特許異議申立
2022-700865
異物検出装置および異物検出方法
- 審判番号
- 2022-700865
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-080485
- 登録番号
- 7029343
- 請求日
- 2022年09月05日
- 審決日
- 2023年03月29日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】アンリツ株式会社
- 【権利者代理人】西村 教光
- 【権利者代理人】鈴木 典行
- 【異議申立人】鈴木 佐知子
- 審判長/審判官
- 審判長 福島 浩司
- 審判官 伊藤 幸仙
- 審判官 ▲高▼見 重雄
- 分類
- P1651.121-YAA(G01V) / P1651.113-YAA(G01V) / P1651.161-YAA(G01V) / P1651.537-YAA(G01V) / P1651.536-YAA(G01V) / P1651.851-YAA(G01V) / P1651.853-YAA(G01V) / P1651.857-YAA(G01V)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第29条の2、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7029343号発明「異物検出装置および異物検出方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7029343号の明細書、特許請求の範囲を令和5年1月10日提出の訂正請求書に添付された、訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕〔5〕について訂正することを認める。
特許第7029343号の請求項2,4,5に係る特許を維持する。
特許第7029343号の請求項1,3に係る特許についての特許異議の申し立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7029343号の請求項1ないし5に係る特許についての出願(以下「本願」という。)は、平成30年4月19日に出願されたものであり、令和4年2月22日にその特許権の設定登録がされ、令和4年3月3日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年 9月 5日 : 特許異議申立人 鈴木佐知子(以下「申立人
」という。)による請求項1ないし5に
係る特許に対する特許異議の申立て及び
甲第1ないし11号証の提出
令和4年11月 9日付け: 取消理由通知書
令和5年 1月10日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和5年 3月 6日 : 申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否についての判断1.訂正の内容
本件訂正請求(令和5年1月10日提出の訂正請求書による訂正請求)による訂正の内容は、以下の(1)ないし(10)のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、
「近赤外光を出射する光源部(3)と、
前記近赤外光が照射された葉菜類(W)を撮像する撮像部(4)と、
前記撮像部が撮像した近赤外画像における前記葉菜類と異物としての虫(M)の光のスペクトルの吸収の違いを利用して前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別する異物判別手段(6c)とを備えたことを特徴とする異物検出装置。」
と記載されているのを削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2において、
「前記光源部(3)は、近赤外領域において前記虫(M)が前記葉菜類(W)に対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲から選択される波長を中心波長とする近赤外光、または前記波長範囲で分光される複数波長の近赤外光を出射することを特徴とする請求項1記載の異物検出装置。 」
と記載されているのを、
「近赤外光を出射する光源部(3)と、
前記近赤外光が照射された葉菜類(W)を撮像する撮像部(4)と、
前記撮像部が撮像した近赤外画像における前記葉菜類と異物としての虫(M)の光のスペクトルの吸収の違いを利用して前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別する異物判別手段(6c)とを備え、
前記光源部(3)は、近赤外領域において前記虫(M)が前記葉菜類(W)に対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲から選択される波長を中心波長とする近赤外光、または前記波長範囲で分光される複数波長の近赤外光を出射することを特徴とする異物検出装置。」
に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3において、
「前記撮像部(4)は、近赤外領域において前記虫(M)が前記葉菜類(W)に対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲で複数波長に分光した近赤外画像を出力することを特徴とする請求項1記載の異物検出装置。 」
と記載されているのを削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4において、
「前記異物判別手段(6c)は、複数波長に分光された前記近赤外画像に基づいて、当該近赤外画像中の前記虫が強調されるような画像処理を施す画像処理手段(6d)を備えたことを特徴とする請求項3に記載の異物検出装置。」
と記載されているのを、
「近赤外光を出射する光源部(3)と、
前記近赤外光が照射された葉菜類(W)を撮像する撮像部(4)と、
前記撮像部が撮像した近赤外画像における前記葉菜類と異物としての虫(M)の光のスペクトルの吸収の違いを利用して前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別する異物判別手段(6c)とを備え、
前記撮像部(4)は、近赤外領域において前記虫(M)が前記葉菜類(W)に対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲で複数波長に分光した近赤外画像を出力し、
前記異物判別手段(6c)は、複数波長に分光された前記近赤外画像に基づいて、当該近赤外画像中の前記虫が強調されるような画像処理を施す画像処理手段(6d)を備え、前記画像処理を施した近赤外画像に基づいて前記葉菜類に付着した虫の有無を判別することを特徴とする異物検出装置。」
に訂正する。
(5)訂正事項5
願書に添付した明細書の段落【0006】において、
「上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された異物検出装置は、近赤外光を出射する光源部3と、
前記近赤外光が照射された葉菜類Wを撮像する撮像部4と、
前記撮像部が撮像した近赤外画像における前記葉菜類と異物としての虫Mの光のスペクトルの吸収の違いを利用して前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別する異物判別手段6cとを備えたことを特徴とする。」
と記載されているのを削除する。
(6)訂正事項6
願書に添付した明細書の段落【0007】において、
「請求項2に記載された異物検出装置は、請求項1の異物検出装置において、前記光源部3は、近赤外領域において前記虫Mが前記葉菜類Wに対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲から選択される波長を中心波長とする近赤外光、または前記波長範囲で分光される複数波長の近赤外光を出射することを特徴とする。」
と記載されているのを、
「請求項2に記載された異物検出装置は、
近赤外光を出射する光源部3と、
前記近赤外光が照射された葉菜類Wを撮像する撮像部4と、
前記撮像部が撮像した近赤外画像における前記葉菜類と異物としての虫Mの光のスペクトルの吸収の違いを利用して前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別する異物判別手段6cとを備え、
前記光源部3は、近赤外領域において前記虫Mが前記葉菜類Wに対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲から選択される波長を中心波長とする近赤外光、または前記波長範囲で分光される複数波長の近赤外光を出射することを特徴とする。」
と訂正する。
(7)訂正事項7
願書に添付した明細書の段落【0008】において、
「請求項3に記載された異物検出装置は、請求項1の異物検出装置において、前記撮像部4は、近赤外領域において前記虫Mが前記葉菜類Wに対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲で複数波長に分光した近赤外画像を出力することを特徴とする。」
と記載されているのを削除する。
(8)訂正事項8
願書に添付した明細書の段落【0009】において、
「請求項4に記載された異物検出装置は、請求項3の異物検出装置において、前記異物判別手段6cは、複数波長に分光された前記近赤外画像に基づいて、当該近赤外画像中の前記虫が強調されるような画像処理を施す画像処理手段6dを備えたことを特徴とする。」
と記載されているのを、
「請求項4に記載された異物検出装置は、
近赤外光を出射する光源部3と、
前記近赤外光が照射された葉菜類Wを撮像する撮像部4と、
前記撮像部が撮像した近赤外画像における前記葉菜類と異物としての虫Mの光のスペクトルの吸収の違いを利用して前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別する異物判別手段6cとを備え、
前記撮像部4は、近赤外領域において前記虫Mが前記葉菜類Wに対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲で複数波長に分光した近赤外画像を出力し、
前記異物判別手段6cは、複数波長に分光された前記近赤外画像に基づいて、当該近赤外画像中の前記虫が強調されるような画像処理を施す画像処理手段6dを備え、前記画像処理を施した近赤外画像に基づいて前記葉菜類に付着した虫の有無を判別することを特徴とする。」
と訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項5において、
「近赤外光を出射するステップと、
前記近赤外光が照射された葉菜類(W)を撮像するステップと、
前記葉菜類を撮像した近赤外画像における前記葉菜類と異物としての虫(M)の光のスペクトルの吸収の違いを利用して前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別するステップとを含むことを特徴とする異物検出方法。」
と記載されているのを、
「近赤外光を出射するステップと、
前記近赤外光が照射された葉菜類(W)を撮像して、近赤外領域において虫(M)が前記葉菜類に対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲で複数波長に分光した近赤外画像を出力するステップと、
前記葉菜類を撮像した前記近赤外画像における前記葉菜類と異物としての前記虫(M)の光のスペクトルの吸収の違いを利用し、前記複数波長に分光された前記近赤外画像に基づいて、当該近赤外画像中の前記虫が強調されるような画像処理を施すステップと、
前記画像処理を施した近赤外画像に基づいて前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別するステップとを含むことを特徴とする異物検出方法。」
に訂正する。
(10)訂正事項10
願書に添付した明細書の段落【0010】において、
「請求項5に記載された異物検出方法は、近赤外光を出射するステップと、前記近赤外光が照射された葉菜類Wを撮像するステップと、
前記葉菜類を撮像した近赤外画像における前記葉菜類と異物としての虫Mの光のスペクトルの吸収の違いを利用して前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別するステップとを含むことを特徴とする。」
と記載されているのを、
「請求項5に記載された異物検出方法は、近赤外光を出射するステップと、
前記近赤外光が照射された葉菜類Wを撮像して、近赤外領域において虫Mが前記葉菜類Wに対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲で複数波長に分光した近赤外画像を出力するステップと、
前記葉菜類を撮像した前記近赤外画像における前記葉菜類と異物としての前記虫Mの光のスペクトルの吸収の違いを利用し、前記複数波長に分光された前記近赤外画像に基づいて、当該近赤外画像中の前記虫が強調されるような画像処理を施すステップと、
前記画像処理を施した近赤外画像に基づいて前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別するステップとを含むことを特徴とする。」
と訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項、独立特許要件
(1)訂正事項1及び3について
