特許異議申立
2022-700904
ポリオレフィン樹脂層を備える積層体およびそれを備える包装製品
- 審判番号
- 2022-700904
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-003601
- 登録番号
- 7037774
- 請求日
- 2022年09月15日
- 審決日
- 2024年01月17日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】堀田 幸裕
- 【権利者代理人】岡村 和郎
- 【権利者代理人】高田 泰彦
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【権利者代理人】中村 行孝
- 【権利者代理人】浅野 真理
- 【異議申立人】根本 未果
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 直欣
- 審判官 稲葉 大紀
- 審判官 藤井 眞吾
- 分類
- P1651.121-YAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7037774号発明「ポリオレフィン樹脂層を備える積層体およびそれを備える包装製品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7037774号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第7037774号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7037774号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成28年7月1日に出願した特願2016-131834号の一部を令和3年1月13日に新たな特許出願としたものであって、令和4年3月9日に特許権の設定登録がされ、令和4年3月17日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年 9月15日 :特許異議申立人根本未果(以下「申立人」とい
う。)による請求項1~5に係る特許に対する
特許異議の申立て
令和5年 2月 1日付け:取消理由通知書
令和5年 4月 3日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和5年 4月21日 :訂正請求書についての手続補正書の提出
令和5年 5月25日 :申立人による意見書の提出
令和5年 7月11日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和5年 9月 8日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和5年10月18日 :申立人による意見書の提出
なお、令和5年4月3日に提出され手続補正書により補正された訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和5年9月8日提出の訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正の請求(以下、訂正自体を「本件訂正」という。)は、「特許第7037774号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、次の訂正事項からなるものである。なお、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記ポリオレフィン樹脂層が前記第2の熱可塑性樹脂層と接しており、」とあるのを、
「前記ポリオレフィン樹脂層が前記第2の熱可塑性樹脂層と接しており、
前記ポリオレフィン樹脂層が、前記紙基材層と接しており、」
に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「前記第2の熱可塑性樹脂層が、ポリブテン-1、ポリ(エチレン-ブテン)、ポリ(プロピレン-ブテン)、合成ゴムを含まない、」と
あるのを、
「 前記第2の熱可塑性樹脂層が、化石燃料由来のポリエチレン、又は、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含み、
前記第2の熱可塑性樹脂層が、ポリブテン-1、ポリ(エチレン-ブテン)、ポリ(プロピレン-ブテン)、合成ゴムを含まない、」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。)
(3)一群の請求項について
訂正前の請求項1~5は、請求項2~5が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~5〕について請求されている。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載のポリオレフィン樹脂層が「前記紙基材層と接して」いることを限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書の【0080】及び【0081】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載の第2の熱可塑性樹脂層が「化石燃料由来のポリエチレン、又は、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含」むことを限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書の【0057】、【0080】、【0081】、【0093】及び【0094】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
