特許異議申立
2025-700849
バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート及び化粧板
- 審判番号
- 2025-700849
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-116324
- 登録番号
- 7652743
- 請求日
- 2025年08月27日
- 審決日
- 2025年12月08日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人WisePlus
- 【異議申立人】上田 精一
- 審判長/審判官
- 審判長 有家 秀郎
- 審判官 土屋 真理子
- 審判官 澤田 真治
- 分類
- P1651.121-Y (B32B) / P1651.537-Y (B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第44条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7652743号発明「バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート及び化粧板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7652743号の請求項1~11に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7652743号(以下「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許についての出願は、令和4年7月21日にされた特許法第44条第1項の規定による特許出願であって、令和3年12月1日に出願した特願2021-195547号の一部を、令和4年7月21日に新たな特許出願(特願2022-116324号)としたものであって、令和7年3月18日に特許権の設定登録がされ、同月27日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~11に係る特許に対し、令和7年8月27日に特許異議申立人上田精一(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
なお、特許異議申立書の1頁に記載の「令和6年8月27日」は、「令和7年8月27日」の誤記と認める。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~11の特許に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明11」という。)は、それぞれ特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。なお、本件発明1の記号A~Gは分説するために当審にて付した。以下、「構成A」~「構成G」ということがある。
「【請求項1】
A バイオマス由来のポリエチレンを含み、第1面及び第2面を有する、基材シートと、
B 前記基材シートの第1面側に積層され、前記基材シートの第1面全体を被覆している、絵柄補助層と、
C 前記絵柄補助層の前記基材シートとは反対の面側に積層された、絵柄模様を構成する絵柄模様層と、
D 前記絵柄模様層の前記絵柄補助層とは反対の面側に積層された、透明性樹脂層と、
E 前記透明性樹脂層の前記絵柄模様層とは反対の面側に積層された、表面保護層と、を有し、
F 前記基材シートは、フェノール系酸化防止剤を含有する、
G バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート。
【請求項2】
前記基材シートは、更にリン系酸化防止剤を含有する、請求項1に記載のバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート。
【請求項3】
前記基材シートにおいて、前記フェノール系酸化防止剤と、前記リン系酸化防止剤との質量比は、1:1~1:2である、請求項2に記載のバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート。
【請求項4】
前記絵柄補助層は、厚みが1μm以上5μm以下である、請求項1~3の何れか1項に記載のバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート。
【請求項5】
前記絵柄補助層は、スムージング処理が施されている、請求項1~4の何れか1項に記載のバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート。
【請求項6】
前記基材シートの第2面側に積層され、前記基材シートの第2面全体を被覆している、裏面接着補助層を有する、請求項1~5の何れか1項に記載のバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート。
【請求項7】
前記裏面接着補助層は、硝化綿の含有量が5質量%以下である、請求項6に記載のバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート。
【請求項8】
前記透明性樹脂層は、厚みが40μm以上100μm以下である、請求項1~7の何れか1項に記載のバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート。
【請求項9】
前記透明性樹脂層は、オレフィン系樹脂からなる、請求項1~8の何れか1項に記載のバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート。
【請求項10】
前記基材シートは、バイオマス度が15%以上70%以下である、請求項1~9の何れか1項に記載のバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1項に記載のバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シートの前記基材シートの第2面側に被着材が積層された化粧板。」
第3 特許異議申立理由及び証拠方法
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、概ね以下の申立て理由を主張するとともに、証拠方法として以下に示す甲第1号証~甲第31号証(以下「甲1」等という。)を提出している。
(1)申立理由1(進歩性)
本件発明1~本件発明11は、甲第1号証に記載された発明、及び周知・慣用技術(例えば、甲第2号証~甲第28号証のいずれかに例示されたもの)に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、本件発明1~本件発明11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
(2)申立理由2(サポート要件)
本件発明1~本件発明11は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件発明1~本件発明11に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)証拠方法
甲1:特開2010-234766号公報
甲2:特開2020-84161号公報
甲3:特開2020-175673号公報
甲4:特開2020-152115号公報
甲5:特開2016-28161号公報
甲6:特開2019-199305号公報
甲7:特開2006-7728号公報
甲8:特開2008-213309号公報
甲9:特開2008-248050号公報
甲10:特開2017-80905号公報
甲11:特開2017-80906号公報
甲12:特開2017-80907号公報
甲13:特開2020-73330号公報
甲14:特開2013-86451号公報
甲15:大高明「特集 環境と包装 サトウキビから作られた植物由来ポリエチレンフィルム「Bipro-PE」」、包装技術49(10)(通号582)、社団法人日本包装技術協会、第685~689頁、2011年10月発行
甲16:特開2015-7255号公報
甲17:特開2000-226459号公報
甲18:特開2000-229345号公報
甲19:特開2011-131602号公報
甲20:特開2005-111688号公報
甲21:特開2008-24836号公報
甲22:特開2007-270005号公報
