特許異議申立
2022-700828
高濃度のテアニンを含有する容器詰緑茶飲料
- 審判番号
- 2022-700828
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-066322
- 登録番号
- 7026273
- 請求日
- 2022年08月23日
- 審決日
- 2023年03月15日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】サントリーホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】山本 修
- 【権利者代理人】宮前 徹
- 【権利者代理人】松尾 淳一
- 【権利者代理人】中村 充利
- 【異議申立人】松下 明光
- 【異議申立人】西田 友美
- 審判長/審判官
- 審判長 大島 祥吾
- 審判官 磯貝 香苗
- 審判官 加藤 友也
- 分類
- P1651.113-YAA(A23F) / P1651.121-YAA(A23F) / P1651.537-YAA(A23F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7026273号発明「高濃度のテアニンを含有する容器詰緑茶飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7026273号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし5〕について訂正することを認める。
特許第7026273号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続きの経緯
特許第7026273号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、
令和3年 4月 9日に出願され、
令和4年 2月16日にその特許権の設定登録(請求項の数 5)がされ、
令和4年 2月25日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年 8月23日:松下明光(以下、「特許異議申立人1」という。)による全ての請求項に係る特許に対する特許異議の申立て
令和4年 8月25日:西田友美(以下、「特許異議申立人2」という。)による全ての請求項に係る特許に対して特許異議申立て
令和4年11月 4日付け:当審による取消理由通知書
令和4年12月 6日:特許権者による意見書の提出及び訂正請求
令和4年12月20日付け:訂正請求があった旨の通知
なお、令和4年12月20日付け訂正請求があった旨の通知に対し、異議申立人1及び異議申立人2による意見書等の提出はなかったものである。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和4年12月6日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項1及び2のとおりであって、請求項1ないし5という一群の請求項について訂正をするものである。なお、下線は訂正箇所について付したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、
「L-テアニンの含有量が100~2200ppmであり、グリセロ糖脂質の含有量が0.2~30ppmであり、ノナナールの含有量が0.5~10ppbである、容器詰緑茶飲料。」との記載を、
「L-テアニンの含有量が100~2200ppmであり、グリセロ糖脂質の含有量が1.0~30ppmであり、ノナナールの含有量が0.5~10ppbである、容器詰緑茶飲料。」に訂正する。
併せて、請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2ないし5についても同様の訂正をする。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5について
「請求項1~4のいずれかに記載の飲料を製造する方法であって、
L-テアニンの含有量を100~2200ppm、グリセロ糖脂質の含有量を0.2~30ppmに調整する構成を含む、上記方法。」との記載を、
「請求項1~4のいずれかに記載の飲料を製造する方法であって、
L-テアニンの含有量を100~2200ppm、グリセロ糖脂質の含有量を1.0~30ppmに調整する構成を含む、上記方法。」に訂正する。
2 訂正の適否についての検討
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、グリセロ糖脂質の含有量について、その下限値を限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
また、訂正事項1に係るグリセロ糖脂質の含有量の下限値が1.0ppmであることは、本件特許明細書【0014】に記載されている。したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内である。
(2)訂正事項2について
訂正事項2に係る請求項5の訂正は、グリセロ糖脂質の含有量について、その下限値を限定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、実施上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
また、訂正事項2に係るグリセロ糖脂質の含有量の下限値が1.0ppmであることは、本件特許明細書【0014】に記載されている。したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内である。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし5について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし5(以下、それぞれ順に「本件特許発明1」といい、まとめて「本件特許発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】
L-テアニンの含有量が100~2200ppmであり、グリセロ糖脂質の含有量が1.0~30ppmであり、ノナナールの含有量が0.5~10ppbである、容器詰緑茶飲料。
【請求項2】
カテキン類の含有量が1200ppm以下である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
グリセロ糖脂質の含有量が1~20ppmである、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項4】
緑茶粉末を含有する、請求項1~3のいずれかに記載の飲料。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の飲料を製造する方法であって、
L-テアニンの含有量を100~2200ppm、グリセロ糖脂質の含有量を1.0~30ppmに調整する構成を含む、上記方法。
第4 特許異議申立書に記載した特許異議申立理由の概要
特許異議申立人1及び特許異議申立人2が提出した特許異議申立書において主張する特許異議申立理由の概要は、それぞれ次のとおりである。
1.特許異議申立人1の異議申立理由について
特許異議申立人1は、本件特許に対する異議申立理由として、
下記(1)申立理由1-1~(2)申立理由1-2を主張し、(3)の証拠方法を提出した。
