特許異議申立
2022-700854
耐捻回ケーブル
- 審判番号
- 2022-700854
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-097038
- 登録番号
- 7040698
- 請求日
- 2022年08月31日
- 審決日
- 2023年06月30日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】吉野川電線株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人エスエス国際特許事務所
- 【異議申立人】野尻 文人
- 審判長/審判官
- 審判長 河本 充雄
- 審判官 小田 浩
- 審判官 松永 稔
- 分類
- P1651.121-YAA(H01B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7040698号発明「耐捻回ケーブル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7040698号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3、5~8〕、4について訂正することを認める。
特許第7040698号の請求項1~4、6~8に係る特許を維持する。
特許第7040698号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7040698号の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成30年5月21日に出願され、令和4年3月14日にその特許権の設定登録がされ、令和4年3月23日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年 8月31日 特許異議申立人 野尻 文人(以下、「異議
申立人」という。)による特許異議の申立て
(以下、この特許異議の申立てに係る申立書
を「特許異議申立書」という。)
令和4年12月28日付け 取消理由通知書
令和5年 3月 6日 特許権者による意見書、訂正請求書の提出
令和5年 4月28日 異議申立人による意見書の提出(以下、この
意見書を「意見書」という。)
第2 訂正の適否
1 訂正の内容(下線は、訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
(訂正事項1-1)
特許請求の範囲の請求項1に「複数の電線が撚り合されてなる集合体」と記載されているのを「複数の電線、介在、および撚り紐が撚り合されてなる集合体」に訂正する。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、3、6~8についても同様に訂正する。
(訂正事項1-2)
特許請求の範囲の請求項1に「前記撚り紐は、前記介在と前記電線との間の空間を埋める部材であり、」を追加する。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、3、6~8についても同様に訂正する。
(2)訂正事項2
(訂正事項2-1)
特許請求の範囲の請求項4に「該耐捻回ケーブルの内部中心に中心介在を備え、複数の前記電線は、前記中心介在の周囲に撚り合せてなることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の耐捻回ケーブル。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、訂正前の請求項1の「複数の電線が撚り合されてなる集合体と、」の記載を、「内部中心に中心介在を有し、複数の電線、介在が前記中心介在の周囲に撚り合せてなる集合体と、」に訂正する。
請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項6~8についても同様に訂正する。
(訂正事項2-2)
独立形式に改めた請求項4に「複数の前記介在及び前記中心介在は、樹脂チューブで形成され、」を追加する。
請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項6~8についても同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~5の何れか一項に記載の耐捻回ケーブル。」と記載されているのを、「請求項1~4の何れか一項に記載の耐捻回ケーブル。」に訂正する。
請求項6の記載を直接又は間接的に引用する請求項7、8についても同様に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1~7の何れか一項に記載の耐捻回ケーブル。」と記載されているのを、「請求項1~4、6、7の何れか一項に記載の耐捻回ケーブル。」に訂正する。
(6)訂正事項6
願書に添付した明細書の【0007】、【0011】~【0013】、【0015】に記載された訂正前の請求項1、4~6、8に係る記載を、訂正後の請求項1、4~6、8の記載に訂正する。
(7)訂正事項1~6は、一群の請求項〔1~8〕に対して請求されたものである。
(8)なお、訂正後の請求項4に係る訂正について、特許権者は、当該訂正が認められるときに一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び独立特許要件について(下線は、当審で付した。以下同じ。)
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
(ア)訂正事項1-1について
訂正事項1-1は、訂正前の請求項1における「複数の電線が撚り合されてなる集合体」の記載を、「複数の電線、介在、および撚り紐が撚り合されてなる集合体」に訂正するものであり、訂正前の請求項1に係る「集合体」を「複数の電線、介在、および撚り紐が撚り合されてなる集合体」と減縮するものである。
したがって、訂正事項1-1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
(イ)訂正事項1-2について
訂正事項1-2は、訂正前の請求項1に、「前記撚り紐は、前記介在と前記電線との間の空間を埋める部材であり、」との減縮を加えるものである。
したがって、訂正事項1-2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
(ア)訂正事項1-1について
本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)に
「【0019】
集合体2は、複数の電線3、介在4、および撚り紐6を撚り合せて構成されており、集合体2の外周は、不織布、紙、または樹脂等で形成されたテープ部材10で覆われている。テープ部材10は、耐捻回ケーブル1の捻回時に集合体2とシース部材8の間の摩擦を低減するためのものである。電線3もまた複数の線心3aを層状に撚り合せたものであり、外周が、絶縁性を有するシールド3bで被覆されている。なお、シールド3bの外周は摩擦を低減する内シース部材でさらに被覆されている。線心3aは、導体の外周に絶縁体を被覆した絶縁被覆線である。」
と記載されているように、「集合体2」は、「複数の電線3、介在4、及び撚り紐6を撚り合せて構成されて」いる。
したがって、訂正事項1-1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
(イ)訂正事項1-2について
本件明細書等に
「【0022】
撚り紐6は、集合体2、介在4、および中心介在4´の間の空間を埋める部材であり、たとえば、オレフィン系樹脂製の線材を撚り合わせて形成されている。
・・・」
「【図1】
[図:0001401647000001.jpg]
」
と記載されているように、「撚り紐6」は、「介在4」と「電線3」の間の空間を埋める部材である。
したがって、訂正事項1-2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
(ア)訂正事項1-1について
訂正事項1-1は、上記イ(ア)のとおり、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項1-1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(イ)訂正事項1-2について
訂正事項1-2は、上記イ(イ)のとおり、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項1-2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
本件特許異議申立事件において、全ての請求項について特許異議申立ての対象とされているため、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
(ア)訂正事項2-1について
訂正事項2-1は、訂正前の請求項4が「請求項1~3の何れか一項」を引用する記載であるところ、訂正前の請求項2、3に対する引用関係を解消し、訂正後の請求項4において、請求項1の記載を引用するものを独立形式に改め、訂正前の請求項4における「複数の電線が撚り合されてなる集合体」を、「内部中心に中心介在を有し、複数の電線、介在が前記中心介在の周囲に撚り合せてなる集合体」に訂正するものである。
したがって、訂正事項2-1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、及び、同項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
(イ)訂正事項2-2について
訂正事項2-2は、独立形式に改めた上記請求項4に、「複数の前記介在及び前記中心介在は、樹脂チューブで形成され、」との減縮を加えるものである。
したがって、訂正事項2-2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
(ア)訂正事項2-1について
訂正事項2-1は、上記ア(ア)のとおり、特許請求の範囲の減縮をするとともに、請求項間の引用関係を解消して独立形式に改めるものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
(イ)訂正事項2-2について
本件明細書等に
「【0021】
介在4は、耐捻回ケーブル1の内部に配置された難燃性の樹脂チューブであり、内部に空洞4aを備えている。介在4を構成する樹脂としては、たとえば、塩化ビニルやポリウレタン等が用いられる。また、耐捻回ケーブル1の中心には、中心介在4´が配置されている。複数の電線3および複数の他の介在4は、この中心介在4´の周囲に層状に撚り合わせて配置されている。これにより、耐捻回ケーブル1が捻回された場合に潰れにくくすることができる。」
と記載されているように、「介在4」は「樹脂チューブであ」る。
したがって、訂正事項2-2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
(ア)訂正事項2-1について
訂正事項2-1は、上記ア(ア)のとおり、特許請求の範囲の減縮をするとともに、請求項間の引用関係を解消して独立形式に改めるものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項2-1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(イ)訂正事項2-2について
訂正事項2-2は、上記イ(イ)のとおり、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項2-2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
本件特許異議申立事件において、全ての請求項について特許異議申立ての対象とされているため、訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、請求項5を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
イ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項3は、上記アのとおり、請求項5を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
訂正事項3は、上記アのとおり、請求項5を削除するものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
本件特許異議申立事件において、全ての請求項について特許異議申立ての対象とされているため、訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項6が「請求項1~5の何れか一項」の記載を引用する記載であるところ、訂正事項3により請求項5が削除されたことに伴って、訂正前の請求項6の記載が明確でなくなるのを、訂正前の請求項5に対する引用関係を解消し、請求項1~4を引用するものに減縮し、明確にするものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、及び、同項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。