甲23:特開2009-102629号公報
甲24:特表2012-530813号公報
甲25:山口哲夫、福田加奈子「特集 エラストマー製品の寿命と信頼性 高分子材料の安定剤<熱安定剤>」、日本ゴム協会誌、第68巻第5号、日本ゴム協会、第318~326頁、1995年発行
甲26:特開平10-86500号公報
甲27:特開2001-232751号公報
甲28:特開2018-1540号公報
甲29:特開2005-97351号公報
甲30:特開2010-5879号公報
甲31:特開2015-74100号公報
第4 証拠に記載された事項
1 甲1について
(1)甲1の記載(下線は当審にて付した。以下同じ。)
「【0004】
ところで、近年、炭酸ガス排出量増加に伴う地球温暖化といった環境問題の観点から、石油を原料としない、上述のポリ乳酸系樹脂等の非石油系の樹脂が注目されている。すなわち、これらはバイオマスを利用したプラスチックであり、開発当初は生分解性樹脂として注目を集めたものが、最近では植物由来樹脂との観点から見直されている。植物由来の樹脂は、その樹脂中の炭素が、大気中の炭酸ガスを光合成によって固定化した炭素であり、その後焼却廃棄しても、炭酸ガスの総量を増加させるものではなく、いわゆる「カーボンニュートラル」な材料である。
このような植物由来の樹脂のうち、各種物性と量産化の可能性等を考慮すると上記ポリ乳酸樹脂が有望であり、ポリ乳酸樹脂又はポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物を用いた化粧シート等が提案されている(例えば、特許文献3~5参照)。」
「【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の化粧シートは、基材上に隠蔽層及び/又は絵柄層を積層し、その上に中間層を積層してなる化粧シートであって、基材がポリ乳酸樹脂からなり、中間層がポリオレフィン樹脂からなることを特徴とする。
本発明の化粧シートの典型的な構造を、図1を用いて説明する。図1は本発明の化粧シート1の一例を示す断面模式図である。図1に示す例では、基材2上に、隠蔽層3、絵柄層4、所望により隠蔽層3及び/又は絵柄層4の全面を被覆する接着層7a、中間層5、所望により中間層5の全面を被覆する接着層7b並びに所望により電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものからなる表面保護層6がこの順に積層されたものである。また、基材2の裏面には所望によりプライマー層8が積層される。
【0011】
本発明で用いられる基材2はポリ乳酸樹脂からなる。該ポリ乳酸樹脂は、トウモロコシやジャガイモ等の植物原料や植物性の食品廃棄物等から得たデンプンを発酵等の方法によって乳酸とし、該乳酸を重合して得られるものである。
本発明において使用されるポリ乳酸は、L-乳酸、D-乳酸又はDL-乳酸単位を主成分とする重合体又はこれらの重合体の混合物であり、乳酸の光学異性体を共重合したものであっても良い。すなわち、L-乳酸に対してD-乳酸を、D-乳酸に対してL-乳酸を共重合したものでも良い。また、該ポリ乳酸は、少量の共重合成分として他のヒドロキシカルボン酸等を含んでいても良い。
なお、本発明における基材2はポリ乳酸樹脂から本質的になり、他の樹脂を含まないものであるが、本発明の効果を阻害しない範囲で少量の他の樹脂が混入することを妨げるものではない。
また、ポリ乳酸樹脂には、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤等の各種の添加剤を加えることができる。」
「【0014】
本発明の化粧シートにおける基材2は、上記ポリ乳酸樹脂を、例えば溶融押出法によりフィルム状基材として製造することができる。該基材は延伸しても、また無延伸でも良い。延伸する場合は1軸延伸のもの及び2軸延伸のもののいずれも用いることができるが、通常は2軸延伸したものが、耐久性の観点から好ましい。すなわち、2軸延伸した基材は弾性が強まり、引張強度や伸度に優れる。更に、80~120℃程度で加熱処理(アニーリング)して耐熱性、耐熱収縮性を付与することもできる。また、2軸延伸した基材は、透明度も高い。なお、延伸倍率は2~4倍程度が好ましい。一方、無延伸の基材は塑性変形し易く成形性が良好である。
本発明で使用する基材2の厚さは、通常20~100μm程度であり、加工性等を考慮すると30~70μmの範囲が好ましい。
【0015】
また、該基材2には、隠蔽性を付与する目的で、顔料及び/又は染料を配合しても良い。顔料としては、無機顔料と有機顔料とに分類することができ、無機顔料としては、酸化チタン白、亜鉛華、鉛白、カーボンブラック、弁柄、朱、黄鉛、群青、コバルト青、コバルト紫、ジンククロメート等が挙げられる。有機顔料としては、フタロシアニン系、ジオキサジン系、アントラキノン系等の顔料が挙げられ、代表的なものとして、キナクリドン、ウォッチアングレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
また染料としては、天然染料と合成染料に分類することができ、天然染料としては、インジゴ(藍)等が代表される。合成染料としては、アゾ染料、インジゴイド染料、硫化染料、ニトロ染料、ニトロソ染料等が挙げられる。これらの顔料及び染料は、1種又は2種以上併用して使用することができ、耐光性に優れ、基材に隠蔽性を持たせるようにするためには、無機顔料が最適である。」
「【0017】
本発明の化粧シート1において、隠蔽層3を、絵柄層4に代えて、又は絵柄層4と共に基材2の上に設けることができる。
本発明における隠蔽層3は基材2の色を隠蔽する全面ベタ層であり、化粧シート1に意匠性を与える装飾層として機能する場合もある。
隠蔽層3は基材2上の表面の色を整えることで、基材2が着色している場合や色ムラがある場合に形成して、基材2の表面に意図した色彩を与えるものである。通常、不透明色で形成することが多いが、着色透明色で形成し、下地が持っている模様を活かす場合もある。基材2が白色であることを活かす場合や、基材2が適切に着色されている場合には隠蔽層3を積層しなくても良い。
隠蔽層3は、グラビアコート、バーコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーン等の公知の塗工方法、又はグラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷等の公知の印刷方法により形成される。」
「【0049】
実施例1
厚さ60μmの白色ポリ乳酸樹脂フィルムよりなる基材の表面に、ポリウレタン樹脂(重量平均分子量(Mw);55000、Tg;-30℃)に白色顔料としてチタニアをP/V比2.4となるように加え、硬化剤としてヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネートを加えたポリウレタン樹脂組成物を、4g/m2(乾燥質量、以下「ドライ」という)塗布することにより隠蔽層を形成した。この隠蔽層の上に、ウレタン系樹脂からなるインキを使用して木目模様の絵柄層をグラビア印刷した。
次に、透明ポリエステル系ウレタン樹脂を5g/m2(ドライ)塗布することにより接着層7aを形成した。この接着層7aの上に厚さ60μmの無延伸透明ポリプロピレン樹脂フィルムをドライラミネートし中間層を形成した。
次いで、中間層の上に、透明ポリエステル系ウレタン樹脂を5g/m2(ドライ)塗布することにより接着層7bを形成した後、この接着層7bの上に3官能アクリレートモノマーであるエチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリアクリレートを60質量部と6官能アクリレートモノマーであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを40質量部、平均粒子径5μmのシリカ粒子15質量部及びシリコーンアクリレートプレポリマー1質量部よりなる電子線硬化性樹脂組成物を5g/m2 でグラビアオフセットコータ法により塗工した。塗工後、加速電圧175kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させて、表面保護層を形成した。次いで、40℃で48時間の養生を行った。その後、得られた積層シートの基材の裏面にアクリル変性ウレタン樹脂からなるプライマー剤を3g/m2(ドライ)塗布することによりプライマー層を形成し、化粧シートを得た。
この化粧シートについて上記方法にて評価した。その結果を第1表に示す。」
(2)甲1発明
