特許異議申立
2022-700892
照射装置
- 審判番号
- 2022-700892
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-017511
- 登録番号
- 7043172
- 請求日
- 2022年09月09日
- 審決日
- 2024年10月10日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日機装株式会社
- 【権利者代理人】森下 賢樹
- 【権利者代理人】村田 雄祐
- 【権利者代理人】三木 友由
- 【異議申立人】伊藤 晃子
- 審判長/審判官
- 審判長 光本 美奈子
- 審判官 門前 浩一
- 審判官 村守 宏文
- 分類
- P1651.121-YAA(B01J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7043172号発明「照射装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7043172号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。
特許第7043172号の請求項1-4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 本件特許に係る出願は、平成29年2月2日の出願であって、令和4年3月18日に特許権の設定登録がされ(請求項の数4)、同年同月29日に特許掲載公報が発行され、その後、同年9月9日に特許異議申立人 伊藤 晃子(以下「申立人」という。)により請求項1~4に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。
2 その後の手続は以下のとおりである。
令和5年 3月28日付 当審から取消理由通知
令和5年 5月24日 訂正請求及び意見書(特許権者)
令和5年 7月 4日 意見書(申立人)
令和5年10月31日付 当審から取消理由通知(決定の予告)
令和5年12月21日 意見書(特許権者)
第2 訂正の適否
1 本件訂正請求の趣旨
令和5年5月24日にされた訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、訂正の内容を「本件訂正」という。)は、「特許第7043172号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める。」を請求の趣旨とするものである。
2 訂正の内容
本件訂正は、以下の訂正事項からなる。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「算術平均粗さが2μm以下のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で流路内壁面の少なくとも一部が構成される流路構造と、前記流路構造の内部を流れる水に向けて紫外光を照射する光源と、を備える」とあるのを、「流路内壁面である直管の内壁面の少なくとも一部が、算術平均粗さが2μm以下のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で構成される、前記直管を含む流路構造と、前記直管の内部を流れる水に向けて紫外光を照射する光源と、を備える」に訂正する。(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~4も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記PTFEで構成される前記流路内壁面の少なくとも一部は、切削加工により形成される」とあるのを、「前記PTFEで構成される前記直管の前記内壁面の少なくとも一部は、切削加工により形成される」に訂正する。(請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項3、4も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記流路構造は、前記PTFEで構成される直管を含み、」とあるのを、「前記直管は、前記PTFEで構成され、」に訂正する。(請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「前記光源は、波長が250nm~300nmの紫外光を出力する」とあるのを、「前記光源は、波長が250nm~300nmの紫外光を出力し、前記直管の前記内壁面の少なくとも一部にて反射される紫外光が前記直管の軸方向に伝搬する」に訂正する。
(5)一群の請求項について
訂正前の請求項1~4について、請求項2~4はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項といえる。
3 本件訂正の検討
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載される「算術平均粗さが2μm以下のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で流路内壁面の少なくとも一部が構成される流路構造と、前記流路構造の内部を流れる水に向けて紫外光を照射する光源と、を備える」について、訂正後の請求項1における「流路内壁面である直管の内壁面の少なくとも一部が、算術平均粗さが2μm以下のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で構成される、前記直管を含む流路構造と、前記直筐この内部を流れる水に向けて紫外光を照射する光源と、を備える」との記載により、流路内壁面が直管の内壁面であることを特定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上の拡張・変更の有無
訂正事項1は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。
ウ 新規事項の追加の有無