3 小括
上記のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1~5に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
少なくとも、第1の熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層と、第2の熱可塑性樹脂層とをこの順に備える積層体を備える液体用紙容器であって、
前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレンのみで構成されるか、または、バイオマス由来の低密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンの混合樹脂で構成され、
前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、
前記ポリオレフィン樹脂層が前記第2の熱可塑性樹脂層と接しており、
前記ポリオレフィン樹脂層が、前記紙基材層と接しており、
前記積層体の最内層が前記第2の熱可塑性樹脂層であり、
前記積層体の最外層が前記第1の熱可塑性樹脂層であり、
前記第2の熱可塑性樹脂層が、化石燃料由来のポリエチレン、又は、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含み、
前記第2の熱可塑性樹脂層が、ポリブテン-1、ポリ(エチレン-ブテン)、ポリ(プロピレン-ブテン)、合成ゴムを含まない、液体用紙容器。
【請求項2】
前記ポリオレフィン樹脂層が、前記バイオマス由来の低密度ポリエチレンを5質量%以上含む、請求項1に記載の液体用紙容器。
【請求項3】
前記第1の熱可塑性樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレンで構成されるか、または、バイオマス由来の低密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンとの混合樹脂で構成される、請求項1または2に記載の液体用紙容器。
【請求項4】
前記第2の熱可塑性樹脂層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の液体用紙容器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の液体用紙容器に用いられる積層体の製造方法であって、
溶融押出しした前記ポリオレフィン樹脂層を介して前記第2の熱可塑性樹脂層を貼り合わせる、積層体の製造方法。」
第4 取消理由(決定の予告)の概要
当審において令和5年7月11日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
理由(進歩性)
本件特許の請求項1~5に係る発明は甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
<甲各号証>
甲第1号証:特開2001-171649号公報
甲第2号証:特開2000-929号公報
甲第3号証:実願昭56-156515号(実開昭58-60443号)のマイクロフィルム
甲第4号証:特開昭62-290534号公報
甲第5号証:特開2014-133337号公報
甲第6号証:特開2015-205719号公報
甲第7号証:特開2015-214365号公報
甲第8号証:特開2015-231870号公報
甲第9号証:特開2012-167172号公報
(以下、甲第1号証~甲第9号証を、それぞれ「甲1」~「甲9」という。)
第5 取消理由(決定の予告)についての当審の判断
1 各甲号証について
(1)甲1に記載された事項、発明
甲1には、次のような記載がある(下線は当審が付した。以下同様。)。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液体紙容器に関し、更に詳しくは、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性に優れ、更に、ピンホールの発生を皆無とし、シール不良、液漏れ等を回避し、内容物の変質等を防止すると共に保存性、貯蔵性等に優れた液体紙容器に関するものである。」
「【0034】
【実施例】上記の本発明について実施例を挙げて更に具体的に説明する。
実施例1
・・・