上記(1)から、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠とした箇所の段落番号を併記した。以下同様。
「トウモロコシやジャガイモ等の植物原料や植物性の食品廃棄物等から得たデンプンを発酵等の方法によって乳酸とし、該乳酸を重合して得られる植物由来の樹脂であるポリ乳酸樹脂からなる基材(【0004】、【0011】)であって、
基材は、白色であり、上記ポリ乳酸樹脂を、例えば溶融押出法によりフィルム状基材として製造することができ、顔料及び/又は染料を配合しても良く(【0014】,【0015】、【0017】)、
白色ポリ乳酸樹脂フィルムよりなる基材の表面に、ポリウレタン樹脂に白色顔料を加えたポリウレタン樹脂組成物を塗布することにより基材の色を隠蔽する全面ベタ層である隠蔽層を形成し、この隠蔽層の上に、木目模様の絵柄層をグラビア印刷し、次に、透明ポリエステル系ウレタン樹脂を塗布することにより接着層7aを形成し、この接着層7aの上に無延伸透明ポリプロピレン樹脂フィルムをドライラミネートし中間層を形成し、次いで、中間層の上に、透明ポリエステル系ウレタン樹脂を塗布することにより接着層7bを形成した後、この接着層7bの上に表面保護層を形成し、得られた積層シートの基材の裏面にプライマー層を形成した(【0017】、【0049】)
化粧シート。」
2 甲2について
(1)甲2の記載
「【背景技術】
【0002】
近年、環境への配慮の高まりから、化石燃料からの脱却のためバイオマスの利用が注目されており、これを原料としたバイオマスプラスチックの実用化が行われている。特に、需要量の多いポリエチレン系樹脂の製造にバイオマス由来の原料を用いて、化石燃料の使用量を削減することが望まれており、バイオマス由来のエチレンを含む重合体を原料としたポリオレフィン樹脂フィルムが知られている(例えば特許文献1および特許文献2)。
・・・」
「【発明を実施するための形態】
【0009】
<樹脂フィルム>
本発明の一態様に係る樹脂フィルムは、バイオマス由来のエチレンを主とするモノマーを重合してなるバイオマス由来のポリオレフィンと、ポリ乳酸系樹脂とを含む樹脂組成物から成形されてなる層を少なくとも1層備え、上記樹脂組成物におけるポリ乳酸系樹脂の含有量が1質量%以上である。
【0010】
上記の構成によれば、高い剛性を備えながら、高い手切れ性をも備える樹脂フィルムを得ることができる。また、バイオマス由来のポリオレフィンとポリ乳酸系樹脂とを併用することによって、樹脂フィルムのバイオマス度を高い水準で維持することができる。」
「【0013】
また、本発明の一態様に係る樹脂フィルムは、上記の構成によってもたらされる高い剛性と高い手切れ性とを活かし、例えば、容器や袋等の包装製品、化粧シートやトレー等のシート成形品、積層フィルム、光学フィルム、樹脂板、各種ラベル材料、および蓋材等として用いられる樹脂フィルム、ならびにスタンディングパウチ、およびラミネートチューブ等に用いられるシーラントフィルム等の各種用途に好適に使用することができ、特にスタンディングパウチ用シーラントフィルムとして好適に使用することができる。」
「【0022】
ポリ乳酸系樹脂は、樹脂組成物に主たる成分として含まれるポリオレフィンとの相溶性が低い。また、ポリ乳酸系樹脂は、融点が140℃~180℃程度である。このため、上述のバイオマス由来のポリオレフィンを好適に溶融混練することができる温度において、当該樹脂組成物中にポリ乳酸系樹脂を分散することができる。よって、樹脂組成物を用いることで、バイオマス由来のポリオレフィンを主たる成分とする連続相とポリ乳酸系樹脂を主たる成分とする分散相とを備えた層を形成することができる。また、ポリ乳酸系樹脂は、ポリオレフィンよりも硬く、脆さを有しているため、例えば、人の手によってせん断応力を加えたときに、バイオマス由来のポリオレフィンから構成される連続相とポリ乳酸系樹脂から構成される分散相との間に形成された界面に好適に力を集中させることができ、これをきっかけとして樹脂フィルムに好適な手切れ性を付与することができる。また、手切れ性を高めることが可能でありながら、樹脂フィルムを構成する少なくとも1つのポリオレフィンの層(連続相)にポリ乳酸系樹脂を分散することによって、樹脂フィルムにポリオレフィンからなる樹脂フィルムよりも高い剛性(言い換えれば、変形し難さ)を付与することができる。さらには、樹脂フィルムはその適度な剛性によって当該樹脂フィルムを曲げるように加わる力に抗することができるため、例えば、スタンディングパウチ用のシーラントフィルムとして好適に用いることができる。
【0023】
樹脂組成物から形成される層に含まれるポリ乳酸系樹脂の含有量は、1重量%以上であり、15重量%以下であることが好ましく、11重量%以下であることがより好ましい。樹脂組成物から形成される層に含まれるポリ乳酸系樹脂の含有量が、1重量%以上であれば当該層を備えている樹脂フィルムの剛性を高めつつ、手切れ性を付与することができる。なお、市販品には、ネイチャーワークス社製やユニチカ社製等のポリ乳酸系樹脂を用いることができる。」
(2)甲2に記載された技術事項
上記アから、甲2には、以下の技術事項(以下「甲2記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「バイオマス由来のエチレンを主とするモノマーを重合してなるバイオマス由来のポリオレフィンと、ポリ乳酸系樹脂とを含む樹脂組成物から成形されてなる層を少なくとも1層備え、上記樹脂組成物におけるポリ乳酸系樹脂の含有量が1質量%以上である樹脂フィルムにおいて(【0009】)、
ポリ乳酸系樹脂は、樹脂組成物に主たる成分として含まれるポリオレフィンとの相溶性が低く(【0022】)、
ポリ乳酸系樹脂の含有量は、1重量%以上であり、15重量%以下であることが好ましく、11重量%以下であることがより好ましく(【0023】)、
バイオマス由来のポリオレフィンとポリ乳酸系樹脂とを併用することによって、樹脂フィルムのバイオマス度を高い水準で維持することができること(【0010】)。」
3 甲3~甲6について
摘記は省略するが、甲3~甲6には、化粧シートとして使用される積層フィルムの1層を構成する樹脂フィルムを、化石燃料由来のポリエチレンの代替としてバイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂組成物を用いて形成することが記載されている。
4 甲7~甲9について
摘記は省略するが、甲7~甲9には、化粧シートの耐久性を向上させるために、天然物に由来するポリ乳酸系樹脂から形成された基材にフェノール系酸化防止剤を含有させることが記載されている。
5 甲10~甲14について
摘記は省略するが、甲10~甲14には、化粧シートの耐候性を向上させるために、ポリエチレン又はポリプロピレンから形成された基材にフェノール系酸化防止剤を含有させることが記載されている。
6 甲15について
甲15には、「ラミネート用シーラントフィルム用途であり,高度な製品品質が求められる日本市場において不可欠であるフィッシュアイレベルについては,シーラントフィルム用途における当社の標準的な品質基準をクリアーしており,Bipro-PEは一般的なラミネート用シーラントフィルムとして使用できる製品品質を有することが確認されている。標準的な品質基準よりも細かなフィッシュアイレベルで見た場合,バイオマス度が高まる,つまり主成分である植物由来ポリエチレンの含有比率が大きくなる程,フィッシュアイ数が多くなる傾向が確認されており,今後の課題であると認識している。」(688頁右欄8行~21行)と記載されている。
7 甲16~甲19について
摘記は省略するが、甲16~甲19には、フィルムにフィッシュアイが存在すると、印刷にあたり色抜け、白抜け、印刷抜けが生じることが記載されている。
8 甲20~甲23について
摘記は省略するが、甲20~甲23には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂フィルムにフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤を含ませることによって、樹脂の安定性を高めると共に、フィッシュアイの発生を抑制可能であること、甲21~甲23には、フィッシュアイを抑制可能なポリプロピレン系樹脂フィルムにおいて、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤を併せて用いることが記載されている。
9 甲24について
甲24の記載
「【背景技術】
【0003】