ア 訂正事項1及び3は、それぞれ訂正前の請求項1及び3の記載を削除するものである。したがって、訂正事項1及び3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項1及び3は、訂正前の請求項1及び3の記載を削除するものであるから、訂正前の請求項1及び3の記載について、訂正前の請求項1及び3に記載された発明のカテゴリーを変更するものでもなく、かつ、訂正前の請求項1及び3に記載された発明の対象や目的を変更するものとはならない。したがって、訂正事項1及び3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 訂正事項1及び3は、訂正前の請求項1及び3の記載を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載に訂正前の請求項1の記載を組み込んで、訂正前の請求項2を独立型式請求項へ改める訂正である。したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 訂正事項2は、前記「ア」のとおり訂正前の請求項2を独立型式請求項へ改める訂正をするものであるから、訂正前の請求項2の記載について、訂正前の請求項2に記載された発明のカテゴリーを変更するものでもなく、かつ、訂正前の請求項2に記載された発明の対象や目的を変更するものとはならない。したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 訂正事項2は、訂正前の請求項2を独立型式請求項へ改める訂正をするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)訂正事項4について
ア 訂正事項4は、訂正前の請求項4の記載に請求項1及び請求項3の記載を組み込み、更に「前記葉菜類と異物としての虫(M)の光のスペクトルの吸収の違いを利用して前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別」し「複数波長に分光された前記近赤外画像に基づいて、当該近赤外画像中の前記虫が強調されるような画像処理を施す画像処理手段(6d)を備えた」「異物判別手段(6c)」を「前記撮像部が撮像した近赤外画像における前記葉菜類と異物としての虫(M)の光のスペクトルの吸収の違いを利用して前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別」し、「複数波長に分光された前記近赤外画像に基づいて、当該近赤外画像中の前記虫が強調されるような画像処理を施す画像処理手段(6d)を備え、前記画像処理を施した近赤外画像に基づいて前記葉菜類に付着した虫の有無を判別する」「異物判別手段(6c)」に限定することで、訂正前の請求項4に係る発明の異物検出装置を減縮しようとするものである。したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ また、訂正事項4は、訂正前の請求項4の記載に訂正前の請求項1及び3の記載を組み込んで、訂正前の請求項4を独立型式請求項へ改める訂正である。したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
ウ 上記「ア」から明らかなように、訂正事項4は、訂正前の請求項4に係る発明である異物検出装置において、異物判別手段(6c)の葉菜類と異物としての虫(M)の光のスペクトルの吸収の違いを利用して近赤外画像中の葉菜類に付着した虫の有無を判別する手法を、複数波長に分光された近赤外画像に基づいて、当該近赤外画像中の前記虫が強調されるような画像処理を施しその画像処理を施した近赤外画像に基づいて葉菜類に付着した虫の有無を判別する手法に限定するものであり、訂正前の請求項4の記載について、訂正前の請求項4に記載された発明のカテゴリーを変更するものでもなく、かつ、訂正前の請求項4に記載された発明の対象や目的を変更するものとはならない。したがって、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
エ そして、本願の明細書の発明の詳細な説明には、「異物判別手段(6c)」に係る説明として、段落【0031】ないし【0034】には、
「【0031】
異物判別手段6cは、撮像部4が出力する近赤外画像における葉菜類Wと虫Mの光のスペクトルの吸収の違いを利用して近赤外画像中の葉菜類Wに付着した虫Mの有無を判別する。さらに説明すると、異物判別手段6cは、撮像部4が出力する複数波長の近赤外画像のうち特定波長(虫Mが葉菜類Wに対して特徴的な吸収特性を有する波長範囲の波長)の近赤外画像において、予め設定される強度閾値より小さい、または大きい強度の画素の塊が存在すると、異物としての虫Mが葉菜類Wに付着していると判別する。
【0032】
また、異物判別手段6cは、近赤外画像上の葉菜類Wに付着した虫Mを強調するため、撮像部4から得られる複数波長の近赤外画像を画像処理する画像処理手段6dを含む。
【0033】
画像処理手段6dは、例えば撮像部4にて分光された複数波長の近赤外画像に対し、例えば各画素ごとの強度の和、差、比、微分値、相関係数を計算し、その計算結果に基づいて虫Mのみを強調して画像処理した新たな近赤外画像を作成する。
【0034】
なお、画像処理手段6dは、撮像部4から取得した近赤外画像中の虫Mのみを強調する画像処理を行っており、その手法については特に限定されないものである。」(下線は当審で付与した。)
と記載され、段落【0041】には、
「【0041】
また、別の判別処理として、異物判別手段6cに含まれる画像処理手段6dは、2台の近赤外分光カメラ4a,4bにて複数波長に分光された近赤外画像中の虫Mのみが強調されるように所定の画像処理を施して新たな近赤外画像を作成する。」(下線は当審で付与した。)
と記載されており、これらの記載を含む明細書の記載の全趣旨に基づけば、「異物判別手段(6c)」が、近赤外画像中の前記虫が強調されるような画像処理を施しその「画像処理を施した近赤外画像に基づいて葉菜類に付着した虫の有無を判別する」ことは、願書に添付された明細書に記載した事項である。よって訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(4)訂正事項5について
訂正事項5は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、段落【0006】の記載を削除するものであるから、訂正事項5は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(5)訂正事項6について
訂正事項6は、上記訂正事項2に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、段落【0007】の記載を訂正事項2と整合するように訂正するものであるから、訂正事項6は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(6)訂正事項7について
訂正事項7は、上記訂正事項3に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、段落【0008】の記載を削除するものであるから、訂正事項7は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(7)訂正事項8について
訂正事項8は、上記訂正事項4に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、段落【0009】の記載を訂正事項4と整合するように訂正するものであるから、訂正事項8は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(8)訂正事項1ないし8の一群の請求項及び独立特許要件について
訂正前の請求項1ないし4について、請求項2ないし4は請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1ないし4に対応する訂正後の請求項1ないし4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当する。
また、本件においては、訂正前の請求項1ないし5について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1ないし4に係る訂正事項1ないし8に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(9)別の訂正単位とする求めについて
訂正請求人は、令和5年1月10日提出の訂正請求書の「7.(1)3)ウ」において、訂正後の請求項2及び4について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
訂正後の請求項2及び4はそれぞれ独立請求項形式に記載が改められており、訂正後の請求項1及び3は削除されていることから、一群の請求項である訂正前の請求項1ないし4はそれぞれ独立した請求項となっている。
したがって、訂正後の請求項2及び4をそれぞれ別途訂正することを認める。
(10)訂正事項9について
ア 請求項5に係る
「近赤外光を出射するステップと、
前記近赤外光が照射された葉菜類(W)を撮像するステップと、
前記葉菜類を撮像した近赤外画像における前記葉菜類と異物としての虫(M)の光のスペクトルの吸収の違いを利用して前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別するステップとを含むことを特徴とする異物検出方法。」
を、
「近赤外光を出射するステップと、
前記近赤外光が照射された葉菜類(W)を撮像して、近赤外領域において虫(M)が前記葉菜類に対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲で複数波長に分光した近赤外画像を出力するステップと、
前記葉菜類を撮像した前記近赤外画像における前記葉菜類と異物としての前記虫(M)の光のスペクトルの吸収の違いを利用し、前記複数波長に分光された前記近赤外画像に基づいて、当該近赤外画像中の前記虫が強調されるような画像処理を施すステップと、
前記画像処理を施した近赤外画像に基づいて前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別するステップとを含むことを特徴とする異物検出方法。」
に変更する訂正は、訂正前の「前記近赤外光が照射された葉菜類(W)を撮像するステップ」を「前記近赤外光が照射された葉菜類(W)を撮像して、近赤外領域において虫(M)が前記葉菜類に対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲で複数波長に分光した近赤外画像を出力するステップ」に限定することで明らかにし、「前記葉菜類を撮像した近赤外画像における前記葉菜類と異物としての虫(M)の光のスペクトルの吸収の違いを利用して前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別するステップ」を「前記葉菜類を撮像した前記近赤外画像における前記葉菜類と異物としての前記虫(M)の光のスペクトルの吸収の違いを利用し、前記複数波長に分光された前記近赤外画像に基づいて、当該近赤外画像中の前記虫が強調されるような画像処理を施すステップと、前記画像処理を施した近赤外画像に基づいて前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別するステップ」に限定することにより明らかにすることで、訂正前の請求項5に係る発明の異物検出方法を減縮しようとするものである。したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項9は、「近赤外光が照射された葉菜類(W)を撮像するステップ」を「前記近赤外光が照射された葉菜類(W)を撮像して、近赤外領域において虫(M)が前記葉菜類に対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲で複数波長に分光した近赤外画像を出力するステップ」に、「前記葉菜類を撮像した近赤外画像における前記葉菜類と異物としての虫(M)の光のスペクトルの吸収の違いを利用して前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別するステップ」を「前記葉菜類を撮像した前記近赤外画像における前記葉菜類と異物としての前記虫(M)の光のスペクトルの吸収の違いを利用し、前記複数波長に分光された前記近赤外画像に基づいて、当該近赤外画像中の前記虫が強調されるような画像処理を施すステップと、前記画像処理を施した近赤外画像に基づいて前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別するステップ」に、それぞれ上位概念から下位概念にするものであり、訂正前の請求項5の記載について、訂正前の請求項5に記載された発明のカテゴリーを変更するものでもなく、かつ、訂正前の請求項5に記載された発明の対象や目的を変更するものとはならない。したがって、訂正事項9は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ そして、本願の明細書の発明の詳細な説明には、「近赤外光が照射された葉菜類(W)を撮像するステップ」に係る説明として、段落【0022】及び【0025】には、
「【0022】
光源部3(光源3a,3b)は、近赤外領域において虫Mが葉菜類Wに対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む近赤外光、すなわち、近赤外領域において虫Mと葉菜類Wで吸収特性の異なる波長帯域の近赤外光を出射する。さらに説明すると、例えば葉菜類Wがレタス、虫Mがカメムシの場合には、近赤外領域において図2に示すような波長-強度特性(葉菜類W:点線、虫M:実線)が得られる。そして、近赤外領域において図2の1200~1230nmの波長範囲では、虫Mが葉菜類Wに対して特徴的な吸収特性を示していることが判る。」(下線は当審で付与した。)
「【0025】
