特許異議申立
2022-700374
エピガロカテキンガレートを含有する容器詰緑茶飲料
- 審判番号
- 2022-700374
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-024829
- 登録番号
- 6963132
- 請求日
- 2022年04月28日
- 審決日
- 2022年08月26日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】サントリーホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】山本 修
- 【権利者代理人】宮前 徹
- 【権利者代理人】松尾 淳一
- 【権利者代理人】中村 充利
- 【異議申立人】松下 明光
- 【異議申立人】西田 友美
- 審判長/審判官
- 審判長 加藤 友也
- 審判官 大島 祥吾
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.113-Y (A23F) / P1651.121-Y (A23F) / P1651.537-Y (A23F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6963132号発明「エピガロカテキンガレートを含有する容器詰緑茶飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6963132号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6963132号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、令和3年2月19日(優先権主張 令和2年12月28日)を出願日とする特願2021-24829号に係るものであって、令和3年10月18日にその特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、同年11月5日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和4年4月28日に特許異議申立人 松下 明光(以下、「特許異議申立人1」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年5月6日に特許異議申立人 西田 友美(以下、「特許異議申立人2」という。)により特許異議申の申立て(対象請求項:全請求項)がなされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下、順に「本件発明1」のようにいい、これらを総称して「本件発明」という場合がある。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
エピガロカテキンガレートの含有量が90~1000ppmであり、L-テアニンの含有量が95~1000ppmであり、ノナナールの含有量が0.5~10ppbであり、カテキン類の含有量が1200ppm以下である、容器詰緑茶飲料。
【請求項2】
サイクロデキストリンが不使用である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
甘味料が不使用である、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項4】
ガロカテキンガレートの含有量が100~400ppmである、請求項1~3のいずれかに記載の飲料。
【請求項5】
シュウ酸の含有量が30ppm以上である、請求項1~4のいずれかに記載の飲料。
【請求項6】
ノナナールの含有量が1.0ppb以上である、請求項1~5のいずれかに記載の飲料。
【請求項7】
エピガロカテキンガレートの含有量が90~1000ppm、L-テアニンの含有量が95~1000ppm、ノナナールの含有量が0.5~10ppb、カテキン類の含有量が1200ppm以下である緑茶飲料を調製する工程を含む、容器詰緑茶飲料の製造方法。
【請求項8】
エピガロカテキンガレートの含有量を90~1000ppm、L-テアニンの含有量を95~1000ppm、ノナナールの含有量を0.5~10ppb、カテキン類の含有量を1200ppm以下に調整する工程を含む、容器詰緑茶飲料を常温保管した際の劣化臭を抑制する方法。」
第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
1 令和4年4月28日に特許異議申立人1が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書1」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
(1)申立理由1-1(甲第1号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由1-2(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
ア 本件特許明細書の【0016】には、「ノナナールを0.5~10ppb、好ましくは1.0~8.0ppb、より好ましくは1.5~6.0ppb、さらに好ましくは2.0~5.0ppbの濃度で含有する緑茶飲料は、好適な態様の一つである。」と記載されている。
しかしながら、実際に検討されたノナナールの濃度は、2.1ppb(表5)、2.3ppb(表7)、3.3ppb(表9)の3点にすぎず、0.5ppb~2.0ppbの範囲及び3.4ppb~10ppbの範囲については、本件発明の効果を奏するか否かについての検討が行われていない。
このため、ノナナールの濃度範囲について、特許請求の範囲に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載された範囲を逸脱している。
イ 本件明細書の【0030】及び【0031】を参照すると、「実験1:緑茶飲料の評価(参考例)」において、通常の茶葉から抽出した緑茶抽出液をPETボトル容器に充填した後に成分分析を行ったところ、2.2ppbのノナナールが検出されたとの記載がある。そうすると、通常の緑茶飲料を容器詰めすれば、本件発明1~本件発明8に記載された濃度範囲のノナナールを含むことが推認される。加えて、本件明細書の記載中には、ノナナールを添加するための内容が認められない。ノナナールは、水には不溶性であるため、油成分や有機溶媒等に溶解した後でなければ、所定濃度まで薄めて添加することができない。油成分を用いてしまうと、水性の容器詰緑茶飲料の表面に浮いてしまうので製品として販売することが困難である。また、有機溶媒 (例えばエタノール)を用いた場合には、その香りを飛ばすために所定の処理操作が必要となるはずである(特に【0009】に記載の通り、本件発明は「劣化臭を効果的にマスキングする」ためのものであるから、香りに対しては厳密な取り扱いが必要なはずである)。しかしながら、そのような処理操作については、何らも記載されていない。そうすると、(1)本件発明は、そもそもノナナールを添加する必要がないもの(結果的に含まれてしまうもの)であるか、(2)ノナナールを 添加する際の処理操作及び/またはノナナールを添加した後の処理操作のいずれかを意図的に隠しているものであると考える。
(3)証拠方法
甲第1号証:特開2006-115788号公報
甲第2号証:国際公開第2019/131997号
なお、証拠の表記は、おおむね特許異議申立書1の記載に従った。
以下、順に「甲1―1」のようにいう。
2 令和4年5月6日に特許異議申立人2が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書2」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
(1)申立理由2-1(甲第1号証に基づく新規性)