(3).更に、上記の(2)で溶融押し出し積層した二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの面に、2液硬化型のウレタン系アンカーコート剤を使用し、これを、グラビアロールコート法により、膜厚0.1g/m2(乾燥状態)になるようにコーティングしてアンカーコート剤層を形成し、次に、該アンカーコート剤層の面に、低密度ポリエチレンを使用し、これを溶融押し出ししながら、厚さ20μmの低密度ポリエチレン樹脂層を介して、厚さ40μmの低密度ポリエチレンフィルムを溶融押し出しラミネート積層して、下記の層構成からなる本発明にかかる積層材を製造した。低密度ポリエチレン樹脂層/紙基材/低密度ポリエチレン樹脂層/酸化珪素の蒸着膜・二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/アンカーコート剤層/低密度ポリエチレン樹脂層/低密度ポリエチレンフィルム
(4).次いで、上記で製造した積層材を使用し、ゲーベルトップ型の液体紙容器の形状に合わせて、縦あるいは横または斜め等に折り罫を刻設すると共に打ち抜き加工して、糊代部を有するブランク板を製造し、次いで、上記で製造したブランク板の端面に、内容物の浸透、液漏れ等を防止するために、スカイブ・ヘミング処理を施して端面処理を行った後、糊代部にフレーム処理を行い、該糊代部の低密度ポリエチレン樹脂等を溶融し、その溶融面に、上記のブランク板の他方の端部を重ね合わせてフレームシールにより胴貼りシール部を形成して筒状のスリーブを製造した。次に、上記で製造した筒状のスリーブのボトムの内面をホットエアーにより炙り、その内面の低密度ポリエチレン樹脂を溶融させて、プレスシールを行って底シール部を形成し、しかる後、他方の開口部から果汁ジュースを充填した後、トップの内面をホットエアーで炙り、その内面の低密度ポリエ賃樹脂を溶融させて、プレスシールを行ってゲーベルトップシール部を形成して、内容物を充填包装した本発明にかかる密閉液体紙容器を製造するものである。・・・」
上記の記載を総合すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「低密度ポリエチレン樹脂層/紙基材/低密度ポリエチレン樹脂層/酸化珪素の蒸着膜・二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/アンカーコート剤層/低密度ポリエチレン樹脂層/低密度ポリエチレンフィルムの層構成からなる積層材を使用して製造した密閉液体紙容器。」
(2)甲2に記載された発明
甲2には、【請求項1】、【0018】~【0019】、【0052】、【0061】の記載からみて、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。
「熱封緘が可能なエチレン-ビニルアルコール系共重合体樹脂フィルムを繰出し、
紙基材を繰出し、
低密度ポリエチレン(LDPE)を押出して溶融フィルムとなし、該溶融フィルムの熱封緘が可能なエチレン-ビニルアルコール系共重合体樹脂フィルムとの接着面をオゾン処理する工程を経ることで、
紙基材からなる層/押出ラミネート用樹脂からなる層/熱封緘が可能なエチレン-ビニルアルコール系共重合体樹脂フィルムからなる層の三層からなる積層体を巻取り、
該積層体の紙基材からなる層のもう一方の面がラミネート面となるように繰出し、前記と同様のLDPEを紙基材に積層する工程を経ることで巻き取られ、
熱封緘が可能なエチレン-ビニルアルコール系共重合体樹脂フィルムを最内層とした、
合計4層から成る積層体。」
(3)甲3に記載された発明
甲3には、明細書1ページ下から6~5行、2ページ下から5行~3ページ1行の記載からみて、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているといえる。
「接液面から順に、無延伸アイオノマー(6)/低密度ポリエチレン(7)/紙(8)/低密度ポリエチレン(9)という層構成を有する液体の容器(C)。」
(4)甲4に記載された発明
甲4には、1ページ左欄6~20行、第5図の記載からみて、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているといえる。
「以下のものを含む積層体から構成された液体用の容器:
(a)ペーパーボードの基体;
(b)上記ペーパーボードの基体の外側表面に塗布された熱封緘が可能な低密度ポリエチレンポリマーまたはグリコール変性ポリエチレンテレフタレートの外側層;
(c)上記ペーパーボードの基体の内側表面に塗布された熱封緘が可能な低密度ポリエチレンポリマーの内側層;および
(d)上記ポリエチレンポリマーの上記内側層の外表面に塗布される、熱封緘が可能なグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)の層。」
(5)周知技術
甲5(【0007】~【0008】、【0028】、【0060】~【0068】、【0098】)、甲6(【0003】~【0004】、【0020】~【0021】、【0025】、【0029】~【0030】、【0095】)、甲7(【0002】~【0004】、【0040】~【0044】、【0048】)、甲8(【0003】~【0004】、【0020】、【0036】、【0051】~【0053】、【0063】、【0066】)、甲9(【0026】~【0028】)の記載から、次の技術(以下「周知技術1」という。)が周知であると認められる。
「容器や包装材に用いられる積層体において、低密度ポリエチレンとしてバイオマス由来の低密度ポリエチレンを用いること。」
また、甲5(【0080】~【0081】)、甲9(請求項1及び4、【0015】、【0038】~【0041】)の記載から、次の技術(以下「周知技術2」という。)が周知であると認められる。