本件特許の願書に添付された明細書(以下「本件明細書」という。)の段落【0014】には「流路構造12は、直管20と、流入管26と、流出管28と、照射窓30と、端部壁32とを備える。」と記載され、段落【0015】には「光源14は、直管20の第1端部22に配置され、照射窓30を介して直管20の内部に向けて直管20の軸方向に紫外光を照射する。」と記載され、段落【0016】には「直管20をPTFEなどのフッ素樹脂材料で構成することにより、光源14からの紫外光を内壁面18で反射させ、直管20の軸方向に紫外光を効率的に伝搬させることができる。」と記載され、段落【0017】には「なお、直管20は、その全体がPTFEで構成されている必要はなく、流体と接触する内壁面18がPTFEで構成されていればよい。例えば、他の樹脂材料もしくは金属材料で構成される管の内面にPTFEのライナを取り付けて直管20を構成してもよい。」と記載されている。これらの記載からみて、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものといえる。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項2に記載される「前記流路内壁面」について、訂正後の請求項2における「前記直管の前記内壁面」との記載により、訂正後の請求項1における「流路内壁面である直管の内壁面」の記載と整合させるものと読み取れる。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
イ 実質上の拡張・変更の有無
訂正事項2は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。
ウ 新規事項の追加の有無
本件明細書の段落【0014】には「流路構造12は、直管20と、流入管26と、流出管28と、照射窓30と、端部壁32とを備える。」と記載され、段落【0015】には「光源14は、直管20の第1端部22に配置され、照射窓30を介して直管20の内部に向けて直管20の軸方向に紫外光を照射する。」と記載され、段落【0016】には「直管20をPTFEなどのフッ素樹脂材料で構成することにより、光源14からの紫外光を内壁面18で反射させ、直管20の軸方向に紫外光を効率的に伝搬させることができる。」と記載され、段落【0017】には「なお、直管20は、その全体がPTFEで構成されている必要はなく、流体と接触する内壁面18がPTFEで構成されていればよい。例えば、他の樹脂材料もしくは金属材料で構成される管の内面にPTFEのライナを取り付けて直管20を構成してもよい。」と記載されている。これらの記載から、当該訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものといえる。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項3に記載される「前記流路構造は、前記PTFEで構成される直管を含み」について、訂正後の請求項3における「前記直管は、前記PTFEで構成され」との記載により、訂正後の請求項1における「直管を含む流路構造」の記載と整合させるものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
イ 実質上の拡張・変更の有無
訂正事項3は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。
ウ 新規事項の追加の有無
本件明細書の段落【0016】には「直管20は、フッ素系樹脂材料で構成され、例えば、全フッ素化樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で構成される。」と記載されており、当該訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものといえる。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的
訂正事項4は、訂正前の請求項4に記載される「前記光源は、波長が250nm~300nmの紫外光を出力する」について、訂正後の請求項4における「前記光源は、波長が250nm~300nmの紫外光を出力し、前記直管の前記内壁面の少なくとも一部にて反射される紫外光が前記直管の軸方向に伝搬する」との記載により、光源から照射される紫外光の伝搬を具体的に特定し、さらに限定するものと解される。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
イ 実質上の拡張・変更の有無
訂正事項4は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。
ウ 新規事項の追加の有無
本件明細書の段落【0016】には「直管20をPTFEなどのフッ素樹脂材料で構成することにより、光源14からの紫外光を内壁面18で反射させ、直管20の軸方向に紫外光を効率的に伝搬させることができる。」と記載されることから、当該訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号を目的としたものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5、6項に適合するものであるから、本件訂正を認める。
第3 本件発明及び本件明細書の記載
1 本件発明
前記第2のとおり本件訂正は認められるから、本件の請求項1~4の特許に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の記載により特定される以下のとおりの発明(以下「本件発明1」~「本件発明4」といい、まとめて「本件発明」ということもある。)である。
「【請求項1】
流路内壁面である直管の内壁面の少なくとも一部が、算術平均粗さが2μm以下のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で構成される、前記直管を含む流路構造と、
前記直管の内部を流れる水に向けて紫外光を照射する光源と、を備えることを特徴とする照射装置。
【請求項2】
前記PTFEで構成される前記直管の前記内壁面の少なくとも一部は、切削加工により形成されることを特徴とする請求項1に記載の照射装置。
【請求項3】
前記直管は、前記PTFEで構成され、
前記光源は、前記直管の内部を流れる水に向けて前記直管の軸方向に紫外光を照射するよう配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の照射装置。
【請求項4】
前記光源は、波長が250nm~300nmの紫外光を出力し、前記直管の内壁面の少なくとも一部にて反射される紫外光が前記直管の軸方向に伝搬することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の照射装置。」
2 本件明細書及び図面には次の記載がある。
「【0016】