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由2-2(甲第1号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)申立理由2-3(甲第10号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし4、6ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第10号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4、6ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(4)申立理由2-4(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
甲第11号証には、水中のノナナールの嗅覚閾値を再調査した結果が記載されており、認知閾値が8.0μg/mL(ppb)、検知閾値が2.8μg/L(ppb)であったことが記載されている(甲第11号証268頁表1続き)。ここで、認知閾値とは、匂いの質を認知することによる刺激の知覚であり、検知闊値とは、匂いの質を認知しない刺激の知覚である(同269頁右欄1~5行)。
なお、甲第12号証に記載されているように、検知閾値とは、「何のにおいか分からなくても何かにおいを感知できる最小濃度」と説明することができ、認知閾値とは、「何のにおいか感知できる最小濃度」と説明することができる。
すなわち、甲第11号証には、水中のノナナールについて、検知閾値(何のにおいか分からなくても何かにおいを感知できる最小濃度)が2.8ppbであり、認知閾値(何のにおいか感知できる最小濃度)が8.0ppbであることが記載されている。そうすると、本件明細書の実施例で確認した容器詰緑茶飲料は、ノナナール含有量が、認知閾値のみならず検知閾値よりさらに低い値となっていることから、ノナナールによる匂いを認知できないものであると認められる。そのため、「フレッシュなウリ香が感じられる」との効果は、ノナナールによるものではない蓋然性が高い。
そのため、本件発明においては、ノナナール含有量が「0.5~10ppb」あるいは「1.0ppb以上」と特定されているものの、これらの発明特定事項では、本件発明の効果を発揮するための手段(すなわち、本件発明の課題を解決するための手段)が反映されているとはいえない。
また、ノナナール含有量「0.5~10ppb」あるいは「1.0ppb以上」との範囲の全域において、「フレッシュなウリ香が感じられる」との本件発明の効果が得られると認識することはできないから、本件発明は、本件特許の発明の詳細な説明の記載および技術常識に照らし、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えるものである。
(5)証拠方法
甲第1号証:特開2016-54722号公報
甲第2号証:日本食品化学学会誌,(2004)Vol.11(2),pp.99-102
甲第3号証:特開2014-128195号公報
甲第4号証:特開2014-143961号公報
甲第5号証:Foods,(2013)vol.2,pp.554-571
甲第6号証:におい・かおり環境学会誌,(2007)vol.38,No.3,pp.179-186
甲第7号証:国際公開第2019/131997号
甲第8号証:Food Chemistry,(2019)Vol.296,pp.69-77
甲第9号証:茶業研究報告,(2000)2000巻,89号,pp.23-27
甲第10号証:特開2009-95333号公報
甲第11号証:Eur Food Res Technol,(2008)Vol.228,pp.265-273
甲第12号証:「嗅覚閾値」,におい用語辞典,株式会社カルモア
なお、証拠の表記は、おおむね特許異議申立書2の記載に従った。
以下、順に「甲2―1」のようにいう。
第4 当審の判断
以下に記載するように、特許異議申立人1の申立理由1-1及び1-2並びに特許異議申立人2の申立理由2-1、2-2、2-3及び2-4はいずれも理由がない。
1 申立理由1-1(甲1-1に基づく進歩性)について
(1)甲1-1に記載された事項等
ア 甲1-1に記載された事項
甲1-1には、「容器詰緑茶飲料」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑茶葉を抽出して得られた緑茶抽出液を含有する容器詰緑茶飲料であって、エピガロカテキンガレート及びガロカテキンガレートを合計値で380mg/L~1500mg/L含有し、かつグルタミン酸を20mg/L~120mg/L含有し、かつ拡散透過率が1.0%以下である容器詰緑茶飲料。」
・「【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度にカテキン類を含有した容器詰緑茶飲料に関し、特に、加温販売時の長期保管中でのオリ発生抑制効果を有し、さらにはカテキン類が与える呈味の嗜好性を向上させた容器詰緑茶飲料に関する。」
・「【0019】
ところで、一般的な緑茶飲料の呈味(甘味、うま味)に関連する成分として、緑茶飲料においては、カテキン類のほかにアミノ酸類が寄与することが知られている。緑茶飲料に含まれるアミノ酸類はテアニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、セリン等であり、これらが緑茶飲料に含まれる全アミノ酸の90%以上を占めるとされている(新茶業全書 8版、(社)静岡県茶業会議所編、1988)。」
・「【0056】
(実施例)
緑茶60.0gを60℃のイオン交換水2500mLで5分抽出して得られた抽出液をメッシュで粗ろ過した後、25℃以下まで冷却した。次いで、アスコルビン酸を3.0g添加して、遠心分離(ウエストファリア社製SA1連続遠心分離機を使用して、流速300L/h、回転数10000rpm、遠心沈降面積1000m2)を行い、その後珪藻土濾過(接触時間:30分、Darcy値0.1の酸処理済み珪藻土を100g使用し、濾過面積当たり0.15g/cm2で、加圧方式で濾過)をした。次いで、珪藻土濾過された緑茶抽出液にアスコルビン酸4.0gと表4に示すようにグルタミン酸ナトリウム(林純薬工業製、食品添加物)とエピガロカテキンガレートTEAVIGO(DSM Nutritional Products社)を様々な濃度となるように添加した後、イオン交換水を加水して、さらに重曹を用いてpH6.0~6.1に調整し、10kgに調整した。調整後、液温を90℃まで加温して、スチール缶に充填して缶詰とした。次いで、充填した飲料を加熱殺菌(123℃、10分)し、容器詰緑茶飲料を調製した。調製した容器詰緑茶飲料の一本を開封し、容器内の緑茶飲料の一部をサンプリングし、各成分濃度及び製造直後の拡散透過率を測定した。また、オリの観察用のために、別途透明耐熱ビンに充填し、前記同様に加熱殺菌し、容器詰緑茶飲料を調製した。
実施例1~6の各成分濃度、上記評価結果について、表4に示す。
【0057】
【表4】
[図:0001389417000001.jpg]
」
・「【0062】
表6に高濃度にカテキンを含有する市販の容器詰茶系飲料(商品名:ヘルシア緑茶、花王製、コールド専用品、2004年8月購入)の組成データ並びに未開封品を60℃加温し2週間保存した場合の結果を示す。60℃加温前の拡散透過率の値が5.2%と高く、また、60℃保存後のオリの発生も顕著であった。
【0063】
【表6】
[図:0001389417000002.jpg]
」
イ 甲1-1に記載された発明
甲1-1には、上記アから、実施例5又は実施例6として記載されている容器詰緑茶飲料として、また、市販の花王製の商品名:ヘルシア緑茶である容器詰茶系飲料として、以下の発明が記載されているといえる。
<甲1-1物発明A>
「エピガロカテキンガレートの含有量が182.3又は273.1mg/Lであり、テアニンの含有量が16.2又は16.1mg/Lであり、8種のカテキンの総量が602.0又は807.0mg/Lである、容器詰緑茶飲料。」
<甲1-1物発明B>
「エピガロカテキンガレートの含有量が367.6mg/Lであり、テアニンの含有量が99.1mg/Lであり、8種カテキンの含有量が1763.2mg/Lである、容器詰茶系飲料。」
また、甲1-1物発明A及び甲1-1物発明Bの製造方法として、以下の発明が記載されているといえる。