イ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項4は、上記アのとおり、訂正前の請求項5に対する引用関係を解消するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
訂正事項4は、上記アのとおり、訂正前の請求項5に対する引用関係を解消するものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
本件特許異議申立事件において、全ての請求項について特許異議申立ての対象とされているため、訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
5 訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項8が「請求項1~7の何れか一項」の記載を引用する記載であるところ、訂正事項3により請求項5が削除されたことに伴って、訂正前の請求項8の記載が明確でなくなるのを、訂正前の請求項5に対する引用関係を解消し、請求項1~4、6、7を引用するものに減縮し、明確にするものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、及び、同項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。
イ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項5は、上記アのとおり、訂正前の請求項5に対する引用関係を解消するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
訂正事項5は、上記アのとおり、訂正前の請求項5に対する引用関係を解消するものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
本件特許異議申立事件において、全ての請求項について特許異議申立ての対象とされているため、訂正事項5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
6 訂正事項6
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正事項1~5により、訂正前の請求項1、4~6、8の記載が訂正されたことに伴い、対応する本件明細書等の記載を、訂正後の請求項1、4~6、8の記載に合致させるものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。
イ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項6は、上記アのとおり、訂正事項1~5により、訂正前の請求項1、4~6、8の記載が訂正されたことに伴い、対応する本件明細書等の記載を、訂正後の請求項1、4~6、8の記載に合致させるものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
訂正事項6は、上記アのとおり、訂正事項1~5により、訂正前の請求項1、4~6、8の記載が訂正されたことに伴い、対応する本件明細書等の記載を、訂正後の請求項1、4~6、8の記載に合致させるものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
3 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号、及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲の記載を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3、5~8〕、4について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正により、請求項1~8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明8」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
複数の電線、介在、および撚り紐が撚り合されてなる集合体と、
前記集合体の外周を覆うテープ部材と、
ポリ塩化ビニルで形成され、前記テープ部材で覆われた前記集合体を被覆するシース部材と
を備え、
前記撚り紐は、前記介在と前記電線との間の空間を埋める部材であり、
前記シース部材の引張降伏応力が3.5MPa以上10MPa以下であり、
且つ、前記集合体の撚り合せ方向と前記テープ部材の巻き付け方向とが同方向であることを特徴とする耐捻回ケーブル。
【請求項2】
前記シース部材の断面方向の厚みは0.8mm以上3.0mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐捻回ケーブル。
【請求項3】
前記電線は複数の線心を層状に撚り合せてなることを特徴とする請求項1または2に記載の耐捻回ケーブル。
【請求項4】
内部中心に中心介在を有し、複数の電線、介在が前記中心介在の周囲に撚り合せてなる集合体と、
前記集合体の外周を覆うテープ部材と、
ポリ塩化ビニルで形成され、前記テープ部材で覆われた前記集合体を被覆するシース部材と
を備え、
複数の前記介在及び前記中心介在は、樹脂チューブで形成され、
前記シース部材の引張降伏応力が3.5MPa以上10MPa以下であり、
且つ、前記集合体の撚り合せ方向と前記テープ部材の巻き付け方向とが同方向であることを特徴とする耐捻回ケーブル。
【請求項5】(削除)
【請求項6】
該耐捻回ケーブルは、スカラロボットに使用されるロボットケーブルであることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の耐捻回ケーブル。
【請求項7】
前記耐捻回ケーブルは前記スカラロボットの可動部に接続され、前記可動部の可動範囲は時計回り及び反時計回りにそれぞれ120°以上300°以下であることを特徴とする請求項6に記載の耐捻回ケーブル。
【請求項8】
前記テープ部材は、不織布、紙、樹脂のいずれかで形成されていることを特徴とする請求項1~4、6、7の何れか一項に記載の耐捻回ケーブル。」
第4 取消理由通知書に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1~8に係る特許に対して、当審が令和4年12月28日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
請求項1~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1~8に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 引用文献の記載事項と引用発明について
(1)引用文献1について
引用文献1(特開2008-218061号公報 特許異議申立書に添付の甲第5号証)には、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁心線の絶縁体同士の滑り性を向上させることによって、安価で、耐屈曲性・耐捻れ性、可とう性に優れた産業用ロボット等のFA機器に使用されるケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のロボット用ケーブル1″は、図4に示すように、導体2″を絶縁体3″で被覆し、それらを集合して更に外部のシース6″で被覆した構成からなる。
産業用ロボット等に使用されるケーブルは屈曲、捻回に強いことが要求されるため、導体においては「高耐久性」が要求される場合には、純銅に替わって、例えばSn入り銅合金などの銅合金が用いられている。しかし、銅合金は機械的強度が増すものの、導電率が低下する。そのため、ジュール熱の発生を抑制するため導体を太くせざるを得なくなり、これがケーブルの細径化、軽量化に逆行することになる。また、銅に対して銅合金は価格が高いため、ケーブル価格のアップに繋がる。
導体外周に被覆される絶縁体においては「低耐久性ケーブル」にはポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンが、「高耐久性ケーブル」には、エチレンテトラフロロエチレン(ETFE)、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン(FEP)などのフッ素樹脂が用いられている。フッ素樹脂はすべり摩擦抵抗が小さく、かつ、ある程度の硬さを有しているので、絶縁体相互の滑り性が向上することになり、導体の断線、損傷が防止され、耐屈曲性、耐捻れ性を増加させることを可能とするということで用いられてきた。しかし、フッ素樹脂は他の絶縁体材料に比べて価格が高いため、ケーブル価格のアップに繋がるという問題があった。
また、絶縁体相互の滑り性を向上させるために、下記に示す特開2000-357418号公報にはポリ塩化ビニル絶縁層の上にシリコーンを含有したウレタンアクリレート系の紫外線硬化型樹脂組成物を設けた絶縁電線が開示されている。しかしながら、紫外線硬化型樹脂組成物ということで、樹脂の塗布、硬化という複雑な工程が必要になるという課題があった。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的としては、上記の点に鑑みてなされたもので、導体に、高価な銅合金や絶縁体に高価なフッ素樹脂や紫外線硬化型樹脂組成物を用いなくても、絶縁心線の絶縁体表面の滑性が優れており、通常の低価格な熱可塑性樹脂による押出成型が可能になり、安価で、屈曲、捻れに強く、可とう性に優れたロボット用ケーブルを提供することにある。」
「【実施例】
【0008】
ここで、ケーブルの耐久性とは、当該ケーブルの導体が断線するまでの繰り返し屈曲のサイクル数とする。通常ロボット用ケーブルの耐久性評価試験には、左右屈曲試験と捻回試験が行われる。図3(イ)に左右屈曲試験、図3(ロ)に捻回試験の概略と試験条件を示す。また、本発明の第1~4実施例の耐屈曲・耐捻回ケーブル1の構成表と左右屈曲試験と捻回試験による耐久性評価試験結果を表1に、比較例1~3のケーブルの構成表と左右屈曲試験と捻回試験による耐久性評価試験結果を表2に示す。
【0009】
【表1】
[図:0001401647000002.jpg]
」
「【0011】
本発明の第1実施例の構造を図1(イ)に示す。この実施例のケーブル構成は、図1(イ)からも明らかなように導体2の外周に絶縁体を被覆し、この絶縁心線4Aを複数本撚り合わせ、その外周上に和紙テープ5、シース6を順次施し、外径11.8mmにしたものである。ここで、絶縁体3Aはポリエステルエラストマーに有機系高分子量シリコーンポリマーを0.7wt%添加したものである。このケーブルを図3(イ)、(ロ)の屈曲試験に装着して、断線が生じる往復回数を求めた。前記表1に耐久性評価試験結果を示す。
本発明の第2実施例の構造を図1(ロ)に示す。この実施例の絶縁体3Bは、ポリエステルエラストマーに有機系高分子量シリコーンポリマーを1.5wt%添加したものであり、それ以外は第1実施例と同じ構成である。このケーブルを図3(イ)、(ロ)の屈曲試験に装着して、断線が生じる往復回数を求めた。前記表1に耐久性評価試験結果を示す。
本発明の第3実施例の構造を図1(ハ)に示す。この実施例の絶縁体3Cは、ポリエステルエラストマーにグラフトタイプ有機系高分子量シリコーンポリマーをシリコーン換算量で0.7wt%添加したものであり、それ以外は第1実施例と同じ構成である。このケーブルを図3(イ)、(ロ)の屈曲試験に装着して、断線が生じる往復回数を求めた。前記表1に耐久性評価試験結果を示すが、第1実施例と第3実施例を比較してみると明らかなように、グラフトタイプ有機系高分子量シリコーンでもシリコーン換算量で同量を添加すれば、実施例1の有機系高分子量シリコーンと同じ効果があることがわかる。
本発明の第4実施例の構造を図1(ニ)に示す。この実施例の絶縁体3Dは、ポリプロピレンに有機系高分子量シリコーンポリマーを0.7wt%添加したものであり、それ以外は第1実施例と同じ構成である。このケーブルを図3(イ)、(ロ)の屈曲試験に装着して、断線が生じる往復回数を求めた。前記表1に耐久性評価試験結果を示す。」
「【図1】
[図:0001401647000003.jpg]
」
「【図3】
[図:0001401647000004.jpg]
」
上記記載から、引用文献1には実施例1として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「112本の導体から構成された導体2の外周に絶縁体を被覆して絶縁心線4Aとし、(【表1】【0011】)
この絶縁心線4Aを複数本撚り合わせ、(【0011】)
その外周上に和紙テープ5、シース6を順次施すものであって、(【0011】)
シース6は、厚さ1.0mmのポリ塩化ビニルから成り、(【表1】)
捻回角度±180°の捻回試験を200万回行っても断線しない、(【表1】【図3】(ロ))
耐屈曲性・耐捻れ性に優れた産業用ロボット等のFA機器に使用されるケーブル。(【0001】【0011】)」
(2)引用文献2について
引用文献2(特開2003-138083号公報 特許異議申立書に添付の甲第2号証)には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塩化ビニル系重合体組成物に関する。本発明の塩化ビニル系重合体組成物は、非粘着性で取扱い性に優れると共に、良好な柔軟性と力学的性能を有し、かつ他の材料に対する溶融接着性が良好であり、しかも可塑剤として機能する成分の移行性がないので、それらの特性を生かして各種成形品の製造に有効に使用される。」