直管20は、第1端部22から第2端部24に向けて軸方向に延在する。直管20は、フッ素系樹脂材料で構成され、例えば、全フッ素化樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で構成される。PTFEは、化学的に安定した材料であり、耐久性、耐熱性および耐薬品性に優れ、紫外光の反射率が高い材料である。直管20をPTFEなどのフッ素樹脂材料で構成することにより、光源14からの紫外光を内壁面18で反射させ、直管20の軸方向に紫外光を効率的に伝搬させることができる。」
「【0021】
直管20の内壁面18を構成するフッ素系樹脂材料は、表面エネルギーが高いために超撥水性を示す。そのため、内壁面18に微細な凹凸が存在していると、その凹凸に気泡が付着しやすく、気泡がいったんできると除去されにくい。本発明者らの知見によれば、PTFE表面の算術平均粗さRaが2μmを超えると、表面に気泡の付着が確認され、Raが9μm以上となると多数の気泡が付着することが分かっている。
【0022】
直管20の内壁面18に気泡が付着すると、流体と気泡の屈折率差により気泡表面で反射ないし散乱が生じ、直管20の内部の紫外光照度分布に影響を及ぼす。気泡の発生箇所は一定とは限らないため、気泡の発生数や発生場所等に応じて流路内の照度分布が変化し、流体に照射される紫外光量にばらつきが生じてしまう。また、フッ素系樹脂材料の表面では拡散反射が主体的であり、入射する紫外光が様々な方向に散乱されるのに対し、気泡表面では鏡面反射が主体的であり、入射する紫外光が特定の方向に強く反射されやすい。その結果、気泡が生じると流路内の照度分布が不均一になりやすい。本実施の形態では、気泡の発生による照射量のばらつきを低減するため、内壁面18の算術平均粗さRaを2μm以下としている。
【0023】
図2は、比較例に係る流路内の照度分布を模式的に示すグラフであり、流路内の径方向の照度分布の時間変化を示している。本比較例では、内直径が40mm、流路内壁面の算術平均粗さRaが4μmのPTFE管を使用し、光源から150mm離れた位置で照度分布を計測した。PTFE管の内部は純水で満たされている。図2は、複数回のタイミングで計測した照度分布のグラフを示しており、光強度が最大となったときの強度値を1として規格化している。図示されるように、流路内壁面の表面粗さが大きい場合には光強度のばらつきが見られ、最大で約30%の強度変化が生じていることが分かる。
【0024】
図3は、実施例に係る流路内の照度分布を模式的に示すグラフであり、流路内壁面の算術平均粗さRaが1.8μmのPTFEを用いた場合の照度分布の時間変化を示している。本実施例においても、内直径が40mmのPTFE管を使用し、PTFE管の内部に純水を満たした状態で、光源から150mm離れた位置で照度分布を計測した。図3においても、複数回のタイミングで計測した照度分布のグラフを示しており、光強度が最大となったときの強度値を1として規格化している。本実施例では、流路内壁面の表面粗さが小さいために光強度のばらつきが小さく、最大で約5%の強度変化しか生じていない。このように、表面粗さを2μm以下とすることで流路内の照度分布の時間変化を小さくし、照射量のばらつきを低減することができる。」
「【0030】
上述の実施の形態では、流路内壁面の全体にフッ素系樹脂材料を用いる場合を示した。変形例においては、流路内壁面の一部にフッ素系樹脂材料が用いられてもよい。流路の配壁面の一部に用いられるフッ素系樹脂材料について表面粗さRaを2μm以下にすることにより、フッ素系樹脂表面の気泡の付着を抑制し、フッ素系樹脂表面での紫外光の反射特性を安定化させることができる。」
「【図2】
[図:0001418182000001.jpg]
」
「【図3】
[図:0001418182000002.jpg]
」
第4 特許異議申立ての理由及び当審が通知した取消理由の概要
1 申立人が申し立てた理由は、下記のとおりである。
本件発明1~4は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証~第5号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であって、本件発明1~4に係る特許は、同法第113条第2項の規定により取り消されるべきものである。
2 令和5年3月28日付及び令和5年10月31日付けで通知した取消理由は次のとおり。
本件発明1~4は、甲第1号証に記載された発明及び甲3~甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であって、本件発明1~4に係る特許は、同法第113条第2項の規定により取り消されるべきものである。
3 証拠方法などの一覧
(1)特許異議の申立書と共に申立人が提示した証拠(以下、申立人が提示した甲第1号証~甲第5号証を「甲1」~「甲5」という。)
甲1:特表2016-511138号公報
甲2:M. Krasowska外2名、「Air at hydrophobic surfaces and kinetics of three phase contact formation」、Advances in Colloid and Interface Science、147-148(2009)、155~169頁
甲3:里川 孝臣編、ふっ素樹脂ハンドブック、日刊工業新聞社、1990年、54~55頁
甲4:Firas M. Al Quran、「Machining Accuracy and Stability During Drilling of Thermoplastics」、Journal of Applied Sciences、7(1)(2007)、141~144頁
甲5:PASCU Cristina Ileana外2名、「Research about Surface Quality of Polytetrafluoroethylene (Teflon) after Inner Turning」、Applied Mechanics and Materials、Vol.809-810(2015)、213~219頁
(2)当審が職権で追加した証拠
引用文献A:特許第5406416号公報
(3)申立人が意見書と共に提出した文献
参考資料1:特開2016-523594号公報
参考資料2:明畠高司(外2名)、「気泡層内の光強度分布」、化学工学論文集第2巻第6号(1976年)、583~588頁
(4)特許権者が意見書と共に提示した証拠(以下、特許権者が提示した乙第1号証~乙第5号証を「乙1」~「乙5」という。)
乙1:特開2009-203107号公報
乙2:特開2001-351387号公報
乙3:特開2000-227671号公報
乙4:川井成子(外1名)、PTFE加工品の精度と成形品の方向性の解説、バルカー技術誌、No.32、19~21頁(2017年)