(1)申立理由1-1(甲第1-1号証~甲第1-3号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1-1号証、甲第1-2号証、甲第1-3号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野おける通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由1-2(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、下記ア.~イ.の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
ア.ノナナールの濃度範囲について
本件特許明細書の【0018】にノナナールの含有量の数値範囲について記載され、「このような範囲であると、緑茶飲料のフレッシュな香気を十分に感じることができる。」旨説明がなされているが、実際に検討されたノナナールの含有量は約1ppb(【0029】、【0033】、【0037】、【0041】)、3.5ppb(【0045】)、5.0ppb(【0049】)の3点に過ぎず、0.5ppb~1.0ppbの範囲、及び、5.1ppb~10ppbの範囲については本件発明の効果を奏するか否かについての検討が行われていない。このため、ノナナールの濃度範囲について、特許請求の範囲に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載された範囲を逸脱している。
イ.ノナナール添加の疑義について
本件特許明細書の【0029】を参酌すると、実験1:緑茶飲料の製造と評価(参考例)において、火入れ強めの煎茶から抽出した緑茶飲料中には、約1ppbのノナナール含有量が認められたとの記載がある。そうすると、火入れ強めの煎茶から得られた緑茶飲料を容器詰めすれば、本件特許発明1~本件特許発明5に記載された濃度範囲のノナナールを含むことが推認される。そうすると、本件発明は、そもそもノナナールを添加する必要がないものである。
また、本件特許明細書の記載中には、ノナナールを添加するための内容が認められない。ノナナールは水には不溶性であるため、油成分や有機溶媒等に溶解した後でなければ所定濃度まで薄めて添加することができない。油成分を用いてしまうと、水性の容器詰緑茶飲料の表面に浮いてしまうので製品として販売することが困難であり、有機溶媒(例えばエタノールなど)を用いた場合には、その香りを飛ばすために所定の処理操作が必要となるはずであるが、そのような処理操作について何も記載されてない。
よって、ノナナールを添加する際の処理操作及び/またはノナナールを添加した後の処理操作のいずれかを意図的に隠しているものである。
(3)証拠方法
甲第1-1号証:特開2006-115788号公報
甲第1-2号証:国際公開第2019/131997号
甲第1-3号証:特開2011-10640号公報
証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1-1」のようにいう。
2.特許異議申立人2の異議申立理由
特許異議申立人2は、本件特許に対する異議申立理由として、下記(1)申立理由2-1~(3)申立理由2-3を主張し、(4)の証拠方法を提出した。
(1)申立理由2-1(甲第2-1号証に基づく新規性)
本件特許の請求項1、2、4、5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2-1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2、4、5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由2-2(甲第2-1号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2-1号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)申立理由2-3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、次の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
甲第2-6号証には水中のノナナールの嗅覚閾値を再調査した結果が記載されており、これによれば水中のノナナールの検知閾値(何のにおいか分からなくても何かにおいを感知できる最小濃度)が2.8ppbであり、認知閾値(何のにおいか感知できる最小濃度)が8.0ppbである。
そうすると、本件明細書の実施例で確認した容器詰緑茶飲料のうち、ノナナール含有量が約1ppbであったもの(すなわち、実験1、同2-1、2-2、2-3で用いた容器詰緑茶飲料)は、ノナナールの含有量が認知閾値のみならず検出閾値よりさらに低い値になっていることから、ノナナールによる匂いを認知できないものであると認められる。そのため、これらの実験で評価された「香りの余韻」は、ノナナールによるものではない蓋然性が高い。
そのため、本件発明においては、ノナナールの含有量が「0.5~10ppb」と特定されているものの、これらの発明特定事項では、本件発明の効果を発揮するための手段(すなわち、本件発明の課題を解決するための手段)が反映されているとはいえない。
(4)証拠方法
甲第2-1号証:特開2017-71号公報
甲第2-2号証:国際公開第2009/116538号
甲第2-3号証:国際公開第2019/131997号
甲第2-4号証:におい・かおり環境学会誌,(2007),第38巻,第3号,pp.179-186
甲第2-5号証:日本食品工業学会誌,(1970),第17巻,第4号,pp.154-163
甲第2-6号証:Eur Food Res Technol,(2008)Vol.228,pp.265-273
甲第2-7号証:「嗅覚閾値」,におい用語辞典,株式会社カルモア
証拠の標記は、異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲2-1」のようにいう。
第5 令和4年11月 4日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要
当審が令和4年11月 4日付けで特許権者に通知した取消理由通知における取消理由の概要は、次のとおりである。
1 取消理由1(甲2-1に基づく新規性)
本件特許の請求項1、2、4、5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2-1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2、4、5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 取消理由2(甲2-1に基づく進歩性)
本件特許の請求項1、2、4、5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲2-1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2、4、5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
第6 令和4年11月4日付け取消理由通知について
当審は以下に述べるように、令和4年11月4日付けで特許権者に通知した取消理由1(甲2-1に基づく新規性)及び取消理由2(甲2-1に基づく進歩性)は、いずれも理由がないと判断する。
1 主な証拠等
(1)甲2-1に記載された事項
甲2-1には以下の記載がある。
「【請求項1】
680nmにおける吸光度として表わされる濁度(OD680)が0.5以上に調整された、茶由来粒子を高濃度に含有した容器詰め茶飲料において、テアニン濃度を50~2000ppm及び/又はグルタミン酸濃度を10~1000ppmにそれぞれ調整したことを特徴とする、茶由来粒子高濃度含有容器詰め茶飲料。
【請求項2】
茶飲料が、緑茶飲料であることを特徴とする、請求項1に記載の茶由来粒子高濃度含有容器詰め茶飲料。」
「【0005】