撮像部4は、光源部3から近赤外光が照射された状態でベルトコンベア2上を搬送される葉菜類Wを撮像するもので、近赤外分光カメラで構成される。近赤外分光カメラ4は、撮像対象の葉菜類Wの像(イメージ)の各点について光の強度情報とスペクトル情報(複数種類の波長の光の強度分布情報)を捉え、近赤外領域において虫Mが葉菜類Wに対して特徴的な吸収特性を有する1200~1230nmを含む波長範囲(例えば900~1700nm)を等間隔の波長で分光した複数波長の近赤外画像を出力する。」(下線は当審で付与した。)
と記載されており、これらの記載から、「近赤外光が照射された葉菜類(W)を撮像するステップ」が、「前記近赤外光が照射された葉菜類(W)を撮像して、近赤外領域において虫(M)が前記葉菜類に対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲で複数波長に分光した近赤外画像を出力するステップ」を含むことは、願書に添付された明細書に記載した事項である。
また、明細書の発明の詳細な説明には、「前記葉菜類を撮像した近赤外画像における前記葉菜類と異物としての虫(M)の光のスペクトルの吸収の違いを利用して前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別するステップ」に係る説明として、段落【0031】ないし【0034】には、
「【0031】
異物判別手段6cは、撮像部4が出力する近赤外画像における葉菜類Wと虫Mの光のスペクトルの吸収の違いを利用して近赤外画像中の葉菜類Wに付着した虫Mの有無を判別する。さらに説明すると、異物判別手段6cは、撮像部4が出力する複数波長の近赤外画像のうち特定波長(虫Mが葉菜類Wに対して特徴的な吸収特性を有する波長範囲の波長)の近赤外画像において、予め設定される強度閾値より小さい、または大きい強度の画素の塊が存在すると、異物としての虫Mが葉菜類Wに付着していると判別する。
【0032】
また、異物判別手段6cは、近赤外画像上の葉菜類Wに付着した虫Mを強調するため、撮像部4から得られる複数波長の近赤外画像を画像処理する画像処理手段6dを含む。
【0033】
画像処理手段6dは、例えば撮像部4にて分光された複数波長の近赤外画像に対し、例えば各画素ごとの強度の和、差、比、微分値、相関係数を計算し、その計算結果に基づいて虫Mのみを強調して画像処理した新たな近赤外画像を作成する。
【0034】
なお、画像処理手段6dは、撮像部4から取得した近赤外画像中の虫Mのみを強調する画像処理を行っており、その手法については特に限定されないものである。」(下線は当審で付与した。)
と記載され、段落【0041】には、
「【0041】
また、別の判別処理として、異物判別手段6cに含まれる画像処理手段6dは、2台の近赤外分光カメラ4a,4bにて複数波長に分光された近赤外画像中の虫Mのみが強調されるように所定の画像処理を施して新たな近赤外画像を作成する。」(下線は当審で付与した。)
と記載されており、これらの記載を含む明細書の記載の全趣旨に基づけば、「前記葉菜類を撮像した近赤外画像における前記葉菜類と異物としての虫(M)の光のスペクトルの吸収の違いを利用して前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別するステップ」が、「前記葉菜類を撮像した前記近赤外画像における前記葉菜類と異物としての前記虫(M)の光のスペクトルの吸収の違いを利用し、前記複数波長に分光された前記近赤外画像に基づいて、当該近赤外画像中の前記虫が強調されるような画像処理を施すステップと、前記画像処理を施した近赤外画像に基づいて前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別するステップ」を含むことは、願書に添付された明細書に記載した事項である。
よって訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(11)訂正事項10について
訂正事項10は、上記訂正事項9に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、段落【0010】の記載を訂正事項9と整合するように訂正するものであるから、訂正事項8は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(12)訂正事項9及び10の一群の請求項及び独立特許要件について
訂正前の請求項5は独立の請求項であり、これに従属する請求項は存在しない。したがって、訂正前の請求項5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項を構成するものではない。
また、本件においては、訂正前の請求項1ないし5について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項5に係る訂正事項9及び10に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕〔5〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし5に係る発明(以下「本件発明1ないし5」は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】(削除)
【請求項2】
近赤外光を出射する光源部(3)と、
前記近赤外光が照射された葉菜類(W)を撮像する撮像部(4)と、
前記撮像部が撮像した近赤外画像における前記葉菜類と異物としての虫(M)の光のスペクトルの吸収の違いを利用して前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別する異物判別手段(6c)とを備え、
前記光源部(3)は、近赤外領域において前記虫(M)が前記葉菜類(W)に対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲から選択される波長を中心波長とする近赤外光、または前記波長範囲で分光される複数波長の近赤外光を出射することを特徴とする異物検出装置。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
近赤外光を出射する光源部(3)と、
前記近赤外光が照射された葉菜類(W)を撮像する撮像部(4)と、
前記撮像部が撮像した近赤外画像における前記葉菜類と異物としての虫(M)の光のスペクトルの吸収の違いを利用して前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別する異物判別手段(6c)とを備え、
前記撮像部(4)は、近赤外領域において前記虫(M)が前記葉菜類(W)に対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲で複数波長に分光した近赤外画像を出力し、
前記異物判別手段(6c)は、複数波長に分光された前記近赤外画像に基づいて、当該近赤外画像中の前記虫が強調されるような画像処理を施す画像処理手段(6d)を備え、前記画像処理を施した近赤外画像に基づいて前記葉菜類に付着した虫の有無を判別することを特徴とする請求項3に記載の異物検出装置。
【請求項5】
近赤外光を出射するステップと、
前記近赤外光が照射された葉菜類(W)を撮像して、近赤外領域において虫(M)が前記葉菜類に対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲で複数波長に分光した近赤外画像を出力するステップと、
前記葉菜類を撮像した前記近赤外画像における前記葉菜類と異物としての前記虫(M)の光のスペクトルの吸収の違いを利用し、前記複数波長に分光された前記近赤外画像に基づいて、当該近赤外画像中の前記虫が強調されるような画像処理を施すステップと、
前記画像処理を施した近赤外画像に基づいて前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別するステップとを含むことを特徴とする異物検出方法。」
第4 特許異議申立理由の概要
申立人は、令和4年9月5日提出の特許異議申立書(以下「異議申立書」という。)において、証拠として甲第1号証ないし甲第11号証を提出し、以下の異議申立理由(以下「異議申立理由1ないし5」という。)によって、本件訂正前の請求項1ないし5に係る特許を取り消すべきものである旨を主張している。
<証拠一覧>
甲第1号証:特開2018-146251号公報
甲第2号証:小河原良文,「~消費者から信頼される~非破壊検査技術を用いたレタスの球内腐敗と害虫検出装置の開発」,2016年12月20日作成,https://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/hukyu/h_event/h_event/attach/pdf/dream2-4.pdf
甲第3号証:伊藤忠商事(株)、富士電機計装(株),「近赤外線を利用した紙の乾燥システムについて」,紙パ技協誌,1986年1月,第40巻,第1号,51-58頁
甲第4号証:株式会社ハイベック ホームページ「近赤外線とは」,2015年,http://www.hybec.co.jp/reference/near-infrared-rays.html
甲第5号証:特開2016-80430号公報
甲第6号証:国際公開第2015/083505号
甲第7号証:特開2010-71733号公報
甲第8号証:特開2017-53699号公報
甲第9号証:特表2017-534057号公報
甲第10号証:東洋経済ONLINEホームページ「ローソンのカット野菜、急成長の秘密」,2013年4月9日公開,https://toyokeizai.net/articles/-/13588
甲第11号証:特開2004-301690号公報
(1)異議申立理由1(明確性要件違反)
本件訂正前の請求項1ないし5に係る発明は、いずれも、特許請求の範囲の記載により、特許を受けようとする発明が明確ではない。
(2)異議申立理由2(サポート要件違反)
本件訂正前の請求項1ないし5に係る発明は、いずれも、特許請求の範囲の記載が、発明の詳細な説明に記載したものでない。
(3)異議申立理由3(実施可能要件違反)
本件訂正前の請求項1ないし5に係る発明は、いずれも、これらの発明を実施することができる程度に明細書に必要な事項を記載しているとは認められない。
(4)異議申立理由4(甲第1号証を先願とする法第29条の2違反)
本件訂正前の請求項1ないし5に係る発明は、いずれも、甲第1号証に記載の発明と同一であるから、法第29条の2に違反するものである。
(5)異議申立理由5(甲第2号証を主引例とする新規性違反)
本件訂正前の請求項1,2及び5に係る発明は、いずれも、甲第2号証に記載されたものであるから、新規性を欠くものである。
(6)異議申立理由6(甲第2号証を主引例とする進歩性違反)
本件訂正前の請求項1ないし5に係る発明は、甲第2号証に記載された発明を基に、適宜他の公知文献との組み合わせ等により当業者が極めて容易に想到しうるものにすぎないから、進歩性を欠くものである。
第5 令和5年3月6日提出の申立人意見書の概要
申立人は、令和5年3月6日提出の意見書(以下「申立人意見書」という。)において、令和5年1月10日付け訂正請求書による訂正及び同日付け意見書での主張によっても、該訂正請求書による訂正後の請求項2,4及び5に係る発明はいずれも甲第1号証に記載の発明と実質的に同一であるため、法第29条の2違反の取消理由が存在する旨主張している。
第6 取消理由通知に記載した取消理由について
1.取消理由の概要
本件訂正前の請求項1,3ないし5に係る特許に対して、当審が令和4年11月9日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)取消理由1(拡大先願)本件特許は、本件訂正前の請求項1,3ないし5に係る発明が、甲第1号証として公開された特願2017-38245号の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲または図面に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
<引用文献等一覧>
甲第1号証:特願2017-38245号(特開2018-146251号公報)
2.甲号証の記載
(1)甲第1号証
本件特許に係る出願の出願前である平成29年(2017年)3月1日に出願され、本件特許に係る出願の出願後である平成30年(2018年)9月20日に特開2018-146251号公報(甲第1号証)として公開された、特願2017-38245号(以下「先願甲1」という。)には、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「出願当初明細書等」という。)に、以下の技術事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。なお、先願甲1の出願人及び発明者は、本件特許の特許権者及び発明者とは同一ではない。
ア 「【0006】
本発明は、植物又は植物加工品に混在する異物を非破壊的に、容易、確実に、且つ効率的に検出するとともに、異物の混在した植物又は植物加工品を容易に分離除去することを可能とする異物検出システム、異物検出方法、及びそのためのプログラムを提供することを目的とする。」
イ 「【0007】
(1)本願発明は、検査対象物に対して近赤外線を含む帯域の光を照射する照射部(例えば、後述の「照射部10」)と、前記帯域に含まれる第1の中心波長を有する第1の光による前記検査対象物からの反射光及び/又は透過光を受光することで前記検査対象物を撮像して第1の強度値画像データを取得する第1撮像部(例えば、後述の「第1撮像部21」)と、前記帯域に含まれる第2の中心波長を有する第2の光による前記検査対象物からの反射光及び/又は透過光を受光することで前記検査対象物を撮像して第2の強度値画像データを取得する第2撮像部(例えば、後述の「第2撮像部22」)と、前記第1撮像部の画素座標系の座標値(画像座標系の座標値)と前記第2撮像部の画素座標系の座標値(画像座標系の座標値)との間の対応付けに基づいて、前記検査対象物の表面の各測位点に対応する、前記第1の強度値画像データの画素の強度値と前記第2の強度値画像データの画素の強度値との比である相対強度を算出する相対強度算出手段(例えば、後述の「相対強度算出部71」)と、前記相対強度算出手段により算出された前記検査対象物の表面の各測位点における前記相対強度に基づいて、前記検査対象物に混在する異物を検出する検出手段(例えば、後述の「検出部72」)と、を備える異物検出システム(例えば、後述の「異物検出システム100」)に関する。