「【0101】本発明の塩化ビニル系重合体組成物は、上記の特性を活かして、例えば、レインコート、洋傘、雨ズボン、雨靴、帽子等の各種家庭用品;各種キーボード;ラミネート品;各種容器用のフィルムやシート;ビニールハウスなどの農業用品;ハンドバック、札入れ、文房具等のシート加工用品;サンダルバンド、スリッパ等の履き物用品;ベルト類;壁装材、クッションフロアー等の室内装飾用品;人形、浮き袋などの玩具;車両用、家具用、鞄用、衣料用などのレザー製品;電線被覆材;ガス管、ホース、チューブ等の押出製品;ハンドル等の自動車部品;機械部品;時計バンド;パッキング材等の各種用途に使用することができる。」
「【0113】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例において、塩化ビニル系重合体組成物から得られた成形品の硬度、非粘着性、屈曲性および力学的性能(降伏点強さ、降伏点伸び)、並びに塩化ビニル系重合体組成物から得られた積層体における接着強度は、以下の方法により測定または評価した。
【0114】(1)硬度
実施例または比較例で得られた塩化ビニル系重合体組成物を、プレス成形機〔神藤金属工業所(株)社製、「圧縮成形機AYS-10」(商品名)〕を使用して、150℃で2分間溶融させた後、150℃、50kgf荷重の条件下に30秒間保持して、厚さ約2mmの成形品(試験片)を製造した。得られた成形品(試験片)を2枚重ね合わせたものを用い、JIS K-6301に準じて、成形品(試験片)のショアA硬度を測定した。」
・・・ 中 略 ・・・
【0117】(4)力学的性能(降伏点強さおよび降伏点伸び)
上記(1)で製造した成形品(試験片)を25℃で2日間放置した後、ダンベル3号形に打ち抜き、JIS K-7311に準じて、島津製作所(株)社製、「オートグラフ測定装置IS-500D」(商品名)を使用して、室温下、引張速度300mm/分で降伏点強さおよび降伏点伸びを測定した。
・・・ 中 略 ・・・
【0120】実施例および比較例で使用した重合体および化合物に関する略号を以下に示す。
〔塩化ビニル系重合体〕
PVC: 重合度1000のポリ塩化ビニル〔信越化学工業(株)製、TK1000(商品名)〕
〔硬質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物〕
PVC-C: 重合度1000のポリ塩化ビニル100重量部、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体〔MBS樹脂、三菱レイヨン(株)社製「メタブレンC-303A」(商品名)〕15部、有機スズ系安定剤〔共同薬品(株)社製、「KS-1000」(商品名)〕2部および滑剤〔クラリアントジャパン(株)社製、「ワックスOP」(商品名)〕1.5部からなる硬質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物。
〔エチレン-α-オレフィン共重合体〕
POE-A: エチレン-1-オクテン共重合体〔デュポンダウエラストマー(株)社製、「ENGAGE EG8200」(商品名);エチレン単位/1-オクテン単位=92/8(モル比)、メルトフローレート(MFR;190℃、2.16kg荷重):4.2g/10分、ショアーA硬度:75、密度:0.870g/cm3、ムーニー粘度:12.1ML1+4(100℃)〕
POE-B: エチレン-1-オクテン共重合体〔デュポンダウエラストマー(株)社製、「ENGAGE EG8842」(商品名)、エチレン単位/1-オクテン単位=83/17(モル比)、メルトフローレート(MFR;190℃、2.16kg荷重):1.0g/10分、ショアーA硬度:51、密度:0.857g/cm3、ムーニー粘度:37.2ML1+4(100℃)〕
POE-C: エチレン-1-オクテン共重合体〔デュポンダウエラストマー(株)社製、「ENGAGE EG8100」(商品名)、エチレン単位/1-オクテン単位=93/7(モル比)、メルトフローレート(MFR;190℃、2.16kg荷重):1.0g/10分、ショアーA硬度:75、密度:0.870g/cm3、ムーニー粘度:35.6ML1+4(100℃)〕
・・・ 中 略 ・・・
【0131】実施例3~5
下記の表2に示した配合割合に従って、POE-AまたはPOE-BとPU/SEEPSを予備混合し、得られた混合物を小型混練機〔東洋精機製作所(株)社製、「ラボプラストミル20R200」(商品名)〕に供給して、窒素雰囲気下、140℃で溶融させた後、PVCを表2に示す割合で添加し、窒素雰囲気下、140℃、撹拌機の回転数40rpmの条件下で5分間溶融混練して、塩化ビニル系重合体組成物を製造した。得られた塩化ビニル系重合体組成物を用いて、上記した方法で成形品(試験片)および積層体を製造し、各種物性並びに積層体における接着強度を上記した方法で測定した。結果を表2に示す。
・・・ 中 略 ・・・
【0133】実施例6および7
参考例1で得られたブロック共重合体組成物A(PU-SEEPS Compound A)とPOE-AまたはPOE-Cを表2に示す割合で予備混合し、得られた混合物を小型混練機〔東洋精機製作所(株)社製、「ラボプラストミル20R200」(商品名)〕に供給して、窒素雰囲気下、140℃で溶融させた後、PVCを表2に示す割合で添加し、窒素雰囲気下、140℃、撹拌機の回転数40rpmの条件下で5分間溶融混練して、塩化ビニル系重合体組成物を製造した。得られた塩化ビニル系重合体組成物を用いて、上記した方法で成形品(試験片)および積層体を製造し、各種物性並びに積層体における接着強度を上記した方法で測定した。結果を表2に示す。
【0134】
【表2】
[図:0001401647000005.jpg]
【0135】実施例8および9
下記の表3に示した配合割合に従って、SEEPS-2、PLおよびPU/SEEPSを予備混合し、得られた混合物を小型混練機〔東洋精機製作所(株)社製、「ラボプラストミル20R200」(商品名)〕に供給して、窒素雰囲気下、140℃で溶融させた後、PVCを表3に示す割合で添加し、窒素雰囲気下、140℃、撹拌機の回転数40rpmの条件下で5分間溶融混練して、塩化ビニル系重合体組成物を製造した。得られた塩化ビニル系重合体組成物を用いて、上記した方法で成形品(試験片)および積層体を製造し、各種物性および積層体における接着強度を上記した方法で測定した。結果を表3に示す。
・・・ 中 略 ・・・
【0137】実施例10
参考例1で得られたブロック共重合体組成物A(PU-SEEPS Compound A)、SEEPS-2およびPLを表3に示す割合で予備混合し、得られた混合物を小型混練機〔東洋精機製作所(株)社製、「ラボプラストミル20R200」(商品名)〕に供給して、窒素雰囲気下、140℃で溶融させた後、PVCを表3に示す割合で添加し、窒素雰囲気下、140℃、撹拌機の回転数40rpmの条件下で5分間溶融混練して、塩化ビニル系重合体組成物を製造した。得られた塩化ビニル系重合体組成物を用いて、上記した方法で成形品(試験片)および積層体を製造し、各種物性並びに積層体における接着強度を上記した方法で測定した。結果を表3に示す。
【0138】
【表3】
[図:0001401647000006.jpg]
・・・ 中 略 ・・・
【0141】PVC100重量部と上記で得られたブロック共重合体組成物B(PU-SEEPS Compound B)の100重量部を小型混練機〔東洋精機製作所(株)社製、「ラボプラストミル20R200」(商品名)〕に供給して、窒素雰囲気下、140℃、撹拌機の回転数40rpmの条件下で5分間溶融混練して、塩化ビニル系重合体組成物を製造した。得られた塩化ビニル系重合体組成物を用いて、上記した方法で成形品(試験片)および積層体を製造し、各種物性並びに積層体における接着強度を上記した方法で測定した。結果を表4に示す。
【0142】実施例12
ジブチルスズジアセテート(ウレタン化反応触媒)を15ppm含有する高分子ポリオール(POH-1)、鎖伸長剤(BD)および有機ジイソシアネート化合物(MDI)を、POH-1:BD:MDIのモル比が1.0:2.0:3.0(窒素原子含有率は1.9重量%)で、かつこれらの合計供給量が100g/分となるようにして同軸方向に回転する二軸スクリュー型押出機(30mmφ、L/D=36;加熱ゾーンは前部、中央部、後部の3つの帯域に分けた)の加熱ゾーンの前部に連続供給して、260℃の連続溶融重合でポリウレタン形成反応を実施した。官能基含有ブロック共重合体(F-HVSIS)を100g/分となるようにして上記の二軸スクリュー型押出機の加熱ゾーンの中央部に連続供給し、上記のポリウレタン形成反応による反応混合物と反応させ、得られた溶融物をストランド状で水中に連続的に押し出し、次いでペレタイザーで切断し、ペレットを得た。得られたペレットを80℃で4時間除湿乾燥することによりブロック共重合体組成物C(PU-HVSIS Compound C)を得た。
【0143】ブロック共重合体組成物C(PU-HVSIS Compound C)の一部を取り、ジメチルホルムアミドを用いて組成物中のポリウレタンを抽出除去した。次いでシクロヘキサンを用いて未反応のHVSIS-OHとHVSISを抽出除去し、残留した固形物を乾燥することにより、ブロック共重合体Cを得た。1H-NMRで分析した結果、ブロック共重合体Cは、ポリスチレンブロック-水素添加ポリイソプレンブロック-ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕とポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールアジペート)単位、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4-ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕からなるジブロック共重合体であることが分かった。なお、シクロヘキサンによる抽出物は、GPC分析の結果、ポリスチレンブロック-水素添加ポリイソプレンブロック-ポリスチレンブロック型の構造を有する重合体ブロック〔付加重合系ブロック(イ)〕を2個、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールアジペート)単位、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート単位および1,4-ブタンジオール単位から構成されるポリウレタンブロック〔ポリウレタンブロック(ロ)〕を1個有するトリブロック共重合体を含有していることが分かった。ジメチルホルムアミドを用いて抽出されたポリウレタンおよびシクロヘキサンを用いて抽出された未反応のHVSIS-OHとHVSISの重量は、上記したジブロック共重合体を100重量部としたとき、ポリウレタンは182重量部、HVSIS-OHは0重量部、HVSISは45重量部であり、上記したトリブロック共重合体は127重量部であった。上記のジブロック共重合体およびトリブロック共重合体における付加重合系ブロック(イ)は、HVSISと同様の構造を有していた。また、上記したジブロック共重合体の数平均分子量は155,000であり、トリブロック共重合体の数平均分子量は165,000であった。
【0144】PVC100重量部と上記で得られたブロック共重合体組成物C(PU-HVSIS Compound C)の100重量部を小型混練機〔東洋精機製作所(株)社製、「ラボプラストミル20R200」(商品名)〕に供給して、窒素雰囲気下、140℃、撹拌機の回転数40rpmの条件下で5分間溶融混練して、塩化ビニル系重合体組成物を製造した。得られた塩化ビニル系重合体組成物を用いて、上記した方法で成形品(試験片)および積層体を製造し、各種物性並びに積層体における接着強度を上記した方法で測定した。結果を表4に示す。
【0145】
【表4】
[図:0001401647000007.jpg]
」
上記記載から、引用文献2には、実施例3~8、10、12として、次の事項が記載されている。
「PVC(重合度1000のポリ塩化ビニル)を含む、(【0131】【0133】【0135】【0137】【0144】)
電線被覆材として使用される、(【0101】)
塩化ビニル系重合体組成物において、
屈曲性を得るために、引張速度300mm/分での降伏点強さを37~96kgf/cm2、とすること。(【0113】【0117】【表2】【表3】【表4】)」
(3)引用文献3について
引用文献3(特開2004-189905号公報 特許異議申立書に添付の甲第3号証)には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性樹脂組成物及びそれから得られた押出成形品に関し、更に詳しくは可撓性を改善し、そして成形品の柔軟性を向上させた難燃性樹脂組成物及びそれから得られた押出成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、電線・ケーブルの絶縁被覆材等の押出成形品としては、従来から塩化ビニル樹脂やその組成物が多用されてきたが、環境保全や健康面の配慮から、ハロゲンを含まないものが求められている。水酸化マグネシウムが、ハロゲンを含まないオレフィン系樹脂等に対して、優れた難燃剤であることは古くから知られているが、難燃剤としての効果を得るためには、比較的多量に配合しなければならず、結果として得られる難燃性樹脂組成物の機械特性が劣化することがあった。」
