特許異議申立
2022-700609
管理装置、管理方法および管理プログラム
- 審判番号
- 2022-700609
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-061941
- 登録番号
- 6996017
- 請求日
- 2022年07月08日
- 審決日
- 2022年09月28日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】PayPay株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 【異議申立人】平野 裕史
- 審判長/審判官
- 審判長 高瀬 勤
- 審判官 梶尾 誠哉
- 審判官 古川 哲也
- 分類
- P1651.113-Y (G06Q) / P1651.121-Y (G06Q) / P1651.537-Y (G06Q) / P1651.536-Y (G06Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第113条、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6996017号発明「管理装置、管理方法および管理プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6996017号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6996017号の請求項1~6に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和3年3月31日に出願され、同年12月17日にその特許権の設定登録がされ、令和4年1月17日に特許公報が発行された。その後、本件特許に対し、同年7月8日に特許異議申立人 平野裕史(以下「異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
特許第6996017号の請求項1~6の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明6」といい、合わせて「本件発明」ともいう。)は、それぞれその特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
デジタルマネーの入金を受ける利用者の識別情報および入金の名目を含む入金要求を受け付ける入金受付部と、
前記入金受付部によって受け付けられた前記入金要求に含まれる前記名目が給与である場合に、当該入金要求に含まれる前記識別情報に紐付けられた総残高のうち給与残高に対する入金処理を行い、前記入金受付部によって受け付けられた前記入金要求に含まれる前記名目が給与以外の名目である場合には、当該入金要求に含まれる前記識別情報に紐付けられた総残高のうち給与以外残高に対する入金処理を行う入金処理部と
を有することを特徴とする管理装置。
【請求項2】
ATM(Automatic Teller Machine)への出金要求であって、前記識別情報を含む前記出金要求を受け付ける出金受付部と、
前記出金受付部によって前記出金要求が受け付けられた場合に、前記出金要求に含まれる前記識別情報に紐付けられた前記総残高のうち前記給与残高からの出金処理を行う出金処理部と
を有することを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記総残高を、前記給与残高と前記給与以外残高とに分けて前記利用者が利用する端末装置に表示させる表示制御部
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の管理装置。
【請求項4】
前記利用者に関する利用者情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記利用者情報に基づき、前記給与残高から前記デジタルマネーを移動させる資金移動部と
を有し、
前記利用者情報は、
給与の仕分けに関する設定情報であって、取引対象を識別する識別情報、前記取引対象の提供元である提供者を識別する識別情報、前記取引対象の金額を含み、
前記資金移動部は、
前記利用者情報に基づき、前記給与残高の一部を、前記総残高を有する決済口座以外の口座、または、前記給与残高のうちの取り置き残高に移動させることを特徴とする請求項3に記載の管理装置。
【請求項5】
コンピュータが実行する管理方法であって、
デジタルマネーの入金を受ける利用者の識別情報および入金の名目を含む入金要求を受け付ける入金受付工程と、
前記入金受付工程によって受け付けられた前記入金要求に含まれる前記名目が給与である場合に、当該入金要求に含まれる前記識別情報に紐付けられた総残高のうち給与残高に対する入金処理を行い、前記入金受付工程によって受け付けられた前記入金要求に含まれる前記名目が給与以外の名目である場合には、当該入金要求に含まれる前記識別情報に紐付けられた総残高のうち給与以外残高に対する入金処理を行う入金処理工程と
を含むことを特徴とする管理方法。
【請求項6】
デジタルマネーの入金を受ける利用者の識別情報および入金の名目を含む入金要求を受け付ける入金受付手順と、
前記入金受付手順によって受け付けられた前記入金要求に含まれる前記名目が給与である場合に、当該入金要求に含まれる前記識別情報に紐付けられた総残高のうち給与残高に対する入金処理を行い、前記入金受付手順によって受け付けられた前記入金要求に含まれる前記名目が給与以外の名目である場合には、当該入金要求に含まれる前記識別情報に紐付けられた総残高のうち給与以外残高に対する入金処理を行う入金処理手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする管理プログラム。」
第3 申立理由の概要
1 異議申立人の提出した証拠
異議申立人は、次の甲第1号証~甲第5号証を証拠として提出している(以下、それぞれ、「甲1」~「甲5」という。)。
甲第1号証(甲1):特開2020-112891号公報
甲第2号証(甲2):特開2003-30449号公報
甲第3号証(甲3):特開2019-148970号公報
甲第4号証(甲4):特開2018-112965号公報
甲第5号証(甲5):「PayPay残高とは-PayPayよくあるご質問」([online]、PayPay株式会社、2020年5月29日、全頁、[令和4年7月5日検索]、インターネット<URL: https://web.archive.org/web/20200529071214/https://paypay.ne.jp/help/c0048/ >)
2 特許異議の申立理由
異議申立人の主張する本件発明についての具体的な特許異議の申立ての理由は以下のとおりである。
(1) 理由1(新規性欠如)
本件発明1、3、5及び6は、甲2に記載された発明であるから、その発明についての特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1、3、5及び6についての特許は、特許法113条2項の規定により取り消されるべきものである。
(2) 理由2(進歩性欠如)
ア 本件発明1について
(ア) 本件発明1は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
(イ) 本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
イ 本件発明2について
(ア) 本件発明2は、甲1に記載された発明及び甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
(イ) 本件発明2は、甲2に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
ウ 本件発明3について
(ア) 本件発明3は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
(イ) 本件発明3は、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
エ 本件発明4について
(ア) 本件発明4は、甲1に記載された発明及び甲2~4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
(イ) 本件発明4は、甲2に記載された発明及び甲3、4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
オ 本件発明5及び6について
本件発明5及び6は、本件発明1とカテゴリーが相違するのみであるから、その発明についての特許は、上記アの理由と同様に、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
以上によれば、本件特許は、特許法113条2項の規定により取り消されるべきものである。
(3) 理由3(サポート要件違反)
本件発明1~6は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、その発明についての特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
したがって、本件特許は、特許法113条4項の規定により取り消されるべきものである。
(4) 理由4(実施可能要件違反)
本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~6を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、その発明についての特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
したがって、本件特許は、特許法113条4項の規定により取り消されるべきものである。
第4 異議申立人が提出した証拠の記載