【0008】
(2)前記第1撮像部(例えば、後述の「第1撮像部21」)は、前記第1の中心波長を有する第1の光を取得するための光学フィルター(例えば後述の「バンドパス光学フィルター211」)を備えるカメラ(例えば、後述の「第1の赤外線カメラ212」)であり、前記第2撮像部は、前記第2の中心波長を有する第2の光を取得するための光学フィルター(例えば後述の「バンドパス光学フィルター221」)を備えるカメラ(例えば、後述の「第2の赤外線カメラ222)である(1)に記載の異物検出システム。
【0009】
(3)前記検出手段(例えば、後述の「検出部72」)は、前記相対強度算出手段(例えば、後述の「相対強度算出部71」)により算出された前記検査対象物の表面の各測位点における前記相対強度が予め設定された閾値を超えると判定される場合に、前記検査対象物に混在する異物を検出する(1)又は(2)に記載の異物検出システム。
【0010】
(4)前記異物検出システムは、さらに、表示部(例えば、後述の「表示部40」)と、前記表示部に、前記閾値を超える画素を所定の色として、前記第1の強度値画像データ又は前記第2の強度値画像データに重ねて表示する表示制御手段(例えば、後述の「表示制御部73」)と、を備える(3)に記載の異物検出システム。」
ウ 「【0018】
以下、本発明の異物検出システム100の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。ここで、下記の実施形態はいずれも本発明の一例であり、これに限定されるものではない。
なお、本発明において、近赤外線とは、およそ700nmから1400nmの波長を含む帯域の光を意味する。また、特に断らない限り、700nmの近傍の波長(例えば680nmの波長)の光についても、便宜上、近赤外線という。
【0019】
[第1実施形態]
本実施形態における検査対象物1は、搬送ライン上を搬送されるカット野菜であり、異物はカット野菜に付着した虫及び/又は虫の卵とする。
図1は、本実施形態に係る異物検出システム100の全体構成図である。異物検出システム100は、図1に示すように、少なくとも照射部10と、撮像部20と、表示部40と、搬送ライン50と、投影部60と、制御部70と、記憶部80と、を備える。
【0020】
<照射部10>
照射部10は、検査対象物1(カット野菜)に対して近赤外線を含む帯域の光(以下、「近赤外線」という)を照射する。照射部10として、例えば、近赤外線領域を含む広帯域光を発生させるハロゲンランプ(図示せず)を点光源として、複数の点光源から構成されるようにしてもよい。
より具体的には、照射部10は、搬送ライン50上における所定の照射領域51に向けて近赤外線を照射する。照射領域51は、予め、後述の第1撮像部21が撮像する第1画像領域及び第2撮像部22が撮像する第2画像領域を含むように設定される。以下、第1画像領域及び第2画像領域の重なる領域を検査領域52という。後述するように、全ての検査対象物1(カット野菜)は検査領域52を通過するように設定される。
こうすることで、照射部10により照射された近赤外線は、検査領域52に位置する物質、例えば、搬送ライン50の表面及び検査対象物1(カット野菜)の表面に到達し、到達した領域を構成する物質に起因する吸収及び散乱を受け、散乱光が外部に出射されることとなる。
また、透過光を用いた検出を行う場合、照射部10を搬送ライン50の下側に設置し、照射領域51に向けて照射する。そうすることで、照射部10により照射された近赤外線は、検査領域52に位置する物質、例えば、搬送ライン50の裏面及び検査対象物1(カット野菜)の裏面に到達し、到達した領域を構成する物質に起因する吸収を受け、透過光が外部に透過されることとなる。
【0021】
<撮像部20>
撮像部20は、少なくとも2台の撮像部、すなわち第1撮像部21及び第2撮像部22を備える。
第1撮像部21は、例えば近赤外線領域に含まれる第1の中心波長を有する第1の光(以下、「第1近赤外線」ともいう)を取得するためのバンドパス光学フィルター211を備える第1の赤外線カメラ212としてもよい。
また、第2撮像部22は、例えば第1近赤外線とは異なる、近赤外線領域に含まれる第2の中心波長を有する第2の光(以下、「第2近赤外線」ともいう)を取得するためのバンドパス光学フィルター221を備える第2の赤外線カメラ222としてもよい。
こうすることで、第1撮像部21は、照射部10により照射された第1近赤外線を含む近赤外線領域を含む広帯域光が検査領域52に位置する物質、例えば検査対象物1(カット野菜)の表面の各測位点に到達して反射及び/又は透過される反射光及び/又は透過光を受光することで各測位点における第1近赤外線の強度値を含む第1の強度値画像データを取得する。
同様に、第2撮像部22は、照射部10により照射された第2近赤外線を含む近赤外線領域を含む広帯域光が検査領域52に位置する物質、例えば検査対象物1(カット野菜)の表面の各測位点に到達して反射及び/又は透過される反射光及び/又は透過光を受光することで各測位点における第2近赤外線の強度値を含む第2の強度値画像データを取得する。
【0022】
ここで、撮像部20(第1撮像部21と第2撮像部22)は、架台(図示せず)に例えば平行に配置するように固定される。第1撮像部21及び第2撮像部22の撮影レンズ、撮像素子等の構成要素は同一特性のものから構成されることが望ましい。
第1撮像部21及び第2撮像部22は、検査対象物1(カット野菜)の表面の各点の画素情報を、予め設定した時間間隔で取得することができる。例えば、時間間隔として1/30秒を設定することで、第1撮像部21及び第2撮像部22は、1秒間に30コマの画像データ(30fps)を取得することができる。第1撮像部21及び第2撮像部22により計測された画像データには、計測時刻となるタイムスタンプを付すことができる。
時間間隔については、1/30秒に限定されない。例えば、1/24秒、1/12秒等、任意に設定してもよい。なお、第1撮像部21及び第2撮像部22とを時刻同期させるように、後述する制御部70により撮像タイミングを制御することが望ましい。
こうすることで、検査対象物(カット野菜)を後述する搬送ライン50で搬送させて加工作業を行う場合において、搬送ライン50上で搬送される検査対象物1(カット野菜)を撮影しながら、リアルタイムに第1の強度値画像データ及び第2の強度値画像データを取得し、後述するように、検査対象物1(カット野菜)に異物(虫及び/又は虫の卵等)が混在又は付着するか否かを検出することが可能となる。
それにより、作業員は、搬送ライン50上で搬送される検査対象物1(カット野菜)の中から異物(虫及び/又は虫の卵等)が混在又は付着した検査対象物1(カット野菜)を容易に分離除去することができる。」
エ 「【0025】
<表示部40>
表示部40は、例えば液晶ディスプレイ等の表示デバイスにより構成され、制御部70からの指示を受けて画像を表示する。より具体的には、表示部40は、第1撮像部21及び/又は第2撮像部22により撮像される画像データ、また後述するように、検査対象物1(カット野菜)に付着した異物(虫等)の位置情報を表示する。」
オ 「【0028】
<制御部70>
制御部70は、例えば、CPU、RAM,ROM,I/O等を有するプロセッサにより構成され、異物検出システム100の各構成部の制御を行う。CPUは、RAM、ROM又は記憶部80から読み出した異物検出のための各プログラムを実行し、その実行の際には、RAM、ROM、及び記憶部80から情報を読み出し、RAM及び記憶部80に対して情報の書き込みを行う。詳細については後述する。」
カ 「【0030】
図2は、制御部70の機能ブロック図を示す。図2に示すように、制御部70は、相対強度算出手段としての相対強度算出部71と、検出手段としての検出部72と、表示制御手段としての表示制御部73と、投影制御手段としての投影制御部74と、を備える。
【0031】
<相対強度算出部71>
相対強度算出部71は、第1撮像部21の第1画素座標系の画素座標と第2撮像部22の第2画素座標系の画素座標との間の対応付けに基づいて、検査対象物1(カット野菜)の表面の各測位点Pに対応する、第1の強度値画像データの画素の強度値と第2の強度値画像データの画素の強度値との比である相対強度値を算出する。
具体的には相対強度算出部71は、次のように相対強度を算出する。
【0032】
照射部10により近赤外線の照射される検査領域52に位置する物質(例えば、検査対象物1(カット野菜)又は搬送ライン50の表面)の表面の測位点をP、点Pにおいて反射(及び/又は透過)された第1近赤外線を第1撮像部21により撮像した画素(1ピクセル)P1の第1画素座標系における座標値を(u1(P)、v1(P))、点Pにおいて反射された第2近赤外線を第2撮像部22により撮像した画素(1ピクセル)P2の第2画素座標系における座標値を(u2(P)、v2(P))とする。
ここで、前述したように、P1の座標値(u1(P)、v1(P))及びP2の座標値(u2(P)、v2(P))とは第1画素座標系から第2画素座標系への変換行列により対応付けることができる。
【0033】
相対強度算出部71は、全ての点Pについて、第1撮像部21により撮像した第1の強度値画像データに含まれる画素P1及び第2撮像部22により撮像した第2の強度値画像データに含まれる画素P2に基づいて全ての点Pにおける相対強度を算出する。
具体的には、第1画素座標系における画素P1における第1近赤外線の強度値をn(P1)、第2画素座標系における画素P2における第2近赤外線の強度値をn(P2)、点Pにおける相対強度f(P)とすると、相対強度算出部71は、各点Pにおける相対強度f(P)を以下の式1により算出する。
f(P)=n(P1)/n(P2) (式1)
【0034】
<検出部72>
検出部72は、相対強度算出部71により算出された検査対象物1(カット野菜)の表面の各測位点Pにおける相対強度f(P)に基づいて、検査対象物1(カット野菜)に混在又は付着する異物(虫及び/又は虫の卵等)を検出する。
検出部72は、相対強度算出手段71により算出された検査対象物1(カット野菜)の表面の各測位点Pにおける相対強度f(P)が予め設定された閾値を超えるか否かを判定することにより、検査対象物1(カット野菜)に異物(虫及び/又は虫の卵等)が混在又は付着するか否かを検出する。
より具体的には、検出部72は、相対強度算出部71により算出された検査対象物1(カット野菜)の表面の各測位点Pにおける相対強度f(P)が予め設定された閾値を超える場合に、検査対象物1(カット野菜)に異物(虫及び/又は虫の卵等)が混在又は付着すると判定する。
【0035】
<近赤外線分光法について>
ここで、相対強度により、検査対象物1(カット野菜)に異物(虫及び/又は虫の卵等)が混在又は付着するか否かを検出可能な理由について説明する。
近赤外線分光法は、近赤外線領域での分光法で、測定対象に近赤外線を照射し、吸収された度合い(吸光度)、又は反射の変化によって成分を算出する。近赤外線は中赤外線・遠赤外線と比較して吸収が極めて小さいため、切片等を作成することなく、非破壊・非接触での測定が可能となる。
近赤外線は、生体構成物質での吸収率が小さく、特に800nmから1000nmの波長の近赤外線は生体透過率が高いといわれる。そこで、発明者は、最終的に680nmから990nmまでの波長の近赤外線を色々なケースを想定した検査対象物1に照射することによりその強度値を求めた。
具体的には、検査対象物1をカット野菜のみとした場合(ケース1)、検査対象物1をカット野菜の表側に虫又は虫の卵を付着させた場合(ケース2)、検査対象物1をカット野菜の裏側に虫又は虫の卵を付着させた場合(ケース3)、及び虫又は虫の卵のみとした場合(ケース4)、のそれぞれについて、各波長の強度値を求めた。
このような実験を繰り返し行うことにより、発明者は、カット野菜の表側に虫又は虫の卵を付着させた場合(ケース2)、検査対象物1をカット野菜の裏側に虫又は虫の卵を付着させた場合(ケース3)のいずれにおいても、強度値はほぼ同じ値が得られることを確認することができた。
例えば、680nmの波長を第1の波長とし、910nmの波長を第2の波長とする2つの近赤外線による強度値の相対比を算出することで、ケース1と、ケース2からケース4と、を区別することに成功した。さらに、特に、730nmの波長を第1の波長とし、980nmの波長を第2の波長とする2つの近赤外線による強度値の相対比を算出することで、ケース1と、ケース2からケース4と、をより明確に区別することに成功した。
例えば、730nmの波長を第1の波長とし、980nmの波長を第2の波長とした場合、2つの近赤外線による強度値の相対比は、次のとおりとなった。
カット野菜のみとした場合(ケース1):0.13
カット野菜の表側に虫を付着させた場合(ケース2):0.22
カット野菜の裏側に虫を付着させた場合(ケース3):0.22
虫のみとした場合(ケース4):0.18
これはセルロースの吸光率が730nmと980nmの波長帯で下がること、と水の吸光率が980nmの近辺から上がり始めることに起因すると推測される。この結果、光源、装置の設置環境等によって閾値を設定することで、ケース1と、ケース2からケース4と、を区別することができた。
以上のように、発明者は、近赤外線領域に含まれる第1の中心波長を有する第1の光(第1近赤外線)及び第1近赤外線とは異なる、近赤外線領域に含まれる第2の中心波長を有する第2の光(第2近赤外線)による強度値の相対比を算出することで、異物(虫又は虫の卵)が検査対象物1(カット野菜)の表側または裏側の付着に関わらず、異物(虫又は虫の卵)が混在又は付着する検査対象物1(カット野菜)を、非破壊的かつ非接触での検出を可能とする発明を完成することができた。