乙5:原幹也(外3名)、切削条件がPTFEの加工面性状に与える影響に関する研究、2013年度砥粒加工学会学術講演会講演論文集、213~216頁
第5 証拠方法などの記載事項
1 甲1には次の記載がある。
「【0011】
本発明の実施形態によれば、一以上のLEDモジュールは、液体殺菌のための光源に用いられ、UV液体処理装置に含まれてよい。それぞれのUV LEDモジュール(先行技術ではまた「ダイ」としても知られている)は、半導体ウエハの上に列を作って配置される複数のLEDを含む。LEDモジュールは、液体殺菌工程の効率を上げるためにカスタマイズされた一以上の列に配置されていてよい。いくつかのLEDモジュールは、微生物を不活性化することのできる波長で光を発するように構成されている。例えば、LEDモジュールは、窒化アルミニウム(AlN)と、窒化ガリウム(GaN)結晶と、(すなわち、半導体ウエハ)を含み、殺菌範囲(すなわち、約200~320nm)の波長でUV光を放射してよい。それぞれのLEDモジュールは、標準的なTO-3半導体パッケージに接続されてよい。LEDモジュールは、LEDモジュールのそれぞれが、別体の電源に接続されるように組み込まれてよい。追加的に、又は代替的に、LEDモジュールの一つのアレイは、一つの電源が、一以上のLEDモジュールに電力を供給するように組み込まれてもよい。」
「【0016】
ここでいくつかの例示的な実施形態を示す図2~図4を参照する。殺菌装置は、水路の外に位置するLEDモジュールアレイから水路内の液体に照射(発光)された光を伝達する窓を含む。窓は、水路の一端に配置されてよい。
【0017】
図2Aは、発明のいくつかの例示的な実施形態におけるUV液体処理装置を、概念的に示す。装置100は、液体を運ぶ水路110を含み、処理する液体を受け入れる入口120と、処理された液体を排出する出口125とを含んでよい。水路110は、入口120及び出口125の間で複数の液体の流路を規定するように設計されてよい。装置100は、液体を照らすために、UV LEDモジュール205のアレイを含む。UV LEDモジュールアレイ205は、アレイホルダ200の曲面235の上に配置されてよく、カスタマイズされた空間の光束分布を水路内に生じて、望ましい線量分布のUV線量を生み出す。装置100は、さらに、アレイ205と水路110の液体の間に、視覚的な窓210を含んでよい。
【0018】
水路110は、水路110及び水路の端部112内に位置する内部の給水管111を含んでよい。液体は、液体入口120から給水管111に入ってよい。液体は、内側の管111を介してホルダ200へ流れ、それから管111と水路110の間に形成された隙間を介して液体出口125へ流れてよい。いくつかの実施形態では、水路110及び管111は、円筒状の同心の管であってよい。いくつかの実施形態では、水路110及び内側の管111は、視覚的に透明であり、例えば、UV光に対して透過性であってよい。代替的に、水路110は、少なくとも部分的に反射コーティングでコートされており、例えば出口125及び入口120を含む水路端部112が、反射コーティングでコートされていてよい。水路110及び内側の管111は、視覚的に透明な素材、例えば、クォーツやポリテトラフルオロエチレンを含んでよい。選択的に、水路110は、外側の管又はハウジング(図示せず)の内部に位置されてもよい。ハウジングは、水路110を保護するために適切な素材を含んでよく、例えば、外側のハウジングは、様々な金属や合金、セラミック素材等を含んでよい。空気の隙間が水路110及びハウジングの間に形成されてもよい。
・・・
【0021】
窓210は、少なくとも一つのレンズを含むか、又は、望ましい入口角で、LEDモジュールアレイ205から照射される光線のほとんどを方向づけることによって、水路内でカスタマイズされた空間の光束分布を生じさせる適切な光学的な素材を含んでよい。例えば、望ましい入口角は、LEDアレイ205から放たれる光線を、全反射に対する臨界角よりも大きな角度で、水路110の内面にぶつけることができるような角度であってよい。いくつかの実施形態では、水路110の外表面の一部は、反射性の素材で覆われてよく、塗装された部分の内部表面にぶつかる光線が、裏面鏡効果を利用して液体へと逆に反射する。窓210は、LEDモジュールアレイ205から放射される光の50%以上が、水路110内で完全に内部で反射されることを確実にするように設計されてよい。
・・・
【0028】
図3Dは、水路110内のカスタマイズされた空間の光束分布のコンピューターシミュレーションを示す図であり、空間の光束分布は、面235上に配置されたLEDモジュール115及び116から照射されるUV光線により形成される。シミュレーションは、Breault Reserach APEX線追跡ソフトウェアを用いてなされた。面235の曲率半径及び面上のアレイ205におけるLEDモジュール115のそれぞれの位置は、LEDモジュール115により照射される光の大部分が、全反射(TIR)のための臨界角を越える角度で、水路110の壁にぶつかり、一度以上液体に反射するように決定されたことが、シミュレーションにより示される。当業者に理解されるように、窓210は、LEDモジュール115から照射される線の光路に影響を与えなくてもよく、また代替的に、例えば窓210がレンズを含むとき、LEDモジュール115から照射される線の光路に影響を与えてもよい。このように、いくつかの実施形態では、面235の幾何学的な面積(例えば、曲率半径)及び窓210に含まれるレンズの特徴が、そのようなシミュレーションに基づいて決定されてよい。」
「【0048】
図6Cは、3つの例示的なUV光線470、475及び480の光路及び伝播を示す。光線470及び475は、LEDモジュールアレイ406から照射され、全反射のための臨界角を越えた角度で、水路310の面にぶつかる光線の大部分を示す。光線480は、全反射のための臨界角を越えた角度で、水路310の面にぶつかり、水路から出ていく光線の例である。LEDアレイ406及び405と、面435及び436は、光線480のように光線の数を最小限にするように設計される。いくつかの実施形態では、LEDモジュールアレイ405及び406におけるLEDモジュールのそれぞれの位置は、LEDモジュールのそれぞれから照射される光が、実質的に全反射及び/又は裏面鏡効果を介して、水路内で伝播するように予め設計されてよい。LEDアレイは、水路の内部又は外部に位置されてよい。
・・・
【0051】