「【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムからなる複合難燃剤を配合した難燃性樹脂組成物において、可撓性を改善し、よって成形品の柔軟性を向上させた難燃性樹脂組成物及びこれを被覆した電線・ケーブル等の、改善された可撓性を持つ押出成形品を提供することにある。」
「【0038】
3.可撓性
JIS K7122に準拠して引張降伏応力を測定し、可撓性を評価した。引張降伏応力が小さいほど可撓性が高く、よって柔軟性が大きい。」
「【0042】
[実施例1、2及び比較例1、2]
実施例1として、オレフィン系樹脂(A)としてエチレン-アクリル酸エチル共重合体(メルトマスフローレート0.5g/10分、アクリル酸エチル含有量23質量%、日本ユニカー製「NUC-831」、以下単にEEAとも称する。)を使用して、表1に示したように、この100重量部に、天然産ブルーサイトである「マグシーズW-H4」(表面処理:2%ステアリン酸乾式処理品、神島化学製、粒径が4μm以上の割合45%、平均粒径2.8μm)67重量部及び酸化マグネシウムである「スターマグC-150」(表面処理:6%ステアリン酸処理品、神島化学製、平均粒径3.5μm、BET比表面積140m2/g)1重量部を加え[尚、複合難燃剤(B)としては水酸化マグネシウム(B-1)98.5質量%及び酸化マグネシウム(B-2)1.5質量%からなり、複合難燃剤(B)としては68重量部を加えたことになる。]、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン0.2重量部を加えて、バンバリーミキサーで180℃で10分間溶融混練し、難燃性樹脂組成物を得て、これを粒径約5mmに造粒後、評価した。
【0043】表1に、その評価結果を示したが、引張降伏応力は4MPa未満であり、後述する比較例と比べて、改善された可撓性を持ち、且つ被覆層厚1.5mmの60度ケーブル燃焼試験では、10秒未満で消火し優れた難燃性を示した。また、表1には、記載していないが表面平滑性試験では、光沢のある表面であった。
・・・ 中 略 ・・・
【0046】実施例2は、天然産ブルーサイトの「マグシーズW-H4」を同じく天然産ブルーサイトである「マグシーズN-1」(表面処理:2%ステアリン酸カルシウム乾式処理品、神島化学製、粒径が4μm以上の割合50%超、平均粒径4μm)に替えた以外は、実施例1と同様にして得られた樹脂組成物であるが、実施例1と同様の改善された可撓性及び難燃性を示した。なお、表面平滑性は、実用価値のあるものであったが、実施例1と比較すると光沢が少なかった。
【0047】
[実施例3、4及び比較例3、4]
実施例3では、オレフィン系樹脂(A)として、エチレン-酢酸ビニル共重合体(メルトマスフローレート4g/10分、酢酸ビニル含有量25質量%、日本ユニカー製「NUC-3195」、以下単にEVAとも称する。)、及び実施例4では直鎖状エチレン-ブテン-1共重合体(メルトマスフローレート0.7g/10分、密度0.915g/cm3、日本ユニカー製「NUCG-7101」、以下単にLLDPEとも称する。)を使用して、表1に示したように、この100重量部に天然産ブルーサイトである「マグシーズW-H4」を67重量部及び酸化マグネシウムである「スターマグCX-150」(表面処理:8%高級脂肪酸エステル処理品、神島化学製、平均粒径3.5μm、BET比表面積140m2/g)1重量部を加え[複合難燃剤(B)としては水酸化マグネシウム(B-1)98.5質量%及び酸化マグネシウム(B-2)1.5質量%からなり、複合難燃剤(B)としては68重量部を加えたことになる。]、酸化防止剤として、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン0.2重量部を加えて、バンバリーミキサーで180℃で10分間溶融混練し、難燃性樹脂組成物を得て、これを粒径約5mmに造粒後、評価した。
【0048】
表1に、その評価結果を示したが、引張降伏応力は、実施例3では4MPa未満、実施例4では6.5MPaであり、後述する合成水酸化マグネシウムを配合した比較例3、4と比べて可撓性に優れ、且つ被覆層厚1.5mmの60度ケーブル燃焼試験では、10秒未満で消火し、優れた難燃性を示した。また、表1には記載していないが、表面平滑性試験では、光沢のある表面であった。
・・・ 中 略 ・・・
【0050】
[実施例5及び比較例5、6]
実施例5として、オレフィン系樹脂(A)としてEEAを用い、複合難燃剤(B)として「マグシーズW-4H」及び「スターマグCX-150」を、表1に示した配合で用いて組成物を調製し、造粒後評価した。複合難燃剤(B)としては、水酸化マグネシウム(B-1)98.77質量%及び酸化マグネシウム(B-2)1.23質量%からなり、複合難燃剤としては、81重量部を加えたことになる。
・・・ 中 略 ・・・
【0054】
[実施例6]
粗粉砕天然産ブルーサイト98.77質量%及び酸化マグネシウム1.23質量%からなる混合物を、加温装置のついたボールミルへ入れ、混合物に対して3質量%に相当するステアリン酸粉末を加え混合し、次いでアルミナボールを使用して、平均粒径約4μmになるように80℃に加熱しながら粉砕した。この複合難燃剤(B)の粒径4μm以上の割合は50%未満であった。
【0055】
得られた複合難燃剤(B)とEEAを混合し、実施例1と同様に溶融混練し、樹脂組成物を得て評価した。評価結果は、表1に示したが、引張降伏応力(可撓性)、難燃性、更に表面平滑性の優れた樹脂組成物であった。
【0056】
【表1】
[図:0001401647000008.jpg]
」
上記記載から、引用文献3には実施例3、4として次の事項が記載されている。
「成形品の柔軟性を向上させた樹脂組成物を被覆した電線・ケーブル等の、改善された可撓性を持つ押出成形品を提供するために、(【0007】)
樹脂組成物の、引張降伏応力を4MPa未満、もしくは、6.5MPaとすること。(【0043】【0048】【表1】)」
(4)引用文献4について
引用文献4(特開2008-144155号公報 特許異議申立書に添付の甲第4号証)には、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、4-メチル-1-ペンテン系ランダム共重合体およびその製造方法に関する。詳しくは、本発明は、幅広い温度範囲で結晶性を示し、従来公知の4-メチル-1-ペンテン共重合体よりも、組成の割に融点が低く、結晶性が高いという新規な4-メチル-1-ペンテン系ランダム共重合体に関する。」
「【0021】
また、本発明の4-メチル-1-ペンテン系ランダム共重合体は、JIS K 7113の方法によって測定した引張降伏点応力が、好ましくは1~28MPa、より好ましくは4~18MPaの範囲にあることが望ましく、また、JIS K 7113の方法によって測定した引張破断点応力が、好ましくは1~28MPa、より好ましくは4~18MPaの範囲にあるのが望ましく、JIS K 7113の方法によって測定した引張破断点伸びが、好ましくは50%以上、より好ましくは300~1500%の範囲にあるのが望ましい。本発明の4-メチル-1-ペンテン系ランダム共重合体の引張降伏点応力、引張破断点応力、引張破断点伸びの特性値はJIS K 7113の引張試験の方法に従って測定した。これらの特性値は、成形後24時間以上経過した、厚さ1mmのプレスシートから打ち抜いた、JIS K 7113の2号形試験片1/2を試料として用い、23℃の雰囲気下で引張速度30mm/minで測定した値である。」
「【0108】
<用途>
本発明の4-メチル-1-ペンテン系ランダム共重合体および本発明の4-メチル-1-ペンテン系ランダム共重合体組成物は、幅広い温度範囲で結晶性を示し、結晶化度が高く、耐熱性に優れ、透明性にも優れるといった特性を備えている点において従来提案のものとは異なっている。本発明の4-メチル-1-ペンテン系ランダム共重合体および本発明の4-メチル-1-ペンテン系ランダム共重合体組成物は、押出成形、中空成形、射出成形、プレス成形、真空成形などの任意の成形方法により、パイプ、フィルム、シート、中空容器、その他各種製品に成形でき、各種用途に供することができる。
【0109】
例えば、食肉包材、加工魚包材、野菜包材、果物包材、発酵食品包材、菓子包装材、酸素吸収剤包材、レトルト食品用包材、医薬包材、細胞培養バック、細胞検査フィルム、球根包材、種子包材、野菜・キノコ栽培用フィルム、耐熱真空成形容器、惣菜容器、惣菜用蓋材、業務用ラップフィルム、家庭用ラップフィルム、改質材、例えばスチレン系エラストマー改質材、ブチルゴム改質材、プロピレン系エラストマー改質材、エチレン系エラストマー改質材、アクリル系粘着材用改質材、ホットメルト接着剤改質材、粘着・接着材セパレーター、ベーキングカートン、電子レンジ耐熱容器、冷凍食品容器、薬品容器、洗剤容器、化粧品容器、香水容器、化粧品・香水スプレー用チューブ、トナー容器、離型フィルム、例えばフレキシブルプリント基板用離型フィルム、リジット基板用離型フィルム、リジットフレキシブル基板用離型フィルム、先端複合材料用離型フィルム、炭素繊維複合材硬化用離型フィルム、ガラス繊維複合材硬化用離型フィルム、アラミド繊維複合材硬化用離型フィルム、ナノ複合材硬化用離型フィルム、フィラー充填材硬化用離型フィルム、半導体封止用離型フィルム、離型フィルム用クッションフィルム、燃料電池用離型フィルム、各種ゴムシート用離型フィルム、ウレタン硬化用離型フィルム、エポキシ硬化用離型フィルム、太陽電池セル封止シート、ダイシングテープ・バックグラインドテープ・ダイボンディングフィルムなどの半導体用工程フィルムの基材・粘着材・セパレーター、ペリクル用フィルム、偏光板用フィルム、保護フィルム、例えば偏光板用保護フィルム、液晶パネル用保護フィルム、光学部品用保護フィルム、レンズ用保護フィルム、電気部品・電化製品用保護フィルム、携帯電話用保護フィルム、パソコン用保護フィルム、電子部品封止体製造用型枠、LEDモールド、高周波回路用積層板、高周波ケーブル用被覆材、光導波路基板、ゴムホース製造用マンドレル、ゴムホース製造用シース、ホース、チューブ、電線被覆材、高圧電線用碍子、配線ダクト、離型紙、例えば合皮用離型紙、先端複合材料用離型紙、炭素繊維複合材硬化用離型紙、ガラス繊維複合材硬化用離型紙、アラミド繊維複合材硬化用離型紙、ナノ複合材硬化用離型紙、フィラー充填材硬化用離型紙、耐熱耐水印画紙、自動車・鉄道車両・航空機・船舶等の内装材、家具・履物・衣料・袋物・建材等の表皮材、医療用中空瓶、医療用容器、血液保存バック、輸液バック、輸液ボトル、輸液チューブ、輸血セット、ガスケット、フィルター、ベビーフード・酪農製品・医薬品・滅菌水等を瓶に充填後、煮沸処理、高圧蒸気滅菌等高温処理される用途のパッキング材、アニマルケージ、ビーカー、メスシリンダー等の理化学実験機器、光学測定用セル、クリアーケース、クリアーファイル、クリアーシート、カップ、プリンカップ、デスクマット、シュリンクフィルム、不織布、繊維、防水布、通気性の織物や布、紙おむつ、生理用品、衛生用品、バグフィルター、集塵用フィルター、エアクリーナー、中空糸フィルター、浄水フィルター、濾布、濾紙、ガス分離膜、バッテリーセパレーターなどの用途が挙げられる。」
上記記載から、引用文献4には次の事項が記載されている。
「電線被覆材等に用いられる、4-メチル-1-ペンテン系ランダム共重合体であって、(【0021】【0109】)
その引張降伏点応力を、好ましくは1~28MPa、より好ましくは4~18MPaの範囲とすること。(【0021】)」
(5)引用文献5について
引用文献5(特開2017-79140号公報 特許異議申立書に添付の甲第1号証)には、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式機器への電源供給等に用いられる電力ケーブルに関する。」
「【0010】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 複数本の線心を撚り合わせた撚り合わせ線心と、前記撚り合わせ線心の撚り合わせ方向と同方向に、且つ前記撚り合わせ線心の周囲に密着して巻き付けられた押え巻テープと、前記押え巻テープの上に設けられたシースと、を備えたことを特徴とする電力ケーブル。
【0011】
上記(1)の構成の電力ケーブルによれば、押え巻テープが撚り合わせ線心とシースの間に施されることで線心がシースと直接接触しない為、タルク、シリコン等の密着防止剤を必要としない。そこで、シースと線心の間の摩擦力の低減が防止される。
更に、押え巻テープが撚り合わせ線心と同方向に巻き付けられることで、線心間と押え巻テープとの間に空隙ができず、撚り合わせ線心の表面凹凸(線心間の窪み)に倣って押え巻テープが密着する。そこで、シースとなる合成樹脂が撚り合わせ線心の表面凹凸に充填された際、シースと線心の間の摩擦力が増加する為、繰り返し巻き伸ばされてもシースと線心との動きが抑制され、電力ケーブルの「うねり」を低減することができる。」
「【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る電力ケーブル1は、移動式機器への電源供給に使用される電源電線であり、複数の線心3を撚り合わせた撚り合わせ線心5と、押え巻テープ7と、シース9と、介在11と、を備える。なお、本発明の電力ケーブルはこのような構成に限らず、シールド層や外層等が設けられた種々の形態の電力ケーブルに適用することができる。」
「【0026】
更に、押え巻テープ7が撚り合わせ線心5と同方向に各線心3に沿って巻き付けられることで、線心3間と押え巻テープ7との間に空隙ができず、撚り合わせ線心5の表面凹凸(線心3間の窪み13)に倣って押え巻テープ7が密着する(図2の(a)参照)。そして、シース9となる合成樹脂が撚り合わせ線心5の表面凹凸に充填される際、合成樹脂が線心3間の窪み13にも確実に充填されて安定的な充実構造を得ることができ、シース9と線心3の間の摩擦力が増加する。