<甲1-1製法発明A>
「エピガロカテキンガレートの含有量が182.3又は273.1mg/Lであり、テアニンの含有量が16.2又は16.1mg/Lであり、8種のカテキンの総量が602.0又は807.0mg/Lとなるように調整する工程を含む、容器詰緑茶飲料の製造方法。」
<甲1-1製法発明B>
「エピガロカテキンガレートの含有量が367.6mg/Lであり、テアニンの含有量が99.1mg/Lであり、8種カテキンの含有量が1763.2mg/Lとなるように調整する工程を含む、容器詰茶系飲料の製造方法。」
(2)本件発明1について
ア 甲1-1物発明Aとの対比・判断
本件発明1と甲1-1物発明Aを対比する。
甲1-1物発明Aの「容器詰緑茶飲料」は、本件発明1の「容器詰緑茶飲料」に相当する。
甲1-1物発明Aの「エピガロカテキンガレートの含有量が182.3又は273.1mg/L」は、mg/Lがppmに対応するから、本件発明1における「エピガロカテキンガレートの含有量が90~1000ppmであり」を満たす。
甲1-1物発明Aの「テアニン」は、自然界ではテアニンは「L-テアニン」しかないという技術常識からみて、本件発明1における「L-テアニン」に相当する。
甲1-1物発明Aにおける「8種のカテキンの総量が602.0又は807.0mg/Lである」は、本件発明1のカテキン類は8種のカテキンであるから(本件特許明細書の段落【0019】)、本件発明1における「カテキン類の含有量が1200ppm以下である」を満たす。
そうすると、本件発明1と甲1-1物発明Aとは
「エピガロカテキンガレートの含有量が90~1000ppmであり、L-テアニンを含有し、カテキン類の含有量が1200ppm以下である、容器詰緑茶飲料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-1-1>
「L-テアニン」の含有量に関し、本件発明1は「95~1000ppmであり」と特定するのに対し、甲1-1物発明Aでは「16.2又は16.1mg/L」(ppm)である点
<相違点1-1-2>
「容器詰緑茶飲料」に関し、本件発明1では「ノナナールの含有量が0.5~10ppbであり」と特定するが、甲1-1物発明Aではそのような特定がない点
以下、相違点について検討する。
相違点1-1-1について
甲1-1には「テアニン」(Lーテアニン)について「緑茶飲料に含まれるアミノ酸類はテアニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、セリン等であり、これらが緑茶飲料に含まれる全アミノ酸の90%以上を占めるとされている」(段落【0019】)との記載はあるものの、テアニンの含有量を調整することに関する記載はない。
そして、甲1-1物発明Aは、甲1-1における「加温販売時の長期保管中でのオリ発生抑制効果を有し、さらにはカテキン類が与える呈味の嗜好性を向上させた容器詰緑茶飲料」(段落【0001】)の実施例として記載されている容器詰緑茶飲料であって、甲1-1物発明Aにおいて、なんら注目する成分でない「テアニン」の含有量のみを調整する動機はないから、当業者においても、甲1-1物発明Aにおいて、相違点1-1-1の発明特定事項を満たすようにすることが容易になし得たものということはできない。
特許異議申立人1は、相違点1-1-2に関して、甲1-2に基づいて容易になし得る旨主張しているが、上記のとおり、相違点1-1-2について判断するまでもなく、本件発明1は、甲1-1物発明A、すなわち、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 甲1-1物発明Bとの対比・判断
本件発明1と甲1-1物発明Bとを対比する。
甲1-1物発明Bの「容器詰緑系飲料」は、本件発明1の「容器詰緑茶飲料」に相当する。
甲1-1物発明Bの「エピガロカテキンガレートの含有量が367.6mg/L」は、本件発明1における「エピガロカテキンガレートの含有量が90~1000ppmであり」を満たす。
甲1-1物発明Bの「テアニンの含有量が99.1mg/L」は、本件発明1における「L-テアニンの含有量が95~1000ppmであり」を満たす。
甲1-1物発明Bにおける「8種カテキン」は、本件発明1における「カテキン類」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1-1物発明Bとは
「エピガロカテキンガレートの含有量が90~1000ppmであり、L-テアニンの含有量が95~1000ppmであり、カテキン類を含有する、容器詰緑茶飲料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-1-3>
「容器詰緑茶飲料」に関し、本件発明1は「ノナナールの含有量が0.5~10ppbであり」と特定するが、甲1-1物発明Bではそのような特定がない点
<相違点1-1-4>
「カテキン類」の含有量に関し、本件発明1は「1200ppm以下」と特定するが、甲1-1物発明Bは「1763.2mg/L」(1763.2ppm)である点
事案に鑑み、相違点1-1-4から検討する。
甲1-1物発明Bは、市販品として完成されたものであることからみて、その組成を変更することには阻害要因がある。
そうすると、甲1-1物発明Bにおいて、相違点1-1-4の発明特定事項とすることは、当業者においても容易になし得たこととはいえない。
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-1物発明B、すなわち、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明2ない6について
本件発明2ないし6は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明1と同様に、甲1-1物発明A又は甲1-1物発明B、すなわち、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものでもない。
(4)本件発明7について
本件発明7と甲1-1製法発明A又はBとを対比すると、上記(2)ア又はイと同様の相当関係が成り立つから、本件発明7と甲1-1製法発明A又はBとは、上記(2)ア又はイにおける相違点1-1-1及び相違点1-1-2又は相違点1-1-3及び相違点1-1-4で相違する。
そして、相違点1-1-1又は相違点1-1-4についての判断は、上記(2)ア又はイのとおりである。
よって、本件発明7は、甲1-1製法発明A又はB、すなわち、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件発明8について
本件発明8と甲1-1製法発明A又はBとを対比すると、上記(2)ア又はイと同様の相当関係が成り立つから、本件発明8と甲1-1製法発明A又はBとは、上記(2)ア又はイにおける相違点1-1-1及び相違点1-1-2又は相違点1-1-3及び相違点1-1-4と、下記の相違点1-1-5で相違する。
<相違点1-1-5>
本件発明8は、「容器詰緑茶飲料を常温保存した際の劣化臭を抑制する」ものであるのに対し、甲1-1製法発明A又はBは、この点を特定しない点
以下、相違点について検討する。
相違点1-1-1又は相違点1-1-4の判断は、上記(2)ア又はイのとおりである。
相違点1-1-5について
甲1-1には、高濃度のエピガロカテキンガレートを含有する容器詰緑茶飲料において常温保存した場合の劣化臭を低減できることに関する記載はなく、その他の証拠にも記載されていない。
してみれば、相違点1-1-5についても、当業者が容易に想到し得たものということはできない。
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明8は、甲1-1製法発明A又はB、すなわち、甲1-1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(6)まとめ
よって、申立理由1-1には理由がない。
2 申立理由2-1及び申立理由2-2(甲2-1に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲2-1に記載された事項等
