審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2022-700632

舶用ディーゼルエンジン

審判番号
2022-700632
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-040648
登録番号
7014518
請求日
2022年07月13日
審決日
2024年09月26日
公報発行日
2025年02月28日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】三菱重工業株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
  • 【権利者】尾道造船株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
  • 【権利者】株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
  • 【権利者代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
  • 【異議申立人】田代 吾郎
審判長/審判官
  • 審判長 山本 信平
  • 審判官 河端 賢
  • 審判官 青木 良憲
分類
P1651.121-ZAA(B63H)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第7項、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7014518号発明「舶用ディーゼルエンジン」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7014518号の特許請求の範囲を令和5年3月31日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし4〕について訂正することを認める。 特許第7014518号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7014518号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成29年3月3日の出願であり、令和4年1月24日にその特許権の設定登録がされ、令和4年2月1日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和4年7月13日 : 特許異議申立人 田代 吾郎(以下、「申立 人」という。)による請求項1ないし4に係 る特許に対する特許異議の申立て 令和5年1月26日付け : 取消理由通知書 令和5年3月31日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書(以下 、「本件訂正請求」という。)の提出 令和5年5月17日 : 申立人による意見書の提出 令和5年7月27日付け : 取消理由通知書(決定の予告) 令和5年9月29日 : 特許権者による意見書の提出 第2 本件訂正請求による訂正の適否についての判断 1 請求項1ないし4に係る訂正 (1) 訂正の内容 ア 訂正事項1 特許権者は、特許請求の範囲の請求項1に 「ディーゼルエンジン本体と、前記ディーゼルエンジン本体に燃料として低硫黄留出油だけを供給する燃料供給系統と、前記ディーゼルエンジン本体からの排ガスにより駆動して熱回収するタービン及び前記タービンと同軸回転することで前記ディーゼルエンジン本体に燃焼用気体を供給する圧縮機と、前記タービンを駆動した後の全量の排ガスのエネルギを熱回収する熱回収装置と、を備え、前記タービンは、前記ディーゼルエンジン本体の排気マニホールドからの排気管が直接連結され、前記タービンは、前記ディーゼルエンジン本体から排出された直後の排ガスのエネルギを熱回収することでタービン出口における排ガスの温度を、硫黄成分の含有量を低く抑えることでタービン出口側の排気管における低温腐食の発生を抑制可能な180℃以下とする、ことを特徴とする舶用ディーゼルエンジン。」 と記載されているのを 「2ストローク1サイクルのユニフロー掃気方式のクロスヘッド式内燃機関である舶用ディーゼルエンジンにおいて、ディーゼルエンジン本体と、前記ディーゼルエンジン本体に燃料として低硫黄留出油だけを供給する燃料供給系統と、前記ディーゼルエンジン本体からの排ガスにより駆動して熱回収するタービン及び前記タービンと同軸回転することで前記ディーゼルエンジン本体に燃焼用気体を供給する圧縮機と、前記タービンを駆動した後の全量の排ガスのエネルギを熱回収する熱回収装置と、を備え、前記タービンは、前記ディーゼルエンジン本体の排気マニホールドからの排気管が分岐することなく直接連結され、前記ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスをタービンに供給し、前記タービンは、前記ディーゼルエンジン本体から排出された直後の排ガスのエネルギを熱回収することでタービン出口における排ガスの温度を、排ガスにおける硫黄成分の含有量を低減することでタービン出口側の排気管における低温腐食の発生を抑制可能な180℃以下まで低下させ、且つ、前記タービンの出口側の排気管における低温腐食の発生を抑制することが可能な一定温度以上に維持するエンジンの運転条件とする、ことを特徴とする舶用ディーゼルエンジン。」 に訂正し、請求項1の記載を引用する請求項3及び4も同様に訂正することを請求する(下線は、本件訂正請求に係る訂正請求書において特許権者が記載したとおりである。以下同様。)。 イ 訂正事項2 特許権者は、特許請求の範囲の請求項2に 「ディーゼルエンジン本体と、前記ディーゼルエンジン本体に燃料として低硫黄留出油だけを供給する燃料供給系統と、前記ディーゼルエンジン本体からの排ガスにより駆動して熱回収するタービン及び前記タービンと同軸回転することで前記ディーゼルエンジン本体に燃焼用気体を供給する圧縮機と、前記タービンを駆動した後の全量の排ガスのエネルギを熱回収しないで大気に放出する煙突と、を備え、前記タービンは、前記ディーゼルエンジン本体の排気マニホールドからの排気管が直接連結され、前記タービンは、前記ディーゼルエンジン本体から排出された直後の排ガスのエネルギを熱回収することでタービン出口における排ガスの温度を、硫黄成分の含有量を低く抑えることでタービン出口側の排気管における低温腐食の発生を抑制可能な180℃以下とする、ことを特徴とする舶用ディーゼルエンジン。」 と記載されているのを 「2ストローク1サイクルのユニフロー掃気方式のクロスヘッド式内燃機関である舶用ディーゼルエンジンにおいて、ディーゼルエンジン本体と、前記ディーゼルエンジン本体に燃料として低硫黄留出油だけを供給する燃料供給系統と、前記ディーゼルエンジン本体からの排ガスにより駆動して熱回収するタービン及び前記タービンと同軸回転することで前記ディーゼルエンジン本体に燃焼用気体を供給する圧縮機と、前記タービンを駆動した後の全量の排ガスのエネルギを熱回収しないで大気に放出する煙突と、を備え、前記タービンは、前記ディーゼルエンジン本体の排気マニホールドからの排気管が分岐することなく直接連結され、前記ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスをタービンに供給し、前記タービンは、前記ディーゼルエンジン本体から排出された直後の排ガスのエネルギを熱回収することでタービン出口における排ガスの温度を、排ガスにおける硫黄成分の含有量を低減することでタービン出口側の排気管における低温腐食の発生を抑制可能な180℃以下まで低下させ、且つ、前記タービンの出口側の排気管における低温腐食の発生を抑制することが可能な一定温度以上に維持するエンジンの運転条件とする、ことを特徴とする舶用ディーゼルエンジン。」 に訂正することを請求し、請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正することを請求するものである。 ウ 本件訂正請求は、一群の請求項〔1ないし4〕に対して請求されたものである。 (2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び独立特許要件 ア 訂正事項1 (ア) 訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る特許発明の「舶用ディーゼルエンジン」について「2ストローク1サイクルのユニフロー掃気方式のクロスヘッド式内燃機関である」という限定を付加し、訂正前の請求項1に係る特許発明の「タービン」について「前記ディーゼルエンジン本体の排気マニホールドからの排気管が分岐することなく直接連結され、前記ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスをタービンに供給し、前記タービンは、前記ディーゼルエンジン本体から排出された直後の排ガスのエネルギを熱回収することでタービン出口における排ガスの温度を、排ガスにおける硫黄成分の含有量を低減することでタービン出口側の排気管における低温腐食の発生を抑制可能な180℃以下まで低下させ、且つ、前記タービンの出口側の排気管における低温腐食の発生を抑制することが可能な一定温度以上に維持するエンジンの運転条件とする」とすることで下線を付した各事項の限定を付加することにより、その内容を限定するものである。 同様に、訂正後の請求項3及び4に係る特許発明は、訂正後の請求項1に係る特許発明の発明特定事項の記載を引用することにより、訂正前の請求項3及び4に係る特許発明の内容を限定するものである。 よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること a 本件明細書の段落【0021】には「第1実施形態にて、図1に示すように、舶用ディーゼルエンジン11は、例えば、船舶推進用の主機関として用いられ、2ストローク1サイクルのユニフロー掃気方式のクロスヘッド式内燃機関である。」と記載されている。 b 同段落【0027】には「タービン33は、排気マニホールド16からの排気管L3が連結されると共に、外部に排気する排気管L4が連結されている。」と記載され、同【図2】からはディーゼルエンジン本体12の排気マニホールド16からの排気管L3が分岐することなく直接連結され、ディーゼルエンジン本体12から排出された全量の排ガスをタービン33に供給するように構成されていることが看取される。 c 同段落【0035】には「ディーゼルエンジン本体12で低硫黄留出油が燃焼して発生した排ガスは、硫黄成分の含有量が低く抑えられる。」と記載されている。 d 同段落【0003】に背景技術として記載された「従来、舶用ディーゼルエンジン、特にユニフロー式2ストローク舶用大型ディーゼルエンジン」について、同段落【0006】には「過給機(タービン)出口、エコノマイザ入口及びエコノマイザ出口での排ガス温度を一定温度以上に維持していた。」と記載され、排ガスの温度はエンジンの運転条件に依存して変動するという技術常識も踏まえると、排ガスに硫化酸化物が含まれる場合には、排ガス温度を低温腐食の発生を抑制することが可能な一定温度以上に維持するエンジンの運転条件とする必要があると理解でき、また、同段落【0021】には上記記載のとおり、本件発明の実施形態について背景技術と同様なエンジンに係る発明である旨が記載されていることから、本件発明1においても、背景技術と同様に、排ガスに硫化酸化物が含まれる場合には、排ガス温度を低温腐食の発生を抑制することが可能な一定温度以上に維持するエンジンの運転条件とするものであることが理解できる。 e 上記aないしdからみて、訂正事項1は、願書に添付した明細書及び図面に記載したこれらの各事項に基づくものであり、新たな技術的事項を導入するものではない。 よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (ウ) 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記(ア)のとおり、訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る特許発明の内容を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 同様に、訂正後の請求項3及び4に係る特許発明は、訂正後の請求項1に係る特許発明の発明特定事項の記載を引用することにより、訂正前の請求項3及び4に係る特許発明の内容を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 (エ) 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件特許異議申立ては、訂正前の請求項1ないし4に対してされたものであるから、訂正前の請求項1及び請求項1を引用する請求項3及び4に係る訂正事項1において、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 イ 訂正事項2について (ア) 訂正の目的について 訂正事項2は、訂正前の請求項2に係る特許発明の「舶用ディーゼルエンジン」について「2ストローク1サイクルのユニフロー掃気方式のクロスヘッド式内燃機関である」という限定を付加し、訂正前の請求項2に係る特許発明の「タービン」について「前記ディーゼルエンジン本体の排気マニホールドからの排気管が分岐することなく直接連結され、前記ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスをタービンに供給し、前記タービンは、前記ディーゼルエンジン本体から排出された直後の排ガスのエネルギを熱回収することでタービン出口における排ガスの温度を、排ガスにおける硫黄成分の含有量を低減することでタービン出口側の排気管における低温腐食の発生を抑制可能な180℃以下まで低下させ、且つ、前記タービンの出口側の排気管における低温腐食の発生を抑制することが可能な一定温度以上に維持するエンジンの運転条件とする」とすることで下線を付した各事項の限定を付加することにより、その内容を限定するものである。 同様に、訂正後の請求項3に係る特許発明は、訂正後の請求項2に係る特許発明の発明特定事項の記載を引用することにより、訂正前の請求項3に係る特許発明の内容を限定するものである。 よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること a 本件明細書の段落【0021】には「第1実施形態にて、図1に示すように、舶用ディーゼルエンジン11は、例えば、船舶推進用の主機関として用いられ、2ストローク1サイクルのユニフロー掃気方式のクロスヘッド式内燃機関である。」と記載されている。 b 同段落【0027】には「タービン33は、排気マニホールド16からの排気管L3が連結されると共に、外部に排気する排気管L4が連結されている。」と記載され、同【図2】からはディーゼルエンジン本体12の排気マニホールド16からの排気管L3が分岐することなく直接連結され、ディーゼルエンジン本体12から排出された全量の排ガスをタービン33に供給するように構成されていることが看取される。 c 同段落【0035】には「ディーゼルエンジン本体12で低硫黄留出油が燃焼して発生した排ガスは、硫黄成分の含有量が低く抑えられる。」と記載されている。 d 同段落【0003】に背景技術として記載された「従来、舶用ディーゼルエンジン、特にユニフロー式2ストローク舶用大型ディーゼルエンジン」について、同段落【0006】には「過給機(タービン)出口、エコノマイザ入口及びエコノマイザ出口での排ガス温度を一定温度以上に維持していた。」と記載され、排ガスの温度はエンジンの運転条件に依存して変動するという技術常識も踏まえると、排ガスに硫化酸化物が含まれる場合には、排ガス温度を低温腐食の発生を抑制することが可能な一定温度以上に維持するエンジンの運転条件とする必要があると理解でき、また、同段落【0021】には上記記載のとおり、本件発明の実施形態について背景技術と同様なエンジンに係る発明である旨が記載されていることから、本件発明1においても、背景技術と同様に、排ガスに硫化酸化物が含まれる場合には、排ガス温度を低温腐食の発生を抑制することが可能な一定温度以上に維持するエンジンの運転条件とするものであることが理解できる。 e 上記aないしdからみて、訂正事項2は、願書に添付した明細書及び図面に記載したこれらの各事項に基づくものであり、新たな技術的事項を導入するものではない。 よって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (ウ) 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記(ア)のとおり、訂正事項2は、訂正前の請求項2に係る特許発明の内容を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 同様に、訂正後の請求項3に係る特許発明は、訂正後の請求項2に係る特許発明の発明特定事項の記載を引用することにより、訂正前の請求項3に係る特許発明の内容を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 (エ) 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件特許異議申立ては、訂正前の請求項1ないし4に対してされたものであるから、訂正前の請求項2及び請求項2を引用する請求項3に係る訂正事項2において、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 2 小括 上記のとおり、訂正事項1及び訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定並びに同条第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし4〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件特許発明 本件訂正請求により訂正された請求項1ないし4に係る発明(以下、各請求項に係る発明を「本件発明1」などといい、本件発明1ないし4をまとめて「本件特許発明」という。)は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(なお、下線部は、訂正箇所について特許権者が付したものである。) 「【請求項1】 2ストローク1サイクルのユニフロー掃気方式のクロスヘッド式内燃機関である舶用ディーゼルエンジンにおいて、 ディーゼルエンジン本体と、 前記ディーゼルエンジン本体に燃料として低硫黄留出油だけを供給する燃料供給系統と、 前記ディーゼルエンジン本体からの排ガスにより駆動して熱回収するタービン及び前記タービンと同軸回転することで前記ディーゼルエンジン本体に燃焼用気体を供給する圧縮機と、 前記タービンを駆動した後の全量の排ガスのエネルギを熱回収する熱回収装置と、 を備え、 前記タービンは、前記ディーゼルエンジン本体の排気マニホールドからの排気管が分岐することなく直接連結され、前記ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスをタービンに供給し、 前記タービンは、前記ディーゼルエンジン本体から排出された直後の排ガスのエネルギを熱回収することでタービン出口における排ガスの温度を、排ガスにおける硫黄成分の含有量を低減することでタービン出口側の排気管における低温腐食の発生を抑制可能な180℃以下まで低下させ、且つ、前記タービンの出口側の排気管における低温腐食の発生を抑制することが可能な一定温度以上に維持するエンジンの運転条件とする、ことを特徴とする舶用ディーゼルエンジン。 【請求項2】 2ストローク1サイクルのユニフロー掃気方式のクロスヘッド式内燃機関である舶用ディーゼルエンジンにおいて、 ディーゼルエンジン本体と、 前記ディーゼルエンジン本体に燃料として低硫黄留出油だけを供給する燃料供給系統と、 前記ディーゼルエンジン本体からの排ガスにより駆動して熱回収するタービン及び前記タービンと同軸回転することで前記ディーゼルエンジン本体に燃焼用気体を供給する圧縮機と、 前記タービンを駆動した後の全量の排ガスのエネルギを熱回収しないで大気に放出する煙突と、 を備え、 前記タービンは、前記ディーゼルエンジン本体の排気マニホールドからの排気管が分岐することなく直接連結され、前記ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスをタービンに供給し、 前記タービンは、前記ディーゼルエンジン本体から排出された直後の排ガスのエネルギを熱回収することでタービン出口における排ガスの温度を、排ガスにおける硫黄成分の含有量を低減することでタービン出口側の排気管における低温腐食の発生を抑制可能な180℃以下まで低下させ、且つ、前記タービンの出口側の排気管における低温腐食の発生を抑制することが可能な一定温度以上に維持するエンジンの運転条件とする、ことを特徴とする舶用ディーゼルエンジン。 【請求項3】 前記燃料供給系統は、前記ディーゼルエンジン本体に対して常温の低硫黄留出油を供給することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の舶用ディーゼルエンジン。 【請求項4】 前記熱回収装置は、前記タービンを駆動した排ガスを熱回収して蒸気を生成するためのエコノマイザ、ボイラまたは気水分離ドラム等で構成され、前記熱回収装置により生成された蒸気が潤滑油系統の不純物除去装置、温水生成設備、カーゴタンクまたは居住区の暖房設備等の蒸気を必要とする蒸気稼働装置から選択される1つまたは複数だけに供給されることを特徴とする請求項1に記載の舶用ディーゼルエンジン。」 第4 当審が令和5年7月27日付けで特許権者に通知した取消理由の概要 訂正後の請求項1ないし4に係る特許に対して、当審が令和5年7月27日付けの取消理由通知書(決定の予告)において特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 1 理由(進歩性) 請求項1に係る発明は、甲第3号証に記載された発明、引用文献7及び8にて例示される周知技術、甲第4及び5号証にて例示される周知技術並びに甲第1及び2号証にて例示される周知技術に基いて、請求項2に係る発明は、甲第3号証に記載された発明、引用文献7及び8にて例示される周知技術、甲第4及び5号証にて例示される周知技術、甲第1及び2号証にて例示される周知技術並びに甲第1号証に記載された技術的事項に基いて、請求項1を引用する請求項3に係る発明は、甲第3号証に記載された発明、引用文献7及び8にて例示される周知技術、甲第4及び5号証にて例示される周知技術、甲第1及び2号証にて例示される周知技術並びに甲第6号証に記載された技術的事項に基いて、請求項2を引用する請求項3に係る発明は、甲第3号証に記載された発明、引用文献7及び8にて例示される周知技術、甲第4及び5号証にて例示される周知技術、甲第1及び2号証にて例示される周知技術、甲第1号証に記載された技術的事項並びに甲第6号証に記載された技術的事項に基いて、請求項4に係る発明は、甲第3号証に記載された発明、引用文献7及び8にて例示される周知技術、甲第4及び5号証にて例示される周知技術、甲第1及び2号証にて例示される周知技術並びに例を挙げるまでもない周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 甲第1号証:特開2012-215124号公報(周知技術を示す文献) 甲第2号証:特開2016-200048号公報(周知技術を示す文献) 甲第3号証:特開2012-037089号公報 甲第4号証:国際公開第2014/054607号(周知技術を示す文献) 甲第5号証:山口卓也 外2名,排熱回収システム付き高過給ディーゼルエンジンにおける冷却損失低減が熱効率改善ポテンシャルに及ぼす影響,自動車技術会論文集,自動車技術会,2017年1月,Vol.48,No.1,p13-19(周知技術を示す文献) 甲第6号証:特開平2013-181417号公報 引用文献7:特開2014-20275号公報(周知技術を示す文献) 引用文献8:特開2013-7335号公報(周知技術を示す文献) 第5 当審の判断 1 本件発明1について 本件発明1は、上記第3において示したとおりのものである。 (1) 甲第3号証に記載された発明 ア 甲第3号証の記載事項 甲第3号証には以下のような記載がある(なお、下線は理解を容易にするために当審で付したものである。以下同様。)。 (ア) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、エンジンの排ガスの熱を回収する排ガスエコノマイザ及び廃熱回収システムに関する。 【背景技術】 【0002】 ディーゼルエンジンを搭載した船舶には、省エネルギー化のため廃熱回収システムが装備されることがある。このような廃熱回収システムとして、エンジンの排ガスの熱を排ガスエコノマイザで回収し、回収された熱で蒸気を生成し、生成された蒸気で蒸気タービンを駆動する構成としたものが知られている(例えば特許文献1~3参照)。 【0003】 エンジンに使用される燃料に硫黄分が含まれていると、その硫黄分が燃焼によって硫酸ガスとなってエンジンから排出される。排ガスエコノマイザの加熱管の表面温度が硫酸の露点以下まで低下したときには、硫酸ガスが凝縮して硫酸となり、その凝縮量によっては排ガスエコノマイザの加熱管に硫酸腐食が発生してしまう。このため、排ガスエコノマイザを備える廃熱回収システムを提供するに際しては、硫酸腐食を防止すべく排ガスエコノマイザの出口温度が十分に高い温度に保たれるように、排ガスエコノマイザを設計することが求められる。」 (イ) 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 ところで、舶用ディーゼルエンジンの燃料には、輸送コストの抑制を図るべく、硫黄分が比較的多いものの廉価である残渣油(C重油)が使用されることが多い。これに対し、近年、舶用ディーゼルエンジンは、大気環境保護の観点から排ガス中の硫黄酸化物の低減を強く要請されており、現に、硫黄酸化物に関して特に厳しい排ガス規制を設定している海域(指定海域)が存在する。そこで、排ガス中の硫黄酸化物の低減のため、使用する燃料を、残渣油よりも硫黄分が少ない低硫黄燃料である留出油(A重油)又は軽油へと転換していくことが求められている。 【0006】 ただし、低硫黄燃料は残渣油よりも高価であって、航行に必要となる燃料量は膨大である。したがって、船舶の現実的な運用形態として、指定海域における航行時には低硫黄燃料を使用して、その他の海域における航行時には残渣油を使用する、すなわち、航行状況に応じて硫黄分の異なる複数種の燃料のうち一種を選択的に使用し、それにより指定海域における規制をクリアしつつも輸送コストの高騰の抑制を図ることが考えられる。 【0007】 ここで、残渣油の使用を想定した場合には、硫酸腐食を防止するため、排ガスエコノマイザの出口温度を硫酸露点温度より十分高くすることが有効で安全な約160℃以上に保つことが必要かつ十分条件である。他方、低硫黄燃料の使用を想定した場合には、排ガスエコノマイザの出口温度をより低温になるまで熱回収しても、硫酸腐食を発生させないで済む。 【0008】 すると、仮に、排ガスエコノマイザを低硫黄燃料の使用時に合わせて設計すれば、排ガスエコノマイザの出口温度が約160℃よりも低温となるため、残渣油の使用時には、硫酸腐食を防止することができなくなる。逆に、排ガスエコノマイザを残渣油の使用時に合わせて設計すれば、排ガスエコノマイザの出口温度が約160℃以上となるため、低硫黄燃料の使用時には、回収できたはずの熱が無駄に排出されることとなる。 【0009】 そこで本発明は、硫黄分が異なる複数種の燃料のうち一種が選択的に使用されるような場合にあっても、エンジンの排ガスの熱を回収するにあたって、硫酸腐食の防止と熱回収量の増加とを両立させることを目的としている。」 (ウ) 「【0029】 [第1実施形態] 図1は、本発明の第1実施形態に係る廃熱回収システム101の系統図である。図1に示すように、廃熱回収システム101は、船舶に搭載された舶用ディーゼルエンジン1(以下、エンジン1と称す)の排ガスの熱を回収する排ガスエコノマイザ10及び熱回収ユニット20を備え、排ガスエコノマイザ10及び熱回収ユニット20により回収された熱で蒸気を生成し、その蒸気でターボ発電機2を駆動する。ターボ発電機2は、蒸気で回転駆動される多段式の蒸気タービン2aの出力軸に交流発電機2bを接続してなる。