)、及び(C3)安原化学社製のクリアロンK100(商品名)(水素添加テルペン系樹脂)を用いた。
【0071】
(III)成分として、(D1)Kukdon Oil&Chem社製のLP350(商品名)(パラフィンオイル)及び(D2)出光興産社製のダイアナフレシアS32(商品名)(パラフィンオイル)を使用した。
【0072】
(IV)成分として、(E1)住友化学工業(株)製のスミライザーGM(商品名)(フェノール系1次酸化防止剤)、(E2)住友化学工業(株)製のスミライザーTPD(商品名)(硫黄系2次酸化防止剤)、(E3)チバスペシャリティーケミカル社製のイルガノックス1010(商品名)(フェノール系1次酸化防止剤)及び(E4)城北化学社製のJF77(商品名)(紫外線吸収剤)を使用した。
【0073】
(A)及び(B)の15重量%トルエン溶液の25℃での粘度は、ブルックフィールドBM型粘度計(スピンドルNo.2)を用いて25℃で測定した。メルトフローレイトは、ASTM D 1238のG条件で測定した。
【0074】
実施例1~8及び比較例1~8のホットメルト接着剤の作製
下記の表1及び表2に示す成分を同表に示す割合で配合し、約150℃で溶融混合して実施例1~8及び比較例1~8のホットメルト接着剤を作製した。
【0075】
【表1】
[図:0001395250000002.jpg]
a)各成分の単位は、重量部である。
【0076】
【表2】
[図:0001395250000003.jpg]
a)各成分の単位は、重量部である。」
(3)甲第3号証(以下、「甲3」という。)
3a「【請求項1】
(a)ASTM D1238によって測定される33より大きいメルトフローインデックスおよび40%より大きいスチレン含有量を有する、少なくともひとつのスチレンブロックコポリマー、ならびに
(b)ワックス
を含み、
120℃で約8,500センチポワズ未満の粘度を有する、低塗布温度ホットメルト接着剤。
・・・
【請求項10】
スチレンブロックコポリマーが、スチレン-イソプレン-スチレン、スチレン-ブタジエン-スチレンまたはそれらの混合物である、請求項1に記載の低塗布温度ホットメルト接着剤。」
3b「【0056】
<実施例1>
下の表1aは、本発明の3つの異なる組成物(すなわち、試料1~3)および参照組成物(すなわち、参照A)についての構成成分の重量%を示す。とりわけ、本発明による3つの異なる組成物とは対照的に、参照Aの組成物はワックスを全く含まない。
【0057】
【表1】
[図:0001395250000004.jpg]
・・・
【0061】
<実施例2>
下の表2aは、本発明の組成物(すなわち、試料2)および2つの参照組成物(すなわち、参照BおよびC)について、構成成分の重量%を示す。とりわけ、本発明の試料2と対照的に、参照BおよびCの組成物は40%未満のスチレン含有量および33未満のメルトフローインデックスを有するスチレン系樹脂を含む。
【0062】
【表3】
[図:0001395250000005.jpg]
」
(4)甲第4号証(以下、「甲4」という。)
4a「【請求項1】
(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物とのブロック共重合体である熱可塑性ブロック共重合体;及び
(B)カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物で変性された非晶性ワックス
を含む、ホットメルト接着剤。」
4b「【0058】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
尚、実施例の記載において、特に記載がない限り、溶媒を考慮しない部分を、重量部及び重量%の基準としている。
【0059】
本実施例で使用した成分を以下に示す。
(A)熱可塑性ブロック共重合体
(A1)トリブロック型スチレン-イソプレンブロック共重合体(クレイトンD1162(クレイトンポリマー社製) スチレン含有率44重量%、ジブロック含有率0重量%、25重量%トルエン溶液での25℃での溶融粘度(以下、「TV」という)120mPa・s)
(A2)トリブロック型スチレン-イソプレンブロック共重合体(ベクター4211A(デキシコ社製) スチレン含有率30重量%、ジブロック含有率0重量%、TV300mPa・s)
(A3)リニア型スチレン-イソプレンブロック共重合体(クインタック3433N(日本ゼオン社製) スチレン含有率16重量%、ジブロック含有率56重量%、TV810mPa・s)
(A4)リニア型スチレン-イソプレンブロック共重合体(クインタック3270(日本ゼオン社製) スチレン含有率24重量%、ジブロック含有率67重量%、TV20mPa・s)
(A5)トリブロック型スチレン-イソプレンブロック共重合体(TR-2000(JSR社製) スチレン含有率40重量%、ジブロック含有率0重量%、TV95mPa・s)
(A6)リニア型スチレン-イソプレンブロック共重合体(アサプレンT438(旭化成ケミカルズ社製) スチレン含有率38重量%、ジブロック含有率70重量%、TV360mPa・s)