1 甲1について
(1) 甲1に記載された事項
甲1には、以下の事項が記載されている(下線加筆、以下同じ。)。
ア 「【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理方法、情報処理装置、及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フリーマーケットサービス、ネットオークションサービス、及びEC(electronic commerce)サイト等の電子商取引サービスを提供する技術が知られている・・・。このサービスにおいて、ユーザが、例えば、クレジットカード、銀行振込、代金引換、ポイント等の各種の決済手段を用いて、商品の代金を支払うことができるようにするサービスも知られている。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、例えば、複数の決済手段のうち、決済に使用する1以上の決済手段を指定する操作に手間がかかる場合がある。本開示は、複数の決済手段を用いた決済を容易に実行できる技術を提供することを目的とする。」
イ 「【0044】
(1)サーバの機能構成
サーバ110は、受付部311と、送受信部312と、制御部313と、表示制御部314と、記憶部315とを有する。なお、各機能部の機能または処理は、実現可能な範囲において、機械学習またはAI(Artificial Intelligence)により実現されてもよい。
・・・
【0049】
記憶部315は、ユーザの情報を記憶するユーザ情報記憶部3151、ユーザの決済履歴情報を記憶する決済履歴記憶部3152等を有する。各記憶部に記憶される各情報については後述する。
・・・
【0058】
続いて、端末120の送受信部322は、決済手段の提案要求をサーバ110に送信する(ステップS2)。なお、提案要求には、端末120のユーザのユーザIDが含まれてもよい。なお、サーバ110の制御部313は、予めユーザIDを用いてサーバ110にログインしている端末120から受信したデータの通信用のセッションのIDに基づいて、端末120のユーザのユーザIDを取得してもよい。
【0059】
続いて、サーバ110の制御部313は、端末120のユーザ情報等に基づいて、ユーザに提案する各決済手段による決済額(各決済手段毎の決済額)を決定する(ステップS3)。この処理については後述する。
【0060】
続いて、サーバ110の送受信部312は、各決済手段による決済額を、各決済額に応じた面積で表示させる情報を端末120に送信する(ステップS4)。続いて、端末120の表示制御部324は、各決済手段による決済額を、各決済額に応じた面積で表示させる(ステップS5)。この処理については後述する。
【0061】
続いて、端末120の受付部321は、各決済手段を変更する操作をユーザから受け付ける(ステップS6)。続いて、端末120の送受信部322は、ユーザに変更された決済手段の情報を含む、決済手段の提案要求をサーバ110に送信する(ステップS7)。続いて、サーバ110の制御部313は、ユーザ情報等と、ユーザによる操作の情報とに基づいて、ユーザに提案する各決済手段による決済額を変更する(ステップS8)。続いて、サーバ110の送受信部312は、変更した各決済手段による決済額を、各決済額に応じた面積で表示させる情報を端末120に送信する(ステップS9)。続いて、端末120の表示制御部324は、受信した各決済手段の情報を表示させる(ステップS10)。なお、ステップS6からステップS10の処理は必ずしも必要な処理ではない。また、各決済手段を変更する操作をユーザから受け付ける度に、ステップS6からステップS10の処理が実行されてもよい。
【0062】
続いて、端末120の受付部321は、決済操作をユーザから受け付ける(ステップS11)。ここで、端末120の受付部321は、例えば、決済ボタンの押下操作を受け付ける。続いて、端末120の送受信部322は、決済要求(決済リクエスト)をサーバ110に送信する(ステップS12)。ここで、決済要求には、各決済手段による決済額の情報が含まれている。
【0063】
続いて、サーバ110の制御部313は、受信した決済要求に基づいて決済の処理を行う(ステップS13)。ここで、サーバ110の制御部313は、受信した決済要求に含まれる、各決済手段による決済額の情報に基づいて、端末120のユーザの残高等から代金を徴収(減算)する処理を行う。
・・・
【0065】
ステップS101において、制御部313は、ユーザ情報記憶部3151を参照し、端末120のユーザのユーザ情報に基づいて、各決済手段の優先度のスコアを算出する。
【0066】
(ユーザ情報記憶部3151)
図6Aの例では、ユーザ情報記憶部3151には、ユーザIDに対応付けて、売上金(円):有効期限、ポイント(円分):有効期限、入金された残額(円)、後払い可能残高(円)、銀行口座、クレジットカード、及びキャリア決済等が記憶されている。
【0067】
ユーザIDは、端末120を利用するユーザの識別情報である。売上金は、例えば、当該ユーザがサーバ110により提供される、またはサーバ110と連携する電子商取引サービスを用いて商品等を販売した際の当該商品等の代金から手数料を差し引いた額である。なお、サーバ110制御部313は、各商品を販売してから所定の有効期限(例えば、3ケ月)を経過した場合、ユーザに銀行口座が設定されている場合は、有効期限(例えば、3か月)が経過した売上金を当該銀行口座に振り込み、当該売上金の額が所定の閾値(例えば、1万円)未満である場合は、所定の振込手数料(例えば、210円)を当該ユーザから徴収してもよい。サーバ110の制御部313は、ユーザに銀行口座が設定されていない場合は、有効期限が経過した売上金を失効させてもよい。
【0068】
ポイントは、例えば、代金の支払いに利用可能なポイントである。なお、1ポイントで1円分の支払いができるようにしてもよい。ポイントは、クーポンのように当該ユーザがサーバ110から付与されてもよい。また、法令等により、売上金から直接支払うことが規制されている場合は、売上金を用いてポイントを購入できるようにしてもよい。サーバ110は、各ポイントに、所定の有効期限を設定してもよい。例えば、売上金により購入されたポイントには購入されてから1年、クーポンのように付与するポイントには、付与の目的に応じて3日または1週間等の有効期限を設定してもよい。
【0069】
入金残高は、例えば、銀行、クレジットカード、及び店舗のレジ等を用いてチャージされた金額の残高である。後払い可能残高は、例えば、サーバ110により提供される、またはサーバ110と連携する電子商取引サービスで商品を購入した代金等をまとめて、翌月末まで等の所定期間内に一括して支払うことができるサービスを使用して後払いできる金額の残高である。なお、サーバ110は、当該後払いできる金額に、毎月1万円等の上限額を設定してもよい。
【0070】
銀行口座、及びクレジットカードは、それぞれ、ユーザに登録された銀行口座、及びクレジットカードである。キャリア決済は、ユーザに登録された、ユーザの端末120の通信サービスの料金と合算して通信事業者に支払うことができるサービスである。」
(2) 甲1発明
上記(1)によれば、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
(甲1発明)
記憶部315を有するサーバ110において(【0044】)、
該サーバ110は、端末120から決済手段の提案要求を受信すると(【0058】)、当該端末120のユーザ情報等に基づいて、ユーザに提案する各決済手段による決済額を決定し(【0059】)、各決済手段による決済額を、各決済額に応じた面積で表示させる情報を端末120に送信し(【0060】)、端末120から決済要求を受信すると、受信した決済要求に含まれる各決済手段による決済額の情報に基づいて、端末120のユーザの残高等から代金を徴収する処理を行う(【0063】)ものであって、
前記記憶部315は、ユーザの情報を記憶するユーザ情報記憶部3151を有し(【0049】)、
前記ユーザ情報記憶部3151には、ユーザIDに対応付けて、売上金、ポイント、入金された残額(入金残高)、後払い可能残高、銀行口座及びクレジットカード及びキャリア決済等の各決済手段が記憶されており(【0065】、【0066】)、
前記ユーザIDは、端末120を利用するユーザの識別情報であり(【0067】)、
前記入金残高は、銀行、クレジットカード、及び店舗のレジ等を用いてチャージされた金額の残高である(【0069】)、サーバ110。
2 甲2について
(1) 甲2に記載された事項
甲2には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0071】図12は、ユーザの口座に入金があった場合の銀行サーバ5とクライアント端末装置7の動作を説明するためのフローチャートである。まず、銀行サーバ5の動作について説明する。クライアント端末装置7から袋分けプログラム42の起動要求があると、銀行サーバ5は、袋分けプログラム42を起動する(ステップ10)。次に、入金部46がユーザ元帳41からユーザの口座に対する入金額を取得し、これをクライアント端末装置7でアイコン化して表示するための入金データをクライアント端末装置7に送信する(ステップ15)。なお、厳密には、銀行サーバ5のCPU29が入金部46のプログラムに従って入金データをクライアント端末装置7に送信するのであるが、以下では、簡略化のため、入金部46が送信するというように記述する。
【0072】次に、入金部46は、クライアント端末装置7から両替要求が出されるか否か、即ちユーザがワンクリック両替を行うかどうかを確認する(ステップ20)。クライアント端末装置7から両替要求がなされた場合(ステップ20;Y)、入金部46は、クライアント端末装置7に両替データを送信する(ステップ25)。この両替データは、クライアント端末装置7で入金を表す紙幣などに模したアイコンより細かい単位の紙幣に模したアイコンを表示するためのデータである。