【0027】
そこで、シース9と線心3の間の摩擦力が増加された充実構造の電力ケーブル1は、繰り返し巻き伸ばされてもシース9と線心3との動きが抑制され、「うねり」を低減することができる。
また、押え巻テープ7としては、特殊なフッ素樹脂のテープを使用することなく、公知のプラスチックテープ・紙テープなどを使用するので、コストアップを招くこともない。」
上記記載から、引用文献5には、次の事項が記載されている。
「電力ケーブル1は、複数の線心3を撚り合わせた撚り合わせ線心5と、押え巻テープ7と、シース9と、介在11と、を備え、(【0017】)
押え巻テープが撚り合わせ線心と同方向に巻き付けられることで、線心間と押え巻テープとの間に空隙ができず、撚り合わせ線心の表面凹凸(線心間の窪み)に倣って押え巻テープが密着し、シースとなる合成樹脂が撚り合わせ線心の表面凹凸に充填された際、シースと線心の間の摩擦力が増加する為、繰り返し巻き伸ばされてもシースと線心との動きが抑制され、電力ケーブルの「うねり」を低減できること。(【0011】)」
(6)引用文献6について
引用文献6(特開2017-188200号公報 特許異議申立書に添付の甲第7号証)には、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、複合ケーブル及び複合ハーネスに関し、特に、自動車等の車両において車輪側と車体側とを接続する複合ケーブル及び複合ハーネスに関する。」
「【0040】
さらに、本実施の形態では、第1対撚線3、第2対撚線5、1対の第3電線6、及びテープ部材8との間に、複合ケーブル1の長手方向に延びる糸状(繊維状)の複数の介在10を配置し、両対撚線3,5及び第3電線6と共に撚り合わせることにより、集合体7を構成した。このため、複数の介在10の撚り方向及び撚りピッチは、集合体7の撚り方向及び撚りピッチと同じになる。複数の介在10は、両対撚線3,5と第3電線6とテープ部材8との間の隙間を埋めるように配置されており、集合体7の外周にテープ部材8を巻き付けた際の断面形状がより円形状に近づくようにしている。なお、複数の介在10の一部は、対撚線3,5と第3電線6の間である谷間や、1対の第1電線2の間である谷間、あるいは1対の第2電線4の間である谷間にも配置されてもよい。」
「【0047】
集合体7の周囲には、テープ部材8が螺旋状に巻き付けられており、テープ部材8は、テープ部材8が覆う全ての電線(1対の第1電線2、1対の第2電線4、及び1対の第3電線6)に接触している。テープ部材8は、集合体7とシース9との間に介在し、屈曲時に集合体7(電線2,4,6)とシース9間の摩擦を低減する役割を果たす。すなわち、テープ部材8を設けることで、従来のようにタルク粉体等の潤滑剤を用いることなく、電線2,4,6とシース9間の摩擦を低減し、屈曲時に電線2,4,6にかかるストレスを低減して、耐屈曲性を向上させることが可能になる。
【0048】
テープ部材8としては、第1電線2の第1絶縁体22、第2電線4の第2絶縁体42、及び第3電線6の第3絶縁体62に対して、滑りやすいもの(摩擦係数が小さいもの)を用いることが望ましく、例えば、不織布や紙、あるいは樹脂(樹脂フィルム等)からなるものを用いることができる。より具体的には、テープ部材8としては、テープ部材8と絶縁体22,42,62間の摩擦係数(静摩擦係数)が、テープ部材8を設けなかった際におけるシース9と絶縁体22,42,62間の摩擦係数(静摩擦係数)よりも小さい部材を用いるとよい。」
「【0057】
本実施の形態では、図2(b)の側面視(先端側を左側、基端側を右側として複合ケーブル1を左右に直線状に配置した状態での側面視)においては、テープ部材8が左下がりとなるように巻回されており、かつ、集合体7を構成する対撚線3,5と第3電線6は左下がりとなるように撚り合わされている。つまり、図2(b)の側面視においては、テープ部材8が傾斜している方向と、対撚線3,5や第3電線6(あるいは対撚線3,5と第3電線6間の溝)が傾斜している方向とが、同じ方向となっている。また、対撚線3,5を構成する電線2,4は、図2(b)の側面視においては、左下がりとなるように撚り合わされている。よって、図2(b)の側面視においては、電線2,4(あるいは電線2,4間の溝)が傾斜している方向は、テープ部材8が傾斜している方向、及び、対撚線3,5や第3電線6(あるいは対撚線3,5と第3電線6間の溝)が傾斜している方向と同じ方向となっている。なお、ここでいう「傾斜している方向」とは、複合ケーブル1の長手方向(すなわち左右方向)に対して傾斜している方向である。
【0058】
対撚線3,5の撚り方向、集合体7の撚り方向、及びテープ部材8の巻き付け方向を同じ方向とすることで、端末加工をする際に、テープ部材8をほどくと集合体7の撚りが自然にほぐれ、集合体7の撚りをほぐすと対撚線3,5の撚りが自然にほぐれることになり、電線2,4,6をほぐし易くなる。これにより、複合ケーブル1の解体性が向上し、端末加工を行う際の作業性が向上する。
【0059】
また、対撚線3,5の撚り方向、集合体7の撚り方向、及びテープ部材8の巻き付け方向を同じ方向とすることで、複合ケーブル1に捩れが加わった際に、対撚線3,5と集合体7とテープ部材8とが同調して開いたり閉じたりすることになり、捩れに対する耐久性を向上させることが可能になる。
【0060】
これに関し、例えば、集合体7の撚り方向とテープ部材8の巻き付け方向が逆方向の場合、集合体7が開く(集合体7の径が大きくなる)方向に複合ケーブル1に捩じれが加わった際、集合体7の撚り方向とテープ部材8の巻き付け方向が逆方向であるためテープ部材8は逆に閉じてしまう(テープ部材8の径が小さくなってしまう)。このとき、集合体7が開こうとするのをテープ部材8におさえつけられてしまい、集合体7にストレスが加わり、対撚線3,5や第3電線6の一部分に過大な負荷が加わってしまう。そのため、本実施の形態では、対撚線3,5の撚り方向、集合体7の撚り方向、及びテープ部材8の巻き付け方向を同じ方向とし、対撚線3,5と集合体7とテープ部材8とが同調して開いたり閉じたりするようにしている。これにより、複合ケーブル1の捩じれに対する耐久性を向上させることが可能となる。
【0061】
さらに、対撚線3,5の撚り方向と集合体7の撚り方向を同じ方向とすることにより、集合体7を撚り合わせる際に、2本の電線2,4を撚ることにより対撚線3,5に付与される曲がり癖に沿った方向に対撚線3,5と第3電線6とを撚り合せることになる。このため、複合ケーブル1が屈曲する際に、対撚線3,5と第3電線6とが同調して複合ケーブル1の長手方向に伸縮するため、複合ケーブル1が曲がりやすくなり、複合ケーブル1の可撓性を向上させることが可能になる。」
上記記載から、引用文献6には、次の事項が記載されている。
「複合ケーブルにおいて、(【0001】)
第1対撚線3、第2対撚線5、1対の第3電線6、及びテープ部材8との間に、複合ケーブル1の長手方向に延びる糸状(繊維状)の複数の介在10を配置し、両対撚線3,5及び第3電線6と共に撚り合わせることにより、集合体7を構成し、(【0040】)
集合体7の周囲に、不織布や紙、あるいは樹脂(樹脂フィルム等)からなるテープ部材8が螺旋状に巻き付けられており、(【0047】【0048】)
集合体7の撚り方向と、テープ部材8の巻き付け方向を同じ方向とすることで、捩れに対する耐久性を向上させること。(【0059】【0060】)」
(7)引用文献7について
引用文献7(特開2010-257701号公報 特許異議申立書に添付の甲第9号証)には、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットや自動車などの繰り返し屈曲を受ける環境で使用されるケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットや自動車(例えば、自動車のばね下)などの繰り返し屈曲を受ける環境に使用されるケーブルは、高い屈曲耐久性が要求されるだけでなく、例えば、配索の行いやすさという観点により、高い可撓性も要求される。しかし、高い屈曲耐久性及び高い可撓性の二つを同時に実現することはできなかった。」
「【0019】
図1に示されるように、本発明に係るケーブル11は、複数の撚線導体13が撚り合わされたケーブル11であって、撚線導体13よりも変形しやすい介在物14を有し、介在物14の周囲に複数の撚線導体13が配置されているものである。撚線導体13は、複数の導体素線を撚り合わせたものである。
【0020】
詳しく述べると、複数の撚線導体13は、ケーブル11の中心から所定の距離に、周方向にほぼ等間隔で配置されている。複数の撚線導体13の周囲は、電気絶縁体からなる絶縁層15で覆われている。絶縁層15の周囲は、導電体からなる遮蔽層(シールド層)16で覆われている。遮蔽層16の周囲は、繊維からなる補強編組層17で覆われている。補強編組層17の周囲は、樹脂からなるシース18で覆われている。
【0021】
本発明のケーブル11にあっては、複数の撚線導体13が形成する円環状構造のほぼ中心部に介在物14が配置される。介在物14は、柔軟性を有する。介在物14が撚線導体13よりも変形しやすい性質であるため、ケーブル11の屈曲時に介在物14が撚線導体13に圧されると、介在物14の外縁が変形するようになっている。
【0022】
また、図2に示されるように、本発明のケーブル21は、複数の撚線導体22が撚り合わされた子撚り線23が複数撚り合わされたケーブル21であって、子撚り線23よりも変形しやすい介在物24を有し、介在物24の周囲に複数の子撚り線23が配置されているもの(親撚り線という)である。撚線導体22は、複数の導体素線を撚り合わせたものである。」
「【0025】
図1のケーブル11の作用効果を述べる。
【0026】
まず、本発明では、複数の導体素線を撚り合わせた撚線導体を用いるが、このような構成を採ることにより、屈曲耐久性を高めることができる。また、本発明では、ケーブルの端末処理を簡単にするため、各撚線導体にはシースを持たない構成となっている。
【0027】
一般に、複数の撚線導体が撚り合わされたケーブルでは、ケーブルの中心部、すなわち図1のケーブル11の介在物14に相当する場所にも撚線導体がある。このような一般のケーブルが屈曲すると、中心部の撚線導体の外周に最も大きな応力が付与される。本発明のケーブル11は、この中心部の撚線導体を撚線導体13よりも変形しやすい介在物14に置き換えたものである。
【0028】
ケーブル11が屈曲する際、撚線導体13間に生じる圧力は、介在物14が変形することにより、吸収される。これにより、撚線導体13間の圧力が緩和され、撚線導体13を構成する導体素線の断線、つまり、撚線導体13同士が接している箇所の導体素線の断線が抑えられる。その結果、ケーブル11は、高い屈曲耐久性を有する。
【0029】
さらに、ケーブル11は、屈曲時に介在物14が変形するため、ケーブル11の曲げ剛性が上記一般のケーブルより低い。すなわち、ケーブル11は、高い可撓性を有する。これにより、ケーブル11は、一般のケーブルより小さな曲げRで曲げることができ、配索が容易になる。
【0030】
介在物14の周囲に複数の撚線導体13が配置されて撚り合わされてなる導体層の外周に絶縁層15を設け、さらにその外周に遮蔽層16を設け、その外周にシース18を設けることで、屈曲耐久性の高いケーブル11を提供することができる。
【0031】
また、遮蔽層16とシース18との間に、衝撃吸収性の繊維を編組してなる補強編組層17を設けることで、耐衝撃性の高いケーブル11を提供することができる。衝撃吸収性の編組には、ポリエチレンテレフタレート繊維材、ポリビニルアルコール繊維材、ポリエチレン-2,6-ナフタレート繊維材のうちから選択される1種以上の繊維材を用いるとよい。
【0032】
図2のケーブル21の作用効果は、上記と同等であるので、省略する。
【0033】
介在物14,24は、樹脂からなってもよい。介在物14,24は、チューブ状、すなわち、内部に空隙を有する形状に形成されてもよい。図1のケーブル11は、シリコン樹脂を用いてシリコンチューブを形成し、これを介在物14としたものである。」
「【実施例】
【0035】
実施例1、実施例2、比較例のケーブルを作製した。
【0036】
実施例1は、図1のケーブル11であり、複数の導体素線(軟銅線(TPC・タフピッチ銅))を撚り合わせた撚線導体13を中心部の周りに6本配置した。絶縁層15には架橋ポリエチレンを用いた。遮蔽層16には錫めっき銅編組を用いた。補強編組層17には、ポリビニルアルコール繊維材を用いた。なお、補強編組層17には、ポリエチレンテレフタレート繊維材やポリエチレン-2,6-ナフタレート繊維材を用いてもよい。介在物14には、ショア(A)硬度45±5度のシリコンからなるシリコンチューブを用いた。各部材の寸法は、図3に示す通りとした。なお、導体層は、撚線導体13からなる層である。
【0037】
実施例2は、図2のケーブル21であり、複数の導体素線(同上)を撚り合わせて撚線導体22とし、複数の撚線導体22を撚り合わさせた子撚り線23を中心部の周りに6本配置した。また、介在物24には、ステープル・ファイバ糸を用いた。その他の層は、実施例1と同じとした。」
「【0040】