有機ホスファイトは、ポリオレフィンなどのポリマー樹脂及びエラストマーのための二次酸化防止剤として当該技術分野において公知である。酸化防止剤として、これらのホスファイトは、ホスフェートに酸化されて、ポリマーの酸化を防止する。このようなホスファイトの例は、H.Zweifel(編)、Plastics Additives Handbook、第5版、Hanser Publishers、Munich 2000年に開示されている。大部分のホスファイトにとって1つの共通の問題は、保存又は取扱い中に、たとえ微量でも、水分又は水への曝露により好ましくない加水分解を受けやすいことである。初期に、ホスファイトの加水分解は、酸素又はヒドロペルオキシドと直接反応する良好な還元剤である酸性P-OH及びPH=Oのプロトンを生成する。しかし、加水分解がこの初期段階を過ぎて継続する場合、酸化生成物の形成を大きく促進させるより強い酸が形成される。さらに、重合触媒の残渣から生じる不純物由来の他の酸が、ホスファイトの加水分解をさらに触媒することもある。これらの酸化生成物は、ホスファイト安定剤の酸化防止剤として機能する全体的能力を減少させる。水への曝露の結果として、加水分解されたホスファイトは、処理装置の腐食につながる粒の多い、ねばねばした塊になる。」
10 甲25について
甲25には、「・・・またリン系酸化防止剤の欠点である耐加水分解性が改良されており,・・・」(319頁左欄11行~13行)、「リン酸化防止剤は加水分解すると,亜リン酸などの酸を生成することから加工機を腐食する他・・・」(319頁右欄3行~5行)と記載されている。
11 甲26~甲28について
摘記は省略するが、甲26~甲28には、ベタ印刷層などのグラビア印刷された層に対し、必要に応じて平滑化のためのスムージング処理を施すことが記載されている。
12 甲29について
甲29の記載
「【0122】
最内層重合体(IIb-A)を与える単量体混合物を、あらかじめ水および界面活性剤と混合して調製した乳化液を反応器に供給し、重合させることにより、特にアセトン中に分散させた際に、その分散液中に存在する直径55μm以上の粒子の数が多層構造重合体100gあたり0~50個である多層構造重合体を容易に得ることができる。こうして得られた多層構造重合体を原料に用いたフィルムは、フィルム中のフィッシュアイ数が少ないという特性を有し、特に印刷抜けが発生しやすい印圧の低い淡色の木目柄やメタリック調、漆黒調等のベタ刷りのグラビア印刷を施した場合でも、印刷抜けが少なく、高いレベルでの印刷性を有するため、好ましい。」
13 甲30について
甲30の記載
「【0091】
〔印刷性試験〕
得られたフィルムを30cm×25cmに5枚切出し、アクリル樹脂層(B)が積層されたアクリル樹脂層(A)の一方の面と反対の他方の面にそれぞれ20cm×15cmの範囲で絵柄(黒ベタ画像)をスクリーン印刷し、印刷抜け等の欠陥の個数を目視にて測定した。」
14 甲31について
甲31の記載
「【0055】
(7)印刷適性
積層フィルムに白インクをグラビアコーターで2~3μmの厚みになるよう塗布し、白色の積層フィルムを得た。次に該積層フィルムを市販されている昇華型感熱転写プリンター及び、対応するリボンを用いて50mm×50mmの範囲に黒ベタ印刷を行い、目視にて次の基準で評価した。
○:印刷ヌケはなく良好。
△:かすかに印刷ヌケが確認できた。
×:容易に印刷ヌケが確認できた。」
第5 当審の判断
1 申立理由1(進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)構成Aについて
甲1発明の「植物由来」であることは、本件発明1の「バイオマス由来」であることに相当し、甲1発明の「ポリ乳酸樹脂」と本件発明1の「ポリエチレン」は「樹脂」である点で共通する。
そして、甲1発明の「基材」は、「植物由来の樹脂であるポリ乳酸樹脂からなる基材」であって、「基材は、」「上記ポリ乳酸樹脂を、例えば溶融押出法によりフィルム状基材として製造」しており、「フィルム状基材として製造することができ」ることを踏まえると、甲1発明の「基材の表面」、「基材の裏面」、「基材」は、それぞれ本件発明1の「第1面」、「第2面」、「基材シート」に相当する。
そうすると、本件発明1の構成Aと甲1発明とは「バイオマス由来の樹脂を含み、第1面及び第2面を有する、基材シート」である点で共通する。
(イ)構成Bについて
甲1発明は、「白色ポリ乳酸樹脂フィルムよりなる基材の表面に、ポリウレタン樹脂に白色顔料を加えたポリウレタン樹脂組成物を塗布することにより基材の色を隠蔽する全面ベタ層である隠蔽層を形成し」ており、「隠蔽層」が「基材の色を隠蔽する全面ベタ層である」ことを踏まえると、「基材の表面」の全体を隠蔽しており、「隠蔽層」が「基材」に積層されていることは明らかである。
そうすると、甲1発明の「基材の表面に」「隠蔽層を形成」すること、「基材の表面に」「基材の色を隠蔽する全面ベタ層である隠蔽層を形成」すること、「隠蔽層」は、それぞれ本件発明1の(絵柄補助層が)「前記基材シートの第1面側に積層され」ること、(絵柄補助層が)「前記基材シートの第1面全体を被覆している」こと、「絵柄補助層」に相当する。
よって、甲1発明は本件発明1の構成Bに相当する構成を有する。
(ウ)構成Cについて
甲1発明は、「隠蔽層の上に、木目模様の絵柄層をグラビア印刷し」ており、グラビア印刷によって絵柄層が隠蔽層の上に積層されていることは明らかである。
また、甲1発明では、「基材の表面に」「隠蔽層を形成し、」その「隠蔽層の上に、」「絵柄層をグラビア印刷し」ており、を基準とすると、「絵柄層」は「基材」(基材シート)と反対の側に積層されている。
そうすると、甲1発明の「隠蔽層の上に」「グラビア印刷」すること、「木目模様の絵柄層」は、それぞれ本件発明1の「前記絵柄補助層の前記基材シートとは反対の面側に積層され」ること、「絵柄模様を構成する絵柄模様層」に相当する。
よって、甲1発明は本件発明1の構成Cに相当する構成を有する。
(エ)構成Dについて
甲1発明は、「絵柄層をグラビア印刷し、次に、透明ポリエステル系ウレタン樹脂を塗布することにより接着層7aを形成し、この接着層7aの上に無延伸透明ポリプロピレン樹脂フィルムをドライラミネートし中間層を形成し」ており、「接着層7aの上に無延伸透明ポリプロピレン樹脂フィルムをドライラミネート」することによって「中間層」が「絵柄層」の上側に積層されていることは明らかである。
また、甲1発明では、「絵柄層をグラビア印刷し、次に、透明ポリエステル系ウレタン樹脂を塗布することにより接着層7aを形成し、この接着層7aの上に無延伸透明ポリプロピレン樹脂フィルムをドライラミネートし中間層を形成し」ており、上記(ウ)の検討を踏まえると、「隠蔽層」(絵柄補助層)の上側に「絵柄層」(絵柄模様層)が積層されているから、「絵柄層」(絵柄模様層)を基準とすると、「中間層」は「隠蔽層」(絵柄補助層)と反対の側に積層されている。
そうすると、甲1発明の「隠蔽層の上に、木目模様の絵柄層をグラビア印刷し、次に、透明ポリエステル系ウレタン樹脂を塗布することにより接着層7aを形成し、この接着層7aの上に」「形成」すること、「無延伸透明ポリプロピレン樹脂フィルムをドライラミネートし」た「中間層」は、それぞれ本件発明1の(透明性樹脂層が)「前記絵柄模様層の前記絵柄補助層とは反対の面側に積層され」ること、「透明性樹脂層」に相当する。
よって、甲1発明は本件発明1の構成Dに相当する構成を有する。
(オ)構成Eについて
甲1発明は、「木目模様の絵柄層をグラビア印刷し、次に、透明ポリエステル系ウレタン樹脂を塗布することにより接着層7aを形成し、この接着層7aの上に無延伸透明ポリプロピレン樹脂フィルムをドライラミネートし中間層を形成し、次いで、中間層の上に、透明ポリエステル系ウレタン樹脂を塗布することにより接着層7bを形成した後、この接着層7bの上に表面保護層を形成し」ており、「中間層の上に、透明ポリエステル系ウレタン樹脂を塗布することにより接着層7bを形成した後、この接着層7bの上に表面保護層を形成」することによって「表面保護層」が「中間層」の上に積層されていることは明らかである。
また、甲1発明では、「木目模様の絵柄層をグラビア印刷し、次に、透明ポリエステル系ウレタン樹脂を塗布することにより接着層7aを形成し、この接着層7aの上に」「中間層を形成し、次いで、中間層の上に、透明ポリエステル系ウレタン樹脂を塗布することにより接着層7bを形成した後、この接着層7bの上に表面保護層を形成」しており、「中間層」(透明性樹脂層)を基準とすると、「表面保護層」は「絵柄層」(絵柄模様層)と反対の側に積層されている。