ア 甲2-1に記載された事項
甲2-1には、「容器詰飲料」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)、(B)及び(C);
(A)非重合体カテキン類 0.025~0.2質量%、
(B)テアニン 0.002~0.023質量%、及び
(C)ルチン 0.0003~0.0016質量%
を含有し、
成分(B)と成分(C)の含有量が下記式(1);
-0.032b+0.0006<c<-0.032b+0.0027 (1)
〔式(1)中、cは成分(C)の含有量(質量%)を示し、bは成分(B)の含有量(質量%)を示す。〕
の関係を満たす、容器詰飲料。」
・「【0001】
本発明は、容器詰飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
テアニンは玉露や抹茶等に多く含まれるアミノ酸であり、茶飲料の旨味や甘味を構成する成分の1つとして知られている。そこで、テアニンを含有する容器詰飲料として、例えば、カフェイン濃度、還元糖と非還元糖とを合わせた糖類濃度、還元糖と非還元糖との比率、糖類とエステル型カテキンとの比率、並びにテアニンとカフェインとの比率を特定範囲内に制御することにより、甘香と旨味のコクが残り冷えた状態でもおいしく飲用できるとした容器詰緑茶飲料(特許文献1)や、テアニン濃度、並びにモノガラクトシルジグリセリドとジガラクトシルジグリセリドとの合計濃度及びそれらの比率を特定範囲内に制御することにより、甘味や旨味が増強されるとした容器詰飲料(特許文献2)が提案されている。」
・「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、缶やペットボトル等の容器に充填された容器詰茶飲料が多く開発され、市場規模が拡大しているが、茶葉を急須で淹れた茶飲料と比較して利便性に優れるものの、風味に劣るという問題がある。茶葉を急須等で浸出させた茶飲料は、淹れたての香りが豊かで、嗜好性の高いものであるが、この淹れたての香りには、直接鼻で感じる鼻腔香のみならず、口に含んだときに喉から鼻に抜けて感じる鼻抜け香があることが知られている。本発明者は、この口に含んだときに喉から鼻に抜けて感じる鼻抜け香が、容器詰茶飲料の風味を改善し急須で入れた茶飲料により近い美味しさを醸成する上で、特に重要な要素であることを見出した。そして、本発明者は、急須で淹れたような鼻抜け香が感じられる、高濃度の非重合体カテキン類を含有する容器詰飲料を開発すべく更に検討を行った。その結果、高濃度の非重合体カテキン類を含有する飲料においては、テアニン量が増加すると、旨味が増強される一方で、この鼻抜け香が低下するという課題があることを見出した。また、高濃度の非重合体カテキン類を含有する容器詰飲料では、鼻抜け香が低下すると、それに伴って口が渇くような感覚(以下、「ドライ感」と称する)が際立つことも見出した。本発明の課題は、高濃度の非重合体カテキン類を含有するにもかかわらず、鼻抜け香及びドライ感が改善され、コク味も豊かな容器詰飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決すべく検討した結果、高濃度の非重合体カテキン類を含有する容器詰飲料において、テアニン及びルチンの含有量を特定範囲内にて一定の関係を満たすように制御することで、コク味が十分に感じられる上に、鼻抜け香及びドライ感が改善され、口に含むと、茶葉を急須等で浸出させた飲料のような、淹れたての香りが豊かに鼻を抜ける容器詰飲料が得られることを見出した。」
・「【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高濃度の非重合体カテキン類を含有するにもかかわらず、コク味が感じられる上に鼻抜け香及びドライ感が改善され、口に含むと、茶葉を急須等で浸出させた飲料のような、淹れたての香りが豊かに鼻を抜ける容器詰飲料を提供することができる。」
・「【0009】
本発明の容器詰飲料は、成分(A)として非重合体カテキン類を含有する。ここで、「非重合体カテキン類」とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート及びガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン類、並びにエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類を併せての総称であり、本発明においては上記8種のうち少なくとも1種を含有すればよい。なお、成分(A)の含有量は、上記8種の合計量に基づいて定義される。」
・「【0033】
本発明の容器詰飲料は、例えば、前記式(1)の関係を満たす茶抽出物と、必要により成分(D)、添加剤を配合し、成分(A)~(C)の各含有量を調整して容器に充填することにより製造することができる。
前記式(1)の関係を満たす茶抽出物は、例えば、茶葉から得られた茶抽出物の中から前記式(1)の関係を満たす茶抽出物を選択しても、2種以上の茶抽出物を前記式(1)の関係を満たすように混合して調製してもよい。また、茶品種、採取時期、火入れ加工程度等の異なる茶葉の中から前記式(1)の関係を満たす茶葉を選択し、茶抽出物を調製してもよい。更に、1種又は2種以上の茶抽出物に、成分(A)及び成分(B)から選ばれる少なくとも1種を前記式(1)の関係を満たすように添加してもよい。なお、茶品種は一般に栽培されているものであれば、特に限定されるものではない。また、採取時期は、一番茶、二番茶、三番茶及び四番茶のいずれでもよいが、一番茶が好ましい。火入れ条件は適宜選択することが可能であるが、例えば、温度は好ましくは150~300℃、より好ましくは170~230℃であり、加熱時間は好ましくは1~15分、より好ましくは1~10分である。
【0034】
抽出に使用する茶葉としては、Camellia属、例えば、C.sinensis.var.sinensis(やぶきた種を含む)、C.sinensis.var.assamica及びそれらの雑種から選択される茶葉が挙げられる。茶葉は、その加工方法により、不発酵茶、半発酵茶、発酵茶に分類することができる。不発酵茶としては、例えば、煎茶、深蒸し煎茶、焙じ茶、番茶、玉露、かぶせ茶、碾茶、釜入り茶、茎茶、棒茶、芽茶等の緑茶が挙げられる。また、半発酵茶としては、例えば、鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶等の烏龍茶が挙げられる。更に、発酵茶としては、ダージリン、アッサム、スリランカ等の紅茶が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、非重合体カテキン類の含有量の点から、不発酵茶が好ましく、緑茶がより好ましく、また本発明の効果を奏する点で、火入れ加工煎茶及び焙じ茶が殊更に好ましい。」
・「【0051】
調製例2
緑茶抽出液(2)
緑茶葉(二番煎茶)30gを70℃のイオン交換水1000gで5分間、攪拌抽出し、その後金網により濾過して、茶殻を取り除いた。次に、この抽出液を2号濾紙で吸引濾過して、緑茶抽出液(2)を得た。得られた緑茶抽出液(2)は、ルチンの含有量が0.00030質量%、テアニンの含有量が0.0112質量%、非重合体カテキン類の含有量が0.27質量%であった。」
・「【0054】
実施例1~10及び比較例1~8
表1に記載の各成分を配合して飲料を製造し、108℃で0.5分間の加熱殺菌処理を行った後、PETボトルに充填し容器詰飲料を得た。得られた各容器詰飲料について分析及び官能評価を行った。その結果を表1に併せて示す。
【0055】
【表1】
[図:0001389417000003.jpg]
」
イ 甲2-1に記載された発明
甲2-1には、上記アから、実施例6として記載されている容器詰飲料として、以下の発明が記載されているといえる。
<甲2-1実施例6発明>
「緑茶葉(二番煎茶)30gを70℃のイオン交換水1000gで5分間、攪拌抽出し、その後金網により濾過して、茶殻を取り除き、次に、この抽出液を2号濾紙で吸引濾過して、緑茶抽出液(2)を得、得られた緑茶抽出液(2)を210g、ルチン0.0091g、テアニン0.109g、重曹とイオン交換水をバランス配合して合計量1000gとした容器詰飲料であって、