水路は、光を透過する素材、例えば、クォーツ、又はポリテトラフルオロエチレンのような、例えば、UV透過素材を含んでよい。透明な素材は、200~320nmの間のスペクトル領域で、光の50%より多くを透過させるどんな素材でもよい。水路は、クォーツの水路を保護するために保護ハウジングによって囲まれていてよい。ハウジングは、チューブ又はパイプの形状をし、光(例えば、UV光)を吸収及び/又は反射してよい。ハウジングの壁の非限定的な例として、例えばステンレススチール壁のような金属の壁、例えばコンクリート又はプラスチック壁その他のような非金属の壁を含んでよい。
【0052】
ハウジングと水路との間には、空気の隙間が形成されていてよい。いくつかの実施形態によれば、透明な素材の中を流れる液体の流れは、導波管のように働き、そして少なくとも光の一部、例えば、照射される光度(例えばUV度)の半分が、光学的に透明な水路とこれを囲む媒体との間の面に全反射してよい。本発明の実施形態によれば、照射される光度の少なくとも50%が、光学的に透明なスリーブとこれを囲む媒体との間の面に、全反射で反射される。」
「【0054】
図7に、そのようなスイッチの例示の図が示されている。図7のスイッチは、水の流れのみで駆動されるスイッチの例として示されている。本発明の実施形態は、特定のスイッチの使用には限定されない。図7は、発明のいくつかの実施形態による、水の蛇口近傍における消毒液のための装置500の例を示す。装置500は、UV透過水路510及び外側の半透明のパイプ512を含む。いくつかの実施形態において、水路510の少なくとも一部は、反射コーティングによりコートされていてよい。隙間511が、水路510とパイプ512との間に形成されてよい。隙間511は、Oリングのようなガスケット508を用いて、水から封止されてよい。水は、装置500に入口506から入り、出口507から出て行ってよい。装置500は、第1スイッチ528、第2スイッチ530、DC電源のような電源又は電源供給ユニット520を含む、LEDアレイ525をさらに含んでよい。」
「【図2A】
[図:0001418182000003.jpg]
【図2B】
[図:0001418182000004.jpg]
」
「【図3D】
[図:0001418182000005.jpg]
」
「【図6C】
[図:0001418182000006.jpg]
」
「【図7】
[図:0001418182000007.jpg]
」
2 甲2には次の記載がある。
甲2は外国語のため、当審訳を記載する。
(1)155頁ABSTRACT
「
[図:0001418182000008.jpg]
」
「要約
本レビューは、湿潤膜の破裂と三相接触形成の動力学に対する疎水性固体表面での空気の存在の重要性に焦点を当てている。空気への親和性は、疎水性表面の典型的な特徴であるが、見過ごされたり、考慮されなかったりすることがしばしばある。先に空気と接触した疎水性の表面が水に浸されると、空気はその表面に付着したままになる。長期にわたる疎水性力の起源、及びこれらの相互作用が疎水性表面に付着したナノバプルの架け橋によるものであったことを示すデータについて議論される。レビューの大部分は、疎水性表面に存在する空気(ナノバブル、マイクロバブル、及び/又は空気膜)が、表面粗さが異なるいくつかの平坦なテフロンプレートとの気泡衝突の際に、液体膜の破裂及び三相接触形成が促進したことを示すデータの説明及び解析に向けられる。全てのテフロンプレートは、高い疎水性(接触角約100°~130゜)を持っていたが、三相接触(TPC)の形成及び衝突する気泡の付着の時間は、プレートの表面粗さにより大きく形響を受けた。TPC形成の時間は、表面粗さが1μm末満から50μm超まで増加した場合、80超から2~3msまで短縮された。表面粗さが粗いということは、水に浸ったテフロンプレートに多くの空気が閉じ込められたことを意味する。TPC形成及び気泡付着の促進は、空気の存在及びテフロン表面での再分散によるものであることを示す追加の実験的証拠が与えられる:i)プレート浸水時間を引き延ばすことが素早い付着をもたらした;ii)不規則な消失するエアポケットがテフロン表面に記録された;iii)最初の衝突の際にテフロン表面に残った付随的な気泡が付着を促進した;iv)非常に粗い「テフロンV」表面の場合、最初の衝突の際に付着が常に発生したが、高濃度のn-オクタノール及びn-ヘプタノール溶液においては、更に、2回目の衝突時に跳ね返り、付着が発生した;v)気泡の運動エネルギーが表面エネルギーに変換される度合いは、疎水性(テフロン)表面との衝突の際、親水性表面との衝突よりも有意に小さかった。水に浸されたテフロンプレート上の空気の閉じ込め及び再分散のメカニズムが示される。」
(2)160頁左欄36行~右欄8行
「
[図:0001418182000009.jpg]
[図:0001418182000010.jpg]
[図:0001418182000011.jpg]
」
「最近、我々は、テフロン表面での三相接触形成の時間が空気の存在に強く影響されることを観測した[21,92-98]。テフロンは、疎水性固体のモデルとして使用され(接触角100°~130°)、その表面粗さは、機械加工により種々に変えられた(表1参照)。衝突する気泡による三相接触(TPC)形成の動態は、ハイスピードカメラ(1182Hz)を使用して監視した。実験手順の詳細は、他の論文で示されている[21,92-98]。
表1に示すテフロンプレートの表面粗さは、光学顕微鏡写真から評価した。異なる粗さのテフロンプレートとの気泡衝突の経過を示す連続的な写真の一覧が表2に示されている。「テフロンI」、「テフ.ロンII」、及び「テフロンIII」の表面に衝突する気泡は、最初の衝突の際には付着せずに逆方向に跳ね返ったことがわかる。最も粗い「テフロンIV」及び「テフロンV」の表面の場合、気泡は、最初の衝突時に付着した。したがって、表2に示す結果は、TPC形成及び気泡付着の時間的尺度に関して表面粗さの重要性を示している。表面粗さが増すと、TPC形成及び気泡付着に必要な時間が80ms以上から約2.5msに大幅に短縮された。
表1
テフロンプレート
-------------------
プレート 表面粗さ
-------------------
テフロンI 1μm以下
テフロンII 1μm以下
テフロンIIA 10~15μm
テフロンIII 30~60μm
テフロンIV 50~80μm
テフロンV 80~100μm
-------------------
表2に見られるように、TPC形成の時間は「テフロンIV」と「テフロンV」で同じであった。これは、50μm以上のオーダーの粗さが、最初の衝突の際に気泡付着を保証するのに十分であることを示している。約1~80μm(表2)のテフロンの表面粗さの増加は、TPC形成に必要な時間(83.6から2.5msまで)のこのような大幅な短縮を引き起こしており、非常に驚かされる。」
(3)161頁
「
[図:0001418182000012.jpg]