そうすると、甲1発明の「隠蔽層の上に、木目模様の絵柄層をグラビア印刷し、次に、透明ポリエステル系ウレタン樹脂を塗布することにより接着層7aを形成し、この接着層7aの上に無延伸透明ポリプロピレン樹脂フィルムをドライラミネートし中間層を形成し、次いで、中間層の上に、透明ポリエステル系ウレタン樹脂を塗布することにより接着層7bを形成した後、この接着層7bの上に表面保護層を形成」すること、「表面保護層」は、それぞれ本件発明1の(表面保護層が)「前記透明性樹脂層の前記絵柄模様層とは反対の面側に積層され」ること、「表面保護層」に相当する。
よって、甲1発明は本件発明1の構成Eに相当する構成を有する。
(カ)構成Gについて
甲1発明は、「植物由来の樹脂であるポリ乳酸樹脂からなる基材」であって、「白色ポリ乳酸樹脂フィルムよりなる基材の表面に、」「隠蔽層」、「絵柄層」、「接着層7a」、「中間層」、「接着層7b」、「表面保護層」を形成し、「裏面にプライマー層を形成した化粧シート」であって、上記(ア)の検討を踏まえると、本件発明1と甲1発明とは「基材シート」が「バイオマス由来の樹脂を含」んでいる点で共通し、甲1発明の「化粧シート」は、本件発明1の「化粧シート」に相当する。
そして、甲1発明において「化粧シート」(化粧シート)を構成する「基材」(基材シート)が「植物由来の樹脂であるポリ乳酸樹脂」(バイオマス由来の樹脂)からなっているということは、すなわち、「化粧シート」に「植物由来の樹脂であるポリ乳酸樹脂」(バイオマス由来の樹脂)が使用されているといえる。
よって、本件発明1と甲1発明とは「バイオマス由来の樹脂が使用された化粧シート」である点で共通する。
上記(ア)~(カ)をふまえると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「A’バイオマス由来の樹脂を含み、第1面及び第2面を有する、基材シートと、
B 前記基材シートの第1面側に積層され、前記基材シートの第1面全体を被覆している、絵柄補助層と、
C 前記絵柄補助層の前記基材シートとは反対の面側に積層された、絵柄模様を構成する絵柄模様層と、
D 前記絵柄模様層の前記絵柄補助層とは反対の面側に積層された、透明性樹脂層と、
E 前記透明性樹脂層の前記絵柄模様層とは反対の面側に積層された、表面保護層と、を有する、
G’バイオマス由来の樹脂が使用された化粧シート。」
<相違点>(構成A、構成F及び構成G)
本件発明1では、「バイオマス由来のポリエチレンを含」んでおり、「フェノール系酸化防止剤を含有」しているのに対して、
甲1発明では、「ポリ乳酸樹脂からな」っており、フェノール系酸化防止剤を含有しているか否かが不明な点。
イ 判断
(ア)本件発明1の技術的意義
本件特許明細書の【0005】~【0011】によれば、本件発明1は、環境負荷が少ない素材として、再生可能な生物由来の資源を原材料としたバイオマス由来のポリエチレンフィルムは、石油由来のポリエチレンフィルムと比較して不純物が多いために、フィッシュアイと呼ばれる不純物等の混入による欠陥が発生しやすく、化粧シートの基材として使用すると、フィッシュアイの影響により絵柄層等に施した絵柄模様の色抜けが発生し、それが外観不良となり化粧シートとしての役割を果たさないため、酸化防止剤を含有させることにより、フィッシュアイの影響を抑制できるものの、バイオマス由来のポリエチレンにリン系酸化防止剤を単独で含有させた場合には、フィッシュアイの影響は抑制されるが、これを化粧シートの基材シートとして用いると、化粧シートの耐久性が低下することを課題とするものである。
そして、本件発明1の技術的意義は、「基材シート」を「バイオマス由来のポリエチレン」を含むものとし、さらに「酸化防止剤」として「フェノール系」のものを含有させることで、フィッシュアイによる絵柄模様の色抜けを抑制することができ、かつ、耐久性にも優れるようにすることであると認められる。
そうすると、上記相違点に係る本件発明1の構成は、上述した本件発明1の技術的意義に密接に関係する構成であるといえる。
(イ)相違点について
上記相違点について検討する。
a 上記「第4 2(2)」の甲2記載の技術事項では、「化粧シートとして用いられる樹脂フィルム」において、バイオマス由来のエチレンを主とするモノマーを重合してなるバイオマス由来のポリオレフィンとポリ乳酸系樹脂を併用している。
ここで、甲2記載の技術事項における「バイオマス由来のエチレンを主とするモノマーを重合してなるバイオマス由来のポリオレフィン」は、上記相違点に係る本件発明1の構成のうち「バイオマス由来のポリエチレン」に相当する。また、甲2記載の技術事項の樹脂フィルムは化粧シートとして用いられるものである。
しかしながら、甲2記載の技術事項の樹脂フィルムは、ポリオレフィンが樹脂組成物の主たる成分であって、ポリ乳酸系樹脂の含有量は、1重量%以上であり、15重量%以下であることが好ましく、11重量%以下であるものである。
そうすると、「植物由来の樹脂であるポリ乳酸樹脂からなる基材」を用いることを主眼とする甲1発明において、甲2記載の技術事項の「バイオマス由来のエチレンを主とするモノマーを重合してなるバイオマス由来のポリオレフィン」を適用して、「基材」中の「植物由来の樹脂であるポリ乳酸樹脂」の含有量を減少させて、ポリオレフィンを樹脂組成物の主たる成分とする動機はない。また、甲1発明において「基材」に用いる樹脂について、甲2記載の技術事項の「バイオマス由来のエチレンを主とするモノマーを重合してなるバイオマス由来のポリオレフィンと、ポリ乳酸系樹脂とを含む樹脂組成物」に置換する動機はない。
そして、甲1発明に甲2記載の技術事項を適用して、「基材」に「バイオマス由来のエチレンを主とするモノマーを重合してなるバイオマス由来のポリオレフィン」を含ませた上で、さらに「酸化防止剤」として「フェノール系」のものを選択して追加することが示唆されていたとはいえず、そのような変更を重ねる動機付けがあったとはいえない。
b 上記「第4 3」の甲3~甲6で示される「化粧シートとして使用される積層フィルムの1層を構成する樹脂フィルムを、化石燃料由来のポリエチレンの代替としてバイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂組成物を用いて形成すること」が周知技術(以下「周知技術1」という。)であったとしても、当該周知技術を甲1発明における「植物由来の樹脂であるポリ乳酸樹脂からなる基材」に加えることや、「植物由来の樹脂であるポリ乳酸樹脂からなる基材」と置換することについても動機がない。
また、仮に、甲1発明に上記周知技術1の「化石燃料由来のポリエチレンの代替としてバイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂組成物を用い」ることに格別の困難性がなく、それを当業者が容易になし得たとしても、さらに、「酸化防止剤」として「フェノール系」のものを選択して追加することが示唆されていたとはいえず、そのような変更を重ねる動機付けがあったとはいえない。
c 上記「第4 4」で示したように甲7~甲9には、「化粧シートの耐久性を向上させるために、天然物に由来するポリ乳酸系樹脂から形成された基材にフェノール系酸化防止剤を含有させること」、上記「第4 5」で示したように甲10~甲14には、「化粧シートの耐候性を向上させるために、ポリエチレン又はポリプロピレンから形成された基材にフェノール系酸化防止剤を含有させること」、上記「第4 6」で示したように甲15には、「ラミネート用シーラントフィルム用途であり,高度な製品品質が求められる日本市場において不可欠であるフィッシュアイレベルについては,シーラントフィルム用途における当社の標準的な品質基準をクリアーしており,Bipro-PEは一般的なラミネート用シーラントフィルムとして使用できる製品品質を有することが確認されている。標準的な品質基準よりも細かなフィッシュアイレベルで見た場合,バイオマス度が高まる,つまり主成分である植物由来ポリエチレンの含有比率が大きくなる程,フィッシュアイ数が多くなる傾向が確認されており,今後の課題であると認識している。」こと、上記「第4 7」で示したように甲16~甲19には、「フィルムにフィッシュアイが存在すると、印刷にあたり色抜け、白抜け、印刷抜けが生じること」、上記「第4 8」で示したように甲20~甲23には、「ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂フィルムにフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤を含ませることによって、樹脂の安定性を高めると共に、フィッシュアイの発生を抑制可能であること」、上記「第4 9」で示したように甲21~甲23には、「フィッシュアイを抑制可能なポリプロピレン系樹脂フィルムにおいて、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤を併せて用いること」、上記「第4 10」で示したように甲24には、「大部分のホスファイトにとって1つの共通の問題は、たとえ微量でも、水分又は水への曝露により好ましくない加水分解を受けやすいこと」、上記「第4 11」で示したように甲25には、「リン系酸化防止剤の欠点である耐加水分解性が改良されて」いること、及び、「リン酸化防止剤は加水分解すると,亜リン酸などの酸を生成することから加工機を腐食する」こと、上記「第4 12」で示したように甲26~甲28には、「ベタ印刷層などのグラビア印刷された層に対し、必要に応じて平滑化のためのスムージング処理を施すこと」が、それぞれ記載されている。