「容器や包装材に用いられる積層体において、バイオマス由来のポリエチレンと石油由来のポリエチレンを混合して用いること。」
2 甲1発明を主引用発明とする理由について
(1)本件発明1について
ア 対比
甲1発明の「低密度ポリエチレン樹脂層/紙基材」における「低密度ポリエチレン樹脂層」は、本件発明1の「第1の熱可塑性樹脂層」に相当する。
甲1発明の「低密度ポリエチレン樹脂層/低密度ポリエチレンフィルム」における「低密度ポリエチレン樹脂層」と、本件発明1の「バイオマス由来の低密度ポリエチレンのみで構成されるか、または、バイオマス由来の低密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンの混合樹脂で構成され、」「前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であ」る「ポリオレフィン樹脂層」は、「低密度ポリエチレンで構成され」る「ポリオレフィン樹脂層」である限りにおいて一致する。
甲1発明の「紙基材」、「積層材」、「密閉液体紙容器」は、それぞれ本件発明1の「紙基材層」、「積層体」、「液体用紙容器」に相当する。
甲1発明の「低密度ポリエチレンフィルム」は、本件発明1の「化石燃料由来のポリエチレン、又は、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含み、」「ポリブテン-1、ポリ(エチレン-ブテン)、ポリ(プロピレン-ブテン)、合成ゴムを含まない」「第2の熱可塑性樹脂層」に相当する。
甲1発明の「低密度ポリエチレン樹脂層/紙基材/低密度ポリエチレン樹脂層/酸化珪素の蒸着膜・二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/アンカーコート剤層/低密度ポリエチレン樹脂層/低密度ポリエチレンフィルムの層構成からなる」ことは、本件発明1の「少なくとも、第1の熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層と、第2の熱可塑性樹脂層とをこの順に備える」こと、及び「前記ポリオレフィン樹脂層が前記第2の熱可塑性樹脂層と接して」いることに相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点1]
「少なくとも、第1の熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層と、第2の熱可塑性樹脂層とをこの順に備える積層体を備える液体用紙容器であって、
前記ポリオレフィン樹脂層が、低密度ポリエチレンで構成され、
前記ポリオレフィン樹脂層が前記第2の熱可塑性樹脂層と接しており、
前記第2の熱可塑性樹脂層が、化石燃料由来のポリエチレン、又は、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含み、
前記第2の熱可塑性樹脂層が、ポリブテン-1、ポリ(エチレン-ブテン)、ポリ(プロピレン-ブテン)、合成ゴムを含まない、液体用紙容器。」
[相違点1-1]
「低密度ポリエチレンで構成されるポリオレフィン樹脂層」について、
本件発明1では、「前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレンのみで構成されるか、または、バイオマス由来の低密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンの混合樹脂で構成され、前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であ」るのに対し、甲1発明では、「低密度ポリエチレン樹脂層/低密度ポリエチレンフィルム」における「低密度ポリエチレン樹脂層」の由来が不明な点。
[相違点1-2]
本件発明1では、「前記積層体の最内層が前記第2の熱可塑性樹脂層であり、前記積層体の最外層が前記第1の熱可塑性樹脂層であ」るのに対して、甲1発明では、最内層又は最外層が「低密度ポリエチレン樹脂層」又は「低密度ポリエチレンフィルム」のいずれであるか明らかでない点。
[相違点1-3]
本件発明1では、「前記ポリオレフィン樹脂層が、前記紙基材層と接して」いるのに対し、甲1発明では、「低密度ポリエチレン樹脂層/低密度ポリエチレンフィルム」における「低密度ポリエチレン樹脂層」と「紙基材層」が接してない点。
イ 判断
事案に鑑み相違点1-3について判断する。
甲1発明が解決すべき課題は「炙りピンホール等の発生を皆無とし、かつ、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性に優れ、ピンホールの発生に伴いシール不良、液漏れ等を回避し、内容物の変質等を防止すると共に保存性、貯蔵性等に優れた液体紙容器を提供すること」(【0003】)であり、前記課題を解決する手段として「少なくとも、紙基材とバリア性層とヒートシール性樹脂層とからなる積層材であり、更に、上記のバリア性層が、その一方の面に無機酸化物の蒸着膜を設けた基材フィルムからなり、また、上記の紙基材とその一方の面に無機酸化物の蒸着膜を設けた基材フィルムからなるバリア性層との層間に、30~100μmの接着性樹脂層を設けた構成からなる積層材を製造」(【0006】)することが記載されている。