非重合体カテキン類が0.057質量%、テアニンが0.013質量%、ルチンが0.001質量%である、容器詰飲料。」
また、甲2-1実施例6発明の製造方法として、以下の発明が記載されているといえる。
<甲2-1実施例6製法発明>
「緑茶葉(二番煎茶)30gを70℃のイオン交換水1000gで5分間、攪拌抽出し、その後金網により濾過して、茶殻を取り除き、次に、この抽出液を2号濾紙で吸引濾過して、緑茶抽出液(2)を得、得られた緑茶抽出液(2)を210g、ルチン0.0091g、テアニン0.109g、重曹とイオン交換水をバランス配合して合計量1000gとした容器詰飲料であって、
非重合体カテキン類が0.057質量%、テアニンが0.013質量%、ルチンが0.001質量%となるように調整する工程を含む、容器詰飲料の製造方法。」
なお、実施例6と同様に実施例7~9、比較例4、5及び7についても、甲2-1実施例7~9発明、甲2-1比較例4、5及び7発明、甲2-1実施例7~9製法発明、甲2-1比較例4、5及び7製法発明が記載されているといえる。
(2)本件発明1について
ア 甲2-1実施例6発明との対比
本件発明1と甲2-1実施例6発明を対比する。
甲2-1実施例6発明の「容器詰飲料」は、本件発明1の「容器詰緑茶飲料」に相当する。
甲2-1実施例6発明の「テアニンが0.013質量%」は、質量%をppmに換算するとほぼ130ppmであるから、本件発明1における「L-テアニンの含有量が95~1000ppmであり」を満たす。
甲2-1実施例6発明における「非重合体カテキン類が0.057質量%」は、甲2-1の「「非重合体カテキン類」とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート及びガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン類、並びにエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類を併せての総称であり」(段落【0009】)の記載から、本件発明1における「カテキン類の含有量が1200ppm以下である」を満たす。
そうすると、本件発明1と甲2-1実施例6発明とは
「L-テアニンの含有量が95~1000ppmであり、カテキン類の含有量が1200ppm以下である、容器詰緑茶飲料。」
である点で一致し、以下の点で一応相違する。
<相違点2-1-1>
「容器詰緑茶飲料」に関し、本件発明1は「エピガロカテキンガレートの含有量が90~1000ppmであり」と特定するのに対し、甲2-1実施例6発明ではそのような特定がない点
<相違点2-1-2>
「容器詰緑茶飲料」に関し、本件発明1は「ノナナールの含有量が0.5~10ppbであり」と特定するが、甲2-1実施例6発明ではそのような特定がない点
以下、相違点について検討する。
相違点2-1-1について
まず、新規性から検討する。
甲2-1実施例6発明においてのエピガロカテキンガレートの含有量については、甲2-1にはエピガロカテキンガレートが非重合カテキン類を構成する成分である旨の例示はあるものの含有量についての記載がなく、非重合カテキン類の総量として0.057質量%(570ppm)との記載があるのみである。
また、甲2-1実施例6発明のエピガロカテキンガレートの含有量を測定した証拠は示されていない。
そして、緑茶から抽出された抽出液中の非重合カテキン類全体に対する「エピガロカテキンガレート」の割合が一定であるとの技術常識を示す文献も提示されていない。
さらに、甲2-1の調整例2の緑茶からの抽出条件は本件特許明細書の実施例とほぼ同様といえるにもかかわらず、テアニンの含有量は、0.0112重量%(11.2ppm)、非重合カテキン類(本件発明1の「カテキン類」)の含有量が0.27重量%(270ppm)と本件明細書の抽出液(テアニン27ppm、カテキン類381ppm)とその比率が異なることからみても、緑茶から抽出された抽出液中の非重合カテキン類全体に対する「エピガロカテキンガレート」の割合は一定となるものと認識することはできない。
そうすると、相違点2-1-1は、実質上の相違点である。
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2-1実施例6発明であるとはいえない。
次に、進歩性について検討する。
甲2-1実施例6発明においての「エピガロカテキンガレート」の含有量について、甲2-1には記載されていない。
そうすると、甲2-1実施例6発明において、「エピガロカテキンガレート」の含有量を調整するという視点はないから、当業者においても、甲2-1実施例6発明において、相違点2-1-1の発明特定事項を満たすようにすることが容易になし得たものということはできない。
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2-1実施例6発明、すなわち、甲2-1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 甲2-1実施例7~9発明、甲2-1比較例4、5及び7発明との対比・判断
本件発明1と甲2-1実施例7~9発明、甲2-1比較例4、5及び7発明とを対比すると、上記アと同様の相当関係が成り立つから、上記アの相違点2-1-1及び相違点2-1-2で相違し、相違点2-1-1の判断は上記アのとおりである。
よって、本件発明1は、甲2-1実施例7~9発明、甲2-1比較例4、5及び7発明、すなわち、甲2-1に記載された発明であるとはいえないし、甲2-1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件発明2ない6について
本件発明2ないし6は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明1と同様に、甲2-1に記載された発明でないし、甲2-1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものでもない。
(4)本件発明7について
本件発明7と甲2-1実施例6製法発明とを対比すると、上記(2)アと同様の相当関係が成り立つから、本件発明7と甲2-1実施例6製法発明とは、上記(2)アにおける相違点2-1-1及び相違点2-1-2で一応相違する。
そして、相違点2-1-1についての判断は、上記(2)アのとおりである。
また、甲2-1実施例7~9製法発明、甲2-1比較例4、5及び7製法発明についても同様である。
よって、本件発明7は、甲2-1実施例6製法発明、甲2-1実施例7~9製法発明、甲2-1比較例4、5及び7製法発明、すなわち、甲2-1に記載された発明でないし、甲2-1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件発明8について
本件発明8と甲2-1実施例6製法発明とを対比すると、上記(2)アと同様の相当関係が成り立つから、本件発明8と甲2-1実施例6製法発明とは、上記(2)アにおける相違点2-1-1及び相違点2-1-2に加えて下記の相違点2-1-3で一応相違する。
<相違点2-1-3>
本件発明8は、「容器詰緑茶飲料を常温保存した際の劣化臭を抑制する」ものであるのに対し、甲2-1実施例6製法発明は、この点を特定しない点
以下、相違点について検討する。
相違点2-1-1の判断は、上記(2)アのとおりである。
次に、相違点2-1-3について検討する。
まず、上記相違点2-1-1の判断のとおり、本件発明7の方法と甲2-1実施例6製法発明の方法が同じであるとはいえない。そして、甲2-1には、高濃度のエピガロカテキンガレートを含有する容器詰緑茶飲料において常温保存した場合の劣化臭を低減できることに関する記載はなく、その他の証拠にも記載されていない。
してみれば、相違点2-1-3についても、実質上の相違点であるし、当該相違点は当業者が容易に想到し得たものということはできない。