更に、特許文献5には、粉末抹茶を含有する飲料中の、全粒子数に対する、粒子径7μm以上20μm以下の粒子の数の割合及び粒子径7μm以上20μm以下の粒子の数に対する、粒子径2μm以下の粒子の割合を、特定な値に調整することによる、粉末抹茶が有する香り立ちを保持しながら、苦渋味やざらつき感を低減した粉末茶飲料が、特許文献6には、抹茶と、緑茶抽出物及び/又は穀類抽出物と、甘味成分とを含み、飲料100mLあたりの不溶性固形分が0.3g~0.9gであるように調整することによる、多量に水不溶性固形分を含むにもかかわらず、抹茶本来の深いコク(味わい)と飲み易さを実現した抹茶入り飲料が開示されている。これらの粉末茶を含有する茶飲料は、粉末茶葉の粒子径や、添加量を調整して、粉末抹茶が有する香り立ちを保持しながら、粉末茶粒子に起因するざらつきを低減し、のどごし感等を改善するものであるが、茶由来粒子を高濃度に含有する容器詰め緑茶飲料においては、香味に優れ、のどごしの良い容器詰め緑茶飲料を調製し、安定的に維持することが難しいという面がある。」
「【0026】
上記(1)について説明すると、ここで茶粉砕物としては、茶(カメリア・シネンシス)由来のものであれば、緑茶、紅茶、ウーロン茶などいずれ茶葉の粉砕物であっても使用できる。しかし、その中でも抽出用茶葉と同種の茶葉、すなわち緑茶飲料なら緑茶の粉砕物、紅茶飲料なら紅茶の粉砕物、を使用することが好ましい。さらに緑茶の場合には、緑茶由来の抹茶、かぶせ茶粉砕物、玉露粉砕物、煎茶粉砕物などがより好ましく、更に、その中でも抹茶、かぶせ茶粉砕物又は玉露粉砕物が最も好ましい。
【0027】
ここで抹茶としては、栽培時に一定期間日光を遮って栽培した茶樹から得られる茶葉を蒸してから揉まずに乾燥した碾茶を石臼でひいたものが挙げられ、本発明においては、その粒度には制限はなく、市場に流通しているものをそのまま使用することができる。具体的には平均粒子径が0.5~300μm程度の抹茶が使用できる。」
「【0040】
[調製例]
【0041】
<(1)茶由来粒子調合液の調製>
イオン交換水に抹茶(碾茶の石臼粉砕物;市販品)を0.6重量%、ビタミンCを0.12重量%、重曹を0.12重量%添加し、茶由来粒子含有調合液を得た(以下、ベース調合液)。以下の試験サンプル調製時には、全サンプルにおいてベース調合液が3倍希釈(抹茶換算で0.2重量%)となるよう、他原料・イオン交換水を配合した。なお、本ベース調合液(3倍希釈時)はOD680が2.2、テアニン濃度10ppm、グルタミン酸濃度4ppm、タンニン値20mg/100mLであった。
【0042】
なお、濁度(OD680)は、日立社製分光光度計U-3310を用いて、680nmにおける吸光度を測定することで求めた。被検液をよく撹拌した後、光路長10mmのセルに入れて速やかに測定をおこなった。
【0043】
また、テアニンとグルタミン酸の濃度は、日立社製アミノ酸分析計L-8800を用いて測定した。具体的には、メインカラムとして#2622を、ガードカラムとして#2619をそれぞれ用い、アミノ酸をニンヒドリンで発色させて570nmで検出し、予め作成した検量線から濃度を算出した。
【0044】
<(2)緑茶抽出液の調製>
【0045】
(A)かぶせ茶抽出液の調製:
緑茶葉(かぶせ茶)100gに対して50℃の熱水2500gを添加し、5分間抽出した。抽出後、目開き100μmのメッシュを通し、3000rpm10分の条件で遠心分離処理を行ってから、冷却機を用いて10℃まで急速冷却し、緑茶抽出液を得た(以下、かぶせ茶抽出液)。以下の試験サンプル調製時には、かぶせ茶抽出液が3倍希釈となるように配合した。なお、かぶせ茶抽出液(3倍希釈時)のテアニン濃度100ppm、グルタミン酸濃度は20ppm、タンニン値は40mg/100mLであった。
【0046】
(B)煎茶抽出液の調製:
緑茶葉(低級煎茶)100gに対して80℃の熱水3000gを添加し、6分間抽出した。抽出後、目開き100μmのメッシュを通し、3000rpmで10分の条件で遠心分離処理を行ってから、冷却機を用いて10℃まで急速冷却し、緑茶抽出液を得た(以下、煎茶抽出液)。下記試験サンプル調製時には、煎茶抽出液が最終的に5倍希釈となるように配合した。なお、煎茶抽出液(5倍希釈)のテアニン濃度は10ppm、グルタミン酸濃度は4ppm、タンニン値は40mg/100mLであった。
【0047】
[実施例1~7、比較例1~3]
【0048】
表1の通りサンプルを配合し、UHT殺菌し、ペットボトルに充填することで実施例1~7及び比較例1~3の容器詰め緑茶飲料サンプルを調製した。なお、テアニンは市販のL-テアニン、グルタミン酸ナトリウムは市販のL-グルタミン酸ナトリウム、タンニン製剤は市販の高濃度カテキン製剤(三井農林社製カテキン30.3重量%、タンニン値40mg/100mL)を使用した。サンプルの配合割合を調整する際には、イオン交換水を使用した。
【0049】
【表1】
[図:0001398280000001.jpg]
【0050】
<(3)評価>
各実施例及び比較例の、濁度、テアニン、グルタミン酸及びタンニン値、並びにざらつき低減効果を表2に示す。ざらつき低減効果は、茶飲料の開発に精通したパネラー6人で飲用し、協議の上評価した。
評価軸は以下の通りである。なお対照は比較例1のサンプルとした。
◎:飲用時のざらつきが顕著に低減した。
○:飲用時のざらつきが低減した。
×:ざらつきが低減していない、または低減効果が不十分である。
【0051】
【表2】
[図:0001398280000002.jpg]
【0052】
試験の結果、飲料中のテアニン50ppm以上、又はグルタミン酸10ppm以上で、ざらつきの低減効果が見られた。テアニン・グルタミン酸いずれか一方のみでも含有量を満たせば効果を発揮するが、テアニンは口に含んだ際のトップ~ミドルで特にざらつき低減効果を発揮し、グルタミン酸はミドル~ラストで特にざらつき低減効果を発揮するため、両成分とも上記量を満たした方がより効果を発揮することが分かった。また、実施例4と実施例7の比較により、タンニン値が変化しても、ざらつき低減効果に影響がないことを確認した。」
(2)甲2-1に記載された発明
上記(1)の記載のうち、特に、実施例1、2、4、5、7を中心にまとめると、甲2-1には、次の発明が記載されていると認める。
「抹茶(碾茶の石臼粉砕物:市販品)を0.2重量%含有し、テアニン濃度が110ppm、210ppmであり、タンニン濃度が20mg/L、60mg/Lである茶由来粒子高濃度含有容器詰緑茶飲料。」(以下、「甲2-1発明」という。)
(3)甲2-2、甲2-3、甲2-5に記載された事項等
ア 甲2-2に記載された事項
甲2-2には以下の記載がある。
「[0067]
試験例8.呈味(コク味)増強成分の確認
抹茶抽出液の分子量30万以上の画分をさらに分画し、得られた画分の官能評価、及び逆相クロマトグラフィーによる分析を行った。
[0068]
石臼挽き茶葉0.4gに200mlの温水(35℃)を加えて5分間保持した後、遠心分離により粒径の大きい固形分を分離、除去した。さらに室温にてメンブレンフィルター(孔径0.45μm、十慈フィールド株式会社 水系未滅菌13A)にて不溶性の固形分を除去した後、限外濾過膜(Millipore社 バイオマックスPBMK限外濾過ディスク、ポリエーテルスルホン、300,000 NMWL)にて加圧濾過し、膜上の成分を回収して分子量30万以上の呈味(コク味)増強組成物を得た。これを水に溶解し、HClにて酸性とした後、酢酸エチルにて液-液分配を行った。このうち酢酸エチル層をODS固相抽出カートリッジ(Waters社 セップパックプラス C18)に吸着させ、水-エタノール混合溶媒にて、エタノール濃度を順次変化させながら分画・溶出した。」
「[0071]
さらに得られた各画分を、逆相クロマトグラフィーに供し、グリセロ糖脂質の定量分析を行った。分析条件は以下の通りである。
[0072]
逆相カラム:TSK-GEL(TOSOH社、内径4.6mm×長さ150mm)
サンプル注入量:10μl
流量:1.0ml/min.