【0073】両替要求が無いまま(ステップ20;N)クライアント端末装置7から袋入金データ(ユーザが入金した袋と金額を特定するデータ)を受信した場合、又は、ステップ25にて両替データを送信してからクライアント端末装置7から袋入金データを受信した場合、受信データに従って入金部46は、袋分けデータ43を更新し、更新された残高をクライアント端末装置7に送信する(ステップ30)。」
イ 「【0077】図13は、ユーザの口座から出金があった場合の銀行サーバ5とクライアント端末装置7の動作を説明するためのフローチャートである。まず、銀行サーバ5の動作について説明する。クライアント端末装置7から袋分けプログラム42の起動要求があると、銀行サーバ5は、袋分けプログラム42を起動する(ステップ110)。次に、出金部48がユーザ元帳41からユーザの口座に対する出金額を取得し、これをクライアント端末装置7でアイコン化して表示するための出金データをクライアント端末装置7に送信する(ステップ115)。なお、厳密には、銀行サーバ5のCPU29が入金部46のプログラムに従って出金データをクライアント端末装置7に送信するのであるが、以下では、簡略化のため、出金部48が送信するというように記述する。
【0078】次に、出金部48は、クライアント端末装置7から両替要求が出されるか否か、即ちユーザがワンクリック両替を行うかどうかを確認する(ステップ120)。クライアント端末装置7から両替要求がなされた場合(ステップ120;Y)、出金部48は、クライアント端末装置7に両替データを送信する(ステップ125)。この両替データは、クライアント端末装置7で出金を表す紙幣などに模したアイコンより細かい単位の紙幣に模したアイコンを表示するためのデータである。
【0079】両替要求が無いまま(ステップ120;N)クライアント端末装置7から袋出金データ(ユーザが出金した袋と金額を特定するデータ)を受信した場合、又は、ステップ125にて両替データを送信してからクライアント端末装置7から袋出金データを受信した場合、受信データに従って出金部48は、袋分けデータ43を更新し、更新された残高をクライアント端末装置7に送信する(ステップ130)。
【0080】次に、クライアント端末装置の動作を説明する。ユーザは、銀行サーバ5に既にログインしており、残高確認画面をディスプレイ20に表示しているものとする。ユーザは、残高確認画面に表示された袋分けプログラム42の起動ボタンをクリックし、袋分けプログラム42の起動要求を行う(ステップ135)。
【0081】次に、クライアント端末装置7のディスプレイ20には、表示部49により、袋分け画面が表示される。次に、クライアント端末装置7は、出金部48から出金データを受信し、袋分け画面に紙幣やコインを模した出金に関するアイコンを表示する(ステップ140)。ユーザは、ワンクリック両替を行う場合は(ステップ145;Y)、両替要求を銀行サーバ5に送信する(ステップ150)。この両替要求は、アイコンを右クリックすることにより行われる。」
ウ 「【0093】(第1の実施の形態の変形例)次に、図15~図21を用いて第1の実施の形態の変形例について説明する。第1の実施の形態では、普通預金を袋分けと称して仮想的に使用目的別に区分したが、本変形例では、普通預金の他に、定期預金、外貨普通預金、外貨定期預金、投資信託、ローンなど様々な形態の資産をも仮想的に区分し、ユーザの設定した所定の目的のために管理することができるようにする。システム構成などは第1の実施の形態と同様である。より詳細には、ユーザ元帳41(図3)は、各ユーザの普通預金、定期預金、外貨普通預金、外貨定期預金、投資信託、ローンなど各種形態の資産について行われたトランザクションや資産残高などが記憶されている。これら各種形態の資産を各区分ごとに管理するため親貯金箱と目的別貯金箱という仮想的な貯金箱をGUI(Graphical User Interface)上に設ける。
【0094】目的別貯金箱は、例えば車の購入資金やパソコン購入資金などユーザが所定の目的のために資金を蓄えるための仮想的な区分であり、その機能と目的は第1の実施の形態における袋分け袋と同様である。目的別貯金箱には、普通預金の他、定期預金、外貨普通預金、外貨定期預金、投資信託などの各種形態の資産が区分されている。普通預金、外貨普通預金の区分は通貨単位にて行われ、定期預金、外貨定期預金の区分は契約単位で行われる。また、投資信託の区分は口数単位(口とは投資信託の売買単位である)にて行われる。
【0095】一方、親貯金箱には何れの目的別貯金箱にも属さない資産が区分されている。そして、ユーザの口座から行われる入出金は親貯金箱貯金箱に対して行われる。即ち、ユーザの資産に対して入出金が行われ、資産残高に変動があった場合、これらの変動は親貯金箱に反映される。これらの貯金箱に区分されている各種資産の残高は銀行サーバ5に袋設定部45の代わりに設けられた貯金箱設定管理部によって管理されている。また、各貯金箱に区分された残高や各貯金箱に設定された目標金額や目標などは、貯金箱データに格納されている。これは、第1の実施の形態の袋分けデータ43に対応するものである。以降、親貯金箱と目的別貯金箱を特に区別しない場合は単に貯金箱と記すことにする。
【0096】貯金箱設定管理部は、貯金箱の設定を行ったり、各貯金箱の明細を管理(貯金箱データの更新など)したりする。例えば、ユーザの普通預金口座に入金があった場合、まず、親貯金箱に含まれる普通預金の区分の残高が入金金額の分だけプラスされる。そして、ユーザは親貯金箱に入金された普通預金のうち、任意の金額を所望の目的別貯金箱に振り分けることができる。一方、ユーザの普通預金口座から出金があった場合、出金額は親貯金箱の普通預金の区分からマイナスされ、場合によってはマイナス残高となる。また、ユーザは、所定の目的別貯金箱に振り分けられている普通預金を所望の金額だけ親貯金箱に移動することができる。」
エ 「【0113】以上は普通預金を親貯金箱から目的別貯金箱に移動する場合であったが、他の種類の資産の移動方法は以下のようになる。外貨普通預金の場合は、預金残高が所定のレートで円換算され、普通預金と同様にある程度の金額にまとまった金額アイコンによって表される。そして普通預金と同様にして目的別貯金箱に移動することができる。移動された金額は銀行サーバ5によって当該外貨普通預金の通貨に所定のレートにて換算され、区分は当該通貨単位にて管理される。定期預金、外貨定期預金の場合は、契約アイコンを目的別貯金箱にドラッグアンドドロップすることにより、契約単位で移動することができる。投資信託の場合は、ファンドアイコンを所望の目的別貯金箱に移動した後に、「何口移動しますか」といったウインドウがポップアップし、ユーザが入力した口数が目的別貯金箱に移動するようになっている。」
オ 「【0168】取引メニュー259には、定期預金の申込、外貨購入、投資信託購入、ローン返済などの各種取引に対応した取引アイコンが表示されている。取引アイコンをクリックすると当該取引アイコンに対応した取引画面に移動することができる。・・・」
カ 「【0196】なお、本実施の形態では、ユーザの資産の変動は、全て親貯金箱に対してなされるように構成したが、これに限定するものではなく、例えば、給料の入金は給料入金目的別貯金箱に対して入金され、公共料金の支払いは公共料金支払用目的別貯金箱から支払うというように、資産残高の変動が反映される貯金箱を貯金箱ごとに設定するように構成することもできる。」
(2) 甲2発明
上記(1)によれば、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。
(甲2発明)
各種形態の資産を各区分ごとに管理するため親貯金箱と目的別貯金箱という仮想的な貯金箱をGUI上に設け(【0093】)、
目的別貯金箱には、普通預金の他、定期預金、外貨普通預金、外貨定期預金、投資信託などの各種形態の資産が区分されており(【0094】)、
親貯金箱には何れの目的別貯金箱にも属さない資産が区分されており(【0095】)、
ユーザの口座から行われる入出金は親貯金箱貯金箱に対して行われ、すなわち、ユーザの資産に対して入出金が行われ、資産残高に変動があった場合、これらの変動は親貯金箱に反映され(【0095】)、ユーザは親貯金箱に入金された普通預金のうち、任意の金額を所望の目的別貯金箱に振り分けることができ(【0096】)、
これらの貯金箱に区分されている各種資産の残高は、貯金箱設定管理部によって管理されており(【0095】)、
給料の入金は、親貯金箱ではなく、給料入金目的別貯金箱に対して入金されてもよく、資産残高の変動が反映される貯金箱を貯金箱ごとに設定するように構成することもできる(【0196】)、銀行サーバ5。
3 甲3について
(1) 甲3に記載された事項
甲3には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0008】
したがって、本発明では、上記のような課題にかんがみ、預金者がネットバンキングやATM上で、預金口座内に用途別フォルダを設定でき、預金口座を用途別に管理する仕組みを提供することを目的とする。」
イ 「【0021】
(用途別口座フォルダの概念)
図1は、本発明に係る用途別口座フォルダの概念を示す図である。本発明は、一つの預金口座内をフォルダ(ディレクトリ)分けし、用途別に管理できるようにすることを目的とする。図1に示すように、ユーザ(預金者)の実口座番号(「1234567」とする)に対して、口座フォルダ00が銀行システム内の顧客ごとの記憶手段に生成される。口座フォルダ00は1つの口座に対して1つ生成され、ユーザは、ネットバンキング上又はATM(Automated Teller Machine)上の操作によって、この口座フォルダ00を頂点とする任意のサブフォルダ(サブディレクトリ)を作成することができる。すなわち、フォルダ全体構造は、口座フォルダ00を親ノード(ルートノード)とするツリー構造をとる。また、サブフォルダは、ユーザによって、口座を用途別(目的別)に管理するための子ノードとなる。