[図:0001418182000013.jpg]
[図:0001418182000014.jpg]
」
「表2
蒸留水中で表面粗さが異なる複数のテフロンプレートに気泡を衝突させた時の気泡の形状の脈動及び跳ね返りを示す連続写真
(表の1行目)
プレート 衝突回数 表面粗さが異なる複数のテフロンプレートに衝突させた時の気泡の写真
(表外の下方)
気泡の球相当半径は、1.48±0.03mm」
(4)162頁左欄7~25行
「
[図:0001418182000015.jpg]
」
「テフロンの表面粗さによって付着した気泡の周囲径が変化する理由を考察してみる。RyanとHemmingsen[17]及びSnoswell[18]らによって、乾燥した疎水性表面を溶液に浸している間、微視的な気泡が、溝や傷、隙間に閉じ込められ得るという報告がなされた。文献[21,94-98]において報告された我々の研究結果は、疎水性の固体表面でのマイクロバブルの存在が、衝突する気泡の付着を促進する最も重要なパラメータの1つになり得ることも示している。表面の粗さが大きいということは、空洞や傷が大きくなることを意味し、それゆえ、そのような表面を水相に浸漬する際に、より多くの気体が閉じ込められる可能性がある。これは、表3に示すデータによって確認される。すべての場合において、衝突する気泡のサイズは、同じ(db=1.48mm)であり、気泡の付着した境界の直径が大きいほど、テフロンの粗い表面により多くの空気があったことを示している。気泡の付着した境界の最大直径は、最も粗い表面にあり、最も速いTPC形成及び気泡付着もあった。これは、TPC形成の促進が、粗い表面のより大きな空洞に閉じ込められたより大きい体積の気体によるものであることを示している。」
(5)162頁右欄
「
[図:0001418182000016.jpg]
」
「表3
表面粗さが異なる複数のテフロンプレートに付着した気泡の写真及び三相接触(TPC)境界の直径
(表の1行目)
プレート 付着した気泡 三相接触(TPC)境界の直径」
3 甲3には次の記載がある。
(1)54頁下方
「
[図:0001418182000017.jpg]
」
(2)55頁7~12行
「
[図:0001418182000018.jpg]
」
4 甲4には次の記載がある。
甲4は外国語のため、申立人が提出した訳文を記載する
(1)141頁Abstract
「
[図:0001418182000019.jpg]
」
「要約:この研究は、熱可塑性樹脂の熱伝導率の低さの加工精度への影響を実験的に提示する試みである。この場合、機械加工された表面の粗さ、切削中に発生する最大温度、及び穿孔された試験片の寸法精度が決定された。実行された研究は、ツールの送り、切削速度、及びホールの深さを増加させることより、生成される温度が上昇することを示している。大きなドリル径の使用は、切削中の温度をわずかに上昇させる要因となる。機械加工された材料の温度を考慮すると、冷却なしでテフロンを穿孔する際の切削速度は、100m/minを超えるべきではない。加圧空気による冷却では、穿孔作業は、最大200m/minの速度で実行できる。この場合、切削ゾーンで発生する温度が約30~40℃に低下するからである。直径の2倍長のホールを高速で穿孔し、必要な精度を得ることができる。」
(2)143頁Table3.
「
[図:0001418182000020.jpg]
」
5 甲5には次の記載がある。
甲5は外国語のため、申立人が提出した訳文を記載する
(1)213頁Abstract
「
[図:0001418182000021.jpg]
」
[要約:オリジナリティの高いこの研究には、外径58mm、内径32mmのテフロン軸受筒が作製された。さまざまな切削送りでの内側旋削後、粗さのパラメータを測定するために、部品が半分に切断された。粗さパラメータRa、Rz、及びRqは、電子粗さテスターMitutoyo SJ-201 P(日本)で測定された。本論文では、作製された6つのサンプルの各々についての微小な凹凸の画像が提示されている。さまざまな粗さパラメータの図表もまた、この研究で与えられている。送り量の増加に伴って粗さが増加する傾向にあるが、Ra及びRzに関して、幾つかの異常もまたサンプル3及びサンプル4に現れている。Rzパラメータのサンプル5及びRqパラメータのサンプル6では、値の減少が発生しているが、幾何学的には上昇傾向にあるはずである。テフロン旋削では、刃に何ら跡はないが、切断プロセスは均一ではない。しかしながら、この材料は金属ではないので、均一な構造を有しておらず、その構造はもたらされた粗さに影響を与える。これが、これらの実験によって確立された矛盾の原因である。]
(2)215頁左欄
「
[図:0001418182000022.jpg]
」
6 引用文献Aには、次の記載がある。
「【0043】
加工方法は、ピストン部材10の形状から考えて、通常は旋盤による切削加工が選択される。切削加工に用いられる刃物(バイト)は、PTFEの表面をある程度滑らかに削ることができるような、例えば、ハイス鋼、超硬、多結晶ダイヤモンド、単結晶ダイヤモンドなどがあげられる。図13は切削部分の部分拡大断面図で、刃物で削り取られた加工溝12間に断面略三角形の凸条13が形成されることになる。ここで加工溝12の溝底12aから凸条13の頂部までの高さが最大高さ粗さRz(換言すれば、10点平均粗さ、即ち溝深さ)である。実際の測定データを図25、26に示す。図25は凸条13のピッチPが50μmの場合で、最大高さ粗さRzが2.3μm(この時、算術平均粗さRaが0.36μm)であり、後述する液漏れ試験では偽薬の液漏れはなかった。図26は凸条13のピッチPが100μmの場合で、最大高さ粗さRzが6.6μm(この時、算術平均粗さRaが1.54μm)であり、後述する液漏れ試験では偽薬の液漏れが認められた。なお、測定は(株)東京精密製の表面形状解析装置を用いた。」
7 参考文献1には次の記載がある。
「【0013】
メインシリンダ管の内部容積の方にメインシリンダに沿って、当該端部キャップでUV光源から発せられる光線を向けるために、または、複数の反射の後にそこに到達するために、端部キャップ(単数、複数)の部分が、放物線状もしくは円形またはそれらの組み合わせとして、リフレクタとして形成される、ということによって、端部キャップの反射特性は、さらに増加され得る。
メインシリンダ管に沿ったUV放射の反射を増加させるために、メインシリンダ管の少なくとも一部の内部周辺の表面は、UV反射材料、好ましくはPTFEもしくはアルミニウムまたはステンレス鋼を備えて形成され得る。」
「【0030】
メインシリンダ管の内部周辺の壁のUV反射特性は、UV放射の複数の反射のために、および、内部の容積における流体の放射および処置の効果的な分配を提供する。