RI検出器:SHIMADZU社 RIA-10A
溶離液:95%メタノール
温度:40℃
定量分析の標品としては、Lipid Products社のMGDG、DGDGを使用した。標品のこのうち、MGDGは大きく二つのピークに分かれるがため、茶飲料中にみられるピークが後ろのピークだったので、標品はピーク面積の比率に基づいて濃度を比例配分し、分析濃度とした。なお、本明細書におけるグリセロ糖脂質の濃度は、特に示した場合を除き、MGDG、DGDGの合計値として表した。
[0073]
得られた分析結果を図9に示す。その結果、ODS分画の100%エタノール画分にのみグリセロ糖脂質を検出した。これにより、呈味(コク味)増強成分がグリセロ糖脂質であると確認した。
[0074]
[図:0001398280000003.jpg]
[0075]
試験例9.使用する茶葉とその処理条件
普通煎茶の茶葉1.4gに200mlの温水(70℃)を加えて5分間抽出し、茶葉を除去し、これを20℃に冷却した。また抹茶0.4gに200mlの温水(35℃)を加えて5分間保持し、抹茶懸濁液を得た。これらを試験例2と同様の方法にて逆相クロマトグラフィーに供し、グリセロ糖脂質量を測定した。その結果、グリセロ糖脂質は茶葉の温水抽出物にはほとんど含まれないが、抹茶の温水抽出物に多量に含まれていることが確認された(下表及び図10参照)。
[0076]
[図:0001398280000004.jpg]
」
イ 甲2-3に記載された事項
甲2-3には以下の記載がある。
「【0036】
フレッシュな茶の香りを特徴づける香りとして、「ウリ香」があげられる。ウリ香は高級茶である玉露の特徴香であり、ウリ香の元になる香り成分はノナナールやジサルファイドなどで、上級新茶ほど多く含まれている。上級新茶には青葉アルコールなども多く含まれ、新茶の香りに関与しているといわれている。また茶飲料にはカテキン類などのポリフェノール類が含まれるが、ポリフェノール類にはノナナールなどの香味成分を劣化させる性質があり、総ポリフェノール量が多いと劣化が促進される。」
「【0069】
(2)ノナナール濃度の測定
実施例と比較例のイオン交換水で希釈する前の飲料(試料溶液)に含まれるノナナールの濃度(ppb)について、試料溶液を10mlバイアル瓶(容量20ml)に入れ、3gのNaClを加え、MVM(Multi Volatile Method)法によりGC-MS(アジレント社製)を用いて、以下に示す条件で定量した。
・装置:GC:Agilent Technologies社製 GC7890B
MS: Agilent Technologies 社製 5977A
HS:Gestel 社製 MPS
Tube:Tenax TA, Carbon bx1000
・カラム:HP-INNOWAX 60m x 0.25mmi.d. df=0.25μm
・定量イオン:ヘキサナール 56.0m/z
・温度条件 40℃(4分)~5℃/分~260℃
・キャリアガス流量:He 1.5ml/分
・注入法:スプリットレス
・イオン源温度:260℃」
「【0072】
(5)分析結果と香味の評価結果
緑茶飲料のウリ香を官能評価したところ、実施例は4.0(標準偏差:0.7)であったのに対し、比較例は2.9(標準偏差:0.8)であり、本発明によれば、緑茶飲料のウリ香を有意に増強できることが確認された。また、実施例の飲料は、比較例と比べてノナナールを20%以上も多く含んでおり、ウリ香に関与する香味成分が多く含まれていることが確認された(実施例のノナナール濃度:0.59ppb、比較例のノナナール濃度:0.48ppb)。
【0073】
ノナナール濃度、総ポリフェノール濃度およびアミノ酸濃度の分析結果を以下に示す。
【0074】
[図:0001398280000005.jpg]
」
ウ 甲2-5に記載された事項
甲2-5には以下の記載がある。
「新鮮茶葉あるいは緑茶の成分の内容を、完全に分析した報告はないが、HARLARが延べている概略値を第2表に示す。表中ポリフェノールに関しては、カテキン、フラボノ-ル、ロイコアントシアン、フェノールカルボン酸、デプシドなど各種のものが存在しており、従来これらのものをばく然とタンニンと総称しているが、主要なものは(―)-エピカテキンガレート、(―)―エピカテキン、(-)-エピガロカテキンガレート、(-)-エピガロカテキンなどのカテキンで、茶葉中のポリフェノールの75%以上を占めるといわれている。」(第155頁左欄)
2 当審の判断
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2-1発明とを対比すると、
甲2-1発明における「テアニン」と本件特許発明1の「L-テアニン」は同一の化合物を示す。
また、甲2-1発明の「mg/L」と本件特許発明1の「ppm」は同一の量を示す単位である。
したがって、甲2-1発明における「テアニン濃度が110ppm、210ppm」は、本件特許発明1の「L-テアニンの含有量が100~2200ppm」に相当する。
また、甲2-1発明の「茶由来粒子高濃度含有容器詰緑茶飲料」は、本件特許発明1の「容器詰緑茶飲料」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲2-1発明との一致点、一応の相違点は次のとおりである。
<一致点>
「L-テアニンの含有量が100~2200ppmである容器詰緑茶飲料。」
<相違点2-1-1>
本件特許発明1においてはグリセロ糖脂質の含有量が1.0~30ppmであるのに対して甲2-1発明においてはグリセロ糖脂質の含有量の特定がない点。
<相違点2-1-2>
本件特許発明1においてはノナナールの含有量が0.5~10ppbであるのに対して甲2-1発明においてはノナナールの含有量の特定がない点。
相違点2-1-1について更に検討する。
上記(3)アの甲2-2の記載事項から、抹茶0.4g/温水200mlの抽出液に対して、総グリセロ糖脂質が0.524μg/mlが検出されることが理解される。ここで、甲2-1発明の容器詰緑茶飲料においては、抹茶0.2重量%が含有されており、上記(3)アの記載を参酌すれば、甲2-1発明の容器詰緑茶飲料に含有される抹茶0.2重量%(0.2g/100ml)から抽出されるグリセロ糖脂質は0.524mg/L程度、すなわち、0.524ppm程度である。
そうすると、甲2-1発明は、本件特許発明1における「グリセロ糖脂質の含有量が1.0~30ppm」を満たさないことは明らかである。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2-1発明ではない。
また、異議申立人1及び異議申立人2の提出したいずれの証拠においても、グリセロ糖脂質の含有量を1.0~30ppmとすることについての開示はない。
本件特許発明1は、L-テアニンの含有量が100~2200ppmであり、グリセロ糖脂質の含有量が1.0~30ppmであり、ノナナールの含有量が0.5~10ppbであることにより、高濃度のL-テアニンを配合していながら、香りの余韻が良く、青香と火香のバランスの良い容器詰緑茶飲料を提供することができるという顕著な効果を有している。
したがって、甲2-1発明において、相違点2-1-1に係る発明特定事項を満たすものとすることは当業者が容易になし得たものであるとは言えない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2-1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用して発明を特定するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に、甲2-1発明ではなく、甲2-1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)取消理由1(甲2-1に基づく新規性)及び取消理由2(甲2-1に基づく進歩性)についてのまとめ