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明8は、甲2-1実施例6製法発明、すなわち、甲2-1に記載された発明でないし、甲2-1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、甲2-1実施例7~9製法発明、甲2-1比較例4、5及び7製法発明との対比・判断も同様である。
(6)まとめ
よって、申立理由2-1及び申立理由2-2には理由がない。
3 申立理由2-3(甲2-10に基づく進歩性)について
(1)甲2-10に記載された事項等
ア 甲2-10に記載された事項
甲2-10には、「茶抽出物、茶飲料及びそれらの製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶葉に溶媒を接触させて得られる茶抽出物であって、該茶抽出物中の茶葉由来固形分に対し、アミノ酸の総量の割合が2.5重量%以上であり、カテキン類の総量の割合が15.0重量%以下である、茶抽出物。
【請求項2】
さらにテアニンを含有し、テアニンの割合がアミノ酸の総量に対して0.1重量%以上である、請求項1に記載の茶抽出物。
・・・
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の茶抽出物を含有する、容器詰茶飲料。」
・「【発明の属する技術分野】
【0001】
本発明は、茶抽出物、茶飲料及びそれらの製造方法に関し、特に茶の旨味成分であるアミノ酸を高濃度に含有し苦味・渋味成分であるカテキン類が除去された、嗜好性に優れた茶抽出物の製造方法に関する。」
・「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のとおり、茶抽出物中の風味を高める方法が種々知られており、酵素を利用して抽出する方法では、酵素が茶葉及び/又は茶抽出液中のタンパク質や繊維質に作用することにより、抽出液中の旨味成分であるアミノ酸濃度を高めることが知られている。しかし、これらの方法で得られる茶抽出物の風味は必ずしも十分に満足しうるものではなく、より旨味・コク味成分であるアミノ酸を高濃度に含有し、苦味・渋味成分であるカテキン類を低減させた茶抽出物の開発が望まれていた。
すなわち、本発明は、旨味・コク味成分を高濃度に含有し、苦味・渋味成分を低減させた茶抽出物およびその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、豊かな旨味を有し渋味の少ない量販可能な容器詰茶飲料を提供することを目的とする。」
・「【課題を解決するための手段】
【0009】
・・・
また、本発明者らは、さらに検討を進めた結果、上記の茶抽出物にテアニンを一定量の割合で混合すると、フレッシュな旨味を付与することができることを見出した。そして、このテアニンとして茶葉の低温抽出液を用いると、フレッシュな旨みと厚みのあるコクを備え、苦味や渋味が低減された茶抽出物となること、特に、低温抽出液の抽出残渣を用い、この残渣からカテキン類を除去して酵素抽出を行うことで、従来にない香味豊かな茶抽出物が得られることを見出し、本発明を完成させた。」
・「【0013】
さらに、本発明の茶抽出物にテアニンを一定量の割合で混合したテアニン高含有茶抽出物は、旨味・コク味に加えてフレッシュな旨味をも増強できる。テアニンの含量は、茶抽出物中のアミノ酸のうち、テアニンの割合が0.1重量%以上、好ましくは0.15重量%となるように添加するのが好ましい。または、テアニン高含有茶抽出物中の茶葉由来固形分に対し、テアニンの割合が0.3重量%以上、好ましくは0.6重量%以上、より好ましくは0.8重量%以上、さらにより好ましくは1.0重量%以上、特に好ましくは1.5重量%以上となるように、テアニンを添加するのが好ましい。テアニンは、茶葉より精製されたものとして市販されているもの等を用いてもよいが、茶葉の低温抽出物として添加すると、ヘキサナール等の香気成分も混合されるので、よりフレッシュな旨味と厚みのあるコク味とを付与することができる。ここで、茶葉の低温抽出物とは、茶葉を40℃以下の水性溶媒で抽出して得られるものをいい、緑茶葉を40℃以下の水で浸漬、濾過して得られる緑茶抽出物(低温抽出液)を例示することができる。
上記のとおり、本発明の茶抽出物は、茶飲料、菓子等の飲食品原料として用いることができる。本発明の茶抽出物は、従来の茶抽出物にない、フレッシュな風味とコク・厚みのある旨味を有し苦味・渋味の少ないものであるから、茶飲料として好適に提供される。
本発明の茶抽出物は、そのままで、または必要に応じて適宜希釈等を行って茶飲料とすることができる。この茶飲料を容器に充填すると、急須で入れた高級茶のような豊かなコク・旨味を有し、苦味・渋味の少ない茶飲料として、日常的に摂取できるものとなる。ここでいう容器とは、特に限定されるものではなく、例えばペットボトル、缶、瓶、紙パック等の容器が挙げられる。」
・「【0015】
(第1工程:カテキン類を除去する工程)
上記したとおり、本発明の茶抽出物の製造方法では、まず茶葉からカテキン類を除去することを特徴とする。ここで、本明細書におけるカテキン類とは、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレートおよびエピガロカテキンガレートの総称を表す。」
・「【0016】
茶葉からカテキン類の少なくとも一部が除去されたかどうかの判断は、カテキン類を除去する工程、例えば上記の高温抽出液や酸処理溶液のカテキン類濃度を測定することで、茶葉からカテキン類が抽出除去されたかどうかを評価することができる。
カテキン類は、公知の方法(例えば、フィルター(0.45μm)で濾過した液を高速液体クロマトグラム(HPLC)による分離分析する方法)により定量することができる。
なお、原料となる茶葉には、煎茶、番茶、ほうじ茶、玉露、かぶせ茶、甜茶等の蒸し製の不発酵茶(緑茶);嬉野茶、青柳茶、各種中国茶等の釜炒茶等の不発酵茶;包種茶、鉄観音茶、ウーロン茶等の半発酵茶;紅茶、阿波番茶、プアール茶などの発酵茶等、いずれのものも用いることができる。なかでも、特に旨味やコク味が重要視される不発酵茶(緑茶)および半発酵茶が好適に用いられる。」
・「【0033】
・・・
比較例1
まず、第一工程としてカラム型抽出機に10gの緑茶葉(火入れ度:中)を封入し、抽出機上部から25℃のイオン交換水を100mL加え、緑茶葉を浸漬させた。そこに25℃のイオン交換水を50mL/minの流量にて連続的に20分通液し、低温抽出液を得た(試料A1)。次に試料A1を抽出した後の抽出残渣に、プロテアーゼ及びペクチナーゼを各0.2gずつ添加し、40℃のイオン交換水を加え総重量160gに調整し、40℃に保持したまま50mL/minにて16時間循環通液を行い、酵素反応を行った。得られた酵素処理液を90℃10分加熱し酵素を失活させ、酵素反応液を得た(試料A2)。さらに、上記試料A1全量及びA2全量を混合し、茶抽出物を得た(試料A3)。」
・「【0035】
・・・
比較例2
茶葉を緑茶葉(火入れ度:弱)にする以外は、比較例1と同様にして低温抽出液(試料A1’)を得、次にこの抽出残渣から酵素反応液を得(試料A2’)、試料A1’と試料A2’の全量を混合して茶抽出物(試料A3’)を得た。比較例1と同様に各試料におけるアミノ酸及びカテキン量を分析し、官能評価を行った。
結果を表2に示す。回収液量(収量)は、試料A1’が462g、試料A2’が129gであった。また、アミノ酸の含量は、試料A1’が120mg、試料A2’が187mgであった。この結果と参考例とを合わせて考察すると、比較例1と同様に、第一工程でアミノ酸がほぼ全量抽出されていたが、第二工程の酵素処理におけるタンパクの分解によってさらにアミノ酸の生成量が増加したと考えられる。
【0036】
一方、カテキン類の含量は、試料A1’が337mg、試料A2’が282mgであった。参考例と合わせて考察すると、比較例1と同様に、第一工程で抽出されなかったカテキン類が第二工程によって更に抽出されたと考えられる。また、試料A2’のアミノ酸(a)とカテキン類(b)の比率(a/b)を算出すると、0.66であった。