(A7)リニア型スチレン-イソプレンブロック共重合体(アサプレンT439(旭化成ケミカルズ社製) スチレン含有率43重量%、ジブロック含有率60重量%、TV170mPa・s)
【0060】
(B)カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物で変性された非晶性ワックス
(B1)非晶性無水マレイン酸変性エチレンプロピレン共重合ワックス(リコセンPP MA1332TP(クラリアント社製) 酸価18mgKOH/g)
(B2’)結晶性無水マレイン酸変性ポリプロピレンワックス(リコセンPP MA6252(クラリアント社製) 融点140℃ 酸価40mgKOH/g)
(B3’)結晶性無水マレイン酸変性ポリエチレンワックス(ハイワックス(三井化学社製) 融点104℃ 酸価60mgKOH/g)
(B4’)結晶性カルボン酸変性ポリエチレンワックス(エクセレックス15341PA(三井化学社製) 融点89℃ 酸価14mgKOH/g)
(B5’)結晶性エチレン酢酸ビニル共重合ワックス(A-C400(ハネウェル社製) 酢酸ビニル含量13%、融点92℃)
【0061】
(C)粘着付与樹脂
(C1)水素添加型(水素化誘導体)粘着付与樹脂(ECR179EX(エクソン社製) 軟化点100℃)
(C2)水素添加型(水素化誘導体)粘着付与樹脂(アルコンM100(荒川化学工業社製) 軟化点100℃)
(C3)水素添加型(水素化誘導体)粘着付与樹脂(アイマーブS100N(出光興産社製) 軟化点100℃)
(C4)水素添加型(水素化誘導体)粘着付与樹脂(アイマーブP125(出光興産社製) 軟化点100℃)
(C5)マレイン酸変性粘着付与樹脂(CX495(日本ゼオン社製) 酸価1.8mgKOH/g)
(C6)テルペン系粘着付与樹脂(クリアロンK4100(ヤスハラケミカル社製) 軟化点100℃)
【0062】
(D)可塑剤
(D1)パラフィンオイル(ダイアネフレシスS-32(出光興産社製))
(D2)ナフテンオイル(サンピュア-N90(サン石油社製))
(D3)パラフィンオイル(ダフニーオイルKP-68(出光興産社製))
(D4)パラフィンオイル(ダイアネプロセスPW-90(出光興産社製))
【0063】
(E)安定化剤
(E1)フェノール系一次酸化防止剤(スミライザーGM(住友化学社製))
(E2)硫黄系2次酸化防止剤(スミライザーTPD(住友化学社製))
(E3)紫外線吸収剤(JF77(城北化学社製))
(E4)フェノール系一次酸化防止剤(イルガノックス1010(BASF社製)
(F)カルボキシル基を有する液状ゴム
(F1)カルボキシル基を有する液状ポリイソプレン(LIR-410(クラレ社製))
【0064】
これらの成分を表1及び2に示す配合割合で配合し、約150℃で約3時間かけて万能攪拌機を用いて溶融混合し、実施例1~5及び比較例1~8のホットメルト接着剤を製造した。
上述のホットメルト接着剤の各々について、溶融粘度(塗工性)、オメガ塗工適性、湿潤時耐クリープ性、臭気、ループタック(初期粘着力)及び剥離強度(ポリエチレンフィルムに関する)を、下記の方法で測定し、評価した。結果を表1及び2に示す。
【0065】
<溶融粘度(塗工性評価)>
溶融粘度は、ホットメルト接着剤を加熱して溶融して、140℃及び150℃において、溶融状態の粘度を、ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.27)およびサーモセルを用いて測定した。各温度での塗工性を粘度の値を用いて評価した、評価基準を以下に示す。
溶融温度140℃(140℃での塗工性)
◎:5,000mPa・s以下
○:5,000mPa・sより大きく、8,000mPa・s以下
×:8,000mPa・sより大きい
溶融温度150℃(150℃での塗工性)
◎:3,500mPa・s以下
○:3,000mPa・sより大きく、5,000mPa・s以下
×:5,000mPa・sより大きい
【0066】
<オメガ塗工適性>
厚さが12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、オメガスプレーでホットメルト接着剤を150℃の温度で塗布して塗工適性を評価した。
オメガスプレー(ITWダイナテック社製)をPETフィルムから30cmの高さにセットし、吐出量20g/min、エアー圧力0.4kgf/cm2、PETフィルムのラインスピード250m/minの条件でオメガ塗工を実施し、ホットメルト接着剤の塗工幅でオメガ塗工の適正を評価した。
◎:塗工幅が5mm以上で7mm以下
○:塗工幅が7mm以上で9mm未満、若しくは、塗工幅が3mmより大きく、5mm未満
×:塗工幅が3mm未満、若しくは9mm以上
【0067】
<湿潤時耐クリープ性>
上述のオメガスプレーでホットメルト接着剤を厚さ12μmのPETフィルムに塗工し、PETフィルムとティッシュを張り合わせて、試料を製造した。塗工温度は150℃、塗工量5g/m2、オープンタイムは0.15秒であった。