エンジン1は、硫黄分が異なる複数種の燃料のうち一種を選択的に使用することができ、燃料の選択肢として、硫黄分が比較的多い高硫黄燃料である残渣油や、残渣油よりも硫黄分が少ない低硫黄燃料である留出油及び軽油等がある。 【0030】 (排ガスエコノマイザ及び熱回収ユニット) 図9は、本発明の実施形態に係る排ガスエコノマイザ10及び熱回収ユニット20の構成を示す概念図である。図9に示すように、排ガスエコノマイザ10は、排気管3を介してエンジン1に接続されている。排気管3には、排ガスエコノマイザ10を迂回するバイパス管4が接続され、バイパス管4及び排ガスエコノマイザ10の入口部はダンパ5,6により開閉される。以下、バイパス管4を閉じ且つ排ガスエコノマイザ10の入口部を開いているものとして説明する。 【0031】 排ガスエコノマイザ10は、上流側から順に、入口管11、第1熱回収部12、中間管13、第2熱回収部14及び出口管15を有している。入口管11は、排気管3に接続され、エンジン1からの排ガスを第1熱回収部12へと導く。中間管13は、第1熱回収部12による熱交換後の排ガスを第2熱回収部14へと導く。出口管15には、第2熱回収部14による熱交換後の排ガスが流入する。 【0032】 第1熱回収部12及び第2熱回収部14は、気水ドラム(気水分離器)の循環水を通流させる循環水系統の一部を構成する熱交換管12A,14Aをそれぞれ備えている。各熱交換管12A,14Aを通流する循環水は、排ガスとの熱交換により(すなわち、排ガスの熱を回収することにより)液体から蒸気となる。循環水は気水混合状態で気水ドラムへと戻される。逆に、排ガスは、第1熱回収部12及び第2熱回収部14での循環水との熱交換により降温する。 【0033】 また、入口管11内におけるダンパ6よりも下流側には、熱交換管11Aが設けられている。熱交換管11Aは、高圧ドラム41からの高圧蒸気をターボ発電機2に供給する蒸気系統に並列接続されており、高圧蒸気を排ガスとの熱交換により更に加熱するスーパーヒーターとして機能する。高圧蒸気が熱交換管11Aを通流するときには、排ガスは、入口管11を通過する過程においても降温することとなる。 【0034】 排ガスエコノマイザ10の出口部には、熱回収ユニット20が付加されている。熱回収ユニット20は、分岐管21、二次熱回収部22及び切換え手段23を備えている。分岐管21は、出口管15に接続され、出口管15から分岐するようにして延びている。つまり、排ガスエコノマイザ10の出口部は、出口管15の途中から出口管15の下流部及び分岐管21へと二股に分かれる構造を有しており、それにより出口管15に流入した排ガスをそのまま出口管15の出口より排出させることも、分岐管21の出口より排出させることもできる。 【0035】 二次熱回収部22は、分岐管21上に設けられている。分岐管21は、第1熱回収部12及び第2熱回収部14で熱回収された後の排ガスが通過することとなるが、二次熱回収部22は、この排ガスの熱を更に二次的に回収する。言い換えると、入口管11内の熱交換管11A、第1熱回収部12の熱交換管12A及び第2熱回収部14の熱交換管14Aは、排ガスの熱を一次的に回収する排ガスエコノマイザ10の一次熱回収部16として機能する。 【0036】 二次熱回収部22は、気水ドラムの循環水を通流させる循環水系統の一部を構成する熱交換管22Aを備えている。熱交換管22Aを通流する循環水は、排ガスとの熱交換により(すなわち、排ガスの熱を回収することにより)昇温したり、液体から蒸気になる。二次熱回収部22で排ガスと熱交換した循環水は、一次熱回収部16又は気水ドラムへと送られる。逆に、分岐管21を通過する排ガスは循環水との熱交換により更に降温する。 【0037】 切換え手段23は、出口管15に流入した排ガスを、分岐管21を通過させずに出口管15からそのまま排出させる第1の状態と、分岐管21を通過させて排出させる第2の状態とで切り換える。本実施形態の切換え手段23は、出口管15のうち分岐管21との接続部分よりも下流側を開閉する第1ダンパ24と、分岐管21のうち二次熱回収部22よりも上流側を開閉する第2ダンパ25とを備えている。第1ダンパ24及び第2ダンパ25は、例えばバタフライ弁から成り、第1ダンパ24及び第2ダンパ25の動作は、制御器26により電子的に制御される。 【0038】 制御器26は、エンジン1の燃料に残渣油等の高硫黄燃料が使用されているときには、切換え手段23を第1の状態となるように制御する。つまり、出口管15の開度が大きくなり且つ分岐管21の開度が減じられるように第1ダンパ24及び第2ダンパ25が制御される。このとき、出口管15の開度及び分岐管21の開度は、出口管15及び分岐管21の間の流路抵抗の差分が分岐管21に排ガスが導かれないようにするために十分に大きい値となるようにして設定され、極端な状況では、出口管15が全開となり分岐管21が全閉とされる。 【0039】 これにより、エンジン1からの排ガスの熱を一次熱回収部16により回収した後には、排ガスが出口管15の出口より船外に排出されることとなる。そこで、一次熱回収部16において回収される熱量は、高硫黄燃料を使用したときであっても硫酸腐食を防止するために出口管15の出口温度が十分に高い温度(例えば160℃)に確保されるようにして、設定されている。 【0040】 他方、エンジン1の燃料に留出油又は軽油等の低硫黄燃料が使用されているときには、切換え手段23は第2の状態となるように制御される。つまり、出口管15の開度が減じられ且つ分岐管21の開度が大きくなるように第1ダンパ24及び第2ダンパ25が制御される。このときの出口管15及び分岐管21の開度についても、上記同様にして、出口管15及び分岐管21の流路抵抗の差分が分岐管21に排ガスが流れるようにするために十分に大きい値となるようにして設定され、極端な状況では、出口管15が全閉となり分岐管21が全開となる。 【0041】 これにより、エンジン1からの排ガスの熱は、一次熱回収部16だけでなく二次熱回収部22によっても回収され、排ガスはこの回収後に分岐管21の出口より船外に排出されることとなる。 【0042】 すると、分岐管21の出口温度は、二次熱回収部22で回収する熱量分だけ出口管15の出口温度よりも低くなるが、低硫黄燃料の使用時には、高硫黄燃料の使用時よりも出口温度が低くなっても、硫酸腐食を発生させないで済む。そこで、二次熱回収部22で回収される熱量は、低硫黄燃料を使用したときであっても硫酸腐食を防止するために分岐管21の出口温度が十分に高い温度(例えば120~140℃)に確保されるようにして、設定されている。 【0043】 これにより、高硫黄燃料の使用時にも低硫黄燃料の使用時にも、硫酸腐食を良好に防止することができる。その上で、低硫黄燃料の使用時には、そのときに硫酸腐食を防止するために確保されるべき出口温度と、高硫黄燃料の使用時に硫酸腐食を防止するために確保されるべき出口温度との差分(例えば20~40℃)に応じた熱量が回収される。したがって、高硫黄燃料の使用時だけでなく低硫黄燃料の使用時にも、硫酸腐食の防止を前提にして回収可能とされる熱量が余すことなく回収されるようになり、排ガスエコノマイザ10及び廃熱回収システム1の効率が向上する。 【0044】 なお、切換え手段23が2つのダンパ24,25を備える場合を例示したが、切換え手段23はこれに限られず適宜変更可能である。例えば、出口管15の下流部の流路抵抗が分岐管21の流路抵抗よりも十分に小さいときには、出口管15の下流部のみにバタフライ弁等からなるダンパを設けてもよい。一次熱回収部16は1若しくは2、又は4以上の熱回収部を備えていてもよく、二次熱回収部22は2以上の熱回収部を備えていてもよい。使用燃料が高硫黄燃料であるか低硫黄燃料であるかを判断するための方法も特に限定はない。例えば、燃料の種類に応じて個別に燃料タンクを積載しているときには、どのタンクの燃料がエンジン1に供給されているのかを検知し、その検知結果に基づいて切換え手段23を制御してもよい。また、エンジン1に供給されている燃料中の硫黄含有量を分析し、その分析結果に基づいて切換え手段23を制御してもよい。なお、排ガスエコノマイザ10及び熱回収ユニット20で回収された熱を蒸気の生成以外の用途に利用してもよい。」 (エ) 「 [図:0001419301000001.jpg] 」(【図1】) (オ) 「 [図:0001419301000002.jpg] 」(【図9】) イ 甲第3号証の認定事項 (ア) 上記ア(イ)の段落【0005】並びに上記ア(ウ)の【0029】及び【0038】-【0042】の記載からみて、舶用ディーゼルエンジン1に燃料として残渣油(C重油)等の高硫黄燃料と留出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料のうち一種を選択的に使用する「燃料供給系統」が実質的に備えられているものと認められる。 (イ) 上記ア(イ)の段落【0008】及び【0009】、上記ア(ウ)の段落【0029】-【0037】及び【0040】-【0043】並びに上記ア(エ)の【図1】及び上記ア(オ)の【図9】の図示内容からみて、一次熱回収部16及び二次熱回収部22は、舶用ディーゼルエンジン1から排出された直後の排ガスの熱を回収することで一次熱回収部16及び二次熱回収部22の出口温度を、流出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料が使用されているとき硫酸腐食を防止可能な120~140℃に確保されるようにすることから、一次熱回収部16及び二次熱回収部22により排ガスの熱を回収した後の上記出口よりも上流側に位置し上記出口温度よりも高温であると認められる排気管3、排ガスエコノマイザ10及び熱回収ユニット20における硫酸腐食も防止可能であるといえる。 ウ 甲第3号証に記載された発明1 上記アの記載事項及び上記イの認定事項からみて、甲第3号証には、以下の発明(以下「甲3発明1」という。)が記載されていると認められる。 「排熱回収システム101において、 舶用ディーゼルエンジン1と、 舶用ディーゼルエンジン1に燃料として残渣油(C重油)等の高硫黄燃料と留出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料のうち一種を選択的に使用する燃料供給系統と、 留出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料が使用されているとき全量の排ガスの熱を回収する一次熱回収部16及び二次熱回収部22と、 を備え、 一次熱回収部16及び二次熱回収部22は、舶用ディーゼルエンジン1の排気管3を介して接続され、留出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料が使用されているとき舶用ディーゼルエンジン1から排出された全量の排ガスを一次熱回収部16及び二次熱回収部22に供給し、 一次熱回収部16及び二次熱回収部22は、舶用ディーゼルエンジン1から排出された直後の排ガスの熱を回収することで一次熱回収部16及び二次熱回収部22の出口温度を、流出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料が使用されているとき排気管3、排ガスエコノマイザ10及び熱回収ユニット20における硫酸腐食を防止可能な120~140℃に確保されるようにする、 排熱回収システム101。」 (2) 引用文献7及び引用文献8にて例示される周知技術1 ア 引用文献7の記載事項 引用文献7には以下のような記載がある。 (ア) 「【背景技術】 【0002】 大型船舶などに搭載されているユニフロー式2ストロークディーゼルエンジンは、自動車用のエンジンなど他のエンジンと同様に、NOxの排出規制が強化される傾向にある。NOxの生成を抑える方法として、排気(既燃ガス)の一部を燃焼室に戻し、シリンダ内の酸素濃度を低減させる排気再循環(Exhaust Gas Recirculation;以下、「EGR」と称す)がある。ユニフロー式2ストロークエンジンで行われるEGRは、外部EGRに相当し、燃焼室から排出された排気を冷却洗浄するなどして燃焼室の外部を通って再び入口側(掃気管側)へ戻すというものである(例えば、特許文献1参照)。」 (イ) 「【0021】 <エンジンの概略> まず、本発明の実施形態に係るユニフロー式2ストロークエンジン(以下、単に「エンジン」と称する)100の概略について説明する。図1は、本実施形態に係るエンジン100のブロック図である。本実施形態に係るエンジン100は、大型船舶用のディーゼルエンジンであって、燃焼室10と、過給機20と、補助ブロア30と、掃気管40と、排気管50と、外部EGRユニット60と、制御装置70と、を備えている。以下、これらの各構成要素について順に説明する。」 (ウ) 「 [図:0001419301000003.jpg] 」(【図1】) イ 引用文献8の記載事項 引用文献8には以下のような記載がある。 (ア) 「【0020】 コンテナ船やタンカー等の大型船舶では、熱効率がよく、低質燃料油(重油)が使用できるためコスト面で有利である、ユニフロー型の2サイクルエンジン(2ストロークエンジン)が広く使用されている。このようなエンジンにおいて、化石燃料、例えば、ガソリン、軽油、重油、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)、および液化石油ガス(LPG:Liquefied Petroleum Gas)等の燃料を燃焼させると、その結果生じる排気ガスには、NOxが含まれる。」 (イ) 「 [図:0001419301000004.jpg] 」(【図1】) ウ 引用文献7及び引用文献8にて例示される周知技術1 上記ア及びイの記載事項にて例示されるように、ディーゼルエンジンの技術分野において、本件出願前において以下は周知の技術(以下「周知技術1」という。)である。 「2ストローク1サイクルのユニフロー掃気方式のクロスヘッド式内燃機関である舶用ディーゼルエンジン。」 (3) 甲第4号証及び甲第5号証にて例示される周知技術2 ア 甲第4号証の記載事項 甲第4号証には以下のような記載がある。 (ア) 「発明が解決しようとする課題 [0012] 上記で開示された従来技術は、いずれも軽油を燃料とする回転数の高いディーゼルエンジンを搭載した自動車用排ガス処理に関するもので、船舶用排ガスの処理に関する提案はされていない。