【0022】
図示するように、例えば、口座フォルダ00の下に「今月使用」フォルダ01と「貯金」フォルダ02を作成しておけば、今月使うお金と貯金に回すお金というように、一つの預金口座を用途別に管理することができる。各フォルダには、その用途のために使われる金額が口座の残高から振り分けられる(対応付けされる)。なお、「」内にはユーザが任意のフォルダ名を付けることができる。このように、「貯金」や「今月使用」といった用途別フォルダを作ることによって、口座内のお金の管理が容易になり、銀行口座の利便性が高まる。また、口座自体もフォルダとして管理することで、例えば子供が小さい時の子供の口座について、親の口座フォルダの中に収めて管理しておき、どこかのタイミングで子供の自己管理に属性を変更するというような管理方法が可能となる。
【0023】
図1の例では、預金口座の残高が例えば32万円だったところに、給与28万円が振り込まれて口座残高が60万円になったとすると、その口座全体を表す口座フォルダ00には、60万円が対応付けられる。そして、サブフォルダの「今月使用」フォルダ01には25万円、「貯金」フォルダ02には5万円というように、給与をフォルダごとに(用途別に)振り分けることができる。ただし、この例では、振り分け前の「今月使用」フォルダ01の残高は0円で、「貯金」フォルダ02の残高は30万円であったとする。
【0024】
この振り分けは、ユーザが毎月の給料日などに行ってもよいが、サブフォルダごとに設定金額を設け、給与振込み後に自動で振り分けるようにしてもよい。例えば、「貯金」フォルダ02に毎月3万円が積み立てられるように設定しておけば、その月の給与が28万円であった場合、残りの金額25万円(28万円-3万円)が自動的に「今月使用」フォルダ01に振り分けられることになる。したがって、生活費等で今月使えるお金は25万円が上限となり、無駄遣いが防げることになる。また、無駄遣いができないように、「貯金」フォルダ02の属性は、いつでも参照は可能だが所定条件が成立しないと編集できない(出金できない)ようにしてもよい。所定条件とは、例えば目標の貯金額に達した時、所定の期間が経過した時、などが考えられる。
【0025】
また、各サブフォルダの下に更に別のサブフォルダ(孫ノード)を作成することができる。図1の例では、「今月使用」フォルダ01の下に、「生活費」フォルダ03、「住宅」(家賃又は住宅ローンなどの住宅費)フォルダ04、「娯楽費」フォルダ05、「学費」(教育費)フォルダ06、「その他」フォルダ07を作成し、更に「生活費」フォルダ
03の下に、「食費」フォルダ10、「光熱費」フォルダ11、「通信費」フォルダ12を作成している。同様に、「娯楽費」フォルダ05の下には、家族各人が使える小遣いとして、「お父さん用」フォルダ13、「お母さん用」フォルダ14、「子供用」フォルダ15が作成されている。
【0026】
各フォルダには、あらかじめ定められた入出金先を、そのIDとともに関連付けるようにしてもよい。例えば、「住宅」フォルダ04に住宅ローンや家賃の口座振替先のIDを登録しておき、毎月の口座振替日には「住宅」フォルダ04から(仮想的に)所定の額が引き落とされるようにしてもよい。すなわち、各フォルダは、口座内の仮想口座のような役目を果たす。仮に、住宅ローン又は家賃が毎月6万円であったとすると、給与振込み日には、「今月使用」フォルダ01の中から、6万円が必ず「住宅」フォルダ04に移され(仮想的な資金移動がなされ)、住宅ローン等の口座振替時には、「住宅」フォルダ04から6万円が引き落とされ、同時にその上位フォルダの「今月使用」フォルダ01からも同じ額が引き落とされるようにする。「光熱費」フォルダ11、「通信費」フォルダ12についても同様である。なお、一度作成したサブフォルダは、削除したり、統合したりすることも可能である。例えば、「光熱費」フォルダ11と「通信費」フォルダ12を統合し、「光熱通信費」フォルダを新たに作成することもできる。このようにすることで、用途別管理の方法を柔軟に変更することができる。」
ウ 「【0048】
口座情報111は、口座番号とその名義人、使用者IDとその使用者名が含まれる。インターネットバンキングの場合は、使用者IDはログインパスワードであり、ATMの場合は、使用者IDはキャッシュカードのIDであってもよい。1つの口座に家族カードなど複数のユーザの使用が許可されている場合は、使用者IDが複数であってもよい。また、使用者IDごとにその使用者名又は愛称を登録するようにしてもよい。」
エ 「【0052】
自動分別口座振替先とは、家賃若しくは住宅ローン又は電気代、ガス代、水道代若しくは電話代など、毎月決まった口座振替先に、一定額若しくは使用料金を支払う場合に、その口座振替の金額が自動的に所定のフォルダから出金されたように見せるため、対象となるフォルダIDと口座振替先のIDとの組み合わせを格納したものである。例えば、フォルダID11(「光熱費」フォルダ)に「○○電力」の口座振替先IDが登録されていれば、毎月の使用料金の口座振替時に「光熱費」フォルダの残高からその使用料金が差し引かれるようにできる。」
オ 「【0073】
また、所定のフォルダに対応付けられた口座振替先IDに基づいて、口座振替額を当該所定のフォルダに振り分けられた残高から分別して出金させる、出金分別手段を備えるので、口座振替があった際、関係するフォルダの残高の調整を自動的に行える。」
(2) 甲3記載事項
上記(1)によれば、甲3には次の事項(以下、「甲3記載事項」という。)が記載されている。
「・預金者がネットバンキングやATM上で、預金口座内に用途別フォルダを設定でき、預金口座を用途別に管理する仕組みを提供すること。(【0008】)
・一つの預金口座内をフォルダ(ディレクトリ)分けして、用途別に管理できるようにし、各フォルダには、その用途のために使われる金額が口座の残高から振り分けられること。(【0022】)
・振り分けは、毎月の給料日などに行い、サブフォルダごとに設定金額を設け、給与振込み後に自動で振り分けるようにしてもよく、例えば、「貯金」フォルダ02や「今月使用」フォルダ01に振り分けることができること。(【0024】)」
4 甲4について
(1) 甲4に記載された事項
甲4には、以下の事項が記載されている。
「【0031】
また勤務先の会社からの給与支払いをトリガーとする場合、会社から銀行振り込みが発生した情報を金融機関と連携する、振込者から振り込み情報の提供を受ける、或いはペイロールを担う業者から情報提供を受けることにより、実際の給与支払いの有無を把握するようにしても良い。
【0032】
また実店舗やECサイトなどにて物品やサービスを購入することをトリガーとする場合、店舗やECサイト運営会社とその購入情報を連携することにより、或いはECサイトをスクレーピングすることにより、消費行動を把握するようにしても良い。なお、クレジットカード等を利用する場合には、上記のクレジット情報を利用すれば良い。
【0033】
また競馬場やパチンコ店等への訪問をトリガーとする場合、ユーザー端末1のGPS機能と地図情報との組合せによって特定するが、瞬間的な単なる立ち寄り行為等では資産形成せず、一定時間以上の滞在を確認した後に、競馬場への訪問、パチンコ店への訪問として確定するようにしても良い。
【0034】
本金融資産形成システムは、ユーザーによって決定された項目に従って金融資産を形成していくが、定期性預貯金の積立の場合には銀行等の金融機関に定期性預貯金口座7を開設し、トリガー情報に基づいて当該定期性預貯金口座7に自動的に積立を行うようになっている。またユーザーによって決定された金融資産が金融商品である場合、運用会社が管理する金融商品資産管理ファイル6にて運用を行うようになっている。」
(2) 甲4記載事項
上記(1)によれば、甲4には次の事項(以下、「甲4記載事項」という。)が記載されている。
「勤務先の会社からの給与支払いをトリガーとする場合、ユーザーによって決定された項目が定期性預貯金の積立の場合には、銀行等の金融機関に定期性預貯金口座7を開設し、トリガー情報に基づいて当該定期性預貯金口座7に自動的に積立を行うようになっており、ユーザーによって決定された金融資産が金融商品である場合、運用会社が管理する金融商品資産管理ファイル6にて運用を行うようになっていること。」
5 甲5について
(1) 甲5に記載された事項
甲5には、以下の事項が記載されている。
ア 「PayPay よくあるご質問
・・・
PayPay残高とは
1円単位でお買い物に利用できる電子マネーです。
PayPay残高は、PayPay加盟店の店舗でのお買い物やPayPay公式ストアなどオンラインショッピングでも利用できます。
PayPay残高には種類があり、それぞれ有効期限や使える機能が異なります。」
イ 「PayPay残高の種類
■PayPayマネー
本人確認後に銀行口座やセブン銀行ATM、ヤフオク!・PayPayフリマの売上金を利用してPayPay残高にチャージした残高です。
出金や、PayPay残高を送る機能、わりかん機能で友だちに送ることができます。
■PayPayマネーライト
Yahoo!JAPANカードや、ソフトバンク・ワイモバイルまとめて支払いを利用してPayPay残高にチャージした残高です。
本人確認前に銀行口座やセブン銀行ATM、ヤフオク!・PayPayフリマの売上金を利用してPayPay残高にチャージした残高もPayPayマネーライトとなります。
PayPay残高を送る機能や、わりかん機能で友だちに送ることができますが、出金はできません。
■PayPayボーナス
特典やキャンペーン等の適用に伴い、PayPay残高に進呈された残高です。
出金、PayPay残高を送る機能、わりかん機能では使えません。
■PayPayボーナスライト
特典やキャンペーン等の適用に伴い、PayPay残高に進呈された残高です。
出金、PayPay残高を送る機能、わりかん機能では使えません。