図5に示されるように、縦軸には、比較例の導体素線の断線数に対する割合(断線数比)を取る。よって、比較例の断線数比は1である。このとき実施例1の断線数比は0.02であり、実施例2の断線数比は0.47であった。このように、比較例と実施例1、2とでは著しく導体素線の断線数が異なる。比較例では、特に中心部の撚線導体とその周囲に配置された撚線導体とが接している箇所で、導体素線の断線が数多く発生した。これに対し実施例1,2では、ケーブルの中心部に撚線導体よりも変形しやすい介在物14,24を配置しているため、屈曲により最も導体素線の断線が発生しやすい上記箇所の圧力が緩和され、導体素線の断線が抑制されている。これより、本発明のケーブル11,21は、従来に比して著しく屈曲耐久性が向上したことが確認された。
【0041】
次に、実施例1、実施例2、比較例の3つのケーブルに関し、曲げRに対する曲げ剛性を測定した。ここで、曲げR(mm)とは、ケーブルを屈曲させたときに、ケーブルが最も大きく曲がっている場所の曲げ半径である。曲げRは、150、80、50、30mmとした。曲げ剛性(N・mm2)とは、曲げにくさを示す値であり、縦弾性係数と断面2次モーメントの積で求められる。
【0042】
【表1】
[図:0001401647000009.jpg]
【0043】
表1に示すように、比較例のケーブルにおける曲げ剛性を曲げRごとに1と規格化すると、実施例1及び実施例2のケーブルは、全ての曲げRに対して曲げ剛性は少数点以下である。すなわち、実施例1及び実施例2は、比較例より曲げ剛性が小さい。これより、本発明のケーブル11,21は、従来に比して可撓性が向上したことが確認された。
【0044】
以上の試験結果から、本発明のケーブル11,21は、十分な屈曲耐久性を有し、かつ、配索をする上で十分な可撓性を有すると結論できる。
【0045】
なお、実施例1及び実施例2は、遮蔽層16,26及びシース18,28を備えたが、遮蔽層16,26とシース18,28のどちらか一方のみを備えたケーブルでも、実施例1、実施例2と同様の試験結果が得られる。」
「【図1】
[図:0001401647000010.jpg]
」
「【図2】
[図:0001401647000011.jpg]
」
図2から、実施例2のケーブル21の子撚り線23は、8本の撚線導体22を層状に撚り合わせてなることが見て取れる。
上記記載から、引用文献7には実施例1として次の事項が記載されている。
「ロボットの繰り返し屈曲を受ける環境で使用されるケーブル11において、(【0001】)
導体素線の断線を抑制するために、ケーブルの中心部に撚線導体よりも変形しやすい、シリコンからなるシリコンチューブを用いた介在物14を配置すること。(【0036】【0040】【図1】)」
また、引用文献7には、実施例2として次の事項が記載されている。
「ロボットの繰り返し屈曲を受ける環境で使用されるケーブル21において、(【0001】)
複数の導体素線を撚り合わせて撚線導体22とし、複数の撚線導体22を撚り合わさせた子撚り線23を中心部の周りに6本配置した際に、(【0037】【図2】)
子撚り線23を構成する撚線導体22を層状に撚り合わせて構成すること。(【図2】)」
(8)引用文献8について
引用文献8(特開2004-172019号公報 特許異議申立書に添付の甲第8号証)には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、主として、ロボットケーブル等の稼働部で使用される高屈曲ケーブルで、トータルとして安価であるばかりでなく、従来のものに比べて良好な高屈曲特性を有する高屈曲ケーブル1に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の屈曲ケーブル1′は、図2に示すように中心介在2′にプラスチック樹脂等の紐や糸の介在を用い、その周りに絶縁心線3′を配置し、その上に、押さえ巻きテープ4′を設け、その外側にすずめっき軟銅線等で構成された編組からなる遮蔽層5′及びシース6′を設けた構成からなっている。ここで、特性上の面から遮蔽層5′を設けない場合もある(例えば、特許文献1参照。)。」
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題としては、従来の中心介在の綿糸に比べて、トータルとして安価であるばかりでなく、従来のものに比べて良好な高屈曲特性を有する高屈曲ケーブル1の出現が要望されていた。
【0005】
【課題を解決する為の手段】
本発明は、これらの問題を解決する為に、鋭意検討した結果、第1に、中心介在2の周りに複数の絶縁心線3を配置し、その上に、押さえ巻きテープ4を設け、その外側に遮蔽層5又はシース6あるいは遮蔽層5及びシース6を設けた屈曲ケーブルにおいて、ケーブルの中心介在2は、柔軟性を有するプラスチックチューブからなる高屈曲ケーブル1で、第2に、第1のケーブルの中心介在2の外径は、直径で2.5mm以上で、かつ、その硬さが、それに4.9N/cm2の荷重をかけた時にそのつぶれが、チューブ直径の変形率で10%以上50%以下である高屈曲ケーブル1である。」
「【0007】
始めに、図1(イ)は、遮蔽層5を施した場合の高屈曲ケーブルで、図1(ロ)は、遮蔽層5を施さない場合の本発明の実施例である。図から明らかなように、本発明の中心介在2は、従来介在に使用している綿糸2′からプラスチック製のチューブ2に変更したものであり、その構成は、第1に、中心介在2の周りに複数の絶縁心線3を配置し、その上に、押さえ巻きテープ4を設け、その外側にすずめっき軟銅線等で構成された編組からなる遮蔽層5又はシース6あるいは遮蔽層5及びシース6を設けた屈曲ケーブルにおいて、ケーブルの中心介在2は、柔軟性を有するプラスチックチューブからなる高屈曲ケーブル1で、第2に、第1のケーブルの中心介在2の外径は、直径で2.5mm以上で、かつ、その硬さが、それに4.9N/cm2の荷重をかけた時にそのつぶれが、チューブ直径の変形率で10%以上50%以下である高屈曲ケーブル1である。一般に、屈曲特性向上に効果がある要因としては、導体ではよりピッチを細かくしたり、合金線を使用したりする。素線径は、断面積が同じ場合には、素線径は細く本数を多くし、導体の中心に糸を入れる等する。絶縁体については、絶縁体の硬度を高い材料を使用することにより絶縁体が曲がりにくいので、導体に加わる負荷が小さくなる。集合よりについては、導体と同様に、よりピッチが細かい方が良く、ケーブルの構成では、中心に心線を配列しない様に中心に介在を入れることがあげられる。その中でもケーブルの中心に介在を入れることが大きな要因で、構成の外層にある心線はより込まれているのに対し、中心にある心線はストレートに近いため、中心の心線は、屈曲された時に断線が起こり易い。そこで、従来は、中心介在2′に綿糸を使用しているが、綿糸の介在2′では曲げられた時にケーブル内部の圧力が上がり心線の動きが制限され、応力集中点を生じ易く、屈曲特性に悪影響を起こす場合がある。しかし、中心介在2としてチューブに変更することにより、曲げられた時にチューブが変形してくれるので心線が動き易く、応力集中点が分散される。
【0008】
【実施例】
本発明品と従来品について、夫々実施例1と実施例2からなる2種類のケーブルを作成し、実施例1のケーブル構成を表1に示す。表1から明らかなように、実施例1の場合、本発明品の介在としては、ポリ塩化ビニールのチューブ(内径3.0mm×外径5.0mm)を使用し、従来の介在としては、240本の綿糸を使用した。ここで、実施例1の場合の集合よりピッチは、外層のみを100mmとした。
【0009】
【表1】
[図:0001401647000012.jpg]
」
「【0017】
【発明の効果】
以上説明のように、本発明の高屈曲ケーブル1によれば、介在を綿糸からチューブに変更したことにより、ケーブルを曲げた時の心線の締め付けが原因での屈曲特性の低下を防げる。又、心線が動き易くなるため、編組からなる遮蔽層がある場合程、効果が大きくなるので、その工業的価値は非常に大きい。」
上記記載から、引用文献8には、次の事項が記載されている。
「ロボットケーブル等の稼働部で使用される高屈曲ケーブルであって、(【0001】)
中心介在2の周りに複数の絶縁心線3を配置し、その上に、押さえ巻きテープ4を設け、その外側にシース6を設けた屈曲ケーブルにおいて、良好な高屈曲特性を備えるために、ケーブルの中心介在2を、柔軟性を有するプラスチックチューブとすること。(【0004】【0005】【0017】)」
(9)引用文献9について
引用文献9(特開2015-79574号公報 特許異議申立書に添付の甲第6号証)には、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば産業用ロボットのアーム等の捻回頻度が高い可動部で使用するのに適した耐捻回性ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットのアーム等の捻回頻度が高い可動部に使用されるケーブルでは、ケーブル上の捻回箇所に、局所的に負荷が集中することにより発生する疲労断線の問題がある。疲労断線により、電気抵抗や電気損失の増加、遮蔽効果の低下等の問題が発生し、また、アース短絡となれば大変危険である。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、耐捻回性に優れ、かつ、遮蔽性及びコスト性に優れる耐捻回性ケーブルを提供することにある。」
「【0015】
以下、本発明の基本的構成を、添付図面を参照しながら説明する。
図3の耐捻回性ケーブル1において、電線(単線または撚り線)2、介在3を中心に電線2を複数本撚り合せたコア線材4、コア線材4の上に、紙テープ5、シールド層6、外層7が同芯円上に施される。」
「【0024】
本発明の耐捻回ケーブル1の、図3の態様である実施例1を示す。
電線2は、導体径φ0.9mmの錫めっき軟銅線の可撓構成の導体に、フッ素樹脂(ETFE)を厚さ0.2mm被覆したものである。さらに、介在3を中心に電線2を6本、S方向に撚り合せ、外径φ3.9mmのコア線材4が得られる。S方向に撚られたコア線材4の上に、厚み0.05mm、幅20mmの紙テープ5を1/4ラップにより巻き付け、さらにシールド層6を施す。シールド層6の編組構成のうち、素線はφ0.1mmの錫めっき軟銅線、持ち数12/4(S方向/Z方向)、打ち数は24打、編組密度は80%である。外層7は、塩化ビニルを厚さ0.9mmで施し、外径φ6.2mmの耐捻回性ケーブル1を作製した。」
「【図3】
[図:0001401647000013.jpg]
」
(10)引用文献10について
引用文献10(特開2014-137078号公報 特許異議申立書に添付の甲第10号証)には、以下の事項が記載されている。
「【0022】
上記のダンベル試験片を用いて、JIS K7161(プラスチック-引張特性の試験方法、第1部:通則)に基づき、剛性(引張降伏応力)及び靭性(引張破壊呼びひずみ)を試験した。主な試験条件は以下のとおりである。」
(11)引用文献11について
引用文献11(特開2013-4265号公報 特許異議申立書に添付の甲第11号証)には、以下の事項が記載されている。
「【0022】
(A)成分のポリオレフィンとしては、耐傷性と柔軟性をバランスさせる観点から、なかでも、ポリプロピレンが好ましく、エチレンとのブロックコポリマーがより好ましい。より一層好ましいのは、MFR(JIS K 7210)0.3~1.5g/10分、密度(JIS K 7112)0.85~0.95g/cm3、引張降伏応力(JIS K 7161)26~40MPa、引張破壊歪み(JIS K 7162)400%以上、シャルピー衝撃強さ(JIS K 7111、23℃)20kJ/m2以上のプロピレン・エチレンブロックコポリマーである。このような物性を有する市販品を具体的に例示すると、例えばノバテックEC9(日本ポリプロ(株)製 商品名)が挙げられる。」
(12)引用文献12について
引用文献12(特開2011-46879号公報 特許異議申立書に添付の甲第12号証)には、以下の事項が記載されている。
「【0021】
本発明の電線・ケーブル被覆用難燃性組成物のベース樹脂を構成する(A)成分のポリプロピレンとしては、プロピレンのホモポリマーのみならず、エチレンとのランダムコポリマーやブロックコポリマー、これらの混合物が使用される。なかでも、エチレンとのブロックコポリマーが好ましく、特に、MFR(JIS K 7210;230℃、2.16kg荷重)0.3~1.5g/10分、密度(JIS K 7112)0.85~0.95g/cm3、引張降伏応力(JIS K 7161)26~40MPa、引張破壊歪み(JIS K 7162)400%以上、シャルピー衝撃強さ(JIS K 7111;23℃)20kJ/m2以上のプロピレン・エチレンブロックコポリマーの使用が好ましい。このような物性を有する市販品を具体的に例示すると、例えばノバテックPP EC9(日本ポリプロ(株)製 商品名)が挙げられる。」
(13)引用文献13について
引用文献13(特開2014-10979号公報 意見書に添付の甲第13号証)には、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、主として工作機械やロボット等の配線に使用されるケーブルに関するものである。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
直交ロボット50を図8に示す。直交ロボット50は、X軸アクチュエータ51およびY軸アクチュエータ52およびケーブル40から構成されている。ケーブル40は、X軸アクチュエータ51の可動部511に固定されているY軸アクチュエータ52に信号および電力を供給するために設けられており、X軸アクチュエータ51の可動部511の移動に伴って屈曲する。」
「【課題を解決するための手段】
【0008】