そうすると、甲1発明において、「紙基材」に隣接する「低密度ポリエチレン樹脂層/酸化珪素の蒸着膜・二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/アンカーコート剤層」はバリア性層を含む層であり課題を解決するための必須の構成であるから、当該バリア性層を含む層に隣接する「低密度ポリエチレン樹脂層/低密度ポリエチレンフィルム」における「低密度ポリエチレン樹脂層」を「紙基材」と接するようにすることには阻害要因がある。
そうしてみると、甲1発明において、相違点1-3に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)で検討したのと同じ理由により、本件発明2~5は、甲1発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)意見書における申立人の主張について
申立人は、令和5年10月18日提出の意見書において、本件出願時において、紙とポリエチレン系樹脂等の積層体からなりバリア性層を備えない液体用紙容器は周知であるから、高度なバリア性が要求されない場合に甲1発明からバリア性層を備えない構成とすることは当業者にとって容易である旨主張する。しかしながら上述したとおり、甲1発明においてバリア性層をなくすことには阻害要因がある。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
第6 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立書での主張について
申立人は、特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1~3、5に係る発明は、甲2に記載された発明及び甲5~9の記載に基づいて、また、同請求項1~4に係る発明は、甲3又は甲4に記載された発明及び甲5~9の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得た発明である旨主張している。
2 甲2発明を主引用発明とする理由について
(1)本件発明1について
ア 対比
甲2発明の「紙基材からなる層のもう一方の面」に積層される「前記と同様のLDPE」の層は、本件発明1の「第1の熱可塑性樹脂層」に相当する。
甲2発明の「低密度ポリエチレン(LDPE)を押出して溶融フィルムとな」す工程を経た「押出ラミネート用樹脂からなる層」と、本件発明1の「バイオマス由来の低密度ポリエチレンのみで構成されるか、または、バイオマス由来の低密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンの混合樹脂で構成され、」「前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であ」る「ポリオレフィン樹脂層」は、「低密度ポリエチレンで構成されるポリオレフィン樹脂層」である限りにおいて一致する。
甲2発明の「紙基材からなる層」、「合計4層から成る積層体」は、それぞれ本件発明1の「紙基材層」、「積層体」に相当する。
甲2発明の「熱封緘が可能なエチレン-ビニルアルコール系共重合体樹脂フィルムからなる層」と、本件発明1の「化石燃料由来のポリエチレン、又は、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含み、」「ポリブテン-1、ポリ(エチレン-ブテン)、ポリ(プロピレン-ブテン)、合成ゴムを含まない」「第2の熱可塑性樹脂層」は、「ポリブテン-1、ポリ(エチレン-ブテン)、ポリ(プロピレン-ブテン)、合成ゴムを含まない第2の熱可塑性樹脂層」である限りにおいて一致する。
甲2発明の「合計4層から成る積層体」が「紙基材からなる層/押出ラミネート用樹脂からなる層/熱封緘が可能なエチレン-ビニルアルコール系共重合体樹脂フィルムからなる層の三層からなる積層体を巻取り、該積層体の紙基材からなる層のもう一方の面がラミネート面となるように繰出し、前記と同様のLDPEを紙基材に積層する工程を経ることで巻き取られ」ることは、本件発明1の「少なくとも、第1の熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層と、第2の熱可塑性樹脂層とをこの順に備える」ことに相当する。
甲2発明の「低密度ポリエチレン(LDPE)を押出して溶融フィルムとなし、該溶融フィルムの熱封緘が可能なエチレン-ビニルアルコール系共重合体樹脂フィルムとの接着面」を有する態様は、本件発明1の「前記ポリオレフィン樹脂層が前記第2の熱可塑性樹脂層と接して」いる態様に相当する。
甲2発明の「該積層体の紙基材からなる層のもう一方の面がラミネート面となるように繰出し、前記と同様のLDPEを紙基材に積層する工程を経ることで巻き取られ、熱封緘が可能なエチレン-ビニルアルコール系共重合体樹脂フィルムを最内層と」する態様は、本件発明1の「前記積層体の最内層が前記第2の熱可塑性樹脂層であり、前記積層体の最外層が前記第1の熱可塑性樹脂層であ」る態様に相当する。
甲2発明の「紙基材からなる層/押出ラミネート用樹脂からなる層/熱封緘が可能なエチレン-ビニルアルコール系共重合体樹脂フィルムからなる層の三層からなる積層体」の層構成は、本件発明1の「前記ポリオレフィン樹脂層が、前記紙基材層と接して」いる態様に相当する。
そうすると、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点2]