取消理由1(甲2-1に基づく新規性)及び取消理由2(甲2-1に基づく進歩性)はいずれもその理由がない。
第7 取消理由において採用しなかった申立理由についての当審の判断
第5 取消理由通知における取消理由1(甲2-1に基づく新規性)は、第4 特許異議申立書に記載した申立理由2-1(甲2-1に基づく新規性)と同一であり、
第5 取消理由通知における取消理由2(甲2-1に基づく進歩性)は、第4 特許異議申立書に記載した申立理由2-2(甲2-1に基づく進歩性)と同一である。
以下に記載するように、当審は、それ以外の特許異議申立人1及び特許異議申立人2の申立理由についても、いずれにも理由がないと判断する。
以下、申立理由1-1から順に検討する。
1 申立理由1-1(甲1-1~甲1-3に基づく進歩性)についての判断
(1)甲1-1、甲1-2、甲1-3に記載された発明等
ア 甲1-1に記載された発明
甲1-1の【0056】~【0057】実施例1~6、【0063】【表6】比較例6には、次の発明(以下、「甲1-1発明」という。)が記載されている。
「L-テアニンを14.1~16.1mg/L、又は、99.1mg/L含有する容器詰緑茶飲料。」
イ 甲1-2に記載された発明
甲1-2の[0077][表4]には、次の発明(以下、「甲1-2発明」という。)が記載されている。
「ノナナール濃度が2.5ppb又は6.7ppbである容器詰緑茶飲料。」
ウ 甲1-3に記載された発明
甲1-3の【「0047】~【0051】【表5】には、次の発明(以下、「甲1-3発明」という。)が記載されている。
「グリセロ糖脂質が0.1~0.8mg/L含有された粉砕碾茶の冷水抽出液からなる容器詰緑茶飲料。」
(2)本件特許発明1について
ア 本件特許発明1と甲1-1発明との対比・判断
本件特許発明1と甲1-1発明とを対比する。
本件特許発明1と甲1-1発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「容器緑茶飲料。」
<相違点1-1-1>
本件特許発明1においては、L-テアニンの含有量が100~2200ppmであるのに対し、甲1-1発明においては当該数値範囲を満たさない点。
<相違点1-1-2>
本件特許発明1においては、グリセロ糖脂質の含有量が1.0~30ppmであるのに対して、甲1-1発明においてはそのような特定はない点。
<相違点1-1-3>
本件特許発明1においては、ノナナールの含有量が0.5~10ppbであるのに対して、甲1-1発明においてはそのような特定はない点。
相違点1-1-1について検討する。
甲1-1において、L-テアニンの含有量を100~2200ppmの範囲にすることについて示唆する記載はない。
本件特許発明1は、L-テアニンの含有量が100~2200ppmであり、グリセロ糖脂質の含有量が1.0~30ppmであり、ノナナールの含有量が0.5~10ppbであることにより、高濃度のL-テアニンを配合していながら、香りの余韻が良く、青香と火香のバランスの良い容器詰緑茶飲料を提供することができるという顕著な効果を有している。したがって、当業者は甲1-1発明において、相違点1-1-1に係る発明特定事項を満たすものとすることは容易になし得たものであるとは言えない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1-1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明1と甲1-2発明との対比・判断
本件特許発明1と甲1-2発明とを対比する。
本件特許発明1と甲1-2発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「ノナナールの含有量が0.5~10ppbである容器緑茶飲料。」
<相違点1-2-1>
本件特許発明1においては、L-テアニンの含有量が100~2200ppmであるのに対し、甲1-2発明においてはそのような特定はない点。
<相違点1-2-2>
本件特許発明1においては、グリセロ糖脂質の含有量が1.0~30ppmであるのに対して、甲1-2発明においてはそのような特定はない点。
相違点1-2-1について検討する。
甲1-2において、L-テアニンの含有量を100~2200ppmの範囲にすることについて示唆する記載はない。
本件特許発明1は、L-テアニンの含有量が100~2200ppmであり、グリセロ糖脂質の含有量が1.0~30ppmであり、ノナナールの含有量が0.5~10ppbであることにより、高濃度のL-テアニンを配合していながら、香りの余韻が良く、青香と火香のバランスの良い容器詰緑茶飲料を提供することができるという顕著な効果を有している。したがって、当業者は甲1-2発明において、相違点1-2-1に係る発明特定事項を満たすものとすることは容易になし得たものであるとは言えない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1-2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明1と甲1-3発明との対比・判断
本件特許発明1と甲1-3発明とを対比する。
甲1-3発明における「粉砕碾茶の冷水抽出液からなる容器詰緑茶飲料」は、本件特許発明1における「容器詰緑茶飲料」に相当する。
本件特許発明1と甲1-3発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「容器詰緑茶飲料。」
<相違点1-3-1>
本件特許発明1においては、L-テアニンの含有量が100~2200ppmであるのに対し、甲1-3発明においてはそのような特定はない点。
<相違点1-3-2>
本件特許発明1においては、グリセロ糖脂質の含有量が1.0~30ppmであるのに対して、甲1-3発明においては当該数値範囲を満たさない点。
<相違点1-3-3>
本件特許発明1においては、ノナナールの含有量が0.5~10ppbであるのに対して、甲1-3発明においてはそのような特定はない点。
相違点1-3-1について検討する。
甲1-3において、L-テアニンの含有量を100~2200ppmの範囲にすることについて示唆する記載はない。
本件特許発明1は、L-テアニンの含有量が100~2200ppmであり、グリセロ糖脂質の含有量が1.0~30ppmであり、ノナナールの含有量が0.5~10ppbであることにより、高濃度のL-テアニンを配合していながら、香りの余韻が良く、青香と火香のバランスの良い容器詰緑茶飲料を提供することができるという顕著な効果を有している。
したがって、当業者は甲1-3発明において、相違点1-3-1に係る発明特定事項を満たすものとすることは容易になし得たものであるとは言えない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1-3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用して発明を特定するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1-1発明、甲1-2発明、甲1-3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)申立理由1-1(甲1-1~甲1-3に基づく進歩性)についてのまとめ