また、有効期間が設定されており、有効期間を過ぎると失効します。
なお、Yahoo!JAPANが付与するPayPayボーナスライトを利用する際には、Yahoo!JAPAN IDの連携が必要です。」
(2) 甲5記載事項
上記(1)によれば、甲5には次の事項(以下、「甲5記載事項」という。)が記載されている。
「PayPayマネーは、銀行口座やセブン銀行ATMを利用して、電子マネーであるPayPay残高にチャージした残高であり、出金することができること。」
第5 当審の判断
1 理由1(新規性欠如)について
(1) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明を対比する。
(ア) 甲2発明の「銀行サーバ5」では、「親貯金箱と目的別貯金箱という仮想的な貯金箱をGUI上に設け」、「ユーザの資産に対して入出金が行われ、資産残高に変動があった場合、これらの変動は親貯金箱に反映され」たり、「給料の入金は給料入金目的別貯金箱に対して入金され」たりするから、甲2発明において、仮想的な貯金箱に入出金されるものは、紙幣や硬貨等の現金ではなく、「デジタルマネー」であるということができる。
(イ) 甲2発明の「銀行サーバ5」では、「ユーザの資産に対して入出金が行われ」るから、「銀行サーバ5」は、「デジタルマネー」の入金要求があった場合に入金処理を行う入金処理部を有するといえ、銀行への入金は、通常、ユーザの口座番号を特定して行われるから、入金要求には、「デジタルマネー」の入金を受けるユーザを識別するためのユーザ識別情報が含まれているということができる。
そして、甲2発明の入金処理部において、入金処理を行うためには、ユーザ識別情報を含む入金要求を受け付けているといえるから、「銀行サーバ5」は、そのための入金受付部を有するといえる。
そうすると、甲2発明の「デジタルマネー」の入金を受けるユーザを識別するためのユーザ識別情報を含む入金要求を受け付ける入金受付部と、本件発明1の「デジタルマネーの入金を受ける利用者の識別情報および入金の名目を含む入金要求を受け付ける入金受付部」とは、「デジタルマネーの入金を受ける利用者の識別情報を含む入金要求を受け付ける入金受付部」で共通する。
(ウ) 甲2発明の入金処理部は、「ユーザの資産に対して入出金が行われ、資産残高に変動があった場合、これらの変動は親貯金箱に反映され」たり、「給料の入金は給料入金目的別貯金箱に対して入金され」たりするものであるから、入金処理は、ユーザ識別情報に紐付けられた資産残高に対して行われるといえる。
そうすると、甲2発明の入金受付部によって受け付けられた入金要求に含まれるユーザ識別情報に紐付けられた資産残高に対する入金処理を行う入金処理部と、本件発明1の「前記入金受付部によって受け付けられた前記入金要求に含まれる前記名目が給与である場合に、当該入金要求に含まれる前記識別情報に紐付けられた総残高のうち給与残高に対する入金処理を行い、前記入金受付部によって受け付けられた前記入金要求に含まれる前記名目が給与以外の名目である場合には、当該入金要求に含まれる前記識別情報に紐付けられた総残高のうち給与以外残高に対する入金処理を行う入金処理部」とは、「前記入金受付部によって受け付けられた当該入金要求に含まれる前記識別情報に紐付けられた総残高に対する入金処理を行う入金処理部」で共通する。
以上によれば、本件発明1と甲2発明は、以下の一致点、相違点を有する。
[一致点]
デジタルマネーの入金を受ける利用者の識別情報を含む入金要求を受け付ける入金受付部と、
前記入金受付部によって受け付けられた当該入金要求に含まれる前記識別情報に紐付けられた総残高に対する入金処理を行う入金処理部と
を有する管理装置。
[相違点]
本件発明1は、「入金受付部」が「入金の名目」を含む入金要求を受け付け、「入金処理部」が「入金受付部によって受け付けられた前記入金要求に含まれる前記名目が給与である場合に、当該入金要求に含まれる前記識別情報に紐付けられた総残高のうち給与残高に対する入金処理を行い、前記入金受付部によって受け付けられた前記入金要求に含まれる前記名目が給与以外の名目である場合には、当該入金要求に含まれる前記識別情報に紐付けられた総残高のうち給与以外残高に対する入金処理を行う」のに対し、甲2発明は、「入金受付部」が「入金の名目」を含む入金要求を受け付けておらず、したがって、「入金処理部」が「入金受付部によって受け付けられた前記入金要求に含まれる前記名目が給与である場合に、当該入金要求に含まれる前記識別情報に紐付けられた総残高のうち給与残高に対する入金処理を行い、前記入金受付部によって受け付けられた前記入金要求に含まれる前記名目が給与以外の名目である場合には、当該入金要求に含まれる前記識別情報に紐付けられた総残高のうち給与以外残高に対する入金処理を行う」ものでもない点。
イ 判断
上記アのとおり、本件発明1と甲2発明は相違点を有するから、本件発明1は甲2発明ではない。
(2) 本件発明3について
本件発明3は、本件発明1を限定した発明であるから、甲2発明と対比すると、少なくとも、上記(1)アの[相違点]を有する。
したがって、本件発明3は甲2発明ではない。
(3) 本件発明5及び6について
本件発明5及び本件発明6は、それぞれ、「管理方法」の発明及び「管理プログラム」の発明であるところ、本件発明1の「管理装置」を方法の発明とプログラムの発明で特定したものであり、本件発明1とカテゴリーが相違するのみで実質的な相違はない。
そうすると、本件発明5及び本件発明6は、甲2から認定される方法の発明及びプログラムの発明と対比すると、上記(1)アの[相違点]と同様の相違点を有することになる。
したがって、本件発明5及び6は、それぞれ、甲2から認定される方法の発明及びプログラムの発明ではない。
(4) 小括
以上によれば、本件発明1、3、5及び6についての特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものではない。
したがって、本件発明1、3、5及び6についての特許は、特許法113条2項の規定により取り消されるべきものではない。
2 理由2(進歩性欠如)について
(1) 本件発明1について
ア 甲1発明に基づく進歩性欠如
(ア) 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
a 甲1発明において、「銀行、クレジットカード、及び店舗のレジ等を用いてチャージされた金額」は、本件発明1の「デジタルマネー」に相当する。
b 甲1発明は、「ユーザIDに対応付けて、売上金、ポイント、入金された残額(入金残高)、後払い可能残高、銀行口座及びクレジットカード及びキャリア決済等の各決済手段が記憶されており」、「前記入金残高は、銀行、クレジットカード、及び店舗のレジ等を用いてチャージされた金額の残高である」ところ、甲1発明の「ユーザID」は、「利用者の識別情報」といえるから、甲1発明の「サーバ110」は、「デジタルマネー」(銀行、クレジットカード、及び店舗のレジ等を用いてチャージされた金額)の入金を受ける「利用者の識別情報」(ユーザID)を含む入金要求を受け付ける入金受付部を有するということができる。
したがって、甲1発明の「デジタルマネー」(銀行、クレジットカード、及び店舗のレジ等を用いてチャージされた金額)の入金を受ける「利用者の識別情報」(ユーザID)を含む入金要求を受け付ける入金受付部と、本件発明1の「デジタルマネーの入金を受ける利用者の識別情報および入金の名目を含む入金要求を受け付ける入金受付部」とは、「デジタルマネーの入金を受ける利用者の識別情報を含む入金要求を受け付ける入金受付部」で共通する。
c 甲1発明は、「「利用者の識別情報」(ユーザID)に対応付けて、売上金、ポイント、入金された残額(入金残高)、後払い可能残高、銀行口座及びクレジットカード及びキャリア決済等の各決済手段が記憶されて」いるから、「入金された残額(入金残高)」は、「利用者の識別情報」(ユーザID)に紐付けられているといえ、それらを紐付けるための入金処理も行われているということができる。そして、上記bのとおり、甲1発明は、「入金要求を受け付ける入金受付部」を有するということができるから、入金受付部によって受け付けられた入金要求に含まれる識別情報に紐付けられた総残高に対する入金処理を行う入金処理部を有するということができる。
したがって、甲1発明の入金受付部によって受け付けられた入金要求に含まれる利用者の識別情報に紐付けられた総残高に対する入金処理を行う入金処理部と、本件発明1の「前記入金受付部によって受け付けられた前記入金要求に含まれる前記名目が給与である場合に、当該入金要求に含まれる前記識別情報に紐付けられた総残高のうち給与残高に対する入金処理を行い、前記入金受付部によって受け付けられた前記入金要求に含まれる前記名目が給与以外の名目である場合には、当該入金要求に含まれる前記識別情報に紐付けられた総残高のうち給与以外残高に対する入金処理を行う入金処理部」とは、「前記入金受付部によって受け付けられた当該入金要求に含まれる前記識別情報に紐付けられた総残高に対する入金処理を行う入金処理部」で共通する。
d 甲1発明の「サーバ110」は、「ユーザIDに対応付けて、売上金、ポイント、入金された残額(入金残高)、後払い可能残高、銀行口座及びクレジットカード及びキャリア決済等の各決済手段が記憶されて」いるから、「入金残高」は「サーバ110」によって管理されているといえる。
したがって、甲1発明の「サーバ110」は、本件発明1と同様の「管理装置」といえる。
以上によれば、本件発明1と甲1発明は、以下の一致点、相違点を有する。
[一致点]
デジタルマネーの入金を受ける利用者の識別情報を含む入金要求を受け付ける入金受付部と、
前記入金受付部によって受け付けられた当該入金要求に含まれる前記識別情報に紐付けられた総残高に対する入金処理を行う入金処理部と
を有する管理装置。
[相違点]