しかしながら、上記aで検討した甲2記載の技術事項、及び上記bで検討した周知技術1に加えて、さらに上記「第4 3」~「第4 12」の記載を考慮しても、甲1発明を出発点として、樹脂として「バイオマス由来のポリエチレン」を含むものとし、さらに「酸化防止剤」として「フェノール系」のものを選択して追加するという変更を重ねることが、記載あるいは示唆されていたとはいえない。
d そして、本件発明1は、基材シートを「バイオマス由来のポリエチレン」を含むものとし、かつ「酸化防止剤」として「フェノール系」のものを含有させることによって、バイオマス由来のポリエチレンを用いたとしても、フィッシュアイによる絵柄模様の色抜けを抑制することができ、かつ、耐久性にも優れるバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シートを提供することができるという効果を奏するものであり、上記相違点に係る構成により、上記(ア)で示した技術的意義を有するものである。
ウ 申立人の主張について
(ア)相違点の認定について
a 申立人の主張
申立人は申立書において、本件発明1と甲1発明とは、次の相違点1及び2で相違し、2つの相違点は分けて認定されるべき旨を主張している。
相違点1:甲1発明の化粧シートにおいて、基材を構成するバイオマス由来の樹脂がポリ乳酸であるのに対して、本件発明1の化粧シートにおいては、基材シートを構成するバイオマス由来の樹脂がポリエチレンであること。
相違点2:甲1発明の化粧シートにおいて、基材がフェノール系酸化防止剤を含有することは特定されていないのに対して、本件発明1の化粧シートにおいては、基材がフェノール系酸化防止剤を含有すること。
b 主張についての検討
上記イ(ア)のとおり、本件発明1は、バイオマス由来のポリエチレンフィルムにリン系でなくフェノール系の酸化防止剤を含有させることに技術的意義があり、それによってフィッシュアイによる絵柄模様の色抜けを抑制することができ、かつ、耐久性にも優れるという効果を奏するものである。
そして、相違点に係る本件発明1の構成は、本件発明1の技術的意義に係る一体の構成であるから、申立人が主張する上記相違点1及び相違点2のように相違点を分けるべきではない。
(イ)相違点の想到容易性について
a 申立人は上記相違点1について、次の主張をしている(申立人が付した下線は省略した。以下同様。)。
「(4-2-A-iv)
甲1発明と本件発明1との上記相違点1に関して、甲第2号証ないし甲第6号証には以下の記載がある。
・・・
従って、甲第1号証の記載に接する当業者にとって、甲1発明の化粧シートの基材である「植物由来の白色ポリ乳酸樹脂フィルムよりなる基材を、ポリ乳酸樹脂以外の樹脂よりなる基材に置換することが格別困難であったと思考する余地はない。そのような改変は、従来技術を倣ったものにすぎないからである。
そして、上記周知・慣用技術1に示したとおり、化粧シートとして使用される積層フィルムの1層を構成する樹脂フィルムを、化石燃料由来のポリエチレンの代替としてバイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂組成物を用いて形成することは、本件特許の出願時には当業界において周知・慣用技術であったのだから、甲1発明から出発する当業者にとって、甲第1号証自体に記載された上記技術事項(i)及び(ii)に鑑み、上記相違点1を克服して、化粧シートの基材を構成するバイオマス由来の樹脂を、バイオマス由来のポリ乳酸から、同じくバイオマス由来のポリエチレンに変更すること、すなわち、甲1発明の化粧シートの基材である「植物由来の白色ポリ乳酸樹脂フィルムよりなる基材」を、「バイオマス由来のポリエチレンを含み、第1面及び第2面を有する、基材シート」(発明特定事項A)に変更することは容易であったと考えられる。」(以下「申立人が主張する相違点1についての主張」という。申立書18頁14行~25頁5行)
b 申立人は上記相違点2について、次の主張をしている
「(4-2-A-vi)
甲1発明と本件発明1との上記相違点2に関して、甲第7号証ないし甲第9号証には以下の記載がある。
・・・
換言すれば、化粧シートの基材を形成する樹脂が、ポリ乳酸系樹脂であろうとあるいは、ポリ乳酸系樹脂以外の樹脂であるポリエチレンもしくはポリプロピレンなどのオレフィン系紺脂であろうと、これらの樹脂の種類に係わりなく、化粧シートの耐久性又は耐候性を向上させるために基材にフェノール系酸化防止剤を含有させることは、本件特許の出願時には当業界において周知・慣用技術であったと理解される。
・・・
甲1発明の化粧シートは、耐久性又は耐候性の向上を指向するものであり少なくとも、耐久性又は耐候性の低下は防止されるべきであることが把握される。従って、甲第1号証には、甲1発明の化粧シートの基材に、耐久性又は耐候性を向上させるための添加剤を含ませることについて、それを妨げる記載は見当たらない。
そして、上記周知・慣用技術2に示したとおり、化粧シートの耐久性又は耐候性を向上させるために、ポリ乳酸系樹脂から形成された基材にフェノール系酸化防止剤を含有させること、及び、ポリ乳酸系樹脂以外の樹脂であるポリエチレンもしくはポリプロピレンから形成された基材にフェノール系酸化防止剤を含有させることは、本件特許の出願時には当業界において周知・慣用技術であったのだから、甲1発明から出発する当業者にとって、甲1発明の化粧シートにおいて、化粧シートの耐久性又は耐候性を向上させるために上記相違点2を克服して、「植物由来の白色ポリ乳酸樹脂フィルムよりなる基材」にフェノール系酸化防止剤を含有させることは容易であったと考えられ、また、上記相違点1を克服した後の「バイオマス由来のポリエチレンを含み、第1面及び第2面を有する、基材シート」にフェノール系酸化防止剤を含有させることも同様に容易であったと考えられ、これを困難とする事由は存在しない。」(以下「申立人が主張する相違点2についての主張」という。申立書25頁6行~35頁12行)
c 申立人は課題について、次の主張をしている
「(4-2-A一ix)
ところで、本件特許明細書には、本件特許に係る発明の解決課題自体が、その出願当時において斬新なもの、ユニークなものであったことを強調する意図として、段落【0006】~【0007】にて、背景技術の問題点につき「本発明者らは、バイオマス由来のポリエチレンフィルムを建材用等の化粧シートに導入することに関して検討を重ねたところ、バイオマス由来のポリエチレンフィルムは石油由来のポリエチレンフィルムと比較して不純物が多いために、フィッシュアイと呼ばれる不純物等の混入による欠陥が発生しやすいことを見出した。フィッシュアイが存在する箇所は、それが存在しない箇所と比べて樹脂に対して密着性が低下する問題が生じる。そのため、バイオマス由来のポリエチレンフィルムを化粧シートの基材として使用すると、フィッシュアイの影響により絵柄層等に施した絵柄模様の色抜けが発生し、それが外観不良となり化粧シートとしての役割を果たさないという課題があることを見出した。」と記載されている。