【0036】
<表示制御部73>
表示制御部73は、表示部40に、検出部72により検出した検査対象物1(カット野菜)に混在又は付着する異物(虫及び/又は虫の卵等)の位置に対応する画素を所定の色(例えば赤色)として、第1の強度値画像データに重ねて表示する。
より具体的には、表示制御部73は、表示部40に、第1の画像座標系に基づいて、第1の強度値画像データを背景として、検査対象物1(カット野菜)に混在又は付着する異物(虫及び/又は虫の卵等)の位置に対応する画素を所定の色(例えば赤色)として前景に表示する。
これにより、オペレータ又は作業員は、表示部40を参照することにより、検査対象物1(カット野菜)に混在又は付着する異物(虫及び/又は虫の卵等)を容易に確認することができる。
【0037】
なお、表示制御部73は、表示部40に、第2の画像座標系に基づいて、第2の強度値画像データを背景として、検査対象物1(カット野菜)に混在又は付着する異物(虫及び/又は虫の卵等)の位置に対応する画素を所定の色(例えば赤色)として前景に表示するようにしてもよい。」
キ 「【0056】
<変形例1>
第1実施形態において、撮像部20は、少なくとも第1撮像部21及び第2撮像部22を備え、それぞれ、第1近赤外線を取得するためのバンドパス光学フィルター211を備える第1の赤外線カメラ212、及び第2近赤外線を取得するためのバンドパス光学フィルター221を備える第2の赤外線カメラ222とした。
これに対して、撮像部20を第1撮像部21及び第2撮像部22を含むことに替えて、1台のマルチスペクトルカメラ又は1台のハイパースペクトルカメラを適用してもよい。マルチスペクトルカメラは、任意に複数波長を選択し、その波長の測定に特化することで、スペクトル測定を可能とする。ハイパースペクトルカメラは、数10バンド以上に分光されたスペクトルを画像1ピクセル毎に取得することができる。こうすることで、撮像部20を、1台のカメラに集約することができる。したがって、撮像部20は1つの画像座標系を備える。
この場合、相対強度算出部71は、全ての点Pを撮像した画素データに含まれる、第1の中心波長を有する第1近赤外線の反射光及び/又は透過光を受光した第1画素及び第2の中心波長を有する第2近赤外線の反射光及び/又は透過光を受光した第2画素を選択し、その両者の強度値に基づいて相対強度を算出することができる。
また、当業者にとって公知の方法(例えばカメラのキャリブレーション)により、点Pの画素座標系における画素座標値(u(P)、v(P))と3次元空間内の座標値(X(P)、Y(P)、Z(P))とを対応付けることができる。
なお、前述したように、カット野菜のZ方向の厚さが十分小さいことから、カット野菜上の点PのZ座標値Z0は、プロジェクターから投影面までの距離で近似してもよい。それにより、ホモグラフィ変換によるキャリブレーションにより、点Pの画素座標系における画素座標値(u(P)、v(P))と3次元空間内の座標値(X(P)、Y(P)、Z0)とを対応付けることができる。
これにより、投影制御部74は、投影部60に対して投影領域53上の位置に向けてマーカーを投影するように制御することができる。また、投影制御部74は、投影部60に対して投影領域53の上のカット野菜の表面に向けてフォーカスを合わせた状態でマーカーを投影するように制御することもできる。」
ク 「【図1】
[図:0001399377000001.jpg]
」
ケ 上記甲第1号証の記載事項及び図面を総合勘案すると、先願甲1には、次の発明(以下「先願甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「植物又は植物加工品に混在する異物を非破壊的に、容易、確実に、且つ効率的に検出するとともに、異物の混在した植物又は植物加工品を容易に分離除去することを可能とする異物検出システム100及び異物検出方法において、
異物検出システム100及び異物検出方法は、
検査対象物1(カット野菜)に対して700nm近傍(例えば680nm)から1400nmの波長を含む帯域の光である近赤外線を含む帯域の光を照射する照射部10と、
前記帯域に含まれる第1の中心波長を有する第1の光による前記検査対象物からの反射光及び/又は透過光を受光することで前記検査対象物を撮像して第1の強度値画像データを取得する第1撮像部21と、前記帯域に含まれる第2の中心波長を有する第2の光による前記検査対象物からの反射光及び/又は透過光を受光することで前記検査対象物を撮像して第2の強度値画像データを取得する第2撮像部22と、を備える撮像部20と、
第1撮像部21及び/又は第2撮像部22により撮像される画像データ、または、検査対象物1(カット野菜)に付着した異物(虫等)の位置情報を表示する表示部40と、
相対強度算出手段としての相対強度算出部71と、検出手段としての検出部72と、表示制御手段としての表示制御部73と、を備えた制御部70と、
を備え、
前記相対強度算出部71は、前記第1撮像部の画素座標系の座標値(画像座標系の座標値)と前記第2撮像部の画素座標系の座標値(画像座標系の座標値)との間の対応付けに基づいて、前記検査対象物の表面の各測位点に対応する、前記第1の強度値画像データの画素の強度値と前記第2の強度値画像データの画素の強度値との比である相対強度を算出し、
前記検出部72は、前記相対強度算出部71により算出された前記検査対象物の表面の各測位点における前記相対強度が予め設定された閾値を超えるか否かを判定することにより、検査対象物1(カット野菜)に異物(虫及び/又は虫の卵等)が混在又は付着するか否かを検出し、
前記表示制御部73は、前記表示部40に、前記閾値を超える画素を所定の色(例えば赤色)として、前記第1の強度値画像データ又は前記第2の強度値画像データに重ねて表示し、
上記相対強度により、検査対象物1(カット野菜)に異物(虫及び/又は虫の卵等)が混在又は付着するか否かを検出可能な理由は、近赤外線は、生体構成物質での吸収率が小さく、特に800nmから1000nmの波長の近赤外線は生体透過率が高い、すなわち、セルロースの吸光率が730nmと980nmの波長帯で下がり、水の吸光率が980nmの近辺から上がり始めることに起因するものであり、680nmから990nmまでの波長の近赤外線を色々なケースを想定した検査対象物1に照射することによりその強度値を求めたところ、680nmの波長を第1の波長とし、910nmの波長を第2の波長とする2つの近赤外線による強度値の相対比を算出することで、カット野菜のみとした場合(ケース1)と、カット野菜の表側に虫を付着させた場合(ケース2)、カット野菜の裏側に虫を付着させた場合(ケース3)、虫のみとした場合(ケース4)のケース2からケース4と、を区別することに成功し、特に、730nmの波長を第1の波長とし、980nmの波長を第2の波長とする2つの近赤外線による強度値の相対比を算出することで、ケース1と、ケース2からケース4と、をより明確に区別することに成功した、というものであり、
前記撮像部20を第1撮像部21及び第2撮像部22を含むことに替えて、1台のマルチスペクトルカメラ又は1台のハイパースペクトルカメラを適用してもよく、マルチスペクトルカメラは、任意に複数波長を選択し、その波長の測定に特化することで、スペクトル測定を可能とするものであり、ハイパースペクトルカメラは、数10バンド以上に分光されたスペクトルを画像1ピクセル毎に取得することができ、こうすることで、撮像部20を、1台のカメラに集約することができるものである、
異物検出システム100及び異物検出方法。」
(2)甲第2号証
本件特許に係る出願の出願前である平成28年(2016年)12月14日から16日に開催された「生産現場の夢トーク2016」にて発表され、農林水産省のホームページに掲載された配付資料である「小河原良文,「~消費者から信頼される~非破壊検査技術を用いたレタスの球内腐敗と害虫検出装置の開発」,2016年12月20日作成,https://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/hukyu/h_event/h_event/attach/pdf/dream2-4.pdf
」(甲第2号証)には、以下の技術事項が記載されている。
ア 「
[図:0001399377000002.jpg]
」(スライド1頁)
イ 「
[図:0001399377000003.jpg]
」(スライド7頁)
ウ 「
[図:0001399377000004.jpg]
」(スライド8頁)
エ 「
[図:0001399377000005.jpg]
」(スライド9頁)
オ 「
[図:0001399377000006.jpg]
」(スライド10頁)
カ 「
[図:0001399377000007.jpg]
」(スライド13頁)
キ 「
[図:0001399377000008.jpg]
」(スライド14頁)
ク 上記「ア」より、非破壊検査技術を用いたレタスの球内腐敗と害虫検出装置の開発の発表であることが看てとれる。
ケ 上記「イ」より、「課題解決の取り組み」として「赤外線分光方式によるレタス球内分析」が読み取れることから、レタスを測定対象とし、赤外線分光方式により、レタス球内を分析することが看てとれる。
コ 上記「ウ」より、「赤外線を利用した方法」として「(1)顕微鏡用マルチスペクトルイメージングシステム」と、「(2)高感度赤外線カメラ」が看てとれる。また、写真から、「(1)顕微鏡用マルチスペクトルイメージングシステム」も、「(2)高感度赤外線カメラ」も、実験室的なところで使用されたことが看てとれる。
サ 上記「エ」より、「赤外線を利用した方法(1)」と記載されていることから、上記「ウ」の「(1)顕微鏡用マルチスペクトルイメージングシステム」を用いて測定されたものであることが看てとれる。また、見える状態での赤外線スペクトル特性グラフでは、測定波長全合成画像での緑点位置でのスペクトルと、赤点位置でのスペクトルとでは、波長700-850nmにおいてその強度に顕著な差が見られること、測定波長全合成画像の赤点位置にはアブラムシがいること、見える状態での赤外線スペクトル特性グラフでは、680-1050nmでスペクトルの強度が0以外であること、は看てとれる。
シ 上記「オ」より、「赤外線を利用した方法(2)」と記載されていることから、上記「ウ」の「(2)高感度赤外線カメラ」を用いて測定されたものであることが看てとれる。また、撮影画像において、葉一枚裏の虫が確認できる画像と確認できない画像が示されていることが看てとれる。
ス 上記「カ」より、高能率レタス選別包装システムは平成29年度導入予定であることが看てとれる。
セ 上記「キ」より、高能率レタス選別包装システムに非破壊検出機能を付加すること、及びそれらを非破壊検査技術を持った検査機器メーカーと現地で共同開発することが看てとれる。
ソ 上記「コ,ス及びセ」より、高能率レタス選別包装システムは平成29年度導入予定であることから、甲第2号証が配布された時点である平成28年(2016年)12月14日から16日においては、高能率レタス選別包装システムは未完成であり、その未完成の高能率レタス選別包装システムに付加する非破壊検出機能は、非破壊検査技術を持った検査機器メーカーと現地で共同開発することから、甲第2号証が配布された時点である平成28年(2016年)12月14日から16日においては、高能率レタス選別包装システムに付加する非破壊検出機能についても未完成であると推察される。
タ 以上のことから、甲第2号証記載事項を総合勘案すると、甲第2号証には次のことが開示されている(以下「甲2開示事項」という。)と認められる。
「非破壊検査技術を用いたレタスの球内腐敗と害虫検出装置の開発において、レタスを測定対象とし、赤外線分光方式により、レタス球内を分析するための検討を行い、
(1)顕微鏡用マルチスペクトルイメージングシステムを用いて、見える状態で680-1050nmでスペクトルの強度を測定した場合、その見える状態での赤外線スペクトル特性グラフでは、測定波長全合成画像での緑点位置でのスペクトルと、赤点位置でのスペクトルとでは、波長700-850nmにおいてその強度に顕著な差が見られ、測定波長全合成画像の赤点位置にはアブラムシがおり、見える状態での赤外線スペクトル特性グラフでは、680-1050nmでスペクトルの強度が0以外であり、
(2)高感度赤外線カメラを用いて、撮影した場合、その撮影画像において、葉一枚裏の虫が確認できる画像と確認できない画像があり、
これらの検証結果を基に、平成29年度導入予定である高能率レタス選別包装システムに、非破壊検査技術を持った検査機器メーカーと現地で共同開発する非破壊検出機能を付加する予定である。」
(3)甲第3号証
本件特許に係る出願の出願前である昭和61年(1986年)1月に発行された、伊藤忠商事(株)、富士電機計装(株),「近赤外線を利用した紙の乾燥システムについて」,紙パ技協誌,1986年1月,第40巻,第1号,51-58頁(甲第3号証)には、以下の技術事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。
「図1に赤外線の波長領域を示す。各種類の赤外線の境界は文献により異なるが0.76~2μm付近の波長領域を近赤外線領域と呼んでいる。
[図:0001399377000009.jpg]
図1 赤外線の波長領域
」(第52頁左欄第18-20行及び図1)
(4)甲第4号証
本件特許に係る出願の出願前である2015年にインターネット上に公開された、株式会社ハイベック ホームページ「近赤外線とは」,2015年,http://www.hybec.co.jp/reference/near-infrared-rays.html(甲第4号証))には、以下の技術事項が記載されている。
ア 「
[図:0001399377000010.jpg]
」
イ 上記図から、「近赤外線は波長が0.8~1.5μmの領域の光を言う」ことが看てとれる。
(5)甲第5号証