信号ケーブルおよび電源ケーブルがテンションメンバを中心にして集合撚りされ、この外周にシースが設けられているケーブルにおいて、
前記テンションメンバは、中空筒状部材と、前記中空筒状部材に挿通されロッドとからなり、前記ロッドは材質や径が異なる複数のロッドのうち1のロッドを選定して挿通したことを特徴とするケーブル。」
「【実施例1】
【0011】
図1は、実施例1に示すケーブル10の断面図である。
【0012】
実施例1に示すケーブル10は信号ケーブル11、電源ケーブル12、エアチューブ13、テンションメンバ14、介在糸15、シールド編組16、シース17から構成されている。
【0013】
信号ケーブル11は、複数の信号線110とシールド層111で構成されている。シールド層111はシールド編組とポリエステルで構成されており、すずめっき軟銅を編み込んだシールド編組で信号線110を覆い、さらにその外周をポリエステルやビニルで覆うことにより信号線110へのノイズによる影響を低減している。
【0014】
電源ケーブル12は、複数の電源線120と押え巻き121と介在糸122で構成されている。複数の電源線120をポリエステル製の押え巻き121で束ね、電源線120の周囲にできる隙間をポリプロピレン製の介在糸122で埋めることにより構成されている。
【0015】
エアチューブ13は、ポリウレタン製であり、図示しないエアコンプレッサから圧縮空気が供給される。」
「【図1】
[図:0001401647000014.jpg]
」
段落【0008】の「信号ケーブルおよび電源ケーブルがテンションメンバを中心にして集合撚りされ」の記載から、実施例1のケーブル10も、信号ケーブル11と電源ケーブル12は、テンションメンバ14を中心に集合撚りされているといえる。
そして、実施例1のケーブル10は、【図1】から、信号ケーブル11、電源ケーブル12の他に、テンションメンバ14を中心として、エアチューブ13、介在糸15も配置されていることが見てとれるから、ケーブル10は、信号ケーブル11、電源ケーブル12、エアチューブ13、介在糸15が、テンションメンバ14を中心として集合撚りされているといえる。
加えて、段落【0008】の「前記テンションメンバは、中空筒状部材と、前記中空筒状部材に挿通されロッドとからなり」の記載から、実施例1のテンションメンバ14も、中空筒状部材と、前記中空筒状部材に挿通されたロッドとからなっているといえる。
さらに、段落【0001】の「本発明は、主として工作機械やロボット等の配線に使用されるケーブルに関するものである。」記載から、実施例1のケーブル10は、ロボット等の配線に使用されるケーブルであるといえる。
そうすると、上記記載から、引用文献13には実施例1として、次の事項(以下、「引用文献13記載事項」という。)が記載されている。
「ロボット等の配線に使用されるケーブル10において、
ケーブル10は信号ケーブル11、電源ケーブル12、エアチューブ13、テンションメンバ14、介在糸15、シールド編組16、シース17から構成され、【0012】
信号ケーブル11、電源ケーブル12、エアチューブ13、介在糸15は、テンションメンバ14を中心として集合撚りされており、
テンションメンバ14は、中空筒状部材と、前記中空筒状部材に挿通されロッドとからなり、【0008】
エアチューブ13は、ポリウレタン製であり、エアコンプレッサから圧縮空気が供給されていること。【0015】」
(14)引用文献14について
引用文献14(特開2002-150849号公報 意見書に添付の甲第14号証)には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は軽比重ケーブルに関する。」
「【0009】図2を参照して、前記ケーブルCの第1の実施形態を説明する。この図2に示すケーブル10は、外皮11内に電力を供給したり通信を行ったりする1乃至複数の心線12と、空気を内部に入れた1乃至複数の空気チューブ13とを少なくとも有する構成としている。また前記心線12と空気チューブ13以外の外皮11内空間は保護層14となっている。前記外皮11は、ビニール等のプラスチック、ゴム、その他の耐水圧、耐水性のよい材料を用いることができるが、半硬質、軟質、硬質の材料を用いることができる。勿論、前記作業ロボットAに接続するケーブルCとしては半硬質、軟質のものがよい。前記心線12は、例えば導体12aとそれを被覆する絶縁体12bとから構成されるもので、実際に電力や通信のための線としての役割を果すものである。前記空気チューブ13は内部に空気を封入したチューブで、ゴムやその他のプラスチックからなるチューブとすることができる。なお空気チューブ13の代わりに、複数の空気袋をライン状に配するようにしてもよい。前記保護層14は心線12や空気チューブ13を保護するためのもので、絶縁材やプラスチック、ゴム、その他の材料による糸やバルクから構成することができる。勿論、外皮11内の内容物としては、前記心線12、空気チューブ13、保護層14以外の物が一緒に構成されていてもよい。上記のようにして空気チューブ13を心線12と共に外皮11内に存在させることで、全体としてのケーブル10の比重を軽くし、水底に沈まないようにすることが可能となる。前記比重は水の比重と同じ程度とするか、多少軽くすることになる。が、具体的には水上に浮遊するようなものから、水と同程度のもの、水より若干だけ比重が大きいもの等、複数種類の比重を持つケーブル10を揃えておくことができる。
【0010】図3を参照して、本発明ケーブルCの第2の実施形態を説明する。この図3に示すケーブル20は、ケーブル断面の中心部に大径の空気チューブ23を配し、その空気チューブ23の周りに複数の心線22と各心線22の間を埋めるスペーサとしての紐25とを配し、前記空気チューブ23と心線22と紐25とからなる構成を内部に保護する高張力繊維補強層26と、該高張力繊維補強層26を内側に保護する外皮21とからなる。前記心線22は導体22aと絶縁体22bとからなる。前記外皮21、心線22、空気チューブ23についての材料は、図2において説明したのと同様な材料を使用することができる。また前記紐25は糸や繊維からなる紐であり、心線22と同程度の直径とすることができる。スペーサとして働くと共に、心線22間の絶縁を増強し、或いは強度補強を行う。また高張力繊維補強層26は、強靭な糸やその他の繊維でチューブ状に構成したもので、その内部の心線22、空気チューブ23、紐25を保護し、またケーブル20としての強靭性を補強する。前記空気チューブ23は、その代わりに複数の空気袋をライン状に配するようにしてもよい。本実施形態ではケーブル断面の中心部に空気チューブ23を配するようにしたことで、コンパクトな小径のケーブル20にあって空気チューブ23の径を大径にすることができ、よってケーブル20の比重を効率良く小さくすることができる。
【0011】図4を参照して、本発明ケーブルCの第3の実施形態を説明する。この図4に示すケーブル30は、ケーブル断面の中心部に大径の空気チューブ33を配し、その大径の空気チューブ33の周りに複数の心線32と各心線32(導体32aと絶縁体32bとからなる)の間を埋めるスペーサとして、前記図3における紐25の代わりに小径の空気チューブ37を配している。外皮31、高張力繊維補強層36、その他の構成、材料等は上記第2の実施形態の場合と同様である。この実施形態では、ケーブル断面の中心部に大径の空気チューブ33を配する他に、その周りに心線32間のスペーサとしての役割をも兼ねる小径の空気チューブ37を配するようにしたので、コンパクトなケーブル30の構成にあって一層効率良く比重を小さくすることができる。なお、前記大径の空気チューブ33や小径の空気チューブ37は、その代わりに複数の空気袋をライン状に配するようにしてもよい。」
「【図3】
[図:0001401647000015.jpg]
」
「【図4】
[図:0001401647000016.jpg]
」
(15)引用文献15について
引用文献15(特開昭62-206707号公報 意見書に添付の甲第15号証)には、以下の事項が記載されている。
「実施例
付図は、本発明の実施例の断面図であって、1は撚線銅導体、2は撚線銅導体1を構成する銅素線、3は銅防錆剤を含有した有機高分子組成物からなる介在紐、4はセパレータテープ、5は架橋ポリエチレンからなる絶縁層である。」(第2頁右下欄11~16行)
「
[図:0001401647000017.jpg]
」
(16)引用文献16について
引用文献16(特開昭61-68809号公報 意見書に添付の甲第16号証)には、以下の事項が記載されている。
「〔発明の具体的構成〕
以下、この発明をより具体的に説明する。
図面は、この発明の難燃性ケーブルの一例を示すもので、図中符号1は絶縁線心である。この絶縁線心1は、導体2上にポリエチレンなどの比較的燃焼し易い材料からなる絶縁体層3を被覆してなるものである。この絶縁線心1は、その複数本が介在物である複数の紐状体4・・・と撚り合せられている。この紐状体4は、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、クロルスルホン化ポリエチレンなどのそれ自体で難燃性を有する難燃性ゴム系材料や天然ゴム、EPゴム、ブチルゴムなどのゴム系材料に難燃化剤、例えば水酸化アルミニウムやハロゲン系難燃剤と三酸化アンチモン等を配合して難燃化した難燃化ゴム系材料などの好ましくは酸素指数30%以上の難燃ゴム系材料からなる紐状の長尺体である。
この紐状体4は、図面に示した例のように絶縁線心1・・・の周囲に細径のものを多数撚り合せてもよく、あるいは太径のものを中心としてこれに細径の絶縁線心1を複数本を撚り合せてもよい。」(第2頁左下欄17行~右下欄17行)
「
[図:0001401647000018.jpg]
」
(17)引用文献17について
引用文献17(実用新案登録第2576380号公報 意見書に添付の甲第17号証)には、以下の事項が記載されている。
「(実施例)
以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。
第1図は、本考案の複合ケーブルの一実施例を示す縦断面図である。第1図において、スチールワイヤーの撚線等から成るテンションメンバー6の外周は塩化ビニル樹脂等の被覆体7で覆われており、この外周には、例えば4本の送水ホース8、テレビカメラの首ふり等を可能にする制御用ケーブル9及びテレビカメラ(第2図参照)に直結される2本の光ファイバユニット10等がジュート等の介在物11と共により合わせられている。しかして、このより合わせ体の外側には、布テープ等の押えテープ12か巻回され、この外側には、耐磨耗性の良好なウレタン樹脂等から成るシース13が設けられている。
各送水ホース8は、例えばポリアミド樹脂等から成る内径が14.7mm程度のホースと、この外周に設けた2重の横巻金属線と、この上に設けた金属編組と、この上に設けたウレタンチューブ等とで構成されており、これらの送水ホース8は、複合ケーブル内では、テンションメンバー6の外周に円周方向に略均等に配列されるか、海水管清掃ロボットの本体(第2図参照)内では1本に纏められ、50~300kgf/cm2程度の水圧で水が噴射されるようになっている。なお、送水ホース8を複数本に分割して配列したのは、複合ケーブル全体の外径を細くするためと、送水ホース8の内圧を高めるためである。
各光ファイバユニット10は、外周に螺旋状の溝を例えば6個形成したスペーサと、この各溝に収納された光ファイバと、スペーサの外周に巻回された押えテープ等とで構成されており、これらの光ファイバユニット10は、テンションメンバー6の外周のシース13に近接するよりあわせ心の外周部となる位置に略180度の間隔をおいて配列されている。
制御用ケーブル9は、4条の対より線心14と、この対より線心のよりあわせ上に設けられた押えテープ15とで構成されている。なお、対より線心14を構成する絶縁線心は、導体の外周にポリ四弗化エチレン樹脂等の絶縁体を被覆したもので構成されている。
符号16は、送水ホース8より、小径(11,3mm程度)の送水ホースを示しており、これによって、海水管より分離した貝のかきだしが行われる。
符号17は、必要により2本設けられる直径が8mm程度のエアホースで、ポリアミド樹脂等のホース等から成り、テンションメンバーの外周に略180度の間隔をおいて配列されている。」(第2頁左欄下から2行~右欄下から10行)
「【第1図】
[図:0001401647000019.jpg]
」
3 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と引用発明を対比すると次のことがいえる。
(ア)引用発明の「112本の導体から構成された導体2の外周に絶縁体を被覆して絶縁心線4Aとし」たものは、本件発明1の「電線」に相当する。
そして、引用発明の「この絶縁心線4Aを複数本撚り合わせ」たものと、本件発明1の「複数の電線、介在、および撚り紐が撚り合されてなる集合体」とは、「複数の電線が撚り合されてなる集合体」である点で共通する。
(イ)引用発明は、「絶縁心線4Aを複数本撚り合わせ」たものの「外周上に和紙テープ5、シース6を順次施」しているから、「和紙テープ5」は、「絶縁心線4Aを複数本撚り合わせ」たものの外周上を覆っているといえる。
そうすると、引用発明の「和紙テープ5」は、本件発明1の「前記集合体の外周を覆うテープ部材」に相当する。
(ウ)引用発明は、「絶縁心線4Aを複数本撚り合わせ」たものの「外周上に和紙テープ5、シース6を順次施」しているから、「シース6」は、「和紙テープ5」の外周上を覆っているといえる。
そうすると、引用発明の「ポリ塩化ビニルから成」る「シース6」は、本件発明1の「ポリ塩化ビニルで形成され、前記テープ部材で覆われた前記集合体を被覆するシース部材」に相当する。