また、本件特許発行前の拒絶査定不服審判に係る令和5年4月2日提出の審判請求書にても、審査での引用文献1~3に基づく進歩性主張のため、これらの引用文献には本件特許に係る発明の解決課題が記載されていないことを強調する観点から、『本願発明は、バイオマス由来のポリエチレンフィルムは、石油由来のポリエチレンフィルムと比較して不純物が多いために、フィッシュアイと呼ばれる不純物等の混入による欠陥が発生しやすいことを見出した。フィッシュアイが存在する箇所は、それが存在しない箇所と比べて樹脂に対して密着性が低下する問題が生じ、バイオマス由来のポリエチレンフィルムを化粧シートの基材として使用すると、フィッシュアイの影響により絵柄層等に流した絵柄模様の色抜けが発生し、それが外観不良となり化粧シートとしての役割を果たさないという課題について、・・・引用文献1に記載の発明では、バイオマス由来のポリエチレンを基材シートとして用いることにより生じる「絵柄模様の色抜けや、化粧シートの耐久性の低下」と・・・上記「絵柄模様の色抜けや、化粧シートの耐久性の低下」についても記載も示唆もされておりません。・・(中略)・・本願発明が解決する「基材シートとしてバイオマス由来のポリエチレンを用いることに起因する絵柄模様の色抜け」の課題が、「どのような材質の基材シートでも多かれ少なかれ生じ得るもの」とは明確に異なるためであり、上記課題を解決するためには、絵柄補助層(全面ベタ層)を有するだけ無く、基材シートがフェノール系酸化防止剤を含有する必要があります。・・・
しかし、本件特許明細書及び審判請求書にて、本件特許の出願人(現特許権者)が強調するところの本件特許に係る発明の解決課題は、以下に説明するとおり本件特許の出願日当時において当業者に知られていた課題であり、斬新なものではない。
・・・
このように、本件特許明細書及び審判請求書にて、本件特許の出願人(現特許権者)が強調するところの本件特許に係る発明の解決課題は、本件特許の出願日当時において当業者に知られていた課題であり、斬新なものではない。本件特許に先行する刊行物に、このような公知の課題が記載されていないとしても、その事実をもって本件特許に係る発明の進歩性の肯定に寄与することはない。」(以下「課題についての主張」という。申立書35頁13行~39頁6行)
d 申立人は効果について、次の主張をしている
「(4-2-A―xi)
・・・
そして、本件発明1による効果は、甲1発明から容易にも当該構成に想到することによつて当然に奏されるものであり、しかも当業者にとつて技術常識のとおりに予測可能なものにすぎず、格別優れたものであるとは到底いえない。
従って、本件発明1は、甲第1号証及び本件特許出願時の当業界の周知・慣用技術に基づいて容易に想到可能であり、進歩性を有しない。」(以下「効果についての主張」という。申立書43頁9行~19行)
(ウ)上記(イ)の申立人の主張についての検討
申立人が主張する本件発明1と甲1発明との相違点である相違点1及び相違点2については、上記(ア)のとおり分けて認定・判断すべきではなく併せて認定・判断すべきものである。
したがって、上記(イ)の申立人の主張のうち、申立人のいう相違点1及び相違点2について、それぞれ個別に想到容易であるとする主張は、採用することができない。
ここで、申立人は、申立人のいう相違点2に関し、「樹脂の種類に係わりなく、化粧シートの耐久性又は耐候性を向上させるために基材にフェノール系酸化防止剤を含有させることは、本件特許の出願時には当業界において周知・慣用技術であった」旨主張している。
しかしながら、「フェノール系酸化防止剤」自体が公知であって、各種の樹脂に使用されているからといって、バイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂について、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤を含むものを選択すべきことが示唆されていたとはいえないから、甲1発明を出発点として、樹脂に係る選択と酸化防止剤に係る選択とを重ねて、本件発明1の構成に至ることが、当業者にとって容易であったとはいえない。
上記(イ)における申立人の課題についての主張、及び効果についての主張を考慮しても、上記イの判断を変更すべき事情は見出せない。
よって、上記申立人の上記(イ)の主張は、いずれも採用できない。
(エ)申立人の主張についてのまとめ
よって、申立人の主張は、上記イの判断を左右するものではなく採用できない。
エ 小括
したがって、本件発明1は、甲1発明、甲2記載の技術事項及び甲3~甲28に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件発明2~11について
本件発明2~11は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(1)と同様の理由により、甲1発明、甲2記載の技術事項及び甲3~甲28に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)申立理由1(進歩性)についての結論
以上のとおりであるから、申立理由1はその理由がない。
2 申立理由2(サポート要件)について
(1)判断基準
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か、また、その記載がなくとも、当業者が出願時の技術常識に照らし、当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)判断
ア 解決しようとする課題
本件特許の発明の詳細な説明の【0005】~【0009】によれば、本件発明1~11の解決しようとする課題(以下「発明の課題」という。)は「石油由来のプラスチックよりも環境負荷が少ない素材として、バイオマス由来のポリエチレンフィルムを建材用等の化粧シートに導入すると石油由来のポリエチレンフィルムと比較して不純物が多いために、フィッシュアイと呼ばれる不純物等の混入による欠陥が発生しやすくフィッシュアイの影響により絵柄層等に施した絵柄模様の色抜けが発生し、それが外観不良となり化粧シートとしての役割を果たさないため、酸化防止剤を含有させることにより、フィッシュアイの影響を抑制できるものの、バイオマス由来のポリエチレンにリン系酸化防止剤を単独で含有させた場合には、フィッシュアイの影響は抑制されるが、これを化粧シートの基材シートとして用いると、化粧シートの耐久性が低下することを解決すること。」である。
イ 課題を解決すると認識されるか
本件発明1~11を特定する請求項1~11の記載は上記第2のとおりである。
そして、発明の詳細な説明の【0078】には、
「(実施例1)
バイオマス度が15%のバイオマス由来のポリエチレン[厚み80μmの着色ポリエチレンフィルム、フェノール系酸化防止剤(Irganox 1010、BASFジャパン株式会社製)を0.05質量%含む]を準備し、これを基材シートとした。
基材シートの一方の面側に、全体を被覆するように裏面接着補助層(エステル系ポリウレタン樹脂を53質量%含み、硝化綿を5質量%含む)を、凹版ロールを用いたグラビア印刷方式で有機溶剤を含むインキをベタ印刷することによって形成した。
基材シートのもう一方の面側に、全体を被覆するように、アクリル-ウレタン系樹脂を主成分とする厚さ2μmの絵柄補助層を、凹版ロールを用いたグラビア印刷方式で有機溶剤を含むインキをベタ印刷することによって形成した後、アクリル-ウレタン系樹脂を主成分とする厚さ2μmの絵柄模様層(木目模様)を、凹版ロールを用いたグラビア印刷方式で着色剤及び有機溶剤を含むインキを部分印刷することによって形成した。・・・」と、【0079】には、
「(実施例2)
バイオマス度が15%のバイオマス由来のポリエチレン[厚み80μmの着色ポリエチレンフィルム、フェノール系酸化防止剤(Irganox 1010、BASFジャパン株式会社製)を0.05質量%含み、リン系酸化防止剤(Irgafos 168、BASFジャパン株式会社製)を0.05質量%含む]を準備し、これを基材シートとした。
基材シートの一方の面側に、全体を被覆するように裏面接着補助層(エステル系ポリウレタン樹脂を53質量%含み、硝化綿を0質量%)を、凹版ロールを用いたグラビア印刷方式で有機溶剤を含むインキをベタ印刷することによって形成した。
基材シートのもう一方の面側に、全体を被覆するように、アクリル-ウレタン系樹脂を主成分とする厚さ2μmの絵柄補助層を、凹版ロールを用いたグラビア印刷方式で有機溶剤を含むインキをベタ印刷することによって形成した後、アクリル-ウレタン系樹脂を主成分とする厚さ2μmの絵柄模様層(木目模様)を、凹版ロールを用いたグラビア印刷方式で着色剤及び有機溶剤を含むインキを部分印刷することによって形成した。・・・」と、【0080】には、
「(実施例3)
バイオマス度が15%のバイオマス由来のポリエチレン[厚み80μmの着色ポリエチレンフィルム、フェノール系酸化防止剤(Irganox 1010、BASFジャパン株式会社製)を0.05質量%含む]を準備し、これを基材シートとした。
基材シートの一方の面側に、全体を被覆するように裏面接着補助層(エステル系ポリウレタン樹脂を53質量%含み、硝化綿を10質量%含む)を、凹版ロールを用いたグラビア印刷方式で有機溶剤を含むインキをベタ印刷することによって形成した。