試料を50mmの幅でカットし、ホットメルト接着剤が塗布された部分に水分を含ませた後、接着面から下方向に500gの錘を垂らして、35℃で放置した。この錘が落下するまでの時間を測定し、湿潤時耐クリープ性を評価した。評価基準を以下に示す。
◎:落下時間が100秒を超える
○:落下時間が85~100秒
×:落下時間が85秒未満
【0068】
<臭気>
70mLのガラス瓶にホットメルト接着剤を30g入れ、アルミ箔で蓋をして、160℃で溶融して1日放置した後、常温に戻した。アルミ箔の蓋を外して、官能試験によりホットメルト接着剤の臭気を判定した。評価基準を以下に示す。
◎:臭気が殆どない。
○:若干臭気が感じられる。
×:臭気が明瞭に感じられる。
【0069】
<ループタック(初期粘着力)>
厚さが50μmのPETフィルムに、50μmの厚さとなるようにホットメルト接着剤を塗布した。このPETフィルムを25mm×100mmのサイズに切断して試料を製造した。この試料を、粘着面(接着剤塗布面)が外側となるようにループ状に巻回し、これをPE板に対し、20℃で300mm/分の速度で接触させた。その後、300mm/分の速度で試験体をPE板から引きはがし、その時の引きはがし強度を測定し、これをループタックとした。評価基準を以下に示す。
◎:ループタックが2400(g/25mm)を超える。
○:ループタックが2200~2400(g/25mm)
×:ループタックが2200(g/25mm)未満
【0070】
<剥離強度>
厚さが50μmのPETフィルムに、50μmの厚さでホットメルト接着剤を塗布した。これを幅25mmに切断して試料を製造した。この試料を100μmの厚さのポリエチレンフィルムに20℃で貼り合わせた。貼り合わせの際には、重さ2kgのローラーを速度5mm/秒でPETフィルムに接触させた。20℃で試料を1日間放置した後、40℃において300mm/分の引張速度で剥離を行い、剥離強度を測定した。評価基準を以下に示す。
◎:剥離強度が1400(g/25mm)を超える。
○:剥離強度が1200~1400(g/25mm)
×:剥離強度1200(g/25mm)未満
【0071】
【表1】
[図:0001395250000006.jpg]
」
(5)甲第5号証(以下、「甲5」という。)
摘記事項の後ろに当審の仮訳又は特許異議申立人による訳文を掲載した。
5a
「
[図:0001395250000007.jpg]
・・・
[図:0001395250000008.jpg]
」
K0442
北アメリカ クレイトンTMD1162 P Polymer
6/16/2021
・・・
[図:0001395250000009.jpg]
(6)甲第6号証(以下、「甲6」という。)
6a「
[図:0001395250000010.jpg]
・・・
[図:0001395250000011.jpg]
」
(7)甲第7号証(以下、「甲7」という。)
7a「
[図:0001395250000012.jpg]
・・・
[図:0001395250000013.jpg]
」
(8)甲第8号証(以下、「甲8」という。)
摘記事項の後ろに特許異議申立人による訳文を掲載した。
8a「
[図:0001395250000014.jpg]
」
[図:0001395250000015.jpg]
3 甲1に記載された発明
甲1には、例2として「重度に水素化処理されたナフテン系プロセス油であるNyflex 222Bを36.5重量%、約130℃の環球式軟化点を有する水素化芳香族変性脂環式炭化水素樹脂であるEscorez 5637を42.6重量%、スチレン含量が18重量%で、ジブロック含量が実質的にゼロである、線状スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロックコポリマーであって、200℃/5kgでASTM D-1238により測定して、12g/10分のメルトインデックスを有するVector 4111Aを5.6重量%、スチレン含量が15重量%で、ジブロック含量が約42重量%である、線状スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロックコポリマーであって、200℃/5kgでASTM D-1238により測定して、25g/10分のメルトインデックスを有するVector 4114Aを4.7重量%、スチレン含量が45重量%で、ジブロック含量が約63重量%である、線状スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ブロックコポリマーであって、190℃/5kgで50g/45分のメルトインデックス、および約150センチポアズの溶液粘度(トルエン中25重量%)を有するGlobalprene 3545を10重量%、及び、ヒンダードフェノール系酸化防止剤であるIrganox 1010を0.6重量%からなり、300°Fでの粘度が1325cpであり、R&B軟化点が185°Fである、ホットメルト接着剤組成物。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる(摘記1e参照)。