申立理由1-1(甲1-1~甲1-3に基づく進歩性)は、その理由がない。
2 申立理由1-2(サポート要件)、申立理由2-3(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下に検討する。
(2)特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
(3)発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細な説明にはおおむね次の記載がある。
「【0004】
本発明者らは、高級緑茶である玉露に多く含まれているL-テアニンを多く配合することにより、緑茶飲料の旨味は増強されるものの、緑茶飲料特有の香りの余韻が感じられにくくなり、青香と火香のバランスが崩れてしまうことを発見した。
【0005】
このような状況に鑑み、本発明の課題は、高濃度のL-テアニンを配合していながら、香りの余韻が良く、青香と火香のバランスの良い容器詰緑茶飲料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討した結果、特定量のグリセロ糖脂質とノナナールを緑茶飲料に含有させることによって上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、これに限定されるものではないが、以下の態様を包含する。
[1] L-テアニンの含有量が100~2200ppmであり、グリセロ糖脂質の含有量が0.2~30ppmであり、ノナナールの含有量が0.5~10ppbである、容器詰緑茶飲料。
[2] カテキン類の含有量が1200ppm以下である、[1]に記載の飲料。
[3] グリセロ糖脂質の含有量が1~20ppmである、[1]または[2]に記載の飲料。
[4]緑茶粉末を含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の飲料。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の飲料を製造する方法であって、L-テアニンの含有量を100~2200ppm、グリセロ糖脂質の含有量を0.2~30ppmに調整を配合する工程を含む、上記方法。」
「【0012】
L-テアニン
本発明の緑茶飲料は、100~2200ppmのL-テアニンを含有する。上述したように、高濃度のL-テアニンを緑茶飲料に含有させると緑茶飲料が有する香りの余韻が低下してしまうところ、本発明に基づいてグリセロ糖脂質を配合することによって、緑茶飲料における香りの余韻を強くすることができる。本発明が対象とする緑茶飲料のL-テアニン含有量は、100ppm以上であり、好ましくは130ppm以上であり、より好ましくは150ppm以上であり、さらに好ましくは200ppm以上である。また緑茶飲料の嗜好性の観点から、L-テアニン含有量は2200ppm以下であり、好ましくは1800ppm以下であり、より好ましくは1600ppm以下であり、さらに好ましくは1500ppm以下である。なお、本明細書において、「ppm」及び「ppb」は、緑茶飲料の単位容積中に含まれる各成分の濃度(mg/L、μg/L)を意味する。
【0013】
L-テアニンの配合方法は、特に制限されない。緑茶飲料に対してL-テアニンの精製品(粗精製品を含む)やL-テアニンを高濃度に含む茶葉等の抽出物や抹茶等の茶葉粉末を添加してもよいが、高濃度のテアニンを効率的に配合するためには、L-テアニンの精製品を配合することが好ましい。L-テアニンの市販品としては、例えば、サンテアニン(商標:太陽化学、L-テアニン純度98%以上)等を挙げることができる。なお、緑茶飲料中のL-テアニンの含有量は、アミノ酸分析装置を用いて定量できる。
【0014】
グリセロ糖脂質
本発明の緑茶飲料は、グリセロ糖脂質を0.2~30ppm含有することで、L-テアニンによる香りの余韻の低減を防ぐことができる。本発明において、グリセロ糖脂質の含有量は、0.4ppm以上が好ましく、0.8ppm以上がより好ましく、1.0ppm以上がさらに好ましく、1.2ppm以上がよりさらに好ましい。一方、嗜好性の観点からグリセロ糖脂質の含有量は、20ppm以下が好ましく、15ppm以下がより好ましく、13ppm以下がさらに好ましい。
【0015】
グリセロ糖脂質とは、1~3個の単糖類で構成される糖鎖がジアシルグリセロールにエステル結合した糖脂質をいう。グリセロ糖脂質に含まれる糖鎖を構成する単糖類としては、ガラクトース、グルコース、マンノース、フラクトース、キシロース、アラビノース、フコース、キノボース、ラムノース、スルフォキノボース(Sulfoquinovose)等を挙げることができ、アシル基は、飽和又は不飽和の炭素数6~24個の直鎖、又は分岐鎖状の脂肪酸残基を挙げることができる。具体的にはリノレン酸、リノール酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸などを挙げることができる。本発明におけるグリセロ糖脂質の含有量は、モノガラクトシルジアシルグリセロール(MGDG)およびジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG)の合計含有量のことをいう。飲料中において、グリセロ糖脂質は、コロイド分散系として存在していると考えることができる。
【0016】
緑茶飲料中のグリセロ糖脂質含有量を調整するには、例えば、グリセロ糖脂質の精製品を配合すればよい。また、茶葉の種類や抽出方法などを調整して緑茶飲料中のグリセロ糖脂質含有量を0.2~30ppmに調整してもよく、例えば、2種類以上の緑茶抽出液を混合してグリセロ糖脂質量の調整を行ってもよいし、緑茶抽出液でなくても粉末茶を配合することでも調整をすることができる。緑茶飲料へのグリセロ糖脂質の配合については、例えば、国際公開WO2009/116538や特開2017-74014などに記載の方法を参考にしてもよい。」
「【0018】
ノナナール
本発明では、香りの余韻の低減が防がれることにより、青香と火香のバランスが良くなり、緑茶本来の香気、特に緑茶飲料のフレッシュな香気を、相対的に強く知覚できる。ここで、緑茶飲料のフレッシュな香気としては、「ウリ香」が挙げられる。ウリ香は高級茶である玉露の特徴香であり、ウリ香の元になる香り成分としては、揮発性アルデヒドの一つであるノナナール(Nonanal)がある。本発明に係る緑茶飲料のノナナール含有量は0.5~10ppbであるが、このような範囲であると、緑茶飲料のフレッシュな香気を十分に感じることができる。好適な態様において本発明におけるノナナール含有量は、好ましくは1.0~8.0ppb、より好ましくは1.5~6.0ppb、さらに好ましくは2.0~5.0ppbである。」
「実験1:緑茶飲料の製造と評価(参考例)
火入れ強めの煎茶からベースとなる緑茶飲料を調製し、ベースととなる緑茶飲料にL-テアニン(太陽化学製、純度99.4%)を添加し、下表に示す量でテアニンを含有する容器詰緑茶飲料を製造した。本実験で調製した緑茶飲料は、いずれも、グリセロ糖脂質の含有量が約70ppb、ノナナール含有量が約1ppb、カテキン類含有量が約400ppmであった(pH:約6.0)。
【0030】
次いで、得られた緑茶飲料について、下記の基準に基づいて、専門パネル6名にて官能評価を実施した。サンプルaを基準とし、緑茶飲料サンプルの香りの余韻について、専門パネルがそれぞれ評価した後、パネル全員で協議して評価を決定した。
〇:サンプルaと同等の香りの余韻がある
△:基準に比べるとやや香りの余韻が劣る