PCBもまた、UV反射材料から完全にもしくは部分的に作られ得、または、かかる材料を備えて部分的にもしくは完全に覆われ得、もしくは塗装され得る。被覆の1つの可能性は、拡張されたPTFE、例えば0.5mmの厚さにおいてGORE(商標)から利用可能なシートの使用である。アルミニウムもまた、望ましいUV反射特性を達成するために、支持シリンダのガラスまたは他の1つの材料上の塗装またはスパッタリングによって代替的に使用および応用され得る。UV放射に対して曝されるPCBの面は、LED(単数、複数)によって生産されるUVエネルギーの反射および利用を最大化するために、PTFEでスパッタされ得、または代替的に、拡張されたPTFE箔のシートをクラッド接合させ得る。」
8 参考資料2には次の記載がある。
(1)583頁左欄1~3行
「
[図:0001418182000023.jpg]
」
(2)583頁左欄下から10行~下から4行
「
[図:0001418182000024.jpg]
」
(3)583頁右下のFig.1
「
[図:0001418182000025.jpg]
」
第6 取消理由についての当審の判断
1 引用発明
前記第5、1に摘記した甲1の段落【0011】には「UV液体処理装置」が記載されており、段落【0018】には、「水路110及び管111は、円筒状の同心の管であってよい。」及び「水路110は、・・・クォーツまたはポリテトラフルオロエチレン・・・を含んでよい。」と記載されており、同段落【0016】には、「LEDモジュールアレイから水路内の液体に照射(発光)された光を伝達する」と記載されている。また、甲1の段落【0017】及び【0018】には、「UV液体処理装置」の「液体を運ぶ水路110」、「液体を照らすため」の「UV LEDモジュール205のアレイ」、「水路110及び水路の端部112内に位置する内部の給水管111」が記載され、「水路110及び管111は、円筒状の同心の管であ」り、「水路110及び内側の管111は、視覚的に透明であり、例えば、UV光に対して透過性であってよ」く、「代替的に、水路110は、少なくとも部分的に反射コーティングでコートされており」、「水路110及び内側の管111は、視覚的に透明な素材、例えば、クォーツやポリテトラフルオロエチレンを含んでよい」ことが記載されている。さらに、甲1の段落【0051】には、「水路は、光を透過する素材、例えば、クォーツ、又はポリテトラフルオロエチレンのような、例えば、UV透過素材を含んでよい。」と記載されている。
したがって、甲1には、「UV透過素材であるクォーツやポリテトラフルオロエチレンを含む、同筒状の同心の管である水路及び内側の管と、
前記水路の内部を流れる水に向けてUV光を照射するUVLEDモジュールと、
を備えるUV液体処理装置。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
2 引用発明と本件発明1の対比・判断
(1)対比
引用発明の「円筒状の・・・管である水路」は、本件発明1の「直管を含む流路構造」に相当し、引用発明の直管は「UV透過素材であるクォーツやポリテトラフルオロエチレンを含む」ことから、本件発明1の「流路内壁面である直管の内壁面の少なくとも一部がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で構成される」を充足する。
引用発明の「UV光」、「UVLEDモジュール」「UV液体処理装置」は、本件発明1の「紫外光」、「紫外光を照射する光源」、「照射装置」にそれぞれ相当する。
そうすると、本件発明1と引用発明は、
「流路内壁面である直管の内壁面の少なくとも一部がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で構成される、前記直管を含む流路構造と、
前記直管の内部を流れる水に向けて紫外光を照射する光源と、を備えることを特徴とする照射装置。」の点で一致し、本件発明1は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の「算術平均粗さが2μm以下」であることが特定されているのに対して、引用発明においては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)はUV透過素材として記載されており、算術平均粗さは特定されていない点(以下「相違点1」という。)で相違する。
(2)相違点1についての判断
ア 令和5年10月31日付け取消理由における上記相違点1についての検討(同第6、2(4)ア、イ)は次のとおりである。
「第6 当審の判断
・・・
2 引用発明と本件発明1の対比・判断
・・・
(4)相違点1についての判断
・・・
ア 前記第5、1に摘記した甲1の段落【0021】には、「望ましい入口角は、LEDアレイ205から放たれる光線を、全反射に対する臨界角よりも大きな角度で、水路110の内面にぶつけることができるような角度であってよい。」と記載されている。ここで、「入口角」は、「入射角」の誤記と認められる。そして、これを言い換えると、全反射に対する臨界角よりも小さな入射角とすると、全反射せず、光が屈折し、外部に漏れることになる。
イ ここで、反射する面または屈折する面に凹凸が存在すると、部分的に入射角が異なることになるから、全反射が保証されなくなるので、引用発明において、ポリテトラフロロエチレン樹脂の面に凹凸をできるだけ少なくすることは動機付けられる。
・・・
4 特許権者の主張について
(1)令和5年5月24日の意見書において、「甲1号証の図3Dによれば、・・・光線は、水路の内面ではなく、水路の外面で反射します。」と主張する。
ア しかしながら、前記第5、1に摘記した甲1の段落【0054】及び【図7】によると、水路に反射コーティングを設けることが記載されているから、この場合は、水路の内面で反射することになる。そうすると、水路内面の凹凸により、光の損失が生じることになる。
イ また、仮に甲1発明が水路の外面で反射するとしても、内面の凹凸は、外表面に至る角度を左右することになるから、内面の凹凸が光の損失につながることは自明である。」
イ 前記アのとおり、取消理由は、甲1発明におけるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の流路に接する内壁面で反射することを主位的な前提とし、仮に、空気に接する外壁面にて反射する場合であっても容易に想到し得るものであるとして、甲1発明について、両立しない二つの場合について、主位的、及び、予備的に容易想到であると説示するものである。