本件特許に係る出願の出願前である平成28年(2016年)5月16日に頒布された刊行物である特開2016-80430号公報(甲第5号証)には、以下の技術事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。
「【0025】
光源10は、液体の測定対象物に対して照射する近赤外光を出射する。本実施形態に係る測定装置1で用いられる近赤外光とは、700nm~2500nmの波長帯域の光を指す。光源10は近赤外光を出射可能であれば特に限定されず、例えば、パルス光を出射するような構成であってもよい。」
(6)甲第6号証
本件特許に係る出願の出願前である2015年6月11日に公開された国際公開第2015/083505号(甲第6号証)には、以下の技術事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。
「[0106]
光照射部111は、水平方向(間隙203が延在する方向)に沿って配列された複数のLEDからなる。光照射部111は、連続する搬送コンベア201,202の間隙203上を物品150が通過する際に、間隙203を介して物品150に近赤外線を照射する。なお、近赤外線の波長は、780nm~1100nmである。」
(7)甲第7号証
本件特許に係る出願の出願前である平成22年(2010年)4月2日に頒布された刊行物である特開2010-71733号公報(甲第7号証)には、以下の技術事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。
「【0037】
発光部から発せられた近赤外光は、検出空間部205内の油を透過して、反射部206で反射して再度油を透過する。これにより近赤外光の吸光度が変化する。この近赤外光は光ファイバ106、反射光用光ファイバ109を経て分光光度計105に受光される。分光光度計105では、近赤外領域の波長(約800~1100〔nm〕)を検出可能としており、該受光された光から波長毎の光に分光されたスペクトルが得られ、フローセル200内の油を透過した近赤外光の透過光スペクトルを測定する。信号処理部110は、このような分光光度計105の出力信号を処理する。」
(8)甲第8号証
本件特許に係る出願の出願前である平成29年(2017年)3月16日に頒布された刊行物である特開2017-53699号公報(甲第8号証)には、以下の技術事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。
「【0003】
そこで近年、近赤外線(波長800nm~2500nm)の反射量に対応して輝度を定義した近赤外画像を使用して、物質を判別しようとする試みがなされている。一般的な物質は、近赤外領域の複数の波長で反射率が低下する固有のパターンを持つ。近赤外線に対応する画像では、反射率の低下を画素値の低下として数値化することができる。」
(9)甲第9号証
本件特許に係る出願の出願前である平成29年(2017年)11月16日に頒布された刊行物である特表2017-534057号公報(甲第9号証)には、以下の技術事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。
「【0025】
さらなる副次的な目的は、近赤外線源が900~2600nmの間の波長の光を放射する装置を提供する。」
(10)甲第10号証
本件特許に係る出願の出願前である2013年4月9日にインターネット上に公開された、東洋経済ONLINEホームページ「ローソンのカット野菜、急成長の秘密」,2013年4月9日公開,https://toyokeizai.net/articles/-/13588(甲第10号証))には、以下の技術事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。
「スーパーの生鮮食品売り場やコンビニエンスストアの冷蔵食品コーナーで売られているカット野菜。キャベツやレタスなどを工場で洗浄、あらかじめ切って(カットして)袋に詰め込んだ商品で、開封後、すぐに食べられたり、料理に使えたりする手軽さが利点だ。」
(11)甲第11号証
本件特許に係る出願の出願前である平成16年(2004年)10月28日に頒布された刊行物である特開2004-301690号公報(甲第11号証)には、以下の技術事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。
ア 「【請求項1】
食品と、該食品に含まれる異物および/または夾雑物とに光を照射することによって得られる反射光の可視光および近赤外光の吸収スペクトルを測定し、当該吸収スペクトルに対して2次微分処理を行い、上記食品と上記異物および/または夾雑物との間で異なる2次微分スペクトルを示す波長帯を選定し、
上記食品について、上記波長帯の2次微分分光画像を作成することによって、上記食品に含まれる異物および/または夾雑物を検出することを特徴とする異物および/または夾雑物の検出方法。」
イ 「【0051】
また、本発明の異物・夾雑物の検出方法においては、より多種の異物・夾雑物を検出するために、上述の検出方法において、上記吸収スペクトルの測定を行ったときに、上記食品と上記異物および/または夾雑物との間で異なる吸収スペクトルを示すもう一つの波長帯を選定し、上記食品に対して、上記もう一つの波長帯の分光画像をさらに作成してもよい。」
ウ 「【0077】
上記の方法によれば、食品と異物および/または夾雑物との間で異なる2次微分スペクトルを示す波長帯に限定して2次微分分光画像を作成するため、得られた2次微分分光画像では、食品と異物および/または夾雑物とを容易に判別することができる。そのため、従来法と比べてより高精度で確実な異物および/または夾雑物の検出が実施でき、食品製造過程において、異物および夾雑物の混入の危険性を低下させることができるという効果を奏する。」
エ 上記甲第11号証の記載事項を総合勘案すると、甲第11号証には、次の技術(以下「甲11開示技術」という。)が開示されていると認められる。
「食品と、該食品に含まれる異物および/または夾雑物とに光を照射することによって得られる反射光の可視光および近赤外光の吸収スペクトルを測定し、当該吸収スペクトルに対して2次微分処理を行い、上記食品と上記異物および/または夾雑物との間で異なる2次微分スペクトルを示す波長帯を選定し、上記食品について、上記波長帯の2次微分分光画像を作成することによって、上記食品に含まれる異物および/または夾雑物を検出する技術。」
3.当審の判断
(1)取消理由1(拡大先願)について
ア 本件発明1及び3について
本件発明1及び3は請求項の削除がされたものであることから、本件発明1及び3に対する取消理由は解消された。
イ 本件発明4について
(ア)対比及び判断
本件発明4と先願甲1発明とを比較する。
a 先願甲1発明の「検査対象物1(カット野菜)に対して700nm近傍(例えば680nm)から1400nmの波長を含む帯域の光である近赤外線を含む帯域の光を照射する照射部10」は、本件発明4における「近赤外光を出射する光源部」に相当する。
b 先願甲1発明の「照射部10」から「近赤外線を含む帯域の光を照射」される「検査対象物1(カット野菜)」は、本件発明4の「近赤外光が照射された葉菜類」に相当する。
c 先願甲1発明の「撮像部20」は、「近赤外線を含む」「帯域に含まれる第1の中心波長を有する第1の光による」「検査対象物1(カット野菜)」「からの反射光及び/又は透過光を受光することで前記検査対象物を撮像して第1の強度値画像データを取得する第1撮像部21と、前記帯域に含まれる第2の中心波長を有する第2の光による前記検査対象物からの反射光及び/又は透過光を受光することで前記検査対象物を撮像して第2の強度値画像データを取得する第2撮像部22と、を備える」ことから、本件発明4における「前記近赤外光が照射された葉菜類」「を撮像する撮像部」に相当する。
d 先願甲1発明の「撮像部20」が備える「第1撮像部21」及び「第2撮像部22」で得られる「第1の強度値画像データ」及び「第2の強度値画像データ」は、本件発明4における「撮像部が撮像した近赤外画像」に相当する。
e 先願甲1発明の「検査対象物1(カット野菜)に」「混在又は付着する」「異物(虫」)は、本件発明4における「異物としての虫(M)」に相当する。
f 先願甲1発明の「制御部70」が備える「検出手段としての検出部72」は、「相対強度算出部71により算出された」「検査対象物の表面の各測位点における」「相対強度が予め設定された閾値を超えるか否かを判定することにより、検査対象物1(カット野菜)に異物(虫及び/又は虫の卵等)が混在又は付着するか否かを検出」するものであり、「相対強度算出部71は、前記第1撮像部の画素座標系の座標値(画像座標系の座標値)と前記第2撮像部の画素座標系の座標値(画像座標系の座標値)との間の対応付けに基づいて、前記検査対象物の表面の各測位点に対応する、前記第1の強度値画像データの画素の強度値と前記第2の強度値画像データの画素の強度値との比である相対強度を算出」するものである。すなわち、先願甲1発明の「検出部72」は、検査対象物の表面の同一部位を撮影した第1の強度値画像データおよび第2の強度値画像データに基づいて、検査対象物の表面の同一部位での各画素の相対強度を算出し、該相対強度が予め設定された閾値を超えるか否かを判定することにより、検査対象物1(カット野菜)に異物(虫)が混在又は付着するか否かを検出するものであるから、先願甲1発明の「検出部72」を備えた「制御部70」は本件発明4における「近赤外画像中の」「葉菜類に付着した虫の有無を判別する異物判別手段」に相当する。
g 先願甲1発明の「相対強度算出部71により算出された前記検査対象物の表面の各測位点における前記相対強度」は、「近赤外線は、生体構成物質での吸収率が小さく、特に800nmから1000nmの波長の近赤外線は生体透過率が高い、すなわち、セルロースの吸光率が730nmと980nmの波長帯で下がり、水の吸光率が980nmの近辺から上がり始めること」を利用して「680nmの波長を第1の波長とし、910nmの波長を第2の波長とする2つの近赤外線による強度値の相対比を算出する」または「730nmの波長を第1の波長とし、980nmの波長を第2の波長とする2つの近赤外線による強度値の相対比を算出する」という処理を行い求められた相対強度である。すなわち、先願甲1発明では、撮像部20にて910nmまたは980nmという近赤外波長領域に属する近赤外線を第2の光として第2の強度値画像データを得て、相対強度算出部71はその第2の強度値画像データを用いて検査対象物の表面の各測位点における相対強度を算出することから、先願甲1発明と本件発明4とは「撮像部が撮像した近赤外画像における」「葉菜類と異物としての虫(M)の光のスペクトルの吸収の違いを利用して前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別する」点で共通する。
h 先願甲1発明における「撮像部20」は、上記「g」で検討したとおり、910nmまたは980nmという近赤外波長領域に属する近赤外線を第2の光として第2の強度値画像データを得る撮像部20であることから、本件発明4の「近赤外領域において前記虫(M)が前記葉菜類(W)に対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲で複数波長に分光した近赤外画像を出力する」「撮像部」に相当する。
i 先願甲1発明における「制御部70」が備える「表示制御部73」は、「表示部40に、前記閾値を超える画素を所定の色(例えば赤色)として、前記第1の強度値画像データ又は前記第2の強度値画像データに重ねて表示」するものである。ここで、「表示部40」は、「第1撮像部21及び/又は第2撮像部22により撮像される画像データ、または、検査対象物1(カット野菜)に付着した異物(虫等)の位置情報を表示する」ものであり、「前記第2の強度値画像データ」は910nmの波長または980nmの波長を第2の波長とする前記検査対象物からの反射光及び/又は透過光を受光することで前記検査対象物を撮像して得られたものであり、「前記閾値を超える画素」は、「制御部70」が備える「検出部72」において「前記相対強度算出部71により算出された前記検査対象物の表面の各測位点における前記相対強度が予め設定された閾値を超えるか否かを判定することにより、検査対象物1(カット野菜)に異物(虫」「)が混在又は付着するか否かを検出」する際に閾値を超えた画素を指していることから、検査対象物の表面の各測位点に対応する画素でかつ虫が混在または付着している画素を指す。すなわち、先願甲1発明における「制御部70」が備える「表示制御部73」は、910nmの波長または980nmの波長を第2の波長とする前記検査対象物からの反射光及び/又は透過光を受光することで前記検査対象物を撮像して得られた第2の強度値画像データに重ねて、検査対象物の表面の各測位点に対応する画素でかつ虫が混在または付着している画素を所定の色として表示部40に表示するものである。すると、先願甲1発明における「制御部70」が備える「表示制御部73」は、本件発明4における「複数波長に分光された前記近赤外画像に基づいて、当該近赤外画像中の前記虫が強調されるような画像処理を施す画像処理手段(6d)」に相当する。
j 上記「f」で検討したとおり、先願甲1発明の「検出部72」を備えた「制御部70」は本件特許発明1における「近赤外画像中の」「葉菜類に付着した虫の有無を判別する異物判別手段」に相当することから、先願甲1発明の「制御部70」は、本件発明4の「異物判別手段」に相当し、上記「i」で検討したとおり、先願甲1発明における「制御部70」が備える「表示制御部73」は、本件発明4における「複数波長に分光された前記近赤外画像に基づいて、当該近赤外画像中の前記虫が強調されるような画像処理を施す画像処理手段(6d)」に相当することから、先願甲1発明と本件発明4とは「異物判別手段」が「複数波長に分光された前記近赤外画像に基づいて、当該近赤外画像中の前記虫が強調されるような画像処理を施す画像処理手段(6d)を備えた」点で共通する。
k 先願甲1発明の「異物検出システム100」は、本件発明4の「異物検出装置」に相当する。