基材シートのもう一方の面側に、全体を被覆するように、アクリル-ウレタン系樹脂を主成分とする厚さ2μmの絵柄補助層を、凹版ロールを用いたグラビア印刷方式で有機溶剤を含むインキをベタ印刷することによって形成した後、アクリル-ウレタン系樹脂を主成分とする厚さ2μmの絵柄模様層(木目模様)を、凹版ロールを用いたグラビア印刷方式で有機溶剤を含むインキをベタ印刷することによって形成した。・・・」と、【0081】には、
「(比較例1)
バイオマス度が15%のバイオマス由来のポリエチレン[厚み80μmの着色ポリエチレンフィルム、酸化防止剤を含まない]を準備し、これを基材シートとした。
基材シートの一方の面側に、全体を被覆するように裏面接着補助層(エステル系ポリウレタン樹脂を53質量%含み、硝化綿を5質量%含む)を、凹版ロールを用いたグラビア印刷方式で有機溶剤を含むインキをベタ印刷することによって形成した。
基材シートのもう一方の面側に、全体を被覆するように、アクリル-ウレタン系樹脂を主成分とする厚さ2μmの絵柄補助層を、凹版ロールを用いたグラビア印刷方式で有機溶剤を含むインキをベタ印刷することによって形成した後、アクリル-ウレタン系樹脂を主成分とする厚さ2μmの絵柄模様層(木目模様)を、凹版ロールを用いたグラビア印刷方式で有機溶剤を含むインキをベタ印刷することによって形成した。・・・」と、【0082】には、
「(比較例2)
バイオマス度が15%のバイオマス由来のポリエチレン[厚み80μmの着色ポリエチレンフィルム、リン系酸化防止剤(Irgafos 168、BASFジャパン株式会社製)を0.05質量%含む]を準備し、これを基材シートとした。
基材シートの一方の面側に、全体を被覆するように裏面接着補助層(エステル系ポリウレタン樹脂を53質量%含み、硝化綿を5質量%)を、凹版ロールを用いたグラビア印刷方式で有機溶剤を含むインキをベタ印刷することによって形成した。
基材シートのもう一方の面側に、全体を被覆するように、アクリル-ウレタン系樹脂を主成分とする厚さ2μmの絵柄補助層を、凹版ロールを用いたグラビア印刷方式で有機溶剤を含むインキをベタ印刷することによって形成した後、アクリル-ウレタン系樹脂を主成分とする厚さ2μmの絵柄模様層(木目模様)を、凹版ロールを用いたグラビア印刷方式で有機溶剤を含むインキをベタ印刷することによって形成した。・・・」と、【0086】には、
「
[図:0001431166000001.jpg]
」と、【0087】には、
「
[図:0001431166000002.jpg]
」と、【0088】には、
「実施例より、基材シートがフェノール系酸化防止剤を含有し、基材シートの第1面全体を被覆している、絵柄補助層を積層することにより、フィッシュアイによる絵柄模様の色抜けを抑制することができ、かつ、耐久性にも優れることが確認された。
また、実施例1と実施例3との比較から、裏面接着補助層の硝化綿の含有量が5質量%以下であることにより、化粧シートの変色を抑制できることが確認された。
一方で、比較例1では、基材シートが酸化防止剤を含まないので、フィッシュアイによる絵柄模様の色抜けが発生し、基材シートの劣化により耐久性が低下した。
また、比較例2では、基材シートに含まれるリン系酸化防止剤が加水分解により酸化防止剤の機能が失活したため耐久性が低下した。」と記載されている。
上記記載によれば、絵柄補助層を有し、バイオマス由来のポリエチレンを含む実施例1~3、比較例1及び2において、フェノール系酸化防止剤を含む実施例1~3と、フェノール系酸化防止剤を含まない比較例1及び2を評価した結果、フェノール系酸化防止剤を含む実施例1~3は色抜けが確認されず、耐久性はクラックの発生がなかったものの、フェノール系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤ともに含んでいない比較例1は、色抜けが確認され、耐久性でもクラックの発生があったこと、リン系酸化防止剤のみ含んでいる比較例2では、色抜けは確認されないものの、クラックの発生があることが理解でき、基材シートが、バイオマス由来のポリエチレンを含み、フェノール系酸化防止剤を含有することによって発明の課題を解決していることが把握できる。
したがって、本件発明1~11は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
よって、本件発明1~11に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。
(3)申立人の主張について
申立人は、概略、次の主張をしている。
ア 申立人は、本件発明が解決しようとする課題は、「バイオマス由来のポリスチレンを用いたとしても、フィッシュアイによる絵柄模様の色抜けを抑制することができ、かつ、耐久性にも優れるバイオマス由来のポリスチレンが使用された化粧シートを提供すること。」である旨を主張している(申立書64頁8行~66頁24行)。
イ 申立人は、フィルムでのフィッシュアイの存在は印刷の色抜け、白抜け、印刷抜けの発生につながるという知見は技術常識であり、本件発明1の「絵柄補助層」に相当する「ベタ刷り」の印刷(あるいは「黒ベタ画像」による印刷または「黒ベタ印刷」)を施した際に、特に印刷抜けが発生しやすいという知見は技術常識であることを踏まえれば、絵柄補助層が基材シートの第1面側に積層され、ベタ印刷により第1面全体を被覆していることで、フィッシュアイの存在が漏れなく色抜けの発生につながり、色抜けが助長されることになるのは明らかで、本件発明1に係る化粧シートのように絵柄補助層を備えることにより、基材シートの第1面の全体にインクが乗ることになり、上記のような重なり領域に限らず、基材シートの第1面の全体に渡って色抜けの発生可能性が広がることになるため、本件発明の化粧シートの絵柄補助層は、基材シートのフィッシュアイによる欠陥を低減することができず、解決課題の解決に寄与するものではない旨を主張している。
そのことを根拠に、申立人は、本件発明は上記アの課題を解決できると認識される範囲のものではない旨を主張している(申立書67頁4行~25行、70頁8行~17行)。
ウ 申立人は、また、明細書における実施例及び比較例の記載、並びに評価結果の記載を考慮しても、目視評価であれば、例えば、複数回の観察結果あるいは複数の観察者による観察結果の平均とするか、所定の画像取得方法に従う観察画像中の色抜け箇所の個数による客観的な段階評価であるべきところ、本件の目視評価は、極めて曖昧なものであり、絵柄模様の色抜けの評価が開示されているといえず、本件特許明細書の実施例及び比較例の全体的な記載において、当業者が理解可能なレベルで、上記解決課題である絵柄模様の色抜けについて、本件発明1による課題の解決が実証されているとは到底いえないため、本件発明が課題を解決するとは理解されない旨を主張している(申立書73頁4行~9行、74頁7行~10行)。
(4)主張についての検討
上記主張について検討する。
ア 課題について
本件発明1~11の解決しようとする課題は、上記(2)アのとおり認定されるべきである。
よって、上記(3)アの主張によって上記(2)の判断が左右されるものではなく上記アの主張は採用できない。
イ 課題を解決すると認識できるかについて
認定した課題は、上記(2)イの判断のとおり、本件発明1の構成により解決されると理解される。
そして、ベタ印刷する絵柄補助層について、絵柄補助層自体に印刷抜けが発生し得るということをもって、課題が解決されない旨をいう申立人の上記(3)イの主張は採用できない。
ウ 本件明細書における比較評価者について
本件発明について、発明の課題を解決すると認識できることについては、上記(2)イに判断したとおりである。
また、本件明細書に記載された目視による評価は複数の観察結果や複数の観察者によるものではないとしても、特段、特殊な条件下で行ったものとも認められず、基材シートが、バイオマス由来のポリエチレンを含み、フェノール系酸化防止剤を含有することによる影響を評価したものであるから、本件発明1による課顕の解決が実証されていないはいえず、実施例及び比較評価の観点から上記(2)イの判断を変更すべき事情はない。
よって、上記(3)ウの主張によって上記(2)の判断が左右されるものではなく上記(3)ウの主張は採用できない。
以上のとおりであるから、申立人の主張には理由がない。
(4)小括
以上のとおりであるから、申立理由2はその理由がない。
第5 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700849