「少なくとも、第1の熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層と、第2の熱可塑性樹脂層とをこの順に備える積層体であって、
前記ポリオレフィン樹脂層が、低密度ポリエチレンで構成され、
前記ポリオレフィン樹脂層が前記第2の熱可塑性樹脂層と接しており、
前記ポリオレフィン樹脂層が、前記紙基材層と接しており、
前記積層体の最内層が前記第2の熱可塑性樹脂層であり、
前記積層体の最外層が前記第1の熱可塑性樹脂層であり、
前記第2の熱可塑性樹脂層が、ポリブテン-1、ポリ(エチレン-ブテン)、ポリ(プロピレン-ブテン)、合成ゴムを含まない、積層体。」
[相違点2-1]
「低密度ポリエチレンで構成されるポリオレフィン樹脂層」について、
本件発明1では、「バイオマス由来の低密度ポリエチレンのみで構成されるか、または、バイオマス由来の低密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンの混合樹脂で構成され、」「前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であ」る「ポリオレフィン樹脂層」であるのに対し、甲2発明では、「低密度ポリエチレン(LDPE)を押出して溶融フィルムとな」す工程を経た「押出ラミネート用樹脂からなる層」であって、その由来が不明な点。
[相違点2-2]
本件発明1では、「液体用紙容器」であるのに対して、甲2発明では、積層体であって液体用紙容器でない点。
[相違点2-3]
「ポリブテン-1、ポリ(エチレン-ブテン)、ポリ(プロピレン-ブテン)、合成ゴムを含まない第2の熱可塑性樹脂層」について、
本件発明1では、「化石燃料由来のポリエチレン、又は、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含」むのに対し、甲2発明では、「熱封緘が可能なエチレン-ビニルアルコール系共重合体樹脂フィルムからなる層」である点。
イ 判断
事案に鑑み相違点2-3について検討する。
甲2には、「エチレン系樹脂の持つ欠点を改良した液体容器の開発も進められている。例えば、従来からエチレン-ビニルアルコール系共重合体樹脂は、柑橘類のオレンジジュースなどに含まれるd-リモネン等の旨み成分を吸着し難い性質があることが知られており、この性質を利用し該樹脂を押出ラミネーション法を用い最内層に配した容器の開発も報告されている」(【0006】)ことを前提として、「AC剤及び接着性樹脂を用いることなく、且つ、強固に接着された保香性容器用積層体及び該積層体からなる保香性容器を提供すること」(【0011】)が解決すべき課題であることが記載されている。
そうすると、甲2発明における「熱封緘が可能なエチレン-ビニルアルコール系共重合体樹脂フィルム」を、「化石燃料由来のポリエチレン、又は、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含」むものとすることには阻害要因がある。
そうしてみると、甲2発明において、相違点2-3に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明及び甲5~9の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得た発明ではない。
(2)本件発明2、3、5について
本件発明2、3、5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)で検討したのと同じ理由により、本件発明2、3、5は、甲2に記載された発明及び甲5~9の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得た発明ではない。
3 甲3発明を主引用発明とする理由について
(1)本件発明1について
ア 対比
甲3発明の「低密度ポリエチレン(9)」、「紙(8)」、「液体の容器(C)」はそれぞれ、本件発明1の「第1の熱可塑性樹脂層」、「紙基材層」、「液体用紙容器」に相当する。
甲3発明の「低密度ポリエチレン(7)」と、本件発明1の「バイオマス由来の低密度ポリエチレンのみで構成されるか、または、バイオマス由来の低密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンの混合樹脂で構成され、」「前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であ」る「ポリオレフィン樹脂層」は、「低密度ポリエチレンで構成されるポリオレフィン樹脂層」である限りにおいて一致する。
甲3発明の「無延伸アイオノマー(6)」と、本件発明1の「化石燃料由来のポリエチレン、又は、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含み、」「ポリブテン-1、ポリ(エチレン-ブテン)、ポリ(プロピレン-ブテン)、合成ゴムを含まない」「第2の熱可塑性樹脂層」は、「ポリブテン-1、ポリ(エチレン-ブテン)、ポリ(プロピレン-ブテン)、合成ゴムを含まない第2の熱可塑性樹脂層」である限りにおいて一致する。
甲3発明の「接液面から順に、無延伸アイオノマー(6)/低密度ポリエチレン(7)/紙(8)/低密度ポリエチレン(9)という層構成を有する」ことは、