特に、船舶用ディーゼルエンジン排ガス処理は、船舶という特殊条件のため、限られたスペースであり、船舶には燃料に、主として重油が使用され、軽油に比べて硫黄含有量が多く、また芳香族炭化水素等が多いために排ガスにはNOxに加えて硫黄や炭素質を核にしたダストが多量に排出される。 [0013] また、船舶用ディーゼルエンジン、特に大型船等の主機に用いられる低速2サイクルエンジンでは排ガスの温度が概ね200℃程度と低く、低い温度であっても処理できることが望まれている。」 (イ) 「[0024] 本発明で、排ガス処理装置が設けられる内燃機関に使用される燃料は、重油が好適である。重油として、代表的にはA重油(軽油90%と残渣油10%の混合油)、B重油(通常、軽油50%と残渣油50%の混合油)等があるが、本発明ではA重油あるいは概ねA重油と同程度の重油が好ましい。なお、軽油を用いることもでき、さらには、必要に応じて軽油を混合して用いることもできる。」 イ 甲第5号証の記載事項 甲第5号証には以下のような記載がある。 (ア) 「2.1 研究用単気筒エンジン 実験に使用した高過給単気筒ディーゼルエンジンの諸元を表1に示す.本実験エンジンは,大型商用車用エンジンの高過給を前提に考えているためシリンダ内最高圧力Pmax=30MPaに耐え得る単気筒エンジンの仕様である.燃料噴射系はコモンレール方式である.」(第13ページの「2.1 研究用単気筒エンジン」) (イ) 「2.3 供試燃料と潤滑油 供試燃料は低硫黄分の軽油(JIS2号,S分5ppm)を使用した.セタン価は57.4である.低位発熱量はHu=43020kJ/kgである.また,潤滑油は低サルファエンジンオイル(SAE10W30)を使用した.」(第14ページの「2.3 供試燃料と潤滑油」) ウ 甲第4号証及び甲第5号証にて例示される周知技術2 上記ア及びイの記載事項にて例示されるように、ディーゼルエンジンの技術分野において、本件出願前に以下は周知の技術(以下「周知技術2」という。)である。 「ディーゼルエンジン本体に燃料として低硫黄留出油だけを供給すること。」 (4) 甲第1号証及び甲第2号証にて例示される周知技術3の1及び周知技術3の2 ア 甲第1号証の記載事項 甲第1号証には以下のような記載がある。 (ア) 「【0020】 [第一実施形態] 以下、本発明の第一実施形態にかかる排熱回収発電装置1について図1および図2に基づいて説明する。 本実施形態にかかる排熱回収発電装置1は、船舶の推進用主機としてのディーゼルエンジン(内燃機関)3の排熱回収用として設置された構成を例としている。 図1は、本実施形態にかかる排熱回収発電装置1を概略的に示すブロック図である。図2は、排熱回収発電装置1のパワータービン17を示す断面図である。」 (イ) 「【0025】 過給機7で圧縮された圧縮空気は、たとえば、150~160℃であり、第一空気冷却器9および第二空気冷却器35を通ってディーゼルエンジン3に供給され、図示しない燃料供給系から供給された燃料と混合されて燃焼される。燃焼に伴う排ガスは、過給機7の作動に用いられた後、排ガス経路37を通って煙突39から外部に排出される。過給機7を出た排ガスの温度は、たとえば、220℃程度である。 排ガス経路37には、第二排ガスエコノマイザ13と、第二排ガスエコノマイザ13の上流側に配置された第一排ガスエコノマイザ41と、が設置されている。排ガス経路37は、排ガスが、第一排ガスエコノマイザ41および第二排ガスエコノマイザ13を通過する、両者のいずれか一方を通過する、あるいは、両者を通過しない、のいずれかを選択できるように構成されている。」 (ウ) 「 [図:0001419301000005.jpg] 」(【図1】) イ 甲第2号証の記載事項 甲第2号証には以下のような記載がある。 (ア) 「【0067】 過給機付ディーゼルエンジン30の内燃機関31の排気側に接続された過給機32のタービン33は、排気管41を通じて排ガスエコノマイザ40に接続されている。一方、過給機32の圧縮機34は、第1掃気管36Aを通じて第1加熱器12に接続される。第1加熱器12は、第2掃気管36Bと、第2掃気管36Bの途中に設けられたエアクーラー37とを通じて内燃機関31の吸気側に接続されている。 【0068】 排ガスエコノマイザ40は、船舶における蒸気の需要先の一例であるスートブロー装置50と第1蒸気流通経路42を通じて接続されている。スートブロー装置50は、排ガスエコノマイザ40からの蒸気を用いて、バラストタンク、積荷室、甲板等の洗浄を行う装置である。また、排ガスエコノマイザ40は、第1蒸気流通経路42の途中に設けられた分岐点44から分岐した第2蒸気流通経路43を通じて第2加熱器13と接続されている。このため、排ガスエコノマイザ40からの蒸気は全て、スートブロー装置50および第2加熱器13のいずれかに流れ込む。したがって、排ガスエコノマイザ40が生成する蒸気の量が変化しなければ、スートブロー装置50に供給される蒸気量と第2加熱器13に供給される蒸気量との総和は一定になる。」 (イ) 「 [図:0001419301000006.jpg] 」(【図1】) ウ 甲第1号証及び甲第2号証にて例示される周知技術3の1 上記ア及びイの記載事項にて例示されるように、舶用ディーゼルエンジンの技術分野において、本件出願前に以下は周知の技術(以下「周知技術3の1」という。)である。 「ディーゼルエンジン本体からの排ガスにより駆動して熱回収するタービン及び前記タービンと同軸回転することで前記ディーゼルエンジン本体に燃焼用気体を供給する圧縮機と、 タービンを駆動した後の全量の排ガスのエネルギを熱回収する熱回収装置と、 を備え、 タービンは、ディーゼルエンジン本体の排気マニホールドからの排気管が分岐することなく直接連結され、ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスをタービンに供給するものであること。」 エ 甲第1号証及び甲第2号証にて例示される周知技術3の2 上記ア及びイの記載事項にて例示されるように、本件出願前において以下は周知の技術(以下「周知技術3の2」という。)である。 「ディーゼルエンジン本体からの排ガスにより駆動して熱回収するタービン及び前記タービンと同軸回転することで前記ディーゼルエンジン本体に燃焼用気体を供給する圧縮機 を備え、 タービンは、ディーゼルエンジン本体の排気マニホールドからの排気管が分岐することなく直接連結され、ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスをタービンに供給するものであること。」 (5) 対比 本件発明1と甲3発明1を対比する。 ア 甲3発明1の「排熱回収システム101」は本件発明1の「2ストローク1サイクルのユニフロー掃気方式のクロスヘッド式内燃機関である舶用ディーゼルエンジン」と「内燃機関である舶用ディーゼルエンジン」という限りにおいて一致する。 イ 甲3発明1の「舶用ディーゼルエンジン1」は本件発明1の「ディーゼルエンジン本体」に相当する。 ウ 甲3発明1の「留出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料」は本件発明1の「低硫黄留出油」に相当し、同様に、「使用する」ことは「供給する」ことに相当する。 そして、甲3発明1の「残渣油(C重油)等の高硫黄燃料と留出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料のうち一種を選択的に使用する」ことは本件発明1の「低硫黄留出油だけを供給する」ことと「低硫黄留出油を供給する」ことという限りにおいて一致する。 そうすると、甲3発明1の「舶用ディーゼルエンジン1に燃料として残渣油(C重油)等の高硫黄燃料と留出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料のうち一種を選択的に使用する燃料供給系統」は本件発明1の「ディーゼルエンジン本体に燃料として低硫黄留出油だけを供給する燃料供給系統」と「ディーゼルエンジン本体に燃料として低硫黄留出油を供給する燃料供給系統」という限りにおいて一致する。 エ 甲3発明1の「排ガスの熱を回収する」ことは本件発明1の「排ガスのエネルギを熱回収する」ことに相当する。そして、甲3発明1の「留出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料が使用されているとき全量の排ガスの熱を回収する」ことは、本件発明1の「タービンを駆動した後の全量の排ガスのエネルギを熱回収する」ことと、「ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスのエネルギを熱回収する」ことという限りにおいて一致する。 そうすると、甲3発明1の「留出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料が使用されているとき全量の排ガスの熱を回収する一次熱回収部16及び二次熱回収部22」は、本件発明1の「タービンを駆動した後の全量の排ガスのエネルギを熱回収する熱回収装置」と「ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスのエネルギを熱回収する熱回収装置」という限りにおいて一致する。 オ 甲3発明1の「排気管3」は本件発明1の「排気マニホールドからの排気管」に相当することから、甲3発明1の「舶用ディーゼルエンジン1の排気管3を介して接続され」ることは本件発明1の「ディーゼルエンジン本体の排気マニホールドからの排気管が分岐することなく直接連結され」ることと「ディーゼルエンジン本体の排気マニホールドからの排気管が直接連結され」ることという限りにおいて一致する。 さらに、甲3発明1の「留出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料が使用されているとき舶用ディーゼルエンジン1から排出された全量の排ガスを一次熱回収部16及び二次熱回収部22に供給」することは本件発明1の「ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスをタービンに供給」すること及び「タービンを駆動した後の全量の排ガスのエネルギを熱回収する」ことと「ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスを熱回収部に供給」することという限りにおいて一致する。そして、甲3発明1の「一次熱回収部16及び二次熱回収部22」は本件発明1の「タービン」及び「熱回収装置」と「ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスを供給する熱回収部」という限りにおいて一致する。 カ 甲3発明1の「一次熱回収部16及び二次熱回収部22の出口温度」は本件発明1の「タービン出口における排ガスの温度」と「ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスを供給する熱回収部における排ガスの温度」という限りにおいて一致する。 また、甲3発明1の「流出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料が使用されているとき」は、甲第3号証の段落【0042】の「低硫黄燃料の使用時には、高硫黄燃料の使用時よりも出口温度が低くなっても、硫酸腐食を発生させないで済む。」なる記載からみて、これは、排ガスにおける硫黄成分の含有量が低減されていることによるものと理解できることから、本件発明1の「排ガスにおける硫黄成分の含有量を低減すること」に相当する状況であるといえる。 さらに、甲3発明1の「排気管3、排ガスエコノマイザ10及び熱回収ユニット20」は本件発明1の「排気管」に相当し、甲3発明1の「排気管3、排ガスエコノマイザ10及び熱回収ユニット20」は本件発明1の「タービン出口側の排気管」と「排気管」という限りにおいて一致する。また、甲3発明1の「硫酸腐食」は本件発明1の「低温腐食」に相当することから、甲3発明1の「硫酸腐食を防止可能な」は本件発明1の「低温腐食の発生を抑制可能な」に相当する。さらに、甲3発明1の「120~140℃に確保されるようにする」ことは、甲第3号証の段落【0042】の「二次熱回収部22で回収される熱量は、低硫黄燃料を使用したときであっても硫酸腐食を防止するために分岐管21の出口温度が十分に高い温度(例えば120~140℃)に確保されるようにして、設定されている。」なる記載からみて、本件発明1の「180℃以下まで低下させ、且つ、タービンの出口側の排気管における低温腐食の発生を抑制することが可能な一定温度以上に維持するエンジンの運転条件とする」ことと、「180℃以下まで低下させ、且つ、排気管における低温腐食の発生を抑制することが可能な一定温度以上に維持するエンジンの運転条件とする」ことという限りにおいて一致するものであるといえる。 そうすると、甲3発明1の「一次熱回収部16及び二次熱回収部22は、舶用ディーゼルエンジン1から排出された直後の排ガスの熱を回収することで一次熱回収部16及び二次熱回収部22の出口温度を、流出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料が使用されているとき排気管3、排ガスエコノマイザ10及び熱回収ユニット20における硫酸腐食を防止可能な120~140℃に確保されるようにする」ことは、本件発明1の「タービンは、ディーゼルエンジン本体から排出された直後の排ガスのエネルギを熱回収することでタービン出口における排ガスの温度を、排ガスにおける硫黄成分の含有量を低減することでタービン出口側の排気管における低温腐食の発生を抑制可能な180℃以下まで低下させ、且つ、タービンの出口側の排気管における低温腐食の発生を抑制することが可能な一定温度以上に維持するエンジンの運転条件とする」こと及び「熱回収装置」が「タービンを駆動した後の全量の排ガスのエネルギを熱回収する」ことと、「ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスを供給する熱回収部は、ディーゼルエンジン本体から排出された直後の排ガスのエネルギを熱回収することでディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスを供給する熱回収部における排ガスの温度を、排ガスにおける硫黄成分の含有量を低減することで排気管における低温腐食の発生を抑制可能な180℃以下まで低下させ、且つ、排気管における低温腐食の発生を抑制することが可能な一定温度以上に維持するエンジンの運転条件とする」ことという限りにおいて一致する。 