本件発明1は、「入金受付部」が「入金の名目」を含む入金要求を受け付け、「入金処理部」が「入金受付部によって受け付けられた前記入金要求に含まれる前記名目が給与である場合に、当該入金要求に含まれる前記識別情報に紐付けられた総残高のうち給与残高に対する入金処理を行い、前記入金受付部によって受け付けられた前記入金要求に含まれる前記名目が給与以外の名目である場合には、当該入金要求に含まれる前記識別情報に紐付けられた総残高のうち給与以外残高に対する入金処理を行う」のに対し、甲1発明は、「入金受付部」が「入金の名目」を含む入金要求を受け付けておらず、したがって、「入金処理部」が「入金受付部によって受け付けられた前記入金要求に含まれる前記名目が給与である場合に、当該入金要求に含まれる前記識別情報に紐付けられた総残高のうち給与残高に対する入金処理を行い、前記入金受付部によって受け付けられた前記入金要求に含まれる前記名目が給与以外の名目である場合には、当該入金要求に含まれる前記識別情報に紐付けられた総残高のうち給与以外残高に対する入金処理を行う」ものでもない点。
(イ) 判断
甲1発明は、上記第4の1(1)アのとおり、甲1の発明の詳細な説明をみると、「フリーマーケットサービス、ネットオークションサービス、及びEC(electronic commerce)サイト等の電子商取引サービス」の「ユーザが、例えば、クレジットカード、銀行振込、代金引換、ポイント等の各種の決済手段を用いて、商品の代金を支払うことができるようにするサービス」において、「複数の決済手段のうち、決済に使用する1以上の決済手段を指定する操作に手間がかかる場合がある」から、「複数の決済手段を用いた決済を容易に実行できる技術を提供することを目的とする」発明である。
そして、甲1発明は、上記第4の1(2)のとおり、「売上金、ポイント、入金された残額(入金残高)、後払い可能残高、銀行口座及びクレジットカード及びキャリア決済等の各決済手段」のうちの「入金残高」についてのみ、入金受付部が「銀行、クレジットカード、及び店舗のレジ等を用いてチャージされた金額」である「デジタルマネー」の入金を受け付け、入金処理部が「入金された残額(入金残高)」を「利用者の識別情報」に紐付けるための入金処理を行っているといえるにすぎないものと認められる。
そうすると、甲1発明において、「管理装置」(サーバ110)の「入金受付部」が受け付け、「入金処理部」が処理する「入金要求」は、「電子商取引サービス」の「商品の代金の支払い」だけのものであって、甲1の発明の詳細な説明の記載をみても、それ以外に「入金要求」を受け付けたり、処理したりすることは記載も示唆もされていない。
したがって、甲1発明において、「入金要求」が「入金の名目」を含むように構成する必要はなく、ましてや「入金の名目」を「給与」とすることや、「入金要求に含まれる」「(入金の)名目」に応じて、入金処理を行うべき「残高」を変更することは、上述の甲1発明の目的に照らし、まったく想定できないから、[相違点]に係る構成が設計事項であるとはいえないし、そのように構成する動機付けもない。
なお、甲2発明は、上記第4の2(2)のとおり、「入金要求」に「入金の名目」を含むものではなく、[相違点]に係る構成を有しないし、甲2の発明の詳細な説明にもそのような記載はないから、仮に甲1発明と組み合わせることができたとしても、[相違点]に係る構成には至らない。
以上によれば、本件発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲1発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 甲2発明に基づく進歩性欠如
上記第3の2のとおり、異議申立人は、特許異議申立書において、本件発明1について、甲2に記載された発明(甲2発明)を主たる発明とする進歩性欠如の理由を具体的に主張しているとは認められないが、念のため検討するに、上記ア(イ)のとおり、本件発明1と甲2発明とは、上記[相違点]に係る構成を有するものであるところ、当該[相違点]に係る構成について、当業者が容易に発明をすることができたものであるという証拠もなく、技術常識であるということもできない。
したがって、本件発明1は、甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2) 本件発明2について
ア 甲1発明に基づく進歩性欠如
本件発明2は、本件発明1を限定した発明であるから、甲1発明と対比すると、上記(1)ア(ア)の[相違点]に係る構成を有するところ、上記(1)ア(イ)のとおり、本件発明1が甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲1発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、同様に、本件発明2も当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そして、異議申立人が主張する甲5をみても、甲5記載事項は、上記第4の5のとおりであって、上記[相違点]に係る構成を示すものではない。
したがって、本件発明2は、甲1発明及び甲5記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲1発明、甲2に記載された事項及び甲5記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 甲2発明に基づく進歩性欠如
本件発明2は、本件発明1を限定した発明であるから、上記(1)イのとおり、本件発明1が甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、同様に、本件発明2も当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そして、異議申立人が主張するように、「ユーザ情報を含む口座情報を基に、ATMを用いて口座情報から出金することは証拠を提示するまでもなく従来周知の事項」であったとしても、上記[相違点]に係る構成とは無関係であるから、上記判断を左右するものではない。
したがって、本件発明2は、甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3) 本件発明3について
ア 甲1発明に基づく進歩性欠如
本件発明3は、本件発明1を限定した発明であるから、甲1発明と対比すると、少なくとも、上記(1)ア(ア)の[相違点]に係る構成を有するところ、上記(1)ア(イ)のとおり、本件発明1が甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲1発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、同様に、本件発明3も当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、本件発明3は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲1発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 甲2発明に基づく進歩性欠如
本件発明3は、本件発明1を限定した発明であるから、上記(1)イのとおり、本件発明1が甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、同様に、本件発明3も当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4) 本件発明4について
ア 甲1発明に基づく進歩性欠如
本件発明4は、本件発明3を限定した発明であるから、甲1発明と対比すると、少なくとも、上記(1)ア(ア)の[相違点]を有するところ、上記(3)のとおり、本件発明3が甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲1発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、同様に、本件発明4も当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そして、異議申立人が主張する甲2~4をみても、甲2~4記載事項は、上記第4の2~4のとおりであって、上記[相違点]に係る構成を示すものではない。
したがって、本件発明4は、甲1発明及び甲2~4記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 甲2発明に基づく進歩性欠如
本件発明4は、本件発明3を限定した発明であるから、上記(3)イのとおり、本件発明3が甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、同様に、本件発明4も当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そして、異議申立人が主張する甲3及び甲4をみても、甲3及び甲4記載事項は、上記第4の3及び4のとおりであって、上記[相違点]に係る構成を示すものではない。
したがって、本件発明4は、甲2発明及び甲3及び甲4記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5) 本件発明5及び6について
ア 甲1発明に基づく進歩性欠如
本件発明5及び本件発明6は、それぞれ、「管理方法」の発明及び「管理プログラム」の発明であるところ、本件発明1の「管理装置」を方法の発明とプログラムの発明で特定したものであり、カテゴリーが相違するのみで実質的な相違はない。
そうすると、本件発明5及び本件発明6は、甲1から認定される方法の発明及びプログラムの発明と対比すると、上記(1)ア(ア)の[相違点]と同様の相違点を有することになる。