×:基準に比べるとあきらかに香りの余韻が低下する
【0031】
【表1】
[図:0001398280000006.jpg]
【0032】
評価結果を表1に示すが、テアニンを100ppm以上の濃度で含有する緑茶飲料は、香りの余韻が低下することが判明した。特に、テアニン含有量が100ppm以上になると、ミドルからラストにかけて緑茶本来の火香の余韻低下が知覚され、それにより青香と火香のバランスが崩れることが分かった。
【0033】
実験2:テアニン高含有緑茶飲料の製造と評価
2-1.緑茶飲料の製造と評価(テアニン含有量:300ppm)
実験1で使用したベースの緑茶飲料に、緑茶飲料中のテアニン及びグリセロ糖脂質含有量が下表に示す量となるように、L-テアニン(太陽化学製)、ジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG、Avanti社製、純度99%以上)を加えて完全に溶解し、容器詰緑茶飲料を製造した。本実験で調製した緑茶飲料は、いずれも、ノナナール含有量が約1ppb、カテキン類含有量が約400ppmであった(pH:約6.0)。
【0034】
次いで、得られた緑茶飲料について、専門パネル6名にて官能評価を実施した。具体的には、緑茶飲料サンプルの香りの余韻について、サンプル1-1を4点、サンプル1-2を1点とし、下記の基準に基づいて4段階で評価した。官能評価においては、基準となるサンプル1-1およびサンプル1-2を飲用してディスカッションし、香りの余韻の低減について各パネルが共通認識を持つようにした上で、専門パネル6名が飲料サンプルをそれぞれ評価し、各パネルの評価の平均点を算出した。
4:サンプル1-1と同等の香りの余韻を感じる
3:サンプル1-1に比べて香りの余韻が若干弱くなっている
2:サンプル1-1と比べて香りの余韻が弱くなっているが、サンプル1-2と比べると香りの余韻が感じられる
1:サンプル1-2と同等かそれ以上に香りの余韻の低減を感じる
【0035】
【表2】
[図:0001398280000007.jpg]
【0036】
表に示した結果から明らかなように、高濃度のL-テアニンによって低下した香りの余韻が、グリセロ糖脂質を配合することによって改善され、青香と火香のバランスが良好で、緑茶のフレッシュな香りが感じられる緑茶飲料が得られた。なお、サンプル1-4については、香りの余韻低減は改善されていたが、呈味がべたつきキレが悪い、という評価をしたパネルがいた。
【0037】
2-2.緑茶飲料の製造と評価(テアニン含有量:1100ppm)
実験1で使用したベースの緑茶飲料に、緑茶飲料中のテアニン及びグリセロ糖脂質含有量が下表に示す量となるように、L-テアニン(太陽化学製)、ジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG、Avanti社製)を加えて完全に溶解し、容器詰緑茶飲料を製造した。本実験で調製した緑茶飲料は、いずれも、ノナナール含有量が約1ppb、カテキン類含有量が約400ppmであった(pH:約6.0)。
【0038】
次いで、得られた緑茶飲料について、専門パネル6名にて官能評価を実施した。具体的には、緑茶飲料サンプルの香りの余韻について、サンプル2-1を4点、サンプル2-2を1点とし、下記の基準に基づいて4段階で評価した。官能評価においては、基準となるサンプル2-1およびサンプル2-2を飲用してディスカッションし、香りの余韻の低減について各パネルが共通認識を持つようにした上で、専門パネル6名が飲料サンプルをそれぞれ評価し、各パネルの評価の平均点を算出した。
4:サンプル2-1と同等の香りの余韻を感じる
3:サンプル2-1に比べて香りの余韻が若干弱くなっている
2:サンプル2-1と比べて香りの余韻が弱くなっているが、サンプル2-2と比べると香りの余韻が感じられる
1:サンプル2-2と同等かそれ以上に香りの余韻の低減を感じる
【0039】
【表3】
[図:0001398280000008.jpg]
【0040】
表に示した結果から明らかなように、高濃度のL-テアニンによって低下した香りの余韻が、グリセロ糖脂質を配合することによって改善され、青香と火香のバランスが良好で、緑茶のフレッシュな香りが感じられる緑茶飲料が得られた。
【0041】
2-3.緑茶飲料の製造と評価(テアニン含有量:2000ppm)
実験1で使用したベースの緑茶飲料に、緑茶飲料中のテアニン及びグリセロ糖脂質含有量が下表に示す量となるように、L-テアニン(太陽化学製)、ジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG、Avanti社製)を加えて完全に溶解し、容器詰緑茶飲料を製造した。本実験で調製した緑茶飲料は、いずれも、ノナナール含有量が約1ppb、カテキン類含有量が約400ppmであった(pH:約6.0)。
【0042】
次いで、得られた緑茶飲料について、専門パネル6名にて官能評価を実施した。具体的には、緑茶飲料サンプルの香りの余韻について、サンプル3-1を4点、サンプル3-2を1点とし、下記の基準に基づいて4段階で評価した。官能評価においては、基準となるサンプル3-1およびサンプル3-2を飲用してディスカッションし、香りの余韻の低減について各パネルが共通認識を持つようにした上で、専門パネル6名が飲料サンプルをそれぞれ評価し、各パネルの評価の平均点を算出した。
4:サンプル3-1と同等の香りの余韻を感じる
3:サンプル3-1に比べて香りの余韻が若干弱くなっている
2:サンプル3-1と比べて香りの余韻が弱くなっているが、サンプル3-2と比べると香りの余韻が感じられる
1:サンプル3-2と同等かそれ以上に香りの余韻の低減を感じる
【0043】
【表4】
[図:0001398280000009.jpg]
【0044】
表に示した結果から明らかなように、高濃度のL-テアニンによって低下した香りの余韻が、グリセロ糖脂質を配合することによって改善され、青香と火香のバランスが良好で、緑茶のフレッシュな香りが感じられる緑茶飲料が得られた。
【0045】
実験3:テアニン高含有緑茶飲料の製造と評価
3-1.緑茶飲料の製造と評価
実験1とは異なる煎茶(実験1で用いた煎茶と比較して火入れが弱めで青々しい香りが主体の煎茶)からベースとなる緑茶飲料を調製した。次いで、ベースととなる緑茶飲料に、緑茶飲料中のテアニン及びグリセロ糖脂質含有量が下表に示す量となるように、L-テアニン(太陽化学製)、モノガラクトシルジアシルグリセロール(MGDG、Avanti社製、純度99%以上)、ジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG、Avanti社製)を加えて完全に溶解し、容器詰緑茶飲料を製造した。本実験で調製した緑茶飲料は、いずれも、ノナナール含有量が3.5ppb、カテキン類含有量が460ppmであった(pH:約6.0)。
【0046】
次いで、得られた緑茶飲料について、専門パネル6名にて官能評価を実施した。具体的には、緑茶飲料サンプルの香りの余韻について、サンプルA-1を4点、サンプルA-2を1点とし、下記の基準に基づいて4段階で評価した。官能評価においては、基準となるサンプルA-1およびサンプルA-2を飲用してディスカッションし、香りの余韻の低減について各パネルが共通認識を持つようにした上で、専門パネル6名が飲料サンプルをそれぞれ評価し、各パネルの評価の平均点を算出した。
4:サンプルA-1と同等の香りの余韻を感じる。
3:サンプルA-1に比べて香りの余韻が若干弱くなっている
2:サンプルA-1と比べて香りの余韻が弱くなっているが、サンプルA-2と比べると香りの余韻が感じられる