(エ)引用発明の「耐屈曲性・耐捻れ性に優れた産業用ロボット等のFA機器に使用されるケーブル」は、本件発明1の「耐捻回ケーブル」に対応する。
(オ)上記(ア)~(エ)から、本件発明1と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。
[一致点]
複数の電線が撚り合されてなる集合体と、
前記集合体の外周を覆うテープ部材と、
ポリ塩化ビニルで形成され、前記テープ部材で覆われた前記集合体を被覆するシース部材と
を備える耐捻回ケーブル。
[相違点1]
「集合体」について、本件発明1は「複数の電線、介在、および撚り紐が撚り合されてなる集合体」であるのに対して、引用発明の「集合体」は、介在および撚り紐に対応する構成を備えておらず、「複数の電線、介在、および撚り紐が撚り合されてなる集合体」であるとはいえない点。
[相違点2]
本件発明1は、「前記撚り紐は、前記介在と前記電線との間の空間を埋める部材であ」るのに対して、引用発明は「撚り紐」を備えていない点。
[相違点3]
本件発明1は、「前記シース部材の引張降伏応力が3.5MPa以上10MPa以下であ」るのに対して、引用発明は対応する特定がされていない点。
[相違点4]
本件発明1は、「前記集合体の撚り合せ方向と前記テープ部材の巻き付け方向とが同方向である」のに対して、引用発明は対応する特定がされていない点。
イ 相違点についての当審判断
上記相違点1に係る本件発明1の構成は、引用文献2~17の何れの文献にも記載されておらず、周知の構成であるともいえない。
そうすると、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、引用発明及び引用文献2~17に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 異議申立人の意見について
(ア)異議申立人は、上記相違点1に係る本件発明1の構成について、意見書で、引用文献13記載事項にある「信号ケーブル11、電源ケーブル12」、「エアチューブ13」、「介在糸15」は、それぞれ、本件発明1の「電線」、「介在」、「撚り紐」に相当する旨主張し(意見書第12頁5~12行)、引用発明に引用文献13記載事項に示された構成を採用することは、当業者が適宜なし得たことである旨主張する(意見書第12頁13~17行)。
しかしながら、本件明細書等に
「【0021】
介在4は、耐捻回ケーブル1の内部に配置された難燃性の樹脂チューブであり、内部に空洞4aを備えている。介在4を構成する樹脂としては、たとえば、塩化ビニルやポリウレタン等が用いられる。また、耐捻回ケーブル1の中心には、中心介在4´が配置されている。複数の電線3および複数の他の介在4は、この中心介在4´の周囲に層状に撚り合わせて配置されている。これにより、耐捻回ケーブル1が捻回された場合に潰れにくくすることができる。」(再掲)
と記載されているように、本件発明1の「介在」は、「耐捻回ケーブル1」が捻回された場合に潰れにくくするためのものである。
それに対して、引用文献13記載事項にある「エアチューブ13」は、エアコンプレッサから圧縮空気が供給されるものであり、引用文献13には、「ケーブル10」が捻回された場合に潰れにくくするためのものであるとの記載はない。
そうすると、引用文献13記載事項にある「エアチューブ13」を、本件発明1の「介在」に相当するということはできない。
加えて、引用文献13記載事項にある「介在糸15」は、糸であり、撚り紐であるとはいえないから、本件発明1の「撚り紐」に相当するということはできない。
してみると、引用発明1に引用文献13記載事項にある構成を採用しても、相違点1に係る本件発明1の構成には至らない。
したがって、異議申立人の上記主張は採用できない。
(イ)異議申立人は、上記相違点2に係る本件発明1の構成について、意見書で、引用文献14~17に記載されており、「集合体の内部に存在する空間を紐やチューブによって埋めること」は、周知技術であるか、少なくとも公知技術であるから、引用発明に、引用文献13記載事項に示された構成を採用する際に、周知技術や公知技術に基づいて、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである旨主張する(意見書第12頁18行~30行)。
しかしながら、上記(ア)で検討したように、引用文献13には、相違点1に係る本件発明1の構成は記載されていないから、引用発明に、引用文献13記載事項、及び、引用文献14~17に記載された技術を適用しても、相違点2に係る本件発明1の構成には至らない。
したがって、異議申立人の上記主張は採用できない。
エ 以上のとおりであるから、本件発明1は、引用発明及び引用文献2~17に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1を直接又は間接的に引用する発明であり、上記相違点1に係る「複数の電線、介在、および撚り紐が撚り合されてなる集合体」を備えているから、上記(1)イと同じ理由により、引用発明及び引用文献2~17に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明4について
ア 本件発明4と引用発明を対比すると次のことがいえる。
(ア)引用発明の「112本の導体から構成された導体2の外周に絶縁体を被覆して絶縁心線4Aとし」たものは、本件発明4の「電線」に相当する。
そして、引用発明の「この絶縁心線4Aを複数本撚り合わせ」たものと、本件発明4の「内部中心に中心介在を有し、複数の電線、介在が前記中心介在の周囲に撚り合されてなる集合体」とは、「複数の電線が撚り合されてなる集合体」である点で共通する。
(イ)引用発明は、「絶縁心線4Aを複数本撚り合わせ」たものの「外周上に和紙テープ5、シース6を順次施」しているから、「和紙テープ5」は、「絶縁心線4Aを複数本撚り合わせ」たものの外周上を覆っているといえる。
そうすると、引用発明の「和紙テープ5」は、本件発明4の「前記集合体の外周を覆うテープ部材」に相当する。
(ウ)引用発明は、「絶縁心線4Aを複数本撚り合わせ」たものの「外周上に和紙テープ5、シース6を順次施」しているから、「シース6」は、「和紙テープ5」の外周上を覆っているといえる。
そうすると、引用発明の「ポリ塩化ビニルから成」る「シース6」は、本件発明4の「ポリ塩化ビニルで形成され、前記テープ部材で覆われた前記集合体を被覆するシース部材」に相当する。
(エ)引用発明の「耐屈曲性・耐捻れ性に優れた産業用ロボット等のFA機器に使用されるケーブル」は、本件発明4の「耐捻回ケーブル」に対応する。
(オ)上記(ア)~(エ)から、本件発明4と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。
[一致点]
複数の電線が撚り合されてなる集合体と、
前記集合体の外周を覆うテープ部材と、
ポリ塩化ビニルで形成され、前記テープ部材で覆われた前記集合体を被覆するシース部材と
を備える耐捻回ケーブル。」
[相違点5]
「集合体」について、本件発明4は「内部中心に中心介在を有し、複数の電線、介在が前記中心介在の周囲に撚り合されてなる集合体」であるのに対して、引用発明の「集合体」は、中心介在及び介在に対応する構成を備えておらず、「内部中心に中心介在を有し、複数の電線、介在が前記中心介在の周囲に撚り合されてなる集合体」であるとはいえない点。
[相違点6]
本件発明4は、「複数の前記介在及び前記中心介在は、樹脂チューブで形成され」ているのに対して、引用発明は対応する構成を備えていない点。
[相違点7]
本件発明4は、「前記シース部材の引張降伏応力が3.5MPa以上10MPa以下であ」るのに対して、引用発明は対応する特定がされていない点。
[相違点8]
本件発明4は、「前記集合体の撚り合せ方向と前記テープ部材の巻き付け方向とが同方向である」のに対して、引用発明は対応する特定がされていない点。
イ 相違点についての当審判断
上記相違点5に係る本件発明4の構成は、引用文献2~17の何れの文献にも記載されておらず、周知の構成であるともいえない。
そうすると、本件発明4は、他の相違点について検討するまでもなく、引用発明及び引用文献2~17に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 異議申立人の意見について
(ア)異議申立人は、上記相違点5に係る本件発明4の構成について、意見書で、引用文献13記載事項にある「テンションメンバ14」、「信号ケーブル11、電源ケーブル12」、「エアチューブ13」は、それぞれ、本件発明4の「中心介在」、「電線」、「介在」に相当する旨主張し(意見書第12頁第下から1行~第13頁6行)、引用発明に引用文献13記載事項に示された構成を採用することは、当業者が適宜なし得たことである旨主張する(意見書第13頁9~11行)。
しかしながら、上記(1)ウ(ア)で検討したように、引用文献13記載事項にある、「エアチューブ13」は、エアコンプレッサから圧縮空気が供給されるものであり、「ケーブル10」が捻回された場合に潰れにくくするためのものであるとはいえないから、本件発明4の「介在」に相当するということはできない。
加えて、引用文献13記載事項にある「テンションメンバ14」は、「中空筒状部材と、前記中空筒状部材に挿通されロッドとからな」るから、本件発明4の「中心介在」に相当するということはできない。
そうすると、引用発明1に引用文献13記載事項にある構成を採用しても、相違点5に係る本件発明4の構成には至らない。
したがって、異議申立人の上記主張は採用できない。
(イ)異議申立人は、引用文献13~17に記載されているように、心線、導体、ケーブル等の電線と紐、チューブ、ホース等の介在とを適宜組み合わせて撚り合わせることは公知技術または周知技術であり、集合体の内部に存在する空間や紐やチューブによって埋めることも公知技術または周知技術であるから、引用文献13記載事項に示された構成を採用する際に、公知技術や周知技術をに基づいて、本件発明4の「集合体」と同様の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである旨主張する(意見書第13頁12行~18行)。
しかしながら、上記(ア)で検討したように、引用文献13には、相違点5に係る本件発明4の構成は記載されていないから、引用発明に、引用文献13記載事項、及び、引用文献14~17に記載された技術を適用しても、相違点5に係る本件発明4の構成には至らない。
したがって、異議申立人の上記主張は採用できない。
エ 以上のとおりであるから、本件発明4は、引用発明及び引用文献2~17に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明6~8について
本件発明6~8は、本件発明1を直接又は間接的に引用する発明、若しくは、本件発明4を直接又は間接的に引用する発明であり、上記相違点1に係る「複数の電線、介在、および撚り紐が撚り合されてなる集合体」、若しくは、上記相違点5に係る「内部中心に中心介在を有し、複数の電線、介在が前記中心介在の周囲に撚り合されてなる集合体」を備えているから、上記(1)イ若しくは上記(3)イと同じ理由により、引用発明及び引用文献2~17に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 取消理由通知書において採用しなかった特許異議申立て理由について
異議申立人は、特許異議申立書において、本件発明1~8は、甲第1号証(特開2017-79140号公報 引用文献5)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである旨主張する。
しかしながら、甲第1号証~甲第17号証には、上記相違点1に係る本件発明1の構成、及び、上記相違点5に係る本件発明4の構成は記載されていない。
そうすると、上記3で検討したように、本件発明1~3は、上記相違点1に係る「複数の電線、介在、および撚り紐が撚り合されてなる集合体」を備え、本件発明4は、上記相違点5に係る「内部中心に中心介在を有し、複数の電線、介在が前記中心介在の周囲に撚り合されてなる集合体」を備え、本件発明6~8は、上記相違点1に係る「複数の電線、介在、および撚り紐が撚り合されてなる集合体」、若しくは、上記相違点5に係る「内部中心に中心介在を有し、複数の電線、介在が前記中心介在の周囲に撚り合されてなる集合体」を備えているから、本件発明1~4、6~8は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
したがって、特許異議申立人の係る主張は、採用することはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立て理由によっては、本件請求項1~4、6~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~4、6~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
なお、本件請求項5に係る特許は、上記のとおり本件訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による請求項5に係る特許異議の申立ては、対象となる請求項が存在しないこととなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論とおり決定する。
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2022-700854