すると、本件発明4と、先願甲1発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「近赤外光を出射する光源部(3)と、
前記近赤外光が照射された葉菜類(W)を撮像する撮像部(4)と、
前記撮像部が撮像した近赤外画像における前記葉菜類と異物としての虫(M)の光のスペクトルの吸収の違いを利用して前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別する異物判別手段(6c)とを備え、
前記撮像部(4)は、近赤外領域において前記虫(M)が前記葉菜類(W)に対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲で複数波長に分光した近赤外画像を出力し、
前記異物判別手段(6c)は、複数波長に分光された前記近赤外画像に基づいて、当該近赤外画像中の前記虫が強調されるような画像処理を施す画像処理手段(6d)を備えた、
異物検出装置。」
一方、本件発明4と、先願甲1発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
異物判別手段(6c)が、本件発明4は「前記画像処理を施した近赤外画像に基づいて前記葉菜類に付着した虫の有無を判別する」のに対し、先願甲1発明は「相対強度算出部71により算出された」「検査対象物の表面の各測位点における」「相対強度が予め設定された閾値を超えるか否かを判定することにより、検査対象物1(カット野菜)に異物(虫及び/又は虫の卵等)が混在又は付着するか否かを検出」するものであり、その検出した結果に基づき検査対象物の表面の各測位点に対応する画素でかつ虫が混在または付着している画素を所定の色として近赤外画像に重ねて表示部40に表示する画像処理を施す点。
よって、本件発明4は、先願甲1発明と同一であるとはいえないし、また上記相違点1に係る事項は周知であるともいえないから、先願甲1発明と実質的に同一であるとはいえない。
(イ)申立人意見書における申立人の主張について
申立人は、申立人意見書において、本件発明4は、新たに発明特定事項として加わった「前記画像処理を施した近赤外画像に基づいて前記葉菜類に付着した虫の有無を判別する」という構成に基づいて、先願甲1発明に対し本件発明4を差別化することは不可能である旨主張する。
しかしながら、上記「(ア)」の<相違点1>に示したとおり、異物判別手段(6c)における葉菜類に付着した虫の有無を判別する手法は、本件発明4と先願甲1発明とは異なっていることから、申立人意見書における申立人の上記主張は採用することはできない。
(ウ)小括
したがって、本件発明4は、先願甲1発明であるとはいえないから、本件特許の請求項4に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるとはいえない。
ウ 本件発明5について
(ア)対比及び判断
本件発明5は、本件発明4の光源部(3)の機能をステップとして記載し、撮像部(4)の機能をステップとして記載し、異物判別手段(6c)の機能をステップとして記載し、画像処理装置(6d)の機能をステップとして記載して、本件発明4の異物検出装置を異物検出方法とそのカテゴリーを変更した発明である。よって、本件発明5は、本件発明4が備える機能を過不足無く備えた発明である。
一方、先願甲1発明は、異物検出システム100及び異物検出方法であり、上記「イ」で検討したとおり先願甲1発明の異物検出システム100は本件発明4の異物検出装置と同一であるとはいえないことから、異物検出システム100の機能を過不足無く備えた先願甲1発明である異物検出方法は、上記「イ」と同様の理由により、本件発明5の異物検出方法と同一であるとはいえないし、また、先願甲1発明と実質的に同一であるとはいえない。
(イ)申立人意見書における申立人の主張について
申立人は、申立人意見書において、上記「イ(イ)」と同様の理由により、「前記画像処理を施した近赤外画像に基づいて前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別するステップ」という構成に基づいて、先願甲1発明に対し本件発明5を差別化することは不可能である旨主張する。
しかしながら、上記「(ア)」の<相違点1>に示したとおり、異物判別手段(6c)における葉菜類に付着した虫の有無を判別する手法は、本件発明5と先願甲1発明とは異なっていることから、申立人意見書における申立人の上記主張は採用することはできない。
(ウ)小括
したがって、本件発明5は、先願甲1発明であるとはいえないから、本件特許の請求項5に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるとはいえない。
4.小括
以上のことから、当審が令和4年11月9日付けで特許権者に通知した取消理由1は解消されており、本件特許1,3ないし5を取り消す理由とはならない。
第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1.甲号証について
申立人が特許異議申立書において証拠として提示した甲号証は、上記「第4」で整理し、その内容は「第6 2.」に示したとおりである。
2.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人が特許異議申立書において申し立てた理由のうち、上記「第6 1.」の取消理由通知で採用した理由以外の特許異議申立理由の概要は以下のとおりである。
(1)異議申立理由1(明確性要件違反)
本件訂正前の請求項1ないし5に係る発明は、いずれも、特許請求の範囲の記載により、特許を受けようとする発明が明確ではない。
(2)異議申立理由2(サポート要件違反)
本件訂正前の請求項1ないし5に係る発明は、いずれも、特許請求の範囲の記載が、発明の詳細な説明に記載したものでない。
(3)異議申立理由3(実施可能要件違反)
本件訂正前の請求項1ないし5に係る発明は、いずれも、これらの発明を実施することができる程度に明細書に必要な事項を記載しているとは認められない。
(4)異議申立理由4(甲第1号証を先願とする法第29条の2違反)
本件訂正前の請求項2に係る発明は、いずれも、甲第1号証に記載の発明と同一であるから、法第29条の2に違反するものである。
(5)異議申立理由5(甲第2号証を主引例とする新規性違反)
本件訂正前の請求項1,2及び5に係る発明は、いずれも、甲第2号証に記載されたものであるから、新規性を欠くものである。
(6)異議申立理由6(甲第2号証を主引例とする進歩性違反)
本件訂正前の請求項1ないし5に係る発明は、甲第2号証に記載された発明を基に、適宜他の公知文献との組み合わせ等により当業者が極めて容易に想到しうるものにすぎないから、進歩性を欠くものである。
3.当審の判断
(1)異議申立理由1(明確性要件違反)について
ア 申立人は、本件の訂正前の請求項1ないし5に係る特許における「近赤外光」という用語で規定されるものが、いかなる波長範囲を示すのか、本件明細書において定義は存在せず、また甲第3ないし9号証の記載から認められる技術常識からも自明とも認められないことから、一義的に明確に理解することが出来ず、故にその権利の外延を把握することができないから、該規定は第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であることが明らかと言える旨主張する。
イ しかしながら、本願の明細書には、以下のように記載されている(下線は当審で付与した。)。
(ア)「【0023】
そこで、本実施の形態の光源部3(光源3a,3b)は、1200~1230nmの波長範囲から選択される波長(例えば1215nm)を中心波長とする近赤外光、または1200~1230nmを含む波長範囲で分光された複数波長の近赤外光を出射する。」
(イ)「【0025】
撮像部4は、光源部3から近赤外光が照射された状態でベルトコンベア2上を搬送される葉菜類Wを撮像するもので、近赤外分光カメラで構成される。近赤外分光カメラ4は、撮像対象の葉菜類Wの像(イメージ)の各点について光の強度情報とスペクトル情報(複数種類の波長の光の強度分布情報)を捉え、近赤外領域において虫Mが葉菜類Wに対して特徴的な吸収特性を有する1200~1230nmを含む波長範囲(例えば900~1700nm)を等間隔の波長で分光した複数波長の近赤外画像を出力する。」
(ウ)「【0038】
葉菜類Wに付着した虫Mを異物として検出するにあたっては、ベルトコンベア2にて葉菜類Wを所定間隔をおいて1枚1枚重ならずに搬送する。そして、ベルトコンベア2にて搬送される葉菜類Wに対し、光源3a,3bが出射する近赤外光を上下斜め方向から照射する。このとき、光源3a,3bは、近赤外領域における1200~1230nmの波長範囲から選択される波長を中心波長とする近赤外光、または近赤外領域の1200~1230nmを含む波長範囲で分光された複数波長の近赤外光を出射する。」
(エ)「【0039】
次に、搬入側コンベア2aと搬出側コンベア2bの隙間Sの上下方向から2台の近赤外分光カメラ4a,4bにて葉菜類Wの表面および裏面を撮像する。これにより、2台の近赤外分光カメラ4a,4bは、近赤外領域の1200~1230nmを含む波長範囲で複数波長に分光した近赤外画像を出力する。」
(オ)「【0040】
そして、異物判別手段6cは、2台の近赤外分光カメラ4a,4bが出力する複数波長の近赤外画像のうち特定波長の近赤外画像(例えば1215nmの近赤外画像、1200~1230nmの近赤外画像など)において、予め設定される強度閾値より小さい、または大きい強度の画素の塊が存在すると、異物としての虫Mが葉菜類Wに付着していると判別する。」
ウ 上記「イ」より、本件特許の明細書には1200~1230nmの波長の光は近赤外光に含まれる光であることは開示されている。
エ また、近赤外光は、赤外光のうち、赤色光に近い赤外光であることは、技術常識であり、上記「第6 2.(3)及び(4)」に示された一般的な近赤外の定義からして0.8-2μm(800-2000nm)の波長範囲の光が近赤外光であることは、当業者ならば理解できる。
オ そして、本件発明2,4及び5では、光源から出射される近赤外光は、虫(M)が葉菜類(W)に対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲の近赤外画像を撮影できるように葉菜類(W)に照射される近赤外光であることが規定されており、その具体的な例として、上記「イ(ア)」に「1200~1230nmの波長範囲から選択される波長(例えば1215nm)を中心波長とする近赤外光、または1200~1230nmを含む波長範囲で分光された複数波長の近赤外光」として例示されている。
カ よって、本件発明2,4及び5の「近赤外光」は、0.8-2μm(800-2000nm)の波長範囲の光であり、かつ虫(M)が葉菜類(W)に対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲の近赤外画像を撮影できるように葉菜類(W)に照射される近赤外光であることは、明確であり、本件発明2,4及び5の「近赤外光」が規定する光の波長範囲が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
キ ゆえに、本件発明2,4及び5は、明確でないとはいえず、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。
以上のことから、申立人によりなされた異議申立理由1は理由がない。
(2)異議申立理由2(サポート要件違反)について
ア 申立人は、本件の訂正前の請求項1ないし5に係る特許は、照射する近赤外の波長範囲が特定されていないことにより、その技術的課題を解決できない態様(1140-1190nm)が含まれていることは明らかであり、また葉菜類(W)と虫(M)の特定がされておらず、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、特定の葉菜類と虫の組み合わせに関するものしか開示されておらず、葉菜類や虫の種類によって、その吸収スペクトルが異なるのが技術常識であることから、その特定の葉菜類と虫の組み合わせに関するものの効果を一般化、抽象化できると認識し得ないから、本件の訂正前の請求項1ないし5に係る特許はサポート要件を充足しないことが明らかである旨主張する。
イ しかしながら、本件発明2,4及び5の「近赤外光」は、上記「(1)」で検討したとおり、0.8-2μm(800-2000nm)の波長範囲の光であり、かつ虫(M)が葉菜類(W)に対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲の近赤外画像を撮影できるように葉菜類(W)に照射される近赤外光であることは明確であり、それにより本件発明2,4及び5は、虫(M)が葉菜類(W)に対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲で複数波長に分光した近赤外画像に基づいて当該近赤外画像中の虫(M)が強調されるような画像処理を施し、その画像処理を施した近赤外画像に基づいて近赤外画像中の葉菜類(W)に付着した虫の有無を判別することから、本件発明2,4及び5は、葉菜類(W)に付着した虫の有無を判別するという技術的課題を解決できない態様を含む発明でないことは明らかである。そして、本件発明2,4及び5の実施態様は、本願の明細書の発明の詳細な説明の段落【0013】ないし【0051】に開示されており、具体的に段落【0022】に、葉菜類(W)がレタス、虫(M)がカメムシの場合に1200~1230nmの波長範囲で虫(M)が葉菜類(W)に対して特徴的な吸収特性を示すことが例示されている。
ウ よって、本件発明2,4,及び5は、本願の明細書の発明の詳細な説明に記載された発明ではないとはいえない。
エ ゆえに、本件発明2,4及び5は、本願の明細書の発明の詳細な説明に記載された発明ではないとはいえず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