キ そうすると、本件発明1は、以下の点において甲3発明1と一致及び相違するものである。 <一致点> 「内燃機関である舶用ディーゼルエンジンにおいて、 ディーゼルエンジン本体と、 ディーゼルエンジン本体に燃料として低硫黄留出油を供給する燃料供給系統と、 ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスのエネルギを熱回収する熱回収装置と、 を備え、 ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスを供給する熱回収部は、ディーゼルエンジン本体の排気マニホールドからの排気管が直接連結され、ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスを熱回収部に供給し、 ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスを供給する熱回収部は、ディーゼルエンジン本体から排出された直後の排ガスのエネルギを熱回収することでディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスを供給する熱回収部における排ガスの温度を、排ガスにおける硫黄成分の含有量を低減することで排気管における低温腐食の発生を抑制可能な180℃以下まで低下させ、且つ、排気管における低温腐食の発生を抑制することが可能な一定温度以上に維持するエンジンの運転条件とする、 ディーゼルエンジン。」 <相違点1の1> 「内燃機関である舶用ディーゼルエンジン」が、本件発明1は「2ストローク1サイクルのユニフロー掃気方式のクロスヘッド式」内燃機関である舶用ディーゼルエンジンであるのに対し、甲3発明1は排熱回収システム101(内燃機関である舶用ディーゼルエンジン)ではあるものの、本件発明1のような「2ストローク1サイクルのユニフロー掃気方式のクロスヘッド式」という特定はない点。 <相違点2の1> ディーゼルエンジン本体に燃料を供給する「燃料供給系統」が、本件発明1においては「低硫黄留出油だけ」を供給するものであるのに対し、甲3発明1においては「残渣油(C重油)等の高硫黄燃料」と「留出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料」(「低硫黄留出油」)のうち一種を「選択的に」使用する(「供給する」)ものである点。 <相違点3の1> 本件発明1は、 「ディーゼルエンジン本体からの排ガスにより駆動して熱回収するタービン及びタービンと同軸回転することでディーゼルエンジン本体に燃焼用気体を供給する圧縮機」を備え、 熱回収装置は「タービンを駆動した後の」全量の排ガスのエネルギを熱回収するものであり、 ディーゼルエンジン本体の排気マニホールドからの排気管が「分岐することなく」直接連結され、ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスを供給されるのは「タービン」であり、 「タービン」は、ディーゼルエンジン本体から排出された直後の排ガスのエネルギを熱回収することで「タービン」出口における排ガスの温度を、排ガスにおける硫黄成分の含有量を低減することで「タービン出口側の」排気管における低温腐食の発生を抑制可能な180℃以下まで低下させ、且つ、排気管における低温腐食の発生を抑制することが可能な一定温度以上に維持するエンジンの運転条件とするものであるのに対し、 甲3発明1においては、 本件発明1のような「タービン」及び「圧縮機」を備えておらず、 一次熱回収部16及び二次熱回収部22(「熱回収装置」)は「タービンを駆動した後の」全量の排ガスの熱を回収する(「排ガスのエネルギを熱回収する」)ものではなく、 舶用ディーゼルエンジン1(「ディーゼルエンジン本体」)の排気管3(「排気マニホールドからの排気管」)を介して接続され(「が直接連結され」)、留出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料が使用されているとき舶用ディーゼルエンジン1(「ディーゼルエンジン本体」)から排出された全量の排ガスを供給されるのは「一次熱回収部16及び二次熱回収部22」であって本件発明1のような「タービン」ではなく、また、「一次熱回収部16及び二次熱回収部22」は排気管3(「排気マニホールドからの排気管」)を介して接続され(「が直接連結され」)るものの本件発明1のように「分岐することなく」直接連結されるものではなく、 舶用ディーゼルエンジン1(「ディーゼルエンジン本体」)から排出された直後の排ガスの熱を回収する(「排ガスのエネルギを熱回収する」)のは「一次熱回収部16及び二次熱回収部22」であって本件発明1のように「タービン」ではなく、出口温度(「出口における排ガスの温度」)は「一次熱回収部16及び二次熱回収部22」の出口温度であって本件発明1のように「タービン出口における排ガスの温度」ではなく、流出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料が使用されているとき(「排ガスにおける硫黄成分の含有量を低減することで」)排気管3、排ガスエコノマイザ10及び熱回収ユニット20(「排気管」)における硫酸腐食(「低温腐食」)を防止可能な(「の発生を抑制可能な」)120~140℃に確保されるようにする(「180℃以下まで低下させ、且つ、排気管における低温腐食の発生を抑制することが可能な一定温度以上に維持するエンジンの運転条件とする」)のは「排気管3、排ガスエコノマイザ10及び熱回収ユニット20」(「排気管」)であって本件発明1のように「タービン出口側の排気管」におけるものではない点。 (6) 相違点の判断 上記相違点について検討する。 ア 相違点1の1について 相違点1の1について検討する。 (ア) 引用文献7及び甲第8号証にて例示される周知技術1 上記(2)ウのとおり、ディーゼルエンジンの技術分野において、 「2ストローク1サイクルのユニフロー掃気方式のクロスヘッド式内燃機関である舶用ディーゼルエンジン。」 は周知の技術(周知技術1)である。 (イ) 組み合わせ容易 甲3発明1の「舶用ディーゼルエンジン1」(「ディーゼルエンジン本体」)を備える「排熱回収システム101」(「内燃機関である舶用ディーゼルエンジン」)について、甲第3号証においては、「舶用ディーゼルエンジン1」の具体的な形式を特定する記載は見られないが、ディーゼルエンジンの技術分野における周知技術1を採用することに格別の困難性は認められず、相違点1の1に係る本件発明1の発明特定事項に想到することは当業者が容易になし得るものである。 イ 相違点2の1について 相違点2の1について検討する。 (ア) 甲第4号証及び甲第5号証にて例示される周知技術2 上記(3)ウのとおり、ディーゼルエンジンの技術分野において、 「ディーゼルエンジン本体に燃料として低硫黄留出油だけを供給すること。」 は周知の技術(周知技術2)である。 (イ) 組み合わせ容易 甲第3号証の段落【0005】の「排ガス中の硫黄酸化物の低減のため、使用する燃料を、残渣油よりも硫黄分が少ない低硫黄燃料である留出油(A重油)又は軽油へと転換していくことが求められている。」なる記載、段落【0006】の「ただし、低硫黄燃料は残渣油よりも高価であって、航行に必要となる燃料量は膨大である。・・・航行状況に応じて硫黄分の異なる複数種の燃料のうち一種を選択的に使用し、それにより指定海域における規制をクリアしつつも輸送コストの高騰の抑制を図ることが考えられる。」なる記載及び段落【0007】の「低硫黄燃料の使用を想定した場合には、排ガスエコノマイザの出口温度をより低温になるまで熱回収しても、硫酸腐食を発生させないで済む。」なる記載からみて、排ガス中の硫黄酸化物の低減のためには、本来は「留出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料」(「低硫黄留出油」)を使用することが求められているものの、甲3発明1が、「残渣油(C重油)等の高硫黄燃料」と「留出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料」(「低硫黄留出油」)のうち一種を「選択的に」使用する(「供給する」)のは、低硫黄燃料は残渣油よりも高価であって、航行に必要となる燃料量は膨大であることから、専ら輸送コストの抑制を図るためであって、排ガス中の硫黄酸化物を低減するという本来的な技術的観点からすると、排気管3、排ガスエコノマイザ10及び熱回収ユニット20(「排気管」)における硫酸腐食(「低温腐食」)を防止可能(「の発生を抑制可能」)とするように、「留出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料」(「低硫黄留出油」)を使用する(「供給する」)ことが望ましいことは明らかである。 そうすると、甲3発明1において、同様に、舶用ディーゼルエンジンの技術分野に属し、排気管における低温腐食の発生を抑制可能とすることを課題とする甲第4号証及び甲第5号証にて例示される周知技術2のように「ディーゼルエンジン本体に燃料として低硫黄留出油だけを供給する」ように構成することにより、相違点2の1に係る本件発明1の発明特定事項に想到することは当業者が容易になし得るものである。 ウ 相違点3の1について 相違点3の1について検討する。 (ア) 甲第1号証及び甲第2号証にて例示される周知技術3の1 上記(4)ウのとおり、舶用ディーゼルエンジンの技術分野において、 「ディーゼルエンジン本体からの排ガスにより駆動して熱回収するタービン及び前記タービンと同軸回転することで前記ディーゼルエンジン本体に燃焼用気体を供給する圧縮機と、 タービンを駆動した後の全量の排ガスのエネルギを熱回収する熱回収装置と、 を備え、 タービンは、ディーゼルエンジン本体の排気マニホールドからの排気管が分岐することなく直接連結され、ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスをタービンに供給するものであること。」 は周知の技術(「周知技術3の1」)である。 (イ) 組み合わせ容易 甲3発明1は、全量の排ガスの熱を回収する(「排ガスのエネルギを熱回収する」)一次熱回収部16及び二次熱回収部22(「熱回収装置」)を備え、甲第3号証に記載された排熱回収システム101では、一次熱回収部16及び二次熱回収部22にわたって多段的に排ガスの熱を回収しており、各段において出口温度をそれぞれ一次熱回収部16からの出口管15の出口温度は例えば160℃(段落【0039】)及び二次熱回収部22からの分岐管21の出口温度は例えば120℃~140℃(段落【0042】及び【0043】)に確保されるように制御しているものであることから、同様に排ガスの熱を回収する(「排ガスのエネルギを熱回収する」)機能を備えた周知技術3の1のようなディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスを供給する「タービン」及び「圧縮機」を熱回収部の一態様として採用し、その際には、舶用ディーゼルエンジン1(「ディーゼルエンジン本体」)から排出された直後の排ガスの熱を「タービン」により回収する(「排ガスのエネルギを熱回収する」)ことに伴うその出口温度の制御も同様に行って、下流側の熱回収装置における排ガスの熱を回収する必要性や排ガスの熱を回収する能力を適宜鑑みつつ、甲3発明1の二次熱回収部22からの分岐管21の出口温度を120℃~140℃以上に確保することには配慮して、「タービン」出口における排ガスの温度を180℃以下まで低下させることができるようにする、すなわち、硫酸腐食(「低温腐食」)を広範囲にわたって防止可能(「の発生を抑制可能」)となるように、排気管のうちの上流側に位置する「タービン出口における排ガスの温度」を、「タービン出口側の排気管」における硫酸腐食(「低温腐食」)を防止可能(「の発生を抑制可能」)な120~140℃より高い温度に確保されるようにする(「180℃以下まで低下させ、且つ、排気管における低温腐食の発生を抑制することが可能な一定温度以上に維持するエンジンの運転条件とする」)ことに格別な困難性は認められない。ここで、本件発明1のように「180℃以下まで低下させ」るという数値範囲の上限値を規定する事項については「180℃以下まで」排ガスのエネルギを熱回収することにより「低下させ」ることができるという効果を特定するものに過ぎず排気管における低温腐食の発生を抑制するために必要な条件として技術的な意義を持つものとは認められない。 そうすると、甲3発明1及び周知技術3の2に基いて相違点3の1に係る本件発明1の発明特定事項に想到することは当業者が容易になし得るものである。 エ 令和5年3月31日に提出された意見書における特許権者の主張について (ア) 令和5年3月31日に提出された意見書における特許権者の主張 同意見書において、特許権者は、本件発明1または2と甲第3号証に記載された発明と相違する点について、上記意見書の「(ウ)本件訂正発明1,2と先行文献に記載の発明との相違点」欄において、以下のように主張している(下線は当審において付した。)。 a 「本件訂正発明1,2は、2ストローク1サイクルのユニフロー掃気方式のクロスヘッド式内燃機関である舶用ディーゼルエンジンに関するものである。 一方、引用文献3には、舶用ディーゼルエンジンとの記載しかなく、本件訂正発明1,2の舶用ディーゼルエンジンとは相違するものである。」(意見書第5ページ下から第17行ないし第14行) b 「本件訂正発明1,2は、タービンは、ディーゼルエンジン本体の排気マニホールドからの排気管が分岐することなく直接連結され、ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスをタービンに供給する。 一方、引用文献3は、排ガスエコノマイザ10は、出口管15に対して分岐管21が設けられており、切換え手段23により排ガスを出口管15と分岐管21との間で切り換えるものであり、排気管が分岐することなく直接タービンに連結される本件訂正発明1,2とは、構造が全く相違している。」