1:サンプルA-2と同等かそれ以上に香りの余韻の低減を感じる
【0047】
【表5】
[図:0001398280000010.jpg]
【0048】
表に示した結果から明らかなように、高濃度のL-テアニンによって低下した香りの余韻が、グリセロ糖脂質を配合することによって改善され、青香と火香のバランスが良好で、緑茶のフレッシュな香りが感じられる緑茶飲料が得られた。また、グリセロ糖脂質として、モノガラクトシルジアシルグリセロール(MGDG)を配合した場合も、ジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG)を配合した場合と同等の効果があることが確認された。
【0049】
3-2.緑茶飲料の製造と評価
実験3-1で用いたベースの緑茶飲料に、緑茶飲料中のテアニン及びグリセロ糖脂質含有量が下表に示す量となるように、L-テアニン(太陽化学製)、粉末緑茶(一番茶)を加えて、容器詰緑茶飲料を製造した(pH:約6.0、ノナナール含有量:5.0ppb以下)。
【0050】
次いで、得られた緑茶飲料について、専門パネル6名にて官能評価を実施した。具体的には、緑茶飲料サンプルの香りの余韻について、サンプルB-1を4点、サンプルB-2を1点とし、下記の基準に基づいて4段階で評価した。官能評価においては、基準となるサンプルB-1およびサンプルB-2を飲用してディスカッションし、香りの余韻の低減について各パネルが共通認識を持つようにした上で、専門パネル6名が飲料サンプルをそれぞれ評価し、各パネルの評価の平均点を算出した。
4:サンプルB-1と同等の香りの余韻を感じる。
3:サンプルB-1に比べて香りの余韻が若干弱くなっている
2:サンプルB-1と比べて香りの余韻が弱くなっているが、サンプルB-2と比べると香りの余韻が感じられる
1:サンプルB-2と同等かそれ以上に香りの余韻の低減を感じる
【0051】
【表6】
[図:0001398280000011.jpg]
【0052】
表に示した結果から明らかなように、高濃度のL-テアニンによって低下した香りの余韻が、グリセロ糖脂質を配合することによって改善され、青香と火香のバランスが良好で、緑茶のフレッシュな香りが感じられる緑茶飲料が得られた。粉末茶を添加することによって緑茶飲料中のグリセロ糖脂質含有量を調整した場合にも、香りの余韻が増強されることが確認された。」
(4)サポート要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明【0004】~【0005】によると、本件特許発明の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、高濃度のL-テアニンを配合していながら、香りの余韻が良く、青香と火香のバランスの良い容器詰緑茶飲料を提供することである。
そして、同【0006】には、高濃度のL-テアニンを配合しつつ、特定量のグリセロ糖脂質とノナナールを緑茶飲料に含有させることによって上記課題が解決されることを見出した旨記載されている。
本件特許の発明の詳細な説明【0012】には、L-テアニンは100ppm以上含有され、その配合方法は特に制限されず、L-テアニンの精製品(粗精製品を含む)やL-テアニンを高濃度に含む茶葉等の抽出物や抹茶等の茶葉粉末を添加してもよいことが記載されている。
本件特許の発明の詳細な説明【0014】~【0016】には、グリセロ糖脂質を0.2~30ppm含有することで、L-テアニンによる香りの余韻の低減を防ぐことができることが記載されており、グリセロ糖脂質の含有量は1.0ppm以上が好ましい範囲として記載され、その配合量はグリセロ糖脂質の精製品を配合したり、茶葉の種類や抽出方法などを調整して緑茶飲料中のグリセロ糖脂質含有量を調整してもよく、緑茶抽出液でなくても粉末茶を配合することでも調整をすることができることが記載されている。
上記L-テアニンとグリセロ糖脂質の含有量の数値範囲に対する実証として、本件特許の発明の詳細な説明【0029】~【0052】の各試験例においては、L-テアニンを100ppm~2200ppm含有する容器詰緑茶飲料において、グリセロ糖脂質の配合量を変更して香りの余韻を評価した例が記載されており、これら試験例から、グリセロ糖脂質の含有量を0.2~30ppmとすることによって香りの余韻が低減しないことが理解される。
本件特許の発明の詳細な説明【0018】には、香りの余韻の低減が防がれることにより、青香と火香のバランスが良くなり、緑茶本来の香気、特に緑茶飲料のフレッシュな香気を相対的に強く知覚できることが記載されており、緑茶飲料のフレッシュな香りとして「ウリ香」が挙げられ、「ウリ香」の元となる香り成分として、揮発性アルデヒドの一つであるノナナールがあること、そして、ノナナールの含有量が0.5~10ppbであると緑茶飲料のフレッシュな香気を十分に感じることができることが理解される。
そうすると、当業者は、容器詰緑茶飲料において、L-テアニンの含有量が100~2200ppmであり、グリセロ糖脂質の含有量が1.0~30ppmであることによって緑茶の香りの余韻の低減がもたされ、このような香りの余韻の低減が防がれた状態でウリ香成分であるノナナールが含有されることにより、緑茶飲料のフレッシュな香気を強く知覚することができ、よって、発明の課題を解決することができることが認識できる。
したがって、本件特許発明1ないし5は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
よって、本件特許発明1ないし5に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。
異議申立人1の主張である「第4 1(2)ア.ノナナールの濃度範囲について」及び「第4 1(2)イ.ノナナール添加の疑義について」検討する。
上記検討したとおり、L-テアニンの含有量が100~2200ppmであり、グリセロ糖脂質の含有量が1.0~30ppmであることによって緑茶の香りの余韻の低減がもたされ、このような香りの余韻の低減が防がれた状態でウリ香成分であるノナナールが含有されることにより、緑茶飲料のフレッシュな香気を強く知覚することができ、よって、発明の課題を解決することができるものであるから、ウリ香成分であるノナナールは含有されていればその機能を果たし、発明の課題を解決することができる。
よって、異議申立人1の主張は採用し得ない。
異議申立人2の主張である「第4 2(3) ノナナールの検知閾値及び認知閾値について」検討する。
上記検討したとおり、L-テアニンの含有量が100~2200ppmであり、グリセロ糖脂質の含有量が1.0~30ppmであることによって緑茶の香りの余韻の低減がもたされている容器詰緑茶飲料において、ウリ香成分であるノナナールが含有されることにより、緑茶飲料のフレッシュな香気を知覚することができることから、ノナナールは含有されていれば発明の課題が解決されるものである。
よって、異議申立人2の主張は採用し得ない。
以上の検討から、異議申立人1及び異議申立人2のサポート要件に関する主張はいずれも採用することができない。
(5)申立理由1-2(サポート要件)、申立理由2-3(サポート要件)についてのまとめ
申立理由1-2(サポート要件)、申立理由2-3(サポート要件)は、いずれもその理由がない。
第8 むすび
前記第6、第7のとおり、本件特許発明1ないし5に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立の理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700828