4 対比・判断
(1)本件特許発明1
ア 引用発明との対比
引用発明の「重度に水素化処理されたナフテン系プロセス油であるNyflex 222B」は本件特許発明1の「C)可塑性オイル」に相当する。
引用発明の「約130℃の環球式軟化点を有する水素化芳香族変性脂環式炭化水素樹脂であるEscorez 5637」は、水素化芳香族変性脂環式炭化水素樹脂は粘着付与樹樹脂であるから(摘記1c参照)、引用発明の「ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)」と反応するものであるから、本件特許発明1の「B)粘着付与剤」に相当する。
引用発明の「スチレン含量が18重量%で、ジブロック含量が実質的にゼロである、線状スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロックコポリマーであって、200℃/5kgでASTM D-1238により測定して、12g/10分のメルトインデックスを有するVector 4111A」及び「スチレン含量が15重量%で、ジブロック含量が約42重量%である、線状スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロックコポリマーであって、200℃/5kgでASTM D-1238により測定して、25g/10分のメルトインデックスを有するVector 4114A」は、本件特許発明1の「 A2)
a21)スチレン系単位の含有量が30~50重量%であり、
a22)ジブロック含有量(Diblock Content)が5重量%未満であり、 a23)ASTM D1238基準により測定された190℃/5kgでの溶融流れ指数が30~50g/10minである、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体」と「スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体」の限りにおいて一致する。
引用発明の「スチレン含量が45重量%で、ジブロック含量が約63重量%である、線状スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ブロックコポリマーであって、190℃/5kgで50g/45分のメルトインデックス、および約150センチポアズの溶液粘度(トルエン中25重量%)を有するGlobalprene 3545」は、本件特許明細書の【0104】の【表1】からみて、ASTM D1238基準により測定された190℃/5kgでの溶融流れ指数が46.9g/10minであるから、本件特許発明1の「A1)
a1)スチレン系単位の含有量が30~50重量%であり、
a2)ジブロック含有量が55重量%以上であり、
a3)ASTM D1238基準により測定された190℃/5kgでの溶融流れ指数が30g/10min以上である、スチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体」に相当する。
引用発明の「R&B軟化点が185°Fである」は、R&B軟化点はASTM D36基準により測定されたものであることは明らかであり、185°Fは85℃であるから、本件特許発明1の「ASTM D36基準により測定された軟化点が85℃以上である」を充足する。
そうすると、本件特許発明1と引用発明は、「A1)
a1)スチレン系単位の含有量が30~50重量%であり、
a2)ジブロック含有量が55重量%以上であり、
a3)ASTM D1238基準により測定された190℃/5kgでの溶融流れ指数が30g/10min以上である、スチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体;
スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体;
B)粘着付与剤;および
C)可塑性オイルを含み;
ASTM D36基準により測定された軟化点が85℃以上である、ホットメルト接着剤組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点>
スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体が、本件特許発明1では、
A2)
a21)スチレン系単位の含有量が30~50重量%であり、
a22)ジブロック含有量(Diblock Content)が5重量%未満であり、
a23)ASTM D1238基準により測定された190℃/5kgでの溶融流れ指数が30~50g/10minであるのに対し、引用発明では「スチレン含量が18重量%で、ジブロック含量が実質的にゼロである、線状スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロックコポリマーであって、200℃/5kgでASTM D-1238により測定して、12g/10分のメルトインデックスを有するVector 4111A」及び「スチレン含量が15重量%で、ジブロック含量が約42重量%である、線状スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロックコポリマーであって、200℃/5kgでASTM D-1238により測定して、25g/10分のメルトインデックスを有するVector 4114A」である点。