(意見書第6ページ第3行ないし第10行) c 「本件訂正発明1,2は、低硫黄留出油が燃焼して発生した排ガスに含まれる硫黄成分によるタービン出口側の排気管における低温腐食の発生を抑制可能な180℃以下まで低下させるものである。 一方、引用文献3は、段落[0042][0043]に、「分岐管21の出口温度は、二次熱回収部22で回収する熱量分だけ出口管15の出口温度よりも低くなるが、低硫黄燃料の使用時には、高硫黄燃料の使用時よりも出口温度が低くなっても、硫酸腐食を発生させないで済む。そこで、二次熱回収部22で回収される熱量は、低硫黄燃料を使用したときであっても硫酸腐食を防止するために分岐管21の出口温度が十分に高い温度(例えば120~140℃)に確保されるようにして、設定されている。」と記載されてことから、本件訂正発明1,2にように、排気管における低温腐食の発生を抑制するものではなく、分岐管21の出口温度を十分に高い温度(例えば120~140℃)に確保することで、硫酸腐食を防止するものであり、本件訂正発明1,2とは、技術思想が相違している。」(意見書第6ページ第11行ないし第24行) d 「本件訂正発明1,2は、タービンの出口側の排気管における低温腐食の発生を抑制することが可能な一定温度以上に維持するエンジンの運転条件とするものであり、このような構成は、引用文献3には記載されていない。」(意見書第6ページ第25行ないし第27行) e 「引用文献4には、燃料として重油や軽油を用いるものが記載されているだけであり、引用文献5には、供試燃料として低硫黄分の軽油(JIS2号,S分5ppm)を使用するものが記載されているだけであり、本件訂正発明1,2の構成について記載されていない。」(意見書第6ページ第28行ないし第7ページ第2行) f 「引用文献1,2には、低硫黄留出油が燃焼して発生した排ガスに含まれる硫黄成分によるタービン出口側の排気管における低温腐食の発生を抑制可能な180℃以下まで低下させることについて、全く記載されていない。」(意見書第7ページ第3行ないし第5行) (イ) 当審の見解 a 上記(ア)aの主張について 上記(ア)aの主張の点は、上記相違点1の1に関するものであり、その判断については、上記アのとおりである。 したがって、上記(ア)aの主張は採用することができない。 b 上記(ア)bの主張について 上記(ア)bの主張の点は、上記相違点3の1に関するものであり、その判断については、上記ウのとおりである。 したがって、上記(ア)bの主張は採用することができない。 c 上記(ア)cの主張について 上記(ア)cの主張の点は、上記(5)キのとおり、一致点である。 したがって、上記(ア)cの主張は採用することができない。 d 上記(ア)dの主張について 上記(ア)dの主張の点は、上記(5)キのとおり、一致点である。 したがって、上記(ア)dの主張は採用することができない。 e 上記(ア)eの主張について 上記(ア)eの主張の点は、上記相違点2の1に関するものであり、その判断については、上記イのとおりである。 したがって、上記(ア)eの主張は採用することができない。 f 上記(ア)fの主張について 上記(ア)fの主張の点は、上記(5)キのとおり、一致点である。 したがって、上記(ア)fの主張は採用することができない。 オ 令和5年9月29日に提出された意見書における特許権者の主張について (ア) 令和5年9月29日に提出された意見書における特許権者の主張 同意見書において、特許権者は、本件発明1または2と甲第3号証に記載された発明と相違する点について、上記意見書の「(ウ)本件訂正発明1,2と先行文献に記載の発明との相違点」欄において、以下のように主張している(下線は当審において付した。)。 a 「本件訂正発明1,2と引用文献3とを比較すると、本件訂正発明1,2は、ディーゼルエンジン本体からの排ガスにより駆動して熱回収するタービンと、タービンとお同軸回転することでディーゼルエンジン本体に燃焼用気体を供給する圧縮機とを有する。そして、タービンは、ディーゼルエンジン本体の排気マニホールドからの排気管が分岐することなく直接連結され、ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスをタービンに供給する。 しかし、引用文献3には、タービンと圧縮機について記載されていない。そして、引用文献3は、第1熱回収部12と二次熱回収部22は、ディーゼルエンジン本体から排出された直後の全量の排ガスのエネルギを熱回収ものではない。すなわち、本件訂正発明1,2と引用文献3とは、構成が全く相違している。」(意見書第4ページ第12行ないし第21行) b 「そして、本件訂正発明1,2は、低硫黄留出油が燃焼して発生した排ガスに含まれる硫黄成分によるタービン出口側の排気管における低温腐食の発生を抑制可能な180℃以下まで低下させるものである。 しかし、引用文献3は、段落[0042][0043]に、「分岐管21の出口温度は、二次熱回収部22で回収する熱量分だけ出口管15の出口温度よりも低くなるが、低硫黄燃料の使用時には、高硫黄燃料の使用時よりも出口温度が低くなっても、硫酸腐食を発生させないで済む。そこで、二次熱回収部22で回収される熱量は、低硫黄燃料を使用したときであっても硫酸腐食を防止するために分岐管21の出口温度が十分に高い温度(例えば120~140℃)に確保されるようにして、設定されている。」と記載されていることから、本件訂正発明1,2にように、排気管における低温腐食の発生を抑制するものではなく、分岐管21の出口温度を十分に高い温度(例えば120~140℃)に確保することで、硫酸腐食を防止するものであり、本件訂正発明1,2とは、技術思想が相違している。」(意見書第4ページ第22行ないし第5ページ第6行) c 「引用文献1は、産業プラントに装備される排熱回収発電装置である。引用文献1には、ディ-ゼルエンジン3と、図示しない燃料供給系統と、過給機7のタービン及び過給機7の圧縮機と、第一排ガスエコのマイザ41および第二排ガスエコノマイザ13および第三排熱回収器15とを備えたものが記載されている。 しかし、本件訂正発明1,2は、2ストローク1サイクルのユニフロー掃気方式のクロスヘッド式内燃機関である舶用ディーゼルエンジンに関するものであり、産業プラントに装備される排熱回収発電装置ではない。舶用ディーゼルエンジンと産業プラントとは、その規模や適用条件などが大きく相違するものであり、適用分野が相違する引用文献3と引用文献1とを組み合わせることは、容易ではなく、且つ、阻害要因に該当する。」(意見書第5ページ第7行ないし第16行) d 「引用文献3には、タービンと圧縮機について記載されていないし、引用文献3の構成は、本件訂正発明1,2の構成と全く相違する。」(意見書第5ページ第25行ないし第26行) e「また、引用文献1は、産業プラントに装備される排熱回収発電装置であって、2ストローク1サイクルのユニフロー掃気方式のクロスヘッド式内燃機関である舶用ディーゼルエンジンである本件訂正発明1,2とは、技術分野が相違しており、引用文献3に引用文献1を組み合わせることは、困難である。」(意見書第5ページ第26行ないし第6ページ第1行) (イ) 当審の見解 a 上記(ア)a及びdの主張について 上記(ア)a及びdの主張の点は、上記相違点3の1に関するものであり、その判断については、上記ウのとおりである。 したがって、上記(ア)a及びdの主張は採用することができない。 b 上記(ア)bの主張について 上記(ア)bの主張の点は、上記(5)キのとおり、一致点である。 したがって、上記(ア)bの主張は採用することができない。 c 上記(ア)c及びeの主張について 甲第1号証(注:上記(ア)c及びeの主張における「引用文献1」は甲第1号証を意味するものと解する。)について、上記(4)ア(ア)のとおり同甲第1号証の段落【0020】に[第一実施形態]として「本実施形態にかかる排熱回収発電装置1は、船舶の推進用主機としてのディーゼルエンジン(内燃機関)3の排熱回収用として設置された構成を例としている。」と記載されていることから、甲第1号証に記載された排熱回収発電装置1は、船舶の推進用主機としてのディーゼルエンジン(内燃機関)3に関するものであり、上記(4)ウ及び上記ウ(ア)の舶用ディーゼルエンジンの技術分野における周知技術3の1を例示するものであると認められる。 そして、相違点3の1の判断については、上記ウのとおりである。 したがって、上記(ア)c及びeの主張は採用することができない。 (7) 小活 したがって、本件発明1は、甲3発明1、引用文献7及び8にて例示される周知技術1、甲第4号証及び甲第5号証にて例示される周知技術2並びに甲第1号証及び甲第2号証にて例示される周知技術3の1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 2 本件発明2について 本件発明2は、上記第3において示したとおりのものである。 (1) 甲第3号証に記載された発明 甲3発明1は、上記1(1)ウのとおりである。 (2) 引用文献7及び引用文献8にて例示される周知技術1 周知技術1は、上記1(2)ウのとおりである。 (3) 甲第4号証及び甲第5号証にて例示される周知技術2 周知技術2は、上記1(3)ウのとおりである。 (4) 甲第1号証及び甲第2号証にて例示される周知技術3の2 周知技術3の2は、上記1(4)エのとおりである。 (5) 甲第1号証に記載された技術的事項 ア 甲第1号証の記載事項 甲第1号証には以下のような記載がある。 (ア) 「【0025】 過給機7で圧縮された圧縮空気は、たとえば、150~160℃であり、第一空気冷却器9および第二空気冷却器35を通ってディーゼルエンジン3に供給され、図示しない燃料供給系から供給された燃料と混合されて燃焼される。燃焼に伴う排ガスは、過給機7の作動に用いられた後、排ガス経路37を通って煙突39から外部に排出される。過給機7を出た排ガスの温度は、たとえば、220℃程度である。 排ガス経路37には、第二排ガスエコノマイザ13と、第二排ガスエコノマイザ13の上流側に配置された第一排ガスエコノマイザ41と、が設置されている。排ガス経路37は、排ガスが、第一排ガスエコノマイザ41および第二排ガスエコノマイザ13を通過する、両者のいずれか一方を通過する、あるいは、両者を通過しない、のいずれかを選択できるように構成されている。」(上記1(4)ア(イ)に対して段落【0025】を再掲。ただし、上記1(4)ア(イ)とは下線の位置を異ならせている。) イ 甲第1号証に記載された技術的事項 上記アの記載事項及び上記1(4)ア(ウ)の【図1】の図示内容からみて、引用文献1には以下の技術的事項(以下「甲1技術的事項」という。)である。 「過給機7のタービンTを駆動した後の全量の排ガスを第一排ガスエコノマイザ41および第二排ガスエコノマイザ13を通過しないで外部に排出する煙突39を備えること。」 (6) 対比 本件発明2と甲3発明1を対比すると、本件発明1と甲3発明1の対比についての上記1(5)ア、イ及びウについては同様であり、同オ及びカについては以下のオ及びカのとおりである。 オ 甲3発明1の「排気管3」は本件発明2の「排気マニホールドからの排気管」に相当することから、甲3発明1の「舶用ディーゼルエンジン1の排気管3を介して接続され」ることは本件発明2の「ディーゼルエンジン本体の排気マニホールドからの排気管が分岐することなく直接連結され」ることと「ディーゼルエンジン本体の排気マニホールドからの排気管が直接連結され」ることという限りにおいて一致する。 さらに、甲3発明1の「留出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料が使用されているとき舶用ディーゼルエンジン1から排出された全量の排ガスを一次熱回収部16及び二次熱回収部22に供給」することは本件発明2の「ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスをタービンに供給」することと「ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスを熱回収部に供給」することという限りにおいて一致する。そして、甲3発明1の「一次熱回収部16及び二次熱回収部22」は本件発明2の「タービン」と「ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスを供給する熱回収部」という限りにおいて一致する。 カ 甲3発明1の「一次熱回収部16及び二次熱回収部22の出口温度」は本件発明2の「タービン出口における排ガスの温度」と「ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスを供給する熱回収部における排ガスの温度」という限りにおいて一致する。 また、甲3発明1の「流出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料が使用されているとき」は、甲第3号証の段落【0042】の「低硫黄燃料の使用時には、高硫黄燃料の使用時よりも出口温度が低くなっても、硫酸腐食を発生させないで済む。」なる記載からみて、これは、排ガスにおける硫黄成分の含有量が低減されていることによるものと理解できることから、本件発明2の「排ガスにおける硫黄成分の含有量を低減すること」に相当する状況であるといえる。 さらに、甲3発明1の「排気管3、排ガスエコノマイザ10及び熱回収ユニット20」は本件発明2の「排気管」に相当し、甲3発明1の「排気管3、排ガスエコノマイザ10及び熱回収ユニット20」は本件発明2の「タービン出口側の排気管」と「排気管」という限りにおいて一致する。また、甲3発明1の「硫酸腐食」は本件発明2の「低温腐食」に相当することから、甲3発明1の「硫酸腐食を防止可能な」は本件発明2の「低温腐食の発生を抑制可能な」に相当する。さらに、甲3発明1の「120~140℃に確保されるようにする」ことは、甲第3号証の段落【0042】の「二次熱回収部22で回収される熱量は、低硫黄燃料を使用したときであっても硫酸腐食を防止するために分岐管21の出口温度が十分に高い温度(例えば120~140℃)に確保されるようにして、設定されている。」なる記載からみて、本件発明2の「180℃以下まで低下させ、且つ、タービンの出口側の排気管における低温腐食の発生を抑制することが可能な一定温度以上に維持するエンジンの運転条件とする」ことと、「180℃以下まで低下させ、且つ、排気管における低温腐食の発生を抑制することが可能な一定温度以上に維持するエンジンの運転条件とする」ことという限りにおいて一致するものであるといえる。 