ウ ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の流路に接する内壁面で反射するとの主位的な説示について
前記アの「4 特許権者の主張について」の項目のアで指摘する段落【0054】には、「いくつかの実施形態において、水路510の少なくとも一部は、反射コーティングによりコートされていてよい。」と記載されるとおり、水路に設けた反射コーティング上で光線を反射させることを意図するものであり、少なくとも、内壁面が反射する面であると記載するものではない。
そして、取消理由は内壁面に反射コーティングを設けることを引用発明とするものではなく、しかも、取消理由の理論では、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の内壁面ではなく、当該面上に設けた反射コーティング面上の凹凸を少なくすることを当業者は動機づけられると指摘するものであるから、ポリテトラフルオロエチレン樹脂の面に凹凸をできるだけ少なくすることは動機付けられる旨の取消理由の説示と整合するものではない。
むしろ、前記第5の段落【0052】、【0021】、【図3D】及び【図6C】等の甲1の記載に接した当業者は、特許権者が令和5年5月24日付け意見書の(5-2)において「甲1号証では、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を透明材料として使用し、透明材料と空気の界面(つまり、水路110の外面)にて紫外光を反射させることを意図しております。」と主張するとおり、甲1には、空気に接する外壁面にて反射することが記載されていると解すると認められる。そもそも、水の屈折率(1.33)とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の屈折率(約1.35)の違いから、水とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の境である内壁面で全反射が生じる可能性がないことは、技術常識をふまえた当業者であれば当然理解するところであるから、前記アの整理は、その前提において誤りである。
エ ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の外壁面で反射するとの予備的説示について
甲1の記載は前記ウのとおりではあるものの、前記第5の7に摘記した参考文献1の段落【0013】の記載によればPTFEはUV反射材料であり、この場合、紫外光(UV)は内壁面で反射して外壁面までは届かないのであるから、このような科学的事実と異なる甲1の開示に基づいて、本願発明1は当業者が容易に想到し得たものであるとすることもできない。
オ 前記ウ及びエのとおりであるから、甲1の記載から、内壁面を平滑にしようとする動機付けがあるとはいえなし、また、他にその動機付けとなる証拠も見いだせない。
カ 効果について
本件の図2には、流路内壁面の表面粗さが大きい(4μm)場合には光強度のばらつきが見られ、最大で約30%の強度変化が生じていることが、また、本件の図3には、表面粗さを2μm以下とすることで流路内の照度分布の時間変化を小さくし、照射量のバラツキを低減することができることが記載されている(段落【0023】~【0024】、【図2】、【図3】)。
このように、本件明細書及び図面には、本件発明1は、流体に作用する紫外光量のばらつきを抑え、照射装置の照射性能を安定化させることができるという有利な効果を奏するものであることが記載されているところ、このような効果は、本件発明1の構成から当業者が予測できた範囲の効果を超えるものであるといえる。
キ 以上から、本件発明1は、甲1発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明とはいえない。
(3)本件発明2~4についての判断
本件発明2~4は、本件発明1を包含し、さらに発明特定事項を付加した発明であるから、本件発明1と同様に甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明1~4は、いずれも進歩性を欠如するとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではないから、その特許を、取消理由により取り消すべきものとすることはできない。
第7 取消理由に採用しなかった特許異議申立理由についての判断
1 申立人の主張の概要
申立人は、甲2発明として、「表面粗さが1μm未満であるPTFE。」が認定でき、甲2から表面粗さが小さいほど、気泡がPTFE表面に付着しにくいことが読み取れるとして、甲1発明において流体中のPTFEの表面に気泡が付着しにくくすることを目的として、甲2発明を適用することは当業者が容易になし得ることと主張する。
2 当審の判断
前記第5の2(2)及び(1)のとおり、甲2には、「気泡付着の時間的尺度に関して表面粗さの重要性」が記載され、「表面粗さが増すと・・・気泡付着に必要な時間が・・・大幅に短縮された」こと、及び、「表面粗さが粗いということは、水に浸ったテフロンプレートに多くの空気が閉じ込められたことを意味する。」と記載されている。
しかしながら、当該記載は、気泡付着に起因するUV光の光量や反射特性に何ら示唆を与えるものではないから、当該記載をもって、甲1発明のポリテトラフルオロエチレンについて表面の粗さを一定以下とすることが動機づけられるとはいえない。
また、前記第5の8(2)のとおり、参考資料2には、溶液中の気泡について「光は直進し、気泡にあたると一部は反射し、残りは気泡内に屈折して入る。気泡内で光は吸収されながら進み、界面で一部は反射され、残りは屈折して溶液内に戻る。入射光はこのような過程を繰り返して進む間に減衰する。」と記載されているものの、当該記載は、流体内の気泡の特性を示すものであり、内壁面に構成されるPTFEの性状に対して示唆を与えるものとはいえないから、当該記載をもって、甲1発明のポリテトラフルオロエチレンについて表面の粗さを一定以下とすることが動機づけられるともいえない。
したがって、甲1発明において甲2発明を適用することに動機付けがないから、申立人の主張は採用できない。
第8 むすび
以上のとおり、本件発明1~4は、甲1に記載された発明、並びに、甲1に記載された事項及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではなく、本件発明1~4に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~4に係る発明を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700892