イ 相違点についての検討
引用発明のホットメルト接着剤組成物に含まれるスチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロックコポリマーについて、甲1の発明の詳細な説明には、スチレン含量が15~30重量%、ジブロックが30重量%未満、ASTM D1238(190℃/5kg)を用いて約10g/10分を超えるメルトインデックスが、好ましいことが、記載されているものの(摘記1c参照)、その記載のみから、引用発明のホットメルト接着剤組成物において、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロックコポリマーとしてa21)スチレン系単位の含有量が30~50重量%であり、
a22)ジブロック含有量(Diblock Content)が5重量%未満であり、
a23)ASTM D1238基準により測定された190℃/5kgでの溶融流れ指数が30~50g/10minであるものを採用する動機付けがあるとはいえない。
ここで、甲2には、ホットメルト接着剤に含まれるスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体として、スチレン含有率:44重量%、ジブロック含有率:0重量%、MFR:40g/10minであるスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体が、記載され(摘記2c参照)、甲3には、ホットメルト接着剤組成物に含まれるスチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマーとしてVector 4414が記載されており(摘記3a、3b参照)、Vector 4414は、本件特許発明1において具体的に使用されている、スチレン系単位の含有量が44重量%であり、
a22)ジブロック含有量(Diblock Content)が0重量%未満であり、
a23)ASTM D1238基準により測定された190℃/5kgでの溶融流れ指数が40g/10minであるスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体であるが、甲2及び甲3のいずれにおいても、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体はスチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体と併用されるものではなく、甲2に記載のスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体のMFRはASTM D 1238のG条件(200℃、5.0kgの荷重)で測定して得られる値であり(摘記2b参照)、本件特許発明1のスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体のようにASTM D1238基準により測定された190℃/5kgでの溶融流れ指数が30~50g/10minであるかは不明である。そうすると、甲2及び甲3に記載された事項が公知であったとしても、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ブロックコポリマーを含む引用発明のホットメルト接着剤組成物において、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロックコポリマーとして、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ブロックコポリマーと併用されない甲2に記載のスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体を採用する動機付けはなく、仮に採用したとしても、ASTM D1238基準により測定された190℃/5kgでの溶融流れ指数が不明であるし、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ブロックコポリマーと併用されない甲3に記載のスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体を採用する動機付けもないから、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体が、
A2)
a21)スチレン系単位の含有量が30~50重量%であり、
a22)ジブロック含有量(Diblock Content)が5重量%未満であり、