そうすると、甲3発明1の「一次熱回収部16及び二次熱回収部22は、舶用ディーゼルエンジン1から排出された直後の排ガスの熱を回収することで一次熱回収部16及び二次熱回収部22の出口温度を、流出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料が使用されているとき排気管3、排ガスエコノマイザ10及び熱回収ユニット20における硫酸腐食を防止可能な120~140℃に確保されるようにする」ことは、本件発明2の「タービンは、ディーゼルエンジン本体から排出された直後の排ガスのエネルギを熱回収することでタービン出口における排ガスの温度を、排ガスにおける硫黄成分の含有量を低減することでタービン出口側の排気管における低温腐食の発生を抑制可能な180℃以下まで低下させ、且つ、タービンの出口側の排気管における低温腐食の発生を抑制することが可能な一定温度以上に維持するエンジンの運転条件とする」ことと、「ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスを供給する熱回収部は、ディーゼルエンジン本体から排出された直後の排ガスのエネルギを熱回収することでディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスを供給する熱回収部における排ガスの温度を、排ガスにおける硫黄成分の含有量を低減することで排気管における低温腐食の発生を抑制可能な180℃以下まで低下させ、且つ、排気管における低温腐食の発生を抑制することが可能な一定温度以上に維持するエンジンの運転条件とする」ことという限りにおいて一致する。 そうすると、本件発明2は、以下の点において甲3発明1と一致及び相違するものである。 <一致点> 「内燃機関である舶用ディーゼルエンジンにおいて、 ディーゼルエンジン本体と、 ディーゼルエンジン本体に燃料として低硫黄留出油を供給する燃料供給系統と、 を備え、 ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスを供給する熱回収部は、ディーゼルエンジン本体の排気マニホールドからの排気管が直接連結され、ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスを熱回収部に供給し、 ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスを供給する熱回収部は、ディーゼルエンジン本体から排出された直後の排ガスのエネルギを熱回収することでディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスを供給する熱回収部における排ガスの温度を、排ガスにおける硫黄成分の含有量を低減することで排気管における低温腐食の発生を抑制可能な180℃以下まで低下させ、且つ、排気管における低温腐食の発生を抑制することが可能な一定温度以上に維持するエンジンの運転条件とする、 ディーゼルエンジン。」 <相違点1の2> 「内燃機関である舶用ディーゼルエンジン」が、本件発明2は「2ストローク1サイクルのユニフロー掃気方式のクロスヘッド式」内燃機関である舶用ディーゼルエンジンであるのに対し、甲3発明1は排熱回収システム101(内燃機関である舶用ディーゼルエンジン)ではあるものの、本件発明2のような「2ストローク1サイクルのユニフロー掃気方式のクロスヘッド式」という特定はない点。 <相違点2の2> ディーゼルエンジン本体に燃料を供給する「燃料供給系統」が、本願発明2においては「低硫黄留出油だけ」を供給するものであるのに対し、甲3発明1においては「残渣油(C重油)等の高硫黄燃料」と「留出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料」(「低硫黄留出油」)のうち一種を「選択的に」使用する(「供給する」)ものである点。 <相違点3の2> 本件発明2は、 「ディーゼルエンジン本体からの排ガスにより駆動して熱回収するタービン及びタービンと同軸回転することでディーゼルエンジン本体に燃焼用気体を供給する圧縮機」を備え、 「タービンを駆動した後の」全量の排ガスのエネルギを「熱回収しないで大気に放出する煙突」と、を備えるものであり、 ディーゼルエンジン本体の排気マニホールドからの排気管が「分岐することなく」直接連結され、ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスを供給されるのは「タービン」であり、 「タービン」は、ディーゼルエンジン本体から排出された直後の排ガスのエネルギを熱回収することで「タービン」出口における排ガスの温度を、排ガスにおける硫黄成分の含有量を低減することで「タービン出口側の」排気管における低温腐食の発生を抑制可能な180℃以下まで低下させ、且つ、排気管における低温腐食の発生を抑制することが可能な一定温度以上に維持するエンジンの運転条件とするものであるのに対し、 甲3発明1は、 本件発明2のような「タービン」及び「圧縮機」を備えておらず、 全量の排ガスの熱を回収する(「排ガスのエネルギを熱回収する」)一次熱回収部16及び二次熱回収部22(「熱回収装置」)を備えており本件発明2のような「タービンを駆動した後の」全量の排ガスのエネルギを「熱回収しないで大気に放出する煙突」は備えておらず、 舶用ディーゼルエンジン1(「ディーゼルエンジン本体」)の排気管3(「排気マニホールドからの排気管」)を介して接続され(「が直接連結され」)、留出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料が使用されているとき舶用ディーゼルエンジン1(「ディーゼルエンジン本体」)から排出された全量の排ガスを供給されるのは「一次熱回収部16及び二次熱回収部22」であって本件発明2のような「タービン」ではなく、また、「一次熱回収部16及び二次熱回収部22」は排気管3(「排気マニホールドからの排気管」)を介して接続され(「が直接連結され」)るものの本件発明2のように「分岐することなく」直接連結されるものではなく、 舶用ディーゼルエンジン1(「ディーゼルエンジン本体」)から排出された直後の排ガスの熱を回収する(「排ガスのエネルギを熱回収する」)のは「一次熱回収部16及び二次熱回収部22」であって本件発明2のように「タービン」ではなく、出口温度(「出口における排ガスの温度」)は「一次熱回収部16及び二次熱回収部22」の出口温度であって本件発明2のように「タービン出口における排ガスの温度」ではなく、流出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料が使用されているとき(「排ガスにおける硫黄成分の含有量を低減することで」)排気管3、排ガスエコノマイザ10及び熱回収ユニット20(「排気管」)における硫酸腐食(「低温腐食」)を防止可能な(「の発生を抑制可能な」)120~140℃に確保されるようにする(「180℃以下まで低下させ、且つ、排気管における低温腐食の発生を抑制することが可能な一定温度以上に維持するエンジンの運転条件とする」)のは「排気管3、排ガスエコノマイザ10及び熱回収ユニット20」(「排気管」)であって本件発明2のように「タービン出口側の排気管」におけるものではない点。 (7) 相違点の判断 上記相違点について検討する。 ア 相違点1の2及び相違点2の2について 相違点1の2及び相違点2の2は、相違点1の1及び相違点2の1と同様であることから、その判断は上記1(6)ア及びイと同様である。 イ 相違点3の2について 相違点3の2について検討する。 (ア) 甲第1号証及び甲第2号証にて例示される周知技術3の2 上記1(4)エのとおり、舶用ディーゼルエンジンの技術分野において、 「ディーゼルエンジン本体からの排ガスにより駆動して熱回収するタービン及び前記タービンと同軸回転することで前記ディーゼルエンジン本体に燃焼用気体を供給する圧縮機 を備え、 タービンは、ディーゼルエンジン本体の排気マニホールドからの排気管が分岐することなく直接連結され、ディーゼルエンジン本体から排出された全量の排ガスをタービンに供給するものであること。」 は周知の技術(周知技術3の2)である。 (イ) 甲1技術的事項 甲1技術的事項は、上記(5)イのとおりである。 a 甲1技術的事項の「過給機7のタービンT」は本件発明2の「タービン」に相当し、同様に、「排ガスを第一排ガスエコノマイザ41および第二排ガスエコノマイザ13を通過しないで外部に排出する煙突39」は「排ガスのエネルギを熱回収しないで大気に放出する煙突」に相当する。 b 上記aを踏まえて、甲1技術的事項を本件発明2の用語を用いて整理すると、以下のとおりとなる。 「タービンを駆動した後の全量の排ガスのエネルギを熱回収しないで大気に放出する煙突を備えること。」 (ウ) 組み合わせ容易 甲3発明1は、全量の排ガスの熱を回収する(「排ガスのエネルギを熱回収する」)一次熱回収部16及び二次熱回収部22(「熱回収装置」)を備えるものであることから、同様に排ガスの熱を回収する(「排ガスのエネルギを熱回収する」)機能を備えた周知技術3及び甲1技術的事項を参照して、甲3発明1における一次熱回収部16及び二次熱回収部22(「熱回収装置」)に代えて周知技術3の2のような「タービン」及び「圧縮機」並びに甲1技術的事項のような「煙突」を採用し、その際に、舶用ディーゼルエンジン1(「ディーゼルエンジン本体」)から排出された直後の排ガスの熱を「タービン」により回収する(「排ガスのエネルギを熱回収する」)ことで、硫酸腐食(「低温腐食」)を広範囲にわたって防止可能(「の発生を抑制可能」)となるように、排気管のうちの上流側に位置する「タービン出口における排ガスの温度」を、「タービン出口側の排気管」における硫酸腐食(「低温腐食」)を防止可能(「の発生を抑制可能」)な120~140℃より高い温度に確保されるようにする(「180℃以下まで低下させ、且つ、排気管における低温腐食の発生を抑制することが可能な一定温度以上に維持するエンジンの運転条件とする」)ことにより、相違点3の2に係る本件発明2の発明特定事項に想到することは当業者が容易になし得るものである。 ウ 令和5年3月31日に提出された意見書における特許権者の主張について 同意見書における特許権者の主張についての当審の見解は、上記1(6)エ(イ)と同様であり、いずれの主張も採用することができない。 エ 令和5年9月29日に提出された意見書における特許権者の主張について 同意見書における特許権者の主張についての当審の見解は、上記1(6)オ(イ)と同様であり、いずれの主張も採用することができない。 (8) 小活 したがって、本件発明2は、甲3発明1、甲第4号証及び甲第5号証にて例示される周知技術2、甲第1号証及び甲第2号証にて例示される周知技術3の2並びに甲1技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 3 本件発明3について 本件発明3は、上記第3において示したとおりのものである。 (1) 甲第6号証に記載された技術的事項 ア 甲第6号証の記載事項 甲第6号証には以下のような記載がある。 (ア) 「【0025】 1燃料は、不純物が多く粘度が高い燃料(本実施形態ではC重油)としている。また、第2燃料は、不純物が少なく粘度が低い燃料(本実施形態ではマリンガスオイル)としている。航行する海域の排出規制に応じて供給燃料切換部6を切り換えることにより、排出規制に応じた燃料をディーゼルエンジン2に供給することができる。即ち、硫黄酸化物の排出規制が厳しい海域では、低硫黄燃料である第2燃料(マリンガスオイル)を利用し、それ以外の海域では第1燃料(C重油)を利用して、ディーゼルエンジン2を駆動することができる。なお、供給燃料切換部6の切り換えは、オペレータの適宜の操作により行うことができる。」 (イ) 「【0027】 第2燃料供給路5は、第2燃料タンク9と、燃料クーラー10を備えている。第2燃料タンク9には、ディーゼルエンジン2に供給するための第2燃料(マリンガスオイル)が貯蓄されている。燃料クーラー10は、第2燃料タンク9と供給燃料切換部6との間に配置されており、ディーゼルエンジン2に供給される第2燃料を冷却するように構成されている。即ち、ディーゼルエンジン2に供給される燃料は、一部が使われずに燃料タンクに戻る。このとき、燃料は、ディーゼルエンジン2の熱によって温度が上昇している。従って、第2燃料(マリンガスオイル)をこの環境で使用すると、温度の上昇により粘度が下がるため、当該第2燃料をそのままディーゼルエンジン2の燃料噴出ポンプ3に供給すると不具合の原因になり得る。そこで、燃料クーラー10によって第2燃料を適切な温度(例えば40℃以下)まで冷却することにより、第2燃料の粘度が燃料噴出ポンプ3の許容範囲に収まるように調整したうえで、当該燃料噴出ポンプ3に供給するように構成されている。なお、燃料クーラー10の構成については後述する。」 (ウ) 「 [図:0001419301000007.jpg] 」(【図1】) イ 甲第6号証に記載された技術的事項 上記アの記載事項からみて、甲第6号証には、以下の発明(以下「甲第6技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「第2燃料タンク9、燃料クーラー10、供給燃料切換部6及び燃料噴出ポンプ3は、ディーゼルエンジン2に対して適切な温度(例えば40℃以下)の低硫黄燃料である第2燃料(マリンガスオイル)を供給すること。」 (2) 対比 本件発明3と甲3発明1を対比すると、本件発明3は、甲3発明1と、上記各相違点に加えて、さらに、以下の点で相違するものである。 <相違点4> 「燃料供給系統」が「ディーゼルエンジン本体に対して低硫黄留出油を供給する」にあたり、本件発明3は「常温の」低硫黄留出油を供給するものであるのに対し、甲3発明1において使用する(「供給する」)留出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料(「低硫黄留出油」)の温度については不明である点。 (3) 相違点の判断 ア 相違点1の1、相違点2の1、相違点3の1、相違点1の2、相違点2の2及び相違点3の2について 相違点1の1、相違点2の1、相違点3の1、相違点1の2、相違点2の2及び相違点3の2についての判断は上記のとおりである。 