本件発明1の「少なくとも、第1の熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層と、第2の熱可塑性樹脂層とをこの順に備える積層体を備える」こと、及び「前記ポリオレフィン樹脂層が前記第2の熱可塑性樹脂層と接しており、前記ポリオレフィン樹脂層が、前記紙基材層と接しており、前記積層体の最内層が前記第2の熱可塑性樹脂層であり、前記積層体の最外層が前記第1の熱可塑性樹脂層であ」ることに相当する。
そうすると、本件発明1と甲3発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点3]
「少なくとも、第1の熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層と、第2の熱可塑性樹脂層とをこの順に備える積層体を備える液体用紙容器であって、
前記ポリオレフィン樹脂層が、低密度ポリエチレンで構成され、
前記ポリオレフィン樹脂層が前記第2の熱可塑性樹脂層と接しており、
前記ポリオレフィン樹脂層が、前記紙基材層と接しており、
前記積層体の最内層が前記第2の熱可塑性樹脂層であり、
前記積層体の最外層が前記第1の熱可塑性樹脂層であり、
前記第2の熱可塑性樹脂層が、ポリブテン-1、ポリ(エチレン-ブテン)、ポリ(プロピレン-ブテン)、合成ゴムを含まない、液体用紙容器。」
[相違点3-1]
「低密度ポリエチレンで構成されるポリオレフィン樹脂層」について、
本件発明1では、「バイオマス由来の低密度ポリエチレンのみで構成されるか、または、バイオマス由来の低密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンの混合樹脂で構成され、」「前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であ」る「ポリオレフィン樹脂層」であるのに対し、甲3発明では、「低密度ポリエチレン(7)」であって、その由来が不明な点。
[相違点3-2]
「ポリブテン-1、ポリ(エチレン-ブテン)、ポリ(プロピレン-ブテン)、合成ゴムを含まない第2の熱可塑性樹脂層」について、
本件発明1では、「化石燃料由来のポリエチレン、又は、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含」むのに対し、甲3発明では、「無延伸アイオノマー(6)」である点。
イ 判断
事案に鑑み上記相違点3-2について検討する。
甲3には、従来の食酢等浸透性の高い液体の容器の素材は「最内層が低密度ポリエチレン(1)なので、強じん性が劣り」(明細書2ページ2~3行)という課題を解決するために、接液面(最内層)に「無延伸アイオノマー(6)」を配置することが記載されている。
そうすると、甲3発明において、「無延伸アイオノマー(6)」を「化石燃料由来のポリエチレン、又は、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含」むものとすることには阻害要因がある。
そうしてみると、甲3発明において、相違点3-2に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3に記載された発明及び甲5~9の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得た発明ではない。
(2)本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)で検討したのと同じ理由により、本件発明2~4は、甲3に記載された発明及び甲5~9の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得た発明ではない。
4 甲4発明を主引用発明とする理由について
(1)本件発明1について
ア 対比
甲4発明の「(b)上記ペーパーボードの基体の外側表面に塗布された熱封緘が可能な低密度ポリエチレンポリマー」の「外側層」は、本件発明1の「第1の熱可塑性樹脂層」に相当する。
甲4発明の「(a)ペーパーボードの基体」、「積層体」、「液体用の容器」はそれぞれ、本件発明1の「紙基材層」、「積層体」、「液体用紙容器」に相当する。
甲4発明の「(c)上記ペーパーボードの基体の内側表面に塗布された熱封緘が可能な低密度ポリエチレンポリマーの内側層」と、本件発明1の「バイオマス由来の低密度ポリエチレンのみで構成されるか、または、バイオマス由来の低密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンの混合樹脂で構成され、」「前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であ」る「ポリオレフィン樹脂層」は、「低密度ポリエチレンで構成されるポリオレフィン樹脂層」である限りにおいて一致する。
甲4発明の「熱封緘が可能なグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)の層」と、本件発明1の「化石燃料由来のポリエチレン、又は、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含み、」「ポリブテン-1、ポリ(エチレン-ブテン)、ポリ(プロピレン-ブテン)、合成ゴムを含まない」「第2の熱可塑性樹脂層」は、「ポリブテン-1、ポリ(エチレン-ブテン)、ポリ(プロピレン-ブテン)、合成ゴムを含まない第2の熱可塑性樹脂層」である限りにおいて一致する。