また、香味評価の結果、第二工程で得られた酵素抽出液(試料A2’)は、カテキン類の含有量が少なく、アミノ酸を高濃度で含有するものであり、香味的にもコクと厚みのある豊かな旨味を有し、苦味・渋味の比較的少ない嗜好性の優れたものであった。さらに、試料A1’と試料A2’を混合した試料A3’は、フレッシュかつコク・厚みのある旨みを有し、かつ渋味が抑制された、従来のものとは全く違った香味を有する緑茶抽出物であった。
【表2】
[図:0001389417000004.jpg]
」
・「【0039】
・・・
実施例3.茶抽出物の製造(3)
まず、第一工程としてカラム型抽出機に10gの緑茶葉(火入れ度:中)を封入し、抽出機上部から25℃のイオン交換水を100mL加え、緑茶葉を浸漬させた。そこに25℃のイオン交換水を50mL/minの流量にて連続的に20分通液し、低温抽出液を得た(試料D1)。次に第二工程として、試料D1抽出後の抽出残渣に75℃のイオン交換水を100mL加えた上で、75℃のイオン交換水を50mL/minの流量にて連続的に40分通液し、高温抽出液を得た(試料D2)。次に第三工程として、試料D2抽出後の抽出残渣に、酵素としてプロテアーゼ及びペクチナーゼを各0.2gずつ添加し、40℃のイオン交換水を加え総重量160gに調整し、40℃に保持したまま50mL/minにて16時間循環通液を行い、酵素処理(反応)を行った。その後、得られた酵素処理液を90℃で10分加熱して酵素を失活させ、酵素抽出液を得た(試料D3)。第四工程として、上記試料D1及びD3全量を混合し、茶抽出物を得た(試料D4)。」
・「【0041】
・・・
実施例4.茶抽出物の製造(4)
茶葉を緑茶葉(火入れ度:弱)にする以外は、実施例3と同様にして低温抽出液(試料D1’)を得、次にこの抽出残渣から高温抽出液(試料D2’)を得、この抽出残渣から酵素反応液を得(試料D3’)、試料D1’及び試料D3’の全量を混合して茶抽出物(試料D4’)を得た。実施例3と同様に各試料におけるアミノ酸及びカテキン量を分析し、専門パネラー3面により官能評価を実施した。
結果を表6に示す。回収液量(収量)は、試料D1’が461g、試料D2’が2945g、試料D3’が139gであった。また、アミノ酸の含量は、試料D1’が167mg、試料D2’が8mg、試料D3’が256mgであった。この結果と参考例とを合わせて考察すると、第一工程でアミノ酸がほぼ全量抽出されていたが、第三工程の酵素処理におけるタンパクの分解によってさらにアミノ酸の生成量が増加したと考えられる。
一方、カテキン類の含量は、試料D1’が507mg、試料D2’が576mg、試料D3’が16mgであった。参考例と合わせて考察すると、第一工程で残ったカテキン類が、第二工程でほぼ全量抽出されたと考えられる。また、試料D3’のアミノ酸(a)とカテキン類(b)の比率(a/b)を算出すると、15.79であった。
【表6】
[図:0001389417000005.jpg]
」
・「【0042】
実施例5.茶抽出物の製造(5:スケールアップ)
本発明の茶抽出物の生産性を検討した。
まず、第一工程としてカラム型抽出機に2.00kgの緑茶葉(火入れ度:弱)を封入し、抽出機上部から25℃のイオン交換水を26.4kg加え、緑茶葉を浸漬させた。そこに25℃のイオン交換水を3.3L/minの流量にて連続的に30分通液し、低温抽出液を得た(試料E1)。次に、第二工程として、通液するイオン交換水温度を85℃に切り替え、3.3L/minの流量にて連続的に60分通液し、高温抽出液得た(試料E2)。その後、第三工程として、試料E2抽出後の抽出残渣に酵素としてプロテアーゼ及びペクチナーゼを各40gずつ添加し、酸化防止剤としてL-アスコルビン酸を6.00g添加し、40℃のイオン交換水を加え総重量32kgに調整し、40℃に保持したまま5.0L/minにて16時間循環通液を行い、酵素反応を行った。得られた酵素処理液を90℃10分加熱し酵素を失活させ、酵素抽出液を得た(試料E3)。さらに第4工程として、上記試料E1と試料E3とを混合し、茶抽出物を得た(試料E4)。
試料E1~E4について、参考例1と同様にアミノ酸及びカテキン類の含量を分析した。
結果を表7に示す。アミノ酸の含量は、試料E1が18.8g、試料E2が4.5g、試料E3が41.8gであった。一方、カテキン類の含量は、試料E1が67.3g、試料E2が80.0g、試料E3が31.4gであった。
この結果と実施例4とを合わせて考察すると、実施例4と同様、低温抽出液(試料E1)と酵素抽出液(試料E3)でアミノ酸含量が高く、高温抽出液(試料E2)にカテキン類が多く含まれていることが確認され、本発明の製造方法が実生産レベルにおいても問題無く製造可能であることが確認できた。
【表7】
[図:0001389417000006.jpg]
」
・「【0044】
実施例7.茶飲料の製造
実施例3で製造した茶抽出物(試料D4)を用いて茶飲料を製造した。すなわち、緑茶葉45gをニーダーで抽出(80℃、10分)し、遠心分離機ならびにフィルターにて茶葉を分離して緑茶液を得、調合タンクにてこの緑茶液に酸化防止剤(L-アスコルビン酸)2g及び重曹(炭酸水素ナトリウム)2gを添加し、さらに、試料D4を、試料D4由来のアミノ酸量が最終飲料中に20ppmとなるように添加し、最後に純水を加え7Lに調整し調合液とした。そしてこの調合液を、UHT殺菌(130℃、1分)後、500mLのペットボトル容器に充填して容器詰緑茶飲料を得た。また、対照として試料D4を添加しないこと以外は、同様にして、緑茶飲料を得た。この緑茶飲料の香味を評価したところ、試料D4を添加していない緑茶飲料(対照)と比較し、試料D4を添加した緑茶飲料は、複雑な旨みを有し、かつ渋みが抑制された新規な香味特徴を有する緑茶飲料であった。
さらに実施例4で製造した茶抽出物(試料D4’)を用いて同様にして茶飲料を製造した。この茶飲料も、対照と比較して、複雑な旨みを有し、かつ渋みが抑制された新規な香味特徴を有する緑茶飲料であった。」
イ 甲2-10に記載された発明
甲2-10には、上記アの段落【0044】の実施例7と同様にして製造された茶抽出液である試料D4’用いた容器詰緑茶飲料として、以下の発明が記載されているといえる。
<甲2-10D4’発明>
「緑茶葉45gをニーダーで抽出(80℃、10分)し、遠心分離機ならびにフィルターにて茶葉を分離して緑茶液を得、調合タンクにてこの緑茶液に酸化防止剤(L-アスコルビン酸)2g及び重曹(炭酸水素ナトリウム)2gを添加し、さらに、試料D4’を、試料D4’由来のアミノ酸量が最終飲料中に20ppmとなるように添加し、最後に純水を加え7Lに調整し調合液とし、この調合液を、UHT殺菌(130℃、1分)後、500mLのペットボトル容器に充填して容器詰緑茶飲料。」
また、甲2-10D4’発明の製造方法として、以下の発明が記載されているといえる。
<甲2-10D4’製法発明>
「緑茶葉45gをニーダーで抽出(80℃、10分)し、遠心分離機ならびにフィルターにて茶葉を分離して緑茶液を得、調合タンクにてこの緑茶液に酸化防止剤(L-アスコルビン酸)2g及び重曹(炭酸水素ナトリウム)2gを添加し、さらに、試料D4’を、試料D4’由来のアミノ酸量が最終飲料中に20ppmとなるように添加し、最後に純水を加え7Lに調整し調合液とし、この調合液を、UHT殺菌(130℃、1分)後、500mLのペットボトル容器に充填する容器詰緑茶飲料の製造方法。」
同様に試料A3’、試料E4を用いた容器詰緑茶飲料及びその製法発明が記載されている。
なお、特許異議申立人2は、特許異議申立書2の70~71頁において、甲2-10に記載された発明として、試料A3’、D4’、E4そのものを「緑茶飲料」と認定し、当該「緑茶飲料」を容器詰緑茶飲料とすることは容易である旨主張しているが、甲2-10における容器詰緑茶飲料の製造方法の具体例である実施例7(段落【0044】)からみて、甲2-10における試料は、通常の緑茶飲料にさらに添加される添加剤であると考えるのが妥当であるから、特許異議申立人2のように甲2-10に記載された発明を認定することはできない。
(2)本件発明1について
ア 甲2-10D4’発明との対比
本件発明1と甲2-10D4’発明を対比する。