したがって、上記(1)ア(イ)と同様、本件発明5及び本件発明6は、それぞれのカテゴリーに沿って、甲1から認定される発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲1から認定される発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 甲2発明に基づく進歩性欠如
本件発明5及び本件発明6は、それぞれ、「管理方法」の発明及び「管理プログラム」の発明であるところ、本件発明1の「管理装置」を方法の発明とプログラムの発明で特定したものであり、カテゴリーが相違するのみで実質的な相違はない。
そうすると、本件発明5及び本件発明6は、甲2から認定される方法の発明及びプログラムの発明と対比すると、上記1(1)アの[相違点]と同様の相違点を有することになる。
したがって、上記(1)イと同様、本件発明5及び本件発明6は、それぞれのカテゴリーに沿って、甲2から認定される発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(6) 小括
以上によれば、本件発明1~6についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものではない。
したがって、本件発明1~6についての特許は、特許法113条2項の規定により取り消されるべきものではない。
3 理由3(サポート要件違反)について
(1) 本件発明1について
ア 本件発明1
本件発明1は、上記第2のとおりである。
イ 本件明細書の記載
一方、本件明細書の発明の詳細な説明には以下の記載がある。
(ア) 「【0054】
また、「給与以外」項目のうち、「通常」項目には、決済口座の所有者が自らチャージしたデジタルマネーの残高を示す情報が格納される。一例として、「通常」項目には、決済口座に紐付けられたクレジットカードまたは銀行口座から入金されたデジタルマネーの残高を示す情報が格納される。「利益」項目には、たとえば、管理システム1が提供する電子決済サービスを利用した際に決済金額に対してキャッシュバックされたデジタルマネーの残高を示す情報が格納される。」
(イ) 「【0056】
(受付部41について)
受付部41は、デジタルマネーの入金要求を受け付ける。ここで、入金要求に含まれる情報の一例について図5を参照して説明する。図5は、第1実施形態に係る入金要求の一例を示す図である。
【0057】
図5に示すように、入金要求には、たとえば、「支払元ID」、「支払先ID」、「入金額」、「名目」といった情報が含まれる。「支払元ID」は、入金要求を送信した支払元の識別情報であり、「支払先ID」は、支払先の識別情報である。また、「入金額」は、入金されるデジタルマネーの金額を示す情報であり、「名目」は、入金の名目を示す情報である。図5に示す入金要求は、支払元ID「E1」によって識別される利用者U1の雇用主から支払先ID「U1」によって識別される利用者U1に、給与として「300,000円」が入金されることを示している。
【0058】
また、受付部41は、デジタルマネーのATM800への出金要求を受け付ける。ここで、出金要求に含まれる情報の一例について図6を参照して説明する。図6は、第1実施形態に係る出金要求の一例を示す図である。
【0059】
図6に示すように、出金要求には、たとえば、「銀行ID」、「出金元ID」、「出金額」、「出金先」といった情報が含まれる。「銀行ID」は、出金要求を送信した銀行の識別情報であり、「出金元ID」は、出金を行う利用者の識別情報である。また、「出金額」は、出金額を示す情報であり、「出金先」は、出金先(どこへ出金するか)を示す情報である。図6に示す出金要求は、銀行ID「B1」の銀行から送信されたものであって、出金元ID「U1」の利用者(すなわち利用者U1)がATMから100,000円の出金を行うことを示している。
【0060】
受付部41は、電子商取引サービスでの取引対象に対する決済に関する決済情報を受け付けてもよい。たとえば、受付部41は、利用者を識別する利用者IDと、取引対象を提供する提供者を識別する提供者IDと、取引対象の価格(決済金額)とを示す決済情報を利用者端末100から受け付ける。
【0061】
また、受付部41は、店舗に設置された提供者端末200から決済情報を受け付けてもよい。たとえば、受付部41は、提供者端末200が読み取った利用者IDであって、利用者端末100に表示された利用者IDと、決済金額と、店舗を識別する情報とを示す決済情報を受け付ける。
【0062】
また、受付部41は、利用者端末100からデジタルマネーの総残高の確認要求を受け付けてもよい。この場合、確認要求には、少なくとも利用者IDが含まれていればよい。」
(ウ) 「【0063】
(入金処理部42について)
入金処理部42は、受付部41によって受け付けられた入金要求に基づいて口座データベース31に対する入金処理を行う。
【0064】
具体的には、入金処理部42は、入金要求に含まれる支払元IDに紐付けられた決済口座から、入金要求に含まれる支払先IDに紐付けられた決済口座に対し、入金要求に含まれる入金額に相当するデジタルマネーの資金移動を行う。すなわち、入金処理部42は、支払元IDに紐付けられた決済口座の総残高から入金額を減算するとともに、支払先IDに紐付けられた決済口座の総残高に入金額を加算する。
【0065】
また、入金処理部42は、入金要求に含まれる名目が「給与」であるか否かを判定する。そして、入金処理部42は、入金要求に含まれる名目が「給与」である場合、支払先IDに紐付けられた決済口座の総残高のうちの「給与」項目に対して入金額を加算する。
【0066】
一方、入金処理部42は、入金要求に含まれる名目が「給与以外」である場合、支払先IDに紐付けられた決済口座の総残高のうちの「給与以外」項目に対して入金額を加算する。たとえば、入金処理部42は、入金要求に含まれる名目が「通常」である場合、支払先IDに紐付けられた決済口座の総残高のうちの「通常」項目に対して入金額を加算する。また、入金処理部42は、入金要求に含まれる名目が「利益」である場合、支払先IDに紐付けられた決済口座の総残高のうちの「利益」項目に対して入金額を加算する。」
(エ) 「【0069】
また、出金処理部43は、出金要求に含まれる出金先が「ATM」であるか否かを判定する。そして、出金処理部43は、出金要求に含まれる出金先が「ATM」である場合、出金元IDに紐付けられた決済口座の総残高のうちの「給与」項目から出金額を減算する。」
(オ) 「【0074】
図7に示すように、表示制御部44は、利用者ID「U1」に紐付けられた決済口座から「総残高」項目として「1,000,000円」、「給与」項目として「700,000円」および「給与以外」項目として「300,000円」の各情報を取得し、取得した各情報を利用者端末100に表示させる。」
(カ) 「【0083】
図10に示すように、決済サーバ10は、支払元サーバ400から給与の入金要求を受け付けた場合に(ステップS21)、給与の支払先となる利用者の決済口座に対して給与としてのデジタルマネーを入金する(ステップS22)。上述したように、給与の入金要求には、たとえば、給与の入金を受ける利用者(支払先)の識別情報(支払先ID)、入金額および入金の名目が含まれる。また、上述したように、決済サーバ10は、入金要求に含まれる名目が「給与」である場合に、入金要求に含まれる金額のデジタルマネーを支払先IDに紐付けられた決済口座の「給与残高」に入金する。
【0084】
つづいて、決済サーバ10は、支払先の決済口座に給与として入金されたデジタルマネーの一部を、支払先である利用者の利用者情報に基づいて用途ごとに仕分ける仕分け処理を行う(ステップS23)。
【0085】
たとえば、利用者情報には、給与の仕分けに関する設定情報(以下、「仕分け情報」と記載する)が含まれていてもよい。仕分け情報には、たとえば、取引対象を識別する識別情報(取引対象識別情報、以下、「取引対象ID」と記載する)、取引対象の提供元である提供者を識別する識別情報(提供者識別情報、以下、「提供者ID」と記載する)、取引対象の金額等が含まれる。
・・・
【0107】
(取得部45について)
取得部45は、利用者に関する利用者情報を取得する。たとえば、取得部45は、利用者情報として、口座データベース31、履歴データベース32、登録情報データベース33、請求情報データベース34に格納された各種の情報を取得する。
【0108】
(資金移動部46について)
資金移動部46は、受付部41によって入金が受け付けられたデジタルマネーのうち、給与として入金されたデジタルマネーの一部を取得部45によって取得された利用者情報に基づいて移動させる。
【0109】
資金移動部46は、登録情報データベース33に記憶された仕分け情報に従って、給与として入金されたデジタルマネーの一部を、給与としてのデジタルマネーが入金された決済口座内の「取り置き」項目、または、給与としてのデジタルマネーが入金された決済口座以外の口座に移動させる。なお、取り置きIDが付された仕分け情報は、取得部45によって登録情報データベース33から取得される。
【0110】
まず、決済口座内の「取り置き」項目にデジタルマネーを移動させる場合について説明する。
【0111】
上述したように、給与としてのデジタルマネーは、まず、決済口座の「給与」項目のうちの「普段使い」項目に入金される。「普段使い」項目にデジタルマネーが入金されると、資金移動部46は、取り置きIDが付された仕分け情報に従って、「普段使い」項目に入金されたデジタルマネーの一部を、「取り置き」項目に移動させる。たとえば、図14に示す登録情報データベース33には、利用者ID「U1」の利用者に対し、「取り置き#1」および「取り置き#2」の2つの仕分け情報が紐付けられている。資金移動部46は、利用者ID「U1」の利用者U1に給与としてのデジタルマネーが入金された場合に、利用者ID「U1」に紐付けられた決済口座の「普段使い」項目から「取り置き#1」項目および「取り置き#2」項目に、デジタルマネーを移動させる。
【0112】