以上のことから、申立人によりなされた異議申立理由2は理由がない。
(3)異議申立理由3(実施可能要件違反)について
ア 申立人は、異議申立理由1及び2でも述べた、本件の訂正前の請求項1ないし5に係る特許における「近赤外光」という用語で規定されるものが、いかなる波長範囲を示すのか不明な点、及び葉菜類とそれに付着する虫の組み合わせとそれに照射すべき赤外線波長との対応関係が本件特許の明細書に全く記載されていない点、により、本件の訂正前の請求項1ないし5に係る特許を当業者が過度な試行錯誤を要することなく実施できるとは到底認められない旨主張する。
イ しかしながら、上記「(1)及び(2)」で述べたとおり、本件発明2,4及び5の「近赤外光」は、0.8-2μm(800-2000nm)の波長範囲の光であり、かつ虫(M)が葉菜類(W)に対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲の近赤外画像を撮影できるように葉菜類(W)に照射される近赤外光であることは、明確であり、また、本件発明2,4及び5の実施態様は、本願の明細書の発明の詳細な説明の段落【0013】ないし【0051】に開示されており、具体的に段落【0022】に、葉菜類(W)がレタス、虫(M)がカメムシの場合に1200~1230nmの波長範囲で虫(M)が葉菜類(W)に対して特徴的な吸収特性を示すことが例示されている。これらの本願の明細書の発明の詳細な説明を基に当業者が本件発明2,4及び5を実施することは、格別の困難なく行い得たことであると認められる。
ウ 以上のことから、本願の明細書の発明の詳細な説明は、本件発明2,4及び5を、当業者が過度な試行錯誤を要することなく実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないとはいえない。
エ ゆえに、本願の明細書の発明の詳細な説明は、本件発明2,4及び5を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないとはいえず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものである。
以上のことから、申立人によりなされた異議申立理由3は理由がない。
(4)異議申立理由4(甲第1号証を先願とする法第29条の2違反)について
ア 本件発明2について
本件発明2と同一の発明である訂正前の請求項2に係る発明については、令和4年11月9日付け取消理由通知において、指摘していないものである。
イ 本件発明2と先願甲1発明との対比、判断
本件発明2と先願甲1発明とを比較する。
(ア)先願甲1発明の「検査対象物1(カット野菜)に対して700nm近傍(例えば680nm)から1400nmの波長を含む帯域の光である近赤外線を含む帯域の光を照射する照射部10」は、本件発明2における「近赤外光を出射する光源部」に相当する。
(イ)先願甲1発明の「照射部10」から「近赤外線を含む帯域の光を照射」される「検査対象物1(カット野菜)」は、本件発明2の「近赤外光が照射された葉菜類」に相当する。
(ウ)先願甲1発明の「撮像部20」は、「近赤外線を含む」「帯域に含まれる第1の中心波長を有する第1の光による」「検査対象物1(カット野菜)」「からの反射光及び/又は透過光を受光することで前記検査対象物を撮像して第1の強度値画像データを取得する第1撮像部21と、前記帯域に含まれる第2の中心波長を有する第2の光による前記検査対象物からの反射光及び/又は透過光を受光することで前記検査対象物を撮像して第2の強度値画像データを取得する第2撮像部22と、を備える」ことから、本件発明2における「前記近赤外光が照射された葉菜類」「を撮像する撮像部」に相当する。
(エ)先願甲1発明の「撮像部20」が備える「第1撮像部21」及び「第2撮像部22」で得られる「第1の強度値画像データ」及び「第2の強度値画像データ」は、本件発明2における「撮像部が撮像した近赤外画像」に相当する。
(オ)先願甲1発明の「検査対象物1(カット野菜)に」「混在又は付着する」「異物(虫」)は、本件発明2における「異物としての虫(M)」に相当する。
(カ)先願甲1発明の「制御部70」が備える「検出手段としての検出部72」は、「相対強度算出部71により算出された」「検査対象物の表面の各測位点における」「相対強度が予め設定された閾値を超えるか否かを判定することにより、検査対象物1(カット野菜)に異物(虫及び/又は虫の卵等)が混在又は付着するか否かを検出」するものであり、「相対強度算出部71は、前記第1撮像部の画素座標系の座標値(画像座標系の座標値)と前記第2撮像部の画素座標系の座標値(画像座標系の座標値)との間の対応付けに基づいて、前記検査対象物の表面の各測位点に対応する、前記第1の強度値画像データの画素の強度値と前記第2の強度値画像データの画素の強度値との比である相対強度を算出」するものである。すなわち、先願甲1発明の「検出部72」は、検査対象物の表面の同一部位を撮影した第1の強度値画像データおよび第2の強度値画像データに基づいて、検査対象物の表面の同一部位での各画素の相対強度を算出し、該相対強度が予め設定された閾値を超えるか否かを判定することにより、検査対象物1(カット野菜)に異物(虫)が混在又は付着するか否かを検出するものであるから、先願甲1発明の「検出部72」を備えた「制御部70」は本件発明2における「近赤外画像中の」「葉菜類に付着した虫の有無を判別する異物判別手段」に相当する。
(キ)先願甲1発明の「異物検出システム100」は、本件発明2の「異物検出装置」に相当する。
すると、本件発明2と、先願甲1発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「近赤外光を出射する光源部(3)と、
前記近赤外光が照射された葉菜類(W)を撮像する撮像部(4)と、
前記撮像部が撮像した近赤外画像における前記葉菜類と異物としての虫(M)の光のスペクトルの吸収の違いを利用して前記近赤外画像中の前記葉菜類に付着した虫の有無を判別する異物判別手段(6c)とを備えた、
異物検出装置。」
一方、本件発明2と、先願甲1発明とは、以下の点で相違する。
<相違点2>
光源部(3)が、本件発明2は「近赤外領域において前記虫(M)が前記葉菜類(W)に対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲から選択される波長を中心波長とする近赤外光、または前記波長範囲で分光される複数波長の近赤外光を出射する」のに対し、先願甲1発明は「検査対象物1(カット野菜)に対して700nm近傍(例えば680nm)から1400nmの波長を含む帯域の光である近赤外線を含む帯域の光を照射する照射部10」である点。
よって、本件発明2は、先願甲1発明と同一であるとはいえないし、また先願甲1発明と実質的に同一であるとはいえない。
ウ 申立人意見書における申立人の主張について
(ア)申立人は、申立人意見書において、本件発明2の「前記光源部(3)は、近赤外領域において前記虫(M)が前記葉菜類(W)に対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲から選択される波長を中心波長とする近赤外光、または前記波長範囲で分光される複数波長の近赤外光を出射する」という発明特定事項(上記「イ」における<相違点2>に相当。)は、甲第1号証に記載されているか、甲第1号証に記載されているに等しいと言えるから、本件発明2は甲第1号証に記載の発明と実質的に同一である旨主張する。
(イ)しかしながら、甲第1号証に記載の発明である先願甲1発明において、「検査対象物1(カット野菜)に対して700nm近傍(例えば680nm)から1400nmの波長を含む帯域の光である近赤外線を含む帯域の光を照射する照射部10」は、本件発明2における「近赤外光を出射する光源部」に相当するものの、上記「第6 2.(1)ウ」で摘記したとおり、照射部10は「近赤外光を含む帯域の光を照射する」ものであり、具体的にはハロゲンランプを使用することから、ある特定の波長を中心波長とする近赤外光を出射するというものではなく、そのような技術思想も開示されていない。よって、先願甲1発明における照射部10は、「近赤外領域において前記虫(M)が前記葉菜類(W)に対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲から選択される波長を中心波長とする近赤外光」「を出射する」ものであるとは認められない。
(ウ)また、先願甲1発明における照射部10は、上記「第6 2.(1)ウ」で摘記したとおり、照射部10は「近赤外光を含む帯域の光を照射する」ものであり、具体的にはハロゲンランプを使用することから、ある特定の波長範囲で分光した複数波長の近赤外光を出射するというものではなく、そのような技術思想も開示されていない。よって、先願甲1発明における照射部10は、「近赤外領域において前記虫(M)が前記葉菜類(W)に対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲」「で分光される複数波長の近赤外光」「を出射する」ものでもない。
(エ)以上のことから、本件発明2と先願甲1発明とは、上記相違点2で相違しており、両者は実質的に同一であるとはいえないことから、申立人意見書における申立人の上記主張は採用することはできない。
エ 小括
したがって、本件発明2は、先願甲1発明であるとはいえないから、本件特許の請求項2に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるとはいえない。
以上のことから、申立人によりなされた異議申立理由4は理由がない。
(5)異議申立理由5及び6(甲第2号証を主引例とする新規性違反及び進歩性違反)について
ア 申立人は、本件の訂正前の請求項1,2及び5に係る特許は、甲第2号証に記載された発明であるから新規性を欠くものであり、又本件の訂正前の請求項1ないし5に係る特許は、甲第2号証に記載された発明を基に、適宜他の公知文献との組み合わせ等により当業者が極めて容易に想到し得るものにすぎないから進歩性を欠くものである旨主張する。
イ しかしながら、上記「第6 2.(2)タ」に示したとおり、甲第2号証が開示する甲2開示事項は、平成29年度導入予定である高能率レタス選別包装システムに、非破壊検査技術を持った検査機器メーカーと現地で共同開発する非破壊検出機能を付加する予定であること、その非破壊検出機能として赤外線分光方式によりレタス球内の分析をすることを検討するために(1)顕微鏡用マルチスペクトルイメージングシステムと(2)高感度赤外線カメラを用いた検証を行ったという事実であり、完成した異物検出装置または検査工程を確立した異物検出方法を開示するものではない。
ウ 本件発明2の新規性、及び進歩性について
(ア)甲2開示事項と本件発明2とを比較すると、甲2開示事項には、少なくとも上記「(4)イ」で検討した相違点2に係る構成である、光源部が「近赤外領域において前記虫(M)が前記葉菜類(W)に対して特徴的な吸収特性を有する波長を含む波長範囲から選択される波長を中心波長とする近赤外光、または前記波長範囲で分光される複数波長の近赤外光を出射する」という技術事項は開示されておらず、当該技術は甲第3ないし11号証にも開示されておらずかつ本願の出願時に周知の技術であるとも認められない。
(イ)よって、甲2開示事項が発明であるとしても、その発明は本件発明2と同一ではなく、本件発明2はその発明から、当業者が容易になしえた発明ではない。
エ 本件発明4の進歩性について
(ア)甲2開示事項と本件発明4とを比較すると、甲2開示事項には、少なくとも上記「第6 3.(1)イ」で検討した相違点1に係る構成である、異物判別手段(6c)が、本件発明4は「複数波長に分光された前記近赤外画像に基づいて、当該近赤外画像中の前記虫が強調されるような画像処理を施す画像処理手段(6d)を備え」「前記画像処理を施した近赤外画像に基づいて前記葉菜類に付着した虫の有無を判別する」という技術事項は開示されておらず、当該技術は甲第3ないし11号証にも開示されておらずかつ本願の出願時に周知の技術であるとも認められない。
(イ)よって、甲2開示事項が発明であるとしても、本件発明4はその発明から、当業者が容易になしえた発明ではない。
オ 本件発明5の新規性及び進歩性について、
(ア)本件発明5は、本件発明4の光源部(3)の機能をステップとして記載し、撮像部(4)の機能をステップとして記載し、異物判別手段(6c)の機能をステップとして記載し、画像処理装置(6d)の機能をステップとして記載して、本件発明4の異物検出装置を異物検出方法とそのカテゴリーを変更した発明である。よって、本件発明5は、本件発明4が備える機能を過不足無く備えた発明であるから、上記「エ」と同様の理由により、甲2開示事項が発明であるとしても、その発明は本件発明5と同一ではなく、本件発明5はその発明から、当業者が容易になしえた発明ではない。
カ 小括
したがって、本件発明2,4および5は、甲第2号証に記載された事項が発明であるとしても、その発明と同一であるとはいえず、かつその発明から当業者が極めて容易に想到し得るものとはいえないから、申立人によりなされた異議申立理由5及び6は理由がない。
(6)まとめ
以上のことから、取消理由通知において採用しなかった異議申立理由である、異議申立理由1ないし6については、本件発明2,4及び5に対しいずれも理由がない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項2,4及び5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項2,4及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項1及び3に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1及び3に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700865