甲2-10D4’発明における「テアニン」の含有量及び「カテキン類」の含有量は、試料D4’における含有量がそれぞれ133.3ppm、871.7ppmであったとしても、緑茶葉から抽出したそれぞれの成分が存在すること、前記緑茶葉からの緑茶液の量と純水をどの程度配合したかが不明であるため、全く算出することができない。
そうすると、本件発明1と甲2-10D4’発明とは
「容器詰緑茶飲料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-10-1>
「容器詰緑茶飲料」に関し、本件発明1は「エピガロカテキンガレートの含有量が90~1000ppmであり、L-テアニンの含有量が95~1000ppmであり、ノナナールの含有量が0.5~10ppbであり、カテキン類の含有量が1200ppm以下である」と特定するのに対し、甲2-10D4’発明ではそのような特定がない点
以下、相違点について検討する。
甲2-10D4’発明においての「エピガロカテキンガレート」、「L-テアニン」及び「ノナナール」の含有量について、甲2-10には全く記載されておらず、容器詰緑茶飲料である甲2-10D4’発明において、それぞれの値をさらに調整する動機もない。
そして、「エピガロカテキンガレート」、「L-テアニン」及び「ノナナール」の含有量が相違点2-10-1の範囲にある容器詰緑茶飲料に関する証拠は提示されていない。
そうすると、甲2-10D4’発明において、相違点2-10-1に係る発明特定事項を満たすようにすることは当業者においても容易になし得たことということはできない。
よって、本件発明1は、甲2-10D4’発明、すなわち、甲2-10に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 甲2-10A3’、E4発明との対比・判断
本件発明1と甲2-10A3’、E4発明とを対比すると、上記アと同様であるから、相違点2-10-1で相違し、相違点2-10-1の判断は上記アのとおりである。
よって、本件発明1は、甲2-10A3’、E4発明、すなわち、甲2-10に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明2ない5について
本件発明2ないし5は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明1と同様に、甲2-10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるとはいえない。
(4)本件発明7について
本件発明7と甲2-10D4’、A3’、E4製法発明とを対比すると、上記(2)アと同様であるから、本件発明7と1D4’、A3’、E4製法発明とは、上記(2)アにおける相違点2-10-1で相違する。
そして、相違点2-10-1についての判断は、上記(2)アのとおりである。
よって、本件発明7は、甲2-10D4’、A3’、E4製法発明、すなわち、甲2-10に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件発明8について
本件発明8と甲2-10D4’、A3’、E4製法発明とを対比すると、上記(2)アと同様であるから、本件発明8と甲2-10D4’、A3’、E4製法発明とは、上記(2)アにおける相違点2-10-1に加えて下記の相違点2-10-2で相違する。
<相違点2-10-2>
本件発明8は、「容器詰緑茶飲料を常温保存した際の劣化臭を抑制する」ものであるのに対し、甲2-10D4’、A3’、E4製法発明は、この点を特定しない点
以下、相違点について検討する。
相違点2-10-1の判断は、上記(2)アのとおりである。
次に、相違点1-10-2について検討する。
まず、上記相違点1-10-1の判断のとおり、本件発明7の方法と甲2-10D4’、A3’、E4製法発明の方法が同じであるとはいえない。そして、甲2-10には、高濃度のエピガロカテキンガレートを含有する容器詰緑茶飲料において常温保存した場合の劣化臭を低減できることに関する記載はなく、その他の証拠にも記載されていない。
してみれば、相違点1-10-2についても、当業者が容易に想到し得たものということはできない。
よって、本件発明8は、甲2-10D4’、A3’、E4製法発明、すなわち、甲2-10に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(6)まとめ
よって、申立理由2-3には理由がない。
4 申立理由1-2、申立理由2-4(サポート要件)について
(1)判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)サポート要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の【0002】ないし【0007】によると、本件発明1ないし8が解決しようとする課題は、「常温で長時間保管した場合にも香味劣化が抑制された、高濃度のEGCgを含有する容器詰緑茶飲料を提供すること」である。
他方、本件特許の発明の詳細な説明の【0008】及び【0009】には、「本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討した結果、L-テアニンがその目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、これに限定されるものではないが、以下の態様を包含する。
[1] エピガロカテキンガレートの含有量が90~1000ppmであり、L-テアニンの含有量が95~1000ppmであり、ノナナールの含有量が0.5~10ppbである容器詰緑茶飲料。
[2] カテキン類の含有量が1200ppm以下である、請求項1に記載の飲料。
【発明の効果】
本発明によれば、高濃度のEGCgを含有する緑茶飲料を常温で長時間保管した場合に知覚される劣化臭を効果的にマスキングすることができる。これにより、高濃度のEGCgを含有するにも関わらず、良好な風味等を呈する容器詰緑茶飲料を提供することが可能となる。本発明は、製造において特殊な設備投資も必要とせず工業生産性に対するマイナス影響が極めて少ないという利点もある。」と記載されており、段落【0020】に「(テアニン)本発明においては、緑茶飲料に所定量のL-テアニンを含有させることによって緑茶飲料の長期間の保存に伴って生成される劣化臭をマスキングする。本発明に係る容器詰緑茶飲料中のL-テアニン含有量は95~1000ppm、好ましくは110~800ppm、より好ましくは120~600ppm、さらに好ましくは150~400ppmである。L-テアニンの添加方法は、特に制限されない。劣化臭を含む緑茶飲料に対してテアニンの精製品(粗精製品を含む)やテアニンを高濃度に含む茶葉等の抽出物や抹茶等の茶葉粉末を添加してもよいし、容器に充填する前の緑茶飲料の調合液に予め添加しておいてもよい。」と記載がある。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0028】~【0050】において、エピガロカテキンがレートの含有量が90~1000ppmである容器詰緑茶飲料において、L-テアニンの含有量が95~1000ppmの範囲内である実施例のものは常温で長時間保管した場合にも香味劣化が抑制されているのに対し、L-テアニンの含有量が所定範囲外のものでは課題が解決できないことが確認されている。
そうすると、当業者は、エピガロカテキンがレートの含有量が90~1000ppmである容器詰緑茶飲料において、L-テアニンの含有量が95~1000ppmの範囲内であるものは発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件発明1は、前記条件を満足しているものである。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
また、本件発明2ないし8についても、本件発明1と同様である。
特許異議申立人1及び2は、「ノナナール」の配合量等について縷々主張しているが、上記サポート要件の判断を左右するものではない。
よって、申立理由1-2、申立理由2-4は理由がない。
第5 むすび
上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-700374