このとき、資金移動部46は、決済口座の「取り置き」項目に格納されている金額が、仕分け情報の「設定金額」項目に格納されている金額と一致するように、「普段使い」項目から「取り置き」項目にデジタルマネーを移動させる。
【0113】
たとえば、給与の入金前において、決済口座の「取り置き#1」項目に「100円」が格納されていたとする。この場合、資金移動部46は、決済口座の「取り置き#1」項目が「15,000円」になるように、決済口座の「普段使い」項目から「取り置き#1」項目に「14,900円」を移動させる。
【0114】
なお、資金移動部46は、「取り置き」項目の残高に関係なく、仕分け情報の「設定金額」項目に格納された金額のデジタルマネーを決済口座の「普段使い」項目から「取り置き」項目に移動させるようにしてもよい。
【0115】
ここで、図14に示すように、「取り置き#1」の仕分け情報には、複数の提供者IDおよび複数の提供対象が紐付けられている。一例として、「取り置き#1」の仕分け情報には、提供対象として「電気」、「水道」等が紐付けられている。このように、「取り置き#1」の仕分け情報は、毎月発生する支出(固定費)を取り置くための仕分け情報であってもよい。このような「取り置き#1」の仕分け情報に紐付けられる「設定金額」項目には、利用者によって入力された金額が格納されてもよいし、後述する推定部47によって推定された金額が格納されてもよい。推定部47の内容については、後述する。このように、資金移動部46は、推定部47によって推定された一月あたりの支出額に基づき、給与として入金された前記デジタルマネーの一部を「取り置き」項目に移動させてもよい。
【0116】
また、「取り置き#1」の仕分け情報には、上記のような公共料金に限らず、たとえば、利用者が定期的に(たとえば毎月)購入している取引対象(たとえば、サプリメントや使い捨てコンタクトレンズ等)が紐付けられてもよい。このような「取り置き#1」の仕分け情報に紐付けられる「設定金額」項目についても、利用者によって入力された金額が格納されてもよいし、後述する推定部47によって推定された金額が格納されてもよい。
【0117】
つづいて、給与として入金されたデジタルマネーの一部を、給与としてのデジタルマネーが入金された決済口座以外の口座に移動させる場合について説明する。
【0118】
「普段使い」項目に給与としてのデジタルマネーが入金されると、資金移動部46は、送金IDが付された仕分け情報に従って、「普段使い」項目に入金されたデジタルマネーの一部を別口座に移動させる。たとえば、図14に示す登録情報データベース33には、利用者ID「U1」の利用者に対し、「送金#1」および「送金#2」の2つの仕分け情報が紐付けられている。一例として、資金移動部46は、利用者ID「U1」の利用者U1に給与としてのデジタルマネーが入金された場合に、利用者ID「U1」に紐付けられた決済口座の「普段使い」項目から、「送金#1」に紐付けられた提供対象「運用#1」によって識別される運用口座に対し、「送金#1」に紐付けられた設定金額「3,000円」を移動させる。
【0119】
ここで、「送金#1」の仕分け情報は、後述する提案部50による提案に基づいて生成されてもよい。提案部50の内容については、後述する。このように、資金移動部46は、給与として入金されたデジタルマネーのうち提案部50によって提案された金額のデジタルマネーを運用口座に自動的に移動させてもよい。」
ウ 判断
上記イ(イ)によれば、受付部41は、デジタルマネーの入金要求を受け付けるものであり、入金要求には、支払先の識別情報である「支払先ID」と入金の名目を示す情報である「名目」が含まれていることが記載されている。
また、上記イ(ウ)によれば、入金処理部42は、受付部41によって受け付けられた入金要求に基づいて入金処理を行うものであり、入金要求に含まれる名目が「給与」であるか否かを判定し、入金要求に含まれる名目が「給与」である場合、支払先IDに紐付けられた決済口座の総残高のうちの「給与」項目に対して入金額を加算し、入金要求に含まれる名目が「給与以外」である場合、支払先IDに紐付けられた決済口座の総残高のうちの「給与以外」項目に対して入金額を加算することが記載されている。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
エ 異議申立人の主張について
これに対し、異議申立人は、本件発明1の「給与以外残高」として、本件明細書の【0054】には、「クレジットカードまたは銀行口座から入金されたデジタルマネーの残高」や「キャッシュバックされたデジタルマネーの残高」が記載されているところ、本件明細書の発明の詳細な説明には、これらのデジタルマネーについて、利用者の識別情報と入金名目とを受け付け、入金名目が給与以外であると判断し、給与以外残高に入金する具体的な手段については記載がないと主張する。
しかしながら、上記イ(ア)のとおり、本件明細書の発明の詳細な説明には、「給与以外」項目には、クレジットカードまたは銀行口座から入金されたデジタルマネーの残高を示す情報が格納される「通常」項目と、キャッシュバックされたデジタルマネーの残高を示す情報が格納される「利益」項目があることが記載されている。
そうすると、入金の名目が、「通常」項目や「利益」項目であった場合、すなわち、「給与以外」であった場合、上記イ(ウ)の【0066】によれば、「通常」項目や「利益」項目の残高は、支払先ID(利用者の識別情報)に紐付けられた決済口座の総残高のうちの「給与以外」項目に対して入金額を加算する入金処理を行うことが理解できる。
したがって、異議申立人の主張は理由がない。
(2) 本件発明2~6について
異議申立人は、本件発明2~6について、具体的なサポート要件違反を主張していない。
そこで検討するに、本件発明2は上記イ(エ)、本件発明3は上記イ(オ)、本件発明4は上記イ(カ)のとおり、発明の詳細な説明に記載されている。そして、本件発明5及び本件発明6は、それぞれ、「管理方法」の発明及び「管理プログラム」の発明であるところ、本件発明1の「管理装置」を方法の発明とプログラムの発明で特定したものであり、カテゴリーが相違するのみで実質的な相違はないから、上記(1)のとおり、発明の詳細な説明に記載されたものである。
したがって、本件発明2~6は、いずれも発明の詳細な説明に記載されたものである。
(3) 小括
以上によれば、本件発明1~6についての特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
したがって、本件発明1~6についての特許は、特許法113条4項の規定により取り消されるべきものではない。
4 理由4(実施可能要件違反)について
(1) 判断
上記3のとおり、本件発明1~6は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであるところ、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~6を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであると認められる。
(2) 異議申立人の主張について
ア これに対し、異議申立人は、本件発明1の「デジタルマネー」について、銀行の取り扱う預金管理をはじめとする為替取引と、デジタルマネーとの技術的な違いが明確ではなく、デジタルマネーの入金をどのように受け付けるのか、発明の詳細な説明の記載は不明であると主張する。
しかしながら、本件明細書の発明の詳細な説明の【0014】には、「デジタルマネーとは、たとえば、各種企業が独自に用いるポイントや通貨等であってもよく、日本円やドル等の国家により提供される貨幣を電子的に取引可能としたものであってもよい。」と記載されているように、「デジタルマネー」は、「日本円やドル等の国家により提供される貨幣を電子的に取引可能としたもの」であってもよいと解されるから、異議申立人が主張している「銀行の取り扱う預金」も含むものである。
そして、デジタルマネーの入金をどのように受け付けるのかは、本件明細書の発明の詳細な説明の【0056】~【0062】の「(受付部41について)」の記載をみれば明確である(上記3(1)イ(イ))。
したがって、異議申立人の主張は理由がない。
イ また、異議申立人は、本件発明4の「決済口座以外」について、本件明細書には「運用口座」のみ記載されているところ、その「運用口座」は、決済サーバに設けられた口座であるのか、決済サーバの外部に設けられた口座であるのか説明されておらず、資金をどのように移動させればよいのか不明確であり、決済口座と決済口座以外との機能的な差についても、発明の詳細な説明の記載は不明確であると主張する。
しかしながら、「決済口座以外の口座に移動させる場合」について、デジタルマネーを運用口座に移動させることは、本件明細書の発明の詳細な説明の【0108】~【0119】の「(資金移動部46について)」の記載のうち、特に、【0117】~【0119】の記載をみれば明確であり(上記3(1)イ(カ))、決済サーバに設けられているのか外部に設けられているのかに左右されるものではない。
そして、決済口座と決済口座以外との機能的な差についても、運用口座は決済口座とは異なるから、そのことを決済口座以外といっているのであって、いずれも明確である。
したがって、異議申立人の主張は理由がない。
(3) 小括
以上によれば、本件発明1~6についての特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
したがって、本件発明1~6についての特許は、特許法113条4項の規定により取り消されるべきものではない。
第6 むすび
以上の次第であるから、特許異議の申立ての理由及び異議申立人の提出した証拠によっては、特許第6996017号の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に特許第6996017号の請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700609