甲4発明の「(a)ペーパーボードの基体;(b)上記ペーパーボードの基体の外側表面に塗布された熱封緘が可能な低密度ポリエチレンポリマーまたはグリコール変性ポリエチレンテレフタレートの外側層;(c)上記ペーパーボードの基体の内側表面に塗布された熱封緘が可能な低密度ポリエチレンポリマーの内側層;および(d)上記ポリエチレンポリマーの上記内側層の外表面に塗布される、熱封緘が可能なグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)の層」を含むことは、本件発明1の「少なくとも、第1の熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層と、第2の熱可塑性樹脂層とをこの順に備える」こと、及び「前記ポリオレフィン樹脂層が前記第2の熱可塑性樹脂層と接しており、前記ポリオレフィン樹脂層が、前記紙基材層と接しており、前記積層体の最内層が前記第2の熱可塑性樹脂層であり、前記積層体の最外層が前記第1の熱可塑性樹脂層であ」ることに相当する。
そうすると、本件発明1と甲4発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点4]
「少なくとも、第1の熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層と、第2の熱可塑性樹脂層とをこの順に備える積層体を備える液体用紙容器であって、
前記ポリオレフィン樹脂層が、低密度ポリエチレンで構成され、
前記ポリオレフィン樹脂層が前記第2の熱可塑性樹脂層と接しており、
前記ポリオレフィン樹脂層が、前記紙基材層と接しており、
前記積層体の最内層が前記第2の熱可塑性樹脂層であり、
前記積層体の最外層が前記第1の熱可塑性樹脂層であり、
前記第2の熱可塑性樹脂層が、ポリブテン-1、ポリ(エチレン-ブテン)、ポリ(プロピレン-ブテン)、合成ゴムを含まない、液体用紙容器。」
[相違点4-1]
「低密度ポリエチレンで構成されるポリオレフィン樹脂層」について、
本件発明1では、「バイオマス由来の低密度ポリエチレンのみで構成されるか、または、バイオマス由来の低密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンの混合樹脂で構成され、」「前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であ」る「ポリオレフィン樹脂層」であるのに対し、甲4発明では、「(c)上記ペーパーボードの基体の内側表面に塗布された熱封緘が可能な低密度ポリエチレンポリマーの内側層」であって、その由来が不明な点。
[相違点4-2]
「ポリブテン-1、ポリ(エチレン-ブテン)、ポリ(プロピレン-ブテン)、合成ゴムを含まない第2の熱可塑性樹脂層」について、
本件発明1では、「化石燃料由来のポリエチレン、又は、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含」むのに対し、甲4発明では、「熱封緘が可能なグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)の層」である点。
イ 判断
事案に鑑み相違点4-2について検討する。
甲4には、ジュース等のための、低密度ポリエチレン(LDPE)の2つの層の間に挟まれたペーパーボードよりなる障壁積層体において、LDPE層が短期間の後ジュースの精油を吸収し、ジュースのビタミンCを大量に失わせる酸素に対し、大部分は障壁抵抗がない(3ページ左下欄5~16行)、という課題が記載されており、甲4発明は前記課題を解決するために、「(d)上記ポリエチレンポリマーの上記内側層の外表面に塗布される、熱封緘が可能なグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)の層」を備える構成とするものである。
そうすると、甲4発明において、「熱封緘が可能なグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)の層」を、「化石燃料由来のポリエチレン、又は、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含」むものとすることには阻害要因がある。
そうしてみると、甲4発明において、相違点4-2に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4に記載された発明及び甲5~9の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得た発明ではない。
(2)本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)で検討したのと同じ理由により、本件発明2~4は、甲4に記載された発明及び甲5~9の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得た発明ではない。
第7 むすび
請求項1~5に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700904