a23)ASTM D1238基準により測定された190℃/5kgでの溶融流れ指数が30~50g/10minであるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
また、甲4には、実施例1のホットメルト接着剤として、(A1)トリブロック型スチレン-イソプレンブロック共重合体(クレイトンD1162(クレイトンポリマー社製))、アサプレンT438(旭化成ケミカルズ社製)、アサプレンT439(旭化成ケミカルズ社製)を含むホットメルトものが、記載されており(摘記4b参照)、実施例5のホットメルト接着剤として、(A1)トリブロック型スチレン-イソプレンブロック共重合体(クレイトンD1162(クレイトンポリマー社製)、アサプレンT438(旭化成ケミカルズ社製)含むホットメルトものが、記載されており(摘記4b参照)、ここで、アサプレンT438(旭化成ケミカルズ社製)及びアサプレンT439(旭化成ケミカルズ社製)は甲6及び甲7に記載されるようにスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体であるから(摘記6a、7a参照)、甲4にはホットメルト接着剤においてスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体と併用する(A1)トリブロック型スチレン-イソプレンブロック共重合体(クレイトンD1162(クレイトンポリマー社製))が記載されているといえるが、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ブロックコポリマーを含む引用発明のホットメルト接着剤組成物において、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ブロックコポリマーと併用する甲4に記載の(A1)トリブロック型スチレン-イソプレンブロック共重合体(クレイトンD1162(クレイトンポリマー社製)を採用しても、クレイトンD1162(クレイトンポリマー社製)のASTM D1238基準により測定された200℃/5kgでのメルトインデックスは甲5に記載されるように45gms/10minであり(摘記5a参照)、本件特許発明1のスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体のようにASTM D1238基準により測定された190℃/5kgでの溶融流れ指数が30~50g/10minであるかは不明である以上、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体が、
A2)
a21)スチレン系単位の含有量が30~50重量%であり、
a22)ジブロック含有量(Diblock Content)が5重量%未満であり、
a23)ASTM D1238基準により測定された190℃/5kgでの溶融流れ指数が30~50g/10minであるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
さらに、甲8にはエスコレッツ(Escorez)5600シリーズ樹脂について記載があるものの(摘記8a参照)、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体についての記載はない。
そうすると、引用発明のホットメルト接着剤組成物において、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体が、
A2)
a21)スチレン系単位の含有量が30~50重量%であり、
a22)ジブロック含有量(Diblock Content)が5重量%未満であり、
a23)ASTM D1238基準により測定された190℃/5kgでの溶融流れ指数が30~50g/10minであるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。
ウ 本件特許発明1の効果について
甲1の【表1】との比較において、本件特許発明1は、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体が、
A2)
a21)スチレン系単位の含有量が30~50重量%であり、
a22)ジブロック含有量(Diblock Content)が5重量%未満であり、
a23)ASTM D1238基準により測定された190℃/5kgでの溶融流れ指数が30~50g/10minであるものを採用することにより、低粘度特性を保持することによって、相対的に低い温度で溶融加工が可能で、工程性を改善できながらも、接着力および耐熱性に優れ、特に、硬化後の機械的物性にも優れていて、多様な産業分野で使用可能であるという効果を奏するものであり、そのような効果は引用発明及び甲1~甲8の記載から当業者が予測できない顕著なものである。
エ 小括
したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明及び甲2~甲8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるとはいえない。
(2)本件特許発明2~11
本件特許発明2~11は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用してさらに限定するものであり、上記本件特許発明1と引用発明との<相違点>と同じ相違点を有するものであって、<相違点>については前記(1)イ及びウで検討したとおりであるから、本件特許発明2~11は、引用発明及び甲1~甲8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるとはいえない。
第5 理由2(サポート要件)について
本件特許発明の課題は、本件特許明細書の【0011】の記載からみて、低粘度特性を有することによって、相対的に低い温度で溶融加工が可能で、工程性を改善できながらも、接着力および耐熱性に優れ、硬化後の機械的物性にも優れたホットメルト接着剤を提供することにあると認められる。
ここで、本件特許明細書の【0095】~【0122】に記載された実施例から、本件特許発明1のホットメルト接着剤組成物のうち、Al)スチレン含有量が44.5~45重量%、ASTM D1238基準により測定された190℃/5kgでの溶融流れ指数が46.3~46.9g/10min、ジブロック含有量が62~63重量%であるSBSを25重量部含有し、
A2)スチレン含有量が44重量%、ASTM D1238基準により測定された190℃/5kgでの溶融流れ指数が40g/10min、ジブロック含有量が~0重量%であるSISを5重量部含有し、
B)粘着付与剤が「水添ジシクロペンタジェン系重合石油樹脂」を55重量部含有し、
C)可塑性オイルが「white mineral oil」を14重量部含有し、ASTM D36基準により測定された軟化点が89~89.5℃である、ホットメルト接着剤組成物が、前記課題を解決できることは、理解できる。
そして、本件特許発明1で特定されるスチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体及びスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体のスチレン含有量及びジブロック含有量の範囲、本件特許発明1で特定されるスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体のASTM D1238基準により測定された190℃/5kgでの溶融流れ指数の範囲は、前記実施例のものからみて、過度に広範なものとはいえないし、本件特許明細書【0046】に記載のとおり、スチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体のASTM D1238基準により測定された190℃/5kgでの溶融流れ指数が大きければ、ホットメルト接着剤組成物の低温流れ性が改善され、接着力および凝集力が向上して、相対的に低い温度でも優れた加工性を有することができることが、技術常識であるから、前記実施例のもののように、ASTM D1238基準により測定された190℃/5kgでの溶融流れ指数が30g/10min以上であれば、前記課題を解決できると推認できる。
また、粘着付与剤は、本件特許明細書の【0080】からみて、粘着及び接着関連の物性を付与するためのものであり、可塑性オイルは、本件特許明細書の【0086】からみて、流動性及び低温加工性を付与するためのものであり、それらの含有量の特定がなくても、本件特許発明1において粘着付与剤及び可塑性オイルの量はそのような性能を付与するものを想定していることは明らかであり、そのような量であれば、前記課題を解決できるといえるし、前記実施例の記載から、軟化点が高くても、前記課題を解決できることは理解できるといえる。
そして、特許異議申立人は、前記実施例のもの以外のホットメルト接着剤が、前記課題を解決できないことについて、なんら具体的な立証や証拠を示していない。
そうすると、特定のスチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体を25重量部と、特定のスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体を5重量部と、特定の粘着付与剤を55重量部と、特定の可塑性オイルを144重量部とを用い、軟化点が89~89.6℃である前記実施例及び本件特許明細書に記載された事項を、このような特定がされていない本件特許発明1の範囲にまで拡張乃至一般化することはできないとはいえない。
同様に、本件特許発明2~11の範囲にまで拡張乃至一般化することはできないとはいえない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立人による特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701077