イ 相違点4について 相違点4について検討する。 (ア) 甲第6号証に記載された技術的事項 甲6技術的事項は、上記(1)イのとおりである。 a 甲6技術的事項の「第2燃料タンク9、燃料クーラー10、供給燃料切換部6及び燃料噴出ポンプ3」は本件発明3の「燃料供給系統」に相当し、同様に、「ディーゼルエンジン2」は「ディーゼルエンジン本体」に相当する。 また、甲6技術的事項の「適切な温度(例えば40℃以下)」は本件発明3の「常温」に相当し、同様に、「低硫黄燃料である第2燃料(マリンガスオイル」は「低硫黄留出油」に相当することから、甲6技術的事項の「適切な温度(例えば40℃以下)の低硫黄燃料である第2燃料(マリンガスオイル)」は本件発明3の「常温の低硫黄留出油」に相当する。 さらに、甲6技術的事項の「供給する」ことは本件発明3の「供給する」ことに相当する。 b 上記aを踏まえて、甲6技術的事項を本件発明3の用語を用いて整理すると、以下のとおりとなる。 「燃料供給系統は、ディーゼルエンジン本体に対して常温の低硫黄留出油を供給すること。」 (イ) 組み合わせ容易 甲3発明1において、「留出油(A重油)又は軽油等の低硫黄燃料」(「低硫黄留出油」)を使用する(「供給する」)にあたり、同様に、舶用ディーゼルエンジンの技術分野に属する甲6技術的事項を参照して、相違点4に係る本件発明3の発明特定事項のように構成することは当業者が容易になし得るものである。 (4) 小活 したがって、請求項1を引用する本件発明3は、甲3発明1、甲第4号証及び甲第5号証にて例示される周知技術2、甲第1号証及び甲第2号証にて例示される周知技術3の1並びに甲6技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 また、請求項2を引用する本件発明3は、甲3発明1、甲第4号証及び甲第5号証」にて例示される周知技術2、甲第1号証及び甲第2号証にて例示される周知技術3の2、甲1技術的事項並びに甲6技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 本件発明4について 本件発明4は、上記第3において示したとおりのものである。 (1) 甲第3号証に記載された発明2 ア 甲第3号証の記載事項 甲第3号証には以下のような記載がある。 (ア) 「【0045】 (廃熱回収システム) 以下、図1に戻り、第1実施形態に係る廃熱回収システム101の構成を具体的に説明する。この廃熱回収システム101は、上記排ガスエコノマイザ10及び熱回収ユニット20、高圧ドラム(補助ボイラ又は高圧気水分離器)41、低圧ドラム(低圧気水分離器)42、復水器51、給水系統61、高圧循環水系統62、蒸気系統63、低圧循環水系統64及び低圧混気系統65を備えている。 【0046】 蒸気タービン2aの蒸気排出口には、タービン2a内を通過した蒸気を凝縮させる復水器51が設けられている。復水器51には、凝縮した水を各ドラム41,42に供給するための給水系統61が接続されている。給水ポンプ61Pが駆動されると、復水器51で凝縮した水が、給水フィルタタンク52を介し、エンジン1への掃気を冷却するエアクーラ53へと供給され、エアクーラ53内を通流する過程でエンジン1の廃熱との熱交換により加熱される。エアクーラ53で加熱された水は、給水系統61を介して各ドラム41,42に供給される。 【0047】 高圧ドラム41には高圧循環水系統62が接続されており、給水系統61を介して供給された水が、高圧循環水系統62において循環水として循環する。高圧循環水系統62は、高圧ドラム41を第1熱回収部12の熱交換管12A(図9参照)の一端に接続するライン62Aと、熱交換管12Aと、熱交換管12Aの他端を高圧ドラム41に接続するライン62Bとを有する。ライン62A上の循環ポンプ62Pが駆動されると、循環水が高圧ドラム41からライン62Aを介して熱交換管12Aへと供給され、熱交換管12Aを通流する過程で排ガスとの熱交換により高圧蒸気となる。高圧蒸気となった循環水は、ライン62Bを介して高圧ドラム41に戻る。 【0048】 高圧ドラム41には蒸気系統63が接続されており、高圧ドラム41に送られた高圧蒸気は、高圧ドラム41内で液体の水と分離され、蒸気系統63を介してターボ発電機2の蒸気タービン2aに供給される。蒸気系統63には前述した熱交換管11Aが並列接続されており、高圧ドラム41から送り出された高圧蒸気は、熱交換管11Aを通流する過程で排ガスとの熱交換により更に加熱される。 【0049】 また、低圧ドラム42には低圧循環水系統64が接続されており、給水系統61を介して低圧ドラム42に供給された水が、低圧循環水系統64において循環水として循環する。低圧循環水系統64は、低圧ドラム42を二次熱回収部の熱交換管22A(図9参照)の一端に接続するライン64Aと、熱交換管22Aと、熱交換管22Aの他端を第2熱回収部14の熱交換管14Aの(図9参照)一端に接続するライン64Cと、熱交換管14Aと、熱交換管14Aの他端を低圧ドラム42に接続するライン64Bとを有する。ライン64A上の循環ポンプ64Pが駆動されると、低圧ドラム42内の循環水が、ライン64A、熱交換管22A、ライン64C、熱交換管14A及びライン64Bを順に通流して低圧ドラム42に戻る。 【0050】 高硫黄燃料の使用時には、排ガスが分岐管21を通過しないため、循環水は、熱交換管22Aにおいて熱交換することなく熱交換管14Aへと供給され、熱交換管14Aを通流する過程で排ガスとの熱交換により低圧蒸気となり、低圧蒸気となった循環水が低圧ドラム42に戻る。他方、低硫黄燃料の使用時には、排ガスが分岐管21を通過するため、循環水は、熱交換管22Aを通流する過程で排ガスとの熱交換により加熱される。加熱された循環水は、熱交換管14Aを通流する過程で排ガスとの熱交換により低圧蒸気となり、低圧蒸気となった循環水が低圧ドラム42に戻る。 【0051】 低圧ドラム42には低圧混気系統65が接続されており、低圧ドラム42に送られた低圧蒸気は、低圧ドラム42内で液体の水と分離され、低圧混気系統65を介してターボ発電機2の蒸気タービン2aに供給される。」 イ 甲第3号証に記載された発明2 上記アの記載事項及び上記1(1)ア(エ)の【図1】の図示内容からみて、甲第3号証には、甲3発明1を包含し、さらに以下の技術的事項を含む発明(以下「甲3発明2」という。)が記載されていると認められる。 「一次熱回収部16及び二次熱回収部22は、排ガスの熱を回収して蒸気を生成するための排ガスエコノマイザ10及び熱回収ユニット20、高圧ドラム(補助ボイラ又は高圧気水分離器)41、低圧ドラム(低圧気水分離器)42等で構成され、一次熱回収部16及び二次熱回収部22により生成された蒸気がターボ発電機2の蒸気タービン2aに供給されること。」 (2) 周知技術4 本件出願前において例を挙げるまでもなく以下は周知の技術(以下「周知技術4」という。)である。 「潤滑油系統の不純物除去装置、温水生成設備、カーゴタンクまたは居住区の暖房設備等」が蒸気を必要とする蒸気稼働装置であること。」 (3) 対比 本件発明4と甲3発明2を対比すると、本件発明4は、甲3発明2と、上記相違点1の1 相違点2の1及び相違点3の1に加えて、さらに、以下の点で相違するものである。 <相違点5> 「熱回収装置」について、本件発明4は「タービンを駆動した」排ガスを熱回収して蒸気を生成するためのエコノマイザ、ボイラまたは気水分離ドラム等で構成され、熱回収装置により生成された蒸気が「潤滑油系統の不純物除去装置、温水生成設備、カーゴタンクまたは居住区の暖房設備等の」蒸気を必要とする蒸気稼働装置「から選択される1つまたは複数だけ」に供給されるものであるのに対し、 甲3発明2は排ガスの熱を回収(「排ガスを熱回収」)して蒸気を生成するための排ガスエコノマイザ10及び熱回収ユニット20(「エコノマイザ」)、高圧ドラム(補助ボイラ又は高圧気水分離器)41、低圧ドラム(低圧気水分離器)42(「ボイラまたは気水分離ドラム」)等で構成されるものの、本件発明4のように「タービンを駆動した」排ガスの熱を回収(「排ガスを熱回収」)するものではなく、一次熱回収部16及び二次熱回収部22(「熱回収装置」)により生成された蒸気がターボ発電機2の蒸気タービン2a(「蒸気を必要とする蒸気稼働装置」)に供給されるものの、本件発明4のように「潤滑油系統の不純物除去装置、温水生成設備、カーゴタンクまたは居住区の暖房設備等の」蒸気を必要とする蒸気稼働装置「から選択される1つまたは複数だけ」に供給されるものではない点。 (4) 相違点の判断 ア 相違点1の1、相違点2の1、相違点3の1について 相違点1の1、相違点2の1、相違点3の1についての判断は上記のとおりである。 イ 相違点5について 上記相違点5について検討する。 (ア) 周知技術4 周知技術4は、上記(2)のとおりである。 (イ) 組み合わせ容易 相違点5に係る本件発明4の発明特定事項のうち、「タービンを駆動した」排ガスを熱回収することについては、上記相違点2の判断で述べたとおりである。 また、本件発明4において、甲3発明2においても備えている熱回収装置のみならず、相違点5に係る蒸気を必要とする蒸気稼働装置として例示された「潤滑油系統の不純物除去装置、温水生成設備、カーゴタンクまたは居住区の暖房設備等」については、周知の技術(周知技術4)であり、また、本件発明4のように、蒸気を必要とする蒸気稼働装置から「1つまたは複数だけ」選択するように構成することについては、当業者が必要に応じて適宜設定し得る設計的事項に過ぎず、当業者であれば容易に想到し得るものである。 (5) 小活 したがって、本件発明4は、甲3発明2、甲第4号証及び甲第5号証にて例示される周知技術2、甲第1号証及び甲第2号証にて例示される周知技術3の1及び周知技術4に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、請求項1に係る発明は、甲第3号証に記載された発明、引用文献7及び8にて例示される周知技術、甲第4及び5号証にて例示される周知技術並びに甲第1及び2号証にて例示される周知技術に基いて、請求項2に係る発明は、甲第3号証に記載された発明、引用文献7及び8にて例示される周知技術、甲第4及び5号証にて例示される周知技術、甲第1及び2号証にて例示される周知技術並びに甲第1号証に記載された技術的事項に基いて、請求項1を引用する請求項3に係る発明は、甲第3号証に記載された発明、引用文献7及び8にて例示される周知技術、甲第4及び5号証にて例示される周知技術、甲第1及び2号証にて例示される周知技術並びに甲第6号証に記載された技術的事項に基いて、請求項2を引用する請求項3に係る発明は、甲第3号証に記載された発明、引用文献7及び8にて例示される周知技術、甲第4及び5号証にて例示される周知技術、甲第1及び2号証にて例示される周知技術、甲第1号証に記載された技術的事項並びに甲第6号証に記載された技術的事項に基いて、請求項4に係る発明は、甲第3号証に記載された発明、引用文献7及び8にて例示される周知技術、甲第4及び5号証にて例示される周知技術、甲第1及び2号証にて例示される周知技術並びに例を挙げるまでもない周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。そうすると、本件発明1ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、本件発明1ないし4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2022-700632

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決188件(三菱重工業株式会社、尾道造船株式会社、株式会社ジャパンエンジンコーポレーション ほか)
  • 2021-005817拒絶査定不服審判 / 2022-07-07 / 原査定取消(特許/登録すべき)舶用ディーゼルエンジン
    同じ当事者: 三菱重工業株式会社、株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
  • 2019-003357拒絶査定不服審判 / 2020-06-16 / 原査定取消(特許/登録すべき)内燃機関およびこれを備えた船舶ならびに内燃機関の制御方法
    同じ当事者: 三菱重工業株式会社、株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
  • 2017-004027拒絶査定不服審判 / 2018-01-29 / 原査定取消(特許/登録すべき)内燃機関および船舶ならびに内燃機関の運転方法
    同じ当事者: 三菱重工業株式会社、株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
  • 2014-800029無効審判 / 2015-10-19 / 訂正認容・請求不成立船舶
    同じ当事者: 三菱重工業株式会社、尾道造船株式会社
  • 2024-700394異議申立 / 2026-05-11 / 訂正認容アンモニア燃料ボイラ、及び、アンモニア供給システム
    同じ当事者: 三菱重工業株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)41件(121・B63H)
  • 2023-701369異議申立 / 2025-06-12 / 請求成立(取消)船舶推進軸用の軸受
    共通の審決分類: 121・B63H
  • 2025-700040異議申立 / 2025-04-08 / 維持メタノール燃料船
    共通の審決分類: 121・B63H
  • 2023-700419異議申立 / 2023-11-30 / 訂正認容タンクコンテナ、及び液化ガス燃料船
    共通の審決分類: 121・B63H
  • 2022-700218異議申立 / 2023-05-08 / 請求成立(取消)船舶
    共通の審決分類: 121・B63H
  • 2022-700181異議申立 / 2022-07-05 / 維持エンジンのための燃料処理システムおよびシステムを使用する方法
    共通の審決分類: 121・B63H

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存